竜霧の彼方のエトワール
峻厳な山々を越え、時に奈落へと手招く断崖を迂回して――ひとを拒むような岸壁の間から、微かに覗く細道を進んでいけば。
やがて翠の息吹がそこかしこから漂ってくる、高原の村が旅人たちを迎えるだろう。春の訪れを前に空は青く澄み渡り、村で一番の見晴らしが良い丘は、祝祭の気配を前に微風さえもさざめいていた。
――ああ、夜の帳が下りれば、闇色のヴェールに煌めく星々が村を見下ろすのだ。
この丘の上からならきっと、星屑にも手が届きそうだと――そんな噂が人づてに伝わっていき、いつしかこの村は『星空に一番近い村』と呼ばれるようになった。
そうして、春を告げる暦が近づく頃――流れ星が村の丘から見える日に、村では小さなお祭りが開かれる。その奇跡のような風景を見ようと、旅人や冒険者も訪れ賑わうのが常であったのだけれど。
――近くの渓谷から漂う霧がひどく濃くなり、雲一つない青空を瞬く間に覆い尽くす。その分厚い霧の向こうに、不吉な竜の影らしきものを見たと言う者も居た。
死の霧はやがて丘を這いあがり、星々にさえも手を伸ばすのではないか――そんな不穏な気配が村に広がっていく中で、渓谷の霧に紛れて、小さな竜の群れが迫りつつあったのだ。
「……剣と魔法と竜の世界。その高原にある村が、ドラゴンの襲撃に遭うようなのです」
ぱちりと紫の瞳を瞬きさせて、広大な自然に想いを馳せるかのように、アストリット・クロイゼルング(幻想ローレライ・f11071)は、ゆっくりとグリモアの予知を語る。
「どうやら付近の渓谷に、竜が棲み着き……深い霧を発生させて、じわじわと村を死へ追いやろうとしているのでしょう」
霧深き渓谷に居を構える彼の竜は、『霧中の暴君』の二つ名を持つ強大なオブリビオンだ。しかも、彼の存在に影響を受けて、付近の仔竜たちも狂暴化しているらしい。
「このままでは死の霧よりも先に、彼らが村を襲ってしまいますので……先んじて拠点に攻め入り、討伐をお願い、します」
一呼吸置いたアストリットが告げるには、オブリビオンの住まう渓谷は、村とは十分な距離があるので、村への影響は特に考慮せずとも大丈夫だろうと言うこと。彼らの縄張りに近づけば、先ず気配を察知した仔竜たちが襲い掛かってくるだろうから、それを迎え撃つことになるだろう。
「……そうすると、いずれは『霧中の暴君』グラドラゴも姿を見せるでしょうから。手強い敵ではありますが、どうかよろしくお願いしますね」
そう言って、微かにふわりと貌を綻ばせるアストリットは、高原の村に纏わる話を最後に付け足した。その村の丘は、星に手が届きそうな程に見晴らしが良くて、春が近づく或る日――流れ星の夜に小さなお祭りが行われるのだと言う。
「その日だけは、子供も夜更かししても大丈夫で。村人や客人が一緒になって、ダンスを踊ったりご馳走を食べたり……思い思いに、楽しい夜を過ごすのだそうですよ」
――その村の名は、誰が呼んだか『星空に一番近い村』。竜の霧を見事晴らせば、うつくしい流星群が皆を祝福してくれるだろう。
「其処はどんな風景で、どんな音楽が奏でられるのでしょう。出来たら皆さんも、楽しんで来てくださいね」
そう言って一礼したアストリットは、広大な幻想世界――アックス&ウィザーズへと、猟兵たちを誘うのだった。
柚烏
柚烏と申します。王道のファンタジー世界での冒険、心踊る竜退治は憧れです。そんな訳で、今回の舞台はアックス&ウィザーズとなります。
『星空に一番近い村』をオブリビオンの魔の手から救うべく、彼らの住処である霧深い渓谷へと赴くことになります。
フラグメントは以下の通りです。
第1章:集団戦『戯れる仔竜』
第2章:ボス戦『霧中の暴君『グラドラゴ』』
第3章:日常『星降る夜の物語』
深い霧に踊る竜。そして頭上に瞬く、手が届きそうな星々。微かな春の気配……などなど。雰囲気や情景描写も重視していけたらいいな、と思っています。是非、皆さんのキャラクターらしさを表現しつつ、心踊るファンタジー世界での冒険を繰り広げていってください。
もし、プレイング期間に関しての連絡が必要になりましたら、マスターページで告知致します。それではよろしくお願いします。
●グリモア猟兵のアストリットは、第3章の日常シーンにのみ、呼ばれれば顔を出させていただきます(呼ばれない限りは出てきません)
第1章 集団戦
『戯れる仔竜』
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POW : じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
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レイン・フォレスト
【アイビス】
仔竜が相手か……小さいのが相手ってやりにくいんだよな
精神的に良くない
まあ、オブリビオンだし遠慮はしないけど
フィリア!?
それは敵だから。犬猫じゃないから
危ないよ(困ったような表情で
【SPD】
敵も高速移動するらしいけど「先制攻撃」で【ブレイジング】を撃ち込む
なるべく傷つけたくないと言うフィリアの気持ちは分かるけど
僕はフィリアが傷つくのを見たくないから遠慮はしない
フィリアを狙う個体がいればそれを率先して攻撃
「目潰し」するのも厭わない
こんな風に戦うしかない世の中を変える為には頑張らないといけないんだ
敵の攻撃には「第六感」を効かせるように気をつけて「見切り」
「カウンター」で攻撃を返す
フィリア・セイアッド
【アイビス】
仔竜を見てぱっと表情を輝かせる
わぁ 可愛い…!
思わず手を伸ばし レインの声にはっと
あ、そうね そうよね
ごめんなさい お仕事ですものね
自分に言い聞かせるように呟いて
「WIZ」を選択
オブリビオンならともかく 影響されているだけなら仔竜はあまり傷つけたくない
できるだけ沈静化できますようと天に「祈り」を
ライアを抱え 音とともに歌を
暴れてはだめ 落ち着きましょう?
あなたたちのお家を荒らしたりしないわー
気持ちを鎮静化させ 戦闘状態を解除できるよう
正気に戻った子には攻撃しない
向かってくる敵は第六感とオーラ防御でかわしつつ レインや仲間のために雪雫の円舞曲で鼓舞
傷ついた仲間がいれば前に立ち盾に
ロー・オーヴェル
人は死して空に昇り星となる
そんな伝承も本にはあるようだが
俺はまだ空の上に行く気はない
まだまだやりたいことは山ほどあるし
それに……
「俺は誰かに仰ぎ見られるような立派な存在じゃないんでね」
●
仲間の攻撃等で傷ついた竜を優先して攻撃
一体一体確実に倒していく事を基本
各竜の負傷具合及び
攻撃対象となる竜を視界に収め遅滞なく判別できる様
自身の立ち位置に留意し戦闘
併せて敵数もある程度おり
霧で視界も悪いなら
うっかりして包囲される様な事態を避ける様立ち回る
●
死した存在は過去になり
骸の海へと逝くならば
星は星でも骸の海を照らす星となるのか
となると頭上の星は……
おっと物思いは後だ
でも煙草を一本吸うのは……後にはできないな
九尾・へとろ
おおぅ…なんとも愛らしい仔らではないか。
鳴いておるのか、泣いておるのか。
ひょひょひょ、それもまた愛いのう。
どれ、ウチの舞いで目を醒まさせてやるか。
足と手とで陽気な節をとり、仔竜共と舞いを交わそうか。
爪の一撃はちと怖いが、武舞の足捌き体捌きでかわすとしよう。
しかし愛らしいの~。
撫でてみたり、おとなしくなれば抱っこも出来るかのう。
よいよい、ウチの異能【武舞姫の彩】にて正気に戻そう。
舞い遊ぶ手足より虚空に描くは目覚めの黄緑。
仔竜らに放って大人しくさせてやろう。
なに、外れて出でるはこの舞いに似合う林の幻影。
心を落ち着けるに最適の舞台よ。
落ち着けば抱っこで撫でてやろうか。
…あ!こら!尻尾を噛むでない!
(「……人は死して空に昇り、星となる」)
そんな伝承が、何かの本で語られていただろうかと――とりとめのない思考を巡らせつつも、霧深き渓谷を往くロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)の足取りは、酷く軽やかで一分の隙も無い。
(「だが、俺はまだ、空の上に行く気はない」)
ごつごつとした岩の塊を避けた後、立ち枯れた木々の先端に、微かな芽が顔を覗かせているのを認めて――頭上を仰ぐローの視界に広がる空は、分厚い灰色の霧で覆われていた。
――自分たちの行く手を阻むどころか、渓谷に座す竜の息吹は、空に向けても魔の手を伸ばしているらしい。煌めく星々も、死者の魂さえも奪おうと言うのか、と――皮肉げな笑みを湛えたローは、成程、竜とは強欲なものであると、今度は他の伝承について想いを馳せていたのかも知れない。
(「俺にはまだまだやりたいことは山ほどあるし、それに……」)
と、其処で、不審な物音を聞きつけた彼の表情が一転し、銀灰色の直刀がその手に現れて。直後、此方に向かって飛び掛かって来た仔竜の一体を、投擲された刃が貫いていた。
「俺は誰かに仰ぎ見られるような、立派な存在じゃないんでね」
霧に乗じて襲い掛かる、戯れる仔竜の群れ――その数をざっと確認したローは、包囲されることの無いように位置取りを変える。その間にレイン・フォレスト(新月のような・f04730)が拳銃を構えると、師匠仕込みの射撃術で一気に先制攻撃を行っていった。
「仔竜が相手か……小さいのが相手って、やりにくいんだよな」
驟雨のように降り注ぐ弾丸の群れは、霧を纏い高速で移動してくる仔竜たちを狙い過たず射抜いていき――それは決して的に当て辛いから、やりにくい訳では無いことが窺える。そう、レインにとっての問題と言うのは――。
「精神的に良くない。……まあ、オブリビオンであるなら遠慮はしないけど」
第一陣の掃討を終えたレインが、そっと吐息を零す中で、彼女の背後からは「わぁ」と花綻ぶような歓声が上がる。
「可愛い……! 見て、何だか遊んで欲しそうにしているわ」
「おおぅ……なんとも愛らしい仔らではないか」
ぱぁっと表情を輝かせて、思わず竜たちに手を差し伸べようとしているのは、フィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)であり――その隣では九尾・へとろ(武舞の姫・f14870)も、しなやかな狐の尾を揺らして仔竜を抱きしめようとしていた。
「って、フィリア!? それは敵だから。犬猫じゃないから」
咄嗟に近くの友人へ待ったをかけるレインであったが、まあ彼女たちが色めき立つのも分かるのだ。敢えて男性のように振る舞っているものの、レインとて年頃の少女である――ちいさな竜が、じゃれつくように此方へやって来たりすると、つい構ってあげたくなる。
「あ、そうね、そうよね……。ごめんなさい、お仕事ですものね……」
寸前で手を止めたフィリアは、自分に言い聞かせるように何度も頷いていたが、きゅーきゅーと元気に鳴いている仔竜の魅力は如何ともしがたい。
「鳴いておるのか、泣いておるのか。ひょひょひょ、それもまた愛いのう………あ! こら! 尻尾を噛むでない!」
「危ないよ、ってあああ……」
そんな訳で、その愛らしさに負けてしまったへとろが、思わず撫でようとした矢先――やんちゃな一匹が、彼女の尻尾に噛みついてしまっていたのだった。嗚呼、大人しくなってから愛でるつもりが、仔竜の誘惑恐るべしである。
「いや、問題ない。こうなれば、ウチの舞いで目を醒まさせてやるのみじゃ」
けれど、尻尾に噛みついたままぶらぶらしている仔竜をどうにか振り払って、へとろは異能の舞を披露するべく四肢を踊らせた。足と手とで陽気な節をとりつつ、何処か妖艶に尾を揺らせば――虚空には忽ち色彩が広がり、目覚めの黄緑が仔竜に正気を取り戻させていく。
「おっと、しかし愛らしいの~」
時折、彩を掻い潜った仔竜が爪を振り下ろしてくるものの、へとろはそれも武舞の体捌きを利用して上手く躱していった。
(「そう、ね……影響されているだけなら、仔竜はあまり傷つけたくない」)
まるで仔竜と舞いを交わすかのような、へとろの姿に背中を押されて、フィリアもまた彼らを鎮静化出来るようにと祈りを捧げる。
「暴れてはだめ、落ち着きましょう? あなたたちのお家を荒らしたりしないわ――」
菫のライアを抱えたフィリアは、弦をつま弾きながら天上の歌声を辺りに響かせ――竜たちを宥めると同時に、仲間を鼓舞していった。謳うのは、小さな幸せと光に満ちた世界の素晴らしさで、傷ついたものが居れば盾にもなろうと決意をして。
(「……なるべく傷つけたくないと言う、フィリアの気持ちは分かるけど」)
――そんな彼女らの技芸により、正気を取り戻していく仔竜も出始めたが、やはり敵の数は多いようだとレインは眉根を寄せた。未だ狂暴化したままのもの達は、霧を操って此方に襲い掛かってきており、このままでは多少なりとも被害を被ってしまうだろう。
(「でも僕は、フィリアが傷つくのを見たくないから……遠慮はしない」)
歌い続けるフィリアに狙いを定めた仔竜――その視界を塞ぐべく、レインは不意打ち気味に銃弾を放つ。見ればローも、戦いで消耗していった個体を優先して、一体ずつ確実に仕留めていく戦法を取っているようだ。
「……そうだ、こんな風に戦うしかない世の中を変える為には、頑張らないといけないんだ」
――命を繋ぐために、手段など選んでいられなかった過去が脳裏を過ぎりつつも、レインは歯を食いしばって霧深き彼方を睨みつける。そんな彼女の姿に、何か思う所があったのだろうか――手早くナイフを投擲して、狂暴化した仔竜を仕留めたローも、未だ晴れぬ空を見上げて灰色の瞳を細めていた。
(「死した存在は過去になり、骸の海へと逝くならば……星は星でも、骸の海を照らす星となるのか」)
となると頭上の星は――其処まで考えを巡らせた所で、ローは束縛されぬ者の刃を振りかざし、間近に迫っていた仔竜を一刀の元に斬り捨てる。
「おっと、物思いは後だ。でも煙草を一本吸うのは……後にはできないな」
――やがて、仔竜たちの気配が辺りから消えた所で、たなびく紫煙が空へと昇っていった。
大成功
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須辿・臨
とびきりの星空、是非見たいっす!
そのためにちょいとお仕事と。
何体くらいいるかわからねぇっすけど、オレは各個撃破しか能がないんで。
その辺の小石投げ込んで、奇の一太刀で確実に一刀叩き込むのを狙うっす。
フェイントいれつつ、直接斬り込んで、蹴散らして。
必要があれば突出したりして陽動もするっすけど、なるべく孤立しないように気を付けるっす。
基本は絶えず走って相手の動きを躱す……当たっても我慢っす。
ま、窮地も愉しいんすけどね。
他の猟兵さんとも協力するっす。
ピンチの人がいたら、庇いに走るっすよ。
春の陽気は霧を晴らすものっすから。
悪いけど、元の住処にお帰り……っすよ。
アドリブ・アレンジ歓迎
糸縒・ふうた
■リル(f10762)と一緒
アドリブ・改変等歓迎
この竜も星空がきれいでひとり占めしたくなったのかな
星は、すき
普段あんまり見られないけど
優しい光で道を教えてくれるから
うん、今日は特別なの
星穹で游ぐリルはきっととってもきれい
おれはきれいよりカッコいいがいいな
霧が晴れたら一緒に食べよう
きっと、星空の元で食べるおかしは
とってもおいしいだろうから!
この仔たちはあの仔たちとは違う
倒さなくちゃいけないんだね
浮遊しててすばしっこいけど
【疾風】のスピードとジャンプ力があれば全然問題ない
攻撃は【野生の勘】と
お願い出来そうなら【福音】も使って回避する
可哀想だけど、またね
次に逢えたときは友達になってくれたら嬉しいな
リル・ルリ
■ふうた(f09635)と一緒
✼アドリブ等歓迎
「春の気配感じる星穹を游げたらどれだけ心地よいだろう。ふうたは、星は好き?」
番傘くるり、翻し微笑みかけて
じゃあ今日は夜更かしだ
星屑おちる日の夜を思えば心が躍る
僕、おやつ持ってきたんだ
空の下で食べたくて
「霧が、隠してしまうのは残念だ
だから晴らしに行こう」
星穹の下を駆けるふうたも綺麗だと思うよ?
困った仔竜
君の居るべき場所におかえり
【空中戦】で攻撃を躱し
ふうたを守れるように後衛から【歌唱】を活かして歌を歌う――春の気配に去りゆく冬を「氷楔の歌」を添えて
星零れる夜に咲かせる氷の華
雪解けの春を願い歌う
そう、次は
友達になれるといい
願いながら、心優しい友に微笑む
濃霧の中に時折過ぎる岩山は、まるで大海に隠された岩礁のよう――だとすれば、深い霧をすいと掻き分け歩を進めるリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)は、船乗りを誘うお伽噺の人魚そのものだった。
「……春の気配感じる星穹を游げたら、どれだけ心地よいだろう」
けれど春の訪れも、星満つる夜天も――今のままでは、死の竜霧が全て奪い去ってしまう。ね、と螺鈿の煌めきを生む尾鰭が霧を払うと、リルは傍らの友人にそっと問いかける。
「ふうたは、星は好き?」
「ん、星は、すき。普段あんまり見られないけど」
――それでも優しい光で道を教えてくれるから、すき。そう言って、糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)は霧の彼方の空を見上げると、深呼吸の後、此方へと向かって来る仔竜の群れに視線を移した。
「……この竜も、星空がきれいでひとり占めしたくなったのかな」
「でも、僕もふうたも星が好きだから」
くるり番傘を翻すリルが微笑み、その凪いだ湖面のような瞳に悪戯っぽい波紋が生まれ――じゃあ、今日は夜更かしだと、銀細工の歌声がしゃらりと鳴るように辺りへ響き渡る。
(「うん、今日は特別なの」)
夜更かしと言う特別な言葉にわくわくしているのか、ふうたの獣耳が帽子越しにもぴょこぴょこ動いているのが分かって、何とも愛らしい。多分、弟が居たらこんな感じだろうか――そんなことを考えつつ、須辿・臨(風見鶏・f12047)は焔奔る刀身を構え、面白そうに口元を綻ばせた。
「とびきりの星空、オレも是非見たいっす! そのためにちょいとお仕事と行きますかね」
「そう……霧が、隠してしまうのは残念だ。だから、晴らしに行こう」
そう言って頷いたリルは、臨の合図を確認して何時でも動けるように身構える。霧の中、果たして仔竜の群れは何体ほど潜んでいるのか――しかし、どれ程居ようと各個撃破を行うのみだと、臨は足元に転がっていた小石を投げ込んで、血気盛んな仔竜を誘いだした。
「さぁて、派手に喧嘩と行くっすよ!」
直後――奇の一太刀による、渾身の斬り下ろしが不用意に飛び出した仔竜を襲う。それを皮切りに次々と仔竜が襲い掛かり、忽ち辺りは乱戦へと突入していった。
「困った仔竜。君の居るべき場所におかえり」
飛来する竜の爪を、軽やかな動きで躱しながら――尾鰭を翻して宙を舞うリルは、春の気配に去りゆく冬を黄金の旋律に乗せて、高らかに歌い上げる。
(「きっと、星穹で游ぐリルはとってもきれい」)
(「……星穹の下を駆けるふうたも綺麗だと思うよ?」)
(「おれはきれいより、カッコいいがいいな」)
――歌声の切れ間に泡沫のように弾けるのは、ふうたと交わす、星空に一番近い村でのひと時のこと。その星屑おちる日の夜を思えばリルの心は躍り、火傷しそうな戦の熱も、凛と響く玲瓏な歌声が見る間に凍てつかせていった。
「そうだ、僕、おやつ持ってきたんだ。空の下で食べたくて」
そんなリルの言葉に、召喚した影狼――疾風に乗って戦場を駆けるふうたが、一瞬立ち止まって。浮遊する仔竜を、祖の力を振るって叩き落とした後、彼は八重歯を見せてにかっと微笑んだ。
「じゃあさ、霧が晴れたら一緒に食べよう。きっと、星空の元で食べるおかしは、とってもおいしいだろうから!」
あ、それは楽しそうっすねー、と年長の臨はふたりを見守りつつ、此方へ向かってくる仔竜たちを引き付け、フェイントを織り交ぜながら蹴散らしていく。
「……ここは当たっても我慢っす。ま、窮地も愉しいんすけどね」
絶えず動き、走り続けることで臨は孤立することを避け――仔竜の群れはいつしか、咲き乱れる氷華の月下美人の上に立つ、リルの氷楔の歌に囚われていた。その星零れる夜に咲かせる氷の華は、雪解けの春を願い歌声を響かせ、熱を奪われていく竜の躰を焔宴の刃が次々に両断する。
「春の陽気は霧を晴らすものっすから。悪いけど、元の住処にお帰り……っすよ」
荒っぽい喧嘩殺法とは裏腹に、臨の操る剣技は非常に洗練されたもので――何処までも真っ直ぐだった。そうして残る竜たちも、ふうたとその狼が息を合わせて仕留め、霧の渓谷に哀しげな竜の咆哮が木霊していく。
「……可哀想だけど、またね。次に逢えたときは友達になってくれたら嬉しいな」
(「そう、次は、友達になれるといい」)
――そうしていつか、星穹の下で共に遊べたら。そんなことを願いながら、リルは隣に立つ心優しい友に微笑んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浮世・綾華
【軒玉】
みんなと戦うのはハジメテだし
お手並み拝見
――特にそこの黒羽くん
生意気なだけじゃねーってとこ、みせてネ
流れ星
なんと最近そこのクソガキとみたんだよな
今回はニケちゃん達とも見られんなら嬉し
気配消しつつ最初は動きをよく観察し
仲間の補佐にまわりてえ気持ち
やっかいそーな攻撃が多いし
間合いとりつつ、流水文ノ鎖で敵を縛って
仲間の玉避けとかにできりゃいいな
螢ちゃん、ないーす
彼女が作った隙を狙って
優しい彼女たちが心を痛めて戦う様子に
出来るだけ自分が数を減らせればと
絡繰ル指で鉄屑ノ鳥籠を複製操作
斬った指から一滴垂らす紅
そして指をくるり
苦しまないように倒すのって苦手
悪い、と傷口を抉るように操る鋭い刃物の鉄屑
ニケ・セアリチオ
【軒玉】
流れ星。私、実はまだ目にした事がないのです!
皆さんは見た事あるかしら?
星降る空なんて、きっと素敵な光景ね!
それに、せっかくのお祭りですもの
村の方のお顔まで曇らせてしまわぬ様
霧を晴らしに参りましょう
愛らしい仔たちの姿には
心痛んでしまうけれど
村が襲われてしまったならば
双方、殊更に辛くなってしまうわ
ここで、彼らを止めないと
あまり、近づいてはいけないのね?
距離を取るよう気を付けながら
風の属性を纏わせた杖で
衝撃波を作り牽制します
味方の方々は頼もしく
サポートには感謝の言葉を
――ええ、ええ
私も、しっかりとしなくては!
己を鼓舞し【白鳩の舞】に集中を
花をめいっぱいに咲き誇らせて
彼らの動きを鈍らせましょう
華折・黒羽
【軒玉】
前に見た星はキレイだった。綾華さんは怪しかったけど。
言われずとも。俺は俺の出来ることをする。
――行くぞ、黒帝。
【黒帝の楔】
喚び出した黒帝と共に駆け敵陣へ
屠と隠を手に多少の傷等無用とばかりにひた走り攻撃を
回復は生命力吸収に頼り援護は任せ攻撃に集中、短期決戦狙い
一所に止まらず敵の速さに掴まらない様こちらも速さで対抗
ニケさんや螢さんの援護に合わせてカウンター攻撃も狙う
仲間内に大幅な危害が及ぶ規模の攻撃が来た場合
黒帝か俺のどちらか近い方が防御、助力へと回る
――余所見を、するな。
仔竜だとて手は抜かない…来い!
使用技能:生命力吸収、鼓舞、武器受け、野生の勘、盾受け、おびき寄せ、カウンター、気合い
如月・螢
【軒玉】
Oh...『星空に一番近い村』なんてロマンチックだね
これは流れ星が触れられると錯覚する近さなのかい?
実は私も初めてなんだ。Ah,凄く楽しみだっ!
―――だから、そぐわない予知は防がせてもらうよ
Umm,小さく愛らしい姿をしていても悪は悪、か…
敵に同情というのかな?してしまっては助けれる者も助けれない
遠慮なくいかせてもらうよ
お手並みを見せてあげれなくてすまない
私自身まだ未熟者でね、今回は裏方で
【目立たない】ようにAssamを操り【援護射撃】だ
ふふっ褒められるのは嬉しいね
あまり無茶しすぎる子がいれば
【オペラツィオン・マカブル】を使い庇おうか
なあに、大丈夫だよ…うちの子はこう見えて頼もしいんだ
竜の住処である渓谷には、深い霧が立ち込めており――周囲を白く霞ませ、身体に纏わりつくようなその濃さはまるで、ティーカップの中で混ざり合うミルクのよう。
「Oh...『星空に一番近い村』なんてロマンチックだね。流れ星が触れられると錯覚する近さ、早くこの目で確かめてみたいよ」
此処へ向かう前に、少しの間覗いてきた高原の村の様子を思い浮かべ、如月・螢(透明な心・f00180)は金の瞳を星屑のように煌めかせる。
「……流れ星。私、実はまだ目にした事がないのです! 皆さんは見た事あるかしら?」
春の訪れを告げるように、村の丘から見えるうつくしい流星たち――それと共に、ささやかなお祭りが行われると知ったニケ・セアリチオ(幸せのハト・f02710)も、未だ見ぬ世界に触れる喜びを、全身を使って表現していた。
「星降る空なんて、きっと素敵な光景ね!」
――弾む足取りに合わせて、彼女の胸元で揺れる異国の金貨は、濃霧の中でも確かな輝きを放っていて。ああ、沢山のひとに愛されてきたのだろうなと、ふっと双眸を緩める浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)は、漆黒の毛並みをもつ猫の獣人を見てにやりと笑った。
「……流れ星。なんと最近、そこのクソガキと見たんだよな」
「前に見た星はキレイだった。……綾華さんは怪しかったけど」
果たして、其処でのふたりは一体どんな様子だったのかと、思わずにはいられなかったが――華折・黒羽(掬折・f10471)は軽口を叩きつつも、油断なく周囲へと目を光らせている。
今回はニケちゃん達とも見られんなら嬉し、と綾華が呟けば、実は私も初めてなんだと螢はこくこく頷き、凄く楽しみであることを皆に伝えた。
「――だから、そぐわない予知は防がせてもらうよ」
瞬間、絡繰人形のメイドを指先で操る螢が、霧の向こうから襲撃してきた仔竜の行く手に、暗器を放って牽制を行う。と、今迄の談笑は何処へやら――直ぐに猟兵の顔を取り戻した一行は、現れた仔竜の群れを前に次々と得物を構えて向き直った。
「みんなと戦うのはハジメテだし、お手並み拝見。――特にそこの黒羽くん。生意気なだけじゃねーってとこ、みせてネ」
茶化すように声を掛けた綾華は、気配を消し後方から敵の動きをじっくりと観察していて。そんな彼を護るように前に出た黒羽は、漆黒の獅子――黒帝を喚び出すと、その背に跨り地を蹴った。
「言われずとも。俺は俺の出来ることをする。――行くぞ、黒帝」
漆黒の風が霧を引き裂くように巻き起こるや否や、果敢に敵陣に飛び込んだ黒羽の屠が唸りを上げる。多少の傷を負うことも厭わず、相手の生命力を奪う黒剣の力を借りつつ、立ち止まることをしない黒羽が狙うのは短期決戦だ。
「Umm,小さく愛らしい姿をしていても悪は悪、か……」
――一見、じゃれついているようにも見えるが、此方を狙う仔竜の爪は研ぎ澄まされており、油断は出来ないと螢は唸った。お手並み拝見と綾華は言ったが、自身は未熟であり――見せてあげられなくてすまない、と律儀に返した螢は、裏方で皆の援護に努めようと決意する。
(「……愛らしい仔たちの姿には、心が痛んでしまうけれど」)
そして一方のニケは、狂暴化して襲い掛かる仔竜たちを前に、やるせない気持ちが湧き上がっていた。もしかしたら彼らは野生の個体で、ただオブリビオンの邪気に当てられているだけかも知れないのだ。
(「でも、村が襲われてしまったならば……双方、殊更に辛くなってしまうわ。ここで、彼らを止めないと」)
――それに、せっかくの祭りの日なのだ。村のひとびとの顔まで曇らせてしまわぬ様、霧を晴らしに参りましょうと。ニケの翳す魔杖が導きの風を呼んで、衝撃波を伴った旋風が仔竜たちの動きを阻んでいった。
「やっぱ、やっかいそーな攻撃が多いかね。間合いを取った方がいいかも」
「ええ……あまり、近づいてはいけないのね?」
流水文ノ鎖を手に絡ませて、祈祷を行いつつ標的を捕縛していくのは綾華。仔竜たちは霧の力を纏い、高速で移動と攻撃を行ってくるから――そんな彼の助言に感謝を述べつつ、ニケは己を鼓舞して白鳩の舞を繰り出す。
(「――ええ、ええ。私も、しっかりとしなくては!」)
咲き誇る目一杯のペリステリア・エラタ――聖霊の花びらが辺りに降り注いで、仔竜たちの羽ばたきが鈍っていく中、出来るだけ敵の数を減らそうと綾華が動いた。
(「……苦しまないように倒すのって苦手、だけど。優しい彼女たちが心を痛めて戦うのは、どうも……ね」)
その絡繰ル指が複製していくのは、拷問具である鉄屑ノ鳥籠たち――斬った指先から紅の一滴が吸い込まれた後で、指をくるりと回せば、白き花弁がはらりと散る。
「悪い」
刹那、鳥籠から飛び出した鋭い刃が、弱体化していた仔竜の傷口を容赦なく抉っていった。動きに精彩を欠いた彼らの元へは、黒帝に騎乗した黒羽が肉薄し、すれ違いざまに刃を埋めていく。
「――余所見を、するな。仔竜だとて手は抜かない……来い!」
――そう、敵に同情してしまっては、助けられる者も助けられない。遠慮なく行こうと決めた螢は、仔竜の注意を一手に引き受けている黒羽を庇おうと、力を抜いて依代たる絡繰人形で霧のブレスを受け止めた。
「なあに、大丈夫だよ……うちの子は、こう見えて頼もしいんだ」
完全に無力化された一撃が排出されるや否や、黒羽と綾華が残る仔竜を次々に仕留めていって。「螢ちゃん、ないーす」とサムズアップをする綾華へ、螢は人形の手を振ることで応える。
「……ふふっ、褒められるのは嬉しいね」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎
暴君の荒魂に中てられた仔竜達
元々純粋故に
善にも悪にも影響を受けやすいのかもしれない
然れど
暴れん坊は祭り会場に入れず
門前で摘まみ出されるのが常の事ですよ
群れと遭遇したら
口調も所作も普段と変わらず穏やかなまま
困った悪戯っ子を見つけたみたいに眉尻を下げて
村側を背に布陣
皆と声を掛け合い死角を補う
第六感で見切り
残像で戯れ返す回避
オーラで自他防御
ゆったりと掲げる符
反して
紡ぐ真言は疾く駆けるが如く
先制攻撃、高速詠唱、範囲攻撃、二回攻撃にて
満天の星屑が辺りに煌くような
ミモザの花筐を仔竜達へ贈る
招かれざる客…暴君さえ現れなければ
耳を澄ませられた筈の星の子守歌代わり
星めく花に抱かれてお休みなさい
アルバ・ファルチェ
《POW》
他の人との絡みやアドリブ歓迎
じゃれつく仔竜、可愛いけど同じドラゴンならコルノの方が可愛いから!
もふもふでわふわふで魅力たっぷりなんだよ!!
と自慢…もとい、【誘惑】【挑発】【おびき寄せ】で僕が囮になれたらいいな。
囮としておびき寄せに成功したら、囲まれて背後を取られないよう【戦闘知識】で相手の動きを読んで、【地形の利用】も駆使して位置取る。
それから【盾/武器受け】【見切り】【オーラ防御】【激痛耐性】なんかで防御役を務めるよ。
仲間がいれば基本的に攻撃は任せて防御に専念、1人なら【カウンター】からの【鎧砕き】【武器落とし】【鎧無視攻撃】を放つよ。
コルノは【援護射撃】、頑張ってもらおうかな。
ボリス・ルーシア
高原で発生する自然の霧の景色は、それはそれで綺麗だと思うの
でも、霧の出処がオブリビオンなら、しっかりと退治しておかなくちゃ、ね
村の名前でもある星空は、ぜひ見ておきたいもの
霧が濃くなっている、って情報通り、少し視界不良かな
[視力]でしっかり目を凝らして、仔竜たちの気配を探って
不意打ちされないように気をつけないと、ね
仔竜と遭遇したら【クイックドロウ】で攻撃
襲われる前に[早業]で、複数いるなら[範囲攻撃]で散らしていくよ
流れ星が見られるような、星空が綺麗な場所なんだから
不自然なことで邪魔をするのはダーメ、だよ
*アドリブや絡みも大歓迎です
(「高原で発生する自然の霧の景色は、それはそれで綺麗だと思うけれど」)
例えば――霊峰を薄っすらと覆う、神秘のヴェールのように。或いは、萌える翠の中で揺蕩う天上の雲のように。きっと世界にはそうした、未だ目にすることのない不思議な光景が沢山眠っているのだろうと、ボリス・ルーシア(瑠璃夜天・f09721)は思う。
「……でも、霧の出処がオブリビオンなら、しっかりと退治しておかなくちゃ、ね」
それが彼女の愛する空を覆い尽くし、ひとびとや自然に害を為すのであれば、尚のこと。村の名前でもある星空は、ぜひ見ておきたいもの――そう言って、くすくすと微笑むボリスは、荒っぽい冒険者の世界に身を置いているとは思えぬほど穏やかだ。
「うーん、霧が濃くなっている……って情報通り、少し視界不良かな」
――渓谷を下り、元凶が棲むと思しき場所へと近づいていくボリス達だが、進むにつれて霧は益々酷くなっていく。目を凝らしてどうにか気配を探れないかと思うものの、霧の向こうには岩山もちらちらと顔を覗かせており、中々判断が難しかった。
(「……これは、不意打ちされないように気をつけないと」)
気が付いたら敵に囲まれていた、なんてことになったら大変である。しかし、どうしたものかとボリスが考えを巡らせている所で、ふふんと胸を張ったのはアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)だった。
「じゃあここは、僕の出番だね。囮になっておびき寄せてみるよ!」
まるで背後できらきらと光の欠片が舞うように、アルバは優雅に銀の髪を掻き上げて、うっとりするような笑みを浮かべる。俗に言うチャラ男な雰囲気に相応しく、息をするように口説き文句を吐き出す彼であるが――頑張って下さいね、と都槻・綾(夜宵の森・f01786)は書物片手にエールを送り、きっと仔竜を口説いてくれるのでしょうと頷いていた。
「うーん、ナンパをしようとしているわけじゃないと思うんだけど、ね?」
ちょっぴり感覚のずれた綾にボリスが苦笑するものの、長き時を経てヤドリガミとなったが故か――浮世離れした美貌を持つ綾は、淡い笑みを湛えたままふっと、霧の彼方へ溶けていくかのようで。しかし、そんな神秘的な光景は、アルバの発した大声によって、瞬く間に掻き消えていった。
「じゃれつく仔竜、可愛いけど同じドラゴンならコルノの方が可愛いから! もふもふでわふわふで魅力たっぷりなんだよ!!」
――竜騎士の槍に変じる、見た目が犬っぽいドラゴンのコルノを抱きしめながら叫ぶアルバに、あちこちから殺気立った仔竜たちが群がっていく。もふもふなコルノに嫉妬したかどうかは定かではないが、当初の目的を果たしたアルバはそのまま、背後を取られぬよう位置取りを行いつつ仲間を護る盾となった。
「暴君の荒魂に中てられた仔竜達……元々純粋故に、善にも悪にも影響を受けやすいのかもしれない」
然れど――詩を吟じるように言の葉を摘み取っていく綾は、まるで困った悪戯っ子を見つけたみたいに眉尻を下げつつも、きっぱりと告げる。
「暴れん坊は祭り会場に入れず、門前で摘まみ出されるのが常の事ですよ」
この先へは行かせないと言うように、村を背に立つ綾に頷いて、素早く死角を補ったボリスがブラスターの引き金を引いた。
「さて、先手必勝……纏めて潰してやるよ」
――と、戦闘が始まった途端にがらりと口調も変わっていたりするのだが、マイペースな綾とアルバはそのまま受け入れたらしい。飛来する仔竜の爪を白銀の盾で受けたアルバは、防具越しに受けた衝撃に耐えつつもコルノに援護を頼む。
「ここは盾の騎士の血にかけて、護ってみせるよ」
そんな彼が仔竜の群れを引き受けている間、綾はゆったりと符を掲げて詠唱を開始していた。その優雅な所作に反して、紡ぐ真言は疾く駆けるが如く――降り注ぐ四季謳う彩りの花びらは、満天の星屑が辺りに煌くようなミモザの花筐だ。
「招かれざる客……暴君さえ現れなければ」
囁きと同時、憂いを帯びた青磁色の双眸が細められるも、綾は尚も仔竜たちへ花を贈る。それはきっと――耳を澄ませられた筈の、星の子守歌代わりの贈り物。
「……星めく花に抱かれてお休みなさい」
轟、と一際強い風が渓谷に吹き荒れる中で、次々に力を失った仔竜が地に伏していき――尚も攻めかかっていたものも、アルバの反撃を受けて力尽きていった。
「あの村は流れ星が見られるような、星空が綺麗な場所なんだから。……不自然なことで邪魔をするのはダーメ、だよ」
そして――ボリスの放った熱線が、残る仔竜の翼を撃ち抜くと、霧深き渓谷は再び静寂を取り戻したのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
……星空が美しい村を、滅ぼすわけにはいけないわ。
安心して星々が見守って居られるよう、まずは仔竜たちから蹴散らしてしまわないと。
仔竜の群れ、ね。幼いとはいえドラゴンだもの、油断は決して出来ない。
後からのグラドラゴを考えて、――合理的にいきましょう。
【悪徳教授の名誉助手】で【ワトソン】に拘束させつつ、【ロックブレイク】でなぎ払っていくわ。
素早く移動して多くを倒していくために【ロープワーク】も駆使するわ。
【ワトソン】をワイヤーのように伸ばして移動する。
特に暴走がちな能力から回避するのに活用しましょう。
私にも娘の竜がいるけれど、悪いわね
オブリビオンであるならば――世界の敵であり、私の敵だわ!
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
この世界の竜は、私の蛇竜のように大人しくしていてはくれないのよなァ。
親玉はともかくとして、仔竜どもはとばっちり――といったところか?
竜言語がこいつらに伝われば良かったのだが……。
ま、言ったところで詮無いか。
星見の祝祭を守るためだ、大人しく餌食になってくれ。
【挑発】でうまいことこちらに引きつけよう。
23m半径に寄ってきたらこちらのものだ。
【呪詛】を使って呼び起こした【嘆きの爪】の蛇で、仔竜を一掃するぞ。
こいつらならば制御は出来る。
人は襲わないから、同胞も気にするな!
氷の蛇どもの間を抜けて、竜が近づいてくるようならば、槍で【串刺し】にしてやろう。
たとえ同族といえども、私は容赦はせんぞ!
クレム・クラウベル
立ち込める霧もただの春霞であれば良かったが
……そう穏やかに済まないのが常か
迫るそれが憂いの霧ならば払うのみ
手始めに牽制目的でクイックドロウによる先制攻撃
数は多いと言えど仔竜の群れ
それで怯むなら狙えるものから一体ずつ撃ち落とそう
有効なら殺気で威圧し反撃抑制等も
数が減ってきたら敢えて接近
飛び回る少数を狙うのもこの霧では少々やりにくい
射程へ踏み込みナイフで一閃
急所を刺し貫くか、翼を狙い切り落とす
爪の一撃は無用に当たりたくない威力
狙われる前に距離取り躱そう
或いは霧を味方につけるも一興か
祈りの火を光源として付近に放ち霧で拡散させ
揺らめく影で惑わす
成る程、身を隠すには悪くない
厄介なのはお互い様ということだ
セリオス・アリス
アドリブ歓迎
せっかくの祭りを邪魔しようなんざずいぶんと無粋な竜だ
ああ、オブリビオンに粋もくそもねえか
夜が来て祭りが始まる前に
さっさと終わりにしようぜ
【青星の盟約】を歌い攻撃力を強化
数が多いなら少ない手数で確実に仕留めて行こう
靴に風の魔力を送り『ダッシュ』で『先制攻撃』だ
『ジャンプ』したその勢いに回転を加え地面に叩きつけるようにまず1回
そのまま勢いを殺さず片手で剣を大きく回してもう1回の『2回攻撃』
敵が倒れたらすぐ次の獲物へ
踊るように、戯れるように
攻撃を『見切って』回避しつつ
距離をとって
翼を狙い機動力をそぐように
『力を溜め』斬撃による『衝撃波』を食らわせる
さあ、次に遊んでもらいたいのはどいつだ?
――立ち込める霧も、ただの春霞であれば良かったが。嘆息するクレム・クラウベル(paidir・f03413)の瞳に映るのは、白く深い霧に包まれた色褪せた世界。微かに見えるのはごつごつした岩山と、竜霧によって立ち枯れた木々であり――その姿はまるで、死者が赴く冥府の光景を思い起こさせた。
「……しかし、そう穏やかに済まないのが常か」
生者の気配を察したか、霧に乗じて姿を現した仔竜の群れを認めたクレムが銃を構えると――待っていましたとばかりにセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)も、凄艶な美貌を喜悦に染めて、蒼き炎をその瞳に宿す。
「全く、せっかくの祭りを邪魔しようなんざずいぶんと無粋な竜だ。……ああ、オブリビオンに粋もくそもねえか」
――根源の魔力が彼の身体に満ち、輝ける星の煌めきがセリオスに宿って。青星の盟約を交わした黒鳥が力強く羽ばたいていく中、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は暴虐の衝動に囚われること無く、冷静にこれからの戦いについて考えを巡らせていた。
「……仔竜の群れ、ね。幼いとはいえドラゴンだもの、油断は決して出来ない」
「あァ……この世界の竜は、私の蛇竜のように大人しくしていてはくれないのよなァ」
黒き蛇竜をその傍らに従えた、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)が鷹揚に肩を竦め、牙を剥き出しにして威嚇する仔竜を睨みつける。彼らに竜言語が伝われば良かったものの――まあ、言ったところで詮無きことか、とニルズヘッグは直ぐに思考を切り替え、目の前の脅威へと集中した。
「親玉はともかくとして、仔竜どもはとばっちり――といったところか?」
「ええ、恐らくは。だとすれば、後からのグラドラゴを考えて、――合理的にいきましょう」
すっ、と額に指先を当てて瞑目するヘンリエッタは、直後――『悪徳教授の名誉助手』たるワトソン、おぞましき触手のUDCを召喚する。
「――忠実なる、私の助手よ!!」
突如として足元から襲い掛かる触手に、忽ち拘束されていく仔竜たち。そんな彼ら目掛けて、ヘンリエッタの黒剣が唸りを上げて振り下ろされ――数匹を纏めて薙ぎ払った所で、クレムの魔弾が追い打ちをかけた。
「迫る――それが憂いの霧ならば、払うのみ」
霧の属性を帯びた仔竜は数が多く厄介であるが、悪しきものを祓う銀の一露は、霧の中でも輝きを失いはしない。けれどクレムの牽制で、怯まずに向かってきたものは果たして、勇敢であったのか無謀であったのか――その判断は、ニルズヘッグによって為されることとなった。
「……星見の祝祭を守るためだ、大人しく餌食になってくれ」
霧よりもなお凝る呪詛が、融けない氷で出来た無数の蛇を生み出し、嘆きの爪が辺りに吹き荒れる。こいつらならば、制御は出来る――人は襲わないから、同胞も気にするなと。叫ぶニルズヘッグの元へ、今度は氷蛇の呪縛を掻い潜った仔竜たちが牙を剥いた。
「ああ。夜が来て祭りが始まる前に、さっさと終わりにしようぜ」
しかし――風の魔力を纏う靴で加速したセリオスが、其処で一息に跳躍すると、純白の剣を振るい先ず一体を地に叩きつける。そのまま勢いを殺さず、片手で剣を大きく回して更に一体。地面に降り立った後も、彼は踊るように――或いは戯れるように、次の獲物を目指してすぐに動き始めていた。
「……星空が美しい村を、滅ぼすわけにはいけないわ」
霧を纏い、高速で移動する仔竜に対抗するべく、ワトソンの触手をロープのように操り、自在に宙を駆けるのはヘンリエッタ。
安心して星々が見守って居られるようにと、脅威を蹴散らすべく刃が翻り――直後、遠心力を利用して彼女が戦場を離脱した所で、荒れ狂うニルズヘッグの氷蛇が仔竜を纏めて食らい尽くしていった。
「たとえ同族といえども、私は容赦はせんぞ!」
「……しかし、この霧では少々やりにくくなってきたな」
或る程度数が減ってくれば、狙いをつけるのが難しくなるのは仕方のないことだが――急降下を掛けてきた仔竜を、ナイフを一閃することで迎撃したクレムは、或いは霧を味方につけてみるかと思い付き、祈りの灯を生み出す。
「……成る程、身を隠すには悪くない。厄介なのはお互い様ということだ」
光源として放たれた浄化の炎は、霧によって輝きを拡散させながら揺らめいて。照らされた影は亡霊のようにゆらゆらと、仔竜を惑わすように踊り出していった。
「私にも娘の竜がいるけれど、悪いわね。オブリビオンであるならば――世界の敵であり、私の敵だわ!」
そうして恐慌をきたした竜たちを、ヘンリエッタやニルズヘッグが一体ずつ確実に仕留めていき、最後に力を溜めていたセリオスが、渾身の衝撃波を辺りに放つ。
「……さあ、次に遊んでもらいたいのはどいつだ?」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
雨糸・咲
命が目覚め、芽吹く春に
死の霧は不似合いでしょう
無邪気な小さい竜たち
暴君の存在が無ければ、村との共存も可能なのかしら?
そうであれば、無闇に命を奪うのは気が咎めてしまいます
攻撃は第六感と聞き耳で回避を
錬成するのは私の依り代、山葡萄で編んだ籠
さぁ、こちらへいらっしゃいな
鬼ごっこですよ
戯れるように宙を舞わせ
フェイントを交えて当て身
グラドラゴを斃せば解放されるものならば
しばらくの間眠ってもらうだけで済ませてあげたい
冷たく迫る霧を払って
煌めく空を取り戻したら
あなたたちにも祝福の星が降りますように
※アドリブ・他の方との連携、絡み歓迎です
秋遊・空桜
流れ星って、宇宙にいると当たり前に目にするものやけど…自然の大地から眺めるって、どんな気持ちになるんやろなあ
想像やけど、きっとすごくあったかい時間なんやろね
だからうちにできることがあるなら、みんなのそのあったか時間を守りたい思うんよ
属性と自然現象の合わせ技…
うちも似たようなことできるから、なんか他人と思えへんわ
だから…そういう危ない技は、キャンセルさせてもらうな
【ちょこっとお味見】であんたの邪気、食べさせてもらうわ
うちの箸はなんでも吸い取れるんよ
相手がどんな属性持ちかもこれで確かめよ
そして万華散鏡・桜から苦手属性付きの【属性攻撃】や
みんなが星を見られるように…ブルースターの花びらに願いを込めて
流れ星と言うものは、宇宙にいると当たり前に目にするものだと、生まれも育ちも宇宙船の秋遊・空桜(そらびじょん・f10801)は、果てなき空を見上げて思うけれど。
「……自然の大地から眺めるって、どんな気持ちになるんやろなあ」
ぽつり零した彼女の言葉に、雨糸・咲(希旻・f01982)はどう応えて良いものやらと、暫し逡巡し――やがてせり上がってきた言葉を、そっと呑み込むに留めた。
(「きっと、私の気持ちは……とても哀しいものだから」)
――例え星空に一番近くても、その手は星を掴めない。触れたいと言う切実な願いは叶わず、募る想いは行き場を失ってしまうだけ。
「うーん、想像やけど、きっとすごくあったかい時間なんやろね。……だからうちにできることがあるなら、みんなのそのあったか時間を守りたい思うんよ」
しかし、空桜はそう言ってふわっと咲に笑いかけ、瑠璃色の瞳を瞬きさせた。だから――咲は静かに頷くと、群青の髪を霧に遊ばせつつ、空桜を護るように一歩前に出る。
「……ええ。ならば命が目覚め、芽吹く春に、死の霧は不似合いでしょう」
――ふたりの前に現れた仔竜たちは、無邪気な様子を滲ませつつも、鋭い爪を振りかざして今にも襲い掛かってきそうだ。もし暴君の存在が無ければ、村との共存も可能なのであれば――無闇に命を奪うのは、気が咎めると言うもの。
「ならば――さぁ、こちらへいらっしゃいな。鬼ごっこですよ」
そう言ってヤドリガミたる咲は、自身の依り代――山葡萄で編んだ籠を錬成し、戯れるように宙を舞わせる。そして彼女は、まるで玩具を見つけたように目を輝かせて、籠を追いかける仔竜たちへ、次々に当て身を食らわせ昏倒させていったのだった。
(「もし、グラドラゴを斃せば解放されるものなら……しばらくの間眠ってもらうだけで済ませてあげたいから」)
一方で可能性を具現化し、霧の竜巻を発動させてきた仔竜も居た。属性と自然現象の合わせ技と言えば、空桜も似たようなことが出来る。なんか他人と思えへんわ――そう苦笑しつつも、彼女はその厄介な現象に対処するべく和風の調理器具一式を取り出した。
「だから……そういう危ない技は、キャンセルさせてもらうな」
邪気を吸収出来る漆塗りの箸を握りしめ、空桜は霧の竜巻をぱくりと味見する。何だかその姿は、霞を食べる仙人のようでふふりと笑い、彼女はお返しとばかりに万華散鏡の銃を放つ。
「さ、風の力を込めた魔弾でいくよ」
みんなが星を見られるように――ブルースターの花びらに願いを込め、きらきら輝く空桜の粒子が霧を払っていって。一方で咲も氷の精霊に力を貸して貰い、戯れる仔竜たちを徐々に無力化していった。
(「冷たく迫る霧を払って、煌めく空を取り戻したら」)
――どうかあなたたちにも、祝福の星が降りますように。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
イア・エエングラ
温い風は冬の終わりの、澄んだ空気は遠き、春の
季節の境は、どこか気のそぞろな気が、するかしら
お邪魔、するよう
やあ、怒ったねぇ
踏み込むのはお前たちの領域へ
気が立っているかしら、入った僕らも、悪いけど
――そんなに、心乱されるのではかわいそうね
すこし、頭を冷やしてらして
ゆるりとのべた掌を、くるり翻して招くのは青い、火を
気が落ち着くまで、じっとしててもらうだけで、良いの
こっから先へ来ては駄目と、よくよく覚えていらしてね
招いて熾すのは滄喪の火を
翼をこおらせ落としましょう
燃え移る火は消しましょうな
おやすみ、きっとまだ、ここは
お前のゆける空ではないから
はて、こんだけ賑やかならば
奥にいらっしゃるのも覚めたかな
海月・びいどろ
仔竜たちは、どのお仕事で見る子も元気、だね
…でも、あんまりいたずらしちゃ、ダメだよ
爪も牙も、あぶないもの
キミたちには、ボクと、ボクのともだちと
遊んでもらおう、かな
硝子海月のジェリーを喚び出して
ゆらゆら、ふわふわ、攻撃を避けるよ
踊っているみたいで、かわいい、けれど
ちいさくても、竜はつよいから
油断をしないようにして
長い手足で、仔竜をぎゅっとしたら
痛くないようにマヒの針を刺しておこうね
他の猟兵のヒトたちも、戦いやすくなると、いいな
この霧を晴らしに行かないと、いけないから
ポコン、と硝子の手でキミたちに、おやすみを
星の向こうで、またね
冬の終わりの澄んだ空気は遠いて、時折肌を撫でるのは温い風。春の季節の境は、どこか気のそぞろな感じがするかしら――謳うイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)は、確かな足取りで渓谷を進んでいく。
――悪い竜が巣食う谷に立ち込める霧は、春の訪れを拒むかのように、冷ややかな空気を纏っていたけれど。蒼褪めた星が尾を曳く、夜の裾を靡かせて――イアは空の星を取り戻す先触れになろうと、うっとり微笑んでいた。
「お邪魔、するよう。……やあ、怒ったねぇ」
そんな彼の前に、殺気立つ仔竜たちが次々に姿を見せるも、動じることはなく。気が立っているのは、お前たちの領域へ踏み込んでしまったからだろうかと、イアはその感情をただ黙って受け止める。
「入った僕らも、悪いけど――そんなに、心乱されるのではかわいそうね」
「仔竜たちは、どのお仕事で見る子も元気、だね。……でも、あんまりいたずらしちゃ、ダメだよ」
ふわふわと海の底を漂うように、海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)も深い霧を掻き分け、そっと顔を覗かせて。その爪も牙も、あぶないもの――と、じゃれつく様子の竜たちへ向けて、硝子海月のジェリーをけしかけた。
「だから……キミたちには、ボクと、ボクのともだちと遊んでもらおう、かな」
――ゆらゆら、ふわふわ。加速して襲い掛かる仔竜たちの爪を、桃色の海月とびいどろは、霧の中を泳ぐようにして躱していく。
「すこし、頭を冷やしてらして」
そんな彼らが攻撃を引き付けてくれている中で、イアはゆるりとのべた掌を、くるり翻して――碧く揺らぐ火を纏い、たんと乾いた大地を蹴った。
「気が落ち着くまで、じっとしててもらうだけで、良いの。……こっから先へ来ては駄目と、よくよく覚えていらしてね」
招いて熾すのは、触れれば凍てつく滄喪の火。力強く羽ばたく竜の翼をこおらせて落とし、燃え移る火は消してしまって。イアが仔竜をたちどころにいなしていく中で、びいどろもまた油断はせず――踊るように海月たちを操って、敵味方が入り乱れる戦場を制していく。
(「踊っているみたいで、かわいい、けれど。ちいさくても、竜はつよいから」)
霧の吐息に触れないようにして、背後から忍び寄った硝子海月が長い足でぎゅっと仔竜を拘束し、麻痺の針で動きを封じていった後。イアの凍てる炎がいのちを凍らせ、終わることのない冬の世界へと誘っていった。
「おやすみ、きっとまだ、ここは、お前のゆける空ではないから」
「……ボク達は、この霧を晴らしに行かないと、いけないから」
ぽこん、と硝子の手が仔竜におやすみを告げて、ふたりは氷華咲く谷を、更に奥へと向かって行く。星の向こうで、またね――静寂に満ちた渓谷に、びいどろの声が吸い込まれていった刹那、彼方から響いて来た咆哮を耳にしてイアは藍色の瞳を瞬かせた。
「はて、こんだけ賑やかならば、奥にいらっしゃるのも覚めたかな」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
三嶋・友
わお!
竜退治なんてさっすがA&W!
流星群も楽しみだし、此処は頑張ってドラゴンスレイヤーの勇者様でも目指してみようか!
仔竜で見た目可愛いから微妙にやり難いけど、その力は十分脅威だもんね
油断はせずに、他の猟兵とも連携していくよ!
晶花に風の魔力を込めて戦う
自由に飛び回られたら厄介だし、風の刃を召喚して翼を狙い、飛行の阻害を試みる
相手の戦い方は常に観察、大技の気配を感じたら特に注意し発動の瞬間を見極められるように
見極められたらその瞬間を狙って風の刃を出現させて、タイミングを狂わせてみよう
うまくいけば暴走して自滅してくれるかも
無理な場合は晶花に対抗できそうな属性の魔力を込めて防御に徹する事で凌いでみるよ
「わお! 竜退治なんてさっすが!」
其処は、剣と魔法と竜の世界――アックス&ウィザーズ。広大な大地を冒険する感覚は、三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)が慣れ親しんだゲームの世界そのものだ。
「流星群も楽しみだし、此処は頑張ってドラゴンスレイヤーの勇者様でも目指してみようか!」
霧深き渓谷を見据えて極光の剣を一振りすれば、早速友の前に仔竜たちが群がって来る。
(「仔竜で、見た目可愛いから微妙にやり難いけど……その力は十分脅威だもんね」)
――油断はしないよう肝に銘じつつ、晶花の刀身に纏うのは風の魔力。霧を帯びて自在に空を舞う仔竜の元へ、先ず友は挨拶代わりの風刃を飛ばした。
「――地を駆け巡る風の精霊。寄りて集いて無数の刃となれ!」
萌える翠を思わせる、鮮やかな色彩へと変じた水晶の刃が、次々に魔法の刃を生み出して――翼を撃ち抜かれた仔竜が一体、また一体と自慢の機動力を削がれて地に伏していく。
(「……来る、ッ!」)
と、其処で、相手の行動を窺っていた友の瞳が僅かに細められた。大技の気配が来るとの予感は的中したらしく、地面に倒れていた筈の竜が、霧の竜巻を発動させ此方に狙いを定めている――!
「暴走しかけてる……? けど!」
荒れ狂う竜巻が放たれるその瞬間を狙い、友の生んだ風の刃が雨となって降り注ぐ。結果、発動の機を狂わされた竜巻は暴走し――自らの起こした現象に巻き込まれる形で、仔竜たちは次々に自滅していった。
「これで大分、付近の仔竜は退治出来た? なら、そろそろ来るかな……『霧中の暴君』が」
そんな友の呟きに応えるように霧の渓谷が震え、恐るべき咆哮と共に力強い羽ばたきが、曇天に木霊していく――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『霧中の暴君『グラドラゴ』』
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POW : 死の竜霧
自身に【触れるだけで出血毒と麻痺毒に犯される霧】をまとい、高速移動と【毒霧と身体が裂けるような咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : ミストリフレクト
【相手の姿をしている霧製】の霊を召喚する。これは【霧の中で強化され、真似た相手の武器】や【同じユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 霧中に潜むもの
戦闘用の、自身と同じ強さの【霧で作られた自身と同じ姿の無数の竜】と【霧に隠れた本体を守る巨竜】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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――立ち込める深い霧の中をゆっくりと、翼を広げた巨竜の影が過ぎっていく。其は霧を制す竜。渓谷に漂う死の霧も、彼が生み出したもの。
竜が纏う霧は、触れるだけで毒に犯されるものであり。時にその霧は此方の姿を模倣し、鏡映しの亡霊となって襲いかかり――或いは、霧に潜む本体を覆い隠すように、無数の霧竜を生み出すだろう。
――彼のものの名は『霧中の暴君』グラドラゴ。時に『姿無き竜』、『死の竜霧』とも語られる、強大なオブリビオンである。
このままでは、竜霧は晴れること無く空を覆い尽くし、やがて星々にさえも手を伸ばすだろう。故に『星空に一番近い村』の丘の上、春の訪れとともに降り注ぐ流星をも奪い去ろうとする、強欲な暴竜を止める為――猟兵たちは竜を狩る。
深い霧の彼方に輝く一番星は、きっとすぐそこに在るから。叶うのならばどうか、彼らを導いて。過去の残骸を沈める、標となるように――。
セリオス・アリス
アドリブ歓迎
ようやく本命のおでましか
遊ぶっつーにはなかなかでかい図体だが
いいぜかかってこいよ
『ダッシュ』で駆け靴に風の魔力を送り『跳び上がり』
まずは風の『属性攻撃』を込めた『2回攻撃』
流石に好んで毒に犯されるほど酔狂じゃねえんでな!
自身にも風を纏わせ
攻撃を『見切り』なるべく触れないようにヒット&アウェイで戦う
それでも物理じゃねえのは避けづれえっつーか
ああくそ、うるせえなァ!
もし毒を食らっても意地で踏ん張って
ちんたらしてちゃこっちが不利だな…
『捨て身の』つもりで距離をつめでっかいのかましてやる
『力を溜め』『全力』で魔力と闘気を込め【蒼ノ星鳥】を放つ
さあこれで終わりにしようぜ!
三嶋・友
いよいよボスの登場だね
毒の霧とか厄介極まりないけど!
流星降り注ぐ美しい夜空まで奪おうなんて、ちょっと無粋が過ぎるんじゃない?
この後に待つ楽しいお祭りの為にも、皆の星空、取り返させてもらうから!
剣で突っ込みたい所だけど、まずは出来る限り触れないようにした方が良いかな
攻撃の魔力を込めた複数の宝石を核に氷属性の魔法を広範囲に放つよ
「1、2、3(エン、トゥヴォー、トレー)…蒼氷(ブロー・イース)!!霧よ、凍りつけッ!」
少しでも相手の動きを鈍らせる事が出来たら、詠唱しながら一気に距離を詰める
多少の毒も痛みも耐えてみせるッ!
至近距離まで近づいたら全力の激光雷斬を
毒の竜と光の竜…どちらが勝つか、勝負だよ!
須辿・臨
さぁて、霧の元凶っすね。
如何にも強そうな相手っすけど。ちょっとワクワクするっすね。
――負けないっすよ。
こっちは刀一本なんで、まずは間合いに入るために突っ込むっす。
巧くいくなら相手の背中とか踏みつけて上をとったり、鬱陶しい感じに立ち回るっす。
顔とか斬りつけて、色々邪魔できたら。
瘴気はひたすら我慢するしかないんですけど。
気休めっすけど、マフラーとかで口元隠すとかして。
その代わり、逆境の一太刀で今まで喰らった分のお返しをするっすよ。
こいつは、剣の間合いの外でも当たるっすから――油断大敵っすよ。
なんつーか、アイツ倒れて霧ががーって晴れた瞬間。
どんな空が見えるのか、楽しみなんすよね。
アドリブ歓迎。
彼の竜は霧に溶け、霧を従え、霧を生み出すもの――荒涼とした渓谷に満ちる濃霧の中にあって、その輪郭を捉えるのは困難だ。
不気味な咆哮と亡霊じみた影が、対峙するもの達の恐怖を煽っていくが――彼らは未知の存在に臆するどころか、『霧中の暴君』の二つ名を持つ竜と死合うことに、喜びすら見出していたのだった。
「……ようやく本命のおでましか」
凝る白の世界でも進むべき道を見失わず、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は漆黒の髪を掻き上げると、鳥が羽ばたくように黒衣を揺らす。
「さぁて、こいつが霧の元凶っすね。如何にも強そうな相手っすけど。ちょっとワクワクするっす」
一方で、須辿・臨(風見鶏・f12047)の佇まいはまるで、捉えることの叶わぬ風か――或いは気ままに流れる雲を思わせた。しかし、空とは移ろい易いもの。一転して嵐が訪れる気配を孕み、羅刹の青年はにやりと口角を上げる。
「うんうん、いよいよボスの登場だね。……毒の霧とか厄介極まりないけど!」
それでも、やはりダンジョンの奥に居るのが、巨大な竜と言うのは燃えるのだと、三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)は紅水晶の剣を構えて頷いた。
――そう。友の言葉通り、霧中の暴君『グラドラゴ』が纏うのは、触れるだけで毒に犯されてしまう死の竜霧。しかし、間合いに入る為には一気に突っ込むしかないと、臨はある程度の被害を覚悟して身構える。
(「こっちは刀一本で立ち向かうっすが――負けないっすよ」)
しかし、其処で友が待ったをかけた。まずは出来る限り触れないようにした方が良いと、彼女が取り出したのは魔力をこめた宝石であり――それを核に氷の魔法を紡ぐや否や、此方へ向かって迫りくる竜霧目掛けて、勢いよく弾き出す。
「1、2、3(エン、トゥヴォー、トレー)……蒼氷(ブロー・イース)!! 霧よ、凍りつけッ!」
直後、広範囲に発動した友の氷術が、瞬く間に霧の勢いを削いでいくが――やはり、完全に封殺するとはいかない。しかし、相手の動きを鈍らせ、突入の際の衝撃を和らげるには充分だ。
「遊ぶっつーには、なかなかでかい図体だが……此方から行かせて貰うぞ」
靴音も高らかに、風の魔力の恩恵を受けたセリオスが一気に距離を詰め、霧中に潜む竜の頭上目掛けて跳躍した。更に纏う霧を吹き飛ばそうと、星の瞬きを宿す剣が唸りを上げて風を呼ぶ。
「流石に好んで毒に犯されるほど酔狂じゃねえんでな!」
そうして立て続けに斬りつけた後、直ぐに距離を取ろうとしたセリオスであったが――グラドラゴの動きは、思っていたよりも素早かった。厄介なことに死の竜霧は高速移動も可能とし、毒霧と咆哮での追撃も行ってくるのだ。
「って、これは避けづれえっつーか……ああくそ、うるせえなァ!」
それでも意地で踏ん張ったセリオスは、荒い息を吐きながら次の機を窺う。向こうも寿命を削り続けているものの、ちんたらしていたら此方が不利だ――そんな中でも臨は、その身を蝕む瘴気にひたすら耐え、マフラーで覆われた口元を微かに歪めつつ、暴竜の攻撃を凌いでいた。
(「鬱陶しく思ってくれるのなら、好都合っす」)
――ゆらりゆらめく、あかね色の布が霧の中で鮮やかに翻った刹那。臨はグラドラゴの背後に回り、その背を踏みつけて空を舞う。
「さぁ、今まで喰らった分のお返しをするっすよ――」
そして、今まで臨の身を苛んだ毒――その痛苦を上乗せした逆境の一太刀を、獲物の頭部目掛けて振り下ろした。剣の間合いを軽々と超えて放たれたその一撃に、グラドラゴが呻き顔を仰け反らせる中、友とセリオスも捨て身の覚悟で飛び込んでいく。
「多少の毒も痛みも耐えてみせるッ! 毒の竜と光の竜……どちらが勝つか、勝負だよ!」
詠唱を行い刀身に雷を纏わせた友が、全力の激光雷斬で、纏う霧ごと竜を断ち――次いでセリオスは、星の尾を引く斬撃を繰り出し、更に蒼き焔の鳥が辺りに満ちる霧を焼き焦がしていった。
「流星降り注ぐ美しい夜空まで奪おうなんて、ちょっと無粋が過ぎるんじゃない?」
未だ眩い光を放つ晶花を突きつけて、友がにやりと不敵な笑みを浮かべる。この後に待つ楽しいお祭りの為にも、皆の星空を取り返させて貰うから、と。
――ああ、そうだ。鈍色に染まる曇天の下で、尚も足掻き続けるグラドラゴを視界に捉えながらも、臨は未だ見ぬ遠い空を想って溜息を零した。
(「なんつーか、アイツ倒れて霧ががーって晴れた瞬間。……どんな空が見えるのか、楽しみなんすよね」)
成功
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糸縒・ふうた
■リル(f10762)と一緒
アドリブ・改変等歓迎
うーん…よく見えない
けど、なんだか良くないものがいるってのは、わかる
肌がビリビリ痛い感じ
星空を游ぐリルが、みたい
星空の輝きが届くように、澄んだ空気を取り戻そう
うん、ありがとう
ほんとは霧を吹きとばしたりできたらいいんだけど…
近づいたら厄介そうだから
【喚び聲】で喚んだかぞくに手伝ってもらうぜ
仲間と連携しながら積極的に懐へ
敵からの攻撃は【野生の勘】と
出来るなら【福音】も使って回避
もし教えてくれる仔がいたら
ここは危ないから安全なところに隠れていてって伝えて
傷ついたり霧に飲み込まれそうな人がいたら
【疾風】の背に乗って回収しに行こう
お願いリル、助けてあげて
リル・ルリ
■ふうた(f09635)と一緒
✼アドリブ等歓迎
「あれが霧の竜。ほんとう、姿が霞んでよく見えない」
綺麗な星空を游ぎたいから、あの霧を晴らさなければ
美しい星空を弔いに、霧のように淡く儚く過去へかえしてしまおうか
「あの霧、危ない。ふうた、気をつけて……」
毒も亡霊も、不気味な霧に震えそうになるけれど――けれど僕はけして、弱くはないから
【野生の勘】で攻撃を察知して【空中戦】で躱していって
【歌唱】で歌うのは「凱旋の歌」――少しでも君の力になれるように
「ダメだよ、させない」
霧が牙を剥くならば星空に添える星の耀…「星縛の歌」で霧を封じておくね
悪しき霧を晴らして、美しい満天の星を
取り戻そう
大丈夫、できるよ
任せて
フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブや絡み等歓迎
せっかくの星空が霧で見えないよー櫻宵!
はやく払って、星穹ティータイムしよ!
その考え方の時点で
……桜の乙女というより桜のゴリラ……ん、なんでもない!
そだね、綺麗な星空みんなが楽しみにしてるんだ!
行くよ、櫻宵!
オーラ防御でボクと櫻宵へ迫る霧を防ぎ
雷撃込めた全力魔法で攻撃
麻痺攻撃も加えるよ!
「女王陛下は赤がすき」で霧ごと爆散させる!
第六感で攻撃を察知、空中戦と見切りで躱すよ!
今宵のキミの歌姫はボクさ
役不足だけど精一杯歌い櫻宵を守るとも!
癒しをのせたシンフォニック・キュア(星の贈り物)!
さぁ!暴虐の霧を斬りさいて―星空を取り戻そう!
首をはねておしまい!
誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブや絡み歓迎
美しい星空を覆い隠す霧
無粋よね
『霧中の暴君』なんて怖いわ
あたしなんてか弱き桜の乙女だもの……(楽しげに笑い
どんな敵でも殺せば死ぬわ
殺しましょ
あたしの可愛い子が星を楽しみにしてるのよ
行くわよフレズ
うざったい霧ね
刀に纏わせる風、衝撃波を放ち霧ごと吹き飛ばしなぎ払う
鶱華を纏って舞い踊るように
何度も傷を抉り斬り裂いて、穿ち……硬そうだから剣戟に怪力をのせてぶった斬るわ!
フレズを庇い守り
見切りと残像で攻撃を躱す
毒の痛みも甘美だけれど
あなたじゃあたしは満たせないわ
フレズの歌が癒してくれる
恐れず懐に突っ込んで絶華を放ち首を断つ
星夜に竜退治
洒落てるじゃない?
「……あれが霧の竜」
気が付けば、己の進む道さえ覚束無い濃霧の中を、リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)はゆらゆらと揺蕩うように歩んでいた。隣を歩く、糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)も「よく見えない」と呟き、しきりに瞬きをしているようだったが――はぐれないようにと繋いだ手と手のぬくもりが、惑うふたりに勇気を与えてくれる。
「ほんとう、姿が霞んでよく見えない」
「うーん……けど、なんだか良くないものがいるってのは、わかる」
――肌がビリビリ痛い感じ、と告げるふうたは、人狼ならではの野生の勘で、霧に潜む脅威を嗅ぎ取っているのだろうか。
「あの霧、危ない。ふうた、気をつけて……」
一方のリルも、近くに漂う霧の中で、不意に影がゆらめいたのに気づいて距離を取る。くねくねと不思議な動きを見せるその影を、固唾を呑んで見守るリルであったが――彼の耳に聞こえて来たのは、お砂糖とスパイスを塗したような、甘いオネェの声だった。
「美しい星空を覆い隠す霧……無粋よね。『霧中の暴君』なんて怖いわ。あたしなんて、か弱き桜の乙女だもの……」
――何だか酷く聞き覚えのあるその声に、そろそろと近づいたリルが目にしたのは、夢見草を思わせる誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)の艶姿。
ちなみに『か弱き』櫻宵は、既に屠桜の刀を構えて臨戦態勢を取っており、『乙女』と言いつつ彼は立派な男性――いやオネェである。
「うーん、その考え方の時点で……桜の乙女というより桜のゴリラ……ん、なんでもない!」
「あらフレズ、深い霧で変な幻を見たのかしら?」
と、そんな櫻宵の近くから、フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)のツッコむ声が聞こえてきたが――楽しげな笑みと共にそう問われると、兎耳の少女は明後日の方向を見つめ、慌てて話題を変えた。
「あー、せっかくの星空が霧で見えないよー櫻宵! はやく払って、星穹ティータイムしよ!」
「って、あら! リルじゃないの! そちらはお友達?」
――そんなこんなで顔見知りだった一行は、偶然の出会いについ話し込んでしまいたくもなったが、此処は既にオブリビオンの領域なのだ。
(「綺麗な星空を游ぎたいから、あの霧を晴らさなければ」)
霧中に潜むもの――グラドラゴの姿を模した、無数の霧の竜が姿を現すと同時、その背後には本体を守る巨竜の影がゆらめく。『霧中の暴君』が操る、その不気味な霧に震えそうになるけれど――しかし自分は決して、弱くはないのだとリルは己に言い聞かせた。
「オレは、星空を游ぐリルが、みたい」
ぽつり呟いたふうたは、無意識の内にリルの願いを感じ取っていたのだろうか。星空の輝きが届くように、澄んだ空気を取り戻そう――そう言って帽子を被り直したふうたは、喚び聲を響かせて大切なかぞくを、頼もしい獣たちを喚び出し、敵の懐へと飛び込んでいく。
(「ほんとは、霧を吹きとばしたりできたらいいんだけど……」)
それでも、霧に隠れた本体は戦うことが出来ず、一撃を当てれば配下の竜たちはたちどころに消え失せるだろう。リルの歌声が力を与えてくれるのを感じながら、ふうたは四方から迫る竜の攻撃を、ひらりと紙一重で躱していった。
「どんな敵でも殺せば死ぬわ、殺しましょ。……あたしの可愛い子たちが星を楽しみにしてるのよ」
「そだね、綺麗な星空みんなが楽しみにしてるんだ! 行くよ、櫻宵!」
迫る霧を防ぎながら、電撃を込めたフレズローゼの魔法が、加減なしで放たれる中で――はらはら舞う赤薔薇が霧を撒き込んで爆発し、描かれた赤の世界を櫻宵が一気に駆け抜けていく。
「ああ、もう、うざったい霧ね」
尚も纏わりついてくる霧には、風の力を宿した刀から衝撃波を放って対処しようとするものの、其処で霧に潜む竜たちが櫻宵の行く手を阻んだ。数任せで押してくる敵の群れによって、霧に呑まれそうになった彼を救ったのは、影狼――疾風の背に乗って戦場を駆ける、ふうただった。
「お願いリル、助けてあげて」
安全な場所まで一旦退いた彼らの元へ、尾鰭を揺らして近づいたリルは、牙を剥く霧に向かって玲瓏たる歌声を響かせる。
(「美しい星空を弔いに、霧のように淡く儚く過去へかえしてしまおうか」)
――紡ぐのは、生命の瞬きと星の煌めきを宿す星縛の歌。星空に添える星の耀は、きらきらと舞い踊りながら竜霧の力を封じ、其処より生まれる霧の竜たちを次々に虚空へと還していった。
(「悪しき霧を晴らして、美しい満天の星を取り戻そう。大丈夫、できるよ……任せて」)
そんなリルの金銀に煌めく旋律へ、フレズローゼの絢爛の歌声が新たな色彩を加えていく。それは癒しを乗せた星の贈り物で――精一杯歌うフレズローゼは櫻宵を護るべく、彼に力を与えようとひたむきに歌い続けた。
「今宵のキミの歌姫はボクさ――さぁ! 暴虐の霧を斬りさいて、星空を取り戻そう!」
――首をはねておしまい! 高らかなフレズローゼの声が霧の中に木霊すると、櫻宵が其処に潜む本体目掛けて、舞い踊るように駆け出していく。
「……毒の痛みも甘美だけれど、あなたじゃあたしは満たせないわ」
フレズの歌が癒してくれると信じているから、彼は恐れず竜の懐に飛び込んだ。硬い鱗に覆われていようが、剣戟に怪力をのせてぶった斬る――そんな気迫を込めた絶華の一撃が、無防備なグラドラゴの首元に吸い込まれていく中で、櫻宵は茶目っ気たっぷりに微笑んでこう囁く。
「星夜に竜退治……洒落てるじゃない?」
大成功
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都槻・綾
貴方も星を眺めたかったのでしょうか
星を独占したとて己の霧でまみえる事の出来ない、
晴れ渡る宙に憧れを抱いて
意味ある答えなど返る筈もないと思えども零れる呟き
例え『暴君』にも感傷の欠片があったにせよ
祭事を荒らし
捕食を狙うことは間違いなく
看過するに能わず
嘲笑か咆哮か
濃霧の奥から聲があるなら
竜の居場所は、其処
死角、急襲に備え
霞む視界の代わりに研ぎ澄ますのは聴覚嗅覚、第六感
挙動を見切り回避
自他オーラ防御
高速詠唱、二回攻撃の七縛符で皆を援護
竜へ向けた指先に挟む符
空に描く五芒星
灼熱の焔纏う金烏の如き鳥葬で霧を晴らし竜を喰らう
骸海には
無数の魂が夜光虫のように明滅しているだろうか
竜が還り逝く先にも星が見えると良い
イア・エエングラ
おほしさまは、食べてしまった?
それともお気に、召さないかしら
やあ大きくていらっしゃること
大振りな分、ようく見ていれば、避けられるかな
浮いていらっしゃるから、当てるのは大変かしら
耐性はあれど毒の霧だもの、早めになんとかしたいねぇ
僕らも困るけれど、周りの子らにもよくないもの
同じのが沢山、いらっしゃるのなら
――全部墜とせば良いかしら
下りてくるのを、襲い、くるのを、待ちましょう
獲物を狙うときが一番、隙になると、いうものな
凍て風抱いた子を撫ぜて
さいごの、冬をおくりましょう
硝皚で届く限りを、切り裂いて
霧を照らして、帳を裂いて
悪い夢を、晴らすように
お伽噺の悪い竜は、過去より倒される、定めだものな
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
(真の姿解放)
なるほど。ここならば、存分に暴れても問題はなさそうだ。
貴様の相手をしてやるに相応しい姿と参ろうか。
悪徳の名を冠する巨大な黒竜の姿、とくと目に焼き付けるが良い!
ありったけの【呪詛】で強化した『腐乱死体の毒杯』で、貴様の全てを腐らせてくれる。
霧が迫るならば尾で【なぎ払い】だ。
【恐怖を与え】られたなら、『輝く災厄』を使って動きを止めてやるでも良い。
この鱗には耐久力もある。
他者がいるなら、【かばう】のもやぶさかではないな。
……オブリビオンよりオブリビオンらしい見た目になるが、一応は味方だぞ。
さァ、ひとつ、手合わせと行こう。
貴様の霧と私の瘴気、どちらが先に命を奪うかだ!
ヘンリエッタ・モリアーティ
毒……ッ!!困った、わね……!
いくら【毒耐性】があっても、こんなに出されちゃ……!
でも、追いつめてくれればそれだけ、「わたし」は戦える……このために体力を残しておいて、よかった!
(真の姿)
【――魔犬の襲撃】!
いいこ、いいこ。おまえに、たくさんの竜をまかせる
そのたくましいしっぽで、なぎはらって、はたきおとして、喰いちぎれ!
【モラン】、おまえのちからをみせてやれ
わたしがねらうのは、おおきな竜の……むこうがわ!
モランでおおきな竜を【串刺し】に
そのあと【怪力】で【なぎ払い】、風の流れを作り
毒霧をかきけせるだけ、消してみる!
進みやすくなったら……皆にまかせるわ
美しい世界も星空も、――かえしてもらうわよ!
――傷を負った竜の咆哮が渓谷に木霊し、憎悪に満ちたまなざしは濃霧の中でも爛々と輝いていた。一瞬、鮮やかな血がぱっと飛び散って辺りを紅に染めるが、それも宙に溶けて竜の輪郭共々、朧な霧が包み込んでいく。
「貴方も星を眺めたかったのでしょうか」
霧に潜み、霧が形づくる無数の竜を従えた『霧中の暴君』を前に、都槻・綾(夜宵の森・f01786)は届くことの無い問いを、そっと己の唇に乗せて紡いでいた。
――意味ある答えなど、返る筈もないと分かっているのに。それでも零れる呟きは、天から落ちる水滴のように深い霧を濡らす。
「……星を独占したとて、己の霧でまみえる事の出来ない、晴れ渡る宙に憧れを抱いて」
或いは、星空に一番近い場所ならば、手を伸ばせると思ったのだろうか。今も尚、死の竜霧を生み出し続けるグラドラゴの元で、深い海の底から浮かび上がるようなイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)の囁きがふわりと弾けた。
「おほしさまは、食べてしまった? それともお気に、召さないかしら」
茫洋とした彼の佇まいはまるで、霧が生み出したまぼろしのよう――しかし霧の竜たちは容赦なく、イアを毒牙に掛けようと一斉に襲い掛かる。
「やあ大きくていらっしゃること――全部墜とせば良いかしら」
――微睡む藍の瞳が、深海で輝く貴石のように揺れて。己の元へ下り、襲いくるその直前まで敵の群れを引き付けたイアは、冬至より哭く凍て風――ユールの火を無数の花びらへと変え、一気に辺りへ解き放った。
「……獲物を狙うときが一番、隙になると、いうものな」
涯てに咲く星が花となり、散っていく――硝皚は綻び、迫る霧の竜たちを次々に切り裂いていって。その間隙を縫って飛来したものへは、研ぎ澄ませた勘を活かした綾が、七星七縛符を操って無力化を図っていた。
(「嘲笑か、或いは咆哮か」)
霧中に潜むグラドラゴの本体――その微かな聲を耳にした綾は、その居場所を仲間たちに素早く指し示して突入を促す。
「……なるほど。ここならば、存分に暴れても問題はなさそうだ」
未だ晴れることの無い霧を前にして、不敵に微笑むのはニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)。『霧中の暴君』の相手をしてやるに、相応しい姿となるべく――彼は、己の中に眠る『忌み子』たる力の結晶を、真の姿を解放するべく咆哮した。
「悪徳の名を冠する巨大な黒竜の姿、とくと目に焼き付けるが良い!」
生と死――其々が孕む情念と怨嗟をその身に宿し、ニルズヘッグはありったけの呪詛で強化した、腐蝕の瘴気を生み出し竜霧に立ち向かう。
「貴様の全てを腐らせてくれる……!」
雷雲の中で弾ける稲光のように、黒い閃光が辺りを灼き尽くす中で、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は死の竜霧が齎す毒を受けて、微かに咳き込んでいた。
「毒……ッ!! 困った、わね……!」
毒に対する耐性はあるが、こうも晒され続けると長くは耐えられない。口の端に滲んだ血を拭ったヘンリエッタの瞳はしかし、確かな勝機を見出して刃のように鋭い輝きを放っていた。
「でも、追いつめてくれればそれだけ、『わたし』は戦える……!」
体力を温存していたのも、全てはこの為だ――捻じれた角に太い尾と、まるで竜人を思わせる真の姿となったヘンリエッタは、体内に宿すUDCから魔犬の群れを召喚して竜霧にけしかける。
「いいこ、いいこ。おまえに、たくさんの竜をまかせる。そのたくましいしっぽで、なぎはらって、はたきおとして、喰いちぎれ!」
魔犬バスカヴィル――不吉な伝承そのものの怪物は、霧に乗じて忍びより、新たに生まれようとしていた霧の竜の群れを纏めて屠っていった。
「わたしがねらうのは、おおきな竜の……むこうがわ!」
そして、一方のヘンリエッタは霧の巨竜が守る本体、グラドラゴ目掛けてモランを――黒く豪奢な槍と化したしもべを振るい、一気に串刺しにする。
「美しい世界も星空も、――かえしてもらうわよ!」
更に、鬼気迫る表情で迫る霧を薙ぎ払うヘンリエッタの隣で、竜の尾を振り回して毒を散らすのはニルズヘッグだ。
「……オブリビオンよりオブリビオンらしい見た目になるが、一応は味方だぞ」
竜の霧と自身の瘴気、どちらが先に命を奪うか――そんな極限の状況の中でぽつりと零した彼の呟きに、ヘンリエッタはただ微笑むことで応えて、毒の霧を掻き消すべく剛腕を振るった。
(「凍て風抱いた子を撫ぜて。さいごの、冬をおくりましょう」)
――霧を照らして、帳を裂いて。悪い夢を、晴らすように。星の花びらを降り注がせるイアが、ちいさく吐息を零すと、巨竜に守られた本体の姿が露わになる。
「お伽噺の悪い竜は、過去より倒される、定めだものな」
そう、例え『暴君』にも感傷の欠片があったにせよ。祭事を荒らし、捕食を狙うことは間違いなく、看過するに能わず――守るべきものの絶えたグラドラゴへ向けた、綾の指先に挟む符が翻り、空へ描かれるのは陰陽の五芒星。
「時の歪みに彷徨いし御魂へ、航り逝く路を標さむ、――」
宿す五行は火――灼熱の焔纏う金烏が、疾てなる羽搏きを見せると、よみしるべの鳥葬がグラドラゴを襲った。霧を晴らし竜を喰らう鳥が、どうか骸の海まで導いてくれるよう祈りながら、綾は彼方の光景に思いを馳せる。
(「骸海には、無数の魂が夜光虫のように明滅しているだろうか」)
――ならば、どうか。竜が還り逝く先にも星が見えると良い。
成功
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雨糸・咲
深い霧から感じる威圧と死の気配
これでは、あの仔竜たちがあてられても仕方がないですね…
襲い来る攻撃は
第六感と聞き耳で出来る限り回避を試みますが
たとえ傷を負おうとも、
退くことなどちらりとも考えてはいませんから
…煌めく星には触れさせません
あれは、今ここに生きる人々のもの
過去からやって来たあなたが手を出して良いものではないのです
本体を守る巨竜の動きからその位置を推測し、
吹き荒れる炎の嵐で攻撃を
無数に飛び交う竜も、
暴君の身を隠すのも霧ならば――
熱で吹き散らしてしまいましょう
毒霧立ち込める距離まで踏み込む方々の援けとなれれば
※アドリブ・他の方との共闘絡み歓迎です
レイン・フォレスト
【アイビス】
死の霧か……こんな物を撒き散らされたら迷惑なんてレベルじゃないよね
何としてでも倒してしまわないと
うん、フィリアの言うとおりだよ頑張ろう
無理はしないよ、大丈夫
フィリアに怒られるのは嫌だからね(くすっと笑って
【SPD】
やっぱりここは得意分野で勝負しよう
「先制攻撃」で【ブレイジング】を放つ
攻撃が逸れないように「目潰し」で狙いを付けて高速射撃
敵の攻撃は「見切り」を使って回避を試みる
喰らいそうなときは「カウンター」を
僕の技を返してくるって?
本家本元の意地、見せてやる
体力が減りすぎたときは「生命力吸収」と「吸血」を
敵の体力を減らしてやるよ
仲間達が攻撃してる時は「援護射撃」で仲間の援護
フィリア・セイアッド
【アイビス】
これが『霧中の暴君』…なんて大きいの
だけど負けられない
空に輝く導きの星を 消してしまうわけにはいかないもの
がんばろうねレイン だけど、無理はしないで、ね?
「WIZ」を選択
星と風の加護を祈り 翼を広げる
「雪雫の円舞曲」で仲間の能力上げと鼓舞
少しでも レインや皆の力になれますように
死の霧や悪意が少しでも薄れるよう 歌声に破魔の力も乗せ
幻の竜に惑わされないよう 空気の流れや音に注意
第六感も使って本体の竜の位置を探す
わかれば仲間に周知を
自分への攻撃はオーラ防御で防ぐ
傷ついた仲間へは 「春女神への賛歌」で回復
星に祈りを 月に願いを
どんなに暗い闇夜でも 目を凝らせば必ず光は見つかるはずだから
度重なる戦いでグラドラゴは確実に傷を負い、その動きも徐々に鈍っているようだった。それでも『霧中の暴君』としての力は衰えず――尚も竜は霧を生み出し、無数の配下に己を守らせようと動く。
「これでは、あの仔竜たちがあてられても仕方がないですね……」
立ち込める深い霧から感じる、激しい威圧と死の気配に眉根を寄せつつも、雨糸・咲(希旻・f01982)はその先に潜むグラドラゴを毅然と見据えていた。
「死の霧か……こんな物を撒き散らされたら、迷惑なんてレベルじゃないよね。何としてでも倒してしまわないと」
一方のレイン・フォレスト(新月のような・f04730)は銃弾の装填を確認すると、大切な友人――フィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)を庇うようにして戦場に立つ。
「これが『霧中の暴君』……なんて大きいの」
霧の中を自在に飛び回る彼の竜は、しもべを操り不気味な影をちらつかせるが故に、その姿をより大きく感じ取ってしまうのかも知れない。だけど――負けられないのだと、フィリアは春空の瞳を細めて彼方の空を見上げた。
「空に輝く導きの星を、消してしまうわけにはいかないもの。……がんばろうねレイン」
うん、とレインが勇ましく頷いてみせるも、フィリアはその背中に向かって労わるように声を掛ける――だけど無理はしないで、と。
「……無理はしないよ、大丈夫。フィリアに怒られるのは嫌だからね」
くすりと微笑みを零した後、一転して怜悧な相貌となったレインは、霧の中から姿を現した亡霊へ向けて素早く銃口を向けた。
(「やっぱりここは、得意分野で勝負だ」)
――霧の亡霊とも呼ぶべきその相手は、霧に投影されたレインそのもののよう。しかし先手を取ったレインは速攻で銃弾を叩き込み、相手の視界を奪うように高速連射で畳み掛けていった。
(「どうか……少しでも、レインや皆の力になれますように」)
そして星と風の加護を祈るフィリアは、白き翼を広げて鼓舞の歌を響かせ――その清浄な歌声へは、死の霧や悪意が少しでも薄れるようにと、破魔の力も乗せる。
(「そう、幻の竜に惑わされないようにしないと」)
――空気の流れや、奏でられる音。五感に加えて第六感も働かせて、同時にフィリアは本体の竜の居場所も探っていた。しかし、その間にも霧の竜は此方に狙いを定めており、レインはと言えば霧の亡霊を引き受けるので手一杯のようだ。
「……煌めく星には触れさせません」
と、其処に凛と響いたのは、静かな意志を湛えた咲の声だった。儚げな風貌に反した芯の強さを持つ少女は、本体を守る巨竜の動きから本体の位置を推測していたようで――更にフィリアの感覚も加え、正確な居場所を割り出すことに成功したようだった。
「あれは、今ここに生きる人々のもの。過去からやって来たあなたが、手を出して良いものではないのです」
巨竜の影で微かに身じろぐグラドラゴ目掛けて、吹き荒れる炎の嵐――咲が精霊に働きかけて生み出した、自然の力が猛威を振るい、熱せられた蒸気が辺りに立ち込める。
「僕の技を返してくるって? なら本家本元の意地、見せてやる」
一方、銃弾の雨が降り注ぐ中でレインは距離を詰め、寸での所で見切って亡霊の一撃を躱した。繰り返し師に叩き込まれた射撃術は、上辺だけ真似てみせた所で効果的に扱える訳では無いのだ――銃弾を浴びた霧の亡霊が瞬く間に掻き消えていく中で、フィリアは傷ついた仲間を癒そうと、春女神への賛歌を高らかに歌う。
(「星に祈りを、月に願いを……。どんなに暗い闇夜でも、 目を凝らせば必ず光は見つかるはずだから」)
(「……ああ、そう、ですね」)
自分では耀けない――それは月と同じなのだと、咲は思っていた。だけど、誰かの力で耀くことが出来るのなら。そんな自分の姿に光を見出し、標とするものも現れるのかも知れない。
――無数に飛び交う竜も、暴君の身を隠すのも霧ならば、纏めて熱で吹き散らしてみせる。そうして、毒霧立ち込める距離まで踏み込む仲間たちの援けとなれればと願う、咲の決意は揺るがない。――何故ならば。
「たとえ傷を負おうとも、私は退くことなどちらりとも考えてはいませんから」
大成功
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アルバ・ファルチェ
(絡みやアドリブ歓迎)
基本的に仲間への支援や治療を行うよ。
毒は少し耐性があるから、耐えながら霧をどうにかしなきゃね。
散らす…となると、違う場所に流れて危険だから1ヶ所に纏めてしまいたいよね。
風の属性魔法を使って集めたりできないかな?
あ、あと毒を貰ったら医術やAmour Gratuitでの治療を試みるよ。
どちらも難しければ、かばったり挑発して囮になったり防御面で支援を試みるよ。
激痛にも耐性あるし、盾や武器で受けるのもオーラで防御するのも得意だから耐えてみせる。
コルノには空中戦や援護射撃で召喚された竜達の相手をして貰うよ。
気を引いたり、数を減らせばその分本体に攻撃が届きやすくなるだろうし。
飛鳥井・藤彦
【WIZ】
霧の中の巨竜、絵になるわー。
めっちゃ描きたい。
せやけど満天の星空も綺麗やろなぁ。皆さんが楽しみにしてはる祭もあるらしいし。
ほんなら竜には早々にご退場願わなあかんね。
荒事は苦手なんやけど、絵が関わってるんなら話は別や。
まずは【見切り】と【なぎ払い】【吹き飛ばし】であちらさんの攻撃と霧を払いつつ間合いを詰めましょか。
おやまぁ、随分とかくれんぼがお上手なご様子。
袖から花鳥風月符を取出し、【藤花繚乱】で纏めて攻撃させて戴きましょ。
他の猟兵さんとも協力してお互いの隙をカバーできるよう動けたら嬉しいんやけど、【高速詠唱】で自身の隙はなるべく減らしておきますわ。
※アドリブ・他PCさんとの絡み歓迎
ボリス・ルーシア
この霧の原因である竜のおでまし、ね
色々な二つ名がある、ってことはそれだけ悪名高いのだろうけど
大切にされてきた星の降る空と村の人々、微力だけど守らせてもらうのよ
霧の中なら引き続き[視力]を使いつつ、気配を探るように
[第六感]で危険を感じたら、直感に従って回避するよ
霧で見え難いのなら接近戦が良さそうだな
[忍び足]で周囲の地形や霧にまぎれて近づいて
【シーブズ・ギャンビット】で攻撃を
スピードが足りなきゃマントを脱いで、目くらまし代わりに使ってしまおう
さぁ、一緒に踊ろうぜ?
相手が竜でも自分の似姿でも、海に還ってもらわねぇとな
大体、霧の自分に負けるなんてありえねぇ、だろ?
*アドリブや絡み大歓迎です
――さあ、いよいよこの霧の原因である竜のおでましだ。生あるものへの殺意をぎらつかせる『霧中の暴君』を、ボリス・ルーシア(瑠璃夜天・f09721)が標的に捉えたところで、背後から飄々と華やいだ声が上がる。
「わぁ、霧の中の巨竜、絵になるわー。めっちゃ描きたい」
身の丈ほどある絵筆を構えた、飛鳥井・藤彦(浮世絵師・藤春・f14531)はきっと、その気になれば絵画を現のものにすることも可能なのだろう。何処となく雅な物腰で、霧の向こうに目を凝らす藤彦であったが――霧より生まれし竜の群れが飛来するや否や、軽やかな身のこなしでひょいと躱してみせた。
「……と、と。せやけど満天の星空も綺麗やろなぁ。皆さんが楽しみにしてはる祭もあるらしいし。ほんなら」
霧のキャンバスに筆を走らせるかのように、藤彦の絵筆――輝紅篠画が一閃し、霧の竜を纏めて吹き飛ばす。そのまま間合いを詰めた所で、藤色の瞳が好奇心に煌めいた。
「……竜には早々に、ご退場願わなあかんね」
「色々な二つ名がある、ってことはそれだけ悪名高いのだろうけど、ね」
更にボリスが霧中に潜む本体の気配を探りつつ、敵の生み出した霧さえも味方につけて忍び寄る。霧で見え難いのなら、接近戦を挑むのが良さそうだと判断し――そんな彼女を支援しようと、アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)は真正面から霧竜の群れを引き付け、死の霧への対処を行っていた。
(「散らす……となると、違う場所に流れて危険かな」)
霧が齎す毒に耐えながら、アルバは魔法石を握りしめて風を操る。出来れば一か所に纏めてしまいたい所だが――戦場に漂う全てとなると、力が及ばないか。
「でも、皆の行く手を阻む霧くらいなら……!」
本体を守る霧の巨竜の近く、隠れる場所を奪おうとアルバの呼んだ風が吹き荒れる中、彼を脅威と見た配下の竜たちが一斉に襲い掛かる。
「望む所だよ……『盾の騎士』の誇り、見せてあげる」
敢えて躱すことをせず、竜の群れを迎え撃ったアルバは、白銀の盾を翳して牙と爪の猛攻を受け止めた。激痛に表情を歪めることも無く、彼は普段通りのチャラい笑みを湛えていて――その隙に、巨竜の喉元まで接近した藤彦が、花鳥風月符を袖から取り出して歌を詠む。
「おやまぁ、随分とかくれんぼがお上手なご様子……でも、見つけましたわ」
藤波、今咲きにけり――言の葉と共に、符は無数の藤の花びらへと姿を変えて。霧の巨竜ごと其処に潜む本体を葬るべく、艶やかに降り注いだ。
――と、其処で無数の霧竜は、囮となったアルバに引き付けられていたことを知るが、時すでに遅し。急旋回する竜たちへは、もふもふ毛玉竜のコルノが、主であるアルバの命に従って足止めを行っていた。
「大切にされてきた星の降る空と村の人々、微力だけど守らせてもらうのよ――」
藤彦の繰り出す、藤花繚乱の世界を駆けるのはボリス。苦し紛れに襲い掛かる霧の亡霊の一撃を、直感で回避した彼女は――尚も速度を上げるべく、纏う藍天紗の外套を脱ぎ捨てる。
「ほら、目くらましだ。……さぁ、一緒に踊ろうぜ?」
がらりと口調を変えたボリスの唇が三日月のようにつり上がり、彼女は無防備な本体――巨竜の影に潜んでいたグラドラゴ目掛けて、運命の名を持つダガーを突き立てた。
「相手が竜でも自分の似姿でも、海に還ってもらわねぇとな」
――大体、霧の自分に負けるなんてありえねぇ、だろ?
その呟きと同時、霧の中に血煙がしぶいて、己の姿を模した霧の亡霊もまた、掻き消えるようにして消えていったのだった。
成功
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マリス・ステラ
【WIZ】他の猟兵と協力して戦います
「星には誰しも一度は手を伸ばす。それは竜であっても変わらない」
全身から放たれる光で『存在感』を示し、竜を『おびき寄せ』ます
光は『オーラ防御』として働く星の輝き、その星が煌めくような『カウンター』
弓で『援護射撃』
負傷者には【生まれながらの光】
ただし、軽傷は無視して重傷者に限定
緊急時は複数同時に回復
「流星は奪えない。ただ、その身に降り注ぐだけです」
星屑の弦音は『封印を解く』ように霧を晴らすでしょう
放たれた矢は流星の如く『破魔』の力で竜の守りを打ち破る
「勇者たちよ、今こそ力を示す時です!」
毒やダメージは『各種耐性』で耐えつつ地縛鎖・星枢で大地から魔力を得て凌ぎます
海月・びいどろ
鏡映しのこれが、ボク?
こんな顔をして、こんな容をしてたんだ
……自分が相手なら、手加減は、いらないね
写し取れるのは、この身だけ
頭の中までは、ボクの姿をしたキミにだって
分からないことでしょ?
いくつも、いくつも、星を降らせるみたいに
透ける弓矢を手に、天を撃つの
落ちてくる硝子の鏃は透明だから
景色の迷彩を纏ったら、軌道を隠して、射る
同じように、きっと星が降るよ
ふわふわ、ゆらゆら、海月みたいに避けなくちゃ
キミの向こうに、あの星空を食べてしまいたい竜がいるんだね
海月のぬいぐるみと、いっしょに踊って
キミからの攻撃が来たら、ぱくんと――いただきます
星を食べられてしまう前に、霧の向こうへ
海の彼方に、さようなら
秋遊・空桜
※真の姿は東洋の巨大龍
なんや、体の底から力がわいてくるような…
それよりも、それよりも…
うち、明らかに人やなくなっとる…!
ああ、これが猟兵さんが持つ「真の姿」なんやね
なら…
そこにおる霧の龍は、きっとうちを映した姿なんや
正直頭ん中混乱しっぱなしやけど…でも、今は目の前の敵に立ち向かわなあかん
まともにぶつかったらきっと不利や
なら、いちかばちか仕掛けよ
あんた、強そうやけど…脆そうやね
【空想自然界】で防御力付きの強風を身に纏う
【オーラ防御】も併用や
高速移動で距離を詰めて、この風であんた自身を【吹き飛ばし】てまおう
たとえあんたが吹き飛ばそうとしても、うちは倒れへん
うちは霧やない、ちゃんと実体があるんやから
クレム・クラウベル
……死の竜霧、などと名を取るだけはあるか
見え難いだけでは済まないな
毒への耐性は多少あると言え、毒の濃い部分に触れぬよう気を付ける
視界は悪くとも相手は巨体
焦らず目に付いた竜を片っ端から撃ち抜く
狙えるなら本体を狙って霧の竜を纏めて払いたいが、どちみち数減らしはいるだろう
霧の奥にそれと思しき姿捉えたらクィックドロウで素早く一撃
傷を負わせれば良い
致命でなくともいいなら、この霧の中でも当てられよう
霧が薄れたなら本命を
ささめく祈りの言葉
魔を祓え。悪しきを祓え
アレが悪霊に類されるかなど関係ない
刻んだ音、言葉は事実となる
穿て、銀弾
春も星も、今を生きるものに与えられたもの
過去の亡霊に食わせる未来はない
傷ついた鱗が剥がれ落ち、滴る赤黒い血が渓谷を斑に染めていく中で――『霧中の暴君』は尚も、縋るように霧を纏って猟兵たちに襲い掛かる。
「……死の竜霧、などと名を取るだけはあるか」
見え難いだけでは済まないな、と嘆息するクレム・クラウベル(paidir・f03413)の目の前では、濃霧が像を結び――無数の竜が此方に向けて牙を剥いていた。
「鏡映しのこれが、ボク? こんな顔をして、こんな容をしてたんだ」
――そして海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)の前には、自身を模倣する霧の亡霊が現れていて。ふたごの海月人形を従え、霧の海を泳ぐ少年の現身を目にした彼は、青硝子の瞳をぱちぱちと瞬きさせて、ぽつり呟く。
「……自分が相手なら、手加減は、いらないね」
直後、すっと伸ばされたびいどろの手に握られた、あまいろの弓がぴんと引き絞られ――硝子の煌めきを宿した鏃が次々と、天へ向かって放たれた。
(「写し取れるのは、この身だけ」)
ふわりと広がる、みずいろの衣装は電子の海を泳ぐように、霧の迷彩を纏って辺りに溶ける。軌道を読ませず、いくつもいくつも矢を射るびいどろは、星を呼ぼうと空を見上げてから――何処か冷ややかないろを含んだ声で、亡霊に向かって囁いた。
「頭の中までは、ボクの姿をしたキミにだって、分からないことでしょ?」
――ああ、霧の渓谷に星が降る。天から降り注ぐ硝子の鏃が、重力に引かれて雨のように降り注いでいく。透明な矢に射抜かれ、消滅していく霧の亡霊をふわふわと躱して、びいどろは真っ直ぐに本体の竜目掛けて突き進んでいった。
「……キミの向こうに、あの星空を食べてしまいたい竜がいるんだね」
その一方で、クレムは無数のしもべ達に早撃ちを繰り出し、悪しきを祓う魔弾で対抗していく。
(「焦るな……目についたものを、片っ端から撃ち抜けばいい」)
ただ傷を負わせれば良い――それだけを優先して霧の中で狙いを定めるが、霧竜の群れは案外しぶとく、纏めて払うには骨が折れそうだ。
「星には誰しも一度は手を伸ばす。それは竜であっても変わらない」
と――其処に凛と響いたのは、星が転がるようなマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)の声だった。生まれながらに宿す光は、深い霧の中でも彼女の姿をはっきりと示し、湧き出す竜の群れをおびき寄せようと手招く。
「……どうか光よ、霧の中でも輝く星となって」
次々に飛来する竜たちを、流星のように撃ち落としながらも、マリスは聖なる光を翳して傷ついたクレムを癒していった。その間に前線へ向かった秋遊・空桜(そらびじょん・f10801)は、己の身体を巡る不可思議な力に、戸惑いつつも勇気を貰う。
「なんや、体の底から力がわいてくるような……。それよりも、それよりも……」
蛇のようにうねる長い尾に、鋭い爪を生やした手――鹿の如き角と長く伸びた髭はまるで、神話に語られる東洋の龍のようだった。
「うち、明らかに人やなくなっとる……! ああ、これが猟兵さんが持つ『真の姿』なんやね」
自然を操り、神の如き神秘性を秘めた東洋龍は、霧の中を悠々と泳ぐ姿が相応しく思えたけれど。しかし真の姿となった空桜の向こう――霧に潜む龍は、彼女の姿を模した亡霊なのだろう。
(「正直頭ん中混乱しっぱなしやけど……でも、今は目の前の敵に立ち向かわなあかん」)
――相手が自分の現身ならば、まともにぶつかったらきっと不利だ。ならば一か八かに賭けてみようと、空桜は空想自然界の力を――東洋の龍に相応しい、自然を再現する電脳世界を身に纏い、強風を操って守りと為す。
「あんた、強そうやけど……脆そうやね」
龍の眼がぎらりと輝くや否や、高速移動を可能とした空桜は、一気に距離を詰めて亡霊龍を吹き飛ばした。そんな中で向こうも風を操り対抗してくるが、倒れる訳にはいかないと空桜は強く思う。
「うちは霧やない……ちゃんと実体があるんやから!」
荒れ狂う防風は、亡霊を完全に吹き消そうと尚も襲い掛かり――態勢を崩した所へ、飛来した一雫の銀が竜霧の果ての巨竜を穿った。
「魔を祓え。悪しきを祓え――」
――刻んだ音、そして言葉は事実となる。ささめくクレムの祈りが霧を晴らすと、マリスの弾く星屑の弦音がそれに重なり、流星の如く放たれた矢が巨竜の幻影を打ち破った。
「流星は奪えない。ただ、その身に降り注ぐだけです」
さあ、勇者たちよ、今こそ力を示す時――守護の霧を剥ぎ取られたグラドラゴの元へ、踊り出るようにして現れたのはびいどろだ。
「……星を食べられてしまう前に、霧の向こうへ。海の彼方に、さようなら」
いただきます、と自分に振り下ろされた一撃を、彼は海月のぬいぐるみで受け止めて。ぱくりと口を開けた海月から排出される衝撃が、そのまま跳ね返ったグラドラゴは――己を守る筈の霧にその身を食い破られて、悲痛な迄の絶叫を響かせる。
「春も星も、今を生きるものに与えられたもの。……過去の亡霊に食わせる未来はない」
そして、その鳴りやまぬ聲を断ち切るように――シナス・ロリスの銀弾が、福音のように渓谷へ響き渡った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
浮世・綾華
【軒玉】
(視界が儘ならないのは苦手だ
何処か不自由な気分になるから
嗚呼、早く晴らしてえ)
敵とはある程度距離をとって毒には警戒
ニケちゃん、さっすが
霧から覗く身体に向かって
黒猫道中を発動
頼むぜ、ヒカゲ。しっかりな
竜のいる場所を把握できるよう追跡させ
鬼火踊ルで居場所を示し情報を共有
咎力封じで動きを止める隙も狙う
女の子たちのナイト役は黒羽に任せるケド
あいつ自身も危なそうなら
毒耐性、かばうを使用
お前、かっこつけすぎじゃね?
ヘマとかするかよと笑い返し
ああ、そうゆう攻撃なら自分も得意だが
今回は彼女に見せ場を
花ハ舞ウで支援、霧じゃねえケド
これも目暗ましになんでしょ
ニケ・セアリチオ
【軒玉】
これほどの濃霧を見るのは初めてで
真白に包まれた景色には
思わず感嘆を覚えるけれど
ええ、でも
これは輝きを拒絶してしまうもの
早急に、晴らしてしまわないと…!
毒を警戒し近付かぬよう立ち回り
霧の竜達を皆さんが引き付けてくれている間に
この真白の中から
本体を見つけ出すのが私の役目
黒羽さん、螢さんも
ありがとうございます
少し、少しだけ。耐えていてください……!
魔杖を構えて前を見据え
良く見える目を凝らし第六感を研ぎ澄ませて
かくれんぼの竜を見つける――失せ物探し
心が示す方向へ
めいっぱいの祈りを込めて
風属性の衝撃波を放ちます
――綾華さん、あちらに!
風を吹かしつつも
竜を倒すべく
古代の戦士と共に立ち向かいましょう
華折・黒羽
【軒玉】
※仲間内の連携を最重視
視界が全く利かない…
戦闘中は鼻と耳に頼る事になりそうだな
ニケさん、螢さん、最初は後ろにいてください
俺が盾になります
竜が現れれば「盾」となる為前衛へ
本体からは一定の間合いを保ちながら
分身体の竜達や姿映しの霊を通すまいと
両翼を広げ感覚を研ぎ澄ませ武器の屠・隠・廻の三種を駆使
綾華さんと連携を取りながら妨害・護衛
――綾華さん、ヘマしないでくださいね
等と軽口も
決して退かずに本体へと届く道を切り開く
仲間へと毒の手が及んだ場合は何よりも優先し【無敵城塞】で盾に
使用技能:生命力吸収、第六感、聞き耳、マヒ攻撃、おびき寄せ、覚悟、毒耐性、盾受け、野生の勘、武器受け、なぎ払い、激痛耐性
如月・螢
【軒玉】
聞いていたが、この霧の濃さは厄介だね
風景だけではなく
楽しげな声まで掻き消してしまいそうだ
この村には…なんとなく、そう私でも理解できる
似合わしくない、と――守らねば
【錬成カミヤドリ】で気を散らせ
手数を減らすべく引き付け陽動作戦
毒を警戒し時折霧を【衝撃波】で晴らす
綾華からの共有情報を聞き距離を保つ
連携重視で【援護射撃】でニケや黒羽を援護
まだまだ未熟だけど
――今度はお手並み見せれるか、な
さあ、本体を狙って攻撃と行こう
≪Assam≫から≪Spring thaw≫に持ち替え
【フェイント】を挟み【串刺し】
もう飾られてるだけじゃないんでね
たんと味わっておくれよ
傷があれば【傷口をえぐる】で其処を狙おう
――病んだ吐息が霧を掻き混ぜていく中で、死に瀕した竜は未だ霧中に潜み、此方を屠るべく機を窺っていた。
(「視界が儘ならないのは苦手だ」)
何処か不自由な気分になるのは恐らく、立ち込める霧が鳥籠のように、囲い込んだものを逃すまいとしているからだろう――浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)は嘆息すると、鉛色に染まる視界をぎろりと睨みつける。
「嗚呼、早く晴らしてえ」
「聞いていたが、この霧の濃さは厄介だね……風景だけではなく、楽しげな声まで掻き消してしまいそうだ」
金に透き通るくせっ毛が、霧で湿り気を帯びるのをどうにかするべく、如月・螢(透明な心・f00180)はくしゃくしゃと髪を弄っていたけれど。霧の向こうから姿を見せた、自分を模した亡霊を見て取ると、彼女は赤毛のメイド人形を繰り出し攻撃に備えた。
「視界が全く利かない……戦闘中は、鼻と耳に頼る事になりそうだな」
呟く華折・黒羽(掬折・f10471)は、霧に乗じて襲い掛かる竜の気配を察知しようと、勘を研ぎ澄ませて辺りを探りつつ――自分が盾になると宣言して、螢ら女性陣に後ろへ下がるようにと告げる。
(「……ええ、これほどの濃霧を見るのは初めて」)
そんな黒羽の申し出に礼を述べつつも、ニケ・セアリチオ(幸せのハト・f02710)は眼前に広がる、真白に包まれた景色に感嘆の吐息を零していた。
「でも、これは……輝きを拒絶してしまうもの」
――だから早急に、晴らしてしまわないと。その為には、霧が形づくる竜の軍勢を皆が引き付けてくれている間に、本体を見つけ出す必要がある。
「それが私の役目なら、成し遂げてみせます!」
そして――触れるだけで毒に犯される死の竜霧を、烏の翼を広げた黒羽が迎え撃った。更に仲間たちを狙う分身体の竜達や、姿映しの霊を通すまいと得物を構え、無敵の城塞と化した彼は――時にその身を盾にして、力づくで行く手を阻むのだ。
「おい、お前、かっこつけすぎじゃね?」
黒羽の矢が急降下する霧の竜を撃ち落とした所で、黒い仔猫と五感を共有した綾華が、尚も飛来する竜を鍵刀で断ち切っていった。
「そんなことを言って――綾華さんこそ、ヘマしないでくださいね」
「って、ヘマとかするかよ。ま、女の子たちのナイト役は任せるケド」
――笑みを交えて軽口を言い合うのは、お互いを信頼しているからこそ。この調子なら大丈夫そうだと、黒羽に頷く綾華――そんなふたりに目配せをしつつ、螢は器物を次々に錬成して陽動を行う。
(「この村には……なんとなく、そう私でも理解できる。似合わしくない、と――」)
迫る霧を前に守らねばと強く思う彼女は、時折衝撃波を放って、閉ざされた視界を少しでも晴らそうと努めた。まだまだ未熟だけど――今度はお手並み見せられるか、なと。そんな自分を模倣した、霧の亡霊を足止めする螢へは、良く通るニケの声が感謝と激励を伝えてくれた。
「黒羽さん、螢さんも、ありがとうございます。少し、少しだけ。耐えていてください……!」
――風を司る魔杖を構えてきりと前を見据え、良く見える目を凝らし第六感を研ぎ澄ませて。ニケは本体を見つけようと、尚も集中を続ける。
(「これは、かくれんぼの竜を見つける――失せ物探し」)
己の心が示す方向へ、めいっぱいの祈りを込めて――導きの風を放つ少女はその時、その本体である金貨に唱われていた勝利の女神、そのものとなった。
「――綾華さん、あちらに!」
「ニケちゃん、さっすが」
風が晴らした霧の中――其処へ潜む本体の居場所目掛け、綾華の武装が緋色の鬼火となって、ぱっと花びらの如く降り注ぐ。それを目印にして、古代の戦士を召喚したニケが駆け出し、尚もしつこく襲い掛かって来る霧の竜へは、黒羽が立ち塞がって仲間たちを促した。
(「……決して退かず。本体へと届く道を、切り開く」)
――さあ、竜退治とっておきの見せ場は、螢の為に。白菊の花びらで、綾華がグラドラゴの視界を奪ってくれた隙に、絡繰人形を竜槍に持ち替えた螢は、本体の鱗が剥がれ落ちた場所――その傷口を抉るようにして、一気に串刺しにする。
「……もう飾られてるだけじゃないんでね、たんと味わっておくれよ」
雪が融け、冬を越えた先に待っているのは春を謳う――。そしてきっと、世界は花開くのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ロー・オーヴェル
手を伸ばしたら届きそうに見える星を
手に入れることは不可能だ
それでも手を伸ばしたくなるのは
星の魔力というべきか
この竜もその魔力に束縛されたか?
「だとすれば……この刃でそれを解いてやるさ」
それが俺の役目だ
●
戦闘序盤は距離を取り
ナイフ投げで攻撃
その過程で敵の様子を注視し
此方の攻撃を受けないように庇っている様な部位や
躱す事に専念している様な部位があるか探る
戦闘も終盤に入り敵も相当弱体化した後は
ユーベルコードでの攻撃に切替
前述の注視で弱点が判明している際はそこを
未判明の際は頭なり心臓部なりを攻撃
●
戦闘後は煙草で一服
「星をつかむ」ということは
大それた願いなのかもしれない
この竜はその報いを受けた……のかもな
(「手を伸ばしたら届きそうに見える星を、手に入れることは不可能だ」)
ああ、幸せはすぐ手が届く場所にあったのだ――なんて、そんな物語も何処かにあっただろうか。とりとめのない想いに浸りながらも、ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)は油断なくナイフを投擲して、霧が生み出した己の亡霊を牽制する。
(「どんなに届きそうに見えても、決して星に手が届くことなど、ありはしない」)
それでも手を伸ばしたくなるのは、星の持つ魔力ゆえのことか。この竜もその魔力に束縛されたか、とローは霧の中で苦痛に耐えるグラドラゴを、己の射程に捉えて呟いた。
「だとすれば……この刃でそれを解いてやるさ」
――きっとそれが、自分たち猟兵の役目だろうから。どうやら相手は先程の戦闘で、鱗が剥がれ落ちた部位を手酷くやられたらしい。未だ鮮やかな血が滴り落ちる其処へ狙いを定め、ローの構えた銀灰色の直刀が、流星の煌めきを帯びて吸い込まれていく。
(「……『「星をつかむ』ということは、大それた願いなのかもしれない」)
束縛されぬ者の刃――その冠された名の通りに、終わらない束縛から解き放たれた『霧中の暴君』は。空へ向かって一声啼くと、そのまま霧を道連れにどうと倒れ、ゆっくりと骸の海へと還っていった。
「この竜はその報いを受けた……のかもな」
直後、潮が引くように――或いは、鈍色の幕が取り払われるかのように霧が晴れて、空はあるべき姿を取り戻す。その様子を見届けたローは、懐から煙草を取り出してそっと一服した。
――ああ、やはり、紫煙がたなびくのは青い空が良い。
大成功
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第3章 日常
『星降る夜の物語』
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POW : ご馳走を食べる
SPD : 音楽に合わせてダンスを踊る
WIZ : 星空を見上げて過ごす
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『霧中の暴君』を討ち果たしたことで、渓谷から湧き出す死の竜霧は晴れた。澄み渡る青い空は春の訪れを感じさせるもので、今まで霧に怯えていた村のひとびとも、来たる祝祭に向けて着々と準備に取り掛かり始めたようだ。
どうやら渓谷に棲み付いていた竜は、勇敢な冒険者たちが対峙してくれたらしい――瞬く間に村中を駆け巡った噂によって、村を訪れる猟兵たちは『春を告げ、星を呼んだ英雄』として歓待を受けることだろう。
(「流れ星の日に、小さなお祭りがあるんだって」)
子どもたちは顔を突き合わせて、とっておきの内緒話を語る。その日は滅多に見ない御馳走が振る舞われ、陽気な音楽に合わせてダンスを踊ったり、村の丘から夜空を見上げて流れ星を探したり――。
(「でもね、一番素敵なのは……今夜だけは夜更かししてもいいってこと!」)
――その村の名は、誰が呼んだか『星空に一番近い村』。これはそんな村で紡がれる、星降る夜の物語。
糸縒・ふうた
■リル(f10762)と一緒
アドリブ歓迎
澄んだ星穹の元、胸いっぱい深呼吸
おいしい
普通、は当たり前じゃなくて
特別、なんだね
星穹を游ぐリルはいつにもましてきらきらできれい
なぁに?
見ればリルの手のひらにもお星さま
かわいい
なんて名前おかし、なんだろ
かりかり噛み砕くお砂糖の星を食べながら
ごろんと寝そべって見上げるは満点の星空
このひとつひとつに物語があるの?
きっとそれは、素敵なお話なんだろうと胸踊る
こんなに星が近いなら、流れ星も見つかるかな?
え、どこどこ?
見つかってもすぐに流れちゃう
この一瞬に三回唱えるのは無理そうだから
次に見つけたら、一回だけ
しあわせに、なれますように
君が笑って過ごせる明日が、来ると良い
リル・ルリ
■ふうた(f09635)と
✼アドリブ等歓迎
「わぁ、すごい!」
手が届きそうな星穹
游げば心地よくて瞬く星の海に溺れてしまいそう
特別な空は、特別に美しくて笑顔が零れる
「そう、ふうた。僕、かわったお菓子をみつけたんだ」
掌にころり、星が転がる
甘い星型の砂糖のお菓子
一緒に食べよう?
かりかり星を砕き
草むらに寝転んで星を観る
星には物語があるって聞いた
僕にはわからないのだけれど
ろまんちっくだね
あ、星が流れた
ふうた見た?
白い指で星を辿る
ほらまた
瞬く間に消えてしまうけれど
願いを3回唱えなきゃ
願いなんて
抱いた事がなかったと気がつく
嗚呼願い
今は一つだけ
『君』の笑顔が明日も明後日も咲きます様に
それだけで僕は
しあわせだから
――太陽が山脈のふもとに沈んでいくと、空は深い色彩にいろどられながら、やがて夜の闇を纏う。きらきらと瞬く星々が、天蓋を埋め尽くすように散りばめられると、いよいよ『星空に一番近い村』のお祭りの始まりだ。
「わぁ、すごい!」
さっそく、村で一番見晴らしの良い丘に登ったリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)は、手が届きそうな星穹を見上げて、月光ヴェールの尾鰭をゆらりと揺らす。
「うん、空気も、すごくおいしくてきれい」
一方の糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)は、澄んだ星穹の元で胸いっぱいに深呼吸をしていた。標高の高い村の空気は、空に近い分だけ混じりけのないもので――けれどそれは、『霧中の暴君』を斃したからこそ取り戻せたものなのだ。
「……普通、は当たり前じゃなくて。特別、なんだね」
ぴょこり、帽子からはみ出そうになる狼耳を押さえながら、ふうたが見つめる先には、星穹を游ぐリルの姿が在った。
(「リルはいつにもまして、きらきらできれい」)
特別な空は特別に美しくて、知らず笑顔を零す人魚の少年は――星と月の祝福を受けながら、心地良さそうに宙を舞っていて。
その姿はまるで、瞬く星の海にそのまま溺れてしまいそうだったけれど、其処でリルは幻想の海から無事に戻ってくると、ふうたに向けて掌を翳してみせた。
「そう、ふうた。僕、かわったお菓子をみつけたんだ」
なぁに? と小首を傾げて覗きこむふうたの瞳に飛び込んで来たのは、ころり転がる小さな星。
「……かわいい。なんて名前おかし、なんだろ」
「金平糖って言うんだって。一緒に食べよう?」
――甘い星型の砂糖菓子は、星降る夜の祝祭にのみ振る舞われる、特別なものらしい。口の中でかりかりと音を立てて砕けていく星の欠片は、ほんのりした甘さを余韻のように残して、じわり溶けて消えていった。
「……星には物語があるって聞いた。僕にはわからないのだけれど」
「え、このひとつひとつに物語があるの?」
金平糖をお供に、ごろんと草むらに寝転んで星を見上げるふたりは、とりとめのない話に花を咲かせる。きっとそれは、素敵なお話なんだろう――ふうたが胸を躍らせれば「ろまんちっくだね」とリルも頷いて。そんな時にふと彼の薄花桜色の瞳が瞬き、光の尾の残滓を白い指がなぞった。
「あ、星が流れた。ふうた見た?」
「え、どこどこ?」
「ほらまた」
――こんなに星が近いなら、流れ星も見つかるかなと言う期待はあったけれど、見つけても瞬く間に消えてしまう。確か、願い事を三回唱えたら叶う筈――それでも、この一瞬に三回も唱えるのは無理そうだと判断したふうたは、次に見つけたら一回だけと決めて空を仰ぐ。
一方のリルも流れ星のおまじないを思い出して、願いを唱える準備をしていたけれど――願いなんて、抱いた事がなかったと気がついた。
(「嗚呼願い、それでも今は一つだけ」)
――やがてふたりの見守る先で、一筋の星が流れていく。
(「しあわせに、なれますように」)
君が笑って過ごせる明日が、来ると良いと。ふうたが懸命に祈る先で、リルもまたたった一つの願いを星に託した。
(「……『君』の笑顔が、明日も明後日も咲きます様に」)
だって、それだけで僕は――しあわせだから。
大成功
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フィリア・セイアッド
【アイビス】
「WIZ」を選択
レイン こっちよ
村の子に教えてもらった星のよく見える場所へ 友人の手をひいて
わあ すごく綺麗…!星に手が届きそう
目を輝かせて夜空を見つめる
あ、あの星は知っているわ 「シリウス」よ
旅人の道標は北極星だけど …私の星はシリウスなの
冬を超え春へと導いてくれる青い星
遠くを見る友人に首を傾げるが 差し出された手に目をぱちくり
数瞬置いてぱっと笑顔
お姫様のようにスカートをつまんで「喜んで」とお淑やかに
音楽に合わせて踊りながら
ね、レイン
レインはいつも私を守ってくれるけど…
私にもたまには守らせて、ね?
流れ星と 自分を守護する星に祈る
この村と 大切な友人が
どうか沢山の幸せが降るように
レイン・フォレスト
【アイビス】
お祭りが無事にできるようになって良かった
村の人達の笑顔を見て心からそう思う
夜更かしか、それはいいね
村の子供に笑顔を返して
僕達も夜更かししようか?フィリアに笑いかけ
「シリウス」と言う言葉に、お父さんの名前だねと笑い
降るような星空を見上げれば不思議な浮遊感
吸い込まれそうな一体化してしまいそうな感覚と
何かを思い出しそうな痛みに頭を振り立ち上がる
村の方から聞こえてきた音楽に振り向き
(体を動かした方がいいかもしれない)
だから隣の友人に手を差し出して
「お嬢さん、僕と踊ってくれませんか?」
恭しく一礼
まだ思い出したくない
そう心のどこかで思ってる
今はこの楽しいひとときを大切な友人と踊って過ごそう
星降る夜を祝おうと、村のあちこちが星を模した銀細工で彩られ、時折吹く風に揺られてしゃらしゃらと澄んだ音を立てている。
行き交う村の人達は、皆気さくに挨拶をしてくれて――お祭りが無事にできるようになって良かった、とレイン・フォレスト(新月のような・f04730)は、彼らの笑顔を見て心からそう思っていた。
「夜更かしか、それはいいね」
早速子ども達から内緒話を教えて貰ったレインは、笑顔と共に手を振って別れると、隣に居るフィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)にそっと囁く。
「……じゃあ、僕達も夜更かししようか?」
「ふふ、素敵ね。レイン、こっちよ」
フィリアはそんな友人に悪戯っぽく微笑み返すと、彼らに教えて貰った星の良く見える場所へ、手をひいて共に駆けて行った。夜に踊るフィリアの漆黒の髪――其処に揺れる白の茉莉花は酷く鮮やかで、花言葉に相応しい柔和な表情が夜空を見上げてぱっと輝く。
「わあ すごく綺麗……! 星に手が届きそう」
彼女の指先はやがて、空の一点を指し示し――其処に一際輝く、美しい蒼星が在るのを見て目を細めた。
「あの星は……『シリウス』かしら?」
この世界にある星座は、もしかしたらフィリアの知るものとは少し違うのかも知れないけれど。それでもきっと、旅人の道標になる北極星のように、大切な星のひとつなのだろうと思う。
「シリウス、か……それって、フィリアのお父さんの名前だね」
「ええ……私の道標になってくれる星。冬を超え、春へと導いてくれる青い星」
心地良いフィリアの声を耳にしながら、星空を見上げるレインは何故だか――不思議な浮遊感を覚えて、深紅の瞳を瞬きさせた。
(「星が降って来そうな……否、吸い込まれて一体化してしまいそうな、これは……」)
――瞳の奥でちかりと光が弾け、何かを思い出しそうな痛みに頭を振って。急にレインの耳に飛び込んで来た、村で奏でられる音楽たちに我を取り戻すと、彼女は頭を振ってゆっくりと立ち上がる。
(「これは、体を動かした方がいいかもしれない」)
だからレインは隣の友人に手を差し出し、恭しく一礼をしてから、こう告げるのだ。
「お嬢さん、僕と踊ってくれませんか?」
――と、フィリアは差し出された手に、目をぱちくりさせて固まっていたものの。数瞬置いてから、ぱっと笑顔になってその手を取る。
ええ、喜んで――お姫様のようにスカートをつまんで、彼女が淑やかにそう告げた後、音楽に合わせてふたりだけのダンスが丘の上で始まった。
(「まだ思い出したくない、そう心のどこかで僕は思っているんだろう」)
未だ過去の記憶に惑うレインは、それでも今はこの楽しいひとときを、大切な友人と踊って過ごそうと決める。
「ね、レイン。レインはいつも私を守ってくれるけど……私にもたまには守らせて、ね?」
そして触れ合う手と手を握りしめ、フィリアは頭上で輝く流れ星と、自分を守護してくれる蒼星にそっと祈っていた。この村と大切な友人に、どうか沢山の幸せが降るように――と。
大成功
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月守・ユエ
セラ君(f03368)
アル君(f03401)と一緒!
年の割に無邪気
アドリブ可
わぁっ
星が沢山!すごーい!
…ん?流れ星を見つける競争?
いいね♪頑張ってみよう!
と言いつつ
どこだろう?
空を見渡し見つけようとする
2人が見つけた事に気づかずに
うーー…と目を凝らしている
見つけられないでいると
コルノくんがフォローしてくれて
う?……!わ、見つけた!コルノくんすごーい!
ねぇねぇ、見つけたよ!2人とも~!
こんな贅沢していいの?!
流れ星のご褒美、もふもふ!
幸せすぎるよっ
こんなにぬくぬくだと
なんだかうとうと
頑張りすぎは、ダメだよ?
頑張るなら皆で
…2人の事は僕が護るから、ね…
言ってる途中で
すや…と寝落ちしてしまう
アルバ・ファルチェ
セラ(f03368)とユエちゃん(f05601)と行動。
ユエちゃんは年上だけど妹みたいな存在。
(絡みやアドリブ歓迎)
夜はまだ肌寒いから暖かい格好で星を眺めようかな。
綺麗な星空をのんびり眺めるっていいね。
流れ星見つけられるかな?
…そうだ、誰が1番に見つけるか競争しよっか。
1番に見つけた人がご褒美に何か一つお願い事を叶えて貰えるとかさ。
あ、先に見つけてもユエちゃんに勝ちを譲るよ。
見つけられないならコルノにフォローして貰おう。
狼姿、もふもふぬくぬくする?
コルノも一緒に。
寝ちゃったら風邪ひかないように尻尾を巻き付けとく。
こんな穏やかな日が続けば良いのにね。
それが続くよう、もっと頑張らなきゃ…。
セラータ・ファルチェ
アル(f03368)とユエ(f05601)と一緒に行動
アドリブと絡みは歓迎
意外とまだこの時間は寒いな。
マフラー巻いて暖かい飲み物準備して星見に備えるか
流れ星か、探すのは久々だな。
競争?ふむ……乗った。
先に見つけても見なかったふり
あ(あった)……いや、気のせいだった。
狼姿?…や、まぁかまわないが。
……遅くなりすぎる前に帰るからな。
アルと一緒に狼姿でユエの傍に
たまにはこんな日もありだろう。
猟兵と言えど休憩は必要だ。
……頑張りすぎは良くないからな。
無茶をすることが多い弟に釘を刺しておくとしよう
春の訪れを祝う祭りとは言え、高地の村ともなれば夜は冷える。肌を撫でる風にぶるりと身を竦めた、アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)だったが、寒さ対策は確りと行っているので問題ない。
「ふむ……意外とまだこの時間は寒いな」
そんなアルバの双子の兄――鏡映しのような美貌を微かに顰める、セラータ・ファルチェ(蒼蒼の盾・f03368)も首元にマフラーを巻き、これから行う星見に備えて飲み物を持ってきたようだ。
「わ、ありがとうセラ!」
暖かな湯気を放つそれをひとつ受け取って、人懐っこい笑みを浮かべるアルバの前を、ふわりと黒薔薇のストールが舞う。大人びた雰囲気の中にも、無邪気さを覗かせる月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)は、軽やかな足取りで星の見える丘を登っていった。
「わぁっ、星が沢山! すごーい!」
頭上を埋め尽くす満天の星に、思わずユエが手を伸ばすと――アルバとセラータも綺麗な夜空に魅入り、暫しゆったりとしたひと時を過ごす。
「流れ星見つけられるかな? ……そうだ、誰が一番に見つけるか競争しよっか。一番に見つけた人がご褒美に何か一つ、お願い事を叶えて貰えるとかさ」
――と、其処で。そんなアルバのふとした提案に、俄然やる気を見せたのがユエだった。
「……ん? 流れ星を見つける競争? いいね♪ 頑張ってみよう!」
「探すのは久々だが、競争? ふむ……乗った」
いつもは冷静なセラータも、意外に興味を惹かれた様子で目を凝らし、三人揃って流れ星を見つけようと星降る夜の世界に遊ぶ。
(「うーん……そうは言ったものの、どこだろう?」)
うー、と唸り声を上げつつ目を凝らすユエだったが、なかなか見つけられずにいて。そんな中でアルバやセラータは、時折光る流れ星を発見していたのだが――。
「あ。……いや、気のせいだった」
思わず声を上げそうになったセラータは、見つけても見ない振りを装って軽く咳ばらいをした。と言うのも、やっぱり先に見つけてもユエに勝ちを譲りたいと思っていた訳で――年上なんだけど妹みたいなんだよねと、双子の兄だけに聞こえるようにアルバが囁く。
(「うーん、見つけられなさそうなら、コルノにフォローして貰おうか」)
――そうしてあちこちに視線を彷徨わせているユエの元へ、ちょこちょこと近づいていったのは、アルバのもふもふ竜であるコルノだった。
「え? どうしたのコルノくん……う?」
ユエのストールを引っ張って振り向かせた、その方角に――きらりと零れ落ちたのは流れ星。星の海の中でも一際うつくしく輝いた光の尾に、思わずユエが歓声を上げる。
「……! わ、見つけた! コルノくんすごーい! ねぇねぇ、見つけたよ! 二人とも~!」
「おめでとう。じゃあ、約束のお願い……狼姿、もふもふぬくぬくする? コルノも一緒に」
「狼姿? ……や、まぁかまわないが」
おめでとうと口々に祝福したふたりの申し出に、星の輝きよりも眩しいユエの瞳が、素直な喜びを伝えてきた。「そんな贅沢していいの?!」と戸惑いつつも、狼の姿を取ったアルバとセラータに囲まれて、もふもふとぬくぬくに包まれたユエはうっとり夢心地だ。
「流れ星のご褒美、もふもふ! うう、幸せすぎるよっ」
「……遅くなりすぎる前に帰るからな、って」
先程まではしゃいでいたユエは、瞼を閉じてうとうとと眠りの世界に旅立ってしまったようで――風邪をひかないようにと、アルバがもふもふ尻尾を巻き付けて温かくしつつ、ぽつりと零す。
「こんな穏やかな日が続けば良いのにね。それが続くよう、もっと頑張らなきゃ……」
「ああ、だが……頑張りすぎは良くないからな」
ごろりと丘の上に寝そべるセラータは、無茶をすることが多い双子の弟に釘を刺しておきつつ、たまにはこんな日もありだろうと首を巡らせた。
そう――猟兵と言えど、休憩は必要なのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マリス・ステラ
【WIZ】お祭りを楽しみます
手元にはご馳走と果実酒
食べて飲んで、ダンスを踊るのもいいでしょう
他の猟兵との交流を歓迎します
「夜更かししても良いのです。実に素晴らしい」
満天の星の下で乾杯とグラスを掲げます
大人も子供も、皆が楽しそうな顔を見られたならとても嬉しい
「……時は移り、所は変われど、人の営みには何ら変わることはない」
ヤドリガミとして、悠久の刻の流れに身を置くからこそ思います
そして、今こうして見える景色にひとの幸いが詰まっている
流れ星を見つけられるなら願い事をしてみましょう
「永遠ならざる平和のために」
この幸いが長く続くように『祈り』を捧げます
さあ、踊りましょう
夜はまだこれからなのですから
東雲・咲夜
アスリーちゃん
一緒にお星さま見ませんかっ
うちの名前は「咲夜」で朔夜…新月の意味やけど
月も星も美しくて大好き
双子の弟がね、「円月」でお月さま
せやからうちらはふたりでひとつ
それから「咲耶姫」…桜の神様も掛け合わされとるの
この名前、えらい気に入っとるんよ
アスリーちゃんは何も憶えてあらへんのやっけ…
ほんならここから楽しい想い出いっぱいにしましょな
真っ白って事は、これから好きな色にしていけるって事やもの
まず今夜は、うちと一緒に歌ってくれはったら嬉しい
お星さまの童謡、知ってはる?
白くて美しい繊細なその手を取って
美しい声に重ね合わせましょ
バーチャルキャラクター…うちらと何も変わらんし
こないにあったかいんやね
三嶋・友
星空に一番近い村かあ
何気に私結構星好きなんだよね
小さい頃は北極星を見つける歌とか歌いながら星座の先を辿ったっけ
今でも流星群とか聞いたら絶対空見上げるし!
この世界なら家で見る星空より断然綺麗な星空が見られるんだろうなあ
折角だし、アストリットさんに声かけてみようかな
はぁい、そこの彼女
私と一緒に運命の星を探さない?
なんてね
勿論他の猟兵さんと一緒でもおっけー!みんなで楽しもう♪
御馳走を食べるも良し、アストさんなら歌い踊る方がお好みかな?
でもやっぱり、ここでの一番は流星群、だよね!
あ、ほら!流れた!あっちも!!
流星群でも願い事ってやっぱりなかなか言えないんだよね
アストさんは何か、星にかける願いとかある?
(「……星空に一番近い村かあ」)
ひとびとの歓声が絶えない村の広場を歩きながら、三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)はふと己の心と向き合い、星屑が散りばめられた夜空を見上げる。
「何気に私、結構星好きなんだよね。……小さい頃は北極星を見つける歌とか歌いながら、星座の先を辿ったっけ」
今でも勿論、流星群なんて素敵な言葉を聞けば、絶対空を見上げるし――そんなことを思いながら、改めて友が見つめる異世界の星空は、自分の家で見るものとは何処か違った感じがした。
「よし、折角だし……はぁい、そこの彼女。私と一緒に運命の星を探さない?」
なんてね――と悪戯っぽく声を掛ける友の向こうには、真剣な表情で星空とにらめっこをしている、アストリット・クロイゼルング(幻想ローレライ・f11071)の姿があって。彼女はぱちくり瞳を瞬きさせると、真面目な様子で友に尋ねた。
「運命の、星……そのようなものが、存在するのですね。どの方角を中心に探せばよいのでしょう?」
「あはは、どうしよー。まさか真顔で返されるとは思ってなかったよ……!」
――何だろう、冗談でナンパっぽい文句を吐いただけに、この反応はちょっとむず痒い。そんなアストリットと一緒に星見をしていた、東雲・咲夜(桜歌の巫女・f00865)は「アスリーちゃんは色々勉強中なんよね」とはんなり微笑んでいる。
「でも、運命の星なるものは、うちも初めて聞いたんよ……。良かったら詳しく教えてくれへんかな?」
そう言って、純粋なまなざしを向けてくる咲夜の姿に、友は「ごふぅっ」とむせて、慌てて果実のジュースを流し込んで喉を潤した。――いけない、ピュアな美少女たちを誑かしているみたいで、良心が痛みまくっている。
「あ、そうそう……うちの名前は『咲夜』で朔夜……新月の意味やけど。月も星も美しくて大好き」
そんな中、咲夜は己の名の由来について、優しくアストリットに語っているようだった。双子の弟は『円月』でお月さま――だから、自分たちはふたりでひとつなのだと。
「なるほど……そんな風に名前と一緒に存在が繋がっている……。それは、素敵なことだと思います」
「ふふ、ありがと。それから『咲耶姫』……桜の神様も掛け合わされとるの」
この名前がすごく気に入っているのだと微笑む咲夜に、釣られたようにアストリットもはにかんでみせて。それは神話の物語にもありましたね、とぽつりと呟いた。
「お姉さんは、岩のような永遠の象徴で……妹の咲耶姫は、繁栄の象徴。花咲くように栄え、けれど花のように命も儚い……けれどわたしは、刹那の美しさを尊く思います」
「そうだね、例えば空に流れる流星群……とか? あ、ほら! 流れた! あっちも!!」
丁度流れ星が幾つも降り注ぐ瞬間に居合わせた友は、篝火が揺らめく村の広場のあちこちから、歓声が上がって音楽が鳴らされたことに気づく。そうして村の皆と一緒になって、喜びを表現していた友の隣――果実酒を片手に優雅に近づいて来たのは、桜の精を思わせるマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)だった。
「今日は夜更かししても良いのです。実に素晴らしい」
「あはは、だねぇ。かんぱーい!」
グラス同士がぶつかって澄んだ音を鳴らし、夜空の流れ星の欠片が溶けていくよう――果実の実りを存分に味わうマリスと友は、村人たちの幸せそうな様子を眺め、どちらからともなく吐息を零す。
「……時は移り、所は変われど、人の営みには何ら変わることはない」
――それは、花器のヤドリガミとして、悠久の刻の流れに身を置くマリスだからこそ知り得たこと。大人も子供も揃って楽しそうに笑顔を見せ、祭りを楽しんでいる――今こうして見える景色に、ひとの幸いが詰まっているのだ、と。
「あ、……」
ついと夜空を過ぎる流れ星を名残惜しそうに追いかけて、友は苦笑する。願いごとはやっぱり、なかなか直ぐには言えないものだ。アストリットは、星に願いをかけると言うこと自体初めての経験らしく、悩んでいる内に機を逃していて――代わりにマリスに願いを尋ねてみると、彼女は星が転がるような声で祈りを囁いた。
「永遠ならざる平和のために……この幸いが、長く続くように」
(「アスリーちゃんは、何も憶えてあらへんのやっけ……」)
電子の海を漂う存在として生まれたアストリットが、現実に飛び出したのは最近のことだと聞いた咲夜は、ならばここから楽しい思い出をいっぱいにしましょな――と言ってその手を取る。
「だって真っ白って事は、これから好きな色にしていけるって事やもの」
「好きな色に、していく……。ならわたしは最初に、桜の色を加えたいと思います」
――ならば先ず今夜は、お星さまの童謡を一緒に歌ってみよう。ふたりの繊細な手と手が重なり、清冽な咲夜の歌声に導かれるように、アストリットの透明な声が星空の素晴らしさを歌い紡いでいく。
(「バーチャルキャラクター……うちらと何も変わらんし、こないにあったかいんやね」)
さあ、踊りましょう――そう言って金平糖をひとつ摘まんで、踊りの輪に加わっていくのはマリスだ。
「……夜はまだ、これからなのですから」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
都槻・綾
f01982/咲さん
温かな茶を手に
丘へ
夜更かししても良いそうですし
朝まで語り明かしましょうか
眠くなったら
肩でも膝でもお貸ししますよ
二人並んで毛布を羽織り
茶に映り込む星影も飲み干したら
楽しげに帳面を開く
咲さんへ星座を訪ねつつ
空を観察記録
普段住まう世界の宙とは違っていて面白い
――あぁ、
流れ星
と言い切る前に消える光
けれど二人同時に声を上げた事へ
顔を見合わせて笑う
種蒔きと芽吹きの春の、星祭り
瞬く星々は神が蒔いた命の種なのかも知れません
或いは
長い長い歳月を経て咲いた星の花でしょうか
――何て美しい、いのちの光
憧れると呟く彼女の眼差しもまた
星を映して澄んでいるから
貴女も綺麗ですよ
微笑んで
偽りなき賛辞を贈ろう
雨糸・咲
綾さん(f01786)と
温かいお茶を手に
背には陽気な音楽と弾む声
夜更かしって
何だかんだわくわくしますね
ふふ
綾さんが先に眠くなったら
私も膝をお貸しします
毛布の中
肩の温かさに少し紅くなっても
宵闇が隠してくれるはず
一天の星は
今にも落ちてきそうで
手を伸ばしてみるけれど
届かないのですよね…
こんなに近く感じるのに
でも
手中の器に目を落とせば
あ…これなら、
映る瞬きに唇を寄せ
届きましたと笑み綻ぶ
星座の名を尋ねられては答えるうち
視界の端を滑り落ちる白い耀き
あ…、と
ほんの一声の間にもうお終い
綺麗と笑えば
それで充分だから
煌めきは遠く小さくとも
自ら放つ光
本当に綺麗…
憧れてしまいます
届く賛辞に頬を隠すのは
…熱い、から
温かなお茶が、ふんわり湯気を立ち上らせる中――背後から微かに聞こえてくるのは、陽気な音楽に弾む声。一歩ずつ歩を進めるごとに喧噪が遠ざかり、反対に星空はくっきりと存在感を増して、雨糸・咲(希旻・f01982)の頭上に優しくヴェールを広げていく。
「夜更かしって、何だかんだでわくわくしますね」
星が見える丘をゆっくりと登りつつ、隣の都槻・綾(夜宵の森・f01786)に囁けば――彼は若葉色の瞳を柔らかく細めて、朝まで語り明かしましょうかと応えてくれた。
「眠くなったら、肩でも膝でもお貸ししますよ」
「……ふふ。綾さんが先に眠くなったら、私も膝をお貸しします」
――みどりが芽吹く匂いをそっと吸い込みながら、丘の上にふたり並んで毛布を羽織って。名残惜しくも、水面に移り込む星影ごとお茶を飲み干した綾は、楽しげに帳面を開いて星見の準備をしているようだ。
(「少し紅くなっても、宵闇が隠してくれるはず……」)
毛布のぬくもりと、触れ合う肩のあたたかさを愛おしく想いつつ、咲は一天の星に手を伸ばしてみるけれど。
(「届かないのですよね……。今にも落ちてきそうで、こんなに近く感じるのに」)
思わず目を落とした先――彼女の目に飛び込んで来たのは、手中の器に映り込んだ星の瞬きだった。
「あ……これなら、届き、ました」
唇を寄せ、そっと湯気を立てるお茶を飲み干して。綻ぶ笑みを見せる咲の元へ、そっと空の星座を尋ねてくる綾は、興味深そうに星の並びを帳面に記している。
「成程、普段住まう世界の宙とは違っていて面白い」
そんな静かなやり取りを楽しんでいると、ふたりが見上げる夜空の向こうに、ふっと白い耀きが滑り落ちていった。
「あ……、」
「――あぁ、」
――流れ星、と。言い切る前にその光は消えてしまったけれど、ふたり同時に声を上げたことに、咲と綾は顔を見合わせて笑う。
(「……ほんの一声の間にもうお終い。でも、綺麗と笑えば、それで充分だから」)
視界の端を過ぎった光はまぼろしではなかったのだと、そのうつくしさを綾と共有出来たことが、咲には嬉しく思えた。
「種蒔きと芽吹きの春の、星祭り――瞬く星々は、神が蒔いた命の種なのかも知れません。或いは」
長い長い歳月を経て咲いた、星の花でしょうか――そんな綾の紡ぐ言葉を受け止めて、咲が見上げた先にはちいさな輝きが幾つも花開いている。
「……煌めきは遠く小さくとも、自ら放つ光。本当に綺麗……憧れてしまいます」
「……貴女も綺麗ですよ」
淡い笑みを浮かべ、偽りなき賛辞を贈る綾から、咄嗟に頬を隠してしまったのは――熱い、から。けれど綾は、憧れるのだと呟いた咲のまなざしを忘れないだろう。
(「――何て美しい、いのちの光」)
――それは星を映して、澄んだ光を湛えていたから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブや絡み歓迎
うふふ
今日も元気ねフレズ!和むわ
え?踊るの?
……せっかくだけどフレズ……あたし、踊るの下手なのよ
大人しく星を観たり……あ、星の絵を描かない?
うっ……リルに……
それを持ち出されるとあたし……何も言えないわ……
わかった
フレズと踊る練習をするわ
御相手よろしく、可憐な星の乙女さん?
とはいっても身長差に力の差
自然、フレズをぐるぐる振り回す形になり
楽しんではくれてるみたいだけれ……
ええ
あたしもなんか!違う気がするわ!
あっ、手が滑っ……フレズー!!
ちょ!待って、フレズどこにいくの?!
慌てて翼をはためかせ、飛んでくフレズを追う
ああ
それにしても
綺麗な星空だこと
フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブや絡み等歓迎
わーーい!綺麗な星空だよ櫻宵ー!(転がりまわりぴょんと起き上がり
今日のボクは星の乙女さ!
お手をおだし
ボクが踊ってあげよう!
……え?下手?知ってる
櫻宵、いつまでもそんなんじゃ
愛しのリルくんに愛想つかされちゃうよ?!
ほらほら、ボクが練習相手になったげる!桜の乙女なんでしょ!
……なんて言わないと
踊ってくれないんだもん
あのね櫻宵
ボクは踊るっていうのと振り回すってのは違うと思う
違うんだ!(両手を繋いだまま
ぐるぐる回される
あっ!手を離さないでっ!(砲丸投げの様に飛んでく
今宵のボクは流れ星、か……
これだから桜のゴリラは……
先が長いね
けど
星が綺麗ーー(飛んでく
「わーーい! 綺麗な星空だよ櫻宵ー!」
きらきら輝く夜空の星にも負けないくらい、絢爛の声を響かせて――フレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)は『星空に一番近い村』の夜を楽しむ。
「うふふ、今日も元気ねフレズ! ……和むわ」
「そう、今日のボクは星の乙女さ!」
ぴょっこり跳ねる兎の耳と、紅鶴と星蝙蝠の翼を楽しそうに揺らすフレズローゼは、そのまま空に羽ばたいていきそうで。そんな少女を優しく見守る誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)はさながら、花あかりで闇夜を照らす淡墨桜の化身だろうか。
「……さあ、お手をおだし、ボクが踊ってあげよう!」
くるくると広場を駆けて転がりまわり――やがて、ぴょんと元気よく立ち上がったフレズローゼは、そのまま櫻宵の元へ手を差し出して胸を張る。
「え? 踊るの? ……せっかくだけどフレズ……あたし、踊るの下手なのよ」
「……え? 下手? 知ってる」
その誘いを、もじもじと恥じらいつつ辞退しようとする櫻宵だが、フレズローゼは容赦しない――大人しく星を観たり、星の絵を描かないかと代案を述べていく櫻宵を、キマイラの少女は苺月の瞳を燃やして一喝した。
「櫻宵、いつまでもそんなんじゃ、愛しのリルくんに愛想つかされちゃうよ?!」
「うっ……リルに……。それを持ち出されるとあたし……何も言えないわ……」
いとおしく想う少年の名を出された櫻宵は、がっくりと膝を付き――それから、決意を宿した瞳でフレズローゼの手を取る。
「ほらほら、ボクが練習相手になったげる! 桜の乙女なんでしょ!」
「……わかった、フレズと踊る練習をするわ」
――御相手よろしく、可憐な星の乙女さん? そう囁いてにっこり微笑んだ櫻宵は、いつも通りの快活なオネェだ。きっと、こうでも言わないと踊ってくれなかっただろう――それでもふたり一緒に、星空の下で踊れるのなら。
「あのね櫻宵……ボクは、踊るっていうのと振り回すってのは違うと思う……」
――当初はそう思っていたフレズローゼだったが、身長差と力の差は如何ともしがたく。自然と櫻宵にぐるぐる振り回される形となった彼女は、両手を繋いだまま生じる遠心力に、ただただ翻弄されていた。
「楽しんではくれてるみたいだけれ……ええ、あたしもなんか! 違う気がするわ!」
「そう、違うんだ!」
――ぐるぐる回り続けるふたりは止まらない、否、止まれない。何だか、こんな感じのプロレス技があったような気がするが――其処で汗だくになった所為か、櫻宵の手がつるりと滑った。
「あっ! 手を離さないでっ!」
「え、え、手が滑っ……フレズー!! ちょ! 待って、フレズどこにいくの?!」
あっ――と戸惑う声が尾を引いて、砲丸投げのように見事に飛んでいくフレズローゼ。
(「今宵のボクは流れ星、か……これだから、桜のゴリラは……」)
先が長いね、と遠い目をした彼女は本当に、星空に向かって羽ばたいていくことになって――慌てて翼をはためかせ追いかける櫻宵と一緒に、ふたりの声が祭りの夜を彩っていく。
「けど、星が綺麗――!」
「……ああ、それにしても、綺麗な星空だこと……!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
春告の英雄かァ、良い響きだなァ!
これで心置きなく祭事を楽しめるというものよ!
平和をもたらした後のこの空気。
いやァ、いつ味わっても良い気分だ!
祭りの目玉だ、丘から夜空を見上げていよう。
もし同伴にあずかれる者がいれば、一緒に飯でも食いたいところだ。
しかし晴れて良かったよ。
霧が晴れたとはいえ、天候までは我々にはどうしようもないからな。
……そういえば、流れ星には何か逸話があるのだっけか。
願い事を三回、流れ終えるまでに言えれば――だったかな?
神頼みというのも柄ではないが、折角だ。
ここはひとつ、探してみるとしよう。
須辿・臨
それじゃ、ご馳走を……って言いたいところっすけど、空見に行くっす!
流石はすっごく空が近いっすね。
さっきまで霧が掛かってたからか、すごく鮮明で、綺麗な空っす。
色んなところを旅してても、やっぱ空は空だなあって思うんすけど。
星空だけは、なんか違うんすよね。
あー、星が流れたら願い事をする!って昔教わったっすねえ。
こんだけ沢山星があったら、どれかひとつくらい願い事叶えてくれるかもしれないっすね。
子供の頃は、立派な剣士になれますように、なんてベタなヤツだったっすけど。
今は、周りのみんなが幸せに過ごせますように、とか。
……もっと美味しいモノに出会えますように、とか思ってるっす。
アレンジ他歓迎。
秋遊・空桜
晴れる霧、村の人たちの笑顔…
ちゃんと守ることができたんやね…よかったぁ
この世界のお祭りって初めてでわくわくや
うちはやっぱりご馳走…!
地元のおすすめ料理を教えてもらって、美味しいものぎょうさん食べたいわぁ
…今回の戦いで『真の姿』っていうのに、初めてなったけど
あまりに今のうちと違いすぎて、夢やったんやないかって気もしとる
…ちょっと、怖いわ…
ってあかんあかん、しんみりしちゃ
せっかくのご馳走に失礼やね
星の海、うちにとっては見慣れたものやけど
こうして地面に立って遠くに見るんは、なんか新鮮な気持ちや
あの海はうちの世界の海とは違うけども、みんな星を見て笑顔になって…星を好きでいてくれてること、うちも嬉しいな
死の竜霧を生み出す『霧中の暴君』を討伐した、勇敢な冒険者たち――『春を告げ、星を呼んだ英雄』と村中で讃えられることとなった、須辿・臨(風見鶏・f12047)ら猟兵は、道行くたびに声を掛けられ、酒や御馳走を勧められると言う歓待を受けていた。
「春告の英雄かァ、良い響きだなァ! これで心置きなく祭事を楽しめるというものよ!」
「晴れる霧、村の人たちの笑顔……。ちゃんと守ることができたんやね……よかったぁ」
呵々と笑うニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)が、差し入れに受け取った炙り肉を豪快に噛み千切ると、その豪快な食べっぷりにあちこちから歓声が沸き起こる。その隣ではにかむ、秋遊・空桜(そらびじょん・f10801)は一見小食そうに見えたものの――皿に盛られた料理を、次々に平らげていく様子に誰もが魅入り、いつしか手拍子まで広がっていった。
「この世界のお祭りって初めてで、わくわくやったけど……何て言うか、大らか?」
「ははは、平和をもたらした後のこの空気。いやァ、いつ味わっても良い気分だ!」
同伴にあずかることとなったニルズヘッグは、すっかり村の空気に溶け込んでいて、子どもに怖がられやすい風貌も冒険者らしくて格好いいと評判のようだ。
「うちは、おすすめ料理を教えてもらえたら嬉しいんやけどなあ……」
一方、ご馳走に興味津々な空桜へは、お祭りの日に振る舞われると言う菓子が配られてきて。こんがり焼き色のついた見た目に、しっとりとした食感の焼き菓子は――カヌレに似ているかな、などと思いつつ堪能する。
「……でも、今回の戦いで『真の姿』っていうのに、初めてなったけど。あまりに今のうちと違いすぎて、夢やったんやないかって気もしとる」
ちょっと、怖いわ――無意識に零れた空桜の言葉を、不意に聞き取ったのはニルズヘッグ。東洋龍の如き姿へと変じた、と言う空桜の話を興味深そうに聞いたニルズヘッグは、自分も真の姿になりグラドラゴと戦ったのだと胸を張った。
「悪徳の名を冠する巨大な黒竜の姿、とくと目に焼き付けるが良い……とな、見得を切った訳だ」
「すごいんやね……うちもそんな風に、自信を持てたらええな」
ちょっとしんみりしつつも空桜は、贈られた星の砂糖菓子――金平糖の瓶を転がしながら、硝子越しの夜空を見上げる。と、其処に一足先にご馳走を食べ終え、土産物を探していた臨が戻って来て、空見に行こうとふたりを誘った。
「流石はすっごく空が近いっすね。さっきまで霧が掛かってたからか、すごく鮮明で、綺麗な空っす」
星空に一番近い村の丘――其処は、星に手が届きそうな程に見晴らしの良い丘だ。何処までも広がる星の海を見上げる臨の隣で、しみじみとニルズヘッグも頷いている。
「……しかし晴れて良かったよ。霧が晴れたとはいえ、天候までは我々にはどうしようもないからな」
「この時季は、晴天が続くって話も聞いたっすよ。……ああ、色んなところを旅してても、やっぱ空は空だなあって思うんすけど」
星空だけは、なんか違うんすよね――ぽつり呟いた臨の頭上で、きらりと光ったのは流れ星。そう言えば何か逸話があった筈だと、想いを巡らすニルズヘッグは、ややあってから首を傾げつつ問う。
「願い事を三回、流れ終えるまでに言えれば――だったかな?」
「あー、オレも昔教わったっすねえ。こんだけ沢山星があったら、どれかひとつくらい願い事叶えてくれるかもしれないっすね」
――神頼みというのも柄ではないが、折角だと。ニルズヘッグが流れ星を探し始める中で、臨は嘗ての願いを思い出し、少し懐かしそうに瞳を細めた。
(「……子供の頃は、立派な剣士になれますように、なんてベタなヤツだったっすけど。今は」)
きらり――儚くもうつくしい光が夜空を横切ると同時、臨は今の自分が抱く願いをそっと胸の中で呟く。
(「周りのみんなが幸せに過ごせますように、とか。……もっと美味しいモノに出会えますように、とか思ってるっすよ」)
そんな風に、ふたりが星を追いかける様子を優しいまなざしで見守っているのは空桜だった。スペースノイドとして宇宙の旅を続けていた彼女にとって、星の海は見慣れたものだったけれど。
(「でも、こうして地面に立って遠くに見るんは、なんか新鮮な気持ちや」)
――あの海は、空桜の居た世界の海とは違うけれども。それでも皆が星を見て、笑顔になってくれるのを見ると心があたたかくなる。
(「……星を好きでいてくれてること、うちも嬉しいな」)
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
アレクシス・ミラ◆f14882と
来て早々にいいから目を瞑れとアレスに催促
更に目隠しもつけ
ちゃんとこけねえ様に『手を繋いで』やっから
心底楽し気に
手を引いて星が一番見える場所へ
どうだアレス!凄いだろ
ダークセイヴァーじゃ拝めない様な
満天の星を背に自慢気に
はしゃぐ女子がアレスに声をかけたら
騎士様って感じの見た目してるもんなぁと内心頷き
今日のコイツは俺のなんだ、悪いな
ぐっとアレスの腰を引き寄せて主張する
連れがいるっつーのが嘘じゃねえって証明してやったんだよ
としたり顔で
なっ…!ば、…女の代わりにしてんじゃねえよ
予想外の反撃に赤くなり(本気じゃない)抵抗を
…うまくエスコートできなきゃ笑ってやる
とアレスと踊る
アレクシス・ミラ
セリオス◆f09573と
何故僕は呼び出されて早々目隠しを…!?
訳も分からぬまま手を引かれ
でも、声の様子からして本当に見せたいものがあるのだろう
…仕方ないな
目隠しをとってみれば満天の空
凄い…こんな星空は生まれて初めてだよ
…それと、君は星空がよく似合うな
祭りに戻れば女性から声をかけられ
話していると引き寄せてきたセリオスに一瞬きょとん
…すみません、連れがおりますので。と別れる
…連れがいるのを証明したかったのは分かった
だが、
自分の腰に回している手を掴むと此方側に引き寄せ
証明は僕がやるべきじゃないかな、と真面目顔で
…音楽が始まりそうだな
このまま踊ってしまおうか。…今日は君が相手になってくれるんだろ?
――いいから目を瞑れ、と。村へ来て早々に、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)から催促をされたアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)は、訳も分からぬ内に彼のされるがままになっていた。
(「何故僕は、呼び出されて早々目隠しを
……!?」)
入念に視界を閉ざされたアレクシスは、そのままセリオスに手を引かれ、何処かへ向かって歩き始める。ちゃんとこけねえ様に『手を繋いで』やっから――それでも、そう告げた彼の声は心底楽しげで、本当に見せたいものがあるのだと言うことが分かったから。
(「……仕方ないな」)
――僅かな光さえ届かない闇の中でも、セリオスが手を繋いでくれているから不安は無い。否、何も見えぬからこそ、彼の手のぬくもりが一層強く伝わってきて、頼もしかった。
「――どうだアレス! 凄いだろ」
やがて――目隠しが取り払われて視界が広がれば、其処は星が一番見える場所。満天の星が今にも空から零れ落ちてきそうで、アレクシスは思わず空へ向かって手を伸ばす。
「凄い……こんな星空は生まれて初めてだよ」
「だろ? ダークセイヴァーじゃ拝めない様な、最高の空だ」
彼方で輝く星々を背に、自慢気に頷くセリオスの――その青い炎を湛える瞳は、空に輝く一等星よりもなお眩しくて。宵闇を纏い羽ばたくような彼の姿に、アレクシスは思わず呟いていた。
「……それと、君には星空がよく似合うな」
――やがて祭りの広場へ戻って来たアレクシスは、村の娘たちに囲まれて、一緒に踊ってくれませんかと熱いまなざしで乞われることとなる。
(「……まぁ、騎士様って感じの見た目してるもんなぁ」)
しかも、陽光の金髪に朝空の瞳とくれば、女子が憧れる王子そのものの見目だ。内心で頷きつつも、セリオスはそっとアレクシスに近づき、そのまま彼の腰をぐっと引き寄せ不敵な笑みを浮かべた。
「今日のコイツは俺のなんだ、悪いな」
「……すみません、連れがおりますので」
突然引き寄せられた身体に一瞬きょとんとしつつも、アレクシスは丁寧に断りを入れて娘たちと別れ――そして喧騒から離れた場所まで辿り着いてから、どういうことだと言わんばかりの目でセリオスを見る。
「連れがいるっつーのが嘘じゃねえって、証明してやったんだよ」
「……連れがいるのを証明したかったのは、分かった。だが」
したり顔で答えるセリオスの、自分の腰に回している手を掴んだアレクシスは、そのまま一気に自分の方へと引き寄せ――ごくごく真面目な顔できっぱりと告げた。
「証明は、僕がやるべきじゃないかな」
――そんなふたりの耳に、遠くから祭りの音楽が聞こえて来て。このまま踊ってしまおうかと、アレクシスは幼馴染の耳元でそっと囁く。
「……今日は君が相手になってくれるんだろ?」
「なっ……! ば、……女の代わりにしてんじゃねえよ」
予想外の反撃に赤くなり、アレクシスの手を振り払おうとするセリオスだが、その抵抗も本気では無くあくまで遊びのようなもの。
「……うまくエスコートできなきゃ笑ってやる」
――そして星空に一番近い村の片隅で、赤と青の双星が舞った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロー・オーヴェル
「夜更かししてもいい」というのは嫌じゃない
流れ星を探すのも悪くない
煙草を共に一人星見といくか
●
人は死して空に昇り星となる
消えた命は過去となり
骸の海へと逝くならば
そこを照らす星となる
もしもそうだとするならば
あの星空は地上という『現在』に降り注ぐ前の『未来の命』
生まれた後は汚れていくだけだが
生まれる前の命は何物にも染まっていない
あの光に美を感じるのはそこに純粋さを見るからか
詩的というか妄想というか
こんな事を思うとはな
「星空に一番近い村……か。やれやれ、どうやら俺は星の魔力に捕らわれたらしい」
これを吸い終えたら村で一杯やるか
魔力以外の物もこの村で味わわないとな
●
嗚呼、流れ星
またどこかに新しい命が――
クレム・クラウベル
春が来る。星が降る
言葉通りに満天の星が瞬く空は間近
手が届きそうだなんて、少し子供じみた言葉も浮かぶ様で
翳した手の、指の隙間をすり抜けて光る星は
心から綺麗だとそう思える
景色をのんびり楽しみたいなら
まだ湯気の立つスープを手に包んで
賑わいから少し離れた場所へ
生まれの地は陽も射さぬなら
夜に満点の星を見る機会もそうない
あの場所にはないもの。だから、この眼にはどうにも眩しい
眩しいけれど、逸らしたくもないから
カップが空くまでは見つめていよう
猟兵となることもなければ
或いはこんな空は、見ないままだったかもしれない
良い事ばかりでないのは確かだが
……たまにはこういう褒美に預かれるのは、悪くないものだな
ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
――星空に一番近い村。
綺麗だわ。都会っこだから、あんまりこういうのに慣れてなくて――うん、幻想的ね。
……人が、たくさんいるのもわかる。
楽しそうに、生を喜んでいる光が揺らめいてる。
地上も明るいけれど、ずうっと空も明るいのね。
ねぇ、「英雄」ですって、「私たち」。
毒を吸ったって、死んだって、いなくなったって、良い存在だったのにね。
――許されたわけじゃないのよ。
でも、今日だけは何も考えないで夜空を見ていてもいいわよね。
……屋敷に、戻らないと。
――私たちのマリス・ステラにこの夜空のことを教えてあげましょう。
めでたし、めでたしね。
――これは星降る夜の物語の、儚くも愛おしい欠片たち。星空に一番近い丘で紡がれた、数多の想いを拾い上げたもの。
『夜更かししてもいい』と言うのは嫌じゃない――子ども時代はとうの昔に過ぎ去ったけれど、ロー・オーヴェル(スモーキークォーツ・f04638)は、流れ星を探すのも悪くはないと丘へ向かう。
――ひとりで楽しむ星見の共は、愛用の煙草。これは大人の楽しみだと紫煙を吐き出しながら、ローはただ静かに夜空の星を見上げていた。
(「……人は死して空に昇り星となる」)
そして――消えた命は過去となり、骸の海へと逝くならば、そこを照らす星となるのだろうか。幾度となくなぞった伝承を胸に刻み、彼が想うのは星の行く先――星の在処だ。
(「もしもそうだとするならば、あの星空は地上という『現在』に降り注ぐ前の『未来の命』か」)
生まれた後は汚れていくだけだが、生まれる前の命は何物にも染まっていないものだ。あの光に美を感じるのは、そこに純粋さを見るからか――そこまで考えを巡らせた所で、ローはらしくないと言いたげに髪を掻く。
(「詩的というか妄想というか……こんな事を思うとはな」)
――星の魔力に束縛されたのか、と以前彼は竜に訊いた。決して届かぬ星に手を伸ばす、それはこうして得られぬ答えを求めて足掻く自分の姿――そのものではないのか。
「星空に一番近い村……か。やれやれ、どうやら俺も星の魔力に捕らわれたらしい」
嗚呼、流れ星。またどこかに新しい命が――。
(「春が来る。星が降る」)
心の裡で口ずさめば、クレム・クラウベル(paidir・f03413)の足取りは軽やかに。丘を登れば、『星空に一番近い村』――その言葉通りに、満天の星が瞬く空が間近に迫って来る。
(「……手が届きそうだ、などと。これは少し子供じみた言葉か」)
――けれど、そんな言葉も思わず浮かんでしまうほど、クレムの頭上に広がる星空は圧倒的なまでの存在感を伴って、世界を包むのだ。
賑わいから少し離れ、そっと草むらに腰を下ろせば――この景色を独り占めしているかのような、贅沢な気分にもなって。まだ湯気の立つスープを手に包んで、そっと暖を取りつつ、彼が想うのは生まれの地である常闇の世界だった。
(「陽も射さぬならば、夜に満天の星を見る機会もそうない。……あの場所にはないもの、か」)
だからなのか――ささやかな光さえもが、クレムの眼にはどうにも眩しく見える。けれど逸らしたくもないから、翳した手の指の隙間をそっとすり抜ける、愛おしい星の輝きを見つめ続けた。
(「心から綺麗だと、そう思える。……猟兵となることもなければ、或いはこんな空は、見ないままだったかもしれないな」)
猟兵の生き方は、良い事ばかりでないのは確かだが――たまにはこういう褒美に預かれるのは、悪くないものだ。
――だから今はせめて、カップが空くまでは見つめていよう、とクレムは思った。
「――星空に一番近い村。綺麗だわ」
まるで、お伽噺の一場面のような村祭りをそぞろ歩くヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は、自分の生まれ育った世界を思い起こして、少し吐息を零しつつも顔を上げる。
(「都会っこだから、あんまりこういうのに慣れてないけど――うん、幻想的ね」)
気さくに声を掛けてくれる村人に会釈をして、差し出されたご馳走を摘まみつつ、広場を抜けて。篝火が照らすひとびとは、まるで影絵のよう――だけど、そのたくさんの人の息づかいが確かに感じられて、ヘンリエッタの双眸が揺らいだ。
(「楽しそうに、生を喜んでいる光が揺らめいてる……地上も明るいけれど、ずうっと空も明るいのね」)
――ねぇ、『英雄』ですって、『私たち』。
やがて光から遠ざかるようにして、ヘンリエッタが辿り着いたのは、星空に一番近い村の丘。
(「毒を吸ったって、死んだって、いなくなったって、良い存在だったのにね」)
ひとつの肉体に押し込められた、幾つもの人格たちに語り掛ける、彼女の声を聞きとがめるものは無い。暴れたくて、自由に行きたくて、知りたいだけで――ただ、情けないだけ。
(「――許されたわけじゃないのよ。でも、今日だけは何も考えないで夜空を見ていてもいいわよね」)
――屋敷に、戻らないと。最初に言い出したのは、どの『私』だったのだろう。だけど、続く想いは皆が抱くものだったから、ヘンリエッタは星降る丘を後にする。
「――私たちのマリス・ステラにこの夜空のことを教えてあげましょう」
――めでたし、めでたしね。こうして、ひとつの物語が幕を閉じたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
海月・びいどろ
星の降る夜を見上げるために
楽しげな空気からすこし離れて
丘の上、硝子の海月と静かにダンス
陽気な音楽は、たのしいけれど
歌うのは、あまり得意じゃなくて
音程の外れた声を出しても
やっぱり歌にはならなかった
淡い色が揺らいで通る、キミの姿を見かけたら
――アストリット、
つい、呼び止めてしまう
キミは、どこか似たような
ふしぎな心地がするの
どこかの海を泳いできたの、かな
……ねえ。キミは、星のうたを知ってる?
もし、アストリットの知る歌があれば
教えてもらえると、うれしい
ボクも、こんなきれいな星の夜には
一つくらい、うたえる歌を知りたくて
キミの歌を聴いてみたいな
叶うなら、すてきな歌に拍手を
叶わずとも、出会いに感謝を
イア・エエングラ
星空に一番近い村、だなんて素敵ね
それほど、たくさん空を見上げたのなあ
そうして、届かないのをご存じなのね
ひとつ、瞬いては星空が応じてさざめくようで
人の声も華やいで、どちらもお喋りするようね
今宵たえない灯りが地上の星と、空の上
あたたかな光を湛えているのが綺麗だこと
くるり回って見渡せば、星の海にいるようで
今に落ちてしまうよう
連れ立つのはお人形、宵の裾曳く夜の娘と
星の瞬く歩を踏んで裾翻して踊りましょう
一番明るい、橙の星から南天へ
ステップで追うのは春の星座
夜を、季節を追いかけて、明けるまでお相手、してくれる?
きっとそのうち、指先から星の色に染まってしまうね
「星空に一番近い村、だなんて素敵ね」
それほど、たくさん空を見上げたのなあ――祭りの喧騒の中を、ゆらりと衣の裾を靡かせてイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)は行く。
「……そうして、届かないのをご存じなのね」
――一番近くても星空にその手が届くことは無く、ただイアの装束に煌めく蒼褪めた星だけが、幽かな尾を引いて通り過ぎていった。
それでも、星降る夜を祝うひとびとの声は華やいでおり、ひとつ瞬いては星空が応じてさざめくような光景は、密やかなお喋りを楽しんでいるかのよう。
(「今宵たえない灯りが地上の星と、空の上……あたたかな光を湛えているのが綺麗だこと」)
――届かないのなら、灯をともして星を呼ぼうか。或いは、そんな想いがあったのかもしれない。くるり回って瞳を巡らせれば、空と大地が入り混じって――星の海に、何処までも落ちていきそうだった。
(「……ああ、ならば踊りましょか。星の瞬く歩を踏んで」)
裾を翻し、イアが連れ立って手を取るのはお人形。宵の裾曳く夜の娘は、落ちる星の光で雁字搦め。それでもふたりは、優雅なステップでひらりひらりと、春の星座を追いかけて踊り出す。
(「一番明るい、橙の星から南天へ……夜を、季節を追いかけて」)
――ああ。空に近い丘の上、硝子の海月と踊っている少年も、星を追いかけているのだろうか。楽しげな空気から少し離れるようにして、静寂を供にダンスを踊る海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)は、星の降る夜を見上げてちいさく喉を震わせた。
(「歌うのは、あまり得意じゃない。……陽気な音楽は、たのしいけれど」)
ちょっぴり音程の外れた声は、やっぱり歌にはならなかったけれど――其処でふと彼の視界の端を、淡い色が揺らいで通り過ぎていく。
「――アストリット、」
つい呼び止めてしまった、びいどろの方を振り向いて、何処か夢見がちな少女が「こんばんは」と挨拶を返した。虚構の海を漂うような、奇妙な懐かしさを感じたびいどろは、硝子の海月と共にすいと近づいて小首を傾げる。
「キミは、どこか似たような、ふしぎな心地がするの」
どこかの海を泳いできたの、かな――囁かれた問いにアストリットは、深いふかい海の底を、ゆらゆらと漂っていたのだと答えた。
「でも、ある時……水面に揺れる光のように、歌が聞こえたんです」
「……ねえ。キミは、星のうたを知ってる?」
――もし、知っている歌があったら教えてもらえると嬉しいと、びいどろは言う。こんなきれいな星の夜には一つくらい、うたえる歌を知りたかったから。
「キミの歌を聴いてみたいな」
「えっと、それじゃあ……さっき教えてもらった、お星さまの童謡を歌いましょうか」
こうして一緒に歌うと楽しいんですよと付け加えて、アストリットの手がびいどろの手と重なり、生命のぬくもりを伝える中で。
「なら、明けるまで僕のお相手も、してくれる?」
人形の少女を伴ったイアも、童謡に合わせてゆるりと踊り出し、伸ばした指先がふたりの手と重なった。
「……きっとそのうち、指先から星の色に染まってしまうね」
――この出会いに感謝を。そして、皆で紡ぐすてきな歌に、拍手を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
如月・螢
【軒玉】
大切なものか……
誰かの大切なものを守れた今日だけ――彼らの英雄であろう
なあに、胸を張っても許してくれるさ。お祭りなんだろう?
子供や村の人等に茶会を開こう
夜空を見上げ願いを届けと祈る想いを
一杯の熱い紅茶と共に届けよう
配り終わり改めて見上げる夜空
Oh...本当に勘違いしてしまうな…
あんなに遠いと思ってた夜空に触れてしまいそうだ
願い…願い、か……
私は言葉に込められた想いを上手く理解出来ない
だから、それを理解出来るようになりたい
あの子が私にくれた想いに答えを出せるように
――ふふっ、長すぎて願えないだろうから自身で叶えるよ
さて、私も踊ろうか!
一緒にどうだい?とアストリットに手を差し出してみよう
華折・黒羽
【軒玉】
英雄と呼びたくもなる程
村の人達にとって星空は大切なものだった
…って事じゃないですか
食べるのは好きだ
馳走をいくつか取り分け手元へ
依頼主の姿を目にしたなら
霧、晴れて良かったですね
人見知りの精一杯の言葉
あまり話さずに済む様口には次々食べ物が運ばれて
空を埋め尽くす星を見上げ
綾華さんからの言葉に頷く
星は何処に在っても、星なんですね
満天の星空に手を伸ばし映る光景を焼き付ける
ふと思い出した事
螢さんは
流れ星に「願い事」ってしますか…?
流れてきた音楽には小さく耳をひくり
一歩引きニケさん達が踊り出す様子を見ながら
誘われるも首を振る
けれど最後には押し負けて
下手くそですよ…足、踏むかも
と零しながら手を伸ばした
ニケ・セアリチオ
【軒玉】
まぁ、まぁ!
本当に、手が届いてしまいそう…!
美しくも壮大な満天の輝き
いつまでも見ていてしまいそう
つい足を止めてしまうから
はっと皆さんの方へ駆け寄って
アストリットさん、こんばんは
今日はお疲れ様でした!
言われていたとおり、素敵、とても素敵な場所ね!
晴れて良かったと
黒羽さんの言葉にも頷いて
そういえば、流れ星にお願い事をするのね?
螢さんのお願い、きっと叶います
真っ直ぐで、お強い方だもの!
お祭り、皆さんとても楽しそう
ダンスもされているのね
あまり経験はないけれど
見様見真似で私も踊ってみようかしら?
あら、あら!
綾華さんのエスコートとあらば、喜んで
螢さん、黒羽さんも!
良かったら後で一曲、踊りませんか?
浮世・綾華
【軒玉】
星を呼んだ英雄なんて
たいそーなもんじゃねえのにな
とりあえず料理をつまもうと
子供達にどれが美味かった?
おすすめは?なんて尋ね
教えられた食いもんを手に
アストリットちゃんに軽く挨拶を
楽しんでる?
これ、子供たちのおすすめなんだってさ
良けりゃ俺らと一緒に楽しまない?
腹を満たしたら
星をゆっくり眺められる場所へ
螢ちゃんの紅茶でほっと一息つきながら
はあ、確かにこりゃすげーや
あん時のエンパイアの星にも負けねーくらい
な、黒羽
それじゃあニケちゃん、一緒に踊ろうぜ
実は踊りは得意でな
――それじゃあ姫君、お手を
あは、俺も後でアストリットちゃんと螢ちゃんとも踊りたいっ
無邪気に笑って
黒羽、大丈夫
楽しめよ、折角の夜だ
「まぁ、まぁ! 本当に、手が届いてしまいそう……!」
祭りの賑わいに心浮き立たせつつ、ニケ・セアリチオ(幸せのハト・f02710)は『星空に一番近い村』から、透き通るような夜空に散りばめられた、彼方の星々を仰いでいた。
その美しくも壮大な満天の輝きには、いつまでも見入ってしまいそうで――そんな中でも、村のひとびとが声を掛ければ、ニケは『こんばんは!』と快活に挨拶を交わす。
「星を呼んだ英雄なんて、たいそーなもんじゃねえのにな」
苦笑しつつ、料理が盛られた皿を取り分けている浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)は、どれが美味かった――なんて、気さくに子ども達に訊ねていて。ぴりりと辛い香辛料を効かせたムニエルに、思わず綾華が表情を変えると、子ども達は『おすすめなんだもん!』と言って、そのまま彼にじゃれついてきた。
「英雄と呼びたくもなる程、村の人達にとって星空は大切なものだった……って事じゃないですか」
大盛りの肉に山の幸――祭りの食を楽しむ華折・黒羽(掬折・f10471)の言葉に、大切なものについて考えを巡らせるのは如月・螢(透明な心・f00180)。
「誰かの大切なものを守れた今日だけ――彼らの英雄であろう」
誇らしげに頷く彼女は、ご馳走が並ぶテーブルの片隅で、村のひとびとの為とっておきの茶会を開いている。一杯の熱い紅茶に込められたのは、夜空を見上げて願いよ届けと祈る想い――魔法のように溶けて色合いを変えるミルクティーは、大人にも子どもにも好評なようだった。
「……なあに、胸を張っても許してくれるさ。お祭りなんだろう?」
「あ、アストリットちゃん、楽しんでる?」
広場の一角で祭りを盛り上げている自分たちに気づいたのか、ふらりと顔を覗かせたのはアストリット。一緒に楽しまないかと声を掛けた綾華だったが――おすすめは辛すぎたな、と呟き、代わりにカヌレのような焼き菓子を差し出す。
「……霧、晴れて良かったですね」
「はい、本当に……皆さんのお陰、ですねっ」
――ぽつり、黒羽が紡いだ言葉は、人見知り故の精一杯のもの。けれど、其処に込められた確かな思いやりを感じて、アストリットはふんわりと微笑んで頷いた。
「こんばんは、今日はお疲れ様でした! 言われていたとおり、素敵、とても素敵な場所ね!」
一方のニケは囀るようにすらすらと、喜びを口ずさんで、黄金色の双眸を輝かせる。晴れて良かった――黒羽の言葉に、うんうんと頷いたニケは、余り話さずに済むようにと食べ物を詰め込んでいる彼の姿を見て、螢から受け取った紅茶を差し入れているようだ。
「さて、そろそろ腹も満たしたし、星をゆっくり眺められる場所に行こーか」
な、と紅茶で喉を潤す黒羽を、にやりと見つめつつ綾華が誘えば――皆の足は自然と、見晴らしの良い村の丘へと向かう。
「……はあ、確かにこりゃすげーや。あん時のエンパイアの星にも負けねーくらい。な、黒羽」
「ええ……星は何処に在っても、星なんですね」
――喧騒が遠ざかった丘の上、時折吹く静かな風は、星の煌めく音さえも届けてくれるようで。紅茶で一息吐いている綾華にそっと頷いた黒羽は、満天の星に手を伸ばし――青の双眸に映る景色を焼き付けようとする。
「Oh……本当に勘違いしてしまうな……。あんなに遠いと思ってた夜空に、触れてしまいそうだ」
――改めて見上げる夜空に、感嘆の吐息を零すのは螢。その様子を眺めていた黒羽は、ふと思い出して彼女に訊ねてみた。
「螢さんは、流れ星に『願い事』ってしますか……?」
「願い……願い、か……」
真剣な表情になって考え込む螢は、ややあってから己の想いを言葉へと代える――私は未だ、言葉に込められた想いを、上手く理解出来ないのだと。
「……だから、それを理解出来るようになりたい。あの子が私にくれた想いに、答えを出せるように」
――ふふっ、長すぎて願えないだろうから自身で叶えるよ。そう言って柔らかな笑みを浮かべる螢に、ニケはきっと叶うのだと言って胸を張る。
「だって螢さんは、真っ直ぐで、お強い方だもの!」
と、其処で不意に広場の方から聞こえてきたのは、祭りの佳境か――軽やかなダンスの音楽だった。小さく耳をひくりと動かした黒羽に頷いて、ニケがすっと立ち上がって手足を伸ばす。
「あまり経験はないけれど、見様見真似で私も踊ってみようかしら?」
「それじゃあニケちゃん、一緒に踊ろうぜ。実は踊りは得意でな」
――それじゃあ姫君、お手を。恭しい綾華のエスコートに『あら、あら!』と、ニケの弾んだ声が応えて。私も踊ろうかと螢が手を伸ばした先――微笑んで頷いたのは、アストリットだった。
(「螢さんの願い、叶うといいですね」)
ふわりドレスを優雅に揺らして、星空の下で乙女たちが舞う。手と手が触れ合って、笑顔が広がっていく。
「あは、俺も後でアストリットちゃんと螢ちゃんとも踊りたいっ」
「螢さん、黒羽さんも! 良かったら後で一曲、踊りませんか?」
そうして無邪気に笑う綾華とニケに、ダンスに誘われた黒羽だったが――しかし最初の一歩を踏み出せなくて、首を振った。けれど綾華の懐っこい声が、閉ざされた扉を開く鍵のように、黒羽の心に入りこんでくる。
「黒羽、大丈夫。……楽しめよ、折角の夜だ」
「ああ、でも下手くそですよ……足、踏むかも」
――そうして、遂に。押し負けたのだと零しながら、黒羽はゆっくりとパートナーに向けて手を伸ばした。それはさながら、竜霧の彼方に煌めく星を見つけたような――そんな気持ちにもなったのだ。
『星空に一番近い村』――ニュイ・エトワーレの祝祭、其処で紡がれる物語は彼方で光る星の数ほど、これからも生まれていくのだろう。
大成功
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