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咲いた、繋いだ、夏色のいと

#グリードオーシャン #ノベル #猟兵達の夏休み2023

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歌獣・苺




 花咲く白い水着ドレスに、フリル揺れる青花の白い日傘もさしているけれど。
 耐え切れなくなって、こっそり水着コンテストの会場を抜け出すのは、歌獣・苺(苺一会・f16654)。
 熱々な空気に、頭からぷしゅうと湯気が出そうなほど、茹だってしまって。
 そして暫し、涼し気な浜辺を散歩していれば。
 ――ふりふり、ふりっ。
 リズムにノってる様な足取りでおしりふりふり。
 しかもノリノリなのに、めっちゃ進むのが遅すぎる鳥の親子を発見!
 それは、『アメリカヤマシギ』の親子。
 親鳥と双子の雛の3匹がリズミカルに、激遅な歩みでふりふり歩いていた。
(「かわいいなぁ……♪」)
 それをほっこり、木陰に座ってキュートなフロートを飲みつつ眺めていた苺だけれど。
 ――ざばーぁん!!
 ――ビェェー!!
 ――ビィッッ!!
「……!!?」
 歩いていた雛たちが、大波に攫われてしまいました!?
 そして慌てて立ち上がって、助け――ようと、するものの。
「……っ」
 ピタリと止まってすくむ、苺の足。
 脳裏に蘇るのは、実験体の時に幾度となく行われた「強制水泳試験」の時の記憶。
 そんなトラウマがよぎって……入水できずに戸惑ってしまう。
 導いてくれる繋がれた手も、今はないから。
 ――どうしよう、どうしよう……!
 そう焦る気持ちとは裏腹に、でも足はやっぱり動かなくて。
「ミ゛ェェ!!」
 慌てている間にも海へのまれていく双子の雛たち。
 だが――その時だった。
『今行くわ!』
「!」
 聞こえたのは、大きな波にも恐れぬ声。
 動物と話すことが出来る苺に届いたのはそう、側にいた母親鳥の声であった。
 そして、リズムを刻みながら――ざぶんっ!
「あっ!」
 子を助けるために果敢に海に飛び込む、母アメリカヤマシギ。
 その身は眼前の波に比べて、とても小さいけれど。
 でも、そんな大きな存在に果敢に立ち向かう姿を見れば……苺は刹那、重ね合わせる。
 もしも自分の大切な人が同じ目にあったら――。
(「助けに行けないのは絶対に嫌だ……!」)
 そう思えば、自然と身体が動いて。
 ――ざばーん!
 苺も、海に飛び込んで水中へ。
 けれど……身を投じた瞬間。
「……っ!」

『(くらい。
 つめたい。
 こわい。こわい。──こわい)』

 蘇る恐怖に溺れて、沈んでしまいそうになる。
 でもハッと視界の端に見えるのは、ふりふり一生懸命に雛たちへと向かう母親鳥の姿。
 その姿を見れば、苺は思い出す。

『(でも、わたしはもう──ひとりじゃない)』

 繋いでくれる手の感触を。寄り添ってくれる、みんなのことを。
 だから苺は握りしめる。腰に携えた『愛し白蛇の太刀』を、ぎゅっと。
 そして、柄いっぱいに咲かせる。
 ガーベラに薔薇に梔子、アネモネ、勿忘草、ネモフィラや向日葵や桔梗。
 ――咲って、むすんで。
 そう、自分や大好きな人たちを模した華を。
 瞬間、蝶々結びがひらり舞う瞳を鳥たちに向ければ、結わがれるは、透明ないと。
 そして大きく太刀素振れば――貴方と、一緒に。
 さいわいに満ちた彩夜の華吹雪を巻き起こして。
 ばさり、背中の羽根をはばたかせれば。
「ビィィッ!」
 水中から空中へ飛ばした鳥たちを全員、空でナイスキャッチ!
 それから無事に皆、砂浜におろせば。
「これでもう大丈夫……え? 恩返しがしたい?」
 ビェッと鳴きつつ、リズミカルにおしりをフリフリ。
 自分についてくる親子達に瞳を瞬かせた苺だけれど、そっと手を伸ばして頷く。
 ……一緒にいこっか、って。

 夏は暑いし、大波にはびっくりしたけれど。
 でも無事小さな命を救って、少しだけ水を克服して。
 そして、愉快で頼もしい仲間も一緒に――めでたしめでたし!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月27日


挿絵イラスト