夏のエクストララージセット
2023年夏、ヒーローズアースのアメリカにあるビーチ。そこにバーガーショップ『マイティバーガー』の新店舗がオープンすることとなっていた。
元々はごく狭い地域に飲み展開するローカルチェーンなのだが、そこに所属するヒーロー社員が幾度か猟兵に協力し図らずもメディア露出が増えた結果知名度が向上、本来の地元から離れた場所にも店舗を出すに至ったのだ。
そしてその猟兵にもオープニングイベントへの協力が依頼された。その話を受けることとなった『豊穣の使徒』の一団は、オープン直前の今日自分たちの領域にあるそれなりの広さのある真っ白な施設、その地下にある研究所で最終確認を行っていた。
「とても便利なものが入手できましたのでぇ」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が用意したのは、『外見上や運動時の体型を抑えるお守り』と『桁違いの伸縮性を持ち、体型が変化しても破損しない生地』。そしてそれによって作られた下着と水着であった。
元々これの着用実験を行おうとしていた所、マイティバーガーから依頼を受けたグリモア猟兵ミルケン・ピーチのボディの一人アカリ・ゴールドから話を回された彼女は、丁度いい機会と仲間と他のボディを誘い衣装合わせを行うこととしたのだ。
まずは下着の実験ということで、この場にいる全員がそれを着用した異なる色の下着姿になっている。
一方水着は用意されたものは試作品ということで、色こそ多種あるがデザインは飾り気なくシンプルなもので統一されていた。
「これならば必要なものは最低限隠せますわね」
水着を手に取り豊雛院・叶葉(豊饒の使徒・叶・f05905)が言う。なるほど確かにこの水着のサイズだと隠せるのは最低限、胸はビキニの上下左右から全て肉がこぼれてしまうだろう。だがこれは決して水着が小さいのではない。
「叶葉さんは140(U:70)、61、120でるこるさんは147(U:70)、62、124で作ったんだっけ?」
「私達も152(U:70)、62、121で作ったのですが、やっぱり少し伸ばされちゃってます」
それぞれ赤と青の水着を下着の上から胸に当てて鞠丘・麻陽(豊饒の使徒・陽・f13598)と鞠丘・月麻(豊饒の使徒・月・f13599)。双子である二人は採寸時のサイズも同じなら、そこから僅かな間で増量した分も全く同じらしく、やはり同じ量の肉を水着から溢れさせていた。
彼女たち豊穣の使徒にとっては、衣装の採寸から完成までの時間は肉を一回り以上成長させるには十分すぎるもの。既製品はもちろん、特注品ですら間に合わなくなることがしょっちゅうであった。
「ビキニならお腹がでてもサイズが関係ないのもいいでぇすね。ねぇ、桃姫さん」
「なんで私に振るんですか!」
164(U:95)、114、146で採寸した黒のビキニを手に取ったリュニエ・グラトネリーア(豊饒の使徒・饗・f36929)が自分の腹をさすりながら言う。そのウェストは自己申告から軽く10センチ以上は巨大化しているが、果たしてそれは中に食事等が詰まった一時的なものなのか否か。
そして話を振られたミルケン・ピーチのボディの一人花園・桃姫も、申告サイズに合わせたはずの下着から明らかに過剰に肉を溢れさせ、腹も張りださせていた。
「桃姫さんは138、65、130でお作りしたはずですが……」
「昨日140超えたって言ってたっすね。腹の方は多分もっと……」
艶守・娃羽(豊饒の使徒・娃・f22781)とアカリ・ゴールドがそれを見て言う。ちなみにサイズは娃羽が121(U:70)、58、114でアカリが124、61、101だ。
ヒーローズアース出身のこの二人は特に今回の依頼や研究の中心にもなっていた二人だ。最もそれでもサイズが合わなくなってしまったのには理由があり。
「やっぱり採寸後に大食いするのはまずかったかなぁ」
「でも
実験は
したかったんだよぉ」
華表・愛彩(豊饒の使徒・華・f39249)と甘露島・てこの(豊饒の使徒・甘・f24503)。二人とも例によって125:(U:70)、59、117と134(U:75)、68、129という採寸時のサイズからは幾分上昇した肉が水着から溢れている。
二人が言っているのは少し前、アポカリプスヘルで無限に料理を出す装置の稼働実験をした時の事。併用したユーベルコードの制限時間いっぱいまで食べ続けたそのカロリーは当然の如く肉となって使徒たちと桃姫の肉体に蓄積され、その結果として採寸通りに作られた水着を引き延ばすことになってしまったのである。
「いいなー、ぺしぇもケーキ食べたかったー」
羨ましそうにそう言うのはミルケンボディ最後の一人である超乳幼女、花園・ぺしぇ。彼女は年齢的なものもあり実数は115、52、112とこの中でも最小クラスだが、そもそも身長が120㎝もないため相対的な大きさは相当なものだ。
「ぺしぇ! あなたは若いからそんなこと言えるんです! だいたいいつも自分で動かず恐竜乗ったり超能力使ったりそのくせ……」
「あの、小さい子なのであまり……」
絢潟・瑶暖(豊饒の使徒・瑶・f36018)がぺしぇを後ろから引き寄せつつ、大人げなくキレ散らす桃姫を宥める。身長差の関係で137(U:70)、61、122から幾分増えた乳がちょうどぺしぇの頭の上に乗る形になっているが、ぺしぇは自分の経験上乳は色んな所に乗せるものと思っているのか気にしていないようだ。
「まーでも先輩肥やすのはほどほどにしてほしいっす。あたしが手伝わされるんで」
「うぅん、一応節度は保つよう心掛けているのですが、桃姫さんの勢いが止まらないようで……」
「何ですか、私が悪いんですか!」
実際一度食べ始めると周りも後先も見えなくなるので、その辺りの自制心は身に着けるべきと言えるかもしれない。
だが程度の差こそあれ、アカリとぺしぇ以外の全員が全てのサイズがほんの少し前の採寸から少ないものでも数cm、大きいものは10cm以上巨大化しているのは紛れもない事実。
「でも桃姫さんは特に凄いと思いますの。吸収率とか元のサイズとか」
その中でも流石に最高値の者には負けるが、一部の使徒を上回る桃姫のサイズに瑶暖が感心の声を上げる。
「それ褒めてるんですか……まあこの下着付ければ見た目は何とかなるのでいいですけど……」
認識欺瞞状態の自分の胸を撫でる桃姫。彼女に限らず、ここにいる下着姿の者たちは外見上は実数に比べれば大分小さいサイズに見えるようになっていた。
「うーん、別に変わんないよー?」
「それは流石にズルだからダメ」
目を凝らして全員の胸を見て言うぺしぇの頭を藍彩が抑える。流石に本気で超能力やユーベルコードをぶつけられれば見破られてしまうようだがそれは仕方ない。
まあとにかくそんな超サイズの一団だが、実はこの場にいるのは彼女たちだけではない。
「それにしても、他にもお仲間がいたんですね」
総出で宥められ落ち着いた桃姫が改めて周りを見回せば、今回この水着と下着の研究開発に携わった使徒の仲間たちが後片付けや別の研究をしている姿が目に入る。
「ええ。空間拡大系の術を使い、外見より広いスペースを確保してありますので、その世界にいなかったり合わなそうな種族の方も快適に過ごせます」
ここは娃羽の拠点であるヒーローズアースであり、神や強化人間はもちろんそれ以外の特殊な種族も周囲には多数見受けられた。
「依頼で色々お世話になってるっすけど、こーゆー舞台裏みたいなの見るのは初めてっす」
「恐竜さんいるー?」
ミルケンやその仲間の依頼に幾度となく応えてきたるこる達であったが、その能力の裏側を見るのは初めてとアカリも感心した様子だ。一方依頼時と違いミルケンが制御していないためか、ぺしぇはさっさと自分の興味あるものを探しに行ってしまった。
そんな雑談交じりの試着会であったが、いつまでも舞台裏に引っ込んでいるわけにはいかない。
「さて、それではそろそろ参りましょうか」
叶葉の号令の下、一同は水着に着替え使徒の拠点を出発。その巨大な体を揺らし目的のビーチへと移動するのであった。
「皆さん、お待ちしてました! 今回はご協力ありがとうござい、ま……」
ビーチにて、マイティバーガー店員であり同店所属のヒーロー『マイティガール』ことメリンダ・マーズが使徒たちを明るい笑顔で出迎える。が、その笑顔も一同の体型を見て一気に驚愕に変わる。
「はい、お久しぶりですぅ」
その様子も意に介さず、彼女と面識あるるこるがまず挨拶。それに続き使徒たちが次々と自己紹介すると、メリンダも慌てて元の調子に戻る。
「え、あ……はい、よろしくお願いします! それではさっそく、マイティバーガー夏季限定ビーチ店、オープンです!」
メリンダの声に合わせ、店のテープが切られ扉が開かれた。
「うおぉぉぉ、なんだあれ!?」
「す、すごい……」
開店と同時に店内に入ってくる客の一団。そして一斉に上がる声。その目はスタッフと一緒に客を出迎えた豊穣の使徒たちに釘付けだ。
「やっぱり凄いんですかね……」
「そのようですねぇ」
一般人たちの反応に改めて自分の体を自覚する黄色ビキニの桃姫と動じない白ビキニのるこる。先に着ていた下着と同様、水着もカップ部分に余裕で人の頭部が入る大きさ。ただ、下着と違い水着の方は認識を誤魔化す効果がなく、着用者の肉体の本当のサイズが明らかになってしまう。つまり彼女たちの圧巻の肉体は今は誤魔化しなしで衆目に曝されているわけなのだ。動揺を一瞬で抑えたメリンダの方を褒めるべきだろう。
「この度はご来店くださいまして誠に感謝いたします。どうぞごゆるりとお楽しみいただきますよう」
叶葉が客の一人一人に丁寧にあいさつしていく。チェーンのバーガーショップとしてはやや過剰すぎる丁寧さだが、異国の文化に疎い彼女はその辺りには気づかないし、目の前で揺れる(相対的には)小さな灰色の布から大量に零れた肉果実に圧倒され客の方も男女問わずそこを凝視するしかない状況だ。
「マイティバーガー本日開店、です」
「来てくれると嬉しいんだよ」
店から少し離れた場所では、麻陽と月麻が客引きを行っていた。紅白のビキニが継いで動けばそれに連動して超巨大肉も左右対称に揺れ動く。その大きさ故に遠方からも視認性は十分であり、時に左右、時に上下に踊る150センチオーバーが次々と客を誘う。
「ぺしぇもやるー!」
さらに二人の乳の下に潜り、橙色の水着を幼い体に付けたぺしぇが両手を上に突きあげた。その手に押されるように二人の乳が持ち上がるが、それはぺしぇの手の長さを越えて二人の顔の上まで持ちあがってしまう。
さらにはぺしぇの乳までが手も触れていないのに持ち上がり、急に降りてきた二人の胸とぶち当たってばちんと音を立てる。
「あうっ!?」
思わず声を上げてしまう二人だが、ぺしぇは全く悪気はなさげだ。
「拍手よりもこっちの方が音がおっきいからきっと皆来てくれるよ!」
本人的には呼び込みがやたら手を叩いているのを自分なりに真似しているつもりなのだろう。用いるのが念力で動かした乳という時点でそれを他人が察せるかどうかは甚だ疑問な部分ではあるのだが。
「確かに、中で皆さんが行っていることを考えれば、大きさをアピールするのはいいかも、です」
「それじゃぺしぇちゃん、いっしょに頑張るんだよ」
とはいえ二人も大きい事でのアピールは悪くないと感じたらしい。二人で息を合わせ、またぺしぇのやるように動かせもしながら、圧巻の呼び込みを続けるのであった。
そしてそれに誘われ店に入った客たちが見たものは。
「色々メニューがあるのでぇす。バーガー店と偽りつつ色んな商品を売りつけるワルい商法なのでぇす」
メニューにあるものを連結したテーブルの上に一揃い乗せ、それを食べるリュニエの姿であった。
マイティバーガーの最大の特徴、それはバーガーショップだということが忘れられるほどに豊富すぎるメニューの種類。その辺りのテコ入れのため猟兵を頼ったのがこの店と猟兵の最初の接点だったのだが、その後も多数あるメニューを減らすようなことはしなかったせいかバーガー以外の人気が衰えることは結局なく、純粋にバーガーの売り上げが増加しただけという嬉しいのか悲しいのか分からない結果となっていたようだ。ちなみにもちろんデビキン民であるリュニエは褒めるつもりでこう言っている。
そして一挙に並べられたその料理を、凄まじい勢いで食べ尽くしていくリュニエ。
「ビーフパティにポークリブ、チキンステーキ……バーガーに挟むだけでなくビーフステーキやフライドチキンもあって実に素晴らしいのでぇす」
彼女らしく肉類を主体に食べ進めていくが、そこに割り込んでくるのが桃色ビキニのてこの。
「けどそれだけじゃないのがこのお店なんだよぉ。アイスクリームにパフェにワッフル、フラッペ、そしてもちろんケーキもたくさん。専門店でもここまでの品ぞろえはなかなかないんだよぉ」
彼女が主に食べているのは甘味系メニュー。こちらもかなり数の種類があり、ケーキだけでも普通に思いつくような種類のものは大体揃っている。そしてそれはもちろんてこのの腹の中に消えていき、そしてそれを一品ずつ丁寧にレビューしていく。
「あの、もしよろしければご注文をお伺いしますの」
「え!? え、じゃあ……メロン……ソーダを二つ……」
その間にも瑶暖はウェイトレス役として客に追加注文がないか聞いて回る。眼前で行われるレビュー付き大食いショーに合わせるような形で追加注文を誘うちょっとした商売テクだが、その注文が瑶暖の緑のビキニ付きの胸を見ながら行われたのは恐らくショーのせいだけではあるまい。
「以前の方々には無駄に目立つことを控えるように言いましたが……こちらの方はそうでもございませんのね?」
肉メニューとスイーツメニューが一通り消えたところで、娃羽が思い出すのは昨年の夏にビーチで出会ったメリンダのチームメイトでもある別のヒーロー。その時は二人が自身の知名度を過小評価した結果から彼らを守るように動く必要があったが、元々ヒーローネームを持っており店の広告塔も兼ねているメリンダにはその辺りは必要ない。
「はい、そうですね」
「分かりました、それでは始めましょう。メリンダさん、よろしくお願いします」
娃羽にそう言われ、メリンダがマイクを持って大食いショーの前に出た。
「皆様、本日はマイティバーガービーチ店にお越しくださいまして誠にありがとうございます! わたくしマイティバーガーイーストアベニュー店スタッフのメリンダ・マーズ。そしてまたの名を!」
スタッフ用のエプロンが脱ぎ捨てられて宙に舞う。
「当社所属ヒーロー、マイティガールでございます!」
元々ビキニスタイルのコスチュームをさらに水着風に高露出にした海用ヒーロー衣装を露にするメリンダ。その派手なアピールと豊満な姿に歓声が上がる。
「当店には私の名前を冠したバーガーもメニューにございます。ですがそれだけでなく!」
自分に注目を預けるように胸を張るメリンダ。
「当店で以前猟兵コラボフェアを開催したこと、ご存知の方はおられますでしょうか。今回何と、特別にそのメニューを限定復刻! さらには考案者の猟兵の方をゲストにお招きいたしました!」
その胸を揺らしつつ、さっとメリンダがその場をどく。
「
XXXライスバーガー、そして考案者の夢ヶ枝・るこるさんです!」
メリンダの声と共に白いビキニのるこるが認識欺瞞なしでの巨大乳を揺らしながら現れ、その後ろからは桃姫と藍色ビキニの愛彩がアシスタント役として超巨大ライスバーガーの乗った台車を押しながら現れた。
「で、でけぇ……」
「ヒーローも凄いけど、猟兵ってやっぱもっとすごいんだ……」
理論上どこまでも大きくできるバーガーと、メリンダも一応三桁レベルはあるのだがそれが霞むくらいの胸。
「るこるさんこんな活動もしてたんだね」
「名前までは決めてなかったのですがぁ……」
何かと過去の活動について勉強熱心な愛彩がやはり感心したように呟く。るこるのいう通り名前は当時自分で決めなかったため店側が勝手に決めてしまったようだが、それはそれとしてその時にやったようにケーキを切り分けるようにライスバーガーを切り分けるるこる。
「このように、ご自分に合わせた量をとれるようにしております。どうぞお召し上がりくださいませぇ」
そう言ってリュニエやてこの、愛彩に桃姫と周囲の仲間たちにそれぞれに合った量を渡していく。
「一応UC使ってはいるけど……」
「前みたいな重ね掛けはしてないからこんなものでぇすね」
なお『こんなもの』程度の量でも(UC不使用のはずの桃姫を含め)並のバーガー数個分はゆうにある。
「あれ、るこるさん、ご自分のは……」
「大丈夫です、こちらにありますのでぇ」
そして数カット切られた残りのホールは全てるこる用。サイズだけでなくそれを喰らう量もまた猟兵は凄まじいのだと改めて教えんばかりに、そのライスバーガーは瞬く間に消滅していった。
「ご安心くださいませ。足すだけでなく減量してつくることもできます故。かくいう私も食べる量にはあまり自信がなく……」
呆然とステージ側の集団を見る客に、叶葉がそう言い添える。その手には確かに前でショーを行う面々の者と比べれば大分少ないライスバーガーが。だがそれはあくまで相対的に少ないだけではあり、間近でそれを食べるのを見せつけられればその『肉量』の圧巻さにやはり一般客は圧倒されるばかりだ。
「あ、ライスとかソイソース苦手っすか? ミートラザニアもお勧めっすよ」
そして別の客席には金色ビキニのアカリが回る。彼女はアメリカ人だが各世界を回っているので比較的他国の料理にもなじみがあるものの、それはそれとして元々自分が好きなものはある。
ここの他の面々より乳尻サイズこそ若干控えめなものの、体の太さが筋肉によるものという見た目の差異もあってか別メニューの誘導というのも上手くいっているようだ。
とはいえ結局数キロのパスタを軽々持ち上げて大食いショー中のメンバーや各客席に持っていくその姿はそれはそれで注目を集めてしまうものに放ったのだが。
やがて、外で客引きをしていた麻陽と月麻、ぺしぇも店内に入ってくる。
「交代するんだよ」
「せっかくだからお食事もさせていただきたいですの」
「ぺしぇもケーキ食べるー!」
使徒の中でも特大のサイズと幼い顔立ちの二人と、本当に幼い一人の登場にまた場はざわつく。そして三人はリュニエ、てこのに代わってショー用のテーブルにつき、それぞれ思い思いのものを食べだした。
「多国籍なのはありがたいんだよ」
「自分では思いつかない組み合わせの味があるのもいいですね」
「青いケーキ? 変なのー。でもおいしーからいーや」
本場とは若干ずれていたり、派手さを求めて見た目を犠牲にしたようなアメリカンスタイルの料理を戴く三人。だがそこはマイティバーガー、アメリカの悪いイメージを担うなんちゃって外国料理や見た目全振りではなく、あえてフレーバーを工夫したり、味を落とさないまま意図的に奇抜な見た目にしたものが用意されており、ケーキに埋もれる幼女やどこかエキゾチックな雰囲気を持つ童顔超乳少女の姿と合わせまた今までとは別の層へのアピールともなっていた。
「何かやっぱり頑張る方向間違えてるっすねここ……」
「何でもいいです、美味しいから!」
依頼で直接予知した当人であるアカリはやや呆れ気味だが、桃姫は食べられさえすればそんなのは関係ない。なお彼女はさっきから接客などは一切せずひたすら食べている。食べる以外でやったことと言えば精々るこるの後ろから超巨大ライスバーガーを押して歩いてきたくらいだ。
ちなみに一緒にその役を担った愛彩は、日ごろから心がけて行っている猟兵としての勉強の一環として、一般ヒーローの意見をメリンダから聞いていた。
「私なんかの意見でお役に立てましたか?」
「もちろん! あ、それと、最後に聞きたいんだけど……」
その聞き取りの最後に愛彩が尋ねるのは、初めて行った世界でしばしばぶつける質問。
「メリンダさんも中々のサイズだけど、ヒーローの人ってやっぱりそういう人が多いの?」
「え!? いえ、全然そんなことないですよ!? ていうか私だって皆さんに比べれば全然小さいですし!」
顔を赤くしつつ否定するメリンダ。彼女と愛彩だって20cmほどの差はあるし、さらに愛彩以外は面識のある彼女の仲間に至ってはまさに大平原、あるいは波一つ立たない凪の海と言えるものですらある。それを説明され、愛彩はまた知らぬ世界についての知識を一つ蓄えたのであった。
「それにしても、注文取りというのも大変ですの」
そして先からずっと接客に追われている瑶暖。彼女はカクリヨファンタズム出身の『寝肥り』という妖怪なだけあり、せわしなく動くのは決して得意とは言えなかった。どうしても動き方に無駄が出てしまい、それは体の余分な動きとして外見的にも現れてしまった。
「お待たせいたしました。何がよろしいですの?」
「その……このスイカ大玉が……」
呼ばれた席に急いで向かうが、どうしてもその時の動きで大きく揺れた肉がエネルギーを余計に持っていってしまう。その為席についた時にはやや息が上がり、疲れたように前傾気味な姿勢をとらざるを得なかった。
そんな姿勢をとってしまえばその勢いで『錘』が無暗に揺れてしまうわけだが、接客については素人ということもありその状態、そして自分にはやたらとスイカやメロン関係のものばかり注文されているという事実にも彼女は気づけないのであった。
こうして、マイティバーガー新店舗最初の一日は誰にとっても嵐のように過ぎ去っていった。
礼を言った上で後片付けに走るメリンダを残し、一同は夜のビーチに出る。その中で、てこのが思い出すのは今日一日の桃姫の行動。
「桃姫さん、ずっと食べてばっかりだったねぇ」
客前でも堂々と食べているばかりだった桃姫。まあてこのやリュニエもショーの席を退いた後も別の場所で好きなものを好きなように食べていたわけではあるが、彼女たちは単一とはいえUCを使っていたので量が多いのはある程度仕方ないことだ。
これはまた自分が悪いのに落ち込むパターン……それを察したか、るこるが何かを差し出した。
「今回もお手伝いいただきましたし、良ければこちらでも……」
渡したのは桃姫が付けていた水着と同じ黄色いお守り。さらにアカリとぺしぇにもそれぞれの水着と同色のものを渡す。
「あ、ありがとうございます……水着と合わせてるんですね」
「えぇ、こちらも」
そう言うと他の使徒たちも同じような紋章を水着の中からとりだした。その瞬間、桃姫の顔から血の気が引く。
「ぺしぇ、アカリ、だめっ!」
「ふえ?」
「え?」
桃姫の制止も聞かず、二人は水着と乳の間にそれをしまいこんでしまっていた。そしてその瞬間ビーチを揺るがす轟音が響く。
「な、何ですか!?」
その音に飛び出してきたメリンダが目にしたもの。それはビーチに転がる都合24の巨大肉玉であった。
「な、なんなんすかこれ!?」
「えぇ、こちらは『超々乳の紋章』と言いまして、使用者数に応じ乗算的に能力と胸のサイズを増幅するものでしてぇ」
それはるこるが別世界で手に入れてきた紋章。確かに武器にもなるものではあるのだが、その力と引き換えに起きる変化はまさに名前の通りのもので。
「今回は……今回はこうならずに済むと思ったのに!」
「むー、これだと恐竜さんやピンクケルベロスに乗れないよぉ」
「そういう問題じゃねーっす……」
結局またこうなったことを嘆く桃姫と、この状況に慣れていないため困惑する他二人。そして使徒たちはこの紋章を水着に入れた時点でこうなるのは予測していたか、さして慌てたような様子はない。
「お騒がせしておりますわ。大事ではございませんのでご安心を」
落ち着いた口調で娃羽が言うが、メリンダもやはり色々混乱している。
「えーと……これは明日使えばいいんですか?」
「使わないでください!」
そんな頓珍漢なやりとりも、使徒たちにとっては単なる笑いごと。何しろ大きくなったのは乳だけなのだから、今までよりも程度にすれば小規模な方だ。
「この程度なら特別な対処もいらないでしょう」
落ち着いて夜の海風を乳一杯に受けならが叶葉が言う。
一般ヒーローにとってエクストリームな世界が猟兵の日常。こんな日もまた、猟兵にとっては夏休みの一日なのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴