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【SecretTale】嵐の前の静けさ

#シークレット・テイル

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#シークレット・テイル


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●情報整理~行方不明事件~
「んじゃあ、一旦情報を整理しようか」

 その言葉を告げるのは、セクレト機関総司令官エルドレット・アーベントロート。
 これまでに集まった情報、そして新たに浮かんだ情報を取りまとめるために彼は猟兵達を集めて説明をしてくれた。

 まず初めに、彼はマリネロの街で起こっている事態――子供達が行方不明になる事件が深刻であることを告げる。
 子供達が連れて行かれたゲートの行き先は不明。丹念にゲートの情報を消されていることから、追跡が困難になっているそうだ。
 しかし猟兵達が僅かではあるが犯人の情報を獲得してくれたおかげで、長い期間が必要になるが犯人の追跡を行うことが可能になったとのこと。

「コントラ・ソール《|妨害《サボタージュ》》の力が使われてるとわかったから、それはこっちでなんとかするよ。問題は……子供達の安否だな」

 眉根を寄せたエルドレット。未来視が出来る彼でも子供達の安否についてはわからず、今現在子供達がどういった状況で過ごしているのか、どんな場所にいるのかもわかっていない。
 先にも述べたようにゲートの先は不明なため、調査人を派遣する事も叶わずただただ無事を祈るばかり。

 そのためこの問題については一旦保留にせざるを得ない、というのが司令官システムの答えであり、エルドレットの答えでもあった。

「残念だけど……ゲート先の世界を断定できない限り、こちらから出来ることは何もない。いかに猟兵さん達といえど、無数に広がる世界を探してもらうのには時間がかかるしね……」

 ゆるく首を横に振ったエルドレット。それでも、子供達を攫う犯人の姿だけでも確保出来たのだからそれを喜んでおこうと呟いた。

●情報整理~『箱庭研究』の事故~
「そして次に出たのが……あの事件についてだな」

 エルドレットが出した資料――過去、セクレト機関で行われていた研究『箱庭研究』で起きた事故が今回明るみに出た。

 上層部の燦斗、ヴォルフ、フェルゼンの3人に加え、燦斗の弟であるエーミールも参加していた移転用世界を作り出す研究。
 世界の創造までは着実に成功していたものの、先遣隊として派遣された3名の研究員がその世界に閉じ込められ、記憶を失ってしまった。

 それからしばらく経った現在、その世界に閉じ込められていた研究員ベルトア・ウル・アビスリンクがジャックを派遣したり、ルナールとエルドレットを繋げるように動いていることが判明した。
 とは言えまだ猟兵達の前に現れることが出来ないため、姿や声などは猟兵達にはわからないのだが。

 エルドレット自身はベルトアが動いていることは知っていたが、彼のことを話すのは『裏切り者』が確定してからがいいだろうと考えていたそうだ。
 これは『裏切り者』の正体がベルトアだった場合に備えて、とのこと。

「未だ彼が裏切り者じゃないという証拠はない。引き続き警戒は続けてほしい」
「……あの子のことは、ちゃんと信じてあげたいけどね」

 少しだけ憂いの表情を浮かべたエルドレット。
 起こりうる未来が来ないことを祈るような表情を浮かべた後、それをかき消すように首を横に振った。

●現在の状況
「それで今の状況なんだけど……これを見て欲しい」

 そう言ってエルドレットは空中にウィンドウを浮かべて、ある情報――これから起こりうる未来の映像を見せてくれた。
 彼の持つコントラ・ソール《|預言者《プロフェータ》》によって見えた映像を直接残したもので、直近の時間帯のこと。

 セクレト機関の外。正確には船の停留所。
 そこで何やら小さな黒い影がいくつも集まって遊んでいる様子が伺える。
 視点の人物はその影に向かってなにか言葉を投げたのか、影が一斉に視線を向けて……わらわらと集まっていく。
 集まった影が視界の主の周囲に全て集まった途端、そこから先の未来はなくなったというように映像は途切れてしまった。

 この映像が何なのかと問われれば、エルドレットは「ある調査人の未来だったもの」と答える。
 だったもの、と答えるのは、これから猟兵達にこの影の調査に出向いてもらうため、この調査人の未来が代わることが確定しているからだそうだ。

「システムではあの影は|侵略者《インベーダー》だと断定された。が、まだ機関を襲う様子がないところを見ると、あの影たちは『何をしていいのかわかっていない』みたいでね」
「みんなにお願いしたいのは、まずはあの影たちを俺が作るゲートで追い返して欲しい、ってこと。あの影がなんなのか、情報が掴めればまだいい方だけど……ま、それは出来たらってことで」

 緊急性は低いが、後のことを考えれば放置できない事例。機関側に被害が出る前に、なんとかしてほしいというのが今回猟兵達に課せられる仕事だそうだ。

 なお今回、影の動きに興味を持ったフェルゼンが協力を申し出てくれたとのこと。
 そのため不明点などが出てきた場合、彼を通してくれればシステム側でも協力ができるそうだ。

「まだ猟兵さん達の声でシステムを呼び出す機構がうまくいかなくてさ。ごめんね。ゼンを通して呼んでくれたら、俺達――司令官システムも協力するから」

 そう笑ってくれたエルドレットは地図を猟兵達に渡し、影が存在し始める停留所へ連絡を入れて調査の手続きを行ってくれたのだった。


御影イズミ
 閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
 自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第六章。
 今回は『謎の影を追い返す』が主になります。

 シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/

 場所はセクレト機関専用停留所。
 様々な船が停泊している中で、小さな人の形をした影が多く存在します。
 この影はPCを見ても攻撃する素振りは見せず、船もしくは海辺で遊んでいます。
 他にも空を見上げていたり、海を眺めていたりする者が存在するようです。

 しかしこの影は|侵略者《インベーダー》判定が入っており、大事が起きてしまう前に追い返さなければなりません。
 そこでセクレト機関側はゲートを使い、提携を結んでいる世界へと送り届ける形をとることにしました。
 そのため皆さんには大量に存在する影を集めることをメインとして動く形になります。

 またこの章でも情報収集が可能です。
 プレイングに整合性が取れていれば、リプレイとしてお返しします。

 今回の同行者は『フェルゼン・ガグ・ヴェレット』のみ。
 彼を通じてエルドレットに連絡を届ける事が可能です。
 なお彼は、ある事情からコントラ・ソールを使用しませんし、所持しているものを明かそうとはしません。
 使用をお願いされた時のみ使用します。

 皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Mission-06
 シナリオのクリア条件
 謎の影をゲートの先へ追い込む

 謎の影を追い返す フラグメント内容
 POW:影を無理矢理引き剥がし、ゲートに追い込む。
 SPD:一緒に遊びつつゲートに追い込む
 WIZ:動きの推測をつけ、ゲートに追い込む


 ******


「ふむ……?」

 猟兵達と共に停留所へ駆けつけたフェルゼン。
 彼は影たちの動きをいくつか見守ると、少し首を傾げていた。

「こんなにも無害なのに|侵略者《インベーダー》認定を受けている……か。いや、気を抜いてはならんな」

 敵意のない、小さな人の形をした影。
 ただ遊んでいるだけならば良いのだが、それは既に|侵略者《インベーダー》としての認定を受けた敵。
 いつ、自分達に牙を向けてくるのかわからない存在は今も尚、船や海辺で遊ぶ様子が見受けられた。

「気をつけたまえよ。アレはこちらでも情報がない存在、故に突発的な対応はキミ達に任せることになる」
「まあ、事を荒立てなければあちらも襲いかかりはしないだろう。……多分」

 確定できない事象に頭を悩ませる様子のフェルゼンは、気配を巧みに消して影へと近づいていく。

 そんな彼の様子に、猟兵達は……。
日野・尚人
【尚原】
秋月は何で不老不死なんて求めてるんだ?
俺の知り合いにそういう奴が居るけどあれはあれでキツそ・・・いや、最近幸せを満喫してるなぁ;

って、何で唐突に野球なんだよっ!?フェルゼンも困惑してるぜっ!?
大体「遊ぶ」=「野球」とか、お前実はうちの親父とかと同世代なんじゃ・・・

しかしあの影、|嫌な想像《影の正体が攫われた子供たち》しか浮かばないな。
秋月も同意見か?
事件の調査で名前くらい聞いただろうし呼び掛けてみる、か。
もし想像通りなら・・・ゲートの先でも良いから保護しなけりゃだろ?
あ、フェルゼン、|あの映像《預言》でこいつ等に接触してた視点の主、「ある調査人」が誰か分かるか?
少し話を聞きたいんだ。


秋月・那原
【尚原】

【SPD】

なはるんはオカンムリである
なぜならエルドレットが不老不死をくれると言ったのに(※言ってない)くれなかったからだ
この恨み、どうしてくれよう……そうだ……野球だ!!

というわけで|尚人少年《い〇のー》、野球やろうぜ!
フェルゼンが審判でお前バッターな。俺ピッチングマシン!(ガトリングガンぎゅいぃん)
千本ノックいくぞー 秒間50発発射だから20秒で千本だ! ちゃんと全部打ち返せよー!

というギャグを挟みつつ子影達にミットを配り、
え? お前たち野球、知らないの?
この棒で球をぶっ叩いたら、あそこに見えるゲートをくぐって勝利だ。
簡単なルールだろ?
…と子影たちに嘘ついてゲートの傍でプレイボール!

不老不死を求める理由?
面白そうだからとかじゃダメですか?(まがお

にしてもこの子影たち、行方不明中の子供達のなれの果てだよなぁ?
ヘイ、お空や海を見ているBoys&Girls?  
そっちに何かあるのかい?

最後にエルドレット!
不老不死をくれないとかどぅいぅ了見だ!
ばっきゃろー!(かっきーん!ホームラン♪)



●Case.1 最悪の予想

「この恨み、どうしてくれよう……」
 停留所へやってきてすぐ、秋月・那原(Big Cannon Freak・f30132)は恨み言を呟いていた。エルドレットが不老不死をくれると言った(言ってない)のに、くれなかったとおかんむりである。
 なお那原が欲しがったというコントラ・ソール《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》は未だ謎が多く、他者へ渡す方法も確立していない。移植手術を受けたエーミール達が持っていることさえも奇跡だと言われるほどの力なのだ。
「っていうか、秋月はなんで不老不死なんて求めてるんだ?? 俺の知り合いにそういうやつがいるけど、あれはあれでー……いや最近幸せを満喫してはいるけどさ」
 そんな那原に純粋な疑問を唱えたのが日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)。長く生き、死ぬことのない身体は人々が夢を見ても、実際に手に入れれば苦悩と苦痛の渦中に入るだけだぞ? なんて釘を差していた。
「なんでって言われても……面白そうだからとかじゃ駄目ですか?」
「あーはいはい、そう言うと思った!」
 なんてことを言い合いながら、彼らは高位研究員フェルゼン・ガグ・ヴェレットと合流する。

「しかしあの影、嫌な想像しか浮かばないな……」
「ふむ、少年もそう思うか」
「嫌な想像……とは?」
 フェルゼンはわからず、尚人も那原も浮かんでしまっている最悪の予想。それは『影=マリネロの子供達』という、あってほしくない最悪の展開だ。
 もらった情報によれば影は攻撃する様子もなく、ただただ停留所で遊んでいるだけでなんら危険性は無い。それに遊び方がまるで子供っぽいため嫌でもその予想に行き着いてしまうのだ。
「ふむ……だがそう決めつけるのも早計だな。何か決定的な情報がほしいところだ」
「じゃあ呼びかけてみる、とか? 事件の調査で子供達の名前集まってるだろうし、それをリストアップして順番に呼んで見るっていうのは?」
「ならば司令官に連絡を入れてこちらにデータを渡してもらえるように取り付けよう。しばらく待っていたまえ」
 そう言ってフェルゼンはエルドレットに連絡を入れ、マリネロの街で行方不明になった子供達のデータを受け取る。完全に行方不明と判断された子のみのデータとなったが、尚人も那原も顔と名前と容姿は全て判別がつくようになった。
「よし、じゃあちょっと声をかけてみよう。秋月、何かあったら援護頼んだ」
「任せろ。ガトリングガンを構えておく」
「いや、そこまでは……したほうがいいのか……?」
 一体どっちが正しいのだろう。なんて考えつつも、恐る恐る尚人は影達へと近づきもらった資料の中にあった子供達の名前を呼ぶ。
 名を呼ばれた子供は返事をするかのように、振り向いて……返答してくれた。


 『帰ってきて』
 『許さない』『謝れ』
 『待っている』『助けて』
 『怖い』『帰ろう』
 『一緒に来て』『可哀想』


 影達の行いから想像もできない、様々な言葉が溢れていく。
 その言葉は何処かで、聞き覚えのある言葉。そう、それは――。
「……襲撃したって奴らが言っていた……っていう……?」
 少し前に起こった、|侵略者《インベーダー》・モルセーゴの襲撃事件ではモルセーゴが何かしらの言葉を発していることがわかった。それが今、影達が言った言葉と同じもの。
 言葉が何を意味するのかその当時はわからなかったが……こうして2度目になれば、何かしらの繋がりがある可能性もあるのかもしれない。
「……じゃあ、あれは……本物じゃない?」
 本物であれば、ゲートの先でもいいから保護できればいいと考えていた尚人。
 だが……たった今、目の前にいる影は子供達そのものではなく『子供達のコピー』であることが判明した。
「と、なれば……フェルゼン、あの映像でこいつらに接触してた視点の主ってわかるか?」
「ふむ、司令官に尋ねればわかるだろう。派遣してもらうか?」
「そう……だな。少し話を聞きたいんだ」
「了承した。ではこちらに手配してもらうように進言しておこう」
 そうしてフェルゼンは最初に見せてもらった|映像《預言》の主を派遣してもらうようにエルドレットに連絡を入れ、暫く待つようにと告げる。
 本来この停留所へ行くはずだった|調査人《エージェント》……オスカー・マンハイムが来るのを待て、と。



●Case.2 野球しようぜ!

「しかし子供達のコピーとわかったところで、俺のこの恨みが晴れるわけではない」
 那原は怒っている。エルドレットがコントラ・ソールをくれなかったからだ。
 那原は怒っている。この怒りをどこにぶつければいいのかわからないからだ。
 那原は怒っている。ガトリングガン準備したのに意味ないじゃないか! と。
「よし。ということで尚人少年、野球やろうぜ! フェルゼン審判、少年バッター! 俺ピッチングマシン!」
「なんで!?」
「なんで??」
 突如始まった那原の奇行。もとい、大量の影達を一括でゲートへ送るための作戦。尚人はツッコミを入れ、フェルゼンは背後に宇宙が出来上がるほどの虚無の表情をしていた。
 1人ずつを送るよりは、一気に送り出したほうが良いというのが那原の考えのようだ。影達にミットを配ろうとしたが……首を傾げる影の姿。どうやら影達には知識というものが存在していない様子だ。
「え? お前達、野球知らないの? この棒で球をぶっ叩いたら、あそこに見えるゲートをくぐって勝利だ!」
 子供達に嘘のルールを教えながらミットを配っていく那原。影達は本当に何も知らない、野球のルールさえも那原に言われたことしか知らない様子でゆっくりとゲームが始まる。

「それじゃ、千本ノックいーくぞー」
「千本ノック!? 聞いてないんだが!?」
「今言った!」
 ドヤ顔で言い放つ那原はユーベルコード『ガトリングストーム』を使い、バッター尚人に向けてボールを射出していく。その速度は秒間50発発射、20秒で千本。
 とんでもない速度のピッチングが始まったもんだと悲鳴を上げるのも束の間で、尚人はバットを持ったからには全て打ち返す勢いで振り続けていた。
「これで千本ッ!!」
 最後の1つを打った尚人。最後のボールだけ視線を追いかけてみると、ぽてんと落ちたボールを拾いに行こうと影がとてとてと走り、追いかけていく。
 狙った先がゲートのある場所だったのもあってか、影は気づかずそのままゲートの先へと通り抜け……二度と戻ってくる様子は見せなかった。
「ぜー……ぜー……う、打ってやったぞ! どうだ!」
「おおー、さすが少年。ところで勢い凄かったけどフェルゼンは大丈夫なん?」
「うん? ああ、問題ないよ」
「ふぅん……」
 那原がフェルゼンに視線を向ければ、千本ノックで超速のバッティングが行われていたというのに、フェルゼンは微動だにしていない。多少は風圧で体幹が揺らぐ等が起こっても良さそうなものだが、最初に審判をやると言っていた地点から彼は一切動いていない。
(これもコントラ・ソール? ってやつの力なんかね?)
 フェルゼンの持っているコントラ・ソールは未だに不明なままだが、彼がもしコントラ・ソールを使って防御していたのいうのであれば頷ける話でもある。
 ……とはいえ、彼に言及するほどでもないので、この話は終わりとなった。



●Case.3 調査人オスカー・マンハイム

「な、何してはんの……?」
 尚人に呼び出しを受けた|調査人《エージェント》のオスカー・マンハイムによってツッコミが入れられるまで、千本ノックは続いていた。
 涼しい顔をして審判をしているフェルゼン、汗を流しながらもうまい具合に千本ノックを成し遂げる尚人、めちゃくちゃ楽しそうにガトリングガンで球を発射しまくる那原。どれを見てもツッコミを入れなければならないと感じたようで。
「ああ、オスカー。すまぬね、少々待っていたまえ。あと1回やるそうだ」
「えぇ……」
 フェルゼンの方はうきうきなまま、次の千本ノックを待っている。が、オスカーがこの後もスケジュール詰まってるからとストップをかけたので、千本ノックはここでおしまいとなった。
「えー。もうちょっといいじゃないかー」
「人呼んどいてそれはないやろ。んで、何聞きたいん?」
「えーと……そうだな、なんでこの調査から降りたんだ?」
 尚人が純粋に気になっていたのは、オスカーが何故この調査から降りたのかという点。
 事前に預言を見たエルドレットが変更したのであれば、それはそれでいい。だが給料にも響くかもしれない仕事、それを簡単に変更できるようなものなのか? と。
「んー……せやなあ、本来やったら出来へんよ」
「じゃあ、どうして?」
「誰かが俺に行かせるのをやめろ、って提言してくれたっぽい? 誰なのかはわからんのやけど……」
「誰か……って」
 オスカーの調査を中止させることが出来る人物。それを提言できるのは、エルドレットと会話が出来る者――すなわち司令官補佐と言ったところだろう。
 しかし尚人も那原も『誰が』『何故』止めることが出来たかまでは思い浮かばない。同じくエルドレットと会話が出来るフェルゼンでさえも、ある可能性以外思い浮かばないと告げるほどだ。
「その、可能性って?」
「……ベルトアが進言した可能性、だな」
「え、なんで? 関係なさそーに見えるけど?」
 首を傾げた尚人と那原。オスカー・マンハイムとベルトア・ウル・アビスリンクには繋がりなんてなさそうだが……なんて考えていたところでオスカーから衝撃の告白がなされた。
 ――ベルトア・ウル・アビスリンクはオスカーの兄だ、と。
「『オスカー・マンハイム』の名前は活動名で、フルネームはまた別にあるねんな、俺。やー、兄貴が言ったんなら納得やわぁ」
 からからと笑顔を浮かべ、仕事が来なかった理由に納得の表情を見せたオスカー。遠く離れていても、兄がこうして弟を心配してくれるのは良いことだとフェルゼンも小さく笑う。
 しかしそこで疑問となるのが、フェルゼンがベルトアとオスカーの関係性を知っていたことだ。それに関して尚人がツッコミを入れると、フェルゼンは小さな笑みを浮かべたままに答えた。
「私とベルトアは幼馴染なのでな。必然的にオスカーのことも面倒を見ていたのだよ」
「そーそー。今は立場の差からあんまり話出来んくなったけど、たま~にこうしてお仕事一緒になったりするから、その時に昔話したりするで~」
「嘘だろ……お前ら凄い童顔だな!?」
「「よく言われる」」
 那原のツッコミに声を揃えたフェルゼンとオスカー。
 昔からよく言われることなので、特に気にしてはいないそうだ。



●Case.4 人形

「それで……アレが?」
「ああ。司令官から何か聞いているか?」
「んー、一応基本情報ぐらいは。あと、気をつけろって」
「ではあの影、一見して情報はあるか?」
「ん~……」
 オスカーが影を観察すると、すぐさま『人の形を模倣したもの』『人形に影を被せたもの』と断定する。
 普通に見るだけでは子供の動きをしている影そのものだが、根本的な部分――関節の動かし方や動きのぎこちなさが若干人形っぽく感じるのだそうだ。
「なんで分かるんだ?」
「家系柄、人形を取り扱っとるからようわかる。あれはコントラ・ソール《|人形師《パペッター》》で作られたものかもしれんな……」
「じゃあ、影が空や海を見てる理由とかもわかったり?」
「それはわからんわ」
 流石のオスカーでも、影達が海や空を見つめる理由まではわからない。
 そこで那原が遠くの海を見つめていた影のそばに近づき、『そっちになにかあるのかい?』と問いかける。

 すると、影は真っ黒の闇を那原に見せつけて一言だけ答えた。
 ――『かえしたい』と。

「……かえしたい?」
 その言葉の意味は、那原にも、尚人にも、フェルゼンにも、オスカーにもわからない。
 ただ、影達は人形でありながらも、なんらかの『意思』があることだけが示された。



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 ・影は以前モルセーゴが叫んでいた以下の言葉を呟いているようです。
  『帰ってきて』『許さない』『謝れ』『待っている』
  『助けて』『怖い』『帰ろう』『一緒に来て』『可哀想』


 ・影は『人の形を模倣したもの』『人形に影を被せたもの』だとわかりました。
 →更に詳しく調べることが可能になりました。


 ・NPC「ベルトア」「オスカー」「フェルゼン」の関係性が明らかになりましたので、新たに情報が追加されます。
 →ベルトアとオスカーは兄弟、フェルゼンとこの兄弟は幼馴染だったようです。
 →公式ページ→その他→NPC設定から確認することが可能です。


 ・以後、オスカー・マンハイムにも情報収集を手伝ってもらえることになりました。
 →プレイングで呼ばれた場合のみに彼はリプレイに登場します。
 →公式ページ→その他→NPC設定→?諜報部隊「オルドヌング」メンバーより、所持しているコントラ・ソールが確認できます。

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
影たちはモルセーゴとつながりがあるから、侵略者判定されたわけですか。
子供達の影も攫われた子供達を参考に作られた、ということですかね。
そうなると、影が来た先に子供達もいるということです。
もしかして、彼らの見てる先にその場所があるのかも?
ちょっと探索してみますかね。

前のモルセーゴはジャックさんを探しに?来たからには、今回の影も箱庭事件とも関わりがあるんでしょうね。

まずは影の子供たちを誘導します。
ヨーヨーの技を披露することで、子供たちを集めます。
最後にとっておきの大技披露、ということでUC【獅子剛力】を発動。
子供たちをヨーヨーでまとめて、ゲートに送り込んでしまいます。



●Case.5 視線の先

「なるほど、影達はモルセーゴとつながりがあるから、|侵略者《インベーダー》判定されたわけですか……」
 新たに得られた情報と以前集めた情報をもとに情報精査を行う黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)。
 影――正確には子供達の人形に影を被せただけのものだが、情報を知らなければ黒い子供達にも見えるだろう。
 更にこの子供達はマリネロの街で行方不明になった子供達の複製体とも診断が降りており、声をかければ反応が返ってくる情報もある。
「ふむ。そうなると、影が来た先に子供達もいる……?」
 この影がどこからやってきたのか、その情報はまだ掴めていない。
 そこで摩那は子供達の見つめる先に影達の世界があるかもしれない、という仮定をもとに調査を開始した。

「セクレト機関の場所は確か、地図だと……」
 事前に受け取っていた地図を確認する摩那は、子供達の見つめる方角と大陸のある方角を確認する。
 セクレト機関より北部にあるマリネロの街を見つめている影達が大半だが、ごく少数はまた別の方角を見つめ続けていることがわかった。
「この方角は……?」
 地図を開いたまま、別の方向を見つめる影の隣に立ってみる摩那。海から吹き付ける潮風が彼女の髪の毛を揺らしているが、影達にその様子は見られないのも一つの特徴だろう。
 影達の向いている方角は東の方角。うっすらとドーム型の都市が見えており、場所を指し示すように外壁が赤く輝いている。一体どれだけの電力が使われているのかと考えると……少々、恐ろしいものだ。
「ええと、あそこは一体?」
「あそこは……ヴィル・アルミュール。学業専門都市、だね」
 近くで共に調査を行っていた高位研究員、フェルゼン・ガグ・ヴェレットが摩那の問いかけに少々答えにくそうに答える。その場所に嫌な思い出でもあるのだろうか、彼は左目の視線を向けようとはしていなかった。
 それでも、少数の影がヴィル・アルミュールに視線を向けていることから話を聞かないわけにはいかないので、少しでも彼から情報を引き出した。

 ヴィル・アルミュール。
 その名は鎧を冠する都市であり、セクレト機関の研究員を目指す者が住まう都市。
 『学業専門都市』は研究員達の間で呼ぶようになった通称のため、司令官システムではまず知らない場合が多いそうだ。
 フェルゼンはその都市で生まれ育ったそうだが、良い記憶がない、と称するほどの人生をあの都市で送ったという。
「では、なぜその都市の方角を向いている子がいるんでしょうかね?」
「マリネロの街の子供達と同じだろう。おそらく、ヴィル・アルミュールから少数連れてきている」
「ふむ? でも、向こうの都市ではあんまり大騒ぎにはなってないんですね」
「まあ……あの都市では、なあ……」
 少し渋るような声を出したフェルゼン。これ以上は思い出したくないということなのだろう、彼はそれっきり言葉を濁すばかりで返答を出さなくなってしまった。

(前のモルセーゴはジャックさんを探しに……探しに? 来たからには、今回の影達も箱庭事件と何か関わりがあるはず……)
 子供達が探すものが何かしらの手がかりになるはず。そう考えつつ、摩那はあちらこちらを見渡して、影達が本当に求めるものを探した。


●Case.6 謎の行動をする影

 摩那が調査を開始して1時間ほど経過したころで、影達の動きが変わった。
 先程まではぼうっと眺めるだけの子供達が、なんと向きを変えないままに手を降り始めているのだ。
「なんでしょう、急に……?」
 不可解な行動を取り始めた影。それはまるで、見えない何かを呼び寄せるために手を降っているようにも見えるし、向こう岸にいる誰かに手を降っているようにも見える。
 摩那とフェルゼンは数秒ほど待ってみたが、何かが起こる様子はない。ただお遊びで動いているのか、それとも……。
「謎が謎を呼ぶ、はここに来て毎回起こってるけど……今回は本当に謎ね」
 急ぎ、何かが起こる前にと摩那は調査を止めて影達を集める行動に切り替えるため、超合金ヨーヨー『エクリプス』を取り出す。
 なめらかに滑るヨーヨーの音に気づいた影達は突然始まったヨーヨーショーを教えるため、周りで島の外を見ていた他の影達をトントンと軽く叩いて気づかせていく。

「やっぱり子供にウケがいい技ってこういうのよね」
 いくつかの技のうち、子供達に受けがいいものを選びぬいた摩那は次々と技を披露していた。
 ロング・スリーパー、エレベーター、ブランコと言った初心者の技。
 ストップ&ダッシュ、ワープ・ドライブ、タイダル・ウェーブと言った中級者向けの技。
 ヨーヨーの技は一見簡単そうに見えても、一歩間違うと糸が絡まって大惨事になりがちなもの。集中を切らさぬように初心者の技から徐々にランクアップさせていく。
「さて、次が最後ですよ。よく見ていてくださいね?」
 ヨーヨーの技の中でも特に難しいと言われる大技、テレポーテーションを披露した摩那。糸を絡めないようにくるんとヨーヨーを三つ折りにした糸の中に潜らせると、ゆらゆらと動かしてまるでヨーヨーがテレポーテーションしたかのように見せつけた。
 集まっている影達の声は大技を披露されて、少しだけ可愛らしいはしゃぐ声に変わりつつある。けれど言葉の内容が変わらないものだから少し不気味で、なんとも言えない。
 そんな影達が十分に摩那の前に集まったことを確認したところで、彼女はユーベルコード『|獅子剛力《ラ・フォルス》』を解放。テレポーテーションの終わり際、ヨーヨー本体と糸が真っ直ぐ戻る瞬間に力を開放し、影達をまとめた。
「――力場解放。テレポーテーションするのは、あなた達よ」
 大技披露で集まった影はヨーヨーによって絡め取られ、身動きが取れなくなる。ギュウギュウ詰めで大技を見ようとしていたせいで逃げ場はなく、逃げようとしてもヨーヨーが絡まってしまって脱せない。

 そのまま、摩那は影の塊をエルドレットが用意したゲートの先へと放り込む。
 まとまって移動したせいで少しゲートの空間が割けたが……そこは司令官システムがなんとか補修しておいたのだった。



***************************************

 ・影達は「マリネロの街」と「学業専門都市ヴィル・アルミュール」を見ているようです。
  →ヴィル・アルミュールについて調べることが出来るようになりました。
  →なお、フェルゼンにヴィル・アルミュールの話を振ると少し嫌そうな顔を見せます。

 ・影達の動きが変わりました。
  →以降、シナリオ終了時まで影達は「視線を外に向ける」以外にも、
   「外に向けて手を振る」の行動をします。

***************************************

大成功 🔵​🔵​🔵​


●Case.? 昔話 ~ある研究員の話~

「《|妨害《サボタージュ》》ですか」
『うん、そう。マリアちゃんが言うには、結構な使い手だって』
「ふむ……」
 |研究室《自室》に籠もっていた燦斗がエルドレットからの連絡を受け、端末を操作している。
 司令官補佐という立ち位置故、自室の端末でも問題なく情報を受け取ることが出来ていたが……受け取った情報で眉根を寄せていた。

「というか、該当者多すぎ」
 燦斗がもらった情報の中には猟兵達が集めてくれた誘拐事件の犯人の特徴をピックアップされた世界中の人間の情報が並んでいる。更にそこから該当する時間帯にマリネロの街にいた人物を抜き出しており、それでも相応の人数が揃っていた。
『これでもナターシャと一緒に人数絞ったんだよ~? 褒めてほしいね!』
「はいはいえらいえらい。で、ここから更に私が抜き出せと」
 人物ファイルを軽くスライドさせて、何人いるかを確認した燦斗。マリネロの街に住む人々を除いても、4桁手前の人数いると知って頭を抱えていた。
 本来であればこういったコントラ・ソール関係はエミーリアの仕事……なのだが、彼女は現在使用している薬の副作用で数日寝込まなければならないそうで、そのお鉢が燦斗に回ってきた形だ。
「新しい薬は副作用が酷いって言っていたしなぁ……仕方ない、残業手当頼んだ」
『ありがてぇ~。人欲しかったら言ってね、派遣する』
「じゃあ早速派遣してくれ。テオドア……テオドール・フレッサーを」
 猫の手も借りたいと言わんばかりの勢いで、派遣調査人を送ってもらった燦斗。
 テオドール・フレッサー……エーミールが所属する諜報部隊『オルドヌング』に所属する調査人を。


 手続きをしてから数分後、燦斗の研究室にテオドールがやってきた。
 彼はある事柄のために研究棟に訪れていたようで、丁度良かったと笑っていた。
 そんなテオドールの用事に心当たりがあった燦斗は、ふと思い出したように彼に問いかける。
「……もしかして、お兄さんの部屋ですか?」
 テオドールの兄の部屋は使われなくなって長らく時間が経っており、そろそろ契約が切れるため血縁者であるテオドールが荷物を運び出している。
 今日、やっと全部の荷物が運び終わったとのことなので、テオドールはトントンと肩を叩きながら用意された端末の前の椅子に座った。
「兄貴、めっちゃ物を溜め込むから時間かかってしもてて」
「ああ、確かに彼は研究室にいろんな物を持ち込みましたからねぇ……。ぬいぐるみとか」
「そうなんすよ。家にも同じのあるから、どないしたらええんやろってめっちゃ悩みましたからね」
 大きなため息をついてテオドールは自分の調査人証明書をかざし、端末の機能をオンにして調査内容を確認。コントラ・ソール《|妨害《サボタージュ》》の使用者を割り出すという任務を受け取った。

 しばらくは他愛のない話をしていた2人だが、テオドールの兄の話をしている途中でテオドールがふと気づく。
「……これ、条件的にはうちの兄貴も当てはまるな……?」
 『推定160cm前後の背の高さ』『長い髪』を持った《|妨害《サボタージュ》》を持つ人物が今回犯人と称されている人物。
 だが……それ以外にも『時折咳き込む様子』があるのも特徴的であり、テオドールは自分の兄の特徴を思い出しては、やっぱり、と呟く。
「エーリッヒさん、うちの兄貴のデータって残ってます?」
「|存在消滅《ロスト》扱いにはなってますが、システム側でひっそり残していたはず……ああ、ありました」
 テオドールの言う通りに、彼の兄のデータを引っ張り出して見せる燦斗。

 そこに映し出されていた彼の兄の名は――アマベル・オル・トライドール。
 箱庭研究の事故により消滅扱いを受けた、テオドール――テオドア・フレッサー・トライドールの兄。
 魔術理論を組み立て、コントラ・ソールの仕組みなどを解明させた研究者という記載もあり、最後にはこう記載されていた。

 【喘息関係の病歴あり】の一言だけが。


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 ・アマベルの情報が以下の通りに出ました。
  「テオドール・フレッサーの兄」
  「子供達の行方不明事件の容疑者候補になり得る」
  「|存在消滅《ロスト》の扱いを受けている」
  「昔は喘息関係の病歴を持っていた」

 ・公式ページに以下の更新が入ります。
  その他→NPC設定→敵か味方か→アマベル・オル・トライドール
  その他→NPC設定→オルドヌングメンバー→テオドール・フレッサー

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バルタン・ノーヴェ
アドリブ連携歓迎

ふむふむ。人を、子どもを模倣した存在でありますか。
となると……あまり暴力的な真似をすると、次に来た時にその所業を模倣されるかもしれマセンネ?
なのでここは、友好的にゲートへ送り出しマース!

わたあめ、クレープ、フランクフルトに串刺しからあげ!
子どもが喜びそうな料理をスタンバイ!
ハーイ、エブリワン! ご馳走デスヨー!
と、残る影たちを誘導してゲートへ招いていきマショー!
ちゃんと手渡して、お土産に持たせて送りマスヨ!
また会いマショー!(POWで押す力技)

しかし。ヴィル・アルミュールという都市。
何やらフェルゼン殿には思うところがあるようデスガ……。
オスカー殿、何か心当たりはありマセンカ?



●Case.7 ご馳走はこちら

「ふむふむ。人を、そして子供を模倣した存在でありますか……うむむ」
 頭を悩ませたバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。
 というのも、影達は形を模倣しているだけになるのか、それとも行動まで模倣するのかまでがまだはっきりと分かっていない。もしここで乱暴な行動を取れば、その行動を模倣されてしまうのではないかという不安があるのだ。
 であれば、どのようにゲートへ誘導するか。暴力的な行動を行わず、且つ影達をゲートへと送り込む方法……。
「子供、だからね。そこを利用するのが一番だろう」
 フェルゼンが小さく呟く。他の猟兵が影と遊びに遊んだことも目撃している彼は、影と捉えるのではなく子供と捉えて考えろとアドバイスを付け加えた。
 それならばと、バルタンは閃く。子供達が大好きな食べ物を作り出し、おびき寄せる作戦を。
「そう、今からここはお菓子屋台になりマース!」
「なんて???」
 何やら不思議な単語が聞こえてフェルゼンがツッコミを入れたが、そのままバルタンはせっせとミニ・バルタンと共に現場を改造していく。

 しばらくしてから、船の停留所には潮風とともに美味しいおやつの匂いが運ばれていた。
 バルタンのユーベルコード『バルタン・クッキング』によって作られた数々のおやつが影達に配られているのだ。
「ハーイ、エブリワン! ご馳走デスヨー! 食べたい子はコチラ!」
 実際の食事を配りつつ、けれど食事はここでは行わないようにとゲートの先へおいやっていくバルタン。ここで食べていくと駄々をこねる者は、誰にも負けないその|力《POW》で無理矢理ゲートの先に押し込んでいく。
 わたあめ、クレープ、フランクフルト、串刺し唐揚げに始まり。
 たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、かき氷等、縁日でしか見られないおやつもせっせと作っては渡していく。
 途中で駆け寄る人数が増えたため、オスカーも共に手伝うことになった。

「ところでなんで私は手出ししちゃダメなんだ?」
「フェルにぃの料理はヤバいから」
「なんでぇ?」
 オスカーによって簀巻きにされ、地面に放置されているフェルゼン。理由はオスカーも言った通り、フェルゼンの料理は料理と呼べるにはかなり難しい。
 しかも本人は料理上手だと思って作ろうとするから、尚更たちが悪いとオスカーは苦言を呈した。
「うーむ。行列の整理をお手伝いしてもらうのはダメデショウカ?」
「あー、それがあるか。……フェルにぃ、|調理場《こっち》来ぉへんって約束できる?」
「子供じゃあるまいし、できらぁ!」
「オー! では、列の整理をお願いシマース!」
 半ばやけくそになったフェルゼンはバルタンとオスカーに言われるがままに、影達の行列を整えながら影の様子を確認していく。
 影達はバルタンの料理を受け取ってゲートの先に送られるまで、特に何もすることなくおとなしくしていた。



●Case.8 学業専門都市『ヴィル・アルミュール』

 影を全て送り届けたバルタン。屋台を片付けながらも、影達が見つめていた先……学業専門都市『ヴィル・アルミュール』についての話を広げようとしていた。
 しかし、都市の名を聞いた瞬間にフェルゼンの視線が逸れる。嫌なことを思い出したのか、あるいは、別の理由があるのか。そこは定かではない。
「オスカー殿、何か心当たりはありマセンカ?」
 フェルゼンがこうして視線を逸らす理由を、彼の幼馴染だったベルトアの弟であるオスカーなら知っているのではないかと踏んだバルタン。
 オスカーは最初、はぐらかそうと思っていたようだが……状況が状況だ。流石に話す訳にはいかないと思ったようで、フェルゼンに謝罪しつつも話してくれた。

 ヴィル・アルミュールはフェルゼンとベルトア、オスカーの出身都市。
 数年前から学業専門都市と呼ばれるようになったが、彼らが住んでいた頃はそこまで呼ばれることはなかったそうだ。
「おおー、故郷。ということは、案内してもらえるのでは?」
「ところがどっこい。俺にはいい思い出はあっても、フェルにぃには悪い思い出しかなくてな」
「……それは、聞いても?」
「あー……」
 ちらりとフェルゼンに視線を向けたオスカー。視線を受け取ったフェルゼンは髪の毛で隠している右目に少し手を添えて、何かを考えて……語っても構わないだろう、と決意を受け入れ過去を語った。

 ……と言っても、フェルゼンの語る過去はあまり良いものではない。
 薬物中毒となっていた両親は楽園や理想を夢見て、フェルゼンと弟と妹の3人に『教育』を施してきた。
 娯楽を全て廃し、家庭教師を何人も呼んで教育だけを注がれた3人。唯一の楽しみは学校でベルトアとオスカーが話しかけてくれたことぐらいで、それ以外の楽しさなど何もなかったほど。
「確か、エルドレット司令官が助けてくれたんやったっけ?」
「ああ。父が当時、セクレト機関に勤めていたのもあってね。家庭教師をお願いしたそうだ」
「せやからフェルにぃってたまに司令官を『先生』って呼ぶんやねぇ……」


 ふと、バルタンはあることを思い出す。
 それはマリネロの街にいた謎の男、エレティック・リュゼ・ルナール。彼もまたエルドレットを『司令官』と『先生』で呼び分けていたことを。
「そういえば、ルナールという方も『先生』と呼んでいたような……?」
 あのときは特にツッコミを入れることもなかったが、ルナールは独り言でエルドレットを呼ぶ時は『先生』、誰かと会話しているときは『司令官』と呼び分けていた。
 ということは、彼もまたエルドレットが家庭教師をしてくれたことになるが……。

「ああ、ルナと会ったのかい?」
 色々と頭の中で考えが巡る中、フェルゼンがバルタンに問いかける。なんてことはない、会ったかどうかの確認。
「お知り合いデスカ?」
「知り合いも何も、私の双子の弟だ。似ているだろう?」
 今明かされた衝撃の事実。バルタンは一度自分の頭の中に眠っていたルナールの顔を思い出し……フェルゼンと見比べ……。
「ハッ……確かに!?」
 鮮やかなライトブルーの髪と、鋭い目つき。ルナールの方は黒の狐面を被っていたので顔の全容はよくわからないが、目つきだけでも十分判断材料となりうる。
 今はっきりと言われれば、双子だと判断できるフェルゼンとルナールの関係性。ここで明らかになるとは思ってもいなかったようで。


 最後に、バルタンは聞いてもいいのかわからないある話を聞いてみる。
 ある話――ルナールがセクレト機関にいない理由を。
「ああ、ルナならコントラ・ソール関係の論文出したら|研究者《クソ雑魚》共に批判食らってクビになった」
「わぁ……」
 あっけらかんとした様子で事情を話したフェルゼン。
 ……こう見えて、結構堪えているらしいと後にオスカーから聞かされる。



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 ・ヴィル・アルミュールがベルトア、オスカー、フェルゼン、ルナールの出身地だと判明しました。
 →フェルゼンは『虐待を受けた過去』がありトラウマのため少し引っ込み思案になります。(協力は出来ます)
 →オスカーはこの都市での調査に関しては協力出来ます。

 ・NPC「フェルゼン」「ルナール」の関係性が明らかになりましたので、情報が追加されます。
 →フェルゼンは双子の兄だと判明しました。
 →公式ページ→その他→NPC設定から確認することが可能です。

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  『嵐の前の静けさ』 complete!

     Next Stage →

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大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年10月03日


挿絵イラスト