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玉の如き煌めき放つ硝子色の日々を

#アルダワ魔法学園 #ノベル #猟兵達の夏休み2023

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百海・胡麦
イージー・ブロークンハート様(f24563)
との夏のおでかけ
アドリブ歓迎/ご負担であれば短めでも構いません。

【舞台】
水運が発達したアラビアンな都市
活気があり、商魂逞しく笑顔が集う。

アルダワ魔法学園の
⑤群島海域に在る印象ですが言及せずOK
(バンコクの水上マーケットのファンタジー版とでも!)


【お相手様の呼称】
①イージー殿(慌てたときにイージーどのっ!)
(更に大事な時、イージー!と叫ぶ事も)
②貴方、旦那さま、いとしいひと
(想いが高まるかお相手様を落ち着けたいとき等)


【したい事】
現地で買い求めたアラビアン風の装束を纏い
手に果物、飲み物を取ったところから

風景を楽しみ
珍しい布地や土産物を眺め
ボートの動力源を不思議がりながら
慌てて水に落ちたり…
ハプニングも共に楽しむ、和やかな旅路の一幕を。

購入予定:
食べ物・香油
肌触りのいい生地・ショール


【乗り物】
ふたりと荷物が乗る程度の小舟
簡素な屋根、薄い日よけのカーテンを柱に括れるイメージ
花飾りなども◎

・蒸気魔導技術を元に
船頭さん抜きで動かせる仕様かと。


【お相手様への想い】

ころころ変わる表情、明るい声音、穏やかさの中に
鋭く挑発的な剣士の貌。
悪戯好きで余裕たっぷりの笑みの裏には
寂しがりやで甘えん坊の貌
――だれの前でもすぐ泣くひと。

でも己にとって
こんなにも優しくて頼もしい
いとおしいひとは居ないのです。

万華の輝きを宿す強い硝子剣士
指輪と約束を交わし合った夫婦です。


二人とも動物や道具の世話好き
姐やの貌で可愛がったり。
此方は不意に愛情表現されると、赤く染まって口ごもり
同じ事を返したがります。

愛おしさと負けず嫌いから――己だってこんなに好きなのだと表したくなるのです。



【プレイング】

香油…淡く花の匂い
ほっとする香り。
船から見ゆる風景は、すべてが初めての色鮮やかさ。
砂地と落ち着いた青空――水の心地よい音だけが、長く住んだ東国を思い出させる。
嗚呼…隣に居る愛しいひとは、いつもの輝きだ。

わあ、それ可愛い! 買うてきてくれたの?

子どものよう頷き瞳を輝かせます。

香油は己が所望した。
旅先や家でこのひとが寛げるものをと。
水上のこの国のなら――風雨にも残る優しい香りがある気がして。
己の想い人は旅人なのだ。


あ!生地!! あれあれ見たい!
船を寄せれば豊かな色彩
幾何学模様から複雑な刺繍。
物の流れと文化のぶつかりあいを感じる。
指腹で、感触を確かめ…想い人の視線を追いながら探す。
実はこの人の腕を護る包みを作りたいのだ。
好みで身につけやすくて、肌に優しいもの
――この人の左腕は、硝子に変わっている。外では隠すことが多いために厚着が増える。
だから軽く肌に心地よい包み布を。


イージー殿の声掛けに応じて
ショールに目を映す。
綺麗……似合う?
イージー殿も凄く。ほら、影が綺麗。

お土産話は沢山聞いた。知らない異国の街。
けれど――旅先のこのひとを直に見る事は殆ど無かった。
猟兵の仕事で少しだけ。
此度のような旅行は初めて。

…こんな風にいつも買い物してるのね。
笑みが溢れる。



ずっとずっと憧れてたの。
貴方のお土産話に。いつも眼裏に
こんな顔してるのかな、跳ね回ってはしゃいでるだろな
素敵な人たちと出逢うて好かった…て
描いて。


一緒にこやって旅できることが物凄く嬉しい。
ありがと、イージー殿。

ふたり水の中へ!
他の荷物は商人に預けたままか、船上で無事だと嬉しく。

びしょ濡れでぷかぷか。
泳ぎは不得手で、近くのものにしがみつく。
もう
アタシらはしゃぐといつもこうね。
くすくす微笑うて、互いに手を取って船に上がり
服を乾かしながら

乾いたら何から買おか。
あ、空が綺麗。好いね、こゆう時間も。

イージー殿とだと何でも楽しいや。


イージー・ブロークンハート
百海・胡麦【f31137】さんと夏のデートのノベルをお願いします。

以下プレイングから、お好きにかいていただけたらと思います。
アレンジほか、お好きにしていただけましたら。
文字数はおまかせいたします。短くてもかまいません。

・胡麦さんとの関係
模擬戦から意気投合し、親しくするうち、
昨年末に結婚を申し込んで受けていただきました。
今は胡麦さんの家で一緒に暮らしています。
結婚といっても式はあげず2人で密かに誓い合い、指輪を交換した形です。
凛とした姐やのようでも、
可愛らしい少女のような顔をするところも愛しくてたまりません。
ベタ惚れです。

・お相手さんの呼称:こむたん、胡麦、(ふざけているときや調子に乗っているとき)胡麦殿

・舞台・様子
 水の綺麗な大河の上、アラビアンな雰囲気が漂う水上マーケット・水上バザール
 川の上に多くの船や岸からの出店が色とりどりに軒を連ねている状況。
 ふたりであちこちマーケットの商品を見ています。

【プレイング】
 知らない街、きたことのない場所を訪れるのは大得意!
 なにせひとりの旅には慣れに慣れておりますからな!

 こういう船でのんびり進めるマーケットはスリなんかの心配もないから結構手軽に楽しめるんだよな。
 青空、天気もいいし活気もあってたのしいです!
 チップ払っておまけしてもらったり、地味だけど地元の人がおすすめのものを聞き出したりするのも慣れたもんですよ。どや!

 というわけでオレの気持ちはとりあえず食べ物!
 知らないお菓子に果物に、手で摘んで食べるような軽食。
 あとは香辛料とかかなあ。

 あっちもそっちも美味しそう。
 目移りしつつ、通りすがりの船からおいしいお菓子を買ったので、
 香油を購入し終わった胡麦にひとくち。

 それにしたんだ?
 手もとを覗けばさっき嗅がせてもらってオレも好きだなあって2人で笑った香油。…。
 ちょいとてれますなあ…ふふ。ありがとうな。

 次を探したら胡麦が大声ではしゃぐのでそっちへ。
 ――ああ、生地屋さん!

 豊かな色彩、幾何学模様からわかりやすい華やかで緻密な刺繍にふわふわの織物まで。
 さすがマーケット、文化のぶつかり合う位置だからものすごく面白い。
 お菓子は脇に置いて。
 オレの目に止まったのは薄織物のショール。
 さらっと柔らかくて、向こうが揺れる。綺麗な色。

 隣を見ればこむたん、考え事。
 そだよな、こういう綺麗な生地がいっぱいあったら、どれかひとつでも欲しくなるよな。

おっちゃん、これとこれ。
 迷ってるようなので、買う姿も見せがてら胡麦の隣から手を出して買ってみせる。
 胡麦がオレを見るので、ふわりと買ったばかりのショールをかける。

 あげる――オレのセンスになっちゃうけど、よく似合ってる。
 こういうの一枚あると、少し陽射し、和らぐだろ?

そだよ、買い物するときはこんな感じ。
っていっても、1人の時は最低限のものとか食べ物ばっかりだから、こういうの買うのは初めて。

それから胡麦の腕にショールと一緒に会計したきれいなブレスレットを。

女の子に目の前でこういうの買うのも、初めて。

似合ってるよ。
笑みを交わ――

ト゛ン゛ビ゛!!!
抱え直したお菓子をひっさらおうとして突っ込んでくるトンビえっ鷹わかんない現地でっかい鳥類アァーーーーーーー!
水飛沫ッ!!
飛び散って沈むお菓子!去っていく鳥!濡れちゃたオレ達!ドウシテッ!
それでも胡麦がくすくす笑うので、つられて笑う。
ほんと、いつもこうだな。

くすくす笑って、船に上がる。

そうな。乾いたら何から買おっかな〜〜。

ひとりたびの時期にはなかった、おだやかさを備えた旅行って、こんな幸せなもんなんだな。

おん。川も空も綺麗だ。



●A side
 水が揺れている。
 風に揺れている。
 花と香辛料の香りが鼻腔をくすぐるようにして、魔導蒸気機関が立ち上らせる白煙と共に周囲に満ちては風にさらわれていくのだ。
 色鮮やかな視界は、初めて知るものばかりであった。
 今、まさに己の体は波間に揺れている。
 それは船に乗っているからだ。
 船と言っても大きなものではない。魔導蒸気機関でもってひとりでに漕ぎ出すアルダワ魔法学園の魔導蒸気文明の恩恵そのものであった。

 夏の日差しを船の屋根とカーテンが柔らかく受け止めてくれている。
 水上にあれば吹き込む風は涼やかなものであった。
「不思議だね」
「ん? 何が?」
「このボート。船頭さんいなくても動いてる」
「ああ、炎水風の精霊の魔力のおかげでしょうなぁ。なにせ此処は世界初の魔導蒸気エンジン、三精霊機関が生み出された場所だから」
 よく知っているものだと思った。
 以前も此処に訪れたことがあるのだろうかと思ったけれど、彼は、イージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)は、どこにでもいそうで、どこにでもありそうなありきたりな表情を浮かべて笑っていた。
「さっき案内板に書いてあったから」
「もう、折角関心したところだったのに」
「ふはっ、それは困った。挽回できるかな、これで」
 そう言って彼は己に葉の器に盛り付けられた、まあるい何か白いフレークが満遍なく振りかけられたものを手渡してくれる。
 白いもこもこ、とでも言えばいいだろうか。
「わあ、それ可愛い! 買うてきてくれたの?」
「うん、名前は知らないけど、なんかおすすめって言われたので。米粉の皮でココナッツと黒砂糖をねった餡を包んでるみたいだなーって作ってる所見たんだけど。あ、上の白いのはココナッツのフレークだな」
 所謂、砂糖菓子というやつだろうか。

 白いもこもこ。可愛らしい。思わず笑顔になってしまう。太陽の光に透けるような色合いが面白い。手元に置いた香油が僅かに船上に香る。

●B side
 知らない街を、訪れたことのない場所を訪れるのは好きだ。
 得意だと言ってもいい。
 何せ、一人旅というものには慣れている。まあ、その綺麗な女の子に騙されたり、怖いお兄さんたちに追いかけられたりと、お世辞にも熟れた旅人とは言えないけれど。
 けれど己はそれでもいいと思ったのだ。
 おひとよし、とどうしようもない評価を受けても、だ。

 だって、見上げた空はこんなにも青く晴れ渡っている。夏の日差しもいつもならば鬱陶しくも感じるほどであったが、今は己を祝福してくれているようにも思えた。
「へぇ、これって砂糖菓子?」
「そうそう。一口で食べられるしオススメ。後はこっちの果物。果汁をすするの美味い」
 水上マーケットにて生活を営んでいる人々に己は多くのことを訪ねた。
 チップを手渡し、買い物をして、彼らの持っている知識を分けてもらう。こういうことには慣れているのである。
 一種の作法めいたものであろう。
「ありがとう。じゃあ、それを一つ二つ…もらって。あ、その果汁の美味しい果物って、あっ、なるほどね。硬い皮は器ってこと」
 目の前で硬い外皮の果物の天辺をナイフが切り飛ばし、そこに管が差し込まれる。
 なるほどなぁ、と現地の生活様式に関心しながら、よっと、と慣れたように己の船に戻る。

 そんな己を見上げるのは、百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)だった。
 これ、と手渡した砂糖菓子を見て彼女は目を見開いて見せた。
 その瞳の輝きは子供のように無邪気であり、とても眩しいものであった。ああ、と息を吐き出しそうになるほどに自分の気持ちを思い知らされる。
 重ねた年月だけで言えば己より彼女がずぅっと大人である。
 けれど、今の彼女の表情を見れば、そんな年月の差など些細なことである。凛とした姐やのようでもあり、可愛らしい少女のような顔を見せてくれる。
 そんな彼女が愛おしくて仕方なくなってしまう。
 一言で言うのならばべた惚れというやつである。何が悪い。ベタ惚れ。
「あ、それにしたんだ?」
 彼女の手元を覗き込むと、白いもこもこの砂糖菓子を頬張った胡麦が頷く。

 かすかに鼻をくすぐる香油。
 それは先程彼女が見つけて、自分が好きだと言った香油だった。
「なぁに、顔を赤くして」
 自分が差し出した砂糖菓子を、あーん、と食べた彼女が首を傾げる。
 もごもごと頬を膨らませている彼女は、なんとも気恥ずかしそうな顔をしていた。ああ、食べている様をじっと見ていたと思われたのか。
 いや、確かに可愛かったけど。
 自分が今、指摘されたように顔を赤くしたのは、彼女の手元にある香油が原因である。
 彼女が欲しがった香油。けれど、自分が好みだと言った香りを選んでくれたことに、なんというか照れてしまったのだ。
 思ってくれた、という事実がむず痒い。
「ちょいと照れますなぁって……ふふ。ありがとうな」

●A side
 アタシの想い人は、なんとも可愛らしい。
 ころころと変わる表情に、明るい声色。それは穏やかさの象徴のように己には思えてならないのだ。
 でも、知っている。
 鋭く挑発的な剣士の貌も。寂しがり屋の甘えん坊の貌も。
「せっかくなら安らげるもの、くつろげる香りのほうがよいと思って」
 人の歩みに於いて風雨というものはつきものだ。
 燦々と照りつける太陽の厳しさも。肌を切り裂くような風の強烈さも。
 それらの全てを受け止めてなお、人は往く。いや、己の想い人は旅人となる。
 ならば、一時でもこの香りでもって彼の心が落ち着くのならば、と己は思ったのだ。

 それに照れる様子がなんとも。可愛らしい。
「さて、次はどこ見ましょうか? 胡麦殿?」
「もう、話を逸した……あっ! 生地!! あれあれ見たい!」
「えっ、なになに!? 何事!?」
 突然自分が騒ぐものだから、彼は、イージーは驚いたようだった。けれど、自分が指差す先を見て納得したようだった。
「――ああ、生地屋さん!」
「そう! 見て、素敵な模様。複雑……でも、物流と文化を感じさせてくれる」
 船を寄せれば、主人がどうぞ、と言うように笑む。
 ここは川の流れによって多くの文化と地域が入り交じる場所だ。交易、と一言に言ってしまえば、それまでなのだろうけれど、生地は別だ。
 如実に文化がぶつかって砕けて、混ざりあって、新しいものを生み出していく。

「指ざわりを確かめて見ても?」
 訪ね、触れる。
 イージーは面白いな、と興味深そうに見ている。
 豊かな色彩。模様。華やかさもあれば、そこに込められた意味すら見いだせそうだ。それを人は祈りと呼ぶけれど。だから、きっとこの指の腹に伝わる感触は人の祈りだ。
 感情を糸に織り込むようにして連綿と紡がれてきたものを感じる。
 そこに自分の祈りも籠められないだろうか。共に居ることを許して貰えないだろうか。
 だから、指の腹で感触を確かめながら、視線は想い人の横顔を見つめる。

 彼の好みを知りたい。
 身につけやすくて、肌に優しく。彼の心を顕す左腕を覆うのではなく、守る何かを贈りたいと思うのだ。

●B side
「ふむん」
 自分は今、ちょっと考え事をしている。
 正確に言えば、考え事をしているふりをしている。なぜかって? どうやら、こむたん(胡麦の愛称である)は考え事をしているようである。
 何か言うのは彼女の考え事を妨げるだけであるから。
 でも、面白いな。
 こういう綺麗な生地が目の前にたくさん広がっている。
 彼女はこういうのも好きなのだな、と些細なことであっても嬉しくなってくる。

 ああ、でもそうなると。
 この豊かな色彩の中から、多くの模様の中から、彼女に似合うものはどれかと考えるフリはフリではなくなっていく。
「おっちゃん、これとこれ」
 胡麦は、どうやら迷っているようであった。わかる。買い物って慎重になるよね。だから、というわけじゃあないけれど、自分が買う姿を見せたら彼女も決心が付くのではないかと思ったのだ。
 最初に目に止まった薄織物の生地。よくよく見れば大判のショールだった。風に揺れているのが柔らかそうで良いし、何より綺麗な色合いが胡麦の琥珀色の瞳や乳白色の肌に似合うと思ったのだ。

 生地屋の店主が包もうか、と尋ねてくるのを手で制して代金を手渡して胡麦の肩に薄織物のショールをかける。
 少し、なんというか、えっと、あれだ。
 気取ったかもしれないけれど。
「あげる――オレのセンスになちゃうけど。こういうの一枚あると、少し陽射し、和らぐだろ?」
 彼女の琥珀色の瞳がよく見える。見開いた、と言える彼女の表情を見て、笑みが溢れる。
 それから、と彼女の腕に通されるはブレスレット。
 綺麗な色だと思って買っておいたのだ。
 うん、やっぱり似合う。
 というか、うん。最高だな。

「……こんな風にいつも買い物してるのね」
「いや、まあ、その女の子の目の前でこういうの買うのも、初めて」
 でして。そのぉ、と言葉をつなげようとする。
「ずっとずっと憧れてたの」
 彼女の表情が笑みの形になっていく。溢れるような笑顔。想いが溢れるような笑顔。
「貴方のお土産話に。いつも眼裏に。貴方の顔を。こんな顔をしているのかな、跳ね回っているのだかな、素敵な人達と出逢うて好かった……って、そう描いて」
 だから、と彼女は言葉を紡ぐ。

「一緒にこやって旅できることがものすごく嬉しい」
「オレだって……それ、似合ってる。やっぱりっていうか、オレが思った以上にずっとずっと似合ってる」
 言葉がとめどなく内側から溢れる。せっつくようにして喉元から出ようとする言葉に溺れそうになる。
 そして、そんな溺れそうな己に彼女は強烈な一撃を放つのだ。
「ありがと、イージー殿」

●Kite side
 互いに笑みを零す二人がいた。
 人の目には仲睦まじい者同士に写っただろう。己達で言うのならば番である。
 けれど、空往く己には関係のないことである。
 この川に無数に浮かぶくり抜かれた木の上に人間はいて、そして無防備にもなんだかうまそうなものを己の目に晒したのだ。
 なら、それはもう往くしかないだろう。
 ならば、見よ。
 この大翼羽撃く影を。

●Both sides
 それは一瞬だった。
 あまりにも一瞬だったので猟兵とは言えど気の緩みを引き締める間もないものだった。
 水上マーケットの空には迂闊な人間の手にした食べ物を虎視眈々と狙う鳶のような鳥類が幾羽も飛び交っている。
 彼らの強襲は、胡麦もイージーにも気取られぬものであったし、事実彼らがほほえみ合っている最中行われたのだ。
 狙われたのは砂糖菓子。
 揺れに揺れる船。

 二人は並々外れた体幹を持つ戦士でもあったけれど。しかし、あまりにも不意。それも目の前に最も心許す者がいたのならば、その強襲を防ぐことはできなかっただろう。
 まあ、そういう理由は細かく言わずとも結果は知れている。
「ドウシテッ!」
 イージーは船より落水して、すぐさま顔を水面に出して事態を理解する。何か鳥のようなものが襲ってきたのだ。
「もう、アタシらははしゃぐといつもこうね」
 イージーが胡麦の手を離さなかったから、泳ぐのが不得手である彼女はこうして溺れずに済んでいる。しっかりと繋いだ手に彼女はすがりつくようにして身を寄せて、川の上で笑みを浮かべる。

 不意打たれたことよりも、なんだか笑みがこぼれて止まないのである。
 くすくすと溢れるままにしてしまうのだ。
「ほんと、いつもこうだな」
 イージーもそんな彼女の言葉に、笑みに釣られて笑ってしまう。
 なんて日なんだろうって普通なら思うかも知れない。
 びしょ濡れになってしまったし、買った砂糖菓子は鳶みたいな、なんかでっかいのにかっ攫われてしまうし。
 でもまあ、他の品々は船の上で無事みたいである。

「よ、っしょ、と。あーもー」
「くすくす……面白い。貴方と居るとまったく飽きないことが次々と起こる」
 船の上に上がった二人はびしょ濡れの衣服を絞って笑い合う。
 服が乾くまで此処で足止めだ。
 けれど、それでもいいと思った。だって、見上げた空はあんなにも綺麗で。
「好いね、こゆう時間も」
「おん。川も空も綺麗だ」
 失敗も、成功も。
 みっともなく思えることも。
 全部が、愛おしくて。
 互いに共にあることが、何でも無い日々の何でもが楽しい、と二人は思いを同じくして、青空の下で笑むのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月14日


挿絵イラスト