蒼き原点の夏休み
「さて、家族の夏休みを邪魔したり、悪用しようとしてる輩を見つけ出し排除しましょうか」
スマートに蒼煌ドレスをひるがえしながら、青い髪と瞳が印象的な美女が真夏のリゾート地に降り立つ。
彼女の名はエクティア・クロンユナイールゥ。とある研究所で開発された強化人間達の長姉にして蒼き原点。
家族をなによりも愛し、慈しみ、守ることを第一とする彼女は、たとえ世間が夏休みだろうと務めは怠らない。
「私の全ては家族の為にあるのです。夏休み……というのも気にはなりますが、まずはお邪魔虫を排除です」
ここはサイバーザナドゥ。高度技術の塊であるエクティア達の機密を狙う輩はどこにでも存在する。
休暇を楽しもうとしても、いつ敵がやって来るか分からない状況では家族も羽を伸ばせないだろう。
そこで長姉であるエクティアが先に「掃除」を終わらせておこうというわけだ。
「はい、見つけましたよ」
「なッ、貴様は……?!」
観光客に紛れ込んでいた、どこぞの企業の工作員を見つけ出したエクティアは、稲妻の如き速さで背後を取る。
彼女の両手を覆うガントレット「蒼の鋼拳」から繰り出される【蒼煌雷槍】の一撃は、相手に武器を構える暇も与えず、一瞬のうちに昏倒させた。
「一丁上がりですね」
あまりの早業に、周囲の観光客は何が起きたのか気付いていない。
普通に夏休みを楽しんでいる人達に迷惑をかけるつもりはエクティアにもなかった。
邪魔者の排除を済ませた彼女はぱんぱんと手を払って、他に怪しい奴らがいないか探す。
「この辺りはもう大丈夫でしょうか」
緊張の糸を緩めはしないが、ひとまずの安全を確認できれば、彼女にも夏休みを楽しむ余裕が生まれる。
肉体は全身鋼鉄のサイボーグに改造されていても、心はまだ年頃の乙女である。夏のリゾートにきて気持ちが弾まないわけがない。
(特に花火大会は楽しみです)
聞けばこのリゾートでは夜になると打ち上げ花火が上がるらしい。夜空に咲く大輪の花はきっと美しかろう。
それまでに邪魔者を全て始末するつもりで、エクティアはいそいそと哨戒にあたる。あくまで家族を第一に考えつつ、彼女自身も楽しめるだけ楽しむつもりのようだ。
(その為に私は頑張りましょう)
家族のために、そして自分のために。シンプルで明快なモチベーションを得たエクティアの表情は明るかった。
戦場という名の日常を離れた、彼女たちの夏休みはまだまだ始まったばかりだ。
成功
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