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F-mini SummerGP!!

#アスリートアース #ノベル #猟兵達の夏休み2023

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劉・涼鈴




 夏の盛りの青空の下を、小さな車体が駆け抜けていく。四季折々のレースを終えて、この会場に集まったのは各大会での優勝者達。アスリート・アースにおけるモータースポーツ、|F-mini《フォーミュラ・ミニ》、その真の王者を決める大会が、遂に幕を開ける。
「いくぞ! インフィニティ・ブレイカー!」
 バレンタインカップの覇者である劉・涼鈴(鉄拳公主・f08865)もまた、その王位を狙う内の一人だ。
 好スタートを決めたインフィニティ・ブレイカーは、ぐんぐん加速しながらホームストレートを駆け抜け、少年少女やいい大人達――他選手を置き去りにしてトップに立つ。とはいえこのコースは山を越え、海を渡る過酷なもの、このまま楽勝というわけにはいかないだろう。
 競技場の平らなコースを抜けた先は、山岳地帯を駆け上っていく狭い上り坂。つづら折りの急カーブが続くその道に、ここまで先頭を走ってきた涼鈴の愛機も少々苦戦を強いられていた。
「今だ! ライトニングドリフト!!」
「この程度の上り坂など――!」
 稲妻の如き軌道を描き、最低限の減速でカーブを越えていく者、トルク性能を活かして難なく登坂していく者、それぞれの強みを出した後続の車は次々と彼女に追い付き、抜き去っていく。
「さすが、どいつもこいつも一筋縄ではいかないね!!」
 ライバル達もまた、各大会を勝ち抜き時にはダークリーガーさえも破ってきた猛者ばかりだ。
「うわっ! なんだアレは!?」
 だがその時、前方の選手達が声を上げる。見れば、向かう先の坂の上から、巨大な岩がいくつも、コースに沿って転がってきていた。突然の事態に先頭グループがクラッシュ、かなり危険だが、あれもまたレースの仕掛けなのだろう。
「クソッ、誰だこんなコースを考えたのは!?」
 事故った車体のパーツ交換にかかる選手達、だがそれを追い抜いた涼鈴にもまた、別の大岩が迫り来る。
「あぶなーーいッ!!」
 あわや大岩の下敷きかというそのタイミングで、後方から追い上げてきた別の車体が、インフィニティ・ブレイカーの前へと飛び出す。
「また会ったね、劉さん!」
「君は……ルーク少年!?」
 バレンタインカップで競い合った彼の愛機、パワーアップしたPNDジャイアントネオは、力強い体当たりで目の前の大岩を叩き割った。
「あの時の借りは返したよ!」
 今度は負けないからね、と爽やかな笑みを浮かべる彼の作った道へ、続く車体を走らせて。
「よーし……!」
 気合を入れ直した涼鈴は愛機と共に山岳地帯を駆け抜けていった。

 最後のバンクを抜ければ、崖を滑り降りていくような長い急坂、そしてその先は、島と島を繋ぐ浅瀬の中を通っていく海エリアだ。
 浅瀬とはいえ水没地帯、水陸両用パーツへと換装を始める各車に対し、涼鈴はそのまま下り坂を最大速度で駆け降りていく。
「先に行くよ、ルーク少年!」
「劉さん、まさかそのまま――!?」
 最高速度ならば誰にも負けない、その言葉通りに加速していった車体は、海岸前の僅かな起伏を見切り、水に突っ込むその寸前で空へと飛び立った。
「いっけぇーー!!!」
 彼女の声に応え、インフィニティ・ブレイカーの左右のカバーが弾け飛び、隠されていた赤い翼が広がる。
 飛び出した勢いそのままに、車体は風を切り裂き、大波を破り、滑空しながら水没地帯を一気に突破していく。反対側の砂浜まで飛び超えてしまえば、残すはゴール前のロングストレートのみ。
 不要になった翼をパージし、加速した車体は、真紅の矢のようにチェッカーフラッグの下を駆け抜ける。
「やったーー! 優勝だ!!!」
 そうして、世界を制した王者の車が、蒼穹の下で炎のように輝いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月05日


挿絵イラスト