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影の城を統べるは異端の神

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #戦後 #第三層 #【Q】

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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「闇の救済者戦争において出現した『影の城』を覚えているでしょうか。あれと同様の建築物がダークセイヴァー上層で発見されました」
 禁獣デスギガスの無限災群の中から突如として現れた「影の城」は、戦争中の猟兵達にとっては頼もしい拠点となったが、その由来は不明のままだった。シルバーレイン世界のヴァンパイア達もこれと酷似した「影の城」を拠点にしているらしいが、それなら何故同様の城がダークセイヴァーにあるのか疑問も深まる。

「発見された『影の城』の周辺地域は、魂人はおろか闇の種族さえも踏み込めない『禁域』に指定されています。それは、かの城が異端の神々の巣窟になっているからです」
 第四層の辺境にも存在した「異端の神々」は、肉体と理性を持たない不可視の存在で、オブリビオンに憑依して肉体と魂を乗っ取る事から「狂えるオブリビオン」とも呼ばれている。この特性ゆえに上層の絶対者である闇の貴族さえも、彼らのことは恐れて近寄らないようだ。
「ですので猟兵が異端の神を滅ぼしても、しばらくの間は影の城の禁域指定が解かれることはないでしょう。闇の種族の支配が及ばない空白地帯が、上層に生まれることになります」
 ここを「魂人達の保護地域」や「闇の救済者達のアジト」として利用できれば、今後の活動において大きなプラスになる。もちろん、そのためには影の城にいる異端の神を倒さなければいけないが、猟兵には下層でそれを成し遂げた実績がある。

「影の城の内部は半ば異空間と化していて、全てが漆黒一色に塗りつぶされた広大な泥沼になっています。この沼の中からは無数の『黒い腕』が花のように伸びていて、城に入ってきた者を沼に引きずり込もうとしてきます」
 普通に進めば文字通り「足を取られる」のは間違いないので、捕まらないように対策しておく必要はあるだろう。
 だが、本当に危険なのはこの城に満ちる異端の神の「狂気」そのものだ。城内に一歩足を踏み入れれば、猟兵達は常に異端の神の声を聞くことになるだろう。
「この声に耳を傾けすぎると、狂気に魂を支配されてしまう恐れがあります。呑まれないように心を強く保ってください」
 どんな言葉や呼びかけが聞こえてきたとしても、耳を貸してはいけない。足元の沼や腕の妨害に注意しながら異端の神の狂気にも対処する方法を考えるのは難しいかもしれないが、それができなければ敵の前に立つことも不可能だ。

「この影の城の主である異端の神は『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』という闇の種族を乗っ取っています」
 ヴァルヴァリオンは「ヴァーミリオン」の姓を持つヴァンパイアの一族を束ねる長であり、自身も強大な吸血鬼だったが、現在は完全に異端の神に肉体を支配されている。説得や交渉が通じるような理性はなく、狂気のままに侵入者に牙を剥くだろう。
「理性を失ってはいても闇の種族の身体能力やユーベルコードの力は健在ですので、下層で遭遇した異端の神々より危険度は段違いでしょう。ですが、こちらも上層での経験を経て着実にレベルアップしているはずです」
 油断なく戦い、狂気から生じる隙を突けば必ず倒せるはずだとリミティアは自信をもって語る。最後に頼れるのは鍛え上げた自らの肉体と技術、そして狂気に屈さない強い心。どれも本来の肉体がない異端の神には持ち得ないものだ。

「異端の神を撃破できれば影の城は猟兵のものとなり、上層にいる人々にとっての安全地帯になります。そのためにどうか、皆様の力をお貸しください」
 説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、ダークセイヴァー上層の「影の城」に猟兵を送り出す。
 そこは、全てが漆黒に塗りつぶされた謎の魔城。その玉座にて狂気を振りまく、異端の神との戦いが幕を開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはダークセイヴァー上層にて発見された「影の城」を攻略する依頼です。

 1章は影の城内部の異空間を攻略する冒険パートです。
 城内は漆黒一色に染められた沼地が広がっており、無数の黒い腕が侵入者を沼に引きずり込もうとしてきます。
 さらに城の中では常に狂える異端の神の声が聞こえ、侵入者の魂を狂気で支配しようとします。
 城を攻略するためには、この二つの脅威を同時に対処しながら進む必要があります。

 2章は影の城の主である異端の神との決戦です。
 異端の神は闇の種族『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』の肉体と魂を乗っ取り、自らの肉体にしています。理性は失われていますが圧倒的なユーベルコードの力は健在で、油断ならない強敵となっています。猟兵も全力をもって挑む必要があるでしょう。
 この異端の神を滅ぼすことができれば、禁域に指定されている影の城と周辺地域は、闇の種族も近寄らない人類にとっての安全地帯になります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『掌咲く花畑』

POW   :    武器などで力任せに手を切り分けて進む

SPD   :    掴ませない! 一気に駆け抜ける!

WIZ   :    道具などで手を傷付けないように進む

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加

保護区域としてもアジトとしても
影の城なら本当にこれ以上ない場所だ
彼らの安寧と、未来の為にも、全力で行こう
「勿論。行くに決まってるよ、相棒」

異空間に入ると同時に時人と合わせ
【戦文字「昇龍」】を使用
時人と二人で沼から誘う腕たちを
合間を縫うように、吹き飛ばす様に
墨の黒龍を舞い踊らせて駆ける
「さぁ…存分に飛べ、昇竜!」

声にはどう対処するかと思っていたが
耳栓程度ではダメだったみたいだ
気付いた時には意識が惹かれた
だけど、それ以上に、俺にとっての光が
導く声が聞こえたから
「悪い、大丈夫だ…時人こそ、気をつけろよ」

独りじゃないから、これ位の事では負けない
真っ直ぐ一直線に進もう


葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

安全地帯を作れるなら幾つでも良い
幾度でもどれ程危険でも

「だろ?陸井」

どんな闇わだの底だって渡ってやる

白燐武空翔詠唱
大ククルカンに騎乗しながら
蟲笛からも呼んだ小さいのを撫で
「攪乱お願いだ。あ、あと…俺がヘンなったら噛んでね」

相棒に合図し飛び立つ

全速で駆け抜けたら闇の誘いも振り切れるだろう
陸井と速度勝負もあるけど…
と、耳に鋭い痛み
いつの間にか狂気の声に魅入られてたか
がぷりとククルカンが耳に噛みついてた
「サンキュ…助かったよ」

見ると横を飛ぶ陸井の瞳もくすんで高度が落ちてる
「陸井!駄目だよ!」

追いすがると直ぐに応えがあった
二人だから大丈夫

手も声も振り切って本丸へ飛び込もう!



「保護区域としてもアジトとしても、影の城なら本当にこれ以上ない場所だ」
 シルバーレイン世界出身の凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は、ヴァンパイア達が拠点とする「影の城」の特性やその堅牢さについて知識があった。こちらの世界で発見された「影の城」が完全に同一とは限らないが、話を聞く限りでは特徴は合致している。
「彼らの安寧と、未来の為にも、全力で行こう」
 この城の確保はダークセイヴァー上層にいる人類にとって大きな価値があると判断した彼は、意気込みも強く現地に向かう。その攻略は一筋縄でいかないだろうが、不安はない――彼には学生時代からの戦友にして相棒が付いている。

「安全地帯を作れるなら幾つでも良い。幾度でもどれ程危険でも」
 陸井の相棒、葛城・時人(光望護花・f35294)もこの地で発見された「影の城」にかける意気込みは同様だった。
 戦争を経ても闇の種族の支配下にあるダークセイヴァー上層において、人類が安全に暮らせる土地は限られている。気まぐれに集落ひとつを滅ぼせる連中が、容易に手を出そうとしない城とは願ってもない好条件だ。
「どんな闇の底だって渡ってやる。だろ? 陸井」
「勿論。行くに決まってるよ、相棒」
 互いの気持ちをひとつにして、いざダークセイヴァーの「影の城」に足を踏み入れる二人。城門をくぐればその先は異界、恐るべき「異端の神々」が支配する狂気の領域だ。目に入るもの全てが黒く塗り潰された、不気味な沼地が彼らの前に広がっていた。

「さぁ、その黒き身で空を駆けろ。昇龍」
「輝けるその白き翼もて征けククルカン!」
 城内の異空間に入ると同時に二人は詠唱を合わせ、陸井は【戦文字「昇龍」】、時人は【白燐武空翔】を発動する。
 空中に描いた「昇龍」の文字から墨で形成された黒龍が召喚され、時人の身の内からは荒ぶる巨大な​|白燐蟲《ククルカン》が姿を現す。ともに飛翔能力を有した騎獣であり、沼地を渡る足代わりとしては最適だろう。
「行くぞ、時人」
「ああ、陸井」
 合図とともに飛び立った二人は、互いの速さを競い合うように沼地を翔けていく。そんな彼らを地上に引きずり下ろそうとするのは、沼地から伸びる漆黒の腕だ。まるで花のように無数に咲き乱れる手と指が、龍と蟲を掴もうとする。

「攪乱お願いだ。あ、あと……俺がヘンなったら噛んでね」
 時人は蟲笛から騎乗しているものより小さなククルカンの群れを呼び、その頭を撫でてやって援護を頼む。蛍のように白い燐光を放ちながら飛び回るそれらが漆黒の腕の注意を逸らした隙に、腕と腕の隙間を全速力で振り切る算段だ。
「さぁ……存分に飛べ、昇竜!」
 一方の陸井は雄々しく黒龍を舞い踊らせ、黒い腕の合間を縫うように、吹き飛ばすように翔ける。この程度の妨害で足止めされる様子はどちらもない。このまま順調に最深部まで辿り着けるかに思われたが――そう簡単にはいかない。

『血を……我に血を……寄越せ……』
 城内のどこからともなく、はるか彼方から、あるいはすぐ耳元から聞こえる声。それは異端の神が発する狂気の声。
 影の城に立ち入った者は、否応なくこの声に精神を蝕まれ、徐々に狂気に支配されてしまう。ここで自我を保つのは猟兵であっても容易なことではない。
「痛っ……いつの間にか魅入られてたか」
 ふいに耳に鋭い痛みを感じたことで、時人はハッと我に返る。この狂気の声の恐ろしいところは、自分がまだ正気であるか自覚するのが難しいケースもあることだ。だからこそもしもの時の事を考えておいて正解だった。気付け代わりにがぶりと耳を噛んだククルカンが、ちたちたと彼の頬をはたく。

「サンキュ……助かったよ」
 危うい所で気を取り直した時人だが、見ると横を飛ぶ陸井も高度が落ちている。その瞳はくすんでぼんやりと心ここにあらずの表情をしており、おそらくは自分もついさっきまで同じ状態だったのだろう――このまま無意識のうちに沼に沈んでいたらと思うと、ゾッとする。
「陸井! 駄目だよ!」
「……!」
 追いすがり声をかけると、幸いにも反応はすぐにあった。一応、陸井も狂気の声にどう対処するか考えてはいたが、耳栓程度ではダメだったようだ。物理的に耳を塞いでも聞こえてくる不気味な声に、気付いた時には意識が惹かれた。

「悪い、大丈夫だ……時人こそ、気をつけろよ」
 一時は危ういところにあった陸井だが、それ以上に、彼にとっての光が――無二の相棒の導く声が聞こえたお陰で、我に返ることができた。どんなに深い闇の中にいても、その声だけは決して聞き逃すはずがない。もし時人が逆の立場であっても、想いは同じだったはずだ。
「お互い様さ。このまま本丸へ飛び込もう!」
 微笑みを返しつつ、時人は大ククルカンのスピードを上げる。それを追うように陸井の黒龍も速度と高度を上げた。
 またどちらかが狂気に呑まれかけても、こうして声をかけあっていけば良い。これ以上ない安心感を胸に抱きながら二人はまっすぐ一直線に城内を進んでいく。

(独りじゃないから、これ位の事では負けない)
(二人だから大丈夫)
 漆黒の手も狂気の声も振り切って、並走する二人の猟兵。彼らが我を失って沼底に沈む心配はもう必要ないだろう。
 心の通じ合った人間との絆は、何よりも強固な支えになる。心身ともに過酷な戦いを生き抜いてきた彼らが、それを知らぬはずは無いのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黎明・天牙
夢幻戦線

トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥン
ティニを背中に乗せながら指定UCを発動しながら振動の力による衝撃波を黒い腕に放ちながら進む

『トルゥゥゥゥゥゥゥ!』『ヘリィィィィィィ!』『リムルゥゥゥゥゥゥ!』『ヘビロテェェェェェェェェェェ!』『アソヒィィィィィ』『クルミアァァァァァァ!』
UC狂気の連雀レンジャーズの雀達は謎の波動を纏わせ踊りながら黒い腕を消し飛ばしながらついて来る

何か声が聞こえてくる育ての親のリンカと同じ声である

トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥン

マ◯オのスターのBGMを脳内再生するのに夢中になっていて完全無視である

ティニが何か怯える様な声を出したので落ち着かせた


レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線

消えるのじゃあ!
天牙の背中に乗った妾は視力と情報収集で周りの黒い腕の出てくるパターンをUC復活の魔眼を発動しながら銃からエネルギー弾を放ち破壊していく

こんな所で立ち止まってはいられん!行くぞ、天牙!

お〜すと気の抜けた声が聞こえて来るが黒い手に掴まらない様に動きつつ指定UCを黒い腕などに放つ


妾は国や民を取り戻さねばならんのじゃ!邪魔するな!
と言ったタイミングで声が聞こえてきた

『父親の約束を忘れてか…?』や『貴様の臣下に裏切られて堕ちる何処まで墜ちた貴様が?』、『やはりお前は失敗作…』など

あ…あぁぁぁぁ!
恐怖に支配させそうになったが天牙のBGMが聞こえて来た

…ありがとう天牙、助かったのじゃ



「トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥン」
 全てが漆黒に塗り潰された不気味な沼地を、某有名ゲームのBGMのリズムを口ずさみながら高速移動する男がいる。
 彼の名は黎明・天牙(夢幻戦線のリーダー『パラダイス・ブレイカー』・f40257)。戦線メンバーのひとりであるレティシア・ハルモニアス(奪われた全てを取り返す為に〜吸血鬼戦線〜・f40255)を背中に乗せながら、鋭意「影の城」の攻略中である。
「こんな所で立ち止まってはいられん! 行くぞ、天牙!」
「お~す」
 目の前に立ちはだかるのは花の如く咲き乱れる無数の腕。そんな異様な光景を前にしてもレティシアの士気は高い。
 背中の上から檄を飛ばすと、天牙は気の抜けた声を出しつつも【『パラダイス・ブレイカー』神鷲雀男】を発動し、移動速度特化形態の「イーグルマン」となって駆けていく。

「妾の魔眼の力を見せようぞ!」
 吸血鬼であるレティシアは影の城内の暗さを意に介さず、闇を見通すその目で黒い腕の出てくるパターンを見抜く。
 未来視の力を持つ【復活の魔眼】を発動することで予測をより完璧にした彼女は、自分達を沼に引きずり込もうとする腕に闇刃銃『エレクトニアス・ヴァラージュ』を向けた。
「消えるのじゃあ!」
 銃口より放たれるエネルギー弾、そして【紅い矢弾の雨】は百発百中の精度で標的を撃ち抜く。風穴を開けられた腕が沼地に引っ込んでいくと、その隙に天牙がレティシアを背負って先に進む。形態変化によって生えた翼に振動の力を纏わせることで常識を逸脱したスピードを実現しており、その足を掴むだけでも容易ではないだろう。

『トルゥゥゥゥゥゥゥ!』『ヘリィィィィィィ!』『リムルゥゥゥゥゥゥ!』『ヘビロテェェェェェェェェェェ!』『アソヒィィィィィ』『クルミアァァァァァァ!』
 また、天牙とレティシアの後ろからは【狂気の連雀レンジャーズ】が謎の波動を纏いながら踊り狂い、黒い腕を消し飛ばしながらついて来る。常時こんな感じの彼らのことは、いくら異端の神々でもこれ以上は狂わせられないだろう。心配になるのはむしろ先を行く猟兵達のほうである。
『天牙……天牙……』
 ふいに天牙の耳に聞こえてきたのは懐かしい声。育ての親のリンカと同じ声だった。異端の神が彼の気を引こうと声を真似たのか、あるいは彼の内面が生み出した幻聴なのかは分からない。だが、その声に耳を傾ければ狂気に魂を支配されるのは明白だった。

「トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥン」
 しかし天牙はマ◯オのスターのBGMを脳内再生するのに夢中になっており、育ての親の声すら完全無視である。気分はさながら無敵モードと言ったところだろうか、ひとつの物事に没入することで狂気を回避した彼は、振動の力による衝撃波を黒い腕に放って道を切り開く。
「妾は国や民を取り戻さねばならんのじゃ! 邪魔するな!」
 一方のレティシアも彼に合わせて銃撃とユーベルコードを放ち、妨害を排除しながら先を急ぐ。裏切りによって一度は全てを失った彼女には、奪われた全てを取り戻す悲願がある。それが彼女の心を支える信念でもあったのだが――。

『父親の約束を忘れてか……?』『貴様の臣下に裏切られて堕ちる何処まで墜ちた貴様が?』『やはりお前は失敗作……』
 まるで彼女の深層心理を見透かしたように、どこからともなく聞こえてくるのは糾弾の声。異端の神の狂気はヒトの心の脆弱な部分を蝕む。それは他ならぬレティシア自身から出てきた言葉であり、秘めたトラウマやコンプレックスが具現化されたものだった。
「あ……あぁぁぁぁ!」
 必死に耳を塞いだところで声は止まない。先程までの威勢の良さはどこへやら、レティシアは怯えて真っ青になる。
 根が真面目な性格だからこそ、天牙のように適当に聞き流すこともできず、真に受けてしまうのだろう。このままでは彼女が正気を失うのも時間の問題だ――。

「トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥン」
 だが、そんなレティシアの気持ちを逸らしたのは、天牙が口ずさむ例のBGMだった。狂気に満ちた影の城のムードとはまるで場違いな、ノリのいいハイテンポなリズム。狂気と恐怖に支配されかかっていた吸血鬼の少女は、それを聞いてはっと我に返る。
「……ありがとう天牙、助かったのじゃ」
「おう、気にすんな」
 恐らくこれは意図的なものだったのだろうと、落ち着いたレティシアが感謝を伝えると、天牙はいつもと変わらないしれっとした顔で言う。ひとまず窮地は脱したが、また同じ事になる前にここを突破してしまったほうが良いだろう。
 二人(主にレティシア)は一層気を引き締めて、行く手を阻む黒い腕を排除しながら、狂気の声が聞こえる方角に向かって進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
先の戦争では世話になりましたが、来歴はまったく不明でしたね
戦争中に調べる余裕などなかったので致し方ありませんが
城を奪取して調査すれば、この世界の秘密に迫れるかもしれません

聖槍に【破魔】の力を宿し、掴みかかる腕を縦横無尽に【なぎ払って】道を【こじ開ける】
それでもなお絡み付くものは【戦女神の聖鎧】が弾き返す

耳を澄ませるまでもなく聞こえてくる狂気の声
私に精神攻撃を仕掛けるか、笑止
【気合い】と【根性】からなる【狂気耐性】
進むことを恐れぬ【勇気】と【覚悟】
そして信仰心(祈り)を以って、狂気を真っ向から捻じ伏せる



「先の戦争では世話になりましたが、来歴はまったく不明でしたね。戦争中に調べる余裕などなかったので致し方ありませんが」
 無尽蔵に湧く敵との戦いであった「闇の救済者戦争」において、最初から「影の城」という拠点を確保できた意義は大きかったと、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は当時の事を振り返る。元々どこにあったものかも分からない代物だったが、それと同じ城がまさか他にも見つかるとは。
「城を奪取して調査すれば、この世界の秘密に迫れるかもしれません」
 闇の種族も迂闊に手出しできない、異端の神々の巣窟になった城など、いかにも重要な謎が隠されていそうである。
 無論、それを暴こうとする者には相応の危険が降りかかることを承知の上で、彼女は万全の覚悟をもって「影の城」に足を踏み入れた。

「気高き戦女神よ、我が身を邪悪から護り賜え――!」
 城内にあったのは広大な沼地。明らかに建物の外観以上の面積があり、底がどうなっているか見通す事はできない。
 沼の中からは漆黒に塗りつぶされた無数の手が伸び、侵入者を沼底に引きずり込まんとする。これに対しオリヴィアは【戦女神の聖鎧】の聖句を唱え、真っ向から立ち向かった。
「まずは、道をこじ開ける!」
 握りしめた聖槍に破魔の力を宿し、掴みかかる腕を縦横無尽に薙ぎ払う。鮮烈なる黄金の輝きが漆黒を切り裂いた。
 それでも尚しつこく絡みついてくるものは、聖なる霊気が自動的に弾き返す。彼女の身を守る形なき鎧は、状態異常や行動制限に対して強力な防護性能を誇っていた。

『あぁ……血を……汝の血を、我に捧げよ……』
 妨害を振り払いながら沼地の攻略を進めるオリヴィアの元に、耳を澄ませるまでもなく聞こえてくるのは狂気の声。
 影の城を支配する「異端の神々」の狂気は、オブリビオンや猟兵であっても無差別に心を蝕む。一体どれだけの者がこの狂気に支配され、沼底に沈んだのだろう。
「私に精神攻撃を仕掛けるか、笑止」
 だが、これしきの事でオリヴィアの心は折れはしない。この世界に満ちるあらゆる邪悪と理不尽に立ち向かってきた彼女の気合いと根性は、狂気に対する強固な耐性を育んでいた。その先にどんな恐ろしい敵が待ち構えていようとも、進むことを恐れぬ勇気と覚悟は彼女の足を止めさせない。

「私が信じ祈るものは、貴様ではない」
 彼女の心を支えるものはもう一つ。聖なる主に対する敬虔なる信仰心が、異端の神の狂気を真っ向からねじ伏せる。
 闇と絶望に支配された世界にも聖なる希望は存在することを示すように、オリヴィアの身を守る霊気は輝きを増し、漆黒に塗りつぶされた空間を煌々と照らした。
「貴様の声は、自らの居場所を私に教えているだけだ」
 どんなにしつこく声を聞かされようが、オリヴィアの精神が揺らぐことは微塵もない。沼の足場の悪さも気にせず、迫る黒き腕を鎧袖一触に薙ぎ払いながら、彼女はこの声の主――忌まわしき城主の首級を挙げるべく進むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
新米猟兵の私は、この世界での過去の戦いについてはよく知らないのだけれど
でも、この暗闇の世界には……何だか、放っておけない何かを感じるわね
あたたかな陽の光を希う想いにシンパシーを感じるのかしら
……なんてね

さて、漆黒の泥沼から無数の黒い手。聞くだけで気が滅入りそうだわ
空を飛べたら楽なんでしょうけど……生憎私は、地上から空に手を伸ばすのが精一杯の人間だから

「咲きなさい、“せんか”」

せめて、|太陽を想う花《キンセンカ》に祈りを込めてUC《せんか》を発動
花弁ひとつひとつから【浄化】の光を放ち道標としながら、無数の手の悉くを斬り刻んであげましょう
沼そのものは……ま、しょうがないわね。不器用な私は強引に突き進むしか無いわ

異端の神の声ってどんなものなのかしら
言葉で惑わすのか、精神を直接脅かす音なのか
ただね、私は【負けん気】だけは人一倍なのよ
ましてや、この私が闇に屈することだけは絶対にあり得ない
私の心の中の太陽だけは、神にも誰にも侵すことはできない

呪詛返しでも防護魔法でもない
負けん気ひとつで抗ってやるわ



「新米猟兵の私は、この世界での過去の戦いについてはよく知らないのだけれど。でも、この暗闇の世界には……何だか、放っておけない何かを感じるわね」
 夜に支配され、闇の種族や異端の神々が跋扈する絶望の世界、ダークセイヴァー。そこでどれだけの人々の血と涙が流されてきたのか、神野・志乃(落陽に泥む・f40390)はまだ詳しくはない。しかし、実際に太陽のない世界に降り立ってみると、心が落ち着かなくなるのを感じた。
「あたたかな陽の光を希う想いにシンパシーを感じるのかしら……なんてね」
 地下世界に太陽の輝きは届かずとも、救いの夜明けがいつかきっと訪れることを信じて、人々は絶望と戦っている。
 それは天つ日に焦がれ、雨よりも晴れを選んだ自分とも似通う気がした。今はまだ、本物の朝日を連れてくることはできないけれど。薄明かりとなり、皆が心休める小さな陽だまりを作る手助けなら、できるかもしれない。

「さて、漆黒の泥沼から無数の黒い手。聞くだけで気が滅入りそうだわ」
 いざ意を決して『影の城』に足を踏み入れると、現実は話に聞いていた以上に不気味だった。何もかもが漆黒に塗りつぶされた異空間で、沼地に咲いた掌の花畑。それらは侵入者を底なしの闇に引きずり込まんと、怪しく腕を伸ばしてくる。捕まったらどうなるかなど考えたくもない。
「空を飛べたら楽なんでしょうけど……生憎私は、地上から空に手を伸ばすのが精一杯の人間だから」
 進む手段は自分の足ふたつ。せめて|太陽を想う花《キンセンカ》に祈りを込めて、志乃は【せんか】を発動。掲げた陽光剣『をのか』の刀身が、無数の花びらへと分裂する――それは神話において、太陽の神を愛した精霊が、届かぬ慕情の果てに姿を変えたとも伝えられる花だ。

「咲きなさい、"せんか"」
 金盞花の花弁はひとつひとつから浄化の陽光を放ち、城内を照らしながら無数の手の悉くを斬り刻む。志乃はその光を道標とし、腕が引っ込んだ後の道を通って先に進む。猟兵としてはまだ新米でも、彼女の魔法の腕前は確かなもの。これしきの妨害では足止めにならない。
(沼そのものは……ま、しょうがないわね。不器用な私は強引に突き進むしか無いわ)
 幸い沼地の途中にも足場になる所はあるので、そこを点々と渡っていけばいい。靴が泥塗れになるのは仕方ないが。
 ひらひらと舞う花弁と陽光と一緒に、まっすぐに城の奥を目指す。ここまでは順調のように見えるが、厄介な問題はもうひとつあった。

『あぁ……乾く……渇く……血を……我に血を……』
 城に入った時から聞こえていた、譫言めいた誰かの声。彼方から叫ばれているような、耳元で囁かれているような、それは先に進むにつれてはっきりと聞こえるようになる。影の城を支配する異端の神の狂気とは、これのことだろう。
(異端の神の声ってどんなものなのかしら)
 言葉で惑わすのか、精神を直接脅かす音なのか。事前に志乃が考えていたパターンだと、正解は後者だったようだ。
 あるいは、人によってまったく違う声が聞こえているのかもしれない。いずれにせよ神の狂気を"受信"してしまったヒトの精神は、普通であればその負荷に耐えられない。狂気に心を支配され、廃人と化すのが当たり前だ。

「ただね、私は負けん気だけは人一倍なのよ」
 異端の神の狂気に晒されながらも、志乃は決して自分を見失わなかった。それは魔法や訓練の賜物ではなく、本人の気の強さに起因したもの。自分の信じた道を突き進み、こうと決めたら曲がらない意地っ張りな気質が、人一倍強固なメンタルを形成していた。
(ましてや、この私が闇に屈することだけは絶対にあり得ない。私の心の中の太陽だけは、神にも誰にも侵すことはできない)
 相手が信条的に相容れない存在である点が、なおのこと彼女の負けん気に火を付けた。地を這うしかできない不器用な人間にも、譲れない矜持はあるのだ。どんなに敵が強大だろうと――いや、強ければ強いほど負けてやる気はない。

「待ってなさい。すぐに行くから」
 呪詛返しでも防護魔法でもない、負けん気ひとつで神の狂気に抗った娘は、力強い足取りで漆黒の沼地を邁進する。
 そんな彼女に恐れをなしたかのように、手による妨害は引いていき。引き換えに大きくなっていく異端の神の声が、迫りくる決戦の時を報せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』

POW   :    真・ヴァーミリオンブラッド
【ヴァーミリオンの血統の力】に覚醒して【朱の魔神】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    真・ヴァーミリオンミスト
対象の攻撃を軽減する【朱き死の霧】に変身しつつ、【万物を侵す強酸と瘴気で出来た霧】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    真・ブラッディカーニバル
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【呪われし血の武装】で包囲攻撃する。

イラスト:やまひつじ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『ァァァ……渇く……渇くのだ……』

 漆黒に塗り潰された沼地の冒険を経て、猟兵達はついに「影の城」の最深部に辿り着く。
 これまでの道中と同様、黒一色に染め上げられた玉座の間にて、一行を待ち受けていたのは礼服を身に纏った男性。
 装いからして貴族のようにも見えるが、その表情は明らかに正気ではなく、瞳には狂気の光が宿っていた。

『血を……我に血を……この渇きを癒やす、供物を……』

 その男は、かつて『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』という名の強大な吸血鬼だった。
 下層でもその名を知られたヴァンパイアの一族、ヴァーミリオン家を束ねる長であり、上層の名だたる闇の種族にも引けを取らない実力者。しかし今は魂と肉体を乗っ取られてしまい、異端の神が現世に干渉する憑り代にされている。

『渇く……アァァァァ……!!』

 憑り代になった吸血鬼の性質と異端の神の狂気が混ざり合っているのか、ソレは潤うことのない渇きを訴えるだけの化け物に成り果てていた。正気や理性と呼べるものはカケラもなく、それを取り戻せる可能性もゼロに等しいだろう。
 猟兵達は下層でもこうした異端の神を討伐した実績がある。しかし、これほど強大なオブリビオンを器にしたとなれば話も変わってくるだろう。闇の種族が持つ圧倒的な力はこの状態でも健在なのだ。

 だが、それでもここで異端の神を倒し、「影の城」を制圧する意義は大きい。
 闇の種族でさえ忌み嫌う禁足地をこちらの拠点にできれば、多くの人々に安住の地を提供することができるだろう。
 今なおオブリビオンの支配力が強いダークセイヴァー上層においては、特にその価値は計り知れないはずだ。

『血を、血を……寄越せェェェェ……!!』

 血の武具を具現化させ、渇望のままに襲い掛かってくる異端の神ヴァルヴァリオン。
 彼の狂気から「影の城」を解放するために、猟兵達は戦闘態勢に入った。
レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線

ぬうっ!何という力じゃあ…!天牙?!
敵と対峙して凄まじい力を感じて天牙の方へ振り向いたが少し考えていたが邪神を呼び出して戦闘態勢をとる

霧になった?!
視力で敵を見て敵が朱き死の霧に変身した瞬間に凍結攻撃のエネルギー弾をクイックドロウの要領で放つ

強酸の霧の身体を凍らせた後に指定UCを発動して距離をとりながら発動する

今度はこっちの番じゃあ!
妾はUC吸血鬼の女王を発動してガンナイフから概念無視と撃聖属性攻撃のエネルギー弾を放ち敵に反撃

天牙、その姿は…!まさか…!
天牙が邪神の力を纏った姿を見てまさか契約してしまったのかと思ったが邪神を天ぷらにして食べて合体したそう

…はい?
この場の空気が凍りついた


黎明・天牙
夢幻戦線

何か強そ〜、ん?待てよ
少し考えこんだ後に邪神君を呼ぶ事にして笛を吹いた瞬間

ミィィィィィィィィン!
邪神の世界に飛ばされた

『天牙よ…ついに余と契約する時…が…』

『天ぷらぁぁぁぁぁぁぁぁ!』『油ぁぁぁぁ!』『小麦粉ォォォォォォ!』『鍋ェェェェェェ!』『たまごォォォォォォ!』『火ィィィィィ!』
UC狂気の連雀レンジャーズ発動して天ぷらの準備をしていた

お〜来たか
『な…何故、余がこの世で一番嫌いな天ぷらの準備をしているのだ?!』

邪神君、合体だ
『なら…』
邪神君を今から天ぷらにして俺が喰う
『はい?』
それでパワーアップだぜ
『お前何言って…ギャアァァァ!』
『レッツゴー!』×∞
雀達が小麦粉と卵を浴びせた後に鍋にぶち込んだ

いただきます…
指定UC発動


敵が再び朱い霧になっていたが視力で相手を見ながら手を翳して発動する

厄災滅殺…
必中概念干渉撃で霧の身体でもダメージを与える

敵は凄まじい速さで吹っ飛んだ

ティニに大丈夫か?と聞かれたが
大丈夫だ、邪神は天ぷらにして食ったら契約を踏み倒して力が手に入るってリンカが言ってた



「ぬうっ! 何という力じゃあ……!」
 闇の種族の肉体を乗っ取った異端の神、『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』と対峙して凄まじい力を感じ取ったレティシアは、不安そうな表情で天牙を見る。流石にこのレベルの敵が相手となると彼もいい加減ではいられないか、対抗手段を考えている様子だ。
「何か強そ~、ん? 待てよ」
 すこし思案した後になにか思いついたのか、天牙は懐から厄災の蟲笛『オーガスト・ベイン』を取り出す。それは蝉と蜂の混ざった不気味な形をしており、一目でただの楽器ではないと分かる。通常の蟲笛としての機能とは別に、ソレには邪神と交信する機能があった。

『ミィィィィィィィィン!』
 天牙が蟲笛を吹いた瞬間、蝉の鳴き声のような音とともに彼は邪神の世界に飛ばされる。他の者達からすれば、突然城から姿を消したように見えるだろう。レティシアは慌てた様子で「天牙?!」と叫ぶが返事はなく、そして敵は彼が帰ってくるのを待ってはくれない。
『血を……寄越せェェェェ……!!』
 ヴァルヴァリオンは【真・ヴァーミリオンミスト】を発動し、万物を侵す強酸と瘴気で構成された「朱き死の霧」に変身する。理性を喪っても失われなかった、ヴァーミリオン家の長としての圧倒的な力――磨き抜かれたヴァンパイアの異能が猟兵達に牙を剥く。

「霧になった?!」
 敵の変化を見たレティシアは咄嗟に闇刃銃『エレクトニアス・ヴァラージュ』を抜き、氷の魔力を込めたエネルギー弾を放つ。ユーベルコードの霧とはいえ微細な液体の集まりであるのなら、凍結させるのが有効だろうと判断したか。
『ウ、オォォォォ……!』
 完全に氷漬けにはできなかったものの、凍結弾を受けたヴァルバリオンの身体は部分的に固まって動きが鈍くなる。
 その隙にレティシアは距離を取りながらユーベルコードを発動。次元さえも貫く【紅い矢弾の雨】で敵を牽制する。

「今度はこっちの番じゃあ!」
 別世界の同族として遅れを取る訳にはいかないと、レティシアはさらに【吸血鬼の女王】を発動。蝙蝠の翼と漆黒のドレスを身に纏った、闇の世界の女王たる威厳を顕わにする。かつて臣下の裏切りによって玉座とともに奪われた力、その一端がこの姿だ。
「妾は……レティシア・ハルモニアス! 吸血鬼の女王じゃ!」
『オォォォォォ……ッ!!』
 高らかな名乗りとともに、彼女はガンナイフから聖なるエネルギー弾を放つ。その銃撃は防御という概念を無視し、物理法則を超越して霧になった標的を捉える。予想外のダメージを受けたヴァルヴァリオンの口から、驚きとも苦悶ともつかない叫びが上がった。

『待っていたぞ……』
 さて、レティシアが戦っている間、天牙がどうしていたのかそろそろ語るべきだろう――笛を吹いた彼を待っていたのは邪神「オーガスト・ベイン」。異端の神に勝るとも劣らぬ危険な神格だが、力を借りることができれば間違いなく勝利の鍵になるだろう。まさに毒を以て毒を制すと言ったところか。
『天牙よ……ついに余と契約する時……が……』
『天ぷらぁぁぁぁぁぁぁぁ!』『油ぁぁぁぁ!』『小麦粉ォォォォォォ!』『鍋ェェェェェェ!』『たまごォォォォォォ!』『火ィィィィィ!』
 だが、この空間に来たのは天牙ひとりではなかった。真面目な雰囲気で契約を迫ろうとした邪神の眼前に、ユーベルコードで召喚された【狂気の連雀レンジャーズ】が現れる。彼らはハイテンションな様子でテキパキと食材や調理器具を並べ、なにやら料理の支度をし始めた。

「お~来たか」
『な……何故、余がこの世で一番嫌いな天ぷらの準備をしているのだ?!』
 好き嫌いを抜きにしても絶対に今やるべきではない行為を前にして、困惑と動揺を露わにするオーガスト・ベイン。
 そんな邪神に対して天牙は平然とした様子。このスズメレンジャーズは彼が呼び出したのだから、当然この天ぷらの準備も彼が意図した通りということになる。
「邪神君、合体だ」
『なら……』
「邪神君を今から天ぷらにして俺が喰う」
『はい?』
「それでパワーアップだぜ」
 彼が口にしたのは、まさに邪神をも恐れぬ冒涜的行為であった。普通に契約を交わすのではなく、なぜわざわざ調理して食おうとするのか。理解が追いつかずにオーガスト・ベインが思わず素の困惑を見せた直後、溶き終わった天ぷらの衣がなすり付けられた。

『お前何言って……ギャアァァァ!』
『レッツゴー!』
 スズメ達が小麦粉と卵をたっぷり溶いたものをオーガスト・ベインに浴びせ、ぐらぐらと油の煮えた鍋に放り込む。
 どこかの国の童話や昔話にありそうな光景である。哀れな邪神は断末魔(?)の悲鳴とともに揚げられ、サクサクの衣のついた天ぷらになってしまった。
「いただきます……」
 これを躊躇いなく食すことによって、天牙はユーベルコード【厄災の邪神皇奥義・無限邪王】を発動。左手が邪神のそれに変化し、背後に黒い輪が出現する。プロセスはだいぶ異常だったが、それは紛れもなく彼がオーガスト・ベインの力を取り込んだ証だった。

「天牙、その姿は……! まさか……!」
 邪神空間から現実空間に帰還した天牙は、一目でさっきまでとは別物だと分かる。邪神の力を纏ったその姿を見て、まさか契約してしまったのかとレティシアは思わず声を上げる。が、真実は彼女の想像を斜め上に上回るものだった。
「邪神を天ぷらにして食べて合体した」
「……はい?」
 その回答に、レティシアだけでなくこの場の空気が一瞬凍りついた。世界広しと言えどもそんなことを考えて実行する奴はほとんど居ないだろう。そして、実行して無事でいられる奴はもっと少ない。何から何までイカれてはいるが、彼は正気を失うことなく邪神の力を制御下に置いていた。

『キサ、マ……ウゥゥぅぅ……!』
 狂える異端の神にも同種の力は本能で分かるのか、ヴァルヴァリオンは標的を変えて【真・ヴァーミリオンミスト】を再発動する。万物を侵す強酸と瘴気が自分に迫ってくるのを見た天牙は、そちらに向けてすっと手をかざすと――。
「厄災滅殺……」
『グァァァッ?!!』
 概念に干渉する必中の一撃が、黒き闇の波動となって敵を撃つ。あんなフザけたプロセスで得たものとは思えない、常識を超越した邪神の力――それは霧の身体にもダメージを与え、凄まじい速さでヴァルヴァリオンを吹っ飛ばした。

「大丈夫か?」
「大丈夫だティニ、邪神は天ぷらにして食ったら契約を踏み倒して力が手に入るってリンカが言ってた」
 その力に代償やデメリットはないのかと不安になってレティシアが尋ねるが、天牙は平然とした調子でそう答える。
 ずいぶんと胡散臭い情報ではあるが、事実として契約に伴う代償を彼が支払っているようには見えない。邪神すらも己の糧とした獣人の青年は、異端の神にも迫る圧倒的パワーをもって追撃を仕掛けていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加

依り代として完全に乗っ取られている姿に
多少の憐れみは考えてしまう
だけどだからこそ、楽にしてやるつもりで
「あぁ。ちゃんと解放してやろう」

どれだけの包囲攻撃だろうと
戦闘能力を爆発的に増大させようと
相棒の言う通りだ
「そうだな…俺達なら、必ず勝てる」

まずは相棒の背中を護るように立ち回り
相棒がUCを放つ隙を作るよう銃撃と近接で対処
相棒の攻撃が放たれたら、次は俺の番だ
アークヘリオンを受け続け動けるはずがない
敵へ肉薄し【水遁「爆水掌」】を使用

後の事も次の事も考えない
ただこの一撃で、最後に残ったその姿も
全力で消し飛ばして、眠りに付かせる
「悪いな。此処から退去して貰おうか」


葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

狂気の吸血鬼か…
俺達が知るアレより絶対的に強いとしても
乾きに狂い暴れるだけなら勝機はある
それに…
「このまま此処に居ても苦しいだけだろうし、ね」

相棒に頷きひとつ
高速・多重詠唱も駆使しUCアークヘリオン詠唱
「此処は貴様にはもう必要ない場所だ」

襲い来る血武装の全ても技能で避け
創世の光で焼き尽くしつつ敵に肉薄

俺の動きに伴う蟲達にも攪乱を願い
また相棒の身の護りも頼む

錫杖で手で指し彼奴の視線に合わせて幾度も刻印を刻もう
「貴様には特に相性悪いだろう、光は」
可能なら光を帯びた錫杖でも攻撃を

「光で灼けば…貴様も城も綺麗に浄化出来る!」
滅べ!そして今を生きる者にこの場を明け渡せ吸血鬼!



「狂気の吸血鬼か……俺達が知るアレより絶対的に強いとしても、乾きに狂い暴れるだけなら勝機はある」
 影の城の最深部で相まみえた『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』の様子から、時人はそのように判断する。彼のいた世界でも「見えざる狂気」に取り憑かれた能力者や来訪者は脅威だったが、あちらが理性を保ちながら徐々に進行するものだったのに対して、こちらは既に飢えた獣と成り果てている。その点は与しやすかろうとの見立てだ。
「そうだな……俺達なら、必ず勝てる」
 そんな相棒の意見に陸井も同意する。能力者として|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》を戦い抜き、猟兵としても数多くの戦いを経験した彼らには、それを言えるだけの実績と実力があった。なによりも頼れる相棒が隣りにいるという点が、彼らの自信を裏打ちする。

「それに……このまま此処に居ても苦しいだけだろうし、ね」
 一度異端の神に憑依されたオブリビオンが、元に戻れた事例は確認されていない。このまま奴は影の城の城主として永劫に狂気を撒き散らし続けるのだろう。いかに邪悪な闇の種族と言えど、流石に忍びない気持ちが時人にはあった。
「あぁ。ちゃんと解放してやろう」
 依り代として完全に乗っ取られている姿に、陸井も多少の憐れみは考えてしまう。だからこそ楽にしてやるつもりで銃口を向けるのは躊躇わない。ここで速やかに骸の海へ還してやることが、奴にとってせめてもの救いになるだろう。

『我が……渇きを……潤せ……ウォォォ……!!』
 飽くなき衝動のままにヴァルバリオンは【真・ヴァーミリオンブラッド】を発動し、戦闘力を爆発的に増大させる。
 朱の魔神に変身を遂げた彼の周りには、血で形作られた呪われし武装が何百本も宙に浮かび、主の渇きを癒やすべく切っ先を猟兵達に向けた。
「時人」
「ああ、陸井」
 時人と陸井はひとつ頷き、互いの死角を護るように背中合わせとなって【真・ブラッディカーニバル】に対抗する。
 複雑な幾何学模様を描きながら飛翔する血の武装は、どれを食らっても致命傷になり得る。狂気に陥ってなお失われなかった、闇の種族の圧倒的なユーベルコードだ。

「どれだけの包囲攻撃だろうと、戦闘能力を爆発的に増大させようと、相棒の言う通りだ」
 しかし陸井は冷静に、右手の短刀銃『護身』で血の武装を撃ち落とし、左手の小太刀『身護り』で切り払う。時人がすでに述べたように、能力自体に減退はなくとも理性がなければその用法は単純な力押しに限定される。次に来る攻撃を予測し、対処するのは決して不可能ではなかった。
「始まりの刻印よ、創世の光もて敵を討て!」
 その背に負った『護』の一文字に賭けて、陸井が敵の猛攻を食い止めている隙に。時人はユーベルコード【アークヘリオン】の詠唱を紡ぐ。それは能力者から猟兵に覚醒したことで、真化からさらなる進化を遂げたアビリティの力だ。

「オ……オォォォォ……!!?!」
 輝く始まりの刻印が、漆黒に塗り潰されていた城内を光で満たしていく。それは原初にして神聖なる世界創世の光。
 闇に生きる吸血鬼にとっては天敵と言える輝きを浴びせられ、ヴァルヴァリオンは苦悶の叫びを上げた。少しでも光から遠ざかろうと、城の隅によろよろと後退していく。
「此処は貴様にはもう必要ない場所だ」
 そんな敵に追い討ちをかけるように、時人は刻印の輝きを弱めない。襲い来る血の武装も全て回避するか、創世の光で焼き尽くす。長きに渡り異端の神の支配下にあった影の城を、人類の手で制圧する――そのために彼らは来たのだ。

「次は俺の番だ」
 時人のユーベルコードが放たれれば、即座に陸井も攻撃に転じる。【アークヘリオン】を受け続けながら、光を嫌う闇の種族がまともに動けるはずがないと、相棒の力を信じているからこその即応力。水練忍者として鍛え上げた体術をもって、一気に敵の懐まで接近を図る。
『来る……な……!』
 ヴァルヴァリオンは光から目をかばいながらも、残された血の武装を陸井に差し向ける。だが、まともに狙いもつけられない有様では、致命の切っ先も空を切るばかり。運良くヒットしそうな攻撃もないではなかったが――それは彼の周りを飛んでいる、小さな白い燐光が弾き返す。

「貴様には特に相性悪いだろう、光は」
 時人はヘリオンの力だけでなく白燐蟲使いとしての能力も駆使し、蟲達に敵の撹乱と味方の身の護りを頼んでいた。
 創世の光の中を飛び交う|​白燐蟲《ククルカン》が相乗効果で輝きを増すなか、彼は錫杖と手で指し、敵の視線に合わせて幾度も刻印を刻む。
「光で灼けば……貴様も城も綺麗に浄化出来る!」
『グガァァァァ……ヤメ、ロ……!』
 たまらず悲鳴を上げるヴァルヴァリオン、悶えながら後ずさり続けるうちに、とうとう壁際にまで追い詰められる。
 そこに肉薄する二人の猟兵。逃げ場をなくした異端の神に叩き込まれるのは、それぞれの全身全霊を込めた一撃だ。

(後の事も次の事も考えない)
 ただこの一撃で、最後に残ったその姿も全力で消し飛ばして、眠りに付かせるつもりで陸井は掌に水の術式を纏う。
 技の名は【水遁「爆水掌」】。絶大な威力と引き換えに、使用後は術式の断裂により一定時間行動不能となる捨て身の奥義。ここで終わらせるという覚悟なくしては使えない、まさに最後の切り札だ。
「悪いな。此処から退去して貰おうか」
「滅べ! そして今を生きる者にこの場を明け渡せ吸血鬼!」
 同時に時人も始まりの刻印を「記憶の錫杖」に付与し、【アークヘリオン】の輝きを直接打撃に乗せて振り下ろす。
 影の城を神の支配から奪還せんとする二人の攻撃は、寸分違わぬタイミングで標的を捉え――刹那、水と光の爆発が戦場を揺るがした。

『グ、ゴガアァァァァァァァーーーーッ!!!!?!』
 理性なき狂気の絶叫と共に、壁に叩きつけられるヴァルヴァリオン。その身体は水の衝撃で抉られ、聖なる光で焼け爛れ、見るも無惨な有様となっている。いくら吸血鬼が不死と謳われようが、この傷を即座に修復する事は無理だろう――止まることを知らぬ猟兵達の攻勢が、神殺しを成し遂げようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
吸血鬼――いや、もはや異端の神の傀儡か
だが憐れとは思わん
人々の魂や尊厳を踏み躙ってきた貴様らの末路としては、妥当なところだろうよ

渇望のまま振るわれる暴威
それを強化された【視力】と【集中力】、即ち【心眼】を以って【見切り】、聖槍で【受け流す】
呪われし血の武具ならば、黄金の穂先(破魔・浄化)に触れればその威力を著しく減じる

ヴァーミリオンの血統、か
真なる力に目覚めれば己は無敵と、信じていたわけか
ならば私はローゼンタールだ
素性の知れぬ血統の力に斃れるがいい!

【血統覚醒】により吸血鬼としての力を解放
【怪力】を【全力魔法】で強化(限界突破)した、恐るべき膂力を以って聖槍を打ち振るう



「吸血鬼――いや、もはや異端の神の傀儡か」
 かつてあった威厳もプライドも忘れ、その肉体を狂える神の憑り代にされた『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』を見て、オリヴィアはすうと目を細める。ダークセイヴァーの代表的な支配種族である吸血鬼が、こうも零落した姿を晒すとは。
「だが憐れとは思わん。人々の魂や尊厳を踏み躙ってきた貴様らの末路としては、妥当なところだろうよ」
 彼女の為すべきことは変わらない。同情もなく、憐憫もなく、ただ人類の脅威となるオブリビオンを討ち、この城を新たな拠点にすることだ。敵がいかに強大な闇の種族だろうが、狂える異端の神だろうが、恐れることがあるものか。

『オォォ……我に……血を捧げよ……!』
 ヴァルヴァリオンは【真・ヴァーミリオンブラッド】を発動し、血統の力をもって自らの力を爆発的に増大させる。
 呪われし血の武装を手に、朱の魔神へと変貌した異端の神は、ただ渇きの衝動のままに目前の獲物に襲い掛かった。
「貴様にやる血など一滴もない」
 渇望のまま振るわれる暴威に対し、オリヴィアは強化された視力と集中力、即ち心眼をもって攻撃を見切り、聖槍で受け流しを行う。破魔と浄化の力を持つ黄金の穂先に触れれば、呪わしき血で造られた武装はその威力を著しく減じ、魔剣からなまくらの如しとなった。

「ヴァーミリオンの血統、か。真なる力に目覚めれば己は無敵と、信じていたわけか」
 受け方を誤れば一撃で逆転しかねない、純粋な暴威に晒されながらもオリヴィアは冷静だった。これだけ圧倒的な力があれば、かつてはさぞ傲慢に振る舞っていたことだろう。己を脅かしうる者など存在しないと疑わなかっただろう。長年挑み続けてきた宿敵だからこそ、奴らの性格はよく知っている。
「ならば私はローゼンタールだ。素性の知れぬ血統の力に斃れるがいい!」
 彼女はそう吼えると意趣返しの如く【血統覚醒】し、ダンピールたる己の中に宿る、吸血鬼としての力を解放する。
 金色の瞳は赤く染まり、鮮血の涙が止め処なく流れ落ちる――この呪わしき力さえも我がものとして、敵を討つ覚悟が彼女にはあった。

『オォォ……?!』
 獲物から感じた同族の気配に、また自分の武具が押し返された事に、ヴァルヴァリオンが困惑に似た反応を見せる。
 オリヴィア自身でさえ出自を知らぬ血統の力は、ヒトの限界を超えた怪力を彼女に与える。さらにそれを魔法によって全力で強化すれば、純血のヴァンパイアにすら勝る恐るべき膂力を生み出した。
「思い知れ、貴様は決して無敵ではないと!」
『グガァッ!!?!』
 力に目覚めれども溺れもせず狂いもしない。目の前の吸血鬼の成れの果てとの決定的な違いがあるとすればそれだ。
 種族の差を覆す驚異の膂力をもって、打ち振るわれる聖槍がヴァルヴァリオンをついに捉える。黄金に煌めく破邪の穂先が穢れた血肉を灼き、呪われし魂を浄化する――耐え難き苦痛に異端の神が上げた悲鳴が、影の城に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
「これはまた、分かりやすい人類の敵だわ……」

血を求めんとする御大層な咆哮にも軽口で返して
ふんと鼻を鳴らして睨み返し、魔鏡を構える

「さっさと終わらせましょう」

---

闇の種族が持つ、呪われし血の武装?
あら、奇遇ね

「‪負けられないわよ、“おうり”」

陽光の魔法が放つ、浄化の光の武装
UC《おうり》を発動

まさか同じタイプの……そして真逆の性質のユーベルコードだなんて
ほんと、私の【負けん気】を刺激してくるじゃない

彼我の|武器の本数《レベルの差》がどれだけ違うかは予測もできないけれど
複数の猟兵を相手取る敵と違って、私は一人相手に全弾叩き込める
千と三百を超える浄化の剣、一身に受けて無事で居られるかしら

敵からの包囲攻撃は、真正面からは陽光剣『をのか』で叩き落とし
後ろや横からは陽光属性の【オーラ防御】で受け流し
時には“おうり”から更に【浄化】の光を放って
それぞれ対処して兵力差を埋めていく

呪いには浄化を、闇には光を
少なくとも相性では負けてない
あとは……意地だけよ
太陽は決して、この地を見捨ててなんかいないわ……!



「これはまた、分かりやすい人類の敵だわ……」
 渇望と本能と狂気のままに、見境なく牙を剥くヴァンパイア。それは危険だが、今更怖気づくほどの相手ではない。
 血を求めんとする御大層な咆哮にも軽口で返して、ふんと鼻を鳴らして睨み返すのは志乃。これまでの道中でも見せていた負けん気を全開にして、魔鏡『女神光』を構える。
「さっさと終わらせましょう」
『ウォァァァァァ……!』
 それに呼応した訳でもなかろうが、同時に『ヴァルヴァリオン・ヴァーミリオン』は【真・ブラッディカーニバル】を発動。ゆうに千を超える血の武装を具現化し、自身の周囲を飛び回らせる。あちらも猟兵との戦いで消耗が激しく、ここで決着を付けにきたようだ。

「闇の種族が持つ、呪われし血の武装? あら、奇遇ね」
 武器の一本一本から凄まじい力を感じながらも、志乃は顔色を変えない。闇が呪いを生むのならば、呪いを祓うのは光の役目だ。『女神光』は月光の魔力を凝集する魔器。そこからさらに抽出した陽光の力が、彼女の手の中にはある。
「‪負けられないわよ、"おうり"」
 陽光の魔法が放つ、浄化の光の武装。彼女が【おうり】と呼ぶ白光の剣が、さんさんと戦場を照らしつつ顕現する。
 相反する血と光の武装は、どちらも複雑な幾何学模様を描きながら、まるで互いを威嚇するように飛び回っていた。

「まさか同じタイプの……そして真逆の性質のユーベルコードだなんて。ほんと、私の負けん気を刺激してくるじゃない」
 向こうにその意図は無かっただろうが、志乃が同系統のユーベルコードで対峙した理由は意地以外の何物でもない。
 勝算のあるなしや、勝率の高さを考慮した選択ではない。同じステージに立って、真っ向勝負で打ち破りたい相手がそこにいるから。
「浄き白光で祓いましょう、"おうり"」
『捧げよ……汝の、血を……!』
 両者の号令と同時に、光の武装と血の武装は切っ先を向けあって激突する。忌まわしき呪いが光を侵し、清らかなる浄化が血を祓う。この二人のユーベルコードは完全な相殺関係にあり、幾度激突してもなかなか優劣は付かなかった。

(彼我の|武器の本数《レベルの差》がどれだけ違うかは予測もできないけれど。複数の猟兵を相手取る敵と違って、私は一人相手に全弾叩き込める)
 いかに圧倒的な力を誇る闇の種族であっても、猟兵との激闘を続ければ力の分散・消耗は避けられない。志乃に勝機があるとすればそこだ。魔鏡に溜めた陽光の力をありったけ出し切るつもりで、全てのエネルギーを1度のチャンスに集中する。総力で負けていたとしても、瞬間火力で勝れば良いのだ。
「千と三百を超える浄化の剣、一身に受けて無事で居られるかしら」
『ガ、ウ、オォォォ……!!』
 相殺しきれなかった光の剣がヴァルヴァリオンの体に突き刺さり、じゅうと音を立てて血肉を灼く。吸血鬼の肉体を憑り代にした異端の神は、陽光という弱点まで引き継いでしまった。苦悶の叫びを上げながら、彼は光をかき消すように血の武具を差し向ける。

「呪いには浄化を、闇には光を。少なくとも相性では負けてない」
 こちらを包囲せんとする血の武具に対して、志乃は真正面からの攻撃は陽光剣『をのか』で叩き落とし、背後や側面からの攻撃は陽光のオーラで受け流す。時には"おうり"から更なる浄化の光を放つことで、絶え間ない構成に対処して兵力差を埋めていく。まさに行き着く間もない勝負だが、本人も言うように相性は決して悪くない。
「あとは……意地だけよ」
 なにが"神"だ、狂気の闇に魂を堕とした、ただの血に飢えた化け物のくせに。こんな奴に自分の心は、自分の信じた太陽は負けない。揺るぎない信念と勝利だけを見据えた心意気の強さは、魔鏡より放たれる光をさらに輝かせる――。

「太陽は決して、この地を見捨ててなんかいないわ……!」
 明けない夜はないのだと、晴れない闇はないのだと。志乃の意地が見せつけた陽光は、この世界に希望を証明する。
 呪われし血の武具がことごとく打ち祓われし後、残された光の剣がヴァルヴァリオンの全身を貫く――決着を報せる断末魔の絶叫が、影の城に響き渡った。
『グオオォォォォォォ―――……!!!?!!』
 真っ白な光に包まれながら、吸血鬼の肉体は灰となって跡形もなく崩れ去り、城に満ちた狂気がふっつりと消える。
 それが長きに渡りこの城を支配してきた異端の神の終焉だと悟ると、志乃はほうと息を吐き、陽光の輝きを収めた。



 かくして猟兵達の活躍によって、「影の城」は異端の神の狂気から解放される。
 闇の種族さえ近寄らぬ禁足地に生まれたこの空白地帯は、今後魂人や闇の救済者達の拠点として活かされるだろう。
 オブリビオンの完全な支配が根付いていた上層にも、少しずつではあるが人類の領域が生まれようとしていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年08月16日


挿絵イラスト