エンドブレイカーの戦い⑥~くろっくわーく・ぶるー
歯車がかみ合う遺跡の奥に、造られた青の世界が広がっていた。
ステンドグラスのモザイク模様は、幻想混じりの魚たち。硝子でできた珊瑚に手を触れれば、巨大な水瓶が傾いて尽きぬ水が溢れてくる。
ほら、早く。上まで逃げないと溺れてしまう!
吹き抜けの天井を見上げて、途方に暮れてしまっても大丈夫。落ち着いて、辺りを見回してみて。
ああ、仕掛けを見つけたね。
――ど、どどどどどぉぉぉっ!!
ほら、機械仕掛けのクジラが目覚めて潮を吹き、あなたを一気に出口まで連れていってくれるから。
『紫煙群塔ラッドシティ』――そこは、『世界の瞳』と呼ばれる謎の超巨大遺跡と融合するように建築され、歯車機械文明に支えられた都市国家だ。
その都市にある、巨大歯車遺跡『クロノスメイズ』の扉は本来、年に一度しか開くことはない。ない筈だったのだが、エリクシルの放ったモンスターの群れは強引にその扉を突破して、内部に雪崩れ込んできたのだった。
「このままでは、クロノスメイズが支配されてしまう……そこで、皆さんの出番ですのよ!」
エンドブレイカーの世界に迫る危機に、レイン・ドロップ(みずたま・f14853)の表情は心なしか「きりっ」としている。とは言え、ちんまい手足をぶんぶん振り回す様子は、普段とあんまり変わらないようだ。
「皆さんには、危険な仕掛けいっぱいの遺跡を探索して、ここに巣食おうとしているモンスターをぜんぶ排除して欲しいんですのー!」
ちなみに、今回皆に向かって貰うのは、人工的に海を模した感じの遺跡となる。
歯車仕掛けの罠もそれにちなんだもので、隠されたスイッチを操作することにより、遺跡内部の水位が上昇したり下降したりするらしい。場合によってはフロアが丸ごと水没したりする危険もあるが、仕掛けを上手く操作することで敵を閉じこめたり、こちらが安全な場所で対処することも可能になるのだ。
――たとえば、ステンドグラスに描かれた魚の、色違いの硝子のスイッチ。珊瑚の枝のひとつに偽装されたレバー。
仕掛けを見つけるには注意力も必要だが、楽しみながら探索を行うことで、発見も容易になるだろう。
「この罠を利用して、モンスターを退治することも出来ますのよ!」
水位の調節の他にも、内部の仕掛けを操作することで、強烈な水流が一方向に噴き出したりするらしい。鉄砲水のように敵にぶつけたり、自分たちが上手く利用して足場にすることも、猟兵だったら可能だろう。
遺跡に押し寄せてきたのは、つぶらな瞳が可愛らしいピンクのヤツ――野良モンスターであるウーパーイーターだ。集団戦で出てきたのを目にした方も居られるかもしれないが、まぁ一気に片づけちゃって欲しい。泳げないし、普通に溺れるので。
「濡れるのが気になる方は、水着でもいいと思いますのよ。それでは、頑張ってきてくださいですのー!」
――さて、それでは行くとしよう。機械仕掛けの青の遺跡へ、過ぎ去る夏を見送りながら。
柚烏
大変ご無沙汰いたしておりました、柚烏と申します。
こちらは『エンドブレイカーの戦い』の戦争シナリオになります。
●シナリオの舞台
⑥紫煙群塔ラッドシティ(支援対象:⑭)
●プレイングボーナス
歯車遺跡の罠に対処する/遺跡の罠を利用してモンスターを駆除する。
●遺跡について
人工的に「海」を模した感じの遺跡です。内部にはステンドグラスの青い光が射し込み、珊瑚や貝殻のオブジェや機械仕掛けのクジラなどがあります。
トラップは水に関係したもののようです。オープニングのものは一例ですので「こんな罠があったら面白そう」というのがあれば、プレイングに書いてみてください。
(ウォータースライダーのように滑り落ちたり……などなど)
敵の強さは考えなくて大丈夫です。敵は泳げません。
●プレイングにつきまして
シナリオ公開がされたと同時に、プレイングを送って頂いて大丈夫です(先着順ではありません)
締め切りはタグでお知らせします。なお、プレイングの内容に問題がなくても、成功数を越えれば返金の可能性がございます。ご了承のうえで参加頂けますと幸いです。
すぐに受付を締め切るとかはありませんので、のんびり参加を検討してみてください。それではよろしくお願いします。
第1章 冒険
『クロノスメイズの冒険』
|
POW : 発見したモンスターを撃破する
SPD : 遺跡の罠を察知し、回避または解除する
WIZ : 遺跡のパズルや謎掛けを解く
イラスト:麦白子
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルクス・ストレンジ
元々、海は嫌いじゃない
今年の夏は特に行く機会が多かった
人工物でもいい
また見たいな、あの青を
勿論、仕事は忘れてない
青い世界に魅入られないよう気を付けないとな
足音を立てぬよう『忍び足』
『集中力』を切らさぬよう慎重に進む
敵も罠も、唐突な遭遇は避けたいからな
ん、アレは…なるほど
鮫の模様に触れたら床が開き
水の中に真っ逆さまって仕組みか
ちょうど敵の声がする
これを使って退治するか
UCを控えめな威力で敵群のうちの一体に放ち、怒らせ
群れごと罠の部屋へおびき寄せる
込める意志は
「テメェら、ここから出て行け」
で、あえて罠発動
水の中にさようならってわけだ
オレ自身はケルベロスチェインの先端を壁に刺し
ぶら下がって落下を回避
――潮騒の代わりに、聞こえてくるのは歯車の音。規則正しいその音色に合わせて、ウミガメの足場が行ったり来たりしていた。
(「勿論、仕事は忘れてない――が」)
音を立てぬよう注意を払いつつも、アルクス・ストレンジ(Hybrid Rainbow・f40862)の足どりは軽く、どこか踊っているようにも見える。
(「また、あの青を見たいな、と思っていた」)
そう言えば今年の夏は、特に海に行く機会が多かった。
ステンドグラス越しに射す、かすかな光に目を細めたアルクスが、ふと立ち止まる。こことは別の世界、彼が愛した色鮮やかな惑星――そこで目にした水族館のようだ、と何となく思った。
造られた、人工物の海。元々、海は嫌いじゃないのだ。
「ん、アレは……」
と、色づいた光が照らす、床の模様を目にしたアルクスは、納得したように息を吐いた。
(「なるほどな」)
――幾何学模様に紛れるようにして、鮫の絵が描かれてある。足元から伝わる感覚からするに、あの模様に触れると床が開き、水の中に真っ逆さまとなるようだ。
「うぱー」「うぱうぱー」
ちょうど向こうの方から、間の抜けたモンスター達の声が聞こえてきたので、目の前の罠を利用してみることにする。まずは指先に螺旋の力をこめると、アルクスはそれを敵の群れ目掛けて軽く放った。
『テメェら、ここから出て行け』
「うーぱー!」
直後、弾丸にこめられた意志が発動し、ウーパーイーターの瞳がきゅむ、と吊り上がる。見事に反応したその一体を皮切りに、ぞろぞろとウーパーイーターの団体がアルクスの方へ向かってきた。
「……で、ここであえて罠発動、だ」
――がこーん!
先ほど見つけた鮫の模様を踏むと同時、アルクスはケルベロスチェインの先端を壁に撃ち込む。
「!!」
それを振り子のように操る彼が、重力を感じさせぬ動きで壁に張りついた時には既に、辺り一帯の床が音を立てて抜け落ちていたのだった。
「ぱー……!」
そのまま、ぼとぼとぼとっと水の中に落ちていくモンスターの群れ。何だか似たような光景を、地球のテレビ番組のコントで見たような気がするが、たぶん気のせいだろう。
(「本当に、泳げないんだな……」)
しぃんと静まり返った水面を見守っているうちに、やがてウミガメの足場が戻ってきたので、アルクスはそれに乗って先へ進む。
――さて、こちらも青い世界に魅入られないよう気をつけつつ、探索を続けるとしよう。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
なるほど、とてもおもしろそうな場所ですねー。
というわけで、陰海月と一緒に。こういうのは、『忍びと迷路大好きっ子』の出番でしょう。
そして見つけたのは…何やら、色とりどりの貝(ヒオウギ貝)の中に、一個だけスイッチが。
あたりを見回して、私達がいる場所が一段高くなってるのに気づいて。
押して大丈夫ですよ、陰海月。
そうしたら…間欠泉のごとく水が出たと思ったら、みるみる溜まっていきましたー。
ええ、高台の私達は大丈夫なんですけど、モンスターはね。
※
陰海月「ぷきゅ!」
迷路大好き!わくわくふよふよ探索。
おじーちゃん、これ押して大丈夫ー?
深海を思わせる青く幽かな光が、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の姿をうっすらと浮かび上がらせる。
「……なるほど、おもしろい場所です」
暗く狭い通路は、海底洞窟を模しているのかも知れない。遺跡を探索する現在は、『疾き者』たる忍びの人格が表に出ているからだろうか――隠された路を上手く辿るようにして、義透は迷宮を攻略しているようだった。
と、そこで、彼の独白に応えるように足元の影が膨らむ。そこから姿を現したのは、巨大なミズクラゲだった。
――ぷきゅ!
「陰海月、どうでしたか?」
青い光を受けて幻想的に揺らめくクラゲ――陰海月は、ふわぁっと大きく傘を広げて、喜びをいっぱいに表現している。先ほどから偵察に出てくれていたのだが、どうやら洞窟迷路はお気に召したようだ。
「なるほど……あちらへ進めば近道になりますが、少々入り組んでいるのですねー」
――ぷきゅきゅ。
逆さまになってふよふよ漂いながら、義透に向かって頷く陰海月。ここからは一緒に通路をゆくとしよう。
緩やかなスロープを上って、陰海月の示した方へ目を向ければ、ガラス張りになった床から階下の光景が一望できた。
(「おやおや」)
秘密の通路は、広場のてっぺんに続いているらしい。ピンク色のウーパー達が、出口を探してわちゃわちゃしているのが見えるが、向こうからではこちらの姿は見えないだろう。
――ぷきゅー。
気づかれることなく広場に出たところで、嬉しそうに陰海月が鳴いた。段差のついたステージの上に、色とりどりの貝たちが飾られていたのだ。
「虹色の貝……ヒオウギ貝のようですねー」
極彩色の貝殻は赤から黄色、青に紫と、虹を描くように並べられているが、その中のひとつには色がついていない。違和感に気づいた義透が貝を調べれば、やはり仕掛けのスイッチだったようだ。
――おじーちゃん、これ押して大丈夫ー?
そう言いたげな陰海月に向かって、義透はゆっくり辺りを見回すと。その穏やかな目を細めたまま、のほほんとした様子で答えたのだった。
「ああ……押して大丈夫ですよ、陰海月」
ぽちっ。クラゲの触手が貝殻のスイッチを押す。
すると、広場の真ん中に置かれていた巨大な貝が「ぱかっ」と開いて――、
「ええ、高台の私達は大丈夫なんですけど、モンスターは……ね」
――ぶしゃああああぁぁ!!
その中からは間欠泉の如く、一気に水が噴き出てきたのだった。
異変に気づいたモンスター達はわたわた暴れるが、逃げ場はない。
「うぱー」「ぱー……」「――……」
どんどん水に呑み込まれていくウーパーさんに、合掌である。
「すごいですねー、みるみる水が溜まっていきましたー」
そんな彼らを見つめる義透の口調は、やっぱりのほほんとしていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
疾駆する神発動中
「ご主人サマー☆屋内プールだよ☆泳ぎ放題だよ☆」(水着の銀髪少女
ちげーよ!?遺跡だろうがここは!(でも水着
まぁいい…迷宮探索なら
「幼女まつ」
しねーよ!これで我慢しろ!
UC発動
「「ひゃっはー☆」」
【情報収集・視力・戦闘知識】
メルシー軍団を散開
各罠の位置や仕掛けを捕捉
モンスターについても見つけ出しつつ罠をどう生かすかも分析
罠1
単純な落とし穴
位置を把握して誘導すれば
ウォータースライダーでざぶん
罠2
定期的に大きな波が襲ってくる
モンスターは蹴り飛ばし(酷
傍に謎の居た
という訳でサーフィンだ!(波乗りメルシー&カシム
罠3
海に渦潮発生
あ…溺れてるモンスターが吸い込まれていく…!
界導神機『メルクリウス』。それは、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)を主と認めた、謎多きキャバリアである。
境界と旅を司るとされるその名の通り、世界を越えて青の遺跡に降臨した機神(と主人)であったが――、
「ご主人サマー☆ 屋内プールだよ☆ 泳ぎ放題だよ☆」
今は銀髪少女の姿を取ったメルクリウス、通称メルシーの格好は、どこからどう見ても水着だった。
「ちげーよ!? 遺跡だろうがここは!」
ちなみに、真面目に突っ込みを入れるカシムも水着姿だったりするのだが、そそくさと水鉄砲をしまった彼は、改めてびしっと宣言する。
「まぁいい……今回は迷宮探索だ!」
「えー」
フードを被って聞こえないふりをするメルシーを、ぐわんぐわん揺さぶって、無理矢理起動を行うカシム。
まつだの待たないだの、ひどいだの我慢しろだのと怪しいやり取りが聞こえてくるが、何てことはない――ユーベルコードを使うカシムが、彼女の分身体を召喚して探索を行おうとしているだけだ。
「「ひゃっはー☆」」
そんなこんなで、兵装を纏ったメルシー分身体たち(総勢140体以上)がノリノリで羽ばたいていったところで、カシムも行動を開始する。メルシー軍団が持ち帰った情報を参考にしながら、あらゆる環境でも応用の効く戦術を考え、モンスターを撃退していくのだ。
「ふむ、これは単純な落とし穴か」
「あっ、敵が来るよ!」
まずは、ウーパーさんがもそもそっと近づいてくるのを上手く誘導したところで、スイッチをぽちり。
すとーん、と見事に落とし穴に落ちた敵はそのまま、リュウグウノツカイを模したウォータースライダーに乗せられて、どんどん地下に流されていく。
「さらに……そこのレバーを引くと、追加の罠が作動する」
「はーいご主人サマ♪」
更にメルシーがレバーを動かせば、定期的に大きな波まで生まれてきて、何だか本当に室内プールじみてきたなぁ――と思うカシムであった。
「という訳で、僕らもサーフィンだ!」
どこからか取り出した謎の板を手に、華麗に波乗りを決めるメルシー&カシム。ついでに、勢い余ってモンスターまで轢いてしまった気がするが、あんまり気にしないでおく。
「おお、渦潮まで発生しているのか……!」
溺れているモンスター達が渦に吸い込まれていくのを横目に、ついつい罠を楽しんでしまったのは内緒にしておこう。
大成功
🔵🔵🔵
シアン・マグノリア
なんだか、随分と久しぶりな感じがしますねえラッドシティ
何とも遊び心満載の迷宮ですね、いろいろ可愛いです
戦争中ではありますが、楽しまないと損ですよね
壁や天井、可愛らしいものがたくさんですが、あら?
此の足元のクジラさんの目の部分、踏めますね
踏んでみましょう(ぽち
わ、わ、わ。これ、クジラさんの潮吹きですか
すっごい水が噴射しますね…、当たったら痛そう
これ、敵に当たったら多分それなりにダメージ入らないでしょうか
相手の攻撃を【見切り】ながら、立ち回ってみましょうか
相手を誘導しつつ、クジラさんの目を踏み踏み
距離がある時は【属性攻撃】で岩でも落としてみましょうか
トドメは紋章でさくっと!
クロービス・ノイシュタット
クロノス大祭の一大イベントをこんな…
無粋な棘――じゃなく、エリクシルは、
所謂ぜつゆる?ってぇヤツだね
外世界でそーいうの覚えた
あと、他所の噴水も中々凝ってたなぁ
地面から間欠泉よろしく吹き出したり
しかもそれが時間差であちこちから出て来たり
最後は『スプラーッシュ!!』とばかりに、合体して渦巻く噴水になったり…
…そういうの、此処でも見られたら、楽しいな…?(にこー
ステンドグラスの枠に、起動ボタンが紛れていたりしないかな
眼下に吹き出す水を確認出来たら
そのパターンやタイミングを見切って
身を潜め
敵が踏み込んだタイミングで…ポチッとな
噴き上がって来た所でUC使用
凍らせ、落として、割れたらと
一体様ご案内〜ってね
リンドウ・ノア
濡れて動きにくくなると嫌だから水着で行くよ
綺麗なところなんだよ〜
かわいい鋏を片手に興味深げにきょろきょろ
敵にすれ違えば鋏でちょきっとおろすよ
スイッチになりそうな装飾を探して操作してみる
わぁ、すべり台なんだよ〜(危機感のない間伸びした声を発しながら滑り落ちる)
うーん、楽しかったんだよ
滑り落ちた先
まぁるいガラスケースみたいな部屋にはいっぱいの敵さん
お〜、いっぱいだ
ぺろりと唇濡らしていたら
足元に数字や記号が書いてあるパネル
……ん〜?
難しいことはわからないんだよ??
だから勘で踏んでみるね
うわぁ〜ガラスケースっていうよりコップってこと〜?
流れ込んできた水で敵が倒せたのを確認したら仕掛け探して脱出するよ〜
「……なんだか、随分と久しぶりな感じがしますねえ」
年に一度だけ開く筈の、厳かな時計塔の扉をくぐったシアン・マグノリア(天空に紡ぐ詩・f38998)は、しみじみとした様子で古びた壁に手を伸ばした。
「まったく、クロノス大祭の一大イベントをこんな……」
その近くをゆく、クロービス・ノイシュタット(魔法剣士・f39096)の貌は、表面上は緩やかな笑みを湛えているようだったが、その声音には微かなゆらぎがある。
「無粋な棘――じゃなく、エリクシルは」
――そう。それもこれも、エンドブレイカーの世界を襲う、新たな脅威のせいなのだった。
本来ならば年に一度のその日には、金色の砂と純白の雪が降りそそぐなか、幻想的な祭りが行われていたのだ。季節感がだいぶズレている。記念のピンナップなんかは一体どうなるのだ。
「所謂ぜつゆる? ってぇヤツだね」
外の世界へ旅に出てから、クロービスの軽口にも磨きがかかっているようだ――と、それはさておき。
「でもでも、ここは何とも遊び心満載の迷宮ですね」
白と金の追憶を振り切ったシアンは、気を取り直して遺跡を見て回ることにする。今は戦争中だが、エンドブレイカーたるもの、こう言う時も楽しまなくては。
「ふふっ、いろいろ可愛らしいです」
シアンたちが探索を始めたフロアには、あちこちから魚たちのモビールがぶら下がっていた。青いステンドグラスの光を受け、色とりどりの魚がゆらゆらと揺れているそこに、どうやら罠はなさそうだ。
「うん、綺麗なところなんだよ~」
魚たちの動きに合わせて、ぴょこぴょこっと揺れるウサギの耳は、リンドウ・ノア(コットンキャンディは夢を見る・f19568)のもの。
「何かあれば、あたしが三枚おろしにするんだよ」
興味深げにあちこちを見回すリンドウの手元では、可愛らしい鋏が剣呑な光を放っていた。水着姿で罠対策もばっちりな彼女は、ピンク色をしたイソギンチャクのオブジェに、何となく手を伸ばしてみる。
――ぽちっ。
「わぁ~」
直後、危機感のない間延びした声が響いて、リンドウの姿が消えた――と、どうしたのかと思う間もなく、今度はシアンの立っていた場所が隆起し始めたのだ。
「あ、あら?」
「へぇ~、なかなか凝ってるなぁ」
少し離れた場所にいたクロービスが、一連の仕掛けを目にしてため息を吐いていた。どうやらリンドウの押したスイッチによって、機械仕掛けのクジラがせり上がってきたらしい。しかも、かなり大きい。
「びっくりした……背中が、すべり台になってたんだよ~」
そんな、つるつるしたクジラの背を滑り落ちていったらしきリンドウの声が、シアンのいる遥か下の方から聞こえてくる。
「うーん……でも、楽しかったんだよ」
(「あ、大丈夫そうですね」)
巨大なクジラが目覚めたせいで、三人の居る場所がばらけてしまった形となったが、とりあえずは各々で仕掛けを操作してみることにした。
(「あら? クジラさんの目の部分、踏めますね」)
――と。シアンの足元、宝石でできたクジラの目が、怪しい感じで光っている。試しに踏んでみると、クジラのてっぺんから凄まじい水が噴射された。
「もしかして……タイミングや角度を調節すれば、敵を倒せるでしょうか」
「おや、何だか地面の方にも水が噴き出すような穴があるね」
にこー、と意味深に微笑むクロービスの方でも、仕掛けを見つけたらしい。ボタン操作により、時間差で作動する罠のようだったが、丁度いいところでモンスターの集団がやって来てくれた。
「お~、いっぱいだ」
ガラスの小部屋に落ちたリンドウの周りにも、ウーパー達が集まって「うぱうぱ」と騒いでいる。ぺろりと唇を濡らした彼女が、手元の鋏に目をやったそこで――足元にある、変なパネルに気がついた。
「……ん~?」
そこには数字や記号が書いてあるようだったが、難しいことはよく分からない。だから思うがまま、勘で踏んでみたのだが、猟兵の勘を甘く見てはならないのだ――。
――ぽち。ぽち。ぽち。
三者三様にスイッチを押した直後、あちこちから凄まじい勢いで水が噴き出してきた!
間欠泉の如き水がぶち当たって、リンドウの閉じ込められていたガラスの部屋を粉々に砕く。さらに、時間差で噴き出す水流に乗って彼女が脱出を果たしたところで、クジラのてっぺんから上がったひと際大きな水柱が、モンスターの群れを吹き飛ばしたのだ。
『スプラーッシュ!!』
――水流が合体し、渦巻く噴水と化したクライマックスには、そんな感じのクロービスの声が響いたと言う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎/2023年の水着
水着を着て準備ばっちり
いざ─…って何だよアレス
いつものカッコじゃ濡れた時に機動力が半分以下だろ
つまり最適解だ(ドヤ
水着の防御力を上げてくるアレスに心配症って言葉が浮かぶけど
お小言モードになる困るし…何よりその優しさが好きだから
そっと笑みを噛み殺す
さぁて!こっからはモンスター退治だ
まずは仕掛けを…
珊瑚のレバーを発見
ガチャン
あ、このフジツボそうか?
ぽちっとな
こっちの魚の絵もきっとそうだな!
第六感でヤバそうなスイッチを避けながら
手当たりしだいに押して見る
利用しろって言われてたから正規ルートだって!
ほらアレスも押してみな
ボタンをグイグイ勧めて押させよう
ふふん…
押したなら、共犯だよなぁ
色々考えてるアレスの横でスイッチ発見係
おお〜組み合わせればもっとすごくなるな
うきうきで流される敵を見ていたら
…あ
敵がスイッチに当たってこっちにも水流が!?
抱えてくれるアレスを鼓舞するように歌で支援する
クジラの脱出口から飛び出たら
ふ、ふは…!
思わずふたり笑いだす
夏の思いで増えたなぁ
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎・2023年の水着
確かに此処では鎧は向かないとは僕も思ってはいたが…
水着は少々身軽過ぎではないかい?
…彼の主張は間違ってはいない
が、探索となればやはり心配があるから
…分かった
けど、せめて…
彼の帽子を少しあげると額を合わせ【聖戦の鬨】
お守りを受け取ってくれるかい
水着にオーラ防御も纏わせよう
―よし。気をつけて進もうか
仕掛けには慎重に…って、
言った傍から!(足場浮上)
君は!!(水流)
セリオス!!!(鉄砲水)
遊びに来たんじゃないんだぞ
…確かに利用できると言われたし
君の勘なら…押しても危険はないのだろう
(水の扉オープン)
君って奴は…
でも僕は共犯より相棒がいいな
ワルイコトにしては可愛らしいからね
仕掛けの事も分かってきたし
彼が発見した物達を思い出しながら
パズルのように改めて作動
水の扉を閉じ、鉄砲水を当て
水流も発生させる!
…あ
敵がスイッチに!?
…ッ失礼!
咄嗟に彼を抱えて遺跡を駆ける
(君の歌が力をくれる
大丈夫だって力が湧く!)
クジラの脱出口で飛び出せば
思わず二人笑い出す
こんな冒険もいいね
――危険な遺跡に挑むのであれば、それ相応の準備が必要になるのではないか。
なるほど、それは一理あるな、とアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)思った。しかし、俺様な相棒が珍しく殊勝な意見を漏らしたことに、何の疑問も抱かなかったのが彼の間違いだったのかも知れない。
「確かに此処では、鎧は向かないとは僕も思ってはいたが……」
軽く頭を抱えるアレクシスが、ここに来るまでのやり取りを思い返していると、遺跡の扉に立つセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は、痺れを切らしたように踵を鳴らした。
「……水着は少々身軽過ぎではないかい?」
「いざー……って、何だよアレス」
ふわりと黒い髪を揺らして、勢いよくセリオスが振り返る。|水兵《セーラー》服の襟から覗く、白い首すじが反則的に綺麗で、一瞬彼の性別が分からなくなった。
「だって、いつものカッコじゃ濡れた時に機動力が半分以下だろ」
儚げな美貌に似つかわしくない、少年のような笑みを浮かべたセリオスが、最適解だと言わんばかりにドヤ顔を決める。
(「……その主張は間違っていない、いないんだけど」)
が、彼に押し切られる形で、アレクシスの方も水着を着てしまっている現在、入り口で押し問答を続けているわけにはいくまい。
「……わかった。けど、せめて」
探索となれば、やはり心配があるのだと言って。そっと身を屈めたアレクシスは、セリオスの被る麦わら帽子を押し上げると、額を合わせて|聖戦の鬨《アルクトゥーロス》の加護を唱えた。
(「お守りを受け取ってくれるかい」)
――聖なる光、暁の光の紋章は、水着の防御力を高めてくれるから。心配症、という言葉が思わずセリオスの頭に浮かんだが、それを口にしてお小言モードに突入されては堪らない。
(「それに……何より、その優しさが好きだから」)
帽子の下で、そっと笑みを噛み殺したセリオスの様子に、たぶんアレクシスは気づいていなかっただろう。
「――よし。気をつけて進もうか」
そうして、ばっちり準備を終えたふたりの向かった先は、珊瑚がテーブル状に幾つも折り重なった、段差の多いフロアだった。
「さぁて! こっからはモンスター退治だ!」
「あ、セリオス、仕掛けは慎重に……って、」
――と。そこで、アレクシスの声を遮るように、ガチャンと音がした。見れば、近くにあった珊瑚の枝を、いきなりセリオスが引っ張ったようだ。
「あああ、言った傍から!」
直後、螺旋階段のように珊瑚が連なり伸びていき、ふたりの立っていた足場が一気に持ち上げられる。
「あ、このフジツボもそうか?」
「待って、少し落ち着いて!」
手あたりしだいに、目の前の怪しいオブジェに手を出すセリオス。しかし、それに待ったをかけるアレクシスが、周囲の状況を確認しようとする前に、モンスター達が押し寄せてきたのだった。
「うーぱー」「うー!」
「……ぽちっとな」
とりあえず第六感で選んでおこう。壁にびっしり生えていたフジツボのひとつをセリオスが突くと、周囲のフジツボからどんどん水が溢れてきた。おお、逃げ遅れたウーパーさんが溺れておられる。
「君は!!」
金色の髪から雫を滴らせるアレクシスが、顔を拭おうする間にも、フジツボシャワーの勢いはますます激しくなっていく。足場が高くなっていたお陰で、こちらが溺れる心配は無いのだが――、
「こっちの魚の絵もきっとそうだな!」
「セリオ――――っっぐぐ!!!」
テッポウウオの仕掛けを見つけたセリオスが、鉄砲水を発射させたところで、アレクシスはちょっぴり巻き添えを喰らってしまった。
「……遊びに来たんじゃないんだぞ」
ゴーグルをかけていたので大事はないが、水で飛ばされてきたらしい小さなカニが、アレクシスの後ろでちょこちょこと動いている。
「カ、カニが……アレスの肩に……! ふふっ、罠を利用しろって言われてたから正規ルートだって!」
「まぁ、確かに利用できると言われたし……って、カニ?」
必死で笑いを堪えている様子のセリオスに、首を傾げるアレクシスである。しかしまぁ、勘の鋭い彼が大丈夫だと言うのなら、恐らく危険はないのだろう。
「ほら、アレスも押してみな」
グイグイ勧められるまま、アレクシスがボタンを押したところで――水の扉が開いた。
「君って奴は……」
「ふふん……押したなら、共犯だよなぁ」
溜まっていた水がどんどん排出されていくのを眺めながら、何ごとかを考える彼の傍で、セリオスが笑う。
今までの仕掛けを思い出し、パズルのように組み合わせて。そうして彼の言葉に答えようとしたところで、何かがカチリとアレクシスの中で、上手く嵌まったような感覚がした。
「でも僕は、共犯より相棒がいいな」
――まず水の扉を閉じて、それから鉄砲水を当てる。敵が一箇所に集まったところで、フジツボの水流を発生させ、纏めて溺れさせる!
「ワルイコトにしては、可愛らしいからね」
スイッチを見つけて手を伸ばすセリオスに、自分の手を重ねて、にこりと微笑む。その直後、鉄砲水に飛ばされたウーパーの一体がスイッチにぶつかったらしく、ふたりの方にも水が押し寄せてきた。
「……ッ失礼!」
勢いの増した水流が、珊瑚の螺旋階段を水没させていくなか、アレクシスは咄嗟にセリオスを抱えて遺跡を駆け上がっていた。
――だけど、心配することはない。君の歌が力をくれる。
(「大丈夫だって、力が湧く!」)
いと輝ける星よ、その煌めきを彼の人に。セリオスの奏でる鼓舞の歌を背に、機械仕掛けの巨大なクジラの背に乗り、出口を目指す。
宝石の目を操作し、タイミングを計って一気に飛び出せば、もう安心だ。
――ど、どどどどどぉぉぉっ!!
「ふ、ふは……!」「ははっ!」
潮吹きに押し上げられる形で、遺跡の外までクジラが一気に連れていってくれる。思わずふたりで笑いだしてから、アレクシスは巨大な歯車を仰ぎ見た。
「ああ、」
クロックワーク・ブルー――それは夏の思いでに加わった、機械仕掛けの青い世界。
「こんな冒険も、いいね」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵