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ティタニウム・マキアの焉動

#サイバーザナドゥ #【Q】 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』 #シリーズ最終シナリオ

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#【Q】
#巨大企業群『ティタニウム・マキア』
#シリーズ最終シナリオ


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●姉妹
 妹がいる。
 だから、この世界は色彩に満ちていると言えるだろうし、私がクソッタレな世界で生きていける理由でもあった。
 あの子は私の幸い。
『|オルニーテス《飼い鳥》』、と名付けたのは皮肉じゃあない。
 いつかは籠より飛び立つ日が来ることを知るからこそ、名付けた名だ。
 そして、その日はもう来ている。
「もしも、なんて思うことはしなくっていい。もしも、逆だったら、なんて。そんなことは考えなくって良い。だって、私はお姉ちゃんと呼ばれたあの日からずっと」
「それで、アンタは。アンタの居ない明日を生きるあの子のことを考えたか。涙に暮れる明日を生きるあの子のことを考えたか。それこそアンタの言うところのクソッタレな世界であるとは考えないのか」
 亜麻色の髪の男が言う。
 どの口で、とは言わない。

「そうね。でもどんな人だってそうよ。いつかは一人で立たなければならない。一人で生まれてきて、一人で死ぬ、というのなら。今が独り立ちの時よ」
「……なら、アンタはもうお役御免だな。何もかも諦観に塗れたアンタは、もう要らない」
「……アンタ、私を」
 利用したかったのではないのかと問う言葉に亜麻色の髪の男『メリサ』は頭を振る。
「俺が欲しかったのは、アンタの死にものぐるいな生への執着だ。金を稼ぎ、このクソッタレな世界でも生きようという意志が欲しかった。けれど、何もかも諦めたというのなら」
 要らない、と『メリサ』はサイバースペースから『ケートス』を放逐する。
 もはや戻る体はないはずだ。
「いいや、あるさ。アンタを救いたいと願って、アンタに手を伸ばす者がいる。心当たり、一人くらいはあるだろう――?」

●青=善性
 青い超弩級たる陸上戦艦が沈黙する。
 艦橋にて、巨大企業群『ティタニウム・マキア』の要たる重要施設であった『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を操っていた四重臣、重役のオブリビオンは猟兵によって滅ぼされた。
 戦いは終わる。
 否。
 戦いは終わらない。
 むしろ、此処からが対決。
「そうだ。対決だ。アンタたち猟兵が世界を救う。だが、人は救わない。結果として世界を守ったから人を救ったのだとしてもだ。俺はアンタたちを認めるわけにはいかない。アンタたちが善性そのものであるというのならば、俺は悪性で構わない」
 亜麻色の髪の男『メリサ』は、猟兵たちが至る巨大企業群『ティタニウム・マキア』の中枢たる陸上戦艦へと突入しようとして足を止める。

 猟兵達の足を止めたのは、数多の光の鉄条網。
 艦内には侵入者を阻むための罠が無数に仕掛けられている。亜麻色の髪の男『メリサ』も『ティタニウム・マキア』にとっては異物であるはずなのに、異物と判断されていないのは、彼の手にある四重臣のIDカードがためであろう。
「でもまあ、礼を言わせてもらうよ」
 彼はIDカードを弄び、軽く後退する。それはまるで、この『ティタニウム・マキア』の中枢にして要たる施設そのものである陸上戦艦の最奥へと向かうようだった。

「俺があくせくとこの世界で、アンタら猟兵を『ティタニウム・マキア』に誘引してきたのは、このときのためだ。この一手で『ティタニウム・マキア』は『死に至る病』を得ることだろう。そう、アンタたちは世界を救う。けれど、俺は人を救う。そのためならば世界など知ったことか」
 彼は言う。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』を潰すのが彼の目的であると。
「今、『ティタニウム・マキア』は混乱の最中にある。この混乱に乗じてアンタらは『ティタニウム・マキア』のマネーラインに繋がる|『電子鍵』《バックドア》を手に入れりゃあいい。そうすれば、世界を蝕む巨大企業群の一つは緩やかに死んでいく。なあ、いい考えだとは思わないか?」
 だが、猟兵たちは知るだろう。
 彼が求めるもの。
 それが世界に破滅をもたらすものであると。

「……だよな。アンタらはオブリビオンを滅ぼす。それしかないものな。なら、ここからは競争だ」
 亜麻色の髪の男『メリサ』は笑う。
 目の前に広がる光の鉄条網は猟兵たちを阻み、『メリサ』を素通りさせる。
 一手遅れる。
 この一手が致命的なことになると猟兵たちは知るだろう。故に、猟兵達に取れる択はひとつしかない――。

●対決
 グリモア猟兵、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は転移を維持しながら猟兵達に告げる。
「恐らく、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』が巨大企業群『ティタニウム・マキア』の要にして最重要施設であることは間違いありません。となれば、この陸上戦艦には……!」
 そう、サイバーザナドゥにおいて巨大企業群は数百数千の不祥事と悪事の証拠を抱えている。
 だが、この世界において、そんなものの一つや二つを暴いた所で何の意味もないことを猟兵たちはこれまでの戦いで知っただろう。
 決定打にはなり得ないのだ。
「そうです。ですが、お金だけは違います。マネーライン。これを暴けば……!」
 猟兵たちは気がつく。
 なるほど、と。だから、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』に『ティタニウム・マキア』の重要な施設が集約され、武力でもって物理的にも守ることを要としていたのかと。

「ええ、そうです。そして、そのマネーラインはパブリックネットワークに置かれることはありえないでしょう。ですが、今ならば!」
 そう、今ならば『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』は沈黙し、その最奥にあるであろう隔離サーバーに侵入することができる。
 そして、|『電子鍵』《バックドア》を、この混乱の最中に手に入れることができたのならば、いつでも『ティタニウム・マキア』の金庫から好きなだけ金を引き出し『死に至る病』として巨大企業群を蝕むことができる。

「|『メリサ』《彼》を追ってください。彼が求めているのは『電子鍵』ではありません。今、予知に映ったのは……!」
 ナイアルテは告げる。
『メリサ』の目的は世界を滅ぼすオブリビオンを手に入れること。
 この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』は重要施設を守る防壁であると同時に、檻。
 最奥に座す異様なる存在を閉じ込めておくための檻。
「『電子鍵』を手に入れるより早く……彼が、それを手に入れてしまえば……!」
 世界が滅びる。
 ここからは競争だと彼は言った。
 正しくその通りなのだろう。迷っている暇はない。
 猟兵たちは擱座した『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』、『ティタニウム・マキア』の中枢へと足を踏み出すのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 サイバーザナドゥにおける巨大企業群『ティタニウム・マキア』に『死に至る病』たるマネーラインの『電子鍵』を手に入れるために、かく座した『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと飛び込むシナリオになります。
 連動しているシリーズシナリオの最終シナリオ、その後編となります。

●第一章
 冒険です。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の重要施設にして要、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』はすでに擱座しています。
 彼らの資金源であるマネーライン。それを隠匿している隔離サーバーもまた、この陸上戦艦の最奥に隠されています。
 ですが、物理的に罠が仕掛けられており、これを混乱の最中に突破しなければなりません。

●第二章
 ボス戦です。
 多くの『ティタニウム・マキア』のカンパニーマンたちを躱し、到達した先にあるのはクローズドサイバースペースへのアクセスポイントです。
 ですが、このアクセスポイントを前にして立ちふさがるのは、体高5mあろうかという青い巨人が座す黄金の玉座です。
 青い巨人『バイスタンダー』は動くことはないようですが、ありあまるサイキックパワーを用いて皆さんを排除しようとするでしょう。
 これを倒さないことにはアクセスポイントには至ることはできません。
 不完全にして、多くを欠落した青い巨人『バイスタンダー』ではありますが、言うまでもなく強敵です。

●第三章
 冒険です。
 クローズドサイバースペースへとアクセスし、前シナリオで別経由でサイバースペースからクローズドサイバースペースへて強引にアクセスしてきた何者かと協力して、張り巡らされた電子罠を躱し、マネーラインに繋がる『電子鍵』を入手しましょう。
 そうすれば、『ティタニウム・マキア』は重役を失い、さらにはマネーラインに繋がる『電子鍵』を奪われたことにより、徐々に衰退していくことでしょう。

 それでは、ついに迫った『巨大企業群(メガコーポ)』、『ティタニウム・マキア』との最終決戦へと向かう皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『光の鉄条網』

POW   :    センサーを破壊する

SPD   :    レーザーをかわしながら進む

WIZ   :    何らかの手段で赤外線を可視化する

イラスト:ハルにん

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 目の前に広がるのは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の艦内に所狭しと張り巡らされた無数の光の鉄条網であった。
 その光に触れれば、無数の罠が起動し、艦内を破壊し、時にはセンサーに引っかかった者を、その区画ごと外へと排出する機構が備わっていた。
 強引に進むこともできなくはないだろうが、事態は一刻を争う。
 あの亜麻色の髪の男『メリサ』が、この先に座すオブリビオンを手に入れても世界は滅びると予知されている。
 ならば、時間を食うことは猟兵にとって悪手以外の何者でもない。
 しかし、これだけの罠を仕掛けられていることは、猟兵たちにとって多大な労力でもって突破しなければならないことと同義。
 時間はなく。
 されど、あの『メリサ』という男が何の策もなしに己たちを座して待つこともないだろう。

 だが、どれだけの罠がめぐらされているのだとしても。
 それでも踏破して往くからこそ猟兵たちは多くに勝利してきた。
 そう、例え罠があろうとも、それで止まる猟兵は一人として存在しないのである――。
村崎・ゆかり
話は聞いたわ。ここからは選手交代。あたしが『ティタニウム・マキア』に引導を渡す。

光の鉄条網か。アヤメ、物理的な罠みたいなんだけど、これ何とかできる? 出来るだけ急いで。
「オーラ防御」と「環境耐性」「地形耐性」「毒耐性」をかけておくわ。急いでお願いね。
あたしも黒鴉を飛ばして、怪しいところから罠を「封印術」で無効化していきましょ。
鉄条網地帯を抜けたら、そこからが本番か。アヤメ、頑張って。



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』を巡る一連の事件。
 そして、繋がっていくサイバーザナドゥにおける点と点。
「話は聞いたわ」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』と戦った猟兵達からおおよその事情を聞く。
 擱座した巨大な陸上戦艦。
 これ自体が巨大企業群『ティタニウム・マキア』の要にして重要施設なのだと言う。
 そして、この最奥にて存在するオブリビオンを黒幕の如く糸引く亜麻色の髪の男『メリサ』が求めている。
 確かに猟兵は世界を救う。
 結果として人を救うことになっているが、それは決して人を救わぬと断じているわけではない。

 人の営みは人によってなされるべきものである。
 故に猟兵は世界という枠組みを壊し、人を害するオブリビオンを打倒するのだ。
「あたしが『ティタニウム・マキア』に引導を渡す。アヤメ」
「はい。かしこまりました」
 ゆかりの言葉に愛奴召喚(アイドショウカン)によって招来されたエルフのクノイチの式神アヤメが頷く。
 目の前にあるのは物理的な罠。
 光の鉄条網は一部の隙すらないように思える。この光の鉄条網は触れるだけで肉体を傷つける威力があるだろう。
 それだけではない。
 鉄条網に触れた瞬間に、その触れた者が存在していた区画をまるごと外へと排出する機構さえ備わっているのだ。

 下手に触れれば、それだけで猟兵は『メリサ』に一手遅れることになる。
「万が一のことがあれば」
「大丈夫です。信じてください。あなたの式神ですよ」
「それに恋人っていうのも忘れないでよね」
「忘れるわけがないでしょう? では、行きます」
 その言葉と共に『アヤメ』が飛び出す。光の鉄条網は隙がないように思える。けれど、ゆかりは黒鴉を飛ばし、『アヤメ』が走るルートに印をつける。
 罠の目星は付いているが、しかし、それを上手く封じることはできないだろう。
 根本的な技術体系が違うようである。

 そもそも、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』自体が敵の胃袋のようなものなのだ。
「とは言え、臓腑であることは変わりなく。それが却って、己の腹を痛めることになるのは皮肉かもしれないけれど、巨大企業群にとっては、それもまた当然か」
「こちらです!」
『アヤメ』の言葉に従ってゆかりは走る。
 時間は悠長にかけられていない。鉄条網を抜けても、さらに迫る罠が迫る。設置された機銃、トラップフィールド。
 多くの罠がゆかりを襲う。
 けれど、それらの全てを『アヤメ』が事前に察知し、知らせてくれるからなんとかなっているようなものだった。
「あたしの心配は杞憂だったわね」
「もっと頼りにしてくださってもいいのですよ」
「ほんとう、頼りになる!」
 ゆかりは『アヤメ』の言葉に笑みながら、しかし、迫るであろう最奥の重圧を肌で感じる。

 この先にあるのはただの兵器やオブリビオンではない。
 故にゆかりは『アヤメ』と共に打ち込まれる機銃の弾丸を弾きながら、己達の足を止めようとするものを打ち払い、奥へと進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?

人を救うために、世界を滅ぼすのはねー。
ま、こういうのは私の分野でして。

UC使用して、光の鉄条網をすり抜けましょう…。
ええまあ、網ならば必ず隙間がありますからねー。その隙間を縫う形でー、

こういう姿って、本当に悪霊らしいとは思いますがー。慣れませんね、これ。
罠が発動しないように、時にはジャミングして壊すことも考えましょう。そこは『侵す者』の仕事ですが。

侵「おい」

……ええ、ここで止まるわけにはいきませんから。



 光の鉄条網が『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部に張り巡らされている。
 その光条の多さは、あまりにも多く、鼠一匹通さぬという意志を感じさせるものであったことだろう。
 それもそのはずである。
 この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』自体が巨大企業群『ティタニウム・マキア』の要。万が一のことがあった際には、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』が巨大企業軍の抱える最重要機密ごと移動し、守り、迫る外敵を打ち払うものであったのだ。
 故に『安心安全』を売る巨大企業群。
 あまりにも強大で巨大過ぎるが故に、今まで彼らが抱える悪事は数百数千に登ってもなお、腐敗した警察機構のみならず、敵対するサイバーニンジャクランやその他の外敵を寄せ付けなかったのだ。

「ヒトを救うために、世界を滅ぼすのはねー」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は息を吐き出す。
 亜麻色の髪の男『メリサ』の言葉は、確かにその通りであったのかもしれない。
 猟兵があくまで戦う理由はオブリビオンが存在し、オブリビオンを放置することによって世界が滅びるからだ。
 故に戦う。
 そこに人の生き死には本来関与しない。
 間に合わなかったことも一度や二度ではない。口惜しい気持ちなど幾度も味わってきただろう。

 だからこそ、『疾き者』は己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「ま、こういうのは私の分野でして」
 四悪霊・『拐』(シアクリョウ・カタル)。
 それは己の肉体を四悪霊の呪詛そのものへと変える力。
 呪詛の霧へと変異した肉体をもってすれば、光の鉄条網などないに等しい。とは言え、光の光条網が何を感知しているのかを知れぬ異常、この網目を抜け、触れぬが得策であろう。
 その判断は正しかっただろう。
 もしも、己の体が霧に変異することにかまけて光条網に触れた瞬間、その『疾き者』は存在していた区画ごと『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の外へと排出サれ、排除されていたことだろう。

「とは言え、こうしてすり抜けるには問題なく。鉄条網の形を取っていたのが災いしましたねー」
 この姿であることを苦笑いするしかない。
 慣れもしない。
 人の形を取る悪霊。本来なら、人型にこだわる理由はないだろう。
 けれど、己達の存在を束ねるためには、人型であることにこだわらなければならない。
「罠は一つではありませんね。なるほど。賊の侵入を感知するだけではなく、排除も必須、と」
 電磁ネットが排出されるのを『疾き者』は見ただろう。
 恐らく霊体的な者にも対応するための罠なのだろう。抜かることのない設備に『ティタニウム・マキア』が安心安全を謳うのも理解出来るものであった。

「ならば、こちらはジャミングして壊すことにしましょう。ねえ、『侵す者』」
『おい』
 内部から声が聞こえる。
 冗談ですよ、と『疾き者』は笑い、駆け出す。
 電磁ネットの投射を躱し、さらに奥へ。
『わかっておるのだろうな。敵はオブリビオンぞ。そして、あれは』
「……ええ、此処で止まるわけには行きませんから」
『疾き者』は頷き、迫る罠を躱して奥へと飛び込んでいくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
ふーん★じゃあお仕事始めるね★

うーん★これだけの規模の戦闘兵器、悪用されないようそのままにはできないよね★

UCを使用、周囲に煙幕とホログラムを展開して混迷度を上げて、そこに紛れるよ★
ホログラムに反応するかわからないけど、反応しないならそのままホログラムが『ホログラフィックブレイド』でセンサーへと装甲無視のデータ攻撃して壊して、さらに追い打ちでスプレッドダガー『Ku-9』を撃ち込み周囲を爆破、パルスブレイド『SR-KN』を撃ち込みEMPによる破壊工作で徹底的に|ダメに《ぶち壊》しちゃうぞ★

同時に複数個所からロボットビーストを突入、囮兼遊撃役として使い潰すつもりで動かすよ★補充の当てはあるからね★



 亜麻色の髪の男『メリサ』の言葉にシルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は別段動揺することはなかっただろう。
 彼女にとってこれは仕事の一つでしかない。
 シルキーはお金を稼ぐことが好きだ。だから何でも屋を名乗り活動している。
「ふーん★ じゃあお仕事始めるね」
 どんな理屈があるのだとしても。
 どんな大義があるのだとしても。
 シルキーにとってお金を稼ぐ、という行動が先立つものである。故に『メリサ』の言うところの猟兵の目的――即ち、世界を救うが、人には干渉しない、という前提を刺されても別段思う所はなかった。

「うーん★ これだけの規模の戦闘兵器、悪用されないようそのままにはできないよね★」
 それよりも彼女の関心事は、目の前の擱座した『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』であった。
 この巨大な陸上戦艦こそが『ティタニウム・マキア』の最重要施設であるというのならば、これを放置することはできなかっただろう。
 彼女の言う悪用とは、このセイバーザナドゥに生きる人々だけではなく、他の巨大企業群も含めた者たちのことを差す。
 この世界において金以上の力はない。 
 だから、シルキーはそのために戦う。躊躇いなんてない。

 目の前に広がる光の鉄条網。
 これは全てがセンサーであると同時に攻撃でもある。触れた瞬間にセンサーが起動するし、光条に触れればそれだけで触れた部分を溶断してくる。
 頭脳戦車であるシルキーにとっては厄介な罠である。
「煙幕にもホログラムにも反応するみたいってのが厄介★ でもでも、それなら逆に反応させてしまえばいいんだよね」
 そう言って、シルキーのカメラアイがユーベルコードに輝く。
 暗殺機構・隠匿駆動(サプライズスイッチ)。
 それは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部に投影された多数のホログラムと煙幕弾。
 次々とセンサーに引っかかるホログラム。
 光条の一撃のみならず機銃から弾丸が放たれ、反応したことによって、ホログラムが投射されたブロックが外に排出されていく。

 正しく混迷極める光景であったことだろう。
 けれど、シルキーにとっては、それこそが求める状況だった。
 彼女のユーベルコードは混迷の中にこそ、己の姿を隠す。次々と排出されていくブロック。
 そして、その排出しようとしたブロックの機構へとシルキーはスプレッドダガーを打ち込み、機構ごと破壊するのだ。
 さらにパルスブレイドの一撃が電磁波を迸らせ、周囲の機構を制御する基盤を破壊するのだ。
「こうしておけば、後から再利用なんてできないでしょ★ やるからには徹底的に|ダメに《ぶち壊》しちゃうぞ★」
 さらにロボットビーストたちが走る。
 囮というよりは迎撃役であった。使い潰すつもりの投入。
 まるでそれは巨大な骸に群がる蟻の如き様相を示していたことだろう。シルキーは、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』という有効活用可能な死骸こそを有効活用できないように徹底的に破壊を齎し、そして、己はゆうゆうとセンサーの中を最奥目指して走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
む?お金が必要ならいくらでも出してやっても……あ、魔将達から通貨価値が暴落するからと止められてるのだった……

とりあえず奴を止めるためにここを突破すればよいのだな!
なんかそんな声が聞こえたので我が魔将の哀しみを知るがよい!【魔将顕現:怠惰るウェーブ】!
例え機械であろうとも、我が魔将の業から逃れられると思うなー!
遠慮容赦なく、周囲に「為すべき事を為す意欲を失う」怠惰の波動を浴びせ、「本来果たすべき役目」を為さなくして突破するぞ!

……ふむ、しかし皮肉よな、「為すべき事を為す事はないという“怠惰”の業」を背負う獣たるあ奴が、「|何かを為す為だけ《目的のため》に造られる」機械いじりが趣味というのもな



 サイバーザナドゥという世界において金というのは絶対的な力だ。
 金を集める。
 金のためにあらゆる悪性を駆使し、善性を食い物にする。
 それがこの世界の常識であった。モラルというものは形骸化し、騙し騙され、利用される者が弱者として謗られる世界。
 故に弱者を護るための法の番人たる警察機構さえも堕落し、不敗しているのだ。
 だから、というわけではないけれど。

「む? お金が必要ならいくらでも出してやっても……」
 ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は他者の欲望を叶えることを欲望としたワルの悪魔で魔王でラスボスである。
 彼女に望むのならば、いくらでも金を吐き出すことだってできることだろう。
 皮肉なことだが、その欲望は叶えれば叶えるほどに、通貨価値が暴落していく。
 故に魔将たちからも止められているのをワルルーナは思い出して、あ、と口をつむぐ。今のナシ。
「とりあえず、あの亜麻色の髪の男を止めるために、この……この、何、この光の線みたいなものは……これを突破すればよいのだな!」
 目の前に広がるのは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部。
 張り巡らされた光の鉄条網は、それ自体がセンサーであり、同時に攻撃手段でもあった。触れればあらゆるものを溶断するであろう熱量を持っているし、触れた瞬間に、その区画ごと外に強制的に排出する機構さえ備えているのだ。

「ふむ。確かに厄介であるが、受けるが良い! 我が魔将の悲しみ! 魔将顕現:怠惰るウェーブ(ワルニクスウェーブ)!」
 ワルルーナの瞳がユーベルコードに輝く。
 背に不死鳥の翼の如き燃える色を羽ばたかせるワルルーナ。同時に彼女より放たれる波動は、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部に配された光の鉄条網を発している機構へと伝播していく。

 そう、それは『なすべきことをする意欲を失う怠惰の波動』であった。
「たとえ、機械であろうとも、我が魔将の業から逃れられると思うなー!」
 放たれる波動。
 彼女が放つのは容赦も遠慮もない『成すべきことを成す意欲を失う』怠惰たる波動。
 つまり『本来果たすべき役目』を放棄させるものである。
 次々と彼女のめの前で光の鉄条網たるセンサーが消失していく。彼女のユーベルコードは有機物のみならず無機物にさえ作用する。

「……ふむ」
 その光景を見やり、ワルルーナは微妙な顔になる。
 これは真に皮肉であった。
「『為すべきことを為すことはないという“怠惰”の業』を背負う獣たるあ奴が、『|何かを為すためだけ《目的のため》に造られる』機械いじりが趣味なのに、今まさにその機械を無力化するために力を振るっている、というのは」
 皮肉であるな、とワルルーナは心中を察する。
 けれど、今はそれを捨ておかねばならない。目の前の障害は全て排除されている。
 ならば、一気に駆け抜けて最奥へと進まねばならない。

 彼女が見据える先には尋常ならざる重圧がこぼれだしているようにも思えた。
 ヒリヒリと肌を焼くような重圧。
 これと似たような重圧をワルルーナは感じたことがあるだろう。その正体を確かめるべく、彼女は不死鳥の如き微妙な色の翼を羽ばたかせ、一気に最奥へと飛ぶのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

ステラさん、さすがにそれはみなさまドン引きですよ。
三十六世界に響き渡るヤバさですね。

せめて自分から舐めに行ってください。

まぁよくないですよ!?
って、なんでぴゅあぴゅあ平和主義勇者の思考から全墓になるんですか!?

え、いえ、あの。
ですからなんで破壊=わたし、みたいな方程式が……。

演奏していいんです!?(ぴょこん)
なーんだ。それを早く言ってくださいよー♪
こういう感じの時は【Canon】ですね!

と、うっきうきで全力演奏。
鉄条網を振動波でぶっちぎっていきますね!

華麗なる演奏には棘あるんです♪

えっへん、とステラさんを見てみたら、
なにやらものすごく難しい顔をして考え込んで……。
あっ、ちょっとにやけた。

まったくもう!
わたしにリクエストしておきながら、他のこと考えてますね!

それならー……。

鉄条網をあらかたちぎったら、
集中してるステラさんに気づかれないように、そーっと後ろにまわりこみます。

うふふふふ。さぁステラさん、音楽のお時間ですよ!

耳栓をすぽっと抜いたら、思いっきり側で演奏しちゃいますね!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
……え?今更??その目的、今更言う???
|エイル様《主人様》の|メイド《犬》を舐めないで頂きたいですね
物理的に舐めてもらえるなら大歓迎です
誰がやべーメイドですか

まぁいいでしょう
ティタニウム・マキアとか結構どうでもいいメイドなので
全部壊していけばいいんじゃないか?という結論に達してしまい
ちょっと勇者の思考に侵され過ぎていることを反省しています

なので(?)この場はルクス様にお任せしましょう
ええ、物理には音楽をぶつければいいじゃない
マネーラインごと破壊しましょう
センサー類は私が【アウクシリウム・グロウバス】で壊していきます
後ろで耳栓してますのでルクス様の声と音は聞こえませんあしからず

(耳栓しながら考え込み)
メリサ様がエイル様因子を持っている以上
その行動は彼の目的に対しての勝利に必ず繋がっているはず
|メリサ様《悪性》が|セラフィム《善性》を手に入れて何をするのか?
善性と悪性を備えたモノ……ならば人以外に無いのですけどね?
それも|メリサ様《乗り手》次第ですか
え?何か言いましたルクス様?



 亜麻色の髪の男『メリサ』の目的は巨大企業群『ティタニウム・マキア』を陥れることであった、と語る。
 これまでの事件の裏で糸引くのは、それが目的であったが『ティタニウム・マキア』が滅びるというのは付随した事柄でしかない。
 彼が求めるのはオブリビオン。
 この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の最奥にあるという存在を彼は求めている。
「……え?」
 だからこそ、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は目を見開く。
 それは驚愕たる感情浮かぶ表情ではなかった。
「今更? その目的、今更言う?」
 そう、彼女にとって、それは今更な事柄であった。どれだけこれまでの事件において猟兵と敵対する動きを見せてきた亜麻色の髪の男『メリサ』。
 彼の行動原理というものをステラは理解していた。
「|『エイル』様《主人様》の|メイド《犬》を舐めないで頂きたいですね。いえ、物理的に舐めてもらえるなら大歓迎です」
 真面目に生真面目にステラは言い放つ。
 聞いちゃいないだろうが、しかして、その言葉は『メリサ』の背筋を悪寒でもって襲うことだろう。

 そんなステラの言葉にいつものことだが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、うわ、とドン引きしていた。
「ステラさん、さすがにそれはみなさまドン引きですよ。三十六世界に響き渡るヤバさですよ」
「誰がやべーメイドですか」
「いえ、そういうところですけど。せめて自分から舐めに行ってください。犬っていうのなら」
「無論、そうしますが?」
「本当にやべーじゃないですか!」
「まあ、いいでしょう」
「よくないですよ1?」
 ステラはルクスの言葉に我関せず、という態度をとる。いや、全部あなたのことなんですけど、とルクスはよくもまあ、そんなに自分のことではないです、みたいな顔をできるなと思ったものである。

「『ティタニウム・マキア』とか結構どうでもいいメイドなので、全部壊していけばいいじゃないですか、という結論に達しています。ちょっと勇者思考に侵され過ぎていることを反省しています」
「ぴゅあぴゅあ平和主義勇者の思考なんですけ!? っていうか、なんで破壊イコールわたし、みたいな方程式になっているんですか!?」
 え、とステラは真顔だった。
 ルクスの言っている言葉の意味を理解できていないようだった。というか、破壊してないとでも言うつもりだったのだろうかと、信じられないものを見るような目ですテラはルクスを見てしまっていた。

「……まあ、いいじゃないですか。この場はルクス様にお任せいたします。ええ、物理には物理をぶつければいいじゃない、という理屈です。巨大企業群の急所がマネーラインであると言うのならば、それごと破壊すればいいのです」
「いえ、ですから、どうして破壊イコールわたしってなるんですか!?」
「センサー類は私がなんとかします。ですから、ルクス様、演奏してください」
 え、とルクスの口が止まる。
 演奏って今、言いました?
「演奏していいんです!?」
「ええ、そうお伝えいたしました。センサーは私が」
 そう言ってルクスがぴょんこしている間にステラの瞳がユーベるるコードに輝き、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部に張り巡らされた光の鉄条網を生み出すセンサ機構へと手にした双銃でもって弾丸を内放ち、的確に破壊していく。

「なーんだ。それを早く言ってくださいよー♪」
 ルクスが、ルンルン気分の最中、ステラは人知れず耳栓をする。
 もう声は聞こえない。静寂の中、ステラが感じるのは双銃の引き金をひく感触だけである。
 そうなれば思考はクリアになっていくだろう。
 亜麻色の髪の男『メリサ』。ステラの推測が正しいのであれば、彼は『エイル』因子を持っているはずである。
 そして、その行動は彼の目的に対しての勝利条件へと邁進する力を持っている。
 彼は己のことを悪性であると言った。
 ならば、求めるのは善性の象徴たる青色の『セラフィム』。
 だが、わからないのは、それを手に入れてどうしようというのだろう。彼は言った。猟兵は世界を救うが人を救わないと。
 己は人を救うのだと彼は言ったのだ。
 その言葉の意味をステラは測りかねる。

 悪性と善性を備えた良心揺らぐ者は人間。
 その意味を考え……きゅぽん、と音がしたのをステラは聞いただろう。
 振り返る。
 そこにいたのは、にこーっとした表情を浮かべるルクス。
「もーわたしにリクエストしておきながら、他の事考えてるのダメなんですからね!」
「……」
「鉄条網はあらかたCanon(カノン)でぶっ壊しましたよ! うふふふふ」
 ステラは全身に悪寒が走るのを感じただろう。
 いや待ってほしい。本当に僅かな時間しか考え事をしていなかったはずだ。なのに、もう? もうあの光の鉄条網を破壊し尽くしたというのか?
「さあ、ステラさん。音楽の時間ですよ!」
 待って、と言う言葉はバイオリンの不協和音によってかき消される。
 
 それはもう凄まじいまでの音量と精神をひっかくような音色であったことだろう。
 思いっきり演奏されるルクスのバイオリン。
 強烈過ぎる。
 脳をシェイクされるかのような、それでいて加圧されるような。
 そんななんとも言えない不快感がステラを襲い、しかいルクスはご機嫌である。下手にルクスに演奏のリクエストをして利用したろうっていう思惑が仇となったのだ。
「もっと、もーっと演奏しちゃいますからね! ちゃんと聞いてくださいね!」
 ルクスの周囲には破壊が満ちていく。
 どんなものも音の振動を防ぐことができないというのならば、どれだけ最新鋭の設備が揃い、頑強を誇る『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』と言えど例外なく破壊されるのだと示すように、ルクスはご機嫌で演奏を続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァルターン・ギャンビット
フォッフォッフォッ、競争か。宇宙海賊相手に競争とは面白い事言うじゃねえか。
シンプルで分かりやすい。この陸上戦艦の奥にある『お宝』を手に入れるのはこの俺様よッ!

とはいえ、このまま光の鉄条網を抜けるのはちと骨が折れるぜ。
なら【シノビン擬態変身】ッ!
これで肉体を…そうだな、小さなフェアリー種族に変化させてやるぜ。
そうして光の鉄条網の隙間を縫って進んでいくぜ。
この体の伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を駆使して多少無茶な態勢でもガンガン進行よ。宇宙忍者の身体能力を刮目して見るがいい。

一手遅れちまってるが、どう巻き返すか。


【アドリブ歓迎】



 猟兵達の攻勢によって擱座した『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』。
 その内部こそ巨大企業群『ティタニウム・マキア』の最重要施設が密集した要であるという。
 確かに安心安全を売る巨大企業群であるのならば、自社の機密は確実に守られなければならない。そして、そのためには物理的にもサイバースペースからの攻勢にも耐えられなければならないというのは当然であり、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部にて納める、というのは必然であったことだろう。
 故に、その内部に張り巡らされた防衛機構というのは並大抵のものではなかった。
「フォッフォッフォッ、競争か」
 亜麻色の髪の男『メリサ』の言葉にヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)は不敵にして大胆たる笑みを浮かべる。
 そう、競争だと言ったのだ。

『メリサ』がいち早く、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の最奥にあるであろうオブリビオンをを手に入れるのが先か、それとも猟兵たちが罠を突破してたどり着くのが先か。
「この宇宙海賊相手に競争とは面白い事を言うじゃねえか」
 だが、それがヴァルターンの闘志に火をつけた。
 競争と聞いて黙っていられるほどヴァルターンは大人でもなかったし、一手遅れているから、じゃあもう諦めるなんていうリタイア精神を持ち合わせていなかった。
 シンプル。
 故にわかりやすく、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の最奥に眠るのが『お宝』というのならば、なおのこと手に入れるのは己であると意気込むのだ。
「ああ、そうだとも!『お宝』手に入れるのは、この俺様よッ!」
 ヴァルターンは目の前に広がる光の鉄条網を見やる。

 あれはセンサーと熱線を兼ね備えた罠だ。
 ホログラムや霧などであっても反応することがわかっている。ならばこそ、ヴァルターンの瞳がきらめき、ユーベルコードを発現させる。
「ちと骨が折れるが、これなら! シノビン擬態変身(シノビンメタモルフォーゼ)!!」
 その言葉と共にヴァルターンの体躯がフェアリーのよに小さく縮んでいく。
 如何に光の鉄条網とは言え、想定しているのは人間サイズのみであろう。
 ならば、更に小さな種族であるフェアリーの体躯まで体を縮めたヴァルターンを光条は取られられない。

「フォッフォッフォッ!! 楽勝だぜ!! あらよっと!」
 ヴァルターンは曲芸でも見せるように光の鉄条網の合間をすり抜けていく。さらに彼の体は今、強い侵食性と弾力性を有している。
 床を、壁を、自由自在に跳ねては伸びて光条の合間をすり抜けていく。多少無茶な体勢であっても、なんなく内部を進むことができるのだ。
「これが宇宙忍者の身体能力よ! 刮目して見るがいい! フォッフォッフォッ!!」
 宇宙忍者の名は伊達ではない。
 ヴァルターンは、このサイバネティクス技術が発展する世界にあって、物理的においても最強たる科学力を有している。
 シノビン星人としての種族特性。
 更にはユーベルコード。
 それらを組み合わせるからこそ、ヴァルターンは宇宙忍者軍団の頭領として名をはせているのだ。

「一手遅れていようが、どうとでもなるってもんだぜ! 巻き返しはこっからだ! 行くぜッ!」
 ヴァルターンはどれだけ『メリサ』に一手遅れていようと気に留めなかった。
 たかが一手。
 その一手を覆せないで、何が宇宙忍者であろうか。あらゆる手段、あらゆる力、あらゆる状況。
 その全てを用いて起こす逆転劇ほど痛快なものはないと知るからこそ、ヴァルターンは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部、その最奥目指して、その一手を詰めるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

わお!とっても拗らせてる~
んもー
そういうの好き!
それに競争というのもいいよね
とっても原始的で…楽しいよ!
追い付け追い越せ!そして…喰らいついてみるー?
アハハハ!

●【生実況!】終焉!ティタニウム・マキア!【Live Broadcast】
じゃあ実況を続けながらゲームを始めよう!
ボクが目指すのは当然!最短!最速!そして新記録!
【第六感】による自由なるコース選定!
[餓鬼球]くんたちと[ドリルボール]くんたちによる破砕突破も交えて!
そしてUC『神撃』でお邪魔虫ごとドッカーーーンッ!!

籠の鳥かー
でも籠の鳥っていうのは…まあこれは後のお楽しみにとっておこう!



 亜麻色の髪の男『メリサ』は言う。
 猟兵は世界を救うが人を救わぬと。
 その言葉にロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思わず声を吹き出すようにして発する。
「わお! とっても拗らせてる~んもー」
 まったく、と神なる身としては、そういう人間の愚かしさというものは如何なるものに映ったことだろうか。
「そういうの好き!」
 ロニからすれば、それは愛すべき愚かさであったことだろう。
 猟兵であったとしても、できることとできないことがある。あの『メリサ』という亜麻色の髪の男は、猟兵を全知全能たる者として見ている節がある。
 いや、自分は全知全能の神って名乗っているので、それは間違っていないのだけれど。

「それに競争とうのもいいよね! とっても原始的で……楽しいよ!」
 ロニは一気に『メリサ』を追うようにして『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の艦内へと飛び込む。
 目の前には光の鉄条網。
 あれに触れれば、センサーが作動するだけではなく、攻撃性の熱線でもって触れた箇所が溶断されてしまう。
 けれど、ロニにとって、それは些細なことだった。
「じゃあ、実況を続けながらゲームを始めよう! 終焉!『ティタニウム・マキア』!らいぶぶろーどきゃすと! アハハハ!」

 目の前に広がるは一点の隙もないように思える鉄条網。
「少しでも触れてしまえばゲームオーバーってわけ! でもでも、目標はあくまでゴールじゃあないよ! 追いつけ追い越せ! そして……喰らいついてみるー? アハハ! おう、これはゲーム。おいかけっこっていいよね!」
 実況を開始し、目の前の状況を動画としてサイバースペースへと配信する。
 それによって『ティタニウム・マキア』の株価というものはぐだ下がりだろう。
 そうでなくても、本社ビルを襲撃され、そして虎の子の『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』すら擱座させられてしまっているのだ。
「ボクが目指すのは当然! 最短! 最速! そして新記録!」
 ロニはカメラに向かってウィンクしてから走り出す。

 確かに光の鉄条網は厄介である。
 けれど、彼にとっては第六感を頼りにすればなんとでもなるというものである。
「球体くんたちも使ってどっかーんってやっちゃえばショートカットも出来るってものだよね! お邪魔虫ってこうやって一掃するのがきもちーよね!」
 そういってロニは迫る機銃やドローンを尽く掘削球体でもって破壊、破砕し、自由気ままなコース取りでもって突き進んでいく。
 それはゲームと呼ぶにはあまりにも破天荒が過ぎる進撃であったことだろう。

「んもー! 邪魔ばっかりしてさー! あ、でもオブジェクト破壊って点数になるよね! ならさぁ! はい、ド――ンッ!!」
 ロニは瞳をユーベルコードに輝かせながら、神撃(ゴッドブロー)の一撃を叩き込む。
 炸裂する拳の衝撃波は光の鉄条網を揺らし、さらには周囲のブロックすらも破壊していく。
 その拳が刻む先にあるのは、最奥への最短ルートであろう。
「さあ、お楽しみはこれからだよね! さあ、いくよ!」
 そう言ってロニは笑いながら、危険な罠がまだひしめく『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の艦内へと走り出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
あー…うん。やっぱりそう来るわよねぇ…
同じ立場なら誰だってそーする、あたしだってそーする。
正直ココが潰れることに関してはむしろ歓迎なんだけど…どうもそれだけじゃ済まないようだし。とにかく追っかけないとねぇ。

対機械ならやっぱりコレよねぇ。流紋・マルガリータ・ミッドナイトレースをそれぞれリンク、これでセンサー類は丸裸。マルガリータに機体制御とルート構築をお願いして●轢殺・揺走を起動、最効率で突っ走りましょうか。

ここまでのことやらかすからには何かしらの過去とか事情とかあるんでしょうねぇ…
気になりはするけれど、話してくれるかは微妙なラインねえ。



「あー……うん。やっぱりそう来るわよねぇ……」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は亜麻色の髪の男『メリサ』の言葉に深く頷いた。
 彼がどのような思惑を持っていたのだとしても、この状況を見やればどう動くかなど言うまでもない。
 もしも、自分が彼の立場であったのならば、そうするだろう。
 他の誰だって同じように動いただろう。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』。
『安心安全』を売る巨大企業であり、それらを搾取してきたオブリビオンの巣窟であるとも言える。あまりにも巨大であるがゆえに、完全に滅ぼすことはできないだろう。
 けれど、『電子鍵』さえあれば話は別だ。
 今すぐに滅びなくても、確実に『死に至る病』を得させることはできる。

 だからこそ、ティオレンシアは頷く。
「正直ココが潰れることに関してはむしろ歓迎なんだけど……どうもそれだけじゃ済まないようだし」
 そう、グリモア猟兵の予知は告げている。
『メリサ』が求めるのは、この最奥にあるオブリビオン。
 そのオブリビオンを得ることによって世界が破滅するからこそ、予知されたのだ。彼の言う通り猟兵は世界を救う。
 結果として人を救うこともするが、本分は世界の悲鳴に応えることである。
 故に、ティオレンシアは踏み込む。
 兎にも角にも追いかけないことには話は進まないからだ。

「っと、対機械ならやっぱり、これよねぇ」
 その薄く閉じた瞳の奥でユーベルコードが煌めく。
 彼女が乗る『ミッドナイトレース』とAI『マルガリータ』が繋がり、光の鉄条網のセンサーを丸裸にするのだ。
 あの鉄条網は確かに隙間なく、艦内を満たしている。
 けれど、発生源が必ず存在しているのならば、その大本を叩けば良い。そして、それが出来るのが『ミッドナイトレース』に搭載されたAIである『マルガリータ』なのである。
「はぁい、これでダミーも含めて全部まるわかりってぇことよねぇ。さ、『ミッドナイトレース』、一気にぶち抜くわよぉ。『マルガリータ』、ナビよろしくねぇ」
『はぁい、ますたぁ』
 AIからの返答にティオレンシアは頷き、構築されたルートを『ミッドナイトレース』と共に一気に走り抜ける。

 亜麻色の髪の男『メリサ』。
 彼はこれまでのサイバーザナドゥにおける『ティタニウム・マキア』の一連の事件に関して糸引く存在であった。
 これまでのことを鑑みるに、何かしらの過去との因縁が、事情があるのであろうと彼女は想像することができる。
 だが、それは想像の域を出るものではなかった。
「やっぱり、直接聞くしかないけれどぉ……話してくれるかは微妙なラインねぇ」
 とは言え、彼に追いつかなければならないことに代わりはない。
 戦うにせよ、対話するにせよ。
 姿を捉えることができなければ、それもできないのだから。

「過去の因縁も何もかも関係なかったのだとしても。それでも今に繋がっているのならば、無関係であったことなんて何一つないのでしょうからぁ……ねぇ?」
 だから、とティオレンシアは擱座した『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部を『ミッドナイトレース』と共に駆け抜け、その亜麻色の髪の男『メリサ』の背をついに捉えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『バイスタンダー』

POW   :    夢見るは戦禍の運命
自身の【戦闘義体 】を【念動力を増幅する形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    夢見るは獣性の運命
全身を【念動フィールド発生形態 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    夢見るは終焉の運命
視界内の任意の対象全てに【念動力 】を放ち、物質組成を改竄して【鋼鉄化】状態にする。対象が多いと時間がかかる。

イラスト:キクヲ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイアルテ・ブーゾヴァです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……長く掛かってしまって悪かったな。でも、これで終わりだ。安らかに、なんて言えないけれど」
 それは無数のポッドであった。
 中にあるのは人。
 いや、厳密には『サイコブレイカー』と呼ばれる後天的超能力者達であった。彼らは巨大企業群『ティタニウム・マキア』に拉致された者たちであり、その超能力で持って『ティタニウム・マキア』の中枢たる、目の前の黄金の玉座に座す青色の巨人を『生ける屍』として駆動捺せ続けていたのだ。
 そのポッドの一つ一つを撫で、『メリサ』は青い巨人『バイスタンダー』を見上げる。
「漸くだ。生命を吸い続ける超機械。これを……――」
 振り返る。
 そこに居たのは猟兵達の姿であった。
 猟兵たちはついに亜麻色の髪の男『メリサ』の背を捉えのだ。
「よぉ、案外早かったな。発破をかけすぎてしまったようだな」
 軽薄な口調で彼は言う。

 彼の背には巨大なケーブル繋がれた黄金の玉座があった。
 そう、それが巨大企業群『ティタニウム・マキア』のマネーラインを守る『電子鍵』に繋がるクローズドサイバースペースへのアクセスポイントであり、体高5mの青色の巨人が座して動かない玉座。
「言わずともわかるだろうが、アンタたちには。これがオブリビオンだということが。本能的にわかるんだろう? 俺が求めたのはこれだ。これさえあるのならば、この超機械さえあるのならば……!」
『メリサ』は言う。
 だが、彼は『バイスタンダー』を見上げる。

「……何故だ。何故コクピットを開けない。『俺』が『此処』にいるというのに……!」
 何故、と言う言葉は吹き荒れるサイキックによってかき消された。
『メリサ』の体は吹き飛び、青色の巨人『バイスタンダー』はゆっくりと手をもたげる。その手の先にあるのは猟兵達。
『バイスタンダー』がオブリビオンであるというのならば、そう、猟兵は敵と認識される。
 吹き荒れる嵐のようなサイキックエナジーによって、背後に在ったポッドに納められていた『サイコブレイカー』たちはみるみる間にしわがれ、砕け、霧散していく。
 もとより、いくばくもない生命であったのかもしれない。
 けれど、『バイスタンダー』はそれすら奪ってみせた。その事実に猟兵たちは、あのオブリビオン『バイスタンダー』こそ放置してはならぬ存在であると識る――。
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器『漆黒風』

ああ、本当に…アレは壊すべきものですね。
あとわずかだったとして、それを奪って良いものではないのです。

だからこそ…漆黒風を早業で投擲していくんですがね。
移動し避けたとして、UCによって掴んで刺すだけですよ。
それに、そちらのは四天霊障にて減衰、かかった時点で方向がわかりますので、第六感も活用して避けますよ。

……あんたは四悪霊の怒りを買った。それだけでも、敵対するのに相応しいと知れ。



 黄金の玉座の背後のポッドの中で崩れていく生命があった。
 それはもはや風前の灯でしかなかったのだとしても、それでも生きていたのだ。
 慟哭の如き咆哮が迸る。
 亜麻色の髪の男『メリサ』の声。それを馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は聞く。
「なんでだ……! 吸い上げたのなら、元に戻すことだって出来たはずだ。なのに、なんでこうなる!」
 彼の言葉に『疾き者』は息を吐き出す。
 ああ、と。
「本当に……『アレ』は壊すべきものですね」
 恐らく壊すだけではダメだったのだろう。壊せば恐らくこれまで吸い上げた生命が霧散してしまう。だから『メリサ』は『アレ』――『バイスタンダー』をコントロールしようとしていたのだろう。
 コクピット、と彼は言ったが、『疾き者』は理解できなかったかもしれない。

「あとわずかだったとして、それを奪って良いものではないのです」
 だから、と『疾き者』の瞳がユーベルコードに煌めく。
 早業によって投げ放たれる棒手裏剣。
 その一射を前にして『バイスタンダー』は動かない。
 いや、もとより動くつもりなどないのだろう。黄金の玉座の座したまま掲げた手の全面に集約された念動力でもって棒手裏剣を受け止める。
「増幅されている……これは」
「――夢見るは戦禍の運命。大鴉の翼は折れることなく羽撃く」
『バイスタンダー』の声、とでもいうのか。
 強烈な念動力の迸りと共に『疾き者』は己の体が打ち据えられるのを感じたことだろう。だが、その一撃を煌めくユーベルコードが己の体から発露するのを感じる。
 
 あの『バイスタンダー』は生命力を吸い上げる。
 これまで『サイコブレイカー』たちの生命を吸い上げながら、生きながらえてきたであろう『生ける屍』となってなお、『バイスタンダー』は強烈な念動力を行使し、『疾き者』たちが持ちうるユーベルコード、四悪霊・『怪』(シアクリョウ・アヤ)の力、その呪詛と綱引きのように生命力を吸い、また吸い返すのだ。
「念動力は、その方向性でわかりますが、これは……まったくもって」
「生命力が拮抗している……いや、違う。引き合っているのか!」
『メリサ』の声を聞き『疾き者』は頷く。
 己の生命力を吸収する力と、『バイスタンダー』の念動力によって吸い上げる力が拮抗しているからこそ、現状が生み出されている。

 第六感で識るだろう。
 この力の拮抗は長く続かない。
 目の前の『バイスタンダー』は黄金の玉座に座したままだ。動こうともしないし、そもそも動けないのだろう。
 それでもなお、迫る念動力の凄まじさは理解できる。
 だが、それがなんだというのだ。
「……あんたは四悪霊の怒りを買った」
『疾き者』は飛翔し、迫る念動力の迸りを躱す。見えに見えぬ力場。それを躱しながら棒手裏剣を解き放ち、さらに呪詛を持って念動力と組み合う。
 ぎりぎりと互いの骨身とフレームがきしむ音が聞こえる。
 力はあちらが上であると理解できる。
 
 けれど。
「それだけでも、敵対するのに相応しいと知れ」
 己の身に宿るは怒り。
 命を奪われた怒り。
 呪詛へとくべられる怒りこそが、『疾き者』たちの原点にして起点。故に、彼の念動力は『バイスタンダー』を徐々に上回り、その見えぬ念動力の力をねじ伏せるようにして霧散させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
|傍観者《バイスタンダー》気取りのオブリビオンが、人の命を吸い上げてただ生き存えているとはね。まさしく世界の敵、いえ寄生虫かしら。

攻撃手段はサイキックと生命力吸収か。長期戦はまずい。
「全力魔法」錆の「属性攻撃」「精神攻撃」「仙術」で落魂陣。
その巨身をすり抜けて、精神を刈り取る。
動かないんだから、狙うのは楽なものだわ。

それよりも不動のまま繰り出される異能を防がないと。
「オーラ防御」に「呪詛耐性」ついでに「環境耐性」も。
サイキック、「見切り」をつけられるかしら?

フロアごと破壊したいとこだけど、その玉座が重要な以上は使えないのが残念だわ。
『ティタニウム・マキア』の全ての咎を負って、滅びなさい!



 周囲に渦巻く念動力。
 それ自体に生命を吸収する力があるかのように青い巨人『バイスタンダー』は手をもたげる。
 その緩慢なる動き。
 体高5m級の体躯を持ちながら黄金の玉座に座したままであるのは、正しく『生ける屍』であるからであろう。体躯に無数に繋がれたコードはこれまで数多の『サイコブレイカー』たちの生命を持って維持されてきたことを示していた。
「|傍観者《バイスタンダー》気取りのオブリビオンをが、人の生命を吸い上げてただ生き存えているとはね。ましく世界の敵、いえ寄生虫かしら」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、その青き巨人の巨躯を見上げる。

 あの念動力はただ振るうだけで、こちらの生命力を吸い上げる。
 長く戦うことは、それだけゆかりたち猟兵にとって不利に働くことしかなかっただろう。
「――夢見るは戦禍の運命。大鴉の翼は折れることなく羽撃く」
 その言葉とともに『バイスタンダー』の凄まじき念動力がゆかりへと向けられる。
 見えぬ巨腕めいた力。
 それが振り下ろされる気配を感じ所縁は即座に瞳をユーベルコードに輝かせる。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。心身支える三魂七魄の悉くを解きほぐし、天上天下へと帰らしめん。疾!」
 落魂陣(ラッコンジン)。
 それは魂魄を吹き飛ばす呪詛を込めた呪符。放たれる光線の一撃は、その巨躯に内包した魂魄のみを攻撃する。

「狙う必要はないわね。動かないんだから……でも!」
 そう『バイスタンダー』の念動力は強力無比である。
 振るわれる念動力の巨腕の一撃がゆかりの頭上より降り注ぐ。
「受けるな! 受ければ生命を吸われる!」
 亜麻色の髪の男『メリサ』の言葉にゆかりは目を見開く。そう、受けてはならない。あれは触れた者全ての命を奪う。
 かつて戦ってであろう超機械に接続された皇帝のように存在するだけで生命を吸い上げるものではない。
 ならばこそ、ゆかりは迫る無色たる念動力の塊が空を切る音を聞くだろう。

 オーラにふれる念動力。
 それだけで溶けるように防御が吸い上げられていく。その瞬間をゆかりは見極め、身を翻す。
 巨腕でよかった、とゆかりは思っただろう。
「指の間……! 念動力が強大でも、コントロールは雑ということね!」
 ゆかりは躱した直後走る。
 無数に浮かばせた呪符。放たれる光線でもって『バイスタンダー』の内部に溜め込まれた生命力、それを吹き飛ばしていく。
 それは『バイスタンダー』がこれまで吸い上げてきた『サイコブレイカー』の魂とも言うべきものであったことだろう。
「生命を吸い上げ、生命を囚え続ける。ほんと、フロアごと破壊してやりたいところだけれど……!」
 あの黄金の玉座こそが『ティタニウム・マキア』のクローズドサイバースペースへとアクセスするポートとなっている以上、下手に攻撃できない。

 だが、それでも戦わなければならない。
 勝利しなければならない。
 これまで奪われてきた生命に贖うためには、今より先の未来を明るくすることでしか拭えない。いや、それでも拭えるものではないのだろう。
 結局のところ、真っ当なる道を歩むということは、地味で辛い道程ばかりなのだ。ならばこそ、ゆかりは踏み込む。
「その業! その咎! 全てを負って滅びなさい、『バイスタンダー』!」
 放たれる光線の一撃が『バイスタンダー』の巨躯を撃ち、内部に内包した生命を開放していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
む……姿かたちは違うが、赤い機械人形……あやつと何か関係が?
いや待てよあやつは一時青色で、いや確か最後は赤くなってたような?
メリサとやらは……まあ良いか。あれだけ自信あり気に豪語しといてこの結果だしな
(……最も、心折れて「何一つ救えなかった!」とか言い出すようにも思えんがな)

む、これは念動フィールド!いや何となく言ってみたが要は思念の壁だな!
むぐぐ、確かにブレスが届かぬが……舐めるなよっ!貴様自身が無敵ならば、それを担う壁自体をどうにかすればよいのだ!
UC【魔将顕現:暴食の顎】!非物質だろうが平気で食える魔将の顎だ!思念壁も思念波も同じこと、強引にでも食い破り、その「力」奪ってやろう!



 嘗て鋼鉄の巨人――戦術兵器キャバリアが大地を疾駆する世界にてワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は、赤い巨人を見た。
 あれを機械人形であると認識するのならば、青い巨人『バイスタンダー』は、同じ系統に分類されるものであるように彼女には思えただろう。
 姿形が違う。
 けれど、胸部にある砲門のようなものなど共通する部分がないわけではない。
「赤い機械人形……あやつと何か関係が?」
 いやまてよ、とワルルーナは気がつく。
 あのクロムキャバリアで見た赤い機械人形。あれは一時青色であったが、最後には赤くなっていた。
 そして、言うなれば『バイスタンダー』は、あの機体から装甲を剥ぎ取ったようなフレーム状態だとでもいうのだろうか。

「――夢見るは獣性の運命。駆け抜ける事も忘れて私はただ座す」
『バイスタンダー』の声らしきものが響いた瞬間、機体を中心にして張り巡らされる念堂フィールド。
 守りに入った、とワルルーナは理解しただろう。
「む、これは念動フィールド! いやなんとなく言ってみたが要は思念の壁だな! ならば砕けぬ道理などない!」
 下半身の竜たちから放たれるブレス。
 その猛攻に念動フィールドは揺るがない。絶対無敵たるフィールドを形成した『バイスタンダー』は動けなくなるが、もとよりクローズドサイバースペースへのアクセスポイントたる黄金の玉座を守る以上、動く必要性がないのだろう。
「むぐぐ、ブレスが届かぬが……舐めるなよっ!」

 ワルルーナは飛び込もうとしてガクリと体が揺れるのを感じただろう。
 ブレスを介在して『バイスタンダー』の念動力はワルルーナの生命力を吸い上げているのだ。
「やつの念動力に触れるな! 生命を吸われるぞ!」
 亜麻色の髪の男『メリサ』の声が響く。
 吹き飛ばされても無事だったようである。その姿にワルルーナは彼の心が折れていないことを識る。
 あれだけの豪語をしておいての、この結果である。
 常人であれば、そこで心が折れても仕方ないところである。けれど、ワルルーナには確信めいたものがあった。あれがそれで心折れるような者ではないことを知っているような気がしたのだ。
「厄介な……! だが!」
 ワルルーナの瞳がユーベルコードに煌めく。

「貴様自身が無敵ならば、それを担う壁事態をどうにかすればよいのだ! 魔将顕現:暴食の顎(ワルベロスファング)! 思念壁も思念波も同じこと! 我が変ずるは、その業! 魔王たる我が喰らえぬものがあろうと侮るなよッ!!」
 ワルルーナの下半身が人狼の三つ首へと変貌する。
 それは宙を走る絶対無敵たる念動フィールドを食い破るのだ。
 非物質やエネルギーを喰らう。
 その一点においてのみ、暴食たる大罪を侵す。

「食い破っている……!? 念動エネルギーだぞ!?」
「造作もないわ! 我を何と心得る! 今一度聞け! 我が名を!」
 ワルルーナの変じた三つ首の人狼の顎が念動フィールドをかみくだくようにしてエネルギーを吸い上げていく。 
 フィールドに触れる度にワルルーナの生命力も座れるが、しかし、それを上回る勢いで念動フィールドを噛み砕いていくのだ。
「我は百胎堕天竜魔王ワルルーナ! 大罪内包せし、ラスボスにして魔王よ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
なるほど★異界技術を独占してるならピリピリしてたのもわかるね★
実は彼も異界出身者だったりするのかな★

さて。それじゃあラストステージ★UC【滅殺機構・抹消領域】で周囲を特別会場にしちゃうぞ★勿論|ゲスト《標的》は「バイスタンダー」!
バックダンサーの生き残りロボットビーストは全機散開し包囲攻撃、シルキーちゃんも高速移動しながら『Ku-9』を撃ち込んでいくぞ★あのケーブル部分を優先して狙っちゃうね★

今更一部が鋼鉄になったからって止まらないぞ★肉体の機械置換が当たり前なサイザナ民舐めんな★
動く限りホログラム、『Ku-9』、周囲の物体を射出する『シノビシューター』、『シルキーショット』で攻撃を続けるよ★



 体高5mはあろうかという青い巨人。
 その姿を見上げ、シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は巨大企業群『ティタニウム・マキア』が何故『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』で囲ってまで最奥にあるものを隠したがったのかを理解した。
 これはサイバーザナドゥの技術体系にあるものではない。
 猟兵となったシルキーだからこそ理解できる。
「なるほど★ 異世界技術を独占しているならピリピリしてたのもわかるね★」
 なら、とこの存在を知っていた彼――亜麻色の髪の男『メリサ』も、異世界から神隠しでサイバーザナドゥに転移してしまった存在なのかも知れない、とシルキーは思い、けれど、目の前の黄金の玉座に座す『バイスタンダー』へと向かう。

「――夢見るは終焉の運命。それは始まりの運命。枝葉広がるように」
『バイスタンダー』の声らしき音が響いた瞬間、掲げられた手より放たれるのは念動力。
 それに触れてしまえばどうなるかなど言うまでもない。
「生命力を吸われる! そうでなくても……!」
「今更★ 元々義体に置き換えられてるんだぞ★」
 亜麻色の髪の男『メリサ』の声が響く。シルキーの頭脳戦者としての義体が鋼鉄へと変わっていく。関節部すら鋼鉄化していく力にシルキーは呻くこともしなかった。
「サイザナ民を舐めんな★」
 カメラアイがユーベルコードに輝く。
 敵のユーベルコードは確かに厄介だ。念動力を操り、それに触れたのならば生命力を吸い上げる上に躯体を鋼鉄化させていく。

 でも、だからといって。
「止まらないぞ★ この程度で止まる猟兵なんて一人だっていなんだから★」
 滅殺機構・抹消領域(エリミネートデバイス・シュレッドステージ)が広がる。
 ノイズに塗れた電脳と現実入り交じる廃墟へと世界のテクスチャを塗り替える。そのユーベルコードは世界の表層すら書き換えてしまうのだ。
「それじゃあラストステージ★ 主役はシルキーちゃん★ |ゲスト《標的》はもちっろん!『バイスタンダー』! かもん、バックダンサーちゃん★」
 その言葉と共に書き換えられた世界の中でシルキーは疾駆する。
 ロボットビーストたちが散開して『バイスタンダー』を取り囲むようにして走る。叩き込まれるスプレッドダガーが『バイスタンダー』のフレームを思わせる躯体にぶつかっては爆発を巻き起こしていく。

「あのケーブルを狙っちゃえ★」
 シルキーは『バイスタンダー』が何故今まで『生ける屍』と呼ばれていたのかを識る。
 あれは結局の所、延命しているだけに過ぎない状態なのだろう。
 そのために操る念動力の源である『サイコブレイカー』を必要としていた。けれど、猟兵達の活躍によって『ティタニウム・マキア』は『バイスタンダー』に供給するための『サイコブレイカー』の数を十分に用意できていなかった。
 そして、今、最後の『サイコブレイカー』たちの生命を吸い上げ尽くしてしまった。
 ならば、補給はもはやない。
「ジリ貧なら、そこでケーブル切っちゃえばさらにダメになるでしょ★」
 打ち込まれたスプレッドダガーがケーブルを断ち切り、溢れるサイキックが周囲に撒き散らされていく。

「『バイスタンダー』、あなたの為だけの|特別ステージ《抹消領域》だぞ★ 満足するまで堪能して――」
 滅びてね、とシルキーはいつもの様子と口調で言いながら、持てる火力の全てを『バイスタンダー』へと集約させるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァルターン・ギャンビット
オイオイ、競争のゴールにあったのがこんなガラクタとは笑えねえぜ。
あのメリサって野郎が何考えてたかは分からねえが、こんなガラクタぶっ壊すにかぎるなッ!

どうやら敵は視界内の任意の対象全てに念動力 を放ってくるみたいだな。
なら奴の視界から消えればいいんだぜッ!これが宇宙忍者の力よッ!【シノビン透明化術】ッ!
この術を使っている間は、疲労するがコイツにカバーさせるぜ。出番だ、『ムカシドン』ッ!
ムカシドンに乗って纏めて透明化術で姿を隠してやればOKだ。
これで移動の疲労は無くなり敵からは隠れられるぜ。
透明のまま戦場を縦横無尽に駆けながらアーム・レイガンを雨あられに撃ち込みまくってやるぜッ!


【アドリブ歓迎】



「オイオイ、競争のゴールにあったのがこんなガラクタとは笑えねえぜ」
 ヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)が想像していたのは、もっと心踊る宝物であったことだろう。
 シノビン星人である彼にとって、サイバーザナドゥの文明力というのは、どこかレトロチックであったように思えるはずだ。
 彼らの文明レベルは科学文明が一周回って中世レベルに至ったものである。 
 だからこそ、ヴァルターンの目の前にある黄金の玉座に座す『バイスタンダー』をガラクタと言うのは間違いではない。
「っていうか、コイツ、旧文明っていうか、あれだな。銀河の辺境でドンパチやってた連中の機動兵器のフレームじゃねーか。骨董品ってだけの代物をありがたがっちゃってまあ」
 ヴァルターンは頭を振る。
 あの亜麻色の髪の男『メリサ』が何を考えていたのかはわからない。
 この骨董品レベルのものを使って何をするのかなど、ヴァルターンには考えが及ばない。

「まっ、他人に迷惑かけまくるガラクタだってんなら、ぶっ壊すに限るなッ!」
「――夢見るは終焉の運命。それは始まりの運命。枝葉広がるように」
次の瞬間『バイスタンダー』から放たれる念動力の広がりにヴァルターンは、その瞳をユーベルコードを輝かせる。
「シノビン透明化術(シノビンクリアライズ)!」
 彼の姿が透明になり、周囲の背景に溶け込んでいく。
 敵の念動力は確かに恐ろしいものだった。けれど、敵を認識していなければ、その力の対象になることはない。
 ならばこそ、ヴァルターンは不敵に笑むのだ。

「フォッフォッフォッ! 視界内の連中全てに無差別に念動力ってんなら! てめぇの視界から消えれば良いってだけの話だぜッ! 見たかよ、これが宇宙忍者の力よッ!」
 ヴァルターンは透明化した体のまま、指を打ち鳴らす。いや、腕部の鋏を打ち付け、鳴らす。
 瞬間、彼のもとに現れるのは『ムカシドン』。
 スペモンキューブからあられるドラゴン型のスペースモンスターにヴァルターンは飛び乗り、さらに『ムカシドン』まで透明化させる。
 この術は、ユーベルコードは己を疲労させる。まともに動けなくなってしまうが、そこをカバーするのがスペースモンスターというものである。
「頼むぜっ、『ムカシドン』! 縦横無尽に駆け抜けろッ!」
 その言葉に嘶くように『ムカシドン』が咆哮し、戦場となった『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の艦内を飛ぶ。

 姿を隠し、飛び回る『ムカシドン』を『バイスタンダー』は捉えることはできないだろう。
「アームレイガンで穴だらけになっちまいな、骨董品!」
 あの『バイスタンダー』は座して動かないままだ。
 もとより動けないのか、動かない理由があるのかはわからない。けれど、それならば好都合というものである。
 彼の出身世界スペースオペラワールドにおいて、辺境にて起こった戦術兵器同士の戦争は科学技術が一周する前にて天頂に至ったものである。
 それを『バイスタンダー』が内包しているのならば、今動かない状態が最も猟兵たちにとっての幸いであったことだろう。

 もしも、あれが己たちのように自在に動くのならば恐らく手がつけられなかっただろう。
「なら、ここで終いにしようぜッ! くらえっ!」
 ヴァルターンはアーム・レイガンより放たれるデス光線を『バイスタンダー』のフレーム装甲に叩き込み穴をうがち、躯体を繋いでいたコードの尽くを焼き切りながら『ムカシドン』と共に迫る念動力を翻弄するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
あー…なぁんとなく事情は推測できるわねぇ。だからどうしたって程のことでもないけれど。

この手の「無色の力」ってメタ張れないから苦手なのよねぇ…
あたし短期決戦仕様の大砲とかそこまで手札多くないし。
攻撃範囲は「視界内」、ならそこから崩しましょうか。
閃光弾と煙幕で視線を切って●黙殺・妨害と●黙殺・砲列を同時展開、描くのは|アンサズとソーン《情報の遮断》。派手に振り回すだけの力なら、まだ対処の仕様はあるでしょ。
実のところそこまでダメージ稼げるようなものじゃないけれど…厄介な状態異常を潰せるわけだし、少しは味方が動きやすくなるんじゃないかしらぁ?



 おおよその事情は呑み込めた。
 あの亜麻色の髪の男『メリサ』が求めていたのは、『サイコブレイカー』の生命を吸い上げて存在し続けるオブリビオンを『バイスタンダー』の力を利用して吸い上げた生命を還元することだったのだろう。
 これまで数多の『サイコブレイカー』たちが汚職に塗れた警察機構と結託して巨大企業群『ティタニウム・マキア』へと捕縛した彼らを引き渡してきた。
 何故か。
 全てはあの青い巨人『バイスタンダー』を存在させ続けるためだったのだ。
 そして、『メリサ』が何故猟兵より先に『バイスタンダー』を求めたのかは言うまでもない。猟兵はオブリビオンを滅ぼす。
 滅ぼせば、吸い上げられた生命は還元されない。
 だから、彼は猟兵に頼ることなく事を押し進めようとしたのだろう。利用すれど当てにはしていない、という態度は、そのためであったとティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は理解したのだ。
「だからどうしたって程のことでもないけれど」
 けれど、と思う。

 彼のやったことは全てが正しいわけではなかった。己達のやることもそうだ。全てが正しいことなどない。一点のシミのように過ちが残る。
 全ての人を救うことなどできはしない。
 今までを救えなくても、これからを救うことはできるのだ。だからこそ、ティオレンシアの瞳はユーベルコードに輝く。
 己の手札において、迸るサイキック、念動力に対抗するものは多くはない。
 それに加えて短期決戦の大砲じみた火力を引き出すというのならば、それもまた手札が足りないと感じる。
「――夢見るは終焉の運命。それは始まりの運命。枝葉広がるように」
『バイスタンダー』の声らしき音が響いた瞬間、走る念動力。
 それを見ることは出来ない。
 けれど、敵のユーベルコード、念動力の範囲が、指定される条件が『視界内』である、というのならば話は別だ。

 崩すべき所はそこから。
 放たれるは閃光弾と煙幕。彼女自身の姿を『バイスタンダー』の視界からくらませる一撃は攻撃能力こそなかったが、しかし確実に彼女の姿を隠す。
 そして、彼女は手に取ったシトリン輝くペンを宙に滑らせる。
「お願いねぇ、『ゴールドシーン』」
 彼女の手にしたペン先が描くは魔術文字。
 黙殺・妨害(デザイア・ディスターブ)。描かれるは『アンサズ』と『ソーン』。
 情報は遮断される。

 彼女の描く魔術文字の特性を走らせる力は、即座に『バイスタンダー』の認識を阻害するだろう。
 あの念動力は確かに強大である。
 しかし、それを振り回すだけであるというのならば、そこからティオレンシアは勝機を引き寄せる。
 たとえ、己の力が『バイスタンダー』を打ち倒すものでなくても。
 他の猟兵たちが戦いやすくなるというのならば、己のユーベルコードは真価を発揮するのだ。
「何処まで行っても人は、こうやって進むしかないのよ。他の生命を喰らって生きていくのだから。けどまあ、そうねぇ……」
 誰かのためにと悪性そのものであっても走った者がいたことをティオレンシアは知っている。
 誰に知られたいとも思わず。
 誰に頼るでもなく。
 そうあるべきとして手を伸ばした者。

 失われた生命は戻らない。
 だからこそ、ティオレンシアは世界を救う。今日も、明日も。変わらぬ続く日常があるからこそ、救われる人もいるのだと知っているから。
「さあ、どーんとやっちゃってちょうだいな?」
 後は、とティオレンシアは続く猟兵達のために道をひらくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

ドッカーーンッ!と壁を破ってとうちゃーーっく!
あらら、世界観に似つかわしくないようなそうでもないような!
まあオブリビオンなんてみんなそんなもんかー

●見えなくとも
要は当てっこだね!何を強くして、何を弱くしてるのか
そういうのは得意だよ!と【第六感】からパターンを勘で断定して
攻撃力が高まってれば[球体]くんで防御を固め
装甲が犠牲になっているなら一気にUC『神撃』でドーーーーンッ!!
って感じで是々非々で対応していこう!

んもーそんな椅子に縛り付けられて暇そうにしちゃってー
もっと生きることの楽しさとか苦しいのとかを堪能しないとダメだよー
それと!命はもっと大事に使ってよね!



「ドッカ――ンッ! と壁を破ってとうちゃ――っく!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は疾走の勢いのままに『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の壁をぶち抜いて大胆ショートカットを決めて最奥へと飛び込む。
 いの一番に目に飛込できたのは青い巨人。
 体高5mはあろうかという鋼鉄の躯体。
 それはフレームめいた、それこそ人で言うならば筋繊維という鎧、装甲を喪った兵器であるように思えたことだろう。
「あらら、世界観に似つかわしくないようなそんなでもないような!」
 このサイバーザナドゥという世界においては、人は骸の海が雨として降るがゆえの閑居汚染に耐えられない。
 だから義体に換装して生きていく。

 ならば、目の前の黄金の玉座に座す『バイスタンダー』の存在もあながち間違っていないのかも知れない。仮に間違っていたのだとしても、それがオブリビオンというものだ。
「――夢見るは戦禍の運命。大鴉の翼は折れることなく羽撃く」
 声が響く。
 すでに『バイスタンダー』には猟兵達の多くのユーベルコードが叩き込まれている。
 躯体に繋がったケーブルの殆どは焼きちぎられ、その躯体に内包された生命力の殆どがサイキックとして放出されている。
 残された生命力を使い切ることも厭わぬというように『生ける屍』は迫る猟兵へと巨腕の如き念動力の迸りを叩きつけとする。

「流石にみえないってのいうのは厄介だけどさ! 要は当てっこだね! 何を強して、何を弱くしてるか。ま、言うまでもないよ!」
 黄金の玉座に座す『バイスタンダー』は動かない。
 動けないだけなのかもしれないし、すでに移動するという行為を捨てさっているのかもしれない。
 けれど、それでわかる。
『バイスタンダー』は攻撃に全振りしている。移動などする必要もなく。
 ただ只管に迫る猟兵を打ち倒すことだけを目的としているのだ。故に、ロニは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「触れれば、生命力を吸われる! 受けてはダメだ!」
 亜麻色の髪の男『メリサ』の言葉にロニは笑って返す。そんなの言われるまでもない。だって、己の中には第六感がある。
 五感を越えた感覚。

 それによって得るのは触れてはダメだという直感めいたもの。
 故に。
「んもー、そんな椅子に縛り付けられて暇そうにしちゃってー」
 迫る念動力の一撃を球体で受け止め、ロニは宙に舞う。
『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の艦内、その天井を蹴る。敵の目測は先立ってユーベルコードを叩き込んだ猟兵によって削がれている。
 ならば、自分がすべきことは簡単だった。
「もっと生きることの楽しさとか苦しいのとかを堪能しないとダメだよー! それと!」
 拳を振るい上げる。
 煌めく拳。
 ユーベルコードは、神撃(ゴッドブロー)そのもの。

 叩きつける拳は、あらゆる信仰無き者の心を叩き伏せる者。
 故に、ロニは『バイスタンダー』へと拳を叩き込む。
「生命はもっと大事に使ってよね!」
 それが生命を吸い上げ、『生ける屍』となってなお、存在し続けた者の責務であると示すように、その強烈にして苛烈なる拳の一撃が『バイスタンダー』の装甲無き躯体へと叩き込まれ、内包した生命力を吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

……ステラさん。
勇者の前で命の略奪とか、わたしイラっとしてしまいました。
『バイスタンダー』っていうなら、救命してくださいよ!

光の勇者として絶対に許せません!

あ、あれ、ステラさんそっちですか!?
でも『メリサ』さん生きてますから、死んでないと思いますから!(たぶん
……ステラさんのではないですけど。

でも、よかったです。
『メリサ』さん飛んで行っちゃったし、気絶とかならしてるかもだし、

ステラさんなら、どんな状態の『メリサ』さんでも抱えて逃げる、
くらいのやべーアクションはするかと……。

って、いえ。ちがいます。今回わたしは怒ってるんです!

ええ、もちろん本気です。
煽るだけ煽って傍観とか、いちばんタチ悪いですし、
そのうえ命を粗末に扱うなんて、していいはずないですから!

「かもん、【ソナーレ】!」
オブリビオンである前に、命を無碍に扱うものは絶対に許せません!

わたしの光属性、いまこそここにー!

【世界調律】、今回は手加減なしで思いっきりいきますよ!
命の残骸は、あるがまま、骸の海に還ってください!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
はい?ちょっメリサ様、えぇぇぇぇぇ?!
いやいや、ここは颯爽とコクピットに乗って
『これで善性と悪性が揃った。二つを備えた良心揺らぐ者こそ~』
的な口上から始まるラストバトルなのでは?!
というか、そこの青いの!!
|セラフィム《ガラクタ》のくせして
私の|エイル様《メリサ様》に何してくれてんです?ああん?

ルクス様アレ滅ぼし……おっと
思った以上にルクス様が|本気《マジ》でした
誰がやべーメイドですか
おかしいでしょこの流れ
やりますよ!

バイスタンダー……いえ
この場合はどうやら傍観者の方かと
戦いを呼び起こす癖に渦中にあらず、ですが戦いを促す者
戦いの末に生命を消費するというのなら|善性《セラフィム》ですらないのでしょう
|生ける屍《残骸》とはよく言ったものです
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリア呼び寄せ)
さぁ貴方の運命の女となりましょう
【ファム・ファタール】いきます!
これで終わりではありませんよ
【テンペスタース・クリス】!フォル、突撃です!
世界も生命も関係なく
ただ戦いの元凶として滅びなさい!



 青い巨人『バイスタンダー』の掲げた手より放たれた念動力は亜麻色の髪の男『メリサ』を拒絶するように吹き飛ばした。
 その光景を見たステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は己の中にある何かが音を立てて切れるのを聞いただろう。
「はい?」
 ビキ、と音が響く。
 何かが切れたような音の直後に訪れるのは、己の心が硬化していく音であった。
 亜麻色の髪の男が吹き飛ばされている。
 交錯する幻視。

 ステラにとって予想された事態は、あの青い巨人に亜麻色の髪の男『メリサ』が乗ること。あれが異世界の戦術兵器であるというのならば、あれに乗るのは『メリサ』を置いて他にはいないと思っていたのだ。 
 だが、拒絶された。
 それはいい。だが、彼女にとって許しがたかったのは。
「何……何してくれてんですかッ!! そこの青いの!!|『セラフィム』《ガラクタ》のくせして私の|『エイル』様《『メリサ』様》に何してくれてんです? ああん?」
 もしも、ここに『メリサ』が居たのならば、アンタのじゃない、と否定したところであろうが、それどころではなかった。
 ビキビキと血管がこめかみに浮かぶ。
 ああもう怒髪天を衝くというのはこういうことを言うのだとステラは理解しただろう。血液が沸騰する。体中から怒りが込み上げてくる。
「ルクス様アレ滅ぼ……」
「……ステラさん」
 ステラは見た。
 己よりも凍えるような怒りをもって大気を震わせるルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の姿を。

 彼女は怒りに震えていた。
「勇者の前で生命の略奪とか、わたしイラッとしてしまいました。『バイスタンダー』っていうなら、救命してくださいよ!」
 青色の巨人『バイスタンダー』は生命を救わない。
 それどころか『サイコブレイカー』たちの生命を、念動力をもってして存在し続ける『生ける屍』である。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』が、この存在を隠匿し、様々な悪事に手を染めて維持してきたのだ。
 その身勝手さたるや言うまでもない。
「光の勇者として絶対に許せません!」
 ルクスのあまりにも本気な雰囲気にステラは息を呑む。

「『バイスタンダー』……いえ、あれは『救命者』ではなく『傍観者』とでも言うべきかと。戦いを呼び起こす癖に渦中にあらず、ですが、戦いを促す者。戦いの末に生命を消耗するというのなら善性ですらないのでしょう。『生ける屍』とはよく言ったものです」
「――――夢見るは戦禍の運命。大鴉の翼は折れることなく羽撃く」
 増幅されていく『バイスタンダー』の念動力が二人を襲う。
 そして、彼女達に言葉が飛ぶ。
 吹き飛ばされた『メリサ』の言葉だった。
「あの念動力に捕まるな! 生命力を吸われるぞ!」
 その言葉にルクスは振り返る。よかった、と思った。吹き飛ばされた時は死んだものかと思ったが、どうやら無事である。
 彼の目的がどんなものであっても、ステラが彼を信じるのならばルクスもまた信じるのだ。というか。

「主人様のためなら、この生命いかようにも!」
「……なんか控えめですね」
「私をなんだと思っているのです!?」
「いえ、なんか、この状況だったら『メリサ』さん抱えて逃げる、くらいのやべーアクションはするかと……」
 きっとそうするものだと思っていただけにルクスはステラのテンションに驚いていた。控えめなところがおかしいっていうのもなんだか変な話ではあるけれど。
「誰がヤベーメイドですか。おかしいでしょ、この流れ」
「だって、いつものことがあるので……って、いえ、違います! 今回わたし怒ってるんですから!」
「なら、やりますよ! フォル! いらっしゃい!」

 掲げた手に応えるようにして現れる鳥型のキャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』へとステラは騎乗する。
「かもん、『ソナーレ』!」
 同時にルクスの元にもアイアンゴーレムじみた躯体。
 戦慄を奏でる。手元にあるピアノの鍵盤が弾かれる度に、『ソナーレ』の躯体が走る。
「オブリビオンをである前に、生命を無碍に扱うものは絶対に許せません! わたしの光属性、いまこそここにー!」
 勇者たる所以。
 音叉剣を掲げる『ソナーレ』。響くは、世界調律(セカイチョウリツ)。
 如何におのれ達に念動力の巨腕が迫るのだとしても、ルクスの瞳はユーベルコードに輝く。
 加減などない。
 目の前の存在は滅ぼさなければならない。
 存在し続けているだけで、世界の破滅が訪れる。すでに『生ける屍』とかしているというのに、それでもなお生命を吸い上げて己の存在を存続させようとする。

 それを赦してはおけないからこそ、ルクスの音叉は世界をあるべき姿に戻すために共鳴する。
「さぁ、貴方の運命の女となりましょう!」
 飛翔する『フォルティス・フォルトゥーナ』が風を纏う。
 凄まじい速度で飛ぶ機体は一直線に迫る巨腕の如きサイキックを弾き飛ばしながら、『バイスタンダー』へと飛び込んでいく。
「世界も生命も関係なく、ただ戦いの元凶として滅びなさい!」
 テンペスタース・クリスの一撃が迫る巨腕に十字の傷を刻み込みながら『バイスタンダー』の青い装甲へと叩き込まれる。
 黄金の玉座に座す『バイスタンダー』のアイセンサーに感情の色はなく。
 ただ、迫る脅威を排除せんとするためだけの防御機構が働く。サイキックを吸い上げ尽くしたがゆえに、もはや補給はない。

 猟兵達のユーベルコードは『バイスタンダー』が蓄え続けた生命を開放するようにきらめき、その散華でもって牢獄の如き青い巨人の躯体から霧散させる。
 そして、その青色の躯体は砕け、霧散していくのだった―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『電子鍵を盗め!』

POW   :    セキュリティプログラムを強引に破壊する

SPD   :    隠された罠を見つけ出し、解除する

WIZ   :    セキュリティを解析し、ハッキングで突破する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達のユーベルコードによって霧散していく生命力。
 それは開放とも言うべきものであったことだろう。数多吸われた『サイコブレイカー』たちの生命。牢獄の如き躯体にて消費されるだけでしかなかった彼らの生命は、『バイスタンダー』の躯体を打ち据え、打倒したからこそ、生命は回帰せずとも開放という道筋を辿る。
 その光景を亜麻色の髪の男『メリサ』は見上げる。
 何もできなかったのだと思っただろう。
「……此処からはアンタたちの領分だ。クローズドサイバースペース。この中に『ティタニウム・マキア』のマネーラインに繋がる『電子鍵』が存在している。とは言え、探すのは中々に骨が折れる……が」
 そう云う『メリサ』の手元からなにかの情報媒体めいたものが現れ、クローズドサイバースペースのアクセスポイントたる黄金の玉座へと差し込まれる。
「おっそいわよ、アンタ!」
 其処に在ったのは『ケートス』と呼ばれるワールドハッカーのホログラムだった。
「後はコイツに聞いてくれ」
「もうちょっと説明しても良いんじゃないの。口下手かっ! いらないことはべらべら喋る癖に!」
「お姉ちゃんの言う通り」
 ホログラムの後ろに『オルニーテス』の姿が見える。
 彼女達は猟兵たちが戦っている間に、どうやら再会を果たしたようであった。これも猟兵たちが導き出した結果であったことだろう。本来ならば、猟兵たちだけでクローズドサイバースペースの中で『電子鍵』を探し出さねばならなかったはずだ。

「そうよねぇ! さすが私の妹! さ、サクッと終わらせてしまいましょうよ。私がナビゲートするけど、やっぱりクローズドサイバースペースはこれまでの『ティタニウム・マキア』の情報が雑多に詰め込んであるし、当然のように電子罠もあるから、探すのは苦労するわ。けど」
 貴方達なら、と『ケートス』はホログラムで笑む。
 義体は今は失われているけれど、と彼女は笑ってあっけらかんとして言う。
「ああ、報酬は良いわよ。妹を助けてもらった恩もある。それに、お金なら『電子鍵』さえ手に入ればいくらでも引き出せるものね!」
「……現金が過ぎんだろ。とまあ、そういうわけだ。俺のことは警察機構に突き出すも、煮るも焼くもって感じだ。どちらにせよ、あとはアンタ達次第ってワケ」
 そういって亜麻色の髪の男『メリサ』は、からりと笑って猟兵達にクローズドサイバースペースのアクセスポイントたる黄金の玉座を示すのだった――。
村崎・ゆかり
いよいよ『ティタニウム・マキア』の『電子鍵』探索ってやつね。
『ケートス』、サポートよろしく。

『バイスタンダー』の玉座から電脳空間へダイブ。
「式神使い」で黒鴉召喚。これで、広域の情報を一気に浚っていくわ。
『ケートス』、『電子鍵』って見た目はどんなもの?

これで、『ティタニウム・マキア』ともお別れか。清々するわ。

『メリサ』は警察に突き出すようにしますか。|大企業《メガコーポ》の深いところまで踏み込みながら、その立場を利用しようともしなかった。
あなたも『ティタニウム・マキア』を潰したかったのかしら?
まあ、腐敗した警察と上手くやるのね。その行く先は、あなたの口八丁でしょうし。

これで一つ片付いたかな。



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の急所。
 マネーラインを掴むために必要なもの。それが『電子鍵』である。しかし、それは本来、厳重に管理され防壁を持って守られているものだ。
 しかし、猟兵たちは『ティタニウム・マキア』の要である重要施設『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を擱座させ、その内部に秘されていたオブリビオン『バイスタンダー』を滅ぼした。
 これにより、『電子鍵』納められたクローズドサイバースペースへとアクセスすることが可能となったのである。
「いよいよ『ティタニウム・マキア』の『電子鍵』探索ってやつね。『ケートス』、サポートよろしく」
「はいはい。じゃあ、準備よろしくて?」
「ええ、いつでも」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)の言葉に『ケートス』のホログラムが頷く。
 彼女のガイドがクローズドサイバースペースへの道筋を示す。
 アクセスポイントから飛び込むクローズドサイバースペースはあまりにも雑多な情報で溢れている。

 行く手を阻むのは恐らく侵入者を排除するための攻性プログラムであろう。
 次々と走ってくるプログラムを前にゆかりは瞳をユーベルコードに輝かせる。
「まったくもって厄介なこと。急急如律令! 汝は我が目、我が耳なり! 黒鴉召喚(コクアショウカン)!」
 ゆかりから召喚されたカラスに似た鳥形の式神たちがクローズドサイバースペースへと走る。
 攻性プログラムをゆかりは手にした薙刀でもって薙ぎ払う。
「さあ、あなたたち、行きなさい。こっちは私が抑える!」
 振るう薙刀の一閃によって次々と攻性プログラムが霧散していく。彼女が呼び出したとカラスの式神はすぐさまにクローズドサイバースペースの中を探るのだ。

「『ケートス』、『電子鍵』って見た目どんなもの?」
「まあ、鍵っていうくらいだからね。それこそ普通に鍵の形をしているわ。後、なんか色々探しているみたいだけど、何これ」
「ああ、広域の情報を探ろうと思っていたのだけど、いろんな情報が引っかかってくるのね」
 鳥型の式神から送られてくる視覚情報。
 その多くが戦闘義体に対するものであった。後は新興宗教を隠れ蓑にした義体の実験や適応実験、サイコブレイカーの簡易的な養成を為すためのドラッグ開発。
 それはまあ、手広くやっているようである。
「これも今日限りね。『電子鍵』さえ手に入れば……ああ、そうそう。『メリサ』、あなたの処遇だけど。警察に突き出すわ」
 その言葉に亜麻色の髪の男『メリサ』はクローズドサイバースペースの外で手をひらひらとさせている。

「それは随意にってことかな」
「|巨大企業群《メガコーポ》の深いところまで踏み込みながら、その立場を利用しようともしなかった。あなたも『ティタニウム・マキア』を潰したかったのかしら?」
「そういうこと」
「まあ腐敗した警察と上手くやるのね。その行く先は、あなたの口八丁でしょうし」
「そうでもない。この世界では金がモノを言うんだよ。俺の口からでたでまかせなんて誰も信じはしないし、取り合わないさ。金があってはじめて人間として扱われる。それ以外は虫けらのように使い潰されるか、おもちゃにされるかのどっちかだろうさ」
『メリサ』はそう言いながら特別に悲観した様子はなかった。
 経緯はどうあれ、『ティタニウム・マキア』は、猟兵達によって大きく弱体化していく。
 今探している『電子鍵』さえ手に入れれば、『死に至る病』として緩やかにその巨体を蝕まれ、滅びるしかない。

 故に、彼は特別に何かを思っているわけではないようだった。
「ま、ともあれこれで一つ片付く方向に向かうってわけね」
 ゆかりは雑多な情報をかき分けるようにして後に続く猟兵達に『電子鍵』探索の道筋をマッピングするように示していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
とりあえず、それなりに長く続いた因縁にもひとまずはケリがついたって感じねぇ。…目的を達成できたか、ってのはまあ微妙なラインっぽいけれど。

データベース総浚いするとなると流石にちょっと手が足りないわよねぇ。…じゃ、増やしましょうか。
|マン《自分自身》を核に●忙殺・写身を起動。内訳は○ハッキングと情報収集が4ずつ、残り一体の○情報伝達をフィルターにしてあたしが統括するわぁ。あたしは別にそこまで得意なワケじゃないけれど、「あたしたち」はスペシャリスト。猫の手よりは役に立つはずよぉ?

ああ、「蜂」さん?あたしは別に何もしないわよぉ?
そりゃまああたしたちを勝手に好き放題絵図面に巻き込んでくれやがったことに思うところはある…とゆーか割とふつーにムカついてはいるけれど。逆に言えばその程度なのよねぇ。結果的にメガコーポ一つぶっ潰せたわけで、別にあたしたちが何か損したとかそういうわけでもないし。
結局はお互い「次にどっち向いてるか次第」ねぇ。同じ方向向いてればそれなりに、相対したなら―――ま、そういうコトで。



 膨大にして煩雑。
 それが巨大企業群『ティタニウム・マキア』のクローズドサイバースペースにおける印象の一つであったことだろう。
「とりあえず、それなりに長く続いた因縁にもひとまずはケリがついたって感じねぇ」
 目的を達成できたか、というのならば、それはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)にとっては微妙な線引の上に立つものであった。
 しかし、本社ビルの地下にあった『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』は擱座している上に、『安心安全』を売る、というイメージに失墜は避けられないだろう。
 何よりも、これより猟兵達の手によって奪われる『電子鍵』。
 これさえ手にれれば、巨大企業群の急所であるマネーラインを抑える事ができる。

「とはいってもねぇ……この量でしょぉ?」
「この煩雑さも所謂一つの罠っていうか、方策の一つなんでしょうね。厄介極まりないわ。質でなくて量で押してくるっていうのは」
『ケートス』のホログラムの言葉にティオレンシアは苦笑いする。
 今まさに彼女は彼女の言葉の反対をするように、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
 中空に描かれるは魔術文字。
 忙殺・写身(インスタント・アルターエゴ)によって描かれたのは己を核とした九人のティオレンシアの幻影であった。
 彼女達はそれぞれことなる特性を有している。

 ハッキングと情報収集にそれぞれ長けた幻影が八人。残る一人は、彼女達が集めてきた情報伝達のフィルターである。
 これだけ煩雑な情報の海めいたクローズドサイバースペースにおいては、逆に脳が負荷に耐えられないだろう。
「うまい具合に分けたわね。これなら作業効率もあがるでしょ」
「あたしは別にそこまでこういうの得意なわけじゃあないのだけれどぉ……でも『あたしたち』はスペシャリスト。猫の手よりは役に立つって思わなぁい?」
「それは同意するわ。さ、サクっとやってしまいましょう」
『ケートス』たちとともにティオレンシアたちは即座にクローズドサイバースペースの情報をかき集め始める。
 取捨選択するように情報を処理していく。
 雑多な情報を整理していけば、即ち『電子鍵』へと至る道筋がみえてくるはずだからだ。

 まだ『電子鍵』へと至る道筋は捉えられていない。
 けれど、とティオレンシアは『メリサ』を見やる。猟兵達を散々に利用してきた彼の処遇を決めなければならない。
 その決定権は猟兵達にある。
「あたしは別に何もしないわよぉ?」
「以外だな。アンタは散々に利用されてきたことに腹を立てていると思っていたが」
「まあねぇ。あたしたちを勝手に好き放題絵図に巻き込んでくれやがったことに思う所は……まあ、あるわよねぇ。とゆーか、割とふつーにムカついていはいるけど」
 ティオレンシアの瞳が細められる。
 確かにそうなのだ。
 これまで『メリサ』という男は徹底的に猟兵達にオブリビオンをぶつけてきた。
 そうなるように誘引していた。それが導く結果が巨大企業群『ティタニウム・マキア』の失墜というのならば、うなずけるところもあるだろう。

 だが、それとこれとは話は別である。
 猟兵が組織ではなく個人である以上、そこにあるのは感情の問題なのだ。故に、『メリサ』はこうなった以上、自分が何をされても仕方ないと腹を決めているのだろう。
 いや、もしかしたら、端からそのつもりであったのかもしれないとティオレンシアは思う。
 故に、彼女は甘やかな声色とは裏腹に突き放す。
「逆に言えば、その程度なのよねぇ。ムカつく。それだけ。別にあたしたちが何か損したとかそういうわけでもないし」
「なら」
「結局はお互い、『次にどっち向いているか次第』ねぇ」
「俺とアンタたちが同じ方角を見ていると? 今回たまたま、とは考えないのか。いや、そう考えているのは当然ではあると思うが」
 ティオレンシアは『メリサ』に向き直る。
 細められた瞳の奥にあるものを『メリサ』は見ただろう。
「相対したら――ま、そういうコトで」

 言外にあるものを『メリサ』は感じ取っただろう。
 そして、堪忍したように両手を上げてティオレンシアに告げるのだ。
「おっかねぇ人だ。けどまあ……そうだな。俺の心というのも少しはスッキリしたように思える。アンタの気に入らねぇってものと俺が気に入らねぇってものが同じなのなら」
「ふん?」
「その時は、アンタの助けになると約束しよう。でもまあ、そうだよな」
『メリサ』はこれまで見せたことのないような笑顔でティオレンシアに告げる。
「俺の助けはアンタには必要なさそうな気がする。どんな状況だって切り抜けられるだけの強かさを持っているだろからな」
 その言葉にティオレンシアはどう答えただろうか。
 流れ込む煩雑な情報を処理しながら、細められた瞳がいつもの笑顔の形に変わり、いつもと変わらぬバーメイドのある種胡散臭さすら感じさせる微笑みを答えとするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
【POW】
まあ、そんな予感はしてたかな★意識や記憶、人格のデータを電脳へバックアップし体は亡くしても別の器で「生きてる」シルキーちゃんみたいなケースもあるしね★

さて。ハンドユニットを箱型ボディから展開して、と★
ハッキングしちゃうぞ★ホントに得意なのは|クラッキング《破壊活動》だから、セキュリティプログラム排除の方やっておくね★ホロ美少女がブレイド片手にガンガン切り捨てて行っちゃうぞ★
探るなら武器や兵器とかの在庫情報かな★ビースト達とか減った分の補充補充★

「メリサ」は…まあ消せとは言われてないし、他者との関わりを極力抑えて、実は終わった後しれっと姿を消す気だったとかっぽいし?好きにすればいいよ★



 大凡そんなところであったのだろうとシルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は予想していたし、予感めいたものがあった。
『ケートス』――鯨と呼ばれたワールドハッカー。
 彼女の死は偽装されたものだった。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』を欺くための方便。されど、それは命懸けの方便であったことだろう。
 気取られてしまえば、それこそ本当に生命を失う綱渡り。
 そのタイトロープの如き鉄火場を見事に切り抜けたのが『ケートス』というワールドハッカーなのだとしたら、その結末は当然良きものであると彼女は理解していたのだ。
「意識や記憶、人格のデータを電脳にバックアップし体は亡くしても別の器で『生きてる』シルキーちゃんみたいなケースもあるしね★」
「まあ、そういうとこね。ご同輩、というのは語弊があるけれれど。妹を助けてくれたこと、感謝するわ。それだけは本当のこと」
『ケートス』のホログラムが頭を下げるのを頭脳戦車であるシルキーは手を振って応える。

「あの子が此処までやれたのは、あの子の力だよ★」
「でしょー! さすが私の妹ってかんじ!」
「そゆとこ★ ま、それはさておきっと」
 シルキーの箱型の躯体からハンドユニットが展開される。目の前にあるのは黄金の玉座。
 そう、それこそが巨大企業群『ティタニウム・マキア』の急所たるマネーラインに繋がる『電子鍵』が存在しているクローズドサイバースペースへのアクセスポイントである。

 ここにハッキングをかまし、セキュリティプログラムの破壊を行おうとしているのだ。
「クラッキングしちゃうぞ★ どーせ、セキュリティプログラムもたんまりと走らせているんだろうし★ 得意分野でお手伝いってね★」
「いい腕じゃない。速いし正確。実際に戦うより、こっちのが向いているんじゃない、あなた」
「そっかなー★」
 クローズドサイバースペースに飛び込んだ攻性プログラムがシルキーのホログラムとなって迫るセキュリティプログラムを切り捨てていく。
「おっと、こっちはなんだろ」
「そっちは『商品』のデータベースでしょ」
「はーん★ なら、この在庫情報って……」
「文字通りってことね。発注すれば届くでしょ」
 なら、とシルキーは今回の戦いで喪ったロボットビースト達の分を補充するために発注を行う。
 無論、プログラムを走らせているので代金や諸々の心配事はクリアされる。

「よしっと★ これでロボットビーストたちの在庫はたんまりだぞ★」
「よくやるよ……」
 そんなシルキーの行動に『メリサ』はなんとも言えない顔をしていた。
「アンタは俺をどうするか決めたか?」
「まるで自分の価値がすんごいみたいな言い方だね★ でも、シルキーちゃん、消せって言われてないモノまで消すほど暇ではないんだぞ★」
「それはそれでなんていうか」
「どうせ、終わった後しれっと姿を消す気だったでしょ」
「……」
 その沈黙は肯定であったことだろう。シルキーはお見通しだと笑うように箱型の躯体を揺らす。
「好きにすればいいよ★ 好きに生きて、好きなことして。それがこの世界のサイバーザナドゥのやり方でしょ★」
 シルキーちゃんだって、そうしているし、と彼女は美少女ホログラムを展開し、面食らう『メリサ』に指先を突きつけて揺らすのだ。
「お仕事はきっちりやっておしまいっていうのが、一番いいんだよ。アフターサービスなんて、本当はアフターケアしないといけない事態にならないのが一番いいんだぞ――★」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

『メリサ』さん、「好きにしろ」なんて、なんてこと言うんですか!
煮られたり焼かれたりはしないと思いますけど、
舐め回されますよ! それも6時間くらい! 全身を!

やっぱり拉致もーどでしたー!

って、演奏! いいんですか!
ステラさん、最近リクエスト多いですね!
やっとわたしの演奏が癖になってきたんですね!
聴けば聴くほどやみつきになってしまったんですね!

そんな遠慮しないでください。
ステラさんはもちろん、『メリサ』さんにもいちどしっかりお聴かせしたかったんですよー♪

『ではっ』?……うふふふふ。
いつまでもチョロイン勇者と思っていただいては困ります♪(黒笑

【ハンガリー狂詩曲】で、逃がさないですからねー!

だいたいそれハネムーンとかじゃないですよね!?
ふつうの小脇ダッシュですよね!?

しゃ、しゃっきんへんさい……(揺れる乙女心

い、いえ。借金はわたしが演奏家としてコンサートで返すんです!
そのためにも、ステラさんにはいちばんの理解者でいていただかないと!

……捨てないでくださいよぅ(子犬系涙目


ステラ・タタリクス
【ステルク】
よーし、|エイル様《主人様》の香りがしまぁぁすっ!
ここからが|メイド《犬》の本番ですっ!
具体的にはメリサ様を捕縛して拉致します
ええ、名実ともに私のメリサ様になっていただく所存です
犯罪??ハハハ、このサイザナで何言ってるんです??
勝った者の総取りなんですよ!!答えは聞いてないっ!
誰がやべーメイドですか純愛の化身ですぅ!

あ、電子鍵とか適当にしておいてください
世界にも生命にも興味はありますが
私の最優先はメリサ様ですので!

というわけでルクス様この場は任せました
|ルクス様の素晴らしさを伝えましょう《何を言ってるのこの勇者とうとう狂った?》
ええ、存分に演奏してください私とメリサ様以外へ
私たちは!後で!聞きますので!!
この場をさくっと居なくなりますので
ではっ!!

ええいっくらいついてくるなっ!
私とメリサ様のハネムーンを邪魔するならルクス様とて容赦はしませんよ!
というかですねルクス様
電子鍵手に入れたらお金がたくさん
真面目に借金全部返せますよ?
この機会を逃すべきではないと思うのですが?
さらばっ!



 亜麻色の髪の男『メリサ』は堪忍したように『好きにすれば良い』、と己の処遇を猟兵達に委ねた。それは確かに潔いものであったかもしれないが、一部の猟兵。それもごくごく一人の猟兵にとってはキラーワードであった。
「よーし、|『エイル』様の香りがしまぁぁすっ!」
 ああ、これが念願の! と『メリサ』の体にすりすりくねくねしているステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は妖怪紫くねくねになっていた。
『メリサ』は困惑している、というより、うへ、という顔をしていた。
 彼の年の頃は不詳である。
 しかしながら、青年と呼ぶにはすでに成長しきっている。

「ここからが|メイド《犬》の本番ですっ!」
「『メリサ』さん、『好きにしろ』なんて、なんてこと言うんですか! 煮られたり焼かれたりはしないと思いますけど、舐め回されますよ! それも六時間くらい! 全身を!」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の言葉に『メリサ』はいやまさか、そんなことはしないだろうと、何いってんだこの勇者、という顔をしていたが、ステラの尋常ならざる様子を見れば、それも在りえてしまうかも知れないと思ってしまった。
 しかし、この際である。
「いやまあ、言ったしなぁ。『好きにしろ』って。警察機構に打ち込むって奴もいれば、好きにすればっていうやつも居る。ともすれば……」
「具体的に捕縛して拉致しまぁぁすっ!」
「こういう人もいるし。猟兵ってのはつくづく」
 呆れた様子の『メリサ』にルクスはほらー! とステラの言葉に暴走の気配を感じ取る。いやもうかなり暴走してはいるけれど。まだ序の口である。

「ええ、名実ともに私の『メリサ』様になって頂く所存です」
「それって拉致って意味じゃないですか! 犯罪ですよ! 犯罪! わたしまで巻き込まれてお尋ね者になるじゃないですか!」
 出禁くらっている勇者が言う事? と誰かは思ったが、まあ、それは置いておくとする。この際。
「犯罪? ハハハ、このサイバーザナドゥで何言ってるんです? 勝った者総取りなんですよ!! 答えは聞いてないッ!」
「やっぱりやべーメイドじゃないですか!!」
「いやまあ、警察機構に引き渡すって言ってるからなぁ。でもまあ、アンタの言う勝者総取りってのは同意するところだよ」
「ほらねー!『メリサ』様もそう言っています!」
「その前に『電子鍵』! どうするんですか! それ探さないといけないんですよ!」
「あ、それは適当にほかしといてください。世界にも生命にも興味はありますが、私の最優先は『メリサ』様ですので!」

 無茶苦茶言っているこのヤベーメイド、とルクスはわなわなと肩を震わせる。
 とうとう前科者にメイドがなってしまう。
 それだけは避けなければならない。これ以上、厄介事を抱え込むわけにはいかないのだ!
「で、でも、お仕事ちゃんとしないとグリモア猟兵さんの、げんこつが……!」
 ぶおんぶおんってどっかで素振りの音が聞こえた気がした。
 え、そういう人でしたっけ、という疑念をステラは思う。けれど、それとこれとは話は別。邪魔するものがいるのならば、それらを廃して進むのが猟兵なのである。
 愛の前に障害などただの燃料でしかないのである。

「では、ルクス様。この場は任せました」
「任せたってどうすれば……あ、演奏していいってことですか!」
「ええ、まあ。私達が逃げおおせるまでの時間を稼いでくださるのなら」
「ふふ、ステラさん最近リクエスト多いですね! やっとわたしの演奏が癖になってきたんですね! 聴けば聴くほどやみつきになってしまったんですね!」
「|ルクス様の素晴らしさを伝えましょう《何言ってるのこの勇者とうとう狂った?》」
「アンタ、大分、いまおかしなこと言ってるって自覚ある? 俺にもルビっぽいのみえた気がするんだけど」
「シッ! ええ、存分に。私達は! 後で! 効きますので!! この場をさくっといなくなりますので!! ではっ!!」
 ステラは『メリサ』を抱えようとするが、『メリサ』は、いや演奏聞くって言ってんじゃん、と譲らない。

 本能的にステラに従ったらどうなるかを理解しているのかも知れない。
 動物的な本能的なあれ。
「『メリサ』さんは興味津々ですね! ええ、一度しっかりお聞かせしたかったんですよー♪ ……『ではっ』?」
 ん? とルクスは気がつく。
 今、『ではっ』って言った? 演奏リクエストしておいて聞かないでどっかに逃げようとした?
 あっ、とステラはルクスの気配が変わったのに気がつく。
「うふふふふ」
 やべー笑い声である。
 あらあらまあまあ、と並び立つ不敵な笑み!
「いつまでもチョロイン勇者と思って頂いては困りますよ♪」
 ハンガリー狂詩曲(ハンガリーキョウシキョク)。
 それは常識を破壊する演目。

 ステラが思い描く常識が『メリサ』との逃避行であるというのならば。
「そんな常識、ここで打ち砕きます!」
「ええいっ、くらいついてくるなっ! 私と『メリサ』様のハネムーン邪魔するならステラ様とて容赦はしませんよ!」
「だいたいそれハネムーンとかじゃないですよ!? ふつうの小脇ダッシュですよね!?」
「女の人に抱えられるなんて俺初めて……」
「そこっ、変に顔を赤らめないッ!」
「冗談じゃねーかよ。厳しいな、ちゃんルクは」
「誰がッ!」
 漫才みたいな追いかけっけ子が『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の中で繰り広げられている。

「というかですね、ルクス様」
 追いかけっ子は一巡してまたクローズドサイバースペースのアクセスポイントに戻ってきてしまっていた。
 息を切らす二人。
 小脇に抱えられた『メリサ』。
「『電子鍵』を手に入れられたお金たくさん。真面目に借金返済できますよ? この機会を逃すべきではないと思うのですが」
 ステラの言葉にルクスはたじろぐ。うっ、と痛い所を疲れた。いろんな世界を出禁になっているルクスであるが、抱えた借金もまた凄まじいことになっている。
「しゃ、しゃっきんへんさい……」
 揺れる乙女心。
 それ乙女心じゃないよね。
「い、いえ! 借金はわたしが演奏家としてコンサートして返すんです! そのためにもステラさんにはいちばんの理解者でいていただかないと!」
「なんです、その一番怖い立ち位置!?」
「だってぇ……捨てないでくださいよぅ」
 すがりつくルクス。
 子犬の涙目。
 うるうるきゃんきゃんくぅ~んってやつである。その様子を見ていた『メリサ』は小脇に抱えられていたステラの腕をそっと解いて、膝をつく。

「じゃあ、こうしよーぜ。俺はこれから警察機構に打ち込まれる。けれど、まあ、真っ当に刑務を果たしたら綺麗な身だ。『刑務を全うに果たして出所したら』、俺はアンタのモノにでもなんにでもなろう。その間は、このお嬢さん……ちゃんルクを支えていてくれよ」
 ダメか?
 ステラは二重に責め立てられていた。
 子犬勇者といかにもダメンズなイケメンのツープラトン攻撃。
 それを前にしてステラはなんと応えるだろうか。

 きっとステラならばルクスを見捨てることはないだろうし、そして、何より主人様と慕う彼からの願いなのだ。
 それを承服しないという選択肢はメイドたるステラにはないだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
むむ、小娘、貴様の願いは叶ったか?
まあどっちでも構わぬ、その変身アイテムと魔法はずっと貴様のものだ

……やっぱりお金が必要なら我が創っては……ダメか
とりあえずまあUCで分裂して総当たり人海戦術で警備を突破しよう
なあに、一人でも|外《現実》に残しておけば最悪突入組が全滅しても何とかなる!

……で、「メリサ」だが……微妙に言動があの|赤い機械人形《エイル》を思い出すのよな
「何一つ救えなかった」、つまりは「自分が救うつもりでいた」事、やたら「猟兵」に突っかかってくるところとか。
まあ同じかどうかは奴のこれから次第だろうが……だが割と内心ではこういう失敗や挫折を長く引きずるタイプっぽい気がしてなー……



「あの、これ……」
『ケートス』のホログラムの背後から覗き込む『オルニーテス』が手にしていたのは、ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)より託されていた変身アイテムであった。
 彼女の身にはワルルーナの魔法という加護が施されている。
 故に此処まで無事に『ティタニウム・マキア』との争いに飛び込みながらもデタラメな力で守られてきたのだ。
 それを『オルニーテス』は願いが叶ったがために返却しようとしているのだろう。
 だが、ワルルーナは頭を振る。
「小娘、貴様の願いは叶った。だがな、その変身アイテムと魔法はずっと貴様のものだ」
「でも、さ。これってあなたの」
「それは貴様の欲望。願い。その結果だ。ならば、それを誰かに渡すことなどあってはならぬのだ。自らの欲望は自らだけのものだ。我は、そのために力を振るう。小娘、貴様の願いが叶うことが我の欲望なのだからな!」
「うん……でもさ、助けてくれたの、嬉しかったの。だから、今度困ったことがあったら私が助けるから!」
「フハハハッ! そんなときなど未来永劫来ぬわ! 我がピンチになる時なぞな! 気にするな、小娘……いや、『オルニーテス』!」
 ワルルーナの気風の良さを示すような笑い声が『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の艦内に響き渡る。

 とは言え、まだ猟兵としてのワルルーナのしごとは残っている。
「ふむ。『ティタニウム・マキア』とやらを潰すには金が必要と……なあ、やっぱり我が創っては……」
「それもいい手でしょうけど。お金が増えれば、価値も暴落する。そうなれば、必然的に金の価値が落ちた『ティタニウム・マキア』は大打撃を受けるけど……まあ、ほかも巻き込むからダメね」
『ケートス』のホログラムの言葉にワルルーナは、やっぱりだめかーと肩を落とす。
 なんかお金たくさん作りたいのだろうかと『オルニーテス』は恩人が落ち込んでいる様子に慌ててしまう。

「まあ、こういうのは地道にやるのが最も大変なのだ! ならば、無尽の堕天竜魔王・改(ワルルーナレギオンプラス)! あっとーてきな、わがぐんのじんかいせんじゅつで!」
 ワルルーナの瞳がユーベルコードに輝き、ちびワルルーナたちが一気にクローズドサイバースペースのアクセスポイントへと接続していく。
 そう、クローズドサイバースペースの情報が圧倒的な物量で煩雑としているというのならば、こちらも圧倒的な数で処理していくまでなのだ。
「じょーほーせんそーはかずだよ!」
「フハハハハ! 実はわれひとりだが! まーなんとかなるだろう!」
 分身したちびワルルーナたちが情報を処理していく間、ワルルーナは、なんか向こうから疲れた様子で戻ってきていた『メリサ』を認める。
 あのまま逃げることもできたであろうに、戻ってきている当たり、なんか抜けてるなぁとワルルーナは思った。
「『メリサ』と言ったか、小僧」
「小僧って言われる歳じゃあねーんだけど。まあ、アンタから見たら、俺もまだケツの青い小僧か」
「大丈夫か」

 ワルルーナの言葉は短かった。
『メリサ』に対するワルルーナの印象はそう多くはない。
 面識もあったわけではない。
 けれど、彼の言動にチラつく影がある。それはクロムキャバリアで戦った|赤い機械人形の頭部たるロボットヘッド《『エイル』》を思い出すせいもあったからだろう。
『何一つ救えなかった』とはつまるところ、『自分が救うつもりでいた』ことにほかならない。
 そして、猟兵を嫌う様子を見せていたところも煮ているように思えたのだ。
 その道筋が『エイル』と同じなのかどうかはワルルーナにはわからない。同じようになるのかも定まっていない。
 ならばこそ、彼は今回の失敗を、挫折を引きずるように思えたのだ。
「もう一度聞く。大丈夫か」
「……敵わねぇな。正直に言えば、自信ベコベコだよ。本当に。けどまあ、悪い気はしていない。別に失敗したからって折れるほど、俺が選んだ道は容易く諦めて良い道じゃあない」
「ならば、貴様の願いは」
「変わらず『平和』だよ。アンタにこの願いは……叶えてもらうわけにはいかねーけどな」
 そう言って『メリサ』は笑う。
 その笑顔を見て、ワルルーナは頷くだろう。今の彼ならば、己の心配は杞憂であると確信できるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
ん……貴方が『ケートス』か…噂はかねがね…
…それで…この中に電子鍵がある…と…ふむ…

【我が身転ずる電子の精】を発動…右目と腕を粒子化することでデータの可視化と直接干渉を可能に…
…サイバースペース内であればあらゆる情報を見抜く右目となり…
…あらゆる物に干渉し改竄が可能な腕となる…
…これで電子罠を見抜いて片っ端から解除していくとしようか…
…罠は沢山あるけど大した脅威ではいな…予測されないようにかパターン外しに拘り過ぎてて逆に予想しやすくなってる…

…ところで、『ケートス』と『メリサ』はどう言うご関係で…?
仕事上で対立してただけじゃ無いようにも思えるけど…



 浮かぶホログラム。
 そこに映っていたのは一人の女性。『ケートス』と呼ばれ、『巨鯨』とも呼ばれた類まれなるワールドハッカー。
 彼女は『メリサ』によって殺されたと思われていたが、それは巨大企業群『ティタニウム・マキア』を陥れるための一計であったようだ。
 義体には電脳なく、電脳とバックアップのみを残した離れ業をやってのけることができたのは、この世界サイバーザナドゥありきであったことだろう。
「ん……貴方が『ケートス』か……噂はかねがね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は猟兵たちが打倒したオブリビオンの座していた黄金の玉座、『ティタニウム・マキア』のクローズドサイバースペースへと至るアクセスポイントに到着し、彼女に軽く挨拶を済ませる。

「こちらもね。アンタたちの噂は聞いてるわ。度々、サイバースペースでも知られている程度には私も把握しているわ。黎明の魔女」
「……そう呼ばれるのは、なんとも……それで……この中に『電子鍵』がある……と……ふむ」
「そ、今、アンタのお仲間と目下煩雑な情報を処理しながら探索中ってわけ」
「なら……我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰」
 メンカルの瞳がユーベルコードに煌めく。
 我が身転ずる電子の精(コンバート・テクノマンサー)と小さく呟いた彼女の体が粒子の集合体へと変わっていき、即座にクローズドサイバースペースへと侵入していく。

「五体の全てを情報干渉可能な集合体、セルとして動かすってわけ。常識外って感じがするわね!」
「……そう……これならば左目はあらゆる情報を見抜く……腕はあらゆるものに干渉し、改ざんする事が可能になる……」
 とすれば、もはやクローズドサイバースペースにあるセキュリティプログラムや罠の類いはメンカルにとって障害たり得ないだろう。
 膨大な数のトラップが用意されているのだとしても、それは大した脅威にはなり得ないだろう。

「やるじゃないの。というか、こういう干渉に関しては私よりも上って実感させられるわ」
「……ん、これで多くの罠があると予測されないようにアルゴリズムの変動を考えられているのだろうけど、パターン外しに拘りすぎてる」
「逆に予想しやすいわよね。こういう逆張りやろーって言うのは」
 二人は共にプログラムや技術的な会話として並び立つ者同士のシンパシーめいたものを感じていたことだろう。
 メンカルとしては仕事がやりやすいパートナーのように感じられていた。
 処理を施していくプログラムの傍ら、メンカルは関連する事件から疑問に思っていたことを尋ねる。
「……ところで、『ケートス』と『メリサ』はどういうご関係で……?」
「は? え、それ気になる所?」
「……仕事上で対立していただけじゃないようにも思えるけど……」
「アハハ、簡単よ。ビジネスパートナーってだけ。あいつが私に仕事を振った。私が請けた、それだけ。まあ、アイツはアイツなりに色々考えてたみたいだけどね。でもまあ、そうね。ああいう意地っ張りな所は嫌いじゃないわ」
「跳ねっ返りって言いたい?」
「そういとこね。全部自分でやろうっていうところに、今のアンタに私が感じてるであろうシンパシーめいたものを私もアイツに感じていたのかも」
 でも、結局、と今の現状を見やれば一人で何でも抱えるよりは、誰かと手を取った方が速い、と気がついたと『ケートス』は苦笑いする。

「さ、もう少しがんばりましょう。電子鍵さえ手に入れれば、後はこっちのものなんだから」
「……ん、経路がクリアになってきた。後もう少し……」
 メンカルと『ケートス』は十年来のパートナーのように息合うコンビネーションで次々と攻性プログラムを排除し、トラップセキュリティを突破していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァルターン・ギャンビット
どうやらオルニーテスの嬢ちゃんの仇打ちから始まった一連の事件はこれで終わりって事みたいだな。
良かったじゃねえか、オルニーテスの嬢ちゃん。死んだ筈の身内と再会できて。

にしてもこの『電子鍵』ってのが本命のお宝らしいな。
フォッフォッフォッ、それじゃ海賊らしく奪いに行きますか。
クローズドサイバースペースに侵入して俺様の部下【宇宙忍者軍団】を呼び出すぜ。こいつらの偵察、捜索、情報収集技能でお宝の場所を人海戦術で割だすぜ。
見たか、ケートスとやら。これが宇宙海賊の力よッ!
お前何もやってないって?
フォッフォッフォッ、部下を信じて任せるのもボスの仕事よッ!


【アドリブ歓迎】



「どうやら『オルニーテス』の嬢ちゃんの仇討ちから始まった一連の事件はこれで終わりってことみたいだな」
 ヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)は破壊されて残った黄金の玉座を見上げる。
 体高5m級の戦術兵器が安置されていた玉座こそが巨大企業群『ティタニウム・マキア』のクローズドサイバースペースへとアクセスするポイントそのものだったのだ。
 戦いを終えてホログラムで現れた『ケートス』と、その背後に映り込む『オルニーテス』の姿。無事に再会できたことをヴァルターンは素直に喜ぶ。
「良かったじゃねえか」
「ありがとう、えっと、シノビン星人さん、でいいのかな?」
「俺様は宇宙忍者軍団の頭領、ヴァルターン・ギャンビット様だ! 次はそう呼びなッ!」
 ビシっと鋏の腕を突きつけてヴァルターンは、フォッフォッフォッ、と不気味に笑う。

「う、宇宙人って本気で言ってる?」
『ケートス』がヴァルターンの造形をまじまじと見て首を傾げている。
 猟兵であるヴァルターンは、一般人に違和感を与えない。だから、本来であれば違和感しかないはずであろうシノビン星人の姿を見ても普通の人、という感覚しか覚えないのだろう。
「おうともよ! まあ、いいじゃねーの。今は『電子鍵』っていうお宝が本命で、これを探してるんだろ?」
「そ、そうね。今、経路を洗っている最中だから……」
「フォッフォッフォッ! なら海賊らしく奪いに行きますか!」
「さっきニンジャって言わなかったかしら!?」
「忍者にして海賊! それがヴァルターン・ギャンビット様よッ! フォッフォッフォッ!!」
「あーもーうっさい!」
「フォッフォッフォッ! 出番だぜ、お前らッ!」
『ケートス』の混乱をよそにヴァルターンの瞳がユーベルコードに輝く。
 瞬時に現れるのは宇宙忍者軍団のシノビン星人たち。それは百を越える数で持って一気にクローズドサイバースペースの内部にある情報を処理していくのだ。

「うそっ、なんでこんなに処理速度速いのよ!?」
「フォッフォッフォッ! 遅えッ! 銀河を行き交う俺様たちにかかればこんなもんよ! 見たか、『ケートス』とやら。これが宇宙海賊の力よ!」
「忍者軍団じゃないわけ!?」
「こまけーことは気にすんないッ!」
「ていうか、アンタ何もやってないじゃない!」
「フォッフォッフォッ」
「笑ってごまかすな!」
「部下を信じて任せるのもボスの仕事よッ!」
 それって結局何もやってないってことじゃないの! という『ケートス』のツッコミをよそにヴァルターンは悠々自適に部下たちの仕事をぶりに頷く。

 そう、これまでヴァルターンは戦いまくってきたのだ。
 巨大化したり、破壊光線をぶっぱなしたり、まあ、それはもう宇宙忍者らしい戦いをしてきたのだ。ちょっと疲れたのもある。
 けれど、部下たちががんばっているのだ。
「フォッフォッフォッ! さあ、俺様の部下たちの仕事振りを『ケートス』に見せつけてやれ! 人海戦術でお宝の場所を先に見つけたやつには俺様から最高級宇宙寿司パックをくれやるぜッ!」
「宇宙寿司!?」
 なにそれ、という『ケートス』の言葉にヴァルターンはニヤリと笑って、それは『電子鍵』を見つけた後の楽しみだと言うように、シノビン星郷土料理弁当をちらつかせ、労働意欲を倍増させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

さてー、では…サポートお願いしますねー。
UC使ってハッキングなど強化して電子情報を拾いやすくしましてー。電子鍵探しですー。
ああ、罠には…内部三人が、四天霊障を操って迎撃してますからー。
たまにしか関わってなかったですがー、『ティタニウム・マキア』との付き合いも長かったですねー。『死に至る病』とは…言い得て妙な。

メリサ殿はとくにー?その動きは『忍びとしてわかる』ものですからー。
力ある人のことを利用しつつ目的のために暗躍する、なんて…当たり前のことでしょうに。



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』のクローズドサイバースペースは雑多な情報で溢れかえっていた。
 例え、黄金の玉座――アクセスポイントへと到達してもすぐに『電子鍵』を手に入れることは叶わない。
 この雑多な情報をかき分け、電子罠や攻性プログラムの数々をかいくぐって行かねばならないのだ。
 故に猟兵たちは手分けをしてクローズドサイバースペースの中を探索する。そのナビゲートをするのがホログラムで浮かび上がる『ケートス』であった。
 彼女は一時、『メリサ』によって殺害されていたと思われていたが、実際には躯体のみを運び込まれ、電脳は安全な場所へと隔離されていた。
 そして今、サイバースペースを経由して猟兵達をサポートしくれているのだ。
「助かりますー。いやはや、こうした機械に関しましては、どうにも不得手とまでは言いませんが、やはり得意とも言えないものでしてー」
「今は一人でも多くの労力が必要なんだから、そう謙遜する所でもないでしょ。それに、アンタたちはユーベルコードがある」
「ええ、四悪霊・『改』(シアクリョウ・アラタメ)。我等を前にして隠すものがあれば、それを暴き立てるのが、この力でしてー」

 ユーベルコードに煌めく『疾き者』の瞳。
 霊障をサイバースペース内で発露すれば、己たちを排除線とするセキュリティプログラムに対する攻性ウォールへと変わるだろう。
 これを利用して『疾き者』は次々とクローズドサイバースペース内部の情報を精査していくのだ。
「我々も時折、事件に関与してきましたがー……『ティタニウム・マキア』との付き合いも長かったですねー」
 それもこの事件が解決すれば緩やかに収束を見せていくことだろう。
 そう、『電子鍵』。
 これを手に入れることによって『ティタニウム・マキア』のマネーラインを抑える。そうすれば、『ティタニウム・マキア』と言えど、金の流出を抑えることはできない。
 いわば、『死に至る病』であり、塞がらぬ傷であったのだ。
 言い得て妙とはこのことであろうと『疾き者』は納得する。

 情報の波を躱しながら、『疾き者』は『メリサ』のことを考える。
 彼の処遇は猟兵に委ねられている。
 如何にでも彼を裁くこともできれば、警察機構に突き出すこともできる。弾劾することもできるだろう。
 それほどまでに彼はこれまでの一連の事件において猟兵たちを利用してきた。
 オブリビオンへと誘引してきたのだ。
 けれど、『疾き者』は忍びとしてはわかる分類だと思っていた。
「誰も彼もが何かを利用せずには生きてはいられない。どうあっても誰かの袖をひっかけなければならない。肩をぶつからずに歩くことができないように、どれだけ気に留めていても、どうしようもないことが襲ってくるように」
 だから、と『メリサ』のことをどうこうしようとは考えなかった。
 それが当たり前のことであると思ったからだ。

 それを甘い、と言う者もいるかもしれない。
 罪は罪だと言うかもしれない。
 けれど、誰もが罪を追わずには生きてはいられないのだ。当人がどう思うかだけが、今回の事件において考えること。
「ならば、我等から告げる言葉はなく」
 故に『電子鍵』の捜索に注力し、『疾き者』たちはクローズドサイバースペースの情報の波をかき分けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
今回も出遅れちまったな…
「色々都合があったから仕方ないよご主人サマ☆」
取り合えず…電子鍵強奪は手伝うか
…つか…メリサ…やっぱりおめーはペテン野郎だったか

UC発動
こういうのは物量だよな?(げそ
電子世界を縦横無尽に飛び回る幼女軍団

【情報収集・視力・戦闘知識】
あらゆる情報を収集し電子鍵のヒントを見つけ出し他の猟兵にも伝達
基本支援に徹

なので作業は幼女軍団人任せ僕はメリサとだべる


メリサの処遇については僕は関与しねー
そこまで色々手伝ったわけじゃねーしここまで頑張った奴らが関わるべきだろ

まぁ…僕は…ちょいと浮かんだ妄想物語でも語るとすっか
「ご主人サマ?」
いやな…遠いロボット乗り同士が戦う世界でな
エースって呼ばれた奴が
必死ぶっこいて戦って…最後に多くの事件の黒幕と対峙して…最後は戦いではなく…対話に立って…光の渦に消えちまうんだ
そこでそいつの物語は終わる
だけどな…そいつは遠い遠いもっと奇妙な世界の過去にたどり着いて…ま自分の為に戦うんだ…
ああ
気にすんな…ふっと浮かんだ僕自身信じられない妄想だ



「今回も出遅れちまったが……」
『最後に間に合ったんだから良しとしよーよ、ご主人サマ☆』
『メルシー』の言葉にカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は頷く。
 まあ、そういうもんだな、と切り替える。
 確かに戦いには間に合わなかった。けれど、巨大企業群『ティタニウム・マキア』のマネーラインを抑えるために必要な『電子鍵』は未だ見つかっていない。
 これを見つけ、巨大企業群に『死に至る病』を植え付けることが、今回の事件においてやらねばならぬことなのだ。
「とりあえず……『電子鍵』強奪は手伝うか……つか、『メリサ』……やっぱりおめーはペテン師だったか」
 カシムが見やるのは疲れたように肩を落とす亜麻色の髪の男『メリサ』であった。
「ペテン師とはまた言い方って思うけどな。まあ、でもアンタらから見たらそういうふうに見えるだろうな」
「嘘つけ。どう考えてもペテン師ですって顔しているじゃあねーか」
「そんな顔してます、俺?」
「してるわ」
『ご主人サマ☆ さっさと作業終わらせちゃお☆』
『メルシー』の言葉にカシムアクセスポイントに向き直る。
「わーったよ。ああ『メリサ』、オメーには後で話あるからな」
「いや、今聞いとくよ。こういうのは、後回しにすると面倒だぜ?」

 その言葉にカシムは対軍撃滅機構『戦争と死の神』(メルシーハルノヨウジョマツリ)を発言し、幼女『メルシー』たちの人海戦術で持ってクローズドサイバースペースへとアクセスさせる。
 つまるところ、数。
 どれだけ膨大で雑多な情報が『電子鍵』を守るための方策であったとしても、猟兵達のユーベルコードを持ってすれば、これらを突破することなど分けないことなのである。
「おめーら、頼んだぞ。あらゆる情報を収集し『電子鍵』のヒントを見つけ出してこい。他の猟兵にも伝達な」
『はーい☆』
『もっちろーん! おまかせろり☆』
 返事よくクローズドサイバースペースへと飛び立っていく幼女『メルシー』たちを見送り、カシムは『メリサ』へと向き直る。

「おめーの処遇に対して僕は関与しねー。そこまで色々口出しできるほど手伝ったって感じじゃねーし、此処までがんばってきた奴らが決めることだろ」
「それで、アンタは俺に何を言いたいんだ?」
『メリサ』の瞳がカシムを捉える。
 弾劾したいわけでもなく、ただ糾弾したいわけでもない。
 だからこそ、『メリサ』は訝しむようだった。
「まぁ、聞けよ。ちょいと浮かんだ妄想物語でもな」
「何を言っている?」
『ご主人サマ?』
 二人の反応も尤もだったことだろう。
 これから己が語るのは、まったく関係のないことなのかもしれなかったからだ。

「いやな……遠いロボット乗り同士が戦う世界でな。『エース』って呼ばれたやつが、必死ぶっこいて戦って……最後に多くの事件の黒幕と対峙して……最後は戦いではなく……対話に立って……光の渦に消えちまうんだ。そこでそいつの物語は終わる」
『メリサ』の瞳は揺らがない。
 星映す黒い瞳は、亜麻色の髪が揺れてかすかに隠されるようでもあった。
「だけど……そいつは遠い遠いもっと奇抜な世界の過去にたどり着いて……ま自分の為に戦うんだ……」
「一つ」
『メリサ』は指を立ててカシムに告げる。

「一つ、訂正しておこうか。アンタの語るそれは、一つにおいて正しいことを言っていると、俺の分かたれた何かが言う。だが、『エース』と呼ばれたそいつは、違う。そいつは『俺』じゃあない。無論『僕』でもない。それは、そいつだけの物語だ」
 吐き出さる息は何処か優しかった。
 これは、と『メリサ』は瞳を細めた。
 きっとこれは、と呟く言葉は本来ならば響くことのない言葉であったことだろう。
「ああ、きっとこれは父性、というやつなのだろうな。俺の中の何かが、今、そうしたものを感じている。誇らしいような、なんと言えば良いのか」
「……妄想だって言っただろ。僕自身、信じられない妄想だ」
「……だろうな。俺は誰かのために戦うんじゃなあい。俺は俺の為に戦っていた。今回だってそうだ。誰かのためにと思えたのならば、受け取り手の感性によるもんだ」
「だから、と言うんだろう、おめーは」
 このペテン師が、とカシムは笑い、そして『メリサ』も苦笑いするように表情を崩し、笑うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

●今何でもって言った?
んもーまだ絶対言ってないことあるでしょー
でもやったね!いまちょうど神父さんを探してたんだよね!
ロニロニ教会の!
うんうんきっと似合うよーきみっとすっごくうさんくさいし!

●ど・れ・に・し・よ・う・か・な!
じゃあサポーターのケートスくん!
それっぽいファイルをじゃんじゃんこっちのフォルダにリストアップしていってねー
その中からボクは勘【第六感】でそれっぽいものをこれ!それとこれ!って感じで選んでこう!
やだなー勘っていうのは当てずっぽうじゃないんだよ?
言うなれば膨大な知識と経験から導き出される独自の検索エンジンみたいなものだよ!

●これは実際ただの習性・生態なのだけれど
鳥っていうのは狭い巣や籠にはストレスを感じないんだそうだよ
つらいことがあるとしたらそれは孤独だけ
こんなちっぽけな機械の中に広大なサイバースペースがあるように
胸の中に心躍らせることのできる世界と、そこでいっしょにすごす家族がいればそんなに不自由でもないんじゃないかなあ?



「ん? 今なんでもって言った?」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は亜麻色の髪の男『メリサ』の言葉に、ぴくりと反応を示した。
「ああ、言ったけど。でもまあ、この後俺は警察機構に突き出されることになってんだが」
「んもー! まだ絶対言ってないことあるでしょー!」
「そう言われるとそうだ、って言っておいた方が得な気がしてくるよな」
 ふざけたやり取りをするロニと『メリサ』。
 彼らの間にあったのは、利用し、利用される間柄でしかなかっただろう。
 けれど、ロニはそんなコト関係ないとばかりに笑っていうのだ。
「いまちょうど神父さんを探していたんだよね! ロニロニ教会の!」
「なんだ、そのトチ狂ったような新興宗教みたいな名前の教会は。それって『イェラキ』が逃げ回っている案件のあれじゃねーのかよ」
「あ、知ってる?『イェラキ』くん!」
「アンタか、やっぱり」
「いやーでもなー。『イェラキ』くんより、君のがいいよ。だって、うんうん、すっごくうさんくさいし!」
「褒められている気がしないんだが」
 そんなやり取りをしながら、しかし、『ケートス』のホログラムが叫ぶ。

「そんなのいーから! こっち手伝いなさいよ! 今『電子鍵』までもうちょっとの所まで来てるんだから!」
「んもー、仕方ないなー! なら、手伝ってあげるからさ!」
 そう言って、神知(ゴッドノウズ)たる煌めきがユーベルコードと共に輝く。
 それは言ってしまえば第六感。
 神のみが知ることのできる混沌たる乱数からただ一つの正解を導き出すために得られた灯火めいたもの。
「えーとねー、じゃあ、これとそれとあれ! じゃんじゃんこっちのフォルダにリストアップしていってねー……そしたら、此処からまたさらにあれとそれとこれ!」
 完全にランダム。
 運任せというか、直感任せというか。
 これまで猟兵たちが雑多な情報を絞り、排除してきた中からロニはさらにピックアップして見せる。

 これまで仕分けてきたからこそ、此処まで乱数を制御できる領域まで到達できたことは言うまでもない。
 ここから更に時間をかけて不確定要素を排除して行けば、『電子鍵』を見つけることもできただろう。
 けれど、ロニはさらにそれを短縮してみせたのだ。
「はい、これ!」
「……は?」
「だからーはい、これが『電子鍵』!」
 あってるでしょ、とロニは笑って『ケートス』に示して見せる。何度も何度も彼女は確認し、スキャニングし、それがトラップでないことを確認して目頭を抑えた。
「マジだわ……何それ、勘?」
「やだなーそんなわけじゃないよ。言う慣れば、膨大な知識と経験から導き出される独自の検索エンジンみたいなものだよ!」
「そんな理屈信じろっていうのが無理なんだけど!」
「でもほら、実際に引き当てたし? これでお仕事お終いでしょ?」

 それはそうだけど、と『ケートス』は現実を受け入れられないようであった。
「はいおしまーい! 一件落着!」
「な、なっとく行かない……」
「それと『ケートス』って言ったよね。君、どうにも鳥っていうものに対する理解があるようでないようだね」
「なによ。何が言いたいわけ?」
『ケートス』が訝しむ。
 鳥。それが連想するのは、彼女にとっては妹である『オルニーテス』であった。
 彼女は己の庇護という籠の中にある。
 そういう意味では飼い鳥。己であったのならば、そうした境遇に耐えられないだろう。守られるだけなど到底。

 けれど、とロニはそれを見透かしたように言うのだ。
「鳥っていうのは狭い巣や籠にはストレスを感じないんだそうだよ。つらいことがあるとしたら、それは孤独だけ」
「何が言いたいのよ」
 もうわかっているくせに、とロニは笑う。
「こんなちっぽけな機械の中に広大なサイバースペースがあるように、胸の中に心踊らせることのできる世界と、そこで一緒に過ごす家族がいれば、そんなに不自由でもないんじゃあないのかなぁってね」
 思うんだ、とロニは言う。
 手に入れた『電子鍵』、それを『ケートス』へと放り投げる。

 彼女は何か文句を言おうとしてロニを見たけれど、そこにはもう居なかった。
 広がっているのは電子の海。
 彼女は鯨。
 鼻先にぶら下げた鳥籠が、いつだって窮屈そうに思えたのは嘘じゃない。そこに閉じ込めていた、と思ったのは自分だけだったのだろう。
 共にあることを望む者がいる。

 空を飛ぶことの出来ぬ鯨だからこそ、空飛ぶ鳥の自由さを知り、鳥籠の中の不自由さを与えることに憂いを感じるのだ。
「お姉ちゃん!」
 彼女は振り返る。
 其処に居たのは鳥籠の中の『飼い鳥』ではなく。
 きっと家族というもの。

 なら、ここに焉動は刻まれる。
 一つの巨人は終焉を迎え、此処から始まる家族の話は、緩やかに滅びゆく世界に歌われる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年07月28日


挿絵イラスト