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ティタニウム・マキアの流動

#サイバーザナドゥ #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

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#サイバーザナドゥ
#巨大企業群『ティタニウム・マキア』


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●姉妹
 姉がいる。
 このクソッタレな世界にあって私が唯一心を許せる存在である。
 少しだけ自慢をさせてもらえるのならば、姉は凄腕のワールドハッカーだ。サイバースペース内で姉の名を知らない者などモグリだ。
 それにサイキックを現実世界でも使える。
 現実世界でも、サイバースペースでも姉はすごいのだ。

『ケートス』と言う名で知られている姉は私に何不自由無い生活を送らせてくれていた。
「どうしてお姉ちゃんは私にこんなに良くしてくれるの。妹ってだけで」
「簡単な話よ。私がお姉ちゃんぶりたいだけって話よ。クソッタレな世界でクソみたいな仕事をして、クソみたいな日常を送るのは簡単なことだけれど」
 お姉ちゃんは言う。
「こんなクソッタレな世界で生きて行かないといけないのなら、せめて一つだけはマトモなことをしたいと思うのよ。それがアンタってわけ」
 そう言ってお姉ちゃんは笑った。
 露悪趣味的な笑顔だった。

 自分のやっていることが非合法な、いわゆる悪事的なことであると理解している。けれど、金だけが物を言う世界にあって私が真っ当に生きることを許されているのはお姉ちゃんがお金を稼いでくれているからだ。
 もしも。
 もしも、逆だったら。
 私がお姉ちゃんで、お姉ちゃんが私だったのならば、同じ様にできただろうか。
 とても怪しいと思う。
 やっぱりお姉ちゃんは特別なんだと思う。
「大丈夫よ。私が守ってあげるから。何があっても。だから、アンタは何も気にしなくって良い。私の分まで幸せに生きていいのよ。それが私のたった一つの幸いなのだから――」

●予知
「で、そのクソッタレな世界と吐き捨てながら、アンタは何一つ悪びれることなく最悪にずっと手をかけ続けてきたんだ。恨むなよ。自業自得ってやつだ」
 静かな声が響く。
 これまで見てきた亜麻色の髪の男『メリサ』の全てがブラフであったことを『ケートス』は知る。
 何故、彼が己に近づいてきたのか。
 度々己に仕事を持ちかけてきたのか。
 そのいずれもが法外な値段だった。妹がマトモな、それでいて世界の悪意から隔絶した世界で生きるためには必要な金だった。
 全部、この時のためだったのかと彼女は歯噛みする。

「アンタ、最初から……!」
「いいや、別に? アンタの妹に『サイコブレイカー』の素養があったっていうのは後付だな。保険って言っても良い。サイコブレイカー狩りは上手く行かなかったからな。どうしたって『サイコブレイカー』は『ティタニウム・マキア』には必要なんだ。だから」
「だからって、私の! 私の妹に手を出したな!!」
『ケートス』は怒り狂う。
 常に冷静な彼女らしからぬ激昂に『メリサ』は肩をすくめる。

「今どき流行らねぇよ。そういうの。義体化は最小限に。薬物汚染もなく、ただ守られているだけの生き物なんていうのはな。遅かれ早かれ、この世界は緩やかに滅びていくしかない。そんな中でなんの力も持たないでいさせるっていうのは」
「あんたには関係ない!」
 電子毒が走る。
 此処が現実世界であったのならば『ケートス』は手も足もでなかっただろう。けれど、此処はサイバースペースだ。
 ここならば業界屈指の殺し屋『メリサ』であっても――!

 だが、『ケートス』の手足が一瞬で焼き切れる。
 何故。
『メリサ』は動いていない。
 なのに、どうして己の電子毒が走らない。手足が焼き切られているのだ。
「なんで!? どうして……!?」
「いやぁ、俺の名前を思い出してくれよ。|『メリサ』《蜂》だぜ? 群れるよ。そりゃあな」
 アラートが響く。
 その警告音に|『ケートス』《鯨》の現実世界のポータルに納められた体にフォトンセイバーの刃の光が突きつけられているのを彼女はモニタリングし、知る。
 目を見開く。
 そこにいたのは、|『イェラキ』《隼》と呼ばれるサイバーニンジャ。彼の手にしたフォトンセイバーが『ケートス』の喉元に当てられている。
「……仕事はこれだけでいいのか。電子毒の無効化と……」
「ああ、十分だよ。高く着いたけど、良い仕事だ。まあ、そういうわけだ。これまでご苦労さん、『ケートス』。アンタの仕事は良いものだったが……まあ、此処までだ。生まれ変わったのなら……今度はこんなクソッタレな仕事をしなければいいな?」
「アンタは……!!」
 手を伸ばす。
 だが、その手は力なく落ちる。

 現実世界とサイバースペースはリンクしている。
 現実世界の肉体が傷つけば、当然接続は切れる。それが何を示すのかど言うまでもない――。

●飼い鳥
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の予知はサイバーザナドゥ。『メリサ』と名乗る業界屈指の殺し屋に姉を殺された『オルニーテス』と呼ばれる少女が『ティタニウム・マキア』と『メリサ』が関連していると知り、復讐に走ろうとしています」
 ナイアルテの伏せた瞳。
 そこに如何なる感情があるのかを猟兵たちは推して測るしかなかっただろう。
 復讐は何も生まないと説くだろうか。
 それとも、やり遂げなければ何も報われぬと言うだろうか。

 そのいずれにも当てはまらぬことをナイアルテは告げる。
「このままでは彼女は復讐することも、復讐を遂げることもできぬままに死ぬしかないでしょう。私の予知は……彼女が復讐の返り討ち以上の最悪に呑み込まれることを示しています」
 ナイアルテは、その無惨なる予知を知ったからこそこうして猟兵達に助けを求めた。
「彼女はすでに巨大企業群『ティタニウム・マキア』へと改造バイクと共にハイウェイを疾駆しています」
 接触するにはハイウェイへ向かい『オルニーテス』を追わなければならない。
 そこで猟兵たちが彼女を止めるも、復讐を焚き付けることも自由であるとナイアルテは言う。
 問題は其処ではないのだ。

「『ティタニウム・マキア』は、ただ一人『オルニーテス』さんを迎え撃つためだけに試作戦車を繰り出し、さらには都市侵略用の超弩級陸上戦艦すら繰り出してくるのです」
 それは過剰極まりないものであった。
 大凡、特別な力を持たぬ『オルニーテス』に対する巨大企業群『ティタニウム・マキア』の反応ではない。
 明らかにおかしい。
 恐らく『ティタニウム・マキア』の急所足り得る何かが動き出しているようにさえ思えてくる。

「この事件は『オルニーテス』さんの復讐より端を発する事象です。ですが、私達猟兵にとってはオブリビオン……巨大企業群『ティタニウム・マキア』を追い詰める局面に手をかけたとも言えるでしょう」
 故に、とナイアルテは猟兵たちを送り出す。
 たった一人で戦う少女の復讐を止めるのか。それとも共に果たそうとするのか。
 そして、その事象の背後にチラつく『蜂』の影に猟兵たちは転移したハイウェイに走る|『燕』《ヘリドー》のバイク、そのテールランプの残光を見るのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。
 サイバーザナドゥの何の変哲もない普通の女子高生『オルニーテス』が姉を『ティタニウム・マキア』の刺客に殺され、復讐しようとしています。
 皆さんは彼女の後を追い、これを止めるのか、それとも復讐を焚き付け、共に果たすのか。
 連動しているシリーズシナリオの最終シナリオ、その前編となります。

●第一章
 日常です。
 普通の女子高生『オルニーテス』は、改造バイクを駆り、彼女の姉の遺体が納められているであろうコンテナを運ぶ、運び屋『ヘリドー』を追っています。
 皆さんはハイウェイを走る二台の改造バイクの後を追いかけねばなりません。
 その際に『オルニーテス』に復讐を止めるように説得することも、焚き付けることも自由となっています。
 運び屋『ヘリドー』は #巨大企業群『ティタニウム・マキア』 のシナリオ『ティタニウム・マキアの飛動』をご確認ください。知っていても知らなくても大丈夫です。

●第二章
 冒険です。
 ハイウェイチェイスから、『ヘリドー』は巨大企業群『ティタニウム・マキア』本社ビルへと飛び込みます。
 追い詰めた、と思った所に現れるのは無数の試作戦車です。
 それは意図的に暴走させられているようで、皆さんと『オルニーテス』へと襲いかかります。
 これに対処しましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 暴走試作戦車を退けた皆さんの前に現れるのは、普通の女子高生『オルニーテス』の仇と思われる『メリサ』と共に『ティタニウム・マキア』の本社ビルの地下から這い出す、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』です。
 完全に破壊することは難しいでしょうが、しかし、陸上戦艦としての機能を潰せば、オブリビオンとしての『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』は瓦解するでしょう。

 それでは、ついに迫った『巨大企業群(メガコーポ)』、『ティタニウム・マキア』との最終決戦へと向かう皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『ぶっちぎり公道レース』

POW   :    テクニカルなコースではトルクが物を言う

SPD   :    最高速度なら誰にも負けない

WIZ   :    レースはスタートの前から決まっている

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「な~にが、また簡単な仕事だっていうのよ、あの、男、は~ッ!!!」
 業界屈指の運び屋『ヘリドー』は恐らく二度目であろう事態に毒づく。
 己を追う改造バイク。
 異様なる性能と迸る殺気めいた視線を背に感じる。
 彼女を追うのは『オルニーテス』。『ケートス』と呼ばれる凄腕ワールドハッカーの実妹である。普通の女子高生だったはずだ。けれど、今の彼女は異様だった。
 殺気立つ視線、復讐に燃える瞳が、ではない。
 普通の女子高生がいきなり改造バイクを乗りこなし、そして運び屋である『ヘリドー』にハイウェイで追いつけるはずがないのだ。何かがおかしい。
「お姉ちゃんを! 返せ!!」
「う~わ……あれって絶対なんかこう……あれよね。|『コンテナ』《コレ》のせいって感じよね」
「返せ!!」
「ちょいタイム! って言って聞いてくれる感じじゃあないわよね……でもだからって!」
 そう。
 この『コンテナ』の中身がなんであろうと、己は運び屋だ。
 ならば、仕事は完遂しなければならない。雇い主である『メリサ』は言った。『ティタニウム・マキア』本社ビルへと運び込んでほしいと。簡単簡単と笑っていたが、あんなオマケがあるなんて聞いていない……。
「なーんて言っちゃ『ヘリドー』の名がすたるってもんよね! さあ、ぶっちぎらせてもらうわ!」
 その言葉と共に『ヘリドー』は一気に『オルニーテス』を引き離すようにハイウェイを『燕』さながらに飛ぶようにして『ティタニウム・マキア』本社ビルを目指して飛ぶのだった――。
ベティ・チェン
「ドーモ、へリドー=サン。ベティ、デス。キリステ・ゴーメン!」
自分もロケットエンジン搭載ハイスピードバイクでかっ飛ばす
へリドーの横に並んだら合言葉と共に運転席とコンテナの間を偽神兵器(自分の身長並みの大剣)で切断

「ボクらは負ければ死ぬ、けど。キミはシノビじゃないから、殺さない。生きてりゃ名声は、また積める。ケートスの身体は、置いていけ」

「鯨の、妹。死んだ鯨は、余すことなく貪られる。髪と皮膚は、美容オバケが買う。内臓は、金満患者のものになる。脳ミソは、兵器転用。残りは全部、医療機関と製薬会社の実験台」

「鯨の、妹。|欲望《ねがい》は、生きてる間しか、叶わない。キミはキミの欲望のために、戦え」



 二台の改造バイクがハイウェイを疾駆する。
 テールランプの残光が路面に刻まれるように走り抜け、多くの一般車両は戸惑うことしかできなかっただろう。
 だが、二輪を自在に操って改造バイクを駆る運び屋『ヘリドー』と『オルニーテス』は一般車両を縫うようにして疾駆する。
『オルニーテス』は一般的な女子高生だった。
 何の変哲もない。
 けれど、それがどうしてか改造バイクを駆り、運び屋として名の知られる『ヘリドー』を追い詰めている。
「しつこいな! っていうか、どうしてそんなに……あの男! まじでやばいもの運ばせてるじゃない!!」
 あーもー! と『ヘリドー』は頭を掻きむしる。
 だが、それともこれとは話が別である。自分は依頼された。受けた。ならば、どのような物を運ぶのだとしても、それは運び込まねばならない。

 故に。
「ドーモ、『ヘリドー』=サン」
「……――ッ!!」
 それは一瞬の出来事だった。
 瞬間的に。音よりも先に閃光のようにベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)の駆るロケットエンジン搭載ハイスピードバイクが『ヘリドー』に並ぶ。
「ベティ、デス。キリステ・ゴーメン!」
 彼女の瞳がユーベルコードに煌めく。
 瞬間、彼女の身の丈を超えるほどの大剣の一撃が『ヘリドー』の改造バイクの荷台に取付けられたコンテナとのジョイントを切り裂く。
「ま、待て待て待って! ちょっと待って!」
「待たない」
「いや、ほんと!」
「ボクらは負ければ死ぬ、けど。キミはシノビじゃないから、殺さない。生きてりゃ名声は、また積める。『ケートス』の身体は、置いていけ」
「どういうこと――って、話聞いて!?」
 刹那の攻防だった。
 ベティの一撃は確かにジョイント部分を切り裂いた。けれど、『ヘリドー』の改造バイクっから伸びたロボットアームがコンテナを掴んで引き寄せる。

「あっぶなっ! まじで! 危ない!」
 ベティの大剣がハイウェイのアスファルトへと叩きつけられ、彼女のバイクは速度を落とす。その瞬間に『ヘリドー』は一気に彼女たちを引き離すようにコンテナと共に走り抜けていく。
「邪魔を!」
 ベティは己の横につける『オルニーテス』の瞳を見る。
 そこにあったのは怒りだった。憎悪だった。憤怒だった。
 おおよその事情はベティも知っている。理解している。復讐が何になるのだと言う者がいる。
 知ったような口だと思う。
「|『鯨』《ケートス》の、妹」
「なんで、私のこと……!」
「死んだ鯨は、余すことなく貪られる。髪と皮膚は、美容オバケが買う。内蔵は金満患者のものになる。脳ミソは、兵器転用。残りは全部医療機関と製薬会社の実験台」
 ベティは淡々と言葉を紡ぐ。
 このサイバーザナドゥにおいては当然のことだ。
 そうなるのが当然だった。
 誰も彼も理解していることだ。すべて金で解決される。金に勝る力はない。だから、死した者の身体すらも金の亡者達の取り分でしかない。

『ケートス』さえも例外ではない。
「わかってるわよ! そんなこと、そんなこと、お姉ちゃんの身体を……! だから1」
 怒りの瞳の奥底にある悲しみをベティは見た。
 けれど、この世界はその悲しみを肯定しない。
「鯨の、妹。|欲望《ねがい》は、生きている間しか、叶わない。キミは、キミの欲望のために、戦え」
 ベティは告げる。
 それは彼女の背を押す言葉だっただろう。
 復讐は何も生まない。
 けれど。何もしなければ、それこそ虚無だ。何もしなかったできなかったという虚無が『オルニーテス』が生きている限り襲うだろう。
 故にベティは、その復讐というなの|欲望《ねがい》こそ正しいのだというようにロケットエンジン搭載のハイスピードバイクとともに『オルニーテス』に並走し、その背を押し出す。

 征け、と。
 戦え、と。
 奪わられたのならば、奪い返すのがこの世界。サイバーザナドゥの流儀だと示すように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァルターン・ギャンビット
(突如、上空に現れる宇宙艦『スペースダイナソー号』)
あーテステス。そこのオルニーテスの嬢ちゃん。お前さん、身内の遺体を取り返して復讐するんだって?
よーし、ヴァルターン様も手伝ってやるぜ。身内を殺られたんなら報復はやらなきゃいけねぇ事だからなッ!

前方のバイクに火炎ビーム砲台で牽制砲撃だ。うっかり当てるなよ?運び屋はともかく遺体を火葬はまだ早いだろ?

艦での牽制砲撃は部下に任せて俺も『ムカシドン』に乗ってハイウェイに飛び降りるぜ。
「アギャッスッ!」
そしてムカシドンごと四体くらいシノビン影分身して運び屋バイクのタイヤにアーム・レイガンを撃ち込んでやる。
ちょこまかするなよ、手元が狂うッ!


【アドリブ歓迎】



 ハイウェイの空に突如として転移するは、巨大な宇宙艦『スペースダイナソー号』であった。
 その姿はサイバーザナドゥにおいても奇異なるものであったことだろう。
 誰もが空を仰ぐようにして見上げていた。
 そのことについてヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)は少々気分がよかった。
 しかしながら、問題はそこではない。
「あーテステス」
 響き渡る己の声。
 ハイウェイを疾駆する二台の改造バイク。
 地を這うようにして走る宇宙バイクめいたものをヴァルターンは見やり、空を飛べば速いのに、なんて思わないでもなかったが、今はしなければならないことがある。

「何この声!?」
 運び屋『ヘリドー』はハイウェイの上空を飛ぶ宇宙艦に目を丸くする。
「そこの『オルニーテス』の嬢ちゃん。お前さん、身内の遺体を取り返して復讐するんだって?」
 その言葉に『ヘリドー』は、え!? とさらに目を丸くする。
「あの男……! マジでマジモンじゃないのよ! なんつーものを運ばせるの!」
 彼女は知らなかったのだろう。
 コンテナの中身がなんであるのかを。
「そうよ! お姉ちゃんを!!」
 だからか、と『ヘリドー』は息を吐き出す。

 だが、だから、はいどうぞ、とはならない。
 彼女は運び屋だ。そして、すでに仕事として請け負っているのならば。
「この際は、人情よりも仕事が勝る!」
「待て!」
 改造バイクがハイウェイを疾駆する。
「いよっし! 俺様もいくか! スペモンキューブよしっ!『ムカシドン』、お前に決めたぜ!」
 その言葉と共にドラゴン型ライドスペースモンスターを呼び出し、ヴァルターンは騎乗する。
「このヴァルターン様も手伝ってやるぜ。身内を殺られたんあら報復はやらなきゃいけねぇ事だからなッ!」

 おらよ! と言わんばかりにシノビン影分身(シノビンカゲブンシン)によって増えた青白い分身たちが『スペースダイナソー号』を操り、ハイウェイに火焔ビーム砲台の砲撃を行う。
 火線がハイウェイのアスファルトを溶かし、破片を飛ばす。
「うわっ、うわっ!? なにそれ!?」
「知らねーのかい! 火炎ビーム砲だよ!」
「威力高すぎでしょ! コンテナごと焼き切るつもり!?」
「あっ、やっべ。おいおめーら! うっかり当てるなよ!? 運び屋はまだしも遺体を火葬にはまだ早いってな!」
 冗談になっていないと『ヘリドー』は一気に加速する。
 ハイウェイを疾駆する二台の改造バイクと、それを追う紅いドラゴン。

「さらに倍増しで分身ドン! フォッフォッフォッ! 俺様から逃げられると思うなよ!」
 ヴァルターンの瞳がユーベルコードに輝く。
 さらに分身したヴァルターンがアームレイガンを構える。
 放たれた火線が『ヘリドー』の駆る改造バイクをかすめる。
「あっぶなっ!」
「ちょこまかするなよ、手元が狂うッ!」
「もうとっくに狂ってんでしょうが!」
「なにおう!?」
 ヴァルターンは『オルニーテス』と共に『ヘリドー』を追い詰めるようにしてハイウェイを疾駆していく。
 その先にあるのは巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビル。
 この事件の大元――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
やっほ★『Gライアー』で爆走中のシルキーちゃんだよ★必要ならジャンプしてショートカットしちゃうぞ★ロボビースト達も散開して追っかけてるよ★

止めろと言われてないし、下手に止めたら余計突っ走るタイプでしょ★でも熱くなってるみたいだしはいシルキーちゃんドリンクばしゃー★(UCのドリンクぶっかけ。「1回でも飲みさえすれば」効果は出るんだぞ★)少しは冷えたかな★

――(機械のように)怒りを忘れろとは言わない。しかし冷静さを失えばそこに付け込まれる。そもそも十中八九これは罠。だが冷静でいれば罠も相手の思惑も見える。……譲れぬ目的があるなら冷静に、殺意を内に秘め敵も企業も猟兵も、全てを利用する心積もりで行け。



 改造バイクを駆り、運び屋『ヘリドー』を追う『オルニーテス』が見たのは、巨大な……それでいてど派手な色合いのロボットビースト……カエルの如き体躯を持った『Gライアー』の姿であった。
 もしも、平素であったのならば彼女は喜び笑い、写真写真とカメラ付き端末を向けただろう。
 けれど、今の彼女には、そんな感情はない。
 あるのは尚早と怒り。憤怒。憎悪であった。
 この世界に対する怒り。
 己の姉を殺したという『メリサ』への激情。そして、姉である『ケートス』の遺体を運ぶ『ヘリドー』の背を射抜く強烈な視線。
「やっほ★」
 そんな彼女の感情に付き合う謂れなどないと言わんばかりに巨大なカエル型のロボットビーストを駆り、シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)のホログラムが手をふる。

「ハイウェイを爆走中のシルキーちゃんだよ★」
「……今は」
「んん? なーに? ハイウェイの風で聞こえなーい★」
「今は! 貴方達にかまっている暇なんてないの! あそこに! お姉ちゃんが!」
 追う背。
『ヘリドー』の改造バイクに備えられたコンテナ。
 あそこに『オルニーテス』の姉『ケートス』の遺体があるのだと彼女は言う。
 その様子にシルキーはなるほどと頷く。
 これが予知したグリモア猟兵から伝えられた事柄と納得する。復讐心に駆られた瞳。それ以外のことに意識をやりようがないのだろう。

 悲しみが身に満ちて、崩れそうに鳴っているのを憎悪でもって憤怒でもって繋ぎ止めている。
「止めろとは言わないでよ!」
「んー、止めろって言われてないし。でも、あなた。下手に止めたら余計に突っ走るタイプでしょ★」
 だから、とシルキーのホログラムはウィンクして見せる。
 並走しながら『Gライアー』の口腔が『オルニーテス』へと向けられる。
 瞬間的に彼女は改造バイクでもって躱そうとする。しかし、間に合わない。
 放たれた口腔からの一撃は、水飛沫のように『オルニーテス』の体へと放射される。
「な、何よ、これ!」
「ん? シルキーちゃん特製ドリンク★(ニジュウヨジカンハタラケマスカ)少しは頭冷えたかなって★」
「ば、バカじゃないの! なんでドリンクなんてぶっかけてくるのよ!」
「だって、どう考えても」
 怒りすぎでしょ、とシルキーのホログラムは笑む表情を作る。

 怒りだけが先行している。
 今の『オルニーテス』を支えているのは怒りと憎しみだけだ。
 それは確かに瞬間的な力を生み出すことだろう。けれど、それは長く続かない。人の感情とは強烈そのものである。
 けれど、長く続かないようになっている。
 人間の脳が、加熱する感情に耐えられないから。
「あなたも、他の誰かと同じように怒りを忘れろというの!」
「ううん――怒りを忘れろとは言わない。しかし、冷静さを失えば、そこに漬け込まれる」
 シルキーの合成音声が響く。
 酷く機会的な声だった。けれど、『オルニーテス』は息を呑む。

「そもそも十中八九これはワナ。だが冷静でいれば罠も相手の思惑も見える」
「でも!」
 それができないのが人だ。己は機会ではないのだと『オルニーテス』は言うだろう。だから、とシルキーは説く。
 ハイウェイ。
 未だ『ヘリドー』を捉えられていない。
「……譲れぬ目的があるのなら冷静に。殺意を内に秘め敵も企業も猟兵も、全てを利用する心づもりで行け」
 その言葉に『オルニーテス』は冷静になるだろう。
 シルキーの謎の栄養ドリンクがぶちまけられたクカが出てきたのかもしれない。

「あなた達を、利用しろっていうの?」
「それくらいの計算高さでいろってこと――★」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
起こったコト一つ一つだけ見ればこの世界じゃごくごくありふれた事なんでしょうけれど…わざわざ|メガコーポ《連中》が絡んできた以上、何かあるはずよねぇ。
…にしてもあの燕さん、腕は良いんでしょうけれどそこそこ不運よねぇ…

|チェイス《追跡戦》なんだし、あんまり速すぎるのも問題よねぇ。|ラド《車輪》と|韋駄天印《迅速》で機動性を向上、●轢殺・揺走を起動して追っかけるわぁ。
…というか今更だけど、あのコンテナって本当に目的の物なのかしらぁ…?

復讐については正直止めるつもりも唆すつもりもあんまりないのよねぇ。仕事に関わるし手は貸すけれど。
自分から踏み込んできた以上、どうなったとしても自己責任…そうでしょぉ?



 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は思う。
 サイバーザナドゥ。
 緩やかな滅びへと向かう骸の海が雨として降る世界。
 汚染は進み、どうしようもない状況におかれた中にあって、『ケートス』と『オルニーテス』の姉妹を襲ったのは、この世界でゃごくごくありふれた事であったことだろう。
 けれど、とティオレンシアは思う。
「わざわざ|メガコーポ《連中》が絡んできた以上、何かあるはずよねぇ」
 彼女はハイウェイのアスファルトを『ミッドナイトレース』でもって斬りつけるようにして加速していく。
 その瞳はユーベルコードに輝いていた。
「一気にブチ抜くわよぉ。マルガリータ、解析よろしくねぇ?」
『はぁい、ますたぁ』
 ティオレンシアは『ミッドナイトレース』に搭載されているAIが瞬陣ハイウェイの路面の状況、前方の障害物、あらゆるものを計算し、最適なハンドリングと加速を瞬時に彼女に示す。

『経路1、経路2、経路3、どうしますぅ?』
「一番最短で最速に決まってるでしょぉ? とは言え、|チェイス《追跡戦》なんだし、あんまり早すぎるのも問題よねぇ。じゃあ、とりま、あの『燕』さんに追いつきましょうかぁ」
 その言葉と共に選択されたルートをティオレンシアは一気に加速して駆け抜けてく。
 ハイウェイのアスファルトを蹴るようにして飛翔し、ガードレールやトンネルの壁面を利用して走り抜け、まさしく弾丸めいた速度で持って『オルニーテス』をぶち抜き、『ヘリドー』へと迫る。

「はぁい、運び屋の『燕』さん。あなたも腕がいいんでしょうけれど、そこそこ不運よねぇ……」
「そういう事言うのやめてもらえる!? 依頼主を選んでるつもりなんだけど!?」
「でも、結局厄ネタ運んでる時点でぇって感じじゃあなぁい?」
「それはほんとにそう!」
『ヘリドー』の腕は確かだ。
 ティオレンシアも理解できる。これだけ追い立てられてなお、ハイウェイで彼女を捉えられる者はいない。
 それが猟兵であってもだ。
 今もジリジリと引き離され続けている。
「……というか今更だけど、そのコンテナって……あの子の本当に目的のモノなのかしらぁ……?」
「じゃあ、そういってきてくれない!? 多分誤解ですってさ!」
「まあ、やってみるけど」

 え、いいの!? と『ヘリドー』は思ったが、ティオレンシアは速度を落として『オルニーテス』の改造バイクへと近づく。
「お嬢さん。ちょっといいかしらぁ?」
「んなっ、なにっ、あなた!?」
 ティオレンシアの容姿と声色に『オルニーテス』は驚いたのだろう、思わず声が上ずってしまっている。
 けれど、ティオレンシアは構わずに告げる。
「ねぇ、あなた。自分からこっち側に踏み込んできたのよねぇ?」
「そうよ! お姉ちゃんを取り返すために!」
 その言葉にティオレンシアは目を細め、頷く。
「ならぁ、どうなったとしても自己責任……そうでしょぉ?」
 ゾッとするほどの迫力。

 ティオレンシアは復讐を止めるつもりはなかった。けれど、そそのかすつもりもなかった。
 これは仕事だ。
 猟兵としての仕事。
 だから、彼女は告げる。この一連の事件の最後にどうなるかなど誰も責任は取れないのだと。そして、それは『オルニーテス』に覚悟を示すことを強いる視線であったことだろう。
「そんなの」
 故に彼女は見つめた。
 その覚悟を。
「当たり前でしょう!!」
「上出来ねぇ。それじゃあ、どこまで走れるか、やってみましょうか――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

相馬・雷光
ホントクソの煮凝りみたいな世界ねぇ
あの子も復讐心以外に厄ネタを抱えてそうだけど……
ま、メガコーポの思い通りにさせたら、もっと酷いことになるのは目に見えてるわね

どるんどるんと爆音を轟かせるモンスターバイク
ウッチャイヒシュラヴァスを駆って追いかける(運転・ダッシュ)
馬の王の名は伊達じゃないわ!

ドーモ、あなたがオルニーテス? 私は雷光、いわゆるニンジャよ
復讐したって死んだ人は戻ってこない……ってのがこーゆー時の説得の定番だけどさ、逆に考えるのもいいんじゃない?
どうしたって過去は変えられない、死んだ人は帰ってこない
なら、未来くらいは好きに選べばいいって
メガコーポをボコすなら手を貸すわよ



「ホントクソの煮凝りみたいな世界ねぇ」
 相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)はサイバーザナドゥのハイウェイにて己の駆るモンスターバイクのエンジンを唸らせる。
 轟音が響く。
『馬の王』たる名を関したモンスターバイク。
 その躯体に搭載されたエンジンの凄まじさは轟音を聞けばわかるだろう。一体どれだけの出力を生み出すのかも。
 故に雷光はエンジンを唸らせ続ける。

 サイバーザナドゥの世界にとって、姉妹を襲ったのは些細なことなのだろう。
 そこらに溢れている事件の一つでしかないのかもしれない。
 けれど、と雷光は思う。
「あの子も復讐心以外に厄ネタを抱えてそうだけど……」
 この事件がオブリビオンに関連するものであるとうのならば、雷光は捨て置け無いと思うのだ。
 予知したグリモア猟兵も告げていた。
 待ち受けるのは凄惨たる死以上の結末。
 故に、と願われたのだ。『オルニーテス』の復讐が呼び起こす事件の解決を。
「もっと酷い目にあうっていうことが見えているのに何もしないっていうのはナシよね。だったら……『ウッチャイヒシュラヴァス』!」
 その言葉と共に彼女の駆るモンスターバイクがハイウェイを駆け抜ける。

「見せなさい『馬の王』の名は伊達じゃないってところをね!」
 閃光のように。
 稲妻のように雷光と共にモンスターバイクは駆け抜け、一気に『オルニーテス』へと追いつく。
「っ、速いっ……あ、あなたは……!」
「ドーモ、あなたが『オルニーテス』? 私は雷光、いわゆるニンジャよ」
 エンジンの轟音を割くようにして雷光はハイウェイで『オルニーテス』と並走する。
 風を斬る音の最中にあってなお、彼女の声はよく響いただろう。
「そのニンジャが、一体何の用よ!」
 その言葉に雷光は肩をすくめる。
「復讐しようってんでしょ? でも復讐したって死んだ人は戻ってこない……」
 それが世の理というやつである。

 人は死ねば取り返しがつかない。
 どんなに高潔な人物も、どんなに粗悪野卑たる人物も、死ねば同じだ。戻ってはこれない。
 だから、と雷光の言葉が続けるであろう言葉を『オルニーテス』は知っている。
「だから、止めようっての!? 私からお姉ちゃんを奪った連中を許せって!?」
「まーそういうのがこーゆー時の説得の定番でテンプレよね。だけどさ、逆に考えてもいいんじゃない?」
 どういうことだと、並走する『オルニーテス』が怪訝な表情を作る。
 雷光は笑む。
「どうしたって過去は変えられない、死んだ人は帰ってこない。なら」
 ならば、と雷光は笑う。

 戻らぬを悲しみ。
 そして、その悲しみを抱えて生きていくしか無いのかと。
 けれど、雷光は示す。
「なら、未来くらいは好きに選べばいいって。そう考えるのも悪くないんじゃない。復讐するのも、止めるのも。そして、この事件の裏で糸引く|巨大企業群《目がコープ》をボコしたいって思うのも」
「そんな、の……」
 いいのか、と『オルニーテス』の瞳が再燃するようだった。
 怒りに満ちている。
 どれだけ相手取る存在が巨大な存在であっても、一歩も引かぬという怒りが、そこにあったのを雷光は知る。
 故に、手を差し伸べる。
「メガコーポをボコすなら手を貸すわよ」
 それだけのことをあなたはされたのだからと、そう笑って、何でも無いことのように。
 それこそ女子高生の日常のように雷光は『オルニーテス』の手を取るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
くんくん……欲望、というか強い願望と衝動の匂いがするぞ!

おっ早速気配が……ってもうすごい勢いで通り過ぎて行ったのだが!?あれに追い付けと!?……ええいままよ!肉体改造と空中機動の技能を用いてなんかこう飛行形態になって飛び、竜の首でなんか適当なところにかみついてついていくぞ。めっちゃ引き摺られそうだが。

で、だ。復讐は別に止めん。むしろ貴様の願いを叶える為の力、くれてやろうか?
まあ代わりに色々なくすだろうし、実際叶うかどうかは力を使う貴様次第だが……どうする?
くくく、別に裏などない。貴様の願望が我を呼び寄せただけの事だ
まあ個人的には貴様が復讐を果たし次の|願望《目標》を見つけられる方が良いのだがな



 鼻がひくつく。
 その匂いを感じ取った鼻腔が示す先にあったのは骸の海が雨として降る世界。
 徐々に荒廃していく環境。
 生物が生きるためには戦闘義体に体を置き換えなければ、呼吸すらままならぬほどの環境汚染が進む世界。
 それがサイバーザナドゥである。
 その世界にあって、ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は、強烈な欲望の迸りを感じ取ったであろう。
「くんくん……欲望、というか強い願望と衝動の匂いがするぞ!」
 彼女は悪魔である。
 デビルキングワールドでは名の知れたラスボスにして魔王にして魔女。
 そう、百胎堕天竜魔王とは彼女のことである。

 彼女が舞い降りた世界。
 そのハイウェイにワルルーナは鼻をひくつかせて匂いのもとを探ろうとした瞬間、目の前をものすごい勢いで二台の改造バイクが走り抜けていく。
「あれ!?」
 えっ、とワルルーナは思わず呻いていた。
 目の前を凄まじいスピードで駆け抜けていった改造バイク。
 あれが恐らく自分の求める者であると理解はできたが、あっという間に駆け抜けて行ってしまったのだ。
 声をかける暇すらなかった。
「いや、せっかちにもほどがあるのだが!? えっ、あれに追いつけと!?」
 無茶であると、ワルルーナは思った。
 だが、彼女の欲望は『他者の欲望を満たす事』である。

 あそこまで引き離されては、普通、今回はもういっか、となるところ。
 しかし、彼女は悪魔。
 そう、デビルキングワールドの悪魔という種族は良い子の種族。ワルがクールなことであるが、生来真面目なのである。性根が善良なのである。ワルルーナだって例外ではない。
 故に彼女は。
「ええいままよ! やるしかないというのならば、やるしかあるまい! なんかこう……すんごく速く飛翔できるゆに、こうしてあーしてどうして!」
 ワルルーナは自身の異形なる肉体を変容させ、二台の改造バイクへと追いつくために飛行形態へと至って飛び立つ。
 あの二台は地を疾駆している。
 ならば、自身は空からショートカットするまで。
「追いついたぞ! さあ、貴様の願望を……!」

 ワルルーナはなんとか二台のうちの『オルニーテス』と呼ばれる少女が駆る改造バイクに竜の首で掴みかかって呼びかけようとして、めちゃくちゃ引きずられてしまう。
「――えっ、何!?」
「あだだだだっ!?」
「お、女の子!? どういうこと!?」
「き、貴様は今強い願望を抱えておるな! そ、あっ、いたたっ! いたい!? その衝動、その復讐! それを止めようとはせぬ!」
「つ、続けるの!? 引きづられてるのに!? だ、大丈夫なの!?」
「ええい! いちいち締まらんではないか! だが、よく聞け! 我は百胎堕天竜魔王ワルルーナ! 貴様の願いを叶える為の力、くれやろうか!」
 その言葉に『オルニーテス』は息を呑む。
 これまで幾人かの猟兵たちが彼女のもとに来た。

 誰もが己の復讐心を否定しなかった。
 ワルルーナもそうだ。
 復習すること自体が己の責任に関わることであるからと示した。故に、彼女はワルルーナの言葉に頷く。
「まあ、代わりに色々なくすだろうし、実際に願いが叶うかどうかは力を使う貴様次第だが……うむっ! 即答ヨシ!」
「でも、あなたはどうして。あなたにメリットなんて……」
 ないはずだという『オルニーテス』にワルルーナは笑う。引きずられながら。

「くくく、別に裏などない。思惑もない。あえて言うのなら、貴様の願望が我を呼び寄せただけのこと。でもまあ」 
 ワルルーナは笑う。
 復讐というのはネガティヴに語られがちであるけれど。
 けれど、とワルルーナは告げるのだ。
「個人的には貴様が復讐を果たし次の|願望《目標》を見つけられるほうがよいと思っているのだがな――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
サイバーザナドゥでは、生命など安いもの。僅かのマネーデータと引き換えにこの世から消し去られる。
それを不条理だと思うなら、羽ばたいてみせなさい、『オルニーテス』!

ナイトメアライドで、ナイトメアに「騎乗」してハイウェイを駆け抜ける。これが来訪者の脚力です。
『ヘリドー』を捕捉したら、裁断鋏を振るって、『積荷』を固定する機構を裁ち切りましょう。
巻き込まれただけの運び屋に用はありません。凄腕の運び屋にも、失敗談くらいあるでしょう。それが増えただけと思ってくださいな。

『オルニーテス』、この世界では、一度倒れたらもう立ち上がれません。
だからあなたの限界すら超えて走り抜けて。あなたの望み、手を貸しましょう。



 骸の海が雨として降る世界。
 サイバーザナドゥ。それは緩やかに滅びへと向かう生命が生きるにはあまりにも過酷な環境であった。
 発展するために。
 生きるために消費していく。
 その消費は不可逆であり、復元されることはない。科学技術の発展が言いようのない環境破壊に繋がるのだとしても、そうする他無い。
 正しく滅びながら未来へと進むことを運命づけられた世界。
 それがサイバーザナドゥ。
 楽園の名を持つ世界でありながら。
「生命など安いもの。僅かなマネーデータと引き換えにこの世界から消し去られる」
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)は純白の白馬型来訪者『ナイトメア』へと騎乗し、ハイウェイを駆け抜ける。

 それは異様なる光景であったことだろう。
 ハイウェイを疾駆するのは車両や改造バイク。
 そうしたものであるのに対し、芽亜が駆るは白馬である。厳密には白馬ではないが、しかし、見た目のインパクトは凄まじいものだった。
 運び屋『ヘリドー』は、己を追うのがただの女子高生だけではないことを知っていたが、これは予想外だった。
「空からはなんか未確認飛行物体が来るし、今度は何!? あれなに!? 生き物!?」
 彼女は芽亜の駆る白馬を画像データや動画の中でしか見たことのない。
 その姿を認めて、あまりの事態に動揺しているのだろう。
 けれど、彼女が運び屋としての矜持を示すように、容易には追いつけない。引き離されていく。
「裁断鋏が……届かない」
 彼女の改造バイクのコンテナ。あれのジョイント部分を切断しようと思ったのだが、追いつけなければ意味がない。
 だからこそ、芽亜は己の白馬たるナイトメアの横腹を軽く叩く。嘶くようにして『ナイトメア』の脚力が引き上げられ、一気に加速していく。

「巻き込まれただけの運び屋には用はありません」
「うっそでしょ。なんでそんな加速できるの!?」
 横並びになった『ヘリドー』と『ナイトメア』。今度こそ、と振るう裁断鋏の一撃。だが、その一撃を『ヘリドー』は見事なハンドリングで躱す。
「凄腕の運び屋にも、失敗談くらはあるでしょう。それが増えただけだと思ってくださいな。だから、避けないで」
「はいそうですか、となると思っている!? 失敗談っていうのは私が受け入れられたから、失敗談なのよ。それ以外は全部! 受け入れ難いことでしょうが! それにまだ私は失敗してない!」
 改造バイクのロボットアームが『ナイトメア』の横っ腹を殴りつけ、並走する互いの距離を引き離す。

「――ッ!」
 その一瞬で『ヘリドー』は加速していく。
「あんたたちは!」
 芽亜のよろめく『ナイトメア』の『オルニーテス』の改造バイクが迫る。邪魔を、とは言わない。これまで多くの猟兵が彼女に接触していたからだ。
「『オルニーテス』、この世界は一度倒れたらもう立ち上がれません。知っているでしょう。あなたは」
 一度の失敗が命取りになる。
 それほどにこの世界は生命にやさしくはない。
 故に、彼女は守られてきたのだ。その自覚が彼女にあることを芽亜は知っている。
 不条理だ。
 結局のところ。これはそういうことなのだ。
「だから、あなたの限界すら超えて走り抜けて。あなたの望み、手を貸しましょう。だから」
 芽亜は示す。

『ヘリドー』の背を。
 望むものがあるのならば。どんな不条理が目の前に迫るのだとしても。
「羽撃いてみせなさい、『オルニーテス』!」
 それだけが、この世界に抗う術だと示す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

うわ……ステラさんのハートマークが紫色になってる(どんびき
やべーofやべー……いえ、ヤバキングに進化でしょうか?

って、この雰囲気について行っちゃったほうが、
勇者の死な感じがする……痛い、痛いですから引っ張らないでください!?

演奏していいんですか!?
し始めた途端にスリッパとかの『お約束』いやですよ?

といいつつも、うきわくしながら、対象限定【Canon】いっきまーす!

演奏が中に響いて、反響でさらに魅了度あっぷしちゃうかもですけど、
そこはわたしのファンが増えるかもですからいいですよね。

これこそwin-winです!

って、なんでそこでアクセル開けるんですか!?
落ちる、落ちちゃいますー!?


ステラ・タタリクス
【ステルク】
もう、私に会いたいからってこんな事件を起こすなんてメリサ様ったら
ふふ、悪徳薫る雰囲気が最高にゾクゾクしますね
誰がやべーメイドですか
方向が違うとか言わない
ほら、ルクス様行きますよ
この雰囲気についていけないなら
勇者とて死あるのみ

さて
心情的にはオルニーテス様につきたいところ
ですが、ヘリドー様も奪われるような真似はしないでしょう
なら、奪還はティタニウム・マキアに着いた瞬間
その時の為に仕掛けます
ルクス様、演奏であのコンテナ狙えますか?
ええ、壊しても構わないのですが
中身には傷をつけないように
仕方ないのではバイクの運転は承りましょう
私も【シーカ・サギッタ】で楔を入れます

おっとうっかりアクセルが



 ハイウェイにくねくねしている紫色の何かがある。
 後にハイウェイの怪談として語られることになるであろう光景をルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は見た。
 具体的に言えば。
「もう、私に会いたいからってこんな事件を起こすなんて『メリサ』様ったら!」
 紫色のくねくねは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
 なんか身悶えしているようである。
 ハイウェイのど真ん中で、そんなことをしているものだから、そりゃあ、そうなると言わんばかりの光景であった。
「ふふ、悪徳薫る雰囲気が最高にゾクゾクしますね」
 くねくねしているステラは『メリサ』の起こしたであろう事件に飛び込んでいた。条件反射というやつである。

 そんなステラにいつものことながら、ルクスは、うわ……としか思えなかった。
 時折、空中に舞っているのはハートマークであるか。なんか紫色になっているように思える。
 ドン引きである。
「やべーオブやべー……いえ、ヤバキングに進化でしょうか?」
 ステラはなんかモンスターかなんかなの? ポケットに入るモンスター的なやつ? そういうやつなの? となるほどにステラはくねくねにくねっていた。
 怪談として後に語られるのも無理な駆らぬことであろう。
 ハイウェイの怪! むらさきくねくね! 的な。
「誰がやべーメイドですか」
 そこじゃない。
 そういうことじゃない。誰もが思ったが、残念なことにハイウェイにツッコミはいなかったのである。
「ほら、ルクス様行きますよ。この雰囲気についていけないなら、勇者とて死あるのみ」

 ステラはなんかシリアスな雰囲気を出しているが、どう考えてもそんな雰囲気で鼻い。
「いえ、この雰囲気について行っちゃったほうが勇者の死な感じがするんですが」
「いいから」
「ええぇ……っていうか痛い、痛いですから引っ張らないでください!?」
 ステラに引っ張られてルクスはバイクのタンデムシートにまたがる。ほっぺたが伸びすぎてお餅かチーズみたいなるところであった。ところでルクスさんのほっぺたやーらかそうですよね、とかそういう話になりかねないところが、すでに勇者の社会的な死が近づいてきているように思えてならない。
 二人はハイウェイに一気に飛び出す。

 運び屋『ヘリドー』は伝説的な運び屋の二代目である。
 彼女のテクニックはハイウェイにあって他の追随を許さないだろう。追いつくのは至難の業。
 そして『オルニーテス』もまた異常であった。
 ただの女子高生であった彼女が改造バイクを乗り回し、『ヘリドー』に追いついているという事実自体が異常事態であるとも言えるだろう。
「心情的には『オルニーテス』様につきたいところですが、『ヘリドー』様も奪われるような真似はしないでしょう。なら……」
 あのコンテナを奪還するのならば『ティタニウム・マキア』の本社ビルに着いた瞬間に仕掛けなければならなない。
 幾度か猟兵があのコンテナを奪おうと試みているが『ヘリドー』は手強かった。

 逃げることと奪われぬこと。
 それだけに注力した『ヘリドー』の技量は猟兵を凌ぐものがあった。
「ならば、ルクス様、演奏であのコンテナ狙えますか?」
「えーどれです? あ、あれです? ってえええ!? 演奏していいんですか!? 本当に!? いいですよって言っておいて後でスリッパとかの『お約束』とかいやですよ!?」
「大丈夫ですから」
「でも、そんなこと言っていっつもお説教するじゃあないですかやだー!」
「しませんから!! 早く!」
「んもう、本当に。まあ、仕方ないですよね。わかりますよ。わたしの演奏、聞きたいってことですもんね! ならリクエストにお答えするのもやぶさかじゃないってことで!」
 言葉では言い繕っているが、ルクスは内心ワクワクドキドキのウキウキさんであった。
 しっかりタンデムシートにまたがりながらヴァイオリンを構える。

 その姿だけ見るのならば、なんと外連味のあることだろう。
 ハイウェイに流れる街の光。
 奏でられる演奏。戦慄! 不協和音!
「あ~良い音色です。むふふふ」
「中身は傷つけないでくださいよ!」
「え~でもコンテナの中身に演奏が響いて反響して魅了度あっぷしちゃうかもですけど、そこはわたしのファンがさらに増えるかもですからいいですよね」
 全く良くないんだけど、とステラは思った。
 だが、演奏の効果は抜群であった。

「何この音!? なんか、こう、っ、ガラス引っ掻いているみたいな!」
『ヘリドー』はルクスの演奏に顔をひきつらせながら、ハイウェイを疾駆する。
「わたしは演奏できて楽しい! 皆さんは演奏聞けて嬉しい! これぞWin-Winです!」
 その言葉をステラは聞き流しながら、集中する。
 瞳輝くユーベルコード。
 放つ投げナイフの一射が『ヘリドー』の駆る改造バイクに接続されたロボットアームが支えるコンテナへと打ち込まれる。
 それは楔。
 このまま『ヘリドー』は『ティタニウム・マキア』本社へと飛び込むだろう。ならば、その一瞬の隙を逃さぬためにこそ、ステラは楔を打ち込んだのだ。
 結果がどうなろうとも、それでも打てる手は打ち込んでおく。それが出来るメイドってものである。

「おっとうっかりアクセルが」
 跳ね上がる前輪。それに煽られてタンデムシートに乗っていたルクスの背中がハイウェイのアスファルトをかすめる。
「落ちる、落ちちゃいますー!?」
 ルクスの悲鳴がハイウェイに響き渡り、不協和音はかき消える――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(改造装甲車【エンバール】に乗り込んでカーチェイスに参加)
…ふむ『ケートス』がね…いつかは会ってみたかったけど……残念だね…

…それはそれとして…さすが運び屋…そう簡単に追いつけるものじゃない…のはともかく…
…オルニーテスがそれに追いすがっているか…ふーむ…
…ヘリドーを追いながらオルニーテスに並走して話しかけるとするよ…
…ケートスの妹さんだね…遺体の奪還に協力するよ…こんな世界でも死後の尊厳ぐらいは守られるべきだ…
…会話中にオルニーテスの状態を確認しておくとしようか…ワールドハッカーの現実改変の影響下にあるかどうか、とかね…
…復讐については止めても止まりそうに無い以上協力する方向で話を進めるよ…



『ケートス』――それはサイバースペースにおける伝説的なワールドハッカーの名である。
 業界屈指、と言えるほどの技量。知識。卓越したセンス。
 それらを兼ね備えた巨鯨にも例えられるデータの簒奪の仕方は、もはや語り草であった。
 けれど、そんな彼女ですら失墜する。
 彼女の死の噂は瞬く間にサイバースペースに駆け抜けていく。
「……ふむ『ケートス』がね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はハイウェイを改造装甲車『エンバール』と共に走り抜けながら、サイバースペースから流れてくる情報無線に耳を傾ける。
 サイバースペースでは『ケートス』の死亡説がまことしやかに語られている。
 姿を消した巨鯨。
 その背後にあるのは巨大企業群か。もしくは、目立ちすぎたがゆえに警察機構から殺し屋が差し向けられ亡きものにされたのか。
 そうした眉唾もののような噂が流れ続けているのだ。
「……いつかは会ってみたかったけど……残念だね……」
 だが、今はそれどころではない。
 それはそれである。

 メンカルが見据えるは二台の改造バイクのチェイス。
 テールランプの残光を今、メンカルは追うので手一杯だった。
「さすが運び屋……そう簡単に追いつけるものじゃない……のはともかく」
 メンカルは気がついていた。
 運び屋『ヘリドー』の技量はサイバーザナドゥのハイウェイを置いても、『物を運ぶ』という点に関しては随一である。
 なのに、これまでただの女子高生であった『オルニーテス』が復讐心に駆られているとは言え、改造バイクを乗り回し、運び屋に追いついているという異常事態。
 それがおかしい、とメンカルは思うのだ。
「……『ケートス』の妹さんだね……」
 メンカルは『オルニーテス』へと並走する。
 突如として現れた走行車両に『オルニーテス』は驚くことはなかった。これまでの道中で多くの猟兵と接触したおかげだろう。

 動ずるよりも早く冷静になるようであった。
「あなたは……また、さっきまでの連中と同じような人達ってこと?」
「……まあ、そういうもの。遺体の奪還に協力するよ……」
 どうして、と問いかける視線にメンカルは頷く。
 この世界において絶対なのは金である。金である程度どころか、大抵のことはどうにでもなってしまう。
 金でどうにかならないものさえも、どうにかできるものを金で買うことができてしまう。
 そんな世界であるのならば、遺体さえも金の材料でしか無い。
 だから、とメンカルは言う。
 この世界の住人でないからこそ言える言葉があった。
「……死後の尊厳くらいは守られるべきだ……」

 その言葉に『オルニーテス』は溢れそうになる憎悪の奥底にある涙が溶け出すのを感じただろう。だが、それは今は呑み込まねばならない。
 そんな彼女の様子をメンカルは見据える。
 そして、気がつく。

 やはり、という想いがあった。

 何故、彼女が『ヘリドー』に追いつけていたのか。
 情報分析眼鏡『アルゴスの眼』が示すのは、ワールドハッカーの現実改変能力による『オルニーテス』の身体能力の増強化。そして、技能の底上げ。
 言うまでもない。
「……やってやるわよ。私は、お姉ちゃんの妹なんだから。だから、これまでしてもらってばっかりだったことを、今やらなきゃって思っているんだから!」
 それは『ギフト』とでも言うべきものであったことだろう。
 神ならぬ人間が。
 己ではない誰かのために贈る者。
『ケートス』のワールドハッカーとしての能力。それが今、『オルニーテス』を守るように彼女の体を改変している。

 そして、それが示す事実は一つ。
 その能力の大元は『ケートス』。それが持続しているのならば。

 メンカルは『オルニーテス』が止まらないことを知っている。今彼女を説いても止まらないだろう。止まらせようとして逆に暴走する可能性だってある。
 だから、とメンカルは頷く。
「……わかっているよ。目指す先は一緒だ。だったら、共に行こう……」
『オルニーテス』はその言葉に頷く。
 取り戻す。その目的を共に果たすために装甲車両と改造バイクが『ヘリドー』へと肉薄するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

アハハハハ!待て待て待て~!
置いてけ~首置いてけ~
じゃないコンテナ置いてけ~置いてけ~

●許せないよね(許せないよね)
なるほど……つまりそのバイクがスペシャル!
AI搭載でー
『心はあるのか?』
と問われて
『そんなものは必要ない。私には確率があればいい』
とか答えちゃう感じの!
ぇー違うの?

UC『神知』を使って【ハッキング】技能で[叡智の球]くん仲介で乗っ取り限界以上の性能を引き出した車輛(の上)を次々乗り継ぎながらおっかけよう!

あれー?なんか前にも見たよね?
そしてそのときもこうやったー!
とドカデカ[球体]くんを高速道を崩壊させる勢いでヘリドーに投げ付けてこう!
ドッカーーンッ!!



「アハハハハ! 待て待て待て~!」
 ハイウェイに木霊する笑い声。
 その声色の楽しそうなことと言ったらなかったことだろう。
「置いてけ首置いてけ~じゃないコンテナ置いてけ~置いてけ~!」
「なんなのもう! 今日のハイウェイは妖怪しかいないわけ!?」
 運び屋『ヘリドー』は己を追う猟兵たちをそう評した。そう評しても致し方のないことを猟兵たちがしている、という自覚があるなしに関わらず、彼女は脅威にさらされている。

「妖怪なんて失礼な! ボクは神様! そうでしょう!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は相変わらず笑っている。
『ヘリドー』はそういう彼がハイウェイに走る車両の上を乗り継ぎながら迫っている様子に戦々恐々である。
 はっきり言って、これだけ全速力でかっ飛ばしているのに改造バイクでもなければ、車両でもなく、ただ只管に生身で追いすがるロニの事が不気味でしかたないのだ。
「おっと、キミもいたね!」
「あなたも、お姉ちゃんを追っているっていうこと!?」
『ケートス』の妹である『オルニーテス』の改造バイクが車両の上を飛ぶロニへと追いつく。
 まあ、有り体に言えばそういうことになるんじゃないかな、とロニは思った。

「でも、君は普通の女の子でしょ。素養があるっていっても、ちょっとおかしくない?」
 そう、どう考えても凄腕の運び屋である『ヘリドー』に、それもついぞ縁のなかったであろう改造バイクを初めて乗ったのに駆り、追いすがっているという異常事態。
 それが何故であるのかをロニは考えたのだ。
「だって、それでもできちゃったんだもの! 仕方ないでしょう!」
「んーなるほど! つまり、そのバイクがスペシャル! AI搭載でー『心はあるのか?』と問われちゃったり、そんでもって『そんなものは必要ない。私には確率があればいい』とか答えちゃう感じの!」
「え、何? え、どういう?」
 ロニの言葉に『オルニーテス』は理解できていないようだった。
「そういう、映画かエンタメって、こと……?」
「ぇー違うの?」
「わ、わかんないわよ、言ってること! だって、私は……」
「まあ、どっちでもいいよ! ボクが興味あるのはさー!」

 その言葉と共にロニの瞳がユーベルコードに輝く。
 神知(ゴッドノウズ)。
 それは彼の技能を高めるユーベルコード。
 あらゆる技能を底上げした力は、ロニにあらゆる事を可能にする。ハッキングも、車両のエンジン性能の限界を突破させることも、簡単なことなのだ。
「あれ? なんか前にもこんなことやって気がするね! 前と似てない? 状況がさ!」
「もーいやだー! なんで私ばっかりこんな目にあうっていうのよ! 私のバカ! 安請け合いばっかりしちゃってさ!」
『ヘリドー』の嘆きが聞こえるが、ロニは笑って聞き流す。

「ならさ、このあとどうなるかなんてわかるよね!」
「わかんないって言うので一つどうにかならない?」
「ならないね! はい! ドッカ――ンッ!!」
 ロニは巨大化させた球体を『ヘリドー』へと投げ放つ。ハイウェイの路面が砕け、破片が飛び散る最中、『ヘリドー』も『オルニーテス』も異様なる技量でもって破片の間を跳ねるようにして走り抜けていく。
「わーお、なんか派手なアクション!」
 ロニはその様子を見やり、笑う。
 まるで映画だ! と。それこそ、クソ派手映画のワンシーンを見ているようだと笑いながら、それでも走り抜けていく改造バイクのテールランプの残光を目に刻み、また……。
「待て待て~! コンテナ置いてけ~!」
 そんなふうに妖怪じみた挙動で『ヘリドー』たちを追うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベティ・チェン
耳に手を当て通信風の仕草をしてから鯨の妹に
「鯨の、行き先。ティタニウム・マキアの本社ビルかも、しれない。ボクは、先回りする。確実じゃ、ないから。キミはこのまま、追っていけ」

並走したまま
「鯨の、妹。キミの、姉は。鯨と言うより、鯱だった」

「家族のために殺し、|遊び《かね》ために殺し、|欲望《ねがい》のために殺し…自分の心の、欲望のままに生きた。ここでは、とても正しい生き方」
薄く笑う

「卵を産めなくなった鶏は、首を落とされ肉になる。自分の|欲望《ねがい》のために戦わない者は、他の強い欲望を持った者に潰される」

「ボク達は、死ぬまでしか生きられない。|欲望《ねがい》は、生きてる間しか叶わない。戦え、願え、生きるために」

「鯨の、妹。キミは作られた、後天的な天才だ。なら、分かるだろ。気絶でも、サイバースペースからは、落ちる。鯨の生きた脳ミソは、とても使い道がある。だから。鯨はまだ、完全には死んでない」

「鯨の、妹。鯨を、家族を、愛しているなら。キミが鯨を、取り戻せ」

飛行し本社ビルへ先行
上空から監視し燕待つ



「あーもー! 全く持って本当にもう!」
 しつこい! と運び屋『ヘリドー』は辟易していた。
 彼女を追い立てる『オルニーテス』も、猟兵も。
 何もかも己の仕事を邪魔だてするものばかりだった。確かに彼女が運ぶコンテナの中身は猟兵たちが語る通り『オルニーテス』の姉、『ケートス』の遺体なのだろう。
 それが真なのならば、己に非があるといえるだろう。
 だが、それはマトモな世界であればだ。
 此処はサイバーザナドゥ。
 金次第でもどうとでも事が転ぶ世界である。ましてや、『ヘリドー』は運び屋である。運び屋が荷を、はいそうですかと手渡すわけがない。
 言ってしまえば。

「人情もモラルもねぇ! 仕事の前には!」
 蹴っ飛ばせる。
 そうであるべき、というのがこの世界の流儀であったし、最大に守らなければならないモラルであったことだろう。
「……」
 だからこそ、ベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)は『オルニーテス』と共に『ヘリドー』を追いかけながら耳に手をかざす。
 やはり、と彼女は思った。
 一連の猟兵とのやり取り、予知された事件のあらまし。
 その情報の断片をつなぎ合わせていく。

「鯨の、行き先。『ティタニウム・マキア』の本社ビルかも、しれない」
「どういうこと? どうしてそれが……」
 わかるというのだと『オルニーテス』が告げるのを遮る。
「ボクは、先回りする。確実じゃ、ないから。キミはこのまま、追っていけ」
 ベティは並走したまま告げる。
「鯨の、妹。キミの、姉は。鯨と云うより、鯱だった」
 その訥々とした言葉に『オルニーテス』は何を、と言うだろう。彼女の姉は『ケートス』と呼ばれたワールドハッカーだった。
 巨鯨のように情報を飲み干していく。
 その様から名付けられたとも言われている。生けるサイバースペースの伝説。それが彼女の姉であった。
 けれど、ベティは、彼女のことを『鯱』と言った。

「家族のために殺し、|遊び《かね》のために殺し、|欲望《ねがい》のために殺し……自分の心の、欲望のままに生きた。ここでは、とても正しい生き方」
 ベティは薄く笑む。
 そうであるべきだと誰もが教わるだろう。
 モラルなど金でどうにかできてしまう。金でどうにかできないものでさえ、金がどうにかしてしまう。
 金とは即ち力だ。
 彼女の姉『ケートス』が『オルニーテス』そのものを『願い』にしていたように。
「卵を産めなくなった鶏は、首を落とされ肉になる。自分の|欲望《ねがい》のために戦わない者は、他の強い欲望を持った者に潰される」
「だから、お姉ちゃんは」
 殺されたというのかと、『オルニーテス』は言う。
 己こそが姉を弱めたのかと。

 だが、ベティは首を横にふる。
「ボク達は、死ぬまでしか生きられない。|欲望《ねがい》は、生きてる間しか叶わない。戦え、願え、生きるために」
 視線が交錯する。
 轟々と風を切る音がハイウェイを疾駆する二台の改造バイクの間を流れていく。
 生きるために必要なもの。
 それは金以上に願いだ。生きている理由とも言えるだろう。

 それがないものは死んでいるように生きているだけの屍でしかない。
 だから、とベティは言う。
「鯨の、妹。キミはつくられた、後天的な天才だ。なら、わかるだろ」
「何、が……」
 揺らぐ心があるのをベティは見た。
 気がついているはずだと。

「わかるだろ。気絶でも、サイバースペースからは『落ちる』。鯨の、来た脳みそは、とても使い道がある」
 そう。
 すでにサイバースペースからは伝説的なワールドハッカー『鯨』の死は瞬く間に駆け抜けている。
 その証拠に警察機構に納められている『鯨』のパーソナルデータは、すでに|『焼却』《バーンナウト》されている。
 誰がやったかはわからないけれど、そうなっている。
 ならば。
「そんな、ことが……?」
 ありえるのか?
 あっていいのか?

「だから。鯨はまだ、完全に死んでない」
 あのコンテナの中身が何であれ、ベティに言えることはそれだけだった。
「鯨の、妹。鯨を、家族を愛しているのなら。キミが鯨を、取り戻せ」
 ベティの瞳がユーベルコードに輝く。
 変形するバイクが偽神兵器によって翼へと変貌し、空へと飛翔する。
 どんどん小さくなっていくハイウェイを走る『オルニーテス』のバイク。それを見下ろし、彼女は一気に『ヘリドー』が目指す先……。
 そう、『ティタニウム・マキア』本社ビルへと加速し、必ず来るであろう『ヘリドー』を待つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『暴走する試作戦車を止めろ』

POW   :    正面から火力で制圧する

SPD   :    市民の避難を促し、救助する

WIZ   :    制御を乗っ取ったりバグ修正で正常化する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ハイウェイのチェイスによって『ヘリドー』はなんとか猟兵と『オルニーテス』の追撃を躱す。
「いやぁ、本当に助かったよ。うん、まじでマジで。こんなのアンタしかできねぇって本当に思うよ」
 軽薄な声と共に『ティタニウム・マキア』の本社ビルの中から出迎えるのは亜麻色の髪の男『メリサ』であった。
 いつもの軽口。
 にこやかだが、その表情の奥底に隠れた感情が人を引き付けて止まぬことを『ヘリドー』は知っている。
 改造バイクに備えられたロボットアームがコンテナをおろし、それを受け取るようにしてコンテナが本社ビルの奥へと運び込まれていく。
 あのコンテナの中身を『ヘリドー』は知らない。
 己は仕事をしただけだ。
 だが。

「あんたねぇ! もう二度とこんな仕事は請けないから!」
 平手が『メリサ』の頬を打ち据える。
 乾いた音が響き、けれど『メリサ』は驚いた顔をしていなかった。そうされることを理解していたというより、予見していたとも言えるし、『ヘリドー』がそうすることは当然の権利だと思っている節さえあるようだった。
「……ったく、どうして私ってばこんな!」
 そう言って彼女は改造バイクで本社ビルから瞬く間に飛び出していく。それは、もう仕事が終わった、と言わんばかりの態度であったし、それを『メリサ』は引き止めなかった。

 けれど、彼の背後から数人の少年少女たちが現れる。
 彼らの名は『クヌピ』。
 ストリートで嘗て『サイコブレイカー』として違法な薬物に手を出し……いや、出さざるを得なかった少年少女たちである。
 今の彼らは『サイバーニンジャクラン』に所属している。
 すでに警察機構に残されていた彼らの個人情報は|『焼却』《バーンナウト》されているゆえに、彼らがサイコブレイカーであることも、ストリートに存在していた少年少女であることも知られることはない。
 彼らは先程のやり取りを見ていたのだろう。

「女たらし」
「え、今の見てた? 完全に振られてる感じじゃなかったか?」
「……うわ」
 引くわ、と少年少女たちは『メリサ』の態度に辟易している様子だった。
「本気で言ってるのなら質悪っ。で、僕らの仕事は?」
「ああ、簡単だ。お前らの超能力が必要だ。この本社ビルに配備している試作戦車……これから此処に殺到するのは猟兵だ。これを迎撃しなくちゃあならない」
 となれば、と『メリサ』は、おー痛ぇ、と頬をさすりながら笑っていうのだ。
「その試作戦車のリミッターをお前ら|『クヌピ』《蚊》の超能力でさ、ちょいちょいって外して暴走させてくれよ」
 そんなことか、と彼らは頷く。
 同時に本社ビルに配備されていた試作戦車が溢れかえり、一気にビルの外へと飛び出していく。
 膨大な数の戦車。

「これならば、猟兵も、あのおっかねぇ『ケートス』の妹も足止めくらいはできんだろう。さ、お前らの仕事は終わりだ」
「こんだけ? 他には?」
「ねーよ。お前らはもうお役御免。さっさと今日あったことは忘れて飯食って風呂入って勉強して寝ろ」
「うっざ。こういうときだけ子供扱いしてさ」
「あ、歯ぁ磨くの忘れんなよ」
 そう言って、『メリサ』は『クヌピ』と呼ばれた少年たちを本社ビルの裏口から追いやり、独りごちる。

「さあ、来いよ。猟兵。オーラスまで付き合ってもらって悪いが」
 その言葉と共に本社ビル前を埋め尽くす試作戦車たちは、リミッターを外され、尋常ならざる戦闘力を発揮し、迫る猟兵と『オルニーテス』へと襲いかかるのだった――。
メンカル・プルモーサ
(引き続き改造装甲車【エンバール】に搭乗)
……露骨に時間稼ぎだねあれは
(オルテーニスに)その改造バイクとテクニックなら戦車の間をすり抜ける事ができるかもしれないけど…
もう一つ足止め策があれば挟み打ちになるから得策ではないね…
相手の予想よりも早く突破したほうがいいかな…
【我が身転ずる電子の精】を発動……目を粒子化して暴走させるために弄られた部分を確認…
そしてその部分の修復と強制的に制御権を奪取するウイルスプログラムを作って自己判断型伝令術式【ヤタ】に持たせて試作戦車の制御システムに潜り込ませて感染させよう
あとはデータリンクシステムを使って他の戦車へと影響広げて同士討ちさせて制圧しようか……



「戦車があんなに……!」
 運び屋『ヘリドー』を追って巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと至った猟兵たちと『オルニーテス』。
 しかし、その眼前に広がるのは暴走する試作戦車の群れ。
 その砲撃の凄まじさは圧倒的少数である猟兵達の数だけ見れば過剰な戦力投入であるように思えただろう。
 事実、巨大企業群『ティタニウム・マキア』に詰めているカンパニーマンたちは、そう思ったはずである。だが、これは本社からの通達である。
 この本社ビルに迫る脅威を打ち払うためには、試作戦車を以て当たれ。
 そういう命令が伝わっているのだ。

「どうする……どうしよう……これじゃあ、お姉ちゃんが!」
「……露骨に時間稼ぎだね、あれは……」
『オルニーテス』の言葉にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は告げる。
 そう、明らかな遅滞戦術。
 試作戦車の火力は確かに殲滅戦用のものであろう。砲火遊ぶ本社ビル前にあっっては、この激烈なる火力は過剰そのもの。
 けれど、相手が猟兵であるのならばカノ情でも何でもなかった。
「でも、私の改造バイクとテクニックがあれば!」
「……それも可能だろうね。けど、戦車の間をすり抜けた後は……? きっとこれは足止め策の一つでしかないよ……」
 となれば、とメンカルは告げる。
 試作戦車群を突き抜けても、さらに別の足止め工作が『オルニーテス』を襲うだろう。
 その時、彼女を守る猟兵はそばにいない。

「……相手の出方が分からない以上、挟み撃ちの可能性は大いに有り得る。得策ではないね……」
「じゃあ、どうすれば……!」
「……簡単だよ。相手の予想より早く突破する。それに限る……」
 故に、とメンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
 敵対する試作戦車の群れは、意図的に暴走状態に陥っている。この砲火の凄まじさがそれを物語っていると言えるだろう。
 恐らく電子的な制御を強引に弾いているのだろう。
 うまいやり方だと、メンカルは思っただろう。必要以上に消耗させようとしている。敵対する戦力が猟兵であるから、という言い訳も立つ。

「我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰――我が身転ずる電子の精(コンバート・テクノマンサー)」
 メンカルのユーベルコードによって己の瞳が粒子化する。
 データや信号に直接干渉できる集合体へと変異した瞳は、その電子的な制御を強引に弾いているものを見やる。
 試作戦車の制御盤。
 そこに備わっているのは、恐らく人体由来の生体部品。
 試作戦車である以上、頭脳戦車のように人の頭脳を搭載する余白があるのだ。そこに擬似的な生体部品を使っているのならば。

「……こちらに制御権を奪取することもできる」
 己の粒子化した瞳が試作戦車の中を走り抜けていく。さらに自己判断型伝令術式『ヤタ』によって試作戦車の制御システムへと潜り込み、伝播させていく。
「試作戦車が同士討ち!?」
『オルニーテス』は目を見張る。
 メンカルのユーベルコードが輝いた瞬間、試作戦車たちが互いに砲口を向けあって砲撃を開始し始めたのだ。
 それも伝染するように次々にだ。
 広がっていく混乱めいた爆発の中、『オルニーテス』は見ただろう。
 メンカルの粒子化された瞳、その光が次々と同士討ちによって擱座した戦車から飛び出し、さらなる獲物を求めて飛び立つのを。

「あ、あなたの仕業って、こと?」
「……そう、制圧まで時間はかかるけど……でも、これが確実。少しでも『オルニーテス』、温存しておいて」
 あのコンテナを取り戻すためには、きっと『オルニーテス』の力が必要であろうから、とメンカルは同士討ちを広げるように己のユーベルコードによって粒子化した瞳を輝かせ、その復讐すべき相手へと至る道筋を切り開くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァルターン・ギャンビット
フォッフォッフォッ…ッ!!
(街に響き渡るエコーの入った笑い声。ビル群の間から現れる【超巨大化変身】した姿のヴァルターン)

来いって言うから来てやったぜぇ。唖然としてる姿が目に浮かぶぜ。
オルニーテスの嬢ちゃんは下がってな。うっかり踏み潰しちまうかもだからな。
フォッフォッフォッ、リミッター解除だか知らねぇがそんな豆鉄砲この頑強なボディには効かねぇぜッ!
更に驚かしてやるか。透明化して敵が見失ってる隙に一気に接近して透明化解除。
戦車を蹴り上げたり踏み潰したりしてやるぜ。
更に更に、くらえ破壊光線ッ!

フォッフォッフォッ、宇宙の広さを思い知ったか?


【技能・怪力、ダッシュ、不意打ち、地形破壊】
【アドリブ歓迎】



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビル周辺は混乱に満ちていた。
 突如として本社ビルから飛び出した試作戦車の群れ。
 それらが砲火を放ち、街中は戦場の火に包まれる。それだけではない。猟兵のユーベルコードによって試作戦車同士が同士討ちをはじめ、その混乱は市街地にいる人々にまで伝播していくのだ。
 そして、それ以上のことが今まさに人々に襲いかかる。
「フォッフォッフォッ……ッ!!」
 エコーの掛かった奇妙な笑い声。
 どこから響いてきているのか知れぬ声に人々は言い知れぬ恐怖を覚えたことだろう。
「な、なんだよ、この音……いや、声?」
「わ、笑い声みたいに聞こえる……それに、地面、揺れて……地震、なのか?」
 そんな市民たちの見上げる先にあったのは、超巨大化変身(チョウキョダイカヘンシン)したヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)の巨躯であった。

 ビルの谷間から現れるようにして姿を見せつけるヴァルターン。
 あまりにも、あんまりな光景。
 人々は現実味を帯びない光景に目を見開き、唖然と口を開くしかなかった。これだけ巨大な存在を前にして人々の心に浮かぶのは恐怖よりも先に驚愕たる感情であったことだろう。
「来いっていうから来てやったぜぇ!」
「え、えええええっ!?」
 そんなヴァルターンを見上げている一人に彼は気がつく。
 先程までハイウェイを爆走していた『オルニーテス』である。彼女はヴァルターンが巨大化しているのはどういう理屈なのかさっぱりわかっていなかった。
 いや、このサイバーザナドゥの世界に生きる人々にとっては、サイバースペースの出来事であるのかもしれないと思ったが、ここは現実世界である。
 そんなことありえないのだ。

 だが、そんな彼らの驚愕をよそにヴァルターンは笑う。
「フォッフォッフォッ、『オルニーテス』の嬢ちゃんは下がってな。うっかり踏み潰しちまうかもだからな!」
「そんなことより、前! あ、いや、足元!? かしら!? 戦車、試作戦車が!」
 笑うヴァルターンに『オルニーテス』は叫ぶ。
 けれど、ヴァルターンは一向に意に介した様子がない。
 何故なら、彼は巨大化している上に凄まじい怪力と頑強な体を持っているからである。たった一つの惑星。地球を食いつぶす程度でしか発展しなかった科学力を前に、星の海を往く世界の住人の科学力が追いつけるわけないのである。

「フォッフォッフォッ、リミッター解除だかなんだか知らねぇが、そんな豆てっぽう! この頑強なボディッ! には効かねぇぜッ!」
 その言葉通り、試作戦車の放つ火砲の一撃などヴァルターンの体に当たってもまるで揺らぐことがない。
 圧倒的な科学力の差を……いや、頑強なる肉体の差を見せつけながらヴァルターンは己の体を透明化させる。
「き、消えた!?」
「さっきまで其処にあったんだぞ!? なんで急に……っ、ヒッ!?」
 人々はヴァルターンが消えた事以上に、見えぬ巨大な存在が立てる地響きに方を竦ませる。
 瞬間、透明化を解除したヴァルターンの巨体が現れ、試作戦車を蹴り上げる。

 宙に飛ぶ戦車。ひしゃげながら地面に落ちれば爆発炎上し、周囲を照らす。さらに脚で踏み潰した上に破壊光線の一撃を御見舞するのだ。
「フォッフォッフォッ、宇宙の広さを主知ったか?」
「や、やりすぎじゃない!?」
「フォッフォッフォッ、こういうときに見せつけるのは圧倒的な科学力の差ってやつよ! 何事もはじめが肝心! 舐められたらおしまいってのは、何処の世界だって共通認識だろうッ! ならよぉッ!」
 おらぁ! と破壊光線が迸る。
 凄まじい爆発が『ティタニウム・マキア』本社ビルの眼前で巻き起こり、次から次に迫りくる試作戦車が餌食になっていく。

 それを『オルニーテス』はただただ見上げることしかできなかっただろう。
 圧倒的過ぎる力。まさしく唖然とするしか無いだろう。
 けれど、これが現実。
 ヴァルターンの笑い声だけが、市街地の空に不気味に響き渡っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
暴走戦車が今度の相手ですか。制御を外れた機械の相手は苦手なんですが、やるしかありませんね。

「全力魔法」「範囲攻撃」電撃の「属性攻撃」「矢弾の雨」で、光輝の雨。
戦車を相手にするには、縦です。一気に破壊しますよ。

主砲に狙いを付けられないよう、物陰に隠れたり、駆け回ったり。
『オルニーテス』、気をつけてくださいね。砲撃を受ければお仕舞いです。

光輝の雨を降らせ続けつつ、戦車のダメージがどれほど嵩んでいるか確認しましょう。
戦車が崩れ落ちたら、あなたの出番ですよ、『オルニーテス』。私も共に行きましょう。

――さあ、本社ビルへ突入です。



 機械とは制御されて初めて意義を持つ。
 意図的に暴走させられている試作戦車。その火砲は猟兵のユーベルコードによって同士討ちを始め、さらには巨大化された彼らによって蹴散らされる。
 その様を『オルニーテス』は呆然と見上げるしかなかった。
 あまりにも理外の力。
 猟兵の煌めくユーベルコードは彼女に圧倒的な力を思わせたことだろう。
 そして、此処にも一人、その理外たる力を持つ猟兵がいる。
「天上より光の雨降り注ぎ、地を這う不浄の一切を討ち滅ぼさん」
 降り注ぐは、光輝の雨(コウキノアメ)。

 儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)が引き絞る弦。その弓から放たれる天への一射。
 それが空空で分裂し、光の矢の雨として試作戦車の装甲を貫いていく。
 通常、戦車というものは側面からの攻撃に強くできている。だが、底と天辺は違う。そこに攻撃が加えられることを想定していない。
 だからこそ、人の歴史を顧みれば、そこへと攻撃を叩き込むために地雷が用いられる。そして攻撃ヘリが、戦闘機が用いられる。
 いつだってイタチごっこでしかない。
「一気に破壊しますよ」
 芽亜の瞳がユーベルコードに煌めく度に空から光の矢の雨が降り注ぐ。
 其のすさまじい光景に『オルニーテス』は声を発することができなかたかもしれない。

「『オルニーテス』、気をつけてくださいね。砲撃を受ければ御仕舞です」
「え、ええ……」
 呆ける彼女の背を芽亜は叩く。
 しっかりしろ、と彼女は言うだろう。
「あなたがそんなことでどうするのですか。力に見惚れるのは、理解できます。けれど、今あなたがすべきことはそんなことじゃあないでしょう」
 芽亜の瞳が『オルニーテス』を捉える。
 彼女はあまりにも桁外れの力を今目の前にしてユーベルコードの光に心惑わされているのかも知れない。
 強烈過ぎる力の輝きは、人に戦いと云う名の本能を呼び起こさせる。
 どれだけ文明が進むのだとしても、人の本能に刻まれたものは容易に消せるものではない。

 だからこそ、芽亜は言う。
「そ、それは……でも、でも、こんな戦いの光……!」
「しゃんとしなさい。この戦いの光の先にあなたの求めるものがある。取り返したいと願ったことを思い出しなさい」
 芽亜は光の矢を放つ。
 雨のように降り注ぐ矢が試作戦車を次々と破壊していく。
「私も共に行きましょう。さあ!」
 其の言葉に要約にして『オルニーテス』は頷く。
 戦いの光は見惚れるほどに鮮烈だったことだろう。彼女の中にあった『ケートス』を取り戻すという意志すらかすませるほどに。

 多感な時期なのだと芽亜は理解する。
 彼女もまたそうだっただろう。あの死と隣り合わせの青春。自分には共に並び立つ友が多くいた。
 けれど、『オルニーテス』は違う。
 唯一人。
 そう、唯一人なのだ。
「さあ、本社ビルへと突入しますよ!」
「うん……ッ!」
 他に誰もいないというのならば、己が導く。
 そう言わんばかりに芽亜は『オルニーテス』の背を押す。立ち止まってはならないと。多くのことを取りこぼさぬようにと願うからこそ、彼女の背中を守るように芽亜は試作戦車の砲火の中を共に進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
……なんか派手な歓迎をされているが……というかこれ、貴様が一人では来ないと想定してない?それとも貴様、実はピンチに陥ると「いやー!」とか叫ぶと同時になんか不思議な力で街一つ消し飛ばすタイプ?

まあよい、用があるのはこの先であろう?手伝ってやろう!
我が第一の魔将ワルフォンの奴を呼びだし【支配する光輝】を使わせ、戦車のコントロールを奪って強化もして他の戦車や建物を攻撃させてどかし、道を作らせるぞ!
……くく、あんな感じに「自分や他人を効率よく使う」のは奴の得意技だ。まあ己の力量や采配に自信がありすぎるのが短所だが……そう創ったのは我だしな。では奴が働きすぎて(UCの代償で我が)過労死する前に行くぞ!



『オルニーテス』は砲火の中を走る。
 猟兵達のユーベルコードは彼女の目を晦ませ、また同時に背中を押すものだった。
 暴走した試作戦車の残骸を乗り越えて、目指す先にあるのは巨大企業群『ティタニウム・マキア』本社ビル。
 あそこに姉である『ケートス』の遺体が入っているであろうコンテナが運び込まれたことは理解している。
 手を伸ばせば届く。
 そう確信するからこそ、彼女の心には強烈な輝きが宿っていくようだった。
「……なんか派手に歓迎されているが……というかこれ、貴様が一人では来ないと想定してない?」
 ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は呆れ半分に『オルニーテス』へと告げる。
 確かに彼女の言う通りだった。

 どう考えても『オルニーテス』が復讐に来るとわかっているのならば、過剰な戦力である。どう考えてもおかしい。
『オルニーテス』が普通でないのだとしても、これは物量から考えておかしい。
 どう考えても『猟兵たちが来ることを想定』しているようにしか思えなかったのだ。
「それとも貴様、実はピンチに陥ると『いやー!』とか叫ぶと同時になんか不思議な力で街一つ消し飛ばすタイプ?」
「そんなわけないでしょ! そうみえる!?」
「いや、全然みえんな。普通に」
「でしょう!?」
「まあよい。用があるのはこの先、あの縦にそびえるビルであろう? 手伝ってやろう!」

 その言葉と共にワルルーナの瞳がユーベルコードに輝く。
「我が第1の獣ワルフォン/支配する光輝(ワルフォン・ドミネーションレイ)よ! 連中のコントロールを奪ってやれ!」
 召喚されるは光輪背負うグリフォン。
 第一の魔将ワルフォン。
「フハハハハ! この我が! 一番鉄細工の貴様らを上手く扱えるのであーる! おっと、なんだか小奴ら暴走しておりませぬか? 妙ちくりんな力を感じ類のでありますが?」
「ぬっ、なんといった?」
 ワルフォンの言葉にワルルーナの眉根が動く。
 妙な力。
 それはオブリビオンの力、ということか、と言う意味であった。けれど、ワルフォンは頭を振るう。

 そういうものではない、とワルフォンは否定した。
 ならば、これは。
「サイキック的な力でありましょうな。意図的に機械部分を暴走させておりますれば。ま! この我にかかれば!」
 ワルフォンはその言葉とともに試作戦車へと能力強化光線を放つ。その光線が当たった試作戦車は突如として暴走する他の試作戦車を打ち据える。
「なに、また同士討ちってこと!?」
「いいや、見よ! あれぞ我が魔将ワルフォンの力よ! あやつの光を浴びたものはなんであれ強化されて操られてしまうのよ! 故に同士討ちではなーい! 一方的な撃破よ!」
「そうでありましょう! フハハハ! 道具というものは須く我が一番上手に扱えるのであーる!」
 けたたましい笑いと共にワルフォンは飛び出していく。
 其の様を見やりワルルーナは『オルニーテス』へと耳打ちする。

「あんな感じに自分や他人を効率よく使うのはやつの得意なこと。まあ、ちょっと自信ありすぎるのが短所であるが……ともあれ、これで」
「うん、道は開けた。開いてくれた!」
「迷っている暇などないぞ。やつがハッスルして働きすぎて我が過労死してしまう前に往くぞ!」
 ワルルーナはさらに開かれた道を示す。
 そう、ワルフォンの力の源、魔力はワルルーナが肩代わりしている。負担は凄まじいものであるが、まあ今のところ大丈夫である。
 けれど、ワルフォンが調子に乗り過ぎたらどうかわからない。
 故にワルルーナはできるだけ早くな! と『オルニーテス』を急かすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベティ・チェン
「間に合わなかった、ごめん」
目線下げ

「最悪の一歩前が、始まる。鯨を眠らせるか、狂死させるか。キミが決めろ。鯨の、妹」

「処置済みの脳を、兵器に繋ぐのは。2秒じゃ足りないけど、簡単」

「復讐を選べば。蜜蜂は、殺せる。でも今のキミは、鯨に届かない、から。クロマクに逆らえない鯨が、キミを殺す。鯨が、狂う」

「鯨を眠らせるだけ、なら。今のキミでも、できると思う。蜜蜂やクロマクを、殺せなくても。鯨が自分より大事にしてた、キミを。鯨が殺さずに、すむ。鯨の最期の|欲望《ねがい》を、踏み潰さないで、すむ」

「ボクは、先に行く。最悪の一歩前が、始まる。決めておけ、鯨の、妹」
UC使用
素の能力値で大多数の敵をすり抜け本社へ



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルの前は戦場そのものだった。
 多くの試作戦車が猟兵のユーベルコードを前にして破壊され、残骸を晒す。その最中を『オルニーテス』は走っていた。
 猟兵達の助けがなければ、彼女は瞬く間に試作戦車の砲火を前に殺されていたことだろう。
 結果論だけれど、彼女を助けにきた猟兵たちが彼女を生かしている。
 けれど、とベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)は『オルニーテス』を襲わんとしていた試作戦車の砲身を切り裂く。
 己が身を覆うは偽神兵器がもたらす神威。それによって一瞬で、試作戦車を駆動させるためのエネルギーを吸い上げた。
「間に合わなかった、ごめん」
 突如として現れたベティに『オルニーテス』はたじろぐ。

 何を謝られているのかわからない、といった様子だった。
「最悪の一歩手前が、始まる。鯨を眠らせるか、狂死させるか。キミが決めろ。鯨の、妹」
 其の言葉にさらに『オルニーテス』は動揺する。
「な、何。何を言っているの? どういうこと、それは?」
「間に合わなかった。ボク、は。この状況にしないため、にボクは待ち構えていた。けれど」
 運び屋『ヘリドー』は掛け値なしに最高の運び屋だった。
 目的地周辺が最も気が緩みやすい。最後の最後まで彼女は気を緩めなかった。ベティは彼女を取りこぼし、コンテナは『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと運び込まれてしまった。

 あのコンテナの中身。
 それは未だ判然としていない。『オルニーテス』はあれが『ケートス』の遺体だと思っている。そして、ベティもそうだ。
 あれは恐らく義体である『ケートス』の生身部分。つまりは。
「処置済みの脳を、兵器に繋ぐのは。二秒じゃ足りないけど、簡単」
「じゃ、じゃあ、お姉ちゃんは……」
「復讐を選べば。蜜蜂は、殺せる。でも今のキミは、鯨に届かない、から。クロマクに逆らえない鯨が、キミを殺す。鯨が、狂う」
 ベティの見立てが正しいのであれば。
 そうなる。そういう最悪がある。もっと言えば、そうなるように仕組まれているようにさえ感じただろう。
 違和感が、ベティの中に膨れ上がっていく。

「鯨を眠らせるだけ、なら。今のキミでも、できると思う。蜜蜂やクロマクを、殺せなくても。鯨が自分より大事にしていた、キミを。鯨が殺さずに、すむ」
 ベティは、言葉にする。
 最悪を。
 最悪の中の最悪を告げる。
 そして、最悪の中にある一縷に望みをかける。それがどんなにか細いことであるのかを知っている。世界はそんなにやさしくはないことなど解っている。

「鯨の最期の|欲望《ねがい》を、踏み潰さないで、すむ」
「そんな、こと。本当に? そんなことが、本当に人のやる、ことなの?」
 純正培養。
 そんな言葉がベティの中によぎる。
『オルニーテス』は世界の残酷さを知らない。それは『ケートス』が彼女から徹底的に遠ざけていたからだ。だから、彼女には及びもつかない悪徳が世界には存在することを知れない。
 そして、それを目の当たりにしても動くことはできない。
 ベティはだから、告げる。最悪を、最悪のまま終わらせぬために。
「ボクは、先に行く。最悪の一歩手前が、始まる。決めておけ、鯨の、妹」
 何を成すのか。
 何を選ぶのか。
 何を守るのか。
 ベティは走る。己を知覚不能とするユーベルコード。

 此処に、世界を分かつ神意(セカイヲワカツシンイ)がある。
 そして、彼女は見ただろう。
 本社ビルの奥に、根幹に在る『青』き巨体を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
(「運び屋」の反応並びに「ちびっこ」の反応および離脱を検知、『ことりちゃん』映像でも確認、追手の類も確認できず、っと。ふーん、大人しく帰すんだ)
それじゃ、こっからはシルキーちゃんもお仕事の時間だから頑張っちゃうぞ★
ビースト軍団はGライアー内に回収、Gライアーは突破するまで待機だぞ★

適当な戦車に攻撃して動きを止め、近づいて『ハンドユニット』を展開、システムハックしてそのままUCでコネクト・オーン★本当の暴走ってのを見せてあげちゃうぞ★
特大強化・暴走異形化した戦車で他の戦車とおまけで侵入経路確保と後続阻止用に本社ビルへと攻撃するよ★壊しきれなかったら次はその戦車を「使って」同じ事を繰り返すね★



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルから離れていく動態反応がある。
 それは運び屋『ヘリドー』の駆る改造バイクであった。
 凄まじい速度。
 それは戦いに巻き込まれぬため、というよりは自棄っぱちのフルスロットルのようにシルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)には思えた。
 それにいくつかの小さな反応。それが少年少女のものであることを知るキーは検知すると共に映像でも確認する。
「ふーん、大人しく返すんだ」
 彼女の疑問はいくつかある。
 この事件の黒幕というのが『メリサ』と呼ばれる業界屈指の殺し屋なのだとして。対する『ティタニウム・マキア』はあまりにも振り回され過ぎではないかと思うのだ。
 本社ビルを守らんとするように飛び出し続ける試作戦車。
 まあ、わからないでもない。
 猟兵という規格外の存在が来襲するというのならば、この数はわかる。

 けれど、『ティタニウム・マキア』にとっても『メリサ』にとっても、『オルニーテス』の復讐しか感知はしていないだろう。
 これでは、まるで猟兵が『オルニーテス』の復讐心を切っ掛けに『ティタニウム・マキア』に至ることを誘引したとしか思えない動きだった。
 もしも、シルキーが『ティタニウム・マキア』であったのならば、安心安全を売る巨大企業群としてのイメージを保全するために、ああいった運び屋というのは都度始末するはずだ。
 情報がどこから漏れるかわからないからだ。
 けれど、それをしなかった。いや、『させなかった』者がいて、この絵図を描いた者がいるのだとしたら。
「なら、こっからはシルキーちゃんもお仕事の時間だから、頑張っちゃうぞ★」
 シルキーはビースト軍団を『Gライアー』へと回収し、待機させる。

 頭脳戦車たるシルキーは迫る暴走試作戦車の砲火を前に動きを止めたかと思った瞬間、『ハンドユニット』を展開する。
 コネクターが瞬時に放たれ試作戦車へと打ち込まれる。
「コネクト・オーン! システムハック開始! 殲滅機構・規格外兵装(オーバードーズ・イレギュラーウェポン)! 掌握支配完了★」
 シルキーのユーベルコードは、直接敵機にコネクターを接続することによって、その兵器自体を掌握する力である。
 いや、それだけではない。
 シルキーによって接続された試作戦車が次々と形状を変化させていく。
 強化されているのだ。
 出力だけではない。戦車としての機能そのものが、異形化することによって本来の戦車としての機能という枠組みを逸脱していく。

 まるで人型のように変形した戦車が戦場となった本社ビル前を疾駆する。
「さあ、みんな壊れるまで暴れさせちゃうぞ★」
 その言葉通りシルキーの操る試作戦車たちは『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと突撃を敢行する。
 それをさえぬと暴走試作戦車が砲火を打ち込む。
 破壊される装甲。
 躯体は砕け、瓦解する。けれど、シルキーのコネクターは次々と試作戦車を変貌させ、操り、突撃を繰り返す。
 攻撃と敵の戦力を削る。
 それを同時に行う彼女の手腕は、次々と本社ビルから溢れ出す試作戦車の数を減らし、残骸を積み上げていく。
「同じ事を繰り返すね★ それだけで痛手でしょ! これも全部、思惑の内だっていうのなら」
 これが『メリサ』の想定する何かなのだろうとシルキーは知る。

 あのコンテナもそうだというのならば、この絵図を描いたのは『ティタニウム・マキア』ではないことだけは確かだ。
「ま★巻き込まれただけっていうのなら、ご愁傷さまってやつだね――★」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
うーん実に真っ当で正攻法な|対少数戦術《イヤガラセ》。少数精鋭は鉄量で潰せ、ってのは定石よねぇ。強行突破からの挟撃なんてのは御免だし、時間稼ぎなのは解ってても対処するしかないわねぇ…

リミッターがトんでるってことは、防壁の脆弱性もだいぶ上がってるはずよねぇ?
●黙殺・妨害と●黙殺・砲列を同時起動、描くのは|ラド・帝釈天印・ソーン《伝播する雷の茨》。ド派手に○範囲攻撃バラ撒いて擱座させちゃいましょ。どれだけ高性能か知らないけれど、中枢に雷撃叩き込まれて無事な機械なんて早々ないわよねぇ?

わざわざこんなことしでかすんだし何かあるのはもう確定として。
さぁて、飛び出すのが鬼とか蛇で
済めばいいんだけどねぇ…



 実に、とティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は思う。
 目の前の戦場。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビル前。猟兵のユーベルコードによって残骸積み重ねられ続けている試作戦車。
 圧倒的な物量である。
 これがもし、『オルニーテス』という普通の女子高生に対する対応だというのならば、明らかにおかしい。
 というより、『ティタニウム・マキア』の対応力のなさを露呈させるものであったことだろう。
「実に全うで正攻法な|対少数戦術《イヤガラセ》よねぇ。まるで私達が来るって想定していたかのような用意周到さとでも言えばいいのかしら」
 少数精鋭たる猟兵。
 それを潰せぬまでも遅滞戦術でもって時間稼ぎをする、という点においては、この対応は間違いではない。ともすれば、猟兵は消耗しきってしまうほどある。

「強行突破も意味がない。突破した先で背後に回り込まれて挟撃、なんてのは御免だし。つまり、一択ってことよねぇ」
 猟兵は試作戦車に対応セざるを得ない。
 こちらの手を明らかに読み切っている。これが『ティタニウム・マキア』の上層部の判断であるとはティオレンシアは思えなかった。
 これまでの『ティタニウム・マキア』の対応はどれもこれも猟兵を想定していなかった。
 むしろ、できるはずがない。
 予知によって事件をしって先回りしてくる存在に対して想定できることなど多くはない。
 故に、これは。

「あの男のってことよねぇ。乗せられてる気がしないでもないけれどぉ……でも、いいわぁ。わざわざこんなことをしでかすんだし、何かあるのはもう確定よねぇ」
 だから、とティオレンシアの瞳がユーベルコードに輝き、手にした『ゴールドシーン』が描く魔術文字を迫る試作戦車へ突きつける。
「さあ、ド派手に行くわよぉ。お願いねぇ、黙殺・妨害(デザイア・ディスターブ)、どーんとやっちゃってぇ」
 刻むは『ラド』、『帝釈天印』、『ソーン』。
 その意味を成す文字は力となって放たれる。伝播する雷の茨。それが戦場へと走り抜け、試作戦車の躯体を貫く。
 枝分かれするようにして走った雷撃が試作戦車を次々と擱座させていく。
 こんなことで、と思うかもしれない。
 けれど、こんなことで擱座するのだ。どれだけ高性能であったとしても、意図的にリミッターを外され暴走している試作戦車の防壁は脆弱化しているのだ。

 機体の中枢に雷撃が伝播していくのならばなおさらである。
「此処まで計算づくだってわけならぁ……飛び出してくるのは鬼とか『蛇』で済めばいいんだけどねぇ……」
 ティオレンシアは感じるだろう。
 試作戦車の砲火にではなく、彼女は目の前の『ティタニウム・マキア』の本社ビル。その奥より重圧を感じるのを。
 途方もない何かがせり上がってくるのを彼女は感じ、そして、その予感が大凡正しいことを知ることになる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

相馬・雷光
随分と物騒な歓迎ね
まぁ、あからさまな時間稼ぎだし、まともに付き合ってやる必要はないわ
真っ正面から強行突破よ!!

ウッチャイヒシュラヴァスの速度を緩めず突撃!
ヴァジュラブラスターの【エネルギー充填】はとっくに完了! 【リミッター解除】!
【帝釈天降魔砲】!! ぶっ飛べぇええええ!!!
フルパワーで迸る【電撃】弾が進行方向の戦車を鉄屑に変えるわ!

穴を埋めようと他の戦車が隊列を組み直そうとしても遅い遅い!
アクセル全開、ウッチャイヒシュラヴァスをさらに加速加速加速!!(ダッシュ)
スクラップを踏み潰して突っ走る!(騎乗突撃)
追い縋って来る戦車には爆弾を投げつけて【爆破】! 【地形破壊】!



「随分と物騒な歓迎ね。それに……」
 相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)はハイスピードバイクの唸るエンジン音と共に巨大企業群『ティタニウム・マキア』本社ビルに広がる戦場を見た。
 すでに猟兵達のユーベルコードによって夥しい数の試作戦車が残骸へと成り果てている。
 しかし、それでもなお本社ビルから溢れるようにして試作戦車が飛び出してきているのだ。
 明らかにおかしい挙動。
 まるで暴走しているかのような挙動は、この事件の裏にて糸引く者の思惑が噛まされているように思えたことだろう。
「まぁ、あからさまな時間稼ぎだし、まともに付き合ってやる必要はないわ。真正面から強行突破よ!!」
 瞬間、雷光はハイスピードバイクのアクセルを全開にする。
 目の前にどれだけ試作戦車が立ちふさがるのだとしても、彼女には関係ない。
 速度を緩めぬ『馬の王』の名を冠するハイスピードバイクが一直線に、それこそ矢のように飛び込む。

「当然壁になろうとするわよね! でもね! こっちはハイウェイでエネルギー充填はとっくに完了してんのよ! リミッター解除されているんだかなんだか知らないけれど! こっちだって!」
 煌めくユーベルコード。
 雷光の瞳に宿るは雷満たす力。迸るようにして彼女の構えた二丁拳銃、そのブラスターの銃口から雷撃が迸る。
 いや、雷撃、と呼ぶにはあまりにも濃縮された光だったことだろう。
 それは帝釈天降魔砲(タイシャクテンゴウマホウ)。
 雷撃の弾。
 そう表現するのが正しい一撃。

「ぶっ飛べぇええええ!!!」
 それは試作戦車の強靭な装甲を物ともしない強烈な一撃は一瞬で彼らを鉄くずへと変えるだろう。
 だが、それは一直線に迸るだけだった。
 すぐさま試作戦車たちはその穿たれた穴を埋めるようにして展開する。けれど、雷光は笑う。
 何もかもが遅い。
 己の放つ雷撃より速いものは存在しない。
 己が駆るハイスピードバイクは、その穿たれた一直線の穴を駆け抜けるには十分すぎるほどの速度を誇る。
「スクラップがあろうとなかろうと! 私の前に立ちふさがるなら!」
 踏み潰して突っ走ると、雷光はハイスピードバイク『ウッチャイヒシュラヴァス』と共に残骸を弾き飛ばしながら追いすがる試作戦車たちに振り返る。
「まったくしっつこいったら! これでも喰らってなさいな!」
 背後へと放り投げる爆弾が炸裂する。
 爆風が荒び、その強烈なる衝撃が試作戦車たちを吹き飛ばす。

 目の前には『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと駆け込もうとする『オルニーテス』の背があった。
「まだそんな所にいたの、あなた!」
「だ、だって、私、普通の女子高生だったんだってば! 無茶言わないで!」
「泣き言は後にしなさいよ! 行くわよ!」
 雷光は『オルニーテス』の背を守るようにして援護しながら共に本丸である『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと向かうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

とうちゃーく!
あんどおおさわぎー!

●今日のボクはクレバー!
そうボクが知性をも司る神さまだってことを示していかないとね!
とオルニーテスくんのバイクの後ろに立って走る方向を指示してこう!
お返事?ボクの耳にはありがとうしか聞こえない!
早く行きたいんでしょ?

【第六感】に従って
ここで右!そしてさらに右!
ここでぎりぎりを攻めつつ左!
そしてここでジャックナイフ!これで芸術点はバッチリ!

最後は…このまま真っ直ぐ!信じて!
[ドリルボール]くんで戦車に穴を穿ち、ゲートをUC『神撃』で粉砕!
その隙間を車体を倒れる寸前まで傾けた横滑りアクションでギュイーーーンッ!ってかっこよく通り抜けよう!



 うわぁ、すごいことになっちゃってるぞ、とロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思わず目を見張る。
 いや、目を見張る、というよりワクワクしているように思えたことだろう。
 なんというか、いつもと変わらぬロニであった。
「とうちゃーく! あんどおおさわぎー! いやぁーこういうの楽しいよね! しっちゃかめっちゃか! って感じ!」 
 でもでも、とロニは指を横に振ってニヒルに笑ってみせた。
 目の前にあるのは巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビル。
 そして、そのさらに前方に広がっているのは、試作戦車の残骸と、その残骸をかき分けて現れる新たな試作戦車たちだった。
 
 明らかに暴走している。
 凄まじまでの物量では在るが、本来の連携というものがまるで取られていない。
「これはあれかな?」
 ロニは考える。
 考えているようで考えていないということをしているだけなのかもしれないが、しかし、ロニはこうも言う。
「ボクが知性を司る神さまだってことを示さないといけないね!」
「どういうことなの?」
 神様って自分で名乗っている怪しい少年の言葉に『オルニーテス』は半信半疑だった。一生懸命ではあったけれど、どうにも、と思ってしまうのはロニのやり方があまりにも大雑把であったからだろう。

「ああ、お礼はいいよ!」
「まだ何も言ってるつもりないんだけど!?」
「そんなそんな。ふふ、わかっているってば。早く行きたいんだよね? わかってる。だから、最短ルートを教えてあげるよ! ほら、前に戦車! ここで右! そしてさらに左! フェイントとギリギリを攻めつつ、さらに左!」
「めちゃくちゃ言わないでくれる!?」
『オルニーテス』の言葉にロニは笑いっぱなしであった。
 いやはや、此処まで言うことを素直に聞いてくれるのは、擦れていない証拠でもあるだろう。余程良い環境に身をおいていたようである、とロニは思った。
「あー! そこでジャックナイフ! これで芸術点はバッチリ!」
「なんで!?」

 だが、その言葉通りに動けば、『オルニーテス』は迫る試作戦車を躱すことができた。ロニの言葉はどれも胡散臭いというか、適当な気がしていたが、しかし本物であった。
「最期は……このまま真っ直ぐ!」
「どう考えてもダメでしょ!? 敵が、いっぱいいるじゃない!」
「だいじょうぶ! 信じて!」
 その言葉と共にロニは掘削球体を投げ飛ばし、『オルニーテス』に迫る試作戦車の群れに穴をうがつ。
 だが、それだけでは止まらない。
 試作戦車は穴を埋めるように殺到するのだ。

「さあ、行くよ! はい、ド――ンッ!!」
 炸裂するユーベルコード。
 握りしめた拳の一撃が神撃(ゴッドブロー)となって振り下ろされ、凄まじい衝撃波を撒き散らす。
 その衝撃で試作戦車が宙を舞う。
「ひっ」
『オルニーテス』は己の頭上を試作戦車がかすめたことに青ざめる。しかし、ロニの一撃によって確かに道は切り開かれた。
「さあ、あとはど派手なアクションでギュイーンって格好良く通り抜けようね!」
 ロニの言葉に『オルニーテス』は思わず叫ぶ。
 そんなの無理、と――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

手を出すから、って……。
ステラさん、手出されるどころか、当てたこともないじゃないですか。
むしろにげら……いえ、何でもありません、マム!

もちろんお付き合いいたします!

え? 盾!?
肉盾はもういやですよー!? あれ怖いんですから!

って、もう、ステラさんツンヤンデレデレなんですからー♪
そんなにわたしの演奏聴きたいなら、素直に言ってくれていいんですよ?

いつでもリクエストにお応えしちゃいますから、遠慮しないでくださいよぅ。

それじゃ、わたしのほうに誘き寄せますから、とどめお願いしますね!
【ハンガリー狂詩曲】いっきまー……はわわわわ!?

そんないっきにこられましてもー!?
ステラさん、へるぷー!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
ほらー私以外の女に手を出すからそうなるんですよメリサ様
誰がやべーメイドですか
あん?何か言いました??

ええ、命懸けの火遊びでも私ならお付き合いしますのに
そう、それこそ|鋼鉄の巨人《セラフィム》を手に入れるまで、とか

オルテーニス様はコンテナを追いかけてくださいませ
道は我々が
そこの勇者があらゆるものを破壊しますので
メリサ様はとりあえず後回しに
今は『追い詰める』ことが先決です
コンテナはその要になりますので
ささ、早く

はい、|ルクス様《盾》の出番ですよ
キリキリ破壊していきましょう

さてメリサ様との
|ダンス《殺し合い》の準備運動です
勇者の尊い犠牲の上に
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!



 何処で何かを見ていたのかわからないが、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、ほらー! と何か見てきたかのように言う。
「私以外の女に手を出すからそうなるんですよ『メリサ』様」
「手を出すから、って……」
 そんなステラの言葉にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はタンデムシートにまたがりながら、一体何を見ていたのだろうと一瞬怖い思いをした。
 もしかして、なんかこう盗聴とか盗撮とか非合法なあれそれに手を出してしまっているのではないかと訝しんだ。
 それほどまでにステラの言葉は現実味を帯びていたし、何か違う者が彼女には見えているのではないか。

 いやまあ、猟兵だって時折、予兆めいた光景を目にすることがある。
 きっとステラのそれもそういうことなのだろうとルクスは自身を納得させる。
「でも、ステラさん、手を出されるどころか、当てたこともないじゃないですか。むしろ、にげら……」
「あん? 何か言いました?」
 お? とステラの視線が、その圧がスゴイ。
「……いえ、なんでもありません、マム!」
 びしぃっとルクスは背筋を伸ばして宣言する。何も聞いてないし、言ってないし。見ていないし。
「でも、本当にいけず。命懸けの火遊びでも私ならお付き合いいたしますのに」
「火遊び……?」
 やっぱヤベーメイドじゃんとルクスは思った。
「誰がヤベーメイドですか」
 コイツ、心を! となりながらもルクスは前々、と指差す。

「そんなことより! 敵! あの大きな鉄の棺桶みたいなのが来てますってば!」
「ああ、試作戦車ですね。はいはい」
 ステラはルクスとは裏腹に冷静だった。
 あの亜麻色の髪の男『メリサ』の目的がなんであれ、己が何をすべきかなど決まっている。
 今まさに猟兵と共に『ティタニウム・マキア』の本社ビルへとコンテナを追って走る『オルニーテス』の姿を認める。
 彼女を助けること。
 それが今の己達のすべきことだとステラは理解するのだ。
「『オルニーテス』様は、どうかそのまま。立ちふさがる脅威は我々が」
「ええ、そうですよ! 任せておいてください……ってアレ全部わたしたちが引き受けるんですか!?」
 ルクスは思わずステラの肩を揺さぶる。
 いくら破壊しまくっているとは言え、数が多すぎるのだ。
「そ、そうよ、いくら貴方達だって……」
「いいえ、心配ご無用でございます。この勇者があらゆるものを破壊しますので」
 ひとまず、『メリサ』のことは後回しに、とステラは意識を切り替える。これは全て彼を追い詰めることに繋がる。
 そのために、あの運び込まれたコンテナは要になるだろうと彼女は考えていたのだ。

 だからこそ、『オルニーテス』が『ティタニウム・マキア』へと向かうことが必要になる。
 だが、試作戦車の物量は未だ尋常ではなかった。迫りくる砲火。
「はい、|ルクス様《盾》の出番ですよ」
「今、ルビで盾って書いてません!? 肉盾はもういやですよー!? あれ怖いんですから!」
「でも大丈夫であったでしょう? キリキリ破壊していきましょう」
 はいどうぞ、と言わんばかりにステラはルクスを急かす。
「でもでも!」
「演奏していいですよ。そこで」
「あっはーい! ならリクエストにお答えしちゃいますね! もう、ステラさんのツンヤンデレデレなんですからー♪」
 ツンヤンデレデレ。
 ツンとヤンの後にデレデレするというあの高等テクニック! しっているのか、ステラ! となる流れであるが、ステラは流していた。
 はいはい。
 そうですね。

 その二言である。
 タンデムシートから放り出されたルクスは、しかし、意気揚々としてハンガリー狂詩曲(ハンガリーキョウシキョク)を奏でる。
 音がすごい。
 もうなんていうか、常識を破壊する音色であった。言葉で表現できない音。それが戦場に響き渡り、試作戦車達の暴走したシステムがさらに暴走するように一気にルクスへと迫るのだ。
「そ、そんなにいっきにこられましてもー!? な、なんかわたしばっかり狙われてません!? 演奏!? わたしの演奏がすごすぎたばっかりに!?」
「一番厄介な敵から潰そうってことじゃあないですか?」
「言ってる場合じゃないです! ステラさん、へるぷー!」
「まったく……『メリサ』様との|ダンス《殺し合い》の準備運動です。勇者の尊い犠牲の上に!」
「まだ死んでないです!」
「では、参ります。スクロペトゥム・フォルマ!」
「だから、犠牲になってないですからー!」
 その言葉をかき消すように戦場には銃撃の音が響き渡る。
 砲火と銃撃。
 鉄くずと舞うメイド。
 這々の体で逃げ回る勇者。
 戦場の混沌とした状況は収まる所をしらないだろう。そして、大地が鳴動する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』

POW   :    アームズ・フォート
召喚したレベル×1体の【無人ステルス戦車】と【無人ステルス爆撃機】に【敵のあらゆる電子機器を破壊するEMP兵器】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
SPD   :    エリミネイト・フォート
自身の装備武器を【無数の殲滅用砲台】に変え、【防御無視】能力と【敵を自動追尾する】能力と【攻撃地点の空間を湾曲・浸食する空間汚染】能力を追加する。ただし強すぎる追加能力は寿命を削る。
WIZ   :    インベイジョン・フォート
任意の部位から最大レベル枚の【敵を自動迎撃する砲台】と【巨大荷電粒子砲】を生やして攻撃する。枚数を増やすと攻撃対象数、減らすと威力が増加。

イラスト:田口 マサチヨ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は日輪・黒玉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「これはどういうことだ」
「一体何が起こっている。我々は何も感知できていない」
「我等が『ティタニウム・マキア』が襲撃されるなど、そんな情報は何一つ入ってきていない」
「説明を求める」
「いやあ、大変な事になってきましたな、つってね。何、直に収まるでしょう。少しばかり行き過ぎた連中がやってきたってことです」
 その声を聞き亜麻色の髪の男『メリサ』はいつもの軽薄そうな調子で言葉を紡ぐ。
 事態は逼迫している。巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルが襲撃されているのだ。多くの試作戦車を持って、これを鎮圧しようとしているが、まるで歯が立たない。飛び出した戦車は尽くが鉄くずへと変えられた。
 安心安全。
 それが『ティタニウム・マキア』の企業イメージだ。
 だというのに、これでは自社製品が役に立たないどころか、リスクマネジメント一つできていないことを喧伝しているようなものであったからだ。

「謀るな。殺し屋風情が」
「そのとおりだ。我等が『ティタニウム・マキア』が本気になれば」
「では、本気になってもらおうじゃあないか。そうしなければ、この領域に踏み込んできた連中は、『アレ』を奪うぜ?」
 亜麻色の髪の男『メリサ』が示すのは先程運び込まれてきたコンテナだった。
 示すコンテナを見やり、声の主たちは冷静さを幾分取り戻したようだった。あのコンテナの中には類まれなるワールドハッカーの躯体が残されている。
 所謂『ギフト』と呼ばれるたぐいの才能。
 サイバースペースにおいて、『鯨』とも例えられたワールドハッカーの驚異的な演算能力とサイキックによってコントロールされる力。
 それによって彼らは新たなるステージに至ろうとしているのだ。

 コンテナが開封され、そこにあるであろう少女の躯体を声の主たちはシステムに組み込もうとして目を見開く気配が、その場を支配した。
「……」
「……何故」
「……何故、『それ』が其処に在る」
「奪われたはずだ。取り戻せなかったはずだ。なのに、何故、それが、そこに在る」
 そこに納められていたのは『ケートス』の体ではない。
 あったのは巨人の腕と見紛う程の巨大な腕部。青い腕。それを彼らは知っていた。
 この『ティタニウム・マキア』の中枢にして要。その存在を、その力を、彼らは食い物にしてきたのだから。だからこそ、それが其処にあることが信じがたい。それは遺失したはずだった。

「どうやら、先程のハイウェイチェイスの最中にすり替えられたんでしょうなぁ。いやはや、となれば、今まさに此処に迫っている連中っていうのは」
「御託はいい!『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を起動せよ!」
「すでに起動シークエンスを開始している。すり替えられたというのならば、奪い返すまで。あの生ける屍を奴等は奪うつもりだ」
「ならば、我等がすべきことは一つ」
「奴等を滅ぼす。あの|『生ける屍』《セラフィム》を起動などさせぬ」
 この主たちの声が震える。
 同時に『ティタニウム・マキア』の本社ビルの奥から鳴動するようにキャタピラの音が響き、その地面を突き破るようにして、圧倒的な巨体を誇る『ティタニウム・マキア』本社そのものと言える『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』が姿を表す。

「貴様たちが何者であれ構わない」
「我等が富を簒奪せんと目論むのならば」
「総力を持って滅ぼすのみ」
「我等は『ティタニウム・マキア』。この世界の『安心安全』を搾取するもの」
 その言葉とともに吹き荒れる砲火が猟兵たちへと向けられる――。
ヴァルターン・ギャンビット
(以前として【超巨大化変身】の状態)
フォッフォッフォッ、それが奥の手ってやつか。
じゃあその陸上戦艦がどれだけ安心安全か試してやるぜッ!

先ずは召喚された無人ステルス戦車と無人ステルス爆撃機を破壊光線の連射で破壊しまくってやるぜ。
ある程度、数を減らせたら透明化して近付いて透明化解除からの横から空手チョップの要領で怪力ハサミハンマーだ。
更に砲身をハサミで挟んで怪力任せに千切ってやる。
生半可な反撃じゃこのボディには傷はつかないぜッ!
そのまま消えたり出現したりを繰り返して袋叩きよッ!

次からは巨大異星人用マニュアルも用意しとくんだなッ!フォッフォッフォッ!


【技能・怪力、不意打ち、地形破壊】
【アドリブ歓迎】



 ビルの谷間から現れる巨人。
 その名もヴァルターン・ギャンビット(宇宙忍者軍団の頭領・f38772)。
「フォッフォッフォッフォッフォッフォッ!!」
 響く不気味な笑い声。
 だが、それと相対するのは巨大企業群『ティタニウム・マキア』の地下より現れし『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』。その巨大さは超巨大化変身(チョウキョダイカヘンシン)したヴァルターンにも引けを取らぬ巨大なる異様であった。
「なんたる」
「これが猟兵」
「デタラメにも程がある。だが、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』であるのならば」
 響く声と共に次々と青い船体から飛び出すのは、無人機であるステルス戦車と爆撃機。

 しかし、デタラメ、と評されたヴァルターンを前にして、それらの小細工が彼に通用するはずもなかった。
 鋏のような腕の先端から放出されるは破壊光線。
 迫る無人機の戦車と爆撃を次々と撃ち落としていく。
「フォッフォッフォッ! 甘い、甘いなぁ! この程度で俺様を止められると思っている時点で、そうとう見積もりってぇものが甘すぎるぜッ!」
 爆散していく無人機。
 その火球の中をヴァルターンは一歩を踏み出す。どれだけ敵が巨大な陸上戦艦であっても、今のヴァルターンには何の問題もなかった。
 透明化した体に無人機たちは目標を定められず、動揺する。

「消えた……ステルスではなく、完全な透明化ということか」
「あのような技術、一体どこから」
「我等の科学技術を凌駕しているというのか」
「そういうこった! オラッ!」
『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の横合いに踏み込んだヴァルターンが透明化を解除し、その鋏腕部の一撃を巨体に叩き込む。
 だが、腐っても超弩級陸上戦艦である。
 頑強な装甲に守られ、その船体は僅かに傾ぐばかりであったし、船体を支えるキャタピラは凄まじい出力で持ってヴァルターンの巨体を押しのける。

 さらに砲撃が叩き込まれる。
「あっ、痛って! だがよ! 生半可な攻撃じゃ、このボディには傷一つ、つかないぜッ!」
 叩きつけられる鋏腕部。
 さらに顎をもたげるようにして鋏が開閉し、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の生えた砲身を断ち切るのだ。
「こちらの攻撃が全て対処される」
「これは機械でもなければ兵器でもない」
「生物……生きている有機生命体だとでもいうのか」
 彼らの言葉にヴァルターンは笑う。
 なるほど、と彼は思うのだ。この声の主たちは、未だ凝り固まった常識の中で生きている。

 あれだけサイバースペースで非現実的な空間を創造していながら、未だ地球外生命体が来訪する、という事実を受け入れられないでいる。
「てめぇらのいう安心安全ってのはな、俺様の前じゃあ、どうにもならねぇもんだってことを教えてやるぜッ!」
 その言葉と共にヴァルターンの一撃が『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の船体へと叩きつけられ、盛大に揺れる。
「このままでは……」
「次からは巨大異星人用マニュアルも用意しておくんだなッ!」
 ヴァルターンは勝ち誇るように巨大な船体を蹴り飛ばすように襲撃を見舞い、さらに迫る無人機戦車や爆撃を破壊光線で撃ち落とす。

「ば、馬鹿な……本当に異星人だとでも……!?」
「その通りよ!フォッフォッフォッ!!」
 その様は正しく驚天動地。
 サイバースペースの中でも起こり得るかどうかわからぬほどの圧倒的な破壊を齎し、5日の誰かが夢見たであろう特撮動画じみた光景を繰り広げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
これはまた大仰な。戦車の次は戦艦ですか。本社ビル、倒れませんかね?

『オルニーテス』、巻き込まれないように離れていてください。

インカム、アリアデバイス、感度良好。敵艦が反応する前にこそ勝機はありいます。「軽業」で周囲の建物の壁や戦艦の側壁などを跳ねながら、甲板へ着地。
ここなら思いっきり歌えますね。ここに崩壊のビートを刻みましょう。
それでは行きます。「全力魔法」「範囲攻撃」振動の「属性攻撃」「衝撃波」でブラストヴォイス!
甲板の素材も砲塔も艦橋だって砕いて見せましょう。

ある程度動きを鈍らせたら、艦の内部を「偵察」しましょう。
無人機か、それとも操縦者がいるのか?
これはこの世界なりのオブリビオンマシン?



「これは……またなんと大仰な」
 見上げる『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』。
 その威容は正しく山が一つ動いているかのようにさえ、儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)には思えたことだろう。
 あまりにも巨大すぎて全容が知れぬ船体。
 これ一つが巨大企業群『ティタニウム・マキア』の地下からせり出してきた、という事実が芽亜には信じがたいことであった。
「本社ビル、倒れませんかね?」
「い、今それ疑問に思うところ!?」
「ああ、確かに。そうでした。『オルニーテス』、巻き込まれないように離れていてください」
 芽亜はそう言って『オルニーテス』を下がらせる。

 己の武装を確認する。
 インカム、アリアデバイス。いずれも感度は良好。ならば、敵艦、即ち『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』が此方を感知数r前に動く。
 其処にこそ彼女は勝機を見出していた。
 だが、迫る砲撃の凄まじさ、苛烈さは言うに及ばず。
 芽亜を襲う。
 爆風の中を芽亜は走る。周囲の建造物の壁を蹴り、凄まじい身体能力で持って駆け上がっていく。
「ちょこまかと動く」
「あれが猟兵というのならば、生命の埒外。故に、あれを生物と思うことは」
「早計そのもの。故に」
「殲滅形態へと移行する」
『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の砲門が変形していく。
 そのさまは正しくハリネズミと呼ぶにふさわしい威容であったことだろう。

 砲火がさらに苛烈になっていくのを芽亜は感じたことだろう。
 けれど、彼女は迫る砲火をかいくぐり、巨大すぎるがゆえに敵に取りつかれた『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の甲板上へと降り立つ。
「接敵……!」
「構わぬ。爆風でも人は死ぬ」
「確かにそうですね。その通りだと言えます。ですが、ここなら思いっきり歌えます」
 芽亜の瞳がユーベルコードに輝く。
 そう、彼女の喉は人の声帯でありながら、しかして人ならざる声帯。
「何を――」
「ここに崩壊のビートを刻みましょう」
「世迷い言を!」
 瞬間放たれるは、人の声帯から出たとは思えぬ程の絶叫じみた砲口。

 ブラストヴォイス。
 それは芽亜がこれまで幾度となく放ってきたアビリティにしてユーベルエコード。
 放たれる声は正しく衝撃波そのものとなって『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の巨体すらも揺るがすように解き放たれる。
 甲板上の装甲が声だけでささくれるようにして引き剥がされ、さらに艦橋へと迫る。
 艦体だけではない。
 砲身すらも歪むほどの声量。
「これが、人の声か」
「あり得ない。こんな、音を……!」
「いいえ、出すのです。私が特別だとはいいません。この声は!」
 あの死と隣り合わせの青春の中、幾通りもの。それこそ能力者の数だけ、明日を望む声として放たれた。

 故に、芽亜は迸る咆哮と共に『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を揺るがす。
「やはり、居る……いえ、在る」
 これは、と芽亜は知るだろう。この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』は無人ではない。だが、この声の主たちの発する振動が感じれない。
 そして、彼女は知るだろう。
 例え、この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を打倒しても、さらなる戦いが待ち受けることを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベティ・チェン
UC継続

「蜂の、情報不足」
ティタニウム・マキア社内警備室に侵入
警備員全員昏倒させ情報アクセス

「蜂と鯨は、ツレに近いと、思われてた。蜂は、|メガ・コーポ《ここ》の紐付きフリーランスじゃなかったの、か?」
「妹を切って、焼却して。ならどこに鯨を、囲う?紐を切るなら、他の紐。縁と記憶を切るなら、偏愛。蜂は、どっちだ?」
鯨の生体脳で
弩級が起動していない事
社内に持ち込まれた形跡がない事を確認したら速やかに撤退
妹の所へ

「鯨の、妹。最終章は、ここじゃないらしい」
「蜂の拗らせぶりを、読み違えた。社内にコンテナ交換情報が、なかった。鯨はあれに、使われてない」

「支援するから、撤退しろ。次は、蜂狩り」
妹をUC範囲に巻き込まないよう注意しつつ無傷で安全圏に撤退させるよう尽力

「弩級は、彼らが倒す。蜂の狙いは多分、あのメガ・コーポの失墜。鯨はまだ、蜂の手の中」

「セーフハウスで、サイバースペースに潜れ。かなり深いサルベージが、必要。蜂が|他の紐《メガ・コーポ》付きか、執着偏愛男かで、鯨の状態と緊急度が、変わる。急げ」



 この状況がおかしい。
 そもそも、である。あの『メリサ』と名乗る男は一体何者なのか。
 ベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)は、『メリサ』と『ケートス』が連れ合いに近いコンビなのだと推測していた。
 同時に『メリサ』という業界屈指の殺し屋は巨大企業群『ティタニウム・マキア』の紐付きフリーランスであるはずだと思っていた。
 けれど、事実はそうではないらしいということに彼女は気がつく。
 ユーベルコードによって己の姿を隠し、彼女は『ティタニウム・マキア』の本社ビルに響く外の戦いの振動を受けながら警備員の尽く、詰めていたカンパニーマンを昏倒させ、情報部にアクセスしていた。

「……これ、は」
 ない。
『メリサ』という存在と『ティタニウム・マキア』との間に繋がるものが一切見受けられなかった。
 昏倒させたカンパニーマンたちのIDでは知れない所に情報があるのか。
「妹を切って、情報を|『焼却』《バーンナウト》して。ならどこに鯨を、囲う? 紐を切るなら、他の紐。縁と記憶を切るなら、偏愛。蜂は、どっちだ?」
 考える。
 情報が少ない。
 たしかに『メリサ』は予知では『ケートス』に手をかけたはずだ。ベティの予測では、外で猟兵と戦う『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を動かすための鍵となるのではないかと考えられていた。
 だが、そうなっていない。

 あの『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を動かしているのは……。
「『ティタニウム・マキア』の四重臣……執行役員。コンテナは、鯨の生態脳は、どこ……」
 ベティは気がつく。
 この『ティタニウム・マキア』の本社ビルには持ち込まれていない。
 ならば、後残る場所は。
「……っ! わか、った……」
 ここはあくまで本社ビルという外殻。そして地下からせり出した『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』、あれ自体が『ティタニウム・マキア』の要。
 やはりあの『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』こそが本社ビルの最重要施設。それを『メリサ』は猟兵という外的要因を持って引きずり出したというのならば。
「……!」
 ベティは速やかに本社ビルから飛び出し、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』が放つ砲火の最中を駆け抜け、『オルニーテス』の元へと走る。

「鯨の、妹」
「あ、あなた……! 姿がみえないと思っていたら、無事!?」
「無事。どうやら最終章は、ここじゃないらしい」
「どういう、こと?」
「あの『蜂』の拗らせぶりを、読み違えた。車内にコンテナ交換情報が、なかった。鯨はあれに、使われていない」
「なら……!」
 どういことなのだと『オルニーテス』が言う。
 自分が追っていたコンテナは姉の遺体ではなかったのかと。

 ベティは『オルニーテス』の肩をしっかり掴んで目を見据えて言う。
「あの『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』は、彼らが止める。支援するから、撤退しろ。次は、蜂狩り」
「でも! 私……!」
 彼女の躊躇いも当然だろうとベティは思う。
 これまで彼女は彼女の姉と遺体と思わしきものを追いかけ回していたのだ。此処に来て、それが違ったのだと言われても納得できないのも無理なからぬことだ。
 そこで、ベティは告げる。

「あの中に恐らく『蜂』と、鯨の生体脳は、在る」
「だったら!」
「けど、取り返すにしても、今じゃあ、ない。『蜂』の狙いは多分、あの『ティタニウム・マキア』の失墜。鯨はまだ手の中にある、のなら」
 取り返すタイミングというのは今ではない。
 あの『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を止めることによって、取り返すタイミングは生まれてくる。
「セーフハウスで、サイバースペースに潜れ。かなる深いサルベージが、必要。『蜂』は、執着偏愛男でもなければ、|他の紐《メガ・コーポ》付きでも、ない。あれは全くの悪性、だ」
 そう、巨大企業群という存在に対する毒じみた悪性。
 悪性と善性とが存在するからこそ良心というゆらぎが存在する。

 けれど、あの『メリサ』という男には良心の呵責がない。
『ティタニウム・マキア』の失墜という目的のためならば、あらゆることを利用することを厭わない。だからこそ、『ケートス』を手に掛けたのだ。
 それが切っ掛けとなって猟兵が到来するところまで、計算に入れている。
「なら、急げ。きっとキミの、姉は……鯨は、サイバースペースにまだ、居る」
「……ッ!」
 往け、とベティは『オルニーテス』を送り出し、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと振り返る。

 あそこに居るであろう存在を打倒し、その糸引く目論見の前にベティは立たなければならない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗

いやさー…メリサだかエイルだかの野郎…随分ヘイト稼いでるじゃねーか

【情報収集・視力・戦闘知識】
戦艦の能力と動きの把握

そしてメリサについて
奴へのアクセスコードを解析

メルシー…見つけて見せろ
「かしこまり☆」


成功したなら完全秘匿回線で
あー…メリサ
おめーに聞きたいのは1つだけだ
ケートスは何処で「何を」しているかだ

あー…単なる勘だ

おめーは維持が悪くて人を化かすのが上手そうだからな?
的外れなら気にすんな

まぁ、妹さんと会えればいいなってだけだ

【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽

【念動力・弾幕・空中戦・スナイパー・浄化】
UC発動
超絶速度で飛び回り念動光弾を乱射
特に殲滅用砲台の破壊を狙う

易々と当てられてたまるか

更に汚染された空間に対して浄化弾幕展開
「お掃除お掃除☆」

全く…ここはクロムキャバリアか

まぁいい
中々すげー戦艦じゃねーか

だからよー

ちょいと9割程寄越せ!

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
超連続斬撃で切り刻み武装から兵器から資源強奪
「巨神には負けないぞ☆」



 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルの地下よりせり上がるようにして現れた『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』。
 その威容は凄まじいものであったし、体高5m級の戦術兵器であるキャバリアを駆るカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)をしても、巨大と言わざるを得なかっただろう。
 言うなれば山が動いているかのような巨体。
 その砲火の凄まじさは言うまでもないことであった。
 苛烈なる砲撃は艦体に備わった殲滅用砲塔故。そして、砲弾は敵へと自動追尾を果たす。
「『メルシー』……見つけてみせろ」
『かしこまり☆』
 その言葉と共に己の駆る界導神機『メルクリウス』から、周囲に存在しているであろう『メリサ』への通信コードを探し出す。

 あの亜麻色の髪の男『メリサ』。
 彼は周囲の者からのヘイトを稼いでいるように思える。それは恐らく事実なのかも知れない。だが、それは自己犠牲からくるものではなかっただろう。
 あれは完全なる悪性。
 完全なる善性があるのだとして。そのいずれもが相違ないものである。
 良心という揺らぎ無き存在。
『いたよ☆ あのでっかい船の中にいるねー☆』
「でかした。あー……」
 なんと呼びかけるべきだっただろうか。
 今もまさに砲火は『メルクリウス』を狙い続けている。しかし、神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)は伊達ではない。
 迫る追尾砲弾を振り切りながら、市街地を駆け抜ける『メルクリウス』は未だ健在。

「『メリサ』だか『エイル』だか、どっちだかはわからねーが。おめーに聞きたいことは一つだけだ。『ケートス』は何処で『何を』している」
「なんだと突っぱねるのは簡単なんだがな。習わなかったか? 直電ってのは、正直関係性を深めてからだってな。いきなしは無礼ってもんだろう。だが、まあ、そういうのを気にしないのも俺のいいところだと思うんだよ」
 その言葉は『メリサ』の軽薄な声色だった。
「そういう意地の悪い物言い。人を化かすのが上手そうなやつのやり方って感じがするぜ。で、どうよ。単なる勘だが」
「何処で、というのなら『此処』にって応えるしかないな。あと、『何を』っていうのなら、何もってことになる。別にあいつのやることは、そう多くはない」
 だから、と『メリサ』は回線の向こうで笑う。

「まぁ、妹さんと会えればいいなってだけだ」
「希望的観測過ぎるだろう。というか、あれだな。まぁだ、何か勘違いしているようだから、言っといてやるよ。俺は『ケートス』を殺したんだぜ? それこそ警察機構に残っているであろう個人情報すら|『焼却』《バーンナウト》してるんだ。現実世界でも、サイバースペースでも、だ」
 カシムは笑う。
 笑った。ああ、と思ったのだ。こいつ、とも思った。
「よく喋るじゃあねーか。ベラベラと。ならよぉ!」
 カシムと『メルクリウス』の瞳とアイセンサーとがユーベルコードに煌めく。

 加速装置が起動し、一気に加速する『メルクリウス』が青い『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと迫る。
 光学迷彩など物ともしない追尾機能で迫る砲撃を鎌剣で弾き、霧崎、念動光弾の弾幕で持って防ぐ。 
 爆発が荒び、凄まじい衝撃波が周囲を襲う。
 だが、『メルクリウス』はその最中を飛ぶようにして駆け抜ける。超高速戦闘。それこそが『メルクリウス』に許された最大の武器である。
「そう易々と当てられてたまるかよ!」
『そうそう、お掃除お掃除☆』
「まるでクロムキャバリアみてーな戦場だが……まあいい。ご自慢のすげー戦艦だってことは認めてやるぜ」

『メリサ』は回線から告げる。
「今どき流行らない大鑑大砲主義って感じがして笑えるよな」
「言ってろよ! それだけ資材突っ込んでるってことだろうが! ちょいと九割ほどよこさせてもらうぜ!」
 踏み込んだ『メルクリウス』が『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の装甲を鎌剣で切り裂く。
 その切り裂いた装甲を強奪しながら『メルクリウス』が空を舞うようにして次々と砲撃を躱し、その巨体を解体するように斬撃を繰り返していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
あー…なるほどねぇ。そもそもの軸線が違ったわけかぁ。そりゃ妙な挙動になるはずだわねぇ…
…にしてもまた無っ茶苦茶なモノ引っ張り出してきたわねえ…
たしかにあの中なら下手なシェルターなんかよりよっぽど「安全」ではあるでしょうけれど。

あれだけのデカブツどうにかするとなると…ちょぉっと○覚悟決めないとよねぇ。ゴールドシーン、マルガリータ、力を貸して頂戴な?
引き続き|ラド《車輪》と|韋駄天印《迅速》、追加の|エオロー《結界》で強化したミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。●黙殺・砲列とマルガリータの解析で敵の攻撃を相殺してすり抜けつつ射線と空間汚染○見切って●黙殺・絶吼ブチこむわぁ。|ウル《貫徹》と|シゲル《エネルギー》を核に収束させた徹甲炸裂魔力○砲撃、喰らってド派手に吹っ飛びなさいな?
撃った後に動けなくなるのはあくまであたし、離脱はマルガリータのオートパイロットに任せれば問題ないわぁ。
重要情報まで消し飛ばないかだけ心配だけど…そこはこの際気にしても仕方ないわよねぇ。



 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は自身が感じていた違和感の大元を知る。
 やはり彼女が感じてた違和感は正しかった。
 この状況。
 復讐者とは言え、『オルニーテス』はただの女子高生だった。
 ギフトの如き現実改変の加護があるのだとしても、『これ』はやりすぎだと思ったのだ。試作戦車の大量投入。
 さらには地下より巨大企業群『ティタニウム・マキア』の重要施設であろう『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』さえ出張ってくるという異常事態。
「あー……なるほどねぇ。そもそもの軸線が違ったわけかぁ。そりゃ妙な挙動になるはずだわねぇ……」
 それにしても、とティオレンシアは困った様子で、目の前にて砲火とユーベルコードの輝きが激突する戦場を見上げる。

 あの巨大なる『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の放つ砲火は、正しく殲滅戦用と言うにふさわしいものだった。
 自動追尾能力さえも持つ砲撃は、猟兵たちをしても寄せ付けぬと言わんばかりだった。
「我等『ティタニウム・マキア』はあらゆる安心安全をもたらす」
「ヒトは求める。争いの中にこそ己の安息を」
「それは他者を、何を置いても優先されるべきものである」
「ヒトが生存求める限り、それを捨て去ることはできない」
 4つの声が響く。

 恐らくこれが『ティタニウム・マキア』の四重臣、重役たちの声なのだろうとティオレンシアは知る。
 彼らもまたオブリビオンであろう。
 なのに、此処まで彼らは猟兵の接近を予見できていなかった。
 何故、とはもう問うまい。
「この絵図を描いたであろう『メリサ』っていう男……また無っ茶苦茶なモノを引っ張り出してきたわねぇ……」
 確かにあの中であるのならば、下手なシェルターよりも余程安全であろう。
 けれど、『メリサ』はこの『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』でさえ、猟兵はなんとかしてしまうだろうという予測を立てている。
 だから、己たちにこれをぶつけたのだ。

「滅びよ」
「此処まで我等が手を煩わされることなどあってはならない」
「この状況、我等が企業理念からは程遠い」
「故に、滅びよ」
 放たれる砲撃の最中、ティオレンシアは小さく呟く。
「『ゴールドシーン』、『マルガリータ』、力を貸して頂戴な」
 その言葉と共に彼女の手にしたペンが空中に魔術文字を描く。『ラド』と『韋駄天印』、そして『エオロー』。
 車輪は疾く走り抜ける。結界は、己が駆る『ミッドナイトレース』へと張り巡らせる。
 そして、それに追従するようにワイズマンユニット『マルガリータ』が共に飛ぶ。
「手数の多さは即ち強さ」

 そう云う意味では『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』は規格外であったことだろう。あの殲滅用の砲塔は厄介極まりない。
 弾幕を張り巡らせると同時に砲弾は猟兵を追尾するのだから。
「でも、解析できる。パターンがあるのなら、それを逆手に取れば良い。ええ、そうよねぇ?」
 ティオレンシアの瞳がユーベルコードに輝く。
 魔術文字が追従し、弾幕が放たれる。 
 追尾する砲撃と打ち合って相殺されていく。さらに、ティオレンシアの瞳がユーベルコードに強くきらめいていく。
 ユーベルコードの並列使用。
 それこそが、黙殺・砲列(デザイア・バッテリー)の強み。

「『ウル』、『シゲル』!」
 空中に刻まれる魔術文字。
 それは貫徹とエネルギー。それらの魔術文字が核に収束し、ティオレンシアが描いた意味消失寸前までに接続した魔術文字群が戦場を埋め尽くし、そして、一点に収束される。
 臨界を迎えた魔術文字のエネルギーは一気に開放されるようにして煌めく。
「外せば終わりの乾坤一擲、出たとこ勝負の大博打――」
 迸るは超広範囲のレーザー射撃。
 それは膨大な熱量を生み出すだろう。しかし、ティオレンシアにとっては多大なる脳への負荷へとなるだろう。

 異なるユーベルコードの並列処理に、膨大な過負荷を駆けるであろう魔術文字のコントロール。維持。マルチタスクといっていい処理の煩雑さがティオレンシアの意識を低下させる。
 だが、それでも構わない。
 彼女は今『ミッドナイトレース』に騎乗している。
 暫し、意識を手放すだけだ。
「|Take That, You Fiend《これでもくらえ》、なぁんてね?」
 その超火力の砲撃は山のような『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の装甲を焼き切りながら、殲滅用の砲塔の尽くを吹き飛ばす。
「馬鹿な、なんたる熱量」
「此れほどの熱量を、個でコントロールするというか!」
「生命の埒外。我等の理外」
「これが……我等の敵、猟兵……!」
 声の主たちのどよめく様がティオレンシアには目に浮かぶようだった。

「せいぜいしっかり守りなさいな。重要な情報まで消し飛ばしかねない熱量なのだから……まあ、気にしても仕方ないわねぇ」
 そう笑いながらティオレンシアは『ミッドナイトレース』の中で、一人意識が途切れる直前まで、己の放った超火力の一撃に損壊する『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の巨体を見上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

相馬・雷光
メガコーポより、あの何とかいう詐欺師のが黒幕っぽいわね……かと言って、この状況でコレを放置はできないけど
ってか、陸上なら艦の形してる意味なくない?
まぁ、インパクトはあるし示威行為的にゃ間違っちゃいないと思うけどさ

ウッチャイヒシュラヴァスで駆け巡って砲撃を掻い潜る!(ダッシュ・運転)
オルニーテス! まだ生きてる!?
【ハッキング】とか【データ攻撃】であいつを【ジャミング】できない!?

避けてる間にソーマカートリッジを交換(エネルギー充填)、詠唱続行して【リミッター解除】【限界突破】!
ぶっ放す! 【帝釈天極雷砲】!!



 戦場の状況は刻一刻と混沌へと傾いていく。
 巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルの地下より、せり出した威容。それは山が市街地を移動しているかのような光景であったことだろう。
『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』。
 あまりにも巨大過ぎる戦艦はハリネズミのように巨体に砲身砲塔を生み出し、火線を解き放っては猟兵たちを寄せ付けぬとする。
「我等が財を狙う不埒者どもが」
「我等『ティタニウム・マキア』を相手取るということが如何なることかを知るが良い」
「『安心安全』は伊達ではないのだ」
「滅びよ、猟兵」
『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を制御するはオブリビオンである四重臣、重役たちである。

 しかし、彼らの放つ砲火を猟兵たちはかいくぐり、その巨体にダメージを与え続けているのだ。
「メガ・コーポより、あの何とかという詐欺師のが黒幕っぽいわね……かと言って、この状況でコレを放置はできない」
 相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)は迫りくる巨大な『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の砲火遊ぶ最中をハイスピードバイクで駆け抜ける。
 確かにあの巨体は示威行為というのにはうってつけだろう。
 人は巨大なるものに恐怖抱く。畏怖を抱く。
 ときに信仰の対象にすらなり得るだろう。そのためにあの巨大なる陸上戦艦を用意していたのならば、わからないでもない、と雷光は思った。
「ってか、陸上な艦の形してる意味なくない?」
 ロマンと云うやつだろうか、と雷光は首を傾げる。

 けれど、それ以上に彼女には気にしなければならないものがある。
「『オルニーテス』! まだ生きてる!?」
 彼女は呼びかける。
 この戦場の何処かにいるであろう『オルニーテス』。彼女は加護ありきとは言え、普通の女子高生だ。
 この圧倒的な砲火の中では無事を祈るほかなかった。
「生きてるってば! 私、行かないと行けない所があるの!」
「えっ、ハッキングとかデータ攻撃とかであいつ! ジャミングできないかって思ったんだけど!?」
 本社ビルの方角から掛けてくる『オルニーテス』の姿を認め雷光は呼びかける。
 だが、彼女は頭を振る。
「できない! だって、私、お姉ちゃんみたいにできない!」
「なら、しょうがないわね! 行きなさいよ! あなたがしなくちゃあならないことがあるっていうのなら! 私が守ってあげるわよ!」
 その言葉とともに雷光は『ウッチャイヒシュラヴァス』と共に砲撃をうかいくぐる。走る『オルニーテス』の背中を守るように、彼女に注意を向けさせぬと走り抜ける。

 交錯する互いの視線。
 己は猟兵としてやらねばならぬことがある。そして『オルニーテス』は立った一人の姉のためにやらねばならぬことがある。
「うん! お願い!」
「任せておきなさいよ! 因陀羅耶莎訶!」
 雷光は砲撃をハイスピードバイクをドリフトさせながら躱し、宙にカートリッジを投げ放つ。爆風が彼女の体を吹き飛ばす。否、彼女が爆風に乗り、宙に投げはなったカートリッジを手にしたヴァジュラブラスターへと装填する。
 二丁拳銃。
 その銃口が示すはユーベルコードの輝き。
「ぶっ放す!」

 交換されたカートリッジからエネルギーが充填されていく。リミッターを解除され限界を超えた出力が二丁拳銃の銃口へと溜め込まれていく。
「どんなデカブツだってね! 行きなさいよ、帝釈天極雷砲(タイシャクテンゴクライホウ)!!」
 引き金を弾いた瞬間、雷光の二丁拳銃から凄まじい勢いで雷撃の破壊光線が一直線に『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の艦体を貫いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
ふーん……「一番大事なものを仕舞っている、自衛といざという時の逃走が可能な金庫」って感じ★
……もっとも、彼らが想定していたのは違う「敵」だったみたいだけど★

その殲滅用砲台は動かすと面倒そうだし、どうせ後はないでしょ★
はい【お金は天下の回り物★】で換金可能な「全財産・所持品・武器弾薬」を根こそぎ差し押さえでーす★
シルキーちゃんも遠隔投影ホログラムを囮に、『Ku-9』と『デスブレイド』で攻撃して足を止めさせちゃうぞ★
(Gライアーが口を開け、ぞろぞろ出て飛びついては色々奪うロボットビースト)

見てるよね★次が本番でしょ主催さん★
わざわざ色々と用意してここまで誘い込んだ理由、これだけの為じゃないよね★



「ふーん……あれが、そうなんだ★」
 シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルの地下よりせり出した『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の姿を認める。
 あまりにも巨大。
 陸上戦艦であることを差し引いても、その過剰なる火力は明らかに生命の埒外たる存在を相手取るためのものであったことだろう。
 故にシルキーはあれが『一番大事なものをしまっている、自衛といざというときの逃走が可能な金庫』であると断ずる。
 とは言え、シルキーは思う。
『ティタニウム・マキア』の重役たちが想定していたものとは違うはずだ。

 あれはきっと猟兵に類するものを想定していたはずだ。
 けれど、結果として迫る猟兵に対する切り札めいていた。彼らの分水嶺はここだ。此処を凌がねば、彼らに未来はない。
 故に、彼らは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を動かしたのだろう。
「なんたる火力。我等が圧されている、だと?」
「あり得ない。幾重にも重ねた特殊装甲がこうも容易く破られていく」
「想定していない」
「我等が、圧されていることなど、あってはならない」
『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を操る『ティタニウム・マキア』の四重臣、重役たちの焦りが伝わるのをシルキーは感じただろう。

 あの無数に、それこそハリネズミのように生やされた砲塔が物語っている。
「うーん、如何にも近づくなって感じ! でも、もう後はないでしょ★」
 シルキーの頭脳戦車としてのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「だから、こうしちゃお!」
 内蔵されあた治安維持機構の一つ、罰金強制徴収機構が開放される。あれだけ派手に市街地を破壊しているのだ。
『ティタニウム・マキア』には多くの負債が発生しているだろう。
 故に、強制的に換金可能な全財産、所持品、武器弾薬を奪い始めるのだ。
「我等が財を狙うか」
「恥知らずにもほどがある。これは我等が財である!」
「お金は天下の回り物★(ファイン・コレクター)、溜め込むより使ってこそって感じじゃない? だからさ!」
 シルキーの遠隔投影ホログラムが次々と『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の周囲に美少女としてのシルキーの姿を映し出す。

「なんだ、これは」
「ふざけているのか。これが撹乱だとでも」
「こんな可愛い美少女シルキーちゃんを前にしてそんな感想しか出てこないって、貧弱だぞ★」
 そう言ってシルキーは次々と『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の船体へとスプレッドダガーを叩き込み、爆発を持って巨大なる船体を揺らす。
 さらに『Gライアー』からはロボットビーストたちが飛び出し、罰金を徴収するかのように船体の装甲を引き剥がしていく。

「見てるよね★ 次が本番でしょ主催さん★」
 シルキーは何処かで聞いているであろう『メリサ』へと告げる。
「わざわざ色々と用意してここまで誘い込んだ理由、これだけの為じゃあないよね★」
 シルキーは理解している。
 多くの殺し屋を使って『ティタニウム・マキア』の失墜を引き起こした『メリサ』。猟兵の到来すら勘定に入れている彼が、『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を引きずり出してお終いなわけがない。
 だから、シルキーは、この戦いの後にこそ本命が来るのだと備えるように砲火の最中をホログラムと共に駆け抜けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

ステラさん、すっごいやる気みたいですけど、やべー顔すぎませんか?
ニンニクマシマシヤサイマシアブラカラメベーチョモランマな感じになってますよ?
真剣な表情で涎拭うのよくないと思います。

とりあえず紫のハート、しまって……またわたし盾ですか!?
さすがにあれは無理ですよぅ!?

むー。最近のステラさん、ツンヤンデレデレが過ぎると思います!
でもわかりました。それでは【ソナーレ】かもん!

って、あれ?
これって盾じゃないだけで囮じゃないですか!?
……エイルさんとの扱いの差……酷くないです……?
いいですいいですよ、やってやりますよ! 戦艦でもなんでももってこーい!

いえ、さすがに全力で避けますけども!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|お誘い《カマかけ》するには1歩早かったですか……
では改めて
メリサ様、命懸けの火遊びでもお付き合いする極上のメイドはご入り用ではないですか?
ふふ、何でも利用するけれども弱者の命は巻き込まず
されど勝利の為の道筋は確実につける
どこまでいっても貴方も『エイル様』なのですね

ルクス様を盾に……するとさすがに死にそうですね
一瞬、平和かなと思いましたが、冗談です
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリアを呼び寄せ
ルクス様、注意を引いて
私は上から【アン・ナンジュ・パス】で仕掛けます!

この戦いの先、メリサ様の始める戦い
貴方が|『生ける屍』《セラフィム》とその先に求める『目的』
特等席で拝見いたしましょうか



「|お誘い《カマかけ》するには一歩早かったですか……」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は地下よりせり上がる巨山の如き陸上戦艦を見上げて頭を振る。
 だが、彼女は笑む。
 妖艶とも言える笑みであったし、大層に気合の入った顔であったと後にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は語るだろう。
「では改めて、『メリサ』様、命懸けの火遊びでもお付き合いする極上のメイドはご入用ではないですか?」
 手を広げる。
 何処かで必ず此方の動向を聞いているはずである『メリサ』に彼女は宣言するように声を届ける。

 その様子を見ていたルクスは、なんかすっごいやる気だけど、すっごいヤベーことを言っているし、そんな顔をしているなぁって思っていた。
 具体的に言うなら。
「ニンニクマシマシヤサイマシアブラカラメベーチョモランマって感じです」
「なんて?」
「あ、いえ、一般人には理解できない感じのヤバさ増々の顔してますよってことです」
 あと、涎、とルクスはステラの唇の端からこぼれている涎を示してみせた。
 本当にヤベー顔になってるじゃねーか! と何処かで『メリサ』がツッコミをしたかもしれないし、していないかもしれない。
 だが、ステラには関係なかった。

「ふふ、なんでも利用する。されど弱者の生命は巻き込まず。しかし、それでも勝利のための道筋は確実につける」
「あ、もしかして、普通にスルーする感じです?」
 続けるステラの様子にルクスは、これ言葉が届いてない感じのあれなのかと思い至る。
 ここまで行くともうステラの周りには紫のハートが乱舞して鬱陶しいことこの上ないことになってしまっている。
 ぐっ、とステラは口元を拭う。
 漸く気がついたんだ。
「何処まで言っても、貴方も『エイル』様なのですね」
「返事がないからって言いたい放題じゃないです? ていうか、ステラさん! 流石にアレはヤバすぎませんか! 山みたいな船が陸路を横断しているんですけど!?」
 ルクスの見上げた先にある『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の威容は確かに、彼女の語る通りであっただろう。

 ハリネズミのように突き出した砲塔からは次々と砲火が荒び、誰も寄せ付けぬと言わんばかりであった。
 圧倒的過ぎる。
「いえ、大丈夫です。ルクス様を盾に」
「流石にあれは無理ですよぅ!? 火力が違いすぎます!」
「いえ、そうすると一瞬に平和になるかと思いましたが、冗談です」
「もう! 最近のステラさんはツンヤンデレデレが過ぎると思います!」
 その言い回し、気に入ったんだ。
 というか、ツンヤンしか今のところかんじられないのだが、デレデレは別の所に向けられているようにも思えるが、そこんところ如何に。

「冗談ですよ。これも親しき仲の冗談ありき、という小粋な緊張ほぐしと思っていただけたら……」
「むー、でもわかりました。やれる限りやりましょう! それでは!」
「フォル! いらっしゃい!」
「『ソナーレ』、かもん!」
 互いのキャバリアを呼び出す二人。
 一体は鳥型。一体は人型。
 体高5mの戦術兵器たるキャバリアであっても、対する『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の巨体は見上げるほどであった。

 けれど、彼女たちは躊躇わない。
「ルクス様は、注意を引いて。私は上から行きます。古来より艦船というのは横からの砲撃には強くとも、甲板と艦底の装甲は薄いもの! 故に!」
 飛び立つ『フォルティス・フォルトゥーナ』を見送りながらルクスは『ソナーレ』と共に戦場に飛び出す。
 いや、これ盾じゃないっていうだけで、本当にただの囮ではないかと思った。
 ステラの『エイル』に対する熱量の少しでも良いから分けてほしいとルクスは思ったが、まあ、ないものねだりしてもしかたないところである。
 もう自棄であった。

「いいですいいですよ、やってやりますよ! 戦艦でもなんでももってこーい!」
 勇者の憂鬱(ユウシャノウラノカオ)此処に極まれり。
 ルクスは己の中にある勇者として行動するうちに溜まりに溜まった鬱憤というものを開放する。それは周囲に伝播すると同時に『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を手繰るオブリビオンの四重臣、重役たちのやる気やら何やらを奪っていくのだ。
「なんだ……この状況で」
「我等が感じてるのは、倦怠、だと?」
「あり得ない。此処が我等が分水嶺。なのに」
「何故、我等の心が、消沈していく……?」
 戸惑う彼らをよそにステラは『フォルティス・フォルトゥーナ』と共に空を駆け抜ける。

 急旋回と共に空を走る機体が描く、高速機動マニューバは弾幕の尽くをかいくぐり『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと迫る。
「アン・ナンジュ・パス! この戦いの先、『メリサ』様の始める戦い。貴方が|『生ける屍』《セラフィム》とその先に求める『目的』を! 特等席では行けするためには!」
 放つ無数のフェザービットが乱舞し『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の砲塔を破壊しながら爆風の中をステラは飛ぶ。
 ルクスは『ソナーレ』と共に砲火の中を走る。
 目指すものがある。
 この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を止めた後に来るであろう戦い。
 それに備えるために、彼女たちは戦うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…あー…これ思惑がいくつも絡んでる奴だな…この世界だと良くあることだけど…なんか上手くヘイトを擦り付けられた感あるな…
…なんにせよ…この戦艦を大人しくさせなければ落ち着いて調べることも出来やしない…と…
…それにしてもなにを想定すれば地上戦艦を本社に組み込んでいるのやら…

…装甲改造車【エンバール】を運転して砲撃を回避…
…【天地に響く崩塵の歌】を発動……砲台とキャタピラ付近にガジェットを召喚…音響ガジェットによる振動ダメージを与えるとしよう…
…破壊できたら戦艦の中に入り込んでハッキング…戦艦や本社の情報を引っこ抜くとしようかね…そこから『メリサ』の狙いも見えるかも知れない…



 なんとも言い難い状況であるとメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は感じたことだろう。 
 サイバーザナドゥにおいて巨大企業群とは互いに派遣を相争う者たちである。
 その中にあって巨大企業群『ティタニウム・マキア』はクリーンなイメージを堅持していた。
『安心安全』。
 その一点を保つためだけに多く非合法や悪事、不祥事を内包している。
 けれど、今はどうだろうか。
 猟兵達の存在によって、その『安心安全』をこそが揺らぎ始めているのだ。
「何故だ、何故こうも容易く破られる」
「我等が築き上げてきたものが、瓦解していく」
「一体どこでかけちがえたというのだ」
「あり得ない。否定する。我等はこの状況をこそ、否定する」
『ティタニウム・マキア』の四重臣、重役たちの声が響く。彼らにとって、この上級は今に至るまで察知できていなかった。

 それが何故か、と問われたのならばメンカルは応えるであろう。
 多くの思惑がいくつも絡みつき、この世界ではよくあることだが、しかし上手くヘイトを猟兵に向けて姿をひた隠しにする者がいる、と。 
 それが亜麻色の髪の男『メリサ』であることは言うまでもない。
「……動揺もわからないでもないけどね……なんにせよ……その戦艦は大人しくさせてもらう」
 メンカルが対峙するは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』である。
 凄まじ数の砲塔が砲火を解き放ち、荒ぶ火線がメンカルへと襲いかかる。
「……それにしても何を想定すれば陸上戦艦を本社に組み込むことになるのやら……」
 装甲改造車『エンバール』を駆るメンカルは理解できないと言わんばかりに戦場に打ち込まれる砲火の尽くを躱しながら、その瞳をユーベルコードに煌めかせる。

「……内部を調べるにしたって、まずは……」
 天地に響く崩塵の歌(レゾナンス・レクイエム)が、戦場に召喚された多数の音響用ガジェットから響き渡る。
 それは空気を介在して、如何に強靭にして分厚い装甲を持つのだとしても届く振動。
「絡繰の鳥よ、歌え、奏でよ。汝は天響、汝は挽歌。魔女が望むは崩れ滅びる鎮魂歌」
 メンカルの歌声が響く。
 振動となって『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の装甲が此れまでの猟兵達のユーベルコードによって軋み、剥離し、崩れ落ちていく。

「駆動部に異常を感知」
「何が起こっている。何故、この艦の足が止まる」
「ありえないことだ。特殊装甲が剥離していく」
「砲台の照準が効かぬ」
 四重臣たちは次々と巻き起こる異常事態に対応しきれなくなってきているのだろう。慌てふためく、という言葉がしっくり来るほどの状況にありて、漸く彼らは気がついたのだ。

 己たちが相対する猟兵。
 彼らを侮ることなかったが、しかし、彼らは慢心していたのだ。
『ティタニウム・マキア』がこれまで築き上げてきた『安心安全』というイメージ。それによって誰も手出しできない不文律にして不可侵。
 そこに踏み込んでくる者などいないと高を括っていたのだ。
 故に、メンカルたちの一手を許してしまう。
「……突入」
 メンカルは装甲改造車と共に穿たれた装甲から『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと飛び込む。
 この戦艦から得られる情報があるはずだ。それは、この後に控えるであろう戦いに置いて重要な役割を持つ。

 故に、メンカルは見ただろう。
 この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の内部にある無数の罠を。光の鉄条網が艦内のいたるところに張り巡らされ、そして、その最奥にこそ、この事件を巡る最大の要が鎮座していることを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

●なおよくわかってない
あーなるほどなるほど!
つまりはそういうことだったんだね!
いやボクは最初から気付いてたけどね?
むしろ誰よりも深く知っていた…
うんうん完全に理解した!

●ティタニウム・マキア本社に凸してみた(LIVE配信)
いえーい!ぴすぴす!
今日はティタニウム・マキアの本社に来てるよ!
と[叡智の球]くんを介してサイバースペースにサイバー放送をしていこう!
飛び交う戦車や爆撃機、そしてそれに襲い掛かる[球体]くんたちは撮れ高ばっちりだからね!
戦車や爆撃機の攻撃を球体くんたちにいなしてもらいつつボクは【第六感】でここ!と思うところに向かって走ってUC『神撃』でドーーンッ!!



「あーなるほどなるほど!」
 智慧の神はうなずいた。
 それはもうしきりにうなずいた。自らが知の神と名乗るのならばこそであったことだろう。
「つまりはそういうことだったんだね! いやボクは最初から気づいていたけどね? むしろ誰よりも深く知っていた……うんうん完全に理解した!」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はそれはもう深く、深く、何度も首を縦に振っていた。
 物事というのは俯瞰して見なければみえてこないものがある。 
 同時に至近でなければ見えぬ仔細もあるであろう。
 故に、遠近ともに優れたる眼を持たねば、世の真実というものは見えてこないのである。
 そういう意味ではロニは全てを理解したのだ。

 いや、よくわかってない。
 本当の所は。
 けれど、ロニが理解したというのならば、そうなのである。
「いえーい! ぴすぴす! 今日は『ティタニウム・マキア』の本社に来てるよ!」
 迫る『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を前にロニは何故か球体を介在してサイバースペースへと実況中継を始めている。
 なんで? と誰もが思ったことだろう。
 いや、違う。
 これは策略の一つ。冴え渡るロニの智慧である。サイバースペースは多くの娯楽が転がっている。けれど、娯楽も慣れてしまえば、刺激を受けなくなる。
 そこでロニが、市街地で行われている猟兵と『ティタニウム・マキア』が誇る『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』との戦いを流せば、皆飛びつくと踏んだのである。

 そして、その目論見は正しかった。
 中継される映像。それにサイバースペースの人々は食いつき、さらに異常な程の速度で拡散していく。
 サイバーザナドゥ中を駆け巡った巨大企業群『ティタニウム・マキア』の醜態とも言うべきこの状況をサイバースペースの人々は面白がって拡散するだろう。
「うんうん、やっっぱりみんなこういう派手なのが好きなんだよね。わかるかわる。それに、球体くんたちが戦車や爆撃機とぶつかり合うのは撮れ高バッチリって感じ!」
 ロニにとって、これは遊びの延長線上であったかも知れない。
 いや、当人にとっては真剣そのものであったことだろう。
「すっごいねー! でも、ボクだって敗けてらんないんだよね!」
 ロニは球体達の活躍に敗けじと『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと走る。
 砲火を躱し、爆風に煽られる事なく一直線に走る。

 それは矢のようであり、また同時に拳に宿るユーベルコードの残光を戦場に描くようでもあったことだろう。
「撮れ高バッチリかもだけど、やっぱり盛り上がる場面はほしいよね! じゃあ、いくよー!」
 ロニは地面を蹴って飛び立つ。
 煌めく拳。
 荒ぶ砲火。破壊され残骸舞う最中をロニの拳が『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと叩き込まれる。
 神撃(ゴッドブロー)たる一撃は強靭な装甲を持つ『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の装甲をひしゃげ、船体を『くの字』にさせるほどの衝撃を叩き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
さて、何やらでかいのが出てきたが、あれは貴様の標的ではないのだよな?よし、なら倒してしまうぞ!さあ来るがよい、ワルルンガーΣ―――!!!

飛行機や戦車などはパンチや魔王城の対空砲台で粉砕するぞ!
EMP?ふはは!ワルルンガーと我が魔王オーラはそんなものに負けん!
(なお城内ではデビルファミコンとかが逝っていつものようにサボり中のワルニクスが悲鳴をあげた模様)
だがこのままではらちが明かぬな……ふむ。仕方あるまい、UCを使い、「奴ら」を呼ぶまで時間を稼ぐぞ!

……来たようだな、「能力やUCは同じだが、何かが確実に違う偽物」達が…!さあ反撃だ!その船とついでに社会的評価とかも粉砕してやろうではないか!



 走る。
 走る。走る。爆風の中を、飛び散る瓦礫の中を、降り注ぐ残骸の中を。
『オルニーテス』は走るしかなかった。
 己の姉は、もしかしたら。本当にもしかしたら、生きているかも知れない。
 そう告げられて彼女は走った。
 サイバースペースのポータルに。セーフハウスの安全な場所からならばサイバースペースに飛び込める。
 だから、走った。
「あっ――」
 だが、彼女は復讐に燃えるとは言え、普通の女子高生だったのだ。
 目の前に降り注ぐ瓦礫を躱すことなど難しい。死の恐怖に足が止まる。どうしようもなかったと言えるだろう。
 けれど、その瓦礫を前に飛び出す影があった。

「間一髪だったな! 大丈夫か、貴さ――おぶっ!?」
「無茶して! でも、ありがとう!」
『オルニーテス』を襲った瓦礫からかばったワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)の胴に彼女が抱きつく。
 力強く抱きついて、そして離れる。
 彼女にはやらねばならぬことがある。だから、と言う彼女ん瞳を見やり、ワルルーナは確認する。
「あれは貴様の標的ではないのだよな?」
 示すは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』。
 あの巨体が『オルニーテス』の仇ではないことを彼女は確認したのだ。

「うん……私の、復讐は、そもそもが違ったのかもしれない。けれど、あれは」
「うむ! ならば我が倒してしまうぞ! 貴様は貴様のやるべきことを成すがよい! さあ来るが良い!」
 ワルルーナの手が天に掲げられる。
 瞬間、現れるのは『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』と遜色ないほどの巨体。
 そう、それは!
「『ワルルンガーΣ――!!!」
 地鳴りを立てて降り立つ巨体。
 いや、巨人とも言うべき存在。機動魔王城『ワルルンガーΣ』である。

「え、ええええ――!?」
「何をほけておる! さっさと往け!」
「う、うん……!」
『オルニーテス』が走るのを背にワルルーナは『ワルルンガーΣ』と共に猟兵のユーベルコードを受けて損壊している『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』へと向きなおる。
 迫る砲火、爆撃機や戦車、それらの攻撃を受けてなお、『ワルルンガーΣ』は微動だにしなかった。
「なんという巨体」
「だが、電磁パルスでならば」
 迸る電磁パルス。だが、その広範囲に渡る電子基板の破壊を行う『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の一撃を受けても機動魔王城『ワルルンガーΣ』は微動だにしなかった。
「ふははは! そんなもん負けはせんのだ!」

 ワルルーナは闊達に笑う。
 どれだけ強力な電磁パルスであったとしても、この『ワルルンガーΣ』の動力は魔力にして魔王のオーラ。電磁パルスなど意味をなさない。
 ただ余談であるが、場内でサボっていたワルニクスのプレイ中だったデビルファミコンが基盤ごとやられて悲鳴が響き渡っていた。
 本当に余談である。
「ふははは! そんな程度で我の『ワルルンガーΣ』が倒せると思うたか! だが、埒が明かぬのも承知の上! こんな時のためにな!」
 その言葉とともにワルルーナの瞳がユーベルコードに輝く。

 魔王軍第2冠所属:貴方の知らない貴女達(カノウセイハムゲンダイ)。

 それはワルルーナに敵対する偽物を呼び出すユーベルコード。
 見た目も性能も全く同じ。しかし、どこか差異が存在する『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』であった。
 無数に呼び出されたそれが市街地を盛大に破壊する。
「馬鹿な、『ディープ・セレスト』が無数に存在する、だと……!?」
「そうよ! 微妙に違うがな! 見た目はほとんど変わらぬ、ということは、その『中身』が異なるということであろう!」
 ワルルーナは非常にワルな顔をしていた。
 あの『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』を破壊するだけでは飽き足らない。
 
 そう、偽物によって『安心安全』を謳う巨大企業群『ティタニウム・マキア』の社会的評価を失墜させ、粉砕させようとしているのだ。
「さあ、砕け散るがいい! 貴様らの為してきたこと、それは確かに震え上がる程にワルであったが! それは我がやるべきことよ! 故に!」
 おらぁ! とワルルーナは『ワルルンガーΣ』に魔力を投じ、さらに偽物の『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』の放つ砲火と共に巨腕の一撃を持って、その艦橋を叩き潰す。
 そこに居たであろうオブリビオンの四重臣、重役たちは声を上げることもできずに、沈黙するしかなかった。
 この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』が敗北することなどありえないと思っていたのだろう。

 そして、猟兵たちは知る。
 この『超弩級陸上戦艦ディープ・セレスト』が巨大企業群『ティタニウム・マキア』の中枢であったというのならば。
 己たちが目指す最後の敵は、この内部、最奥にこそ座す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年07月22日


挿絵イラスト