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エンドブレイカーの戦い⑨〜耐え難きを耐えよ

作者：メリーさんのアモル

●グリモアベース
「エンドブレイカーの戦い、お疲れ様です。引き続き、次の戦いについてお話しします」
　グリモア猟兵のムゲン・ワールド（愛に生きたナイトメア適合者・f36307）が集まった猟兵に向けて口を開く。
「次なる戦いの舞台は伝説の英雄『｜女王騎士《クイーンランサー》』によって建国されたとされる、騎士道と娯楽の両面が発達した華やかな都市国家、『山斬烈槍ランスブルグ』だそうです」
　ランサー、素敵な響きですね、と呟くムゲン。
「この都市国家は現在、『実験都市オペレッタグラン』とやらで創造された危険な「超生物エリクシル」をはじめとする軍団に襲われているそうです」
　なので、直ちに救援に向かいましょう。とムゲン。
　ただ、話はそう簡単ではない、とも続ける。
「「超生物エリクシル」は、万能の魔神エリクシルを素体とし、おぞましい改造を施された存在で、「ほぼ無敵」の戦闘能力を持つようです」
　「ほぼ無敵」。それは猟兵でさえ勝てないことを意味する。
「ですが、一つだけ弱点があります。それが「ほぼ」の部分ですね」
　それは、改造の反動で時間経過と共に肉体が崩壊していき、最終的には自滅に至る、ということらしい。
「つまり、私達のやることは一つです。攻撃に耐えながら、超生物エリシクルを可能な限り人気のない方向へ誘導してください」
　相手は無敵なので気を惹く以外で攻撃は意味がないことに気をつけてくださいね、とムゲン。
　とはいえ、強い攻撃、強力な連撃を喰らえば、より注意を惹けるだろう。強力な攻撃もシチュエーションさえ噛み合っていれば、無意味ではない。
「敵は『世界平和の樹』。名前の通り樹木ですが、超生物エリクシルになったためか、歩行が可能なようです」
　根っこを足のように使って歩くようだ。
「説明すべきことは以上です。『ランスブルグ』の人たちを守りましょう！」
　そう締めくくると、ムゲンはグリモアの光を纏った仕込み杖をスラリと抜き放つ。
　その切先に合わせて空間が裂けるように転送ゲートが出現した。

第1章 ボス戦 『世界平和の樹』

POW   :    平和を乱す者には罰を 【主枝の一撃】が命中した敵を【鋭利な葉が茂る梢】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を［鋭利な葉が茂る梢］で受け止め［主枝の一撃］で反撃する。 SPD   :    力を合わせて平和を守りましょう 【支配下にある生物】から無限に供給される【かのような】生命力を代償に、【爆発する実】を、レベル分間射撃し続ける。足を止めて撃つと攻撃速度3倍。 WIZ   :    皆の願いが実を結ぶように 【宝石と化した花】から、物質を透過し敵に【魅了】または【宝石化】の状態異常を与える【紫色に煙る花粉】を放つ。 イラスト：すずや 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「耐久戦とは……何度目か。しかして、やらねばなるまいよ。さて…人気のない方向は……」
　現地に着くなり冷静に人気のない方向を確認し、戦いの準備をするのは四人で一人の複合悪霊、馬県・義透（死天山彷徨う四悪霊・f28057）だ。
　その手に漆黒の剣『黒曜山』が握られていることから、今は『不動なる者』内県・賢好の人格が表に出ている事が分かる。
「わしは馬県義透という、尋常に勝負せい」
　義透は素早く抜刀し、『世界平和の樹』を攻撃する。
　『世界平和の樹』の意志は街への攻撃に集中しており、名乗りには反応していなかったが、攻撃されれば反応せざるを得ない。
　『世界平和の樹』はユーベルコードを発動。鋭利な葉が茂る梢で攻撃を受け止め、主枝の一撃で反撃を敢行する。
　対する、義透もまたユーベルコードを発動。
　打ち込まれてきた主枝の一撃を真正面から喰らい、直後、『四悪霊』の総意と『馬県・義透』という認識補助術式により、身体が再構築されていく。
　名乗ったのはこのため、『馬県・義透』という認識補助術式を十全に働かせるためだったのだ。
　身体が再構築される際には生み出し封じてきた呪詛が身体を強化し、より防御力を向上させていく。
　義透は人気のない方向に背を向け、後退しつつ、攻撃を敢行する。
　その全ては鋭利な葉が茂る梢で受け止められ、主枝の一撃で反撃されるが、義透もまた、その全てを身体の再構築で上回っていく。
（反撃してくる、ということはわしに掛り切りになるからな）
　つまりそれこそが目的。
　ひたすら切って後退。切って後退。
　その度に『世界平和の樹』は反撃のために義透に歩み寄らざるを得ない。
　義透の状況に適したユーベルコード行使と敵を誘導する見事な使い方の妙で、『世界平和の樹』は大きく損耗し、また、大きく街から離された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「相手が自壊するまでの耐久戦だね。何気に、耐えるっていうのは得意なんだよ。さぁ平和を守るため、お姉さんが張り切ろう」
　そう言って戦場に降り立つのは鍛え上げられた腹筋が美しいエンドブレイカーのアンゼリカ・レンブラント（黄金戦姫・f38980）だ。
　先の猟兵と入れ替わりに参戦したので、人気のない方向もバッチリ分かっている。引き続き、そちらに誘導し続ければいいだけだ。
　アンゼリカは敵を捕捉すると同時、素早く『創世の斧剣』で攻撃を仕掛ける。
　しかし、その天地開闢の力を宿す強烈な一撃であっても、『世界平和の樹』は無敵の鋭利な葉が茂る梢で受け止めてしまう。
（光剣での一撃も倒すことはできないだろうが――）
　しかし、それもアンゼリカの想定の通り。
　『世界平和の樹』が主枝の一撃で反撃に転じる構えを見せると同時、アンゼリカもまたユーベルコードを発動する。
「それは、砕く！」
　無敵の全ての攻撃を受け止める身体が具現化し、見るも美しかった腹筋はさらに見事に。
　それは、主枝の一撃の一撃を簡単に受け止めた。何せ無敵なので、当然の結果だ。
「無敵と無敵。さぁ先に根負けするのはどちらかな？」
　挑発を一つ。
　果たして、『世界平和の樹』に挑発の通用する意識があるのかは分からないが、結果的にはアンゼリカの目論見通り、『世界平和の樹』の攻撃を誘発することに成功する。
　アンゼリカは『世界平和の樹』による主枝の一撃をひらりとかわし、かわせないものは受け止めて、気分はまるで闘牛士。
　かくして、『世界平和の樹』はますます人気のないところへと移動していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「「人気のない方向へ誘導する」ことが十分できたね。あとはここからが詰めだね！」
　十分に人気のない場所に誘導出来たことを確認したアンゼリカ・レンブラント（黄金戦姫・f38980）は満足そうに頷く。
「えぇ、十分行った場合はあとは……」
　その言葉に銀髪の少女、ユーフィ・バウム（セイヴァー・f14574）が頷く。
「敵の自壊まで攻撃を耐えましょう」「敵の自壊まで攻撃を耐えましょう」
　二人の猟兵。だが、やるべきことは一つ。あとはひたすら人里に戻らぬよう、耐え続けるのみ。
　まず、先手を取って動くのはアンゼリカ。
　引き続き発動したユーベルコードで具現化させた無敵の腹筋で以て、敵の攻撃に耐える。耐える。耐える。
　ともすれば無限に続けることも可能そうな戦法だがこの戦法には弱点があった。
（鋭い梢はダメージはなくても、痛みは覚えるかもだから、続くとちょっときついかもな）
　無敵故、ダメージは入らない。
　しかし、痛みはある。
　この無敵の腹筋は想像により具現している。つまり、能力に疑念が生じれば弱体化してしまうのだ。
　痛みが伴えば伴うほど、無敵である確証は薄れざるを得ない。
　唯一の弱点、しかしともすれば致命的でもあるかもしれない弱点と言えた。
（そこで、ユーフィと交代さ）
　そうして、アンゼリカが下がり、ユーフィが前に出る。
「お相手いたしますわ。この「蒼き鷹」が！」
　その言葉と同時、ユーベルコード発動。悪しき攻撃全てを受け切り、人々を守り抜くと言う誓いの元、姿が真の姿へと変わっていく。
　褐色だった肌の色が白く変化し、銀髪の長い髪は青髪のショートヘアに変化。変わっていないのは瞳の色くらいだろう。
「一人で受け続けさせるわけにはいきません。受けるのを交代いたしましょう」
　此度の敵は市民を危険に晒そうとしている。間違いなく悪しき攻撃だろう。
　故にユーフィは受け止める。主枝の一撃を、続く鋭利な葉が茂る梢を。
　痛みに悲鳴をあげることはあっても、決して心は折れない。
　それどころか『世界平和の樹』に組みついて凌いで見せる。
　とは言え、アンゼリカの無敵の腹筋に比べると、やはり明確にダメージが残る。
　無理はせず、アンゼリカとユーフィは交代を繰り返していく。
　
　そして、その時は訪れた。
　突然、『世界平和の樹』がその色を茶色く変え、まるで枯れるかのように崩壊していく……。
　自壊が始まったのだ、と理解し、二人は巻き込まれないよう大きく距離を取る。
　まもなく、そこは何もない空間と化した。
「さぁデザートでも食べに行くかね？」
「ええ、デザートなら喜んで♪」
　戦争はまだ続く。だが、強敵を倒した後の一瞬を祝うくらいのことは許されることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2023年09月02日