エンドブレイカーの戦い⑯〜秘密の色は
見透かす瞳、囁く唇、『密告者』と名乗る――いや、そう名乗っていた怪物は、猟兵達へと宣告する。
――みなさんの傍らをご覧ください。私に似た、小さな存在が浮かんでいますよね。
それもまた、『ウリディムマ』です。
みなさんが「他人から隠している欲望」を元に、私が今作り出しました。
怪物は言う。自らは『知的生命体の欲望から、無限に増殖できる』のだと。かつてこの怪物と相対した者達は、無限増殖をはじめる前に叩き潰したという。
だが今回は、状況が違う。『ウリディムマ』は既に膨大な数へと増殖を終えてしまっている。
数々の小世界から、絶え間なくやってくる同じ形の怪物の群れ。それをして、彼は『素晴らしい光景』だと笑う。
●君の秘密
「うーん、厄介なことになったよね」
怪物の占領したという燦然楼閣ゼルフォニア、その状況を伝えて、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は悩まし気に唸る。11の怪物はどれもこれも規格外だが、今回の敵は『知的生命体の欲望から、無限に増殖する』という特徴を持つという。
潰えるまで殴り倒すのは猟兵の十八番のような気もするが、倒しに向かえばその猟兵の『隠れた欲望』を元にして、『ウリディムマ』はさらにその数を増加させるだろう。
小さな『ウリディムマ』はその欲望がある限り無限に生まれ続ける。放っておけば敵本体と同等まで成長してしまうそれを、即座に倒しながら本体を相手取る必要があるのだ。
「まともにやるとかなり大変だと思うんだけど……敵は君達の『隠れた欲望』を糧に増えるみたいだから、いっそのこと隠さなければ増殖が止まるかもしれないよ」
そうすれば、本体――それでも数が無茶苦茶に多いが――の相手に集中できるだろう。だがそれはつまり、心の内に秘めた願いを大声で喧伝し続けろというようなものであって。
「……まあ、安心してよ。僕は耳を塞いでおくからね」
あはは、と信用できない表情で笑って、オブシダンは戦場へと続く扉を開いた。
つじ
●プレイングボーナス
小さなウリディムマを即座に倒しつつ、本体に対処する/自身の欲望を隠すのをやめる。
なお、当シナリオではさらけ出した秘密が大きい程、多い程、ボーナスを積み増します。
大丈夫ですよ。私は耳を塞いでおきますからね。
それでは、皆さんのご参加を心待ちにしております。
第1章 ボス戦
『ウリディムマ』
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POW : 抵抗を望む欲望も、私の餌となります。
【小さなウリディムマ】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【言葉で指定】した部位の使用をレベル秒間封じる。
SPD : あなたが隠したい欲望は、何ですか?
対象への質問と共に、【対象の秘めたる欲望】から【新たな無数のウリディムマ】を召喚する。満足な答えを得るまで、新たな無数のウリディムマは対象を【欲望を奪う視線】で攻撃する。
WIZ : これもまた、素晴らしき光景の一端です。
【ウリディムマ】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[ウリディムマ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エル・クーゴー
躯体番号L-95
当機は対多殲滅戦に高い適性を発揮します
(敵配置と前後の機動を【瞬間思考力】で分析、アームドフォートに【メカニック+プログラミング】を施してって砲塔の数や角度を【範囲攻撃】に向いた感じに【武器改造】!)
捕捉敵影、目視可能範囲で依然増殖中――
…………。
『有効策』の実施にシフトします
(ごつい電脳ゴーグルのバイザーを額上にどかす)
――私、実は感情薄いロボ娘キャラはだいぶ作ってるんです
カレがそういうタイプ好きそうで、気に掛けて構ってくれるし
…………。
もういいんですよね?
『|友軍は当機の付近より退避して下さい《ぜんぶまとめてブッとばしちゃうんだから》』!!
(【オーバードライブ】発動!!)
●
あなたが隠したい欲望は、何ですか?
莫大な数へと膨れ上がり、なおも異世界から送り込まれてくる『彼等』、ウリディムマはそう問いかける。小石を投じれば波紋が起きる、そのようにして、生じた反応を糧にして、ウリディムマはさらにその数を増殖させていくのだ。唇と目玉、囁き、覗き込むその存在を、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は|感覚器《各種レーダー》で観測し、把握する。
敵の配置と前後機動、それらを読み解けば、自然と最適な砲塔角度も分かるというもの。対多殲滅戦は、もとより彼女の得意とするところだ。だがそれでも、一部問題があるとするならば。
『――なるほど、そういう欲をお持ちですか』
「……」
そんな囁きと同時に、エルの傍らで小型のウリディムマが新たに生まれる。そうなれば、当然最適な殲滅策にも揺らぎが生じる。これでは切りがないだろう。
「『有効策』の実施にシフトします」
エルの顔の上半分を覆う、やけに大きなゴーグ、そのバイザーを上げる。露になった金色の瞳が、赤い色の無数の瞳を見返して。
「――私、実は感情薄いロボ娘キャラはだいぶ作ってるんです」
彼等の糧とする秘密、『隠したい欲望』を、一つ捨てる。
「カレがそういうタイプ好きそうで、気に掛けて構ってくれるし」
晒せばそれは秘密ではない。エルの中のそれを糧としていたウリディムマの増殖が、一時的に止まった。
『ですが、それだけではないでしょう?』
「…………」
覗き込むような赤い瞳が、瞼とも唇ともつかぬそれが、笑みの形に歪む。この無表情もまたキャラ付けであるのなら、その内心にはきっとさらなる欲が『|友軍は当機の付近より退避して下さい《ぜんぶまとめてブッとばしちゃうんだから》』!!!
もはや問答は無用とばかりにアラートが鳴り響き、とっくの昔に展開し切ったアームドフォートが火を噴く。
オーバードライブ発動。増殖の止まったそこは計算の範囲内、全周囲のウリディムマに向けた無数の砲火が、炎の波となって敵陣を薙ぎ払っていった。
大成功
🔵🔵🔵
ロズヴィータ・リューゲン
フレデリカ(f38924)と
そういや確かに仮面はついてなかったよな、仮面はな
だがまさか、アレも『怪物』の内だったとは…
いや、隠れた欲望、っつってんだろ
アンタは包み隠さな過ぎなんだよ
この場合どうなるんだ?
増えねえのか?
つかそれ、隠れた欲望とかじゃなく只の内緒話――テメ、今なんつった
アレは恐竜のエサじゃなく、とっときの酒に合わせる肉なんだよ!
いくらしたと思ってんだ!
後で憶えとけよ
走り出したフレデリカを追い掛けて、ダガーを手に密告者の群に突っ込み
手当たり次第斬り払ってく
そんなに知りたきゃ教えてやるさ
アタシの望みは、あの馬鹿どもとこの先も一緒に馬鹿やって生きてくこと
柄じゃないから言いたかないんだがね!
フレデリカ・イェナ
ロズヴィータさん(f38918)と!
へ~あれが密告者さんですか!
なるほど
欲望を曝け出さないとアレがばんばん増えちゃうんですね!
わたしの欲望……リュビ(ディノ)のお腹がもちもちで大好きとか?
うーんでも隠れてる欲望なんてないですよ
ミカンはいつでもお腹いっぱい食べたいし
綺麗なトカゲさんを見るとハァハァしちゃいます
あっ、そういえば
この前ロズヴィータさんが買ってきた熟成肉、美味しそうだったのでリュビにあげちゃいました!
リカ、リュビの喜ぶ顔が大好き(欲望)なんです!
ロズヴィータさんが恐い顔して追い掛けてくるので、リュビに乗って逃走&突撃です
クチビルオバケの密告者さん達は、まとめてはね飛ばしちゃいましょう!
●
――私のようなマスカレイドは、他にいましたか?
かつてエンドブレイカーによって退けられた『密告者』、長き時を経て再び現れたそれは、嘲笑うように問う。大事になる前に仕留められたがゆえに、あまり見返されることもなかったような気がするが。
「そういや確かに仮面はついてなかったよな」
なるほど、言われてみればそうだ、とロズヴィータ・リューゲン(花酔・f38918)が思考する。
「だがまさか、アレも『怪物』の内だったとは……」
しかしながら、言われてみれば無限に増え続けるこの能力は他の『怪物』と並んでも遜色ないものだ。誰かが倒しに来たとしても、その存在を糧にさらに増殖するというのだから。実際に、ロズヴィータの傍らにも小さなウリディムマが生じていた。
「なるほど、欲望を曝け出さないとアレがばんばん増えちゃうんですね!」
速やかにダガーでそれを処理する様を見て、フレデリカ・イェナ(竜愛ずる鉄砲玉・f38924)が頷く。
「わたしの欲望……リュビのお腹がもちもちで大好きとか?」
「いや、隠れた欲望、っつってんだろ」
それは誰の眼にも明らかだし、そもそも隠そうともしていないだろうに。そう溜息を吐きながらも、ロズヴィータの頭に問いが巡る。
しかし、この場合はどうなるんだ? ウリディムマはフレデリカの所には生まれないのか? まあ秘密を明らかにすれば増殖が止まるのだから、元々隠れた欲望が無ければ増えもしないのが自然だろう。だがそれはつまり、ウリディムマの言う『知的生命体』の定義から外れるということになるのだが、人としてどうなんだ?
疑問というより半ば心配になってきた彼女の視線を受けて、フレデリカは首を傾げる。
「うーん、でも隠れてる欲望なんてないですよ?」
ミカンはいつでもお腹いっぱい食べたい。綺麗なトカゲさんを見るとハァハァする。割と直感で生きている彼女には、やはり該当するものが無いような。
しかしその言葉とは裏腹に、彼女の隣にも小さなウリディムマが生まれ出た。
『そんなことは無いでしょう、あなたにもあるのですよ。胸に仕舞い込んでいる、欲望が』
含み笑いのような形に歪んで、新たに生まれたウリディムマが言う。そして、そうである限り、何度潰そうとも新たな『怪物』が彼女の傍に生まれ続けるのだ。
「仕舞い込んでいる――あっ、そういえば」
そこで思い付くものがあったのか、ぽんとフレデリカが手を打つ。
「この前ロズヴィータさんが買ってきた熟成肉、美味しそうだったのでリュビにあげちゃいました!」
「は? ――テメ、今なんつった?」
それは欲望とかじゃなくてただの内緒話では。しかしながら被害者にとってはそれどころではないらしく。
「アレは恐竜のエサじゃなく、とっときの酒に合わせる肉なんだよ! いくらしたと思ってんだ!!」
あー、やっぱり怒りますよね、と彼女は速やかにリュビに飛び乗る。
「リカ、リュビの喜ぶ顔が大好きなんです!」
これもある意味隠しておきたかった欲望、か。とにかくそれを明らかにしたことで、フレデリカの周囲のウリディムマの増殖は止まっていた。まあ、その弊害としてロズヴィータが鬼の表情で追いかけてきているが。
「逃げましょう、リュビ!」
「待てコラ! 後で憶えとけよ!!」
敵陣に向かって全速前進、ウリディムマの群れを撥ね飛ばしながら駆けるディノスピリットに、ロズヴィータが続く。行く手を塞ぐウリディムマに関してはダガーで斬り伏せてはいるが、彼女の傍で生まれる小さなウリディムマが、その歩みを阻害し続けていた。
鬱陶しいそれに舌打ちを一つ、彼女はその増殖の芽を断ち切るために、口を開く。
「そんなに知りたきゃ教えてやるさ、アタシの望みは、あの馬鹿どもとこの先も一緒に馬鹿やって生きてくこと!」
柄じゃないから言いたかないんだがね。そうして明らかにされた欲望は、もはや怪物の糧にはなりえない。増殖を止め、既に居る相手にだけ集中し、ロズヴィータはさらに刃を――。
「あっもしかして照れてます?」
「聞くな!!」
そっちが邪魔しに来るのかよ、あと熟成肉の件はまだ許してねえぞ。
そんな追いかけっこのような様相で、二人は勢いよく敵陣を駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヨム・キプール
UCによって600体以上の砲撃ユニットを展開。
敵が小さい内に潰しながら本体を撃ち抜くかぶん殴る……だけだと数が多すぎて手が足りないね。
はぁ、ボクが秘密にしている欲望か。
クソだりぃ……まあいい、なら教えてやる。
俺には恋人がいる。名前はメフィス。
彼女と共に居たい。彼女を守りたい。彼女の体温を感じたい。
彼女の為なら命、いや、魂の奥底まで燃やし尽くしても構わない。
彼女と骨の髄、血の一滴、髪の毛一本まで一つになることを切望している。
これが俺が隠してる欲望だ、恥ずかしいしな。
だが、知られたくない秘密は見られても構わない事実に変わった。
人様の隠し事を暴けて満足か?
じゃあお代をいただくぜ。情報料はお前の命だ。
●
遠隔砲撃ユニットを展開、即時飽和攻撃を開始。ヨム・キプール(贖罪の日・f21620)の『飛蝗』達がその真価を発揮し、周囲のウリディムマ達へと風穴を開けていく。生まれたばかりの小さなものを確実に潰して、残りの火力を既に育った者へと集中、的確に戦力を配分して当たる。『本体』に当たる者が居るのなら、そちらを削ってやりたいところだが、敵の『増殖』はどうやらそういう類のものではないらしい。
異世界で準備を進めていた敵の数は膨大で、この戦場に限ったところで手が足りない。せめて少しでも増殖を留めなくては、物量で押し切られるのはこちらの側か――。
「クソだりぃ……」
戦況を分析し、弾き出した答えにヨムが呟く。心境としては口にした通りだが、それが有効手段である以上取らないわけにはいかないだろう。
それはつまり、隠したい欲望を吐き出すこと。
「……まあいい、なら教えてやる」
嘆息と共に、彼は緑に近い青の瞳を敵へと向ける。唇と瞳を合わせたような『怪物』からエサを奪うために。
「俺には恋人がいる。名前はメフィス」
彼女と共に居たい。彼女を守りたい。彼女の体温を感じたい。
飾り気のない言葉で並べたそれらが、真実である証左のように、絶え間なく増殖を続けていたウリディムマの発生が鈍る。
「彼女の為なら命、いや、魂の奥底まで燃やし尽くしても構わない。
彼女と骨の髄、血の一滴、髪の毛一本まで一つになることを切望している」
徐々に熱を帯びていく欲の色。その頃には、ヨムの周囲に新たなウリディムマが生まれることはなくなっていた。
「これが俺が隠してる欲望だ、恥ずかしいしな」
いや、「隠していた」と言うべきか。知られたくない秘密は、見られても構わない事実へと変わった。
「人様の隠し事を暴けて満足か?」
強く、青い光が、覗き見趣味の怪物を照らす。輝く瞳を開いたヨムは、狙うべき敵の群れを『手足』に伝えていく。
「じゃあお代をいただくぜ。情報料はお前の命だ」
全てを喰らう蝗の群れは、大挙して怪物どもを食い破っていった。
大成功
🔵🔵🔵
暁星・輝凛
戒李(f40816)と
なるほど、欲望を秘めるなと…難しい話じゃないね。
僕はいつだって、自分がしたいことを貫いてきたつもりだよ。
というわけで、まず小ウリディムマを一閃!
さあ主に戒李、よーく聞いて!
僕、元の世界じゃあ奧さんが何人もいることで有名だったけど……
実はこっちの世界に来てから、気になる人がいまぁす!
そう、また!うさ耳が可愛くておっぱいが大きい子!
実際戒李の影響だよ。僕の性癖歪めた自覚ちゃんと持って欲しい。
ふうん。僕がそんな半端な男じゃないっていうのは、戒李が一番よく知ってると思うけど?
あはっ、悪いね唇目玉くん、覚悟なら何年も前に済ませてる。
――この程度のことで、怯むと思ったら大間違いだよ!
眞月・戒李
輝凛(f40817)と
ボクもまあまあ欲望を隠すタイプじゃないけど、輝凛は更にだからなあ
増殖を手伝う気もないし、小型の方を範囲で一気に潰して。本体には集中砲火をぶつけよう
さてと、輝凛は何を言う気で――って、ええ!?またなの!?
本当に恋の多い男だね君は…今更だけど
あとなんというか、好きだね獣耳。え?ボクのせいなの?
でもボクが可愛いの生まれつきだから…
まあいいよ。ただしボクへの愛情を他所へやるような男はイヤだからね
心配はしてないけど
ああ、ボクの欲望なら…世界一かっこいい旦那さまと仲良く戦えてる時点で隠してないよ
楽しいねえ、やっぱりボクは戦うのが大好きらしい
さあ、叫べ、歌え、その喉が食い破られる前に!
●
敵の数は夥しいほどではあるけれど、その特徴はわかっている。群れ成すウリディムマは、今もなお増殖を続けており、その内の一つは戦う猟兵達の傍にもあった。
――あなたが隠したい欲望は、何ですか?
怪物はそう問いかけて、各々の胸の裡に隠された欲望を暴く。それが、新たなウリディムマの萌芽を促すのだ。
「なるほど、欲望を秘めるなと……難しい話じゃないね」
そう、それこそが、攻略に当たっての有効手段。暁星・輝凛(獅子座の破神騎士・f40817)は、特に衒いもなくそう口にする。
「僕はいつだって、自分がしたいことを貫いてきたつもりだよ」
「まあ……そうだろうね」
それに対して納得したように首肯したのは、彼の伴侶でもある眞月・戒李(ストレイリーパー・f40816)だ。自分も欲望を隠すタイプではないと自負してはいるが、彼女の知る限り、輝凛はその上を行く。自らの周りに生まれた小さなウリディムマを一閃し、そのまま道を拓くため、輝凛は堂々と『欲』を曝け出しにかかった。
「さあ主に戒李、よーく聞いて!」
「はいはい」
さて、何を言う気なのやら。とりあえず耳を傾けたそこで。
「僕、元の世界じゃあ奧さんが何人もいることで有名だったけど……実はこっちの世界に来てから、気になる人がいまぁす!」
「ええ!? またなの!?」
中々の宣言に、思わずそう声を上げた。驚愕、ではあったがあちらにそれを気にした様子はない。
「そう、また! うさ耳が可愛くておっぱいが大きい子!」
「そう……本当に恋の多い男だね君は……」
まあ、よくよく思い返せば今更の話ではある。驚きもすぐに喉元を過ぎたものの、消化にはまだ少しかかりそうか。溜息まじりに戒李は言う。
「あとなんというか、好きだね獣耳」
「実際戒李の影響だよ。僕の性癖歪めた自覚ちゃんと持って欲しい」
「え? ボクのせいなの?」
でもボクが可愛いの生まれつきだからどうしようもなくない? 責任もある意味取ってるし?
何故か強く頷いてきた彼にそう返して。
「まあいいよ。ただしボクへの愛情を他所へやるような男はイヤだからね」
「ふうん。僕がそんな半端な男じゃないっていうのは、戒李が一番よく知ってると思うけど?」
不敵で、なおも自信に満ちた挑発的な応酬。何かイチャついただけのように見えるが、とりあえず輝凛の周囲でのウリディムマの増殖は止まった。
「ああ、ボクの欲望なら……世界一かっこいい旦那さまと仲良く戦えてる時点で隠してないよ」
何か惚気ただけのように見えるが、戒李の周囲でもウリディムマの増殖が止まった。
「あはっ、悪いね唇目玉くん、覚悟なら何年も前に済ませてる」
残念でした、とでも言うように笑って、輝凛は獅子座の星を宿した剣を掲げる。月の光と同じ金色の光が周囲を照らし、二人の立つ戦場を染める。
「――この程度のことで、怯むと思ったら大間違いだよ!」
『獅輝吼牙・眞月』迸る光の奔流が増殖を止めた敵陣を薙ぐ。そして背中合わせのその場所で、戒李は風の刃を解き放った。
「さあ、叫べ、歌え、その喉が食い破られる前に!」
瞳と唇、異形の怪物の元で閃く風が、複雑な軌道を描きながら、赤い雨を降らせる。
「ね、この場合喉ってどこだと思う?」
「さあ?」
どこでもよくない? そう返しながら、彼女は軽やかに戦場を舞う。
――楽しいねえ、やっぱりボクは戦うのが大好きらしい。そんな風に、艶やかな笑みを浮かべながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
白斑・物九郎
ほー、コイツが噂の怪物っスか
何度でも殴れて退屈しなさそうですわ
(【狩猟】マシの【野生の勘】で敵動向を察知し抜き【怪力】でブン回す魔鍵で近場からボコって回る)
……なんですよ?
コイツらマジで無限増殖なんスか?
こりゃとっとと『解法』を使って仕留めねーとタダのバカですわな
――五年前に拾ってからこっち、彼女ヅラ通り越して嫁ヅラして来るドールの相方が居るんですけどもよ
毎度テキトーにあしらっちゃいるものの、いっぺん『俺めのモンだから誰にも渡さねーぞ』ってブチかましてやりたいんスよ!
コナ掛けたそうなヤツ、ちょっとは見ますしよ実際!
(【オーバードライブ】発動!子機も本体も、動体全自動捕捉攻撃に任せてブッ倒せ!)
●
「ほー、コイツが噂の怪物っスか」
戦場に出向いた白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)を待ち受けていたのは、増殖を済ませた『怪物』、ウリディムマの群れだった。膨大な数の瞳に見つめられる奇妙な感覚を味わいながら、彼は周囲の敵の動向を察知する。
ああ、秘密を持つ『糧』がまた一人。そうして喜ぶように歪んだ唇の一つに、物九郎は手にした魔鍵を叩きつける。確たる手応えと共に吹き飛ぶ異形、だがそこで彼の『勘』に、新たな気配が引っ掛かった。
「……なんですよ?」
咄嗟に振った魔鍵の先が、小さなウリディムマを叩き潰す。だがまた次の瞬間には、新たに生まれたウリディムマが、物九郎の周囲を漂っていた。
「コイツら……マジで無限増殖なんスか?」
まあ数が多ければ何度でも殴れる。実験台にもできるし運動にもなる、退屈はしなそうだが永遠に終わらないのでは話が別だ。
幸い、ここには『解法』がある。さっさとそれを活かして仕留めないと、まあ面白くないことになるだろう。
溜息を一つ吐いて、物九郎はこちらを見透かそうとする赤い瞳に睨みを利かせた。
「――五年前に拾ってからこっち、彼女ヅラ通り越して嫁ヅラして来るドールの相方が居るんですけどもよ」
その対象が、付近の戦場に居た『彼女』であると、ウリディムマ達は気付いているかどうか。密告者達の『覗き見』を無意味なものにするべく、彼は続ける。
「毎度テキトーにあしらっちゃいるものの、いっぺん『俺めのモンだから誰にも渡さねーぞ』ってブチかましてやりたいんスよ!」
コナ掛けたそうなヤツ、ちょっとは見ますしよ。まあまあ本人の前では言いにくいそれを明らかにして、彼は全身に力を巡らせる。体を這う禍々しい呪紋に伴い、凶暴な感覚が理性を塗り潰していく。
――改めて口にしてみると、五年というのは結構な期間ではあるまいか。一瞬そんな感覚が頭を過るが、とにかく、彼はそこで荒ぶる衝動に身を委ねた。
ただ動くものに反応し、薙ぐように振るわれた腕が、浮かんでいた小さな異形を引き裂く。千切れた個体の代わりは、もう生まれない。
『オーバードライブ』、増殖の手を断たれた怪物の群れの中に、より凶暴な黒い獣が解き放たれた。
大成功
🔵🔵🔵
●雲霞
猟兵達の的確な対処により、無限にも見えたウリディムマの数に、陰りが見え始める。
この場のみで掃討に至るのは難しいかもしれないが、この勢いならば必ず、倒し切ることが出来るだろう。
『拒絶の壁』も全て敗れ、11の怪物も出揃った。戦いは、佳境を迎える。