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テンポ・ディ・ヴァルス~獅子たちのひと夏の『帰郷』

#エンドブレイカー! #ノベル #猟兵達の夏休み2023

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知念・ダニエル
お時間ございましたら、夏休みノベルをお願い致します
ざっくりなのでお任せ多めです
文字数もお任せいたします

▼同行キャラ
ディルティーノ・ラヴィヴィス(黄昏の獅子・f38911)

▼概要
エンドブレイカー世界にて、ディルティーノがダニエルに『水神祭都アクエリオ』の案内をしてあげているシーンとなります

▼ざっくりとした流れ
町中を歩きながら、都市国家や町について案内
→ゴンドラに乗る
→自分の世界についての語らい

シーンの配分はお任せいたします
上記にないシーンを描写してもOKです

▼キャラ
自分の出身世界を探す旅をしている青年
素っ気なく話すのがデフォなだけで、寧ろ探索には興味がある

女性人格の我が儘で女装が多いが慣れている(水着もドレス風)
ディルティーノが孤児院を営んでいる事や尊敬の意も込めて「先生」と呼んでいる
相手との関係は「他人かもしれないし血縁関係かもしれない人物」

▼プレイング(参考用に)
先生にアクエリオを案内して貰うっす
はいはい、あくまで散歩ですから

天井があるのに空が見えるし、建物も不思議な形してますし、都市国家は面白いっすね
まぁ…魔法の力って事っすかね。確かに他の世界ではないものっすね

店やら各所で丸いペンギンをよく見かけるんすけどマスコットっすか?
…あんな見た目で凄い人物なんすね…
てか、そっち(ウォータくん)がマスコットなんすね。キャラ濃くないすか?
(水神祭の話を聞き)コンテスト以外にもやる事があるのは大変そうっすけど…暇しなくて楽しそうっすね
俺達も参加できる日、来るといいっすね

先生、なんでそんな資格持ってるんすか…おかしいっす
まぁ、折角ですし乗ってみますか。久々なら無理はしないでくださいね

いいっすね。涼しいし、水の都らしい観光っす
先生の住んでるエルフヘイムも、このアクエリオも、見ていて飽きない良い場所ですね
…俺は自分がいたはずの世界が分からないもんですから、
これだけ戦ってても「救えてよかった」と思うだけで「ホッとした」と感じた事はないんすよ
自分の場所、自分の世界。それがある気持ちだけは羨ましいと思いますね

は?ここが俺の世界?…なんだ冗談か
でもまぁ…勝手にそう決めるっていうのも、悪くない考え方っすね
先生の気持ち、理解できる日が来るといいっすね。…検討しときます


ディルティーノ・ラヴィヴィス
お時間ございましたら、夏休みノベルをお願い致します
ざっくりなのでお任せ多めです
文字数もお任せいたします

▼同行キャラ
知念・ダニエル(f00007)

▼概要
エンドブレイカー世界にて、ディルティーノがダニエルに『水神祭都アクエリオ』の案内をしてあげているシーンとなります
ディルティーノはエンブレに登録してたキャラと同一人物なので、当時の出来事や都市国家について知ってます

▼ざっくりとした流れ
町中を歩きながら、都市国家や町について案内
→ゴンドラに乗る
→自分の世界についての語らい

シーンの配分はお任せいたします
上記にないシーンを描写してもOKです

▼キャラ
男を装い、強さとカッコよさを追求する旅人
当時から姿が変わらない
キザで冗談好きだが、真面目な場面だと実年齢相応の落ち着きがある
ダニエルとは他人の関係だが、親近感があって放っておけない存在
服装は水着着用
案内は普通にできるが、説明がちょっと雑な時もある

補足1:エンブレの序盤から最後まで駆け抜けた子です
補足2:アクエリオ編で死にかけた思い出があります
(参照:http://t-walker.jp/eb/adventure/rp.cgi?sceid=7306)

▼プレイング(参考用に)
ダニエルと『水神祭都アクエリオ』でデートするよ!
水着着ながら歩くのに丁度良いもんね

都市国家は他の世界と比べたら珍しいよね
まぁ、全部星霊建築のスゴい力のおかげって事!

あれはマスコットじゃないよ。水神アクエリオ様だよ。ここのエラい|星霊《ヒト》だね
あっちはウォータくんだよ。こっちがマスコットだよ。そっかーこの時期だもんね
ここではアクエリオ水神祭っていうのがあるんだよ。水着コンテストだけじゃなく色々な競技があったんだ
ディオスボールやゴンドラレースは白熱してさ、僕も参加した時は楽しかったなぁ

そうだ。僕、ゴンドラ乗りの資格持ってるんだよね
良かったら乗ってみる?借りて漕いでみせようか。漕ぐの久々だけど頑張っちゃうぞ!
(ゴンドラ作りに木を取って来たのも懐かしいね)

どうかな、水上から見る景色はまた違うでしょ?
水に囲まれたこの景色、僕もお気に入り
アクエリオには色々思い出があってさ、見る度に思うんだ。生きてて良かった、なんて
こんなに生きると思ってなかったからね
お陰様で猟兵になってからは毎日が新鮮で楽しいよ。他の世界は知らないものばかりで興味深い
だけどやっぱり、自分の世界が一番良いと思っちゃう

ダニエルは自分の世界を探してる。途方もない目標を追う姿が、昔の僕と少し重なる
居場所が分からない寂しさは、少し分かる気がする
いっそのこと、この世界の住民だったって事にしない?…なんてね!半分本気、半分冗談!
キミの求める場所、見つかるといいね。僕もそれを見届けたい
でも…僕はいつでも歓迎するからね?



 ディルティーノ・ラヴィヴィス(黄昏の獅子・f38911)が休暇の帰郷先に選んだのは水神祭都アクエリオであった。
「エルフへイムじゃなくて?」
 なにせ彼女は、永遠の森と呼ばれる都市国家で孤児院を営む『先生』なのだから。
 旅の伴として連れ出される予定の知念・ダニエル(壊れた|流浪者《ぼうれい》・f00007)が思わずそう訊ねれば……。
「だってここってさ、水着着ながら歩くのに丁度良い都市なんだよね。真夏のデートにはこっちのほうが断然うってつけってわけ!」
 返ってきたのは満面のイケメンスマイル、そして、水着もしくはサマードレス着用の厳命である。
 郷に入っては郷に従え。なんでもアクエリオの夏季はそれがごく普通なのだそうで。
「はいはい。ま、お付き合いしますよ。あくまで散歩ですからね」
 気怠げに眼鏡の黒縁をいじりながらの塩対応で応えた|第一人格《彼》の中では既に|第二人格《彼女》がすっかりはしゃいた様子であれやこれやとお出掛け着を吟味をし始めていたのであった。

 ――そして。
 故郷求める旅人とかつての旅人のふたり連れは、今、星霊建築が生み出す眩い夏空の下をゆるりと散策する。
「都市国家は面白いっすね~。
 天井があるのに空が見えるし、建物も不思議な形してますし」
 都市のてっぺんにと鎮座する大きな……あまりに巨大すぎる水瓶を見上げるダニエルはすっかりと避暑地の令嬢といった装いで。
 ぜったいにこれとの|第二人格《彼女》からの|我儘《オススメ》をまるっと全面降伏で|第一人格《彼》が受け入れた形である。
 フリルで飾った黒ドレスにつばの広い白帽子をコーデしてディルティーノにエスコートされる清楚なそのさまを傍目から20代男性と見分けるには相当の眼力が必要であろう。
 片や、そんなダニエルをエスコートするディルティーノはといえば夏の水辺を闊歩する粋な美青年そのものであった。
 異国情緒あふれる布飾りが幾重にもあしらわれた洒脱なハーフパンツ姿に涼しげな袖なし上着をざっくり羽織って、身軽なサンダル履き。
 実年齢は四十路にと届いたばかりの、時を止めた麗人を案内役に楽しいアクエリオ巡りは続けられてゆく。
「都市国家は他の世界と比べたらたしかに珍しいだろうね。星霊建築の賜物ってやつさ」
「星霊建築……ユーベルコードとは全然別物っすよね?」
「ああ、星霊の絵を用意して決められた手順に従えばだれでも使える非戦闘アビリティの一種で……あー……」
 ディルティーノにとってはあまりに日々の生活に密着して普通に在り続けるそれらを、あらたまって他世界の者にかみ砕き説明し直すという行為は思いのほか難易度が高い。
 ましてディルティーノとて特別に造詣が深い訳でもなく――結果として早々に匙を雑にぶん投げてしまうこととなった。
「まぁ、つまりは、全部スゴい力のおかげって事!」
「……はいはい、まぁ、魔法の力って事っすかね」
 この世界独自の珍しい技術に対してうずいた好奇心と都市探索を秤に掛けて、後者へと傾いたダニエルはそれ以上の追究をあっさり諦めるのだった。

 盛夏の水の都で行き交うゴンドラ達は観光用から運搬用、店舗代わりの屋台舟から、時に冒険者用までと実に多種多様で――水の都の風景にいっそうの彩りと賑わいを伴って溶け込んでいる。
「さっきから丸いペンギンをやたらよく見かけるんすけどここのマスコットっすか?」
 通りすがりの舟から購入したトロピカルドリンクで喉を潤しながら……祭都の異様なペンギン人気に、ふと気づいたダニエル。
 舟という舟に例外なく描かれたペンギン印、だけではない。
 路面店の店先にも、行き交う人々の装身具にも。
 そして今、ダニエル達が手にしたドリンクに添えられたフルーツの飾り切りまでもが。
 みな一様に同じ金の冠いただき、まんまるな割にやたらと風格だけはあるペンギンをモチーフにしたグッズを、大小様々、やたら見かけるのである。
「あれはマスコットじゃないよ、水神アクエリオ様だよ。ここの|大星霊《エラいヒト》だね。
 マスコットは、あっち。ウォータくんっていうんだよ。そっかーこの時期だもんね」
 |丸ペンギン《あんな見た目》だけど都市の名を冠するほど凄い存在だったのかと驚くダニエル。
 再び案内役にと張り切り出したディルティーノが指さしたのは簡略化された髭もじゃの海賊の看板イラストだった。
「ウォータくんはもともと残虐非道の限りを尽くしてついには水神様にまで反旗を翻して互角に渡り合ったという伝説のゴンドラ大海賊――だったはずが何故だかいまやすっかりアクエリオ最大のお祭りに華を添える(?)かわいい(??)マスコットなんだ」
「そっちが……てか、いろんな意味でキャラ濃すぎじゃないすか?
 にしてもお祭りっすかー」
「そう、ここではアクエリオ水神祭っていうのがあるんだよ。水着コンテストだけじゃなく色々な競技があったんだ。
 ディオスボールやゴンドラレースは白熱してさ、僕も参加した時は楽しかったなぁ」
 10数年もの以前の思い出をつい昨日のことのようにいきいきと語るディルティーノにダニエルの芒洋とした表情も思わずつられて破顔して。
「コンテスト以外にもやる事が盛りだくさんにいっぱいあるのは大変そうっすけど……暇しなくて楽しそうっすね。
 今年はもう終わった後みたいですけど、俺達も参加できる日、来るといいっすね」
 ふわり。
 ダニエルの口からこぼれた言葉に、今度はディルティーノが満面の笑みを浮かべる番。
「そうだ。僕、ゴンドラ乗りの資格持ってるんだよね。良かったら乗ってみる?
 今から一隻借りて来て、漕いでみせようか。 ……ここからだったら『ステラマリス』が一番近いかな? 漕ぐの久々だけど頑張っちゃうぞ!」
 思い立ったが吉日とばかり、ダニエルの手を引いて勝手知ったるアクエリオの大通りを駆け出すディルティーノ。
 向かった先はゴンドラ会社の一つで、彼女はほぼ顔パスで舟を借り受けた。
「アクエリオのゴンドラは『育つ』から、もしもレースに出るんだったら昔みたいにまた材料を採取する所から始めるのが一番なんだけど。
 ああ、アクエリオにはゴンドラの木っていう稀少な樹木があってさ。それを使って星霊建築でなんやかんやすれば一丁上がりって寸法」
「星霊建築……スゴいっていうか万能の力過ぎじゃないっすか??」

 かくしてふたりを乗せたゴンドラは水飛沫あげて輝き揺らめく水路へと漕ぎ出し、揺蕩うままに、いつしか人気はすっかり途絶えて大理石の迷宮めいた区画へと流れ着く。
 観光遊覧の穴場だというその廃棄領域はディルティーノのとっておき。
 先迄の心浮き立つ喧騒とはまた違う静けさと時折吹き抜ける夏風が、ゆるり、ふたりを包み込む。
「どうかな、水上から見る景色はまた違うでしょ?」
「いいっすね。涼しいし、水の都らしい観光っす」
 舟歌を止めてダニエルに語りかけるディルティーノ。
 ゴンドラの速度は徐々に緩やかに。
「水に囲まれたこの景色、僕もお気に入り。 ……アクエリオには色々思い出があってさ、見る度に思うんだ。生きてて良かった、なんて」
 秘された扉の最奥、氷壁の内にと封じられし『魔王』の心臓を巡る死闘の記憶が脳裡を過ぎり……刹那、ディルティーノの微笑はその陰影を色濃くする。
 微かなその変化を察して、けれど、あえて深くは踏み込まず。
 ダニエルはこのアクエリオも先生の住むエルフへイムも見ていて飽きない良い場所だと笑った後に、話の先を促した。
「こんなに生きると思ってなかったからね。お陰様で猟兵になってからは毎日が新鮮で楽しいよ。他の世界は知らないものばかりで興味深い。
 だけどやっぱり、自分の|世界《ふるさと》が一番良いと思っちゃう」
 ゆらゆらと。凪の水面の上でゴンドラを完全に静止させたままそう語るディルティーノは、ふと、己を見つめるダニエルからの複雑な苦笑まじりの強い視線に振り返る。
 それは、らしくない逡巡。
 そして――。
「……俺は自分がいたはずの世界が分からないもんですから、これだけ戦ってても、
「救えてよかった」と思うだけで「ホッとした」と感じた事はないんすよ。
 自分の場所、自分の世界。それがある気持ちだけは羨ましいと思いますね」
 ――羨望。
 訥々とダニエルが零した述懐の一語一句を獅子はただ無言で受け止め、慈しむ。
 言っても仕方が無い事を……言われたってどうしようも無いだろう事を零してしまったとの後悔が忍び寄った、その瞬間。

「いっそのことキミの世界はここだった! この世界の住民だ!
 ――って事にしない?」
「は? ここが俺の世界?」

 ちゃぽん、再び櫂の先端が落とされた水面から波紋が広がる。
 陽光の熱を帯びた風がふたりの金髪を撫でて通り過ぎ――沈黙。
「……なんてね! 半分本気、半分冗談!」
 なのに、あっさりと前言は覆されて。ディルティーノは陽気に笑うばかり。
 行き場を失ったダニエルの驚きは宙ぶらりん。
 けれど――だけど。
 先生からの提案が、ほんの一瞬、とくんとこの胸を打ったのは確かで。
「なんだ冗談か。
 ……でもまぁ……勝手にそう決めるっていうのも、悪くない考え方っすね」
 ならば、あるいは。
 あてどない旅の終着を『それ』と定めてしまうのも――うん、きっと悪くはない未来図のひとつだ。
 ダニエルはすっかりいつもの調子を取り戻し……。
 そしてゴンドラは、再び、漕ぎ出し始める。
「キミの求める場所、見つかるといいね」
 きらきらと光る水飛沫。
「先生の気持ち、理解できる日が来るといいっすね」
 ゆらゆらとうまれては弾けて消える水泡はどこまでも透き通って煌めいて。
「僕もそれを見届けたい」
 唄うように祈るように――|獅子たち《ふたり》を乗せて小さき舟は進む。

「でも……僕はいつでも歓迎するからね?」
「……検討しときます」

 夏の青を映す空と水の狭間を。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年09月01日


挿絵イラスト