5
エンドブレイカーの戦い③〜カジノ・プレブス

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #戦神海峡アクスヘイム

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#エンドブレイカー!
🔒
#エンドブレイカーの戦い
🔒
#戦神海峡アクスヘイム


0




「皆様、お疲れ様で御座います」

 ライリス・エルファンシア(天麟万華の欠片・f00325)は、戦争が始まったら頃から変わらぬ厳しい表情で一同を迎えた。

「11の怪物『クサリク』への支援を絶つ為に、お力をお貸しください」

 未だ11の怪物8柱の殆どが『拒絶の壁』の向こうにその全容を隠したまま、その姿を顕さない。

「『クサリク』が支援を受けているのは、戦神海峡アクスヘイムと霊峰天舞アマツカグラを襲うエリクシルの眷属達で御座います」

 アマツカグラは神楽巫女達や奈落で支援に対処する猟兵達の働きもあり、都市国家側が優勢といった所。戦神海峡アクスヘイムもまた、順調に対処が進んでいるという状況ではある。

「……時に、皆様は|賭け事《ギャンブル》はなさいますか?」

 曰く、ライリスのグリモアが報せて来たエリクシルの眷属は、賭け事を好む魔女だという。エリクシルの力を得、その強大な力で運を捻じ伏せるのだとか。

「この、博奕の魔女が……屋外カジノを開いております」

 屋外カジノ。其処でディーラーとして君臨する魔女が、防衛に来た人々を巻き込んで、己の配下としようとしている。

「この魔女ですが、エリクシルの力をその……自身の運を上げる事に費やしているようでして」

 流石に如何様では無いと思うのですけれど――と、ライリスも困惑の彩を隠さない。

「そうして得た豪運を上回る豪運で皆様が圧倒すれば、此方の物、で御座います」

 エリクシルの力による豪運で慢心している魔女は、それを上回る運に対処する術を知らない。おまけに、エリクシルの力をそちらに注いでしまった魔女は、自身の戦闘能力にその恩恵を殆ど割り振ってないようなのだ。

「なんといいますか……色々と“個性的”な相手で御座いますが、皆様であれば容易く対処頂けるかと……どうか皆様、豪運の風嫌われる事の無きよう」

 ライリスはそう言うと、手にしたグリモアに力を籠めた。



「レディース・エン・ジェントルメーン! 屋外カジノ、『|兎の足《ラビットフット》』はこちら!
 閉じこもるよりもぱあっと行きましょう!」

 世界の危機が迫らんとするアクスヘイムに、一瞬耳を疑うような陽気な声が響く。
 視線を向ければ、黒いレオタードスーツにロングブーツのバニーガール姿の女性が杖を手に微笑んでいる。彼女こそが、博奕の魔女『コニリエッタ』。
 賭けの敗北者達を己の支配下に置き、戦力にせんとする魔女……の筈である。


白神 みや
 お世話になっております。|白神《しらかみ》です。
 戦争シナリオ第二陣、戦神海峡アクスヘイムdeカジノバトル……という、カオス優勢トンチキ気味なシナリオです。運を味方につけてエリクシルの力でLUK極振りしている魔女にドヤ顔をキメて下さい。戦闘シナリオですが、こんなノリですので、ゆるっとシリアル路線です。

●プレイングボーナス
 敵の弱点を突く準備を万端に整える。

●お願い
 MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
 今回のプレイング受付開始は【9/7 8:31〜】です。この時間より前のプレイングはお返しする可能性がありますので、ご了承ください。
 また、🔵が👑を上回った事を確認した時点で〆切予定です。
 タグに状況を記載しますので、宜しくお願いします。
31




第1章 ボス戦 『博奕の魔女『コニリエッタ』』

POW   :    生死の|賭け《ベット》
レベルm半径内を【己の魂を互いに賭けるデスゲームカジノ空間】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ディーラーであるコニリエッタの生殺与奪権】が強化され、【ディーラーであるコニリエッタへの反則行為】が弱体化される。
SPD   :    ボーパルラビシャン・カーニバル
装備中の【トランプ】を【ピュアリィ『ボーパルラビシャン』】に変身させる。[ピュアリィ『ボーパルラビシャン』]は使用者と五感・能力値を共有し、【肉】を食べて傷を癒せる。
WIZ   :    浸蝕する|棘《ソーン》
戦場内に【刺さった部位を異形化させる|棘《ソーン》】を放ち、命中した対象全員の行動を自在に操れる。ただし、13秒ごとに自身の寿命を削る。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠レイチェル・ノースロップです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イチカ・バーチカ
兎の足、良い名前じゃない。
お姉さん、1:1で遊びましょ。ブラックジャックはどう?ルールはそれだけ。

と持ちかけつつ【イカサマ】と【乱戦博戯】を開始。
カードの細かな傷を[瞬間記憶]、[瞬間思考力]による[戦闘演算]で確率計算、[盗み・物を隠す]でのカードすり替え、電脳での敵心拍数確認による[読心術]、[挑発]……あらゆるイカサマで運をねじ伏せてあげる。射幸心の強化で、ヤメ時も分からず負け続けると良いわ。

ウサギさんを読んで卓袱台返し?「1:1」以外は禁止したでしょ。
[武器を隠]していた[エネルギー弾]『マインドエラー』で反撃してあげる。
運を支配って、気に入らないの。運には、弄ばれるのが楽しいのよ。




「|兎の足《ラビットフット》、良い名前じゃない」

 |賭け事《ギャンブル》と聞いてやってきたイチカ・バーチカ(ノルカソルカ・f40796)は、日頃の冷静な素振りを保ったまま周囲を見回すが、予想外に戦場で堂々と繰り広げられる|賭け事《ギャンブル》への期待が隠し切れずその瞳の奥で燃える。

「あら、早速カモが来てくれたのかしら」
「招待状は無いけれど、遊びに来たわ」

 |猟兵《カモ》がやってきたと、バニーガール姿の魔女――コニリエッタは笑みを浮かべながらイチカを迎える。既に|賭け事《戦い》は始まっている。

「遊び……そうね、遊びだわ。それなら、何で遊ぶ? お客様ですもの、選ばせてあげる」
「それなら、1:1で遊びましょ。ブラックジャックはどう? ルールはそれだけ」
「あら、シンプル。シンプルな分……運に好かれた者が勝つって事よね」

 イチカが出した条件に、コニリエッタは笑みを浮かべる。エリクシルの力を得たコニリエッタは、運を自分に引き寄せている。つまり、今此処で運に好かれているのは、自分だと信じてやまないのだ。故に、イチカが出した条件をあっさりと受け入れる。
 しかしそれは、にこやかに会話をするイチカが場を上書きするようにユーベルコードを発動していなければ、だ。確かに運を支配しているのはコニリエッタの方かもしれない。しかし、この場はイチカのユーベルコードが支配してしまった。

「……くっ。どうして私の運が圧倒しないの?!」

 思い通りに行かないコニリエッタに、焦りが浮かぶ。対するイチカは、此処に現れた時と変わらぬ素振りを崩さず、己の経験と身につけた技能を惜しみなく使って、運を引き寄せる。

「下僕たち! 出て来なさい!」

 焦るコニリエッタがブラックジャックに使っていたトランプをイチカに投げつけると、トランプから|兎のピュアリィと思われる生き物《ボーパルラビシャン》達が現れ出でる。

「……あら、私言ったでしょ。“1:1で”遊びましょって」

 既に此処はコニリエッタの|空間《カジノ》でありながら、イチカの|空間《賭場》と化しているのだ。1:1として指定されたのは、イチカ本人とコニリエッタ。つまり|兎のピュアリィ《ラビシャン》達はイチカの賭場にとっては部外者なのだ。

「運を支配って、気に入らないの。運には、弄ばれるのが楽しいのよ」

 そう言って手を翻したイチカの手には透明なカード。そこから発するエネルギー弾がピュアリィとその主を撃ち据えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【朱雨】

世界一可愛い吉祥の黒狐が嫁の俺に死角は無い
とっくに、暁が心音になった時から俺の吉祥の黒狐だとも

あまり俺自身運が良い方ではないが、何の不安も無い

機械的ではない人的感覚を持つなら必ず“癖”がある
だが逆も然りでそれを失くそうとすれば違和感が生まれる“気を付ける”からだ
いいじゃないか
月夜に命でも賭けよう、魔女UC

心音を膝に乗せてカードゲームでも
狐耳に心音、“星”を探してと囁きながら
心音、黒と赤どっちが良い?お前の好きな色にしようなと遊ぶ
本来出来る筈もないが、俺と心音は違う
ロイヤルストレートフラッシュも21丁度も余裕だな

出会った時から心音はずっと俺に吉祥をくれた
だから応えよう
恐ろしい事など、何も


楊・暁
【朱雨】

俺、まだ"吉祥の黒狐"の力、顕現できてねぇのに…(苦笑)
俺との出逢いが幸運だと言ってくれるから
俺も少しでもそれに応えてぇ

カードゲームはやった事ねぇから、ルールは聞いて理解してから開始
藍夜に招かれたら断る理由なんてないから
人前で恥ずかしいけど膝に乗り
気軽に命賭けるとか言うな!って前なら怒ってたんだろうけど
今なら、俺の事信頼してくれての言葉だって分かる

無詠唱かつ早業でUC展開
敵の思考を全部読み取るぞ
…幸運でもなんでもねぇけど
使える手は全部使うのが賭け事だろ?

藍夜の囁きは鋭い聴覚で確り聞き取り
んー…黒
素人っぽさや悩んでる風を装い
勝てる手札の時だけ勝負
確実に勝ちを重ね

最後は功夫で鳩尾に拳の一撃




「なあ。俺、まだ"吉祥の黒狐"の力、顕現できてねぇんだけど……!」

 楊・暁(うたかたの花・f36185)の訴えは、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)には届かない。

「大丈夫だ、心音。俺自身運が良い方では無いが、何の不安も無い」

 藍夜は、暁を彼にだけ呼ぶ事を許された名で呼びながら、そう言う。少なくとも傍目には涼やかにきりりと引き締められた表情に見えるのだが。

「それにな、暁が心音になった時から、心音は俺の吉祥の黒狐だとも」

 続けて藍夜がごく自然に身を寄せて囁いた言葉に、”世界一可愛い吉祥の黒狐が嫁の俺に死角は無い”というような本音が重なって聞こえたような気がして、暁の狐耳が気恥しそうに揺れた。

(俺との出逢いが幸運だって言ってくれるなら……少しでもそれに応えてぇ)

 そんな本音に最後の抵抗はすっかり絆されてしまい。暁はつい、そうだな、と苦笑しながら応えてしまう。二人でなら、悪運だって幸運に出来る。それを信じて二人は|兎の足《ラビットフット》へと足を踏み入れた。



「今度のカモは二人で」
「いや、二人一組で」

 博奕の魔女が言い終えるより前に、藍夜の言葉が乗っかる。

「……それは、ええと、1対2ではなく、1対1をご所望と?」
「当然だ」
「ちょっと待て! 俺、カードゲームはやった事ねぇんだぞ。ルールくらいは理解させろ!」

 やや引き攣った笑みの博奕の魔女へ、彼女と対照的に涼やかに視線を向けながら話を進める藍夜に、暁が慌てて声をあげた。博奕の魔女も、流石にルールを知らない相手から巻き上げるつもりは無いようで、ルールと主要な役を一通り説明する時間を設けてくれた。

「何も判らない相手の身ぐるみを剥いでも、張り合いが無いですからね」

 その言葉に、藍夜の顔が一瞬引き攣って見えたのは恐らく暁のみ。暁に対しての藍夜は、過保護なきらいがある。その逆鱗を、博奕の魔女の言葉は撫でてしまったらしい。

「心音、おいで」
「……人前で恥ずかしいんだけど」

 藍夜はそれが当然だと、暁を手招く。招きにに応じて、暁は同じ椅子に座る。その膝の上に乗る形になってしまい、恥ずかしいと口にしたのはパフォーマンスでなく事実。それでも、大切な相手の裡に居る事は、恥ずかしさをほんの少し上回ったのだ。

(どうしてでしょう。まだ|賭け《ゲーム》が始まっていないのに……)

 負けた気がする等という弱気は、ディーラーの矜持とエリクシルの眷属としてのプライドで捻じ伏せる。そんな魔女の葛藤の合間に、暁はユーベルコードを展開し、魔女の思考を感知しようと努める。

「さあ。月夜に命でも賭けよう、魔女」

 それに重ねるように藍夜もユーベルコードを展開し、場を一転月夜へと転じる。藍夜が命を懸けると口にしたのは、自分に信頼を預けているのだからと、暁もその信頼に応えるべく、展開した妖術陣からの情報収集を始める。
 互いに囁きあいながらゲームに興じる二人の姿に、コニリエッタは唇を噛む。そんな焦りと謎の敗北感等で欠けた集中は豪運でも取り戻せない域になり、月夜と共に降り始めた狐雨にその身を蝕まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
【花園】

俺にはバッチリのUCがある
新しい白燐奏甲がそれだ

俺の|白燐蟲《ククルカン》は敵対する者に
不運を撒く
元々のアビ『蟲の知らせ』のが
猟兵のUCになった際に移った感じだね
「だからハイ!陸井、キアラ並んで!」

頼もしい仲間二人を並べ詠唱
この際だから高速も多重もで
可能なら三回でも四回でも
あ、勿論自分もね

皆に巻き付く蟲は可愛い…けど敵には知らない間に
不運を纏わせる
バレないはずだ
ペットにしか見えないしね

って訳で賭け事するよ!
多分幾度か相手にしたら上回れるはずだ
てかそうだ、良く考えたら俺も能力者としては豪運じゃん

「生憎だったね。俺達は君より運が強いんだよ」
攻撃力もマシマシだし全員の武器一撃でいけたらいいな


キアラ・ドルチェ
【花園】

父も母も賭け事は得意ではなく
私も、それを受け継いでいる

…でもね。賭け事は運だけじゃない
積み重ねた知識と、技術
どうすれば、より良い結果を導き出せるか…積み重ねから得られた知見も大事

勝てなさそうならおりる。勝てそうなら進む
相手は豪運に寄りかかって、その判断が甘くなっているよう

だから、確実に勝てる時に勝ち、おりる時はおりて、確実にプラスを重ねる

そして…溜まった全てを賭けて
ここが勝負どころと判断したら
「私の手持ちを全てをBET!」
さあ、勝負ですコニリエッタ!
銀雨世界の人間は色んな人と交流してると「豪運」になりますしね!(メタ
そして時人さんの援護あるなら、私が負ける筈がないっ!(森王の槍ぶっさし


凶月・陸井
【花園】

賭け事自体は嫌いじゃない
俺には幸運の女神がついているし
それに何より今回ベットするのは自身で
傍に頼りになる仲間達が居てくれるから
「それじゃあ、阻止しに行こうか」

相棒の支援を待ちつつ
まずは小手調べで弾丸を叩き込んでみる
「成程な。これじゃあ届きもしない、って事か」
相棒の支援を受けたら前に出て
堂々と相手をしよう
「さぁ、ゲームはなんだ?」

チップやカードを手繰る傍ら
懐にある妻から貰った杯に触れておく
「何。ゲン担ぎってやつさ。俺だけの、幸運の女神のね」

運で圧勝を重ねたらゲームセットだ
元々人々を支配下に置こうとして居た敵だ
UCを構えて、遠慮はしない
「悪いな。お代はきっちり、払って貰おうか」




「俺にはバッチリのユーベルコードがある」

 葛城・時人(光望護花・f35294)は共に|兎の足《ラビットフット》へやってきた相棒と預かり子へと言った。

「バッチリなユーベルコード、ですか?」
「成程、確かそういう風になったんだったな」

 時人の預かり子――キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)が首を傾げる傍らで、時人の相棒――凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は合点が行ったように頷く。
 |銀の雨降る世界《シルバーレイン》で能力者として死と隣り合わせの青春を相棒と駆け抜けた時人は、当時から|白燐蟲《ククルカン》の力を主力に戦ってきた。故に、猟兵と成った時に、その|白羽の白燐蟲《ククルカン》の齎す力もその性質が変わったものがある。その一つが、『白燐装甲』。今回時人が使った『白燐装甲』は、能力者時代には『白燐装甲』とは別の|アビリティ《ちから》であった『蟲の知らせ』の力――「不幸な出来事」を引き起こす力をも宿しているのだった。

「だからハイ! 陸井、キアラ並んで!」

 時人のその声を号令に並んだ二人へ、時人は己の|白羽の白燐蟲《ククルカン》を宿らせる。念には念をと、幾重にも重ねておく事も忘れない。そして、勿論、自分自身にも。

「それじゃあ、阻止しに行こうか」
「ああ、行こう」
「はいっ!」
「「「きゅいっ!」」」

 陸井のその言葉に、時人とキアラ、そして、三人に寄り添う|白羽の白燐蟲《ククルカン》が頷きあって、|兎の足《ラビットフット》へと足を踏み入れた。

「ふ、ふふ。またカモが来たわね」

 新たに姿を見せた猟兵を笑みで迎えた博奕の魔女に、すかさず陸井がその手の短刀銃の弾丸を撃ち込むが、魔女の首の動き一つでそれは避けられた。

「あらあら。せっかちな殿方だこと」
「小手調べのつもりだったが、成程な。これじゃあ届きもしない、って事か」

 短刀銃を収めた陸井が肩を竦める。この小手調べは事前に聞いてきた情報の確認に過ぎない。むしろ、これをもって”博奕の魔女は敵対者である”と、認識させる事が出来れば良いのだ。

「それなら相手をするまでだ」
「えぇ、ゲームと行きましょう。そちらの二人も交えて」

 そういうと魔女は慣れた手つきでカードを配る。



(……どういう、こと)

 博奕の魔女――ニコリエッタは困惑していた。自分はエリクシルの力で己は最高の運を会得した筈。猟兵達が乗り込んで来る迄の手応えは、確かにそうだった。それなのに。

「確かに貴女は豪運を得たのかもしれない。けれど、|銀の雨降る世界《私たちの世界》では、色んな人と交流してると運が良くなるんですよ!」

 幾度かのやり取りのが交わされた後、キアラが得意げな顔でそう言うと、傍らで時人が噴き出した。

「そっか、良く考えたら俺も能力者としては豪運じゃん……!」

 そういえば、あの頃はそんな事もあった。能力者から猟兵へと転じてから2年近く経ってはいるが、失念する程にこちらの流儀に馴染んだという事か。時が経つのは早いな等と、三者三様に想いを馳せた。

「くっ……こうなったら!」

 三人のそんな様子を余裕と見てとりコニリエッタは焦りを見せ、時人とキアラに向けて|棘《ソーン》を放とうとする。しかし、放つ前に動いた拍子にバランスを崩した為、二人とは見当違いの方向へと|棘《ソーン》は飛んで行く。

「俺だけの、幸運の女神の加護もあるからな」

 魔女とのゲームが始まってからその手に収めていた玉で出来た盃――陸井の妻からの贈り物である――を、壊れぬよう大切に懐へと仕舞うと、入れ違うように再び短刀銃を手にする。

「生憎だったね。俺達は君より運が強いんだよ」
「ゲームセットだ」
「時人さんの援護があるなら、私達が負ける筈がないっ!」

 |白羽の白燐蟲《ククルカン》による不幸な事故を呼び寄せる力によって、魔女が得ていたエリクシルによる豪運を相殺された。そうして普通のエリクシルの眷属と大差ない状態になった魔女へと、時人の|白羽の白燐蟲《ククルカン》達が、陸井の水遁が、によるキアラの植物の槍が、一切の容赦なく襲い掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青梅・仁
賭け事なんざここ数年した記憶がねえな。
俺はあまり西洋の勝負には詳しくないからな……そうなあ、ポーカーってのやってみたいから相手してくれよ。

ところでレディ、お前さんは『運の神』か?
――そうか。神じゃないなら特段問題ないと思ってな(『挑発』)

『最終的に』勝てばいいんだろ?
最初は俺が話にならんほど弱い方が相手も慢心するだろう。
『罠使い』『索敵』の応用でカードすり替えて役無しを作る。
「お前さん強いなあ!」とか言っときゃいいだろ。

『読心術』で相手が慢心、浮かれてると判断出来たら、こっそり折紙で『式神使い』。
式神のおかげで相手の札は把握できる。
ツーペア程度でも勝てると思ってるんだろうが……
今度は俺が役を作れるようにすり替えちまえば問題ない。
これがストレートフラッシュだったか? 
ははっ、俺にも運が向いてきたらしいな?(更に『挑発』)

カッとなって部下を呼び出したのなら戦闘という名の勝負としてお受けしよう。
戦闘能力を引き上げなかったお前さん達じゃあ、運が良くてもどうにもならんだろうがな?(『居合』+UC)




 博奕の魔女は焦っていた。
 自分は確かにエリクシルに豪運を望み、確かに得たそれを使って下僕を増やしたきたのだ。11の怪物に力を与えよという衝動にも似た命令のままにここまで突き進んできた筈なのに。猟兵達によってその仮初の豪運というメッキが剥がれ落ちていく。
 青梅・仁(鎮魂の龍・f31913)が|兎の足《ラビットフット》に姿を現したのはそんな頃合いだった。

「まだ|開帳して《あいて》るかい?」

 羽織と脚の代わりの鰭をひらりと揺らしながら笑みを浮かべて仁は魔女へと声をかける。

「勿論。|兎の足《ラビットフット》が|閉場する《しまる》のは、私が去る時ですもの」

 そう応える魔女は嫣然と笑みを浮かべ――内心の焦りを覆い隠して、新たな客を迎える。



「……そうさなあ、ポーカーってのやってみたいから相手してくれよ」

 |幽世幻想《カクリヨファンタズム》を根城にする仁は、西洋の賭け事については詳しくはない。故に魔女の流儀に乗ろうと、敢えて真っ先に名の浮かんだポーカーを選ぶ。

「畏まりました。では――」

 念の為とルールを説明しながら魔女は場を整えていく。その間も仁は女の手つきを観察する。そう、既に|賭け《戦い》は始まっているのだ。

「ところでレディ、お前さんは『運の神』か?」
「『運の神』、でございますか? 生憎と私は神ではありません」
「――そうか。神じゃないなら特段問題ないと思ってな」
「……運とは、己の手で機会を掴むものでしょう?」

 会話を重ねながら、カードやチップのみならず、挑発も交えた応酬を重ねる。そうして幾度か重ねて――流れが、動く。

「これがストレートフラッシュだったか?」
「――なっ?!」

 魔女の笑みが引き攣った状態で凍りついた。先程まで「お前さん強いなあ!」等と言われながら此方が優位に動いてた筈だというのに、目の前のこの男に薄ら寒いものを感じる。

「ははっ、俺にも運が向いてきたらしいな?」

 そう言うって男は不敵に笑むが、その目は明らかに笑っていなかった。それはまるで、獲物を見るような。もしくは、深い水の底のような、言い知れない何か。

「……くっ!」

 魔女は、|賭け《ゲーム》に使用していたものとは別のカードから、反射的に召喚した|ボーパルラビシャン《下僕》を喚び出す。

「ほう」
「この|豪運《ちから》が、私に|ちから《勝ち》をくれたのだから……!」

 半ば声を震わせて、魔女は叫ぶ。対する仁は魔女をその下僕達を冷ややかに睨め付け、受け流し、太刀を手にする。

「――なら戦闘という名の勝負としてお受けしよう」

 長い時の中で晒されて生き物の身勝手な欲は、時間を経ようが世界を越えようが変わらない。それがヒトであってもヒトでなくとも。
 ヒトの怨嗟の流れ着く『怨嗟の海』の力が、構えた太刀にゆらりと妖気が立ち上る。そうして振り下ろされる太刀一閃。放たれた衝撃波が|ボーパルラビシャン《下僕》を一掃し、太刀の斬撃が魔女を斬り伏せた。

「戦闘能力を引き上げなかったお前さん達じゃあ、運が良くてもどうにもならんかったな」



 斯くしてカジノ『|兎の足《ラビットフット》』は終了となり、11の怪物『クサリク』へ力を与えんと活動していたエリクシルの眷属達による戦神海峡アクスヘイムへの襲撃は一区切りを迎える事となった。
 11の怪物達の狙いも立ち回りも其々に異なり、支援を断つ事が出来たとはいえ、楽観は許されない。怪物達を劣勢に追い込むまで、戦いは続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月16日


挿絵イラスト