貴方色の一皿~Best Partner
「なあ、カフェ行かへん?」
夏休みの講習後の教室、知花・飛鳥(コミュ強関西弁男子・f40233)の声に合わせて一ノ瀬・帝(素直クール眼鏡男子・f40234)の机の上に広げられたのは、よくコンビニ等に置いてある無料タウン誌。
「夏休みフェアやって! 学生証見せたら特別メニュー頼めるって」
「……へぇ」
指で示された記事を見る。確かにそのような事が書いてあって、場所もそう遠くはない。
「ずーっと気になってたんよなこのカフェ! どうせ行くなら一人より二人の方が楽しいやろ!」
「二人でシェアすれば相手の分も食べられるから、って魂胆もあるんじゃないか?」
ちらりと見上げた飛鳥の顔は、図星、と書いてあるのかと思う程に分かりやすく驚愕の色に染まっていた。
「ちょっ、俺の心の声読まんといて!」
そうじゃなくてもお前と行きたいんだって、って必死に言い募る様子に、微かに口元を緩ませる。帝としても、一番に誘ってくれているのを分かっているから。嬉しくない訳が無いのだ。
「良いよ、その代わり予約よろしく」
待ち合わせの日、家の前で待っていると。
「――ミカー!」
大きく手を振りながら、駆け寄ってくる姿。
「すまん、待ったか?」
「いや、一寸前に出てきた」
歩きながら、ふと隣を見るとふわふわと揺れる薄ピンクの髪が目立つなあ、と思う。一旦学校の前を通って商店街へ、大通りへ出れば目的のカフェはすぐ其処だ。
「……思ったより」
「んー?」
「いや、学生向けのカフェって言うからもっと映えとか狙う系の可愛い感じかと」
そやな、と打たれた相槌に頷きつつ見回した店内は、すっきりとしたインテリアで揃えられていて男二人でもおかしくなさそうな雰囲気。
「お洒落な感じやなぁ」
予約した知花ですー、と声をかけ席へと案内される。特別メニューは日替わりランチセットに加え、色を指定するとその色に合わせた特製デザートが提供されるそうで。
「俺、桃色!」
「俺は緑で」
注文後暫くして、まず届いたのは日替わりランチ。今日はミックスフライセット、カラフルなサラダと共に盛り付けられた何種類かのフライ、切れ目の入った大きなパンと。
「タルタルソース?」
「あ、好きなモン挟んでバーガー的に食べるんやって」
それなら、と肉っぽいものを選んでサラダと共に挟み、普通のソースとタルタルもかけて齧り付くと中身はメンチカツ。
「メンチどれ?」
「その丸くて分厚い奴」
一旦バーガーを置き、違うフライをフォークに刺して一口。サクッと噛み切ったそれは水気を多く含み、野菜なのは間違いないが、何だろうと齧ったそれに視線を落とす。
「何だ、これ」
「あ、俺知ってる、ズッキーニ!」
物知りだな、と褒めると照れたように笑う。その笑顔をこっそりと胸の中に焼き付けつつ、急ぎ食事を終わらせるとまた少しの間。
「にしてもなぁ」
「ん?」
こちらを見て、唇を尖らせている飛鳥に目を向けると。
「ミカさぁ、こーゆートコいると絵になるよなあ。ええなぁカッコよくて」
ライトグレーのサマーニットに黒のパンツを身に着けた自身を見下ろし、そのまま顔をあげて飛鳥のクリーム色のパーカーへと目を向けた。
「……気を使ってるからな」
お前と会うから。心の中で呟いた後半が本音。帝からすれば飛鳥の色使い等自分には似合わないだろうと思っていて、そこが眩しく映るのだから。
「無いものねだり、だな」
ピンクの髪に刺さった淡いグリーンのヘアピンを見ながらの帝の言葉に、そやなあと肩をすくめる飛鳥。
話が途切れた頃にお待たせしました、とテーブルに並べられたのはそっくり同じ二つの大振りのパフェグラス。
しかしその中身は、いくつかのベリー類が入っている以外は真っ白いクリームにチョコとバニラのアイス。わざわざオーダーで聞かれた【色】の気配は無い。
思わず二人で目を見合わせ、首を傾げるとテーブルにことりと器が置かれる。
「こちらが、パフェのソースになります」
なるほど、と思いながらかけてみるとそのソースとやらは飛鳥の瞳の色に似た紫色。朝焼けの空のような、グラスの中はとても美しいが。
「どゆこと?」
素直に疑問を口にする飛鳥と、黙って店員を見る帝。対象的な反応に店員が折りたたまれた……小さな包み紙を渡してくる。
「これを振りかけてみて下さい」
薬包紙に包まれているのは白い粉末。何が変わるのかとぱらっと落としてみると。
「わぁ!」
「――え」
粉が落ちたところから次第に色が変わっていく。飛鳥のパフェは淡い紅色から鮮やかなピンクへ、帝のは水色から青みがかった緑へ。
「ピンクのお客様にはクエン酸、緑のお客様には重曹をお渡ししました」
詳しくは言えませんがアントシアニンの変化を利用しています、と続く説明に成程と思っていると。
「なぁ、急ぎで写真! ここまだ色変わってる最中やから。あ、ミカのも並べよ!」
早く、とせかす飛鳥をパフェと共に渡されたスマホのカメラに収める。
「俺も写真撮っていいか?」
「おー、もちろんええで! ばっちり撮って色んな人に自慢したって!」
自分のスマホを構え、先程の写真とは違い一寸だけ視点を上へ。
(飛鳥の顔も映るように調整して、っと……)
笑みを浮かべ、パフェを指さす飛鳥が中心に来るように写真を撮ると、すっとスマホを仕舞った。
撮影タイムが一通り終わったところで、知っているかもしれませんが、と笑顔で続けられた説明。
「お客様お二人の選ばれた色は、補色関係にあってお互いを引き立てる効果があるんです。色のベストパートナーって感じですね」
「へぇ、俺達みたいやん」
なあ、と笑いかけられて、息が止まりそうになる。
「――そう、だな」
うまく返せていただろうか。声は震えていなかっただろうか。
(そんなの)
……言われなくてもずっと昔から分かっている。|飛鳥《桃色》の隣には、|俺《緑色》が似合うなんて。
「ミカ?」
「……あ、悪い。見惚れてた」
「珍し。溶ける前に食べようや」
綺麗やもんなあ、と何も疑問に思わぬ様子で食べ始める飛鳥を上目遣いに伺いながらスプーンを持ち、手元に戻ってきたパフェに差し入れる。たっぷりと掬い取ったのはバニラアイス、淡いクリーム色とソースの緑が重なってつやりと光る。
「何味?」
「ベリー系っぽいような……?」
甘さと爽やかさ、僅かに酸味を感じる不思議な味。なんだろうな、と思いながらもう一匙掬いあげるとアイスの中からとろりと茶色の液体があふれてきた。
「カラメル……かな?」
「こっちのもなんか入ってる!」
飛鳥が食べていたのはチョコアイスで、そちらにも違うものが隠されていたらしい。本当に特別だな、と食べる度に楽しい気持ちが膨らんでくる。バニラアイスを食べ終え、チョコアイスへ。クランチチョコが入ったザクザクとした食感で、何口か食べると出てきたのはダークチェリーのコンポート。
「これ美味しいな」
「バニラとカラメルもめっちゃ好き!」
最後の一口まで、何があるだろうと楽しいデザートは初めてだ。
「なあ、夏休み中にもう一回来れへんかな?」
違う色も食べてみたい、と目を輝かせる飛鳥。
「太るぞ」
う、と言葉に詰まる様子を見ながら、僅かに目を細め。
「俺も来てみたい。だから、プールにでも行って運動もしとかないか?」
「ミカ……!」
何時にしよう等と話しながら、帝は思う。次に来た時にも、飛鳥が選んだ色のベストパートナーを選ぼうと。
成功
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