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水鳥川さんちの夏事情 in 2023

#UDCアース #ノベル #猟兵達の夏休み2023

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水鳥川・大地




 連日の猛暑で外の気温は見たくもない事になっているけれど、クーラーの効いた室内は至極快適。そんな涼しい自室で寛いでいるのは水鳥川・大地(ギャップ系ヤンキー男子・f40237)と、彼の弟の大河であった。
 二段ベッドの上から部屋を覗けば、大河が机に向って何かしているのが見えて大地が起き上がる。
「大河、何してるんだ?」
「え? 宿題」
 宿題……? と、珍しいものでも見るような顔をした兄に、大河がげんなりとした顔を見せる。
「多いんだよ、宿題……小学校の時とはダンチでやってもやっても終わんなくってさ!」
「あー……」
 そういや、そうだったなと大地が遠い目をした。
「っていうかさ、兄貴は大丈夫なのかよ」
「あ?」
「宿題だよ、宿題!」
 宿題、と言われて担任から渡された提出物のプリントを思い出す。
「あー……」
 半ば呻くような声を上げながら、大地はベッドから降りて自分の机に放りだしたままの鞄を開けた。
 プリントには様々な課題内容が書かれており、その量はどう考えても中学生の頃よりも多くて今度は大地がげんなりとした顔をする番だった。
 中学生の頃は喧嘩に明け暮れて宿題もろくに提出していなかったけれど、高校に上がった時にきっぱりと足を洗うと決めたからにはこの宿題もやらねばなるまい。
「……やるか」
「……うん」
 二人は溜息をつきながら、夏休みの宿題を何とか終わらせる為にシャーペンを走らせた。
 暫くして、大地は自分が汗を掻いている事に気が付いて顔を上げ、クーラーを見遣ってから大河に視線を向けた。
「おい、大河」
「なにー?」
「お前なんでクーラー消すんだ」
「えっ、俺何もしてないけど」
 おっかしいな、リモコン触ったかな、とか言いながら大河がリモコンをクーラーに向けてスイッチを押す。
 カチ、カチカチ。
「あれ、スイッチ押してもつかない……もしかして、壊れた?」
「はぁ!?」
 このクソ暑いのにクーラーが効かないとか死活問題だ、と大地が立ち上がって大河からリモコンを受け取る。
「……つかないな」
「やっぱ壊れた?」
「おいおい……この猛暑でクーラー無しとか生きていけるのかよ」
 絶対無理だろ、と大地がクーラーを睨むように見上げた。
「でも兄貴、こういうのもトレーニングっぽくていいじゃん!」
「ポジティブか! バカ、熱中症で倒れたら元も子もないだろ」
 こういう奴から倒れていくんだな、と大地は弟を叱りつつ、さてどうしたものかとスマホを操作する。
「何してんの、兄貴」
「んー、クーラー壊れたって連絡」
 母親に入れておけばなんとかしてくれるだろう、という判断だ。
「これでよし、とりあえず避難がてらどっか飯でも食いに行くか……」
 丁度昼時だ、今から出れば涼むついでに腹も膨れる、一石二鳥だと大地が立ち上がる。
「大河、何食いたい?」
「ラーメン! ラーメン食いたい、ラーメン!」
「わかったわかった」
 こいつも大概ラーメンが好きだな、俺もだけどと思いながら隣に立った大河をまじまじと見遣って――大地がふっと真面目な顔をした。
「え、何、兄貴。ラーメンやだった?」
「そんなわけあるか。いや……大河、お前また背ぇ伸びた?」
「んー、そうかも? もう少ししたら兄貴の身長追い越せっかな!」
「追い越さんでいい。むしろ縮め」
 縮め、縮め、と弟の頭をわしゃわしゃと撫でるようにして押し付ける。
「横暴! 絶対追い越してやるからなー!」
 うおー! と叫ぶ大河に、そうなる前に俺ももう少し伸びるはず、と自分の身長への伸びしろに期待しつつ、大地はじわじわと気温の上がる部屋を出たのだった。

 ところ変わって、大地と大河の行きつけのラーメン屋。肌寒いくらいに冷房の効いた店は、冷房に負けないくらい活気に満ちていた。
「どれにする?」
「俺、麺硬め味噌ラーメン大盛! チャーシューとネギマシマシで!」
「お前それ好きだな……俺は豚骨ラーメン大盛チャーシューマシマシで」
「兄貴だってそれ好きじゃん」
「まあな」
 ついでに餃子と炒飯も頼み、ガッツリと昼飯をかっ食らう。
「やっぱここのラーメン最高だよなー」
「そうだな」
 美味しそうに食べる大河に笑い、大地も負けじとスープも残さずに平らげる。餃子と炒飯は半分こ、皿に分けて食べれば育ち盛りの中学生と高校生の胃袋も大満足だ。
「はー、食ったー!」
「食ったな……」
 満腹、と満足気な顔をしつつ、大地がスマホへの通知を見つけてタップする。
「……電池」
「え? 何、兄貴」
「いや、返信があってな。リモコンの電池替えたかって」
「……電池、替えてないな」
 リモコンの電池を替えて、それでも動かなければ電気屋に連絡しておいて、との母の言葉に大地が『わかった』と返信を打つ。
「よし、電池買って帰るか……」
 出来れば店を出たくないくらいの陽射しだが、帰らないという訳にはいかない。
「最悪さ、台所で勉強しようぜ兄貴」
「だな……」
 ごちそうさん、と店主に声を掛け代金を払い、覚悟を決めて外へ出た。
「あっつ」
「キッツイ」
 早くコンビニに行こう、と駆け込むように帰り道にあるコンビニによる。
「電池電池……単三だったか、単四だったか……大河、どっちだと思う」
「……どっちも買えばいいんじゃん?」
「天才か、どっちも買うか」
 あっても困る物ではないし、何かには使えるはずだと大地が両方手に取ると、大河の服の裾を引いた。
「どうした?」
「兄貴、アイス買おうぜ」
「あー、いいぞ」
「やった!」
 安くて美味しいと有名な氷菓を二本買い、コンビニを出た瞬間に口に咥える。
「やっぱ夏はアイスだよな、兄貴」
「異論はねぇな」
 ガリガリと齧りながら歩けば、家に着く前に食べ切って。玄関の前で少しだけ覚悟を決めて、二人は部屋へと戻るのだった。
 結果から言えば、クーラーはリモコンの電池を替えたら動いたし、きちんと冷えた。そして、冷えた部屋で二人が勉強したかといえば。
 お腹いっぱいになったら眠くなったと、夕方まで二人仲良く昼寝してしまったのも――夏休みのいい思い出である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月05日


挿絵イラスト