夏だ宇宙だ着ぐるみだ! 夏休み宇宙探検旅行!
それは、ある夏の日のこと。
探偵事務所に集まった皆を見回すのは、今日も黒猫着ぐるみ纏う文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)。
そして彼は探偵諸君に告げる。
――謎アル所に探偵アリ、事件アル所に着ぐるみアリ!
そして、着ぐるみアル所に宇宙探検アリ!?
「夏休み、スペースオペラワールドへさあ行こう!」
そう、夏休みの宇宙旅行計画を!
「夏休みに宇宙旅行ですか? いいですね、これはまた楽しそうだ」
近江・永都(メガリス・アクティブの霊媒士・f37904)はそう頷いてから。
すちゃっと取り出したのは、やはりこれ。
「ならば僕はカメの着ぐるみを着て行きましょう。そうだ、亀之助も行きますか?」
傍らの亀之助に似たカメの着ぐるみ!
嬉しそうに頷く亀之助はゴーストだけれど、人は襲わない怖くない良い子。
そんな相棒と共に、永都は宇宙旅行参加を表明して。
「団長のお誘いとあっては、乗りましょう!」
「うむ。団長のお誘いを断るわけには行かぬ」
……少々暑いがこれの出番、だな、と。
キアナ・ファム(世界を駆ける(自称)妖精騎士・f38897)も、イチゴ頭巾にイチゴマント、イチゴスプーン風の杖――イチゴ着ぐるみで臨みます!
パティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)も勿論、お約束のパンダ着ぐるみで参加です!
いや、黒猫や亀、苺やパンダだけではありません。
出発当日――宇宙船が停泊する港にやってきたのは。
「うわー、なんか賑やかでいろんな人がいっぱいだね!」
そう賑やかな声に合わせて動くヒマワリ……!?
いえ、いつものヒマワリ着ぐるみを着た木元・祭莉(これはきっとぷち反抗期・f16554)です!
そしてひつじさん着ぐるみ姿のキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)も、もこもこ集合して。
皆で一艇の宇宙船に皆で乗り込めば。
「未知の惑星、ですか。どんな姿されてるかは解りませんが、やっぱりこう宇宙服着たSFもののような格好されてるのかしら?」
「どんな場所かわからないからとってもドキドキなの!」
パティの声に、天風・光華(木漏れ日の子・f37163)もわくわく!
「皆で宇宙で冒険できっといちだいすぺくたるなの!」
宇宙に行くって妹が決めたから、一緒に来た深山・樹(処刑人・f37164)だけれど。
彼自身も、宇宙に興味いっぱい。
宇宙といえば一般的に、宇宙船で火星や金星探検……みたいかと思っていたら。
(「とっくに神秘の槍で宇宙行った人たちいるし、他の世界には宇宙に人がいっぱいって聞いて、ワクワクしてました」)
樹に記憶はないのだけれど、銀誓館学園に入って話を聞くたび興味が湧いていたし。
それに、何よりも。
(「経験できるのすごく貴重って思います」)
はしゃぐ妹や皆とそれを経験できるとなると、心躍ってしまう。
そんな兄と共に宇宙船に乗り込んだ光華は大はしゃぎ。
「それにうちゅうせんとってもすごいの!」
「これが宇宙船、ですか。確かにすごいですね!」
乗り物に乗り慣れていないことをいいことに、パティも光華と一緒にキャッキャ!
そんなちょっぴり年甲斐もなく、はしゃいでしまえば。
にこにこ微笑まし気に異星人さんに軽く笑われて、バツ悪く笑うパティだけれど。
でも、折角の夏休み、楽しんだもの勝ちです!
光華が窓の外を見れば、そこは宇宙。
「お空真っ暗なのにキラキラなの!」
その中を流れるように進む宇宙船に、光華の瞳もキラキラで。
妹が迷惑にならないようにずっとついている樹だけれど。
(「団長さんも皆さんもすごく優しくてほっとしました」)
むしろ妹と一緒に皆楽しそうな皆の様子に安堵しつつも。
光華の姿を見れば、こうも思う樹――きっと僕のみつかがすごくかわいいからかな、なんて。
そう、わくわくなのは皆同じ。
「シルバーレインではこんな体験は出来ませんからね」
モグラの着ぐるみを着た山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)だって、宇宙の未知の惑星にとても興味津々。
「思いっきりあそぶーなの!」
そうぱたぱた翼をはばたかせるのは、シマエナガ着ぐるみな佐久・ララ(ハナサカコネコ・f17010)。
ララも夏の惑星を遊び倒す気満々だから。
「これで水にボチャンしてもチャラなの」
着ぐるみの中はばっちり水着!
そして、ここ数か月多忙続きであった藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)も何とか都合がついて急遽合流。
勿論、着ぐるみベアーと水着は持参しているが。
「念のためエプロンも持って来ているぞ」
……何故??
いえ、それはある意味、美雪の戦闘服。
目的地に着くまでの船内で飲み物を振る舞って、本職カフェオーナー精神発揮中!
さすがに宇宙船内ではアルコールは無しだぞ? と釘もさしておく。
だって、これからが本番なのですから!
そして、到着した宇宙船から降り立てば。
「うおお、キングっ、宇宙だぜ、未知の星だぜっ!」
……初めて来たよ、感動ー!!
神崎・零央(百獣王・f35441)と黄金のケルベロスベビーのキングも大興奮。
そんなテンション上がる零央とは逆に、永都は未知の場所におっかなびっくり。
とはいえ、きょろりと周囲を見回せば。
「でもわくわくしますね。若い頃に見た探検番組を思い出します」
そう若かりし過去を思い返してほっこり……するものの。
「いや、今もそんなに歳ではないのですけど」
色々あって老化しているが、実はまだ30代なのです。
そして今回、宇宙旅行にと選んだ惑星はというと。
統哉は、宇宙船をおりたところに立つ、ゆるキャラアニマルな看板を見て首を傾ける。
「そういえばこの辺に、観光特化のリゾート星があるって聞いた事があるような??」
実は知らなかった……!?
そして『モフラッフィー星宇宙リゾートへようこそ!』という文字を見てから。
スマ―トフォンでちょいちょい調べてみたら――。
「モフラッフィー星、あった!」
「統哉兄ちゃん、すまほ得意なんだスゴイ!」
検索して情報を見つけた統哉に、祭莉が感心すれば。
「……ってちょっと待て、統哉さん。下調べ、碌にしていなかったのか!?」
美雪は驚愕しつつも、紙ハリセンツッコミ!
「いやぁ、行き当たりばったりでごめんごめん」
「まあ結果的にリゾート星に辿り着けたからよかったが……ちょっと肝が冷えたぞ」
ざっと調べてみたところ、口コミも良い感じであるし。
改めて統哉は、ふにふに肉球な着ぐるみのおててをしゃきん。
「折角だし、皆でリゾートを満喫しよう!」
適当に乗ってみた宇宙船だったけれど……結果オーライ。
下調べも碌にせず辿り着いたその星は、めっちゃ快適なリゾート星でした!
いや、その皆無な計画性に、美雪はツッコまずにはいられなかったとはいえ。
(「運動は苦手だが、探検とかたまにする分には心躍るからな」)
後は皆に合わせて楽しむことに。
ということで、モフラッフィー星の探検に出発! ……しようとしたけれど。
ライオン着ぐるみを着た零央は、あっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロ。
「あれ、キング?」
さっきまで頭の上にいたはずのキングの姿が見当たりません!?
これはまさか……事件の匂い!?
「うおお、キングが行方不明にーっ!」
そう零央は慌てて声を上げるけれど。
探検帽子もしっかり被って、未知の星の探検準備万端な統哉は、ハッと瞳を見開く。
――第一異星人発見!
零央の背後から現れた、現地の異星人を発見して。
というか。
(「めっちゃ巨大で怖そうだけど、大丈夫かな?」)
何だか第一異星人さん、超でかくて目が据わっている感じのもふもふさん。
そして……ぬうっと第一異星人さんが手を伸ばせば。
――トントン。
優しく叩いたのは、キングを探す零央の肩?
『……セナカ』
「え、背中?」
そう……ブンブンし過ぎて振り落とされそうになったキングは、実は背中に張り付いていたのでした!
そんな実はめっちゃ親切な目の据わった異星人さんに、零央とキングはぺこりっ。
「ゴメーン、ありがとーう!!」
そして無事に事件解決、統哉はドキドキしながらも、こんにちはとご挨拶してみて。
「あ、ハイ、着ぐるみ星の方から来ました、ヒマワリ星人のまつりんデス♪」
祭莉もカクカク自己紹介!
それから両手の葉をぱたぱたさせつつ。
「ほら、みんなも挨拶アイサツ♪」
そう、皆を促せば。
「ララなのっ! シマエナガケットシーなのっ」
「アタイはキアナ。見ての通り、イチゴだ」
翼ぱたり、無邪気に挨拶するララと。
祭莉につられ、笑顔を作るキアナ……なのだけれど。
何気に緊張のせいでカチコチ妙な笑顔になっているが、本人は気付いてはいない。
そして、わくわくだけれど……兄様がどんな人たちがいるかわからないからーって言うから。着ぐるみさんはもきゅっと抱きかかえて、いつもの洋服と探検隊帽子で乗り込んでいた光華であったが。
(「で、でもなんだかとってもにぎやかさんなの」)
第二第三の異星人さんたちも姿をみせはじめて。
「わ、わー。きぐるみもどき星人なみつかなのー」
祭莉に続いてご挨拶する光華だけれど……抱えた着ぐるみに隠れながら、とっても緊張でカチコチ。
そんな妹を見つめながら。
(「ついたらみつか絶対にすぐどんな宇宙人さんともお話するって、思ってたけど……すごい固まってる」)
そう、樹は意外だったものの。
(「何もかも違う場所だからかな?」)
……すごく珍しいもの見ました、なんて思いつつ。
「大丈夫だよ。ここはいろんな人が来るところだから」
妹に教えてあげる――みんなが遊ぶ場所だし遊んで良いんだよ、って。
そんな兄の声を聞けば、カチコチも少し解けて。
光華はこくりと頷き、樹を見上げて、ぐっ。
「でもせっかくの探偵倶楽部でのおでかけたから、兄様といっしょに皆ともなかよくしたいの!」
……うちゅう人さん達ともなかよくするのー! って。
そして安心した様子の妹の姿を見れば、樹も瞳を細める。
……いつものみつかに戻ってよかったです、と。
それから、もこもこ動くひつじさんなキアラは、出逢った異星人さん達と仲良くなれたら良いなって、お近づきのしるしにと。
「ワタシ カワイイ マジョ デース! マカロン イッショニ タベマショーウ!」
マカロンと向日葵の花を進呈!
そしてついでに、ネタでヒマワリな祭莉も抱えて差し出してみる……けれど。
『コノヒマワリモ、クレル? オイシイ?』
「え、おいら手土産じゃないし?」
「……いや、祭莉さんはヒマワリだけど向日葵じゃないですし、食べられませんっ」
本当に貰われそうになって、急いで止めてセーフ!?
それから慧が、目に留まったものを色々ぱしゃりと写真に収めていれば。
「……!」
何だか、ヘドロ的な凶悪宇宙生物のような異星人に遭遇!?
けれど実は……写真を撮ってくれると、そう申し出てくれているようだ。
実はそんな凄く親切な異星人だったから、並んで写真を撮ってもらうことにして。
ぱしゃりと撮った写真を確認すれば、こくりとひとつ頷く慧。
「この写真は人狼騎士団で自慢しましょう」
そう満足気に、感激を覚えながら。
最初はおそるおそるだった永都も周囲を見回しつつ。
「まさかここまでリゾート化している星だったとは、驚きです。宇宙人さんも色々な方がいらっしゃって……、!」
『うふふ、ようこそ♪』
綺麗な女性型宇宙人さんに声を掛けられれば、ついつい思わずガン見……。
「ごほん、何でもないですよ?」
なんてしてないですよ、ええ!
ということで、異星人たちにも一通りご挨拶したから。
いざ、未知の星の探検開始!
「たんけんー、ララもいくーなの!」
ララも、統哉隊長に続いて出発!
そして祭莉も続く――その前に。
「ガイドさん、おススメ探検とかあれば教えてー♪」
ふりふりもふもふ、ツアーの旗を振るガイドらしきカピバラさんっぽい異星人に聞いてみれば。ララもガイドさんの話をうんうんって、熱心に聞いて。
「へえ、春夏秋冬、なんでも?」
話によれば、この星は春夏秋冬、色々な季節の風景が楽しめて。
モフラッフィー星という名っぽく、もふもふ動物異星人が多いらしい?
それからどの季節を楽しむか考えてみれば。
「じゃあね、夏休みだし海の方に行ってみよ?」
折角の夏休みで折角のリゾートだから、やはり向かうは夏の海!
「わ、リゾートは初めてきますー!」
キアラはそう初リゾートにうきうき。
だって、リゾートといえば!
「やはり美味しい食べ物飲み物を堪能致しましょう、皆さんっ!」
食!?
いや、確かに。
「宇宙には珍しい食べ物や飲み物が一杯あるんだなー。変わった木の実やら動く野菜やら!」
そうキングとうんうん頷きつつ、感動していた零央だけれど。
「さあ食べ歩きツアーに行きましょ♪」
――ぐいぐいっ。
「うわわ、キアラ引っ張るな、首が、締まる……」
――グェー。
ライオンさんの首が締まっています!?
そして。
「……何か色々食せそうな物体がありますねえ」
ライオンさん絞殺未遂事件だけでなく、何らか起こる気配がすごい中。
カピバラガイドの案内で、密林や地下洞窟を通り抜けて。
キアラと一緒に、祭莉もきょろり。
「あ、あのバナナっぽい実は食べられますカ?」
どうやら食べられるみたいだからよじよじ木に登って、バナナ似の実を皆の分取って。
「似合いそうな人……ナンデモナイデス」
ナンデモナイデスよ、ええ!
ララも、やたらファンシーな木の実を見つけて。
「この木の実は、食べられるーなの?」
そう訊いてみれば、こくり頷くカピバラさん。
だから、そうっと。
「どんなあじなんだろーなの。ドキドキ……」
口に入れてみれば――ふにゃり。
魅惑のまたたび味でした!?
そんな、カピバラさんに一応訊いてみる皆を後目に。
「まあ取り敢えず食べられそうなものは片っ端から食べてみればいーのです」
キアラはこう説く。
――えらいひとはいーました。「食べよ、さらば与えられん」!
そしてフラグとしか思えない言葉を紡いでから。
近くに生っていたゲーミング色の果物を手にして、手始めにはむり。
「と言う訳で食べま……く……」
――ばたり。
何かダメだったようです!?
そんなこんなで色々ありつつも。
「リゾートと言えば、トロピカルなジュースはあるのかな?」
海に到着した、探偵探検隊。
統哉の声に、おもてなしの精神溢れる異星人が色々飲食できる所まで案内してくれて。
「このトロピカルジュースも鮮やかで映えますね」
慧は蛍光色にぴかーと光るジュースを見つめて。
光華も、統哉や永都とおっきなジュースを一緒に飲んで。
「料理も本当に様々ですね……。写真に収めましょう」
お任せで頼んでみた料理が運ばれてくれば、慧は写真を……撮ろうとしたけれど。
――くねくねっ。
「この野菜、動いてますけど大丈夫なんですよね?」
何だか野菜が動いています!?
いや、ある意味活きがいいのかも?
祭莉はそんな動いている野菜の蛍光色スムージーを美味しく飲んでから。
その後も普通に海辺で波を追い掛けて元気いっぱい、大丈夫そう。
美雪としてはやはり本職柄、現地のカフェやレストラン、食材に目が行ってしまうのだけれど。
「……!?」
動く食材を見れば、流石に少し驚いてしまう。
けれど本職魂に抗わず、ぱくりと一口食べてみれば。
「!?」
思わず再び驚いてしまう。
「料理も、この動いてる野菜とかめちゃ美味しい!」
「……知らぬ食材はまだまだありそうだな」
統哉も言う様に、思いのほか美味で。
そしてパティも目の前の料理にそわり。
「料理も本当に様々ですね~」
早速、はむり! ……と、かぶりつこうとするけれど、思わず苦笑してしまう。
身体の大きさから、大口開けてかぶりつこうとする我ながら滑稽な姿に。
でも、それならば!
「……こうなっては、この体躯の大きさでは、損、ですね!」
パティが発動させるのは、そう――『Humanisiere Dich』!
6倍程度まで身体が大きくなったパティは、人間族と同じ体躯に変身!
そして……これで、よしっ! と満足気に頷けば。
「それでは改めて~」
手を出すのは、変わった形をしているけれど美味しそうな海鮮物。
そんな料理は美味しいらしいが。
「料理、か。アタイは元々、海に近い都市出身だけに、少しばかりうるさくなるが……」
水神祭都アクエリオ出身のキアナの肥えた舌は満足させられるかどうか。
でもちょっとうるさくなるのも、口が悪いのも、決して悪気はないのです!
そしてそうこう言いつつも、まずはひとくち――ぱくりと口にすれば。
「……! こ、これは!」
キアナは瞬間、瞳を大きく見開く。
そして、ハシビロコウ風の異星人シェフへとすかさず声を掛ける。
「す、済まないが、もう少しいただけないだろうか!!」
郷里のものと遜色がなさ過ぎる美味しさに驚きながらも。
ということで、美味しく楽しいおもてなしに、空の皿が積み上がっていく中。
「にゃふ!? こ、これは……踊るうどん!?」
「……うどんも踊るのか?」
「写真がぶれそうなくらい踊っていますね」
『ウドン、オイシーヨ!』
「とってもふしぎなごはんなの!」
光華は勧められたふしぎうどんを食べては皆と一緒に、宇宙人達ともわいわい大騒ぎ!
食べたごはんは変わっているけれど、ほっぺが落ちそうなほど美味しいし。
それに、何よりも。
「とってもとっても不思議でたのしい夏休みなの!」
そして腹拵えすれば、探検再開!
ふとお耳をぴこり、祭莉が見つけたのは。
「あ、お化け屋敷」
宇宙的なお化け屋敷??
刹那、その屋敷を見れば、尻尾をぶんぶん。
「うん、これいいかも! 誰か一緒に入ってみないー?」
「お化け屋敷!」
「お化け屋敷??!!」
そんなうきうきな祭莉のお誘いに真っ先に反応を示したのは、パティとキアナ。
パティはわたわた、ぱたぱたと背中の羽根をアピールしつつ。
「ほ、ほら! わ、わたし、フェアリー族で、背中の羽根が光っちゃうと拙いので、居残りしますです」
明らかに挙動不審。
そしてキアナも大きく頷いてみせて。
「パトリシアがいるし、彼女が光るとお化け役に悪いからな。済まないが留守番だな」
やはり光るパトリシアをアピール。
そうふたりして必死で誤魔化す……実はお化け屋敷が苦手だと、悟られないように。
だからキアナは、うとうとなコアラ風の異星人と話し込んでおくことにして。
「お化けやしき……?」
思わず尻尾がぴこんと立つララだけれど。
ぷるぷるしながらも続ける。
「ラ、ララ、こんなんぜんぜんこわくないっすけど……? なの……」
そんな明らかにぴるぴる強がっている様子を見ながら。
いや、お化け屋敷も楽しむつもりではあるけれど。
(「お化け屋敷はあまり驚かない……かも?」)
根がリアリストな美雪は、普通に我ながら驚かなそう。
そんな彼女を、ララはちらり。
「みゆきちゃまがキャーっていうの、ソウゾウできないーなの」
「何、私の悲鳴が聞きたいだと?」
自分をじいと見つめるララの言葉に、美雪は瞳を瞬かせた後、苦笑する。
……いや勘弁してくれ、と。
そんな美雪は、キャーとはやはり言いそうにはないけれど。
「お化け屋敷は……ええとあの。私ゴーストさんは全然大丈夫なんですけど……オバケはニガテでして……ほら! ゴーストさんは実在するけど、オバケさんは実在しないじゃないですか!?」
「お化け屋敷ですか、だ、大丈夫ですかね?」
ふるりと不安気なのは、キアラと永都。
でも、零央はそんなふたりや皆に言い切る。
「お化け屋敷? 俺は平気だよ」
なぜなら人をおどかす悪戯ポイントは熟知しているからなのだ! と。
そう、例えば……屋敷に皆で足を踏み入れたばかりの、今とか。
――ばあああっ!!
「こう、いきなり出てきたりするじゃないですか。僕、あれが少々苦手で……ひゃああああ!?」
「!! ひゃあっ、おばけなの!」
めっちゃでっかい、何だか紫液まみれなお化けが飛び出してきました!?
そして瞬間、驚き一目散に駆け抜ける永都と、びっくりぴやっと逃げちゃう光華。
元気になったら妹はみつかぶし全開で、さっきまでうきうきはしゃいでいたのに。
樹はお化けが怖くて逃げた光華を追いかけながらも思う。
うるうる涙目で怖がっては逃げちゃったその姿も、可愛いと。
そしてララも、最初こそ強がっていたけれど。
「ふにゃぁぁっ!」
お化けにびっくり! やっぱり悲鳴を上げちゃって。
キアラはお化けにもめっちゃ驚いたけれど。
「きゃー!? だーずーげーでー!? 光華さんと永都さん逃げるのはやっ!?」
ふたりの逃げ足の速さにもびっくり!?
そして皆が悲鳴を上げる中、祭莉はお化けさんをじいと見て。
「あ、これ血の色だったんだ、ジュースかと思ったー。いい匂いするし!」
そう気付いて言った瞬間。
――もふ、もふもふっ。
「火口ぽい穴から、もふもふの生き物がわらわら出てきた?」
――ぴこんっ、もっふーん。
「うわ、耳立った! しっぽ長い! きゃー♪」
わらわら出てきたもふもふお化けにまとわりつかれて、嬉しい悲鳴……?
そんな様子に目を向ける零央だけれど。
「祭莉もマイペースに楽しんでるな~」
「ふにゃん!!」
次に飛び出してきたのは、化け猫……!?
「ふぎぃぃぃっ!」
「ぎゃあぁぁー!?」
いえ、それ、何でかこっそりお化け側に回っている統哉です!
そして再び大きな悲鳴を上げたふたりに。
「うお、キアラ、ララ、しっかりしろー」
零央はそう声を掛けながらも。
(「光華は樹がいるからヨシ」)
同じくびっくり駆けていった光華は大丈夫そうだから。
キングと顔を見合わせ頷き合って。
「……ララ、怖いのちょっと、苦手だった……なの……」
「あ、あわわ……こしがぬけ……ました」
ぴえん顔のララと、ぺしょり座り込んだキアラを手分けして、がしっ。
「俺はキアラを、キングはララを引っ張って脱出だー!」
「うにゃぁ、れおちゃまとキングちゃま……ありがとなの……」
首根っこを掴まえられたり咥えられたりしながら、ララとキアラも脱出――。
――ぴかっ、どどーん!
「ひゃああぁっ!」
「わあぁっ!?」
急に光って鳴った稲妻にまたまたびっくり!
そんな稲妻や悲鳴、怒号が飛び交ったりと阿鼻叫喚な中、祭莉は思わず笑っちゃう。
……でも、みんなの反応がいちばん面白かった♪ なんて。
それから、えっへん。
「お兄ちゃんは偉かったし!」
なんとなくふんぞり、得意気に。
それから永都は、ぜぇはぁ肩で息をしつつも、ふうと息を吐く。
「……いやはや、老体にはやっぱり堪えますね」
誰よりも早い逃げ足で駆け抜けてから。
そんな、ある意味刺激的な探検を終えた後。
光華は着ぐるみは抱えたまま、お化けさんが追ってこないかそろりと確認してから。
「兄様兄様! つぎはあっちなのー!」
また元気に好奇心の赴くまま、あっちいったりこっちいったり。
そして樹は引っ張られつつも、妹が気になるところを一緒に回って。
自分のことを無邪気に手招く妹の姿を見つめ、思う。
(「過保護かもだけどやっぱりこういう時は一緒にいるのがいいんだなって」)
だって――どこでもみつかがみつからしく過ごせるようにする。
それが、兄になるって決めた時からの、樹の誓いだから。
そんな兄に見守られながらも。
「お兄さんお姉さん、ここではなにしてるのなのー?」
探偵倶楽部の皆に、光華は話しかけて一緒に遊ぶ。
……みつかなんでもしたいからとってもわくわくなの、って。
そして慧は、浜辺で拾ったものを彼女に見せつつも紡ぐ。
「いい感じの綺麗な貝殻を見つけたので、お土産にしようと」
……愛するあの人へのお土産に、って。
そしてララもくるりと周囲を見回して、翼をぱたぱた。
「浜辺で、みんなと一緒に海遊びしたいーなの。ゲンチの子がいたら、いっしょに遊びたいーなの」
「浜辺か!」
その言葉に、きゅぴんっと目を輝かせるのは、キアナ。
それからすちゃりと手にしたのは。
「アタイはディオス……もといビーチボールが得意なんだ」
星霊ディオス……もといペンギンさんなビーチボール!
そして浜辺にいる異星人たちをくるりと見回して。
「相手をお願いしたいが、どなたかおられるだろうか?」
対戦者を募れば、大きなペンギンさんっぽい異星人さんが、ぺんっと挙手!
よちよちしていて果たしてバレーができるのか? と思いきや。
「!?」
実は、自慢の羽で強力なアタックを打ってくる強敵!
とはいえ、キアナだってディオスボールは得意。
応戦しては攻め、かなり熱い戦いが繰り広げられています!?
そんな白熱した戦いに、がんばれーなのーと声援を送りつつ。
「海のお水、すごくとうめいできれいーなのー。お空も、ずーっと見てたくなるーなの」
すぽり浮き輪にはまって、ぷかぷか浮かぶシマエナガなララ。
いえ、シマエナガケットシーでした!
そんなララの声にパティも、ぐっと気合十分。
「折角ですし泳ぎます!」
いざ海へ! ……入ったものの。
「……!?」
何故か、脚が届くあたりでジタバタ??
そう、パティは忘れていたのだ。身体を大きくしていたことを……!
そんな自分のサイズ感を盛大に間違えて、背中の羽根が見事に邪魔してまともに泳げないパティだけれど。
この星の異星人さんは親切だから。
マナティーっぽい宇宙人がすいっと助けてくれて、ついでに背中に乗せてくれて。
ちょっとドタバタが酷かったけれど……折角ですしと、コミュ力や誘惑も駆使して、宇宙人さんとも仲良くなれました!
そんな若者達が海や浜辺で遊んでいる中、ちょっと休憩をと。
海辺のカウチに腰かけて、ジュースを片手にのんびりしていた永都はふと、ほっこり。
(「亀之助さんが、居合わせた宇宙人さんとお喋りしてますね」)
鶴っぽい宇宙人さんとお話している亀之助に気付いて。縁起良い感すごい。
そして仲良くなって、お勧めの料理やお土産を教えて貰ったりしていれば。
統哉がお礼に、現地の宇宙人さんたちに勧めるのは、勿論これ!
「そこの異星人さん、着ぐるみ着てみない? 似合うと思うよ♪」
ええ、着ぐるみです!
それから着ぐるみを着た宇宙人たちや着ぐるみーずの皆と輪になって始めるのは、着ぐるみダンス!
「統哉さん、れっつだーんす!」
交流にもなるしっ! とキアラももこもこ、れっつ着ぐるみダンス!
海に入ったりビーチバレーしたり、もこもこ皆と海を満喫しつつ、遊び倒して。
「着ぐるみダンス、ララもおどるーなの!」
「イエーイ!!」
ララと零央も、異星人たちとダンスして、るんたった♪
飛んで跳ねてクルクル回って、輪になったりペアで踊ったりと、ノリノリです!
慧はそんな皆の着ぐるみダンスをばっちり動画に収めて。
祭莉もキャンプファイヤーよろしく薪を囲んで、かくかくヒマワリダンス!
さらに屋台で肉串4本買って、W串ぴーす☆
家族内えすえぬえすしたりして、楽しさを拡散したり共有して。
「皆で写真を撮ろう♪」
その様子を見た統哉が、そう声を掛ける。皆で記念写真も忘れずに!
ララも翼を羽搏かせ、るんるん集合して。
着ぐるみを着たカピバラさんにマナティーさん、ペンギンさんや鶴さん、ハシビロコウさんにヘドロさん等々……仲良くなった宇宙人さんたちも一緒に。
「いいえがおで……はいちーず♪」
「キングと一緒にチーズ!」
全員満面笑顔で、はいちーず!
「これはこれでいいひと夏の思い出になったな」
「とてもとても、きっと一生忘れられない夏になりました!」
美雪の言葉に、樹も大きく頷く。
だって、楽しそうに笑う妹も、そして自分も。
(「倶楽部のひとたちにもすごくなついてはしゃいで。お話上手じゃない僕も一緒にお話してもらえて」)
とても今、楽しいから。
そしてビーチバレーは最終的に僅差で勝ったが、勝ち負けは二の次で。
「またいつか機会あったらお邪魔したいが、構わないであろうか?」
白熱した一戦を繰り広げたペンギンさんや、地元の異星人たちにキアナがそう訊けば。
すぐに大きく頷いてくれて、すっかり仲良しに。
着ぐるみ倶楽部の宇宙進出、大成功です!
でも……名残惜しいけれど、帰りの宇宙船が出る時間が近づいてきたから。
「ありがとー、なの。またねーなの!」
ララはそうぶんぶん翼を振って、手厚いおもてなしや楽しかった時間に礼を告げて。
船内に乗り込んだ瞬間、遊び疲れてすやぁ。
そんな爆睡して夢の中でもリゾートを楽しむララをそっとしておきつつも。
「ああ、楽しかったなー! 帰ったら父ちゃん母ちゃんに一杯お土産話しないと」
そう言った瞬間――ハッと零央は気が付くのだった。
「……お土産、買うの忘れた」
そしてサーッと蒼白になる零央に、手を合わせる皆であった。彼の運命やいかに、と。
いや、ワンチャン降りた港の売店で何か買える……かも?
そんな帰りまで色々な事件がどたばた起こる宇宙旅行を振り返ってみれば、永都は瞳を細めて呟く。
「何だか若返った気がします」
楽しい夏の思い出が、遠い記憶と重なって。
そして、心からこう思うから。
……これからも皆で素敵な思い出を重ねたい、と。
亀之助と一緒に、やっぱりうとうと微睡みながら。
そんな行き当たりばったりの旅ではあったけれど。
統哉も勿論、皆で満喫した夏休みの冒険に大満足!
だって、着ぐるみも布教できたし、沢山の友達もできたし……それに、何よりも。
――皆との楽しい思い出が、見つけた一番の宝物だよ、って。
でも、帰るまでが探検!
皆と一緒にもふもふまだもう少しだけ、夏のバカンスを楽しみながら。
成功
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