ロシア戦線:ホワイトアウト・ジェイル・ロック
――獣人戦線・ロシア最北端「永久凍土開拓地」。
目の前の真っ白な猛吹雪は、俺達を閉じ込める自然の牢獄だ。
ここは『ワルシャワ条約機構』軍に反乱分子とみなされた勇敢なクマ達の墓場であり地獄。
不毛な永久凍土の開拓を命じられた俺らは、極寒での過酷な奴隷労働により、いずれ全員死を迎える。
だが皮肉にも、真に強きクマはオブリビオンとして蘇ってしまう。
俺たちが憤ったこのロシアは、そいつを支配者として向かえるのだ。
もう俺たちに希望なんて見えない。この分厚い吹雪で覆われた景色のように。
――グリモアベース。
「遂に獣人戦線の世界で、ヨーロッパ側からロシアへ侵攻が可能になったよっ!」
グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)が声を張る。
ロシアは「闇」を操る強大なオブリビオン同士が手を結んだ、一時的な軍事同盟『ワルシャワ条約機構』軍が全域を完全に掌握しており、森林を無限の闇で覆い尽くし、空には「五卿六眼(シャスチグラーザ)」と呼ばれる、監視目的で作られたという大呪術が浮かんでいる。
これによって、ロシア人はクマを主体とする勇猛な民族であるにも関わらず、彼らの反抗活動は尽く封じられ、反逆者達は「永久凍土送り」されてしまう。そこでの不毛な開拓で無駄に労働力を消費させ、毎日彼らを死へ追い込んでいるのだ。
しかも彼らは死ぬと強力なオブリビオンになって復活するので、下手に生かすよりもさっさと殺した方がいいと条約機構軍は判断しているのだ。
「だから、みんなには今から極寒の『永久凍土開拓地』のひとつに向かってもらって、収容所にいるクマを始めとするロシア獣人達を救出してほしいんだよっ!」
真夏の8月にマイナス40~50℃の猛吹雪が荒れ狂う白銀世界へ行くことになるため、しっかりと防寒対策は講じてほしい。
「今回の任務は索敵とスピード感が重要だよっ! まずみんなは『永久凍土開拓地』付近に転送されるから、速やかに条約機構軍の斥候を仕留めてねっ! 大きな音を出したり、時間をかけすぎると、収容所にいる獣人達が「猟兵を手引きした」って濡れ衣を着せられて全員まとめて毒ガス処刑されちゃうから、理想は暗殺だねっ!」
斥候は開拓地内外で巡回を行っている。施設内に入っても油断は禁物だ。
「見回りの兵隊を全滅させたら、残る開拓地監督人で部隊長の強力なオブリビオンを撃破してほしいなっ! そうすれば収容されてる獣人達を解放して、開拓地の施設を破壊して逃走するだけだよっ!」
ただし、逃走先は一旦ロシア国外……つまり中国へ向かうと告げるレモン。
ほとぼりが冷めるまで脱走したロシア獣人達は|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》のひとつに身を隠し、後に偽造パスポートでロシアへ再入国するという流れだ。
その逃亡計画を実行するためにも、まずは猟兵達が『永久凍土開拓地』を解放しなくてはならない。
「猛吹雪で視界は最悪だから、うっかり見つかって奇襲されないようにねっ? それじゃあ、みんな頑張ってっ! いってらっしゃいっ!」
レモンは頭上に浮かぶ黄金色のグリモアを輝かせると、猟兵達を凍える白銀の牢獄へと送り出していった。
七転 十五起
毎日の酷暑に、凍死寸前のシナリオはいかがでしょうか?
獣人戦線は遂にロシア全域へ前線を押し進めました。まずは救助作戦から参りましょう。
なぎてん はねおきです。
●概要
第1章集団戦、マイナス40~50℃の猛吹雪に見舞われる『永久凍土開拓地』付近に転送された猟兵達は、開拓地の収容所内外を厳戒態勢で警備する『ワルシャワ条約機構』軍と交戦します。
しかし、派手に戦闘を行うと収容所の監督者が「猟兵を手引きした獣人が居る」と疑って、収容者全員を毒ガスで処刑してしまう予知が見えました!
なので、敵に気付かれないように静かに接近し、素早く暗殺することをお勧めします。
もしくは昏睡させる、気絶させるなどして、しばらく無力化してから仕留めてもよいでしょう。
(敵のユーベルコードは凄まじい轟音を出すものもあるため、要警戒です)
ただし、野外戦闘は猛吹雪で視界が最悪です。逆に死角から奇襲されないようにご注意を。
第2章ボス戦、この開拓地の監督人でこの地区の部隊長を務める強力なオブリビオンとのバトルです。
冷酷非道な生物化学兵器の遣い手だそうです。詳細な情報は断章加筆時に追加します。
第3章日常、猟兵達と脱走したロシア獣人達は、中国の|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》のひとつに身を隠し、とあるサイバー鍛冶屋で下働きをします。ここでの給金を貯めて、脱走した獣人達の人数分の精巧な偽造パスポートを調達しなくてはなりません。
猟兵達も一刻も目的の金額に到達させるべく、獣人達と一緒にサイバー鍛冶屋で働きましょう!
●その他
本シナリオに限り、第1章と第2章にてマイナス40~50℃の大極寒に対するアプローチをプレイングに明記した場合、気力・体力の消耗を抑えられたと判断してプレイングボーナスを発生させます。
それでは、皆様の勇敢なプレイングをお待ちしています!
第1章 集団戦
『雪かき部隊』
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POW : 特攻そりドーザー
【そりをブルドーザーに見立てて前方に構えた】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【移動中に巻き込んだ雪をぶつけ、雪だるま化】の状態異常を与える。
SPD : 雪隠れステルスアタック
対象を【雪隠れマント】で包む。[雪隠れマント]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【ための雪かきスコップ】と、傷を癒やす【と同時に身を隠す雪】を生やす。
WIZ : 雪兎塹壕線
【|大砲穴《トーチカ》と降雪放射器】【雪壁生成機、自動追尾式雪兎型氷結爆弾】【もしもの時の自爆スイッチ】を備え、内部の味方は睡眠不要になる塹壕を、1日にレベルm掘ることができる。
イラスト:あさぎあきら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
獣人戦線のロシアの大雪原に転送されてきた猟兵達は、全身に浴びせかかる強風と雪の弾幕に思わず身を縮めてしまう。普段の会話程度の声量は風の音で掻き消され、マイナス40~50℃の猛吹雪が容赦なく体力と気力を奪い去ってしまう。もはや寒いという感覚ではなく、痛いと叫びたいくらいの苦悶が猟兵達を襲う。……さすがに本当に叫ぶと敵兵に見付かってしまうので慎んでいただきたいが。
猛吹雪の影響は体温低下だけにあらず、視界は良くて3~4m先までしか目視できない。それより先はホワイトアウトで空と地上の境目すら見分けがつかない。方角の感覚を失えば、あっという間に遭難者の仲間入りだ。故に長距離射撃は強風の影響も加味して非現実的で非推奨ある。発砲音もサイレンサーがなければ控えるべきだ。
しかも、予知で見た条約機構軍の警備兵は雪上迷彩のためか真っ白な軍服を着用しているため、肉眼で見分けるためには相当の技量が必要だ。ユーベルコードで敵兵も雪原に身を隠せることも頭の隅に入れておいてもらいたい。単なる巡回がてら雪かき作業に追われる白ウサギの兵士だと思っていると、思わぬ痛手を被るだろう。
つまり、ここ『永久凍土開拓地』は自然の脅威に守られた堅牢な拠点でもある。
そんな攻略最高難易度MAXの『永久凍土開拓地』へ、猟兵達はどのように侵入するのだろうか……?
ヴァルターン・ギャンビット
フォッフォッフォッ、たまには侵略宇宙人らしい事でもしてみるか。今からこの地のジャンルはSFホラーよ。
マイナス40~50℃?おいおい、俺様が着てる『スペースアーマー』を舐めてらっしゃる?宇宙で活動する為の装備だぜ?宇宙空間に比べたらこの程度の温度、余裕過ぎだぜ。
この白い闇に紛れながら気配感知で敵を探ってレイガンの不意打ちだ。
死体はこの吹雪が隠してくれるだろうよ。
さてと、んじゃ【シノビン擬態変身】で倒した敵に擬態だ。
これで他の敵に見つかっても疑われず油断させられるぜ。
後は、油断した敵の首に伸ばした腕を巻き付けて怪力で首をコキッと。
【技能・闇に紛れる、気配感知、不意打ち、怪力】
【アドリブ歓迎】
――獣人戦線・ロシア北方雪原の永久凍土開拓地。
闇と猛吹雪で覆われた死の世界、上空には真紅の「五卿六眼(シャスチグラーザ)」と呼ばれる、監視目的で作られたという大呪術が浮かび上がっている。
そんな白銀の死の世界に、正真正銘の宇宙人ことヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)が降り立った。
「フォッフォッフォッ、たまには侵略宇宙人らしい事でもしてみるか。今からこの地のジャンルはSFホラーよ」
ヴァルターンは猛吹雪の外気温マイナス40~50℃の超極寒世界で平然と闊歩している。見た目は防寒具のひとつも身に付けていないように見えるが、なぜ彼は凍えないのだろうか?
「マイナス40~50℃? おいおい、俺様が着てる『スペースアーマー』を舐めてらっしゃる? 宇宙で活動する為の装備だぜ? なにせ日なたは100℃以上、日陰はマイナス150~270℃なんだが? そんな宇宙空間に比べたらこの程度の温度、余裕過ぎだぜ」
ヴァルターンは闇と猛吹雪に自らの気配を隠しながら周囲の気配を探ってゆく。
「雪かきウサギ共は身を隠すためのマントを被ってやがるらしいなッ? ならこちらも少し姿を変えるとしようか」
ヴァルターンは宇宙忍者の頭領である。そのユーベルコードは擬態や変身の粋を超越して、なりたい存在へ自由に姿を変えることが出来る。自分の身体をゴムのように彼は身体を折りたたむと、完全に手足が生えた雪だるまに変身。
「よし、このまま接近するぜ」
猛吹雪の中でてくてく歩く雪だるま、確かにホラーである。
当然、警備で巡回する雪かき部隊の警備兵が不審に目を凝らす。
さすがに雪隠れマントを剥いで身体を出さなくては調査できないため、やむなくユーベルコードを解除する。
「おい、そこにいるのは誰だ!? ここは軍の機密区域だぞ!」
ヴァルターンはすぐに動きを止めて雪だるまのフリをする。
近付いてきたウサギ兵は、雪だるまヴァルターンを発見して首を傾げている……。
「誰だ……? 警備をサボって遊んでたバカは? たるんでやがる……これは上へ報告しなければならないな」
やれやれと面倒臭そうに踵を返すウサギ兵。
その背から、聞きなれない男の声が聞こえた。
「んじゃ、俺がその報告を上にしといてやるよ」
「ああ、助かる……ん? 誰だ――?」
ウサギ兵が振り返ろうとした時には、既に意識が途切れてしまった。
頭部が吹き飛んだウサギ兵だった遺骸の近くには、光線銃を構えた雪だるまが勝ち誇っていたのだ。
「はんッ、不審者なら通報モンだがよぉ……不審物なら調べなきゃだよなぁ~ッ? こんなアヤシイ雪だるまを見付けたら、隠密モードを解除して近付くしかねーもんなぁ? それがお前ら警備兵の仕事なら、猶更だよなぁ! おかげであっさりとレイガンの不意討ちで、後頭部からズドンだぜ」
ヴァルターンはすぐさま再び己の姿を変化させる。
そこへ、様子を見に来た仲間の雪かき部隊のウサギ兵が駆け付けてきた。
「おい、不審な物があったって本当か?」
仲間のウサギ兵が尋ねた相手こそ、先程殺した兵士に化けたヴァルターンである。
「あー……ごほん! ああ、本当だ。俺たちの前任の半の誰かが、ここで雪だるまを作ってやがった。サボってやがったんだ。胸糞悪くて雪だるまはぶっ壊してやったけどな?」
「うわ、マジかよ。猛吹雪でバレねぇって思ったのかな?」
「さぁな? だが職務怠慢で上へ報告しないとだな」
ヴァルターンは先程の一瞬で、殺した兵士の口調や声色や仕草を完全に模倣してみせた。
これには仲間も簡単に騙されてしまった。
「はは、いくら警備任務がキツいからって、サボるのはよくねぇよな。とにかく、今日はもう上がりだ。さっさと基地に戻って、ウォッカで一杯やろうぜ」
こうしてヴァルターンは、何も知らない同志兵に悠々と開拓地収容所付近まで案内される。
「ありがとよ、あの世でたらふく酒盛りしてろや」
「お前、何言ってるん……ッ!?」
ヴァルターンは手元だけを元の巨大バサミに戻して、道案内をしてくれたウサギ兵の首をボキッと圧し折ってみせた。当然、即死だった。
「そんじゃ、SFホラーの真髄……見せちまいますか!」
この後も兵士に化けたヴァルターンは、収容所内の兵士の暗殺を繰り返してゆき、着実に敵戦力を削ってゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ポーラリア・ベル
ふぇあー!雪中行軍ごっこのお手伝い、参りました!
ベルは鳴らしちゃだめかしら。(懐にしまい)
念のため妖精が包まれる雪の様に白い毛布で防寒&防雪
でも【氷結耐性】と【寒冷適応】があるし平気だよ。
雪の中から覗いて、【天候操作】でちょっと兎さんが見渡せる空を一瞬作り出して把握。
足元から雪に紛れて、ユーベルコードの回避パワーで素早く移動し、適当な1羽に忍び込むよ。
【略奪】でこっそり雪隠れマントを取ってから、服の中に入って冷気解放!【凍結攻撃】!
驚く暇も与えずに一瞬で氷像のカチンコチンにして動けなくなってもらうね!
雪隠れマントとホワイトアウトを利用して凍らせ回り
今日も一日凍ってて平和でしたーって事にするの!
|隠密任務《スニーキングミッション》において、体格の小ささは有利に働くことが多い。
様々な物陰に隠れることが出来るし、小さい体躯で敵に認識されにくい。
そういった意味で、フェアリーのポーラリア・ベル(冬告精・f06947)の23cm程の身長は今回の任務向けであった。
「ふぇあー! 雪中行軍ごっこのお手伝い、参りました! ベルは鳴らしちゃだめかしら。だめだよね」
セルフツッコミから自慢の冬告げのベルを鳴らさぬように懐へしまい込むポーラリアである。
冬が大好きなポーラリアは寒さに強い。だがマイナス40~50℃は生物が生きるには過酷すぎる環境だ。
念の為に彼女は雪のようにフワフワで真っ白な毛布を羽織って防寒着とする。
寒冷適応力の高いポーラリアには、これでも十分に暖かさを感じるようだ。
空飛ぶ雪の結晶ことスノウフローターに乗って、雪上ギリギリを低空飛行。
1~2m進んでは、雪の中へ降り立って周囲を観察してみせる。
白い毛布に雪が纏わりつき、自然の雪上迷彩となってポーラリアの姿を隠してくれた。
「いつもは雪を降らすために使うんだけど、今日はその逆!」
ここでポーラリアは魔法で吹雪の勢いを弱めてみせた。
先程までの視界の悪さが嘘のように解消され、向こう20m先が見渡せるようになった。
すると、異変を察知した雪かき部隊のウサギ兵達が、雪の下からヒョコヒョコと顔を出し始めた。
「おい、雪が止んでないか?」
「本当だ、珍しいな……?」
「でもこれで塹壕内の雪を掻き出しやすくなるな。今のうちに作業を進めるぞ」
ウサギ兵達は、雪の下に塹壕を掘っていたのだ。
これにポーラリアは思わず首を傾げてしまう。
「あれ? ウサギ兵は雪隠れマントをかぶってるんじゃなかったけ? 雪の穴から顔出してきたね?」
どうやら、ポーラリアは相手が繰り出すユーベルコードを勘違いしていたようだ。
本来であればWIZのユーベルコードを想定するべきところを、SPDと間違えていた。
「でも、やることはいっしょだもんね? 作戦通り!」
ウサギ兵が再び顔を引っ込めたのと同時に、ポーラリアは空飛ぶ雪の結晶を発進させて雪の塹壕内へ突入開始。
敵の背後へ忍び寄ると、その首筋から衣服の中へ侵入!
「ひゃあっ!」
あまりの冷たさに声を上げるウサギ兵。次の瞬間、その身体が一瞬で霜に覆われて真っ白な氷像に変わり果てていった。ポーラリアが自身の冷気を解放したのだ。
だが死ぬ間際の悲鳴を聞いた仲間の兵士達がポーラリアのもとへ接近してきた。
「お、おい! なんだありゃ?」
「あいつ、凍ってやがる!」
「て、敵襲! 敵しゅ――」
兵士達が異変に気付いて行動を起こそうとした刹那、ポーラリアは愛用のアイスレイピアを振るい、己の冷気と共に絶対零度の風を吹き付けてみせる。兵士達は雪壁を生成して防ぐ暇なく、あっという間に瞬間冷凍されて塹壕内に転がってしまうのだった。
「うわ、自爆スイッチなんて持ってる! 一瞬で凍死させて正解だったよ。それじゃ、このあとも驚く暇も与えずに一瞬で氷像のカチンコチンにして動けなくなってもらうね!」
ポーラリアは再びこの周囲を凄まじい吹雪で閉ざし、殺害した兵士の遺骸を雪で覆い隠していった。
「こうやって雪の下に全部隠しちゃって、今日も一日凍ってて平和でしたーって事にするの!」
無邪気な冬告精は塹壕内を辿りながら、遭遇したウサギ兵を小さな体で素早く掻い潜って氷漬けにしてゆく行為を繰り返してみせた。
大成功
🔵🔵🔵
榊・霊爾
あの|血の女帝《始祖吸血鬼》の気配がする
寒空に悪趣味な落書きをして...|マーキング《ナワバリ主張》のつもりかい?
暗殺と救出か、得意分野だ
...特に暗殺が
それにしても寒い
鴉羽外套を着ているとはいえ流石に
『境界』を発動し、極寒の冷気を中和
鴉羽笠で【存在感】を消し【気配探知】されにくくして収容所に近付く
警備はすれ違い様に属性カウンターで、灼熱の刃と化した白鶺鴒の【不意打ち・早業】の【居合】で切り裂く
おそらく、連中は私の気配を感じ取った瞬間なます斬りにされているだろう
雪かきご苦労様...
榊・霊爾(告死鴉・f31608)が死の吹雪荒ぶ獣人戦線のロシアの空を見上げる。
雪雲の空でもはっきりと浮かぶ、赤き『六眼五卿(シャスチグラーザ)」の大呪印。
それを彼は忌々しそうに舌打ちしてみせる。
「あの|血の女帝《始祖吸血鬼》の気配がする。寒空に悪趣味な落書きをして……|マーキング《ナワバリ主張》のつもりかい?」
と、榊は此処で身震いする。寒い。あまりにも寒い。
「それにしても寒い。鴉羽外套を着ているとはいえ流石に」
マイナス40~50℃の寒冷地獄を薄着で平然としているのは、榊が人間ではなく悪魔だからという理由ではなく、榊が周囲に生成しているユーベルコード、|術式『境界』《イクイノックス》のおかげだった。任意の属性を吸収・相殺し中和する空間内では、超極寒の凍結属性を相殺・中和することで生物が凍え死なないように適応させていた。とはいえ、完全に冷気を遮断できるわけではないようだ。なぜならば、このユーベルコードは吹雪を遮断するわけではなく、あくまで冷気を吸収・相殺・中和しているに過ぎないからだ。
「あとは鴉羽笠で私の気配を消して、敵に感知されないようにすればいい。暗殺と救出か、得意分野だ……特に暗殺が」
自信満々で猛吹雪の中を歩き出す榊。あとは雪かき部隊のウサギ兵達を見付けるだけだ。
「さて、収容所は……この辺りのはずだが……」
榊はこの時、初めて気が付いた。
「グリモア猟兵は永久凍土開拓地“付近”と言っていたが、詳細な方角や目印は教えてくれなかった……収容所を雪かきするウサギ兵を倒さなければいけないから、当然といえば当然だが。しかし、そうなると、この視界不良で方角が分からないまま私は動くと遭難するのでは?」
榊、暗殺の準備は完璧だったが、索敵に関しては何も方策を講じてなかった。
しかも警備しているウサギ兵達は雪上迷彩の軍服を装備しており、周囲を見渡す限り敵兵がいるのかどうかさえ判別がつかなかった。
「これは……少々考えが至らなかったか?」
榊のユーベルコードは視界内の入った敵を一斉に攻撃できる利点がある。だがそれは視界がクリアな状況での話。収容所内でなら大活躍できただろう。しかし此処は視界は良くて3~4m先までしか目視できない。これでは敵兵の背後へ近付くことはおろか、収容所へ向かう前に遭難してしまう。情報は隅々まで確認するべきであった。
「私の気配察知で敵兵が引っかかればいいのだが……てっきり敵兵が目の前にいるのかと」
グリモア猟兵も言っていた。この任務は索敵とスピード感が重要だと。つまり、雪かき部隊のウサギ兵達を自分で見つける必要があったのだ。
「まずいな……これで遭難したら私は任務遂行どころか、異郷の大雪原で彷徨い続けてしまう」
せめて、この場所が雪かき部隊のウサギ兵達の巡回ルートであることを願うのみだ。
と、その時だった。
雪崩の如き地響きを轟かせながら、何かが此方へ接近してくる気配がする。
その音がする方向を凝視する榊、
すると、こちらへウサギ兵達がそりをブルドーザーに見立てて前方に構えた姿勢のまま突っ込んでくるではないか。
まさか、気付かれたのか?
「どけどけ~っ! 俺が1位だ!」
「負けるかぁ! 今日こそ勝つ!」
「最後の直線、差し切れば……勝機!」
なんと、警備と雪かきを兼ね備え、警備兵達は雪原を爆走していた。レースだ、レースに興じている。
こんな辺境を誰も襲撃してこないだろうという慢心が、彼らをこのような無軌道行為に駆り立てていたのだ。
だが榊にとっては千載一遇の好機。
爆走するウサギ兵達がよく見える場所まで移動すると、大太刀の鞘を後ろへ投げ捨てるように引き抜きながら長大な刃を振り抜いた。
榊の空間内では、敵へ吸収した属性の反対属性を攻撃に乗せて反撃できる。つまり、極寒の反対は全てを焼き尽くす灼熱――!
「……雪かきご苦労様……」
雪かき部隊のウサギ兵達がチェッカーフラッグではなく、榊の真っ赤に熱せられた大太刀の居合斬りを受けてなます切りにされて雪上に転がってみせた。
スピード感だけは抜群だった。
「さて、収容所を目指すか……ああ、ひとりは生かすべきだったか? 収容所の方角が分からないな……」
やむなく榊はしばし猛吹雪の中を彷徨い続け、偶然すれ違いざまに斬り伏せた雪かき部隊がやってきた方角を頼りに、どうにか収容所まで辿り着いたのであった……。
苦戦
🔵🔴🔴
ロヴァキア・シェラデルト
マオ(f40501)と
■寒さ
UDCの技術を元に防寒装備したうえで[寒冷対応]に酒[スキットル]を用意
敷地外では暴風対策&隠れ蓑に簡易な塹壕のための軍用シャベル
なるべく密着…何故嫌がる?
■烏の使い魔で索敵・警戒。
姿を消したまま移動し、背後から[軽業/先制攻撃/怪力]素早く口を塞ぎ頚椎を[切断]
まずは適当に一人殺したのち、UCで兵士を起こし案内させる。
操った敵の記憶から巡回経路を把握し、出会う敵を殺して起こすを繰り返して猟兵に敵対せず見張りを続ける死体に入れ替えていく
人殺しは嫌だろう、つきあわせて悪いな。疲労したマオはお米様抱っこで運ぶ。
睫毛が白くなって面白いな…などと仕事に不要なことを思う
マオ・ロアノーク
ロヴァキアさん(f40500)と
[寒冷適応]に加えダウンコートやウシャンカ等、服装面でも防備。
うわあ…寒い…!
こんな場所で無理やり働かされた挙げ句、亡くなっても…。
到着後すぐロヴァキアさんの手を取りUCを発動。
疲れなんて[元気]でカバー!
これぐらい獣人さん達に比べたらどうってことない。
吹雪で見えなくたって[気配感知]で位置も方角もある程度分かるはず。
神経を研ぎ澄ませて…って近い、近いよ…ッ!
あの時の事思い出しちゃうからなんて、絶対に言えない…!
…出来ることなら、殺したくない。けど、それが必要な時だってある。
ここに来たのは僕の意思だ。むしろ、その…ロヴァキアさんと、もっと仲良くなれたらな、って。
「うわあ……寒い……!」
寒さにある程度強いマオ・ロアノーク(|春疾風《はるはやて》・f40501)がダウンコートやウシャンカ等の防寒具を大量に着込んでも、無意識に声に出てしまうほどの超極寒を誇る白銀の死の大地。
ここで働く獣人達の事を思うと、マオは胸が苦しくなっていった。
「こんな場所で無理やり働かされた挙げ句、亡くなっても……」
死後、真の強き勇士はオブリビオンとして蘇り、このロシアを支配するワルシャワ条約機構軍に迎え入れられるという事実をしったマオは怒りが腹の中で渦巻き始めてゆく。楽天的で人道的な彼女にとっては珍しく、この理不尽さを許せないという悪感情の発露であった。
それを隣で密着してマオの風除けとして身体を張っているロヴァキア・シェラデルト(羅刹の殺人鬼・f40500)が、彼女の悪感情を代弁するかのように罵詈雑言を並べ立ててゆく。
「ワルシャワ条約機構軍、クズで結構だ。生きる価値すらないのも最高だ。お陰でこちらも躊躇なく俺の本領を発揮できる」
ロヴァキアの本領とは、殺人鬼たる彼の殺人衝動を指し示す。
自身の鍛錬のために戦い続けるロヴァキアにとって、殺す相手の価値の優劣などあるかどうかは不明だが……少なくとも、今はマオを気遣うために方便を使った。
(俺にも気遣う相手が出来たか……いや、これもマオの持つ“力”を知るためだ。それ以外にマオと同行する理由はない、はずだ)
ロヴァキアは周囲を警戒しつつ、雪を軍用スコップで掘って簡易塹壕を作って吹雪から身を護りながら雪上迷彩として同行するマオを護るのだ。マオを殺さなかったあの日、マオの“力”の片鱗を見たあの日から、彼女の“強さ”に興味を持ったロヴァキアは自然と彼女を護るように動いていた。
「とにかく、俺に任せろ。マオは俺に言われた通りにしていればいい」
「う、うん……でも、あの、ロヴァキアさん?」
「なんだ?」
マオがとても気まずそうに顔を背けている。
それが気になり、ロヴァキアはマオへ自身の顔を寄せてゆく。
顔が近い。
「どうした? 何か作戦で不都合な点があるのか?」
「いや、そうじゃなくてっ! ロヴァキアさん……何で僕に身体、寄せてくるの? 顔も近いし……」
「お前が寒そうにしていたからな。互いが寄り添って体温の維持を……何故嫌がる?」
マオはそっと身体をロヴァキアから反らしていた。
その理由は……。
「だって……お酒臭いんだもの……」
「……ああ?」
ロヴァキア、体温維持のためにスキットルにウォッカを入れて飲んでいたのだ。その酒気がマオには気になってしまうのだと彼女は説明した。
ちなみに、ウォッカはロシア語の中での派生言語で『水』らしい。
「それはすまなかった。マオは未成年だったか。嫌なら少し離れるが?」
マオに嫌われたら、彼女の“力”の正体が掴めなくなる。故にロヴァキアは融和な態度をとった。
しかし、マオが何やらまたそわそわしている様子……。
「えっと、そこまで離れなくていいから……そこそこの距離でお願いします……」
「そういう意味だ、それは?」
訝しがるロヴァキア。
「も、もう! このくらいの間隔で!」
マオは頬の紅潮を寒さのせいにしながらほどほどに密着してみせた。
(だって……初めて会った時の事を思いだしちゃうから……! ああ、もう! 恥ずかしい……!)
エンドブレイカー世界でロヴァキアに助けてもらった際に、初心なマオにとっては少々刺激的な体験をしてしまったが故……ロヴァキアと密着すると、あの時に味わった感覚と記憶がどうしても蘇ってしまうのだった。
ロヴァキアが飛ばした鴉の使い魔が戻ってくる。
猛吹雪の中では上空も視界が悪く、索敵には少々向いていないのはやむなし。
しかし、空から周辺の地形を見下ろすことで、この先に敵の塹壕が張り巡らされているのを突き止めた。敵はそこに潜んでおり、今も雪をこっそりと掻き出しながら陣地形成に精を出しているようだ。
「よし、手筈通りに行くぞ、マオ」
「任せて、ロヴァキアさん。それじゃ、しーっ……じっとしてね」
ユーベルコード『|緑隠の手翳《ハイド・アンド・シーク》』でマオとロヴァキアの身体は透明になってゆく。
さながらクリスタルのように透き通った2人は、式神が発見した雪の塹壕へゆっくりと接近してゆく。
「大丈夫か? 疲労したらすぐに雪でカムフラージュする。そこで休憩だ」
「へっちゃらだよ、ロヴァキアさん。僕は元気が取り柄だからね! それに、収容所の中に囚われた獣人さん達を思えば、このくらい……なんてことないよ」
マオは視界不良の移動に己の気配察知の技量を駆使する。
ちなみに極度の方向音痴のマオは、ロヴァキアにその都度方角を修正させられていた。
「神経を研ぎ澄ませて……近い! 近いよ……ッ!」
「……? どのあたりだ?」
「敵の距離もだけど、ロヴァキアさんの顔も近い!」
「それは悪かった。で、どこだ?」
「あの右手奥……ほら今! 少し雪が下から掻き出された!」
「よく見付けたな、マオ。お手柄だ。お前は此処で待ってろ。動いたら遭難するぞ、お前?」
「う、うん……」
マオも自身の方向音痴を自覚していたので、ここでロヴァキアとはぐれるのはまずいので身動きを止めた。
ロヴァキアは単身で塹壕内へ向かおうとする。その前に。
「人殺しは嫌だろう、つきあわせて悪いな」
そう告げた殺人鬼は、塹壕内へ飛び降りると本性を解放する。
背後から兵士に飛びつき、頸椎を捻り砕く。
死んだ亡骸に彼は命じた。立て、と。
すると兵士の亡骸はまるで生きてるかの如く自律駆動し、兵士同士を殺害させてゆく。
あとはマオのもとへ戻ると、彼女に人が死ぬシーンを見せないために米俵を担ぐように強引にロヴァキアは担ぐ。
(……出来ることなら、殺したくない。けど、それが必要な時だってある。ここに来たのは僕の意思だ。むしろ、その…ロヴァキアさんと、もっと仲良くなれたらな、って。でも!)
そうとは知らないマオは、また新たな恥ずかしポイントが生まれてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウルル・マーナガルム
冬は-30℃にもなる北欧の森がボクらのホーム
寒いのは慣れっこだもんね
スノースーツを着て、行軍速度を落とさないようスキー板を履く
|減音器《サプレッサー》つけた『アンサング』とハティ達は雪上迷彩仕様に
併用可能UC『ムーンドッグス』発動
熱源、生体センサーでの敵位置の割り出しと地形データ収集、目的地までの先行偵察をよろしくね
マントで隠れてるなら周りを見る為の隙間を開けるはず
吹雪で見えないのはお互い様だろうし、ある程度近寄ってから撃ち込むよ
声を上げさせないように、頭とか、喉か肺を狙う
後はマントを剥いで頭か心臓に2発
死体やボクらの移動跡は吹雪が隠してくれる
〝素早く、静かに、徹底的に〟行かなくちゃね
ウルル・マーナガルム(死神の後継者ヴァルキュリア・f33219)にとって、獣人戦線のロシア雪原地帯は故郷を思い出させる。
「冬は-30℃にもなる北欧の森がボクらのホーム。寒いのは慣れっこだもんね」
ヘッドマウントディスプレイ『S.K.O.R.』を目元に装着し、純白のスノースーツを着込んだウルルはこれまた純白に塗装されたスキー用具一式を装備。クロスカントリースキーの要領で軽快に雪上を滑走していた。携帯するマークスマンライフル『アンサング』も今日は全身の装備に合わせて雪上迷彩仕様に塗装済み。
更にユーベルコード『|四脚機動型強行偵察機群『ムーンドッグス』《スポッターハウンドシリーズ・ムーンドッグス》』で召喚した、柴犬サイズの四脚機動型スポッターハウンド124体も雪上迷彩仕様で周囲へ散開。現在は地形情報や熱源感知などの情報収集に当たらせる。収集した情報はすべてウルルのヘッドマウントディスプレイに集約され、分析・精査が可能だ。
「機械ならこの猛吹雪の中でも活動できるし、熱源感知なんてこの雪原じゃ一発で居場所を特定できるからね」
『ウルル。早速、南東5時の方向に多数の熱源感知を確認しました』
バディの四脚機動型スポッターハウンド『ハティ』がウルルへ、ムーンドックスからの情報を報告する。
同時にウルルも目元のARモニターで周辺地形の情報を確認。やや此処から緩やかに下った先、凍結した川沿いを雪かき部隊のウサギ兵達が潜伏中とのこと。
「ありがとう、ハティ、それにみんな! それじゃ、偵察部隊はそのまま対象を監視したまま待機。ボクが現場へ辿り着くおよそ三分、対象が移動したらまた報告して」
ムーンドックスに指示を与えると、愛銃を背中に担いだウルルがストックを握ってゆっくりと緩い坂道を滑り降りてゆく。
「んじゃ、武装偵察部隊『ノルニル』に属する|前哨狙撃兵《スカウトスナイパー》のボクにとって、こんな吹雪は狙撃の障害にならない事を証明しちゃおうかな?」
故郷での訓練を思い出す。あの極寒の地の訓練から比べれば、情報や敵の位置が特定している今の狙撃などイージーにもほどがあった。
3分後、ウルルは雪飛沫を散らさぬようにゆっくりと立ち止まると、すぐに雪の上へ身を投げ出すように伏せて愛銃『アンサング』を身構える。そのままゆっくりと匍匐前進を開始。ヘッドマウントディスプレイには、敵性存在と思しき熱源との距離が計測されている。
(吹雪で見えないのはお互い様だろうし、ある程度近寄ってから撃ち込むよ)
そして相手は雪に隠れるためのマントを身体の上から被っている状況がウルルの狙い目であった。
(マントで隠れてるなら、周りを見る為の隙間を開けるはず。その視野ははっきり言って狭いよね。左右の視野は間違いなく制限される。そこがボクの思惑だよ)
ウルルはハティの迷彩ステルス機能で万全を期している上に視界を遮るものは何も身に付けていない。
視野が狭まることなく、相手を一方的に狙い撃てるのは大きなアドバンテージだ。
敵兵が隠れているのはまばらに生えた針葉樹林の影に10人。半数は狙撃手、もう半数は観測手兼連絡役だ。狙撃手は狙撃に集中するため、情報連絡などの業務を極力行わない。なぜならば、その情報に耳を傾けた瞬間、標的を逃がしたり自身の身の危険を招くからだ。故にバディを組んで狙撃の誤差修正と情報処理を任せているわけだ。
当然、ウルルもそれを承知の上だろう。
(もしバレたら、ボクは周囲から蜂の巣だね……ま、そんなことはあり得ないんだけどね)
ウルルは機会を待った。吹雪の中、じっと1mmも身じろぎせず、熱源反応がある数か所を狙い澄まして。
そして、その時は来た。
針葉樹林の枝から、支えきれなくなった雪の塊がドサッと前触れなく落ちたのだ。
ウサギ兵達の一部がその音に反応して身体を動かしてしまう。
(今だ! ムーンドックス!)
待機していた機械犬たちが両サイドから陽動作戦を開始。雪飛沫をわざと立てて敵兵の注意を引き付ける。
「あそこに何かが動いてる!」
「吹雪でよく見えないが、小さいのがたくさんいるぞ……!」
「雪が落ちてきたのもこいつらのせいか?」
緊張感が走る雪かき部隊のウサギ兵達。
だが次の瞬間、彼らは二言目を喋ることなく雪上に崩れ落ちてしまう。
ウサギ兵の狙撃手たちが思わず後ろを振り返る。バディの眉間と喉元が寸分狂わず狙撃されていたのだ。
敵襲だ――!
そう思ってスコープを覗き込もうとした彼等もまた、3秒後には全員頭部と心臓に銃弾を浴びて斃れてしまっていた。
「……状況終了。|減音器《サプレッサー》つけた『アンサング』の発砲音は、この吹雪に掻き消されて狙撃されたことすら気付かなかっただろうね?」
同時にウルルの狙撃の腕も神業であった。敵兵に悲鳴を上げさせないためのヘッドショットと喉笛へのピンポイントスナイプ。さらに瞬く間に敵兵を撃ち抜くエイム性能、的確な判断力。行き着く暇も与えない神速の狙撃術。
まさに敵を畏怖させる徹底的な凶弾を撃ち込む術を放ったウルルは、まさに埒外の狙撃手だった。
「“素早く、静かに、徹底的に”。いつものように任務を遂行しましょう、だね」
これこそがウルルが身体に叩き込まれた技術、|ノルニル達の心得【巨人を屠る者の如く】《ノルンズノーレッジ・オクトール》だ。
故郷で身に付いた心得はいまやユーベルコードへ昇華し、不可能を破壊する魔弾の狙撃手を生み出したのだ。
「おっと、念のためトドメを刺さなきゃだね。死亡確認は大事ってね」
ウルルは敵兵の死体に覆われた雪隠れマントを剥ぐと、完全抹殺のために急所を念入りに撃ち抜く。
頸椎、肺、心臓、頭部、生存確率がゼロになるまで徹底的に。
そして敵兵全員死亡を確信したところで、またムーンドックス達に探索を依頼するウルル。
「死体やボクらの移動痕は猛吹雪がすぐに隠してくれる。それじゃ、また頼んだよ、みんな」
ムーンドックスが再び死の雪原へと散開してゆく。
地形情報も集めれば、収容所にも容易く到着できるはずだ。
ウルルは埋まった雪隠れマントを肩に羽織ると、再びスキー板で地獄を滑走してゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
疾駆する神常時発動
…いや過酷すぎるなこれ
準備
真っ白な防寒具とうさみみフードを用意
「保護色だぞ☆」
更に可能な限り戦いの舞台となる場所の地図を用意して敵が待ち構えたりするのに有効な場所も把握
耐寒対策
【念動力】
念動障壁で寒波を通さないように努め
【属性攻撃・迷彩】
光風属性を己達に付与
光学迷彩で存在を隠し敵への捕捉を最小限に努める
念動力で浮かびながら足跡も残さない
【情報収集・視力・戦闘知識・念動力】
念動力を広範囲に展開して敵の捕捉に努める
こういう隠密行動は僕の活躍チャンスってな
捕捉した敵に対しては
【盗み攻撃・盗み】
ソリ強奪と共にたまぬき発動
魂を強奪して即座に何もさせず無力化
血痕も残さず
静かに一人ずつ始末
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は極寒の大雪原で途方に暮れていた。
「……いや過酷すぎるなこれ」
目の前は猛吹雪に閉ざされ、事前に調べた地図も目印になるものは一切記されてないただの大雪原。おまけに永久凍土開拓地周辺は一般人が立ち寄れない条約機構軍の秘匿地区のため、そもそも地図に記載されるような公の存在ではなかった。
「こんなのどうやって辿り着けっていうんだ……?」
幸い、念動力で吹雪から身を護る知己場を形成しており、しかも火の魔法で念動結界内を温めているため適温で行動できる。更にお得意の光学迷彩魔術でカシムと相棒のメルシーの姿を猛吹雪の中に溶けこませ、熱源反応を遮断する魔法と浮遊魔法による足跡の根絶まで考慮。
故に、唯一の失策は場所を地図で特定しようとしたことであろう。
「しゃーねーな。メルシー、おめーの魔力探知範囲を最大限まで拡大しろ。生命のある者は僅かでも魔力を帯びるはずだ……それを辿れ」
「ラジャったよ、ご主人サマ☆」
旅の女神でもあるメルシーは、その権能で目的地である収容所の方角を割り出すことに成功。
その道中に点々と敵部隊と思しき生命反応の塊も散見された。
すると、メルシーは急にニヤニヤしながらカシムに何かを催促している様子。
「なんだ……? 言いたいことがあるならハッキリ言いやがれ」
「ご主人サマ、メルシーの真っ白な防寒具とうさみみフード、カワイイ? 保護色だぞ☆」
「知ってるっつーの! だが、なんで僕までうさみみフードを被る必要が……?」
「ご主人サマ、似合ってるよ☆」
「チクショーめぇっ!」
メルシーの提案で、万が一遭遇戦に至った場合、少しでも敵に仲間だと誤認させるために2人はお揃いのうさみみフードを被っているのだ。カシムはこれが気に食わない様子だが、投げ捨てないあたりしぶしぶ了承しているようだ。
「つか、さっさと行くぞ……こういう隠密行動は僕の活躍チャンスってな」
なかなか猟兵の任務にはこういった敵の背後から忍び寄るような内容が意外と少ない。
だからだろうか、今日のカシムは実に活き活きとしている。
既にダガーを鞘から引き抜き、せっせと作業に追われる雪かき部隊のウサギ兵達のすぐ目と鼻の先まで接近したカシム。
(数は……8名ほどか? そこそこいるが……やってみせる!)
まずは部隊から少し持ち場を離れた兵士の背後に飛びつき、ダガーを喉笛に突き立てて大きく横へ掻っ切った。
頸動脈と軌道を裂かれた敵兵士は、しかしながら血を跳び散らさずに死に絶えた。カシムの手には、淡く輝く光球が乗っている。これこそ、先程の兵士の魂であった。
「メルシー!」
「おけまる☆」
素早くメルシーが死体に雪をかけて遺棄したのを確認したカシムは、その兵士が持っていたソリを強奪して一気に他の兵士達のもとへ突撃を開始!
ついでにソリまで光学迷彩魔術を施せば、敵が接近に気付いたとしても時すでに遅し。
「万物の根源よ。我が手にその心をも奪い去る力を宿せっ……!」
ユーベルコードで通りすがりの兵士達に接触してゆくカシム。すると次々と兵士達が虚脱状態で昏倒してしまうではないか。
「敵の魂を身体から抜いちまえば、攻撃される前に事が済むからな……」
「抜け殻はメルシーが雪の中へ埋めておいたぞ☆」
これで万が一、敵兵士の魂が元の身体に戻っても雪の下から抜け出せずに窒息死は免れない。
「ご主人サマ! 収容所の方角はあっちだよ!」
「さっさと中へ入るぞ……念動結界を温めてるとはいえ、無限に魔力の消耗するわけにはいかねーしな?」
こうしてカシムとメルシーもまた、永久凍土開拓地の収容所へ無事に辿り着いたのであった。
成功
🔵🔵🔴
ロージー・ラットフォード
まずはターゲットを静かに仕留めればいいんだね
わかった
寒いところは得意だから任せて
まあコートは着込むけど【寒冷適応】【氷結耐性】【激痛耐性】
収容所警備員に気付かれないよう物陰や雪に隠れて攻撃できる距離に入る【迷彩】
使役ゴーストに周囲の警戒をしてもらっておくし自分でも警戒
ネズミの察知能力はすごいんだよ【気配感知】
雪凄いなら雪溜まりもあちこちにあるでしょ
もしあっちが姿を見せて、雪かきでもしてるなら好都合
息を潜めて、よく狙って……死角からナイフで…【暗殺】【急所突き】
フフン、銃だけがあたしの得物じゃないんだよ
雪上に咲く赤い血の薔薇
降り積もる雪が隠してくれるから
先へ進もう
ロージー・ラットフォード(snuffed it・f40203)はハツカネズミの獣人だ。色素の薄い髪や体毛は猛吹雪の中では景色と一体化しており、それ自体で既に保護色になっていた。
「まずはターゲットを静かに仕留めればいいんだね。わかった、寒いところは得意だから任せて。……大丈夫、ちゃんと防寒具は着込んでるよ。それじゃ」
グリモア猟兵からの連絡にそう返したロージーは、真っ白なスノースーツを着込んで行動を開始した。
「まずはここがどのあたりかを確認しないとだね。使役ゴーストに先行してもらうよ」
ロージーの傍らには、真っ白でモフモフな小さな小動物が寄り添っていた。
これこそがロージーの使役ゴースト、探知能力に長けた存在だ。半実体であるので猛吹雪の影響も受けにくいのも利点だ。
まずロージーは視界内3~4m以内を使役ゴーストに周囲を哨戒させた。
すると、北西の方角に多数の生者の反応を使役ゴーストが感知する。
この極寒の死の世界にて生命反応が集まっている場所は、永久凍土開拓地の収容所以外にあり得ない。
ロージー自身もネズミの感知力をフル活用させつつ、反応が強く出た方角へゆっくりと警戒行軍してゆく。
しばらく移動していると、ロージーは使役ゴーストを制止させた。
違和感を覚えた彼女は雪が降り積もった針葉樹林の影に身を潜めた。
「うん……思ってた通りだね。敵兵は雪を掘り下げて塹壕を作ってるってグリモア猟兵から聞いてたし、これだけ雪が凄いなら雪溜まりもあちこちにあるでしょ。まさに目と鼻の先にあるし、敵兵は塹壕を今も掘り進めてる最中だろうね」
天と地の狭間すら猛吹雪で区別がつかないほどの白銀の世界で、山のようにうずたかく積まれた雪かきの痕跡は接近すると意外と目立つ。幸い、掻き出された雪か陰になっていたおかげでロージーの接近は敵兵に気付かれていない。
ならば、ロージーのとる次の一手は決まっていた。
(使役ゴーストを斥候として偵察に向かわせて……敵兵の有無を確認。見敵次第、あたしが匍匐前進で気付かれないように塹壕へ接近。そして敵の背後へ飛びついて……仕留める!)
ロージーは雪の上を這いつくばって緩慢な動作で焦らず接近を試みる。
よくよくみれば、塹壕には雪壁の隙間から砲身が見え隠れしていた。気付かれれば雪玉砲撃や追尾兎型凍結爆弾を浴びせ掛けられていただろう。スニーキングミッションを成功させるためには、これらをすべて不発にするべく細心の警戒を払わねばならないのだ。
雪壁まで辿り着くと、ロージーは聞き耳を立てて塹壕の下の様子を探り始めた。
すると、数名の兵士の会話が聞こえてきた。
「なぁ、こんな僻地に敵襲なんてあり得ると思うか?」
「さぁな? だがこんな僻地だからこそ守りを固めるんだ。天然の要害ってそういうもんだろ?」
「つか、あんまり任務に懐疑的になるな。お前も収容所送りにされるぞ?」
「う……そうだな、気を付けるさ」
「んじゃ、俺たちはそろそろ交代だ。ここはしばらく任せたぜ」
「交換要員の来る10分の辛抱だ、サボんなよ?」
「わーったよ、さっさと行きやがれ」
そんなやり取りの後、2名の兵士が持ち場から去ってゆく。
つまり、真下には今、敵はひとりのみ!
(今だ……!)
ロージーは小さな体を駆使して砲身の穴の隙間から塹壕へ侵入すると、こちらへ背を向けている敵兵士の背中目掛けて上から飛び乗った!
「うぐッ! だ、誰だ、モゴゴ――?」
「戦場の花を。じゃあね」
ロージーは素早く敵兵の口元を手で押さえつけると、利き手で軍用ナイフを鞘から抜いて頸動脈から喉笛を一気に真横へ掻っ切った。
すると、ユーベルコード『|凍薔薇《ミヲエグルヨウナサムサ》』の効果で敵兵の真っ赤な血液が傷口からたちまち凍結してゆくではないか。まるで掻っ切られた喉元から薔薇の大輪が咲き誇っているかのようにも見えた。
「雪上に咲く赤い血の薔薇。降り積もる雪が隠してくれるから」
対象が事切れたことを確認すると、塹壕内を素早く疾駆してゆく。
目指すは先程、交代のために戻っていった兵士2名。
その片方の背中と頸椎に素早く軍用ナイフの切っ先を突き立て、再び凍てつく赤バラを敵兵に裂かせてみせる。
ただ、彼女のユーベルコードには追加攻撃は発生する。
最初の死体から半径109m以内の敵を傷付けた時点で、傷口から氷の棘が飛び出して周囲の敵を刺し殺すのだ。
要するに、隣にいた敵兵士は隣人の死体から伸びた氷の棘で全身を貫かれて即死したのであった。
「うん、いい感じ。フフン、銃だけがあたしの得物じゃないんだよ。先を急ごう」
このユーベルコードの特性をうまく使いながら、ロージーは集団敵を瞬く間に“暗殺”してゆき、収容所へ無事に乗り込んだ後も内部の戦力を確実に凍てつかせていった。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
永久凍土の開拓
そして死なせてオブリビオン化を狙うとは
ひどいお話です
オブリビオンさん達を倒して
クマさん達をお助けしましょう
防寒着を着用
かつ炎の魔力を全身に漲らせて
寒さに対抗します
吹雪に紛れて抜き足差し足で近づいて
急所へ刺突を放って倒します
吹雪の中でも風の魔力を操れば
声や足音、そして心臓の鼓動などを
猫耳で聞き取ることができるのですよ
相手に気づかれてしまいましたら
剣を指揮棒のように操って
再び風の魔力を操作すれば
雪かき部隊さんの声が伝わらないように出来ます
そりドーザーが発動した場合も
慌てず騒がず
風の魔力で加速し
生み出した残像で撹乱して狙いを絞らせず
さっと避けて
すれ違いざまの一撃で倒します
万が一雪だるま化されても
炎の魔力を高めて脱出です
このようにして
収容所内外の雪かきさん達を倒しいてきます
万が一毒ガスが噴出した場合は
渦巻く風の防護でクマさん方を守ります
皆さんを助けにきました
しばしのご辛抱を
さあ次は監督人さんですね
箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はロシアの極寒の吹雪の中でひとり、静かに憤りを滾らせていた。
「永久凍土の開拓、そして死なせてオブリビオン化を狙うとはひどいお話です。必ずやオブリビオンさん達を倒して、囚われたクマさん達をお助けしましょう」
箒星は真っ黒なケットシーである。故に猛吹雪の中で黒い体毛が目立ってしまうので、彼は真っ白なダウンジャケットとスノーブーツにスノーパンツを着用し、顔も白いマスクで覆って目元だけが黒い姿で雪中を移動していた。
「さて、トリニティ・エンハンスで炎の魔力を私の身体に宿らせましょう。これで極寒の猛吹雪でも体温が下がらずポカポカです」
ユーベルコードで炎・水・風の魔力を自身に付与して強化を図れば、様々な事象を可能としてみせる。
「体温調節は勿論、風の魔力を操作して吹雪の向きを逸らしましょう。これで私に吹雪は直撃しません。更に風の魔力は周囲の音を拾って私に伝えてくれます。魔力の出力を上げれば、この猫耳は吹雪の中の会話だって拾えるでしょう」
箒星の周囲が不思議と吹雪が晴れ渡り視界がクリアになると同時に、空気の振動効率を向上させてソナーのように周囲の足音や会話を耳ざとく拾い集め始めた。
すると、東の方から誰かの声が聞こえてきた。
「うわっ、この辺りの吹雪は一層強烈だな!」
「吹き溜まりになってるんじゃないか? しかし何も見えないな?」
「もう少し先へ行くぞ。これじゃ雪かき作業が出来やしないぞ」
雪かき部隊のウサギ兵達と思しき会話が箒星へ接近してくる。
箒星が移動すれば、吹雪の風向きが不自然に変化して敵が違和感を覚えるだろう。背後へ回り込むのは得策ではない。では、どうやって迎撃するべきか?
箒星は水の魔力を状態変化させて氷柱に変えると、炎の魔力で発射させて風の魔力で射出速度を強化してみせる。
「これぞ氷柱ミサイルです。猛吹雪の壁から突然迫る氷柱に刺されば、気付かぬうちに骸の海へお還りになるでしょう」
箒星の操る魔法の細剣を指揮棒のように左右へ振られれば、次々と氷柱が声のする方向へ何本も射出されていく。その度に吹雪の向こうから悲鳴と驚愕の絶叫が大雪原に木霊していった。
「ぎゃあぁっ!」
「おい、吹雪で氷柱が飛ばされてき、がふっ!?」
「報告! 風で飛ばされた氷柱が隊員に刺さって死傷者が出ました!」
「ヤバいぞ! 全隊、そりドーザーモード! 氷柱の発生源を急いで叩き割るぞ!」
「「ウラーッ!」」
隊長は自然災害だと思い込んで、そりドーザーで前方にあると思しき樹木目掛けて全隊突撃命令を下した。
しかし、雪かき部隊が突っ込んだ先には箒星が待ち受けている!
「突撃してきますか。いいでしょう。再び周辺を吹雪で閉ざし、私は空に舞い上がります!」
今まで箒星の周囲を避けていた吹雪が一瞬で元のホワイトアウト減少に戻ると、上昇気流を発生させた箒星が空中へ舞い上がった。
そこへ突っ込んだ雪かき部隊は渦巻く吹雪に視界を奪われて混乱してしまう。
「くそ! 前が見えない! 各員、付いてきているか!?」
「隊長、何処ですか! 声が聞こえません!」
「うわ、俺は味方だグワーッ!」
謀らずとも同士討ち状態になった雪かき部隊は、仲間を雪だるま状態にして雪の中に埋もれさせてしまう。
そこへ上空から爆炎を魔法の細剣に宿した箒星が、真下へ火炎弾を剣先から発射!
雪上に着弾すると、周囲の雪が一斉に雪崩となって敵部隊を軽々と呑み込んで葬り去っていくのだった。
「このまま雪の上をサーフィンして、収容所まで一気に駆け下りましょうか」
箒星が雪崩に乗ったまま収容所の目の前まで突進してくると、雪崩でそのまま警備兵を呑み込んで施設内へダイレクトエントリーしてみせる。
唐突に収容所が半壊して壁から飛び出した箒星が、真っ先に向かったのは強制労働者たちが投獄された牢屋だった。
「皆さんを助けにきました。これから此処の監督人を撃破します。それまでは、しばしのご辛抱を」
囚われのクマ種族を始めとしたロシア獣人達は、小さな黒猫の破天荒な登場ぶりにみな揃えて口をあんぐりとしているのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『告死の生物科学兵』
|
POW : 告死病菌核弾頭装填!!!
レベルm半径内の対象全員を、装備した【告死病菌を搭載した兵器】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
SPD : 告死病爆弾射出!
【感染すると肉体が壊死し黒く変色し】【やがて腐り落ちる告死病菌を】【周囲に無差別にばら撒く爆弾レベル×10個】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 告死病ミサイルランチャー発射!!
攻撃が命中した対象に【告死病菌による黒い病傷】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と周囲に感染する告死病】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:nitaka
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠銀山・昭平」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――大轟音。
収容所が半壊するほどの大雪崩が発生し、守備兵達は大混乱に陥った。
とある猟兵のダイレクトエントリーの影響は、盤上を見事に引っ掻き回した。
浮足立つ敵兵を各個撃破することなど猟兵達の手にかかれば容易く、雪崩被害の数十分後には施設内の残存兵は殲滅されてしまった。
あとは、ここの監督人を叩いて収監されたロシア獣人達を解放の後、残った施設を破壊するだけだ。
幸い、雪崩は収監施設から離れた場所だったので無事であった。
いやむしろ、それを見越しての行動だったのだろう。
「何事もかね? 騒々しいかと思えば急に静かになったり……はて、どうしたものか?」
そこへ、ガスマスクを装着したドブネズミ獣人が廊下へ姿を現した。
どうやら何かの実験中だったらしく、その獣人は身体全体から薬品の匂いを漂わせていた。
恐らく、あのドブネズミ獣人こそがここの監督人だ。
猟兵達が気付くのと同時に、あちらも猟兵の存在に気付いた様子。
「なるほど……貴様等が此処を襲撃したのか。反乱者じゃないな? となると、猟兵……くっくっく、ちょうどいい! 今、対猟兵用の生物化学兵器『告死病ウィルス』の研究を行っている真っ最中でね? 早速、実践で効能を試させてもらおう!」
狭い室内戦で毒ガスを撒き散らされれば、猟兵と言えどもひとたまりもない!
どうにか工夫をして、このドブネズミの告死の生物科学兵の攻撃を凌いで痛烈なユーベルコードで反撃せねば!
ユーベルコードの高まりを感じる……ッ!
ロヴァキア・シェラデルト
マオ(f40501)と
■肉盾
前章で殺して操った兵士たちを囮にする。体で抱え込むように爆弾を受けさせる。
■換気
UC【仕事道具】で爆発物を生成し、マオや死体たちが敵の相手をしている間に設置。
爆発で壁や天井を破壊し外の強い風・冷たい空気を入れる。菌だかなんだか知らんが悪いものは外に逃がすに限る。
空間が広がれば行動範囲も広がり、通路をぶち抜けば遮蔽物も増えるだろう。
倒壊ではなく穴が開けばいいだけなので時間はかからんはずだ。
敵には手榴弾を投げ込む。
必要ならマオを巻き込まないよう引き寄せて離す。[激痛耐性]で小娘一人くらい庇ってやれるか?
…今回支援を頼んだのは俺だ。無事に返してやらねばならんだろう。
マオ・ロアノーク
ロヴァキアさん(f40500)と
やっぱり持ってきておいて正解だった…! ロヴァキアさん、これを!
ポーチから防毒マスクを取り出す。
どこまで防げるかは分からないけれど…少しでも感染リスクを下げなくちゃ。
[目立たない/忍び足]を活かして気付かれないように後方へ、通路や物陰に身を隠す。
近接戦は死兵達に任せて[視力/集中力/第六感]を駆使、静かに機を待つ。
敵UCの予兆を感じたら、使用される前にこちらのUCを使用。
そんな危ない菌、絶対に撒かせたりしないんだから!
気絶後は[クイックドロウ]ですかさず追撃。ガスマスクのベルト部分を狙う。
付けてるってことは、無いと君も困るってことだよね。よおし、剥ぎ取っちゃえ!
マオ・ロアノーク(|春疾風《はるはやて》・f40501)の判断は迅速かつ的確だった。
「やっぱり持ってきておいて正解だった……! ロヴァキアさん、これを!」
ポーチからロヴァキア・シェラデルトへ(羅刹の殺人鬼・f40500)差し出されたのはガスマスク。
(これでどこまで防げるかは分からないけれど……少しでも感染リスクを下げなくちゃ!)
グリモアベースで毒ガスの言葉を聞いていたマオは、よもやと思って忍ばせていたものだ。
それをロヴァキアは無言で引っ掴んで顔へ着用した。
「……気が利くんだな」
言葉少なだがロヴァキアはぶっきらぼうにマオへ感謝の意を伝えると、彼女を護るように自ら前に出てゆく。
(……行け、屍兵。俺達の肉盾になれ)
まずロヴァキアはここへ来るまでの間に殺害した雪かき部隊の兵士達を操り、監督人である告死の生物科学兵の前後の通路を封鎖。手にした軍用スコップで敵を襲わせる。
「き、貴様等! 上官へ反逆する気か!? ん? いや、此奴等、既に死んでるのか? 猟兵もなかなか悪趣味な真似をしてくれるじゃないか! ならば!」
監督人の鼠は襲ってきた相手をすぐさま見極めると、即座にユーベルコードを放ってきた。
「告死病爆弾、射出!」
抱えていた迫撃砲から致死ウィルスが弾頭に籠められた爆弾が、狭い通路内へ飛び出していく。
爆弾はすぐさま破裂すると、黒い煙をあたりに噴霧させて通路の視界をモヤで遮ってしまう。
だが、屍兵達が爆弾を身体で抑え込むように覆い尽くし、黒い煙の拡散を最小限に留めてみせたのだ。
その代償として、屍兵の身体はあっという間に肉体が壊死し黒く変色し、腐り落ちてしまった。
(うわ……! あんなのを浴び続けたら、僕たちも危ない!)
マオは思わずロヴァキアの身体の陰に隠れてしまう。
ロヴァキアもマオを護るべく、一旦黒いモヤから逃れて通路の曲がり角まで退避してきた。
「ど、どうしよう、ロヴァキアさん! 真っ黒でずぶずぶって身体が溶けちゃってた……!」
死体とはいえ肉体がドロドロに腐り落ちる過程を目の当たりにしてしまい、気が動転して狼狽するマオ。
そんな彼女を安心させるべく、ロヴァキアは彼女の手をしっかりと握った。
「……安心しろ。俺がマオを護る。それに……今回支援を頼んだのは俺だ。無事に帰してやらねばならんだろう?」
確固たる自信に満ち溢れた殺人鬼の眼差し。
確実に相手を屠れるという確信が彼にはあるからこその口ぶり。
そんなロヴァキアは、今のマオにとって何よりも拠り所として相応しかった。
「……うん! 僕もさっきは油断したけど、次はちゃんと支援するから!」
「上出来だ。そろそろ来るぞ」
ロヴァキアは通路の角から顔を出して様子を窺う。黒いモヤの向こうから監督人の鼠が姿を現した。
「隠れても無駄だよ? この閉所空間では私の生物化学兵器から逃げられないのだからね!」
勝ち誇る鼠軍人。とどめのつもりか、新たに爆弾を迫撃砲へ籠めている最中だ。
しかしロヴァキアはその慢心を待ち望んでいた。
「今だ、マオ!」
「うん! 止まって! |昏絶の矢《イモビリティ》!」
マオが黒いモヤの中で蠢く影を捉えると、彼女は|ハープボウ《琴弓》を構えて魔法の矢を番う。
それは戦場全体に効果が及び、この至近距離ならば黒いモヤがあろうが関係なく命中させられる。
マオの指先から放たれた矢は鼠の腕に突き刺さり、迫撃砲を手放してしまう。
「あ、ガッ!? まずい、意識、が……!」
軽い意識喪失で動きが止まった鼠へ、今度はロヴァキアの本命が炸裂する。
「元より手段を選んではいられん。そこで爆死してろ」
ユーベルコード『|仕事道具《カットスロート・ツール》』で召喚した手榴弾を黒いモヤの中へ放り込む。
「その黒いモヤの中じゃ投げ込まれたブツを認識するのは困難だ。マオ、伏せろ!」
「うわっ! ロヴァキ――!」
ロヴァキアがマオの上へ覆い被さるように庇った数瞬後、大轟音と爆炎が通路内から飛び出してきた!
「ぎゃあぁあーっ!」
凄まじい爆発に巻き込まれた鼠は、沈みかけていた意識を強制覚醒させて壁に叩き付けられた。
廊下は爆発で外の猛吹雪が吹き込み、黒いモヤは一気に霧散していく。
「手榴弾だけじゃなく、退く際に爆発物を通路上に仕掛けておいた。菌だかなんだか知らんが、悪いものは外に逃がすに限る」
「ロ、ロヴァキアさんってば! 近い近い! 今日こういうのばっかりなんだけど!」
彼の身体を思い切り突っぱねながら起き上がるマオ。
庇われたマオは半ば押し倒された形になってしまったので、顔を真っ赤にしてロヴァキアを睨みつけていた。
「もう! 僕を爆発から庇ってくれたのは嬉しいけど……もっと気を付けて? ほら、デリカシーとか!」
「……? す、すまない……」
最善を尽くしたのにマオに叱られたロヴァキアは釈然としない様子だ。
「あっ、そうそう! あの鼠さんが動けない間に!」
マオが吹雪が吹き込む廊下を全速力で駆けてゆくと、
「それ付けてるってことは、無いと君も困るってことだよね。よおし、剥ぎ取っちゃえ!」
動けない鼠の顔面のガスマスクを思いっきり剥ぎ取った。
と、ここで意識を取り戻した鼠が自分の顔面の違和感に気付く。
「き、貴様! それを返せ! ぐぎぎッ! ま、まずい! 耐性があるとはいえ……このままでは!」
鼠は信じられない逃げ足で瓦礫の山を越えて施設の奥へと消えてゆく。
ロヴァキアはそれを追い掛けようとしたが、マオに服の裾を掴まれてしまった。
「待って! 倒しきれなかったのは残念だけど、僕達以外も猟兵がいるから大丈夫だよ! それに、今は囚われた獣人さんたちを助けなきゃ!」
マオはまっすぐな気持ちをロヴァキアへぶつける。彼らをいち早く助けたいと急く彼女に、ロヴァキアは遂に折れた。
「……判った。仕留めきれなかったのは悔やまれるが、マオがそうしたいなら俺も付き合おう」
「やった! それじゃ早く早く! こっちだよ!」
マオが意気揚々と駆け出す。
だがロヴァキアはすぐに彼女の襟元をガシッと掴んで制止した。
「おい。そっちは違う。出口へ向かってどうする?」
「あ、あはは……おっかしいなぁー? どっちだっけ?」
「……やれやれだ」
相変わらずの方向音痴を発揮したマオの代わりに、ロヴァキアは獣人達が収容されている牢獄へ案内せざるを得なかったという……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榊・霊爾
生憎私は持久戦に向いていない
ならさっさと片付けるまで...
狭い室内...致死の毒ガス...相変わらずの極寒、長居は不利
短期決戦だ、やることやって去る
『先触』を発動
今回は回避に専念、抜刀はしない、赦された時間は一分
鴉羽笠のステルスを有効にし、【存在感】を薄めて【闇に紛れ】、建物内の死角に飛び移る様に【ダッシュ】し、鵙によるワイヤーを張り巡らせる(罠使い)
時間が来たらワイヤーを一気に引き絞り、ヤツを不可視の牢獄に閉じ込める(逃亡阻止)
こうなってしまえば脱出は困難...後はヤツの自重と身じろぎで勝手にワイヤーは狭まり、【切断】されるだろう
...おいとまさせてもらうよ
榊・霊爾(告死鴉・f31608)は自身の戦闘スタイルについて熟知している。
(生憎私は持久戦に向いていない。ならさっさと片付けるまで……)
早速、監督人の鼠を発見すると榊は猛ダッシュで先回りを行う。
先程まで施設内を探索していたので、向かう方向さえ解ればそれは可能である。
念の為、鴉羽笠のステルスを有効にし、気配を消しながら不可視のカーボンナノチューブワイヤーに繋がれた、鳥の爪を模した指に着ける暗器を通路内に張り巡らしてゆく。
そうとは知らない監督人の鼠は、新しいガスマスクを調達してようやく安堵したのもつかの間、榊の姿を発見して即座に告死病ウィルス爆弾を迫撃砲から射出した。
「逃がすか! 告死病爆弾射出!」
砲口から飛び出す爆弾、しかし通路内に張り巡らされたワイヤーに引っかかって榊の下まで届かない。
「調子に乗るな」
拡散される黒い毒ガスも素早い身のこなしで別の区画へ退避してしまう。
ここでようやく鼠は自身の周囲に何重もワイヤーが張り巡らされている事に気付く。
「ま、まずい! ワイヤートラップがこれほどまでに!」
焦る鼠は既に『袋の鼠』状態だと悟り、どうにか逃亡できないか試みる。
だが、徐々にワイヤートラップは鼠を追い詰めてゆく。
榊が安全圏からワイヤーを引き絞って鼠を捕縛しようとしているのだ。
「ま、まずい! このままでは引きちぎられてしま……! うわああぁぁ!」
鼠の断末魔を聞いた榊は、極寒の施設内から早々に撤退してゆく。
「……おいとまさせてもらうよ」
後の事は他の猟兵に任せ、彼は一足早く現場から退いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴァルターン・ギャンビット
おーおー、告死病ウィルス兵器とはおっかねぇな。怖くて怖くて仕方ねえぜ、フォッフォッフォッ。
こんな室内で使われたら怖いから…換気するとしますか。
【超巨大化変身】ッ!
天井や壁をぶっ壊して風通しを良くしてやったぜ。吹雪のせいでちょいと風通しが良すぎか?
と、あのドブネズミ野郎くたばってねえな。告死病菌を搭載した兵器で攻撃してこようとしてんな。
なら空高く飛んで範囲内から離脱だ。この頑強ボディはこの程度の吹雪じゃ揺らぎもしねえよ。
そのまま上空から施設ごとドブネズミ野郎に破壊光線の連射だぜ。
うっかり収監施設に当てないように注意しねえとな。
そのまま施設や生物化学兵器ごと雪の底に沈んじまいなッ!
【アドリブ歓迎】
ワイヤーで引きちぎられそうになった監督人の鼠は、全身から血を流しながらも命からがら脱出に成功していた。
持っていたロケットランチャーを身代わりにして死を免れたのだ。
「はぁ……はぁ……りょ、猟兵とは実に容赦のない連中だな!?」
難を逃れた監督人の鼠だったが、再び死の脅威にさらされることになる。
目の前に現れた、宇宙人によって。
ヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)は収容所内を物珍し気に見物しながら探索をしている最中に討伐対象とばったり遭遇した。
「おーおー、既に手酷くやられてんな? しっかし対猟兵用に開発した告死病ウィルス兵器とはおっかねぇな。怖くて怖くて仕方ねえぜ、フォッフォッフォッ」
宇宙服を着込んだセミとカニが融合したかのような宇宙人が笑い声をあげている。
獣人戦線の世界では見たこともない宇宙人に、監督人の鼠はコズミックホラーの恐怖に苛まれた。
「ひ、ひいぃっ! バ、バケモノ!」
すぐさま告死病菌核弾頭をグレネードランチャーに装填し、ヴァルターンへ発射しようと砲口を向けた。
しかし無策で敵に攻撃させるほどヴァルターンも愚かではない。
「こんな室内で使われたら怖いから……換気するとしますか」
すると、ヴァルターンの身体が一気に膨張、いや巨大化し始めると、軽々と収容所の天井と壁を突き破って全長20mの超巨大宇宙忍者へ変身してみせたではないか!
「フォッフォッフォッフォッフォッ!! 天井や壁をぶっ壊して風通しを良くしてやったぜ。吹雪のせいでちょいと風通しが良すぎか?」
実際、あまりの寒さに防寒具を十分に着込んでいない監督人の鼠は、ガタガタと身体を振るわせて寒さを耐え忍んでいた。
「う、うわああぁぁっ! やっぱりバケモンじゃないか!」
監督人の鼠は上空へ向かって毒ガス弾頭を乱射!
しかしヴァルターンは巨体のまま吹雪の空へと飛翔したため、弾頭は命中せず空を切っていった。
「あっぶねぇなオイ? この吹雪すら余裕の超高性能を誇る俺の宇宙服だが、そんなバッチィのを塗りたくられてたまるかよッ!」
敵の射程外に逃れて吹雪の中へ透明になった姿を紛れさせれば、ヴァルターンの身の保証は確保されたも同然だ。
しかし逃げの一手ばかりでは任務達成とはいかない。
「そういやあれだけ収容所が破壊されても、あのドブネズミ野郎はくたばってねえな。だったら俺の破壊光線であの辺り一帯を吹き飛ばすぜ!」
即座にヴァルターンは両ハサミから破壊光線を地上へ発射!
カッ!と眩い閃光が辺り一面に瞬けば、次の瞬間、破壊光線が着弾した地点はたちまち蒸発して完全な更地になってしまった。
「ひ、ひぃぃ~~~!」
監督人の鼠は身体の一部が焼け爛れたまま、慌てて別の棟へ逃げ込んでゆく。
「おい、あいつまだ生きてんのかよ! 往生際が悪い奴だな! ほらもう一発くらっとけ!」
容赦なく発射された破壊光線は、今度は天高く火柱を立ち昇らせて着弾点を吹っ飛ばしてみせたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ウルル・マーナガルム
スノースーツの下に|化学防護服《ケミカルスーツ》着てるし、同じ素材の|目出し帽《バラクラバ》も持ってきてる
UDC怪物の毒素に対抗する為の装備だけど、どこまで通用するのか正確には測れない
兎にも角にも速攻を意識
それと味方の戦闘の余波にも十分気をつけて
巻き込まれないようにしなくちゃね
ホログラム起動
なるべく隅っこの方で背景に紛れて隠れる
手榴弾を取り出そうとした瞬間が狙い目
ピンを抜かせる前に、手榴弾を避けて手だけを撃ち抜く
手榴弾を放したのを見たら即座に頭か心臓にエイム
既に化学兵器が散布されてるなら、窓や扉を撃って換気、超低温での滅菌を狙うよ
また寒くなっちゃうけど、ごめんねっ
「まさか巨大化して施設を半壊させちゃう猟兵がいるなんてね、さすがのボクもびっくりだよ」
ウルル・マーナガルム(死神の後継者ヴァルキュリア・f33219)は瓦礫の山と化した収容所の別棟の様子を隣の施設の2階から目撃していた。
そして監督人の鼠はしぶとく生存している情報も既に掴んでいる。
「ボクもそろそろ行こうか。ハティ、『フィルギア』の展開よろしくね」
『了解。展開開始』
相棒のロボット犬ハティが光学幻影迷彩を展開、ウルルごと自身の姿を周囲と溶け込ませてゆく。
相手は生物化学兵器……猛毒ウィルス弾を使ってくる。
毒マスクを装備していない彼女だが、臆することなくスニーキングを開始する。
(スノースーツの下に|化学防護服《ケミカルスーツ》着てるし、同じ素材の|目出し帽《バラクラバ》も装着した。UDC怪物の毒素に対抗する為の装備だけど、どこまで通用するのか正確には測れないから。“槍を放つ”なら接敵直後の数秒が分かれ道かな)
とにかく速攻勝負だということは当初から想定している。
猛毒の殺人ウィルスのモヤに包まれれば、視界も遮られて狙撃手としては致命的状況だ。
故に、相手の攻撃の前に撃つ。
これしか勝ち筋がないと判断した。
「あと、さっきみたいなバカでかい規模の味方の攻撃には注意だね。巻き込まれないようにしないと……」
幸い、周囲にはウルル以外の猟兵の気配は感じ取れない。
あとは、こちらへ向かってくる愚かなドブネズミ野郎を撃ち抜くだけだ。
ウルルは廊下に積まれた機材の陰に身を潜めていると、周囲を見渡しながら監督人の鼠がゆっくり歩いてきた。
「はぁ……はぁ……まずいな、傷が深い……! さっきの爆発で脇腹に瓦礫が刺さった……ワイヤートラップで左脚の靭帯が切断されたようだし、最初の手榴弾に至っては後頭部を強打した後に毒ガスを吸い込んだおかげで気分が優れん……! おのれ猟兵……! 次に見付けだしたらこの告死病ウィルス爆弾を口の中に押し込んでから起爆してやるぞ!」
苛立ちを声に出しながらゆっくりと進む敵へ、ウルルが温情をかけると思うだろうか? 否、むしろ格好の的である。
(それじゃ……“素早く、静かに、徹底的に”。いつものように任務を遂行しましょう、ってね)
ユーベルコードの域まで達した武装偵察部隊『ノルニル』の心得から培った射撃技術が一方的にドブネズミ獣人を撃ち抜く。
まずは心臓と眉間。寸分狂わずに急所を貫通させる。
次に通路の窓ガラスを弾丸で粉砕して吹雪を建物内部へ吹き込ませる。
更に爆弾を起爆させぬように左右の肩と肘をピンポイントに狙撃。
それをたった1秒以内に全弾発射して命中させてみせた。
「化学兵器が散布されてると困るから、窓や扉を撃って換気、超低温で滅菌するよ。また寒くなっちゃうけど、ごめんねっ!」
だがウルルの声はドブネズミ獣人にはもう届かない。
確実に急所を撃ち抜いたはずだ。だからもう死んでいる。
なんともあっけない幕切れ。
ウルルの卓越過ぎたアンブッシュが、ドブネズミ獣人に狙撃手を認知させる前に射殺を実現させたのだ。
実際、ウルルも拍子抜けの様子でトドメの銃弾を死体へ撃ち込んでみせた。
「ふう、これで状況終了っと。あとは獣人達の救助を……あれ? ハティ?」
『敵性反応、確認。追跡開始』
ハティは走り去る謎の影に気付いて追い掛けてゆく。
ウルルもそれを追い掛けてゆき、ちらりとその背を目撃した。
「あれは……! そっか、そうだよね。こんな広い収容所の監督人が1人だけだって話は聞いてないや。つまり、鼠はもう1匹いる……!」
もう片方の鼠がいることに気付いたウルルは、ハティやムーンドックス達を遣って他の猟兵達へ伝令を命じた。
ここは研究施設でもある、ならば共同研究者がいるのも自然な道理だ。
「こういうパターンもあるんだね……ま、もう片方はみんなに任せるよ。ボクは伝令が終わったら救助活動へ移ろうかな? ……寒っ!」
窓ガラスを割って外気温が入り込んだ廊下で、ウルルはしばし情報収集に明け暮れるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
フローレンス・ナイチンゲール
七転十五起マスターにおまかせします。
「私はナイチンゲールと申します。私が絶対に治します。はい、どんな手を使ってでも!!」
戦闘でも基本的に敵の撃破は味方に任せます。私は飽くまで看護師ですので。
以下の優先順位に基いて行動します。
①傷病者の救助・看護・護衛
②傷病者不在時は参戦
※敵に襲われた場合、傷病者を護りつつ速やかかつ適切に対処します。
主に治療用にUCを使用し、|不老不死《種族:神》の為、積極的に救護します。私の治療活動を妨げない限り、他者に迷惑をかける行為はしません。ただし、人命救助の邪魔をするのなら上官や患者と言えど全く容赦しません。
また、例え治療の成功のためであれば手段は一切選びません。
ポーラリア・ベル
わーっ、怖いお病気を振りまくのだわ!?
駄目よ。冬の中ではウイルスさんもみんな氷に眠っておかなきゃ。
寒さに関しては毛布に包まり【氷結耐性】【寒冷適応】で防寒するわ!
ミサイルが飛んでくる!
【絶対冷凍】で病原菌ごとミサイルをかちーんって凍らせていくの!
最終的にはミサイルランチャーも本体も、ウイルスと一緒に氷結封印なの!
ウイルスが散布されてきたら、【天候操作】で吹雪を起こしてあっちへこっちへ飛ばして、ポーラは毛布で口元ガードなの!
万一病気にかかりそうなら【凍結攻撃】で、病気な部分を凍らせて止めたり、ヤバいレベルなら【凍結攻撃】で自分ごと氷漬けになってカーリングの様に滑り、他の猟兵さんに治してもらうー!
指揮官はもう1体いる――!
そんな情報が猟兵達に伝達されてゆく。
ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)はまさかの事実に、文字通り震え上がった。
「わーっ、ドブネズミさんが怖いお病気を振りまくのだわ!? 駄目よ。冬の中ではウイルスさんもみんな氷に眠っておかなきゃ」
真っ白な毛布にくるまりながら、キョロキョロと周囲を見渡して監督人の鼠がいないかを警戒するポーラリア。
その背後からいきなり声を掛けられる。
「もし? あなた、今、病気をおっしゃいましたか? それは大変です! すぐに治療しなくては!」
外見年齢6歳前後の階梯5のヒツジ少女が、ポーラリアの小さなフェアリーの身体を掴んで“診察”を開始し始めた。
「これは……長年にわたって医療に携わってまいりましたが、身体が縮むどころか、背中に翅が生える奇病なんて診たことありません! ああ、なんてことでしょう! しかも体温がこんなにも低下しているなんて! まるで氷のようです! すぐに温めて心肺蘇生を!」
そうまくし立てながら少女は鉄拳を振り上げる。まさか、心肺蘇生行為って、それでぶん殴る事なのか!?
「すとーっぷっ! あたしは生きてるし、身体が冷たいのは冬告精だからなの! フェアリーなのだわ!」
ヒツジ少女の手から必死に抜け出したポーラリアは頬を膨らましてプンプンと激怒する。
「あたしはフェアリーのポーラ! 異世界から来た猟兵なの!」
このあとポーラリアはフェアリーの種族特性をヒツジ少女へ教え込むと、少女はあうあうと狼狽してしまう。
「も、申し訳ありません! 先程、グリモアベースで|生物化学兵器被害《バイオハザード》が発生してると聞いて、居てもたってもいられずに転送してもらったばかりで……よもやその影響であなたの身体が縮んでしまったのかと……いや、お恥ずかしい限りです……」
どうやら彼女はまだ猟兵として目覚めたばかりで、任務の勝手がわかっていない様子。
「申し遅れました。私は看護師のフローレンス・ナイチンゲールです。ナイチンゲールとお呼び下さい」
フローレンス・ナイチンゲール(白き衣の天の使いにしてクリミアの看護神・f40415)……|あの《・・》ナイチンゲールである。
他世界のナイチンゲールは2年間クリミアの戦地で活躍後、自身の功績を讃えられるのは良しとする一方で、自身の名が有名になって広告塔として独り歩きするのを毛嫌いし、普段は偽名を濫用したり、没後の自身の墓には『イニシャル以外の名を刻むな』と遺言で残すほど人前で名乗りたがらなかったそうだが、目の前のヒツジ少女は割と気さくで慇懃な態度であった。
だがポーラはそれを知る由もない。知らないので、他の猟兵と変わらぬ態度で接し続けた。
「ナイチンゲールさんね。とりあえず、一緒にもう一匹のドブネズミ獣人さんを探すのだわ!」
「かしこまりました。病原体は一刻も早く切除しませんと!」
そう意気込むナイチンゲールは、|動力駆動型医療鎖鋸《チェーンソー》を担ぎながら哨戒を開始した。
「……本当に看護師さん?」
あの子はむしろ悪魔を狩ってそうだなぁ……などとポーラリアは考えてしまうのだった。
暫く哨戒を続けていると、監督人の鼠とばったり2人は遭遇してしまう。
「げぇ! 猟兵ぃっ! ばらば先手必勝!! 告死病ミサイルランチャー発射!!」
判断が早い!
鼠はすぐさま猟兵2人へ殺人ウィルス弾頭を発射!
「ミサイルが飛んでくる!」
ポーラリアも即座に迎撃を試みる。
「なにもかも、冬の静寂の如く凍てつき止まる。あたしの奥の手、見せてあげる!」
飛んできたウィルス弾頭へ限界超えた冷気による瞬間凍結魔法を放つ!
「|絶対冷凍《アブソリュート・オーバーフリーズ》! 病原菌ごとミサイルをかちーんって凍らせていくの!」
向かってくる半分の弾頭が一瞬で真っ白に凍り付くと、不発弾となってポーラリアの横を素通りしていった。
しかしもう半分は凍結が不十分で起爆してしまった!
真っ黒なウィルスのモヤが通路内に拡散してゆく!
「わーっ! 感染しちゃうわ! 吹雪であっちいけーなの!」
焦ったポーラリアは魔法で吹雪をドブネズミ獣人へ向けて放ち、病原菌を押し返すことで感染を未然に防いでみせた。
しかし、黒いウィルスのモヤの中にはナイチンゲールが取り残されている!
まさか、もう既に感染してしまったのだろうか?
ポーラリアは一旦吹雪の放出を止めてナイチンゲールの安否を確認しようとした。
……まさにその時だった。
「病原体、発見! 治療を試みます!」
「ぎゃあぁああぁぁっ!」
吹雪と黒いモヤが晴れたその先には、ヒツジ少女がチェーンソウでドブネズミ獣人をズタズタに斬り裂く光景が繰り広げられていた……!
「私は看護師ですので攻撃には参加しません! ですのでこれは治療です! 猛毒ウィルスを撒き散らす病原体の切除手術です!」
「ぎゃあああああぁぁ! 幼女がでかいチェーンソウを振り回して襲ってくるぅ~!」
真っ白な羊毛と衣服が、敵の返り血で真っ赤に染まってゆく。目が血走って見開きっぱなしである。
ドブネズミ獣人も異常な状況に混乱している様子。
「というか、何故、貴様はあの|ウィルスの中で平然としてられる《・・・・・・・・・・・・・・・》のだ!?」
「ユーベルコードでウィルス毒素を無効化しました! 『我が生涯を清く過ごし、我が任務を忠実に尽くさん事を。我は総て毒有る物、害有る物を絶ち、我が手に託されたる人々の幸の為に身を捧げん』……この誓いが正義である程、敵は更に超弱体化するのです! そして戦場内のありとあらゆる有毒物・有害物を根絶し、あらゆる傷病と不幸を無効化します! 時間制限を過ぎると私は死にますが、この身は既に人にあらず。看護の女神にまで昇華した私ならば、死んでもまた復活できます!」
無茶苦茶すぎるユーベルコードの効果である……!
しかし実際、殺人ウィルスを完全にものともせずに動けるのはかなりのアドバンテージだ。
ただし、全ての傷病を無効化するため、ナイチンゲールが斬り刻んだ敵の傷もすぐに癒されてしまうのだが。
それでも、斬られた痛覚と幼女がでかいチェーンソウを振り回して襲ってくる恐怖は癒せず、堪らずドブネズミ獣人は逃げていった。
「ひぃぃぃ! 逃げるが勝ちだ!」
だが、ここでポーラリアが攻める!
「逃がさないの! 自分をカッチーンと凍らせてー、カーリングあたーっく!」
自身の下半身を氷漬けにして廊下を滑走!
そのまま敵の足元にぶつかって体当たり!
「うおおぉぉぉ!?」
躓いたドブネズミ獣人が、階段から転げ落ちてゆく。
ナイチンゲールがユーベルコードを発動中なのでダメージは発生しないが、精神面はかなり消耗させたはずだ。
「さあ、ポーラリアさん! ここはまだ毒の影響がありますので、私達は外へ退避しましょう! 私のユーベルコードが発動している間に、早く!」
「う、うん! それじゃあたしを運んでくれると嬉しいの!」
こうして、氷漬けのポーラリアを拾い上げたナイチンゲールは、毒の影響が少ない猛吹雪の屋外へと退避してゆくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カシム・ディーン
ネズミかー…昔は僕にとっては極上の食材でしたよ
それでも何度か死にかけたけどな
「ご、ご主人サマ…鼠は食べちゃダメな奴代表だよ…!」(ほろり
つーかよぉ…どうせそういうの作るならエロい気分になるウィルスとか服だけ食い尽くすウィルスとか作れやこらぁ!
「そうだそうだー☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵ウィルスの性質と攻撃の性質と何より戦闘舞台の状況把握
【念動力・浄化】
念動障壁展開
更に浄化の力を付与してウィルスを防ぐ!
【属性攻撃・迷彩】
風光属性を己達に付与
空気の障壁でウィルスを更に防ぎ光学迷彩で存在を隠す
【弾幕・スナイパー・空中戦】
UC発動
超高速で飛び回りながら念動光弾を連続で叩き込みその動きを止めて
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・電撃・見切り】
鎌剣と刀による連続斬撃
反撃は見切る!
切り刻みながら同時にガスマスク強奪!
てめーばっかり安心安全ってのはずりーよなぁ?
安心安全健全は僕と|ソウルブラザー《フェリクス》で十分だごらぁ!
「メルシーもだぞ☆」
尚、切り刻むと同時に電撃を叩き込み内側から焼く!!
箒星・仄々
いかにもマッドなネズミさんですね!
ハーメルンの笛ではありませんが
海へと導きましょう
ぽろろんとリートを奏でて
具現化した五線譜で
毒ガスをネズミさんの方へと吹き飛ばします
その機にささっと回り込んで
再び五線譜を放って
ドブネズミさんを窓を突き破って
外へと吹き飛ばします
外でしたら毒ガスの効果は落ちますね!
再び火の魔力で体を暖めながら
風の魔力で空気の断熱層を纏って
防寒対策をしながら演奏を続けて
兵器を吹き飛ばして同士討ちさせたり
ネズミさんへと向かわせたりします
その混乱に乗じて
ネズミさんの装備部位も吹き飛ばします
これで兵器を使えないでしょう
そして今度はガスマスクを吹き飛ばします
その後に続けてネズミさん自身を
吹き飛ばした先には
風の魔力で収集していた告死病の毒ガスの雲です
対猟兵用とのことですが
オブリビオンさんではどうでしょうか
その結果はどうであれ
旋律と共に放つ五線譜で海へと還します
終幕
演奏を続けて鎮魂とします
海で静かにお休み下さい
帽子を胸に一礼
さあ熊さん達をおたすけしましょう
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と相棒のメルシーは、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)と合流後、収容所の半壊や監督人の鼠がもう1匹いること等、新たな情報を掴んで敵の捜索にあたっていた。
「仄々君はまた会ったね☆ 今回もよろぴくだぞ☆」
「メルシーさんにカシムさん、ご両人ともお変わりないようで何よりです。よろしくお願いしますね」
カシム達と箒星は過去に何度か連携を組んだ経験がある。
遣り口は違えど、互いの役割が案外と噛み合うので実は相性が良いのかもしれない。
それはさておき、箒星は嗅覚とヒゲのセンサーで周囲の違和感を探っている真っ最中。
「その監督人さんは、いかにもマッドなネズミさんですね! 私はハーメルンの笛吹きさんではありませんが、この演奏で骸の海へと導きましょう」
滅殺こそがオブリビオンの救済だと疑わない箒星は、今日も柔和な口調の裏側に殺意を見え隠れさせている。
そんな事などお構いなしに、メルシーは前から疑問に思っていたことを箒星へぶつけてみた。
「そういえば仄々君ってケットシーだけど、普段からネズミを捕まえて食べるの?」
「言い方がストレートすぎるだろ!」
すかさずカシムにスパーンッと頭を叩かれるメルシー。脳味噌は取り戻したはずなのに反響音がでかい。
これに箒星はエメラルドグリーン色の両目を二人に向けたまま答えた。
「それは秘密です。それよりも、発見された数々の世界には美味しい食事がたくさんありますからね。私はそちらでお腹を満たせれば満足です」
「だよなー。……僕も猟兵になって故郷の世界から飛び出た時、世の中にはこんなにも安全で美味しい食べ物が溢れるほどあるなんて、考えたこともありませんでした」
そう語るカシムは腕を組みながら、自身の地獄の幼少期を思い返していた。
「生まれ育ったクソ組織が壊滅して、僕は身ひとつで森に放り出されましたからね……いつ餓死してもおかしくない毎日でした。その中でも……ネズミは僕にとっては極上の食材でしたよ。彼奴等は勝手にたくさん増える上に何処にでもいたので、いくら食ってもなくならない夢の食材でしたね……それでも、何度か死にかけたけどな」
「ご、ご主人サマ……鼠は食べちゃダメな奴代表だよ……! 病原体と寄生虫の凝縮還元された塊だよ……!」
「メルシー、仄々に質問したてめーがそれを言う筋は通らねーぞ!? ヂュクシ!」
「おぅふ……! うへへへへ♪」
カシムはメルシーの脇腹を手刀で突きさしてお仕置きすれば、それをご褒美だと錯覚したメルシーが思わず顔をニヤニヤさせていた。
「相変わらずおふたりはブレませんね。仲睦まじい事は良い事です」
「「う、うん……」」
目を細めた箒星の言葉に、カシムとメルシーは素直に受け取っていいのかと躊躇してしまった。
異変を察知したのは会話の数分後であった。
「ご主人サマ……!」
「カシムさん、私のおヒゲにビンビン来てます。監督人さんですね」
異様な気配をカシムも肌で感じていた。
十数m先にいるはずなのに、猟兵への憎悪を滾らせているのが空気で伝わってきているのだ。
「くそ……! 猟兵め……! 私の作った対猟兵用殺人ウィルス『告死病』は完璧だったはずなのに!」
姿を見せた、もう1匹の監督人の鼠。その姿は既に数多の猟兵達の攻撃で満身創痍であった。
「はぁ……はぁ……だが、貴様等だけでも殺してやる! 私の研究成果は正しいのだ! それを証明してみせる!」
猟兵からして廊下の真正面奥に陣取った監督人の鼠は、ロケットランチャーの砲口を向けてトリガーを引いた。
「喰らえ! 告死病菌核弾頭、装填!! 告死病爆弾、射出! まとめて腐れ落ちるがいいさ!」
有無も言わさぬ先制射撃だ!
廊下という閉鎖空間、窓は何処にもなく、外気と繋がるところは一切見られない。このまま弾頭が炸裂すれば、爆発と一緒に告死病ウィルスに猟兵達は感染してドロドロに骨肉が腐り落ちてしまうだろう!
しかし、歴戦のカシムとメルシー、そして箒星が連携をとれば、このような危機的状況すらいともたやすくひっくり返してしまえるのだ。
「メルシー! 念動障壁、展開だ!」
「もうやってるよ☆」
メルシーが発現させた斥力の結界は、何重にも猟兵達を覆って物理攻撃をその場で留めさせる。発射された告死病核弾頭と爆弾も、着弾せずに空中で停止したままピクリとも動かない。こうして信管を刺激しなければ被害が広がる事もない!
「念のため、障壁内部は高度な浄化魔法で毒を無効化できるようにしてあるよ!」
「ナイスだ、メルシー!」
阿吽の呼吸で敵のユーベルコード攻撃を未然に防いだ後は、箒星が反撃に転じる。
「では、私がこの危険な代物をネズミさんに返却しましょうか。さあ、行きましょう! 喝采のファンファーレ!」
箒星が奏でる竪琴の旋律が、七色の光を纏った五線譜として実体化して射出される。
それは弾頭と爆弾の信管を刺激することなく後ろへ吹っ飛ばし、通路奥で勝ち誇っていた監督人の鼠を巻き込んで施設の壁を破壊してみせた。
「な、なんだってーっ!? グワアアァァァアアアーッ!?」
またしても猛吹雪で荒れる施設の外へ押し出された監督人の鼠は、自分が発射した兵器の餌食になって爆散してしまう。幸い、ウィルスの黒いモヤは猛吹雪で掻き消されたため、周囲へ感染する恐れは無くなった。
「やはり、外でなら毒の感染力はほぼ無効化されますね!」
箒星の読み通りだった。
それでも直撃した本人の感染はさすがに免れない。防毒マスクを被っていても、猟兵達から受けた傷口からウィルスが侵入してしまったのだ。
「ぎゃあああああぁぁ! 筋肉が、溶けて……ゆく! 呼吸が、できな、おぇ……かはっ!?」
真っ白な雪の上に、ドブネズミ獣人の吐血の赤が撒き散らされる。
そのまま放っておいても死にそうな様子だが、猟兵達の攻撃の手は一向に緩まなかった。
「ざまぁねーなぁ、クソネズミ! つーかよぉ……どうせそういうの作るならなぁ……吸った相手がエロい気分になる催淫ウィルスガスとか! 服だけ溶かすウィルス溶液とか! そういう需要を考慮して作れやこらぁ! 僕が言い値で買うぞ!」
「そうだそうだー☆ そして闇ルートで転売して大儲けするぞ☆」
光学迷彩魔術を発動したカシムとメルシーは、雪上で完全に気配を消しながら敵の周囲で煽りまくってゆく。
箒星も竪琴の演奏から光の五線譜を発射し続け、空中で敵をお手玉にしながらダメージを蓄積させてみせる。
「仄々! 此処は僕達に任せろ! 行くぞメルシー! 魔力と思考をリンクさせろ!」
「ラジャったよご主人サマ♪ ひっさーつ☆ ロバーズランペイジ☆」
2人の能力がシンクロした次の瞬間、彼らの機動力が一瞬で最高速度マッハ42まで加速!
そのまま超音速斬撃の連続コンボを叩き込んでみせる!
目にも留まらぬ斬撃が、ドブネズミ獣人の身体から噴き上げる赤い体液を撒き散らせて周囲を染め上げさせた。
「てめーばっかり安心安全ってのはずりーよなぁ? そのマスクは没収だな!」
カシムの卓越した窃盗技術が、ドブネズミ獣人の被っていたガスマスクを剥ぎ取った。
「安心安全健全の代名詞はなぁ! 僕と! ソウルブラザーで! 十分だごらぁ!」
「メルシーもだぞ☆」
超至近距離からの雷属性念動光弾をダブル乱射!
病毒を感電熱で焼き殺しながら吹っ飛ばす!
すると、仕上げに箒星が旋律で操った風の魔力でドブネズミ獣人を天空へ運び始めたではないか。
その先には、曇天の暗い雪雲よりもドス黒いモヤの塊が浮かんでいた。
「皆さん、見えますか? あの真っ黒な雲が。あれはさっき、吹雪で吹き飛ばされた告死病ウィルスのモヤを私が風の魔力で一か所にまとめて雲にしておきました。ネズミさんは既に感染しているようですし、対猟兵用とのことですが、オブリビオンさんではどうでしょうか。それに最期はご自身の研究結果を最大限に味わって骸の海へとお還りいただくのが相応しいかと」
箒星の鎮魂歌が、猛吹雪に負けない強力な上昇気流を生み出してドブネズミ獣人を毒雲へと押し上げてゆく。
「や、やめろーっ! やめてくれぇぇっ!」
泣き叫んで許しを請うドブネズミ獣人。
しかし地上の漆黒のケットシーはその様子を微笑みながら見守っていた。
「その研究手腕、人々を救う方策へ使えばどれだけよかったか。貴方は研究の末に狂ってしまったのでしょう。お可哀そうに。どうか、骸の海でおやすみなさいませ」
箒星がポロロン♪と竪琴の弦を掻き鳴らせば、ドブネズミ獣人を取り込んだ毒雲ごとはるか上空へと吹っ飛ばされてゆく。
そして悲鳴は消え、ただの雪景色に戻っていった……。
「では、寒いですし、施設内へ戻って囚われのクマさん達を救助しましょうか、おふたりとも?」
箒星がてくてくと施設内へ歩いてゆく。
「だな……しっかし相変わらず容赦ねーな?」
「仄々君が味方でよかったぞ☆」
カシムとメルシーが震えているのは、猛吹雪の寒さだけではなく箒星の信条の体現を目の当たりにしたから、かもしれない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『混沌都市の凄腕鍛冶屋!』
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POW : 力仕事なら任せろー!
SPD : 精密機器の調整には自信があるぞ!
WIZ : 危険な宝貝もしっかりメンテだ!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
監督人の鼠を撃破した猟兵達は、囚われのロシアの獣人達を牢獄から解放した。
解放されたクマ獣人を始めとする屈強な彼らは、今までの鬱憤を晴らすが如く施設を手あたり次第に破壊し始める。
猟兵達もこれに加担すれば、1時間もせずに永久凍土開拓地は更地へ戻ってしまった。
しかし、天に紅の「五卿六眼(シャスチグラーザ)」の大呪術の監視の目がある限り、彼等にロシアでの安寧はない。
ほとぼりが冷めるまで外国へ出奔して身を隠すしか、彼らの生きる術はないのだ。
猟兵達はあらかじめグリモア猟兵が手配した逃走ルートを使い、一路ロシア国境を目指してゆく。
そして、中国へ……。
――脱走から1週間が経過した。
逃亡者のロシアの獣人達は名を変えて、サイバー仙界都市こと|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》の鍛冶屋で下働きをしている。
久々に猟兵達は彼らの様子を見に転送されると、そこには頑固な鍛冶屋の主人に顎で使われる屈強な勇士達の情けない姿が目に映った。
「コラーッ! そのパーツを倉庫に運ぶなと、何度言ったら分かるんじゃ!」
「す、すみませんでした! さっき使わないって言われたので、しまっていいものかと……」
「分からない事があったら何故聞いてこんのだ己等はッ! もういい! 掃除でもやっておれ!」
「は、はい、師匠……」
あの収容所をボコボコにぶっ壊してたクマ獣人が、しゅん……と肩を落としてすごすごと下がってゆく。
どうやら彼らは戦闘以外はかなりポンコツだったらしい。
ここで怒鳴り散らしていたサイバネ義足の老人は、来客の気配を感じて振り返る。
「フン、来たか猟兵共……。|白虎幇《パイフーパン》の連中の頼みでなければ、あんな奴らは放り出したいところじゃ! 使えん奴らを寄越しおって、全く……誰が己等を食わせてやってると思ってやがるのじゃ!」
かつてこの|須弥山型都市《シャングリラ・シュミセン》は、猟兵達の活躍でオブリビオンの魔手から守ってもらった経緯がある。その際に白虎獣人達のサイバー任侠クランこと|白虎幇《パイフーパン》と猟兵達は信頼関係によって結ばれているのだ。今回のロシア獣人達の受け入れ先にも喜んで手を挙げてくれたのも、先の戦闘での恩義を返すためだと|白虎幇《パイフーパン》のボスは語っていたらしい。
だが、実際受け入れてみれば、クマ獣人達は仕事の物覚えが悪すぎて使い物にならない。
これでは、裏ルートで手を回してもらった超精巧に偽装されたパスポートを購入する資金を、いつまで経っても貯めることが出来ない。
そこで、鍛冶屋の主人が猟兵達に白羽の矢を立てた。
「……ということじゃ。こうなったら己等にも仕事を手伝ってもらうぞ? いやとは言わせん! あのポンコツたちを使い物になるよう、どうにかしてくれ! ああ、言っておくがな? この店は表沙汰にできない事情を抱えたサーボーグヤクザや一癖も二癖もある偏屈な仙人などが、サイバネ機器や宝貝を持ち込んでくるんじゃ。そいつらと絶対にトラブルを起こすなよ? ワシは毛むくじゃら共の仕事のツケが溜まってて手が塞がっておる! じゃから、そっちの接客やメンテナンスは任せたぞ? ほれ、これがうちの仕様書じゃ。40秒で叩き込んだら、さっさと働け! 請求書が山のように積まれて仕方がないわい!」
有無を言わさぬブラック業務形態!
だが、裏を返せば逃亡者であるロシア獣人達を堂々と受け入れらる場所は、裏社会の片隅の作業場くらいしかなかったのかもしれない。
とにかく、事情は分かった。
ロシア獣人達が目標金額を稼ぐためにも、猟兵達がアシストしなくては!
猟兵達の新たな|戦い《業務》が、いま始まる……!
ヴァルターン・ギャンビット
面倒なアフターサービスもやる羽目になっちまったな。
連れてきた【宇宙忍者軍団】の部下達をロシア獣人1人に付き数人づつサポートに就かせて手伝いや応援や助言をさせとくぜ。
いくら仕事の物覚えが悪いからって手取り足取り指導してやりゃ、最低限使えるようになるだろ?
んじゃ、俺は『超銀河コーラ』でも飲みながら寛いでるかッ!
あ?厄介そうな客?仕方ねえな。俺が対応するか。客は…サーボーグヤクザか。
どーもどーも、ここからは俺が対応させて頂きます。
サーボーグ部分のメンテか。この程度なら楽勝だぜ。
手の空いてる部下共は集まれ。この旦那のメンテを行うぞ。
(パッと見、宇宙人が人体実験してるみたいな光景)
【アドリブ歓迎】
ヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)が状況を確認すると、思わず頭を抱えてしまった。
「面倒なアフターサービスもやる羽目になっちまったな……」
嘆くヴァルターンだが、彼には宇宙忍者軍団の配下達が付いている。
「しゃあねぇなッ! 出番だぜ、お前らッ! クマ共を手取り足取りサポートしてやんなッ!」
「「応ッ!!」」
呼び出された135人のシノビン星人達が鍛冶場に散らばってゆく。
彼らはすぐさまこの鍛冶場のルールや取り扱う商品の仕様書を覚えると、ロシア獣人達を的確にサポートしてみせる。飲み込みが遅かったロシア獣人達も、誰かに見守られながらの作業は安心感があるようで、思いのほか作業効率が上がっていった。
「いくら仕事の物覚えが悪いからって手取り足取り指導してやりゃ、最低限使えるようになるだろ? んじゃ、俺は『超銀河コーラ』でも飲みながら寛いでるかッ! この仕事場はやたら暑いからなッ!」
ヴァルターン自身は現場監督として部下の仕事ぶりを見守っていた。ただし冷たい飲料を飲みながらくつろいでいるが。
鍛冶屋の主人はそれをいい顔していないが、何かトラブルがあれば真っ先にヴァルターンは駆け付けてゆくので何も言えずにいた。
しかし、唐突に店先が騒がしくなったと思えば、鍛冶屋の主人が鬱陶しそうな顔をする。
「またあのサイボーグヤクザか! 彼奴と関わると仕事ができん! すまんが、対応してくれるか?」
主人はくつろいでいるヴァルターンに接客対応業務をしてみせろと促した。
これにヴァルターン、意味ありげな笑い声を漏らしながら肩を竦める。
「フォッフォッフォ……厄介そうな客? 仕方ねえな。俺が対応してやるか。見てろよ? 宇宙忍者軍団頭領はネゴシエーションも得意だってとこをよぉッ?」
自信満々で店先に出てゆくヴァルターン。
店内のカウンターには、サイリウム発光タトゥーが全身に掘られた階梯5の狐獣人が肘をついて待ち侘びていた。
「おぅおぅおぅ!? 随分と待たせてくれるじゃねぇか? しかも見ねぇ顔だな? 誰だてめぇ?」
「どーもどーも、いらっしゃいませ。最近入った新人でございます。本日は俺が対応させて頂きます」
へこへこと下手に出て相手を刺激しないように立ち回るヴァルターン。
そんなヴァルターンに狐のヤクザは、自身のサイバネ右足をカウンターへドンッと乗せて指差した。
「んじゃよぉ? これ、どうなってんだ? 一昨日直してもらったはずなんだがよぉ? もう関節部が軋んで疑似神経を刺激して痛てぇーんだよ! 手抜きしてんのか? ああぁ?」
ヴァルターンは指差された場所を凝視すると、なるほど、確かに関節部のネジが不自然に折れ曲がっているのを確認した。しかし、どうみても人為的な力が加わったとしか考えられない曲がり方だ。
「失礼ですがお客様? ここ数日、何か足を酷使されましたか?」
「あ? 俺はただ因縁付けてきやがったバカの顔面に、このサイバネレッグの膝蹴りを叩き込んでやっただけだぜ?」
……原因、判明。
しかし、ヤクザは『最初から作りが甘いからこうなった』と一歩も引かない。
そこでヴァルターンは一旦ヤクザの要求を呑んで、サイバネレッグの修繕を急遽行うことで納得させた。
「それでは、すぐに修繕しますのでお待ちくださいませ」
「おう、すぐにやれよ!」
預かったサイボーグ仕様のサイバネレッグを裏の仕事場まで持ち込んだヴァルターンは、イライラを静めるために『超銀河コーラ』を一気に飲み干した。
「プハァ~~~! 飲まなきゃやってらんねぇぜチクショーッ! つか、この程度なら楽勝だぜ。手の空いてる部下共は集まれ。この旦那のメンテを行うぞ」
「「応ッ!」」
こうして、宇宙人が引っこ抜かれたサイボーグの足に群がって改造している光景という、怪しい作業工程が実現してしまう。
そして、ものの30分で修繕が完成してしまった。
「お待たせしました……どうぞ、神経接続をおこないますのでこちらへ」
「お、おう。マジで早かったな? って、接続時の痛みが殆どねぇだと!? というか、足が軽いぜ!」
「お客様、喧嘩をするのは止めませんが、お身体に馴染むまで1週間は安静にしてください。ボルトだけじゃなくて、可動部のギアも破損して食い込んでましたぜ?」
ヴァルターンの解説に、ヤクザは咄嗟に顔が青ざめた。
「マジか……すまねぇ。下手したら右足自体がオシャカになるとこだったぜ。どうやら、俺の使い方が荒かったようだな。これは謝罪も含めての代金だ、取っておいてくれ……」
狐のヤクザは気まずそうに店を後にしてゆく。
その背を見送る宇宙忍者軍団とヴァルターンは、思わずハサミをぶつけあって喜び合うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ウルル・マーナガルム
クマさんたち久しぶりー……って、想像以上に大変な事になってるね
作業面はボク自身も素人だし、それ以外の所を埋めようかな
仕様書はハティがチェックすれば、他の子機達にも共有される
何体かはホログラムで獣人さんの姿を投影して接客に回って
残りはクマさんたちのサポートをよろしく
何を指示されたか、何を何処に置くか
分からなそうにしてたら速攻で助言したげてね
たぶん収容所では、分からない事を聞いたら怒られたりしてたのかな
きっと、ここのお爺ちゃんは大丈夫
頑張って付いていこうとする人を見捨てたりなんてしないと思うよ
慣れないお仕事でも、やってる内に慣れてくるからさ
もうひと頑張り行ってみよう!
ウルル・マーナガルム(|死神の後継者《ヴァルキュリア》・f33219)は、数日ぶりにロシア獣人達に逢うべく、潜伏先の鍛冶屋を訪れた。
「クマさんたち久しぶりー……って、想像以上に大変な事になってるね」
鍛冶屋で働くクマ達がみんな総じてしょんぼりしていた。
「思ってたよりも気落ちしてるね? 話聞こうか?」
ウルルは作業の手が空いたクマ獣人から事情聴取をした。
鍛冶屋での作業は慣れない事ばかりなのもあるが、自主的に動くことが収容所と違う点だという。
「そっか。収容所では、分からない事を聞いたら怒られたりしてたのかな。きっと、ここのお爺ちゃんは大丈夫だよ。口は悪いけど、面倒見は良いと思うよ?」
ウルルは鍛冶屋の主人に聞こえるように言ってみせる。様々な人間を見てきたウルルの目には、かの翁が悪い人間には思えなかった。
「それに、頑張って付いていこうとする人を此処では見捨てたりなんてしないと思うよ。とはいえ作業面はボク自身も素人だし、それ以外の所を埋めようかな」
ウルルはクマ獣人の背中を押して作業場に戻すと、相棒ロボットのハティと支援の子機達ムーンドックス達に仕様書や商品リストや工程をデータとして読み込ませる。そうしてムーンドックス達の何体かはホログラム3Dでクマ獣人の姿を投影して接客に当たらせた。
「それじゃ、残りはクマさんたちのサポートをよろしく。何を指示されたか、何を何処に置くか、分からなそうにしてたら速攻で助言したげてね。慣れないお仕事でも、やってる内に慣れてくるからさ」
ウルルはハティとムーンドックス達に大筋は任せつつ、接客のクレーム対応などを自ら出向いてこなしてみる。
「ふう、ちゃんと説明すればクレーマーも分かってくれるね。この調子で、もうひと頑張り行ってみよう!」
可視化されたマニュアルをロボット犬達が提示しているかぎり、手順に不明点を覚えることが少なくなった。
職場の効率化に一役たったウルルは、鍛冶屋の主人の覚えが良かったという。
大成功
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ロヴァキア・シェラデルト
マオ(f40501)と
白熊をグループ分けし、それぞれに簡単な仕事(過去取引資料、設計図、素材の性質、ツール、線の繋ぎ方…etc)を割り振り完璧に覚えさせる。
簡潔な情報伝達で熟練者が役割を果たす。戦争と同じだ、個ではなく全員で結果を出せ。
愛想やフォローはマオの力を信頼して、俺は客とのやり取りと各々への指示出しを行う。
酒や飲み物を出しなだめつつ[情報収集/取引/言いくるめ]相手の正確な希望を読み取る。俺も殺し家業故の[戦闘知識]で何が何故壊れ他にどう影響するかは検討がつくはず。
客も参加させ各担当と意見を出し合う。
戦闘のプロによる、猟兵お墨付きのお客様専用チューンナップ。ご満足いただけると思うが?
マオ・ロアノーク
ロヴァキアさん(f40500)と
…親方さん。特に仕事が出来なくて落ち込んでる子達って、どの子かな…?
こそりと教えてもらったクマ獣人さん達の元へ。話を聞いてみる。
ミスの原因を一緒に考え、焦らず1つ1つ覚えさせる。
失敗はね、ダメじゃないんだよ。分からない事をそのままにして、無理に進もうとしちゃうのがダメなの。
一度、やり方を見せてもらってもいいかなっ。…ふむふむ、なるほどね。ここはね、こうすればやりやすいよ。こっちはこうかな。ねっ、出来たでしょ?
あっ、お客さんだ! ちょっと行ってくるね。
いらっしゃいませーっ! どんな強面さんでも怯まず笑顔で歓迎。
任せて! これでも装備の点検は自分でやってるんだから!
ロヴァキア・シェラデルト(羅刹の殺人鬼・f40500)とマオ・ロアノーク(|春疾風《はるはやて》・f40501)の2人は、鍛冶屋に到着するとクマ獣人等の動きをつぶさに観察する。
他の猟兵のおかげで幾分は動きが良くなったものの、やはりまだまだ失敗が多く、その度に主人に怒鳴られてしまっていた。
マオは不機嫌そうに金槌を叩く鍛冶屋の主人に、そっと声を掛けてみる。
「……親方さん。特に仕事が出来なくて落ち込んでる子達って、どの子かな……?」
「ああ? ……あのツキノワグマだ。名はセルゲイ。あれは臆病でならん。口数も少ないしな……」
そう告げると、主人はそのまま作業に没頭してしまい、以降は返事もしなくなった。
困り果てたマオは、ツキノワグマの獣人を探すことに。
「ロヴァキアさん、ツキノワグマの子って見かけなかった? って、何してるの?」
マオがロヴァキアのもとへやってくると、何やらクマ獣人数名を班分けしてレクチャーをしている最中だった。
ロヴァキアは無愛想にクマ獣人達を睨みながら答えた。
「見たまんまだ。こいつ等を作業別に班分けして、ひとつひとつの作業に集中させる。聞けば、ひとつの受注をひとりが担当し、1から10までやっていたらしい。あの爺さんならともかく、慣れない作業を丸投げされればミスは当然起きる。だから専業化して、各担当の持ち回り制にする。これで簡潔な情報伝達で熟練者が役割を果たすことが可能だ。要は戦争と同じだ、個ではなく全員で結果を出せ」
クマ獣人達はこの指示のおかげで覚える工程の数が大幅に減り、集中力も増して作業効率と質が格段に向上した。
ロヴァキアもこれには少し得意げに口元をつり上げてみせる。
「ふん……これでマシになったな。で、ツキノワグマがどうした、マオ?」
「ああ、そうだったよ! あのね……」
マオはロヴァキアへ、ツキノワグマの獣人が覚えが悪い事を伝える。
「その子、どこ行ったか知らないかな?」
「ああ、そいつなら買い出しに行かされたな。そろそろ戻ってくる頃じゃないか?」
「わかった、ありがとう!」
マオは鍛冶屋を飛び出すと、周辺の路地をキョロキョロと見渡し始めた。
すると、遠くから明らかにしょんぼりして歩いてくるツキノワグマの獣人の姿が見えた。
「おーい! 君! ツキノワグマのセルゲイ君だよね?」
「え、は……はい。セルゲイは僕ですけど……あ、この間の猟兵さん?」
紙袋を抱えて首を傾げるセルゲイへ、マオは駆け寄ると彼の手を引いて作業場へ連れていく。
「ほら、来て来て! そしてよく見てね?」
マオは班分けされて作業速度が見違えるほど上がった作業場をセルゲイへ見せる。
「これは、どういうことですか?」
「ロヴァキアさんのアイデアだよ! これならセルゲイ君もひとつのことに集中できるはず!」
マオはおつかいの品をセルゲイの代わりに主人へ届けると、しばらくセルゲイを作業場を見学してみせた。
「大事なのは、ミスの原因を誰かと一緒に考え、焦らず1つ1つ覚えること。失敗はね、ダメじゃないんだよ。分からない事をそのままにして、無理に進もうとしちゃうのがダメなの」
「ですが、僕は皆さんの邪魔をしそうで……」
臆病なセルゲイは気後れして、周囲の獣人達へ意見が出来ない様子。
ならば、マオがその橋渡しをすることにした。
「セルゲイ君、一度、やり方を見せてもらってもいいかなっ。すみませーん! セルゲイ君の作業、ちょっとみてもらっていいかな?」
作業中のクマ獣人達をコミュ力で融通してもらうと、セルゲイは衆人環視の中で作業を始める。
それをマオも見守るのだが……。
「……ふむふむ、なるほどね。ここはね、こうすればやりやすいよ。こっちは……こうかな。あってる?」
他の獣人達にも確認をとるマオ。
彼等もセルゲイへ助言を与え、激励の言葉を送った。
「ねっ、出来たでしょ? それにみんなも怒ってないし! もっと頼っていいよ!」
「は、はい……! ありがとうございます!」
セルゲイは早速、他の獣人達の輪に入って手ほどきを受けている。
もう彼はこれからもやってゆけるだろう。
「あっ、お客さんだ! ちょっと行ってくるね!」
マオはパタパタと駆け出して、カウンターへ向かっていった。
「いらっしゃいませーっ! って、お酒臭い!」
マオが顔をしかめる。
カウンターでは、ロヴァキアとウサギ仙人が酒盛りをしながら盛り上がっていた。
「ロヴァキアさん! 仕事中にお酒なんて!」
叱責するマオへ、ロヴァキアは気にせず酒の瓶を直に呷っている。
「これも接客だ、マオ。この客は酒を交わした方が話が進む。そう俺が判断したまでだ」
「イヤー! まさか宝貝の修理を依頼したら酒が出てくるなんてネ! しかもオニーサン、実戦経験が豊富ヨ! 宝貝のチューンナップ案をどんどん出してくれるから、アタシも酒が進んじゃうヨ!」
ただでさえ赤い目が更に充血して酔っ払ったウサギ仙人、どうやらいたくロヴァキアを気に入った様子。
「俺も殺し家業故の戦闘知識があるからな……何がどう壊れ、他にどう影響するかは検討がつく。それに酒が入ったほうが腹を割って話せるだろう?」
「そういうことネ! あの頑固爺さんじゃ、ここまでサービス良くないヨ!」
作業場の奥から「うるせぇ酒クズ!」と怒号が飛んできたのはご愛嬌である。
「戦闘のプロによる、猟兵お墨付きのお客様専用チューンナップ。ご満足いただけると思うが?」
「勿論ネ! ああ、さっきの装甲を削った分だけ機動力を強化する案、是非やってほしいヨ!」
「そうか。俺としては攻撃力を尖らせる案を推奨するが……まぁいい。マオ、この宝貝のチューンナップ、頼めるか?」
ロヴァキアから手渡されたのは、小型のラジコンカーのような戦車型宝貝と各種改良設計図と要望書の束だ。
マオはこれを受け取ると、笑顔で頷く。
「任せて! これでも装備の点検は自分でやってるんだから! おーい、セルゲイ君! さっそく挑戦してみようよ!」
マオはお客から預かった品一式を抱えて作業場へ戻ってゆく。
現場の雰囲気の良さは、カウンターで酒を飲むロヴァキアにも伝わってきていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カシム・ディーン
…面倒くせーなぁ
ようやっとマス◎ーソードゲットした所なのによー
「えー…?手伝おうよー?因みに地上◎ルートだぞ☆まだ風しかクリアしてないぞ☆」
仕方ねーな…
メルシー…おめーは接客と手伝いだ
「それじゃ幼女ま」
ふざけるなぁぁぁぁ!?須弥山都市滅ぼす気かぼけぇ!?
UC発動
【情報収集】
仕様書を確認
全員で情報共有
きちんとやれ
接客もきちんとな
セクハラは…可愛がって搾り取れ
「「ひゃぁっはぁぁぁぁ♥」」
んじゃ僕は…しょぼくれた熊共をどうにかすっか
【戦闘知識・視力】
立ち回りと動きを観察…
うん…これは経験と技だな
生真面目に学習してきた結果ってのが判るな
おめーらさー…何で変に受け身になってるんだ?
ほら…|あいつ等《メルシー共》の立ち回りと動きを視てみろ
自分達がどう動くか…判るだろ
…彼奴ら自身も誤解してたみたいだが
熊ってやべーレベルで頭いいんだよ
「本当に?」
ああ…経験をきちんと学習して行動に移す…
(過去を思い出し苦い表情
だから本質的に彼奴らも皆頭いいんだよ
自信なくしてるだけだ
出来た事はきちんと褒めて学ばせる
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)はグリモア猟兵の要請を受け、渋々ながらクマ獣人達の様子を確認しに向かった。
「……面倒くせーなー」
「えー? 手伝おうよー?」
相棒のメルシーは主の怠惰ぶりに呆れながら作業場へてを引いてゆく。
だがカシムは鍛冶屋の蒸し暑い作業環境に早くも嫌気が差し、メルシーに後の事を任せると言い出した。
「ああ、面倒くせーけど仕方ねーな……メルシー、適当に分身して助けてやれ……」
「ラジャったよご主人サマ☆ それじゃ幼女ま――」
「ふざけるなぁぁぁぁ!? 須弥山都市滅ぼす気かぼけぇ!? せめてドラグナーガールにしておけ!」
と、いうことで、メルシーはカシムの魔力を媒介に143体の分身体に増殖すると、分業化された作業工程の手伝いを行い始めた。
「次に使う部品と工具を用意しておくね☆」
「手が足りない? メルシー達がいるぞ☆」
「此処ってすごく暑いね~? はい、お茶☆」
ドラグナーガールモードのメルシー分身体は、あらゆる環境で飛翔能力を得る。これで重い資材運搬も楽々だ。
人手も余りあるほどなので、いつもよりも作業効率が加速しているのも事実だ。
「おい、メルシー達……接客も頼んだぞ。いちゃもん付けてきたり、おめーらへセクハラしてくる奴は……わからせろ」
「「ひゃぁっはぁぁぁぁ♥」」
この後、鍛冶屋へ来店したクレーマー数人は、みな同じように素っ裸になるまで身包みを剥がされて逃げ帰ってしまったそうな。
一方、何もしないカシムは、鍛冶屋の主人の無言の圧に耐えかねて作業場を監督していた。
「僕はしょぼくれクマ達の様子を見るか……うん、こいつらは元々の性格が生真面目なんだな? 言われたことはきちんとこなせてるな……そこへ新規の案件を抱えると、途端にペースが崩れがち……収容所で作業をこなし続けていた弊害か?」
カシムはブツブツと考えを口にしてまとめる。
そして、今まさにミスをしたクマ獣人へ駆け寄ってフォローをしてゆく。
「おめーらさぁ……何で変に受け身になってるんだ? ほら……|あいつ等《メルシー共》の立ち回りと動きを視てみろ。次に自分達がどう動くか……判るだろ?」
「は、はい……! 助言、ありがとうございます!」
クマ獣人はすぐに作業ペースを持ち直すと、その後はミスらしいミスを起こすことなく仕事をこなしてみせた。
カシムはその様子にひとり納得していた。
「ご主人サマ、どうしたの?」
メルシーに尋ねられると、カシムは即答する。
「……彼奴ら自身も誤解してたみたいだが、熊ってやべーレベルで頭いいんだよ」
「本当に?」
「ああ……経験をきちんと学習して行動に移せる知能があるからな……」
カシムの脳裏に過去の苦い記憶が蘇って、思わず苦笑する。
「だから本質的に彼奴らも皆、頭いいんだよ。ただ自信なくしてるだけだ」
「それじゃ、メルシー達が褒めてあげればたくさん伸びるかも?」
「だな? だから後は任せたぞメルシー? 僕は暑いからアイスを買ってくる」
「メルシー、イチゴ味が食べたいぞ☆」
「誰が買うか!」
カシムは作業場を飛び出し、市場通りを目指して大欠伸するのだった。
……まだまだ暑い日が続きそうだ。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
熊さん達の安全のためにも
早く偽造パスポートをゲットしたいですね
精一杯猫の手をお貸ししましょう
故郷を離れて
全く違う仕事に就いたのですから
上手くいかないのも無理はありません
故郷には家族や友人、恋人もおられることでしょう
何もしてあげられず
忸怩たる思いもお持ちでしょう
仕事に身が入らないのも当然と思います
仕事のBGMとして
ロシアの歌曲をメドレーで爪弾きます
故郷を救うためにも
条約機構から国を取り戻すためにも
家族や仲間と再会するためにも
今は姿を隠して生き延びる時です
さっさと仕事を片付けちゃいましょう
心が癒され
目指す未来へと進む意志を取り戻した熊さんたちは
きっと頑張ってくれるはずです
ヤクザや仙人さんもなんのその
永久凍土や条約機構を思えば
大したことはありません
臆することはありません
堂々と接客して下さいね、熊さん方
サイバネ機器や宝貝への修理対応も
鍛冶屋のご主人から直接仕込まれた熊さん方なら
きっと大丈夫です
私もオマケに魔導蒸気機関パーツを
くっつけてパワーアップを図ります
この勢いでどんどん稼ぎましょう!
箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は作業場へ訪れると、事前情報で聞いていた状況とは全く異なる作業効率に驚いてしまう。
「私が此処へ来る前に、他の猟兵さんが尽力してくださったのですね。ありがたいことです」
箒星はここで決まった新たなルールなどを働くクマ達に聴取してゆき、自分にできることがまだある事を実施するべく準備を始めた。
「熊さん達の安全のためにも、早く偽造パスポートをゲットしたいですね。精一杯、猫の手をお貸ししましょう」
おもむろに箒星は懐から取り出した懐中時計のボタンを握り込むと、白い蒸気を噴き上げながらそれは竪琴に変化してゆく。
「ほう? 面白い作りの品じゃな? 蒸気圧で稼働させとるのか、なるほどな……」
鍛冶屋の主人も、異世界の蒸気魔導機関に興味津々だ。
「ロシアの獣人の皆さん。故郷を離れて全く違う仕事に就いたのですから、上手くいかないのも無理はありません。それに、故郷には家族や友人、恋人もおられることでしょう。何もしてあげられず、忸怩たる思いもお持ちでしょう。仕事に身が入らないのも当然と思います」
箒星は作業効率ではなく、クマ獣人達の心のケアを行うと決めていたのだ。
その方法は、ずばり、彼の竪琴の音色だ。
「私はシンフォニア。旋律で世界を変える奏者です。これから作業BGMとして、ロシアの歌曲をメドレーで爪弾きます」
箒星の計らいに、ロシア獣人達はおおっと感嘆の声を漏らした。
「故郷を救うためにも、条約機構軍から国を取り戻すためにも、家族や仲間と再会するためにも、今は姿を隠して生き延びる時です。さっさと仕事を片付けちゃいましょう」
|カッツェンリート《ねこのうた》を爪弾き、ロシア歌謡曲を次々を演奏する箒星。
するとクマ獣人達は自然と笑顔に満ち溢れ、次第に口ずさみながら軽快に作業をこなしてみせる。
その効果はすぐに発揮された。
「親方! 終わりました!」
「なんだって? 随分と早いのう!?」
鍛冶屋の主人は、見違えるように仕事をバリバリこなすロシア獣人達に目を見張った。
望郷の想いを刺激された彼らは、見失掛けていた目的……偽造パスポート代の捻出を強く意識するようになった。すると、彼らは自然と手が動き出し、持ち場ごとに意思疎通を密にしてゆき、結果として作業場が周りに回って主人にも引けを取らない仕事ぶりを披露してみせた。
「こりゃ驚いたわい! 音楽ひとつで、こうも変わるもんなのじゃな? まさに世界を変える音楽じゃ……!」
主人はついには自分の抱えていた仕事までクマ獣人達に分け与えるほどまで負担を経験してもらい、今は冷えた烏龍茶をすすって休憩できる状況まで至ってしまった。
「作業効率などの目先の事ももちろん大事ですが、心が癒され、目指す未来へと進む意志を取り戻してあげる事も重要です。もう大丈夫です、熊さんたちはきっと頑張ってくれるはずですよ」
次はロシア民謡を奏でて作業場を盛り上げてゆく箒星。
いつしか作業場はクマ獣人達の大合唱で満ち溢れ、数日前には辛気臭い雰囲気だったのが噓のように活気に満ち溢れた明るい職場に生まれ変わった。
と、箒星の演奏は客寄せになったようで、次々と依頼が舞い込んでくる。
主人が対応しきれずにクマ獣人達も駆り出されて大忙し!
「ヤクザや仙人さんもなんのその、永久凍土や条約機構軍を思えば恐れるに足らず、大したことはありません。ですので臆することはありません。堂々と接客して下さいね、熊さん方。それに、サイバネ機器や宝貝への修理対応も鍛冶屋のご主人から直接仕込まれた熊さん方なら、きっと大丈夫です」
箒星は彼らを激励してカウンターへ送り込んでゆく。
おかげで特にクレームも発生ことなく、むしろ難癖を付けようとした冷やかしの客まで虜にしてしまうほど好評を博した。
「おい、黒猫のボウス。あとでその魔導蒸気機関とやらを教えるんじゃ。新たな客層の取り込みが可能かもしれん」
鍛冶屋の主人の依頼も箒星は快く引き受け、自分の知る限りの知識を授けた。
後日、魔導蒸気機関を搭載した宝貝やサイバネパーツがこの街で流行するのだが、それはまた別の話である。
「さあ、皆さん! この勢いでどんどん稼ぎましょう!」
箒星のロシア歌謡曲のメロディーが作業真に流れ続ける。
そのおかげか、この日の売り上げは過去最高額を叩き出し、あと数日で目標金額に到達する見込みが立った。
これなら猟兵が居なくとも、彼等だけで大丈夫だろう。
箒星は強い確信を得て、意気揚々と帰路についたのであった。
<了>
大成功
🔵🔵🔵