バカンス・フォトログ2023←New!!
ソフィア・エルネイジェ
エルネイジェ三姉妹+水之江とナイアルテさんが海に遊びに行くノベルをお願いします!
時系列的にはゴーアゲイン・メサイアが終わった後です。
今回も複数人の合わせノベルでご依頼させて頂きます。
アドリブ・改変歓迎です。
困難・不明な点の解釈はお任せします。
●つまり?
今年も夏が来ました。
ソフィアはメサイアの件で色々お世話になったナイアルテさんと水之江を慰安旅行に招待しました。
行先はエルネイジェ王家のプライベートビーチです。
メサイアは何故かヴリトラを連れて来ていました。
「おバーベキューのお準備を致しますのよ〜!」
奇声を上げながらヴリトラの真っ黒な装甲を一生懸命磨いています。
メルヴィナは訳が分からないので見なかった事にしました。
ソフィアはいい感じにエンジョイしています。
「偶には童心に返って羽根を伸ばすのもよいでしょう」
ナイアルテさんもいい感じにエンジョイしてくれるとよろしいかと思われます。
水之江はメルヴィナから借りた日傘で涼んでいます。
「ナイアルテさん、スマイルちょうだい」
ドローンを飛ばして記念撮影しているようです。
「ふふふ……写真集にして売り出せばいい小銭稼ぎになるわよ……」
メルヴィナは海でちゃぷちゃぷしています。
「浮かんでいると気持ちいいのだわ……」
そんなメルヴィナのすぐ横をメサイアが凄い勢いで泳いで行きました。
「おバーベキューのお準備が終わるまで泳いでくるのですわ〜!水平線の彼方まで泳ぐのですわ〜!」
「沖に出ると危ないのだわ」
メルヴィナの忠告も聞かずにメサイアは行ってしまいました。
かと思ったらすぐに戻ってきました。
「いやー!お助けー!わたくしおやつにされてしまいますわー!」
逃げるメサイアの背後には
モササウルス
クラーケン
サカバンバスピス
メガロドン
ダブルヘッドゾンビゴーストシャーク
など兎に角ヤバい海の生き物が大挙して迫っていました。
「だから沖に出ると危ないと言ったのだわ……」
最終的にメルヴィナがリヴァイアサンを召喚して何とかして事なきを得ました。
それから暫くすると良い香りが漂ってきました。
「おナイアルテ様〜!お上手に焼けましたわよ〜!キンッキンに冷えたストゼロもございましてよ〜!」
メサイアが串焼きを持ってきました。
「お姉様の分もお持ち致しますわ〜!」
ソフィアはふと疑問に思いました。
「あの子、いつの間にバーベキューセットなんて持ってきていたの?」
気になったので後を追います。
するとメサイアがヴリトラの装甲で肉を焼いているではありませんか。
ソフィアは激怒しました。
そしてメサイアの尻をぶっ叩きました。
「いやー!わたくし何も悪い事しておりませんわー!」
「国宝をバーベキューの道具にするなど言語道断です!」
「ヴリちゃんはわたくしの自由にしてよろしいと仰ってたではありませんの!」
「限度というものがあります!弁えなさい!ヴリトラ!あなたも機械神としての自覚をお持ちなさい!」
ヴリトラはしーらねみたいな反応をしました。
その日の夜、ソフィアとメルヴィナとメサイアはコテージのベッドで川の字になって寝ていました。
「うーんうーん…」
ソフィアとメサイアは気持ちよさそうに寝ていますが、真ん中のメルヴィナはうなされています。
寝相が悪過ぎるソフィアとメサイアの拳や足がめり込んでいるからです。
そんな三人の寝姿を水之江がドローンで撮影してました。
「慰安旅行って割には騒々しいわねぇ……あ、ナイアルテさん、スマイルちょうだい」
だいたいこんな感じでお願いします!
絶対こうでなきゃダメとかそんな事は全くありませんので、ノリと書きやすさ重視でお願いします。
ナイアルテさんの出演に問題がある場合はいい感じに誤魔化してください。
●ソフィアの心境
正しくアグレッシブに海をエンジョイしに来ています。
「美しい海と空は我が国の宝です」
メサイア・エルネイジェ
リクエスト内容はソフィアと同文となります。
以下はネタに困った時の参考資料程度に扱ってください。
●何人合わせ?
ソフィア
メルヴィナ
メサイア
水之江
以上の四名です。
●文字数配分
同背後軍団の合わせなのでキャラ毎の文字数や扱いの公平性は気にしないでください。
文字数全部使い切らなきゃヤダとかそんな事はありませんので適量でお願いします。
●メサイアの心境
全力でエンジョイしに来ています。
「海がわたくしを呼んでおりますわ〜!」
●ヴリトラの装甲で肉焼けるの?
真夏の炎天下+黒い装甲=焼けます。
桐嶋・水之江
リクエスト内容はソフィアと同文となります。
以下はネタに困った時の参考資料程度に扱ってください。
●水之江の心境
静かに海をエンジョイしに来ています。
「わたし泳げないのよねぇ。はしゃぐような歳でも柄でもないし」
ついでに撮影した写真で小銭を稼ごうとしています。
●ナイアルテさんについて
いい感じにエンジョイして頂けるとよろしいかと思われます。
メルヴィナ・エルネイジェ
リクエスト内容はソフィアと同文となります。
以下はネタに困った時の参考資料程度に扱ってください。
●メルヴィナの心境
普通に海をエンジョイしに来ています。
「浮かんでいるだけで十分なのだわ」
●プライベートビーチについて
綺麗な海岸です。
コテージ等宿泊に必要な施設があります。
●エルネイジェの海について
生命に溢れた綺麗な海です。
ただし生命に溢れすぎて沖には危険な生物が多数生息しています。
●今夏のはじまり
これまでのあらすじ! で始めたい所であるがクロムキャバリアのアーレス大陸西部エルネイジェ王国の夏の日差しを前にしては、そんなのは小賢しいことであると言わざるを得ないだろう。
夏と言えばなんだ!
そう!
照りつける太陽!
砂浜眩しい海辺!
白波に照り返す太陽が乙女たちの肌を刺す!
誰もが頷くところであろう。そう! 水着! である!!
猟兵の夏。水着の夏。
そんなわけで一時のバカンス、サマーバケーション、夏休みを楽しむ猟兵たちの一日に密着させてもらおう。
撮影協力は、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)がお送りさせて頂く。
「此度はよくおいでくださいました。美しい海と空は我が国の宝です。どうか今日は慰安旅行を楽しんでいってくださいませ」
そういってソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は気品溢れる所作でもって水之江とグリモア猟兵であるナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)を出迎えていた。
ソフィアはこれまでのメサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)を巡る戴冠式までと、戴冠式後の騒動について協力してくれた二人をエルネイジェ王家のプライベートビーチへと招待したのである。
「ありがとう。でも、わたし泳げないのよねぇ。はしゃぐような歳でも柄でもないし」
水之江は周囲を見回している。
その割にはしっかり水着に着替えている当たり、それはそれ、これはこれ、ということなのだろう。
彼女の水着はテックウェアのようなパーカーを羽織っていて隠されているが、年齢のことを気にするような姿をしていなかった。
いや、むしろ年齢不詳ではないか?
まさしく魔女なのではないか?
いやいや、それ以前に猟兵という生命の埒外である。水之江が特別ではないのかもしれない。いやでもそれにしたって、とナイアルテは深くうなずいていた。
彼女はこの夏、とても浮かれていた。
怪獣浮かれ水着猟兵となっていた。
言うまでもなく、今年の水着もまた大変に気に入っていたからである。浮かれすぎてテンションボルテージがちょいおかしいことなっているので、注意が必要である。
「海がわたくしを呼んでおりますわ~!」
メサイアのテンションも同じくであった。いや、こちらはいつも通りである。
そんなメサイアが何故か己のキャバリア『ヴリトラ』を連れてやってきていたし、その漆黒の装甲を磨き倒しているのをメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は、なんで? と疑問に思ったが、メサイアの奇行は今に始まったことではない。
理解できないと否定するのではなく、放置することがメルヴィナがこれまでメサイアとソフィアに挟まれて得た知見である。
「おバーベキューのお準備をいたしますのよ~!」
「バーベキュー……」
それと『ヴリトラ』の装甲を磨くのになんの因果関係があるというのだろう。
「……見なかったことにするのだわ」
メルヴィナは、うん、と気だるげにうなずいてプライベートビーチを見やる。
「綺麗な海岸ですね。波も穏やかですし」
「ええ、私もこの海が好きなのだわ。パラソル、ありがとうなのだわ。でも、お客様に手伝わせてしまって」
「いいえ、準備から楽しませて頂いております」
ナイアルテの言葉にメルヴィナは笑む。
パラソルを開いてシートを敷く。そこにソフィアがビーチチェアを用意して、木陰が生み出される。
エルネイジェ王国の海岸は一見穏やかな海に見えるが、しかし生命力に溢れている。
美しい海である。
「偶には童心に返って羽を伸ばすのも良いでしょう。ナイアルテさん、どうか楽しんでくださいましね」
「はい。ありがとうございます。こんな素敵なビーチにご招待いただけるとは思ってもおりませんでしたし……それに」
ナイアルテは改めてソフィアとメルヴィナの姿を見やる。
ふたりとも皇女だけあって気品のオーラが段違いである。
ナイアルテが一般人代表であるというのならば、ソフィアとメルヴィナは貴人代表とでも言うべきか。
何をしていても所作に気品が溢れまくっているのである。
メルヴィナがクラゲを模したパラソルを手にとってくるりと回せば、触腕めいた飾が売れ、深い海の色を思わせるパレオが人魚の尾のように揺れる。
それに彼女の三つ編みに編み込まれたつややかな黒髪はナイアルテにとって羨望の的であった。
肌も色白で落ち着いた青色が彼女の魅力を倍増させているように思えただろう。ノーブル!
「ソフィア皇女殿下も、少しはしゃいでおられます?」
「ええ、こういう機会でもなければ浮かれた格好もできないというものですから」
そういうソフィアはイメージカラーであろうピンクの水着が似合っている。実際よりも幼く見えるのは色合いのせいだろう。
だが、そこには可愛らしさが全面に押し出されているように思えた。
貴人としての気品。
そこい可愛らしさがプラスされれば、どうなるかなんて言うまでもない。これが全国民が認めた超絶美少女皇女殿下ってもんである。
ただ、その腰元に帯刀しているのは、やはり体は闘争を忘れられない的なそんな感じのあれなのだろうか。
むしろ、エルネイジェ王国における王族のことを考えれば、むしろ、それでこそ、と言えるのかも知れないが。
「そうですね……でも、本当に素敵な海です」
「此処は王家御用達のプライベートビーチなのだわ。少しくらいはしゃいだっていいのだわ」
「ええ、お二方にはとてもお世話になりましたから……」
「そう? ならちょっと協力してもらおうかしら」
そういって水之江がドローンを飛ばす。
杖のような機材でもってコントロールされているであろうドローンがビーチへと飛び立ち、挙動を確認した後にソフィアたちに寄っていく。
「これは?」
「記念撮影っていうやつよ。こういう日の思い出。鮮明に記憶にとどめておけば善いって人もいるけどね。思い返してみるのと、写真を見返して記憶を想起されるのとは、また違った心地よさというものがあるのよ。特に皇女殿下たちにとっては此処は思い出のあるビーチでしょう?」
「確かに言われてみればそうですわね」
「でも、私達は水着なのだわ。少し……」
恥ずかしいものがある、とメルヴィナがうつむくのを水之江は見逃さなかった。シャッターチャンスである。
メルヴィナのそういう表情はむしろ、高く売れ……あ、いや違う。
人気が出……じゃなくて、えーと、あれである。思い出! 普段見せぬ表情をとどめておきたいと思うのは人間として当然のことであろう。
うん。
真理。
「わわっ、もうっ、やめるのだわ」
そういってメルヴィナは海へと逃げるようにして駆け出していく。
「慣れていないのでしょう。許してくださいね」
「構わないわよ。誰だってカメラを向けられてすぐに緊張がほぐれるものではないもの。追々慣れていけばいいのよ。これからだってカメラを向けられることだってあるでしょ」
水之江は気にした様子もなく笑っている。
というか、色々言ったが、此れまでの言葉は全て建前である。
ソフィアも、なんとなくそれに気がついているがこれまでの恩を考えれば写真程度で目くじらをたてるのはいかがなものかという皇女的な思考が走っているのだ。
そこを水之江は突いたのである。
メサイアの恩人。
恩には報いなければならない。ならば、写真は? 水之江はエルネイジェ姉妹の思い出作り、と言った。記念撮影、と。
ならば、咎める言われもないだろうと彼女は判断したのだ。
「ほら、メサイア皇女殿下も。あ、ナイアルテさん、スマイルちょうだい」
「えっ」
「せっかくです。ナイアルテさんも撮って頂いたらよいでしょう?」
「で、ですが、皇女殿下たちの……」
思い出撮影ではないのだろうかとナイアルテは思った。姉妹の思い出に自分が入っていていいものだろうかと遠慮する気持ちがあったが、そこはソフィアの皇女ムーヴである。
外交にも長けた彼女は、他者との距離を詰めることもまた大切な役割だと心得ている。戦うだけの武人ではないのである。誰だ理性あるバーサーカーとか言った奴。出てこい。ソフィア様は可憐な武装プリンセスじゃろがい!
「はいはい、笑って笑って」
そんなナイアルテの葛藤をよそにソフィアが彼女の肩を抱いて寄せる。
これはイケメンなムーヴである。プリンセスじゃなくプリンスの素質も備えておったか。
ドローンのカメラがシャッターを切る音が響く。
「もう一枚行くわよ」
「またですか!?」
「次は、このトロピカルドリンクと一緒に取りましょう。映え、というやつでございましょう。イェッターに載せるのが最近の猟兵のトレンドなのでしょう?」
「いいわね。その調子。はい、二人もうちょい寄って。笑顔笑顔。ナイアルテさん笑顔固いわよ。ニコッとね。そうそう、いいわねー」
乗せる水之江に普段できないことをやろうとするソフィア。
二人に挟まれてナイアルテはぎこちなくも、しかしニコリと笑む。そう。今の彼女はお気に入りでさらに憧れあった女子高生の象徴、セーラー服を模した水着を手に入れてウキウキ浮かれ猟兵なのである。
乗せ上手の水之江にとっては、赤子の手をひねるより簡単であった。
「あ、あの。何故たくしあげないといけないでしょう……?」
「皇女殿下もパレオを持ち上げたでしょ。みんなやってるわよ?」
「ほ、本当ですか?」
「もうちょい持ち上げてみましょうか」
やんややんやと水之江とソフィアは乗っている。波に乗っている。乗るしか無い。このビッグウェーブに、と言わんばかりにバシャバシャシャッターを切られまくっている。フラッシュは夏の日差しよりも強烈にナイアルテをおもちゃにした――。
●揺蕩う
海はとても良いものだ。
浮かんでいるだけで心が落ち着いていく。
カメラのレンズを急に向けられた時には驚いたが、今こうして波間に揺れて浮かんでいると、そうした心の緊張も解されて些細なことであったと思うようにメルヴィナはなっていた。
「浮かんでいるだけ十分なのだわ。ああ、でも本当にエルネイジェの海は善いのだわ……」
ぷかぷか。
浮き輪に掴まって浮かぶ自分は海月。
陸よりもこちらの方がメルヴィナにはしっくり来る。海水の冷たさも、夏の日差しも全てが彼女を祝福してくれているようであった。
「メルヴィナお姉様~!」
「メサイア、貴女も波に揺られに来たのだわ?」
「おバーベキューのお準備がおわるまで泳ごうと思いまして~! 水平線の彼方まで泳ぐのですわ~!」
メサイアが盛大な水飛沫を上げながら爆速でメルヴィナの真横を泳いでいく。
凄まじい推力である。
踏み込みが命の素振りチェストを日に数千数万と行う彼女らしい脚力は穏やかながら、しっかりと潮流の存在する海をかき分けるようにして泳ぎ去っていくのだ。
「沖に出ると危ないのだわ」
だから、とメルヴィナは声を張り上げる。
そう、ここはクロムキャバリアのアーレス大陸。その西部にあるエルネイジェ王国の海辺。生命力溢れる海なのである。
そう、生命力溢れる、ということは即ち。
「いやー! お助けー!」
悲鳴が聞こえてきた。すぐにだ。
そう、すぐに。メルヴィナはだから言ったのだわ、と頭を抱える。
「どうしてメサイアは私の忠告を聞かないのだわ……?」
メルヴィナは見た。
メサイアが爆速で海原を駆逐艦よろしく泳ぎ目指していた沖は生命に溢れすぎて危険な生物たちの巣窟であった。
まさにメサイアを今追うのはモササウルスにクラーケン、サカバンバスピス、メガロドン、ダブルヘッドゾンビゴーストシャークとまあ、それはもうB級映画だったのならば、即座にメサイアが最初の犠牲者になるであろうそうそうたるメンツであった。
いや、なんか所々変なのいるな。
サカバンバスピスって、このメンツの中では一番小さくないだろうか。というか、そんなに驚異的な生物なのだろうか。
「問題はそこではございませんわ~! ダブルヘッドゾンビゴーストシャークもいるなんて聞いておりませんわ~! チェンソー用意してないから、ぶった斬ることができませんわ~!」
「メサイア、もっと言えば、それも問題ではないのだわ!」
「そ、そうでした! メルヴィナお姉様! わたくしおやつにされてしまいますわー!?」
メサイアがわーきゃー叫んでいるのは、浜辺にてチェキ大会を開いていた水之江たちにも届いたことだろう。
なんとかしなければ、と彼女たちが動くより先にメルヴィナの瞳がユーベルコードに煌めく。
「だから沖に出るのは危ないと言ったのだわ……」
沖にでなければ、危険な海棲生物たちを刺激しないで済むはずだったのだ。それを爆速で海水を蹴って泳いだメサイアが刺激してしまったのが悪い、とメルヴィナは思ったが、それで妹をおやつにさせてしまうのは、せっかくのバカンスがB級映画の導入みたいな雑なあれになりそうだったので、己のキャバリア『リヴァイアサン』を召喚し、海水を手繰り、これらを退けるのだ。
「あ、ありがとうございますですわ~メルヴィナお姉様~!!」
「これに懲りたのならば、もう少し節度を持って……」
「あ! この香りは!」
しゅばっとメサイアはメルヴィナの小言を、しれっとぶっちして浜辺へと行ってしまう。
メルヴィナは、『リヴァイアサン』のコクピットの中で深く、ふか~くため息をつくのだった――。
●おバーベキュー
「やっぱりですわ~! この良い香り! うんうん、やっぱり道具が良いと香りまでよくなるのですわ~!」
ひゃぁ! 我慢できねぇですわ! とメサイアはすっかりこんがり焼けた串打ちバーベキューセットを両手に掲げて浜辺でチェキ大会でいろんなポーズを取らされていたナイアルテの元へと駆け込んでいた。
「おナイアルテ様~! お上手に焼けましたわよ~! キンッキンに冷えたストゼロもございましてよ~!」
はぁい、食べて! 呑んで! 食べて、のーんでのんでのんで! みたいなウェイ! なノリでメサイアがやってくる。
なんかナイアルテはいろんなポーズをリクエストされて涙目の赤面のゆでダコであったが、メサイアに救いを見出だした。
「あ、ありがとうございます! もういいですよね!?」
「……チッ」
「今、舌打ちしませんでした!?」
「まあ、いいじゃない。メサイアが串焼き持ってきてくれたのでしょ。食べるところも撮るから、はいスマイル」
「まだですか!?」
そんなやり取りをしている水之江たちをよそにソフィアにもメサイアは串焼きを持ってきて手渡す。
こんがり焼けた良い香りが周囲に漂っている。
「ありがとう、メサイア。しかし、いつの間にバーベキューセットなんて用意したのです? それらしきものは持ってきていないようでしたが……?」
「最高級のバーベキューセットですのよ~! あ、追加の串焼き持ってまいりますわ~!」
メサイアは自分も食べたいし、と駆け出していく。
その背中にソフィアは一抹の不安を覚える。
なんか、こう、そう。嫌な予感がする。メサイアがやらかす大抵の時には、こういう予感がソフィアには走るのである。
チェスト事件の時も。ストロングゼロ酒浸し事件の時も。
なんかこう、ビビッと来るのである。そんな彼女の予感は正しい。メサイアの後を追ったソフィアが見たのは――。
「あ~やっぱりヴリちゃんの装甲は火力が違いましてよ~! 良い焼き具合。この火の通り! たっぷり旨味ジューシーなのに、ふわっとふんわりやわらかく、程よい歯ごたえなのに歯切れもよく! やっぱりヴリちゃんは最高ですわ~!」
『ヴリトラ』の漆黒の装甲が夏の日差しを受けて熱せられ、鉄板じみた熱さになるのを利用した鉄板焼ならぬ『ヴリトラ』焼きであった。
あんまりにもあんまりなあれである。
しかし、まあ、熱源必要としないし、焚き火をするわけでもないし。浜辺にダメージが出るわけでもないし。
そういう意味では環境に配慮して、即したものであると言えるだろう。
自然に優しい『ヴリトラ』焼き! なお、滅びの光をぶっぱすれば、大体消し飛ぶものとする。
「うふふ、ソフィアお姉様も喜んでくだいましたし、これは後でご褒美もらえるやつですわね~! うふふのふ!」
「……メサイア」
「あら、お姉様! お串焼きお待ちになれませんでしたの? それほど美味しかったですの? やっぱりそうですわよね~!」
ほめて! と言わんばかりのメサイアであったが、しかし次の瞬間彼女の目は丸く見開かれる。
ぐるっと体が宙に浮いた気がした。いや、浮いた。くるっと空中でメサイアの体勢は流れるように見事に四つん這いにさせられ、ソフィアの立てた膝の上に乗せられて固定されていた。
逃げられない。
完璧なロック。ホールドアップ。
「はれー!? なんでですの!? なんでわたくし、お仕置きスタイルに固定されておりますの!? 褒められる流れでしたのに~!?」
「おだまりなさい! 罰当たりなことを!」
炸裂する破裂音。
いや、尻叩き音。
それはもう盛大に響いた。『リヴァイアサン』から降りてきたメルヴィナも肩を竦ませたし、水之江もビクッと一瞬ドローンのカメラシャッターを押す手を止めたほどであった。
「いやー! わたくし何も悪いことしておりませんわー!」
「国宝をバーベキューの道具にするなど言語道断です! だからあんなに熱心に装甲を磨いていたのですか! 私は、あなたもついに王族としての責務に目覚めたのかと喜んでおりましたのに!」
ぱしんぱしんと音が響く。いや、実際にはもっとえげつない音であったが、夏休み雰囲気のサウンドエフェクトに置き換えて頂いている。えぐいからね。
「ヴリちゃんはわたくしの自由にしてよろしいと仰っていたではありませんの!」
「限度というものがあります! 弁えなさい! そういうことばかり言う子はこうです!」
ぱしん! とまた音が響く。
「『ヴリトラ』! あなたも機械神としての自覚をお持ちなさい!」
ギッ、とソフィアの視線が『ヴリトラ』へと向けられるが、『ヴリトラ』は無関心であるし、なんなら、しーらね、みたいな我関せずな雰囲気を醸し出している。完璧に舐められている。
ソフィアは夏の日差し以上に、この問題児二人をこれからどうすればいいのかと頭を悩ませることになるのだが、しかし、今日はバカンスである。
「まあ、それくらいにしておくのだわ。お姉様。お気持ちはわかるのだわ。けれど……」
「……そうですね。お客様の手前もあります」
「むざいほーめんですわねー!」
「懲りなさい」
「あっー! ですわー!」
●川の字
そんな騒がしい昼が過ぎて夕暮れを迎えたコテージは、すっかり夜の帳が降りてしまえば、寝息が聞こえてきていた。
王族用のコテージ。
その豪奢さは言うまでもなかったが、大きなソファベッドの上にエルネイジェ三姉妹が川の字になって眠っている光景というのは、水之江にとって微笑ましいものであった。無論、姉妹愛がどうたらではない。
シャッターチャンス的な意味で、である。
「すっかり寝てしまったわね。慰安旅行って言っていた割には騒々しいものであったけれど……あ、いや、今も結構騒々しいわね」
水之江は三人の寝相が、想像しすぎて思わず笑ってしまっていた。
メルヴィナを挟んでソフィアとメサイアが寝返りを打つ度に、彼女の体のどこそこかに拳や蹴りがめり込んでいるのである。
「う、うぅん、メサイア、そんなに空中で『ヴリトラ』を回転させてはダメなのだわ……」
「……これが! ヴリちゃんシャドウプレデターの新たな技! ジャミングブレードすぴんなんちゃらかんちゃら、ですわー!」
「……すぅ……すぅ……メサイアッ!!」
「……ゲェッ、ソフィアお姉様ッ!?」
「……寝言よね、これ?」
水之江は三人の三者三様な寝相と寝言に、本当に寝ているのかと疑ったが、完全に寝言である。
夢の中で三姉妹が繋がっているのかもしれない。
まあ、そういうところも可愛らしくもある、と水之江は微笑んでシャッターを切った。
ドローンが三姉妹の寝顔を激写しているのである。
「……あ、あの」
「ん、何? あ、ナイアルテさん、スマイルちょうだい」
はい、笑顔、と水之江は、彼女の行為を止めようとしたナイアルテにもカメラを向ける。もう条件反射で彼女はカメラを向けられる笑顔とダブルピースをしてしまう癖がついてしまったようである。
「こ、これって盗撮なのでは……?」
「思い出づくりの記念撮影だから」
「で、でも……寝顔、撮る、必要は……?」
ない。まったくない。けれど、なんかこう需要ありそうだし、需要しかなさそあうって思えば、其処に商機を見出すのが水之江である。
小銭稼ぎにちょうどいいと思ったのだ。
エルネイジェ王国に置いて王族の立ち位置は把握している。
彼女達は前線に立つ武人、将である以前に象徴なのだ。力こそが正義であるとしても、その見目麗しい姿は、国民に多く周知されるべきであろう。
まあ、プライベートビーチでの水着姿である必要はまったくないのであるが、まあ、それはそれ。これはこれ。
水着に需要がないなんてわけない。
「まあ、いいじゃないの。これも一夏の思い出というやつ。それにナイアルテさんもいい感じにエンジョイしたでしょ?」
「あれは、水之江さんが……!」
「その割にはノリノリだったみたいだけれど」
ほら、と撮影した写真のプレビューを水之江はナイアルテに見せる。そこに移って居たのは、完全なる浮かれ水着猟兵のナイアルテだった。後から冷静に見ても、浮かれているのを加味しても、ノリノリすぎ、と言われても仕方のない姿だった。
「うぅ、ううぅ……痛い、痛いのだわ……ツボ押しなら、もっとそこじゃなくて、上なのだわ……」
「……メサイア、ステイッ!!」
「は、はいー! ですわー!?」
「……本当に騒々しい寝言。でも、仲良さそうでよかったわ」
そう言って水之江はナイアルテが止めるのも無視して三姉妹の盛大な寝相をカメラに納め、小遣い稼ぎが後に小遣い稼ぎどころではないエルネイジェ三姉妹のサマーバケーション写真集としてミリオンヒットを飛ばす未来を得るのだった。
そう、これは一夏の1ページ。
なんかいい感じに締めたが、水之江の懐が潤うまでの記録であった――。
成功
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