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エンドブレイカーの戦い⑥〜腹ペコうさぎは妥協しない☆

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #紫煙群塔ラッドシティ

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 エンドブレイカー世界の大地そのものたる『大地母神』の眼球こそ、『世界の瞳』と呼ばれる謎の超巨大遺跡だ。
 そしてその『世界の瞳』と融合するように建築され、歯車機械文明に支えられた都市国家が『紫煙群塔ラッドシティ』である。
 複雑難解な機構を数多有する都市は、堅牢な守りを有するように思われた。
 しかしエリクシルの放ったモンスターの群れは、本来ならば12月24日にしか開かないはずの巨大歯車遺跡『クロノスメイズ』の強行突破を目論見る。
 ラッドシティもまた、他の都市国家同様に未曽有の危機に瀕していた――。

●腹ペコうさぎは妥協しない☆
「みんなには、美味しく食事をしてもらおうと思います」
 にこにこにこ。
 にこにこにこ。
「ちなみにお料理は、エンドブレイカー&猟兵強火担で名を馳せているラッドシティの長老が手配してくれるから、味の方は心配ないよ」
 にこにこにこ。
 にこにこにこ。
 危機的状況にそぐわぬ笑顔のエルシェ・ノン(青嵐の星霊術士・f38907)は、これまた逼迫する事態に反した呑気な内容を語る。
 が、これもれっきとした『11の怪物』たちとの戦いのひとつなのだ。

 曰く、巨大遺跡の一角に、ウサギ型防御機構が働いている小遺跡があるという。
 そこにモンスター達が雪崩込んだのは偶然だ。勿論、防御機構たるウサギ達は懸命に働き、牢にモンスター達を閉じ込めた。
 とは言え、このままモンスターを放置すれば、牢の壁を破ってクロノスメイズ侵略を成し遂げようとするのは間違いない――というのに。
 ウサギ達は、モンスター達を閉じ込めた牢を開ける鍵を、頑なに渡そうとしない。
 何故か。長らく誰の訪れもなかったウサギ達は、人々の幸せそうな顔に飢えていた。だって防御機構だもの。守った誰かの笑顔が、ウサギ達にとっては最高のご褒美なのだ。
 そこで件の長老が言い出した。
『せっかくの機会ですじゃ。エンドブレイカー様と猟兵様には、たらふく美味を味わって幸せになって頂くのですじゃ!!』

「長老に悪意はないよ? ただ戦いに疲弊してるだろう皆を労いたいだけだと思うんだ」
 にこにこにこ。
 にこにこにこ。
 空気を読んでか、美味しそうな衣装に着替えたエルシェの満面笑顔は崩れない。
 何故なら彼は予知で知っているのだ。並の幸せ具合じゃ、ウサギ達が満足してくれないと。
 つまり、腹がはちきれんばかりに美味を堪能し尽くさないと、モンスターを閉じ込めた牢の鍵は手に入らない。
「ちょっとでも食べる量を減らしたい人は、ウサギ達の気を惹く工夫をするといいと思うよ」
 例えば、めちゃくちゃ可愛らしい格好で赴く、とか。超絶スタイリッシュな食べ方を実践する、とか。ド派手なパフォーマンスで登場してみる、とか。
 だがしかし、他の猟兵たちのお食事の邪魔になるような工夫は厳禁だ。

「モンスターそのものは、みんななら”えい!”って殴れば斃れちゃうような連中だから、そこのとこは気にしなくていいよ」
 にこにこにこ。
 にこにこにこにこにっこにこ。
 猟兵たちの|幸せ《満腹》を願うエルシェの気持ちに嘘はない。でも、事態を面白がっているのも本当だ。
「望むままに美味にありつける。悪い仕事じゃないと思うよ」
 頼んだよ、と言うエルシェの顔は、いつになく晴れやかだった――。


七凪臣
 お世話になります、七凪です。
 暦の上では秋ですね。ネタに走りたい季節です。ええ、そういうことです。多分、きっと。

●プレイング受付期間
 OP公開と同時にプレイングの受付を開始します。
 受付締切は任意のタイミング。タグと個別ページにてお報せします。

●シナリオ傾向
 全力でネタ。
 ただし公序良俗に反する行動や、迷惑行為、食べ物を粗末にする行いはNGです。

●プレイングボーナス
 歯車遺跡の罠に対処する/遺跡の罠を利用してモンスターを駆除する。

●お食事
 お好みのものをご指定下さい。
 エンドブレイカー世界にないものでも長老が「直ちに準備しますじゃ!」と用意してくれます。

●防御機構ウサギ
 見た目は可愛いウサギ。ただし幸せ判定は厳しく行う鬼ウサギ。

●小遺跡内の様子
 しっかりテーブルセットが用意されていますので、文化的なお食事が楽しめます。

●採用人数
 可能な範囲で頑張りますが、全員採用はお約束しておりません。
 (オーバーロード頂いても、お返しする時はお返しします)。
 採用は先着順ではありません。

●同行人数について
 ソロ、あるいはペアまでを推奨。

●他
 文字数・採用スタンス等は個別ページを参照下さい。

 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
 宜しくお願い申し上げます。
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第1章 冒険 『クロノスメイズの冒険』

POW   :    発見したモンスターを撃破する

SPD   :    遺跡の罠を察知し、回避または解除する

WIZ   :    遺跡のパズルや謎掛けを解く

イラスト:麦白子

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アンゼリカ・レンブラント
気を惹くよう頑張ってみようか

フリルがいっぱいついた
めちゃめちゃ可愛らしいドレスを着こみ
カーテシーを決めて登場する

一応20年前はアクスヘイムの貴族の姫だったんだ
こんなのは身に付いた礼儀作法
まぁ……今やるのはメンタルに来るが表に出さないよ

お食事は上品なものをぜひ
「地球」な世界でいうフランス料理ってやつかな
ぜひ、フルコースで!
テーブルマナーを遵守し
幸せいっぱいな姫君として食事を楽しんでいくよ

美味しいものをいただく時は幸せなのです

そう、それは演技じゃなく本当にそう思うね
一応大食いでもあるんだ。ぺろりと食べてしまうよ
……たまには実家に帰るのもいいかな

幼き日の幸せな日々を思い、幸せ満点にウサギにアピールだ



 濃紺のドレスの裾を、アンゼリカ・レンブラント(黄金戦姫・f38980)はふわりと揺らす。
 す、と片足を後ろへ引くと、胸元に施された白い月桂樹の刺繍が、何処から射すとも知れぬ光に煌めく。
 さらに背筋を伸ばしたままもう片方の膝をゆるやかに折ると、周囲からてちてちという拍手が起きた。
『お姫様のお越しぴょん』
 ぴょんぴょんぴょん。ずらりと並んで出迎えてくれた防御機構ウサギたちを、アンゼリカはむず痒い心地で眺める。
 いや、だって。
 ドレスに袖を通したのなんて超絶久し振りだ。しかもそこかしこにフリル満載の“THE・お姫様”仕様である。そも、徹頭徹尾仕込まれたカーテシーを大戦中に披露するとは夢にも思わなかった。
「フルコースをお願いしたい。出来れば、“UDCアース”のフランス料理とやらの」
『了解したぴょん』
 どうやら給仕も務めてくれるらしいウサギが、恭しく傅いてくれる。アンゼリカに合わせてくれているのだろう。
(――……メンタルに、来るっ)
 小刻みに震えたがる腹を見事なシックスパックで制し、アンゼリカはさっそく運ばれてきた白磁の皿から、薔薇に見立てられた魚の薄切りの重ねをそっと口へ運ぶ。
 今では立派な筋肉女児(女児)であるアンゼリカも、20年前はアクスヘイムの貴族の姫君だったのだ。なお年齢的に覚えた疑問を追求してはいけない。エンドブレイカーの|神秘《根性》万歳。
 ふふふ、ふふ。
 優美な笑みを口元へ湛え、アンゼリカは慣れた所作で音を立てずにカトラリーを繰る。
 澄んだ琥珀色のスープは存外に肉の風味が感じられた。フルーツのジュレに囲まれたエビは、食感からして楽しい。すっきりシャーベットの後の分厚い肉の上にはフォアグラとキャビアが鎮座していた。
「美味しいものをいただく時は幸せなのです」
 知らず、アンゼリカの口を敬語が吐く。名も知らぬ料理たちに、里心が疼いたのかもしれない。
(……たまには実家に帰るのもいいな)

 絵に描いたかの如き、お姫様の幸せな食卓に、ウサギ達が小部屋の鍵をアンゼリカに渡したのは言うまでもない。
 そしてアンゼリカは美味をしっかり堪能しながらも、ついぞ拭い切れなかった羞恥心をモンスターへの一撃で解消するのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チロル・キャンディベル
おいしいものが食べれるって聞いたのよ…!

チロ、お肉が好きなの!(人狼なので)
おっきなお肉が食べたいのよ
ソルベはなあに?チロといっしょでお肉かしら?
え、りんごが食べたい?
じゃあソルベにはいっぱいのりんごとお肉ね

おっきなお肉のかたまりすごいのよ!
ステーキにやわらかくにたやつに、いっぱいのお肉!
どれもとーってもおいしいの!おかわりくださいな
ふふー、ソルベもいっぱい食べれてうれしそうね

デザートもだいじなのよ
チョコにプリンにアイスに…

え、その前におやさい食べないとダメ?
んんー、おやさいあんまり好きじゃないのよ
でも…、うん
ソルベにめっされたからがんばるの
生はヤだから、お肉といっしょのやいたやつくださいな



 天は告げる。
 “小さい”+“天真爛漫”=“可愛い”だと。
 しかもそこにおっきい動物が加わったら、もう無敵。
 存在そのものが“幸せ”だ。

「このおっきなお肉のかたまり、すごいのよ!!」
 一抱え以上はありそうな肉の塊を前に、チロル・キャンディベル(雪のはっぱ・f09776)は身を乗り出して、若葉の瞳を満天の星空よろしく煌めかせた。
 テーブルの上には、他にもたくさんの肉料理が並んでいる。じっくりことこと煮込んでほろほろになったシチュー。分厚いソテーに、からりと揚がったチロルサイズの一口肉。
 嬉しさとわくわくに、頭上の三角お耳はぴくぴく動き、ふわふわ尻尾もぶんぶん揺れている――そう、人狼であるチロルはお肉が大好きなのだ!
 でもチロルももう14歳。思い切りかぶりつきたいのはぐっと堪えて、フォークとナイフを駆使し、まずは大きな肉塊に挑む。
「んんん、最高なの!」
 口の中にじゅわりと広がった肉汁と、炭焼きの香ばしさ、ちょっぴりスパイシーな香辛料の刺激にチロルの貌がほにゃりと蕩ける。
 ぺろりと平らげるのも一瞬だった。もちろん、シチューもソテーも揚げ物もどんどん胃の中に納まっていく。
 しかし。
「おかわりをくださいな! あと、デザートもだいじなのよ。チョコにプリンにアイスに……」
 てしり。次々に夢を膨らますチロルの手を、白くて大きな手が制す。チロルといつも一緒の、今は真っ赤な林檎を頬張っていた白熊のソルベの手だ。
「なあに? ソルベもお肉のおかわりがほしいの――」
 てしり。
 もう一度、ソルベの手がチロルの手に重なる。そして物言わぬ円らな瞳が、じいいいっとチロルを見つめる。
「……おやさい、あんまり好きじゃないのよ」
 てしり。
 ソルベの云わんとすることを察したチロルの唇が、むぅと尖った。それでもソルベの親目線は変らない。
 けれどここでチロルは思い出す。お肉でお野菜を巻いたお料理があることを。これならば、きっと美味しく食べられる。しっかり火を入れて貰えば、なお良しだ。

 白熊と白い人狼の少女が織り成す光景は、まさに平和な日常そのもの。つまり、幸福以外の何ものでもない。
 然してウサギ達は、満腹になったチロルへ喜々として鍵を差し出すのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルシエラ・アクアリンド
ええと、言い出したのはハンクス長老だよね?多分、きっと、恐らく
まあ、確かに悪意はないのだろうね、あの方の事だから

んー。まあ作る方に回りがちだし良い機会かも

折角なのでシエラとライも一緒に。
先日仕立てたフレアワンピースと大きなショールを

先にテーブル周りの罠を解除
狩猟者なもので大抵罠は発見できる(第六感、気配察知)

用意が整ったら
ミルクティーとスイートポテトにヨーグルト味のジェラートを添えたものを頂く
ちょっと酸味があって美味しいの
シエラがもふもふパンケーキを食べている姿もみられて幸せ

ふと、ライが居ないのに気が付いて
かと思えば丁度帰ってきて
いや、あのその何か言いたげな目線はなあに??
(UC使用)



 先ごろ仕立てたばかりのオフショルダーのフレアドレスに身を包んだルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は、そもそもご機嫌だ。
 それくらいお気に入りの洋服は、気分を上げてくれる。
 『あー、またかぁ』なんて遠い目をしたくなるハンクス長老の暴走だって、可愛らしく感じちゃえるくらいに。
「確かにあの長老なら、仕方ないよね」
 淡いローズピンクに色付く大判のショールを丁寧に畳みながら、ルシエラは案内された席に腰を下ろす。
 肩が少しすうすうするけれど、大事なショールを汚してしまうよりずっといい。それに今日は、仔竜の桃華獣であるシエラと、ファルコンスピリットのライ一緒のお食事会だから、楽しみの方が先に立つ。
 幸い、テーブルや椅子に危うい仕掛けはないようだ。どちらかというと、満腹で幸せになれ、という方が罠っぽい。
(何とも贅沢な罠だね)
「ミルクティーとスィートポテトをお願い出来るかな。スィートポテトにはヨーグルト味のジェラートを添えて貰えたら嬉しい。あとパンケーキも」
『承ったウサ』
 存外に人語を巧みに操るウサギに、ルシエラの目元は更に和らぐ。
 そして運ばれて来たカップと皿には感嘆が零れた。
「これ、本当に何かの罠なんじゃないかな」
 思わず笑い出したくなるのを耐え、ルシエラは優しい湯気をあげるティーカップにまずは唇を寄せる。
「うん。良いミルクを使っているね。さすがはハンクス長老って、ここは褒めるところかな?」
 奥深い紅茶の味わいに促されるまま、ルシエラはジェラートをまとわせたスイートポテトを口に運ぶ。途端、爽やかな酸味と濃厚でありながら自然な甘さがルシエラを虜にした。
「ん、美味しい」
 落ちそうになった両頬を、堪らずルシエラは両手で支える。そこでふと、いつの間にやらシエラがテーブルの隅っこでもふもふのパンケーキに全身ダイブしていることに気付く。
「シエラも気に入ったみたいだね」
 ルシエラの声に、シエラがシロップまみれの顔で振り返る。帰ったらシャワー一直線だが、それもまた日常の楽しみだ。

 椅子の縁にとまったライが、自分専用のオーダーがないことに物言いたげな風情であるのをルシエラが察するまで、あと数秒。
 何れにせよ、動物たちと一緒のティータイムなんて幸せ以外の何ものでもなく。ルシエラがミルクティーを飲み干すより早く、ウサギ達はしずしずと鍵を差し出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
ウサギが満足するまで食べればいいのか。
それはいいね!
料理は用意してくれるんだし、それじゃ遠慮なくいいだくよ。

ここはやっぱり肉だな。
牛、豚、鳥、馬、羊に、ウサギ。肉なら何でもいいよ。
なんならモンスターでもいいかな。珍味とか面白いし。

焼いてよし、煮てよし、炒めてもいいね。
どんどん持ってきてくれれば、食べるよ。

肉はうまいし、やっぱり力が出るしね。
もちろん食べた分だけあとでエリクシルをぶん殴ってくるよ。
そっちの戦いも楽しみだなー。



 ――防衛機構ウサギが満足するまで食べればいい。
 果たしてそんな簡単すぎる|仕事《依頼》があるものかと、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は最初、我が耳を疑った。
 うまい話には裏がある。そんな常識くらい、脳筋――もとい、『何事も楽しくやろうぜ』が信条のシモーヌだって知っている。
 そう、まさにこれは美味い話。裏があろうがなかろうが――もしあっても、ぶん殴って解決すればいい――肉は正義、を地で行くシモーヌが飛びつかないわけがない。

「マジかよ……!」
 えいウサ、やあピョン、とおウササと数十体のウサギ達が束になって運んで来た大皿に、シモーヌは椅子をがたりと鳴らす。
 牛肉は安定の美味さだった。あれは焼くだけでご馳走だ。だが旨味という意味では、甘辛く味付けした豚肉の脂身に軍配が上がる。鳥は安定の唐揚げだろう。噛んだ瞬間、じゅわりと溢れた肉汁には思わず天を仰いだ。馬の刺身とやらは、クセのなさに驚いた。脂ののった羊肉は、ややクセがあったが濃厚な旨味の虜になりそうだった。
 斯くて一頻り食べ尽くした――兎さんは状況的に我慢した――シモーヌは、「なんならモンスターでもいいかな」と言った。確かに言った。
 結果の、今である。
『ランドホエールの丸焼きウサ!』
『成体だと遺跡内に入らないから、幼体にしたピョン』
 説明しよう。ランドホエールとはエンドブレイカー世界の荒野に出没する、巨獣の一種だ。名前の通り、陸上を歩き回れるクジラである。つまり、とんでもなくデカい。
『やっぱりこのサイズは無理ウサ?』
 期待と不安が入り混じったウサギの問いに、シモーヌは全力で首を横へ振った。食べると言ったからには、食べるに決まっている。これもまた真剣勝負だと思えば、楽しいばかりだ。

「やっぱり肉はうまいね! あと力が出る」
 見事ランドホエールの丸焼きを食べ切ったシモーヌに、ウサギ達から鍵が進呈されない筈もなく。
 食後の運動がてら、シモーヌはモンスター達をぶっ飛ばしまくった。
 でもいつもよりちょっと体重が増えていたのは――やはりうまい話にある“裏”だったのかもしれない☆

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴィ・ローランザルツ
そっか。そういう事ならウサギも一生懸命になるよなあ
うん、そこについては合点はいった。
長老の行動に関しても『ハンクス長老』と考えれば妥当だなあ
というか、こういうこと考える人ってかなり限定されるだろ

深く考えても仕方ないし甘えさせて貰おう

量はまあ、普通に食べる方だと思うけど念のため
セラを出しておこう。さっきからきょろきょろしている所を見るに
懐からだしてやった方が良いな

罠は見切りや索敵で発見次第解除

食事はキノコのパスタとスープ辺りの秋の味覚を味わえるものと
小さなクッキーを頂こうか
美味しいかと尋ねればまあ、予想通りの反応してくるんだろうけれど
食事のスパイスとしてはこれ以上ないと思う
(傍にはアイスレイピア



 この話を聞いた時、リヴィ・ローランザルツ(煌颯・f39603)は防衛機構ウサギ達の一生懸命さに胸を打たれた。
 守った人の喜ぶ顔が最高のご馳走だなんて、なんていじらしいことだろう。その気持ちは、リヴィにも十分に理解できるものであった。
 それに変な方向に捻じ曲げたのも、|あの《・・》ハンクス長老だと聞けば、納得しかない。
 ならば「仕方ない」という苦笑い一つで、ウサギ達を笑顔にしに行こうとリヴィは決意したのだ――が。

「うん。さすがにこの状況は予測してなかったな」
 足を運んだ遺跡内を見渡し、リヴィはほろりと溜め息を吐いた。先客が、真昼のカフェよろしく女性だらけだったのだ。
 何となくの気恥ずかしさに、リヴィはわけもなく座り直す。しかしテーブルに料理が運ばれてきた途端、全ての憂いは綺麗に吹き飛んだ。
「これは、美味しそうだ。セラもそう思うだろう?」
 秋鮭とキノコのクリームパスタに、南瓜のスープ。そしてマロングラッセ。
 『秋を感じるメニューで』というリクエスト通りの品々に、リヴィの顔は自然と緩む。そしてその歓喜は、一口、また一口と料理を食べ進めるごとに大きくなっていく。
「戦争中だけど、こんな風に季節の廻りを感じられるのは幸せなことだよな」
 食事の温かさだけでなく、全身に染みるまろい熱に、リヴィはゆったりと身を浸す。と、そんなリヴィの指先を突いたのは、満腹に備えて懐から出しておいたセラ――小鳥めく桃華獣だ。
「ごめんごめん。忘れていないって」
 愛らしく急かすセラの仕草に、リヴィは『お土産ですじゃ!』と用意されていた小ぶりなクッキーの詰め合わせの小袋の口紐を解く。
「どうぞ召し上がれ」
 差し出した一枚をせっせと啄む様子は、「美味しいかい?」と尋ねるまでもなく、セラの満足ぶりをリヴィに伝えていた。

『癒しピョン……』
『優しい陽だまりはここにあったウサ……』
 小綺麗な青年と、可愛らしいフォルムの小動物の姿を、ウサギ達は遠巻きに拝む。
 まるで一幅の絵画が如き光景は、まさに幸福の象徴。
 斯くてウサギ達はリヴィ達が食事を終えるのを静かに舞って、それから恭しく件の鍵を手渡すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユニ・エクスマキナ
どんなものでも食べていい?
ユニは、オシャレで美味しい甘~いスイーツをいっぱい食べたいんだけど…(長老チラ
見た目も可愛くって、素敵なヤツ!
テーブルいっぱいに映えスイーツ並べたら感激なのねー!
もう見ているだけでにっこにこ
写真いっぱい撮っちゃおう~っと!
む…おかしいな
スイーツたちはあんなに豪華で最高なの間違いないのに
ユニの写真は…(しょぼん
まぁ、いいや
まずは苺パフェからお味見…酸味と甘さのバランスが絶妙…!
こっちの紅茶スコーンはザクザクホロホロで美味しい…っ!
どれもみ~んな最高のお味!

で、うさぎさん…食べきれない分はお持ち帰り…え?ダメ?
ここで全部食べるの!?
美味しいからどれも残せない~(もぐもぐ



 贅沢三段重ねのパンケーキの上には、たっぷりの生クリームと二色の葡萄、それからピンク色のシャーベットが乗っている。
 海色を再現された、しゅわしゅわ泡立つソーダは、注がれた硝子のグラスそのものがお洒落だし、ホワイトチョコレートで編まれた麦わら帽子をかぶっているのが、なんとも憎い。
 定番のタルトは断面からして既に罪深い。だって薄切りにした桃が何層にも重なっているのだ。
 チョコスプレーとエディブルフラワーでおめかししたプチシューたちで作った冠は、勿体なさ過ぎて食べられる気がしない。
「これは、たくさん撮るしかないヤツだし!!」
 他にもカラフルで見目麗しいスイーツが、所狭しと並べられたテーブルを前に、ユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)は写真撮影に忙しい。
 そしてエンドブレイカー世界初体験のユニの中では、喫茶店のマスターが似合いそうなイケオジの姿の“長老”像が出来上がる。だってこんな“SNS映え”――最近覚えた言葉だ――間違いなしのスイーツを用意してくれるのだ。乙女心をくすぐるオジサマでないはずがない。
「素敵な長老、ありがと~」
 一頻り写真を撮り終わったのか、ようやくユニは椅子に腰を下ろす。ここまでは幸せ絶頂満面笑顔だった。が、スマホを操作するユニの顔色はみるみる曇って行く。
「む……むむ、おかしい、な?」
 どうやら写真がイマイチだったらしい。SNS映えの道は一日にしてならず、ということかもしれない。
 だがユニの切り替えはいつもより早かった。だってキラキラスイーツがユニのことを待っているのだ。これでテンション下がったままでいられる女子はいまい。
「じゃあ、まずは苺パフェからお味見……んんん、酸味と甘さのバランスが絶妙!」
 ユニ、絶好調。
「こっちの紅茶スコーンはザクザクホロホロで美味しいのっ」
 ユニ、超ご機嫌。
「じゃあ、次は――」
 しかし。
「今度は……」
 ユニの胃袋には限界がある。スイーツは別腹とよく言うけれど、やっぱり無限ではナイ。
 然してユニはおそるおそるウサギ達を窺う。
「う、うさぎさん……食べ切れない分はお持ち帰り――」
「いいウサ!」
「っえ!? いいの!? 本当に!? 食べ切らないとダメじゃなかったの?」
「よく分からないピョンけど、さっきハンクス長老から『そのお嬢様にはぜひお持ち帰りしてもらうのですじゃ』ってあったウサ」
「長老!!!」

 ユニは何故、自分に特例措置が取られたかはしらない。
 ただ顔を見たこともない長老を拝むユニの顔は幸福度120%。
 斯くてウサギたちから鍵を無事に受け取ることが出来たユニは、腹ごなしがてらきっちりお仕事を最後までこなすことが出来たのだった。
 誤解と思い込みってすごいネ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
可愛い衣装について友達に相談したら
ロリータドレスとうさ耳カチューシャ渡されました
どうして

どうせ食べるなら甘味がいいです…!
小食ではあるけど、甘味なら多少の限界突破は出来る…!

というわけで、プリンとかゼリーとかジュレとかください
練り切りや錦玉羹も見た目綺麗で好きなんだよねぇ

敢えて小さめでお腹にそこまで溜まらないものを優先依頼
全部満面笑顔でめちゃめちゃ幸せそうに食べる

んー、すっごく美味しい♪
やっぱり甘いものって幸せになるよねぇ
多分もうちょっとくらいは…いける
アップルパイとフルーツタルト一切れずつくださーい

この服?
さ、流石に可愛すぎて僕には似合わないよね…?
女装だし…

モンスターは杖でえいってします



「これ、みんなとお揃いだね」
「猟兵さんともお揃いウサ!」
 お月見ウサギのねりきりを黒文字でつついていた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、給仕も兼ねてくれる防御機構ウサギたちの賛辞に、当たり障りのない笑顔を返す。
 確かにロリータドレスにうさ耳カチューシャ――“可愛い衣装”で友人に相談した結果、こうなった――姿の澪は、ウサギ達とお揃いだ。
 だがしかし――。
(ううん。せっかくだから甘味を楽しまないとね)
 過ったあれこれをそっと頭の隅に追いやり、澪は改めてずらりと並べられたスイーツ達に向き直る。
 食は細い方だが、甘味なら多少の限界突破は出来ると踏んだ結果のオーダーだったが、その選択に間違いはなかったようだ。
 プリンやフルーツを閉じ込めたゼリーはぷるぷるだし、カクテルグラスに盛られたルビーレッドのジュレはキラキラで眩しい。
 夕焼け空をイメージした錦玉羹に至っては芸術的で、食べるのがちょっと勿体なくも感じる。
「んー、すっごく美味しい♪」
 いつもはなかなか出来ない“まずは全部ひと口ずつ”を成し遂げて、澪は小作りな顔をほにゃりと蕩けさせた。
「やっぱり甘いものって幸せになれるよねぇ」
 比較的お腹に優しく、ついでに小ぶりで揃えた品々を前にした澪の言葉に嘘はない。だって「もうちょっとなら」なんて欲まで湧いたくらいだ。
「アップルパイとフルーツタルトを一切れずつくださーい」
 というわけで、澪は勇気を出して追加オーダーをかける。それらがテーブルに運ばれて来たのは、先に配膳されていたスイーツたちを、澪が綺麗に平らげたタイミングだった。
「わあ、綺麗!」
 これまたピカピカに焼き上げられたパイとタルトに、澪のテンションが上がる。これならきっと食べ切れるに違いない――澪がそう思った時、事件は起きる。
「焼き立てぽろぽろウサ。お洋服、汚さないよう気を付けてぴょん」
「ありがとう。この服、可愛いもんね」
「とっても可愛いウサ!」
「僕には似合わないけどね」
「そんなことないピョン。とーってもお似合いウサ!」
「でも女装だし――」
「「「じょそう……?!!!!!?」」」
 ウサギの親切心にも嘘はなかった。だから澪も素直に聞けたし、つい|本音《真実》を吐露してしまえもした。
 けれどウサギ達に走った衝撃は、思わず機能停止してしまうほどだった――。

「ウサギさーん?」
 どれだけ呼んでも反応しないウサギたちにほとほと困り果てた澪は、仕方ない、とその首からかかった鍵を拝借する。
 もちろん、頼んだ分はきっちり食べ終えて。
 こうしていつもよりくちくなった分、澪はいつもより力いっぱいモンスターへ杖を振るうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
猟コレ2022の兎服でおめかしして
ご厚意にカーテシーで確りご挨拶
ごきげんよう、ウサギさん達
ご招待ありがとう

私の故郷の世界も
おもてなしや賑やかにお茶会する風習あるわ
一緒に美味しいねって
これお勧めって
お茶とお菓子抓み乍ら
お喋りにもお花を咲かせるの好きなの
良ければウサギさん達ともお茶会したいわ、とお誘い
お食事も勿論だけれど、
この国のお話も聞かせてほしいな

温かいおもてなしには
私の故郷の国のふしぎなお話でお返しを
【小さなうたごえ】開き、ささやかに歌唱も交え
動物と話す能力や相槌で
テーブルに笑顔のお花を
分かち合う、それが何より幸せ
素敵な時間をありがとう

お茶会は悪戯厳禁!
悪いコいたら白薔薇のキスで眠って頂くわ



 お招きのお礼にと、渡した兎型のバルーンを余程気に入ったのだろう。
 手持ち用の紐を、首からぶら下げた鍵に結わえているウサギ達に、自身も春色うさぎとめかしこんだ城野・いばら(白夜の魔女・f20406)は目を細める。
「ご一緒するとは思ってなかったウサ」
「ちょっとびっくりぴょん」
「そうなのね。私の故郷の世界には、おもてなしの気持ちを込めて“一緒に美味しいね”ってするのよ」
 いばらの、流れるようなカーテシーから続いたお誘いに、最初は困惑を隠しきれなかったウサギ達も、今ではすっかりお茶とお菓子を楽しんでいる。おかげでいばらのテーブルだけ、椅子が多い。
「それからね、幸せなお茶会には、お喋りに花を咲かせるものなのよ」
 まるで内緒話を打ち明けるみたいないばらの仕草と言葉に、ウサギ達は口々に“覚えた”
と囀り、自分たちのこれまでを語り出す。
 とは言え、全て『これまでずっと、誰かを守る為に待っていた』というもの。何故ならウサギ達はその為だけに造られ、遺跡の外を知らない。
 だからいばらは、新しい友人たちの為に、自分のとっておきを取り出す。
「それは何ウサ?」
「これはね、飛び出す絵本よ」
 覗き込んで来たピンク色の風船をつけたウサギへ、いばらは絵本を開いてみせる。途端、飛び出すだけでなく動き始めた兎と蝶、それから花たちに、他のウサギたちも次々に身を乗り出して来た。
 意志あるように動くウサギだが、実際はただの遺跡を守るための造り物だ。でもキラキラ輝く円らな瞳は偽物には思えなくて、いばらは【小さなうたごえ】と名付けられた物語を、歌唱を交えて紐解いてゆく。
 時折、手を休めて紅茶を口に含むと、倣ったウサギ達が揃ってカップを持ち上げ、いばらに饗されたものより明るい水色を喉に流し込む。
「美味しい?」
「ハンクス長老が用意したものだから、きっと美味しいぴょん」
 返る“物知らぬ”応えにも、いばらは悲しくならない。だってウサギ達は今、とても楽しそうだから。
(分かち合う――それが何より幸せ)
「じゃあ、続きを読むわね」

 ウサギ達は、知る。自分たちが求める“幸せ”とは、どんなものであるのかを。
 そしてそのウサギ達と一時を過ごしたいばらが“幸せ”でないはずがなく。
 レモンイエローの風船の先についた鍵で扉を開けたいばらは、|悪いコ《モンスター》達を白薔薇のくちづけで永遠の眠りへ導いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロービス・ノイシュタット
…こういう場合
長老の相変わらずさに突っ込むべきか
それとも、あの面白がりに“わかって”貰うべきか
…どう思う?

さて
並々ならぬ、幸せそうな、顔…
…あっ。これは、惚気るのも良い…ってコト!?(にこにこにこ
寧ろウサギのハートこそはち切れんばかりに語っちゃうよ!?(満面笑顔

うちの相方はねぇ
可愛いんだよ、それはもう(サラダさくさく
ちょっとやそっとで不安がったりね(魚摘んで
あー、唯一無二だなぁって(骨ごとばりぼり
お坊っちゃんが過ぎて謎な事もするけど(肉と炭水化物はうまーく避けつつ
…うん。干し肉はそろそろ自重して欲しいけど(根菜や海藻の煮付けを取り
俺の好きな物、覚えてくれたって事でさ。もー、いじらしいの何のっ!(もぐっ
偶に凛々しいなぁって思う時もあるけど…(甘味を掬い
照れ屋っつーか、人前でこういうコトあまりさせてくれないし(はいどーぞ、と、あーん
つまるところが、可愛いんだよねー(飲み物手に取り
当然(一口飲み
大好き、ってことだよ

――なぁんて
そんな事をつらつらと語ってる俺は
全世界で一番、幸せな顔してると思うよ



 |猟兵《エンドブレイカー》が絡んだ時の、ハンクス長老の極端(しかもだいたい斜め上にぶっ飛んでいる)思考は今日に始まったことではないし、イマサラ感が満載すぎる。
 逐一ツッコミを入れていけば、遠い未来で改善されるかもしれない。
 だが、無駄な労力だ。そんなことに費やしている暇があったら、別のことをやった方が、人生幾らか実りが多くなるだろう。
 それが対ハンクス長老くらい、馬鹿馬鹿しいことであったとしても、だ。
(――いや、馬鹿馬鹿しくはないかな?)
 すーぐ悪ノリしたがる誰かのイイ笑顔を脳裏に思い描く男の顔もまた、素晴らしく良い笑顔だ。
 言うではないか、目には目を、とか、ノリにはノリを、とか、ネタにはネタを、とか。
(さて、と。あの面白がりには、いやってほど“わかって”貰わないとね)
 斯くしてクロービス・ノイシュタット(魔法剣士・f39096)による、ネタにはネタをの逆襲撃が今、幕を開ける――。

「うちの相方はねぇ」
 さくさくさく。
 防御機構ウサギを前に、クロービスはキャベツの外側の硬い葉――ではなく、彩も瑞々しいサラダを食む。
 さすがはハンクス長老のチョイスだ。葉物野菜だというのに歯切れの良さは抜群で、なおかつ味が濃い。
「ほんっと可愛いんだよ。どこが可愛いって? これ多分、有機野菜ってやつだ。ちょっとの虫食いくらい、どうってことないもんね――そりゃあ、全部って答えるのが一番早いけどさぁ……」
 不意の脈絡途絶に動じるウサギ達はいない。なんかこう、ヤバめの|お客様《猟兵》だと察しているのだ。THE☆触らぬ神に祟りなし。然して賢いウサギ達は綺麗に空になったサラダボウルを片付けると、数日干した上で程よく炙った小魚が盛られた鉢皿をクロービスの前へ置く。
(ひょっとして、カルシウム不足ウサか?)
(にしてはご機嫌ぴょん)
「そうだね、真っ先にあげるのは。すーぐ不安がっちゃうとこかな。本当、ちょっとやそっとのことなのことなのに」
 ウサギ達が目と目で何を語らってかなぞ露も知らず(知ってても気にもしないと思う)、クロービスは摘まんだ小魚をぽりぽり頭からいく。
「せっかくだから実例聞いておく? 最近だと、僕の仕事の帰りがいつもより遅かったことかな。七日予定だった遠征仕事が、十日かかっただけなんだけどね!」
「それは普通に不安になるピョン」
「え? なんか言った??」
「何も言ってないウサ!!」
 骨も躊躇わずばりぼり噛み砕く(小魚だからね!)クロービスに、ウサギがちょっぴり縮み上がるが、そんなことは気にも留めず疑惑の主は「あーもー、ほんっと唯一無二って感じなんだよねぇ」と相好を崩しまくる。

 防御機構ウサギ達が欲しているのは、人々の“並々ならぬ”“幸せそう”な顔だ。
 腹いっぱいになって、というのは|ハンクス長老《問題児》があとから付け加えたものであり、スルーしたところで、依頼達成の障りになることはナイ。
 というわけで、クロービス。惚気ることにした。だって、惚気顔=幸せ顔だ。むしろ腹がくちくなって得られる幸福より、何千倍何万倍何億倍何兆倍何京倍も惚気が効果的だとクロービスは判断したのだ。
 緩み切っただらしない顔を、世間様に晒すことになったとしてもだ(補記。この男、相方以外の評価は割とどうでもいいタイプの人間だ)!

「お坊ちゃんが過ぎて謎なこともするけどー」
「特に無駄にお高い肉で干し肉作るのは、そろそろ自重して欲しいかなぁ。干し肉なのに胃にもたれるとか、おかしくない?? あと根本的に日持ちしにくいし~」
 無造作にオーダーしているようで、クロービスが肉と炭水化物類を頼むことはない。
(すぐお腹に溜まるものは避けているピョン。頭脳プレイぴょん)
(えっ、年齢的にかろりー気にしてるだけかと思ったぴょん!)
「けどねけどねっ、ちゃんと俺の好きな物、覚えてくれたった事なんだよねっ。まあ、一番好きなのは彼自身だけどっ。でもでも、好物を覚えてくれてるって、いじらしくない? あ、次は根菜と海藻の煮付けをお願いできるかな!」
(やっぱり加齢じゃないぴょんか???)
(確かにお煮付けは渋い選択ウサ……)
 クロービスとウサギ達の思惑が、複雑に交錯する。
 格好良く書いたが、とどのつまりがカオスだ。いろいろと。なれどこのウサギ達、“幸せ”の真の意味を、つい先ほど真の意味で知ったばかり。中てられやすく、絆されやすい。
「偶に凛々しいなぁって思う時もあるけど……」
 偶にかよ!!! という天の声は一先ず封印し、クロービスはちょうど運ばれて来た氷菓子を受け取り、ちょいちょいとウサギ達を手招く。
「何か御用ウサ?」
「追加オーダーなら幾らでも承るぴょん?」
 そうしてずらりと並んだウサギ達を眺め、クロービスはサクリと氷菓子を匙で掬った。
「人前でこういうコトあまりさせてくれない照れ屋なとこも、可愛くて仕方ないんだ」
 はい、あーん。
 差し出された匙に、ウサギ達は一様に目を丸くする。しかし|無言の圧《ゼロ円スマイル》に、ウサギ達はおずと口を開け、はくりと氷菓子を食み――その染みる甘さに、まるで酔っ払いのような千鳥足を踏む。
 否、正しくウサギ達は酔っ払いだ。酒ではなく、クロービスの惚気に酔った(悪酔い待ったなし)。
「つまり。何をしたって可愛いってコト」
 お裾分けの甘味にトロトロになったウサギ達を目に、クロービスはライム色のソーダを一口、飲む。
「当然――」
 口の中に広がる甘酸っぱさは、年甲斐もなく『初恋の味かな』なんて感想を連れて来る。児戯めく定説など、クロービスにとってどうでもいいことだ――でも。
「――大好き、ってことだよ」
 |惚気《愛》を語るには最高の〆かな、と。クロービスはグラスを一気に干した。

 この世に、『世界で一番、俺が幸せ』って顔に書かれて、いったい誰が“幸せ”を疑えるだろう。
 若干『このままだと二日酔いになってしまうウサ!』というウサギ達の自己防衛本能が働いた気がしないでもないが、とにもかくにもクロービスはモンスター達が封じられた小部屋の鍵を手に入れて、食後の運動よろしくさっくり殲滅させたのだった。おあとがよろしいようで?

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月10日


挿絵イラスト