ライスメキア|MMM《3000》世とアンチノミー
●二律背反
冷えて燃える。
燃えて凍える。
赤と青。
それは矛盾しているように思えたことだろう。燃える水が存在するように、凍る炎が存在するように。灰色に燃える炎があるように。
『プロメテウス』と呼ばれた宇宙怪獣は、宇宙空間にありて、その発達した翼を持つ大鴉のような姿をしていた。
赤と青に彩られた羽。
しかし、それは真空たる宇宙においては意味のない器官であったことだろう。
空気を捉えることに最適化された羽。
されど、このスペースオペラワールドの宇宙は真空。空気なくば揚力を得ることはできず、重力を持って指向性を持つこともできないだろう。
故に、『プロメテウス』と呼ばれた鳥の如き宇宙怪獣は理屈で言えば飛ぶことはできない。
されど、かの宇宙怪獣は羽撃く。
この宇宙において羽撃くことによって推進力を得て、銀河の海を……否、小惑星が密集するアステロイドベルトの中を泳ぐようにして飛ぶ。
その赤と青の羽は美しく、そして破壊を齎すでも、創造を齎すでもなく、ただ、そこにある因果のように飛ぶ。
「美しいな。揺らいでいる。赤と青の間にありながら、紫に成ることなく二律背反を得て、そこに存在している。その美しさ、煌めき、全て余の為に存在していると言っても過言ではなかろう」
其の様を見やり、オブリビオン『征服王アダマス』は笑む。
彼の瞳はユーベルコードに煌めく。
それは王の栄光にして栄冠。
放たれるは絶対服従の命令。否、勅である――。
●宇宙怪獣カテゴライズ
『惑星バブ』――それは皇女『ライスメキア|MMM《3000》世』によって治められる平和な惑星である。
しかし、平和であるからこそ争いが引き寄せられるようにして、惑星バブに迫る巨大な影……否、赤と青が入り交じる炎の如き翼を広げた宇宙怪獣『プロメテウス』が迫っていた。
「あ、あれは……『プロメテウス』!? 凍れる炎とも、燃え盛る氷とも言われた宇宙怪獣が何故、この惑星に迫っているというのです!?」
彼女はなんともクラシカルな望遠鏡を覗き、この惑星に猛り狂うようにして迫る宇宙怪獣『プロメテウス』に驚愕する。
重臣達も皆、同じように動揺している。
それもそのはずだ。
彼女達にとって『プロメテウス』とは年に一回惑星バブに接近し、いかなる原理からか空にオーロラを齎して去っていく宇宙怪獣であり、無害そのものであると同時に降り注ぐオーロラによって大地は芳醇たる実りを約束されるのだ。
とは言え、その時期にはまだ早い。
宇宙怪獣『プロメテウス』は一年でいくつもの銀河を巡ってやってくる。予定ではまだまだ先のことだ。
なのに、何故か『プロメテウス』は一直線に惑星バブに迫っているのだ。
「ど、どうしたことなのでしょうか……! なお荒れ狂いよう、どう考えてもあれは……!」
「あのような姿、一度たりとてみたことがありませぬ!」
「な、何か理由があるのでございましょうか……! 陛下!」
重臣たちの言葉に『ライスメキアMMM世』は額より汗が一筋流れるのを感じる。
何もわからないのだ。だが、確実に言えることがある。
あの宇宙怪獣『プロメテウス』は確実に惑星バブに災厄を齎すのだと――。
●スペースオペラワールド
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はスペースシップワールドの外側に広がるスペースオペラワールドでの事件の予知となります」
彼女の予知によるとどうやら宇宙怪獣を洗脳したオブリビオンが惑星バブという平和な星に攻め込もうとしているようである。
其の言葉に猟兵たちは、う、と顔をしかめるかもしれない。
宇宙怪獣。
それはスペースシップワールドから続く小惑星ほどもあろうかという圧倒的に巨大な『クエーサービースト』のことを差すからだ。
だが、ナイアルテは頭を振る。
「今回オブリビオンに洗脳された宇宙怪獣は『クエーサービースト』ではないのです。あ、いえ、厳密に言えば『クエーサービースト』も宇宙怪獣なのですが、スペースオペラワールドにおいては宇宙怪獣の一種として分類されているのです」
つまり、猟兵達の知る『クエーサービースト』とは宇宙怪獣に分類される群生体であり、侵入者を破壊するように何者かに命じられているものを差す。
だが、スペースオペラワールドは広大だ。
宇宙怪獣とは単体で宇宙を漂い、数千年もの寿命を持ちながら過ごすものを示している。
時に其の姿は神秘的であり、信仰や狩猟の対象にもなってきたのだ。
「惑星バブにおいても例外ではありません。1体の宇宙怪獣『プロメテウス』は鳥のような形をしており、赤と青の羽を持つ大鴉です。本来であれば惑星バブに年一回、急接近し、オーロラを降り注がせる益ある宇宙怪獣として風物詩にもなっているそうなのです」
だが、それがオブリビオンに洗脳され、荒れ狂う力をもって惑星バブを侵略の尖兵とされているようなのだ。
「これを捨て置くことはできません。洗脳された宇宙怪獣『プロメテウス』は、今、アステロイドベルト……小惑星帯を飛ぶようにしながら迫っています。これを乗り越え『プロメテウス』に接近しなければなりません」
だが、小惑星帯は無数の小惑星と岩石とが密集した宇宙空間。
これを乗り越えるのだけでも一苦労であるが、さらに『プロメテウス』の羽撃く翼によって飛ばされた赤と青の羽が遠距離攻撃として放たれるのだ。
「赤の羽は氷を。青の羽は炎を纏いながら小惑星帯の障害物大き道を征く皆さんにせまるでしょう。これに対処する必要もあります。さらに」
そう、さらに、である。
小惑星帯と『プロメテウス』の攻撃を躱したとしても、そこには『プロメテウス』に座すオブリビオン『征服王アダマス』との戦いが待っている。
『征服王アダマス』は、通常のユーベルコードに加え、『プロメテウス』の赤と青の羽による攻撃も同時に行ってくる。
はっきり言って、強大なオブリビオンが二体同時に襲いかかってくるようなものであろう。
「苛烈な攻撃と絶対服従を強いるユーベルコード。この二つに対処できなければ、勝利への糸口を見出すこともできません。ただ、宇宙怪獣『プロメテウス』は本来無害であり、同時に接近した惑星に豊饒を齎す存在です。どうにか『プロメテウス』を傷つけず、首魁たるオブリビオン『征服王アダマス』だけを打倒して頂きたいのです」
それは難しいことであろう。
しかし、ナイアルテは猟兵たちならば出来るはずだと信じ、彼らをグリモアベースから送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
スペースオペラワールド『惑星バブ』に迫る宇宙怪獣『プロメテウス』とオブリビオン『征服王アダマス』。
洗脳された宇宙怪獣『プロメテウス』を救い、『征服王アダマス』を打倒することで惑星征服を目論む彼の企みを打ち砕きましょう。
●第一章
冒険です。
洗脳された宇宙怪獣『プロメテウス』が飛ぶ小惑星帯――アステロイドベルトに向かいます。
ここは無数の小惑星や岩石、はたまた宇宙船の残骸が無数に点在する障害物多き場所です。
ですが、ここを『プロメテウス』は赤と青の羽による遠距離攻撃を仕掛けてきます。
これらの攻撃と障害物に対処し、『プロメテウス』へと迫らねばなりません。
●第二章
ボス戦です。
宇宙怪獣『プロメテウス』を洗脳したオブリビオン『征服王アダマス』との対決になります。
彼は『プロメテウス』に騎乗し絶対服従のユーベルコードと同時に『プロメテウス』の赤と青の羽による攻撃を同時に行ってきます。
言ってしまえば二体の強力なオブリビオンを同時に相手取るようなものです。
『プロメテウス』事態は本来、穏やかな正確であり、接近した惑星に豊饒を齎す益ある宇宙怪獣なので、できれば傷つけず『征服王アダマス』だけを倒したいところです。
●第三章
日常です。
『征服王アダマス』を打倒居したことにより、宇宙怪獣『プロメテウス』の洗脳も解かれます。
そして、戦いが終わったのを見計らって惑星バブから『ライスメキアMMM世』と住人たちが宇宙船でやってきます。
本来の航路からズレてしまった『プロメテウス』を送り出す『オーロラ祭り』を行う必要があることを教えてくれます。
彼らと共に『オーロラを楽しむだけ』なにぎやかなお祭りを行い、『プロメテウス』を本来の航路へといざないましょう。
それでは、無限に広がる大宇宙を舞台に皆さんの活躍を彩る物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『閃光のアステロイドレース!』
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POW : アステロイドを力づくで破壊しながら驀進
SPD : 高速・高機動で華麗にアステロイドを回避しながら飛翔
WIZ : センサーやレーダーを駆使し知的にショートカットルートを割り出す
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
宇宙怪獣『プロメテウス』にとって小惑星帯は雲のようなものだった。
行く手を阻むものではなく、己の航路を示すもの。故に雲を目指して『プロメテウス』は飛ぶ。されど、今はどうしたことだろうか。己は今、道を外れているような気がしてならない。
いや、そう思うことすら間違いであるのかもしれない。
「何も考える必要はない。その揺らぎに寄る輝きは確かに美しいものだ。だが、余のものでもある。故に、余の手中にありさえすればよいのだ。お前は何も考える必要はない。ただ只管に進め。あらゆる惑星などお前を前にしては路傍の石である」
聞こえる声。
その声に不快感を覚えるが、しかし、それは理由なきものである。
苛立つように羽を動かせば赤と青の羽が氷と炎と伴って、小惑星帯を縫うようにして飛ぶ。
「ハハハ、そうだ。そうすればよい。お前の前に迫るものがあるぞ! そら、そこだ!」
さらに苛立つ。
その声。その言葉。暴力性も、他者を思いやる心すらない。たた完全なるもの。故に『プロメテウス』は苛立ち、呵責なき声を振り払うように力を振るうのだ。
赤と青の羽乱舞する小惑星帯。
それは圧倒的な物量の障害物と、『プロメテウス』に迫る者を排除せんとする羽による壁となって、接近せんと宇宙空間を疾駆する猟兵達を寄せ付けんとするのだった――。
イリスフィーナ・シェフィールド
王を名乗るくせに無理矢理従えるとか程度がしれますわっ。
とりあえず近づかなければどうにもなりませんわね。
ブリザード・カモフラージュで透明になって
プロテクト・オーラを発生させブルー・マリンで飛翔しながら近づいていきましょう。
飛んでくる羽は当たりそうならブリザード・カモフラージュの効果で
炎を纏う青の羽の熱を奪って安全部分を作って進みますわ。
焦らずにいきましょう。
羽衣が揺らめく。
それは銀河を往く天女のようにさえ映ったことだろう。
けれど、その姿を宇宙怪獣『プロメテウス』は見ることは叶わなかった。ただオブリビオンを『征服王アダマス』によって操られ、狂乱の果てに己の翼を羽ばたかせ、赤と青の羽を飛ばす。
嵐のように荒ぶそれは小惑星帯の岩石を縫うようにして、揺らめく天女の羽衣めがけて放たれた。
「まったく王を名乗るくせに無理矢理従えるとか程度が知れますわっ」
天女――否、イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)の瞳がユーベルコードに輝いている。
小惑星帯の岩石を蹴って舞うようにして飛ぶ彼女は迫りくる赤と青の羽を光を反射しない氷でもって青の羽の炎の熱を奪い取る。
彼女の操るブリザード・カモフラージュは彼女の存在を感知させない。
視聴嗅覚以外の何かで『プロメテウス』はイリスフィーナの存在を敵性と判断し、攻撃を放ってきているのだろう。
このスペースオペラワールドという大宇宙には、視聴嗅覚以外の手段で他者を判別する器官を備えた生物が居てもおかしくない。
「宇宙怪獣というだけあってでたらめですわねっ。でも、その力を悪用などはさせはいたしませんわっ!」
イリスフィーナは一気に岩石を蹴って距離をを稼ぐ。
氷を纏う赤の羽を蹴り飛ばし、さらに飛ぶ。
焦って距離を稼ぐことをしては、たちまちの内に『プロメテウス』の放つ羽によって撃ち落とされてしまうだろう。
「焦らずに……とは申しましたが、しかし、これは中々に厄介ですわね。小惑星帯というのは此処まで細々したものなのですかっ」
彼女の目の前に突如として現れる小惑星帯の岩石の表面。
ぶつかればただではすまないだろう。
だが、此処で進むことをためらっていては『征服王アマダス』が操る宇宙怪獣『プロメテウス』は『惑星バブ』へと到達してしまう。
この力で暴れ狂えば、それは『惑星バブ』の破滅にも繋がることだろう。
「それはさせはしませんわっ」
迫る赤の羽を蹴り飛ばし、羽衣を翻しながらイリスフィーナは前に、前にと望む。跳ねるようにして飛び、さらに羽を躱す。
「よくがんばっているようだが、しかし無駄よ!」
『征服王アダマス』はイリスフィーナの舞う姿を認めて笑む。
全てのものは己に従うのが道理であると信じて疑わぬ彼にとって、イリスフィーナの小惑星帯を飛ぶ姿は余興でしかなかったのだろう。
「その玉座にふんぞり返っていられるのも今のうちですわっ。無理矢理従えさせるだけの王器しかないこと、その身に叩き込んで差し上げますわっ」
「余の前に姿を表せば、そのような減らず口も叩けぬわ。せいぜい今吼えることよな」
「余裕綽々というわけですわね。ですがっ!」
その声をイリスフィーナは振り払う。
どれだけ敵が尊大で、またその尊大さに見合うだけの力を持っているのだとしても、彼女は立ち止まらない。
己の中にある意思が膨れ上がっていく。
身を覆う黄金のオーラ。
そのオーラを纏う拳が目の前に迫った巨岩の如き小惑星すら打ち砕く。
「どんな障害であろうと打ち砕いて進むのみっ!」
砕け散った岩石が『プロメテウス』の羽を吹き飛ばし、活路の如き直線たる道を切り開く。
そこをイリスフィーナは纏う青き羽衣と共に駆け抜け、箒星のように『プロメテウス』、『征服王アマダス』へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
烏護・ハル
惑星の皆に愛されて、崇められて、自由に飛んでいただけなのに……。
……罰当たりな奴。
はっ倒すわ。
UCで片脚を狐火変化。
式神さんを肩に乗せ、結界を張りながら飛翔。
障害物と遠距離攻撃を避けながらプロメテウスを目指すよ。
捌ききれない攻撃は結界で受け流して、
ロスを最小限に抑えられるように頑張るね。
式神さん。索敵の方は任せたよ!
直撃を免れなければ、高速詠唱で結界の上から更にオーラを纏って防御。
激痛耐性で痛みをやり過ごしながら体勢を立て直すよ。
惑星の住人にとって神様みたいな子なのよ。
貴方……越えちゃならない一線を越えたわね。
自分が何を仕出かしたか、まるで分かってない。
待ってなさい。
じきに分からせてやるから!
宇宙怪獣『プロメテウス』は大鴉の如き姿をした赤と青の羽を持つ存在であった。
銀河を往く姿は壮麗と言ってもよかった。
そして、その気性から考えても穏やかなものであり、災いをもたらすたぐいのものでもない。それどころか立ち寄った惑星の大地に豊饒を齎すことさえあるのだ。
故に『惑星バブ』に住まう者たちも、宇宙怪獣が惑星付近を通り過ぎるのを毎年見送る祭事として執り行っていた。
「惑星のみんなに愛されて、崇められて、自由に飛んでいただけなのに……」
だが、オブリビオン『征服王アダマス』によって『プロメテウス』は操られ、今まさに惑星侵略の乗騎として扱われている。
其の様を見て、烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)は言いようのない怒りを覚えた。
「……罰当たりなやつ。はっ倒すわ」
小惑星帯にありて迫る『プロメテウス』の赤と青の羽は氷と炎を纏って、岩石の間を縫うようにしてハルへと迫っている。
障害物の多い場所。
それに加えての遠距離攻撃。
いずれもが彼女を窮地に立たせるだろう。
だが、そおれでもハルの瞳はユーベルコードに輝く。
許せないという想いがあるからこそ、彼女は迫る『プロメテウス』を操り座す『征服王アダマス』を、その瞳で見据える。
「余をはっ倒す? 斯様な物言い、痴れ者が言うことぞ!」
ハルの言葉に『征服王アダマス』のこめかみがピクリと動き、その言葉には怒気がほとばしる。その怒りに呼応するようにして『プロメテウス』から放たれる羽の乱舞は一層激しいものとなっただろう。
「式神さん! 索敵は任せたよ!」
ハルの肩に乗った式神によって周囲の小惑星帯に浮かぶ岩石のいちを知り、足を凄まじい勢いで吹き出す狐火へと変異させ、一気に宇宙空間を加速してハルは飛ぶ。
浮遊する岩石を蹴って、さらに加速していく。
迫る羽をさばきながら、ハルは見据える。
「どれだけ障害物があろうが、かっ飛べば一緒でしょ! 狐火ストーム(キツネビストーム)!!」
彼女のユーベルコードは自身の脚部を狐火に変えることによって様々な行動が可能となる。
噴出する狐火の勢いに任せて羽の追撃をかわし、さらにハルは飛ぶ。
「その子は、惑星の住人にとって神様みたいな子なのよ」
「だからどうしたというのだ。神であろうと獣であろうと、人であろうと! 余の前にはひれ伏し屈服するのが定め。それを頭を垂れて喜ぶというのならばいざしらず、余をはっ倒すだと!?」
「そうよ。貴方……越えちゃならない一線を越えたのよ。自分が何を言い、何をしでかしたか、まるでわかってない」
ハルの冷静な声とは裏腹に『征服王アダマス』は怒りに燃えるような苛烈さを発露する。
怒りに呼応するように飛ぶ羽の一撃をオーラで弾きながら、しかし崩れた体勢を狐火で整え、ハルは指差す。
「待ってなさい」
「痴れ者が! 余に指図するなど!」
「その傲慢さ! 尊大さ! それが過ちであると直に分からせてやるから!」
ハルの宣言と共に突きつけられた指先が示すのは『プロメテウス』駆る『征服王アダマス』その人。
彼女の強烈な視線は、距離が離れていようと構わず、彼の目をまっすぐに射抜くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鏡宮・ノエル
うーん、久々にこっちきてみたけど。風物詩に悪さするなんてね。
しかも、無理やり従えてるってのが…。
瑞兆が凶兆になるのは…それに無理やりってのは、ダメだ。
じゃ、行こうか。
ヴァーイに乗って。【神の手】で運上げつつ、一気に駆けるように飛翔しようか。
その岩石は見切って避けるとして…遠距離攻撃はどうしよう。この服にある錯誤の術で位置を誤認させればいいかな?
ヴァーイ、焦らなくていいよ。ヴァーイの思うままに駆けて、見切っていけばいい。
僕は信じてるよ。
スペースオペラワールド。
それは銀河の海往く艦が存在する世界のさらに外側。
あまりにも高度に発展した科学技術故に、その有様は一周回って中世文明めいた様相を呈していた。
その『惑星バブ』に開いする宇宙怪獣『プロメテウス』は赤と青の羽持つ大鴉の姿をしていたが、オブリビオン『征服王アダマス』によって操られ、本来ならば豊饒を齎す力を侵略に使われようとしていた。
「余の前にひざまずくは必定よ。全ては余にひれ伏すために存在しているのだから」
彼は言う。
己の目の前では全ての者が膝を折らねばならぬと。
そうでなければならないのだと。
その物言いと共に放たれる『プロメテウス』の羽は炎と氷を纏って宇宙空間、小惑星帯に乱舞する。
これでは近づけない。
けれど、鏡宮・ノエル(よく圖書館にいる學徒兵・f38658)は神威宿す狼『ヴァーイ』と共に一気に駆け抜ける。
岩石の破片を蹴って、さらに飛ぶ。
迫る羽の一撃はしかし、ノエルの頬をかすめるようにしてあらぬ場所へと飛ぶ。
「『ヴァーイ』、焦らなくていいよ」
ノエルは己が騎乗する狼『ヴァーイ』の首元を撫でる。
確かに今のは危なかったかも知れない。
けれど、今自分は認識錯誤の術をかけてある。
神の手(グッドゥ・ハン)たるユーベルコードによって『卵形の宝石』に溜めた神力を持って、羽の一撃を躱したのだ。
「『ヴァーイ』の思うままに駆けて、見きっていけば良い。僕は信じてるよ」
きっと、とノエルは小惑星帯の先にある『プロメテウス』に座す『征服王アマダス』を見据える。
「あなたのやっているとは、風物詩に悪さするようなことだ。それに無理矢理従えるなんて……」
「それが余の存在たる所以よ。余の前には全ての者が膝を折る。それが理」
「そんな断りなんてある訳がない!」
「だが、現に余はこの『プロメテウス』を従えておる。それが何よりの証拠よ!」
平行線だとノエルは感じただろう。
『征服王アダマス』がオブリビオンだからではない。
それ以上に互いの意見が交わることはないのだと知る。
「瑞兆が凶兆になるのは……そんなことはさせはしない!『ヴァーイ』!」
ノエルの言葉に応えるようにして『ヴァーイ』が羽を躱し、宇宙空間に浮かぶ岩石を足場にするようにして蹴って走る。
不規則な動き。
どれだけ遠距離攻撃に翻弄されるのだとしても、今はノエルのユーベルコードがある。
認識錯誤。
この広大な宇宙空間において、空間認識は必要不可欠なものであろう。
『プロメテウス』だってそうだ。
例え、空間認識を行う器官が人のそれとは異なるものであったとしても、それが器官に頼り認識しているというのならば、ノエルの位置は確実にズレる。
ならば、そのズレが生み出す道を『ヴァーイ』は走れば良いのだ。
迫りくる羽の乱舞を一直線に。
それこそ僅かなロスもなく矢のように戦場を駆け抜け、ノエルは『ヴァーイ』と共に『プロメテウス』、『征服王アダマス』を目指すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
でっけぇ鳥さんですわねぇ
すんげぇ数の焼き鳥になりそうですわ…想像したらお酒が恋しくなってまいりましたわ〜!
無理矢理おペットにされているそうですわねぇ…おいたわしや!
わたくしとヴリちゃんが目を醒させて差し上げますわよ〜!
ここはアレの出番ですわ!
インストレーションウェポンコール!
ゲイルカイゼル!
機動力を超強化!
イオンブースターオン!
駆け抜けますのよ〜!
…って障害物だらけでうっぜぇですわね!
ん?なんですヴリちゃん?
盾にすればよいと?
なるほど!ヴリちゃんは賢いですわね!
障害物におダッシュ!
お羽根をやり過ごしたら次の障害物へおダッシュ!
進路上のお羽根はマシンガンで蜂の巣にしてしまえばよろしいのですわ〜!
「でっけぇ鳥さんですわねぇ」
メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)が小惑星帯を飛ぶ宇宙怪獣『プロメテウス』の姿を見て得た感想はあまりにも素直なものであったし、なんなら大鴉の姿を見て彼女は胃袋がきゅうきゅうと鳴る音を聞いたことだろう。
「すんげぇ数の焼き鳥になりそうですわ……想像したらお酒が恋しくなってまいりましたわ~!」
すでにキャバリア『ヴリトラ』のコクピットの中でなんか黒と黄色のアルミ缶をメサイアはは片手に持っていた。
恋しいとかなんとかっていうレベルではない。
もうすでに飲んでる感じが出ているのは気の所為だろうか。気の所為だな。幻覚でも見ているのかもしれない。
しかし、オブリビオン『征服王アダマス』によって操られた『プロメテウス』より放たれる赤と青の羽の乱舞は小惑星帯の浮遊する岩石の間隙を縫ってメサイアの駆る『ヴリトラ』へと迫っているのだ。
「ここはアレの出番ですわ! インストレーションウェポンコール!『ゲイルカイゼル』!」
メサイアの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に『ヴリトラ』のアイセンサーが輝く。
召喚されるオプション装備。
『ゲイルカイゼル』と呼ばれた高機動仕様。ハイパーイオンブースターを背に負った『ヴリトラ』は凄まじい加速を得て、宇宙空間を一直線に飛ぶ。
だが、メサイアは目を見開く。
なんか缶を片手に持っているが、しかしてその判断は的確だった。
「……って障害物だらけでうっぜぇですわね!」
このままでは小惑星の岩石に正面衝突するところであった。
急停止した『ヴリトラ』に迫る赤と青の羽。
しかし、その一撃を『ヴリトラ』は有り余る推力で持って直角に躱し、岩石の表面へと攻撃を誘導し振り切るのだ。
「なるほど、ヴリちゃんは賢いですわね! 障害物は盾にしてしまえば、あの大きな焼き鳥……じゃなかったおいたわしや『プロメテウス』の攻撃もわたくしたちには届かないということですわ!」
その通り、と言うように『ヴリトラ』は迫りくる『プロメテウス』の羽による遠距離攻撃を次々と岩石へと誘引して障害物を破壊しながら進路を確保してみせたのだ。
「一石二鳥ですわ~! あ、ここでも鳥ですわね。益々持って焼き鳥串焼き欲しくなってまいりますわ~! あ、その前に駆けつけ一杯……」
「何をごちゃごちゃと!」
『征服王アダマス』は苛立っていた。
猟兵たちを排除できないどころか、己に立ち向かってくる。
それを彼は許しがたいことだと思っている。それもそのはずだ。彼はこれまで全ての存在に対して屈服を強いてきた。
服従することが喜びだと説いてきた。
いや、説くことすらしなかっただろう。そうあるべきであるとし、己のユーベルコードでそれを成してきたのだ。
「焼き鳥……じゃなくって『プロメテウス』を無理矢理おペットにしているだけの者にどうこう言われる道理はございませんわ~! わたくしとヴリちゃんが目を醒まさせて差し上げますから、ちょっとそこでふんぞり返っておいてくださいまし~!」
破壊された岩石の破片を蹴って『ヴリトラ』が飛ぶ。
それは変幻自在たる機動。
圧倒的な推力と、それを振り回せるだけの機体フレームが存在するからこそ出来る芸当。きしむ機体。かかる加速度G。
それを一身に受けながらメサイアはためらうことなく加速し、手にしたアルミ缶をぐしゃっと握りしめ……。
「おっと、もったいないですわ~!」
ちゅるんと無重力のコクピットに浮かんだ水滴を、ヒュゴっと吸い上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
お呼びとあらば参じましょう!(口上どろぼう)
ライスメキアさんのピンチとあらば、
なにがあってもハグしにくるのがわたしというもの!
え?サージェさんどしたの?
だいじょぶだよ。浮いてて(なにが、とはいわない)
あ、そだ。シリカさんちょっと貸してもらえるかな!
岩石の軌道とか計算したいんだけど、
リソースどれだけあっても足りないくらいなんだよね。
シリカさんと『希』ちゃんとわたし、
3人の計算能力をあわせれば、突破できないものなどない!
【並列演算】で飛来する岩の軌道を計算、
回避したり、【M.P.M.S】で撃ち落としたりしながら突っ切るよ。
サージェさんの忍んでない攻撃より、浮いてるのが癒やしだね!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、って被せてきたぁぁぁぁ?!
これはひどい、クノイチのアイデンティティを何だと思っているのか
いえまぁ理緒さんが荒ぶるのは想定済です
え?浮く?無重力だから当然では??
存在は浮いてないですよ??
えーシリカさんがオッケーって言うとは思えな……あるぇ?!
シリカさーん?!あれ?!ミニシリカまでー!?
うちのシリカさん’sが本気を出しておられる……?!
まぁいいか
じゃあ私はクノイチらしく忍術で頑張ります
【VR忍術】ライトニングサンダーの術!
説明しましょう!雷です
雷で氷を溶かして炎を散らします
大丈夫、クノイチに不可能はありません!
え?だから浮いてないですってば
無限に広がる大宇宙。
スペースシップワールドは星の海往く宇宙船の世界。されど、それすらスペースオペラワールドの辺境の一つでしかない。
群生するクェーサービーストとは異なる単一の生態を持つ宇宙怪獣。そうした規格外の生物すら内包するのがスペースオペラワールドの広大さを知らしめるものであろう。
大鴉のように赤と青の翼を羽ばたかせる宇宙怪獣『プロメテウス』。
かの宇宙怪獣は小惑星帯を自在に飛ぶ。
それは物理法則を超越しているようにさえ思えたことだろう。故にオブリビオン『征服王アダマス』はユーベルコードによって強制的に従え、『惑星バブ』を侵略しようとしているのだ。
「だというのに猟兵共め。邪魔だてするとは許せぬ。よしんば、それを良しとしてもだ! 余に従わぬ、頭を垂れぬ不遜そのものが許すまじ!」
彼の怒りと共に小惑星帯を縫うようにして『プロメテウス』の赤と青の羽が乱舞して、迫る猟兵たちを迎撃せんと飛ぶ。
「お呼びとあらば」
そんな大宇宙にこだまする声がある。いやさ、前口上。
あれはなんだ。あれは誰だ。
そう、それはクノイチの前口上。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は大宇宙だろうとなんだろうとお構いなしに小惑星帯の岩石の上に降り立ち、高らかに忍べてないことを公言すべく肺に空気を取り込む。
胸が膨らむ。
自己主張が激しい。
「お呼びとあらば参じましょう!」
「私はクノイチって、被せてきたぁぁぁぁ?!」
だが、ここにインターセプトが入る。前口上の間は攻撃しないという不文律はあれど、前口上泥棒をしてはならぬという道理はない。
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はサージェの口上を丸々と被せて奪い去って『惑星バブ』へと高らかに宣言する。
「『ライスメキア』さんのピンチとあらば、なにがあってもハグしにくるのがわたしというもの!」
ちょっと意味わかんないな、とサージェは思ったかも知れない。
というか、あれである。
「これはひどい。クノイチのアイデンティティをなんだと思っているのか」
いや、サージェも大概である。その点においては。
「いえまあ理緒さんが荒ぶるのは当然にして必然。想定済みです」
ふふん、とサージェはこんなこともあろうかと言うように頷く。いろんなことに対して想定して対策をうつ。これがクノイチの出来るムーヴというものである。
しかし、理緒はじとっとサージェの自己主張強い二つの丸いやつを見て半眼になる。
「サージェさん、浮いてる」
「え? 浮く? 無重力だから当然では? あ、存在は浮いてないですよ?」
浮いてる。
「だいじょうぶだよ、浮いてて」
何が、とは言わない。いや、言いたいけど。そのまんまるいやつ!
「なんか今ナチュラルにセクハラされた気がするんですが!」
「まあ、それはいいから。『シリカ』さんちょっと貸してもらえるかな!」
「ふふ、シリカさんが貸し出しオッケーって言うとは思えな……」
『岩石軌道の計算をしたいんでしょ。いいよ』
「ってあるぇ!? シリカさーん!? あれ!? ミニシリカまでー!?」
サージェは目を向いた。
そんな、信じて預かってもらっていた猫ちゃんたちがみんな預け主に懐いて甘いごろごろ声を出しているときのようなそんな幻視をサージェは見た。どっこい現実である。
「ありがとー! リソースがどれだかっても足りないくらいなんだよね」
そんな驚愕するサージェをよそに理緒は一気に岩石の軌道と赤と青の羽による攻撃の軌道を演算によって算出する。
「わたしと『希』ちゃん、『シリカ』さんがいれば、突破できないものなんてないよ! さあ、いくよ!」
並列演算(ヘイレツエンザン)によってゴーグルと直結した視界と演算能力が一瞬で迫る岩石と『プロメテウス』の攻撃の軌道を見切って躱す。
「うちの『シリカ』さんズが本気を出しておられる……!?」
サージェはあんまりな光景に目を丸くする。
だが、流石クノイチ。切り替えも早かった。この窮地を乗り越えられるのならば、と心を切り替えたのだ。
そう、自分はクノイチである。
ならばこそ、忍術でらしく突破するのが筋というもの!
「VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)! メモリセット! チェックおーけー! 参ります! ライトニングサンダーの術!!」
なにそれ!
「説明しましょう! 雷です! 雷で氷を溶かして炎をちらします」
そんな雑な理論でだいじょうぶだろうか。
本当に一人で出来るの?
ご安心頂こう。これは猟兵ゼミでやってたとこである。
「大丈夫、クノイチに不可能はありません!」
「そうだよねーサージェさんって忍んでない攻撃より、浮いてるのが癒やしだもんね!」
「だから浮いてないですってば!」
浮いてる。バーチャルキャラクターだってことを差し引いても、サージェのライトニングサンダーの術は宇宙空間では浮いていた。
デタラメにも程があった。
どういう理屈でそうなっているのかさっぱりわからないほどの苛烈なる勢いでサージェと理緒は『プロメテウス』の羽の攻撃をちらしながら一気に肉薄するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ステラさん、なんか難しい文字多いんですけど……。
これってシリアスですよね? ですよね?
だってほら、蕁麻疹でかかってますもん!
それにしても、赤いのと青いのですか。これ、混ぜたら紫になりますね。
しかも、なんというか、ちょっと濁った系の……。
って、いえ、ちょっと怖い想像に、
やべー×やべーになってしまっただけですので!
危なかったです。蕁麻疹が鳥肌にかわっちゃいました。
勇者的には、
『愛ってあんなに偏ってていいんだっけ?』
と、思わなくもないですが……とりあえずあそこを抜けるんですよね!
わかりました!
こういうのは【Canon】でいっきにいっちゃいます!
……なんかいま、ひどいこといいませんでした?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の香り……はあんまりしないですけども
青いのとか赤いのとか出てくる以上は頑張りませんと
メリサ様の言ってた『セラフィムの最終世代』というのも気になりますし
バイスタンダー……傍観者となるか救命者となるかは私次第、ということですね
で、シリアスアレルギーが出ているルクス様?
ついていけないなら置いていきますよー
ええ、メイドに不可能はっていうか、愛に不可能はありません
誰がやべーメイドですか
ではここは範囲攻撃に定評のある
|音の破壊者《光の勇者》ルクス様にお任せしましょう
ルクス様の身は私が守りましょう
迎撃だけなら
【スクロペトゥム・フォルマ】で十分
さぁルクス様、腕の見せ所ですよ
宇宙怪獣『プロメテウス』――赤と青の翼持つ大鴉の如き姿をした巨体。
その生態は未だ多く知られてはいない。
確かなことはなにかに危害を加える存在ではないとうこと。小惑星帯の偏在する重力を利用して羽撃くようにして宇宙空間を飛ぶようにして移動するということ。
一年周期で立ち寄る惑星の大地に豊饒をもたらすということ。
それだけがわかっていたことだ。
だが、今まさにその力がオブリビオン『征服王アダマス』のユーベルコードによって強制的に従わされ、侵略の尖兵として『惑星バブ』に迫らんとしている。
「|『エイル』様《主人様》の香り……はあんまりしないですけども」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、結構緊迫した事態であるというのにも関わらずいつも通りであった。
あまりにもいつも通りであったのだが、それ故シリアスさを感じさせるものではなかった。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はいつものアレルギーの蕁麻疹が腕に出ていることを確認してステラを見る。
いや、どうみてもギャグ時空じゃないだろうかと思ったのだ。どう考えてもステラが『主人様』と言う時はギャグ時空に空間が歪むのである。
あんまりな物言いだが、なんていうか、そういう空気をぶっ壊す術にステラは長けているのだ。本人に自覚はないけど。
「赤いのとか青いのとか出てくる以上は頑張らりませんと。『メリサ』様の言っていた『セラフィムの最終世代』というのも気になりますし。『バイスタンダー』……傍観者となるか救命者となるかは私次第ということですね」
「あ、あの、ステラさん。なんか難しい横文字多いんですけど……これってシリアスですよね? ですよね? わたしの腕見てくださいよ。蕁麻疹出てますもん! なのになんでギャグっぽい雰囲気が漂っているんですか!」
「おかしなことを。それはシリアスアレルギーというものですよ。いつも通りです」
「いつも通りってどうして!? こんなにもシリアスしてますよ!?」
「だからそう言っているではないですか。私、何かおかしなことを言っておりますか?」
その様子にルクスは、いやだから、と思った。
シリアスな雰囲気なのにステラの言動の一言目が『主人様の香り』とか言うから、シリアス味が薄れているのが原因なのだ。
「それにしても、赤いのと青いのですか」
ルクスは小惑星帯に浮かぶ岩石の間を縫うようにして己たちに迫る『プロメテウス』の攻撃を見やる。
「これ、混ぜたら紫になりますね。しかも、なんというか、ちょっと濁った系の……」
そうなのである。
色は混ぜれば混ざるほどに濁っていく。
光は混ぜれば混ぜるほどに明るくなっていく。
その違いが宇宙怪獣『プロメテウス』の放つ羽に関連しているのかと問われたのならば、恐らくそうした物理法則や常識を覆すものであっただろう。
けれど、ルクスはちょっと思ってしまった。
ステラの髪色。
紫である。
やべーのとやべーのをかけ合わせることになってしまう結果を暗示しているのではないかと彼女は思ってしまったのだ。
ぞわ、と蕁麻疹に鳥肌が加わる。いや、鳥肌がまさる。
「ついていけないなら置いていきますよー」
「あ、待ってくださいよー! でも、ここ宇宙空間ですよ。天地上下左右わけわかんなくなっちゃいますよ!」
「メイドに不可能はっていうか、愛に不可能はありません。全て抜かりなく」
「やべーメイドじゃないですか」
「誰がヤベーメイドですか」
こわい。
ステラはルクスの前に立つ。
「迎撃だけならば、私一人でも持ちこたえることができます。羽の攻撃は私が。その間に範囲攻撃定評のある|音の破壊者《光の勇者》ルクス様には」
「この岩石を残らず、一気に吹き飛ばしちゃえばいいんですよね!」
「ええ、そのとおりです」
「じゃあ、いきますよ! Canon(カノン)で一気に!」
ヴァイオリンをルクスは構える。
だが、そこで傍と気がつく。
「……なんかいま、ひどいこといいませんでした?」
「言っておりませんが? さぁルクス様、腕の見せ所ですよ」
ステラはしれっと誤魔化しながら、ルクスを破壊者呼ばわりしたことを棚上げして、迫りうる赤と青の羽を双銃で撃ち落とし、ルクスを守る。
「えー……絶対なんか言いましたよね」
釈然としない気持ちを抱えながらルクスは渋々と己達の道を塞ぐ小惑星帯の岩石をヴァイオリンから放たれる破壊音波魔法でもって盛大に吹き飛ばし、『プロメテウス』へと至る道を拓くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『征服王アダマス』
|
POW : 王の栄光
戦場内に、見えない【アダマスへの絶対服従】の流れを作り出す。下流にいる者は【絶対服従命令】に囚われ、回避率が激減する。
SPD : 王都『フロレンティン』
戦場内を【アダマスの王都『フロレンティン』】世界に交換する。この世界は「【アダマスの命令に背くべからず】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
WIZ : 服従神域
レベルm半径内を【自らの植民地】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【アダマスの絶対服従の命令】が強化され、【アダマスに歯向かう行動】が弱体化される。
イラスト:ひよこ三郎
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リピス・リペリオン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
小惑星帯を抜けて猟兵たちが宇宙怪獣『プロメテウス』へと迫る。
その頭上に座すはオブリビオン『征服王アダマス』。
彼は玉座に座しながら苛立つようにして猟兵たちを睥睨する。
「余に頭を垂れぬこと。その不遜。それは末代まで許されることのない罪である。『プロメテウス』!」
その言葉と共に宇宙怪獣『プロメテウス』より再び赤と青の氷と炎纏う羽が嵐のように猟兵達の周囲を取り囲む。
それは全天を覆う全方位攻撃。
加えて『征服王アダマス』の瞳がユーベルコードに輝く。
「貴様たちが如き下賤の者が、余に従わぬという事実。それこそが、この宇宙の真理にそぐわぬことと知れ!」
その言葉と共に放たれる絶対服従のユーベルコード。
そして、『プロメテウス』の交わらぬ赤と青の羽が全方位を囲う。
二体の強力なオブリビオンと宇宙怪獣。
これらによる同時攻撃に猟兵たちは対処しなければ、勝利を得ることはできないだろう。
「余に従え。従えぬのならば、此処で滅びるが良い――!」
イリスフィーナ・シェフィールド
不遜で結構、愚王に垂れる頭を持ち合わせてはおりませんので。
そして愚王の末路は玉座から引きずり降ろされるのがお決まりですわ。
ゴルディオン・オーラを発動してプロメテウスの羽が狙いを付けるまで待機。
動き出したらアダマスに向けて全速力で飛び出して羽を置き去りに。
ブルー・マリンの飛行補助に限界突破のリミッター解除で
絶対服従の流れを振り切ってアダマスの頭上へ。
その傲岸不遜なお顔をぶん殴って玉座から吹っ飛ばして差し上げます。
お気に召さないなら立ち上がって向かって来なさいませ。
何度でも殴って差し上げますわ。
己に従うことこそが真理であるとオブリビオン『征服王アダマス』は言った。
その言葉自体が不遜であり、尊大なる振る舞いであることをイリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は知るが故に毅然たる視線で持って彼を射抜く。
「不遜で結構。愚王に垂れる頭を持ち合わせておりませんので」
「その言葉、後悔はせぬな!」
吹き荒れる怒気と共に宇宙空間にほとばしるは宇宙怪獣『プロメテウス』のはなった赤と青の羽。
嵐のように荒ぶ氷と炎の乱舞がイリスフィーナを襲う。
だが、その嵐を前にしてイリスフィーナの前身を覆うのは黄金のオーラ。
己の中にあるのは意思。
目の前の不遜たる愚王と定めた存在を前にして折れる心は持ち合わせていないという絶対たる意志を示すように彼女はゴルディオン・オーラを纏う。
ユーベルコードに煌めく瞳は、まっすぐに『征服王アダマス』を見据える。
此方を睥睨することによって彼への絶対服従の流れが生まれている。そう、見下されている、と認識した瞬間に『征服王アダマス』のユーベルコードは否応なくイリスフィーナの肉体を縛る。
従わなければならない、という認識が頭の中に流れ込んでくるのだ。
川の濁流を止めることができないのと同じように彼女の頭の中は『征服王アダマス』に対する服従の意思で満たされていく。
故に動けないのだ
一歩も足が。
意志の力あれど、それが無意味であるとあざ笑うように『征服王アダマス』のユーベルコードは煌めき『プロメテウス』の放つ赤と青の羽がイリスフィーナに襲いかかる。
だが、同時にイリスフィーナの体が動く。
一歩も動けなかった足は捨て置く。ならば、如何にして彼女が走るのか。
それは彼女が纏う天女の羽衣の如きマント。
エネルギーで造られたそれは、イリスフィーナの背を押すようにして宇宙空間を走り、黄金のオーラ纏う彼女の拳を振り上げさせる。
「限界など越えてこその壁!」
「余を見下ろすことなどあってはならぬ!」
「愚王の末路をご存知ですか」
「余を愚王と謗るか。この征服王アダマスを!」
振り上げた拳。見上げる『征服王アダマス』をイリスフィーナは逆に睥睨する。
睨みつけた瞳の意志は硬く。
そして、振りかぶった拳に集約されるゴルディオン・オーラの迸りはさらに苛烈さをましてく。
吹き荒れる羽の嵐を置き去りにして彼女は拳を振り下ろす。
「その傲岸不遜なお顔をぶん殴られて玉座から引きずり降ろされるのがお決まりというもの!」
振り下ろした一撃が『征服王アダマス』の顔面を捉える。
吹き出す血潮と共にイリスフィーナの一撃は振り抜かれ、衝撃が宇宙空間に走り抜ける。
小惑星帯の岩石すら吹き飛ばす勢い。
その苛烈なる一撃を叩き込んだイリスフィーナは告げるのだ。
「わたくしたちがお気に召さぬというのなら、立ち上がって向かって来なさいませ。何度でも殴って差し上げますわ――」
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
やっと辿り着きましたわよ〜!
お一人で焼き鳥を独り占めしようとする欲張り王は!おチェスト制裁ですわ〜!
お服従なんて致しませんわ〜!
こちとら皇女ですわ〜!
まーたお羽根を沢山出して参りましたわね!
避けられないなら吹っ飛ばせばよろしいのですわ!
ヴリちゃん目掛けて飛んできたところをスイングスマッシャー!
ちょっと当たったところでなんのその!
ヴリちゃんの装甲はお飾りではございませんのよ〜!
因みに真夏の太陽さえあればお肉も焼けますわ〜!
殴って防いでアダマスにまっしぐらですわ〜!
イオンブースターで強行突破するのですわ!
その綺麗な御顔をおチェストして差し上げるのですわ〜!
独り占めにしようとした罰ですわ〜!
殴打の一撃はオブリビオン『征服王アダマス』の顔面を捉えていた。
血潮が噴出する。
しかし、痛み以上に屈辱が彼を襲う。
己の顔面を殴打する。
それは無論許されたことではない。己に万民が従う。それこそが彼の視界にあるべき光景なのだ。だと言うのに己の目の前は赤く染まっている。
許されない。
許せない。
「余の顔面を打ち据えるなど! 万死に値する!『プロメテウス』!!」
絶叫と共に宇宙怪獣『プロメテウス』より放たれるは嵐のような氷と炎纏う翼による乱舞。一つ一つが意志を持つかのように猟兵たちを襲う。
「やっと辿り着きましたわ~!」
しかし、そんな『征服王アダマス』の怒りをあざ笑うかのようにメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)は『プロメテウス』が放つ羽の乱舞の中へと飛び込む。
「お一人で焼き鳥を独り占めしようとする欲張り業突く張り王は! おチェスト制裁ですわ~!」
「余を謗るか!」
「そうでしょうとも! 焼き鳥は! 皆でシェアして……あっ、串からお肉を外すのはノーサンキューですわ~! それは唐揚げにレモン果汁を勝手に搾るかの如き暴挙! 皆違って皆良いとは言いますが、一線越えてはならぬ線がございましてよ~!」
マジで何を言っているのかわからなかった。
『征服王アダマス』にとって、己に意見するものなどいなかった。
対等たる存在がいなかったのだから仕方のないことであったかも知れない。けれど、メサイアの言葉は彼にとって更に理解できないものであった。
さながら空気を読めないかの如き発言。
否である。
皇女メサイアは空気を読めないのではない。読まないのである。それはもう徹底的にである。巷では頭が悪いとか、ぷっつん皇女とかまあ、なんていうか散々な言われようであるが、それは即ち『それ以外』は高水準であることの証左でしかないのである。
つまり。
「何が『征服王アダマス』ですの~! こちとら皇女ですわ~!」
どっせいと『ヴリトラ』のテイルスマッシャーが振るわれる。その一線は迫る『プロメテウス』の羽を吹き飛ばす。
近接範囲内に居る全ての存在を吹き飛ばす一撃。
それによって『プロメテウス』の羽は全て吹き飛ばされるのだ。なんたる力技であろうか。
「やはり暴力! 全て暴力で解決ですわ~!」
「なんたる野蛮! 皇女などとは謀ったか、余を!」
「わたくしが皇女なのは変わらぬ事実でしてよ~! そして、これが! 我が王家の秘技!」
メサイアの瞳がユーベルコードに輝く。
煌めく瞳が見据えるのは、『プロメテウス』に座す『征服王アダマス』であった。イオンブースターによる加速によって『ヴリトラ』が全ての羽を吹き飛ばしながら一直線に『征服王アダマス』へと迫る。
どんなに強大な屈服強いるユーベルコードもメサイアには通用しない。
何故ならば、メサイアは頭が悪い。
どんなに言葉を弄しようとも、どんなにユーベルコードで絶対服従の流れができていようとも! そう! 空気を読まないが故に『征服王アダマス』のユーベルコードが一切通用しないのである。
「これが! エルネイジェ流横殴術(スイングスマッシャー)――スイングスマッシャーというものでしてよ~! わっしょい!」
『ヴリトラ』のコクピットからメサイアが飛び出す。
イオンブースターの加速が手伝う彼女の一撃は凄まじい威力となって『征服王アダマス』の横っ面をはたき倒す。
「ごはっ――!?」
「これがおチェスト! これが焼き鳥を独り占めしようとした罰ですわ~!」
チェスト、チェスト、チェスト!!
メサイアの往復ビンタは止まらない――!
大成功
🔵🔵🔵
鏡宮・ノエル
ヴァーイに乗ったまま。
はあ、本当に…愚かだね、あなたは。玉座にてふんぞり返る愚帝。歪めるだけの存在だよ。
【神の手】はどれだけでも消費しよう。錯誤の術は続いているしね。
駆けて、ヴァーイ。その唸りのままに、未来を食らって。
さらに…クローカ、そのUCを使ったという過去を啄んで。
僕は携えたクラウ・ソラスで斬りつけていくよ。
これ、今は日本刀みたいになってるんだよね。抜き払いっていうのかな。
如何なる王であろうとも…神やそれに伴う神威には逆らえないと知るがいい。僕は正真正銘、そうだからね?
猟兵の一撃は容赦なくオブリビオン『征服王アダマス』の顔面を捉えていた。
血潮が飛ぶ。
赤い飛沫。
それをこれまで『征服王アダマス』は己の血潮であるとは思わなかっただろう。これまで己自身が宇宙に君臨し、全てを従える者であると自負していたからこそ。
赤色の血が己の血であるとは思わなかった。
これまで彼が虐げてきた者たちの血潮と同じ血の色をしているなど認められようはずもない。
「これが余の血だと言うのか。この尊き余の血が、下賤の者たちと同じ血の色をしているなど! あってはならぬ! このような事実など認められぬ!!」
咆哮と共に宇宙空間が代わっていく。
ユーベルコードに寄る世界の置換。
そこは『征服王アダマス』の本星に存在する王都『フロレンティア』そのものだった。彼の本星の王都に世界を置換することによって、この場は彼に抗う者、従わぬ者の力を強制的に減退させるのだ。
「はは、本当に……愚かだね、あなたは」
そこまでして己の優位性を示したいのかと鏡宮・ノエル(よく圖書館にいる學徒兵・f38658)は神威宿す狼『ヴァーイ』にまたがりながら息を吐き出した。
「玉座にてふんぞり返る愚帝。歪めるだけの存在だよ」
過去よりにじみ出る存在。
今に在りて、存在するだけで世界を歪め破滅に導く存在。それがオブリビオンをだ。
故にノエルは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
掲げる手が掴む光は、神の手(グッドゥ・ハン)を知らしめる。
卵型の宝石に込められた神力が開放される。
「この世界に在りて、余こそが全て。余こそが一。他は須く蒙昧たる愚物そのもの。故に、余は!」
「それこそが愚かであることの証左さ。駆けて『ヴァーイ』。その唸りのままに、未来を喰らって」
ノエルの言葉に『ヴァーイ』が咆哮する。
この『征服王アダマス』に利する世界にあって、それらを食い破らんとする咆哮であった。
「何処まで行っても、全ては過去になる。なら、『クローカ』、そのユーベルコードを使ったという過去をついばんで」
背後から飛ぶは神威宿した鴉。
その鋭きくちばしは、世界を置換するユーベルコードの力を貫き、引きちぎるようにして霧散させていく。
「余の、余の王都が食い荒らされるだと!? ええい、何をしている『プロメテウス』! あの痴れ者を滅ぼせ!」
大鴉の宇宙怪獣『プロメテウス』寄り放たれる赤と青の羽。
氷と炎が乱舞するようにしてノエルへと襲いかかる。嵐のような攻勢だった。それらの全てを躱すことはできないだろう。
だから、ノエルは己の中より光り輝く神剣を抜き払う。
クラウソラス。
それは己の存在と共に生まれる己と一心同体の剣。
「いかなる王であろうとも……神やそれに伴う神威には逆らえないと知るがいい」
「己を神と謀るか!」
「僕は正真正銘、そうだからね」
だから、とノエルは迫りくる赤と青の嵐を光り輝く神剣の一閃でもって切り払う。
その残ざきは嵐すら切り裂いて『征服王アダマス』の胴を切り裂く。
何故、と問う視線がノエルへと注ぐ。
だが、ノエルは頭を振る。
「愚かなあなたには理解できないことだよ。他の誰も見ず。己だけを見つめてきたあなたには、その愚かしさすら顧みることはできない。人は己の鏡。故に他者を見ようとしなかったあなたはあなた自身を知ることができない。それが」
敗因だとノエルの放つ神剣の一撃はさらに『征服王アダマス』を切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
えっ。そんなそんな、何も考えてませんよ!
ムラサキ、キレイデスネ!
あ、そですか混ざりませんかー。
なるほどなるほど……。
それじゃステラさん、両手に花はできないんですね。片手は空きますね。
ならまぁ、それはそれでいいかもです。
などと思っちゃったことは秘めておいて。
あ、戦います?
さっきのでシリアスパワーがもう残り少ないんですが……。
わかりました!
わかりましたから少しはわたしの被害も計算に入れてください!
さすがに|宇宙《ここ》でバンジーとか、いくら|勇者《わたし》でも死んじゃいますからね!?
でもでも、被弾覚悟ならわたしが癒やします!
【狂詩曲】いっきますよー♪
あ、みみせんは外しておきますからね。
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ルクス様?何故混ぜようとしました?
そして私を見てさりげなく失礼なことを考えませんでした??
というかあの赤と青は混ざらないでしょうに
シルバーレインの世界でいっぱい居た時も
色が半分半分とか斑とかだったじゃないですか
どこまでいっても|水《善性》と|油《悪性》
一時混ざったとて決して溶け合うことはないのです
ほら、蕁麻疹出してないで戦いますよ
鳥には鳥といきましょう
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリア召喚)
妙な|流れ《力》を使っているようですが!
私の忠心はエイル様にだけ捧げるもの!
例え被弾しようとも確実に屠れば問題ありません!
ルクス様の被害は考えないものとします
ゆうしゃだからだいじょうぶですよ
じ、と背中に突き刺さるような視線をルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は感じていた。
「ルクス様?」
「……え、なんです?」
「何故混ぜようとしました? そして私を見てさり気なく失礼なことを考えませんでした?」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の問いかけにルクスは首を横にふる。
何も考えてない。
「ムラサキ、キレイデスネ!」
彼女が指差すのは宇宙怪獣『プロメテウス』が放つ赤と青の羽の乱舞。
宇宙空間にて猟兵たちを取り囲む羽の嵐。
全方位から迫る氷と炎の追撃。それをルクスは示して、ごまかす。
「というか、あの赤と青は混ざらないでしょうに。銀の雨振る世界でいっぱい居た時も、色が半分半分とか斑とかだったじゃないですか」
ステラの言葉にルクスはそうでしたっけ? と首をかしげる。
銀の雨振る世界シルバーレイン。
オブリビオン・フォーミュラを巡る戦いで現れた『セラフィム』。体高5m級の戦術兵器。その機体の色はたしかに青と赤が存在していた。
だが、紫はいなかった。
「どこまでいっても|水《善性》と|油《悪性》。一時混ざったとて溶け合うことはないのです」
「あ、そですか混ざりませんかーなるほどなるほど……それじゃステラさん、両手に花はできないんですね。片手は空きますね」
「なんのお話をしておられます?」
「いえ、こっちのお話です!」
ルクスはそれならばいいかも、と思ったのだ。何に、というのは言及しないものである。こういうのは秘めるからこそ花というものであるし。
「あーでも蕁麻疹酷いのでわたしはお休みということで。さっきの戦いでシリアスパワーがもう残り救いないんですが……」
「蕁麻疹出している場合ではないと思いませんか? この状況」
ステラが示すのは己たちを取り囲む赤と青の羽の嵐である。全方位を囲まれているがゆえに逃げるという選択肢はないだろう。
故にステラは手を掲げる。
「鳥には鳥といきましょう。フォル! いらっしゃい!」
その言葉に導かれるようにして鳥形キャバリアが宇宙空間に出現する。
「何をごちゃごちゃと!『プロメテウス』! さっさと連中を始末しろ! 余に従わぬ連中だ。存在する意味などない!!」
オブリビオン『征服王アダマス』の声が響き渡る。
「ほらー! 敵の人もなんか怒ってますよ! こういう時は……」
「私の忠心は『エイル』様にだけ捧げるもの!」
「やっぱりステラさんの犬スイッチ入っちゃってるじゃないですかー!」
「犬ではありません。メイドです」
「かなり些細な問題ですよね!?」
「いえ、重要な問題です。それを外しては、私の沽券に関わるものですから。私はメイド」
「やべーメイドじゃないですか!」
ステラとルクスのやり取りはさておき、この宇宙空間には奇妙な力が流れている。
それが『征服王アダマス』のユーベルコードであることは疑いようがない。絶対服従を強いる力。
これによって宇宙怪獣『プロメテウス』は服従させられているのだろう。嵐の如き攻勢を『フォルティス・フォルトゥーナ』は羽撃くようにして躱す。
同じ鳥型であるというのならば、敵の攻撃も似通っていた。フェザービットと赤と青の羽が激突する。
「被弾覚悟で参りましょう! ルクス様!」
「はい! でも、少しはわたしの被害も計算に入れてくださいね!? さすがに|宇宙《ここ》でバンジーとか、いくら|勇者《わたし》でも死んじゃいますからね!?」
「ゆうしゃだからだいじょうぶですよ」
大丈夫じゃなーい! とルクスは『フォルティス・フォルトゥーナ』の鉤爪に抱えられながら宇宙を飛ぶ。
氷と炎。
乱舞するフェザービット。
その火線の最中をステラは己のキャバリアを駆って飛ぶ。凄まじい戦闘機動。だが、それにルクスは耐えた。勇者だから耐えられた。勇者じゃなかったら口から虹色のなんかこう、あれがこうしちゃうところであった。
だが、耐えた。
「さあ、たえました! あとは、クラリネット狂詩曲(クラリネットキョウシキョク)、いっきますよー♪」
演奏! 演奏! 演奏!
ルクスはにっこにこである。
それを見やり、ステラは耳栓を確認する。
だが、ない。そこにあるはずの耳栓がない。
「え!?」
「あ、みみせんは外しておきましたから♪」
ルクスの言葉は死刑宣告。
奏でるは死の旋律。
「何を言っている連中は――」
あ、と『征服王アダマス』は気がつく。この音、やばいやつだ、と。周囲を巻き込み、大気無き宇宙空間すら激震させる理外の狂詩曲は高らかに響き渡る――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
『これ』がライスメキアさんをいじめてるんだね。
まったく何が『余』なんだか。余り物って意味なら解るけど。!
それに『垂れる』ってなに? あなたなんかになんにも垂れるわけないし。
ライスメキアさんとかサージェさんなら、涎が垂れるけども!
だいたい『末代で』とか、ここで骸の海に還るあなたに、わたしの末代とか関係ないからね。
相手をたーっぷり挑発して、それにのって攻撃してきたら【白の天蓋】を発動するよ。
さ、サージェさん。攻撃は任せるよー!
今日こそは、征け! おっ●いみさ……え? まだでないの?
修行足りなくない?
忍ぶのとか無理なんだから、|そっちのほう《浮かぶ物体の有効活用》を鍛えてよー。
響き渡る狂詩曲。
大気無き宇宙にすら響く音にオブリビオン『征服王アダマス』は脳天が割れる思いであった。
「馬鹿な……なんだ、この音は……! 脳が、割れる……! だが、余は絶対者なるぞ! 余のためにこそ世界は存在しているのだ!『プロメテウス』!!」
その言葉と共に彼が座す宇宙怪獣『プロメテウス』が羽撃く。
赤と青の羽が嵐のように乱舞して猟兵達に迫る。
氷と炎の競演とでも言えばいいのだろうか。凄まじい熱量と礫が宇宙空間にある猟兵達に襲いかかる。
「『これ』が『ライスメキア』さんをいじめてるんだね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の瞳には怒りが滲んでいた。
オブリビオン『征服王アダマス』は宇宙怪獣『プロメテウス』を強制的に洗脳し、『惑星バブ』を侵略しようとしていた。
圧倒的な巨大さと力を持つ『プロメテウス』であるのならば、瞬く間に平和な惑星である『惑星バブ』を制圧することも可能であろう。
どれだけ科学技術が発展しすぎて一周回って中世文明めいた様式を持つのだとしても、宇宙怪獣の純然たる力を前にしては抵抗も虚しいというものである。
故に理緒は怒っていたのだ。
「まったく何が『余』なんだか! 余り物って意味ならわかるけど!」
「余を謗るか。猟兵風情が! 万死に値する。頭を垂れるのならば……」
「あなたなんかになんにも垂れるわけないし」
ずばっと理緒は『征服王アダマス』の言葉を切り捨てていた。容赦のない言葉だった。だってそうであろう。
なんたって理緒は怒っているのだ。
『ライスメキアMMM世』の統治する惑星を攻めるだけでも怒髪天であるというのに、宇宙怪獣を無理矢理使役するなどあってはならないのだと彼女は怒り心頭であった。
その荒れ狂いようをサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は見やり、うわぁ、と思っていた。
予想通りとも言えるけれど。
荒ぶってるなぁとサージェは他人事のように『シリカ』を演算お疲れ様、ともふもふしていた。理緒の怒りも尤もだと彼女は理解していたし、自分もそうであった。
けれど、自分ではない誰かが怒り狂っていると、なんというか、それを近くで見ている自分は冷静になってしまうのである。
「『ライスメキア』さんとかサージェさんなら、涎が垂れるけども!!」
ぐわ! と理緒が叫ぶ。
あまりにもあんまりな物言いであった。
「だいたい、『末代で』とか、ここで骸の海に還るあなたに、わたしの末代とか関係ないからね!」
怒涛の口撃であった。
ユーベルコードとか全く関係ない口撃。
そのたっぷり辛口の挑発に『征服王アダマス』の肩が震える。
「敵を前にして啖呵を切る。すごくいいシーンなのに涎とか何を垂らしているのかなぁって。あと『ライスメキア』さんも困ってると思います」
「そこは冷静にツッコまないで!」
「や、でもですねぇ……」
「デモ、ストもないんだよ! ああいう頭でっかちのプライドばっかり凝り固まった連中っていうのは、こういう挑発に我慢出来ないんだよ! だって今まで周りに居たのはイエスマンばっかりだものね!」
「貴様――!」
「ほらね!」
理緒は煽りに煽っていた。
『征服王アダマス』は怒り心頭に達する。これまで猟兵たちが叩き込んできたユーベルコードのによる消耗すら考えられなく成っているはずだ。
だからこそ、彼はユーベルコードを発露させる。
絶対服従のユーベルコード。
だが、その怒りの発露よりも早く電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)の如き速度で持って駆け抜ける影があった。
「今日こそは、征け! お……」
「いえ、それはでないですが」
ですが、とサージェのユーベルコードは宇宙空間に煌めく。『プロメテウス』の羽の口撃すらかいくぐり、一閃を『征服王アダマス』に叩き込む。
「えー修行足りなくない?」
「修行でできる話ではないと思うんですが」
真顔で言うサージェ。
だが、その顔を『征服王アダマス』は見ることはできなかった。如何にサージェのユーベルコードが電光石火の如き速さを齎すのだとしても、あまりにもおかしい。
そして、それを理解できる程の時間は『征服王アダマス』には残されていない。
何故ならば。
「白の天蓋(シロノテンガイ)……電子解析した世界で、サージェさんはさらに加速するんだよ! それこそあなたには捉えられないくら位にね!」
それが理緒のユーベルコード。
加速されたサージェの存在は、一気に『征服王アダマス』へと打撃を繰り出し、刻む。
「為政者を駆るのがクノイチのお仕事です……あれ、私今までで一番クノイチっぽいムーブしてませんか!?」
「いや、無理だよ。その浮かんでる二つのやつが主張激しいもん」
「そんなことないもん――!!!」
大成功
🔵🔵🔵
烏護・ハル
言ったでしょ。はっ倒すって。
その口が回らなくなるくらい痛いのくれてやるわ。
式神さんと共に高速多重詠唱で魔力を充填。
UCで片脚を狐火変化させ、溜め込んだ魔力を全部推力に変換。
限界突破して突っ込むわ。
羽根の弾幕は風の盾で薙ぎ払い、受け流す。
捌けない物は結界と盾で受け止め、直撃は激痛耐性で凌ぐ。
逆らうな?
知らないわよそんなの。
全部受け切ればチャラよ!
征服王だか何だか知らない奴の所までカッ飛んで、横っ面にシールドバッシュ。
更にUCの狐火を肘に収束、二回攻撃への連続コンボ。
怪力任せのグーパンチで追撃よ。
……郷で弟たちにゲンコツ降らせてた頃を思い出したわ。
貴方と違って、聞き分けの良い子たちだったけどね!
「余が此処まで追い詰められるなどあってはならぬ。これは本当に現実か……? 余は今、悪い夢を見ているのではないか?」
オブリビオン『征服王アダマス』は困惑していた。
己の絶対服従たるユーベルコード。
それは絶対のはずだ。なのに猟兵たちはこれにあらがってくる。効果が発揮されていないわけではないのだ。
ただ、猟兵たちはその効果を上回ってきているだけなのだ。
それこそ力技で。
純然たる力は、如何に絶対服従たるユーベルコードでさえ跳ね除けてくる。宇宙怪獣ですら従えさせる力など意味などないというように。
「こんな、こんなことなど在ってはならぬ!『プロメテウス』!!」
その言葉に赤と青の羽が乱舞する。
だが、宇宙空間に棚引くようにして走る狐火が彼の視界を埋め尽くす。
そこにあったのは『プロメテウス』の放つ嵐の如き攻勢をかいくぐって『征服王アダマス』の眼前に躍り出た烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)の紫の瞳だった。
「馬鹿な……! この距離を、この弾幕をかい潜るだと!?」
「言ったでしょ。はっ倒すって」
狐火ストーム(キツネビストーム)そのものとなったハルの脚部は、充填された魔力を発露させ全てを推力に変換していたのだ。
限界は越えていた。
脚部の痛みは尋常ではない。焼け爛れるような痛みが走っている。
けれど、ハルはかいくぐってきた。
氷と炎の乱舞。
その弾幕を風邪の盾で薙ぎ払い、受け流し、受け止めた。どれだけの痛みが走るのだとしても、絶対服従のユーベルコードが己に従うことを強いるのだとしても。
それでも彼女は振り切ってきたのだ。
逆らうなという脳に響く声にすら、彼女は頭を振って拒絶を突きつけた。
「何故、従わない! 何故、余に逆らう! 余は絶対者なるぞ!」
「知らないわよ、そんなの! その口が回らなくなるくらい痛いのくれてやるわ! あんたが今踏みつけてるその子の分まで!」
振りかぶった風の盾。
その一撃が『征服王アダマス』の横っ面へと叩きつけられる。
凄まじく鈍い音が響き渡る。
頭蓋が砕ける音。
王冠が弾け飛び、壮麗なる装飾が完全に粉砕される。
さらにハルの脚部を変換した狐火が彼女の太ももに駆け上がり、胴を巡って両肘へと集約される。
「ま、待て! 余は……!」
「待たない!」
肘から噴出する狐火はハルの拳を加速させる。振り抜いた一撃が『征服王アダマス』の顔面を捉える。
拳。
硬く、硬く握りしめた拳は、そこに決して砕けぬ意志を握りしめるからこそ硬く痛みを齎すのである。
ともすれば、それはハルにとっては悪戯や悪さをする悪童たちを――郷の弟達をたしなめるものであったことだろう。
けれど、それは遠き日の思い出でしかない。
すでにあの痛みと共に走る懐かしさも、寂寥も、ハルの胸の中にしかない。
だからこそ、ハルは許せないという感情の爆発と狐火の圧倒的な加速で持って『征服王アダマス』を打ち据え、宇宙怪獣『プロメテウス』より彼を吹き飛ばす。
「思い出したわ。懐かしいあの日を。弟たちを」
「何を、言って……いる……!?」
「貴方と違ってあの子達は聞き分けの良かったけどね!」
ハルは構わなかった。
どんな言葉を紡いだとしても、『征服王アダマス』には届かない。ならば、と噴射する狐火と共にハルは最後の一撃を彼の顔面に叩き込み、その絶対服従たるユーベルコード、『プロメテウス』を繋ぐ楔たる所以を打ち砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『極寒の星にも』
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POW : オーロラ揺れる絶景を楽しむ
SPD : オーロラ揺れる絶景を楽しむ
WIZ : オーロラ揺れる絶景を楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵の一撃によってオブリビオン『征服王アダマス』は滅びた。
砕け散り、霧散した彼の力は、それまで軛のように宇宙怪獣『プロメテウス』を繋ぎ止めていた絶対服従たるユーベルコード。
開放された大鴉の如き『プロメテウス』は、その翼を羽ばたかせる。
だが、上手く飛び立つことができないのだろう。
小惑星帯の偏在する重力を利用して航路を往く『プロメテウス』にとって、戦いによって強制的に小惑星帯から引き離された故に、元の道へと戻ることが困難になっていたのだ。
「皆様! ご無事でしたか!」
そんな折に『惑星バブ』から皇女『ライスメキアMMM世』たちが宇宙船と共に羽撃けど推力を得られぬ『プロメテウス』の元へと駆けつける。
猟兵達を前にして彼女は『プロメテウス』をオブリビオンの支配から開放してくれたことに礼を告げる。
「真になんとお礼を言ってよいかわかりません。ですが、もう一つ頼まれてはくださいませんか?」
猟兵たちは何を、と思ったことだろう。
そんな彼らを前に『惑星バブ』の重臣たちが説明する。
「『プロメテウス』は偏在重力によって羽撃き宇宙空間を飛ぶ宇宙怪獣。そして、この時期には不可思議なことに宇宙空間にオーロラが発生します」
「このオーロラが現れる時期、我等は『オーロラ祭り』として盛大に踊り、『プロメテウス』に偏在重力のありようを伝えるのです」
「航路を見失っている今、『プロメテウス』に我等が『オーロラ祭り』を開催することが、道標となりましょう」
「猟兵の皆様方、どうか我等と共に『オーロラ祭り』を楽しんで頂けませぬか」
四重臣たちの言葉に猟兵たちは、そんなのでいいのかと思っただろう。
お祭りを楽しむだけで『プロメテウス』はオーロラに導かれて偏在重力を掴んで元の航路に戻るというのだ。
「あ、その、でしたらですね。オーロラ踊りなんてどうでしょう? 私共の惑星に伝わる踊りです。私どもの祖先はこれによって『プロメテウス』と意思疎通をしたとも伝えられておりますし……他にも宇宙船出店もございます。飲食のお金はいただきませんので、どうかご自由に楽しんでくださいね」
そんなふうにして『ライスメキアMMM世』の言葉に猟兵たちは『プロメテウス』を元の航路へと戻すべく『オーロラ祭り』をにぎやかに楽しむことになるのだった――。
鏡宮・ノエル
そりゃあ、無理やり軌道をズラされたらなぁ。本当、プロメテウスにとっても迷惑なやつだったね。
それで、元のところに戻せる、か。よし、じゃあ楽しもうか。
ヴァーイ、クローカ、ブレックは……オーロラ眺めたい?わかった、出て眺めててね。
オーロラ、綺麗だもんね。
僕?僕はね、せっかくだからオーロラ踊りしようかと。
ふふ、その星特有の文化だから、楽しもうと思ったんだ!
これで意思疎通したとも言われている…か。実際はどうだったんだろうね?
でも…それで意思疎通できたのならば、それは素敵なことだね。
大鴉の如き姿をした宇宙怪獣『プロメテウス』は宇宙空間に在りて戸惑っている様子であるように鏡宮・ノエル(よく圖書館にいる學徒兵・f38658)は思えただろう。
かの宇宙怪獣は偏在重力を持って羽撃くようにして宇宙空間に航路を見出す。
しかし、オブリビオン『征服王アダマス』は、絶対服従のユーベルコードでもって無理矢理に『プロメテウス』の航路を変更し『惑星バブ』の侵略に差し向けたのだ。
『征服王アダマス』を滅ぼした今、その絶対服従の力は失われている。
「そりゃあ、無理矢理軌道をズラされたらなぁ。本当、『プロメテウス』にとっても迷惑なやつだったね」
ノエルは赤と青の羽持つ宇宙怪獣を見やる。
意志のようなものは感じられるが、言葉を発することはない。
コミュニケーション、という意味では群生するクェーサービーストよりは取れる可能性があるが、言葉での意思疎通はおそらく不可能であろうとノエルは判断した。
「ええ、航路を大分外れていますから。しかし、オーロラを標とするのならば……」
臣下と共に宇宙船で『惑星バブ』よりやってきた『ライスメキアMMM世』の言葉にノエルは頷く。
「オーロラで元の航路に戻せる、か」
「はい、猟兵の皆様には『オーロラ祭り』を楽しんで頂けたら」
そう言って示す先にあるのは、次々と『惑星バブ』から浮上してくる宇宙船。
それは全て屋台船とも言うべき宇宙船であり、宇宙空間に居並ぶ騒々しくも賑やかな出店めいた光景をオーロラと共に生み出すのだ。
「これは確かに心躍る光景だね。よし、じゃあ楽しもうか……と」
ノエルは己と共にある神威宿す者たちがソワソワしているのを感じ取って笑む。
彼らもオーロラを眺めて楽しみたいという気持ちがあるのだろう。
それならば、とノエルの言葉と共に神威宿す狼と鴉、蛸が宇宙空間に飛び出す。
「こ、これらは猟兵様の……しもべ、ということですかな?」
「これもまた宇宙怪獣ということでしょうか?」
「いやいや、しかし今猟兵様の影から飛び出したように思えますぞ」
「あいや、我等が詮索すべきことではございませぬな。猟兵様、どうか『惑星バブ』の『オーロラ祭り』、存分にお楽しみください」
そういって『ライスメキアMMM世』の近くに控えていた四重臣たちが恭しく一礼し、ノエルたちを見送る。
「ありがとう。オーロラ、綺麗だものね」
そう言ってノエルは屋台船ならぬ出店船を見て回る。
三体の獣たちは宇宙空間に揺らめくオーロラを熱心に眺めているようである。
「あら、猟兵さん! 一人でどうしたんだ?」
「うん? 折角だからね。オーロラ踊りというのをご教授いただきたくって」
ノエルの様子に『惑星バブ』の住人たちが出店船から顔を出して言う。
なるほど、『オーロラ踊り』を、と彼らは得意げに笑う。
その様子にノエルは、お? と思ったかも知れない。どうやらこれはあたりなのかも知れない。ノエルにとってこのスペースオペラワールドは広大な世界だ。
ならば惑星固有の文化というものがあるかもしれないと思っていたのだが、それがあたりのようで嬉しくなったのだ。
「『オーロラ踊り』は、心の踊り! 言葉なく、悪性善性関係なく、魂に響く踊り! ならば形は無形にして有形であることに拘ることなく! あ、それ!」
一斉に出店船から顔を出していた『惑星バブ』の住人たちが宇宙服を纏って飛び出してくる。
その踊る様子はノエルにとって千差万別で、パターンめいたものを感じさせないものであった。
「これは……オーロラ踊りと呼ばれるのもわかるね。皆、一様に色が違う。形が違う。打ち寄せる波が一つとて同じ形がないように、皆の踊りも何一つとして同じじゃない。同じじゃないということがわかる、一つ一つが星の輝だって理解できる」
ノエルは彼らの踊りを見様見真似で真似ていく。
どれもが正しくて、どれもが間違っている。
けれど、不思議と間違えた、という想いはない。皆違うということが心で理解できる。
「ああ、これが『プロメテウス』を導くのか。皆が踊ることによって皆自身がオーロラになるっていうこと!」
それは、とても素敵なことだとノエルは『惑星バブ』の住人たちと連なるようにして形なき、決まり無き『オーロラ踊り』を踊り、羽撃く『プロメテウス』の行き先を見つめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
お祭りを楽しむだけでよろしいのでしたら喜んで参加させて貰いますわ。
オーロラ踊りやお祭りの様子を配信したり美味しいもの食べたいですわね。
オーロラ自体頻繁に見れるものでもありませんし飛行して近くで見たいですわ。
オーロラを肴にドリンク一杯も悪くないと思うのです。
流石に近づきすぎるとドローンとか影響受けそうですし程々にですね。
……よく考えるとオーロラよりプロメテウスの方がレアでしょうか。
まぁ、のんびりさせていただきましょう。
標を無くした宇宙怪獣『プロメテウス』。
かの存在は偏在重力を利用して宇宙空間を羽撃く。しかし、オブリビオン『征服王アダマス』によって航路をずらされ『惑星バブ』へと侵略の尖兵として駆り出されたことによって、標を失ってしまっていた。
このままでは『プロメテウス』は羽撃くことはできても正しい航路を飛ぶことはできない。
この問題を解決するために『惑星バブ』より宇宙船でやってきた『ライスメキアMMM世』と住人たちは『オーロラ祭り』を敢行するというのだ。
「お祭りを楽しむだけでよろしいのでしたら喜んで参加させてもらいますわ」
イリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)は頷く。
もとより、『プロメテウス』を正しき航路に導くというのならば、協力を惜しまぬつもりだったのだ。
とは言え、これは望外のことであろう。
ただ『オーロラ祭り』を楽しめば良いのだという。
「たったそれだけでいいのですか?」
「ええ、『プロメテウス』は宇宙怪獣。本来であれば私どもと意思疎通は不可能。『プロメテウス』は確かに惑星に豊饒を齎してくれますが、それはそうしようとして行ったことではないのです」
『ライスメキアMMM世』の言葉にイリスフィーナは頷く。
存在しているだけ。
それだけで豊穣をもたらす存在。
「わたくしたちのやっていることも、かの『プロメテウス』には星の煌めきとさして変わらぬものである、と」
「そのとおりです。ですが、私どもの祖先は『プロメテウス』と意思疎通を行った、という文献も残っております。言葉でもなく、ただ存在として踊ることで己たちに害意なく、ただ感謝を伝える。それが『オーロラ踊り』と呼ばれる不定形にして決まりごとのない踊りの発祥であるともされております」
「なるほど。ならば、わくしはお祭りの様子を配信いたしましょう。そうすれば、毎年この時期になれば、この『惑星バブ』にも観光に訪れる人々がいるかもしれません」
「それは素敵なことです。賑わえば賑わうだけ『プロメテウス』の航路は安定するというもの。よろしくお願い致します」
そう告げる『ライスメキアMMM世』の言葉に呼応するようにして動画撮影ドローンを飛ばす。
宇宙船出店居並ぶ光景はまるで、宇宙の飲み屋街めいていた。
提灯の明かりや、なんだか宇宙空間だというのに匂いや熱まで伝わってきそうな気配にイリスフィーナは宇宙に浮かぶオーロラを見やる。
彼女の視線に追従するようにして動画撮影ドローンがカメラを動かす。
「オーロラ……宇宙にもオーロラがかかるとは不思議な光景ですわね。いえ、それよりもレアなのは『プロメテウス』でしょうか」
見つめる先にあったのは赤と青の羽を羽ばたかせるようにして大きく動かす宇宙怪獣の巨体。
大鴉のような姿をしている宇宙怪獣にイリスフィーナは笑む。
得難き光景であることは言うまでもない。
けれど、とイリスフィーナは戦いに疲れた体を休めるように宇宙空間に漂いながら、宇宙船出店から得たドリンクを片手に宇宙に棚引くオーロラを見つめ、心癒されるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
お祭りですって!?
わたくしお祭り大好きですわ〜!
ん?そもそもわたくし何しに来たんでしたっけ?
ま!こまけぇこたぁよろしいのですわ〜!わっしょい!
あら〜!お出店みたいなお船がたくさんですわ〜!
お祭りといえば!食べる!飲む!
全店お制覇いたしますのよ〜!
うおぉン!わたくしの胃袋はブラックホールでございましてよ!
なんですの?お酒が切れてしまいましたの?
心配ご無用ですわ〜!わたくしがご用意致しますのよ〜!オエー!
皆様もどんどんお飲みになるとよろしいのですわ〜!
それにしてもやっぱりでっけぇ鳥さんですわねぇ
ん…?
鳥さんとおライスメキア…
鳥とおライス…
鳥とお米…
はっ!?この組み合わせは!
お唐揚げ定食ですわ〜!
「お祭りですって!?」
戦いを終えて『惑星バブ』より宇宙に上がってきた宇宙船にある『ライスメキアMMM世』の言葉にメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)は目を見開く。
祭り。
『オーロラ祭り』。
それはオブリビオン『征服王アダマス』によって航路より大きく逸れた宇宙怪獣『プロメテウス』の航路を本来の元ある場所に戻すための祭りである。
同時に毎年行われている宇宙にオーロラかかる季節を知らせる祭事でもある。
「わたくしお祭り大好きですわ~!」
「それはようございました。どうかお楽しみ頂けますよう」
『ライスメキアMMM世』の言葉にメサイアは頷く。
モチのロンである。
あれ、でもメサイアは首を傾げた。そもそも何しに此処へ着たのだろうか。オブリビオンをぶっ飛ばしに来たはずなのだが、まあ、こまけぇこたぁいいのである。
この皇女メサイア、三度の飯よりお祭り大好きなのである。わっしょい! わっしょい!
そんなメサイアは『ヴリトラ』と共に宇宙空間に居並ぶ出店船を物色する。
「あら~赤提灯ぶら下げて! まるで屋台通りみたいですわね~! いいですわ~! お祭りと言えば! 食べる! 飲む! 全店舗お制覇いたしますのよ~!」
「お、猟兵さん、早速うちからどうだい!」
目の前にはイカ焼き。たこ焼き、とうもろこしにフランクフルト、お好み焼きに箸巻き。宇宙海鮮から宇宙粉ものまでひっきりなしである。
「では、お一つ頂きますわ~! あ、それ!」
お代は要らないということは、つまり食べ放題である。しかし、人の胃袋のキャパシティには限界がある。
だが、心配ご無用である。
「うおぉン! わたくしの胃袋はブラックホールでございましてよ!」
ひゅご! ひゅごっ! と風切りおとが聞こえる。
その度にメサイアの口に吸い込まれていく宇宙出店的フードの数々。濃い味も薄い味も、ピリ辛も甘辛もなんでもござれである。
メサイアは『惑星バブ』の『オーロラ祭り』名物をひゅごっとしまくっていた。
そのあまりの異次元な食べっぷりに『惑星バブ』の皆様方は大変に驚いた。
「そろそろ喉が渇きましたわね~! こういう時にお酒は……」
「大変だ! 麦シュワが切れちまった!」
出店の店員たちが大慌てである。
猟兵たちが『プロメテウス』を止めてくれたおかげで、思った以上に今年は宇宙船が多く宇宙に上がってきているのだ。
昨年比以上の消費量なのだ。
麦シュワと呼ばれるお酒の消費は顕著だった。故にメサイアが全店舗制覇する道中で切れてしまった。一度『惑星バブ』に戻らねば在庫が補充できない状況。
それをメサイアは認め、きゅうりの千夜漬けを、ぽりっと齧ってから瞳をユーベルコードに輝かせる。
「心配ご無用ですわ~! わたくしがご用意いたしますのよ~!」
「え、何言って……」
「オエー!」
効果音が悪い。どう考えても悪い。なんかどこかで見たアスキーアートのような表情を浮かべるメサイアの口からドパるのは、無限ストロングチューハイ(リアルブレイカー)であった。
「キンッキンに冷えてやがる! あ、ありがてぇ! 犯罪的だ!」
「しかも美味すぎる! 体に否応なしに染み込んできやがる!!」
さっきまで麦シュワが足りないって嘆いていた店員たちが感涙する旨さ。
そう、それがストロングチューハイ。
どこかの世界では農作物をこれで汚染……いや、漬け込んだという事例もあるらしい。在るらしい、と言ったのは、『惑星バブ』の人々は知る由もないからである。
そんなことはいいのである。
問題はお酒がある、とうことである。
「みなさまもどんどんお飲みになるがよろしいのですわ~!」
もうメサイアはビールサーバーを背負った売り子みたいな感じで、口からストロングチューハイをドパっていた。
そんな彼女の見上げる先にあったのは『プロメテウス』。
「それにしてやっぱりでっけぇ鳥さんですわねぇ……ん? 鳥さんと、おライスメキア……鳥とおライス。鳥とおお米……」
なんか今、ストロングチューハイ以外の液体がメサイアの口の端からこぼれた。
そう、気がついてしまった。
「はっ!? この組み合わせは! お唐揚げ定食ですわ~!」
うおぉン!
再び唸りを上げるメサイアのブラックホール胃袋が『オーロラ祭り』広がる宇宙空間に腹の虫を響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
烏護・ハル
良かった……。飛べなそうだからヒヤヒヤしたけど。
送り出す方法があるんだ。
オーロラ踊り、とっても自由で賑やかな踊りなんだね。
興味はあるけど……戦いで脚を酷使し過ぎちゃった。上手く動けないや……。
……あ、そうだ。式神さん!
式神さんたち、踊ってみない?
私の代わりに、皆であの子を送り出してあげて。
私の式神さんは、ちっこい男の子……を更にちっこくしたような鬼人。
喋れないけど、あの子たちの意思は普段から何となく分かる。
『家族』だもの。
……あの子たちなら、『プロメテウス』にも伝えてくれるかも。励ましてくれるかも。
式神さんたちが皆に混ざって楽しんでる様子を眺めて過ごそう。
『プロメテウス』の旅路を祈りながらね。
猟兵たちが『惑星バブ』の住人たちと共に『オーロラ祭り』を楽しんでいる。
彼らの楽しむ気持ちが航路より外れて羽撃くことのできなくなった宇宙怪獣『プロメテウス』を本来の航路へと導く標となるのだ。
故に、彼らの楽しむという意思が徐々に『プロメテウス』をオーロラでもって導いていくのだ。
それを見上げ、烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)は胸をなでおろす。
「良かった……砥部なさそうだからヒヤヒヤしたけど。『オーロラ祭り』を楽しむだけでいいっていうの眉唾じゃなかったんだね」
本当によかった、とハルはどうやら『オーロラ祭り』が盛り上がり、当初の目的である『プロメテウス』を航路に送り出すという目的を達成できそうであることを喜ぶ。
オブリビオン『征服王アダマス』によって従わされていただけの宇宙怪獣を救うことができたという充足が、激しい戦いを経た彼女の体に疲労となって襲ってくるだ。
狐火を噴出するユーベルコード。
それによってハルの脚はふくらはぎがパンパンだった。
加えて『征服王アダマス』を打ち据えた拳が痛い。あれだけしこたま殴りつけたのだ。ハルの拳は限界を迎えようとしていた。
「『オーロラ祭り』、興味あったけど……」
彼女が見上げるのは『プロメテウス』を送り出す『惑星バブ』の人々が踊る光景。
その踊りに規則性はなかった。
音楽すら自由自在。腕を触ろうが、足を蹴り上げようが、回転しようが、どれもが正しい。間違いであることを指摘するのも野暮なほど、彼らの表情は喜びに溢れていた。
きっと楽しいのだろう。
ネガティヴではなくポジティヴな感情を『プロメテウス』は受け止め、その大鴉の如き姿で羽撃く翼の力が徐々に強くなっていく。
「お体、大丈夫ですか? 我らが星『惑星バブ』のためにしてくださったこと、感謝の念絶えることがありません」
「ああ、私がしたいと思ったことだからね。気にしないで。あのさ、こういう踊りって式神さんたちも、飛び入りって大丈夫?」
ハルが疲れ果てたように宇宙空間に浮かんでいるのを見かねて『ライスメキアMMM世』が近づいてくる。彼女にハルは己の式神……小さな子鬼の男の子たちを示して見せる。
それはハルが常日頃から使役して心通わせる存在であった。
「ええ、構いませんよ。『オーロラ踊り』の良い所は決まり事がなく、どんな風に踊っても、それが正しいと言える所にあります。どんな方でも、いつでもどのようにして飛び入りしていただいて構わないのですよ」
「それはよかった。さあ、行っておいで」
ね、とハルは微笑んで小さな鬼人の男の子たちを送り出す。
言葉を交わすことはできない。それはともすれば『惑星バブ』と『プロメテウス』との関係にもにていたことだろう。
生活をともにする。
例え、年一度の邂逅でしかないのだとしても。
それでも、とハルは思う。
彼らと自分が『家族』であるのと同じように。
「ふふ、見ているだけでわかっちゃうな」
ハルは式神たちが楽しそうに『惑星バブ』の住人たちと混ざって踊る姿を見上げる。
「……あの子たちあら、『プロメテウス』にも伝えてくれるかも。励ましてくれるかも。例え、孤独を感じない生き物であったとしても。こんなにも楽しいってことを。生きてるってことは、こんなにも素晴らしいことなんだって」
星の海を往く大鴉にハルは祝福を祈る。
見上げた先にある楽しげな光景が、叶うのならば一時ではなく。
また来年も同じように続くことを祈るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
きゃうん!?(クラリネットしまって正座)
あ、あの、今回の演奏、気に入ってもらえませんでした……?
って、ええ!?
|『プロメテウス』《この子》……『エイル』さんなんですか?
『エイル』さんがいっぱいいるのはなんとなく解りましたけど、
世界が違うと羽とか生えたりもするんですね。びっくりです。
それで、オーロラ祭りでこの子を帰してあげるんですよね。
で、でもでも演奏以外って……。
せっかく踊りもありますし、踊りって言ったら伴奏じゃないですか?
今度こそステラさんが納得できる演奏を……ひぃ。(圧で涙目
わ、わかりました、ご飯ですね!
それじゃ、屋台ってことでいいですか!
一生懸命作りますから!稼ぎますからー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|ルクス様の演奏で癒してもらえるなんて《これが人間のすることですか
》
|貴重な経験ですね《死にたくない》(ごふっ
ええい、相方だからとて許容できることと出来ないことがありますよ!
ルクス様ステイ!
楽器を手放す!
とりあえずプロメテウス様が無事で安心しました
間近で観察失礼
ふむ、大鴉、赤と青の翼、プロメテウスという名前
どちらかというとセラフィム側ではなくエイル様側でしょうか?
この世界は段階が進んでいそうですし
繋がっていながらもバイスタンダーですらない存在もいるのかもしれませんね
さてルクス様
オーロラ祭りですよ
演奏以外のことで楽しみましょうね?ね?(圧
とりあえずお腹もすきましたし食べましょうか
世の中には許容できることとできないことがある。
そういう意味ではルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の演奏は許容できない部類に入るものであったことだろう。いや、まあ、そういうやつであるのでしかたないというか、そういう風になるのも頷けるっていうか。
ともかくルクスはクラリネットを抱えて正座させられていた。
宇宙空間での正座というのは得難き体験であろう。
他の誰でもできることじゃあない。
する必要もないっていうか。
「あ、あの、今回の演奏、気に入ってもらえませんでした……?」
ルクスが恐る恐る見上げる先にあるのは、紫メイドことステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
「|ルクス様の演奏で癒やしてもらえるなんて《これが人間のすることですか》|貴重な体験ですね《死にたくない》」
ルビ芸が酷い。
ステラは頭を振る。
確かに今のルクスは小動物的な可愛さがある。
クラリネット抱えて正座している様なんて正しくそんな雰囲気を醸し出している。きゅぅ~んってやつである。
しかし、しつけというのは大切なことである。
常にツーマンセルで行動しているのだから、こういう時に咎めないでいつ咎めるというのか。
「ええい、相方だからとて許容できることとできないことがありますよ! ルクス様! いいから、その楽器から手を放す! 隙あらば演奏しようとしない!」
「だってだってお祭りなんですよ!『オーロラ祭り』には出囃子でしょう!?」
「それはそうかもしれませんが、ルクス様が演奏すると別の意味で酷いことになるでしょう! そういうことを言っているですよ!」
全く、とステラは腕組みして仁王立ちしている。
その視界の端で宇宙怪獣『プロメテウス』が羽ばたこうとしている。
『惑星バブ』の住人たちと猟兵たちが『オーロラ祭り』を楽しむことによって宇宙空間に発生したオーロラが『プロメテウス』の航路の標となっているのだ。
これをたどり、『プロメテウス』は元の航路へと戻らんとしている。
「……とりあえず、『プロメテウス』様が無事で安心しました」
ステラは宇宙怪獣の巨体を見やる。
オブリビオン『征服王アダマス』との戦いにおいては遠距離からの攻撃故に観察することはできなかったが、脅威が去った今ならばじっくりと観察することができるだろう。
赤と青の羽もつ大鴉の如き姿。
いくつかのキーワードが在る。
大鴉。赤と青。プロメテウスという名前。
「どちらかと言うと『セラフィム』側ではなく『エイル』様側でしょうか?」
「えっ!|『プロメテウス』《この子》……『エイル』さんなんですか?『エイル』さんがいっぱいるのはなんとなくわかりましたけど、世界が違うと羽とか生えたりもするんですね。びっくりです」
「まだそうだと断定できたわけではございません」
ルクスの言葉にステラは考える。
『セラフィム』という機動兵器の発祥が、この銀河の海であるというのならば、サイバーザナドゥにて見た『セラフィム』の最終世代と言われる『バイスタンダー』に、この宇宙怪獣『プロメテウス』が関連しているのか。
この世界は最も段階が進んでいるのではないかとステラは推測する。
そもそも『バイ・スタンダー』と呼ばれる『惑星ジェミニィ』のウォーマシンたちも確認されている。
『今』を基準に考えるのならば、『最終世代』と呼ばれた『バイスタンダー』が『過去』になっているのはいかなることか。
考える。
けれど、その考えを打ち消すようにいつの間にか正座を解いたルクスがクラリネットを手にしている。
「『オーロラ祭り』でこの子を帰してあげるんですよね! 送り出すにはやっぱり音楽! 演奏ですよね! ね! んね!」
「演奏以外にしてください。また大惨事になります」
「えぇ……で、でもでも演奏以外って……」
「『オーロラ踊り』があるでしょう。どうやら『プロメテウス』様……この宇宙怪獣は言語でもなければ音でもなく『踊る』という表現でもって意思疎通する様子」
「でも踊りっていったらあ伴奏ですよ! 今度こそステラさんが納得できるような演奏を……ひぃっ」
ルクスはそれ以上言えなかった。
ステラの眼光が尖すぎたからだ。今ならステラは眼光だけで人が殺せそうだった。怖い。
「わ、わかりましたよぅ。じゃあ、どうすればいいんですか」
「演奏以外のことで楽しましょうね? ね? 先程からそう言っているつもりですが。ああ、そうです」
ステラは屋台宇宙船を示す。
『オーロラ祭り』を楽しむのは何も演奏や踊りだけじゃあない。
こんなにも『惑星バブ』から住人たちが集まってきているのだ。いろんな銘菓やら名産やらがあるだろう。
戦いでカロリーを消費したのならば。
「それじゃあ、ご飯ですね! 屋台飯っていうんですよね、こういうの! わたしが一生懸命作りますから! 稼ぎますからー!」
だから、後でちょっと演奏させてくださいね、とルクスがパチンと、ウィンクしてみせるのをステラは断固阻止するように宇宙空間で二人はわちゃわちゃする。
それを『プロメテウス』はなんだかなぁという感情籠もった視線で一瞥して、赤と青の羽を震わせるように羽撃かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
銀河で歴史がまた1ページ(ナイアルテさんの)
と、それはしっかり記録・保存しておくとして、今は!
『ライスメキア』さーん♪お久しぶりー!(ハグ待ち
え?来てくれないの?してくれないの?
なら、しにいっちゃうー。
ぎゅむぎゅむぎゅむむむむー。
ほらサージェさんもいっしょに!ぎゅむー♪
まさにわたし一人勝ち! そして困り顔もイイっ
……おっと涎には注意だぜ!
で、なんだっけ?オーロラ踊り、だっけ?
もちろんおっけーだよ。
『ライスメキア』さん、どんな踊りか教えてね。
(でもわたしが踊ると怪しげな邪神召喚の踊りっぽくなります)
それにくらべてサージェさん……自己主張激しっ。
まわりの子供たちの性癖が心配だよ!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
「ナイアルテさんのドジっ子ーーーっ!!!」
普段は忍んでいる私ですが、ここはクノイチのアイデンティティを捨てて
全宇宙に叫びましょう、そして刻みましょう
ええ、ナイアルテさんはドジっ子。異論は認めません
さてプロメテウスさんも大人しくなりましたし
後は元気に戻るだけですね
あ、ライスメキアさんお久しぶりです
今日もそのストーカー……じゃなくて強火ファン……でもなく
理緒さんのことよろしくお願いします
って何故に私までー!?
どこさわってますかー!?
理緒さんステイ!
ほら、ライスメキアさんも困ってるじゃないですか
そんな顔も萌えるとか玄人の意見はいいんです
プロメテウスさんを空に戻しますよー
ふっ現地に溶け込むこのシノビクオリティ
ダンスだってそれなりに大丈夫ですよ
やったことありませんけど!
自己主張どころか忍んでると思うんですけど!
性癖ってなんですか!?
世の中には触れちゃいけない触れられちゃいけないことがあるものである。
人はそれを恥じるのならば黒歴史と呼ぶのだろうし、糧にするのならば教訓とするのである。即ち、何が言いたいかというと、過ちは繰り返させない! されど、この広い銀河の海、スペースオペラワールドにおいては歴史がまた1ページ刻まれるのと同義であったのだ。
誰が、誰の、とかそういうのはよそう。
はいはいやめやめ。
ドジっ子とか言わない。
「ふっ、普段は忍んでいる私ですが、ここはクノイチのアイデンティティを捨てて全宇宙に叫びましょう、そして刻みましょう」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)のアイデンティティは其処じゃない気がするのだが、まあ、それは甘んじて受け入れよう。
やってしまったものは覆らない。なかったことにはならないので。
「そうだね。しっかり記録・保存しておくとして、今は!」
笹喰ってる場合じゃあねぇ! とばかりに菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は宇宙空間に飛び出していた。
そう、彼女の狙いは『ライスメキアMMM世』である。
『惑星バブ』を統治する皇女。
それが彼女である。
普段であれば謁見することすら叶わない存在であるが、この時……つまり『オーロラ祭り』であれば、その限りではないのだ。
故に理緒は全力だった。
「『ライスメキア』さーん♪ お久しぶりー!」
「ええ、お久しぶりでございます。息災ないようで何より……いえ、それよりも此度のこと感謝してもしきれません」
恭しく一礼して見せる『ライスメキアMMM世』に理緒は腕を広げて待ち構えていた。
その様子に『ライスメキアMMM世』は戸惑っていた。
どういう意図なのか測りかねていたようだった。
「え? 来てくれないの?」
「え、え、え?」
「ハグ、してくれないの?」
は、ハグですか? と『ライスメキアMMM世』は戸惑っている様子だった。彼女にとって、ハグ、つまりは抱き合うというのは随分とハードルが高いようである。
「なら、しにいっちゃうー」
だが、理緒には関係ないことである。相手が来ないなら自分が行く。それが理緒のアグレッシブさを示すものであったからだ。
ぐいぐいと宇宙空間で抱きついてもちゃもちゃしてしまう様子を見てサージェはうんうんと頷く。
「あ、あの、な、何がなんだか!」
「あ、『ライスメキア』さんお久しぶりです。今日もそのストーカー……じゃなくて強火ファン……でもなく、えっと」
なんていうのが妥当なのかなってサージェは首をひねっていた。
どう言ってもろくでもない表現しかでてこない所からして押して測るべしって感じである。
「まあ、ともかく理緒さんのことよろしくおねがいします」
「ほらサージェさんも一緒に! ぎゅむー♪」
理緒は、じゃあこれにてって感じでクノイチムーヴをかまそうとしたサージェを捕まえて三人で宇宙空間をもみくちゃになる。
「って何故に私までー!?」
「まさにわたし一人勝ち!」
「あ、あの、それは少し、困ります。私、心に決めた方がいるので……っ!」
「困り顔もイイっ!」
理緒にとっては困った顔も垂涎である。あ、やべ、涎が零れそう、と理緒は緩む口元を引き締める。注意である。
「どこさわってますかー!?」
サージェの言葉もなんのそのである。どこをどうしているとは言わないが、まあ、その大変に見た目がまずいことに成っているサージェの胸元。
「理緒さんステイ! ほら、『ライスメキア』さんも困ってるじゃないですか!」
「そこまたイイよね!」
「レベル高くありません!? 玄人すぎません!? っていうかですね、このお祭りは『プロメテウス』さんを元の航路に戻すためのお祭りなんですよ! こんなところでもちゃもちゃしている暇ないんですよ!」
「あ、そう言えばそうだったね。なんだっけ、『オーロラ踊り』だっけ?」
「はい、オーロラの如く変幻自在。決まり事はなく、どんな表現でも良い、とされるオーロラ祭り伝統のオーロラ踊りです」
『ライスメキアMMM世』は優雅に宇宙空間で一礼して、こんな風に、と軽やかに踊って見せる。その様を見て理緒も真似しようとするのだが、なんだか不気味というか怪しげな雰囲気が漂ってくる。
けれど、それを咎める者はいなかった。
決まり事などないのだ。
自分が表現したいと思うことを表現する。体を使って、四肢を使って、多くのことを伝えようとする姿勢こそが大切なのだ。
「ふ、流石、理緒さん。踊ると邪神召喚しそうですね! ですが、見てください。私の現地に溶け込むシノビクオリティを!」
理緒の邪神召喚音頭じみた踊りとは対極にサージェは見事に『惑星バブ』の住人たちが踊る『オーロラ踊り』に溶け込んでいた。
だが、である。
そう、だが! なのである!
「……サージェさん……自己主張激しっ」
「えっ!? 自己主張どころか忍んでると思うんですけど!」
なんで!? とサージェは困惑するが、仕方ないことである。何がとは言わないが揺れているのである。主に男子の視線を奪い去ってしまう二つの半球がよぉ! というやつである。
理緒は、そんな無自覚なはずみを見せつけるサージェに頭を振る。
『惑星バブ』の住人、その子どもたちの将来が危ぶまれる。このままでは大変なことになる!
「あ、でも、さっきさらっと聞き流したけど」
「どうなされましたか?」
「『心に決めた方』って誰?」
にこし。
理緒の圧力がスゴイ。
「誰かな?」
「理緒さん、圧力がすごすぎますって! 強火がすぎますってば!」
サージェが慌てて止めるけれど遅い。
理緒の圧力に負けて、というか『ライスメキアMMM世』は頬に手を当てて、ぽっと赤らむ熱を抑えるようにして絞り出すようにして言うのだ。
いや、なんだそれ。
どう考えても、言うのもまんざらでもないって感じの。
「……『サツキ・ラーズグリーズ』様です」
その言葉と共に歓声が広がる。
それは宇宙怪獣『プロメテウス』がついに元の航路へと戻ったことを示す歓声であった。
オーロラが宇宙空間にかかり、その道筋を示す。
また来年、と『惑星バブ』の住人たちは羽撃く『プロメテウス』を送り出し……そして、サージェと理緒の絶叫が響いたとか、響いてないとか――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵