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エンドブレイカーの戦い⑧〜甘味処『天人の蜜』

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #霊峰天舞アマツカグラ

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「Miel de Ange、一日奈落支店やらせていただきます!」
 (実)年齢を感じさせない朗々とした声で、クレープ・シュゼット(蜂蜜王子・f38942)はそんなことを言い放った。
「ここにはね、此華咲夜若津姫がいたんだ。人間の魔女でね、昔この世界で戦いがあった時も……棘に操られて戦いになったこともあったけど、助けにもなってくれた」
 俺の知り合いもね、瀕死のところを助けて貰ったんだよと、しみじみ呟きを落とすクレープ。
「彼女自身はもう亡くなってしまったけれど、彼女の想いはここに遺ってる。彼女にとって、俺達は等しく彼女の可愛い|子供《ぼうや》達だ。その慈愛は今もこの奈落に満たされてる」
 そしてその慈愛こそが、猟兵達に何らかの加護を齎すと。その加護は、この世界での今後の戦いに有利に働くだろうと。
 グリモアを通じて、予知がなされたと言う。
「と言うわけで俺達は元気にやってますってことを、この奈落で此華咲夜若津姫に伝えようってことになったんだ。その方法こそが皆で宴を楽しむこと!」
 集った猟兵達が、楽しく飲み食いして、一芸を披露して、盛り上がれば盛り上がるほど、その生命の力強さを此華咲夜若津姫に届けることが出来るだろうと。
 とは言え。
「もう色んなところで盛大にやる準備はされてるからねー。俺はまあ、箸休めということで?」
 一日限定の和菓子屋を開くつもりなのだと、クレープは言うのだ。
「|お品書き《メニュー》は後で近くに掲示しておくから、好きなのを選んで食べていってね。マンネリ化してきた時の為に、亨次くんが鍋も用意してくれるみたいだし?」
 それとね、とクレープは目配せひとつして。
「和菓子作るの得意って人がいたら、逆に持ち込みして振る舞ってくれても全然オッケー! 俺も勉強したいし、自信作があったら食べさせて欲しいな」
 兎に角楽しんだもの勝ちだと、クレープは笑って。
「あ、店って言ってもお金取るつもりはないから安心してね。お代は皆の笑顔! 楽しんでくれること! それだけです!」
 甘味を楽しみ、英気を養いながら、奈落へと広げるのだ。
 今を生きる、生命の賑わいを!


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあです。
 和菓子たべるよ!

 戦争シナリオのため、今回は1章構成です。

 第1章:日常『奈落大宴会』

 メニュー(鍋含む)は断章にて。
 作る側に回りたい! という方の持ち込みも大歓迎。
 拙宅グリモア猟兵も、お声掛けいただければご一緒させていただきます。
 (クレープ、亨次以外にも全員います)

 断章投稿日(公開の当日か翌日に投稿予定)の翌日一日のみの受付とさせていただきますが。
 その間にいただいたプレイングは極力採用予定です(全採用をお約束は出来ません。ご了承ください)
 詳細は決定しましたらタグにて告知させていただきます。
 【公開後すぐに受付】【ではない】のでご注意ください。受付期間の関係上、【受付開始前の通常プレイング】は【確実に流れます】。

 それでは、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『奈落大宴会』

POW   :    豪勢な宴会料理を楽しむ

SPD   :    宴会芸や話芸で場を盛り上げる

WIZ   :    自慢の料理や飲み物を持ち込み、給仕する

イラスト:麦白子

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 誘いを受けて奈落のその一角へと足を踏み入れれば。
 ラタン製のテーブルにガーデンソファーが並べられ、和風オープンカフェのような佇まい。テーブル席ではなくなるが、ソファーは二人から三人まで並んで掛けられるタイプのものもあるようだ。
 そして肝心の和菓子であるが、販売――お代は楽しむこと、とお品書き看板の上にでかでかと書いてある――スペースへと足を運べば既に並びつつあった。

 まずは定番。
 羊羹は秋の味覚をふんだんに用いた三種類。
 即ち、芋羊羹、栗羊羹、柿羊羹である。
 栗の形に模られた蒸栗色は栗きんとんだ。
 おはぎは食感の楽しい定番の粒あんで。
 但しこしあん派閥に考慮してか、ぼた餅も用意されている。
 地下空間故に月が見えることはないが、月見団子もある。味変、もしくはそのままだと味気ないという人の為にみたらし醤油も用意されている様子。

 そして練り切りが主だが創作和菓子も。
 『秋華』は小さい練り切りに大輪のダリアのブーケが繊細かつ大胆に表現された一品。赤、橙、黄の花はそれぞれに林檎、桃、柚子の風味づけがされた練り切りだ。
 『木犀』はその名の通り、金木犀を模して作られたもので、きつすぎない程度に仄かに金木犀の甘い香りもする。練り切りにはアプリコットの風味がつけられている。
 『月兎』も丸くころんとした桃色の兎は苺の風味づけがされた練り切りだが、その兎を黄色い三日月の寒天ゼリーが包んでいる。これは蜂蜜柚子寒天のようだ。
 『仔熊』は愛らしくもとぼけた熊の顔で、子供や可愛いもの好きの人にお勧めだと言う。味は練り切りにカカオを使ってチョコレート風味にしているとのこと。

 そして勿論、飲み物も欠かせない。
 用意されているのは全てアマツカグラのお茶――所謂日本茶だが、お菓子によってお勧めがあると言う。
 羊羹の控えめな小豆と、素朴な秋の味覚の味わいに合うのは爽やかな香りの煎茶。
 食べ応えのある餅と餡の甘みの組み合わせのおはぎにぼた餅は、香ばしく後味もさっぱりした焙じ茶。
 アマツカグラ伝統の上品な甘さの練り切りは、同じく伝統の優しい苦味のある抹茶。
 月見団子は基本的には煎茶で行けるが、みたらし団子にするなら焙じ茶もお勧めなのだとか。

 さて、こうなれば甘味ばかりで飽きてしまう者も出てくるだろう。
 そんな時は、箸休め用の鍋が用意されている。
 鮭と様々な種類の茸を溢れんばかりに使った鍋は、塩バターベースとレモン醤油ベースの二種類。
 どちらでも好みの味を選んでいいし、おかわりも自由だ。

 と、いった形で開かれた一日だけのパティスリー奈落支店。
 秋の始まりに、皆でわいわいと和菓子を楽しむのはどうだろうか。
シモーヌ・イルネージュ
ははははははっ。
菓子だ! 和菓子だ!
いろいろあるぞ、すごい!

これ本当にもらっていいのか。食べていいのか。
感激だ! ありがとう!!

ここはもちろん全種類制覇だね。
和菓子は甘さ控えめだから、しつこくないね。
いくらでも食べられそうだけど……さすがに無くなりそうだから、そこは控えておこう。
足りない分は鍋で補おう。
はぁ~力出るわ。
これならエリクシルをまだまだボコれるよ。




 ずらりと並ぶ和菓子の数々を前にして、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)の双眸はきらきらと輝いていた。
「ははははははっ。菓子だ! 和菓子だ!」
 ここは楽園だろうか。食べられるものは何でも食べるが、特に甘味を好むシモーヌにとっては楽園に間違いなかった。
「いろいろあるぞ、すごい! これ本当にもらっていいのか。食べていいのか」
 夢じゃないよな、と何度も何度も確認して。
 現実であると実感が持てれば。
「感激だ! ありがとう!!」
 主催者に。
 そして此華咲夜若津姫に。
 さて、各方面に感謝の意を示したところで早速実食。
(「ここはもちろん全種類制覇だね」)
 定番は外せないし、創作も是非味わってみなければ。
 他の猟兵が持ち込んだと言う和菓子も気になるところ。
 宣言通りに全種類を確保しつつ、手始めに芋羊羹を一口ぱくり。素朴で優しい甘みが口の中でほろりと解ける。
 んん、と思わず感極まって、後味の残る頬に手を当てた。
「和菓子は甘さ控えめだから、しつこくないね。これなら幾らでも食べられそう、だけど……」
 テーブルに並べた和菓子を眺める。
 どれも美味しそうで、尚且つ食べやすい。
 だからこそ、ここまでと決めなければ歯止めが聞かなくなりそうで。
(「さすがに無くなりそうだから、そこは控えておこう」)
 際限なく食べていいよと言われれば、本当に一人で全て食べ切ってしまう自信があったので。
 もう一セットだけ……と全種類各二つずつ、と上限を己に課しつつも。
「足りない分は後で鍋で補おう」
 勿論、二種類共いただきます!
 けれど今は、目の前でシモーヌを誘う和菓子達をぱくりと。
 どれも控えめながら上品な甘みで、それぞれに異なる食感も合わせて舌を楽しませてくれる。
「はぁ~力出るわ……」
 我知らず零れた呟きが、心満たされている証。
 そして心が満たされれば、身体に活力も湧いてくる。
「これならエリクシルをまだまだボコれるよ」
 糖分補給でエネルギーもチャージ。
 戦いはまだ始まったばかり。けれどこんな美味しいご褒美があったなら、この後の戦いも乗り切れそうだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルヴィア・ジェノス
まあ、落ち着いた雰囲気の素敵な宴の場ね!えへへ、私食べるのだ~いすき!和菓子も勿論好きよ!ああ、本当どれも美味しそうだわ!

創作和菓子4種を抹茶と一緒に頂くわ
目で見て、食べて秋を感じる…和菓子って素敵ね
秋華は優雅で綺麗!月兎と仔熊可愛い~!木犀は口の中にあの花の甘い香りが広がって、あの花が秋を彩る情景が目に浮かぶわ
大食いなので芋羊羹等の和菓子も出来れば頂きたいところ!勿論どれも綺麗に美味しく頂くわ!
お鍋も勿論頂くわ、塩バターベースにするわね、この組み合わせは罪…!
ああ、幸せ~♪

後持ち込みもOKということだったので、手作りのおはぎを作ってきたの。芋餡と南瓜餡なの。もしよければ食べて頂戴な




 設営された会場を見渡して、シルヴィア・ジェノス(月の雫・f00384)は感嘆の溜息混じりの声を上げた。
「まあ、落ち着いた雰囲気の素敵な宴の場ね!」
 これには期待も高まると言うもの。
 シルヴィアもまた、食に携わる者。作ることは勿論、食べることも生き甲斐のひとつで。
「えへへ、私食べるのだ~いすき! 和菓子も勿論好きよ! ああ、本当どれも美味しそうだわ!」
 並ぶ和菓子を眺めれば、それだけでシルヴィアの心は踊る。
 中でも取り分け創作和菓子が目を引いた。芸術性も重視された四種、その味は如何なるものだろうか。
 早速、抹茶と一緒にいただくことに。テーブルに和菓子と湯呑を並べて改めて眺めて楽しむ。
(「目で見て、食べて秋を感じる……和菓子って素敵ね」)
 練り切りひとつ取っても、その表現の可能性は無限大だ。
 ここに味にも創意工夫を加え、伝統を受け継ぎながらも日々進化していく。
「秋華は優雅で綺麗!」
 大輪の花を束ね花束にした様子を、小さな和菓子で繊細に表現している。口に運べば広がる様々な果実の味も、主張しすぎず練り切り本来の味とも調和が取れていた。
「月兎と仔熊可愛い~!」
 秋の動物を模ったこの二種は見た目にも可愛らしく、味の方もそれぞれ特徴的だ。月兎は練り切りに寒天ゼリー共に甘酸っぱく後味爽やかで、チョコレート風味の仔熊は洋菓子感覚で味わえる。
「木犀は口の中にあの花の甘い香りが広がって、あの花が秋を彩る情景が目に浮かぶわ」
 金木犀は果物に例えれば桃や杏に似た甘い香り。故にこの味わいであり、それがより香りに金木犀らしい説得力を持たせるのだろう。
 一通り創作和菓子を味わいつつも、定番の和菓子も美味しくいただきました。こう見えて健啖家なので!
 なので、勿論お鍋もいただきます!
「味付けは……塩バターベースにするわね、この組み合わせは罪……!」
 塩のシンプルな味わいが素材の味を引き立てつつも、バターのコクとまろやかさがたまらない。
(「ああ、幸せ~♪」)
 和菓子も鍋も、余すところなく堪能して、ふと。
「そうそう、持ち込みもOKということだったので、手作りのおはぎを作ってきたの」
 用いたのは芋餡と南瓜餡だ。秋の味覚を取り入れたおはぎは、定番とはまた違った味わいを楽しめるだろう。
「もしよければ食べて頂戴な」
 作る側としても、美味しく食べて貰えたら嬉しい。
 その想いは、シルヴィアも同じなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

嘉納・日向
和菓子、ってさ……中々食べる機会無かったんだよね。見た目可愛いし、1回こういう機会楽しんでもいいのかな……(ソワソワしつつ、裏人格の声に後押しされて)
◆表人格:日向
うわうわうわ、めっちゃ美味しそう
おはぎとかお芋の羊羹とか、お皿に取って大事に食べよ。
ほうじ茶飲んで一休み……次は栗きんとんもいいな、練り切りも……あぁ、迷っちゃう

ひまり(裏人格)は何が気になる?とこっそり脳裏に聞いてみよう。へ?違うし迷いすぎてるわけじゃないし……(迷いすぎてる)
味覚はなんか共有してるっぽいし
聞くのはアリじゃん……。

なるほど、あの兎の?(『月兎』)確かに可愛いし美味しそうだよね。次それにしよ。




 そわそわと。
 落ち着かない様子で会場へ足を運んだ嘉納・日向(ひまわりの君よ・f27753)。
「和菓子、ってさ……中々食べる機会無かったんだよね」
 ぽつり、零した視線の先。
 並べられた和菓子の中には、花や動物を模ったものもあるとか。
(「見た目可愛いし、一回こういう機会楽しんでもいいのかな……」)
 躊躇いはありつつも、後押しする後ろの|親友《ひまり》の声を聞いたなら、意を決してまた一歩踏み出した。
 そして、実際に目の当たりにして日向の瞳はぱっと輝きを増して。
「うわうわうわ、めっちゃ美味しそう」
 定番のものから創作和菓子まで……どれも余りに魅力的なものだから、つい目移りしてしまう。
(「まずはおはぎとかお芋の羊羹とか、お皿に取って大事に食べよ」)
 和菓子はどれもまだまだなくなりそうにないし、もしなくなっても食べたいという声があれば追加してくれると言うので。
 素朴で優しいおはぎに季節の羊羹の味わいを、ゆっくりと楽しんでから。
 焙じ茶で一服、一休み。
(「次は栗きんとんもいいな、練り切りも……あぁ、迷っちゃう」)
 どれも美味しそうだと、本心から思ってしまう故に。
(「ひまりは何が気になる?」)
 こっそりと。
 他には誰にも聞かれぬよう、脳裏で親友へと問えば。
 迷いすぎてる? というような問いを返されたものだから思わず。
(「へ? 違うし迷いすぎてるわけじゃないし……」)
 咄嗟に否定するもその実、図星。
 くすくす、と楽しげに小さく笑う声すら聞こえてくるかのようだ。
(「味覚はなんか共有してるっぽいし、聞くのはアリじゃん……」)
 ひまりだって、食べるのなら好きなものや興味を惹かれたものがいい筈、と言外に訴える。
 すると、今度こそうーんと少し考えるような声がして。
 やがて彼女が指し示したのは、創作和菓子のスペースで。
(「うん? ……なるほど、あの兎の?」)
 『月兎』――寒天ゼリーの月と苺練り切りの兎が可愛らしくも秋を思わせる一品だ。
(「確かに可愛いし美味しそうだよね。次それにしよ」)
 丁度、お茶もなくなる頃だ。
 月の兎と一緒におかわりを貰ってこよう。お勧めの抹茶でいただくのもいいかも知れない。
 日向は立ち上がり、もう一度和菓子のスペースへと向かう。今日も共に生きる、|親友《ひまり》と一緒に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イシャン・セス
和菓子、ねぇ
確かに色々作れるし面白いモンも多いな、見た目の華やかさもばっちりだ
よしお任せで練り切りを幾つかと、抹茶を頼むぜ
後鍋も貰おうか、レモン醤油の方が良さそうだな

適当な席に陣取り、大口ながらも零したりはしない位の綺麗さで平らげていく
練り切りは香りが良いな
食感も考えられてて組み合わせも面白い
鍋も旨味と酸味が合わさって食べやすくなってるな
茸の出汁が効いててどれだけでも入りそうだ

ああ、持ち込みも良いんだったか
御代代わりにっちゃなんだが落雁だ…巨峰味とシャインマスカット味
果汁を粉にして混ぜ込んであるんだ
形も併せて葡萄の型を使ってる
大した量は無いが味見程度に楽しんでくれや




「和菓子、ねぇ」
 視線の先に並ぶそれらを眺めてふむ、とイシャン・セス(神の猟理師・f41287)は腕を組む。
 彼もまた、猟理師として世界を巡りながら至高の料理を作り上げるべく修行中の身である。様々な美食が集う大宴会が開かれていると言う奈落を訪れたのも、その一環。
 料理であれば何でも作る。甘味もまた御多分に漏れずで、ここで振る舞われている和菓子に興味が湧いて立ち寄ったのだ。
(「確かに色々作れるし面白いモンも多いな、見た目の華やかさもばっちりだ」)
 特に創作和菓子を見て思う。同じ花が主題でも花束にしたり、香りをつけてみたり。見ているだけでもインスピレーションが湧いてくる。
「よしお任せで練り切りを幾つかと、抹茶を頼むぜ」
 そう告げれば、並んだのは秋華に木犀、そして月兎。抹茶も湯気が立ち上り、湯呑にも心地よい熱さが宿る。
「後、鍋も貰おうか」
 練り切りの甘さが品よく控えめなものであろうから、さっぱりといただけそうなレモン醤油の方が良さそうだと。
 注文の品が出揃ったら、イシャンは適当な席に陣取ると、大口で練り切りを平らげていく。と言っても、零したりはせず綺麗な食べ方だ。
「ん、練り切りは香りが良いな。食感も考えられてて組み合わせも面白い」
 練り切り本来の味わいや食べ心地などは損なわず、それでいて新しい試みをそれぞれに加えている。
 それらを食べ終え、鍋にも取り掛かっていく。一口、二口……と食べ進めながらイシャンは何度も頷いた。
「鍋も旨味と酸味が合わさって食べやすくなってるな。茸の出汁が効いててどれだけでも入りそうだ」
 食材とレモン醤油の取り合わせが上手くマッチしているのだ。一人前がそう多くないこともあるが、あっと言う間に完食してしまった。
 一息吐きつつ、イシャンはふと。
(「ああ、確か持ち込みも良いんだったか」)
 思い出して立ち上がり、和菓子のスペースへ向かうと、包みを取り出しその中身を並べて見せて。
「御代代わりにっちゃなんだが落雁だ……巨峰味とシャインマスカット味。果汁を粉にして混ぜ込んであるんだ」
 勿論、形も併せて葡萄の形。色も艷やかな紫と、上品な白緑を。
 こうして、秋の味覚ふたつ秘めた落雁もまた、和菓子達の中に並ぶ。
「大した量は無いが、味見程度に楽しんでくれや」
 八重歯を見せてニッと笑うイシャンは楽しげで。
 作ること、食べることを心から満喫している、そんな顔だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水無月・呉葉
無料で美味いものが食えると聞いて!
わしは和菓子が大好きなのじゃ。
いや、洋菓子も好きなのじゃが。

では芋羊羹から頂こうかの。
和菓子を食すのは久しぶりじゃのう……。(しみじみ)
次は栗きんとんとぼた餅も貰おうかの。
わしはこしあん派じゃが、やはりつぶあんも
捨てがたいのう……。
両方食べればよいか。
その都度、煎茶を飲んで口をリセットするのじゃ。
う~む、異世界のお茶のようじゃが、日本茶そのものじゃのう……。

甘い物ばかりが続くと、やはりしょっぱい物が
欲しくなるのじゃ。
という事で、亨次よ、わしにも鍋を貰えんかの。
塩バターとレモン醤油、どちらがおぬしのおススメかの?
いや、結局両方食べるのじゃが。

アドリブ等歓迎です。




「無料で美味いものが食えると聞いて!」
 意気揚々と、水無月・呉葉(妖狐の符術士・f41328)が会場へやってきた。
(「わしは和菓子が大好きなのじゃ。……いや、洋菓子も好きなのじゃが」)
 ともあれ。
 呉葉にとっては夢のような催し。
 その上、参加して楽しむことでこの世界で起きている戦争に貢献出来ると言うのだから、これは参加しないわけに行かないと。
 早速、幾つかの和菓子を確保して席へ。座面は薄くも柔らかい座布団のような素材ながら、ラタン製で和風の作りなソファーに腰掛ければ、不思議とそれだけで心が落ち着く。
「では芋羊羹から頂こうかの」
 手を合わせて一口。
 ほろり、と小豆の優しい、そして芋の素朴な甘みが控えめながらも後味の快い甘さとなって舌の上を満たす。
「んん、これじゃこれじゃ。和菓子を食すのは久しぶりじゃのう……」
 表情を綻ばせながらもしみじみと呟く。
 シルバーレインの日本妖狐である呉葉だが、ビャウォヴィエジャの森で欧州人狼騎士団所属の猟兵に助けられ、そのまま騎士団に居着いて以来、なかなか故郷の味を口にする機会はなかったから。
 この機会にしっかり堪能しておこうと。
「次は栗きんとんとぼた餅も貰おうかの」
 栗きんとんのホクホクとした食感と、混じりけのない栗の甘みを味わってから、ぼた餅へと手を着ける。丁寧に繊細に漉されたこしあんは滑らかで、上品な味わいだ。餅も食べ応えがある。
「むう……」
 しかし、呉葉は緩めながら眉を顰めた。
 だがそれは、決して口に合わなかったからではなく。
「わしはこしあん派じゃが、やはりつぶあんも捨てがたいのう……」
 あんこそのものが好きすぎる故の悩みだった。
 だが、こしあん派が粒あんを食べてはいけない、なんて決まりはないのだ。勿論、逆も然り。
 迷うなら両方食べればよいか、と結論づけておはぎも確保。両方の食感を味わいつつも、都度煎茶を飲んで口をリセット。まっさらにした舌で楽しんでいる。
(「う~む、異世界のお茶のようじゃが、日本茶そのものじゃのう……」)
 あくまでここは和風の世界であって、日本ではないのだが、その文化は平安時代のそれと酷似しているようだ。
 さて、一通り和菓子を堪能した頃。
「のう、亨次よ」
「……ん?」
 甘い物ばかりが続くと、やはり身体がしょっぱい物を求めるようになるもので。
 ぐつぐつと煮立った鍋の番をしている山立・亨次へと歩み寄り、声を掛け。
「わしにも鍋を貰えんかの」
「ああ。味はどうする?」
「そうじゃな……どちらがおぬしのおススメかの?」
 呉葉にそう問われれば、亨次はふむと考えてから。
「さっぱりと行きたいならレモン醤油、ある程度満足感欲しいなら塩バター、だな」
「ならばレモン醤油をいただこうかの。塩バターはシメじゃな!」
 結局、両方いただきますが!
 甘味も鍋も、これだけ楽しんだのだ。きっと、此華咲夜若津姫なる異国の神も満足していることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
天文好きとしては真っ先に目がいくのはお月見団子。シルバーレイン世界でいうと関東風のものですね。
シルバーレイン世界だとお月見団子も地方によって形が違うんですよ。他の地域のお月見団子も作ってみていいですか?

まずは関西風のものを。関西風は楕円形でこしあんを巻きつけるんです。雲がかかった月を表しているという説や、里芋の形という説がありますね。もともと十五夜のお月見では里芋をお供えしていましたから。

あとは最近知った名古屋風。しずく型でなんとピンク、白、茶色の3色なんです!
こちらは蒸して作ります。茶色は黒糖を使うので風味も変わりますね。

クレープさんや他のグリモア猟兵の皆さんもどうぞ召しあがってください。




 八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)の視線は、和菓子スペースの月見団子へと注がれていた。
 天文好きとしての性質だろうか。そして彼女は天文に関連する知識は、科学の分野に留まらず幅広く身に着けていた。
「これは|私の故郷《シルバーレイン》世界で言うと関東風のものですね」
 日本の東西に分けるだけで形を変えるものは多く存在している。例えば、桜餅の作り方やところてんの味付けなどがそうだ。
 そして、月見団子もその一角。
「他の地域のお月見団子も作ってみていいですか?」
 調理スペースを借りて、いざ実践!
 まずは手始めに、東の対、関西風から。
「関西風は楕円形でこしあんを巻きつけるんです。これは雲がかかった月を表しているという説や、里芋の形という説がありますね。もともと十五夜のお月見では里芋をお供えしていましたから」
 月と関連する豆知識も披露しながら、手際よく作っていく。
 やがて、団子にこしあんが巻かれた、関西風の月見団子が出来上がった。
「あとは最近知った名古屋風も如何でしょうか」
 生地から作るのだが、詩織は三つに分けて混ぜていく。そしてその一つにあるものを加えて茶色に。まだ混ぜてはいないが、食紅の用意もあるようだ。
「こちらはしずく型でなんとピンク、白、茶色の3色なんです!」
 形を形成し、ピンクの一部は耳をつけて兎型にしてみたりして。
 全ての形が整ったら、蒸し器の上に一つずつ丁寧に並べていく。
「蒸して作るのがポイントなんです。茶色は黒糖を使っているので風味も変わりますね」
 そう、生地の一つが茶色に変わったのは黒糖が理由だったのだ。他の生地にも砂糖を練り込んでおり、あんこやタレなどは用いず素朴な甘みを味わえる一品。
 こうして、日本各地の月見団子が完成し、和菓子スペースへと並ぶ。
 同じ月見団子でも、地域が変わればこんなにもその姿を変える。まるで別の団子のようだが、これら全てが月見団子なのだ。
 だからこそ、知ること学ぶことは面白い。学校では教えてくれないことでも、目を向けてみれば驚きの発見が待っていることもある。詩織はその感覚を大切にしていた。そうして得た知識だ。
「クレープさんや他のグリモア猟兵の皆さんもどうぞ召しあがってください」
「ありがとう! 皆で分けていただくね」
 興味深げに眺めていたクレープも、詩織の言葉にニコッと笑って頷いて。
 詩織もまた、今は見えぬ月に思いを馳せながら、月見団子をひとついただくことにしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルジェン・カーム
UC常時発動中
和菓子のお店ですか
ええ…とても嬉しいものですね

存分に楽しませて頂きましょう
クレープさんに亨次さんはありがとうございます

存分に食を楽しませて頂きますね
「ボクも食べるよー!アマツカグラのスィーツは興味あったんだ!」(黒髪のメイド服の男の娘

一つ一つたっぷりと味合わせて頂きます
「美味しいよー♪アルジェンー!お鍋もあるから食べようよー!」
ええ…しっかりと食を取るのも大事ですからね
お鍋は多くの食材を迎えた栄養豊富で消化にも良いものです
という訳でお鍋をつつきます
折角なので僕も一つ鍋を
魚や野菜などの具材を鍋に入れて…ぷっさんには石を焼いてもらいます
「温まったよー!」
加熱した石を入れて石焼鍋!




「和菓子のお店ですか」
「やっぱりこういうのって嬉しい、アルジェンー?」
 アルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)に問い掛けたのはメイド服を身に纏った黒髪赤瞳の美少女――ではなく、ぷっさんこと冥皇神機『プルートー』である。現在はユーベルコードの力で男の娘化しているが。
 ただ、アルジェンも最早慣れたもので、穏やかな微笑みを浮かべている。
「ええ……とても嬉しいものですね」
 アマツカグラの武家を己のルーツに持つ彼にとってはやはり、故郷の地でその文化に触れられる機会を得られたのは喜ばしいことだ。
「存分に楽しませて頂きましょう。クレープさんに亨次さんは、このような機会を作っていただきありがとうございます」
「こちらこそ来てくれてありがとうだよー。楽しんで行ってね!」
「ん」
 主催のクレープと鍋担当の亨次にしっかりと感謝の言葉と礼を示してから。
 さあ、存分にアマツカグラの食を楽しもう。
「ボクも食べるよー! アマツカグラのスィーツは興味あったんだ!」
 はしゃいだ様子で豊かな黒髪を揺らすプルートーと共に、それぞれ和菓子とお茶を取って席へ。
 いただきます、と手を合わせ、一つ一つをしっかり、たっぷりと味わうようにして、口に運べば。
「やはり、和菓子はどれも上品な甘さで……よいものです。羊羹や栗きんとんは旬の味も楽しめますし、月見団子も秋の訪れを感じられますね。創作の練り切りも新しい味わいながら、しっかりと伝統は守られている……」
 感心と感嘆が混ざった溜息をひとつ吐いたアルジェンの正面、対面で席に着いて味わっていたプルートーも、蕩けるような笑顔で頬に手を当てていて。
「んー、美味しいよー♪ アルジェンー! お鍋もあるから食べようよー!」
「ええ……しっかりと食を取るのも大事ですからね」
 甘味を存分に堪能したら、今度は鍋を楽しむ番。
 ぐつぐつといい音を立てる鍋からは、魚介やスープのいい匂いがする。
「これは期待出来そうですね。お鍋は多くの食材を迎えた栄養豊富で消化にも良いものです」
「塩バターとレモン醤油だってー! アルジェンー、どっちにするー? いっそ両方いっちゃうー?」
 なんてやり取りを交わしながら、楽しく鍋をつついて。
 やがて程よく二人の腹も満たされてきた頃。
「では、折角なので僕も一つ鍋を」
「いいねー♪ ボクも手伝うよー!」
 鍋にはアルジェンが旬の魚や野菜などの具材をふんだんに入れて。
 その間、手伝いを申し出ていたプルートーが何をしていたのかと言うと。
「ぷっさん、そちらの具合は如何ですか?」
「温まったよー!」
 元気よく返事をしたプルートーが焼いていたのは、石だ。
 加熱したそれを、具材が溢れないよう鍋の中へと入れていけば。
「石焼鍋の完成です!」
「皆も食べていってねー♪」
 ふわりとまたひとつ、いい匂いが漂う。
 楽しい時間はまだまだ続きそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
クレープさんにお声掛け

えへへ、甘いもの気になって来ちゃった
振る舞うほどじゃないと思うけど、僕も錦玉羹作って来たんだ
海のように澄んだ青の中に魚を泳がせたものと
夜空のように濃い青の中に金粉と兎を入れたもの
兎と魚は羊羹製だよ
プロに食べさせるのは緊張するけど…良かったらどうぞ

僕は創作和菓子気になるなぁ
花も動物も好きだから迷っちゃう…
他のものを我慢したら全種類でもいけるかな?
味の表現の勉強にもなりそうだし、食べ比べしてみたいな
練り切りも寒天も好きだし、抹茶と一緒なら…

クレープさんは1番好き!ってなったら、どういうの?
和菓子と…折角だから洋菓子も
ちなみに僕はアップルパイと苺大福かなぁ…今のところ




「クレープさーん」
 名前を呼ばれたクレープ・シュゼットが、声の方へと視線を向ければ。
「あれ、久しぶり!」
「えへへ、甘いもの気になって来ちゃった」
 はにかむような笑顔の栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が、そこにいた。
 お菓子が好き、食べるのも作るのも好き。そんな少女のように愛らしい彼の手にもまた、お菓子の箱が。
「振る舞うほどじゃないと思うけど、僕も錦玉羹作って来たんだ」
「手作り? 開けてもいいの?」
 興味津々といった様子のクレープに、どうぞと澪は頷いて。
 開けば瞳に映るは青の彩。
 海のように澄んだ青の中には魚が泳ぐ。
 夜空のように濃い青の中には金粉の星と兎が踊る。
 兎と魚もまた羊羹の身体で、それぞれの世界を遊ぶ。
「プロに食べさせるのは緊張するけど……良かったらどうぞ」
「へぇえ……綺麗で食べるのが勿体ないな。でも、折角作ってきてくれたんだから。ありがたくいただくね」
 ニコ、と無邪気に笑うクレープの様子に、澪はほっと安堵して。それから、自らも用意された和菓子のスペースへと目を向ける。
「僕は創作和菓子気になるなぁ。花も動物も好きだから迷っちゃう……」
 しかし、己の容量的に今回用意された和菓子を全て食べるのは厳しいと考えていた澪。何を食べるか、厳選しなければならない。
「他のものを我慢したら全種類でもいけるかな?」
 うーんと悩む澪を、クレープが見守っている。
(「味の表現の勉強にもなりそうだし、食べ比べしてみたいな。練り切りも寒天も好きだし、抹茶と一緒なら……」)
 決めた! と創作和菓子四種類を確保。
 考えに考え抜いて選んだのだ、悔いはない……と思っていると。
「んー。羊羹なら少し日持ちしそうだし、お土産に包んで帰る?」
「えっ。いいの?」
「折角和菓子楽しみにしてきてくれたんだしね。幸いにしてまだ余裕がありそうだから」
 じゃあお言葉に甘えて、と。
 休憩取ってくるねー、と鍋の方へ声を掛けるクレープと向かい合って、席に着く。
 いただきます、とまずは木犀を口に運べば、特有の甘い香りと、酸味を抑えて甘味を引き出したアプリコットの風味が口に広がった。
「えへへ、やっぱり美味しい……!」
 幸せな気分で抹茶を一服。
 ふと、正面を見れば海の錦玉羹を口に運んだクレープが、ニコニコと嬉しそうに笑顔を見せている。
 また少し安堵しつつ、澪はこんな質問を。
「クレープさんはお菓子の中で一番好き! ってなったら、どういうの?」
「んー? 一番のお菓子、かあ」
「和菓子と……折角だから洋菓子も。ちなみに僕はアップルパイと苺大福かなぁ……今のところ」
「果物が入ってるのが好きな感じかな? 俺は……そうだなー」
 クレープは少し考え込んでいたが、ややあって口を開く。
「和菓子は今回、練り切りで色々表現する楽しみ知っちゃったからそれかもね。洋菓子は……シュークリームかな」
「シュークリーム?」
「昔、色々あってね。思い入れがあるんだ」
 何かあったのかと澪は思ったものの、そう答えたクレープは笑顔だったから、悪い話ではなさそうだった。
(「思い出のお菓子、か……」)
 自分にもいつか、そんなお菓子が出来るのだろうか。
 出来たらきっと幸せだろうなと、クレープの表情を見ながら、澪は思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒼乃・昴
久方振りだな、クレープ
ほら、君も挨拶して(あの子を連れて)

俺は君のおすすめを
この子にも何か食べられるものはないか?

美味い
クレープの甘味なら幾らでも食べられそうだ

ああ、そうそう。
この子の飼育についてだが。
俺にはこの子を育ててあげられる器用さもなく、適切な環境を用意してあげる事も難しい。この子を可愛いと思っているがな。
なので度重なる極秘調査の末「此処なら任せても良い」と思える希少動物を愛し育てる団体に、俺が望む契約と条件で暫く預かって貰う事になった。
なに、世の中金さえあればどうとでもなる、くくく……(ザナドゥ仕込みの極悪人面)
という訳でこまめに会いに行き、遊んだり、こうして外に連れ出したり、特訓している
どんな敵が来ても究極の速さと強さで逃げ果せる――そんな強い男にしてやるんだ
……それが俺が“父”としてこの子にしてあげられる唯一の事だからな
名はカイルにした

そろそろ行くか
糖分を摂取し英気は十分に養われたのでな
ありがとう
戦いを前に腕がなり胸が躍る
開戦だ――――ッ!!(ただしカイル、君はお留守番だ)




「久方振りだな、クレープ」
「あれっ、昴くんじゃない! 遊びに来てくれたんだ?」
「ああ。……ほら、君も挨拶して」
 蒼乃・昴(夜明けの逃亡者・f40152)の肩から小さく鳴き声を上げて、顔を覗かせたのは。
「わ、あの時のフィオリエパンテラだ! 元気にしてたか〜?」
 クレープに問われて、ミャアとお返事。
 額にアメトリンの輝きを宿す、雪豹に似た希少生物――フィオリエパンテラ。先日ちょっとした縁で、昴の預かるところとなったのだ。
「さて、俺は君のおすすめを。この子にも何か食べられるものはないか?」
「お勧めって言うか推したいのは月兎とか辺りの創作かなー。定番の羊羹三種もいい出来だと思うけどね。その子には……砂糖抜きの栗きんとんとかどうかな」
「そうだな。いただこう」
 結果、昴には月兎と秋華、それから羊羹三種。
 傍らの仔豹には砂糖抜き栗きんとんを。
 席に着き、作法に乗っ取り手を合わせて口に運べばどれも品のある、しっとりとした甘さだ。素材にも季節を感じられ、これぞ和の風情と味わう。
「美味い。クレープの甘味なら幾らでも食べられそうだ」
「あはは、ありがと。そう言って貰えるとパティシエ冥利に尽きるなー」
 この場合は職人? なんて首を傾げつつ笑うクレープに、仔豹が首を傾げれば。
「ああ、そうそう。この子の飼育についてだが」
 その頭をぽふりと撫で、昴はそう切り出した。
「正直なところ、俺にはこの子を育ててあげられる器用さもなく、適切な環境を用意してあげる事も難しい」
 この子のことは、可愛いと思っているがな――と。
 その言葉に嘘はなく、クレープも黙って聞いていた。目を伏せれば見上げた仔豹と目が合う。それに少しだけ微笑んでから。
 昴は再び顔を上げ、続けた。
「なので度重なる極秘調査の末『此処なら任せても良い』と思える希少動物を愛し育てる団体に、俺が望む契約と条件で暫く預かって貰う事になった」
「成程。……成程?」
 途端に何やら物々しい話になった。
 いや、フィオリエパンテラの希少性――生息世界の外に連れ出すともなれば尚更だ――と、昴自身の境遇や周囲の環境を考えれば無理もないことではあるのだが。
「なに、世の中金さえあればどうとでもなる、くくく……」
「わぁ悪い顔」
 イケメンの悪い顔は凄みがあるねえ、なんてニヤニヤしたクレープの軽口を受け流す、ザナドゥ仕込みの極悪人面した昴である。
「と、いう訳でこまめに会いに行き、遊んだり、こうして外に連れ出したり、特訓している」
 ぱっと平素の表情に戻る昴。切り替えが早い。
「どんな敵が来ても究極の速さと強さで逃げ果せる――そんな強い男にしてやるんだ。……それが俺が『父』としてこの子にしてあげられる唯一の事だからな」
 これが正解なのかどうか、今はまだ昴にも解らない。それでも、自分に出来る最善がそれだった。だから、そうした。
 その選択を、クレープは肯定する。昴が真剣にこの小さな生命と向き合い考えて、その果てに出した答えなのだ。彼はそれを理解していた。
「そっか。強く元気に育つといいね」
「ああ。名はカイルにした」
 父親からの贈り物を、仔豹――カイルは気に入っている様子だった。呼ばれたと思ったのか、ミャアと嬉しそうにひとつ、鳴いた。
「……ご馳走様。そろそろ行くか」
「おっと、もうそんな時間?」
「糖分を摂取し英気は十分に養われたのでな」
「じゃあ俺達も、後始末して撤収しようかな。お客さんももういないみたいだし」
 見れば確かに、昴とカイルが最後の客だったようだ。鍋に至っては既に片付けられている。
「ありがとう」
「こちらこそだよ。きっと此華咲夜若津姫にも届いたと思う」
 此華咲夜若津姫の加護――この戦いを有利に働かせるだろうと言われている、それ。
 流石に現時点で既に効果が出たというわけではないだろうが、不思議と力が漲っているような気がした。
 戦いを前に腕がなり、胸が躍る。
 心を、感情を得たのは事実だけれど、戦いを好む己の性質がそうあっさり覆るようなこともなく。
 けれど今は、盲目的に何かに従うでなく、自分の意志で戦場を選び、戦い抜こうと思うのだ。
 そして、この瞬間にも。
「開戦だ――――ッ!!」
 漲る力と、心のままに。
 この戦いも、勝ちに行こう!

「……ああただしカイル、君はお留守番だ」
「ミャウ」
 帰りを待ってくれている、その存在の為にも。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月06日


挿絵イラスト