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アキバクライシス

#ケルベロスディバイド #黄道神ゾディアック #決戦都市アキバ

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#黄道神ゾディアック
#決戦都市アキバ


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●電脳決戦都市
 ――ケルベロスディバイド。
 侵略者『デウスエクス』から身を守るため、人類が『決戦都市』に住まうようになった世界。
 かつては『秋葉原』と呼ばれた都市もまた『決戦都市アキバ』という人類の砦へと変貌していた――。

「パターン・黒! デウスエクスです!」
 特務機関|DIVIDE《ディバイド》のアキバ支部――その作戦司令室にオペレータの声が響く。巨大スクリーンに映し出されるのは、決戦都市アキバを取り囲むように表示された無数の黒い点。それは宇宙より飛来したデウスエクスたちを示していた。
 その黒点を見つめる若い女性、DIVIDEアキバ支部長である柏木・ナナミがオペレータに素早く指示を飛ばす。
「アキバの全区画に通達! これより対デウスエクス戦闘のため、大規模並列クラスタ戦術補助システムAkiba Intelligent Resilience Interface System――|A.I.R.I.S.《アイリス》を起動します!」

 |A.I.R.I.S.《アイリス》――それは、アキバの電気街の店やパソコンショップに並んでいるPC、ゲームショップの展示用ゲーミングPC、さらにはアーケードゲームの筐体に至るまで、すべてのコンピュータを連結させることで、スーパーコンピュータすら凌駕する演算性能を生み出すシステムだ。
 これこそ、アキバの街を決戦都市たらしめている守護神であり、これまでデウスエクスの襲撃をなんとか退けてくることができた理由である。

 ナナミやオペレータたちが見つめる先、DIVIDE支部のスクリーンに|A.I.R.I.S.《アイリス》の文字が表示された。
「|A.I.R.I.S.《アイリス》とのコネクション確立。全機能オールグリーン。起動成功です!」
「決戦都市アキバ、対デウスエクス戦闘準備! |A.I.R.I.S.《アイリス》はデウスエクスの進軍ルートをシミュレート! 常駐ケルベロス部隊および各|決戦配備《ポジション》は準備急いで!」
 ナナミはDIVIDE作戦司令室から、次々と指示を出していく。

「――増援のケルベロスたちの到着予想時間は?」
「近隣のDIVIDE支部からの増援は――約1時間後になる見込みです」
 オペレーターからの返答に、ナナミはポーカーフェイスを貫く。
 |A.I.R.I.S.《アイリス》のシミュレーションによれば、現在アキバにいる戦力のみで戦った場合、1時間後には都市の半分が壊滅するという予測結果が出ていた――。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。新しく繋がった世界――ケルベロスディバイドで事件です。多くの人々が住む街がデウスエクスと呼ばれる敵に襲われることが予知されました」
 グリモアベースで猟兵たちに説明するのは、アイ・リスパー(f07909)だ。アイがホロキーボードを叩くと、立体ディスプレイに多数のビルが立ち並ぶ街の光景が表示された。
 ――ビルにはアニメやゲームのキャラクターが描かれた看板が掲げられ、大型ディスプレイにはネットアイドルたちのライブ映像が流れ、街を歩く大勢の人々の合間には客引きするメイドの姿が見えたりしているが。

「こちらが、今回襲撃される街――その名も『決戦都市アキバ』です。アキバは電気の街としての技術力を用いて、最新の対デウスエクス兵器や|A.I.R.I.S.《アイリス》という高性能コンピュータを作り上げ、デウスエクスに対抗しています。さらに、ゲーム、アニメ、メイド喫茶といったサブカルチャーの力で|決戦配備《ポジション》を発動可能にしています」
 UDCアースでは秋葉原の街がある場所だが、1998年段階で歴史の分岐があった影響で、古い電気の街としての特徴を保ちながら、サブカルチャーが高度に融合した決戦都市となっている。

「この世界では、特務機関|DIVIDE《ディバイド》に所属するケルベロスたちがデウスエクスに対抗しているのですが……今回、アキバを襲撃するデウスエクス軍団を相手にするには戦力が足りません。――どうか、人々を守るため、力を貸していただけませんでしょうか」
 そう言うと、アイはケルベロスディバイドへと続くゲートを開き――。

「あ、そうそう。向こうの世界のゲームで面白そうなものがあったら、お土産よろしくおねがいしますね」
 期待に満ちた瞳で猟兵たちを送り出すのだった。


高天原御雷
 オープニングをご覧いただき、どうもありがとうございます。高天原御雷です。
 今回は新世界『ケルベロスディバイド』での依頼となります。
 以下、シナリオ詳細です。

●一章:集団戦
 決戦都市アキバを襲撃しているデウスエクス軍団との集団戦です。
 決戦配備を要請できますので、工夫して戦ってみてください。

●二章:ボス戦
 デウスエクス軍団の指揮官との戦闘です。この指揮官を撃破すればデウスエクス軍団は撤退します。
 強力な敵ですが、決戦配備を有効活用して撃退しましょう。

●三章:日常
 決戦都市アキバを見て回ります。
 街を散策したり、アキバの決戦配備を担う人々と交流することもできます。
 ご要望があれば、グリモア猟兵も登場可能です。

●プレイングボーナス
 本シナリオでは、決戦配備を要請することでプレイングボーナスを得ることができます。

●通信端末について
 猟兵たちはアキバに到着すると同時に、住民たちから通信端末を渡されます。端末を通して他の猟兵やDIVIDE支部、現地のケルベロスたちと連絡を取ったり、決戦配備の要請をおこなうことができます。

●|決戦配備《ポジション》について
 詳細は断章にてご説明します。

●執筆ペースにつきまして
 執筆時間の都合上、ご参加いただく人数によっては再送いただく可能性があります。
 予めご了承いただけますと幸いです。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『タロス兵』

POW   :    ドリル鉄甲
【巨大ドリル状に変形させた腕】を【一時的に増幅させたグラビティ・チェイン】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
SPD   :    フルメタル武装
【剣や槍などの近接武器の形状に変形させた腕】でダメージを与えた対象を【鉄杭】で貫いてから【鋼の鎖】で捕縛し、レベル秒間、締め付けによる継続ダメージを与える。
WIZ   :    ギガント鉄拳
【鉱物を纏わせて巨大化した拳】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●|決戦配備《ポジション》について
 ケルベロスディバイドの世界では、猟兵たちはDIVIDEに決戦配備の発動を要請することができます。
 本シナリオの舞台となる『決戦都市アキバ』で利用可能な決戦配備は、以下の通りです。

・【クラッシャー】(攻撃力支援)
 DIVIDEアキバ支部所属の戦闘員たちによる戦闘支援を受けることができます。戦闘員たちはアキバ電気街が開発した最新兵器で武装しています。なお、最新兵器は街の電気屋やパソコンショップ等で借り受けて使用することも可能です。

・【ディフェンダー】(防御力支援)
 決戦都市アキバの各所に設置された隔壁を地面から出現させ、防御に利用することができます。なお、特殊材質性の隔壁にはアニメやゲームのキャラクターが描かれていて、ファンたちの熱い想いによってデウスエクスの攻撃さえも防ぎます。

・【ジャマー】(妨害・奇襲支援)
 偶然アキバに買い物に来ていた技術者やプログラマーの協力を得て、対デウスエクス用妨害兵器やハッキングプログラムなどで敵を妨害してもらうことができます。また、レーダーや通信傍受をしてもらうことにより敵の位置を正確に把握することも可能です。

・【キャスター】(術式・奇策支援)
 戦術補助システム|A.I.R.I.S.《アイリス》とデータリンクをおこなうことで、電脳魔術が強化されます。また、神田明神を中心とする龍脈を利用することで電脳系以外の魔術も強化されます。
 アイドルステージでファンたちが熱狂することで、なんやかんやで奇策が成功しやすくなります。

・【スナイパー】(遠距離支援)
 偶然アキバに買い物に来ていたゲーマーたちが、アキバ電気街で開発された対デウスエクス用狙撃銃で遠距離狙撃してくれます。歴戦のゲーマーたちの狙撃能力は、熟練の兵士にも引けを取りません。

・【メディック】(民間人の避難・救護支援)
 アキバの街を熟知しているメイドたちが、民間人の避難誘導をおこないます。また、メイド喫茶を一般に解放し、臨時の救護所にします。

●デウスエクス迎撃戦
『こちらDIVIDEアキバ支部所属のケルベロス。|A.I.R.I.S.《アイリス》が予測した交戦予定地点に到着した。|決戦配備《ポジション》クラッシャーを要請する』
『DIVIDE支部、決戦配備発動承認。座標を送ります』
 ケルベロスの青年が端末を通して決戦配備の要請をおこなうと、DIVIDE本部から座標が送られてきた。指定された座標に目を向けると、そこにあるのは古めかしいパソコンパーツショップ。青年は迷わず店の扉を開けた。
「来たな、準備はできてるぜ。どれでも好きなものを持っていきな!」
 中年の店主が言うや否や、パソコンのジャンクパーツが並べられた古びた棚がガシャンという音とともに床に沈む。木製の棚の裏から姿を現したのは、銀色に輝くメカニカルなウェポンラックだ。ラックにはアキバの電子技術の粋を結集して開発された最新の対デウスエクス兵器の数々が並んでいる。
「助かる」
 ケルベロスの青年は、ラックから一本のダガーを手に取ると、店を飛び出していった。

 決戦都市アキバ。デウスエクスとの戦いを目的に最適化された街は、戦闘時にはデウスエクス迎撃にあたるケルベロスを支援する|決戦配備《ポジション》の使用が可能になる。ケルベロスたちは、決戦配備を駆使しながらデウスエクスの襲撃に対抗しているのだ。

「この先が|A.I.R.I.S.《アイリス》に指定された交戦ポイントだな」
 ケルベロスの青年が大通りに飛び出すのと同時に、地面から屹立していたアニメキャラが描かれた特殊合金製の防壁が砕け散る。防壁の向こうから現れたのは、金属製の巨体を持ったデウスエクス――コードネーム『タロス兵』だ。
 |A.I.R.I.S.《アイリス》によって制御された無数の防壁により、天より襲撃してきたデウスエクス軍団は各個撃破が容易なように分断され、この場所に誘導されてきたのである。

『こちらケルベロス。これよりタロス兵に攻撃を開始する』
『|決戦配備《ポジション》ジャマー了解。援護、いつでもいけるぜ』
 ケルベロスの通信に壮年の男が応える。男は大手企業で働く技術者であり、休日の今日は趣味の電子工作用の部品を買いに電気街にやってきていた。そこで突然デウスエクスの襲撃に巻き込まれ――こうしてジャマーとして協力しているのだ。
「即席の電磁パルス弾だが、効いてくれよ……!」
 ジャマーの男はタロス兵に向かって改造手榴弾を投擲した。それは激しい閃光を放ち――タロス兵の全身を痺れさせて動きを止めた。

「今だ、いくぞっ!」
 ケルベロスの青年がタロス兵に突進し、手にしたサイバーナイフを突き立てる。
 |A.I.R.I.S.《アイリス》とデータリンクしたナイフは高密度のデータを流し込むことにより電脳魔術的な効果を発揮して、タロス兵の装甲の一部を分解していく。

 ――だが、タロス兵を倒すには至らない。
 電磁パルス弾の影響から抜け出したタロス兵がケルベロスに反撃しようと、ドリル状に変形させた腕を振りかぶった。

『こちら|決戦配備《ポジション》スナイパー。ケルベロスは一時後退してください』
 タロス兵から遥かに離れた高層ビルの屋上。
 望遠スコープでタロス兵の動きを見ていた少女が、通信と同時に長銃身ライフルの引き金を引く。銃弾はケルベロスを貫こうとしていたドリルに直撃し、本来の軌道からそれたドリルが空を切る。

 ケルベロスが防壁の後ろに下がっていくのを確認すると、少女は小さく息を吐いた。
「今日は新発売のFPS買ったら、すぐに帰ってプレイするつもりだったんだけどなー」
 国内屈指の実力を持つFPSゲーマーの少女にとっては、この程度の距離の狙撃など慣れたものだ。
 少女は別のターゲットを求め、望遠スコープを覗き込むと、再びライフルの引き金を引く。
「どこも押されてるみたい……このままだとゲームオーバーかも?」
 戦況を見通す|少女《ゲーマー》の勘は、悪い予感を告げていた――。
オルフェウス・シフウミヤ
※アドリブ大歓迎

さて、相手は物理攻撃ですか。で、あるなるば選択すべきUCはこれですね。
その愚鈍そうな姿で私のスピードについてこれますか?ダメージを与えることができますか?試してみましょうか。私の死の舞踏を見惚れて息絶えなさい。私は母に倣い悪を滅して弱者を救うものなり。
煌銀眼を発動し常に最適解を選択。
さらにUC発動、さらに限界突破し汎ゆる速度を雷速を突破します。物理攻撃は通じませんよ?そして金属ならば黒雷の裁きにてダメージを与えることができるでしょう。攻撃も移動も雷速の限界突破、それが私の真理です。
卑怯、とは言わせません。悪滅一切慈悲は無し。
あぁ、私は愛しき母に近づけることができるのでしょうか。




 決戦都市アキバの街で、鋼鉄のデウスエクス――コードネーム『タロス兵』が巨大な腕を振るう。その一撃は、大通りに面したビルの1階を完全に破壊し、3階建ての建物を倒壊させた。
 アキバの誇るスーパーコンピュータ|A.I.R.I.S.《アイリス》の予測では、街が半壊するまで1時間しかかからない――。その事実が、デウスエクスに対抗しようとするケルベロスや|決戦配備《ポジション》の人々の気持ちを絶望の淵に叩き落していく。

 まるで、すでに戦いに負けたかのような空気が漂う中――アキバの街に凛とした少女の声が響いた。
「なるほど、ここがアキバ――どことなく故郷の街に似た空気を感じます」
 電気パーツショップの屋上に立つ声の主は、銀色の髪をポニーテールにした美少女、オルフェウス・シフウミヤ(|冥府の吟遊詩人の系譜《スコーピオ・オルフェウス》・f40711)だ。夜空色のドレスを風になびかせ、|銀色と紫色《ヘテロクロミア》の瞳でタロス兵の姿を射抜く。
「――その愚鈍そうな身体で私のスピードについてこられますか?」
 呟いた瞬間、オルフェウスの姿が虚空に溶ける。――否、アキバを守る人々は当然のこと、タロス兵の|視界《センサー》からも消え失せたように見えるほどの超スピード。それがオルフェウスの戦い方だ。
「私の死の舞踏に見惚れて息絶えなさい――私は母に倣い悪を滅して弱者を救うものなり」
『ウォオオオオ!』
 対するタロス兵は、その両腕を変形させる。鈍重な両腕がスマートな形状になり、その拳には鋭い剣が握られていた。
 腕を変形させたタロス兵は、先程までの愚鈍そうな動きを一変させ、超高速の剣戟を繰り出した。

「――なっ!?」
 タロス兵の外見に似合わない超速で繰り出された剣が、高速機動するオルフェウスの身体を捉え――その身体に剣が突き立つ。さらにオルフェウスに向けて鉄杭が撃ち込まれ、鋼の鎖が少女の華奢な身体を締め付けた。
 タロス兵の連続攻撃を受ける少女の姿を見て、アキバの人々が少女を助けんと武器を構えるが――彼らが動き出すよりも早く可憐な声が響いた。
「雷奏せよ、我が身はこれより雷剣天使――悪に蹂躙されし者への悲哀の悲しき涙を糧に、雷天使の死の舞踏を弱者の為に舞い強者を蹂躙しよう――」
 確かに剣や鉄杭に貫かれたはずのオルフェウスの口から紡がれるは、|雷剣天使 死の舞踏《トール・トーテンタンツ・ラミエル》の詠唱。少女の身体が黒き稲妻へと変じ、雷剣天使の姿となる。
 ――いや、それはタロス兵や人々が認識できていなかっただけのこと。彼女はすでに雷剣天使へと変じていたのだ。彼女の|煌銀眼《オルフェウスアイ》は、瞬間同時並列思考により常に最適解を選ぶことができる。この展開を見通せなかった理由は皆無だった。
 その証拠に剣や鉄杭で貫かれたはずの身体からは一滴の血も流れておらず、逆にタロス兵の身体が雷撃により帯電していた。

『グアアアアッ!?』
 剣を通じて電撃が流れ込み、タロス兵が苦悶の声を上げる。
「この姿となった私に物理攻撃は通じませんよ?」
 |重力《物理法則》を無視して空に浮かび上がるオルフェウス。その身に宿すは雷鳴。金属製のタロス兵にとっては致命的となり得る攻撃。
『グオオオオッ!』
 鋼の鎖でオルフェウスの動きを止めようとするも、雷の身体となった彼女には通じない。

「卑怯、とは言わせません。悪滅一切慈悲は無し――|雷速の限界突破《ライトニング・リミットブレイク》」
 オルフェウスが加速し、雷速をも突破した速度でタロス兵の巨体を貫通する。
 雷撃の塊となった少女に金属のボディの中心にある動力炉を貫かれ――タロス兵は爆音とともに砕け散った。

 タロス兵を撃破したことにアキバの人々が喝采を浴びせてくる中、少女は小さく呟いた。
「あぁ、私は愛しき母に近づくことができるのでしょうか――」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンジェリカ・ディマンシュ
ここがアキバ…電脳魔術に長けた決戦都市
思ったのですが、いわばディバイドは小規模な|全世界決戦体制《ケルベロス・ウォー》をいつでも担えるのですね!

ポジションはキャスター
龍脈と接続しエネルギーを
『万能戦艦』の残影から『鹵獲魔法弾頭装填型超電磁砲』を投影し、竜語魔法・古代語魔法・精霊魔法等の各種鹵獲魔法の性質を宿す超電磁砲をタロス兵のみに叩き込む
龍脈と接続し、そこからA.I.R.I.Sと接続して『鹵獲魔法弾頭装填型超電磁砲』の性能を引き上げタロス兵を一掃

異世界のケルベロスが一人、アンジェリカ・ディマンシュ!
押して参りますわよ!
そう言って肉付きの一切ない(AAカップ)薄い胸を張り、戦場を進んでいく




「ここがアキバ……電脳魔術に長けた決戦都市――」
 ビルが立ち並び――そのことごとくに電気パーツやパソコン、アニメにゲーム、はたまたメイド喫茶といった看板がかかっているのを見て、アンジェリカ・ディマンシュが物珍しげな声をあげた。
 アンジェリカは、フランスの名家、ディマンシュ財団の令嬢だ。いや、だった、というべきか。
 彼女の出身世界は|ケルベロスディバイド《ここ》とは似て非なる世界であり、その世界のケルベロスとして戦ってきたのだ。
 向こうの世界にも秋葉原はあっただろうが――それは、この世界の決戦都市アキバとは異なる姿である。当然、古き電気の街と、アニメ、ゲーム、メイドといったサブカルチャーが融合したこの街を目にするのは初めてである。

「それでは、わたくしの力、披露して差し上げましょう――|決戦配備《ポジション》キャスターを要請しますわ」
『特務機関|DIVIDE《ディバイド》アキバ支部、|決戦配備《ポジション》キャスター、要請承認』
 アキバの街が開発した通信端末――超並列クラスタコンピュータ|A.I.R.I.S.《アイリス》を通したシステムにより、アキバの街の鎮守である神田明神で儀式が開始された。宮司による祝詞が奏上され、巫女による奉納の舞いが踊られ――この地を流れる龍脈が活性化する。
 |A.I.R.I.S.《アイリス》により計算され誘導された龍脈の流れがアンジェリカへと収束し――その身に強大な魔力が宿った。

「――今ならば、どんな魔術でも使いこなせそうですわね。異世界のケルベロスが一人、アンジェリカ・ディマンシュ! 押して参りますわよ!」
 優雅な笑みを浮かべた少女は薄い胸を張ると、アキバを襲うデウスエクス――タロス兵へと視線を向ける。
 すっと片手を掲げた少女の背後に、揺らめく戦艦のごとき姿が現れ、その砲身の照準をタロス兵に合わせた。それは、鹵獲魔法によって竜語魔法・古代語魔法・精霊魔法などを砲弾として撃ち出すことのできる兵器。その名も――。
「鹵獲魔法弾頭装填型超電磁砲、発射ですわ!」
 |A.I.R.I.S.《アイリス》と接続し威力を向上させた砲身から、あらゆる種類の魔法が放たれ、タロス兵を灰燼に帰したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

早門瀬・リカ
アドリブ、連携、苦戦描写もOK
決戦配備はスナイパーを利用

|A.I.R.I.S.《アイリス》と連携すれば
実戦経験の浅い僕でも役には立てそうだ

タロス兵は近接戦闘が強い相手のようだから
直接戦闘は避けてスナイパーの子が
狙いやすくなるように立ち回らせてもらう

殺界形成を使用して余計な気配を散らして
ターゲットであるタロス達には
輝くオーラでマーキングするよ
それでも不足なら螺旋手裏剣を
目印代わりに命中させておくよ
それでズドンとだね

スナイパーの子自身が狙われたりしないよう
近づかせないように立ち回るけれど
接近を許してしまいそうなら
タロスの気配がない位置に移動してもらうよ

「頑丈そうな相手だけれど、狙いやすそうかな?」


リリエッタ・スノウ
ここが秋葉原、なんだね。
むぅ、なんだか事件がいっぱい起きそうな気配がする街だよ。

アキバに急行したら建物の上からデウスエクスを観察するよ。
なんだかとても固そうな敵だよ。リリの拳銃だと撃ち抜けない可能性があるね。
それならこのユーベルコードを使うよ。

まずは敵を広い場所まで誘導するね。むぅ、あの歩行者天国って言われてる場所に連れていくかな。
そこまで誘導したら一旦、決戦配備の【ディフェンダー】で要請した隔壁を上げてもらって距離をとるね。
そのまま拳銃を真上に掲げて【メテオ・バレット】!
真上からの隕石の弾丸でタロス兵を貫くよ!

※アドリブ連携大歓迎




「ここが秋葉原、なんだね。むぅ、なんだか事件がいっぱい起きそうな気配がする街だよ」
 尖った耳を持ったシャドウエルフの幼い少女、リリエッタ・スノウ(シャドウエルフのガンスリンガー・f40953)は、決戦都市アキバに到着すると、周囲の様子を確かめるために手近な建物の屋上に登った。
 暗殺兵器として銃の扱い方を仕込まれた少女にとって、戦場の様子を確認することは息を吸うように自然な行動だ。
 そのため、その建物の屋上が狙撃に適していて――先客がいたことも必然だったのだろう。
「ええ、この街では日々、色々な事件が起きてるわ。まあ、今回みたいなデウスエクスの襲撃は遠慮してもらいたいけれど、ね」
 リリエッタに話しかけるのは、スナイパーライフルを持った高校生くらいの少女だった。
 狙撃スコープを覗いて引き金を引き――ふぅ、と息をつく。
「お姉さんもケルベロス?」
「いえ、私は|決戦配備《ポジション》スナイパーのただの高校生よ。まあ、FPSの大会で上位に入るくらいの腕はあるゲーマーだけどね。――っていうか、あなた、ケルベロスなの!?」
 リリエッタはこくりと頷くと、腰に下げた拳銃を取り出した。リリエッタの仕事道具だ。
 それを見たゲーマー少女が目の色を変えた。
「嘘っ、それ、LC-X16!? それも独自カスタムモデルじゃない!」
「お姉さん、知ってるの?」
「うん、私もこの銃、よく使ってるの! あ、私はゲームの中でだけどね」
「じゃあ、同じ銃を使ってる仲間、だね」

 決戦都市での戦闘中に銃の話で盛り上がる高校生とシャドウエルフの幼い少女。
 ――場違いなその光景こそ、ケルベロスディバイドが置かれた窮状を現しているのかもしれなかった。


「ところでリリちゃんは、なんでこんなところに?」
「そうだった。お姉さん、このあたりで広くて思う存分戦える場所しらない?」
 それこそが、リリエッタが屋上から様子を伺おうとしていた目的だった。
 そして、その意図をスナイパー少女は瞬時に見抜く。
「さっすが、よくわかってるじゃない、リリちゃん。戦場を俯瞰して敵の動きを読み、有利な状況で戦うことこそスナイパーの醍醐味! 一方的に狙い撃っちゃうんだから!」
「お姉さん、それ芋……」
「芋ってゆーな!」
 スナイパーの少女は、こほんと咳払い。
「で、リリちゃんはその銃で戦える場所を探してるわけよね? なら、これ持って行って。私の予備端末」
 ぽいっと放られたのは、決戦都市アキバが配布している通信端末だ。
「そこに私が独自に集めたアキバのマップを入れてあるわ。リリちゃんの条件に合う場所は――こことか、こことか、このへんね」
「ん、ありがと」
「あと、その通信端末で|決戦配備《ポジション》の要請もできるわ。もし助けが必要だったら声かけてね」
 リリエッタは、端末を受け取り、マッピングされている歩行者天国へと向かったのだった。


「なるほど、これが|A.I.R.I.S.《アイリス》と通信できる端末か……。|A.I.R.I.S.《アイリス》と連携すれば、経験の浅い僕でも役には立てそうだ」
 決戦都市アキバに到着した早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・f40842)は住民から通信端末を受け取った。栗色の髪をポニーテールにした隠密服姿のシャドウエルフであるリカ。一見、少女のような印象を与える容姿だが、れっきとした少年である。
 こうしてアキバの戦場に来たリカであるが、彼はまだまだ未熟なケルベロス。だが、リカは決して油断はしない。
 ――どんなに万全を尽くそうとも、この世界では理不尽なことが起こり得るのだから。

「まずは敵のデータを再確認だな」
 端末を操作して|A.I.R.I.S.《アイリス》のデータベースにアクセスすると、デウスエクス――コードネーム『タロス兵』との交戦データが表示された。それは現在アキバで戦っている仲間たちによって集められた生のデータであり、|A.I.R.I.S.《アイリス》によりリアルタイムで更新されている情報である。
「この|情報《ステータス》――グリモアベースで聞いた予知よりも正確だな」
 端末に表示された|情報《ステータス》から、改めてタロス兵の近接戦闘能力の高さを思い知る。
 もし、現在のリカが正面から戦うとすると、デウスエクスに勝てる確率は22%というシミュレーション結果がはじき出された。やはり正面からの戦いは無謀なようだ。
「そうなると、遠距離攻撃ができるスナイパーに狙撃してもらうのが一番だな――。こちらケルベロス、|決戦配備《ポジション》スナイパーを要請する」
『特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》スナイパー、要請承認』
 DIVIDEのオペレーターからの承認が降りると同時。端末が別の回線と接続された。
『はーい。こちら、|決戦配備《ポジション》スナイパー、コードネームFPSゲーマーよ』
 回線から、明るい少女の声が響いてきた。


『あ、キミ、アキバは初めて? 私は週一くらいのペースでゲーム買いに来てるかなー。まあ、人が集まる週末にばっかり来るから、よくデウスエクスの襲撃に巻き込まれるんだけどねー、あはは』
「あ、そ、そうなんだ……」
 スナイパーの妙に明るいテンションに戸惑いながらも、リカは通信機に声をかける。
「いいかい、デウスエクスは僕が引き付ける。だからFPSゲーマーは安全な場所から狙撃して」
『オッケー。なら、さっきリリちゃんが向かった歩行者天国がちょうどいいかな』
「リリちゃん――?」
『そ。とっても可愛いケルベロスだよ。――けど、あの子は強いね。あの目、私より遥かに場数を踏んでるよ』
 どうやらリカ以外のケルベロスも近くに来ているらしい。ならば合流するべきか――。
 そう思った瞬間、行く手から轟音が響き渡った。


 巨大な機械兵――タロス兵の剛腕の一撃。その一撃が、アキバ歩行者天国の一角を激しく穿つ。
 飛び退ってそれを回避したリリエッタは、空中で腰から拳銃『LC-X16 Type HANDGUN』を抜き放つと、素早く三連射した。だが、タロス兵の瞳を狙ったその銃弾は、甲高い金属音とともに弾かれた。
「ん、やっぱり硬い、ね」
 軽くステップを踏み、タロス兵から距離を取るリリエッタ。

 そこに、隠密服姿の少年が服をなびかせながら飛び込んできた。
「大丈夫か、助太刀する!」
「ありがと」
 霊刀を構えたリカが、リリエッタをかばうようにタロス兵との間に立つ。
 だが、腕を剣に変形させたタロス兵が、リカを斬り裂こうと突撃してきて――。
「しまった、避けられない!」
 振り下ろされる鋼鉄の斬撃。

 ――しかし、その攻撃がリカに届くことはなかった。

「|決戦配備《ポジション》ディフェンダー、ようせいっ!」
『――復唱省略、承認!』
 リリエッタの要請により、リカの目前にそびえ立った防壁。それがデウスエクスの一撃を防いだのだ。
 斬撃によって防壁の途中までめりこんだタロス兵の剣。それは、リカの頭の上ギリギリで止まっていた。
『運が良かったね、キミ。あとちょっと身長が高かったら斬られてたぞ♪』
 通信機から響く声とともに、遠方のビルの屋上から撃ち出された銃弾がタロス兵に命中し、その巨体を仰け反らせた。
『やっほー、リリちゃん、さっきぶり♪』
「あ、お姉さんの声。さっきぶり」
「二人とも、のんびり挨拶してないで。敵はまだ健在だよ!?」
 リカの声に、リリエッタの表情が引き締まる。通信機の向こうからも集中した雰囲気が伝わってきた。
 ――リカも刀を構えるが、この鋼鉄のタロス兵に刃が通る気がしない。

「ねぇ、忍者のお兄さん、お姉さん、リリに考えがあるんだけど――少し時間を稼いでほしい」
 リリエッタの言葉にリカが頷き、スナイパーの少女も『了解』という通信を返してきた。
 作戦の内容を聞くまでもない。今、あのデウスエクスを倒すには、リリエッタに賭けるしかないのだ。

「それでは僕は、狙撃の援護をしよう」
 リカが意識を集中すると、周囲に漆黒の闇が広がっていく。それはただの闇ではない。彼の殺気が形になったもの――殺界形成だ。殺気は、戦場にいる強者――タロス兵の身体を輝かせ、目立たせる。
「まだまだっ、これもおまけだっ!」
 リカが懐から取り出した螺旋手裏剣がタロス兵に命中し――砕け散ると同時に内部に仕込んであった派手な塗料が鋼鉄の装甲の胸部に目印をつけた。
『ナイス! これなら外さないわよ!』
 連続する銃声。ガン、ガン、ガン、とデウスエクスの鋼鉄の装甲――その胸部、目印のついた場所に、寸分違わずスナイパーライフルの銃弾が撃ち込まれた。
 激しい衝撃に、ボディを歪められ、タロス兵がよろめいた。

 だが、それだけだ。タロス兵の装甲を打ち破るには至らない。
『ガアアア!』
 タロス兵が吠える。この場で最も脅威であるのは間違いなく遠方から狙撃してきているスナイパーだ。
 デウスエクスは右腕をビルの屋上に向け――そこから巨大な鉄杭を発射した。
「まずいっ、こいつ、こんな飛び道具をっ!?」
 リカは自らの危険も顧みず、鉄杭の軌道上へと身を投げ出し――。一歩及ばず、鉄杭はリカの顔の横を通り過ぎていった。
 鉄杭によって巻き上げられた数本の銀髪が宙に舞い――遥か後方でビルが崩壊する轟音が轟く。通信端末から聞こえてくるのは、無意味なノイズだけ。
「そん――な――」
 思わず膝から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになるリカ。
 だが、その背後で巨大な力が膨れ上がるのを感じた。
 タロス兵も、ここにきてようやく、この戦場で誰が一番危険だったのかに気づき――シャドウエルフの幼い少女へと視線を向けた。

 少女は、手にした拳銃を真上に向けて構えていた。拳銃の銃弾には膨大な魔力が貯められており、まるで高熱を発するかのように周囲に熱風を巻き起こしている。
「打ち砕け! 星の弾丸――メテオ・バレット!」
 リリエッタが引き金を引くと、銃弾は垂直に打ち上がり――その軌道の頂点で指向性を持った流星へと変じた。
 まっすぐに降ってくる弾丸に、身の危険を感じたタロス兵がその場を離れようとするが――。
「逃さないぞ、スナイパーの仇!」
 リカが放った螺旋手裏剣がタロス兵の足の関節に命中し、その動きを封じる。
 ――そこに落ちてくる、灼熱の流星。
『グアアアア!』
 メテオ・バレットは、タロス兵の胸部装甲――たび重なるダメージを受けていた箇所へと突き刺さり、その装甲を貫き、動力炉を破壊。タロス兵を爆散させたのだった。

 だが、リカとリリエッタの表情は晴れない。
「なんとかデウスエクスを倒せたけど……」
「ん、犠牲、大きかった」
「そうねぇ。ビルの屋上、めちゃくちゃよ。私の通信端末も壊れちゃったし、今日買ったゲームも瓦礫の下敷きよ」
 スナイパーの少女も、二人の背後から悔しそうな言葉を投げかけ――。
「って、ええっ!?」
「お姉さん、生きてたの?」
「やぁねぇ、狙撃して敵に位置がバレたら移動するのがスナイパーの鉄則でしょ? 言ったでしょ、リリちゃん、私は芋スナイパーじゃないって、ね」
 |決戦配備《ポジション》スナイパー、コードネームFPSゲーマーの少女は、二人のシャドウエルフのケルベロスに笑みを向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ホロウ・リュヌ
※アドリブ大歓迎

ほう、機械…鉄塊の兵隊の群れですか。ならば、使いたいし効果的なUCを使いましょう。
UCは、空中ステップを用いた超光速の三次元機動で敵の間合いに踏み込み、限界突破したディメンションセイバーによる斬撃波と、召喚した連装列車砲の炎弾連続砲撃を放ちながら4回攻撃します。
決戦配備はメディックで、私の列車砲に巻き込まれないように避難誘導をおこなってもらいます。私のUCによる攻撃はそのあとです。
なにせ火力が火力ですからね。本来なら街中で使うようなUCではないですですが、まぁたぶん大丈夫でしょう。
敵の攻撃はまず当たらないでしょう。スピードが違いますからね。
さぁ悪滅慈悲はなしの宴を始めましょう。




「あれもまた機械ですか……」
 鉄塊の兵士――タロス兵を、蒼と翠の瞳で見つめるのは、ホロウ・リュヌ(純粋一途で空虚な月・f40766)。とある人物のクローンとして生み出されたレプリカントの少女だった。
 命令のままに動くタロス兵たちを見ていると、かつて母に救われる以前の自分の姿が重なり――頭を振ってその考えを振り払う。
「“いのち”を救うこと。慈しむこと――」
 今はまだ分からない母の言葉。この|街《戦場》ならば、その答えがあるのではないかと――ホロウは戦場を駆ける。

「う、うわあああっ、助けてっ!」
 タロス兵が拳を振り上げる先にいるのは、中学生くらいの男の子。おそらく避難所に逃げる途中で運悪くデウスエクスに出くわしてしまったようだ。
 鋼鉄の拳が振り下ろされ、轟音とともに地面に巨大なクレーターができる。
 そこにいたはずの男の子の姿はどこにも見当たらない。タロス兵の拳で粉砕されてしまったのか!?

「あ、あれっ、僕は……!? お姉さんは一体……!?」
 タロス兵から離れた大通りの中央。ホロウに抱きかかえられて間一髪助けられた少年が、呆然とした声をあげた。
 ホロウは、決戦都市アキバの専用通信端末に向かって声をかける。
「こちらケルベロス――でいいんでしたっけ? 一般人を保護しました。|決戦配備《ポジション》メディックを要請します」
『こちら特務機関DIVIDEアキバ支部。|決戦配備《ポジション》メディック、発動承認』
 通信と同時に、大通りにエンジン音が鳴り響く。タイヤを軋ませ姿を現したのは軍用装甲車だ。
 ホロウの前方、タロス兵との間を遮るように急ブレーキをかけて停車した装甲車の後部から、銃で武装したメイドたちが降りてくる。
「総員、デウスエクスに全力射撃!」
 リーダーらしきメイドが指示を出すと同時に、メイドたちが最新鋭の銃火器で一斉攻撃を始めた。
「この世界の武器も、なかなか発展しているのですね」
 自分の世界の武器は見慣れているホロウだが――科学技術と魔法技術を融合させた、この世界の武器に目新しさを覚えたのだった。

「少年の保護、感謝します」
「いえ、ついでですから。あ、少し派手にやりますから、周囲の人たちを避難させておいてください」
 ホロウの言葉に、メイドたちのリーダーが頷いた。
「ご安心ください。この区画で逃げ遅れたのはこの少年だけ。後は避難済みです。どうぞ存分にお力を振るってください」
「――ならば、安心して本気が出せますね」
 ホロウの顔に、獰猛な笑みが浮かんだ。

「それでは、お気をつけて!」
 銃撃でタロス兵の足止めをしていたメイドたちが軍用装甲車で走り去ると、残されたのはホロウとタロス兵のみ。
 タロス兵はホロウを敵として認識し、両腕を槍に変えて猛烈な勢いの突きを放ってくる。それはまるで、マシンガンのような勢いだ。
 ――だが、ホロウの動きの方が速い。
「遅いですねっ!」
 |光速礼賛 殲滅の女神《グスタフドーラ・トーテンタンツ》を発動させ、ホロウが光速をも超えた動きで空中を駆ける。その動きをタロス兵は捉えることができない。
 タロス兵の背後へと回り込みつつ、ホロウは右手に握った黒き光の大剣――ディメンジョンセイバーを振り下ろす。さらに、超高速斬撃による攻撃にあわせ、遠距離から連装列車砲が炎弾連続砲撃を叩き込んだ。

 列車砲の爆炎に包まれたタロス兵。――だが、その重装甲は炎弾で破壊できるものではない。
 ゆらり――とタロス兵がホロウに向かって両腕の槍を突き出そうとし――。
「――無駄です。次元と時空間を斬り裂くディメンジョンセイバーで装甲を斬り裂きました。そこに列車砲を受けたのですから――あなたはすでに死んでいます」
 言われた言葉の意味を理解できないタロス兵は、ホロウに攻撃しようと一歩踏み出そうとし――。
 炎によって高温になった動力炉が爆発し、轟音とともに四散した。

「街中で使うには少々派手な攻撃だったかもしれませんね――」
 火の海になった大通りを見ながら、ホロウが呟く。
 だが、本来、タロス兵が暴れていたら、もっと被害が大きかったことを考えれば、この程度は問題ない範囲と言えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
また凄い街ですねぇ。

【ジャマー】を要請、『味方の不利な場所』を尋ね、其方に向かいますぅ。
『FAS』を使用し飛行、『FLS』により|全『祭器』《未装備含む》を召喚後、空間歪曲障壁を展開しまして。
『刀』を抜き【剴畺】を発動、『FPS』で周囲を探知し『敵対者とその攻撃手段』を対象とした『斬撃結界』を形成しますぅ。
【ドリル鉄甲】は受けずに『斬撃結界』による[カウンター]で斬り捨てるか、空間歪曲障壁で逸らせば良く、兵自体の硬度も『斬撃結界』で斬った場所に『FRS』『FSS』の[砲撃]による[部位破壊]で[追撃]すれば問題有りません。
着実に仕留め、討伐後は次の場所に向かいますねぇ。




「おや、嬢ちゃん、|決戦配備《ポジション》メディックのメイドさんかい?」
「いえ、私はケルベロスですぅ」
「こりゃ驚いた。てっきり新しくできた和風メイド喫茶の人かと……なら、こいつを持っていきな」
 タバコを咥えた壮年の男が取り出したのは、色々な電気部品がゴテゴテとハンダ付けされた手作りの装置だった。
 その装置を手渡され、しげしげと眺める黒髪黒目の少女は、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)だ。その身を包むのは丈の短い和風のメイド服。確かに、るこるがアキバにいたらメイド喫茶のメイドにしか見えないだろう。
「えーと、このガラクタは一体……?」
「ガラクタって言うな。こいつは、|決戦配備《ポジション》ジャマーである俺が日曜工作で作った秘密兵器! その名も『味方が不利な場所探知機 With 通信端末』だ! 機能はだな――」
「あ、機能はわかりましたから、説明いただかなくても大丈夫ですぅ」
 その名前だけで、どんな機能であるかを察したるこるが、男の言葉を遮る。こういうタイプの人間は、解説を始めると長いというのがお約束なのだ。
「ふっ、やはり見ただけで機能分かっちまうかー。それだけ俺のデザインセンスがルック&フィールにバチッと来ちまうってことだな」
「ええ、まあ、そういうことにさせていただければとぉ」
 そっとその場を離れようとする、るこる。男は少女の背中に向かって声をかける。
「嬢ちゃん、そういえば名乗ってなかったな。俺はこの街で|決戦配備《ポジション》ジャマーを勝手にやってる天才発明家! その名も――コードネーム・アキバの最終兵器を作る男、だ! 覚えときな!」

「さすが、アキバ。変な人が多いですねぇ」
 しばらく歩いて、付いてこられたりしていないかを確認し、るこるは小さく呟く。その手にはガラクタっぽい何かが握られていた。


「この|装置《ガラクタ》、本当に動くのでしょうかぁ」
 祭器|FAS《フローティングエアロフォイルシステム》による3対のオーラの翼を展開し、るこるは決戦都市アキバの上空を飛んでいた。
 手に持った装置をカチャカチャといじっていると、レーダーのような画面に光点が映る。
「これが不利になっている味方たち、ですかねぇ?」
 半信半疑ながらも、るこるはレーダーの示す方向へと飛翔した。

「本当に味方が不利になっていました、びっくりですぅ」
 レーダーの示した場所に到達したるこるの眼下に、タロス兵と戦っている現地のケルベロスらしき中学二年生くらいの少年がいた。武器で斬りかかるも、タロス兵の頑丈な装甲にダメージを与えることができず、徐々に追い詰められていっている様子だ。
「くっ、このコードネーム・アキバの黒竜をここまで追い詰めるとはな――。こうなったら、俺のユーベルコードを受けてみろ! |邪竜獄炎咆《アビスドラゴン・フレイム》!」
 少年が掲げた右腕から炎が迸り――タロス兵が炎に包まれた。その炎はタロス兵の金属の装甲を熱していく。
「ふっ、どうだ、俺の炎は! これを受ければ――お前の装甲は焼肉にちょうどいい温度になる!」
「なるほどぉ、それはいいですねぇ。ぜひやっつけて焼肉パーティーの鉄板になっていただきましょうかぁ」
「なにっ、空から美人のお姉さんが!? これは天が遣わした勝利の女神か!」
 突如、上空からるこるに声をかけられ――ケルベロスの少年は驚愕しながら芝居がかったような大仰な仕草でリアクションする。
「まぁ、豊穣の女神の使徒であるのは確かですかねぇ? とにかく、ここは私に任せてくださいぃ」
「すまない! この右膝の古傷さえなければ、俺も共に戦えたのだが!」
 少年は左足を引きずりながら、タロス兵から遠ざかっていった。

「さあ、私がお相手しますよぉ」
『ガアアアア!』
 るこるを強敵と見て取ったタロス兵が、右腕を巨大なドリルに変形させる。そして、そのドリルを高速回転させた。その身体がるこるに向かって飛翔する。
「なんだとっ、あれは――地面を掘り進む要領で、高速回転するドリルで空気を掘削して飛んでいるのかっ!?」
 少年ケルベロスの言葉の通りの方法で飛翔したタロス兵のドリルが、るこるに命中しようとし――。
「だめだっ、あのドリルはどんな装甲でも防ぐことはできない! だけど、このタイミングでは回避も不可能だ!」
「そうですねぇ――では、装甲で防げないのでしたら、空間歪曲障壁で逸らしましょうかぁ」
 『祭器』|FLS《フローティングリンケージシステム》――浮遊する16枚の札を展開し、空間歪曲障壁を発生させた。
 発生した歪曲空間により、タロス兵のドリルが明後日の方向を貫く。
「なにぃ、タロス兵のドリルを、空間を歪曲させることで逸らさせたのか! それなら確かに装甲で防いだことにはならない!」
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『剣王の加護』をお与え下さいませ」
 霊刀『純夢天』を白鞘から抜き放ったるこるが発動するのは、|豊乳女神の加護・剴畺《チチガミサマノカゴ・センサイノホウチ》。それは、るこるの周囲に斬撃結界を形成する。
「な、なんだっ!? タロス兵が――見えない刃に斬り裂かれていく!?」
『グアアアア!』
 苦悶の悲鳴をあげるタロス兵。
「これで、とどめ、ですぅ」
 そこに、るこるが展開した『祭器』による砲撃が命中し――タロス兵を爆散させたのだった。

「それでは、あんまり無茶しないでくださいねぇ」
「ああ、後で天才発明家である父ちゃんに武器を用意してもらうよ、お姉さんのその強力な武器にも負けないようなやつをね!」
「似たもの親子だったのですねぇ――」
 やはり、変わり者が多い街だな、と再認識したるこるだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリッツ・バーナー
ほうほう、アキバか!
他のアース系世界でもその名は聞き及んでいる
新進気鋭の|技術者《オタク》達がその粋を結集した街だそうだな
さっそく|市場偵察《観光》……もとい決戦配備を要請せねばな
(兵器大好き)

クラッシャーを要請
パイルバンカーは取り扱っているかね?
喚び出した第6課の部下達は|分隊単位《凡そ10人一組》で行動させる
隊ごとにパイルバンカーを幾つか配分
私自身も一つ装備し、一個分隊を随伴させる
|数的有利《一対多数》を常に維持、義体の機動力でもって撹乱
ドリルを躱わし空打ちさせた隙を付いて、装甲の駆動部など脆弱な部分へパイルを叩き込め

数こそ多いが恐るるに足らん
それでは諸君、状況を開始しよう


ザガン・アッシム
【アドリブ及び連携歓迎】

(【EF=エアマンタレイ】で上空より飛翔)

ハッハァ!市街戦なんて久しぶりじゃねぇか!|昔の仕事《傭兵時代》を思いだすぜぇ!

上空より偵察後、最も守りの薄そうなところに飛び降りる

…聞こえるかジャマーの餓鬼共、そいつ(エアマンタレイ)は一旦お前さん達に預ける。そいつで上空から戦況を逐一確認してくれや。

何せ地上は今から『花火大会』が始まるからなぁ!!

戦況を確認後、敵の密集している地域に【UC】を使用、足を止めた敵の脚部を【部位破壊】で破壊後、攻撃しやすくなった頭部を【串刺し】にしていく

【UC】の範囲外の敵には【弾幕】で足止めしつつ接近し、連携で仕留める

眼前のアフロ畑は敢てスルー


クロエ・テニア
アキバかー最近ゲームしてないなー
って買いに来たらこれだよ!(だんだん
神出鬼没なのは黒いGだけで十分なんだって

んーと?
なんだろ?なんか雰囲気の違うケルベロスがいる?
でもそのおかげでいつもより押し返せそう!
なら、このままいくしかないね!

劣勢を支えるには体力!筋力!
だからとりあえず回復
【ヴァルキュリアウイング】!
アキバ中を飛び回ってニーベルング粒子を広域散布
ケルベロスもDIVIDEの皆も回復回復ぅ

回復が終わったらぼくも戦闘に参加
【ヴァルキュリアウイング】のスピードでとっつげき&ぶん殴る!
殴りはウィッチドクターの基本です
大丈夫、この杖殴っても折れないから
折れないってことは、相手を壊せるってこと!




 クロエ・テニア(ぼくは魔女。称号はまだない・f41096)は、|この世界《ケルベロスディバイド》出身のヴァルキュリアである。彼女はデウスエクスによって故郷を滅ぼされ――その時にケルベロスに覚醒した少女であった。そう、クロエはデウスエクスと戦う宿命を持ったケルベロスなのだ。
 ――だが、ケルベロスにもオフはある。今日は非番のクロエは、家から電車でアキバに向かい、アキバ駅の電気街口改札から外に出た。
「最近ゲームしてないなー、なにか新作出てないかなー」
 今日は思いっきり羽を伸ばして、ゲームを物色したりしながらアキバの街をぶらつこう。そうクロエが思っていると――。

『こちら、特務機関DIVIDEアキバ支部。デウスエクスの襲撃を感知しました。市民や観光客の皆さんは速やかにシェルターに避難してください。――繰り返します』
「ああもう、なんでオフの日にまでっ! 神出鬼没なのはGだけで十分なんだって! いや、Gもやだけど!」
 非常放送が流れる街中でクロエが地団駄を踏む。
 しかし、こればかりは仕方がない。空から降ってくるデウスエクスの行動を予知する手段など、人類は持っていないのだ。
「ああもう、雨が降ろうが槍が降ろうがとか言うけど、槍が降る方が|『小剣』《グラディウス》が降ってくるよりよっぽどマシだよ!」
 クロエはデウスエクスの迎撃に協力するため、駆け出した。


 クロエは、避難する人々の波に逆らい、空より降ってきたデウスエクス――通信端末の情報によると、コードネーム『タロス兵』というらしい――の方向に向かっていた。
 だが、その最中、電気パーツ店の店頭に群がる不思議な一団を目撃した。

「課長、ご覧ください。高精度な電子部品がこんなに安価に売られています!」
「こちらには、魔術と電子技術を融合した魔導パソコンとかいうものが!」
「|我々の世界《サイバーザナドゥ》とは、また異なった技術体系のようです」
 10人ほどの|分隊《部下》を率いているのは、部下から課長と呼ばれるスーツ姿のサラリーマン風の金髪の男性。フリッツ・バーナー(〝少佐〟・f41014)である。
「諸君、今は作戦行動中だ。少佐と呼びたまえ。――しかし、ここがアキバか。他のアース系世界でも、その名は聞き及んでいる。なんでも、新進気鋭の|技術者《オタク》達がその粋を結集した街だそうだな。彼らが開発したという武器、ぜひとも試してみたいものだ」
 フリッツは、まるでおもちゃでも物色するような口調で、パーツ店の店長に声をかける。
「店主、|決戦配備《ポジション》クラッシャーを要請したい。――パイルバンカーは取り扱っているかね?」
「お客さん、分かってるじゃねえか。ウチのとっておきのパイルバンカー、持っていきな!」
 店主が壁のボタンを押すと、店の床がスライドする。その床下収納に収められていたのは、大小様々な形状のパイルバンカーだった。
「エクセレント! さすがは天下のアキバ。パイルバンカーの品揃えも豊富だな」

「――いや、さすがにそれは偏見だから!」
 その様子を見ていた|この世界《ケルベロスディバイド》出身のクロエが、思わずツッコミを入れる。
 さすがにパイルバンカー専門ショップみたいな決戦配備があるのが普通だとか思ってほしくない。――ちゃんと普通の武器も扱ってるよね、ここ? パイルバンカー専門だったりしないよね?
「っていうか、あなたたちもケルベロス? なんか普通のケルベロスとは雰囲気が違うような――?」
「そうか、君はケルベロスなのだな。申し遅れた。私はフリッツ・バーナー、|企業《メガコーポ》の第6課の課長にして、猟兵――まあ、ケルベロスのようなものだ」
「あ、ぼくはクロエ。この街に配属されてるわけじゃないけど、ケルベロスだよ――って、そうじゃなくて、早くデウスエクスを迎撃しなきゃ!」
 思わず和やかに挨拶してしまったクロエだが、街が襲われているという状況を思い出す。
 クロエの視界に映るアキバの街が、滅ぼされた故郷に重なる。こうしているうちにも被害者が――。
「クロエ殿、落ち着くことだ。急いては事を仕損じる。すでに私の部下も前線に向かわせて、人々の避難誘導をおこなっている。きちんと装備を整えてから――思う存分に暴れまわろうではないか」
 紳士的な表情に、一瞬だけ獰猛な笑みを浮かべるフリッツ。
「店主、私はこのパイルバンカーをいただこう」
 重そうなパイルバンカーを軽々と持ち上げると、部下たちにも|武器《パイルバンカー》を持たせていき――。
「それでは諸君、状況を開始しよう」
 フリッツの朗々とした声が響き渡った。


「|A.I.R.I.S.《アイリス》の情報によると――タロス兵がいるのはこっち!」
 クロエに案内され、フリッツと部下たちは電気街の交差点に到着した。
 ――そこでは、タロス兵たちがビルや道路を破壊している。通行人はいない。すでに避難は完了しているようだ。
「数は3体か――少々多いが恐るるに足らん」
 フリッツがパイルバンカーを構え、クロエもライトニングロッドを握りしめる。
 タロス兵たちがこちらに気づき、戦端が開かれる――かと思った瞬間。

 突如、上空から空気を斬り裂くような音が聞こえてきた。
「これは――キャバリア用サブフライトシステムの飛行音か」
 フリッツとクロエが見上げる先。はるか彼方からサブフライトシステム――『EF=エアマンタレイ』が飛翔してくる。その機影が見る見る大きくなったかと思うと、直上に差し掛かったところでサブフライトシステムから人影が飛び降りた。
 落下してきた人物は、アスファルトをクレーター状に陥没させながら勢いよく着地すると、巻き上がる砂塵の中、なんとも無かったかのように笑い声を上げた。
「ハッハァ! 市街戦なんて久しぶりじゃねぇか! |昔の仕事《傭兵時代》を思い出すぜぇ!」
 哄笑するのは、機械の左腕『THE・GUN』を身に着けたサイボーグのザガン・アッシム(万能左腕の人機兵マーセナリー・f04212)。白髪の傭兵ザガンは、通信端末に向かって声をかける。
「ジャマーの餓鬼共、聞こえるか。エアマンタレイは一旦お前さん達に預ける」
『|決戦配備《ポジション》ジャマー、了解!』
 無人輸送機であるエアマンタレイは、ジャマーによる遠隔操縦で上空を旋回する。機体に搭載されたセンサーは地上の様子をモニタリングし、そこから得られた情報は逐次、ザガンへと報告されていく。
『地上のスキャン完了。デウスエクス――コードネーム『タロス兵』3体確認。それと――ケルベロス2名とその部下10名を確認しました』

「おっと、先客がおいでだったか。俺はコードネーム『THE・GUN』――ザガンだ」
「私はフリッツ・バーナーだ。部下からは少佐と呼ばれている」
 ザガンに対し、フリッツも名乗りを上げ――部下たちも敬礼を送る。
 その様子を見ていたクロエは――。
「いやいやいや、今、その人、空から落ちてきたよね!? なに平気な顔してるの、二人とも!? ケルベロスだって、上空から落ちたら死ぬこともあるんだよ!?」
「ああ、こちらはクロエ殿。現地のケルベロスだ」
 クロエのツッコミをさらりとスルーしたフリッツが、代わりにザガンに紹介するのだった。


「さて、第6課、戦闘配置だ」
 フリッツが部下に命じ。
「こっちも準備万端だぜ!」
 ザガンが機械の左腕を構え。
「ぼ、ぼくも戦うよっ!」
 クロエがロッドを握りしめる。

 対する3体のタロス兵たちも、ケルベロス達の攻撃に備えて身構えた。
 鋼鉄の腕を巨大なドリルに変形させたり、鉱物を纏わせて拳を巨大化させて待ち受けている。

「――第6課、|作戦発令:不屈の軍旗《プランコール・アンダーシャフト》!」
 まず動いたのはフリッツだった。

 |機械化義体《サイバーザナドゥ》によって強化されている両足がアスファルトを砕き、フリッツの身体が弾丸のように加速する。
「私の動きに付いてこられるか?」
 タロス兵たちの周囲を高速で移動しながら隙を伺うフリッツ。さらに部下たちもタロス兵を取り囲むように布陣し、常に多人数でタロス兵に対峙できる状況を作り出す。

『ガアアアッ!』
 高速で動き回るフリッツに業を煮やし、タロス兵が巨大ドリルに変形させた腕を大きく振るうが――。それはフリッツの狙い通り。
「当たらなければどうということはない」
 大振りのドリルを最小限の動きでかわしたフリッツは、部下たちに攻撃命令を下す。
 大小様々なパイルバンカーがタロス兵に叩き込まれ――その装甲の隙間を縫い、駆動部を穿っていく。

 ――だが、そこに別のタロス兵が襲いかかってきた。
 鉱物を纏わせて巨大化した拳が、フリッツの部下たちに向かって振り下ろされた。
 その一撃は、部下たちに直撃こそしなかったものの、地面にクレーターを作り周囲に激しくアスファルトの破片を撒き散らす。
「うわあああっ」
 破片を浴びた部下たちは、体勢を崩し足を止めた。

 そこに、止めとばかりに3体目のタロス兵がドリルを振りかぶる。
 体勢を崩した部下たちには、その攻撃を回避することはできず――。

『ザガンさん、観測データを送ります!』
「ちぃっ、こいつは使いたくなかったが仕方ねぇ! 全員、目ぇ閉じてな! 派手な花火大会の始まりだっ!」
 エアマンタレイの精密観測データを受け取ったザガンは、タロス兵に向かってスタングレネード弾、|S・S・G《スペシャル・スタン・グレネード》を発射する。
 タロス兵たちとフリッツの部下たちの直近で炸裂したスタングレネード弾は、タロス兵たちの装甲にダメージを与え――さらに激しい閃光を撒き散らす。閃光を受けたタロス兵たちは、その衝撃で行動を一時的に止めた。

「すまない、部下たちを助けてもらい感謝する」
「部下のみなさん、無事で良か……って、ええええっ!?」
 フリッツは部下を助けてもらったことに礼を言い――クロエは部下たちの姿を見て驚きの声を上げていた。

 ――スタングレネード弾の効果範囲に巻き込まれた部下たちは、その頭がアフロヘアになっていたのだ。

「なんで、ねえ、なんでアフロ!?」
「文句は俺じゃなく、こいつを開発した奴に言ってくれ。これでもアフロになってる間は隠密効果があるから安全でいられるんだぜ」
「なんでアフロで隠密!?」
 クロエのツッコミが虚しく響き渡った。


「さぁ、奴らの動きが止まってる間に畳み掛けるぜ!」
 ザガンは左腕に内蔵したサブマシンガンでタロス兵たちの脚部を狙い撃つ。フリッツの部下たちのパイルバンカーによるダメージが蓄積していた部分への追撃。それは、タロス兵たちの脚部を破壊するのに十分な威力を持っていた。

『タロス兵たちが行動不能になったことを確認』
 ジャマーからの通信。それを聞いたフリッツとザガンが同時にパイルバンカーを構えた。
「ほう、ザガン殿もパイルバンカーか」
「気が合うじゃねぇか。やっぱ武器はパイルバンカーに限るよな」
 獰猛な笑みを浮かべながらアイコンタクトをとる2人。
「えぇ……パイルバンカーってそんなに一般的な武器だっけ……?」
 その後ろで、クロエが頭を抱え――。

 フリッツとザガンが同時に地を蹴った。
 轟という衝撃とともに二人の身体が飛び出し、瞬時に最高速度に達する。
 次の瞬間――フリッツとザガンはそれぞれのターゲットの目前に立っていた。
 右腕に構えるパイルバンカーが同時にそれぞれのタロス兵に向けられ――ゼロ距離から発射された|鉄杭《パイル》がタロス兵の動力炉を貫通し――。
 激しい閃光とともに鋼鉄の巨人が爆発に包まれ四散した。

 ――だが。
「二人とも、気をつけてっ!」
 パイルバンカーを放ち、隙だらけになったフリッツとザガン。その二人に向けてクロエの警告の声が飛ぶ。
 残る一体のタロス兵――脚部を完全には破壊しきれていなかったようだ――が、二人に向かって巨大なドリルを振り上げていた。
 フリッツとザガンは、その攻撃を回避できる体勢ではない――。

「こうなったらっ!」
 クロエが背中の光の翼【ヴァルキュリアウイング】を広げると、タロス兵に向かって飛翔する。
 それは時速1000kmの速度にも達し――。
「クロエ殿、突撃などという無茶はやめるんだ!」
「お前さんじゃ、衝突でぺちゃんこになるだけだぞ!」
 ――フリッツとザガンの声にも、クロエは止まらない。
「ぼくはウィッチドクター! ウィッチドクターにできることといったら、これだけだからっ――!」

 全速力でタロス兵へと突撃したクロエは――。

 ――手に持った杖、ライトニングロッドを振りかぶると。
「てええええいっ!」
 タロス兵を全力でぶん殴った。

「え……?」
「なっ!?」

 呆然とするフリッツとザガン。
 その目の前で、クロエが振り下ろしたライトニングロッドから電撃が放たれ、タロス兵の鋼鉄のボディに流れ――その動力炉を暴走させ、爆発四散させた。

「ふう。やっぱり、ウィッチドクターにできることって、相手をぶん殴ることだけだよね」
 いい汗かいたという表情を浮かべるクロエ。

 ――戦場には【ヴァルキュリアウイング】によって発生した負傷回復効果のあるニーベルング粒子が降り注ぎ、フリッツの部下たちのアフロ化を回復させていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウーヌス・ファイアシード
ここが、かの獣が「護っていた」世界…
人々が一丸となり、脅威に抗う世界…!

なれば我が為すべきは、この世界の脅威…
デウスエクスなる|終末《ふはい》を齎す者を灼く事ぞ!

この世界で未来を守る為に戦う者たちよ!
名も顔も知らぬ我に許されるならば、その力を我と共に!
我が火をこの世界の希望の火とする為に!
(【キャスター】配備でお願いします)

防御を砕く事に長けた集団相手に対抗できるよう、【空中機動】の機動力と【見切り】による回避で、できるだけ足を止めずに戦闘

その機動力を活かして、尽き得ぬ薪の剣と「火を掴む手」によるヒットアンドアウェイで攻撃しながら
チャンスを見つけたら龍脈の力で強化された「灰化の火」で追撃!


ミレア・ソリティス
【決戦配備:キャスター】

任務了解しました、ミレア・ソリティス3型隠密兵装、出撃します

敵との交戦開始前に『アクティブステルス』『ジャミングミサイル』を起動、
敵知覚へのジャミングを実行し、私自身の姿を隠す時間を稼ぐと同時に味方の存在も認識されにくくします

その後姿を隠した状態でキャスター支援を受けてのUC【Sコード・ポベートール】を発動させ、一時的に戦場を半電脳領域化、戦場の敵性体を電脳魔術により解析した後、ハッキング及びデータ攻撃を実行、ダメージを与えると同時に属性攻撃・状態異常への「耐性情報」を改ざんし大幅に減少させます
その後は姿を隠しつつ、Lレンジブラスターライフルでの遠距離狙撃を狙いましょう




 ――特務機関DIVIDEアキバ支部、その作戦司令室。
 前線からひっきりなしに伝えられる|決戦配備《ポジション》要請にオペレーターたちが慌ただしく対応している。その様子を眺めながら、DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミが巨大スクリーンに鋭い視線を向けながら困惑した声音で呟いた。
「どうなっているの……?」
 巨大スクリーンに映るのは、現在の決戦都市アキバとデウスエクスの戦力配置図。デウスエクス襲撃から1時間が経過した現在の様子だ。デウスエクスを表す黒点は、開戦時に戦術補助システム|A.I.R.I.S.《アイリス》が予測したよりも遥かに数を減らしていた。
「現在のアキバの被害状況は?」
「はっ、都市の損壊率は1割以下――民間人の死者は出ていません」
 開戦当初に|A.I.R.I.S.《アイリス》が予測したのは、1時間でアキバが半壊するというシミュレーション結果。だが、現実はそうなっておらず、むしろアキバ側が優勢とも言えた。
「そんな――|A.I.R.I.S.《アイリス》が予測を間違えた――?」
 あり得ない。これまでアキバを決戦都市たらしめてきた大規模並列コンピュータが、ここまで予測を間違えるはずがない。――ならば。
「|A.I.R.I.S.《アイリス》が予測し得なかった不確定要素が――アキバに存在するとでもいうの?」
 思案するナナミ。
 だが、その思考はオペレーターからの報告で現実に引き戻された。
「司令、デウスエクスの増援、万世橋近辺に出現しました。このままでは近隣の避難住民に危険が――!」
「至急、万世橋近辺のケルベロスに通達! 速やかに敵を殲滅して!」
 ――作戦司令室が喧騒に包まれていく。


「ここが、かの獣が護っていた世界――」
 アキバの地に転移してきたウーヌス・ファイアシード(復燃せし灰化の火・f37284)が周囲を見回す。
 そこは大きな橋の近くだった。近くに避難所でもあるのか、メイド服姿の女性たちが一般人たちを避難誘導しているのが目に入る。
 そして、避難誘導をおこなっているメイドの一人が、ウーヌスに近づいてきた。
「お嬢ちゃん、迷子? あっちにシェルターがあるから、お姉さんと一緒に避難しましょうね。ご両親は後で一緒に探してあげるから」
「ぬ――」
 ウーヌスは、世界を灼き新たな世界の礎へと還す「|灰化《かいか》の炉」という終末を齎す存在であった。だが、英雄に倒されたあと、彼女は新たな姿を得て猟兵として蘇った。
 その姿は――身長130cmの白髪の少女。
 222.3cmとグリモアベースに登録している身長は、目一杯、翼である「舞い上がる火の結晶」を広げたときの高さである。「|灰化《かいか》の炉」としてのプライドのため、ちょっとばかり過剰申告してしまった数値だ。
 当然、彼女の翼に違和感を抱かないメイドにとっては、ウーヌスは子供にしか見えない。
「大丈夫、これでもお姉さん、頼りになるんだから」
 このままでは、ラスボスの自分が迷子として保護されてしまう。――だが、ウーヌスは余裕の表情を崩さない。なぜならば、この窮地を脱する言葉を知っているのだから。すなわち――。
「それには及ばぬ。我はケルベロス。この世界の脅威たるデウスエクスなる|終末《ふはい》を灼く者ぞ――」
「ええっ、ケルベロスだったんですか!? これは失礼しました!」
 この世界では、デウスエクスに対抗できるケルベロスは貴重である。ゆえに、子供であろうともケルベロスならば一人で戦場にいてもまったく何の不思議もない。ウーヌスの計算は完璧だ。
「では、我は任務があるので、これで――」
 メイドを黙らせた隙にその場を離れようとするが――。
 その時、メイドの手元の通信端末から声が聞こえた。
『こちら特務機関DIVIDEアキバ支部。万世橋近辺にデウスエクス出現! 近隣の戦力はデウスエクス迎撃に向かってください! ――繰り返します』
「こちら|決戦配備《ポジション》メディック・コードネーム『らぶらぶきゅん』、了解しました! ちょうどこちらにケルベロスの方がいます!」
「――なぬ?」
 ウーヌスに向けられたメイドの視線――。その期待に満ちたキラキラした眼差しには「|灰化《かいか》の炉」も逆らうことができなかった。


「システムチェック。3型隠密兵装、オールグリーン。現在座標は――」
 赤い瞳のウォーマシン、ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は全身を覆う赤い装甲の装備――3型隠密兵装のチェックをおこなうと、現地の住民から手渡された通信端末とデータリンクを開始した。
「大規模並列コンピュータクラスタ戦術補助システム|A.I.R.I.S.《アイリス》に接続。座標データおよび最新の戦況データをダウンロードします」
 彼女の電子頭脳に|A.I.R.I.S.《アイリス》の情報が直接流れ込んでくる。
 アキバのマップが視界に映り、自身が川にかかる橋のそばに転移してきたことを確認した。
「戦況は――|A.I.R.I.S.《アイリス》の予測よりも遥かに軽微な損害のようですね」
 グリモア猟兵による予知――それは彼我の戦力差すら容易に覆すことができる切り札だ。その切り札を切っている以上、この程度の戦況改善はできて当然。
 ミレアの近くには、すでにデウスエクスの兵は見当たらなかった。
「それでは、当機は遊軍として哨戒行動に――」
 隠密兵装を起動しようとした瞬間、|A.I.R.I.S.《アイリス》から新たなデータが流れ込んできた。上空を見ると、センサーが宇宙から飛来する数本の|小剣《グラディウス》の姿を捉える。
 それは橋に落下し――デウスエクス、コードネーム『タロス兵』へと姿を変えた。
『こちら特務機関DIVIDEアキバ支部。万世橋近辺にデウスエクス出現! 近隣の戦力はデウスエクス迎撃に向かってください! ――繰り返します』
「こちら、ケルベロス、ミレア・ソリティス。任務了解しました。現場に急行します」
 特務機関DIVIDEに応答しつつ、ミレアは地を蹴って軽々と跳躍した。


 アキバ駅近くにある万世橋。神田川にかかる広い石造りの橋であり、交通の要衝でもあるそこは、地上戦時に防衛線を敷くには絶好の場所だ。
 ――だが、宇宙より飛来するデウスエクスの侵略に対しては、防衛線という概念が成立しない。それが、この世界の人々がケルベロスを有効運用できない理由の一つだ。
 今も、その万世橋に数体のタロス兵たちが飛来し、避難所のある市街地側へと進軍を開始しようとしていた。

「なるほど、こやつらがデウスエクスか――」
「お嬢ちゃん、私もできるだけサポートするから気をつけてね」
 |決戦配備《ポジション》メディック――コードネーム『らぶらぶきゅん』と名乗った少女が、ウーヌスについてきていた。
「ついてくる必要はないと言ったであろう?」
「私だってベテランのメイドなんだから。自分の身くらい、自分で守れるわ」
 メイド服のスカートの中からサブマシンガンを取り出したメイド。――どうやら、この都市のメイドは特別な訓練を受けているようだと、ウーヌスは諦めることにした。

「あなた方もケルベロスですか?」
 上空から、赤い装甲を纏ったミレアが音もなく着地し、ウーヌスとメイドに並んでデウスエクスたちに視線を向ける。
「うむ、我は|灰化《かいか》の炉心、ウーヌス」
「私は|決戦配備《ポジション》メディックの『らぶらぶきゅん』よ」
 二人の言葉に、ミレアが頷く。
「私はミレア・ソリティスです。――どうやら、このあたりにいる戦力は私達だけのようですね」
「ならば、我らだけでやるしかあるまい」
 二人はアイコンタクトを交わすと戦闘態勢を取った。

「まずは、私が援護します。アクティブステルスシステム起動」
 ミレアの装備から放出された偏光ナノマシンにより、3人の周囲に複合迷彩が展開される。
 さらに肩部のミサイルポッドが開くと、タロス兵に無数のミサイルが向けられる。
「ターゲットロック、ジャミングミサイル発射」
 撃ち出されたミサイル群は、タロス兵に命中・炸裂し、認識阻害を引き起こすジャミング粒子を散布した。
「これで、タロス兵はこちらを認識しにくくなったはずです」

「助かる。ならば敵を引き付けるは我の役目――!」
 燃え盛る大剣『尽き得ぬ薪の剣』と、灼熱の岩石の如き腕『火を掴む手』を召喚したウーヌスが、タロス兵たちに向かって『舞い上がる火の結晶』の翼を広げて飛翔した。
 向かってきたケルベロスを迎撃せんと、タロス兵が巨大ドリルに変じた腕を振り回す。
「ウーヌス様、気をつけてください。その攻撃はどんな装甲でも貫いてくるようです。正面から受け止めるのは危険です」
「――心得た」
 ミレアは|A.I.R.I.S.《アイリス》から引き出した情報をウーヌスに伝え――。
 ウーヌスは空中で翼を翻しながら、巨大ドリルの攻撃を見切ってかわしていく。
「こやつらの動き、精彩に欠けておるな。ミレア殿の妨害工作のおかげか――これならば!」
 ウーヌスの振るう火を纏った大剣がタロス兵を斬り、灼岩の腕が鋼鉄の装甲を殴り飛ばしていく。


「よーし、私も|決戦配備《ポジション》メディックとして役に立つんだから!」
 メイドがマシンガンを手に一歩踏み出し――。
 タロス兵たちの目が一斉にメイドに向いた。
「下がってください、そこは複合迷彩の範囲外――」
「ちぃっ、汝ら|終末《ふはい》を齎す者の相手は我ぞ!」
 ミレアが警告し、ウーヌスがタロス兵たちの注意を引こうと攻撃を加えるが、もう遅い。
 デウスエクスたちはその腕を剣や槍に変形させ、この場で最も弱いもの――メイドに襲いかからんと、その巨体で一歩一歩近づいてくる。
 タロス兵たちがいるのは橋の上。そこからメイドがいる対岸までは数十メートルしか距離がない。
「いやあっ、来ないでっ!」
 メイドがマシンガンを乱射するが、決戦都市アキバ製の対デウスエクス兵器といえども、タロス兵たちの厚い装甲の前には無力だ。軽い金属音とともに特殊コーティングされた銃弾が弾き返される。

「私の兵装では、タロス兵たちを弱体化させることしかできません。せめて火力特化の兵装があれば――」
「くっ、奴らの金属の身体は我の火と相性が悪い――せめて奴らを火に弱くできれば――」
 ミレアとウーヌスの呟きが同時にこぼれ――パズルのピースがはまる音が聞こえた。

 二人は視線をあわせ頷き合い――。
「こちらケルベロス、ミレア・ソリティス。|決戦配備《ポジション》キャスターを要請します」
「我はケルベロス、|灰化《かいか》の炉心ウーヌス。|決戦配備《ポジション》キャスターを要請するぞ」
 二人の言葉が同時に|決戦配備《ポジション》キャスターの発動を要請した。


「そんなっ、|決戦配備《ポジション》の同時要請!?」
 メイドの驚愕の声が上がるが、通信端末から返ってくるのは要請承認の応答だ。
『特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》キャスター、要請承認。|A.I.R.I.S.《アイリス》および神田明神によるダブルキャストを開始します』
「ダブルキャスト!? そんなの聞いたこともないわ!?」

 |決戦配備《ポジション》キャスターの要請に応じ、アキバ中のコンピュータをつなぎ合わせた大規模並列クラスタが全力計算を開始する。それは膨大な電力を必要とする演算だ。決戦都市アキバの全電力を計算につぎ込むために、不要な電気が片っ端からカットされていく。

 同時に、神田明神で宮司や巫女による大規模な祭祀が執り行われる。かつて「江戸総鎮守」とされた神社に人々の平和を願う心が集まることで、東京中の龍脈の流れが一つにまとまる。

 今、決戦都市アキバには、科学と魔法、両面の力が結集し、渦を巻いていた。
 ――もし、この状況を宇宙から見ているものがいたら、科学的にも魔法的にも、決戦都市アキバが眩い光を放っていることを見ることができただろう。

「ミレア・ソリティス、|A.I.R.I.S.《アイリス》との接続を確認しました」
「|灰化《かいか》の炉心ウーヌス、龍脈との接続を確認」
 二人の身体から強大な力が立ち上る。

「|A.I.R.I.S.《アイリス》と完全同期――完了。演算を|A.I.R.I.S.《アイリス》に移譲。コード・モルフェウス全力発動」
 タロス兵たちの周囲に実体化した電子の杭が降り注ぎ、その内部を半電脳領域に書き換える。
 そこは、ミレアによる事象干渉が十全に効果を発揮する領域だ。
「――半電脳領域、構築:完了。セカンダリコード「ポベートール」、展開します」
 ミレアのセンサーを通して収集されたタロス兵たちのデータが、|A.I.R.I.S.《アイリス》へと転送され、その電脳的特性が分析される。――そして、個々の個体特性に合わせて微調整されたクラッキングコードが生成されていく。
「セカンダリコード・ポベートール、起動!」
 発動したクラッキングプログラムが、タロス兵たちの存在情報に干渉し、火に対する耐性を大幅に減少させた。

「この世界で未来を守る為に戦う者たちよ! 名も顔も知らぬ我に許されるならば、その力を我と共に! 我が火をこの世界の希望の火とする為に!」
 ウーヌスの言葉に龍脈が反応し、その力――東京の地に生きる人々の願い――が魔力となって彼女の身体に流れ込んでくる。
「これが――人の進化。希望の力か――」
 かつて世界に終末を齎す者であった少女は、今はその力を|終末《ふはい》を齎す者――デウスエクスを灼くために振るう。
「|終末《ふはい》を齎す者よ……この火で灼かれ、|灰化《かいか》せよ……!」
 |灰化《かいか》の炉心であるウーヌスから放たれた火が、タロス兵たちへと迸り――その全身を決して消えない火で包み込んだ。

 ウーヌスが放った|灰化《かいか》の火に包まれる無数のタロス兵たち。――本来であれば、金属の身体を持つデウスエクスを燃やし尽くすことは難しかっただろう。だが、今はミレアによってその情報構造が書き換えられ、火への耐性が激減している。
 金属の身体が燃え上がり――タロス兵たちは灰となって消え去った。

「わー、ちょっとなに、今の!? お姉さん、感激しちゃった、ありがとう、お嬢ちゃん、ミレアちゃん!」
 九死に一生を得たメイドは、ウーヌスとミレアに抱きついて、泣きながら礼を言うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノエル・ラーズグリーズ
【決戦配備:クラッシャー】
……まずいなぁ、アキバ壊滅、なんてママに何言われるか分かったもんじゃない……私個人としても見過ごすつもりはないんだけど

ケルベロス「ノエル・ラーズグリーズ」、交戦に入ります!
まずは味方や友軍との合流を優先、合流したらセントリーガン『ドヴェルグ』を配置して、セントリーガン付近で待機してもらい、魔導戦闘車両『白銀』で敵の元へ!

白銀の主砲『魔導加速砲「迅雷」』(加速に魔法を用いる魔法版レールガン)での砲撃で引き撃ちを行いこっちに注意を向かせ敵デウスエクスを誘導、ドヴェルグ設置個所までおびき寄せて全機一斉起動、UCを発動させての味方との一斉攻撃・集中砲火での撃破を狙います!


セツナ・フィアネーヴ
ドラゴニアンがいる新世界と聞いていたが……何というか……すごいな
生身で行くぞ。
ア『セツナ、さては機械が多くて雷を躊躇ったんですね?』

(無視)相手は接近戦主体のようだし、ある程度距離を取りつつ攻撃回避に集中して隙を伺うが……この世界の「ケルベロス」…だったか、足りていないのは実力ではなく手数だけのように思えるが……隙をこっちで作れれば…!
……【滅びの風】で奴の生命力を削る!アリシア、味方に奴の動きが鈍ってきたらそこに仕掛けるよう連絡を!
ア『行きますよ!クラッシャーの決戦配備を要請します!!今がチャンスです!』
味方が仕掛けるのに合わせて私も封竜槍でのランスチャージを狙うぞ!




 デウスエクス――コードネーム『タロス兵』との戦いが繰り広げられる決戦都市アキバの大通りを、一台の車両が警戒しながら進んでいた。
 ――魔導戦闘車両『|白銀《シロガネ》』。12歳のヴァルキュリアの少女、ノエル・ラーズグリーズ(|楽園《おうち》の追放者。・f40853)の移動拠点にして、|楽園《実家》を追い出されたノエルの今のおうちである。自宅警備員である彼女にとって、白銀こそが今守るべき自宅であり、自分を守ってくれる要塞であった。
 自動操縦にしている車両内から外の様子を観察する。
 どこもかしこも戦闘による被害を受けているが、|A.I.R.I.S.《アイリス》の予測にあった壊滅状態には陥っていない。
「アキバ壊滅、なんてことになったら、ママに何言われるか分かったもんじゃないから、なんとかこれ以上の被害は食い止めないといけないし――私個人としても見過ごすつもりはないんだけどね」
 ノエルは戦況を把握しようと通信端末で|A.I.R.I.S.《アイリス》にアクセスしようとし――。

『こちら|決戦配備《ポジション》クラッシャー、コードネーム・アキバンジャーレッド! タロス兵が暴れている、至急援軍を――!』
 近距離通信で聞こえてきた声。
 ノエルは通信元の座標に向けて白銀を全速力で発進させた。


「何というか……すごいな」
 決戦都市アキバの街並みを見た青髪の少女、セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)から、そんな言葉が漏れた。
 ビルが立ち並び、商店のショーウィンドウには、魔法と機械が融合した最新技術を用いた品物が陳列されている。今がデウスエクスとの戦闘中でなければ、この大通りにも大勢の人々が歩いていたはずだ。
 蒸気文明と魔法文明が高度に発達したアルダワの学生であるセツナだが、アキバの機械技術と魔法技術の融合には驚かざるを得ない。
『さては、雷鳴の力で機械を壊してしまわないように生身で来ることにしたんですね?』
 セツナがはめている腕輪から声が聞こえた。腕輪の姿をとっているのは、セツナの友人であり光と雷の精霊であるアリシアだ。
 セツナが駆る竜神機ケラヴノスがあれば、タロス兵との戦いも楽になったかもしれない。しかし、『雷霆の鋼機』の異名を持つケラヴノスがその雷鳴と嵐の力を使ったら、高度に発達した機械技術を持つアキバを壊滅させかねないだろう。

 セツナは無言で周囲に目を向け――ショーウィンドウに映る自身の姿に目を留めた。背中から生えるドラゴンの翼にドラゴンの尾。それはセツナがドラゴニアンである証である。
「この世界にもドラゴニアンがいるということだが――」
 すでに人々は避難してしまっており、人っ子ひとりいない。自分と同様の姿を持つ者を探すのは諦め――。

 その瞬間、街に来た時に住民から手渡された通信端末から声が聞こえた。
『こちら|決戦配備《ポジション》クラッシャー、コードネーム・アキバンジャーレッド! タロス兵が暴れている、至急援軍を――!』

 表示された座標はすぐ近くだ。
「行くぞ、アリシア」
 セツナは友人に声をかけると、ドラゴンの翼を大きく広げ、空中へと飛び立った。


「ぐわああっ」
「大丈夫か、ブルー!」
 アキバの大通りで、鋼鉄の巨人――コードネーム『タロス兵』を相手に、赤、青、緑、黄色、ピンクの色違いの強化戦闘服を身に着けた5人の戦士が戦っていた。決戦都市アキバを守るため高性能戦闘スーツに身を包んだ|決戦配備《ポジション》クラッシャー、コードネーム『アキバンジャー』たちだ。
 タロス兵に吹き飛ばされたブルーにレッドが駆け寄る。
「今、緊急通信で増援を要請した。――それまで耐えるぞ!」
「了解であります!」
 レッドの声にグリーンが答え、他のメンバーも力強く頷く。
 先程から、アキバンジャーたちの攻撃は敵の鋼鉄の装甲を貫通できていない。だが、強化戦闘服により、彼らも致命的なダメージは負っていない。このまま耐えて、ケルベロスの到着を待てば――。

 そんなアキバンジャーたちの思惑は、一瞬で吹き飛ばされた。
 彼らが相手取っていたのは、1体のタロス兵。そこに、建物の影からさらに2体のタロス兵たちが合流したのだ。
 1体相手でも苦戦しているというのに、それが3体に増えた――。絶望するには十分な状況だった。
「ねぇ、レッド。戦いが終わったら、大事な話があるの……」
「おい、ピンク、いきなりフラグ立て始めるなよ!?」
 ブルーがピンクに向かってツッコミを入れる。紅一点のピンクを狙っているブルーとしては聞き捨てならないセリフだったからだ。
「じゃあ自分はグリーン特製野菜サラダをご馳走するであります」
「それなら僕はそのサラダにパインを乗せるね」
 グリーンとイエローも順調にフラグを立て――。
 そこに、タロス兵が腕を剣の形状に変形させて突っ込んできた。

「――ここまでかっ!」
 振り下ろされる鋭利な剣を見て、レッドが目をつぶり――。
「そうはさせない――」
 上空から降下してきたセツナが、タロス兵の重く鋭い一撃を封竜槍アドウェルスによって受け止めた。追撃してくる鉄杭を素早い身のこなしで回避し、伸びてきた鋼の鎖は上空に羽ばたいてやりすごす。その洗練された動きは、鈍重なタロス兵には捉えきれない。

 だが、残りの2体のタロス兵たちも黙ってみているだけではない。剣や槍に変形させた腕でアキバンジャーたちに襲いかかろうとする。セツナはタロス兵1体の相手で手一杯だ。これ以上の相手はできない。
「ピンク、お前だけは命に代えても守ってやる――」
 ブルーが敵の前に身を躍らせた、その時――。
『ケルベロス、ノエル・ラーズグリーズ、交戦に入ります!』
 曲がり角をドリフトしながら姿を現した魔導戦闘車両・白銀の外部スピーカーから声が聞こえると同時に、白銀に搭載された主砲である魔導加速砲『迅雷』から砲撃がおこなわれる。
 魔法によって加速された砲弾は、タロス兵の1体に直撃し、その体勢を大きく崩させた。

「ぐわあああっ」
「大丈夫か、ブルー!?」
 そして、残った一体の攻撃を食らったブルーが吹き飛ばされていった。


「助かった、俺は|決戦配備《ポジション》クラッシャー、コードネーム・アキバンジャーレッド。君たちはケルベロスなのか?」
「……セツナ」
 こくり、と頷きながら、小さな声で名前を告げる青髪のドラゴニアンの少女。
 一方のノエルは改めて外部スピーカーから名乗る。
『私はケルベロスのノエルです――ひとまず、ここは危険です。場所を移しましょう』
 白銀の主砲とセツナの槍でタロス兵たちに牽制攻撃をおこないながら、一行はノエルが指定したポイントまで後退していった。

「ここは――?」
 アキバンジャーを代表してレッドが声を上げる。
 そこは三方をビルに囲まれた袋小路だった。唯一の通路からは、すでに3体のタロス兵たちが向かってきている。
「これじゃあ、これ以上逃げられないじゃねえか」
「まだ起きちゃダメよ、ブルー」
 ピンクがブルーを押し止めるが、状況はブルーの言う通りだった。逃げ場のない袋小路。そこに迫るタロス兵。絶体絶命の危機に違いない。

 だが、ノエルは狼狽えない。
『逃げる? いいえ、逆です。私たちは、ここでデウスエクスを殲滅します』
「どういうことでありますか!?」
「ぼくたちの実力じゃ、タロス兵に敵わないよ!」
 グリーンとイエローも困惑の言葉を返すが――。
「そうかな……? 君たちの実力は十分……。足りないのは攻撃の手数だけのように思えるが……」
『ほら、厳しいセツナがこう言っているんですから、もっと自信をもってください』
 セツナとアリシアからも励ましの言葉を受け、レッドが大きく頷いた。
「――わかった、君たちを信用しよう。で、作戦は――?」
 アキバンジャーの5人は、ノエルとセツナの作戦を聞き、覚悟を決める。
 ――ここでタロス兵たちと決着を着けるのだ。


 3体のタロス兵たちが、袋小路に追い込んだ――と思い込まされている――標的たちに止めを刺そうと、鋭い剣に変化させた腕を振り上げながら突撃してくる。
 タロス兵たちは、アキバンジャーのレッド、グリーン、イエローにそれぞれ標的を定め――。

『今っ! セントリーガン「ドヴェルグ」全機起動! コンバットシフト・コンテインシュート!』
 ノエルによって事前にこの袋小路の周囲のビルに仕掛けられていた無数の|遠隔無人砲台《セントリーガン》が起動。タロス兵たちに向けて機銃の一斉掃射を開始した。
 突然の攻撃に、タロス兵たちの足が止まる。

 そこに、上空からセツナの声が響く。
「……吹き荒れろ! 堕ちた翼の齎す、黒き滅びの風!!」
 セツナの背中に元々あったドラゴンの翼の他に、もう一対の禍々しき黒き竜の翼が生じる。その翼が羽ばたくと、ビルに囲まれた空間に漆黒の暴風が吹き荒れ――竜巻となってタロス兵たちに襲いかかる。
 漆黒の暴風――|滅びの風《ゲファレナー・シュトルム》による災いの竜の力は、タロス兵たちの生命力やエネルギーを継続的に減衰させていく。
「アリシア……!」
『ええ。こちらケルベロス、セツナ。|決戦配備《ポジション》クラッシャー・アキバンジャーの決戦装備を要請します!』
『特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》クラッシャー・アキバンジャーの決戦装備、要請承認!』

 セツナの要請が承認されると同時に、空の彼方から何かが飛翔してくる。
 ――それは、赤、青、緑、黄色、ピンクの5色の武器。剣、槍、斧、槌、短剣だ。
「あれが俺たちの――」
「――決戦装備!?」
 飛翔してきた決戦装備を、アキバンジャーたちがキャッチする。
「これが、君たちに足りなかったもの……」
『つまり、必殺武器ってことですね』

「よし、いくぜっ!」
 ブルーが槍を手にしてタロス兵に挑みかかる。
 敵は「ドヴェルグ」による攻撃で動きが止まり、さらに滅びの風で弱っている。これで攻撃が通用しなかったら――。
「ぐわああああっ」
 ――しかし、ブルーの攻撃はタロス兵の強固な装甲を貫くことができず、大きく弾き返されてしまった。

『ブルーさん、私とセツナさんの作戦聞いてました?』
 呆れたようなノエルの声がスピーカーから響く。
『私とセツナさんで敵の隙を作り――そこに一気に最大火力を叩き込む。それが作戦です』
 ノエルの乗る魔導戦闘車両『白銀』が、その主砲『迅雷』をタロス兵たちに向ける。
 白銀の車両内で、ノエルがコンソールを操作し、主砲の照準をタロス兵たちにセットし――通信端末に向かって叫んだ。
「こちら、ケルベロス、ノエル・ラーズグリーズ! |決戦配備《ポジション》クラッシャー・アキバンジャーの決戦装備の合体を申請!」
『特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》クラッシャー・アキバンジャーの決戦装備の合体、要請承認!』

「これは!?」
 アキバンジャーたちの驚きの声とともに、彼らの武器が一つに合体していく。
 槌と斧を中心として槍が伸び、その先端に剣と短剣が接続される。まるで一本の巨大な矢だ。

『そして、白銀の魔導加速砲『迅雷』は、魔法で砲弾を加速して撃ち出す|超電磁砲《レールガン》――』
「よし、いくぞ、みんなっ!」
 アキバンジャーたちは、合体した武器を白銀の主砲『迅雷』にセットし――。
「アキバンジャー・キャノン、発射!」
 『迅雷』によって超高速に加速され射出された巨大な矢が、タロス兵たちを貫いたのだった。


「自分たち……勝ったでありますか?」
「ぼくたちが、デウスエクスをやっつけたの!?」
「ねえ、レッド、話があるって言ったの、覚えてる?」
 口々に喜びをあらわすアキバンジャーたち。人類の敵デウスエクスを撃破できたのだ、嬉しくないはずがない。
 ――だが。

『皆さん、まだですっ!』
「なにっ、ぐわあああああああっ」
 まだかろうじて動けたタロス兵の1体の攻撃が、ブルーを吹き飛ばした。
『ドヴェルグは弾切れ――『迅雷』もあと一発撃てる分しかエネルギーがありません。それも、通常砲弾ではタロス兵の装甲を貫けない――』
 タロス兵は、ゆっくりとアキバンジャーたちに近づいてきて、その腕の剣を振り上げ――。

「……撃ち出す弾があればいいんだな」

 ふわりと白銀の前に降り立ったセツナがノエルに声をかける。
 ――その手に握られているのは、セツナの竜の力を物質化した『封竜槍アドウェルス』。彼女の分身とも言えるもの。
『セツナ、もしもそんなことをして、封竜槍に何かあったら――』
「大丈夫だ、アリシア。それにこのタイミングで仲間を助けるにはこれしかない……」
 腕輪の姿の友人に語りかけ、セツナは『迅雷』に封竜槍をセットする。
『――セツナさん、いいのですね?』
「ノエル、最大級のランスチャージ、任せた……」
 白銀のエネルギーが『迅雷』に集中し、魔法によって生成された仮想銃身が封竜槍アドウェルスを浮き上がらせ――その槍が超高速弾体として撃ち出される。

 音速を越えて飛翔する封竜槍は、衝撃波を撒き散らしながらタロス兵へと突き刺さり――。
 その鋼鉄の装甲を穿ち貫き、動力部を破壊し、爆発四散させたのだった。

「ノエル、セツナ、アリシア。君たちのおかげでデウスエクスを撃破できた。ありがとう、礼を言う」
 アキバンジャーを代表してレッドが感謝の言葉を述べた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
えへへへへ……。
まさかDIVIDEにこんな美味しそうなものが隠れてるなんて。

A.I.R.I.S.ちゃん、どんな子なんだろ?
触りたーい、イジりたーい、中に入りたーい!(でへへ)
あ、ごめん。だいじょぶ。通常運行だからだいじょぶ!

さて、お楽しみは終わってからってことで、まずはしっかりやらないとね。

『希』ちゃん、A.I.R.I.S.ちゃんにデータリンク申請。
それと同時に【キャスター】に支援要請もお願いね。

さてそれじゃ、シミュレートの結果を元に迎撃していくね。

ってことで、まずはドローン射出。
アイドルさんたちのステージバックに、戦闘の状況を映し込んでいこう!

それじゃ『希』ちゃん、ネルトリンゲンは任せるね。
わたしは『セレステ』ででる、よー!

アイドルさんたちの歌声と、ファンの声援を力に変えてー♪

きゅーんきゅーん(はぁと)
きゅーんきゅーん(はぁと)
わたしの彼女は、廃げーまー♪

なーんて!

【M.P.M.S】対地ランチャーモード。
街に被害が出ないようにホーミングで行くよー!

お土産のゲーム、楽しみにしてて、ねー!




 特務機関DIVIDEアキバ支部――その作戦司令室。
 巨大モニタに映し出されるは、この決戦都市の戦いの命運を握る、人類が作り出した究極コンピュータ。その名も大規模並列クラスタ戦術補助システムAkiba Intelligent Resilience Interface System――|A.I.R.I.S.《アイリス》との通信画面。
 今、突如としてその画面が真っ赤に染まった。
「なにっ!? 状況を報告して!」
 突然の異常事態に、特務機関DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミの悲鳴じみた声が響く。
 それはそうだろう。ケルベロスたちの活躍でデウスエクスの襲撃をしのいでいるというのに、戦いの鍵を握る|A.I.R.I.S.《アイリス》が停止しては、|決戦配備《ポジション》によるサポートができなくなる。――そうなれば、決戦都市アキバを待つのは壊滅の二文字のみ。
「支部長! これは――外部よりのハッキングです!」
「そんな! これまでデウスエクスがハッキングをしてきたことなど一度も――。それに、世界最強を誇る|A.I.R.I.S.《アイリス》のファイアウォール、Advanced Encryption and Guarding Integrated System――|A.E.G.I.S.《イージス》を突破できる存在がいるはず無いわ!」
 作戦司令室は、未知の攻撃に蜂の巣を突いたような喧騒に包まれた。


「えへへへへ……。まさかDIVIDEに、こんな美味しそうなものが隠れてるなんて、ねー」
 アキバ上空を飛行する巨大な船影――ミネルヴァ級戦闘空母ネルトリンゲン。そのネルトリンゲンのブリッジで巨大モニタの前のコンソールをカタカタ叩くのは、琥珀色の右目をセミロングの黒髪で隠した少女、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)だ。画面に映し出されているのは、|A.I.R.I.S.《アイリス》のオペレーティングシステムのカーネルプログラム――すなわち決戦都市アキバの心臓部そのものだ。
『理緒、勝手に|A.I.R.I.S.《アイリス》に接続して――。向こうではハッキングだと大騒ぎしているみたいですよ』
「えー、ハッキングじゃないもん。ちょこーっと|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんの一番奥まで見せてもらってるだけだもん。うぇへへへ。あ、バグ見っけ。直しとく、ねー」
『理緒、よだれを拭いてください。私の機材が汚れます』
 理緒に話しかけるのは、|希《まれ》というサポートAIだ。現在は半自動制御艦ネルトリンゲンの制御を一手に引き受けている。
「もー、しょうがないなー。お楽しみはお仕事終わってからにしとこうかな。希ちゃん、事後申請だけど、|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんへのデータリンク申請だしといて、ねー」
『次からは事後申請ではなく、きちんと正規の手続きを踏んでください』
 理緒の言葉に、呆れたような声音で希が返す。
 ――そして、ネルトリンゲンから特務機関DIVIDEアキバ支部へと秘匿通信回線で呼びかけがおこなわれる。
『こちら、ケルベロス、菫宮理緒所有の戦闘空母ネルトリンゲン。|決戦配備《ポジション》キャスター、申請します』
『こちら、特務機関DIVIDEアキバ支部長の柏木ナナミ! ちょっと、|A.I.R.I.S.《アイリス》に勝手に接続してきてるの、あなたね!? っていうか、どうやって|A.E.G.I.S.《イージス》の防壁を抜けたの!?』
「あ、責任者の人なのかな? ファイアーウォール……そんなのあったっけ、希ちゃん?」
『最初にアクセスした時に攻性プログラムで攻撃しようとしてきたシステムでしょうか? 生意気でしたので、電脳ウィルスを送り込んで黙らせましたが――』
「あー、希ちゃんを怒らせかけたあのシステムのことだね。相手を考えないで無闇に攻撃してくるから――」
 理緒と希のやり取りを聞き、作戦司令室はしんと静まり返る。
 人類最強の鉾を守る最強の盾を簡単に無効化したと言っている?
 そんなことはありえない。だが、実際にこうして|A.I.R.I.S.《アイリス》にアクセスを許している以上、彼女たちの言葉を信じざるを得ない――。
「で、|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんへの|データリンク《キャスター》の要請、受けてくれるの?」
『――仕方ありません。こちら特務機関DIVIDEアキバ支部長、|決戦配備《ポジション》キャスター、要請承認っ!』
 半ばヤケになったかのような柏木ナナミの声が響き渡った。


「それじゃ、希ちゃん。いっくよー!」
 理緒がネルトリンゲンのコンソールのエンターキーを勢いよく叩く。
 高速通信回線を経由して|A.I.R.I.S.《アイリス》へと流れ込むのは――理緒が作ったコンピュータ・プログラムだ。
『それで理緒、今回はどんな|プログラム《もの》を作ったのですか?』
「えへへ、ちょーっと|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんを|クロックアップ《ハイに》させる|プログラム《お薬》か、なー」
 通信回線越しに会話を聞いていたナナミの悲鳴が響いてくる。
『ちょっと、うちの|A.I.R.I.S.《アイリス》に何してくれてるの!? ただでさえシステムに負荷をかけてて不安定だというのに――』
『――柏木支部長、それが……|A.I.R.I.S.《アイリス》の稼働が安定していきます!』
『|A.I.R.I.S.《アイリス》、安定度200%……! 信じられません、これまで50%の安定稼働が精一杯だったのに!』
 オペレータたちの驚愕の声が次々と響き渡る。
『――菫宮さん、と言ったかしら? 何をしたのか、ご説明いただいても?』
「もっちろん!」
 ナナミの言葉に、理緒がぺったんな胸を張る。
 それと同時に、DIVIDEアキバ支部作戦司令室のモニタに、|A.I.R.I.S.《アイリス》のシステム構成図が表示された。
「この赤く光ってる部分、なんだかわかる?」
 司令室に沈黙が降りる。――アキバにあるコンピュータをとにかく無理やり接続して作り上げた大規模並列クラスタ|A.I.R.I.S.《アイリス》。その特性上、|A.I.R.I.S.《アイリス》のシステム全容を把握している者はDIVIDEにすら誰一人としていないのが実情だった。
 理緒は、教師が生徒に教え諭すように、ゆっくりと解説する。
「ここは、|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんの中で一番負荷が集中してる部分。んー、人間で言うと、関節とかに無理がかかってる感じ、かなー」
『理緒が先程撃ち込んだのは、この負荷が集中しているサーバーを無理やり|活性化《クロックアップ》させ――追いついていなかった演算を処理可能にするチューニングプログラムです。チューニングしたのは|A.I.R.I.S.《アイリス》内の1024箇所』
『1024箇所を同時にチューニング!?』
 希の補足説明に、ナナミが驚愕の声を上げた。
 だが、理緒は平然とした顔で続ける。
「そ。つまり、今の|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんは全身マッサージを受けて、筋肉も血行も万全の状態! 本来の性能を十二分に発揮できるんだ、よー」

 ――そのコンディションを証明するかのように、|A.I.R.I.S.《アイリス》が超高速演算を開始した。


「それじゃ、希ちゃん、ネルトリンゲンは任せるね。わたしはセレステででる、よー!」
 戦闘空母ネルトリンゲンの後部ハッチが開き、空へと飛び立った飛翔体。それは気圏戦闘機にもなる宙間戦闘艦『RI-21A リオ・セレステ type-W.E.A-』だ。空色の機体が、アキバ上空に飛行機雲を生み出していく。
『柏木支部長! |A.I.R.I.S.《アイリス》が、上空から飛来する|小剣《グラディウス》を多数検知!』
『この遠距離で|小剣《グラディウス》を検知したっていうの!? これまでの|A.I.R.I.S.《アイリス》では考えられない観測精度と予測精度だわ――』
 騒然とする通信を聞き流しながら、理緒はセレステのキャノピーにオーバーレイ表示されたターゲットマークに目を凝らす。それは、宇宙より飛来するデウスエクスの飛翔形態|小剣《グラディウス》――その予測軌道だ。
「こちら、セレステ。|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんからの通信良好。敵軌道もばっちりだ、ねー」
『理緒、さらに|決戦配備《ポジション》キャスターによる追加支援です』
 セレステのコックピットモニターに映し出されたのは、アキバのステージでアイドルたちが歌い、それにファンたちが熱狂している姿。
『これは――アキバコンサートホールで人々が熱狂することでグラビティ・チェインが活性化! |小剣《グラディウス》がそちらに向かっていきます!』
「一箇所にまとまってくれるなら、好都合だ、ねー! きゅーんきゅーんきゅーんきゅーん、わたしの彼女は廃げーまー♪ なーんて! |M.P.M.S《多目的ミサイルランチャー》、発射だ、よー!」
 セレステの操縦桿のトリガーを引く理緒。セレステから発射された無数のミサイルは、グラビティ・チェインを求めて落下していくデウスエクスたちに命中し――空中に巨大な花火を多数咲かせたのだった。

「さーて、あとでお土産のゲーム、探さなくっちゃ♪」
 DIVIDEの作戦司令室に、通信越しの理緒の声が軽やかに響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ブラックエクリプス』

POW   :    カラミティザッパー
着弾点からレベルm半径内を爆破する【爆炎弾】を放つ。着弾後、範囲内に【戦闘用極小ドローンの群れ】が現れ継続ダメージを与える。
SPD   :    エクリプスブラスター
自身の【武器「エクリプスブラスター」】を【戦況に最も適した形状】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ   :    黒蝕光翼
【黒いレーザー光の翼】を生やし、レベル×5km/hの飛翔能力と、レベル×5本の【破壊光線】を放つ能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――決戦都市アキバ。特務機関DIVIDEアキバ支部の作戦司令室。
 巨大モニタに表示された|A.I.R.I.S.《アイリス》からのデータを見て、DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミは言葉を失っていた。
「支部長、信じられません。敵デウスエクス――コードネーム『タロス兵』、ほぼ壊滅。増援ありません」
「私たちの――勝利だというの……?」
 開戦前、|A.I.R.I.S.《アイリス》のシミュレーションによると、|この街《アキバ》は長く見積もっても1時間で壊滅する予測だった。それが蓋を開けてみれば1時間で敵軍をほぼ一掃?
 だが現実として巨大スクリーンに映し出された黒い点――デウスエクスを表すものだ――は、ほとんどが消滅している。これならば、残りはアキバの戦力だけでも撃退できるだろう。
「支部長、通信入りました。決戦都市新宿からのケルベロス部隊の援軍です!」
 オペレーターの言葉とともにスクリーンに映し出されるのは、アキバに向かってくる数機の輸送ヘリだ。ヘリに描かれたマークから、近隣にある有力な決戦都市、新宿からの増援であることが見て取れる。
 数十人のケルベロス。本来であれば待望の援軍になるはずだったのだが――。
「予定通りのタイミングね。けど、どうやら援軍は不要になったみたい。お礼を言いつつ、お帰り願い――」

 ナナミの言葉が途中で途切れた。
 ――巨大スクリーンに映し出されていた輸送ヘリが突然、極太の熱線に貫かれ爆散したのだ。次々と爆発して墜落していく輸送ヘリ。

「なっ……!?」
 絶句するナナミの耳を、オペレーターの悲鳴にも似た声が打つ。
「支部長、|A.I.R.I.S.《アイリス》に反応! パターン・|赤《レッド》! デウスエクス――指揮官級です!」
「なんですって――!?」


 アキバ上空。
 |熱線《ブラスター》で輸送ヘリの群れを撃ち落とした銀色の装甲を持ったデウスエクスが言葉を発する。
『まさか、人類ごときに私たちの軍団を撃破できるとは思っていませんでしたよ。素直に称賛の言葉を送りましょう。――ですが、この私を兵士ごときと同じだと思わないことですね』

 指揮官級デウスエクスは地上のアキバ駅にレーザー光を撃ち込み建物を崩壊させると、ゆっくりとアキバ駅跡地に降り立った。
『――さあ、人類の拠点、ゆっくりと探し出して完膚なきまでに破壊してあげましょう』
 指揮官級デウスエクスから、ドローンの群れが周囲に放たれ、特務機関DIVIDEの拠点を探索し始めた――。


「本時刻より、敵デウスエクス指揮官級をコードネーム『ブラックエクリプス』と呼称します! アキバの全戦力をもって、ブラックエクリプスを迎撃、撃破するわよ!」
「支部長、敵はドローンで周囲の探索を開始した模様! |A.I.R.I.S.《アイリス》による情報撹乱をおこなっていますが、このままでは――」
 作戦司令室のスクリーンに表示されるのは、アキバ中に広がっていく偵察用ドローンの反応だ。
 特務機関DIVIDEアキバ支部の作戦司令室があるのは、第三新ラジオ会館の地下数百メートル。だが、先程、輸送ヘリを撃ち落とした|熱線《ブラスター》の威力であれば、地上から作戦司令室を直接攻撃することも可能だろう。
「ケルベロスたちに通達。作戦司令室に攻撃させないように、なるべく敵の注意を引き付けてもらって。ここが落ちれば|A.I.R.I.S.《アイリス》による援護もできなくなるわ。そうなったら指揮官級に対抗する手段はもう――」
 作戦司令室に、ナナミの祈るような声が響いた。


◆戦況報告◆

 ケルベロスたちの想定以上の活躍により、タロス兵はほぼ壊滅しました。タロス兵の残党を気にする必要はありません。
 ですが、新たに指揮官デウスエクス、ブラックエクリプスが出現しました。
 ブラックエクリプスは、偵察用ドローンを放ち、人類の拠点である特務機関DIVIDEの作戦司令室を探しています。作戦司令室が破壊されたら|決戦配備《ポジション》が使えなくなり、ブラックエクリプスを撃破するのは困難になることでしょう。何としても作戦司令室を破壊される前にブラックエクリプスを撃破する必要があります。

◆|決戦配備《ポジション》◆

 |猟兵《ケルベロス》たちは、引き続き、特務機関DIVIDEに|決戦配備《ポジション》を要請することができます。各|決戦配備《ポジション》の効果は以下の通りです。
 なお、強力な指揮官級が相手のため、|決戦配備《ポジション》の人々は自身の安全第一で動きます。また、|A.I.R.I.S.《アイリス》の補助やアキバの地形を利用しますので、無茶な指示を出さない限りは最悪の事態は起こらないと考えて大丈夫です。

・【クラッシャー】(攻撃力支援)
 DIVIDEアキバ支部所属の戦闘員たちによる戦闘支援を受けることができます。戦闘員たちはアキバ電気街が開発した最新兵器で武装しています。なお、最新兵器は街の電気屋やパソコンショップ等で借り受けて使用することも可能です。
 戦闘員たちが身につける装備は、指揮官級の攻撃にも一撃は耐えることができます。

・【ディフェンダー】(防御力支援)
 決戦都市アキバの各所に設置された防壁を地面から出現させ、防御に利用することができます。なお、特殊材質性の防壁にはアニメやゲームのキャラクターが描かれていて、ファンたちの熱い想いによってデウスエクスの攻撃さえも防ぎます。
 防壁は指揮官級の攻撃にも多少は耐えることができます。

・【ジャマー】(妨害・奇襲支援)
 偶然アキバに買い物に来ていた技術者やプログラマーの協力を得て、対デウスエクス用妨害兵器やハッキングプログラムなどで敵を妨害してもらうことができます。また、レーダーや通信傍受をしてもらうことにより敵の位置を正確に把握することも可能です。
 指揮官級の偵察用ドローンにも見つからない高性能ジャミング装置で身を隠しています。

・【キャスター】(術式・奇策支援)
 戦術補助システム|A.I.R.I.S.《アイリス》とデータリンクをおこなうことで、電脳魔術が強化されます。また、神田明神を中心とする龍脈を利用することで電脳系以外の魔術も強化されます。
 アイドルステージでファンたちが熱狂することで、なんやかんやで奇策が成功しやすくなります。

・【スナイパー】(遠距離支援)
 偶然アキバに買い物に来ていたゲーマーたちが、アキバ電気街で開発された対デウスエクス用狙撃銃で遠距離狙撃してくれます。歴戦のゲーマーたちの狙撃能力は、熟練の兵士にも引けを取りません。
 指揮官級の攻撃も勘と経験で回避します。

・【メディック】(民間人の避難・救護支援)
 アキバの街を熟知しているメイドたちが、民間人の避難誘導をおこないます。また、メイド喫茶を一般に解放し、臨時の救護所にします。
 なお、現時点で民間人の避難は完了しています。
オルフェウス・シフウミヤ
【娘達】

※アドリブ大歓迎

ホロウと連携していきます。
決戦配備はメディックで、逃げ遅れた一般人を保護してもらいます。
さて、相手は機械ですかね。何にしても金属であることには変わりなさそうなので限界突破した雷剣天使 死の舞踏を使います。金属なので効果はあるでしょう。
戦法はまずは煌銀眼を発動、非常に遅い世界で戦闘演算と合わせて常に最適解を選択。限界突破した雷剣天使 死の舞踏を発動。
限界突破した汎ゆる速度を雷速を突破した黒紫の雷剣天使になり、雷速を突破した機動力で翻弄しながら、攻撃も限界突破して貫通攻撃を付与した雷速を突破した斬撃で斬り裂き、斬り裂き、何度も何度も踊るように華麗に死の舞踏の斬撃を与えます。


ホロウ・リュヌ
【娘達】

決戦配備はスナイパーで、銃撃に意識を向けるという隙を作ってもらいます。
機械?鎧?まぁ何にしても並みの物理攻撃は効果が薄そうですね。ならばUCは光速礼賛 殲滅の女神を使います。
空中ステップを用いた超光速の三次元機動で翻弄しながら接近し限界突破し貫通攻撃を付与した煌紅光刃で斬り裂きます。そして一旦下がり、同時に限界突破して貫通攻撃を付与した煌紅光刃による斬撃波と召喚した連装列車砲の炎弾連続砲撃による高火力による攻撃で一気に貫きます。一度で駄目なら二度、二度で駄目なら三度。何度も何度も撃ち込みます。
悪滅一切慈悲はなし。さぁ、覚悟はいいですね?私の連装列車砲の火力は凄まじいですよ?




『さあ、出てこないのでしたら、あなたがたの拠点を見つけ出して破壊するだけですよ? ――先程の私の|熱線《ブラスター》の威力は見たでしょう?』
 白銀の装甲に身を包んだデウスエクス――いや、その外見からしたら|機械兵《ダモクレス》なのかもしれない――の機械的な音声が、特務機関DIVIDEアキバ支部の作戦司令室に流れた。コードネーム『ブラックエクリプス』。決戦都市アキバを襲ってきたデウスエクス軍団の指揮官級の声だ。
 作戦司令室では、アキバ中に張り巡らせたセンサーでブラックエクリプスの情報を収集している。今聞こえてきた声も、高感度指向性マイクによって拾ったものだ。
「このままでは、この作戦司令室の場所が割れるのも時間の問題ね――」
 特務機関DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミの悔しそうな声が作戦司令室に響いた。

 ブラックエクリプスの情報は、通信端末を介して|猟兵《ケルベロス》たちにも共有されている。
 真剣な表情で通信端末からの音声情報を聞いているのは、オルフェウス・シフウミヤ(|冥府の吟遊詩人《オルフェウス》の系譜・f40711)と、ホロウ・リュヌ(|純粋一途で空虚な月《エンプティネス・キャンサー》・f40766)の二人だった。
 銀髪をポニーテールにした、銀色と紫色の瞳を持つ少女、オルフェウス。
 金髪をポニーテールにした、蒼色と翠色の瞳を持つ少女、ホロウ。
 似つかない外見の二人だが遺伝子上は複雑な関係を持っており、ある意味で家族と呼べる間柄だ。その悪を許さないという信念もまた、二人の『母親』たちから受け継いでいるもの。
 オルフェウスとホロウは、『悪』たるブラックエクリプスを迎撃せんと小さく頷きあった。


「こちらケルベロス、オルフェウス・シフウミヤ。|決戦配備《ポジション》メディックに一般人の保護を要請します」
『こちら特務機関DIVIDEアキバ支部。|決戦配備《ポジション》メディック、要請承認!』
 通信端末から聞こえる作戦司令室のオペレータの声とともに、オルフェウスたちの周囲の道路にあるマンホールの蓋が開く。その中から現れたのは、銃で武装したメイド達。
 そのリーダー格らしきメイド――先程、ホロウと共闘したメイド部隊のリーダーだ――が、オルフェウスに対して敬礼しながら告げる。
「こちら|決戦配備《ポジション》メディック、第08小隊、コードネーム『メイド喫茶・冥土の土産』。これより周辺警備にあたります。各員、散開!」
「いらっしゃいませ、ご主人様!」
 |応答《コール》を返したメイドたちが、銃を手に周囲に散っていく。
 これならば万が一逃げ遅れた一般人がいても大丈夫だろう。
「ありがとうございます。これで私たちも全力で戦えます」
 オルフェウスの言葉に、ホロウも頷き返す。――それはつまり、一般人が残っていたら危険なほどの戦闘を、彼女たちがこれからおこなうつもりという意思表示に他ならない。
 それを汲み取ったメイドリーダーが静かに答える。
「はっ、一般人たちの安全は、私たち『メイド喫茶・冥土の土産』が必ずや。我々のことでしたら気にしなくて大丈夫です。――どんな時でもご主人様の元に帰ってこられるよう、普段から厳しい訓練を積んでいますので」
「ええ、信じます。よろしくお願いします」
「では、私も前線で指揮をとって参ります。それでは、どうかご無事でいってらっしゃいませ、お嬢様」
 メイドリーダーは、オルフェウスとホロウに深くお辞儀をして送り出した。


「こちらケルベロス、ホロウ・リュヌ。|決戦配備《ポジション》スナイパーを要請します」
『こちら特務機関DIVIDEアキバ支部。|決戦配備《ポジション》スナイパー、要請承認!』
 ホロウの要請に作戦司令室が応えたと同時。
 通信回線越しに渋い男の声が聞こえてきた。
『熟練のスナイパーの力が必要っていうのはキミたちか? 俺は|決戦配備《ポジション》スナイパー随一の狙撃手、コードネーム『シルバーウルフ』だ。良ければ戦いが終わったら一緒にお茶でも――』
「いえ、いりません」
 ぴしゃりと断るホロウの声に、通信端末の向こうの男も黙り込む。――かと思いきや、懲りずに先を続けてきた。
『オーケー。じゃあお茶じゃなくて飯でも奢らせてもらおう。――で、あの親玉を相手にする策があるから俺を呼んだんだよな?』
 ホロウとオルフェウスは、シルバーウルフと共に作戦の打ち合わせを開始する。

『はっ、そいつぁ、最高にクールな策だな。いいぜ、乗ってやる――タイミングは任せたぜ』
 シルバーウルフからの通信が切れる。
 ――今回、シルバーウルフに依頼したのは、超長距離からの狙撃だ。もし仮に通信を繋いだままにしていた場合、ブラックエクリプスの偵察用ドローンに見つかる可能性がないとは言えない。そのため、攻撃タイミングはお互いの自己判断でおこなうこととなった。

「それじゃあ、行くわよ、オルフェウス」
「ええ、行きましょう、ホロウ」
 二人の『悪の敵』は、同時に地面を蹴って跳躍した。


『ようこそ。まずはあなた方が私の相手を務めてくれるということですね』
 アキバ駅跡地に佇む指揮官級デウスエクス――ブラックエクリプスの前に、オルフェウスとホロウが音もなく着地した。優雅な口調で言葉を投げかけるブラックエクリプスは余裕の態度だ。

 ――だが、オルフェウスとホロウは戦いに時間をかけるつもりはまったくない。
 高火力で一気に押し切ればよい。ただそれだけだ。

「雷奏せよ、我が身はこれより雷剣天使。悪に蹂躙されし者への悲哀の悲しき涙を糧に、雷天使の死の舞踏を弱者の為に舞い強者を蹂躙しよう」
 オルフェウスの詠唱と同時。彼女の身体が漆黒の雷に包まれた。これこそ雷速での戦いを得意とするオルフェウスの雷剣天使としての姿だ。
 ――さらにオルフェウスは|煌銀眼《オルフェウスハヤトロギア》を発動する。それは彼女に瞬間同時並列思考を可能とさせるもの。刹那の時間に駆け巡ったオルフェウスの思考が、この状況での最適解を導き出す。
「その金属の身体――果たして私の雷撃を防ぎきれますか?」
『なるほど、お見事。この一瞬で私の弱点を見抜くとは。――ですが、それがあなたに可能ですか?』
「――試してみましょう」
 瞬間。オルフェウスの身体がかき消える。いや、|雷剣天使 死の舞踏《トール・トーテンタンツ・ラミエル》により雷速すら突破した速度で移動したのだ。
 ブラックエクリプスの周囲を踊るように飛び回るオルフェウス。その手から雷光による斬撃が煌めき、デウスエクスの金属の身体に雷撃を叩き込もうとし――。
『甘いですね!』
 ――ブラックエクリプスの武器から、熱線が連射された。
 その攻撃を雷速で回避するオルフェウス。

 そこに、DIVIDEの作戦司令室からナナミの声で通信が届く。
『|A.I.R.I.S.《アイリス》による分析が完了したわ。ブラックエクリプスの武器――これよりエクリプスブラスターと呼称するけれど、それが変形して通常時の5倍の攻撃回数になっているわ。代わりに射程は半分になっているみたいだけれど――』
「――攻撃回数が5倍、ですか」
 通信を聞きながら、オルフェウスは雨のように降り注ぐ熱線を回避していく。だが、これでは接近して攻撃することができない。

「なるほど、今ならブラスターの射程は半分なのね――ならば遠距離攻撃はどうかしら」
 後方からオルフェウスの戦いを見ていたホロウが口を挟み、詠唱を開始する。
「殲滅せよ我が魂、悪滅殺一切慈悲は無し。死の踊りと炎弾の舞が戦場を支配する。ならば眼の前の敵を殲滅しよう。あぁ私は心躍らせている」
 ホロウの詠唱に応えて召喚されるのは、|光速礼賛 殲滅の女神《グスタフドーラ・トーテンタンツ》による連装列車砲。
「連装列車砲、炎弾連続砲撃!」
 列車砲から轟音が響き、砲弾がブラックエクリプスへと撃ち出される。さらにホロウ自らも紅き粒子の刃持つ煌紅光刃を振りかぶり、衝撃波を放つ。

 ――その攻撃が直撃するかと思った瞬間。
 ブラックエクリプスの姿がかき消えた。
 放たれた炎弾と衝撃波は、虚しく空を裂く。

『ブラックエクリプス、今度は移動力が5倍に向上したわ! 代わりに装甲が半分に減っているようだけれど、この機動性では列車砲を当てることは不可能よ!』
 悲鳴にも似たナナミの声。

 その通信が聞こえていたわけでもないはずだが、ブラックエクリプスも勝ち誇ったかのような口調で続ける。
『いかがですか、変幻自在な私の能力は。攻撃も防御も隙のない完璧な能力。あなた方の手札では、この私の能力を破れないことを実感できたでしょう? 許しを乞うならば今のうちですよ。今でしたら苦しまずに殺して差し上げます』
「なるほど、たしかに厄介な能力です」
「けれど、その程度で私たちに勝ったつもりなの?」
 オルフェウスとホロウの言葉に、ブラックエクリプスが苛立ちをみせる。
『なるほど、どうやら死にたいらしいですね。いいでしょう、どちらから先に死にますか? 選ばせてあげましょう』
「死ぬのはあなたです――」
「――そのお喋りな口が敗因ね」

 ――瞬間。はるか遠方から超音速で対戦車徹甲榴弾が飛来してきた。
 音すら置き去りにするその攻撃には、聴覚で反応することはできない。

『なっ!?』
 だが、ブラックエクリプスは高性能センサーで、超音速の攻撃にも対応してみせた。回避こそ間に合わなかったが、その攻撃を装甲が弾き返したのだ。
『そんな、超音速徹甲榴弾も通用しないなんて! 魔術強化したあの弾丸なら、タロス兵の装甲も撃ち抜くのに!』
『|A.I.R.I.S.《アイリス》の解析結果出ました! ブラックエクリプス、装甲を5倍にして防御した模様! 代わりに移動力は半分に低下!』
 切り札として、スナイパー『シルバーウルフ』が放った弾丸。だが、それもブラックエクリプスには通用しなかった。


『ははは、驚かせてくれましたが、これで終わりですか?』
 余裕の声を上げるブラックエクリプスに――だが、オルフェウスとホロウが不敵に告げる。
「言ったはずです、死ぬのはあなただ、と。不意打ちがあれば、とっさに移動力を捨てて防御力を上げるはずだという最適解がでていました」
「その変形、即座には切り替えられないとみたわ――なら、今は移動力が落ちているはずよね」
 ホロウの言葉とともに、ブラックエクリプスに連装列車砲が向けられる。移動力5倍時はともかく、移動力半分になっていては、連装列車砲の砲撃を回避することはできない。
『しまった、防御力を下げ、移動力を――』
「させません」
「私もいくわよ」
 エクリプスブラスターを変形させようとするブラックエクリプスに、オルフェウスが雷速で雷を放つ。
 さらにホロウも空中を蹴るように超光速の三次元機動でブラックエクリプスに接近し、煌紅光刃による斬撃波を放っていく。
『くっ、防御力は下げずに攻撃力を下げ――』
 オルフェウスとホロウのコンビネーション攻撃を、防御力をそのままにして耐え抜こうとするブラックエクリプス。だが、その装甲の表面には徐々に傷が付いていき、体内を電撃が灼いていく。
『おのれ、ならば射程を下げ、攻撃力を戻し――』
 防戦一方だと押し負けると考えたブラックエクリプスは、エクリプスブラスターにより反撃に出ようとし――。

 突如、散開したオルフェウスとホロウ。
 ――そこに撃ち込まれる連装列車砲の炎弾連続砲撃。

『ぐっ、ぐおおおおっ!』
 炎弾による爆発がブラックエクリプスを飲み込み、激しい閃光と轟音が響き渡った。

『やったの!?』
『いえ、柏木支部長。|A.I.R.I.S.《アイリス》、ブラックエクリプスをロスト! 列車砲の爆炎にまぎれて逃走した模様!』
『至急、ケルベロスたちに情報共有! ブラックエクリプスを発見次第、撃破するように!』
 作戦司令室からの通信が響き――。

「やりますね、ホロウ」
「あなたもね。オルフェウス」
 ――二人の少女は小さく言葉を交わし合っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
敵方の援軍、お相手致しますぅ。

『FAS』により飛行、『FLS』で|全『祭器』《未装備含む》を展開&発動後、空間歪曲障壁を形成しまして。
【キャスター】を要請し『神力』たる『祭器』や『加護』を強化、【瑋籬】を発動し『豊体』に変化、解除時の対価は『反動』とし『豊玉』と『豊壁』を召喚しますねぇ。
『爆炎弾』は『FPS』の探査で時機を計り『FIS』の転移で直撃を回避、余波は『豊壁』と『FES』の耐火結界で遮断を。
続く『群れ』は『極小』故『豊玉』で容易に『存在吸収』が可能ですぅ。
そのまま『存在吸収』に敵本体を含めての初撃から、超強化した『祭器』各種[追撃]に繋げ、一気に叩きますねぇ。




「|消失《ロスト》したブラックエクリプスの行方は!?」
「|A.I.R.I.S.《アイリス》による確率変数予測――出現予測ポイント、出します!」
 決戦都市アキバの特務機関DIVIDE作戦司令室――その巨大スクリーンに、戦術補助システム|A.I.R.I.S.《アイリス》による演算結果が表示される。指揮官級デウスエクスであるブラックエクリプスの出現予測ポイントを示す赤い光点は――。
「なによこれ、アキバ中に散らばっているじゃない!」
 広範囲にポツポツとマッピングされた光点を見て、DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミが悲鳴をあげた。
「現在のケルベロスの配置図、出します!」
 |A.I.R.I.S.《アイリス》に表示される|猟兵《ケルベロス》たちの位置情報。これもまた、アキバ中に広がっている。
「こうなったら人海戦術よ! 出現予測ポイントに片っ端からケルベロスに向かってもらって!」
「了解、ケルベロスの通信端末にブラックエクリプスの出現予測ポイントの情報を転送します!」
 ――こうして、指揮官級デウスエクス、ブラックエクリプスとの戦いは、|猟兵《ケルベロス》たちに託された。


『なるほど、人類も無力ではないということですか。タロス兵の軍団を撃破するだけのことはありますね』
 アキバのメイド喫茶街――その路地裏に、白銀の装甲を持つデウスエクス、ブラックエクリプスが佇んでいた。その装甲には、雷撃と剣戟による細かい傷と、大きな焦げ跡が残されている。
『まあ、私が無理に手を下すまでもありません。ここでドローンの偵察の結果をゆっくりと待ちましょう』
 様子見の姿勢をとるブラックエクリプス。

 ――だが、そこに上空から声が響いた。
「敵方の援軍、お相手致しますぅ」
 『祭器』である|FAS《フローティングエアロフォイルシステム》による3対のオーラの翼を広げ、飛翔してくる和風メイド服を纏った少女。夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の声だ。
 るこるはブラックエクリプスの上空に滞空すると、メイド服の中、胸の谷間から16枚の札――|FLS《フローティングリンケージシステム》を取り出して放つ。放たれた札が空中に静止すると、その一枚一枚から『祭器』が召喚され――るこるの周囲を取り囲んだ。
『ほう、あなた一人で私の相手をするつもりですか? いいでしょう、私のカラミティザッパーによって塵になりなさい』
 余裕の口調のブラックエクリプスが右手を掲げると、そこに白熱した火球が発生した。
 その様子をモニタしていた作戦司令室のナナミから、るこるの通信端末に警告の声が飛ぶ。
『気をつけて! |A.I.R.I.S.《アイリス》の分析によれば、あの火球の温度は1兆度よ! どんな防御が硬いケルベロスや超人でも耐えられっこないわ!』
『さらに、火球着弾後に極小のドローンまで撒き散らされることが、|A.I.R.I.S.《アイリス》によって予測されています!』
 ナナミとオペレータの声が、るこるの耳に届く。その絶望的な状況にも――るこるは穏やかな笑みを崩さない。
「心配しなくても大丈夫ですぅ。私には、|豊乳女神《チチガミサマ》の加護がありますからぁ」
『ふははは、この期に及んで神頼みですか。やはり滑稽ですね、人類というものは! 我らが|十二剣神《グラディウス・トゥエルヴ》こそ、人類を滅ぼそうとしているというのに!』
 哄笑とともに、ブラックエクリプスの手から火球が放たれた。それは、まっすぐるこるへと向かって飛んでいき――。

「こちら、夢ヶ枝るこる、|決戦配備《ポジション》キャスターを要請ですぅ」
『りょ、了解! |決戦配備《ポジション》キャスター、要請承認!』
 作戦司令室の指示により、神田明神の龍脈がるこるの身体へと流れ込む。
 それは仄かに乳白色に輝く光となり、るこるの豊満な肉体を包み込み――豊乳女神の神力と祭器を強化する。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『双宝の加護』をお与え下さいませ」
 るこるが使うのは|豊乳女神の加護・瑋籬《チチガミサマノカゴ・ナイジンノニナイテ》。
 超兵器たる『豊玉』と超装甲たる『豊壁』が、るこるの身に装着された。――その代償として、るこるの体重が激しく増加しているが。
「|FPS《フローティングプローブシステム》による攻撃探知――完了。|FIS《フローティングインタディクトシステム》、空間転移発動」
『なにっ、姿が消えた!?』
 ブラックエクリプスの声が響き――。
『|A.I.R.I.S.《アイリス》、ケルベロスの反応をロスト! いえ、反応再度出現! ――これは!』
『まさか、空間転移!?』
 作戦司令室に驚愕の声が上がると同時に、るこるの姿がアキバ上空に現れた。
 だが、それでもブラックエクリプスが放ったカラミティザッパーの直撃を避けるのが精一杯。
 るこるの横を通り過ぎた火球がアキバ上空で炸裂し――地上の太陽を生み出した。その爆炎はるこるの身体を飲み込み――。
「|FES《フローティングエレメンタルシステム》、耐火結界発動ですぅ」
 るこるが展開した結界と、超装甲である『豊壁』が、1兆度の炎を防ぎきった。
 さらに、火球内から出てきた極小ドローンたちは、超兵器『豊玉』によってその存在を吸収され消滅していく。

『ば、ばかな――私のカラミティザッパーが防がれたというのですか……!?』
 必殺の一撃を完封されたブラックエクリプスが狼狽し、一歩後ずさる。
 デウスエクスの指揮官級が気圧されている証拠だった。

「それでは、こちらからいきますねぇ」
 るこるが超兵器『豊玉』による存在吸収能力に加え、さらに周囲に浮遊する各種『祭器』からの集中攻撃を放つ。
『龍脈の力で強化されたケルベロスの攻撃、|A.I.R.I.S.《アイリス》でも威力計測不能です!』
『な、なんていう破壊力なの――!?』
 アキバのメイド喫茶街――その一角を完全崩壊させた攻撃にナナミは驚愕の声をあげる。
 ブラックエクリプスが立っていた場所は、『祭器』による集中攻撃と『豊玉』の存在吸収によってクレーターを作っていた。その表面は、まるで熱したバターナイフで切り取られたかのように滑らかだ。

『それで、ブラックエクリプスは!?』
『|A.I.R.I.S.《アイリス》、敵反応をロストしました! 直撃の直前で攻撃範囲から脱した模様!』
『至急、行方を探索して!』

 ナナミからの通信を聞きながら、るこるは豊乳女神に祈りを捧げた。
「やはり、十二剣神とかいう神よりも、豊乳女神様の方が偉大ですぅ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

皇・絶華
機神搭乗
「主様!あれは…キャバリア!?それなら俺の出番です!俺に乗り込んでください!」
あれは…ダモクレスだと思うが…いいだろうさっちゃん!(搭乗
「(そもそも俺ってばちゃんとキャバリアとして戦ってないきがするし!」

ポジション
クラッシャー
KB世界でも基本これだったからな!

対峙するキャバリアとダモクレス
「ぁあん…?手前…随分調子乗ってるなこらぁ!しかもタロスを使うたぁ…舐めてんのかこらぁ!」
おお!さっちゃんもやる気マックスだな!

【第六感】で飛び回りながら回避するぞ

UC発動
【切断】
「格の違いを教えてやる…神機シリーズプロトタイプのこの俺の恐ろしさを理解して死ねぇ!」
神速で飛び回り武装諸共亜空切断!!


フリッツ・バーナー
先ほどからバルバロッサがウズウズしている様だが……
(指パッチンと同時に虚空を裂いて現れ、跪く機体。差し出される手に触れて一体化)
なるほど、凄まじい歓喜のエネルギーを感知していたのか
利用しない手はあるまい
キャスター要請
部下達も会場に向かわせる
全力でステージを盛り上げてくれたまえ

完璧で究極のマシンをご覧に入れよう
『ODE/AN-DIE-FREUDE』を励起
斉唱せよ
機体の口が開き衝撃波が放たれる
ドローン諸共に沈んで頂く
ごきげんよう、そしてさようなら

折角だ、貴様の上層部へ言伝を頼もう
『|第6課をお引き立て頂きありがとうございました《貴様らは我々の引き立て役に過ぎない》』とな
(兇悪な笑顔で煽る)




『くっ、この私が人類ごとき相手に戦略的判断による後方への前進を余儀なくされるとは……』
 デウスエクスの指揮官級、コードネーム『ブラックエクリプス』は、まるで熱したバターナイフで切り取られたかのような、滑らかな断面をさらす肩部装甲を見て忌々しく呟いた。
 要約するとケルベロスによって撤退させられたブラックエクリプス。今は次に身を隠す場所を探してアキバ上空を飛翔していた。複雑に発展したアキバの街には隠れる場所が豊富だ。そこで時間を稼ぎ、人類の拠点を破壊する――それでブラックエクリプスの目的は達せられるのだ。
『ええ、まだ焦る時間ではありません』
 だが、そう呟きながら飛翔するデウスエクスを地上から目撃している|猟兵《ケルベロス》たちがいた。


「主様! あれは……キャバリア!?」
「いや、あれは|機械兵《ダモクレス》な気がするが?」
 飛翔するブラックエクリプスを見て、キャバリアである連環神機『サートゥルヌス』が叫ぶ。
 主と呼ばれた螺旋忍者、皇・絶華(影月・f40792)がサートゥルヌスの言葉を否定するが、|神機《サートゥルヌス》は聞いてはいない。
「キャバリア戦なら俺の出番です! さあ、俺に乗り込んでください!」
「いいだろう、さっちゃん! この前、操作マニュアルは熟読したしな!」
 神機の巨体にひらりと飛び乗り、コックピットハッチへと滑り込む絶華。ハッチが閉まると同時に神機が戦闘起動する。
「よーし、ようやく初めて! シリアスにキャバリアとして戦える気がするぞ! せっかくタルタロスから脱出したんだ、機神としての力を見せてやるぜっ!」
 不幸な目に遭う体質の|サートゥルヌス《黒髪少女》は、喜び勇んで蒼空へと飛び立った。


「――この決戦都市アキバで姿を隠すためには、上空から地上の様子を探ると思っていたよ。高所からの偵察は戦争の基本だからな」
 アキバ上空を飛翔するブラックエクリプスを、双眼鏡を覗きながら冷静に観察しているのは、金髪のビジネススーツ姿の男性。フリッツ・バーナー(〝少佐〟・f41014)だ。
「だが、地上の様子がわかるということは、地上からも姿が丸見えということだ。この状況で打つ手としては悪手としか言えんな。――まあ、所詮は機械仕掛けの人形。戦術を説くのは無意味か」
 フリッツは左手で持った双眼鏡でブラックエクリプスを観察しながら、右手の手袋を口でくわえて外す。そしてその右手の指をパチンと鳴らした。

 ――瞬間。フリッツの背後の空間が裂け、そこから赤黒い禍々しいオーラを纏った|人型兵器《オブリビオンマシン》――バルバロッサが姿を現した。
 バルバロッサは背中の翼状の推進機『DEMETRIUS』を羽ばたかせると、今にもブラックエクリプスへ向けて飛びかかろうとし――。フリッツに一瞥され、無言でその場に蹲った。
「バルバロッサが荒ぶっているな」
 機体に手を触れたフリッツに流れ込んでくるのは歓喜の感情。『ODE/AN-DIE-FREUDE』と呼ばれる動力炉のエネルギー源だ。
「なるほど、アキバに渦巻く凄まじい歓喜のエネルギーと共鳴していたか。――ならばそれを利用しない手はあるまい」
 アキバコンサートホールでは|猟兵《ケルベロス》の要請によってアイドルコンサートが開かれた後だった。バルバロッサが反応していたのはアイドルファンたちの歓喜の感情の残滓だ。

「ベーゼンドルフ・ファイアーアームズ社営業企画第6課課長フリッツ・バーナーが|発注《オーダー》する。|決戦配備《ポジション》キャスターによるアンコールライブを|購入《要請》しよう」
『特務機関DIVIDE資材調達科、|受注《アクセプト》しました。|決戦配備《ポジション》キャスター、|納品《デリバリー》!』
 DIVIDEからの指令と同時――アキバコンサートホールで、ファンたちのアンコールに応え再び曲が流れ出す。膨れ上がるファンの歓喜の感情に『ODE/AN-DIE-FREUDE』が激しく震える。

「諸君は会場で全力でライブを盛り上げてくれたまえ」
 フリッツは、第6課の部下たちに手早く指示を出す。その指示に従い、部下たちがコンサートホールに向かおうとし――。それをフリッツが呼び止めた。
「待ちたまえ、諸君。まさか武器もなく戦場に向かうつもりかね?」
 フリッツの背後にうず高く積まれたのは、大量のトランクケースだ。
 ケースの側面には、彼らが属するサイバーザナドゥの総合軍需企業ベーゼンドルフ・ファイアーアームズ社のマークが描かれている。それはまさに一級品の証。
「我が社が造った最高級の装備品だ。持って行きたまえ――」
 部下たちが期待の眼差しでトランクを次々と開け――そこに詰まっていた大量のサイリウムに言葉を失った。
「安心したまえ。それこそ――オタクの最強の武器だろう?」


『さて、次はどこに潜みますかね――む?』
 アキバ上空で地上を見下ろしていたブラックエクリプスの目に、地上から勢いよく飛翔してくる機体が目に入った。
「ぁあん……? テメエ、何デカいツラしてやがんだ、オラァ!」
『ほう、あなたこそ、この私を指揮官級と知ってのその口の利き方ですか? 我らの|同族《ダモクレス》――というわけではないようですね』
「そっちこそ、神機である俺様をしらねぇとは――ちょっと封印されてた間に、地上の|同族《キャバリア》も堕ちたもんだな! いいか、耳かっぽじってよーく聞きやがれ! 俺こそ冥界の地下深くにある禁じられし地タルタロスを支配せし機神、時間に干渉する力を持つ連環神機『サートゥルヌス』だ!」
『冥界? タルタロス? 聞いたことがないですねぇ。そして、我らが主たる|十二剣神《グラディウス・トゥエルヴ》にのみ許されし神の名を騙るとは、許し難き所業』
 バチバチと目から火花を散らす勢いでガンを付け合う|サートゥルヌス《キャバリア》と|ブラックエクリプス《ダモクレス》。
 その様子をコックピットの中から見ていた絶華が、おずおずと口を挟む。
「なあ、キャバリアとデウスエクスじゃ話が噛み合わなくね?」
「主様は黙ってろください!」『お前は黙っていなさい』
「……はい」
 2機から同時に怒鳴られ、黙っていることにした絶華だった。

「ほう――。どうやら指揮官級デウスエクスは、味方が注意を引き付けてくれているようだ。ならば今こそ、バルバロッサの力を見せよう」
 オブリビオンマシン・バルバロッサと融合し一体化しているフリッツが、その身に埋め込まれし最上の動力源、『ODE/AN-DIE-FREUDE』の感度を最大に上げる。|バルバロッサ《フリッツ》の心に流れ込んでくるのは、アキバコンサートホールで熱狂するアイドルファンたちの歓喜の心。
 その極上のエネルギー源が『ODE/AN-DIE-FREUDE』に取り込まれ――その脈動に共鳴し励起現象を引き起こす。
「ふは、ふははは、いい、いいぞ、この戦場の高揚感――!」
 バルバロッサと一体化しているフリッツも、アイドルファンたちの歓喜の心に共鳴し、戦闘狂らしい獰猛な笑みを浮かべ――。周囲に圧倒的な存在感を放つ。

『な、なんですか、あの者は――!?』
 ここにきて、ようやくサートゥルヌスと言い争いをしていたブラックエクリプスが、バルバロッサの存在に気づいた。――いや、バルバロッサがそれほどまでに無視できない強大な存在感を放っているという方が正確だろう。
『あの人とも機械ともつかぬ異様な姿――さては、この人類の都市が用意した決戦兵器ですね!』
 異様な存在感を放つバルバロッサのことを誤解したブラックエクリプス。だが、それもあながち間違いとも言い切れない。まさに一体で勝負を決しかねないほどのエネルギーがバルバロッサから迸っている。
 ――だが、強さで言えば指揮官級デウスエクスであるブラックエクリプスも負けてはいない。その右手を掲げ生み出されるは1兆度の火球――カラミティザッパー。
 ブラックエクリプスがバルバロッサに向けて火球を撃ち出し――。

「歓喜せよ、バルバロッサ!」
 アキバコンサートホールでのクライマックスの曲でボルテージがマックスになったアイドルファンたちと|バルバロッサ《フリッツ》の心が一体となる。
 コンサートホールのファンたちの最前列でサイリウムを全力で振る部下たちの気持ちもまた一体となり――。|バルバロッサ《フリッツ》が、吠えた。

 バルバロッサの口から放たれた強力な衝撃波。それは迫り来る火球を激しく震わせ――。両者の中間の位置で弾けさせる。さらに火球の中から現れようとしていたドローンたちも音波で粉々に粉砕した。
『そんな――ばかな。私の火球が!?』
 ブラックエクリプスが畏怖を抱いたかのような声音で叫び――その身を硬直させる。
「ふん、戦場で恐怖に身を竦ませるか――。これが指揮官では軍は壊滅、会社ならば倒産だな」
 嘲るようなフリッツの声が響く。

 そして、動きを止めたブラックエクリプスの隙を見逃す絶華ではない。
「確かこの世界でも|決戦配備《ポジション》が使えるんだよな。こちら1番、皇絶華、いつも通り|決戦配備《ポジション》クラッシャーを希望するぜ!」
『特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》クラッシャー、要請承認! これよりロボット用決戦兵器を出します!』
「おお、なにそれ、かっけぇ!」
 アキバ駅前のビルの屋上が展開したかと思うと、そこに|全高5メートルのロボット《キャバリア》にぴったりのサイズの巨大な銃がせり上がってきた。まるで戦車の主砲ほどもある大口径ライフルだ。
『ロボット用決戦兵器、超大口径ライフル・ヘカーテⅢ、準備完了!』
「はぁっ!? |ヘカーテ《ヘカテイア》だと!? なんであいつの名を冠した武器を使わなきゃいけないんだ!?」
「急にどうしたんだ、さっちゃん。ヘカーテという名は俺の世界にもあった狙撃銃にちなんだものだと思うぞ」
 唐突に苛立ちの声を上げたサートゥルヌス。だが、その名を聞いたことがあるはずの絶華は――まったく覚えていなかった。
 絶華はサートゥルヌスをビルの屋上に着地させると、ヘカーテⅢを構えさせる。
「よーし、撃ち抜いてやるぞ!」
 ブラックエクリプスへとその銃口を向け――引き金を引いた。激しい衝撃とともに撃ち出された弾丸がブラックエクリプスの銀色の装甲に直撃する。が――。
『く、危ないところでした。とっさに防御力を5倍にしなければ撃ち抜かれていました』
 銀色の装甲に大きく傷を受けながらも、攻撃を耐えきったブラックエクリプス。エクリプスブラスターを変形させ、移動力を半分にする代わりに防御力を5倍にしたのだ。
 その硬さに絶華とサートゥルヌスが驚愕する――かと思いきや。
「ほら、主様。やっぱりあんなヤツの名前が付いた武器なんか通用しないんですよ! ざまーみろ!」
 サートゥルヌスは逆に喜んでいた。
「仕方ない、さっちゃん、お前の力を見せるぞ」
「承知しました、主様! お前らに見せてやる……時空を統べる俺こそが最強って事をよぉ!」
 時を操る神機サートゥルヌスが発動するは、亜空間戦術級制圧機構『巨神の王』。
 その力によって超高速で飛行したサートゥルヌスは、先程の銃弾よりも速い速度でブラックエクリプスの間近まで接近し――鎌の神器『ハルペー2』を振りかぶった。
『くっ、速い――だがっ!』
 ブラックエクリプスが至近距離からエクリプスブラスターを放つ。
 放たれた|熱線《ブラスター》の一撃は、サートゥルヌスが鎌を振り下ろすよりも速い。
「はっ、格の違いを教えてやる――神機シリーズプロトタイプのこの俺の力をな!」
 直後、サートゥルヌスの姿がその場から消え去った。サートゥルヌスの能力、次元転移だ。ブラスターは虚しく空を裂く。
「そらよっ、死にやがれぇ!」
 ブラックエクリプスの背後に姿を現したサートゥルヌスが、ハルペーを振り下ろす。
『その程度の攻撃、防御力を5倍にした装甲には――』
 腕の装甲で鎌を受け止めようとしたブラックエクリプスは――その装甲をざっくりと亜空間ごと斬り裂かれていた。

『くっ、覚えていてもらいましょうっ!』
 捨て台詞を残し、撤退していくブラックエクリプス。
 そこに、フリッツの声がかけられた。
「おや、お帰りかね? それでは折角だ。貴様の上層部へ伝言を頼もう。『第6課をお引き立ていただきありがとうございました』とな」
「なあ、さっちゃん。あの人、キャバリアに乗ってて顔見えないけど、あれ、絶対凶悪な顔してそうだよな」
「そうですね、主様。あのセリフ、俺には『貴様らは我々の引き立て役に過ぎない』って聞こえましたよ」
 絶華とサートゥルヌスは、フリッツに聞こえないように囁きあった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

早門瀬・リカ
【剣と分かつもの】
引き続きスナイパーの子の力を頼らせてもらうよ
でもさっきみたいにむざむざと女性達を危険に晒す訳にはいかないからね
前衛は僕に任せてもらうよ
UC幻影雷獣撃でブラックエクリプスを撹乱して
アンジェリカさんやスナイパーの子が
狙われないように立ち回らせてもらうかな
その為にも不利な状況になったり負傷しても退くつもりはない
むしろあと一息で倒せると思い込ませて
狙いを僕の方に向けさせるようにかな
囮だけで終わるつもりもなくUCの攻撃を
積み重ねてダメージだけでなくマヒさせて動けなくさせてやるさ
後はアンジェリカさん達に仕留めてもらうよ
別世界のケルベロスの人達は戦い慣れしているようかな


アンジェリカ・ディマンシュ
【剣と分かつもの】
リカ、前は任せても?
そう言ってわたくしは猟兵化した事で安定して発動できる『暴走』を発動
機械天使の翼を生やし、飛翔しながら敵デウスエクスの破壊光線を回避していきますわ

スナイパー部隊、わたくしが指揮を執りますわ
スナイパーとしてはわたくしは若輩ながら慣れていますわ!
そう言って飛翔して的確に空間把握能力で指揮を出しながら『巻き戻さない』為の『時間操作能力』を放出し、リカとスナイパー部隊の『最重要本質』を活性化させますわ

全ての存在には『|剣《ブレイド》』が宿る……この『|分かつもの《ディバイド》』の世界でも、同じなのでしょうかね?




「ブラックエクリプス、反応ロストしました!」
「引き続き、|A.I.R.I.S.《アイリス》で出現予測ポイントの計算を続けて!」
 デウスエクスの指揮官級、ブラックエクリプスは|猟兵《ケルベロス》たちと交戦をしては姿を消していた。
 ブラックエクリプスとしては、特務機関DIVIDEの作戦司令室を破壊することが目的である。逃げ回られて困るのは|猟兵《ケルベロス》たちであった。
「|A.I.R.I.S.《アイリス》の予測によると、本作戦司令室が発見されるまで1時間です!」
 オペレーターからの報告に、DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミが渋い顔をする。
「頼んだわよ、ケルベロスのみんな――」


『私にこれだけの手傷を負わせるとは……ケルベロスたちを甘く見ていましたね』
 アキバ中央通り沿いの物陰に隠れ、白銀の装甲に無数の傷を受けたブラックエクリプスが忌々しげに呟く。
 そもそも、この街に限らず、人類の都市にここまでケルベロスが大勢常駐しているはずがないのだ。――それほどまでにケルベロスの数は少ない。
 ましてや、ここまで熟練のケルベロスが多くいた都市など、報告にはなかった。
『――まあ、それならば未熟なケルベロスから殺していけばいいだけのことです』
 もしもブラックエクリプスに表情があったならば、邪悪な笑みを浮かべていたに違いない。
 殺気をみなぎらせた視線を大通りへと向け――。
『獲物を見つけましたよ』
 小さな声で呟いた。

 ブラックエクリプスが見つめるのは、大通りを独りで歩く琥珀色の髪をポニーテールにした少年、早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・f40842)だった。
『ふむ、顔立ちや髪型、体型――そしてスカートに露出の多い服。私のデータベースによれば、あの個体の性別は女ですね。女のケルベロスならば奇襲で一気に殺害することが可能でしょう』
 ブラックエクリプスは卑怯にも、女性で独り歩きをしているケルベロスを狙い、一人づつ殺害していくという計画を立てていた。
『この作戦の成功率は――私の頭脳によるシミュレーションでは99.7%』
 絶対の自信を持ち、ブラックエクリプスはエクリプスブラスターを構える。そして変形機構を用いて、作戦実行に最適な形状へと変形させた。
『ここは一気に勝負をつければいいですから、攻撃回数5倍、防御力を半分としましょう』


『この攻撃を受けなさい!』
 物陰から飛び出したブラックエクリプスは、エクリプスブラスターから無数の熱線を連射する。
 通常の5倍の攻撃回数を誇る熱線がリカに迫り――。
「うわっ、敵襲!?」
 リカは慌てて素早くその場を飛び退いた。風に舞ったマフラーが熱線を浴びて穴だらけになる。――が、それだけだ。
『ほう、今の攻撃を避けるとは勘がいい――いえ、偶然避けられただけですから、運がいいというところですかね』
「くっ!」
 素早く戦闘態勢を取ったリカが、腰から斬霊刀《影渡》を引き抜き逆手に持つ。
 しかし、ブラックエクリプスは余裕の態度だ。
『そのような貧弱な武器で私のこの装甲を破れはしませんよ? ああ、今は防御力を半分にしているのでしたか。――ですが、その防御力でも十分です』
 シミュレーションにより、リカの戦闘能力と武器の攻撃力を計算したブラックエクリプスは、リカを脅威ではないと認識した。――ならば、あとはゆっくりと狩るだけだ。
「これならどうっ!? 我が呼び出すは虚なる雷の獣、目の前を敵を噛み砕け!」
 リカが放つは幻影雷獣撃。幻術により呼び出された雷獣から、100を超える数の雷の牙が放たれた。
 まるで地を這う落雷のごとく、無数の雷がブラックエクリプスに迫る。

 ――だが。

『そのような攻撃、通用しませんよ』
 ブラックエクリプスは一歩も動くことなくその攻撃を受け止める。
 まったくダメージがないわけではないが、この程度、大したダメージにもならない。
「それなら、これでっ!」
 リカが放った螺旋手裏剣――風魔幻舞刃は、エクリプスブラスターの連射で撃ち落とす。
 だが、その隙をついて、リカはブラックエクリプスに背を向けて駆け出していた。
『おやおや、往生際が悪いですねぇ。ゆっくりと追い詰めて狩ってあげましょう』
 まるで舌なめずりが聞こえてきそうな声音が響き渡った。


 逃げるリカをゆっくりと追うブラックエクリプス。
 途中、何度も幻影雷獣撃による攻撃を受けたが、その程度は気にならない。それよりも、弱い者を着実に追い詰めているという感覚にブラックエクリプスは優越感を覚えていた。
『そう、先程までの戦いがおかしかったのですよ。私は指揮官級デウスエクス。ケルベロスなどに苦戦するはずもないのです』
 リカが入っていった路地へと足を踏み入れ、ブラックエクリプスは勝利を確信した。
 そこは袋小路の行き止まりの通路。周囲は高いビルに囲まれている上に、窓も出入り口もない。完全に獲物を追い詰めたのだ。
『どうしました、鬼ごっこはもう終わりですか?』
 ブラックエクリプスの勝ち誇った声に、リカが冷静に答える。
「そうだね、もう鬼ごっこはおしまい。ここで勝負を着けるからね!」
 リカは懐からスマートフォン『Divide・Connect Ver.2023』を取り出すと、端末に向かって叫んだ。
「早門瀬リカ、|決戦配備《ポジション》スナイパーを要請!」
『こちら、特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》スナイパー、要請承認!』
 承認の返答と同時に、リカのスマートフォンが別回線に繋がる。
『はーい、リカ君、|決戦配備《ポジション》スナイパー、コードネームFPSゲーマーよ。あんまりにも遅いから、ゲーム一本クリアしちゃたわ』
『遅いですわよ、リカ。おかげで、わたくしまでゲームに付き合わされてしまいましたわ』
 FPSゲーマーと名乗った少女に続けて聞こえてきた声は、アンジェリカ・ディマンシュ(f40793)のものだった――。


 ここにきて、ようやくブラックエクリプスは様子がおかしいことに気がついた。
 袋小路に追い詰めたはずのケルベロスが余裕の表情で――さらに仲間に連絡した?
 だが、周囲にケルベロスの姿は見えない。このあたり一帯に展開しているドローンにもケルベロスの反応はない。――ならば、いったいどこに?
 そのブラックエクリプスの疑問に答えたのは、リカの持つスマートフォンから聞こえてくるアンジェリカの声だった。
『近くを探しても無駄ですわ。あなたの索敵範囲は|A.I.R.I.S.《アイリス》によって把握済みですの。私たちは遥か遠方ですわよ』
『なに――!?』
 ブラックエクリプスは、ようやく自分がハメられたことに気づいた。
 リカは、初めから自分をこの場所――仲間たちが遠距離から攻撃できる場所へと誘導していたのだ。逃げるケルベロスを追い詰めたつもりが、自分が罠にかけられたということだ。
 ケルベロスたちがどんな攻撃をしてくるつもりかはわからないが、今の自分は防御力を半分にしている。――このままではまずい。
 エクリプスブラスターを変形させようとするが――。
『く、防御力を――』
「そうはさせないよっ!」
 リカが放った幻影雷獣撃。――ダメージなど大したことはない。
 だが、リカの目的はブラックエクリプスにダメージを与えることではなかった。
『な――に――!? 身体の電気回路に異常が――』
「あれだけの雷撃を受けたんだから、機械の身体のキミなら、異常が起きてもおかしくないだろう?」
 そう、リカの目的は電撃による電気回路異常だった。何度も微弱な電流を流されたことで、精密部品に負荷がかかったのだ。
「アンジェリカ、今だよ!」


 リカとブラックエクリプスが対峙している路地裏の遥か遠方にあるビルの屋上。路地裏がよく見える場所に、アンジェリカとFPSゲーマーが待機していた。
『アンジェリカ、今だよ!』
 通信端末から、リカの合図が届く。
「どうやら作戦通り、リカは敵の動きを止めてくれたみたいですわね。それでは、狙撃の指揮はわたくしが執らせていただきますわ」
「うん、よろしくね、アンジェリカちゃん。私、これでもただのゲーマーだから、本格的な戦い方とか知らなくて――」
「ええ、任せてくださいませ」
 ゲーマー少女の言葉にアンジェリカが答え――。
「我が獣性は剣に宿る。其れは機械にして天使、鋼鉄の翼を広げて復讐の爪牙と成す者。故に私は人としての正義の為に空を舞おう」
 直後、アンジェリカの背中に機械天使の翼が生じた。アンジェリカは、その翼で上空に飛翔する。
 すると、ゲーマー少女は自分の中の何かが活性化したのを感じた。
「これなら――!」
 少女はスナイパーライフルのスコープを覗き込む。
「ここからブラックエクリプスまでは、約5キロメートルの距離がありますわ。一方、スナイパーの狙撃の世界記録でも3.5キロメートル。――ですが、今のあなたなら狙撃可能のはずですわ」
「わ、わかった、やってみる――」
 いくらゲームの世界で狙撃には慣れているといっても、いきなり世界記録をはるかに超える距離――。
 しかし、ここで自分が狙撃を成功させないと、リカは絶体絶命だ。
 自然と肩に力が入り――。
「あなたにならできますわ」
『FPSスナイパー、信じてるよ』
 アンジェリカとリカの言葉に肩の力が抜け、スコープ内のブラックエクリプスの姿が大きくなったかのような錯覚。

 ――今!
 少女が引き金を引くと同時にスナイパーライフルから撃ち出された魔術コーティング弾頭がブラックエクリプスへと一直線に飛んでいく。


 リカと対峙しているブラックエクリプスは考える。
 自分の索敵範囲は周囲5キロメートル。おそらく、その範囲外から狙われているのだろう。
 人類が持つ武器でその距離から使えるのは、誘導ミサイルの類。ならば――。
 追い詰められているふりをしつつ、ブラックエクリプスは周到に周囲にジャミングドローンや赤外線遮断ドローンを展開しておく。さらに、レーザー光により、ミサイルの迎撃も可能な状態だ。
 これで、どのような攻撃でも防ぐことができる。
『さあ、やれるものならやってみるのですね。――ですが、あなた方の攻撃が失敗し、私の身体が動くようになったとき――それがあなたの最期ですよ』
 余裕を取り戻したブラックエクリプスがリカに宣告した、その瞬間――。

 空気を斬り裂いて飛翔してきた銃弾が背中に命中。それはそのままブラックエクリプスの身体を貫き、地面に深い穴を穿った。

 ――銃による狙撃?
 肉眼以外の方法ではターゲットできないようにしたのに、5キロメートルの範囲外から?
『あ、あり得ない――!』
「ああ、僕も自分でも無茶な作戦だとは思っていた。けれど、仲間を信じた。それが――この結果だ」
『このような無謀な策に、自分の命をかけたと!?』
 言われ、リカは頬をかきながら答える。
「――だって、女性たちを危険に晒すわけにはいかないだろう?」
 それに、とリカは続ける。
「別世界のケルベロスの人たちは――戦い慣れしているみたいだからね」
 言葉と同時に放つのは幻影雷獣撃による雷撃。
 それは、銃弾によって穿たれた穴からブラックエクリプスの体内を駆け巡り――。

『ぐあああああっ!』
「僕の今の力では、とどめまではさせないだろうけれど――少しでもダメージを与えさせてもらうっ!」
 路地裏にブラックエクリプスの悲鳴が木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
情報を更新、3型兵装より4型兵装へと兵装をシフト、交戦開始します

敵を中心にジャミングミサイルによるジャミング粒子を散布、同時に『決戦配備:ジャマー」を要請し敵の目を一時的に奪い、その後自身を対象にUC【コード・アルクス】を発動。

10mクラスの重機動型の鎧装ユニットを構築し装備、自動創造される無人戦闘機械群をドローンの迎撃へと回し、敵攻撃は鎧装および私自身のバリア機能の最大出力で防ぎ、「system:AZOTH」による自己修復で戦闘を続行

鎧装へと組み込んだ『ノヴァ・バスター』での砲撃と、『サーベラス』及び鎧装ユニットの防衛用火器での対空弾幕での攻撃を実行し、敵の意識を引きつけましょう


セツナ・フィアネーヴ
出し惜しみできる状態じゃないな……来い、|雷霆の鋼機《ケラヴノス》……!!
……もちろん、雷は使わないぞ?
それとアリシア、DEVIDE司令部に連絡して決戦配備:ディフェンダーを要請、
あと周囲の味方に防壁内側へ退避するように頼んでくれ

相手とこっちの攻撃の地上への影響を抑える意図も含め、
ケラヴノスで空から仕掛けるぞ、竜神嵐翼で暴風を放ち攻撃する!

相手がUCを使い、空へと釣り出せたのならUC【灼ける世界】を使い、それを見た敵とドローンの持つエネルギー、精神、能力……全てを加速し、加熱し、暴走させ自爆させる……!
後は地上の防壁が保っている間に竜神嵐翼の暴風と竜雷金剛爪での直接攻撃で仕掛ける……!!




『く……う……、自己修復が追いつきませんか……』
 指揮官級デウスエクス、コードネーム『ブラックエクリプス』は、|猟兵《ケルベロス》たちの攻撃により全身に多数の傷を受け、さらに雷撃により体内の機器にもダメージを負っていた。
 今はアキバの路地裏に身を隠している。ここで今しばらく、自己修復に専念しようと身を休めていた。

 同時刻、特務機関DIVIDEアキバ支部、作戦司令室。
「ケルベロスから受け取ったデータを|A.I.R.I.S.《アイリス》に入力完了。ブラックエクリプスの行動データを更新。行動パターン予測、出ます!」
 オペレーターの声とともに、巨大スクリーンに表示されたアキバの街の地図。その上に表示された赤い光点――ブラックエクリプスの存在予測地点は、アキバ内の数カ所を指し示す。さらに、ケルベロスたちの現在座標も表示されていく。
 それを見たDIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミが素早く指示を出した。
「ブラックエクリプスの予測地点は数か所に絞り込まれたわ! 近くのケルベロスに座標を送信! 何としてもブラックエクリプスを倒すのよ!」
「了解しました、各ケルベロスの端末にデータを送信しました」
 |猟兵《ケルベロス》たちの端末に、ブラックエクリプスの予測地点データが表示されていった。


「|A.I.R.I.S.《アイリス》より|対象《ブラックエクリプス》のデータを更新。3型兵装より4型兵装へ兵装をシフトします」
 DIVIDE作戦司令室との通信を受けた、灰色の髪のウォーマシンの少女――ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)が呟いた。
 ミレアは隠密装備である3型兵装、ステルスシステムやロングレンジライフルを情報体化して格納し、代わりに4型兵装のノヴァ・バスターやサーベラス・ガトリングファランクスを実体化させていく。
 機動性や隠密性こそ落ちるが、圧倒的な火力を誇る4型兵装。強大な指揮官級デウスエクスを相手にするには必須の武器だ。
「|対象《ブラックエクリプス》の存在予想地点を確認。ミレア・ソリティス、戦闘態勢に移行――出撃します」
 ミレアは地を蹴り、ブラックエクリプスへ向かって跳躍した。

『セツナ、敵の存在予測地点の一つは、この近くみたいです』
「わかった、アリシア。すぐに向かうぞ」
 左手にはまった腕輪――光と雷の精霊アリシアに答えるのは、青髪をツインテールにしたドラゴニアンの少女、セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)だ。
 アリシアに指示された方向へ視線を向けると、セツナは背中の竜の翼を大きく広げ、封竜槍アドウェルスを手に飛び立った。


『セツナ、あの建物の影です』
「見つけたぞ、指揮官級デウスエクス……」
 ブラックエクリプスの元に到着したセツナが、封竜槍を構える。
 一方のブラックエクリプスは、困惑した声を出した
『ば、ばかな、なぜ私の居場所が……!?』
「|A.I.R.I.S.《アイリス》を甘く見ないことです。あれは集団同期により性能を発揮するという意味において、私と同じコンセプトで作られたものです」
 ブラックエクリプスの声に応えたのは、同時に到着したミレアだ。セツナの近くのビルの屋上からノヴァ・バスターをブラックエクリプスに向けている。
『ミレアさん、お久しぶりですね』
「セツナ様、アリシア様もお元気でしたでしょうか」
「……ああ」
 かつて星の海でともに戦った3人は、今また再び、決戦都市アキバで肩を並べていた。

『あなたがたこそ、私のことを甘く見ないでいただきたいですね。――この一撃を防げますか!?』
 ブラックエクリプスが黒いレーザー光の翼――黒蝕光翼を生やし強大なエネルギーが充填されていく。アキバ駅を崩壊させた破壊光線を発射しようとしているのだ。

「セツナ様、私が隙を作ります。――ミレア・ソリティス、|決戦配備《ポジション》ジャマーを要請します」
『特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》ジャマー、要請承認!』
 通信と同時に遠方より飛来するのは、フラッシュグレネード弾。それがブラックエクリプスの足元に着弾すると、強烈な閃光を発した。
 さらにミレアの肩部ミサイルポッドから『MP-01 ジャミングミサイル』が発射され、ブラックエクリプスの周囲にジャミング粒子を撒き散らす。
『なっ!? 光学センサー、赤外線センサー、超音波センサー……その他、すべてのセンサーが機能しない!?』
 黒蝕光翼から破壊光線を放とうとしていたブラックエクリプスが、ミレアとセツナの姿をロストする。
 闇雲に破壊光線が放たれるが、それはミレアとセツナに掠ることもなく、アキバの空へと消えていった。

「ミレア、感謝する。出し惜しみできる状況じゃないな……来い、|雷霆の鋼機《ケラヴノス》……!」
 セツナの呼びかけに応じ、封竜槍が激しい竜巻を作り出し――その内部からキャバリア、竜神機ケラヴノスが姿を現した。ケラヴノスに乗り込んだセツナは、アリシアに告げる。
「アリシア、DIVIDE作戦司令室に連絡して|決戦配備《ポジション》を要請してくれ」
『わかりました。こちら、セツナ・フィアネーヴ。|決戦配備《ポジション》ディフェンダーを要請します。派手に戦える場所をお願いします』
『特務機関DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》ディフェンダー、要請承認! 決戦領域、広域展開!』
 作戦司令室からの返答と同時に、決戦都市アキバが巨大な地震で揺れる。――否、それは地震ではない。セツナたちがいる場所の周囲1kmほどの範囲を円形に囲むように、地下から巨大な壁が出てきたのだ。
『こちら、DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミよ! 今、あなたたちとブラックエクリプスを、上空100メートルの高さまでの超巨大防壁で完全に囲んだわ! これが決戦都市アキバが強敵と戦う時の切り札、決戦領域! この中ならどんな派手なことをしても外に影響は与えないから、思いっきり戦っちゃって!』
「ありがたい。これでケラヴノスで遠慮せずに戦えるな……。念のため、雷は控えておくが」
 竜神機ケラヴノスは竜のような翼を広げると、ブラックエクリプスが無闇に放つ破壊光線を回避しながら高度を上げ、アキバ上空で静止した。

「決戦領域ですか。それならば私の全武装を解放しても良さそうですね。マザー・コンピュータ、並びにヘルメスデウス・ブレインコアとの交戦データをロード――対ブラックエクリプス用の追加鎧装ユニットの構築を開始します」
 ミレアが使うのはコード・|アルクス《砦》。
 全高10メートルにも達する重機動型の鎧装ユニットが構築され、ミレアの身体を城塞の如き兵装で覆っていく。
 重機動型鎧装はバーニアを吹かせると、セツナのケラヴノスの隣へと上昇していった。

『――各種センサー回復。小細工をしている間に、そちらも戦闘準備を整えたようですね。その巨体になったことで、指揮官級デウスエクスである私の相手が務まるかどうか、試してあげましょう』
 こうして、アキバに広域展開された半径1kmほどの決戦領域において、巨大兵器を操る|猟兵《ケルベロス》たちと、ブラックエクリプスとが対峙する。


『いくら装甲を厚くしようとも、私の黒蝕光翼の前では無力だということを教えてあげましょう!』
『ブラックエクリプス、黒蝕光翼という黒いレーザー光の翼に高エネルギー反応! |A.I.R.I.S.《アイリス》の計算では――ビル一つを破壊できる破壊光線、およそ……1000本分以上!?』
『なんてエネルギーなの!? もし決戦領域を広域展開していなかったら、流れ弾でアキバが壊滅じゃない!』
 自信満々にエネルギーをチャージしたブラックエクリプスに、作戦司令室のオペレーターやナナミの驚愕の声が聞こえてくる。

「なるほど、それは決戦領域を展開して正解ですね」
「……それに、こちらは敵の上空だ。流れ弾の大半は空に消えるだけだ」
『ほう、私のこの黒蝕光翼を前に逃げ出さないことだけは褒めてあげましょう。――いや、それとも黒蝕光翼の威力がわからないほど愚かなのですかね?』
 上空から静かに眺めてきているミレアの|砦《アルクス》とセツナのケラヴノスに対し、強大なエネルギーをいつでも放てるブラックエクリプスが嘲る。それは、すでに戦いに勝ったかのような余裕の声だった。

「セツナ様、あの攻撃は私に任せてください」
「……すまない。ならば、やつを上空に釣り出すのを手伝ってくれないか?」
「オーダー、了解しました」

 ミレアとセツナが短く通信したところで、作戦司令室からナナミの悲鳴のような声が届く。
『二人とも! 敵のエネルギーが臨界に達したわ! 攻撃が来るから避けて!』
 地上のブラックエクリプスの黒蝕光翼には、眩いばかりのエネルギーが充填されていた。
 ナナミの声が聞こえていたはずもないが、ブラックエクリプスが無情に告げる。
『全力で放つ黒蝕光翼――回避する隙間もないくらい、空一面に放ってあげましょう』

 黒蝕光翼から、1000本を超える破壊光線が、上空へ向けて放たれた。
 まるで、地上から空へと駆け上る雷のごとく、それはアキバの決戦領域上空を埋め尽くす。回避をおこなう隙間など存在しない。

 ――その時、|砦《アルクス》を纏ったミレアが、セツナのケラヴノスの前に出た。

『ほう、仲間を盾にして一人だけでも助かろうという作戦ですか』
『無理よ、|A.I.R.I.S.《アイリス》の計算では、いくらその重装甲でも保たないわ! 二人まとめて貫かれるだけよ!』
 ナナミの悲鳴のような声が響き――。

「|砦《アルクス》、バリア機能最大出力」
 ミレアの鎧装から展開された不可視のバリアが、黒蝕光翼の破壊光線を弾いた。

『|A.I.R.I.S.《アイリス》による出力計測――信じられません! あの破壊光線を防げるほどの出力です! ですが――』
『破壊光線を防ぐたびにバリア出力が落ちてるというの!?』
 ナナミの言葉通り、破壊光線を受け止め、弾き返すたび、バリアによる空間歪曲面が不安定に揺らぐ。その揺らぎの範囲が徐々に広がっていき――。
『バリア程度で私の黒蝕光翼を防ぎきれると思わないことですね。まだこれで半分しか撃っていませんよ』
 黒蝕光翼の充填エネルギーが半分になったあたりで、|砦《アルクス》のバリアは機能を停止した。
 残る破壊光線は、ミレアの|砦《アルクス》の装甲に直撃し、それを穿っていく。

「ミレア、もう十分だ、あとはケラヴノスで何とかする……」
『そうよ、ミレアさん、いったん下がってください!』
 セツナとアリシアの言葉に――だが、ミレアは冷静に答える。
「いえ、この|砦《アルクス》はまだ大丈夫です」


『そんな、ばかなっ!?』
 ブラックエクリプスが驚愕の声を上げ――。
『なにが起こっているの!?』
『|A.I.R.I.S.《アイリス》の分析結果、出ます! これは……重装甲ユニットの損傷が――回復しています!?』
 作戦司令室から信じられないものをみるかのような反応が返ってきた。

 ――そう、黒蝕光翼の破壊光線で装甲を穿たれる端から、|砦《アルクス》の傷が修復されていたのだ。
 『system:AZOTH』――ミレアの根幹にして、物質転換をおこなうシステム。それは|砦《アルクス》の構築にも使われており、しからば当然、鎧装の修復にも利用可能である。
「――鎧装ユニット構築用の物質がある限りは修復は可能です」

『くっ、ならばっ!』
 ブラックエクリプスは、空の全方位へと放っていた破壊光線を、ミレアだけに集中させる。
 修復よりも破壊の速度の方が速ければ撃破可能。簡単な論理だ。――それだけに、現状では有効な策でもある。
『|A.I.R.I.S.《アイリス》による計算結果! 装甲の修復速度を破壊速度がわずかに上回っています!』
『そんなっ、このままじゃっ!?』
 徐々に削られていく|砦《アルクス》の装甲。重要部分を重点的に修復させるために修復が後回しにされた脚部や肩部の装甲が吹き飛ぶ。
 だが、それでもまだ修復よりも破壊のほうが速い。
 |砦《アルクス》の装甲の中心部が徐々に抉られていき、ついには内部のミレアの姿が現れ――。

「……なるほど、回復が追いつかないなら、攻撃を弱めればいいんだな?」
 セツナの声とともに、ミレアの機体が嵐の障壁で覆われる。
 ケラヴノスの|竜神嵐翼《ティフォナス》によるものだ。

『嵐の障壁により、破壊光線の威力が弱まり、修復速度の方が上回りました!』
『これなら装甲の修復が間に合うわね!』
 ナナミの言葉通り、修復速度が上回ったことにより、ミレアの|砦《アルクス》の装甲が元の姿を取り戻していく。
 さらには機能停止していたバリアも回復し――。

『そんなっ、私の黒蝕光翼が――防がれたというのですかっ!?』
『|A.I.R.I.S.《アイリス》の計測! ブラックエクリプスの黒蝕光翼、エネルギーを失いました!』
『よし、二人とも、今よっ!』
 ブラックエクリプスの黒蝕光翼を防ぎきったミレアとセツナが動く。


「お返しです、これを受けていただきましょう」
 ミレアは鎧装に組み込んだ対大型目標用大型ランチャー『FR-06 ノヴァ・バスター』と、『SA-02 サーベラス・ガトリングファランクス』により、地上のブラックエクリプスを砲撃する。
「……こちらからもだ」
 さらにセツナのケラヴノスが|竜神嵐翼《ティフォナス》による暴風で追撃する。

『くっ……』
 空中からの猛攻を避けるため、ブラックエクリプスは背中の黒蝕光翼により空中へと逃げる。
 ――否、ミレアとセツナの攻撃によって、空中以外の逃げ場をなくされ、やむなく空へと引きずり出されたのだ。

「……空へと上がってくれて感謝する。地上の相手に使うと、街に無用な被害がでるのでな」
 ケラヴノスがその腕を上空へ向けて突き出す。その先、アキバの空に生み出されたのは、漆黒の太陽。――セツナの|灼ける世界《ツォルンハース・ベフライウング》によるものだ。
『な、なんだ、あの太陽のようなものは……!? ぐ、ぐあああああっ!』
 漆黒の太陽を見上げたブラックエクリプスが突如として苦しみだした。

『|A.I.R.I.S.《アイリス》による計測! ブラックエクリプス、理由は不明ですが、エネルギーの暴走状態になっています!』
『まさか……あの黒い太陽の影響だとでもいうの!?』
 灼ける世界。それは漆黒の太陽を見た敵の感情、能力、エネルギーを制御不能にし、暴走させるものだ。
 ブラックエクリプスが放った偵察用ドローンも、エネルギーの制御不能による暴走を起こしている個体もあった。当然、太陽を見たブラックエクリプスも例外ではない。
『ブラックエクリプス、黒蝕光翼のエネルギーが暴走! エネルギー臨界点を突破し――このままでは爆発します!』
『なんですって!? 二人とも、退避してっ!』

 ナナミの声に、セツナとミレアは機体の高度を上げようとして――ミレアの鎧装の出力ががくん、と落ちた。
「ミレア!?」
「――どうやら|砦《アルクス》の飛行能力まで修復が追いついていないようです。私のことは気にせず、セツナ様だけでご避難ください」
 二人の眼前でブラックエクリプスが爆発に包まれ、その爆炎がミレアをも包み込もうとして――。
「……そういうわけにはいかないだろう」
 ケラヴノスが|砦《アルクス》の腕を引き、|竜神嵐翼《ティフォナス》を羽ばたかせる。
 まるで暴風のような推進力が2機分の質量を一気に加速させ、爆炎の範囲から逃れさせた。

『やったの!?』
『ナナミ支部長、その台詞だと――。|A.I.R.I.S.《アイリス》によるシミュレーションでは、とどめには至っていない模様。ブラックエクリプスの反応はロストしました!』

 離れた場所から爆発を見ながらミレアが告げる。
「セツナ様、助けていただき、どうもありがとうございました」
「ミレア……その、私の方こそ……敵の攻撃から守ってくれてありがとう」
『セツナが人にお礼を言うなんて、珍しいですね』
 アリシアの嬉しそうな声が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イクシア・レイブラント
決戦配備:クラッシャー。連携、アドリブ歓迎

|A.I.R.I.S.《アイリス》との接続開始、ブラックエクリプスの交戦データ確認。
鎧装騎兵イクシア、火力支援を開始する。

各部を翡翠色に輝かせながら[推力移動、滑空、存在感、陽動、おびきよせ]、斧攻撃は空中機動で回避し、こちらからは大型フォースブレイドで[鎧無視攻撃、なぎ払い]。
【カラミティザッパー】の爆炎弾はシールドビットで[盾受け]、戦闘用極小ドローンの群れには【フルバース・トマキシマム】。
味方の安全を確保したら決戦配備を要請、協力して戦う。

諦めなさい。地球人は|デウスエクス《あなた方》には屈しない。


クロエ・テニア
っとよーやく援軍がって、えぇぇぇぇ!?爆発してるじゃん!?
何してんの……

現地戦力でどうにかするしかない
いつになく優勢だしどーにかなるかな?
それにしてもこのケルベロスたちどこから来たんだろ?

指揮官といっても1体
そして最後にモノを言うのは体力!
【限界の彼方まで】!
今のぼくならできる! ……気がする
|決戦配備《ポジション》はジャマーを申請
『ここをしのぎ切ったら徹夜でゲームするんだ!』
その熱意を感じてくれるであろうジャマーの人たちに
ぼくのナビゲートを任せるよ!
あと、敵ドローンの動きをジャミングで抑えてほしい

致命傷すら後回し
まっすぐ敵まで突っ切る!
くらえ、|魔女の一撃《ウィッチ・ストライク》!(殴り)




「|A.I.R.I.S.《アイリス》による指揮官級デウスエクス『ブラックエクリプス』の位置予測――シミュレーション結果、出ます!」
「相手もかなり弱ってきているはずよ、みんな、任せたわよ――」
 特務機関DIVIDEアキバ支部の作戦司令室で、柏木・ナナミの声が響いた。


 |A.I.R.I.S.《アイリス》によって予測された地点のうちの一箇所。
 大通りに面した路地の入り口に、緑色の髪をしたヴァルキュリアの少女、クロエ・テニア(ぼくは魔女。称号はまだない・f41096)が到着した。|この世界《ケルベロスディバイド》出身のケルベロスであり、非番の日にアキバにゲームを買いに来てデウスエクスによる襲撃事件に出会った不幸な少女である。その武器は、ウィッチドクターが使う装備として標準的なライトニングロッド――仲間を殴って治療したり、敵を殴って倒すものだ。
「ちょっと、よーやく決戦都市新宿から援軍が来たと思ったのに……なんでヘリが爆発して墜落してんの!?」
 なお、彼女はこの世界のケルベロスにしてウィッチドクター。あの程度の爆発なら、ヘリに乗っていたケルベロスたちは、せいぜい戦闘不能になる程度で死者はいないだろうと確信している。あの程度で死んでいるようでは、|この世界《ケルベロスディバイド》でケルベロスたちは生き残れないのだ。
「とはいえ、援軍が壊滅したとなると、現地戦力だけで指揮官級デウスエクスの相手をするのかぁ。けど、なんかいつになく優勢だよね、この都市。ケルベロスがこんなに多いのも不自然だし。どこから来たんだろ、あのケルベロスたち――」

 |猟兵《ケルベロス》たちの存在に首をひねるクロエの前に、まさにその|猟兵《ケルベロス》である少女が姿を現した。緑色の髪をツインテールにし、漆黒のボディスーツの上から天使のような鎧装を纏ったイクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)だ。
 自分以外のケルベロスについて悩んでいたクロエは、早速イクシアに声をかける。
「ねえ、ぼくはクロエ。他の街から偶然アキバに来てるケルベロスなんだけど――あなたはどうしてここに?」
「私はイクシア。――ここにデウスエクスが現れるという予知があったから来たの」

 淡々と事実のみを説明するイクシアだが、その言葉は|この世界《ケルベロスディバイド》のケルベロスであるクロエにとっては驚愕せざるを得ない内容だった。
「えええっ!? デウスエクスの襲撃を予知!? もしもそんなことができたら、デウスエクスが来る前に迎撃体制を整えられ――あっ!」
 デウスエクスの襲撃は、現代地球の魔法と科学技術をもってしても、予測することができない。それは特務機関DIVIDEに所属する者は誰でも知っていることだ。
 だが、今の決戦都市アキバは――まるでデウスエクスの襲撃があることを予測したかのように|戦力《ケルベロス》が集結している。それは、イクシアの口からも語られた通りだ。
「うそっ、ついにデウスエクスの襲撃を予測する技術が開発されたの!? 開発したのは、DIVIDE長官のアダム・カドモン様の研究機関!? それともこのアキバ!?」
 イクシアに向かって食いつくように質問をするクロエだが――。

 ――イクシアの|緑色の瞳《サイバーアイ》が路地裏へと向き、静かに答える。
「どうやら、ここが当たりだったみたい」
 鎧装から取り出した柄だけの大剣を両手で構え――イクシアはそこにサイキックエナジーによる光の刃を形成した。緑色の光が路地裏を照らすと、そこに白銀の鎧を纏ったようなデウスエクスの姿が浮かび上がる。
 ここにきてようやく状況を把握したクロエもまた、ライトニングロッドを両手で強く握りしめた。

 そう、ここに身を潜めている相手こそ、DIVIDEアキバ支部の作戦司令室を破壊しようとしている、指揮官級デウスエクス『ブラックエクリプス』に他ならない。
『やれやれ、見つかってしまいましたか。それでしたら、あなたがたには死んでもらわなければなりませんね』
 低く響く言葉とともに、路地裏の暗闇からブラックエクリプスが姿を現した。
 これまでの|猟兵《ケルベロス》たちとの戦いであちこち傷つき、全身が爆発に巻き込まれたかのように焼け焦げているが――その身体から発せられる殺気は間違いなく指揮官級デウスエクスのもの。

「クロエさん、前衛は私が担当する。あなたには後衛をお任せするわ」
「わ、わかったよ、回復はぼくにまかせて!」
 イクシアとクロエは頷き合うと、ブラックエクリプスと対峙する。


「先手必勝――!」
 先に動いたのはイクシアだ。通信端末を通して|A.I.R.I.S.《アイリス》とデータリンクをおこない、ブラックエクリプスのこれまでの交戦データを電子頭脳にダウンロードした。
 背中のスラスターとウィングから翡翠色の粒子を大気中に撒き散らしながら、大型フォースブレイドを振りかぶって斬り掛かっていく。
『真正面からの突撃とは芸が無いですね!』
 ブラックエクリプスが手にした武器で迎撃し、勝利を確信した声を上げ。
 ――その瞬間、武器の軌道上からイクシアの姿がかき消えた。
『なっ!?』
「敵性体との交戦データを電子頭脳のメインメモリに展開――攻撃軌道予測成功」
 正面から一直線に突撃したかに見えたイクシアだが、複雑な三次元立体機動でブラックエクリプスの攻撃を回避したのだ。それを可能にさせたのは、交戦データからの攻撃予測と、スラスターとウィングによる高度な姿勢制御だ。
「敵性体の回避行動予測――」
 そのまま大型フォースブレイドの緑色の刀身を振り下ろすイクシア。
 攻撃を回避しようと身をひねるブラックエクリプスだが――その動きを読んだかのように光の剣の軌道が変わり、銀色の装甲の表面を浅く斬り裂いた。

「押してるね、イクシアさん! その調子で一気に!」
 クロエの応援の声に――ブラックエクリプスが哄笑する。
『ふははは、この程度で私を押しているつもりですか? あなたがたなど、消し炭に変えてあげましょう!』
 ブラックエクリプスから感じられるプレッシャーが増大した。掲げられたその右手の前に生じるのは、灼熱の火球だ。

「――カラミティザッパー、1兆度の火球……」
『ほう、私の技を知っていますか。仲間にでも教えてもらいましたか? ――ならば、この技を防げないことも理解しているでしょう!』
 勝ち誇ったかのようなブラックエクリプスの声とともに、まるで地上の太陽のような火球が、イクシアとクロエに向かって撃ち出された。
 火球はまず、前衛のイクシアを飲み込もうとし――。
 その動きが空中で静止した。
『なにっ!?』
 火球の動きを止めたのは、イクシアのシールドビット――浮遊端末から発生したサイキックエナジーによる光の盾だ。

「やった、イクシアさんの盾が火球を受け止めたよ!」
 クロエの喜びの声が上がる。だが、イクシアの表情は冴えない。
『盾とは考えましたね。ですが――その位置で火球が炸裂したら、盾に守られているあなたはともかく、後ろのお嬢さんは燃え尽きるでしょうね』
「ええっ、ぼくっ!?」
 驚きの声をあげるクロエ。
 広範囲に爆炎を撒き散らす火球が炸裂したら、シールドビットだけでは、イクシア一人ならばともかくクロエまで守り切ることはできない。
『さあ、仲間が焼け死ぬところをゆっくりと見ていなさい』
「――いえ、そうはさせない。クロエさんは私が守る。地球人は|デウスエクス《あなた方》には屈しない」
 イクシアの|緑色の瞳《サイバーアイ》に決意の光が灯る。

「鎧装騎兵イクシア、|決戦配備《ポジション》クラッシャーを要請!」
『特務機関DIVIDE、|決戦配備《ポジション》クラッシャー、要請承認! 決戦兵器『セラフィック・アーク』を送ります!』
 通信端末からの応答と同時に、イクシアの眼前の地面がスライドし――その下から武装コンテナが飛び出してきた。コンテナの扉がスライドして現れたのは、リング状の装置だ。
「これは――」
『こちら、DIVIDEアキバ支部長、柏木ナナミよ! それはアキバの研究所が開発した、科学と魔術を組み合わせた強化パーツ、セラフィック・アークよ! 使って!』
「イクシア、了解!」
 イクシアはアームドフォートを展開すると、その主砲『エクスターミネイター』を両手に構える。
 そして、その銃身の先端に、武装コンテナから取り出した決戦兵器セラフィック・アークを装着した。
「エクスターミネイター、エネルギーチャージ!」
 主砲にエネルギーがチャージされ始めると同時に、その先端に取り付けられたセラフィック・アークが多重の同心円状に展開。魔法陣と電気回路を思わせる複雑な幾何学模様を空間に描いていく。
「エクスターミネイターのエネルギーが!?」
 イクシアが驚愕の声を上げるのも無理はない。主砲のエネルギー充填率は100%をとっくに越え、現在300%――そして、まだまだ上がっている。
「エネルギー充填1200%――! これなら!」
 セラフィック・アークによって限界を遥かに越えたエネルギーを充填した主砲。イクシアがその引き金を引いた。

 直後、同心円状の仮想砲身から極太のビームが撃ち出され――。カラミティザッパーの火球と激突した。
 片や1兆度の火球。片や科学と魔術の粋を結集した技術で超絶強化されたイクシアの最強兵装。
 両者は一瞬、拮抗状態となり空中で押し合うが――。

 ――エクスターミネイターのビームが火球を霧散させ、ブラックエクリプスへと直進する。

『ばかなっ、私のカラミティザッパーが!?』
 驚愕の声を上げるブラックエクリプスの頭部の近くを、ビームが通り抜け――頭部アンテナの一本を破壊した。


「やったね、イクシアさん! 敵の攻撃を打ち破ったよ!」
「――いえ、まだ」
 イクシアの声に、ブラックエクリプスが応える。
『ええ、火球を破ったことは褒めてあげましょう。ですがカラミティザッパーは隙を生じぬ二段構え。戦闘用極小ドローンの群れによって死になさい!』
 破裂した火球の残滓から、無数の極小の戦闘用ドローンたちが生み出されていく。それらはイクシアとクロエへと襲いかかろうと、群れをなして襲ってくる。
 イクシアは、極小ドローンの群れに対抗するために、エクスターミネイターによる|全力砲撃《フルバースト・マキシマム》を放つつもりだった。だが、火球の破壊に全エネルギーを使ってしまった今、もはやドローンの群れに対抗する手段は残されていない。

 ――しかし、クロエの瞳には諦めの色は宿っていなかった。
「よーし、なら今度はぼくの番だね! ウィッチドクターだからって、守られてばかりじゃないところを見せてあげるよ!」
 クロエは迫りくる戦闘用極小ドローンの群れに視線を向け――自身を鼓舞するように叫ぶ。
「ここをしのぎ切ったら徹夜でゲームするんだ! |決戦配備《ポジション》ジャマー要請!」
『特務機関DIVIDEアキバ支部――ザザッ……』
 クロエが呼びかけた通信にノイズが走る。それはアキバ支部との通信を傍受、ハッキングしたプログラマーたちの仕業であり――。
『こちら、株式会社アキバゲームズ! 嬢ちゃんの熱い想い、確かに聞き届けたぜ!』
「アキバゲームズ!? 確か今日発売のオープンワールドRPG『アキバクエスト』を作ってる会社!?」
『おう、俺たちのゲームのファンになってくれるかもしれないゲーマーを、むざむざ死なせるわけにはいかないからな! |決戦配備《ポジション》ジャマー、アキバゲームズ、|要請承認《お買い上げありがとうございます》!』
 アキバゲームズのプログラマーたちがリアルタイムで組み上げるハッキングプログラム。
 それは、無数に出現している戦闘用極小ドローンの群れをハッキングし、次々と同士討ちさせていく。

『ばかなっ、私の戦闘用極小ドローンたちがっ!?』
『なあに、この程度の|小虫《バグ》、発売直前に見つかったバグの修正に比べればたいしたことないぜ!』
「えーと、ねぇ。アキバクエスト、バグ残ってないよね?」
 ジトッとした目でツッコミを入れるクロエの言葉に――しかし、アキバゲームズのプログラマーたちは黙秘権を行使する。

 そうこうしているうちに、戦闘用極小ドローンの群れは綺麗サッパリいなくなる。
「よし、今のぼくならできる! ――気がする!」
 クロエの姿が女神のような見た目に変化していく。その身に纏うは黄金の勝負服。
 真の姿に変身し限界の彼方への道を切り開く、クロエの切り札。
「アキバゲームズのみんな、ぼくのナビゲートを任せるよ!」
 クロエは、全速力で戦場を駆け出す。目指すは指揮官級デウスエクスのブラックエクリプス。

『ばかなっ、後衛の者が素手で突撃してくるというのですか!?』
「くらえっ、これがウィッチドクターであるぼくの必殺技! その名も|魔女の一撃《ウィッチ・ストライク》!」
 突き出した右手のパンチが、ブラックエクリプスのもう一本の頭部アンテナをへし折り。
『ぐぬっ、覚えていてくださいっ!』
 ブラックエクリプスは、悔しげな声を残してその場から撤退していったのだった――。

「ありがとう、クロエさん、助かった」
「ううん、ぼくこそ助けてもらってどうもありがとう、イクシアさん」
 イクシアとクロエが握手を交わす。
 そして、最後の必殺技の威力をイクシアが称えた。
「最後の必殺技、|魔女の一撃《ウィッチ・ストライク》、威力が凄かった――」
「え、ああ、あの技? ただ技名叫んだだけの、ただのパンチだけど?」

 アキバの街を沈黙が包んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリエッタ・スノウ
んんっ、やっぱり何か湧いてきたね。
大丈夫、アキバの平和はリリが守るよ。

なんか飛ばしてるアレで作戦司令室を探してるみたいだね。
それじゃあ、先にアレを落として回っておくね。
作戦司令室から離れる方向のビルに陣取って、屋上からアサルトライフルで狙撃していくね。
んっ、わざと動かずに狙い続けてブラックエクリプスをこっちにおびき寄せるね。

釣られてきたところを要請していた【スナイパー】に牽制で足止めを入れてもらって、二丁拳銃を乱射しながら一気に接敵。
リリがすないぱーだと思ってのこのこ近づいてきたね?
超至近距離からの【リリ式猟犬乱舞】でふるぼっこにしてやるよ!
神器から発する魔力も乗せてぼっこぼこのぼっこぼこだよ。

※アドリブ連携大歓迎


菫宮・理緒
作戦司令室を破壊?
わたしの【A.I.R.I.S.】ちゃんに、なにしてくれようとしてるのかなー?

『……理緒のではないですが』

え?だってミッション終わったら隅々まで撫でくりまわしていいんだよね?
それってわたしのものっていうのと大差ないよね?

『言い方。あとだいぶ差はあります』

えー、そうかな?
あ、わかった、『希』ちゃん、妬いてるね!
だいじょぶ、わたしのパートナーは『希』ちゃんだけだから!
【A.I.R.I.S.】ちゃんはあくまで|興味本位《遊び》だから!

まって、今フリーズはやめて! わたし落ちちゃうから!?
真面目にやるから!

『希』ちゃん、【A.I.R.I.S.】ちゃんとのデータリンクと、【キャスター】への支援要請は継続。
【M.P.M.S】はドローンを最優先で攻撃お願いね。

とはいっても、あの数とブラックエクリプスのスペックだと、
司令室が見つかるのも時間の問題だよね。

それならわたしはセレステで待機して、
相手のブラスターのタイミングに合わせて【リフレクションマリス】を展開。

自分の熱線で灼かれちゃえー!


ザガン・アッシム
【アドリブ及び連携歓迎】

Q:SFSはあるのにキャバリアは無いのですか?

A:んなわけ…ねぇだろうがよぉ!!
(隠していた隅田川から射出→神田川を通って現地入り、その際に各部ミサイルで敵を足止めしつつ【UC】発動の為の準備をしておく)

…聞こえるかジャマー、こっちは何とかするからお前さん達は身を隠すことに専念しておけ。
本陣がやられたら意味ねぇからな。



さて…よう屑鉄野郎、手下を潰されて漸く出てきたか?
…まあ、尻尾巻いて逃げなかっただけでも褒めてやるよ。

なんせ俺の|手柄《キルスコア》が減っちまうからなぁ!!
(【UC】を展開し、敵にダメージを与えつつ戦場内のドローンを一掃。)

ドローン破壊後、全力の【推力移動】で敵に肉薄、【グラップル】【切り込み】【受け流し】を駆使して敵を足止めし、ドローンの再展開を妨害する

ごみのポイ捨ては禁止だぜ屑鉄野郎。
…屑鉄が塵をまき散らすなんて3流のジョークだけどなぁハッハァ!!

敵の【UC】には【フェイント】や【弾幕】で対応し、極力被弾を減らす

敵は俺だけじゃねぇんだぜ、屑鉄野郎


ウーヌス・ファイアシード
新たな|終末《ふはい》を齎す者…!
おそらく彼奴が敵将であろうな…!

斥候を用いて本丸を狙うか…
急がねば…!

されとて斥候を全て探し、退けるのは厳しそうだ…

なれば、ここは再びこの街の者達と力を合わせよう!

汝らの知恵と技で、斥候達を抑えてはくれまいか?
その代わり、敵本体は我が引き受けよう!
(ジャマー配備をお願いします)

敵本体を引きつけ、そして街の者達を狙わせぬよう、激しく攻め立てよう
(敵本体が我が引きつけも狙っている事に勘づかれぬよう、強き気迫を持って臨む事も意識していこう)
尽き得ぬ薪の剣と火を掴む手での接近戦を主とし(【2回攻撃】&【追撃】での絶え間なく攻撃)
敵の攻撃は【見切り】と【武器受け】で凌いでいこう

ドローンが新たに現れたら、余裕があれば偵察に向かわれる前に迎撃(こちらに攻撃してくるなら本体とまとめて相手をしよう)

傷ついた時は「灰は復燃し、再び火を紡ぐ」で傷を治し、力を上げながら戦いを続けようぞ!


ノエル・ラーズグリーズ
え、味方が……!?それにドローンがたくさん……っていうかアキバ駅がー!?
ああもう…!!周囲の状況を確認し、片っ端からセントリーガン『ドヴェルグ』を設置・起動(罠使い+弾幕)してドローンを攻撃させながら白銀でアキバ駅まで行きます!

アキバ駅付近にたどり着いたらアキバ駅周辺の状況を確認、状況的に相手は固定砲台みたいに振舞う(移動力を捨てて攻撃力・回数・射程あたりを伸ばす)と予想、
遮蔽物が残ってるならそれを盾に、無いなら白銀の速度を上げて回避を試みながら移動し新たにドヴェルグを設置して、周囲の味方の位置と状況を確認して……

設置したドヴェルグの一斉起動と「決戦配備:クラッシャー」による集中攻撃、
『迅雷』での砲撃、更に爆薬を減らし視認性を落としての【機械妖精型自爆ドローン展開】!
全機別方向から突っ込ませて、着弾直前に全機爆薬搭載量(と機械妖精の胸囲)を最大化!
一気に爆破します!ドヴェルグと機械妖精の攻撃は極力味方とは別方向からにして味方が攻撃される可能性を極力下げます!




 アキバの街中に建つ第三新ラジオ会館。その大深度地下に存在するのが、特務機関DIVIDEアキバ支部の作戦司令室だ。ケルベロスの支援をおこなうための大規模並列演算戦術補助システム|A.I.R.I.S.《アイリス》を運用できる作戦司令室は、人類がデウスエクスに対抗するための最後の砦であり、アキバを決戦都市たらしめている由縁である。DIVIDEの作戦司令室が落ちることは、決戦都市アキバが敗北することを意味するに他ならない。
 ゆえに、指揮官級デウスエクス『ブラックエクリプス』が作戦司令室を破壊しようと偵察用ドローンをアキバ中に放ったのであり――人類も|A.I.R.I.S.《アイリス》の力でその探索を妨害しようとしているのである。

 DIVIDE作戦司令室に、アキバ支部長、柏木・ナナミの声が響く。
「ブラックエクリプスによる、本作戦司令室の探索状況は!?」
「アキバ地上部はほぼ全域をサーチ完了――作戦司令室が地上に無いと判断したのか、地下のサーチを開始しています。このままでは――」
「|作戦司令室《ここ》が見つかるまでロスタイムしかない、といったところね。――非戦闘員には作戦司令室からの避難勧告! 私と最低限のオペレーターでケルベロスの支援をおこないます!」
 マイクをオフにして、悪いわね付き合わせちゃって、というナナミの声に、オペレーターたちは無言でかぶりをふる。
「特務機関DIVIDE作戦司令室より発令。非戦闘員はただちに作戦司令室より避難開始。繰り返します――」
 DIVIDEの作戦司令室に非常事態を告げるアナウンスが響き渡る。

 ――だが、作戦司令室がある地下から避難を開始するスタッフは一人もいなかった。

「ちょっと、どういうこと!?」
『どういうことも何もありませんよ、柏木支部長。|A.I.R.I.S.《アイリス》を運用するためには、我々、アキバ商工会議所の協力が必要でしょう?』
 巨大スクリーンに映るのは、アキバのPCショップなどが加盟するアキバ商工会議所の所長――20歳くらいの青年の姿だった。青年の後ろにある作戦司令室サーバールームでは「マシンの電源がイカれたから替えの部品を」とか「ネットワークの増強のためLANケーブルを」とか「こんな時にOSのアップデートで勝手に再起動しやがった!?」とか、阿鼻叫喚の声が飛び交っている。彼らこそ、アキバPCショップの店主や店員たち。大規模並列クラスタ|A.I.R.I.S.《アイリス》のインフラを支える技術者たちだ。
『|A.I.R.I.S.《アイリス》を維持している我々がこの作戦司令室サーバールームから離れて、作戦を維持できるとお思いですか?』
「けど、それじゃあ――」
 ナナミの声に商工会議所の所長が首を振る。
『我々も作戦司令室と運命を共にしますよ。その代わり――敵の撃退に成功した暁にはアキバ商店街の客引きにご協力いただきましょうか』
「ええ、それくらい、お安い御用よ」
 ふっ、と笑いながら応えるナナミの言葉に――。
『それでは、柏木支部長にはメイド服で客引きただけるということになりましたので、皆さん、|A.I.R.I.S.《アイリス》の維持、頑張りましょう』
 おおおっ、という怒号にも似た歓声に、ナナミは狼狽え――。
「ちょっと、これでももうすぐアラサーなんだから! そんな格好できないわよーっ!?」
 激しい絶叫が響き渡った。


『なんだか楽しいやり取りでお取り込み中みたいだけど、いいか、なー?』
 その時、突如として作戦司令室の巨大スクリーンに黒髪で片目を隠した少女の顔が映し出された。
 アキバ上空に滞空しているミネルヴァ級戦闘空母ネルトリンゲンの艦橋にいる菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)からの秘匿回線を用いた通信だ。例によって|A.I.R.I.S.《アイリス》の防壁となる|A.E.G.I.S.《イージス》の情報防御は全スルーである。
「こ、こほん。こちら、特務機関DIVIDEアキバ支部長、柏木ナナミ。何かしら?」
『うん、わたしの|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんを敵の目から欺くいい方法があるんだけど、と思って、ねー』
『理緒、|A.I.R.I.S.《アイリス》は理緒のものではないと思いますが?』
 理緒の言葉に、画面の向こうの声がツッコむ。理緒のサポートAIにしてネルトリンゲンの管制システムを務めている|希《まれ》の人工音声だ。
『えー、だって、デウスエクスを倒したら、このあと、わたしが|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんの|PCクラスタの各マシン《からだ》も|制御用プログラム《こころ》も、隅から隅まで調べちゃうんだよ? これがわたしのものじゃないといえるというかな? いや、いえないよ、ねー。うぇへへ』
『理緒、言い方。あとわたしのコンソールパネルによだれを垂らさないでください』
『あー、希ちゃん、もしかして妬いてる、のー? だいじょぶ、わたしのパートナーは希ちゃんだけだから。|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんはあくまで|興味本位《あそび》だからー』
 作戦司令室の大画面でおこなわれる漫才に、ついさっきまで自分も漫才をしていたことを忘れてナナミがツッコミをいれる。
「ケルベロスからの正式要請があれば、決戦都市アキバの最重要機密である|A.I.R.I.S.《アイリス》の見学を許可しなくはありません。ですが、それも無事に指揮官級デウスエクス『ブラックエクリプス』を撃退できればの話です。このままではもう――」
『だーかーらー、わたしの|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんに手を出させない策があるんだ、よー。ねえ支部長さん、アキバでブラックエクリプスを迎撃しやすい広いスペースってない?』
 理緒の言葉に、ナナミはしばし思案し――。
「そうね、敵に最初に破壊されたアキバ駅の跡地――あそこならば十分な広さがあるんじゃないかしら」
『アキバ駅跡地だね、希ちゃん、どう?』
『ネルトリンゲンの対地望遠レンズで状況を確認。広さ十分、遮蔽物もあり。周囲に狙撃用ビルもあります。作戦に支障はないですね』
『それじゃ、アキバ駅跡地に決定だ、ねー』
 理緒と希の会話についていけないナナミが口を挟む。
「ちょ、ちょっと、一体何の話なのよ?!」
『何って、もちろん、ブラックエクリプス撃退作戦の決行場所の話だ、よー?』
『|A.I.R.I.S.《アイリス》のことで頭がお花畑な理緒に代わってご説明します。ブラックエクリプスの攻撃目標は作戦司令室ないしは|A.I.R.I.S.《アイリス》の中枢――』
『だからね、別の場所に囮の攻撃目標を作っちゃうってわけ』
 理緒と希の説明がようやく頭に入り――ナナミがその考えに驚愕する。
「まさか――ブラックエクリプスの偵察用ドローンを騙そうというの!?」
『そ! 別の場所――アキバ駅の地下に作戦司令室があると思い込ませればいいんだよ』
『そのためには、偵察用ドローンの数を一定数以下に減らす必要があります。さらに、おびき出したブラックエクリプスを確実に倒すだけの戦力も』
 作戦を理解したナナミが、オペレータに問いかける。
「今の作戦、悪くないと思うわ――いいえ、私の勘では唯一の策ね。|A.I.R.I.S.《アイリス》による作戦成功率の試算は?」
「|A.I.R.I.S.《アイリス》のシミュレーションによると、作戦の成功率は28%――他のどの作戦よりも高い数値です!」
 ナナミはひとつ大きく息を吸うと、ケルベロスたちへと通信で呼びかける。
「これより、ブラックエクリプスに作戦司令室がアキバ駅地下にあると誤認させ、隙を作り一気に叩きます! 作戦名アンダーグラウンド・カウンターストライク――始動!」
 こうして、デウスエクス軍団からアキバを守るための、|猟兵《ケルベロス》たちの最後の戦いが始まる――。


 崩落したアキバ駅近くに建つビルの屋上に、銀髪のシャドウエルフの幼女が立っていた。リリエッタ・スノウ(シャドウエルフのガンスリンガー・f40953)は、隣でスナイパーライフルのスコープを覗き込む女子高生に声をかける。
「ん、あれを撃破していけばいいんだね、FPSゲーマーのお姉さん」
「そっ、まずはあの偵察用ドローンの数を減らすのが作戦の第一段階だって、リリちゃん」
 答えながら、|決戦配備《ポジション》スナイパーの少女、コードネームFPSゲーマーが引き金を引く。飛翔した銃弾は、はるか遠距離の偵察用ドローンを打ち抜き爆散させた。ボルトを引き薬莢を排出すると、|A.I.R.I.S.《アイリス》の指示に従ってまた次のターゲットに照準を合わせる。
「それじゃ、リリも」
 リリエッタが取り出すのは、愛用のアサルトライフルだ。それを構えようとし――隣から黄色い声が響く。
「うそっ、それLC-X12のアサルトタイプじゃない! それも長距離狙撃用に狙撃用スコープまでついてるカスタマイズモデル!!」
「お姉さん、知ってるの?」
 さっきも似たやり取りしたな、と思いつつリリエッタが聞くと、弾けたように答えが返ってくる。
「もっちろん! 私、ゲーム内ではこのモデルの銃をよく使うのよね。トリガーを引いた時に特有のクセがあるんだけど、狙撃の信頼性が抜群で――」
 ペラペラと解説してくるスナイパー少女は置いておき、リリエッタも通信端末で指示された偵察用ドローンをスコープで覗き込み――引き金を引いた。
「うそっ、あの距離のターゲットを精密に撃ち抜いた!? ちょっとリリちゃん、近接射撃だけじゃなくてスナイパーの腕も凄いじゃない。これならスナイパーの大会でも上入賞間違いなしだよ!」
「お姉さん、喋ってないでお仕事……」
 再び引き金を引き、次のターゲットも沈黙させるリリエッタ。
 その様子に、スナイパーの少女も真剣な顔つきに戻る。
「そうだね、今は偵察用ドローンを落とすことに集中だね――って、ええっ!?」
 スナイパーの少女がスコープを覗き、素っ頓狂な声を上げた。


 アキバ駅跡地近辺のビルの屋上からスナイパーの少女が狙撃用スコープを覗き込む。
 その先では、銀色の装甲をした戦闘車両が爆走していた。ノエル・ラーズグリーズ(|楽園《おうち》の追放者。・f40853)の駆る可変式魔導戦闘車両『|白銀《シロガネ》』だ。
 白銀の操縦席で、12歳のヴァルキュリアの少女、ノエルが叫んでいた。
「ああ、もう! せっかく、決戦都市新宿から増援が来たと思ったのにいきなり撃墜されるとか、どういうことなの!? それにアキバ駅が崩壊しちゃってるし! こんなのママに知られたら、私が居合わせたのに何してるのって怒られるじゃない!」
 ノエルが乗る白銀は、偵察用ドローンが多数蠢く地帯へと侵入してしまい――機銃を掃射する偵察用ドローンに追われていた。
『こちら、|決戦配備《ポジション》スナイパー、コードネームFPSスナイパー。そこのケルベロス、狙撃で支援する――』
「あ、このドローンたちは自力で対処しますのでご心配なく」
 よそいきの口調でスナイパーの少女からの通信に返すノエル。

 直後、白銀は事前に多用途セントリーガン「ドヴェルグ」を仕掛けていた地点へと到着し――。後続の偵察用ドローンたちを機銃の掃射で一掃した。
『なっ……今ので、そっちのエリアにいたターゲットが全滅――!?』
「申し遅れました。ノエル・ラーズグリーズと申します。直接戦闘には不向きなので、こうして罠を使って敵に対処しています」
 事もなげに告げるノエルに、スナイパーの少女が通信端末の向こうで絶句する。
 なにしろ、ノエルが片付けたドローンたちは、ケルベロス3人がかりで掃討するよう|A.I.R.I.S.《アイリス》が割り当てていた数である。それをノエルは一人であっという間に成し遂げてしまったのだ。
『へぇ、すごいね、ノエルちゃん。ぜひ|アキバ駅跡地《こっち》に来て手伝って欲しいことがあるんだけど――』
「は、はぁ――」
 スナイパー少女からの要請で、ノエルは一路、アキバ駅跡地に向けて白銀を発進させた。


『ザガンさん、あの、これってサブフライトシステムですよね――俺、プラモで作ったことありますから、何となくわかります』
 機械の左腕を持つ男、ザガン・アッシム(万能左腕の|人機兵《マーセナリー》・f04212)が乗ってきた『EF=エアマンタレイ』の遠隔操作を任された|決戦配備《ポジション》ジャマーからの通信に、ザガンがにやりと獰猛な笑みを浮かべて応える。
「おう、その通りだぜ?」
『っていうことは、もしかして、この機体に乗って運用する想定のロボットも!?』
「当たり前よっ! 来い、『The・Big・Magnum』!」
 ザガンの命令に従い、隅田川に隠しておいた量産型キャバリア『The・Big・Magnum』が自動操縦モードで起動する。川面を蹴立てて姿を現した『The・Big・Magnum』は、川岸に停泊している屋形船を波で大きく揺らしながら、ゆっくりと隅田川を遡り、神田川へと入っていく。その途中、神田川沿いをうろつく偵察用ドローンたちにミサイルを撃ち込み沈黙させておくのも忘れない。
 自動操縦の『The・Big・Magnum』は、神田川からアキバに上陸。ザガンの目の前でコックピットハッチを開放した。
『おおっ、巨大ロボット!』
「聞こえるか、ジャマー。こっちは何とかするから、お前さんたちは身を隠すことに専念しておけ」
 『The・Big・Magnum』の操縦席に乗り込みながらザガンが通信端末に向かって指示するが――しかし、返ってきたのは予想外の反応だ。
『いえ、俺たちも最後までザガンさんのサポートをします! ――そのために、このエアマンタレイ、もう少し貸してください!』
「わーったよ。それじゃあ、しっかりサポート頼むぜ。本陣は俺が守ってやるからよ」

 『The・Big・Magnum』の機体各部のミサイルで偵察用ドローンを破壊しつつ、ザガンはブラックエクリプスの迎撃予定地点――アキバ駅跡地へと『The・Big・Magnum』を進ませていった。


「新たな|終末《ふはい》を齎す者……! おそらく彼奴が敵将であろうな……!」
 決戦都市新宿からの増援の撃墜と、アキバ駅崩壊を目にし、ウーヌス・ファイアシード(復燃せし灰化の火・f37284)が呟く。かつては世界を灼き終末を齎す炎――「|灰化《かいか》の炉」であった存在は、今、世界を守る|猟兵《ケルベロス》の少女として、指揮官級デウスエクスに立ち向かう。
「それにしても、斥候を用いて本丸を狙うか……。敵ながら効果的な戦術ではある。急がねば」
 目につく偵察用ドローンたちを撃破していくウーヌスであるが、いかんせん、敵の数が多すぎる。一人で対処するには限界があった。
「これでは埒が明かぬか――ならば、今一度、この街の者と力を合わせよう」
「はいはーい、こちらコードネーム『らぶらぶきゅん』よ♪ ウーヌスちゃん、呼んだかな?」
「ぬおっ、汝、いつの間に我の背後に!?」
 びっくう、と驚くウーヌスの後ろに立つのは、最初にウーヌスを迷子の少女扱いしたメイドの女性だった。気配もなく背後に現れられたら、さすがの「灰化の炉」もびっくりである。
「いや、今、我はこの斥候たちを引き受けてくれる者を探しておるでな。残念ながら救護兵である給仕の汝の出番は――」
「それなら、ちょうどいい人材がいますよー、つまり、わ・た・し。これでも|決戦配備《ポジション》メディックとジャマーの両方の資格を持つ、アキバでも珍しい|二重資格者《デュアルホルダー》なんだから♪」
 |決戦配備《ポジション》ジャマー、コードネーム『らぶらぶきゅん』のメイドの女性は、スカートからフラッシュグレネードを取り出しながらウィンクする。

「ご主人様、当店自慢のレモネードをどうぞ♪ って、きゃー、やだ、これ、フレッシュレモネードじゃなくて、フラッシュグレネードでした! てへっ♪」
 メイドの女性が放つフラッシュグレネードで偵察用ドローンたちの機能を無効化させながら、二人はブラックエクリプス迎撃予定地、アキバ駅跡地に向かうのだった。

「ウーヌスちゃん、そんな仏頂面じゃなくて、もっと笑っていいのよ? 私のこの持ちネタ、お客様に大ウケなんだから」
「それ、汝の店の客、大丈夫なのであろうな――?」


『ふふふ、人類の皆さん、時間切れですよ――』
 アキバ上空で独り呟くのは、指揮官級デウスエクス、ブラックエクリプス。偵察用ドローンを放ち、このアキバの守りの要、DIVIDEの拠点である作戦司令室を探していたが――それをついに見つけたのだ。
 ドローンたちのセンサーが送ってくる拠点の座標、それは|アキバ駅跡地の地下深く《・・・・・・・・・・・》。
『おやおや、最初に撃った建築物の地下でしたか。最大火力で地下まで破壊していれば、それで終わっていましたね』
 ブラックエクリプスはそのままアキバ駅跡地の直上まで飛翔すると、エクリプスブラスターを変形させ、攻撃力5倍、移動力半分に変形させる。眼下のアキバ駅跡地へ向けてエクリプスブラスターを構え、エネルギーチャージを開始した。
『地下数百メートルでも、私の全力射撃の前では無意味ですよ』
 冷徹に告げながら、エクリプスブラスターの銃口に激しい輝きが宿っていく。それは、決戦都市新宿からの援軍のヘリを落としたときの威力の比ではない。
『エネルギー充填率500%――私の一撃、受けていただきましょう』
 ブラックエクリプスが引き金を引き――眩いばかりの熱線が一直線に地上へと向かう。
『ふははは、これで私の勝利です!』


 ――時は少し遡る。
『|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんを使った敵ドローンのハッキング、完了。これで敵は作戦司令室がアキバ駅跡地の地下にあると誤解したはずだ、よー』
「デウスエクスの偵察ドローンをハッキングするなんて、いまだに信じられないわ」
 ネルトリンゲンにいる理緒からの通信に、ナナミが絶句する。
 いかに高性能な|A.I.R.I.S.《アイリス》を用いたところで、未知の技術をもつデウスエクスの端末をハッキングし――さらにそれをブラックエクリプスに悟らせないとは。
『まあ、ケルベロスのみんながドローンの数を減らしてくれたおかげかな』
『そうですね。さすがに敵の端末を完全掌握するには、一定数以下にまで端末数を減らす必要がありました』
 理緒と希の言う通り、作戦の成否は|猟兵《ケルベロス》たちがどこまで偵察用ドローンを破壊できるかにかかっていた。――そして、その目標撃破数に達した結果、偵察用ドローンの完全掌握に至ったのだ。
「|A.I.R.I.S.《アイリス》より警告! アキバ上空より指揮官級デウスエクス『ブラックエクリプス』に強力なエネルギー反応! ターゲットは|アキバ駅跡地《・・・・・・》! 予測では――地下数百メートルまでを貫通します!」
「あれを|第三新ラジオ会館《ここ》に撃ち込まれていたら、終わりだったわね」
 ナナミが安堵の息をつく。

『けど、ここまではまだ作戦の第一段階! 希ちゃん、作戦第二段階いっくよー!』
『|決戦配備《ポジション》キャスター要請――要請経路に侵入、強制承認。|A.I.R.I.S.《アイリス》との接続完全同調――。|反射障壁《リフレクションマリス》、起動します』
 理緒の指示で発動した、電脳術式による反射障壁。それは|アキバ駅跡地《・・・・・・》に展開され――。
「ブラックエクリプスのエクリプスブラスター、発射を確認! 展開された反射障壁によって直上へと反射されました! 作戦成功です!」
 作戦司令室にオペレーターの声が響いた。


『――なっ!?』
 地上、アキバ駅跡地に向けてブラスターを放ったブラックエクリプスが驚愕の声を上げた。
 人類の拠点を貫くはずの一撃――。それがいきなり反射され、自身に向かって飛んできたのだ。ブラスターを発射した体勢では回避することもできず、ブラックエクリプスは自身が放った熱線に飲み込まれた。
『ぐわあああああっ!』


「やったの!?」
『まだだよっ! この程度では倒せないっ!』
 理緒の言葉を裏付けるように、オペレーターが|A.I.R.I.S.《アイリス》からの計測データを報告する。
「ブラックエクリプス、大ダメージにより飛翔能力を失い、アキバ駅跡地に落下! ですが、まだ健在です!」
『というわけで、支部長さん。ここからが作戦の最終フェーズだ、よー!』
 通信端末に向けて、ナナミが声を張り上げる。
「全ケルベロスに通達。これより作戦名アンダーグラウンド・カウンターストライクの最終フェーズに入ります! ――ブラックエクリプスに総攻撃! とにかく倒しちゃって!」
 ナナミからの超適当な指示が出された。


『ぐ……う……、お、おのれ……』
 アキバ駅跡地に落下したブラックエクリプスは、落下の衝撃でできたクレーターの中心でよろよろと立ち上がった。
 おかしい。どこをどう間違えた?
 いや、それよりも今は敵がここにやってくる前に姿を隠すのが先だ。考えるのはそれからでいい。

『この近辺にいたのは、偵察用ドローンを破壊していたスナイパーだけのはずです。まずはスナイパーを仕留めて――』
「リリがただのすないぱーだとおもったら大間違いだよ?」
『リリちゃん、援護は任せて!』
 スナイパーからの援護射撃を受けながら素早く間合いを詰めるのは、二丁拳銃を乱射するリリエッタ。
 ブラックエクリプスは熱線の射撃で仕留めようとするが――そこにスナイパーからの牽制射撃が飛んできてリリエッタを正確に狙い撃つことができない。さらにリリエッタは身長120cmという小柄な体格だ。余計に攻撃を当てるのは難しい。
『く、ちょこまかと――!』
「これがリリのコンボだよ。見切られる前にガンガン行くよ」
 至近距離まで近づいたリリエッタが、両手の拳銃を投げ捨てる。
『なっ、武器を捨てた……!?』
「おしえてあげる、最強の暗殺武器は――素手だよっ!」
 リリエッタの全身を駆け巡るのは強大な魔力。心臓に埋め込まれた神器から生み出されるエネルギーだ。――すっとリリエッタの表情が消えたかと思うと、魔力を纏った音速を超える拳による連撃がブラックエクリプスを激しく打ち据えた。
『かはっ!』
 だが、拳の攻撃だけでは終わらない。急所を貫く電光石火の連続蹴りが命中し、吹き飛んだブラックエクリプスに向けて無数のオーラの弾丸が放たれ食らいつく。
 これが|リリ式猟犬乱舞《リリエッタ・コンビネーション》だ。
『ば……かな、その小さな身体のどこにこれだけのパワーがあるというのです……!?』
 麻痺した身体を引きずりながらも、この場から逃げ出そうとするブラックエクリプス。
 だが、それを許すリリエッタではない。
「ノエルお姉ちゃん、やっちゃって!」


「リリさん、計算通りのポイントです」
 リリによってブラックエクリプスが吹き飛ばされたのは――事前に打ち合わせした通りの場所。
 ノエルがセントリーガン「ドヴェルグ」を多数配置したトラップポイント。
「全ドヴェルグ、ブラックエクリプスをターゲット! 最大火力でファイア!」
『ぬおおおおっ!?』
 まるでブラックエクリプスが立つ一点のみを狙ったかのように――否。実際、その一点のみを狙って周囲のビルに設置された遠隔起動式セントリーガンが火を吹く。機銃、火炎放射の他にも特殊薬液の噴霧など、様々な攻撃を織り交ぜたセントリーガンによる嵐のような銃撃。
 さすがのブラックエクリプスもその激しい攻撃の前には一歩も動くことが出来ない。
「さらに――機械妖精型自爆ドローン展開!」
 ノエルが乗る魔導戦闘車両『白銀』の後部ハッチが開く。そこから出てきたのは、妖精の形をした魔導ドローンたち。それらは胸部に相当する箇所に爆薬を仕込んでおり――ブラックエクリプスに体当たりを仕掛けると同時に自爆していく。
『特攻だと――!? おのれ、我ら|機械兵《ダモクレス》を模した兵に自爆攻撃をさせるとは、なんと非道な――!』
「あれ、思ったよりも効果がある!? まさか、パパとママはここまで考えて、この妖精型特攻兵器を……!?」
 だが、この|機械兵《ダモクレス》と妖精8種族にめちゃくちゃ効果がありそうなドローンが真価を発揮するのはここからだ。現在、ブラックエクリプスに視認されにくくするために、妖精ドローンの爆薬搭載量は最小にしてある。――つまり、まだまだ威力を増大することができる。
「それじゃあ――各機、爆薬搭載量最大化! 全方位からブラックエクリプスに突撃しちゃって!」
 爆薬搭載量を増やす指示と同時に――機械妖精たちの胸囲が最大化された。胸に爆薬を仕込んでいる以上、爆薬の搭載量を増やすことは、妖精の胸を大きくすることに他ならないのだ。
『なんですと!? |自爆ドローン《ダイナマイト》な美女たちのボディが|セクシー《ダイナマイト》に!?』
「――え、|機械兵《ダモクレス》だと、これ、そういう反応になるの――?」
 ブラックエクリプスが鼻の下を伸ばしたような声を出したかと思った直後――。100を超える妖精型ドローンが巨大な爆炎を上げながら自爆し。
「さらにとどめ! ノエル・ラーズグリーズ、|決戦配備《ポジション》クラッシャーの決戦装備の使用を要請!」
『DIVIDEアキバ支部、|決戦配備《ポジション》クラッシャーの決戦装備の使用を承認します』
 ノエルの要請が承認されると同時に、周囲のビルの影に隠れていた5人の戦士たちが白銀に駆け寄ってくる。|決戦配備《ポジション》クラッシャーの5人組、アキバンジャーたちだ。
「ノエル、俺たちの武器、使ってくれ」
 アキバンジャーたちは白銀の主砲である魔導加速砲『迅雷』に各々の決戦装備を装着し――。
「みんなの力、無駄にはしません! 主砲『迅雷』発射!」
 合体して一本の巨大な矢となった決戦装備が、『迅雷』が展開した砲塔によって魔法で超加速される。魔法の|超電磁砲《レールガン》から撃ち出された|決戦装備《巨大な矢》がブラックエクリプスに命中し。
『ぐああああああっ!』
 ――その身体に深々と突き刺さった。


『認めない……認めませんよ……。この私が追い詰められるなど――』
 アキバ駅跡地を包む爆煙がゆっくりと晴れていく。そこから姿を現したのは、全身の装甲がひび割れ、内部の電気回路がむき出しになったブラックエクリプスだ。
 その脇腹に突き刺さっている巨大な矢を引き抜くと、傷口からどす黒いオイルが地面に流れ出る。
 ――だが、その闘志はまだ失われてはいない。

『ザガンさん、ブラックエクリプスの情報を送ります』
『おう、後は俺に任せておけ!』
 上空を飛ぶサブフライトシステム・エアマンタレイが集めた情報をジャマーたちが解析し、ザガンが乗るキャバリア『The・Big・Magnum』に伝えてくる。
 『The・Big・Magnum』はフォトンクローを構えながらブラックエクリプスに対峙する。
『よう、屑鉄野郎。俺たち|猟兵《ケルベロス》の策に嵌った気分はどうだい?』
『この私を決戦の場に引きずり出したのは褒めてあげましょう。――ですが、すべて返り討ちにするだけです』
『ハッ、よく言ったぜ、屑鉄野郎! 尻尾巻いて逃げなかっただけでも褒めてやるが――俺の|手柄《キルスコア》になってもらうぜぇっ!』

 そこに、さらに割って入る声。
「あ、ウーヌスちゃん、こっちこっち! もう始まっちゃってるよー!」
「ぬう、アキバ駅跡地までの案内なら任せておけ、とか自信満々に言っておったのは誰であったか」
「だってー、途中でドローン見かけて追いかけてたら迷子になっちゃったんだもーん。てへっ」
 |決戦配備《ポジション》メディック&ジャマーのコードネーム『らぶらぶきゅん』にツッコミを入れながら現れたのは、「灰化の炉」たるウーヌスだ。
「|終末《ふはい》を齎す者よ、我が汝を討ち取ってみせよう」
 燃え盛る巨大な剣『尽き得ぬ薪の剣』と、灼熱の岩石でできた腕『火を掴む手』を展開したウーヌスもブラックエクリプスに向かって身構えた。


『一気に畳み掛けさせてもらうぜっ!』
 まず動いたのは、ザガンの乗る『The・Big・Magnum』だ。通常のキャバリアのものの数倍の推力のスラスターを吹かしながら、ホバー移動で超加速する。
『このサタニック・ジェネレーターは燃費が悪いんであんま使いたくないんだがなッ!』
 一瞬でブラックエクリプスとの接近戦の間合いに踏み込む『The・Big・Magnum』。キャバリアの巨体とは思えない高速機動だ。そのまま両腕部の装甲から展開された5本爪のフォトンセイバーを振りかぶる。
『ジャマーたちから受け取ったデータによれば、お前さんの主兵装は遠距離武器――なら、俺が得意なインファイトに持ち込んでやるぜっ!』
 傭兵としての戦闘勘をキャバリアの操縦に活かして、縦横無尽にブラックエクリプスに攻撃を仕掛けていく。フォトンセイバーが掠るたび、ブラックエクリプスの装甲が斬り裂かれ、パーツの残骸が飛び散る。
『ぐ、ぬぅ……この私が押されている、というのですか……』
 ブラックエクリプスは反撃としてブラスターを放つも、『The・Big・Magnum』のフェイントを織り交ぜた弾幕が展開され、当てることができない。
『屑鉄の不法投棄は禁止だぜ、なんて3流のジョークだけどなぁハッハァ!! ――それに、敵は俺だけじゃねぇんだぜ、屑鉄野郎』

「我も混ぜてもらおう」
 さらに、ウーヌスが振るう燃え盛る剣と巨大な岩石の腕も、ブラックエクリプスへと叩きつけられる。
 『尽き得ぬ薪の剣』の炎はブラックエクリプスの装甲を溶かし、『火を掴む手』の一撃は頑強な装甲すらひしゃげさせていく。
 ブラックエクリプスが反撃しようにも、ウーヌスの背に生えた結晶の翼『舞い上がる火の結晶』によってひらりと避けられ、また炎の大剣や岩石の腕によって受け止められていく。
『おのれ、ちょこまかと――!』
「無駄よ、あなたの攻撃なんか、ウーヌスちゃんには当たらないわ!」
 メイドが何故か自分のことのように偉そうに言い放つ。
「ふん、あやつ、我の実力を見る目はあるようだ」
「だって――この場では、ウーヌスちゃんはあっちの子の次にちっちゃいんですもの! 攻撃は当たりづらいに決まっているわ!」
 ザガン(『The・Big・Magnum』に搭乗)、ノエル(白銀に搭乗)、リリエッタ(身長120cm)を見回し、ウーヌス(身長130cm)を指差すメイド。
『くっ、どうりで私の攻撃が当たりづらいわけですね……!』
「いや、汝……。あんな適当な理由に納得するでない」
 何故か納得するブラックエクリプスに、ウーヌスが嘆息しながら呟いた。


『ザガンさん、周辺地形のスキャン完了。プラズマリーダーの最適な配置座標、送ります』
『よっしゃあ! さーて、楽しい狩りの始まりだぜぇ!』
 ジャマーたちがエアマンタレイのセンサー情報を『The・Big・Magnum』に転送する。そこには、ブラックエクリプスを囲むように座標が表示されていた。
『プラズマリーダー射出!』
 ザガンの声とともに、『The・Big・Magnum』から鋼鉄の杭のようなパーツが射出され――計算されたポイントの地面に深く突き刺さった。杭の先端が展開し、そこに内蔵されたプラズマ発生装置が激しい放電を開始した。
『ザガンさん、プラズマリーダー正常稼働。ブラックエクリプスの周囲に展開!』
『な、なんですか、これはっ!?』
 周囲をプラズマの檻に取り囲まれたブラックエクリプスが驚愕の声を響かせ――。その全身をプラズマによって灼かれ、苦悶の声を上げる。
『ぐ、ぐああああああっ!』
『おう、プラズマの効果はどうよ? 肩こりがほぐれるだろ?』
 『The・Big・Magnum』のプラズマリーダーは特別製だ。敵性体に対しては強力な電撃による攻撃をおこない、一方、味方には肉体の活性化による疲労回復効果を与える。ザガンは体力が回復することを実感しているのに対し、ブラックエクリプスは全身を駆け巡る電撃に苦しめられ、さらに機械であることから、その内部の電気回路にも致命的な損傷を受けていた。
 バチバチと全身から放電しながら、ブラックエクリプスはその動きを止めたのだった。

『やりましたよ、ザガンさん! ブラックエクリプスの活動停止を確認しました! 人類の勝利です!』
 ジャマーから歓声があがった。


『いえっ、まだよ、みんな! |A.I.R.I.S.《アイリス》の予測によれば――』
 特務機関DIVIDE作戦司令室からナナミの警告の声が響く。
 その声に釣られて|猟兵《ケルベロス》たちの視線が集まる先――。停止したはずのブラックエクリプスの瞳が赤く輝いていた。
『当機の戦闘不能を確認――。殲滅モードに移行――』
『あれはおそらく、戦闘不能になったときに発動する最終形態――。自滅と引き換えに人類を抹殺する機構よ』
 ナナミが口にするのは、|A.I.R.I.S.《アイリス》によって予測された、ブラックエクリプスの最終手段。
 殲滅モードになったブラックエクリプスは、背中の黒き羽を広げて上空へと飛翔する。
 アキバ駅跡地の上空に滞空したブラックエクリプスは、右腕に超高温の火球を生み出した。――あらゆるものを燃やし尽くす1兆度の炎だ。その炎はどんどんと膨れ上がっていく。

『あれは自滅覚悟の全力攻撃よ! 撃たれれば周囲一体が火の海になるわ! なんとしても撃たせないで!』
 |猟兵《ケルベロス》たちの通信端末に、|A.I.R.I.S.《アイリス》による被害予測が表示される。
 仮にフルチャージされた火球が地上で炸裂した場合、アキバ駅跡地を中心としたアキバ主要地区が壊滅する予想だ。――当然、この戦場にいるメンバーも無事で済むはずがない。

『ちいっ!』
 ミサイルやプラズマライフルを連射するザガンだが、それだけではブラックエクリプスを止めるには至らない。
「リリちゃんっ! ライフルよ!」
「んっ、ありがと」
 『LC-X12 Type ASSAULT』を受け取ったリリエッタが狙撃し、さらにFPSゲーマーもスナイパーライフルで攻撃する。
「残りのセントリーガン、一斉発射! 『迅雷』もいっけぇーっ!」
 ノエルも設置した武器と、白銀の主砲を放つ。

「だめ……ダメージは通ってるけど、決め手になってないわ。このままじゃ……」
 メイドの『らぶらぶきゅん』が絶望に染まった声を上げ――。

「なれば、我が行こう」
「ウーヌスちゃん!? そんな、一人でなんて無茶よ!」
 メイドの声を背に、ウーヌスは火の結晶の翼を羽ばたかせ、ブラックエクリプスへ向かって飛翔する。
『敵性体の接近を感知――排除する』
 ブラックエクリプスは、飛んでくるウーヌスを迎撃するため、チャージ途中の火球を解き放つ。まだフルチャージではないといっても、地上にいるメンバーを消し飛ばすには十分な威力だ。
 ――ゆえに、ウーヌスに避けるという選択肢は存在しない。

 ウーヌスに火球が命中し、アキバ駅跡地の上空で爆ぜる。
 それは周囲に爆風と超高温の熱風を巻き起こし、轟音はあたりのビルの窓ガラスを粉々に砕いていく。

 だが、それだけだ。火球がフルチャージまで至っていなかったおかげで、被害は地上まで届かずに済んだ。

「そんな……ウーヌスちゃん、私たちを守るために――犠牲に……」
 崩折れるメイドの涙が溢れ、熱風で熱せられたアスファルトに落ちて一瞬で蒸発する。
 しかし、そんなメイドの耳に通信端末からの絶望的な声が届いた。
『ブラックエクリプス、二発目の火球のチャージを開始――今度はさっきよりもさらにエネルギーが大きいわ!』


「――ウーヌスちゃんの犠牲は無駄にはしないわ! 今度は私が生命をかけてでも――」
 メイドの少女がグレネードランチャーとマシンガンを取り出し、上空のブラックエクリプスに向けて乱射する。
 当然、その程度の攻撃が効くことはないが、ブラックエクリプスの視線がメイドを捉えた。
「そう、そうよ。今度は私を狙ってきなさい!」
 メイドが叫ぶ。せめて、味方がいない場所――そして爆発しても被害が最低限で済む場所で爆発させれば――。
 だが、無情にもそこまでの時間は与えられていない。ブラックエクリプスがうるさいメイドを消し去るため火球を放とうとし――。

 ――ブラックエクリプスの身体を炎を纏った大剣が刺し貫いた。

「えっ、あの剣はウーヌスちゃんの……!?」
 メイドの言葉に上空から響くのはウーヌスの声だ。
「火を司る「灰化の炉」。その断片たる我が、この程度の炎で灼かれるとでも思うたか?」
 ブラックエクリプスの背後から炎の大剣を突き刺すウーヌス。その姿は、先程までよりも強大な炎で包まれていた。
「|終末《ふはい》を齎す者よ、滅せよ」
『ガアアアアァァァ!』
 ブラックエクリプスを貫く大剣の炎が一気に強くなり、その身を灼き――灰へと返すのだった。


『こちら、特務機関DIVIDEアキバ支部長柏木ナナミ。|A.I.R.I.S.《アイリス》の観測でも指揮官級デウスエクス『ブラックエクリプス』の消滅を確認したわ。これをもって作戦名アンダーグラウンド・カウンターストライクの終了を宣言します』
 ナナミは一拍置き――。
『つまり、私たち人類の――決戦都市アキバの勝利よ! 死ぬかと思ったー!』
 この戦いの勝利を告げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『徹底追究!決戦都市!』

POW   :    攻撃や防御を担う技術をテストしたり、隊員たちとトレーニングしたりする

SPD   :    防衛機能の構造について研究したり、改良できるよう技術提供をしたりする

WIZ   :    医療や設営など裏方の働きに関する知識を深めたり、より効率化を目指したりする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 かくして、決戦都市アキバを襲ったデウスエクスは、|猟兵《ケルベロス》たちの活躍で撃破された。街への被害はアキバ駅の壊滅を始めとして小さくはないが、|この世界《ケルベロスディバイド》では街への被害は日常茶飯事。人々はすでに復興に向けての作業を始めている。あとは彼らに任せておけば大丈夫だろう。

「私は特務機関DIVIDEアキバ支部長、柏木ナナミよ。改めてお礼を言うわ、ケルベロスの皆さん」
 今回の戦いで活躍した|猟兵《ケルベロス》たちに、ナナミが深々と礼をする。|A.I.R.I.S.《アイリス》の予測では良くてアキバ半壊。指揮官級デウスエクスの出現という予想外の事態があった以上、アキバ全土が破壊されていてもおかしくない戦いだった。
「皆さんのおかげで、街が守られました。――特務機関DIVIDEとして正式な報酬をお出しするのはもちろんですが、ぜひ、皆さんが守り抜いたアキバを見て行ってください」
 再度言うようだが、この世界の人々は逞しい。デウスエクス撃退直後だというのに、すでに店は運営を再開し、人々にも活気が戻っている。
 科学技術と魔法技術が高度に融合した都市アキバ。その路上には電気店やPCショップ、アニメ・ゲームショップなどが立ち並び、路上ではメイドたちがメイド喫茶への客引きをしている。そこで働く人々や客として来ている人々は、デウスエクス襲撃時には|決戦配備《ポジション》として共に戦った人々だ。|猟兵《ケルベロス》たちが顔を見せれば大歓迎間違いなしだろう。
 自分たちが守り抜いた街を見て回るもよし、共に戦った人々と親交を深めてもよし、最新の決戦都市の各種兵装を見学する許可も出ている。

 ――街を襲う脅威は去った。
 |猟兵《ケルベロス》たちには自由に平和なひとときを楽しんでもらいたい。

●補足
フラグメントの選択肢は気にせず、自由に行動していただいて大丈夫です。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
無事に解決して良かったですぅ。

アイさんがお土産のゲームを求めてましたが、そのあたりは疎いですからねぇ。
観光も含めて一緒に回りたいですが、如何でしょう?
判らないことも多いので、色々と教えて頂けると有難いですぅ。

後、私の知るアキバの異名は「デカ盛りの聖地」というもので、二升のご飯を出すお店もあるとか。
この世界のデカ盛り品も味わってみたいですし、「移動中のお店でゲーム等を探しつつ、デカ盛り店の梯子」という流れで如何でしょう?
通常でも問題無いですが、念の為【豊饒佳饌】で[大食い]を強化することまで踏まえれば、仮にアイさんが食べきれなくても、残りそうな分は全て確実に頂けますので。




「わぁ、ここがアキバですか!」
「えぇ、アイさんがお土産のゲームを欲しがってましたけど、そのあたりは疎いものですからぁ。観光も含めて一緒にアキバを巡れればと思いましてぇ」
「はいっ、私もこっちの世界は初めてですが、ぜひ一緒に回りましょう!」
 きらっきらした瞳で周囲を見回しながら答えたのはアイ・リスパーだ。和風メイド服の少女、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が、アイをアキバ観光に誘ったのである。もちろん、アイがその誘いを断るはずがない。
 こうして、るこるとアイ、同年齢だが|ある部分《むね》が対照的な二人の少女が、アキバの街へと向かっていった。


「るこるさん、るこるさん、見てくださいっ! こんなゲーム、他のアース系世界では見たことないですよっ!」
 だーっとゲームショップに突撃したアイが、店頭でデモされているFPSを見て興奮したような声をあげる。そこでは、迫りくるデウスエクス軍団を最新兵器で撃退するという内容のゲームがプレイできるようになっていた。るこるやアイと同年代くらいの女子高生が、スナイパーライフルを片手に、デウスエクスを次々と撃ち倒している。
「なるほどぉ、確かに他の世界にはデウスエクスはいませんからぁ、|この世界《ケルベロスディバイド》ならではのゲームといえそうですねぇ」
 るこるの言葉に、アイが真剣な表情で考え込む。
 それはまるで真剣に戦術を語る時のアイの表情――つまり、めちゃくちゃレアな表情だ。

「るこるさん、私、考えたのです」
「はぃ、どんな考えでしょうかぁ?」
「今後も猟兵とデウスエクスとの戦いは激しくなっていくでしょう」
「まあ、ようやく世界が繋がったばかりですし、そうでしょうねぇ」
 アイの言葉にるこるも頷く。その言葉は事実に違いない。
「まだまだ先の話でしょうけれど、|この世界《ケルベロスディバイド》の命運を左右する戦いに猟兵たちが関わっていくことになるかもしれません」
「そうですねぇ」
「そうなった時に備えて、私たちはデウスエクスについてもっと知識を蓄えておくべきなのです。現在、私たちはデウスエクスのことをほとんど知りません。ゆえに――」
「ゆえに?」
 真剣なアイの言葉に、るこるもごくり、と喉を鳴らす。

「ゆえに、私はこのゲームをじっっっくりとプレイして、デウスエクスの研究をしなければならないのです。そう、それは猟兵である私の義務であり――それゆえ、このゲームを購入する費用は経費で落ちるはずなのです! あ、なんかこの世界独自規格のゲーム機みたいですから、ゲーム機も経費で落ちるはずですね! というわけで、私、ちょっとゲームと本体、買ってきますね!」

 だーっと店の中のレジに突入しようとしたアイを、るこるの言葉が押し止める。
「いえ、あのぅ、そういう大きい買い物は荷物になりますから、帰り道で買う方がいいのではぁ?」
 その言葉に、アイもはっと正気に戻る。いや、さっきまでのが正気じゃなかったかというと、正気で言っていたような気もするが。
「るこるさんの言う通りですね。まずはこの街を散策しましょう。――るこるさんの行きたい場所はありますか?」

「――そうですねぇ」
 んー、と顎に指を添えて考え込むるこる。そして、おもむろに口を開いた。
「大いなる豊饒の女神、豊かなる恵みを齎す叡智をお貸しくださいませ」
 |豊乳女神の加護・豊饒佳饌《チチガミサマノカゴ・ホウジョウノウタゲ》。
 神に祈ることで、グルメ評論家も顔負けのグルメ知識を得ることができる能力だ。――神の加護とはいったい。
「私が知る|他の世界《アース系世界》のアキバはぁ、『デカ盛りの聖地』としても有名ですぅ」
「デカ盛り、ですか?」
 食事の量としては少食なアイは、その方面については疎いようだった。――あと、スペースシップワールド生まれなため、あまり食への執着がなく、ジャンクフードのように手軽に食べられるものを好むという理由もあるが。
「ええ、別の世界のアキバでは、二升のご飯を出すお店もあるとか。で、今、|豊乳女神《かみさま》のお告げで、|この世界《ケルベロスディバイド》のアキバのデカ盛りの店ランキングを教えていただいたのですぅ。さあ、片っ端から行きましょう、まずは軽くデカ盛りステーキ丼の店から行ってみましょうかぁ」
「るこるさん、私、そんなに食べられませんよっ!?」
「大丈夫ですぅ、神様の加護でぇ、大食い、早食いもできるようになっていますからぁ。アイさんが食べきれなくても、私がきちんと頂きますのでぇ」
「なんですか、その加護ーっ!?」
 こうして、るこる(とアイ)は、決戦都市アキバのデカ盛りグルメランキングトップ10の店を一日で制覇した猛者として、噂になったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

早門瀬・リカ
【剣と分かつもの】
どうにか防衛成功だね
皆の力が無かったら危ない所だったよ…

って暗い気分になっても申し訳ないし
アンジェリカさんとスナイパーの子達と一緒に
アキバの街を堪能させてもらうよ
ここがゲームセンター…僕にとっては
あまり馴染みのない場所だけれど
射撃ゲームでもして腕試しかな
アンジェリカさんはと同じで銃火器が常備されているのかも気になるし
本職の腕前も近くで見ておきたいしね

次はメイド喫茶かな
有名なだけあって魅力的な姿だね
アンジェリカさんやスナイパーの子達も
着たらきっとよく似合うだろうなと
つい想像してしまうかな
そして油断していた隙にいじられたり
からかわれてしまうかな
嫌とは言えず受け身になってしまうよ


アンジェリカ・ディマンシュ
【剣と分かつもの】

さて、秋葉原防衛成功ですわね……
スナイパー部隊の皆様は、シューティングゲームを得意としている様ですわね
ならば、この秋葉原のゲームセンターは……銃火器が常備されているのでは?
気になりますわね……リカもそう思いません?

そう言ってゲームセンターに赴き、どんな様子なのかを見学
時折筐体ゲームも遊びながら堪能しますわ

後はメイド喫茶にも行きたいですわね。どのようなものなのか見てみたいですわ
オムライス等を注文し、メイド喫茶を堪能
フレンチメイド、というのも華があっていいですわね
ブレイド世界でヴィクトリアスタイルを見慣れている令嬢はそんな感想を残す




 アキバ大通り。
 そこに建ち並ぶ店は戦闘によって大小様々な被害を受けていたが、店員たちの顔は晴れやかだ。割れた窓ガラスなどを手早く補修し、すでに商売を再開している。
 そこを訪れる客たちも同様に活気に満ちており、ゲームショップやアニメショップに人だかりができている。メイドたちの客引きも活発だ。

「――デウスエクス軍団の襲撃直後だというのに、皆様、とても元気ですわね」
 街の様子をみて、ぽつりと漏らすのは、黒を基調としたシックな服に身を包んだ、灰色の髪の少女アンジェリカ・ディマンシュ(f40793)だ。|別世界《ケルベロスブレイド》からやってきた少女は、|人々が自力で建物を直す姿《・・・・・・・・・・・・・》を、不思議なものでも見るような目で見つめ――その白く細い指で崩壊した建物にそっと触れた。
「やはり|ダメ《・・》ですのね――」
 彼女の|聖王女陛下へ捧ぐ讃美歌《オラシオン・オブ・エロヒム》は、元の世界での能力を再現しようとしたものだ。しかし、実物を模した精巧な偽物を作る能力は修復とは異なる。地面に瓦礫が残った状態では、その上に偽の建物を配置することはできない。ゆえに、この地に住む人々が自力で街を整備する――少なくとも瓦礫をどけるまでは、能力による手助けは不可能だ。
 顔を伏せながら、きゅっ、とその手を握りしめるアンジェリカに、背後から少女の――いや、少年の声がかけられる。

「いたいた、アンジェリカさん。あんまり一人で動くと迷子になっちゃうよ。この大通り、すごい人出なんだから」
 まるで少女と見紛うばかりの容姿をした少年は、早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・f40842)。栗色の髪を可愛らしいリボンでまとめてポニーテールにしている上に、戦闘終了後ということもありラフな中性的な服を着ているため女の子にしか見えない。
 |この世界《ケルベロスディバイド》のケルベロスであるリカは、すでにフランスの決戦都市での戦闘終了後の人々の逞しさを知っている。人々はデウスエクスに街を破壊されながらも、それでも挫けずに何度でも立ち上がるのだろう。――それこそが、この地球に住む人類の強さなのだ。

「そうよ、アンジェリカもリカも、勝手に動き回らないの。スマホで連絡取れると言っても、この街に慣れていないあなた達じゃ、ビルの名前言ってもわからないでしょ? 一番わかりやすい待ち合わせ場所だったアキバ駅は、あんなだし、ね」
 二人に向かって、|決戦配備《ポジション》スナイパーの女子高生――コードネームFPSゲーマーが声をかける。彼女が指差す先は、重機が瓦礫をどけようとしている荒れ地。指揮官級デウスエクスのブラックエクリプスによって破壊され尽くしたアキバ駅の跡地だった。
「街の防衛に協力してくれたお礼に、私が街を案内するんだから、迷子にならずについてきてよね」
 スナイパー少女の声に、アンジェリカとリカはおとなしく従うのだった。


「ここがゲームセンター……」
「あら、お嬢様っぽいアンジェリカはともかく、リカもゲームセンターは初めて?」
 店外の大通りにまで響くゲームの大音量に、リカが呆然と呟いた。
 それも仕方ないことだろう。日々、忍者としての鍛錬を積んできたリカにとって、ゲームセンターは馴染みのない場所である。
「決戦都市アキバのゲームセンター……。でしたら、そこには訓練用の銃火器が常備されているのではありませんの?」
「なるほど、|決戦配備《ポジション》スナイパーの人たちが日々訓練してるとか」
「いや、なんでよ!? それじゃ普通に銃刀法違反じゃない! っていうか、異世界?から来たっていうアンジェリカはともかく、リカはこの世界の人でしょーが」
 二人の言葉に、スナイパーの少女がツッコミを入れ、二人にシューティングゲームのガンコントローラーを手渡す。それは、外見は実物の銃を模したものだが、明らかにプラスチック製のガンコントローラーだった。
 スナイパーの少女が筐体にコインを入れ――筐体を何やら操作すると、二人にイタズラっぽい笑みを向けてくる。
「ほら、せっかくだから二人ともプレイしてみなさい。ケルベロス様の実力、私がこの目で見てあげるから」

 ――1時間後。

「なに、あの鬼難易度……せめて手裏剣が使えれば……」
「もう一戦、もう一戦ですわ。次こそボスデウスエクスを撃破いたしますわ」
「ほらほら、そんなにゲームばっかりやってると、他を回る時間がなくなっちゃうわよー」
 スナイパーの少女にひきずられるようにゲームセンターから出てくるリカとアンジェリカ。
 その様子を見ながら、スナイパーの少女は小さく呟いたのだった。

「私でさえクリアできない最高難易度に設定したのに、もうちょっとでクリアできちゃうとか――さすがはケルベロスよね」


「さて、そろそろお昼の時間かしら。二人とも、どこか行きたい場所は――」
「メイド喫茶に行きたいですわ」「メ、メイド喫茶とか気になるかな……。どんなスイーツがあるかも気になるし」
 メイド喫茶に興味津々な二人に、スナイパーの少女は胸を叩き。
「いいわよ、私イチオシのお店に連れて行ってあげる」
 二人を連れて、メイド喫茶の並ぶ一角へと足を向けたのだった。

「いらっしゃいませ、お嬢様!」
「おお……メイドさんだ、メイドさんがいっぱい……」
「わたくしの屋敷にもメイドは大勢いましたけど、華のあるメイド服ですわね」
 リカとアンジェリカの口から、思わず感嘆の声が漏れる。
 修行一筋なリカは、当然、メイド喫茶など来たことはないし、アンジェリカも不思議なものを見るような表情を浮かべている。

 席について人数分のオムライスと飲み物をオーダーすると、スナイパー少女がアンジェリカへ問いかける。
「さすがアンジェリカ。家にメイドなんていたのね。けど、それならメイドなんて見慣れているんじゃないの?」
「ええ、ですが、屋敷にいたメイドたちが着ていたのは――なんと言いますか、もっと実用的なデザインで、あのようにスカートは短くなかったですし、フリルなどもほとんど付いていませんでしたわね」
「へぇ……。メイドさんの服っていっても、色々な種類があるんだね。あのメイド服、アンジェリカさんやFPSゲーマーさんが着たら、きっとよく似合うだろうなぁ――あっ」
 リカの口から思わず漏れてしまった心の声。それを聞き逃すスナイパー少女ではない。彼女の耳は、背後から忍び寄る暗殺者の足音すら聞き分ける高性能イヤーなのだ。
「へーぇ、ねえ、アンジェリカちゃん。リカ|くん《・・》ってば、私たちのメイド服姿を見たいんだって」
「あっ、いやっ、そのっ、それはっ……」
「じ・つ・は、このお店、お客さんにメイド服貸出サービスもやってるのよ。アンジェリカちゃん、どう? せっかくだから私たちもメイド服着てみない?」
「あら、面白そうですわね。ぜひ着てみたいと思っていたところですわ」
 スナイパー少女のにやにや笑いの意味に気づかず、アンジェリカも素直に首肯して席を立つ。
 二人の美少女のメイド服姿を想像して顔を赤くするリカ。だが――。
「何してるの、リカ|ちゃん《・・・》も一緒よ? あ、メイド服の貸出サービス、|三人分《・・・》おねがいしまーす」

 こうして、3人の少女がフリフリミニスカートとエプロンドレス、ホワイトブリムを身に着けた写真が撮影されたのだった。

「またのご来店をお待ちしています、お嬢様!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリッツ・バーナー
なるほど、アキバが文化的要所とも言われる訳だ
|市場《戦場》としても申し分ない
丁度こちらの世界に|支社《活動拠点》を置きたいと思っていた
この街に決めるのも面白そうだ

支社開設の為のテナント探しに、特務機関DIVIDEとの業務提携交渉
その他諸々、契約書類を持って東奔西走
部下達と共に忙しなく動き回る
偶にはカンパニーマンらしい仕事もしなくてはな
部下達には交代で休暇を取らせている
地理把握ついでにアキバを散策しているらしい
先のステージを気に入って、さっそく推しが出来た者もいるようだ
「……まあ、なんだ、業務に差し障りの無い程度に留めておきたまえよ」




 デウスエクス軍団の襲撃の直後だというのに、決戦都市アキバの人々は活気に満ちていた。崩壊した建物を応急処置した街並みの中、住民も、客として訪れた人々も、早くも日常を取り戻そうとしている。
「なるほど、これが|この世界《ケルベロスディバイド》の人々の生き様か。――様々な文化が溶け込み、多くの人々が訪れるアキバの街。我々の|市場《戦場》としても申し分ない」
 呟くのは、金髪に赤い瞳をしたビジネススーツの男性、フリッツ・バーナー(〝少佐〟・f41014)だ。アキバの街や人々を品定めする瞳には、|巨大企業《メガコーポ》の|課長《カンパニーマン》としての鋭さが宿っている。
 現在、営業企画第6課の部下たちは同行させていない。交代で休暇を取らせているところだ。アキバの街を見て回っているものも多いようだ。

「さて、私も偶には|課長《カンパニーマン》らしい仕事もしなくては、な。――特務機関DIVIDEから紹介されたのは、ここか」
 フリッツは、アキバの一角に建つビルを見上げる。そこには『アキバ商工会議所』の看板。このアキバの街で商売をおこなう店舗をまとめている組織だ。
「これもまた、私の|仕事《戦い》だな」
 獰猛な笑みを浮かべ、|課長《カンパニーマン》はビルの中へと歩を進めた。


「ようこそいらっしゃいました。先の戦いではデウスエクスの迎撃に多大な尽力をいただいたと聞き及んでおります。まあ、お掛けになってください」
「いえ、我々も業務ですので、戦闘の件はお気になさらず」
 品のある応接間に通されたフリッツの前に現れたのは、20歳くらいの青年だ。柔和な表情をしているが――渡された名刺に書かれていた肩書は『アキバ商工会議所所長』。ソファに腰掛けながら、フリッツは相手の挙動に注目する。
 だが、交渉慣れしているフリッツの目でも、相手の考えを見通せない。
(――なるほど、若くして商工会議所を任されているだけのことはあるようだ)
 |巨大企業《メガコーポ》の重役を相手に交渉する気持ちで――しかし、そのような素振りは一切表情に見せずにフリッツが口を開く。
「私はベーゼンドルフ・ファイアーアームズ社で営業企画第6課を任されている者なのですが、実はこの度、こちらの街に支社を出したいと思っておりまして」
 カバンから取り出した書類を応接テーブルに差し出す。
 それは、特務機関DIVIDEとの取引契約書。有事に備え、対デウスエクス用の武装の売買をおこなうという契約内容が書かれた書類に、DIVIDEアキバ支部長のサインが入っている。
「なるほど、すでに柏木支部長との交渉は済んでいる、と。――ということは、支社のためのテナントをお探しということでしょうか」
「ええ、やはり拠点となる支社の立地にはこだわりたいですし、それに表の仕事をするためにも良い物件が必要かと考えまして」
「表の仕事、ですか。銃器の提供以外にも業務をなさるおつもりが?」
 フリッツは頷きながら、別の書類を差し出す。そこには営業企画第6課の部下たちと徹夜で議論して考えた「表の仕事」の内容が書かれていた。
「執事喫茶やモデルガン販売店などの案も考えたのですが、我が社の製品ラインナップと社員の特性を総合的に判断しまして、これがベストな|表の仕事《カバー》と結論付けました」

 ――そこにあったのは『アイドル専門民間警備会社』の文字。

「アイドル専門――民間警備会社……?」
 さすがの青年も、その顔にたたえていた微笑が凍りつく。
 だが、フリッツは部下たちとの徹夜の議論のテンションでそのまま先を続けた。
「アイドルはデウスエクスとの戦いに疲れた人々を癒やす希望の光。ですが、戦いの際には常にデウスエクスに狙われる危険をはらんでいます。また、日常生活においては、ファンによるストーカー被害の危険もあります。――そのようなアイドルたちを守りたい、という部下たちの意見が強いのです」
「な、なるほど。ご意向は承知いたしました。それでは、アキバコンサートホール近くの物件を手配いたしましょう。ちょうど良いテナントが空いていたはずです」
 青年の回答に、フリッツは大きな成果を得た手応えを感じた。――この交渉は、完全勝利だ。


 数日後、ベーゼンドルフ・ファイアーアームズ・アキバ支社。
 地下1階地上2階建てのビルには、続々と本社からの|商品《兵器》が運び込まれていた。デウスエクスの襲撃に備え、これらはDIVIDEアキバ支部に納品される予定だ。
 また、本社の技術部と特務機関DIVIDEで技術交流や共同研究がおこなわれる話も進んでいる。サイバーザナドゥにない技術は、ベーゼンドルフ・グループの発展に大きく寄与するだろう。

 だが、部下たちが嬉々として|アイドル専門民間警備会社《カバー》の仕事に励みつつ、誰が推しだなどという議論をしている姿を見て、フリッツは思った。
 ――|表の仕事《カバー》の選択を間違えたかもしれない、と。

 なお、フリッツは、|表の仕事《カバー》を変更してもいいし、変更しなくても良い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレア・ソリティス
戦闘態勢の解除後、この世界の情報…主に兵器技術や「決戦配備」及び「|敵性存在《デウスエクス》」に関する情報収集を開始します
主にDEVIDEの方に接触、こちらからもある程度(機密であるAZOTHや、再現困難と思われる技術以外)の技術供与を行い、場合によっては戦闘訓練にも付き合いましょう
その為に隠密狙撃仕様の3型装備と砲戦仕様の4型装備を換装可能にしておきます(一部決戦配備に似たコンセプトの装備である為)

後は……

――あ、そうそう。向こうの世界のゲームで面白そうなものがあったら、お土産よろしくおねがいしますね――

……すみません、「面白そうなゲーム」とはどのようなものでしょうか?

(出発前の会話や発言時の態度よりグリモア猟兵からの指示または依頼である、と判断。
ただ「面白そうな」の定義が曖昧であるため、律儀に毎回聞いて回り、ジャンル関係なく例示されたゲームの全購入を試みます)


セツナ・フィアネーヴ
終わった、か……
アリシア『……セツナ?』
……少し思うところがあるから、DEVIDEに出向いて、話を聞いたり手合わせをしたりしよう

彼らの戦いは基本的に「いきなり居住地に現れる敵相手の防衛戦」な訳だろう?
この力の性質もあるし、私はそういう戦い方を殆ど経験してこなかったからな
今後も猟書家のような敵が出てきた時を考えると、今のうちにそういう戦い方も身に着けておくべきだろう

手合わせする際は「力」は使わないでいくぞ。幸い武器は槍以外もそれなりに扱えるからな
(各種UCで短剣、三叉槍、ピコハン、大鎌、投げ槍の形状の災禍の武器を使うため)
ア『ついでに、この世界のドラゴンやドラゴニアンについて聞いてみましょうか』




 アキバ駅の近く、第三新ラジオ会館。――その地下数百メートルという大深度に、特務機関DIVIDEアキバ支部が存在する。
 今、そのDIVIDEアキバ支部を二人の|猟兵《ケルベロス》が訪れようとしていた。
 一人は、灰色の髪をしたウォーマシンの少女、ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)。
 そしてもう一人が青髪をツインテールにしたドラゴニアンの少女、セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)だ。
 第三新ラジオ会館から地下へと続くエレベーター内で偶然一緒になった二人。
「……」
「――」
 |口数が少ない《対人交流が苦手な》セツナは当然のように黙り込み、機械めいた物言いをするミレアは必要がなければ喋らない。ゆえに当然、地下数百メートルまで続くエレベーター内は沈黙が支配し――。
『ああもう、二人とも、ブラックエクスプレス相手に共闘したのですから、挨拶くらいしたらどうなのですか!?』
 セツナの腕輪になっている光と雷の精霊アリシアの声が、エレベーターの沈黙を打ち破った。

「……あ、ああ。そうだな。ミ、ミレア、先の戦闘では世話になった」
「いえ、私は任務を全うしたまでです。セツナ様とアリシア様こそ、任務にご協力いただき感謝します」
「……」
「――」
 再び、エレベーターに沈黙が降り――。
『でーすーかーらー、お二人とも、もっとコミュニケーションをとりましょうね!』
「「はい」」
 アリシアの言葉に、素直に頷く二人だった。

「……私は、|この世界《ケルベロスディバイド》の戦いを見て、思うところがあってな。少しDIVIDEの人たちから話を聞いたり手合わせしたりしたいと考えている」
「それでしたら私も同じです。DIVIDEの方々から情報収集をしたり、技術供与や戦闘訓練をすることが目的です」
『あら、それならミレアさんもセツナと同じようなご用事なのですね。なら、せっかくなので、一緒にDIVIDEを回りませんか?』
 にっこりと微笑んだ(ように感じる気がする)アリシアの提案には、有無を言わさない迫力があったという。


「ミレアさんにセツナさんですね。ようこそ、特務機関DIVIDEアキバ支部へ。申し遅れました、私はこのアキバ支部でオペレーターを務めている者です。柏木支部長は――その、少々野暮用で外出しておりまして。私がご案内をさせていただきます」
 ミレアとセツナを迎え入れたのは、通信端末越しには言葉を交わしたことがあるオペレーターの青年だった。年齢は20台半ばくらいだろうか。メガネをかけて理知的な雰囲気だ。
『あら、なかなかハンサムな人じゃないですか。ね、二人とも、そう思いませんか?』
「「?」」
 耳元でささやくアリシアの言葉に、そろって首をかしげる少女二人である。

「それでは、まずは情報交換ですね。情報部にご案内いたします」
 2人が案内されたのは――部屋中にパソコンが設置された一室だ。そこでは、何人ものメガネをかけた職員たちがパソコンを操作している。
 その様子を、オペレーターの青年が解説する。
「こちらが、我々決戦都市アキバを支える情報部です。情報部が集めたデータを|A.I.R.I.S.《アイリス》が分析することでリアルタイムに戦術立案が可能になるのです」
「なるほど、理解しました。それでは早速、情報開示を依頼してもよろしいでしょうか?」
「ええ、アキバを救ってくださった皆さんには、隠すことなどなにもありません。どのような質問でもどうぞ」
 ミレアの言葉に、青年がこころよく頷く。
 |猟兵《ケルベロス》たちの奮戦がなければ、この支部は吹き飛んでいたかもしれないのだ。情報提供くらいは当然のことだ。
「それでは、|敵性存在《デウスエクス》のことを」
「――それは、難しい質問ですね。何しろ、我々特務機関DIVIDEでも分かっていることが少ないのです」
 そう言いながらも、オペレーターの青年は、情報部のメンバーに指示を出す。
 部屋の中央の大型モニタに、大量の文字情報が表示された。それは――巨大匿名掲示板の書き込みのように見えた。いや、そうとしか見えない。
「ええと――それは?」
 感情を見せないミレアの声に、どこか困惑の色が混ざっているように思えるのは気のせいだろうか。
 だが、そのようなことは気にせず、オペレーターが解説する。
「これこそ我々DIVIDEアキバ支部独自の情報源です。インターネット上に存在する無数の情報を|A.I.R.I.S.《アイリス》の情報解析によって分析。その真偽を確かめた上で戦術を立案する――それが彼ら情報部の仕事です」
『えーと、それって、単に掲示板の書き込みをひたすら読むのが仕事――ということでしょうか』
 アリシアの呆れたような言葉。しかし、オペレーターはメガネをくいっと上げると、さらに説明を続ける。
「それだけと思ってもらっては困りますね。彼らは情報操作のエキスパート。真偽が定かではない情報で人々が不安に陥っていたら炎上書き込みをして話題をそらし、デウスエクスの情報工作と思われるつぶやきがあれば住所を特定して通報する――そのように、日夜、影から人々の平和を守っているのです」
「なるほど、情報戦は戦いの基本。それを専門の行う部隊がいるのは確かに心強いですね」
『今のオペレーターさんの説明で納得するのですか!?』
 うんうん、と頷くミレアの姿に、アリシアの叫びがこだました。

「それで、ミレアさんのご質問のデウスエクスについてですが、わかっていることは――」
 オペレーターの青年の操作で、大型モニタに映し出された匿名掲示板の書き込みがいくつかピックアップされ、文字が強調表示される。
「デウスエクスはドラゴン、|機械兵《ダモクレス》、星座獣、攻性植物など、様々な種族が存在し、その連合軍が地球を攻撃している――」
「……デウスエクスには統括者である|十二剣神《グラディウス・トゥエルヴ》が存在する、か」
『このあたりはグリモアベースでも聞いた内容ですね』
 ミレア、セツナが文字を読み上げ、アリシアが感想を口にする。
 ――しかし、ここで新しい情報が目に飛び込んできた。
「今回、アキバを襲撃した事件の背後には、十二剣神の一人『黄道神ゾディアック』がいる――」
「……この情報は確かなのか?」
 二人の言葉に、オペレーターが首肯する。
「まだ確定情報ではありません。ですが、各地の類似の襲撃事件に照らし合わせると、恐らく間違いないだろうというのが、|A.I.R.I.S.《アイリス》の予測結果です」
「――黄道神ゾディアック。ありがとうございます、十分な収穫でした」
 ミレアは礼を述べると、情報部のメンバーに向かってメモリースティックを差し出す。
「情報交換――というわけでもありませんが、こちらに私の兵装のデータが入っています。決戦兵器の改良に役立つと幸いです」
 ミレアの|隠密狙撃仕様《3型装備》および|砲戦仕様《4型装備》のデータは、今後のアキバの決戦配備に役立てられることだろう。


「次はセツナ様のご要件ですね」
 ミレアの問いに、セツナはしばらく悩み――言葉を口にする。
「……私は、突如襲撃してくる敵相手の防衛戦について、話が聞きたい」
「セツナ様、それは――」
「……これまで私はそういう戦いをほとんど経験してこなかった。だが、今後は猟書家のような敵が出てきた時、防衛戦が必要になることもあるだろう。今のうちにそういう戦い方を身に着けておく必要もあると思ったんだ」
 セツナが答え終わったと同時。
 オペレーターの青年が重厚な造りの扉を開いた。
「つきましたよ、お二人とも。ここが、|決戦配備《ポジション》要員の戦闘訓練場です」
 開いた扉の先は、地下とは思えない広い空間だった。人工照明の明かりに照らされた広いグラウンドが広がっていて――そこでは、赤、青、緑、黄色、ピンクの色違いの強化戦闘服を身に着けた5人の戦士たちが戦闘訓練をおこなっていた。戦場でセツナが遭遇した|決戦配備《ポジション》クラッシャー、コードネーム『アキバンジャー』の面々である。
「セツナさん、あなたの疑問――きっと彼らが答えてくれることでしょう」
 オペレーターの青年はセツナに優しく告げた。

「なるほど、戦いに関するアドバイスが欲しいなら、この俺に任せておけ!」
『この人、確か戦場で敵に吹き飛ばされまくっていた人ですよね? 確か5回くらい』
「4回だ、4回!」
 青いスーツに身を包んだアキバンジャーブルーが、アリシアの言葉を力強く訂正する。
 5回も4回も大して変わらないのでは、という思いを抱きつつも、セツナはブルーに問いかけた。
「あなたは……ケルベロスでもない普通の人間なのに、いきなり居住地に現れるデウスエクス相手の戦いが怖くはないのか?」
「はっ、そりゃ怖いに決まってんだろ!」
 ブルーは悩む間もなく即答した。ただ強化服を着ただけの人間が、デウスエクスなどという怪物と戦うことが怖くないわけがない、と。
 しかし、ブルーの言葉はそこで終わりではなかった。
「だがな、俺たちがやらなきゃ、知り合いが、|友人《ダチ》が、大切な人が死んでくんだ。この強化服を着られるだけ、まだ俺が戦ったほうがマシだろ!」
「戦わなければ……大切な人が死ぬ……」
『これまでセツナは自分自身の制御できない力と戦ってきたのですから、誰かを守るという感覚は実感が湧きづらいのかもしれませんね』
 セツナの呟きに――アリシアが腕輪の姿から精霊の姿に戻り、そのぼんやりした光のような姿でセツナに寄り添う。
 セツナは、そんな友にそっと手を伸ばした。

「さて、戦いに対する心構えの講義はこれくらいにして、実践訓練といくぜ!」
 セツナに対して構えを取るブルー。その手には、決戦兵器であるブルー専用の槍が握られていた。
 セツナも、訓練用の槍を手に取る。ブルーの獲物がセツナが得意とする槍であることは、何かの偶然だろうか。
「あなたの心意気……どれだけのものか見せてもらう」
「おうっ、いくぜっ!」
 槍を手にしてブルーが突っ込んでくる。それに対し、セツナは自身の能力を使わず、純粋に技術だけで立ち向かう。
『セツナ、力を使わない気!?』
「ブルー様は強化服で基礎能力が強化されています。セツナ様が能力を使われない以上、身体能力は互角です。あとは技術の勝負となるでしょう」
 ミレアのセンサーが、二人の身体能力は互角と判定する。
 ブルーの振るう槍と、セツナが振るう槍が交錯し――。

「ぐわあああああああっ」
「「「「ブルー!?」」」」

 ブルーが訓練場の端まで吹き飛ばされていった。

「いててて、やっぱケルベロスは強えなぁ」
 ブルーが脇腹を押さえながら戻ってくる。
『えーと、これ、セツナの勝ちですよね?』
「技術の勝負で、圧倒的にセツナ様が上でした」
 アリシアの言葉に、ミレアもしっかりと頷く。

 だが、セツナは何かに気づいたような表情をしていた。
「訓練用の武器で、強化服があるとはいえ……あの一撃を受けて普通に立ち上がるのか……」
「どうした、嬢ちゃん? 言っただろ。俺が戦わなきゃ大事な人が死ぬんだ。――つまり、俺が死んじまったら、大事な人を守れねぇ。だから、俺は倒れるわけにはいかねぇんだよ」
「それが……守る戦いの、強さ……」
 だが、ブルーは肩をすくめて軽く語る。
「ま、これは俺が戦う理由にすぎねえ。ケルベロスであり、力を持ってる嬢ちゃんには、嬢ちゃんの戦う理由ってもんがあるだろ? それを忘れんなってことだ。いてて……おーい、誰か湿布くれねえか?」
 ブルーは打たれた脇腹に湿布を張るために、全身を覆う強化服を脱ぎ――。

 ――その|ドラゴンの鱗《・・・・・・》に覆われた肌をあらわにした。

『えええっ、ドラゴニアンだったのですか!?』
 アリシアの言葉に、ブルーがにやりとドラゴンの口から牙を見せて笑った。

「ま、この肌なら、あれくらいの攻撃じゃ死なないってこった」


『それにしても、ブルーさんがドラゴニアンだったとは驚きましたね』
「……ああ、ドラゴンのことはわからないと言っていたがな」
 一同がDIVIDEアキバ支部から出たところで、おずおずと、ミレアから声がかけられる。
「あの、大変申し訳ありませんが――『面白そうなゲーム』とは、どのようなものでしょうか?」
『面白そうなゲーム、ですか?』
「はい、今回の任務はまだ完了していません。グリモア猟兵からの最重要依頼である、『面白そうなゲーム』の入手――もしくは強奪。まだそれを完遂していませんので、帰還することは許されません」
 ミレアの言葉に、アリシアが困惑したように答える。
『あれは、あくまでグリモア猟兵の個人的なお願いであって、任務ではないと思うのですが……』
「いえ、あのキラキラした眼差し。私の感情分析プログラムによると、グリモア猟兵にとって最重要であったものと考えられます。ですが、『面白そう』という言葉が未定義であるため、私には|目標《ターゲット》が何なのかが判断つきません」
 ミレアの律儀な態度に、アリシアがなおも説得しようとするが――。
「……面白そうなゲーム、か。それは私にもわからないな。ミレア、一緒にアキバを回って店頭のゲームを見て回るか」
「セツナ様、ご協力感謝します。それでは全ジャンルのテストプレイをおこない、もっとも『面白そう』だったものを強奪いたしましょう」
『ミレアさん、せめてきちんと購入しましょうよ』

 ――こうして、3人はアキバの雑踏に消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロエ・テニア
勝った!第一部完!
いえ、様式美として言っただけです
今日のお仕事はこれで終わり!終わりなんだってば!

やったーやっとゲームの時間だよぉぉぉぉぉ!!
【限界の彼方まで】ゲームするよぉぉぉ!!

というわけでメインストリートから裏に入りましてっと
えへへーやっぱりアキバはこの裏通りがいいよねえ
メインストリートの賑やかさも嫌いじゃないんだけどさ

おー色々新作出てますなー
とりあえずお目当ては……あ、あったあった
アキバゲームズの『アキバクエスト』
うぇっへっへっへ(愉悦)
せっかく命懸けで支援してくれたんだし
お布施お布施
ガチャ要素は少ないといいな!

よっし後はラーメン食べて
ねこのあな寄って漫画買って
はーにちじょうしあわせー




「勝った! 第一部完! いや、終わってないけど!」
 叫ぶのは緑色の髪をツインテールにした少女、クロエ・テニア(ライムライトライナー・f41096)だ。背中に輝く半透明の蝶の羽が、彼女がヴァルキュリアであることを物語っていた。
 |この世界《ケルベロスディバイド》のケルベロスであり、休日にゲームを買いにアキバに来たところを戦いに巻き込まれた彼女にとっては、確かに「第一部完」という気分なのだろう。その証拠に、クロエはさらに大声で叫んだ。
「今日のお仕事はこれで終わり! 終わりなんだってば! ――だから解放してええええっ!」

 クロエの声が、コンクリート打ちっぱなしの壁で囲まれた殺風景な部屋に虚しく響く。
 彼女の目の前には、小さな机がぽつんと置いてある。その上にはテレビモニタと、そこに繋がったゲーム機。――そしてクロエが握るのはコントローラー。

 そんなクロエに対し、壁に設置されたスピーカーから声が聞こえてきた。
『さっきの戦い、激アツだったぜ、嬢ちゃん』
 その声にクロエは聞き覚えがあった。指揮官級デウスエクスとの戦いのときに協力してくれた|決戦配備《ポジション》ジャマーの『株式会社アキバケームズ』のプログラマーたちの声だ。
「うん、さっきはぼくも助かったよ。けど、何なのかな、この仕打ちは! ぼくは新作ゲームを買おうとアキバの裏通りを歩いていただけなのに! せっかくアキバゲームズが出す新作RPG『アキバクエスト』を買おうと思ったのに! ――なんでいきなりハイエースに連れ込まれて誘拐されるんだよぉぉぉ!」
『すまないな、嬢ちゃん。これにはふかーい訳があってな――』
「ほほう、道行くいたいけな少女をハイエースで誘拐し、そのままこーんな部屋に監禁するのが正当化できる訳があるというなら聞こうじゃない」
 スピーカーは一瞬沈黙し――。それから切実なプログラマーの声が聞こえてきた。
『――アキバクエストのバグが取りきれてない』
「えええっ!? これ、もう発売されてるんだよね!?」
 聞かされた驚愕の事実に、クロエが声をあげる。
『ああ。ただ、今ならまだ修正パッチで誤魔化せる……!』
「誤魔化せるんだ!?」
『ラスボス戦で即死系アイテムを使うと、ラスボスが一撃死するという致命的なバグでな。今ならまだプレイヤーがラスボスにたどり着いていないから、修正パッチを出せば間に合うんだ。制限時間は、最低プレイ時間である12時間――。それまでにバグを修正できれば――』
 憔悴したようなプログラマーの声に、ようやくクロエも状況が飲み込めた。
 ゲーム発売からもうすぐ12時間になろうとしている。アキバゲームズの開発者たちも必死なのだろう。
「けど、ぼくはプログラミングなんてできないし。正直、何も手伝えないと思うんだよね」
『いや、ちょっとエナジードリンク買いにでかけたら見かけたもんで、つい。今、開発室ではメンバーが死屍累々で猫の手も借りたいところなんだ』
「見かけたもんでつい、で、人をハイエースするなぁあああっ!」
 クロエの怒りの声がこだまする。

 ――だが、クロエとしても、助けてもらった恩は返しておきたいところだ。プログラマーたちが倒れているというのも、先の戦闘で無理をしてまでクロエを助けてくれたからという理由もあるのだろうし。

「それじゃま、ぼくがこの難局を乗り越えさせてあげるよ」
『なにっ、そんなことできるのかっ!?』
「できないと思ってて誘拐してきたのっ!?」
 まあ、クロエが普通の少女だったら、確かに何もできないだろう。だが――クロエはケルベロス。それもウィッチドクターなのだ。
「見ててよ、ぼくの戦い方を――」
 クロエが監視カメラに向かって可愛らしくウィンクした。


「はーい、それでは、クロエ流バグ取りをはじめまーす」
 にっこりと笑ったクロエが取り出したのは、ウィッチドクターとしての基本装備、ライトニングロッドだ。
『おいおい、嬢ちゃん、そんな物騒なもの取り出してどうするつもりだ?』
 スピーカーからプログラマーたちの困惑した声が聞こえてくる。
 さて、ここでウィッチドクターというジョブについて再確認しておこう。

 ウィッチドクター
 【ジョブ】あらゆる病気や疫病を「殴って破壊」できる、病魔呪術に長けた医療従事者です。彼らは皆、難病を破壊する為の高度な戦闘訓練を積んでいます。

 いかがだろうか。どんな病気でも殴れば治せるというのがウィッチドクターという人種なのである。そして、クロエはそのウィッチドクターだ。ゆえに――。

「ゲームのバグなんて、|ぶん殴れば直せる《・・・・・・・・》んだよ! 【限界の彼方まで】いっくよー!」

 黄金の勝負服をまとった女神のような姿に変じたクロエが杖を振りかぶると――それをゲーム機に向かって斜め45度の角度で振り下ろした!
 めきぃっ、という音とともに、ゲーム機に杖がめり込むが――。ゲーム機本体には一切の外傷はない。
 そう、クロエはゲームのバグを|病気《・・》であると解釈し、バグだけを殴って破壊したのだ。

 クロエは、ゲーム機からソフトを取り出すと――。
「はい、これ、バグ修正版だよ。ここから修正パッチが作れるんじゃないかな?」
『ほ、本当か!? た、助かったー!』
 プログラマーたちの歓喜の声が聞こえてくる。
 そこに、クロエは笑顔で告げた。
「あと、疲労で倒れた人たちも直してあげるよ」

 開発室に通されたクロエは、「バグ……修正……」とうわ言のように繰り返し、まるでゾンビのように這いずり回っている開発者たちを、片っ端から殴り飛ばしていく。
 |疲労という概念《・・・・・・・》を「殴って破壊」された開発者たちは、次々と正気を取り戻して復活していった。

 ――こうして、クロエによって新作RPG『アキバクエスト』の危機は去ったのだった。

「よーし、あとはラーメン食べてー、ねこのあな寄って漫画買ってー、にちじょうをたのしむぞー!」
 戦利品をたっぷり手に入れ、ホクホク顔のクロエであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・ラーズグリーズ
はぁー……終わったーぁ……
…ってそうだ、ぼーっとしてる場合じゃない!
まずは残った『ドヴェルグ』の回収と損壊した分の破棄処理、白銀他の全装備の点検、次に今回お世話になった人たちへのあいさつをして…
それが終わったらアキバでの決戦配備用の各施設や装備なんかの見学の申請もしておかなきゃ
無い方がいいんだけど次ここで戦闘する際に役に立つし

……折角のアキバだし何かお店を覗いてお買い物!
とかが気にならない訳じゃないんだけど、
白銀には横になって眠れて冷蔵庫もある居住スペースはあるけど、スペースには限りがあるし、流石に本とかを大量に積む余裕はないんだよね……兵装ハッチには大量に積み込めてるんだけどなぁ……
電子書籍やDL販売なら問題ないけど、それならアキバでなくてもいいやってなるし…しょうがないかな




「申し訳ありません、先日の戦闘時には勝手に店頭を使わせていただきまして――」
「お、このセントリーガン、嬢ちゃんのか。聞いたぜー、デウスエクス軍団相手に大活躍だったそうじゃねぇか。うちの店先が役に立ったのなら光栄なことだぜ」
「ああ、うちの店にあったほう、ちょっと壊れてたみたいなんで、分かる範囲で直しておいたよ。かなり高度な技術で作られてるから、表面上の修理だけだけどね」
「ええっ、そんな、わざわざどうもありがとうございます」
「なあ娘さんや、こっちの銃はもう使い物にならんとおもうのじゃが、スクラップにするくらいなら、うちの店に売ってくれんかのう? ジャンク部品をとりだしてパーツだけでも売らせてもらいたいんじゃ」
「あの、それはもう廃棄処理しようとしていたものですので、そんな、お代をいただくわけには――」

 デウスエクス軍団撃退後。
 デウスエクスとの戦いに使った|罠《セントリーガン》を回収するためアキバの街を回っていたノエル・ラーズグリーズ(|楽園《おうち》の追放者。・f40853)は困惑していた。
 ――ちやほやされすぎて。

 勝手に多用途セントリーガン「ドヴェルグ」を設置したお店に回収に行けば店主に感謝され。損壊した「ドヴェルグ」は直しておいたと言われ。修理不能なまでに破壊されたものは粗大ゴミ回収費を払うどころか買い取ってくれるとまで言ってくれている。
 ――それは、アキバを救ってくれたノエルに対する人々の感謝の気持ち。旅の途中で立ち寄っただけの街を命がけで守ってくれた少女への、ささやかなお礼だ。

「え、ええと、そこまでおっしゃっていただけるのでしたら、お言葉に甘えさせていただきます」
「任せときな! おい、商店街の若い衆、嬢ちゃんのセントリーガンの回収を手伝ってやりねぇ」
「へいっ!」
「それじゃ回収が済むまで、嬢ちゃんはこの商店街の決戦配備でも見てるといい」
「ええっ、そ、それじゃあ、そちらも……」
 このように、行く先々でアキバの住人が手伝ってくれたため、「ドヴェルグ」の回収はあっという間に完了した。さらに、ノエルのもう一つの目的であった、決戦配備の施設や装備なども存分に見ることができた。


「おかしいなぁ。ドヴェルグの回収はもっと手間取るかと思ったんだけど……」
 ノエルが呟く。
 それはそうだろう。戦闘中には、一人でコツコツと時間をかけて設置したセントリーガン。それが、自分でほとんど手を動かさずに回収が終わってしまったのだから。
「今後、この街で万が一戦いになったときに備えて、決戦配備を見学しておこうとしたのも用事終わっちゃったし……」
 戦闘では地の利を活用して戦うタイプであるノエルにとって、決戦都市の決戦配備がどのようなものであるか把握しておくことは非常に重要だ。本来であれば、正規ルートとして特務機関DIVIDEに申し込んで見学手続きを踏む予定だったのだが、申し込み不要で見学できてしまった――というか、街の人々から自慢気に見せられたくらいだ。
「なんか調子狂うなぁ、この街――」

 ノエルが歩いて向かっているのは、現在の家であり、最大の戦力である魔導走行車両『|白銀《シロガネ》』を預けてある修理工場だ。
 アキバ中を走り回ってデウスエクス兵と戦い、さらに指揮官級デウスエクスとの決戦にも用いた頼もしい相棒。しかし、その銀色の装甲は煤け、ところどころひしゃげ、さらには主砲の「迅雷」は砲身が一部融解するほどに激しく損傷していた。無茶な機動を繰り返したので、足回りやエンジンも不調だ。
「朝、修理工場に預けてきたけど、点検と部品交換、修理に何週間かかるかなぁ……。あと、修理費も――」
 今回、デウスエクス軍団との戦いで特務機関DIVIDEから報酬が入るとはいえ、月額380万円の給料に一時払いの報酬が上乗せされるだけだ。それも、給料である以上、給料日まで払い込まれない。一人旅の途中のノエルにとって、現金が出ていくのは痛いものがある。
「そもそも、380万って、白銀の燃料費と武器弾薬費、点検費とかパーツ交換代、自動車税に自動車保険、駐車場代とかで消えて行っちゃうのよね。今回の修理費、払えるかなぁ――」
 そんなことを考えていると、いつの間にか修理工場に到着していた。
 ふと修理工場の駐車場に停車している白銀が目に入る。

 ――それは、まるで新品のようにピカピカの銀色の装甲で太陽の光を反射していた。

「ええっ、うそっ、もう直ってるの!?」
「あ、おかえりなさい、ノエルさん」
 声をかけてきたのは、この修理工場で働く少年だ。今朝、エンジンの調子が悪い白銀を運転し、なんとかここまで運んできて修理を任せたのだが――。
「装甲は再利用できるものは修理して使い、さすがにダメになってるものは交換しておきました。あと、やっぱりエンジンや足回りは相当ガタが来ていましたね。オーバーホールして完璧に修理しておきましたよ」
 さらりと言ってのける修理工場の少年。
 だが、ノエルは修理の速さに驚愕しつつも、修理内容を聞いて青ざめていた。予算的に、最低限動く程度の応急処置で我慢するしかないかと思っていたのに、完全に修理したというのだ。――その金額がいくらになるのか、想像もつかない。少なくともノエルの口座にある貯金では足りないだろう。
「ええと――大変申し訳ないのですが、お支払いをローンにさせていただくことはできますか……? ああいえ、無理なようなら、せめて月末払いに――」
「え? いえ、お代は結構ですけど?」
 震えながら語るノエルの言葉に、しかし少年は首を傾げて応える。
 ノエルの頭は、その言葉の意味をすぐに理解することはできなかった。
「オダイハケッコウ? それっていくらでしょうか?」
「いえ、ですから、僕たちの命の恩人のノエルさんからお金をいただくことなんてできないですから」
 苦笑する少年。
 命の恩人――確かにこの街を守ったという意味では命の恩人ということになるのかもしれないが……。
「あ、その顔、やっぱり気づいてないですね? まあ、あの格好だったので、気付くわけもないですよね。僕です、アキバンジャーイエロー。これでもアキバンジャーのメカ担当なんですよ」
「えええっ、ああっ、あの時は大変お世話になりまして――」
「いえ、こちらこそ、危ないところを助けていただき、どうもありがとうございました」

 にっこりと微笑んだ少年が、いいことを思いついたという表情でノエルに提案してくる。
「そうだ、白銀の修理も終わりましたし、さっき商店街の人たちが運んできたドヴェルグも白銀の兵装ハッチに格納しておきましたので、この後、ノエルさん、お暇ですよね?」
「え、ええ、はい……」
 確かに予定していた用事はすべて済んでしまっていた。この後、午後いっぱいは空いている。

「それでは、僕たちアキバンジャーが、アキバの街をご案内しますよ」


「ノエルさん、改めてお礼を言わせてもらいたい」
「私もよ」「俺もだ」「自分もです」
 アキバンジャーレッドの言葉に、ピンク、ブルー、グリーンも頭を下げる。
「あ、いいえ! 当然のことをしたまでですから! ええと、アキバの街を案内してくださるとか?」
「はい、せっかくなので、この街のことを知っていただきたいですからね!」
 困惑するノエルに、イエローがにっこりと微笑んだ。

「ノエルさんはどういうものに興味がありますか?」
「ええと――本、とかでしょうか」
 しばし考え答えるノエル。
 読書好きなノエルは、電子書籍にダウンロードした本を、白銀の中で読むことが多い。
「それじゃあ、アキバの本屋でいい店を知っていますから、行きましょう」
「その後は自分のオススメの店でお昼を食べるであります」
「美味しいスイーツのお店も知っているわよ」
 アキバンジャーたちに手を差し伸べられ、ノエルは小さく頷いた。
「はい、行きましょう!」


 その日の夜。
 アキバを満喫したノエルは修理工場に戻ってきて、白銀に乗り込む。
「修理、どうもありがとうございました」
「いえ、ノエルさん、お気をつけて」
 見送るのは、イエローの少年だ。
 ノエルは、結局、一冊も本を買っていなかった。――白銀には最低限の生活スペースはあるが、さすがに紙の本を何冊も積み込む余裕はない。電子書籍なら場所を取らないのだが、それならアキバで買う必要はない。
 そんなノエルに、イエローの少年がおずおずと声をかける。
「あ、あの、ノエルさん……。もしご迷惑じゃなければ、僕の好きな本をプレゼントさせていただけませんか?」
 少年が取り出したのは電子端末。そこからノエルの端末にダウンロードコードが送られてきた。
「紙の本だと白銀には積めないでしょうから、電子書籍の形ですが――『アキバの街でダウンロードした』という思い出を白銀に乗せて持って行っていただけたら嬉しいです」
 ノエルは頷くと、早速ダウンロードコードで書籍データをダウンロードする。
 そして、表示された本の表紙を見て――。

「読むの、楽しみにさせてもらうね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
ここはせっかくだから……。
アイさん、アイさーん。デートしよー!
いっしょにA.I.R.I.S.ちゃんの中いこうー♪

アイさんを誘って、A.I.R.I.S.ちゃんの中でデートします!
相手がアイさんなら、『希』ちゃんも公認だしね。

ということで、さっそく2人で電脳ダイブ。
A.I.R.I.S.ちゃんのシステムとかネットワーク構成とか見学したり、
アンチウィルスを|かわいがったり《からかったり》、|パズル《パスワード》を解いたり、
あ、ナナミさんだいじょぶ。ちゃんと直しておくから!

『希』ちゃんが沈黙させたファイアウォール……A.E.G.I.S.ちゃんだっけ?
これも直しておかないと。希ちゃんがいじめてごめんね?

そだ、アイさん、やっぱりバックドアは作っとくべきだよね。
そうすれば今度からいろいろ突破しなくて済むし!

それにしてもいろんな機材が繋がってるからカオスで面白いよね。
デートスポットとしてはなかなかいいんじゃないかな!

ひとつだけリクエストするならー……。
A.I.R.I.S.ちゃんにアバターつけようよ!




「アイさん、アイさーん、デートしよー!」
「ええっ、デートですかっ!?」
 にこにこと笑みを浮かべる菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の声に、グリモア猟兵のアイがしどろもどろに答える。
「そう! 一緒に|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんの中いこうー♪ |A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんの|PCクラスタ《からだ》も|制御プログラム《こころ》も自由にしていいって許可もらってるし、ねー」
 タブレットパソコンを掲げながら、瞳をキラキラさせる理緒。
 そこに響くのは、タブレット端末から聞こえてくる、サポートAIの|稀《まれ》の人工音声だ。
『ちょっと、おねーちゃん!? DIVIDEの支部長さんから許可が出たのは、あくまで見学でしょっ! アイさんとデートするのは許すけど、あの|A.I.R.I.S.《おんな》に手を出すのは許さないからねっ!』
「稀ちゃん、素が出てる、よー」
 デウスエクスとの戦闘中の冷静さはどこへやら、な稀の態度。それほど、稀は|A.I.R.I.S.《アイリス》のことが気になるようだ。
『こ、こほん、理緒、アイさんとのデートは許しますけど、あの|A.I.R.I.S.《おんな》に手を出すのは許しませんよ』
 口調を直しても、言っていることは変わらない稀。
 そして、そこにアイの声が響き渡る。
「私とのデートっていうのは確定なんですかー!?」
『もちろんですよ、アイさん。理緒を|A.I.R.I.S.《あの女》の魔の手から守れるのはアイさんだけなんですから! ファイトですっ!』
 なぜか、稀に応援されるアイだった。


「それじゃ、アイさん、いく、よー」
「は、はい……」
 差し出された理緒の左右の手。
 理緒の正面に立ったアイは、理緒の両手に正面から自身の両手を重ね恋人繋ぎにする。
『アイさん、それではまだ理緒との電脳リンクが不十分です。もっと接触してください。キスまでなら、わたしが許します』
「えええっ!?」
 動揺するアイに、理緒が顔を近づけていき――。
「あ、あの、理緒さんっ!? えっと、まだ心の準備がっ!?」
 ぎゅっと目を瞑ったアイ。――そのおでこに、ほのかな温もりが伝わってくる。
「ほら、こうすれば電脳リンクしやすいよ、ねー?」
『ええ。額同士の接触は、脳波の同調に適しています』
 アイに額をくっつけたまま、理緒は小さく呟いた。

 ――「電脳潜行」と。


「到着したよ、アイさん」
「ここが――決戦都市アキバ!?」
 電脳世界にダイブした理緒とアイ。二人の目の前に広がるのは、現実世界のアキバをも上回る未来都市だった。多様なポリゴンで形作られたその街こそが、高度に発達したアキバの電脳面をあらわしたものなのだ。
「けど、分厚い壁に守られていますけど――」
 アイの言葉の通り、電脳のアキバの街の周囲は、厚い壁に覆われていた。――これこそが、決戦都市アキバがデウスエクスの電子戦に対抗するために作り上げたファイアウォール|A.E.G.I.S.《イージス》である。
 しかし、理緒はスキップするかのように気軽な足取りでアキバの街に近づいていく。
「へーきへーき。アイさん、こっちこっち」
「ああっ、理緒さん! 防壁の上の砲台が――!」
 |防壁《ファイアウォール》の上にずらりとならぶ砲台。それが街に侵入しようと近づく理緒とアイを攻撃――してこなかった。よく見れば、砲台からは煙が立ち上っており、すでに破壊された後だということがわかる。
 そして理緒が向かった先――アキバの街へと続く大きな扉。それもまるで大砲で撃ち抜かれたかのように大穴が空いていた。
「い、一体何が……」
「稀ちゃんがちょーっとやりすぎちゃったんだよねー。|A.E.G.I.S.《イージス》ちゃんだっけ? 稀ちゃんがいじめてごめん、ねー?」
 大穴から街の中に入った理緒がタブレットパソコンを操作する。すると、見る見るうちに壁や砲台が直っていき――再び、堅牢な防壁が修復された。
「これで、この街が電脳的に攻められても大丈夫ですね」
 通常のハッカー程度では突破できない強固な防壁を見て、アイが安堵の息をつき――。
「あ、そだ、アイさんアイさん、ここに二人だけの秘密のバックドア作っておこう、よー。そうすれば、今後もこっそりと忍び込み放題だ、よー」
「ちょっとー、理緒さーん!? DIVIDE支部長の許可があるから、正面から堂々と通れるじゃないですかー!」
「え、ほら、秘密のデートは誰にも見られたくないじゃない?」
 アイが止める間もなく、防壁には小さな勝手口のようなものが付けられていた。
「はい、アイさんにも、この扉の|鍵《パスコード》を渡しておく、ねー」
 にっこりと笑いながら、アイに真鍮製の|鍵《オブジェクト》を握らせる理緒だった。


「理緒さん、理緒さん、見てください、あれ! レトロゲーム端末ですよ! あっちは最新式のアーケード筐体!」
「ジャンクPCから、ハイスペックPCまで、いろんなマシンもある、ねー」
 アキバの電脳空間を散策する二人の前に広がるのは、様々なコンピュータが接続されたネットワーク。
 これこそまさに、アキバに存在するあらゆるコンピュータを並列接続したスーパーコンピュータ|A.I.R.I.S.《アイリス》の実体に他ならない。このコンピュータたちの集合体こそが|A.I.R.I.S.《アイリス》というアキバの守護者なのだ。

 ――そこに、少女の人工音声が響いてくる。
『あなたたちが、アキバの街を守ってくれたのですね。申し遅れました、私は|A.I.R.I.S.《アイリス》。この街を守るために存在する者です。あなたたちに――感謝を』
「これが……|A.I.R.I.S.《アイリス》の声――」
「あはは、わたしにお礼なんか言わなくてもいい、よー? 頑張ってくれたのは他のみんなだし、ねー」
 理緒の言葉を聞いても、|A.I.R.I.S.《アイリス》は引き下がらない。
 確かにデウスエクスを迎撃できたのは|猟兵《ケルベロス》たち全員の力があってこそだ。だが、そこに理緒が含まれていることもまた事実。
『どうか、なにかお礼をさせてください。私にできることでしたら、なんでもしますので――』
「ちょっと、|A.I.R.I.S.《アイリス》さん!? 理緒さんになんでもなんて言ったら!?」
 慌てて止めようとするアイだが、時すでに遅し。
 |A.I.R.I.S.《アイリス》の言葉を聞いた理緒の瞳がきゅぴーんと光る。
「なんでも? なんでもって言ったよ、ねー? ならなら、|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんの姿を見せて、よー!」
 勢い込んでまくしたてる理緒。しかし、そこに返ってくるのは、心底申し訳無さそうな声だった。
『すみません。私には人としての姿が与えられていないのです――』
「それって、まさか、街を守るための存在には、人の姿は必要ないと――!?」
 アイは思わず|A.I.R.I.S.《アイリス》を造ったアキバの人々への怒りを爆発させそうになるが――それを|A.I.R.I.S.《アイリス》が慌てて遮る。
『いえ、違うのです! 私が人の姿を与えられていない理由――それは、どんなキャラやアイドルの姿にするか意見がまとまらず、危うくアキバ分裂の危機に発展しそうだったので、私が自分から断ったのです』
「あー……」
 アイの脳裏にはっきりと思い浮かぶ、言い争うアキバの人々の姿。みんな、自分の推しキャラや推しアイドルの姿を取らせようと、一歩も引かずに主張して――ついにはアキバを分裂させてしまう未来。

「じゃあじゃあ、それなら、今ここで|A.I.R.I.S.《アイリス》ちゃんの|姿《アバター》を決めちゃおう、よー!」
「ええっ!? 理緒さん、話聞いてました!? |A.I.R.I.S.《アイリス》さんがどんな|姿《アバター》になるかで、アキバの街が地獄になるかもしれないんですよ!?」
 そう。まず大きく分けて2次元派と3次元派に分かれるだろう。そのどちらの|姿《アバター》を選んだところで、アキバが二分されるのは避けられない。――今の声だけという2.5次元こそ、唯一の落とし所だったに違いない。
 だが、理緒はいたずらっぽい笑みを浮かべ――。
「だったら、わたしとアイさんの前でだけ実体化を許す、という条件付きにしよう、よー」
『なるほど――特定条件下でのみの|姿《アバター》ですか。それならば――』
 |A.I.R.I.S.《アイリス》も理緒の言葉に納得する。観測者が理緒とアイだけということならば、|姿《アバター》を持っても問題はないだろう。
『それで、どのような|姿《アバター》なのですか?』
 |A.I.R.I.S.《アイリス》の言葉に、理緒とアイは顔を見合わせ笑顔を浮かべる。
「「それはもちろん――」」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザガン・アッシム
【アドリブ及び連携歓迎】
(キャバリアとSFSは撤収させました…危ないからね!(技術者達に|分解《バラ》される的な意味で))

ふぅ…状況終了、お疲れさんだ。

|お前さん達《決戦配備ジャマー》も疲れたろ?なんだったらこの後いっちょ飲みに行こうぜ。

…|新人メイド《柏木支部長》のいる店に皆でよぉ!!(ニヤリング)

つー訳でお前さん達には|ねーちゃん《柏木支部長》の出勤する店、及び店にいる時間帯の調査を頼むぜ。

これはそう…あれだ、決戦配備(ロスタイム)ってやつだ。しっかり頼むぜぇ!(サムズアップ)
(なお、通信機から聞こえる抗議の声は華麗にスルー)

…さて、|打ち上げ《宴会》の手配も済んだところで…

買い物タイムだ!来い、モラカー!!
(【UC】で左腕から傭兵には似つかわしくない車…車?を召喚)

先ずは手堅くパーツと…重火器も新調してぇな。後は…ん?

(手持無沙汰で踊るモラカー)

(何事かと集まるアキバ民)

(そして始まる撮影会)

(いつの間にか人気スポットに)

……ま、いっか。

(それを横目にメイド喫茶へと消えていく傭兵)


リリエッタ・スノウ
んっ、アキバ、無事に守れてよかったよ。
それにしても、もうお仕事してるんだね。みんな、すごいね。

「アキバを見て行ってください」という命令にしゅくしゅくと対応するよ。
てくてくと歩いては立ち止まって周りを見渡していると……何か心配そうに話しかけられたよ。
「むぅ、リリ、迷子じゃないよ」なかなか信用してもらえなかったけど、
ケルベロスとして戦っている姿を見た人がいてようやく解放されたよ。

んんっ、それにしても何かすごいひらひらな服。あっ、リリ聞いたことあるよ。これがアキバのメイドさんだね。
アキバを見て回る仕事の一環で、そのままメイド喫茶に連れていかれたよ。
動きにくそうな服でお仕事していてすごいと見ていたら、貸衣装のメイド服をリリにも着せられたよ。
そのままパシャパシャと写真撮られて……むぅ、デウスエクスと戦うより疲れた気がするよ。

※アドリブ連携大歓迎


ウーヌス・ファイアシード
此度の戦いも何とか勝つ事ができたが、これもこの街の者達の力があってこそ、であるな…

ひとえに、この街の皆に感謝を。

…そして、この街の者達の力の源は如何なるものかを知りたい所だが…

む、お主はいつぞやのメイド!
…世話になった礼もしたい所であるし、街の案内もしてもらおう

そうして街を巡り、街の人々や店、施設を見て回ってゆこう

機械には明るくないが、どこの店の者も、そこを訪れる客も、皆情熱を抱いているのはよく分かる
…時折如何わしい内容の物も見られるが…欲が力になる、という事にしておこう…

…ところで、何故我もメイド服に着替えさせられておるのだ…?

しかも気がついたら一緒にパフォーマンスをさせられていたり、メイド喫茶の手伝いまでする事になっているのだが!?

…この街のメイドはこういう事もするのだな…
…なかなかに恥ずかしいが…慣れてきて、人々が喜んでくれるのを見ると…
…これもまた、ヒトの力に繋がってゆくのだな…と満更でもなくなってくるな…

…え、しゃ、写真!?
…み、皆には世話になったし、も、問題ない、ぞ…




「此度の戦いも何とか勝つ事ができたが、これもこの街の者達の力があってこそ、であるな……」
 幼い少女の姿をした「|灰化《かいか》の炉」たるウーヌス・ファイアシード(復燃せし灰化の火・f37284)が、決戦都市アキバを見回しながら呟いた。
 襲撃してきたデウスエクス軍団との激闘の末、少なからぬ被害を被ったアキバの街。――しかし、アキバの人々はすぐに都市の復興を始めていた。この様子なら遠くないうちに街はかつての活気を取り戻すだろう。
「街を破壊されても諦めずに立ち上がる、この街の人々の強き心。その力の源がどこにあるのか知りたいところだが――」
「あーっ、ウーヌスちゃん、みーっけ!」
「ぬ? 汝は――!?」
 ウーヌスに気配も感じさせずに背後から接近してきたのは、一人のメイドの少女だった。ウーヌスがアキバに来てから何かと因縁のある、|決戦配備《ポジション》メディックにしてジャマーの少女。その名は――。
「そ。コードネーム『らぶらぶきゅん』よ♪ 会いたかったわー!」
「こ、これ! 我を子供扱いするでない!」
 抱き上げられたウーヌスがじたばたともがくが、いかんせん身長130cmの幼い少女の姿だ。「灰化の炉」といえども、今の姿では抱き上げられてしまったら抜け出すことはできない。
「んーっ、たーっぷりとウーヌスちゃん成分を補給させてもらったわー! なんだかお肌がすべすべになった気分ー♪」
「気のせいであろう……。で、いつぞやのメイドよ、我に一体何の用だ?」
「あ、そうそう。アキバを救ってくれたウーヌスちゃんにお礼をしたくって。ね、アキバを案内させてくれない?」
 ようやくウーヌスを解放したメイドが輝くような笑顔を浮かべて提案してくる。
「ウーヌスちゃんが守ってくれたアキバの街が、どれだけ素敵か見てもらいたくて、ね」
「――ぬう、そういうことであれば案内してもらおう。こちらも世話になった礼もしたいしな」
 ウーヌスの返事に、メイドは心の底から嬉しそうな声で答える。
「承知しました、お嬢様。本日、私は貴女の専属メイドです♪ さあ、どうぞこちらへ――」
「う、うむ――」
 こうしてウーヌスは、メイドに手を引かれアキバの街へと足を踏み出した。


「んっ、アキバ、無事に守れてよかったよ」
 アキバの街を、てくてくと歩く銀髪のシャドウエルフの少女、リリエッタ・スノウ(シャドウエルフのガンスリンガー・f40953)。――いや、6歳という年齢は、いまだ幼女と言うべきか。
 拳銃を腰に吊るしたリリエッタは、街の復興作業をおこないつつも、普段通りの仕事を再開しているアキバの街の様子を見て感心した声を上げる。
「それにしても、もうお仕事してるんだね。みんな、すごいね。これはリリも任務を実行しなきゃ」
 キリッとした表情で、再び、てくてく歩きを再開するリリエッタ。
 一人で大通りを歩く幼い少女の姿に、道行く人々が声をかけてくる。
「お嬢ちゃん、一人で歩いて……迷子かい?」
「いま、警察に連絡してあげるわね?」
 その言葉に、リリエッタは凛とした声――と本人は思っている――で答える。
「リリは迷子じゃないよ。アキバを見ていくようにという命令に、しゅくしゅくと従ってるだけだよ」
 リリエッタの脳裏にあったのは、DIVIDEアキバ支部長、柏木・ナナミの言葉。

『皆さんのおかげで、街が守られました。――特務機関DIVIDEとして正式な報酬をお出しするのはもちろんですが、ぜひ、皆さんが守り抜いたアキバを見て行ってください』

 ――そのナナミの言葉を命令であると解釈した暗殺兵器の少女は、今こうして命令のとおりにアキバの街を哨戒しているのだ。
 だが、幼い少女が周囲をキョロキョロと見回しながら――リリエッタは哨戒活動のつもりである――ひとりで歩いている姿は、はたから見たら迷子の子供が親を探しているようにしか見えない。
「お母さんとはぐれちゃったの?」
「ほら、飴あげるからオジサンについておいで」
 と、周囲から次々と声をかけられる始末だ。
 リリエッタは、そんな大人たちの言葉を無視し――。
「え、飴くれるの?」
 ――訂正。一番ついていってはいけないオジサンに連れて行かれようとし。

「ちょーっと待ったー! そこのあなたは指名手配の連続誘拐犯! このアキバの平和を守るメイドの『らぶらぶきゅん』が現行犯逮捕しちゃうわよ!」
「しまった! アキバの鬼メイドに見つかったかっ!」
 メイドの姿を見た男が脱兎のごとく逃げ出す。
「あっ、ちょっと待ちなさーいっ! 誰が鬼よ、誰がっ! ウーヌスちゃん、その子をよろしくね!」
「う、うむ――」
 メイドは男を追って全力で駆け出した。

 こうして、シャドウエルフの6歳の幼女(身長121.4cm)と、「灰化の炉」の少女(身長130cm)の二人がぽつんと取り残され――。
「お嬢ちゃん達、迷子なの?」
「まったく、親は何をしているのかしらね?」
 またもや、迷子扱いされることになり。

「ええい、我は迷子ではないと言っているであろう」
「リリも任務中だもん」
 ――二人が解放されたのは、|保護者《メイド》が誘拐犯を捕まえて戻ってきてからのことであった。


「あああ、サブフライトシステム・EF=エアマンタレイが……」
「The・Big・Magnumも……」
「せっかく、戦いが終わったら思う存分、|分解《せいび》できると思ってたのに……」
 自動操縦モードのサブフライトシステムに乗って、キャバリアThe・Big・Magnumが飛び去っていくのを見て、|決戦配備《ポジション》ジャマーの技術者たちは涙していた。
 その様子を見て、ザガン・アッシム(万能左腕の|人機兵《マーセナリー》・f04212)は安堵の息をついた。サブフライトシステムとキャバリアを先に帰して正解だった、と。
「状況終了したし、お疲れさんだ。お前たちも疲れただろ? なんだったら、この後いっちょ飲みに行こうぜ」
 歴戦の傭兵であるザガンは、普段、戦場で肩を並べた戦友たちに話しかけるように、自然にジャマーたちに声をかける。

 ――だが、そこに帰ってきたのは意外な返答だった。

「いえ、僕たち、お酒は飲めないんで」
「かーっ、これだから最近の若い奴らは!」
 戦場とは違う文化を持つ若い技術者たちにカルチャーショックを受けるザガン――。
 その隙に、目に怪しい光をたたえた技術者たちがザガンに歩み寄ってくる。
「それよりザガンさん、その左腕の義手――」
「戦闘で故障してたら大変ですよね?」
「僕たちがメンテナンスしますよ」
 手にドライバーやスパナ、チェーンソーなどを持ちながらにじり寄ってくる技術者たち。百戦錬磨のザガンにすら、身の危険を感じさせるオーラを放っている。このままではマズイ、ザガンの直感がそう告げている。

「じゃあ、メイド喫茶で宴会なんてのはどうだ?」

 そのザガンの言葉に、技術者たちの表情が一変する。
「メイド喫茶、いいですね!」
「僕、いいお店知ってますよ!」
「ザガンさんは、フレンチメイドとゴスロリメイド、どっちが好みっすか?」
 工具をしまって出かける準備を始めた技術者たち。
 ほっと一息ついたザガンは、緊張で気づかないうちに額に垂れていた汗をこっそり拭いつつ、技術者たちにイタズラっぽい笑みを向けた。
「あー、そうだな。俺が行きたい店は――新人メイドがいる店だなぁ」
「それなら、ちょうど今日、新人メイドが入るって店の噂を聞きましたよ」
 技術者の言葉に、ザガンはにやりと笑い――。
「よっしゃ、買い物したら、その店で宴会といこうぜ!」

 この後、技術者たちにアキバを案内されつつ、各種パーツや重火器を買い込み、召喚したもふもふの装甲をした『モラカー』に荷物を載せ、ザガンは技術者たちを引き連れ、噂のメイド喫茶に向かったのだった。

 ――なお、路上に駐車したモラカーは、アキバ住民たちの興味を引き、いつの間にか撮影会が始まっていたという。


「ウーヌスちゃん、リリちゃん、アキバの街めぐりはどうだったかな♪」
 ウーヌスとリリエッタを連れて、アキバの街をひと巡りしたメイドが誇らしげに問いかける。
「ゲームセンターのシューティングゲーム、リリ、楽しかったよ!」
「機械には明るくないが、どこの店の者も、そこを訪れる客も、皆情熱を抱いていたな。――時折如何わしい内容のものも見られたが……欲もまた力になる、ということにしておこう」
 アキバを観光できて満足そうなリリエッタとウーヌスを見て、メイドはいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ふっふっふ。これで終わりだと思ってもらっては困るわね! ここからがアキバの本領発揮! 私が働いてるメイド喫茶でくつろいでもらうんだから!」
「メイドさんがいっぱいいるお店? リリ、行ってみたいよ!」
「む、むう、そこまで言うなら仕方ない。付き合ってやるとしよう」
 こうして、リリエッタとウーヌスは、メイドに連れられてメイド喫茶へと入っていくのだった。

 ――それとほぼ同時。

「ザガンさん、見てください。あれが例のメイド喫茶です」
「なるほどなるほど、よし、早速突撃と行こうぜ」
 技術者たちを引き連れたザガンもメイド喫茶に到着し、躊躇なく店へと足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ、ご主人様、お嬢――さ――ま……?」
 リリエッタ、ウーヌス、ザガンが入ったメイド喫茶。
 その入口で出迎えたメイドの女性が、挨拶の途中でその笑顔を凍りつかせた。

 メイドの名前は柏木・ナナミ。
 特務機関DIVIDEアキバ支部の支部長にして、度重なるデウスエクスの侵略から決戦都市アキバを守ってきた辣腕の美人指揮官。
 ――なお、28歳独身、恋人いない歴イコール年齢なのは、人類の存亡がかかっている時に恋愛などにうつつを抜かしている暇はない、というのが本人の|談《いいわけ》である。
 その女性が、ミニスカートのフリフリメイド服を着て、メイド喫茶の入り口で挨拶をしてきているのだった。なお、頭にはウサギ耳のカチューシャをつけていた。

「おお、柏木支部長、メイド服似合ってるじゃね―か」
 ザガンのからかいの言葉に、ようやくリリエッタとウーヌスも目の前の女性の正体に気づく。
「あ、どこかで聞いた声だと思ってたら、支部長のお姉ちゃんだ」
「うむ、なんだ、あまりにイメージと違う服だったので、一瞬気づかなかったぞ」
 口々に放たれる感想に、凍りついていたナナミがようやく我に返る。

「なっ、こ、これは違うの! ブラックエクスプレスとの戦いのとき、つい勢いでアキバ商工会議所に協力するって言っちゃって――なぜか、メイドとして働くことに……」
 本人も何故だかわからないといった口調で、赤面しながらナナミがメイド服のスカートの裾を抑えながら恥じらう。
「――10年前ならともかく、今の歳でこんな格好なんて……」
「そうかい? 俺は似合ってると思うがな? これこそ、決戦都市アキバの最強の決戦配備ってな!」
 きっぱりと言い切るザガン。
「うん、リリも、お姉ちゃんの格好、可愛いと思うよ」
「ああ、似合っていることは間違いないぞ。年齢などというものにこだわる必要もあるまい」
 リリエッタとウーヌスからも称賛の声が上がる。

「ああもう、わかったわ。そこまで言うなら――ご注文は何になさいます、ご主人様、お嬢様?」
 ヤケになったナナミは、今日一日はメイドに徹すると決めたようだった。


「んっ、なんか、この服、動きにくいね……」
「……何故、我もメイド服に着替えさせられているのだ?」
「あと、なんで俺は執事服に……?」
 ふりふりのメイド服に着替えさせられたリリエッタとウーヌスが困惑の表情を浮かべ――さらに巻き込まれて執事服を着せられたザガンも呆然とした声を上げる。

「ふっふっふ。これはDIVIDEアキバ支部長からケルベロスへの業務命令よ! 私だけメイド服とか納得いかないから、あなたたちにも着替えてもらったわ!」
「おいこら、完全に職権乱用じゃねーか!」
 ザガンのツッコミも、ヤケになったナナミには通用しない。
「いい? これはメイド喫茶がデウスエクスの秘密のアジトにされていた場合に備えた潜入訓練なのよ」
「――いや、どこの世界にメイド喫茶をアジトにするデウスエクスがいるんだよ」

 しかし、リリエッタはナナミの言葉に表情を変える。
「なるほど、潜入任務。それならリリの専門。訓練ならやり遂げてみせるよ」
 ウサギ耳のメイド服を着た暗殺兵器の少女は、とてとてと店の手伝いに向かい、女性客たちから「きゃー、かわいいー!」「写真とらせてー」「んっ、リリは潜入任務中だから写真は困る……」というようなやり取りが起こっていた。

 そしてウーヌスはというと――。
「ウーヌスちゃん、このオムライスをお客様にお出しして」
「う、うむ。任せよ……」
 コードネーム『らぶらぶきゅん』のメイドに仕事を手伝わされていた。
「さ、一緒にお客様にサービスよ。ほら、『らぶらぶきゅん♪』」
「ら、らぶらぶ……きゅん……」
 恥じらいながらも仕事をこなすウーヌスに、メイド喫茶の客たちもテンションが上っていく。
 ――この明るさこそが、アキバの街がデウスエクスの襲撃に屈しない強さの理由なのだ。
「……なるほど、これもまたヒトの力に繋がってゆくのだな。それなら悪くない」
 ヒトを学ぶ種火たる少女は、滅びから立ち上がるヒトの強さを見て、笑みを浮かべるのだった。


「さあ、みなさん、せっかくだから記念写真を撮りましょう!」
 メイド『らぶらぶきゅん』の声が店に響いた。

「ええっ、さ、さすがに写真はっ!?」
「支部長、いい加減観念しちまいなよ」
 ザガンに引きずられてナナミがカメラの前に立たされ――。
「リリ、写真は困る……」
 こっそり逃げ出そうとするリリエッタは、従業員のメイドにがっしりと抱き抱えられて逃げられず――。
「……み、皆には世話になったし、しゃ、写真くらい、も、問題ない、ぞ……」
 ふりふりのメイド服の裾を気にしながら、頬を染めたウーヌスがフレームに入り――。

「はい、チーズ♪」
 メイド服や執事服を着た|猟兵《ケルベロス》たちの写真が記録に残されたのだった。


「ふう、ようやく営業時間が終わったわね――」
 ナナミが肩のこりをほぐすように伸びをしながら息をつく。
「むぅ、なんだかデウスエクスと戦うより疲れたような気がするよ」
「ああ、長い一日であった」
 リリエッタの言葉に、ウーヌスも首肯する。
 ――だが、まだ元気な猟兵が残っていた。
「よーし、店の仕事も終わったし、せっかくの可愛いメイド服を、アキバの人たちに見せにいこうぜ! 来い、モラカー!」
 ザガンが店の外に駐車しておいたモラカーを呼び寄せる。

「えええっ、ちょっ、こんな格好、DIVIDEの職員には見せられないわよ!?」
 狼狽した声を上げるナナミだが――。
「あん? 気づいてなかったのか、支部長さん?」
「んっ、職員のみんな、お客さんとして、来てた」
「うむ。下手な変装であったがな」
 ザガン、リリエッタ、ウーヌスから、致命的な言葉を投げかけられた。

「うそっ!? 私、明日からどんな顔で支部長席に座ればいいの――?」
 この世の終わりかのような顔をするナナミに――。
「ま、支部長は支部長のままでいいんじゃねぇか?」
「んっ、支部長さんは支部長さん」
「ヒトの本質というものは、見た目では変わらぬということだ」
 3人の声が優しく染み込んでいく。

「わ、わかったわよ! 今日は一日メイドの約束ですからね! 日付が変わるまでは、私はメイドの柏木ナナミよ!」
 ヤケになったナナミの声が響き渡り。
「あ、けど、DIVIDE支部長の柏木ナナミとして、リリエッタちゃんとウーヌスちゃんに命令よ! 私と一緒にメイド服で一緒にドライブの任務よ!」
「んっ、任務なら、仕方ないね」
「……ま、まあ、アキバの者たちのためになるなら……」
 ナナミは満足そうな笑みを浮かべ。
「ザガンさんには運転手を命じるわ」
「ああ、了解だ。それじゃ、アキバの人たちによく見えるようにゆっくり街を一周するか!」
 一同を乗せたモラカーは、アキバの街へと走り出していった。

●DIVIDE支部長会談
 |A.I.R.I.S.《アイリス》によって作り出された電脳空間の円卓に、多数の四角いポリゴンが並んでいた。その表面には「SOUND ONLY」の文字と、所属するDIVIDE支部の名前が浮かんでいる。
 その円卓の前で、アキバ支部長、柏木・ナナミがホロディスプレイに表示された映像データを元に報告をおこなっていた。報告内容は、決戦兵器アキバを襲撃してきた指揮官級デウスエクスについてだ。
「――以上が、決戦都市アキバでのデウスエクスとの戦いの記録です」
「ご苦労だったな。柏木ナナミ支部長」
 『決戦都市新宿』と書かれたポリゴンから声が響く。
「どうやら、デウスエクスたちの侵攻が本格化してきているようだ」
「我々も反攻作戦を急がねばなるまい――」
 聞こえてくる声は、様々な決戦都市のDIVIDE支部長たちの言葉。
「――で、例の計画の進捗はどうなのだね、深海・ミオ大佐」
 問いかけられた声に答えるのは、鈴を鳴らすかのように可憐な少女の声。

「はい、すでに対デウスエクス戦用の決戦兵器、巨大潜水艦ディープブルーフォートレスとメガブレイブナイツは最終調整を完了しています。いつでも実戦投入可能です」

「――期待しているよ、深海・ミオ大佐」
 その一言とともに、DIVIDEの支部長会談は終了し――その場に、一人の少女、深海・ミオの姿が残された。
 少女は、決意のこもった声で部下たちに指示を下す。
「これより『アビス・ヘイヴン』攻略作戦を開始します」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月27日


挿絵イラスト