咲いた、繋いだ、夏色のいと
花咲く白い水着ドレスに、フリル揺れる青花の白い日傘もさしているけれど。
耐え切れなくなって、こっそり水着コンテストの会場を抜け出すのは、歌獣・苺(苺一会・f16654)。
熱々な空気に、頭からぷしゅうと湯気が出そうなほど、茹だってしまって。
そして暫し、涼し気な浜辺を散歩していれば。
――ふりふり、ふりっ。
リズムにノってる様な足取りでおしりふりふり。
しかもノリノリなのに、めっちゃ進むのが遅すぎる鳥の親子を発見!
それは、『アメリカヤマシギ』の親子。
親鳥と双子の雛の3匹がリズミカルに、激遅な歩みでふりふり歩いていた。
(「かわいいなぁ……♪」)
それをほっこり、木陰に座ってキュートなフロートを飲みつつ眺めていた苺だけれど。
――ざばーぁん!!
――ビェェー!!
――ビィッッ!!
「……!!?」
歩いていた雛たちが、大波に攫われてしまいました!?
そして慌てて立ち上がって、助け――ようと、するものの。
「……っ」
ピタリと止まってすくむ、苺の足。
脳裏に蘇るのは、実験体の時に幾度となく行われた「強制水泳試験」の時の記憶。
そんなトラウマがよぎって……入水できずに戸惑ってしまう。
導いてくれる繋がれた手も、今はないから。
――どうしよう、どうしよう……!
そう焦る気持ちとは裏腹に、でも足はやっぱり動かなくて。
「ミ゛ェェ!!」
慌てている間にも海へのまれていく双子の雛たち。
だが――その時だった。
『今行くわ!』
「!」
聞こえたのは、大きな波にも恐れぬ声。
動物と話すことが出来る苺に届いたのはそう、側にいた母親鳥の声であった。
そして、リズムを刻みながら――ざぶんっ!
「あっ!」
子を助けるために果敢に海に飛び込む、母アメリカヤマシギ。
その身は眼前の波に比べて、とても小さいけれど。
でも、そんな大きな存在に果敢に立ち向かう姿を見れば……苺は刹那、重ね合わせる。
もしも自分の大切な人が同じ目にあったら――。
(「助けに行けないのは絶対に嫌だ……!」)
そう思えば、自然と身体が動いて。
――ざばーん!
苺も、海に飛び込んで水中へ。
けれど……身を投じた瞬間。
「……っ!」
『(くらい。
つめたい。
こわい。こわい。──こわい)』
蘇る恐怖に溺れて、沈んでしまいそうになる。
でもハッと視界の端に見えるのは、ふりふり一生懸命に雛たちへと向かう母親鳥の姿。
その姿を見れば、苺は思い出す。
『(でも、わたしはもう──ひとりじゃない)』
繋いでくれる手の感触を。寄り添ってくれる、みんなのことを。
だから苺は握りしめる。腰に携えた『愛し白蛇の太刀』を、ぎゅっと。
そして、柄いっぱいに咲かせる。
ガーベラに薔薇に梔子、アネモネ、勿忘草、ネモフィラや向日葵や桔梗。
――咲って、むすんで。
そう、自分や大好きな人たちを模した華を。
瞬間、蝶々結びがひらり舞う瞳を鳥たちに向ければ、結わがれるは、透明ないと。
そして大きく太刀素振れば――貴方と、一緒に。
さいわいに満ちた彩夜の華吹雪を巻き起こして。
ばさり、背中の羽根をはばたかせれば。
「ビィィッ!」
水中から空中へ飛ばした鳥たちを全員、空でナイスキャッチ!
それから無事に皆、砂浜におろせば。
「これでもう大丈夫……え? 恩返しがしたい?」
ビェッと鳴きつつ、リズミカルにおしりをフリフリ。
自分についてくる親子達に瞳を瞬かせた苺だけれど、そっと手を伸ばして頷く。
……一緒にいこっか、って。
夏は暑いし、大波にはびっくりしたけれど。
でも無事小さな命を救って、少しだけ水を克服して。
そして、愉快で頼もしい仲間も一緒に――めでたしめでたし!
成功
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