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【エースの祭典】キャバリア・バトルアリーナ

#コイネガウ #文化祭 #エースの祭典 #初年度の七月分シナリオ #キャバリア #希島未来科学研究所 #サイバーウェーブ・エレクトロニクス #紫電重工

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●注意
 当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
 PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
 公式サイト:(https://koinegau.net/)
 公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)


 国立希島学園の文化祭――それは、希島全土をあげて行われる大規模な祭りである。
 だが、今年の文化祭は、例年のような普通の祭りではない。
 先日発生したテロ事件によって島民たちの不安が高まっている中、その現状を打破するため文化祭のテーマが決定されたのだ。

 今年の文化祭のテーマは『エースの祭典』。
 希島の防衛力を島の内外に示すため、従来配備されていた量産型キャバリアの性能を遥かに凌駕する『キャバリアのエース機』――クロムキャバリア――のお披露目がおこなわれることになったのである。


「こちらは、今回発表される最新鋭キャバリア――クロムキャバリアの模擬戦を間近で見られるように用意された特設会場、希島バトルアリーナです」
 テレビカメラに向かって、中津・水穂(新人アイドル・f37923)が解説する。
 彼女の背後に大きく映っているのは、巨大なLEDスクリーンを備えた近未来的な巨大建造物だ。まるで古代の闘技場のように、中央の戦闘エリアを取り囲む形で多数の観客席が設けられている。戦闘エリアと観客席の間には特殊強化ガラスが設置されており、安全面への対策も万全である。
 広大な戦闘エリアは、荒野や森林、廃墟、水中など、多彩な戦場を再現している。多様な戦場に対応できるというクロムキャバリアの特性を遺憾なくアピールできる構成だ。

「今回発表される予定のクロムキャバリアは、なんと三機! 希島未来科学研究所、サイバーウェーブ・エレクトロニクス、紫電重工の三社が開発した最新鋭のエース機たちです!」
 巨大スクリーンに、各企業のロゴとともに、三機のキャバリアが映し出される。
 どの機体も、見慣れた量産型キャバリアとは似つかないフォルムをしており、まさに専用機といった雰囲気だ。

「まず、希島未来科学研究所から発表された、近接戦闘型クロムキャバリア『ヴォルテックス・セイバー』です!」
 メタリックブルーの装甲に覆われたキャバリアの戦闘ムービーがスクリーンに表示される。ヴォルテックス・セイバーと表示された機体は、電撃を纏った剣を振るって量産型キャバリアを両断していく。その近接戦闘能力は、従来の量産型キャバリアを遥かに凌駕していることが一目瞭然だった。
 さらにヴォルテックス・セイバーは機体から電流を放出し、周囲の量産型キャバリアを一網打尽にした。

「つづいて、サイバーウェーブ・エレクトロニクス社が開発した可変型クロムキャバリア『ファルコンブレイズ』!」
 巨大スクリーンに流れるムービー内では、量産型キャバリアたちに銃口を向けられる赤い装甲の機体が映し出されていた。ガトリングガンの掃射を受けるその瞬間――赤い装甲を持つファルコンブレイズは、鷹を思わせる外見の戦闘機モードに変形し、大空に飛び立った。
 攻撃を外した量産型キャバリアたちは標的を見失い――上空からのエネルギー弾によって粉砕されていく。
 飛行能力による上空からの制圧力と、何よりそれを可能にする可変機構。ファルコンブレイズを開発したサイバーウェーブ・エレクトロニクス社の高い技術力が印象に残る映像だ。

「そして、最後は紫電重工製の重砲撃型クロムキャバリア『破天』のご紹介です!」
 スクリーンに映し出されたのは、重装甲のクロムキャバリアだ。その全身を覆う漆黒の装甲は、通常のキャバリアの優に二倍の重量はあるのではないかと思わせる。
 さらに特徴的なのは、その全身に装備された多数の武装だ。ガトリングガン、レーザー砲、キャノン砲、ミサイルランチャーなどの各種武装が全身を覆っている。
 破天は遠くにいる量産型キャバリアをターゲットすると、相手の有効射程外から射撃砲撃ミサイルを雨あられと降り注がせる。嵐にも似たその攻撃を受けて無事でいられた量産型キャバリアは皆無だった。


「今回の文化祭では、希望者はこれらのエース機に乗って、他の機体との模擬戦をおこなうことができます。腕に覚えのある方は、ぜひ参加してくださいね」
 模擬戦の様子は希島全土に生配信されるので、ここで活躍すれば有名人になれるかもしれない。

「あと、ご自身のキャバリアをお持ちの方は、そのキャバリアでの出場も可能です。その場合は、エース機のうちのどれか一機と戦うことになります」
 自身のキャバリアの力を試すにも、希島の最先端キャバリアとの模擬戦はいい機会だろう。

「それでは、皆さんのご参加をお待ちしてますね」
 水穂が一礼すると、画面には『希島学園文化祭実行委員会』の文字が表示され、動画の再生が終わるのだった。


高天原御雷
 注:このシナリオは、【エースの祭典】の共通題名で括られる連動シリーズです。
 文化祭依頼ではシナリオをクリアすると新しい「種族とジョブ」の報酬が出ます。
 なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。

 注2:依頼と報酬の一覧表は以下です。
 高天原御雷:「戦闘」依頼担当。「クロムキャバリア」が報酬。
 黒代朝希MS:「日常」依頼担当。「頭脳戦車」が報酬。
 ナイン高橋MS:「お色気」依頼担当。「アームドヒーロー」が報酬。


 オープニングをご覧いただきどうもありがとうございます。
 本シナリオはPBWアライアンス『コイネガウ』のシナリオになります。ですが、『第六猟兵』の世界のキャラクターも「異界人」として認識されていますので、参加制限などはありません。
 国をあげての文化祭ということですので、異界人が参加してもおかしくないでしょう。お気軽にご参加ください。

 『コイネガウ』の詳細については、オープニング冒頭にある公式サイトをご覧いただければと思いますが、今回は純粋な戦闘シナリオですのでOPを読んでいただくだけでも十分です。

 本シナリオは、キャバリアのエース機、つまりクロムキャバリアをテーマとしています。
 ご用意させていただいた三機のクロムキャバリアから一機を選んで搭乗してもいいですし、ご自身のキャバリアを持ち込んでいただいても大丈夫です。
 三機のキャバリアのどの機体と模擬戦をおこなうのか指定し、どのように戦うかを考えていただければと思います。
 希島バトルアリーナの戦闘エリアは、様々な地形を再現したフィールドになっています。戦闘シチュエーションもご自由にお選びいただけます。

 なお、三機のクロムキャバリアの設定は、断章に詳細を記載いたします。

 PBWアライアンスの仕様上、シナリオフレームは日常で固定になっていますが、ボス戦相当の章だとお考えください。
 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 模擬戦で使用できる三機のキャバリアの設定は以下の通りです。ユーベルコード(ホープコード)は、POW、SPD、WIZに記載されたいずれか、または自身で所持するものを使用可能です。
 各キャバリアが敵として登場する際には、POW、SPD、WIZのユーベルコード(ホープコード)を使用してきます。また、搭乗パイロットは各企業のテストパイロット(NPCパイロット欄のキャラクター)となります。

●クロムキャバリア設定
機体名:ヴォルテックス・セイバー
タイプ:近接戦闘型
説明:メタリックブルーの装甲を持ったクロムキャバリア。電撃を発生させる|電撃剣《エレクトラブレード》による接近戦を得意とする。
POW:|電撃剣《エレクトラブレード》
大剣に電撃をまとわせて敵を斬り裂きます。さらに、対象に高圧電流による状態異常も付与します。
SPD:ヴォルテックスブースト
脚部に搭載されたジェットエンジンによって高速移動や飛行をおこないます。素早い機動力を持ち、敵の攻撃をかわすことができます。そこから近接攻撃による反撃で敵にダメージを与えます。
WIZ:ヴォルテックスオーバードライブ
限界までエネルギーを解放し、全身から巨大な電撃を放つ特殊技。周囲の敵を壊滅的なダメージで一掃します。
製造企業:希島未来科学研究所
NPCパイロット:リュウカ・ヴァレンタイン(女性)



機体名:ファルコンブレイズ
タイプ:可変高機動型
説明:赤い装甲のスリムな形状のクロムキャバリア。鷹を思わせるフォルムの戦闘機形態に変形し、高速で飛行することが可能。
POW:ストームブラストキャノン
両腕に装備されたキャノンから強力な風と雷のエネルギー弾を発射します。遠距離から威力のある爆発による攻撃をおこないます。
SPD:ファルコンウィング
飛行形態に変形し、巨大な羽根状のウィングを展開することで高速飛行をおこないます。迅速かつ機敏な空中機動により、相手の攻撃を回避します。無防備になった敵に命中力の高い攻撃で反撃します。
WIZ:ファルコンスカイバースト
高空から急降下し、敵地に突撃する攻撃です。強力な衝撃波を発生させ、広範囲の敵を一掃します。
製造企業:サイバーウェーブ・エレクトロニクス
NPCパイロット:ユウキ・スカイウィンド(男性)



機体名:破天
タイプ:重砲撃型
説明:漆黒の重装甲に覆われたクロムキャバリア。ガトリングガン、レーザー砲、キャノン砲、ミサイルランチャーなどの各種武装を装備している。ただし機動力は低い。
POW:ヘビーキャノン
肩部に装備された巨大なキャノン砲から強力な砲撃を放つことができます。砲撃は広範囲に及び、敵陣を壊滅させるほどの破壊力を誇ります。
SPD:鉄壁装甲
破天の装甲は極めて頑丈であり、敵の攻撃から身を守るために特別に強化されています。敵の攻撃を受け流し、耐え抜きます。そこからのカウンター攻撃は相手に大ダメージを与えます。
WIZ:ファイナルジャッジメント
破天の最終兵器であり、特殊なエネルギーを解放して敵を一掃する技です。全身から放たれる強力なエネルギー波は、周囲の敵を消滅させ、戦場を一瞬にして焼き尽くします。
製造企業:紫電重工
NPCパイロット: レイジ・サンダーストライク(男性)

『さあ、始まりました、エースの祭典! この放送は、私、中津水穂が実況を務めさせていただきます。そして解説役は、今回の|エース機《クロムキャバリア》の一機、ファルコンブレイズを製造したサイバーウェーブ・エレクトロニクス社社長にして、ファルコンブレイズの設計開発をおこなった若き天才科学者――』
『ドミニク・サイバーだ』
『この二名でお送りいたしますね』
 大勢の観客がひしめく希島バトルアリーナの巨大スクリーンに、黒髪をツインテールにした少女と、まだ20代くらいの青年――仏頂面で淡々と名乗ったドミニク・サイバーが映し出される。実況はアルバイトで雇われた無名の少女だが、解説のドミニクは希島では知らぬ者がいないほどの有名人だ。
 革新的な電子技術とロボット工学によって希島の発展に貢献する。その理念を持ってサイバーウェーブ・エレクトロニクス社を起業した天才科学者にして――気難しくてプライドが高く、毒舌であるとして有名な青年だった。
『ふん、私が開発したファルコンブレイズこそ最強の機体だ。このような模擬戦をしなくとも自明だろう。今すぐ希島政府はファルコンブレイズを正式採用し、市民の安全のために軍備を増強すべきなのだ』
 眉一つ動かさずに言ってのけるドミニク。その言葉からは、彼が開発した機体への絶対の自信が感じられる。
 勝利宣言にも等しいその言葉を聞き、バトルアリーナの観客席に座る人々から歓声が沸き起こった。――観客も自分たちの生活を守ってくれるエース機に、強い期待を寄せているのだ。
『それでは、エースの祭典のはじまりです!』
 実況の少女の言葉とともに、巨大スクリーンが戦闘エリアの映像に切り替わった。
コニー・バクスター
【錫兎】
アドリブ歓迎。

コニーも自機のキャバリアに乗って、【ヴォルテックス・セイバー】と戦う。
フィールドは同じく荒地。

搭乗機はBRRだよ。
オーバーフレームに変換して、攻撃力を5倍、装甲を半分にするね。

戦闘開始後、ナズグルの後衛に回って敵機を狙撃するよ。
RSキャバリアライフル(Code:BRR)で援護射撃だね。

敵機の機動力が高そうだから、EPレーダーユニット(Code:BRR)で捉えて撃つよ。
BRR側の防御と回避手段としてEPミラージュユニット(Code:BRR)も展開。

前衛の錫華が大技の後に隙を作ってくれた所でとどめの射撃を頑張る!
学園祭のこの戦いが、キャバリア科の学生達の参考になる事を願うよ。


支倉・錫華
【錫兎】
アドリブ歓迎

自分たちのキャバリアで【ヴォルテックス・セイバー】と戦うよ。
フィールドは荒れ地がいいかな。

搭乗機はナズグル。
【チューニング】は防御力を5倍、射程半分でいこう。

戦闘開始したら、
コニーさんのレーダーとの同期からの行動予測を元に【Hammer】で距離を詰め、
援護射撃でできた隙を利用して、相手に【ワイヤーハーケン】を絡ませるよ。

防御力を生かして相手の攻撃を捌きつつ、相手が電撃を放つ直前でワイヤーを切断。
地面に落としてアースさせて、ダメージを軽減するね。

大技のあとは隙ができるのがお約束。
とどめはコニーさんの射撃に任せちゃおう。

キャバリア科の学生さん達の参考になると嬉しいかな。




『最初の試合は、ヴォルテックス・セイバーと、飛び入り参加のキャバリア乗り2人組の対戦です!』
 実況の言葉と同時に、荒野フィールドにメタリックブルーの装甲を持ったキャバリアが姿を現した。鋭角的なデザインと流線型のボディ。頭部のカメラアイのある部分には赤いバイザーが装着され、まさに正義のヒーローといったイメージの機体だ。右手に持った大剣を軽々と振り回すと、観客席からどよめきが沸き起こる。
『ふん、近接戦闘特化型のヴォルテックス・セイバーか。未来研のジジイたちが考えそうな旧態依然とした設計思想だな。――とはいえ、基本に忠実だからこそ強いとも言える』
 青い機体に鋭い眼光を投げかけたドミニクが、呟きながら好戦的な笑みを浮かべた。
『ヴォルテックス・セイバーのパイロットは、リュウカ・ヴァレンタインさん。冷静ながらも心に熱い魂を持つ若き女性パイロットです』
 モニターに長髪の女性の映像が映し出された。銀色のパイロットスーツに身を包んだ20歳くらいの女性は、カメラに向かって手を振っている。試合開始前に撮影された映像だ。

『一方、ヴォルテックス・セイバーに対するはチーム『錫兎』。コニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)さんと、支倉・錫華(Gambenero・f29951)さんのコンビです!』
『機体は量産型キャバリア――『|BRR《ブラック・ラピッド・ラビット》』と『ナズグル』か。過去の報告書を読ませてもらったが、どちらの機体も量産型キャバリアの中では高いスペックを持つといえるだろう』
 巨大スクリーンには、対照的な二人の少女の動画が映し出される。コニーが金髪のツインテールを揺らしながら大きく手を振り、後ろに立つ錫華はそれを涼し気な顔で見守っていた。
『コニー・バクスターさんは国立希島学園の学生さん。支倉錫華さんは異界人という以外のプロフィールは不明です。一体どのような戦いになるのでしょうか! ところでドミニクさん、二対一の戦いになりますが――』
『問題ない。|エース機《クロムキャバリア》は対複数の戦闘も想定して設計されている。量産型キャバリア相手なら、二対一でも楽勝で勝ってもらわないとな。――まあ、|希島未来科学研究所《ジジイども》が作った機体では、どうなるかわからんがな』
 ドミニクが冷笑を浮かべながら告げ――。実況の少女が試合開始を宣言する。

『それでは、第1試合、ヴォルテックス・セイバー対チーム『錫兎』、試合開始です!』


『リュウカ・ヴァレンタイン、ヴォルテックス・セイバー参ります』
 巨大スクリーンから凛とした女性の声が響き、|青い装甲の機体《ヴォルテックス・セイバー》が荒野を蹴った。巨大なキャバリアであることを忘れさせるように軽やかに地を駆ける。剣を構えて疾駆するその姿は、まるで古代の騎士を思わせた。

 それを迎え撃つのは『錫兎』の二人、コニーと錫華だ。
『錫華、今回もよろしくね♪』
『そうだね、よろしく』
 短い通信を交わす間にも、二人は機体のコンソールを叩く手を止めない。対戦相手――ヴォルテックス・セイバーを観察した二人は、対抗するための最適解を脳裏に浮かべ、機体を最終調整しているのだ。

『よしっ、BRRのオーバーフレーム準備完了☆攻撃力特化で攻めに回るよ♪』
 コニーの機体、黒い装甲をした四足歩行の兎型キャバリアが、黄色いつぶらな瞳をヴォルテックス・セイバーに向け――その背中に装着した巨大なキャバリア用|自動小銃《ライフル》を発射する。本来であれば自動小銃の有効射程外のはずだが、その銃弾は吸い込まれるように敵機体へと向かっていった。
『BRRの敏感な耳からは逃れられないよっ!』
 搭載された索敵用レーダーにより敵の位置を把握し動きを予測することで、有効射程外の敵に正確に狙いをつけているのだ。
 遠距離射撃に狙われては、ヴォルテックス・セイバーも簡単には近づけない。手に持った大剣を盾のように構え被弾を最小限に抑えようとするのが精一杯だ。大剣で防ぎきれなかった攻撃で青い装甲に傷がついていく。

『コニー・バクスターさんのBRR、先制攻撃ですっ! 可愛らしいウサギさんの機体とは思えない激しい攻撃!』
『オーバーフレームを攻撃型に換装しているようだな。あれならば攻撃性能は通常の量産型キャバリアの5倍といったところか。――それにあの距離からの精密射撃。パイロットの腕がいいだけではない。恐らくレーダーによって索敵性能も高めているな』
 実況の言葉に合わせて、ドミニクがBRRの機体特性を解説する。

『牽制ありがと、コニーさん。こっちもチューニング完了したよ』
 BRRの|自動小銃《キャバリアライフル》がマガジンの弾丸を撃ち切るのと同時――。
 錫華が操る黒い量産型キャバリア・ナズグルが、脚部に装着されたローラーを高速回転させて飛び出した。ナズグルとヴォルテックス・セイバーの距離が一気に詰まる。
 迎え討つヴォルテックス・セイバーが大剣を振るうが、ナズグルはその一撃を腕部装甲で受け流した。
 量産型キャバリアとは思えない装甲の厚さに驚き、ヴォルテックス・セイバーの動きが一瞬固まる。
『これがこの子の全力。――どんなに鋭い刃でも、受け流すくらいならわけないよ』
 ナズグルの操縦席で錫華がほのかな笑みを浮かべる。

『ほう、あの機体――装甲を所々強化しているようだな』
『ではヴォルテックス・セイバーの剣は効かないのですか?』
『馬鹿を言うな。仮にも|未来研《ジジイども》が作った剣。並のキャバリアではどれだけ装甲を厚くしようとも一刀両断だ。――だが、どんなに鋭い剣でも、刃筋が立たねば装甲を斬り裂くことはできん。あのパイロット、相当の腕利きだな』
 ドミニクの解説により、ようやく状況を理解した観客たちが歓声をあげる。
 希島の最先端技術を研究している希島未来科学研究所が誇る最新鋭エース機を相手に、2機がかりとはいえ量産型キャバリアが互角以上に戦っているのだ。これで盛り上がらないはずがない。

 コニーと錫華の強さに焦りを感じたのか、ヴォルテックス・セイバーは大剣を大きく振り回し、ナズグルに斬りかかっていく。
 だが、コニーと錫華の呼吸はぴったりと合っていた。
『レーダーの情報送るね』
『了解』
 BRRから送られてきた敵機の詳細データと行動予測結果。操縦席のモニタに映った情報に素早く目を走らせ、錫華は機体を大きくジャンプさせると大剣を軽々と回避した。
 跳躍したナズグルは、敵の頭上から手首部分に内蔵されたワイヤーを射出する。
 ヴォルテックス・セイバーは迫るワイヤーを回避しようとするが――。
『させないよっ!』
 BRRが放った銃弾がヴォルテックス・セイバーの装甲を穿ち、その動きを止める。そこにナズグルのワイヤーが絡まった。

『支倉錫華さん、目にも止まらない動きでヴォルテックス・セイバーをワイヤーで拘束してしまいました!』
『なるほど、それが狙いか――。あの二人、実戦慣れしているな』
 ドミニクが小さく呟きながら目を細め――。

 ――その瞬間、希島バトルアリーナの巨大スクリーンに閃光が走った。

『私は、こんなところで敗北するわけにはいかないのです――!』
 会場のスピーカーから流れるのは、ヴォルテックス・セイバーのパイロットであるリュウカ・ヴァレンタインの声。決意に満ちた声音に呼応するように、ヴォルテックス・セイバーが青い装甲から電撃を迸らせた。

『ああっ、ヴォルテックス・セイバーの機体が激しい電撃に包まれていますっ!』
『これが|未来研《ジジイども》の切り札――|電撃剣《エレクトラブレード》か』
 観客の視線が巨大スクリーンに映し出されるヴォルテックス・セイバーに釘付けになる中、青き機体は電撃を大剣にまとわりつかせる。それは、まるで神々が使う伝説の雷剣のよう。
 雷が落ちるかのように一直線に振り下ろされる|電撃剣《エレクトラブレード》。――観客たちは雷撃に灼かれて崩れ落ちるナズグルの姿を幻視した。
 
 だが、その必殺の一撃を、ナズグルは両腕をクロスして受け止めた。

『なん……で!?』
 必殺の一撃を防がれたヴォルテックス・セイバーは、呆然として今度こそ完全に動きを止める。

『ああっ、ヴォルテックス・セイバーの|電撃剣《エレクトラブレード》、ナズグルに通用しません! なんという防御力でしょうか!』
『違うな。あれは防御力などではない。見ろ』
 ドミニクの操作で、巨大スクリーンにヴォルテックス・セイバーの機体が大写しにされる。
 その機体には、激しい雷撃により煙をあげる細いワイヤーが無数に絡みついていた。ナズグルが放っていたワイヤーだ。
 その映像に合わせて、ナズグルのコックピットから錫華の声が響く。
『攻撃の直前に、絡めてあったワイヤーを切り離して地面に打ち込ませてもらったよ』
『|電撃剣《エレクトラブレード》が命中するときには、剣がまとっていた電撃はほぼアースされてしまっていたというわけだな』
『そういうこと。雷さえなければ普通の斬撃。装甲を厚くしたナズグルなら、凌ぐくらいはできるよ』
 錫華の言葉に、ドミニクが嘆息しながら返す。
『――簡単に言ってくれる。あの質量の大剣の一撃をそう簡単に凌がれてたまるものか』
 それはまるでヴォルテックス・セイバーの開発者たちのセリフを代弁しているかのように呆れた声音だった。

『コニーさん、いまっ!』
『ええ、銃弾のリロードも終わったし、とどめは任せてね♪』
 錫華の通信に、コニーが応え――動きの止まったヴォルテックス・セイバーに至近距離から|自動小銃《キャバリアライフル》を向ける。
 だが、ヴォルテックス・セイバーも黙ってやられはしない。操縦席からの通信でリュウカ・ヴァレンタインの悲痛な声が響き渡る。
『せめて、あなただけでも――!』
 ヴォルテックス・セイバーの大剣が神速で閃く。その斬撃は、黒い兎型のBRRを完全に捉え、真っ二つに斬り裂いた。

『ああっ、コニー・バクスターさんのBRRが真っ二つにされてしまいましたっ!?』
『いや――見ろ』
 大剣で斬られたように見えたBRRは、その姿が幻のように溶けて消えてしまった。
『ええっ、消えちゃいましたっ!?』
『残念でした☆いまのはミラージュユニットによるBRRの幻だよ!』
 コニーの声と同時に、BRRの全力の射撃がヴォルテックス・セイバーの機体を撃ち貫いていく。
 その攻撃は機体の頭部カメラとそれを覆う赤いバイザーを完全に破壊し――。

『ヴォルテックス・セイバー、戦闘行動不能とみなします! 勝者、チーム『錫兎』のコニー・バクスターさんと支倉錫華さんです!』
 コニーと錫華の勝利を告げる声が希島バトルアリーナに響き渡った。

『さて、勝者のお二人から、一言づつお願いします』
『そうだね、学園祭のこの戦いが、キャバリア科の学生たちの参考になることを願うよ』
『わたしも同じかな』
 実況者にインタビューされ、コニーと錫華が答え――。

『学生の参考に――だと? 量産型キャバリアとは思えない性能を引き出すチューニング技術に、卓越した操縦能力。そして戦闘慣れした戦術眼――。学生風情が真似できるものではないだろう。私の会社の専属パイロットとして雇いたいくらいだ』
 対戦相手のリュウカ・ヴァレンタインや希島未来科学研究所の開発者たちを憐れむように、ドミニクが呟く。その言葉は誰にも届かずに風に溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小野寺・一沙
POW
アドリブ歓迎
搭乗機:ヴォルテックス・セイバー
対戦相手は同じヴォルテックスに乗っている人

これがクロムキャバリア…実物をこんなに間近で見たのは初めてです
アニメの世界が具現化したみたいな光景ですね…

…え?これ、わたしも乗るんですか?
あの、わたし見物に来ただけのつもりだったんですけど…
そもそもエースどころかほぼ素人ですよ?
アニメとかだとそういう境遇の主人公は確かに多いですけど…

まあ、折角ですしチャレンジしてみるのもいい…かな?
AT普通の免許ならあるんですけど…コレで操縦なんとかなりませんかね?

あ、パイロットスーツ…これ結構格好いいかも…
…え?着たんならさっさと乗れ?
あ、その…ああああ…!?

こ…こうなったらやるしかありません!
AT取ったわたしの操縦技術(※注)でなんとかやってみます!

※注:実技で6回落ちた

キャバリエの戦い方とか技とか全然わからないので、生身での普段通りの戦い方と剣技でなんとかします!
これ、人間の戦法で戦うのがある程度前提なんですよね?
そうでないと人間の形してる意味ありませんし




 ――時間は少し遡る。

「ここはどこでしょう……?」
 黒髪に赤い髪留めをした少女、小野寺・一沙(剣客撫子・f26434)が希島バトルアリーナの地下通路をさまよっていた。その手には観戦席の席番号が書かれたチケットが握られている。バトルアリーナの入り口から席に向かう途中で道に迷ってしまったようだ。
「あちらに明かりが?」
 出口かと思い向かった通路の先。
 しかし、明かりの中に出てみれば、そこは出口ではなく――。
「巨大……ロボット? これがクロムキャバリアでしょうか?」
 一沙が出たのは、ロボットの格納庫だった。間近にそびえ立つのは、一沙が纏う巫女装束のように純白の装甲を持ったスリムなキャバリア――ヴォルテックス・セイバー。
 だが、紹介動画で見たヴォルテックス・セイバーの装甲は青色だったはず。

 ぼうっとキャバリアを見上げる一沙の背後で、カツンという靴音が響いた。

「ここは一般人立ち入り禁止のはずじゃが……見られたからには始末するかの?」
「まあ待て。こやつ――希人じゃな」
「ほう、ならば利用価値もあるというもの」
 一沙の背後から現れたのは、白衣を着た3人の老人たち――ヴォルテックス・セイバーを開発した希島未来科学研究所の研究員たちだった。


「あのー、本当に素人のわたしがこれに乗るんですか……? ATの普通免許でなんとかなるでしょうか?」
 老人たちに促されるがままパイロットスーツに着替えた一沙だが、まだ困惑顔だ。
 いきなりロボットに乗れと言われても、困惑するなという方が無理だろう。それも、一沙はATの実技試験に6回も落ちているのだ!

「おい、本当にこやつで大丈夫か……?」
「じゃが、リュウカが敗れた以上、あっちは実験機じゃったことにするしかあるまい?」
「うむ、このヴォルテックス・セイバー零式こそ、わしら希島未来科学研究所の本当のキャバリアじゃったことにせんと、あの若造に笑い者にされるぞ」
 円陣を組んでこそこそと相談していた老人たちが、一沙に作り笑いで話しかける。

「なあに、一沙殿なら大丈夫じゃ」
「それに、即席じゃが操縦方式をモーショントレースシステムに変更しておいた」
「わしらを助けると思って、その機体で戦ってくれんかの?」
 懇願してくる老人たち。
 その願いを、真面目で優等生、そして温和かつ天然な一沙が断ることができようか!

「わかりました、困っているおじいさんたちを助けるため、一肌脱ぎましょう!」
 こうして、純白の装甲のヴォルテックス・セイバー零式が格納庫から出ていこうとし――派手に転倒した。


『白熱したバトルでしたね! さあ、次の試合は……』
 手元のモニタに表示された原稿を見て、実況の少女が怪訝な顔をする。そこに書かれていたのは――。
『ええと、失礼しました。ただいま文化祭実行委員会から入った連絡によりますと、次の試合に出場するのは、希島未来科学研究所が作成した真のクロムキャバリア――ヴォルテックス・セイバー零式です!』
『ほう、未来研のジジイども、負けを認めたくないからと姑息な真似を……』
 ドミニクが不機嫌そうに吐き捨てる。
 だが、巨大スクリーンには大々的に『ヴォルテックス・セイバー VS ヴォルテックス・セイバー零式』という文字が表示された。

『――どうやら、敗北の汚名をすすぐチャンスを得られたようですね』
 試合で破壊された頭部カメラを応急処置した青きキャバリア、ヴォルテックス・セイバーのコックピットで、パイロットのリュウカ・ヴァレンタインが薄い笑みを浮かべた。
 その眼前で、地下格納庫から姿を現したのは、純白の装甲のヴォルテックス・セイバー零式だ。
『ヴォルテックス・セイバー零式の登場です! パイロットは……えーと、小野寺一沙さんです!』
『こ、こうなったらやるしかありませんっ!』
 一沙の気合の声が会場に響き――。観客たちの歓声が頂点に達する。

『それでは、真のヴォルテックス・セイバーを決める戦い、開始です!』


 ――最初に動いたのはリュウカの乗る青い機体だ。
『メインカメラの半分が使用不能――。ですが、たかがメインカメラをやられただけです』
 半分しか映らないメインカメラと、それに加えてサブカメラによる映像を駆使し、リュウカが器用にキャバリアを操る。手にした大剣に雷をまとわせ、白い機体に全力で斬り掛かった。
『リュウカ・ヴァレンタインさん、早くも必殺の|電撃剣《エレクトラブレード》です!』
『機体の状態が万全でない以上、先制攻撃で敵を倒すのがセオリーだな』
 実況に合わせ、ドミニクが解説をおこなう。
 青い機体の電撃剣がもう一機の機体へと振り下ろされ――。

『え、ええっと、これ、人間の形をしているからには、人間の戦法で戦えるんですよね!?』
 雷撃のごとき勢いで振り下ろされた大剣を、一沙は紙一重で回避した。
 さらに二撃三撃と繰り出される斬撃も、その太刀筋を読んでかわしていく。
 ――それは、まるで生身の人間同士の立ち会いのようだ。

『は、速いっ!? リュウカ・ヴァレンタインさんも速いですが、それ以上に小野寺一沙さん、もの凄い操縦技術です!』
『――あの動きはモーショントレースシステムだな。おそらく操縦者が恐ろしいほどの剣術の使い手なのだろう』
 固唾をのんで2機の戦闘を見ていた観客たちも、解説を聞きその凄さを理解したのか、大歓声で応援を始める。
「白い方、負けるなー!」
「青い方もがんばれー!」

 剣戟を次々と回避された青い機体から、リュウカが通信回線を開いた。
『このヴォルテックス・セイバーの機動力を制御できるパイロットは私だけだと思っていたけれど――どうやら思い上がりだったみたいね。それはお嬢ちゃんたちに負けもするわね』
『リュウカさん、とおっしゃいましたか。あなたの剣はすごく真っ直ぐで――強い剣士であることが剣から伝わってきます』
『それはどうも。――ならば、どちらが強いか決着を付けましょう、一沙。研究所の研究員たちの思惑なんか関係なく、純粋にどちらが強いか――それを決めたいわ』
 リュウカの言葉に、一沙も静かに笑みを浮かべて応える。
『――ええ、一人の剣士として、この勝負、受けて立ちましょう』


『ああっと、リュウカ・ヴァレンタインさん、剣を腰に差しました。――小野寺一沙さんも同様の構えです!』
『あれは居合の構えか。ヴォルテックス・セイバーの|電撃剣《エレクトラブレード》による居合抜き――神速の一撃で勝負が決まるな』
 バトルアリーナ全体が静寂に包まれる。どちらが先に動くか、人々が固唾をのんで見守り――。

『くしゅんっ! あっ、失礼しましたっ!?』

 ――実況の少女のくしゃみと同時に、青と白の機体が駆け、その影が交錯する。

『私のすべてをこの一撃に込める!』
 リュウカが吠え――。それを一沙の静かな声音が迎え撃つ。
『――剣刃一閃』
 雷をまとった大剣が目にも止まらぬ速さで繰り出され――。激しい金属音が鳴り響いた。

 剣と剣が激突し、弾き飛ばされたのは――青き機体、リュウカのヴォルテックス・セイバーの大剣だった。宙を舞った剣が勢いよく地面に突き刺さる。
 一沙のヴォルテックス・セイバー零式は、|電撃剣《エレクトラブレード》を青い機体の首元に突きつけた体勢で動きを止めている。誰が見ても一沙の勝利だ。

『私の負けだ、一沙。この機体が万全だったとしても負けていた。完敗だ』
『リュウカさんもとても強かったです。――キャバリアでの戦い、わたしももっと精進しなければいけませんね』

 白い機体が青い機体に手を伸ばし、立ち上がらせ――観客席から盛大な拍手が送られた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

渡月・遊姫

キャバリアの模擬戦をやっていると聞いて。久しぶりに乗るけどちゃんと動くやろか......(ペーパードライバーの再講習感覚)
機体は生意気にも専用機です(ぴっちりスーツ付き)。いつのまにかオウガのジョーカーがオーダーメイドの機体を購入していました(オウガブラッドの二重人格)。
思念で動くマシンなので、ふわふわと空中を浮遊しながら戦い、不可視の力場で敵の弾丸を防御したり、力場パンチしたり、虹色のビームを撃ったり。隙を見て鎌で相手の機体を両断します。




『では、次の試合に参りましょう! 次の挑戦者は、渡月・遊姫(二重人格の殺人姫・f19443)さん! 参加機体はオリジナル機体の『マーブルクラウン』です!』
 希島バトルアリーナの巨大スクリーンに映し出される、まるで道化師のような姿をした鋭利なフォルムのキャバリア。それが遊姫が乗るマーブルクラウンだ。
 操縦席から、マーブルクラウンを操る遊姫の声が聞こえてくる。

『なあ、ウチ、キャバリアなんて久しぶりに乗るけど、教習所に通い直さんでよかったんやろか?』
『ペーパードライバーのおばちゃんかいな! キャバリア乗るんに免許なんていらんのやし、直感でガーって操作したらええねん!』
 ――スピーカーから響くのは、なぜか遊姫のひとりツッコミの声だった。

『えー、エントリーシートによりますと、渡月遊姫さんはオウガブラッドとのこと。遊姫さんにジョーカーさんというオウガが取り憑いていて、二人で一つの身体を使っている状態なのだそうです』
『そういうことや。ま、二重人格とでも思ってもらっておけばいいねん』
 実況の少女の紹介に、ジョーカーの人格が答える。
 確かに、一つの身体に2つの精神というのは、二重人格者と変わらないとも言えるだろう。
『ねえジョーカー、ブレーキってこっちだっけ?』
『だーっ、待てや遊姫、そっちはアクセルやーっ!』
 遊姫がアクセルをベタ踏みし、思念によって空中を浮遊するマーブルクラウンが全速力で戦闘エリアに向かっていった。

『さて、渡月遊姫さんの対戦希望者は――エントリーシートに書いてないですね。えーと、こういう場合、どうしましょう、解説のドミニクさん……ドミニクさん?』
 実況席の少女が隣の解説席に目を向けるが、そこはもぬけの殻だった。そういえばメカにはうるさいドミニクが、マーブルクラウンのような変わった機体を見て一言も解説しないのはおかしいことだ。
『えーと、ドミニクさーん、そろそろ試合が始まりますので、解説席にお戻りくださーい』

 実況の少女の声に――無線通信で高らかにドミニクの声が響く。

『ふははは! 面白い機体だ! ならば、この私自らが設計した、このファルコンブレイズでお相手しようっ!』
 希島バトルアリーナの上空を飛ぶ赤き装甲の戦闘機型キャバリア、ファルコンブレイズ。ドミニクの声は、その機体の操縦席から響いていた。

『えええっ、あの人、確か解説のサイバーウェーブ・エレクトロニクスとかいう会社の社長さんじゃ……!?』
『なんや遊姫、怖気づいたんか? ウチはああいう型破りな男、嫌いやないで。――この死神の大鎌、ブラックレディで首を切り落としたいくらいになぁ!』
『ちょっ、ジョーカー!? コックピット狭いんやから、そんなでっかい鎌取り出さんといてー!』

 遊姫とジョーカーが|やり取り《漫才》をしている間に、ファルコンブレイズは地上近辺に降下。複雑な変形機構を経て人型ロボット――スリムなフォルムのキャバリアに変形した。

『ちょっと、ドミニクさん! なんで勝手に出場しているんですか!? それにパイロット登録されていたユウキ・スカイウィンドさんは!?』
 実況の少女の問いに、ドミニクはしばし沈黙し――ゆっくりと言葉を返した。
『キャバリア工学の権威にして天才パイロットである私が、こんな楽しそうな戦いを部下に任せるとでも?』
『偉そうに言わないでくださいっ!』
『それに、君――』
 ドミニクは真剣な声音で言葉を紡ぐ。
『今回、誰もエントリーシートで私のファルコンブレイズとの対戦を希望しなかったのだ! ああ、私の造ったファルコンブレイズのあまりの強さに恐れをなしたのはわかるとも! だが、それでは私の愛しいファルコンブレイズが活躍できないではないかっ!』
 堂々としたドミニクの声が希島バトルアリーナに響き渡った。

『なあ、あのおっちゃん、頭悪いんちゃうか?』
『しっ、ジョーカー! これ、無線で全部聞こえてるからっ!』
『ほう、もう一回言ってみたまえ! 私はまだ27だああっ!』
『ドミニクさん、27歳だったんですか。十分おじさんですね』
 実況の少女(16歳)の言葉が、若き天才ドミニク(27歳)のハートを粉々にする――。

『なあ、なんかオチもついたし、ウチらの勝利でいいんちゃうか? 精神的な面で』
『ええいっ、そこの実況アルバイトのアイドル16歳の言葉ならともかく、ジョーカー君、きみたち20歳からおっちゃん呼ばわりされる謂れはない!』
 ドミニクの言葉に、遊姫が震えた声を返す。
『なあ、どうしよ、ジョーカー。あのおっちゃん、うちらの年齢知っとるで。ストーカーや』
『ああ、ストーカーやな。案件やな』
 ジョーカーもひそひそ声――と見せかけ、スピーカーから大きな声で聞こえるように相槌を打つ。
『ええいっ、ちゃんとエントリーシートの年齢欄に6月21日生まれの20歳と書いてあるだろうがっ!』
『あちゃー、うちらもサバ読んで、16歳と書いておけば不戦勝だったやろか――』
『もういい、埒が明かん――行くぞ、マーブルクラウン!』
 ドミニクがファルコンブレイズの武装を構える。
 対するマーブルクラウンも巨大な鎌のような武器を構え――。

『それでは、マーブルクラウン VS ファルコンブレイズ、試合開始ですっ!』
 実況の少女の声とともに、ようやく試合が始まった――。


『さあ、マーブルクラウンとファルコンブレイズ、激しい戦いです! ファルコンブレイズのマシンガンの攻撃をマーブルクラウンが不可視の力場で防御! 虹色のビームによる攻撃は、戦闘機形態に変形したファルコンブレイズが素早く回避! そして、いよいよお互いの切り札で決着のとき――!』
『ちょっと君ぃ!? 私のファルコンブレイズの活躍を端折り過ぎじゃないかね!?』
『|放送時間《文字数》が伸びてるので、巻き気味でいきます』
 実況の少女の冷酷な宣言だった。

 そこにジョーカーがマーブルクラウンの鎌を振り上げて言い放つ。
『これがウチの必殺技、九死殺戮刃や。受けてみい!』
『ならばっ! ファルコンブレイズ、変形! ファルコンウィングによる突撃、受けてみたまえ!』
 鷹を思わせる飛行形態に変形したファルコンブレイズが、機体に炎を纏って突撃してくる。それを迎え撃つ遊姫――いや、ジョーカーの瞳が輝き。
 鷹が飛び込んできた瞬間――マーブルクラウンの持つ巨大鎌が目にも止まらない速さで煌めいた。
『これが、一瞬で9回攻撃するウチの必殺技――。ただし、味方を一度も攻撃せんかったから、遊姫の寿命が減るねん』
『がーん、そんな殺生なぁーっ!』

 ズルリ、とファルコンブレイズの両翼が切断面からズレて――そのまま機体が10分割された。

『勝者、渡月遊姫さんのマーブルクラウン!』
 おおおお、と希島バトルアリーナが観客たちの声援で満たされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
対戦相手:破天
搭乗機:セレステ

操縦技術的に、格闘戦や高速機動戦とかだと厳しいけど、
【セレステ】での砲撃戦ならなんとか、かな。砲撃は情報と精度の勝負だからね。

そしてなんといってもUCあるし!

でも攻撃無効系のUC使っちゃうと、模擬戦にならないから、
今回はサポート系ので楽しめる模擬戦をしよう!

向こうは聞いていたとおりの重キャバリアだね。
武装もまさにハリネズミって感じかな。

相手の砲撃を、機動力を生かして回避しつつ、
上空から攻撃してみるけど、そこはさすがの重装甲。
生半可な攻撃は弾かれるよね。

しかも反撃がえぐーい。

さすがに隙がないねー。
けど、隙がないなら作ればいいんだよ。

『希』ちゃん、【E.C.M】準備。相手の目を潰すよ。

電子照準が使えなくなれば当然……うん。目視になるよね。
でも、その開いたハッチが隙になるんだよ。

【M.P.M.S】フレシェット散弾。照準、敵ハッチ!

『希』ちゃん、照準違うから!? そっち放送席!
『解説の人、なんかイラっとするんだもん』

いや、ダメだから!あとゴム弾でね!殺意低めで!




『はい、それでは続いての試合に移りましょう! 次の挑戦者は菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)さん! 機体名は『RI-21A リオ・セレステ type-W.E.A-』――おっと、この機体はキャバリアではないようです。さっきまで仕事サボってた解説のドミニクさん、あれは一体!?』
『振りに交えて痛いところを突いてくるバイトだな、キミは。あれは|垂直離着陸機《VTOL》――いや、違うな。ホバー走行を主体とした……いや、それも設計コンセプトに合わない。――今の技術力からはSFと言われるかもしれないが、もし私が宙間戦闘艦を設計するとしたら、あのような戦闘機になるかもしれん……』
 理緒のセレステを見ながら、ドミニクがぶつぶつと専門用語を並べ立てながら思索にふける。どうやら技術者としての思考モードに入ってしまったようだ。
 それほどまでに――理緒の機体は戦闘機のようなフォルムをしていた。

『ハッ、そんなキャバリアでもない機体で、この俺様の破天とやり合おうってのか!? 一瞬で蒸発しちまっても知らねぇぜ!』
 希島バトルアリーナに響くのは、青年の荒々しい声。レイジ・サンダーストライク、紫電重工製キャバリア・破天のパイロットである。紫電重工は謎に包まれた軍事企業で、経営陣の名前すら明かされていない。どこかの軍事組織と裏で繋がっているのではないかとも噂される企業だった。
 その紫電重工が作ったキャバリアである破天は漆黒の重装甲に覆われ、ガトリングガン、レーザー砲、ミサイルランチャーなどの各種武装が装甲の下から見え隠れしている。

『破天に乗るレイジ・サンダーストライクさん、余裕の言葉です! ドミニクさん、セレステと破天、どちらが勝つと思いますか?』
『ふむ、普通に考えるのであれば、装甲、火力ともに勝る破天に軍配が上がるだろう。機動力は間違いなくセレステの方が上だが――相手の装甲を抜けなければ話にならん』
 冷静に両者の戦闘力を分析したドミニクが冷静に語る。それほどまでに――まるで子供が大人の相撲取りに挑もうとするかのごとく、セレステと破天の装甲には差が大きかった。

『それでは、セレステ対破天の戦い、開始です!』
 巨大スクリーンに戦闘エリアの様子が映し出された。


「さっすが、聞いていた通りの重キャバリアだ、ねー」
『本当に戦うつもりですか、理緒。このセレステの武装ではあのキャバリアの装甲を抜くことはできないかと。やるならせめて|戦闘空母《ネルトリンゲン》くらい持ち出すべきでは?』
 理緒に進言しているのは、サポートAIの|希《まれ》だ。現在はセレステのナビゲートを務めている。
「まあ、セレステの砲撃戦ならなんとかなるかな、と思って。砲撃は情報と精度の勝負だから、希ちゃんがいれば百人力だから、ねー」
『そこで人頼みですか。まったく理緒は計画性がないのですから』
 口では文句を言う希だが、理緒に頼られたことが嬉しいのか、セレステのエンジン音が上機嫌だ。通常の120%ほどの航行速度でも機体が安定している。センサー類からのデータ取得も順調だ。
 ――そのセンサーが熱源反応を感知した。
『理緒、敵機のエネルギーが急速上昇しています――。これは』
「どうやら、いきなり大技が来るみたいだ、ねー」


『ははは! 俺様の破天の攻撃、喰らいやがれ! いくぜ、ファイナルジャッジメント!』
『ああっ、破天の機体から眩い光が溢れています! これは一体!?』
『あれは、機体で処理できなくなったエネルギーが光になって周囲に放出される現象だ。キャバリアの動力炉を意図的にオーバーヒート状態にすることで強大なエネルギーを引き出しているのだな。――だが、これは機体の暴走の危険性がある上に、エネルギー炉の寿命を短くさせる使用方法だな。私だったらこのように機体に負荷をかける設計はしない――紫電重工め、なんという機体を作ったのだ……』
 破天が放つエネルギーに、希島バトルアリーナの巨大スクリーンも閃光につつまれ――観客席にざわめきが走る。
 観客たちの考えを代弁するかのように、司会の少女が問いかける。
『ドミニクさん、このファイナルジャッジメント――セレステは耐えられるのでしょうか?』
『無理だろうな。どれだけ高い機動性を持っていたとしても、空間に対して攻撃されては回避のしようがない。勝負ありだな』
『喰らえ、――ファイナルジャッジメント!!』
 レイジの声がスピーカーから響き渡り――直後、眩いばかりの光と爆音が轟いた。


『理緒、シミュレート完了しました!』
 ファイナルジャッジメントのエネルギーチャージが始まると同時に、希は全センサーの情報を元に、破天の攻撃のシミュレートを開始していた。それはキャバリアのエネルギー炉の暴走という予測の難しい現象をもシミュレートしきるという、まさに神業。
 セレステのコックピットにファイナルジャッジメント発動までのカウントダウンが表示された。
 敵の広範囲攻撃発動まで、残り10秒。
「おっけー、さっすが希ちゃん!」
『ですが、攻撃タイミングがわかっても回避できないのでは意味がないと思うのですが――』
 困惑するかのような希の言葉に、理緒が自信満々に言い放つ。
「回避不能? のんのん。あるよ、安全な場所が一箇所だけ、ねー」
『まさか――!?』
「そういうこと。それじゃ、希ちゃん、動力炉全開! 破天に向かって最大速度で突っ込んじゃえー!」
 理緒の指示でセレステが破天へとまっすぐに飛翔していく。
 ファイナルジャッジメントの発動まで、残り5秒、4秒、3秒、2秒……。
「よっし、タイミングピッタリ!」

 ――そして、破天の全方位殲滅攻撃ファイナルジャッジメントが戦闘エリアに配置された人工の木や岩などをすべて消し飛ばしていった。


『破天のファイナルジャッジメント炸裂ー! これは菫宮理緒さんのセレステ、どうなったのでしょうか!?』
『ふん、確かめるまでもないな。一瞬で蒸発――いや、模擬戦用に出力はセーブされているので、ギリギリコックピットだけはそのあたりに転がっているかもしれんな』
 ドミニクの言葉と同時に、戦闘エリアの様子が巨大スクリーンに映し出された。
 そこは、破天の周囲数メートルの足場が円形に残っているだけで、あとはあらゆるものが蒸発した世界――。

 ――そこを一条の蒼い光芒が走る。

『この光は――セレステのブースターの光です! 菫宮理緒さんのセレステ、無事にファイナルジャッジメントをしのぎ切りました!』
『馬鹿な、ありえん! あの攻撃に死角はなかった! 重装甲やバリアといった兵装がなければ耐えられないはず! 何故無傷で飛んでいられる!?』
 信じられない物を見たかのようなドミニクの声に、理緒からの通信が応える。
『あの攻撃に死角はなかった? ほんとか、なー?』
『ま、まさかっ!?』
 理緒の言葉に、ドミニクが驚愕の表情を浮かべる。そんなことができるはずがないと始めから考慮していなかった回避方法――それ以外にセレステが無事でいられる方法は存在しない。
『ドミニクさん、菫宮理緒さんは、いったいどういう方法で攻撃を避けたのでしょうか?』
『――あのファイナルジャッジメント発動の瞬間。安全な場所などどこにもなかった――ある一点を除いて、な』
『そ、その一点とは!?』
『よく見てみろ。ファイナルジャッジメントが放たれた後、唯一無事なのはどこだ?』
 ドミニクの言葉に、司会の少女はしばし考える。破天の周囲はあらゆる場所が破壊されている。観客席を守るバリアフィールドの外は無傷だが、バリアフィールド外に出たことをシステムが感知したらそれで失格だ。となると、残りは――。
『あっ』
 司会の少女が破天を見て小さく呟いた。
 そして、ドミニクが頷く。
『そう。破天自身だ。ファイナルジャッジメントは破天の周囲全体を攻撃する兵器。――だが、当然ながら破天そのものを攻撃することはない。ファイナルジャッジメントのエネルギーは、破天の周囲数メートルの場所から外に向けて発射されるのだ。――つまり』
『ぴんぽーん。せいかーい』
 理緒の声が、ドミニクの推理が正しいことを告げる。
『えっ、そ、それってまさか……』
『そう、そのまさかだ――。ファイナルジャッジメントの発動の瞬間に合わせて破天に突撃し――おそらく脚の間だろう、そこをくぐることで安全地帯に飛び込んでいたのだ。超高精度なセンサーに超高性能なシミュレーターと超有能なナビゲータ、そして超優秀な操縦テクニックが必要になるので、そんな可能性は考えもしなかったが、な』
『うちの希ちゃんは、超優秀だから、ねー』
『いえ、理緒。私はごく普通のサポートAIですから』
 希の言葉が通信に割り込み――。その瞬間、ドミニクの目の色が変わった。
『なにっ、センサーデータ分析とシミュレートとナビゲート、そのすべてをその希というサポートAIがやったというのかっ!?』
『そうだ、よー?』
『なんですか、この人。人の名前を呼び捨てで軽々しく――』
 ドミニクの言葉に希が文句を言うが、ドミニクは知ったことではないとばかりに続ける。
『どうだね、希くん。私のものになってくれないか!?』

 ドミニクの言葉に、司会、理緒、希、そして会場の観客全員が声を失った。

『ああ、誤解しないでくれたまえ。私が欲しいのはキミの|ハードとソフト《からだ》だけだ。我が社の発展のために、キミの|ハードとソフト《からだ》をコピーさせてもらいたい!』
『――理緒、発砲許可を』
『うん。やっちゃえー』
『えと、どうぞー』
 希の言葉に、理緒が許可を出し、司会の少女はマイクを持って避難する。

 ――そして、ドミニクだけになった放送席を、セレステの主砲が撃ち抜いた。

『一応、ゴム弾で許しておきました』


『さて、ちょーっと司会席が風で涼しい状態になってしまいましたが、勝負はまだついていません! むしろ、まだファイナルジャッジメントを撃っただけだというのに、|放送時間《文字数》が大変なことになっています!』
 司会の少女の声を聞き、理緒が希に語りかける。
「希ちゃん、【E.C.M】発動!」
 セレステに搭載された電波妨害装置からノイズジャミングが発生する。それは会場の電子機器を一時的に使用不能にし、巨大スクリーンにも砂嵐しか映らなくなった。
 ――そしてそれは、破天のセンサーも同じだ。
「ちくしょう、何も見えねぇ!」
 光学センサーを始めとした各種センサーを潰された破天から、パイロットのレイジがコックピットハッチを開けて外部の状況を把握しようとし――。
「そ。カメラで外部の様子がわからなくなれば、当然、目視しようとするよ、ねー」
『破天の装甲を抜ける装備はありませんが――パイロットが姿を見せるならば話は別ですね』
「希ちゃん、【M.P.M.S】フレシェット散弾、発射!」
 マルチミサイルランチャーから対人用弾頭の散弾が発射され――。
「ぐわあああああっ!」
『安心してください、これもゴム弾頭です』

『レイジ・サンダーストライクさんの気絶により、菫宮理緒さんのセレステの勝利です!』
 ジャミングから回復したマイクにより、理緒と希の勝利が告げられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桐嶋・水之江
なるほどなるほど…
各メーカーの最新技術のお披露目会という訳ね
これは新しいシノギの匂いがするわ
桐島技研も飛び入り出展よ

桐島技研のキャバリアはこちらのカナリアよ
特徴は何と言ってもこの黄金装甲…カナリア装甲よ
ビームや光、電気や熱に魔力まで遮断する新素材を採用しているわ
機体の方向性としては重火力の重装機ね
だけど大型スラスターを搭載して機動力も確保しているわ
脚部スラスターでホバー移動も可能よ
燃費の問題はプロペラントタンクを装備する事で対処したわ
我ながら完璧な設計ね

私のお相手はヴォルテックス・セイバーにお願いしましょうか
フィールドは荒野でよろしく

脚部スラスターのホバーを起動
相手の機動力に対抗するわ
距離を詰められないよう後退しながら戦いましょう
カナリア装甲があるとは言え電撃放射をまともに受けたくはないもの
接近されたらプラズマガントレットで反撃よ
距離が開いてる内は拡散モードのメガビームキャノンを左右交互に発射して行きましょう
偏向ビームで軌道を曲げに曲げて手動追尾するわ
面の弾幕で相手の機動力を潰すのよ




『さあ、この展開を誰が予想できたことでしょうか! 希島未来科学研究所の「ヴォルテックス・セイバー」、サイバーウェーブ・エレクトロニクス社の「ファルコンブレイズ」、紫電重工の「破天」、いずれも飛び入り参加の挑戦者に敗れ去ってしまいましたー!』
『待ちたまえ、我が社のファルコンブレイズは調子が悪かっただけだ。絶好調であれば負けたりなど――』
『社長にして開発者であるご自身が操縦して完全敗北したドミニクさんは黙っていてくださいね』
 必死で言い訳をする解説のドミニクを、司会の少女がにっこりと笑って黙らせる。

 ――その時、希島バトルアリーナの巨大スクリーンに、白衣姿の老人たちの姿が映し出された。老人たちが着る白衣には、希島未来科学研究所のロゴマークが描かれている。
『ふぉっふぉっふぉ、わしらが開発したヴォルテックス・セイバーが負けたじゃと? あれは所詮、実験機と零式にすぎん。見よ、これがわしら希島未来科学研究所が作り出した、最強のヴォルテックス・セイバー軍団じゃ!』
 老人たちの言葉とともに戦闘エリアに姿を現したのは――10体を超える数のヴォルテックス・セイバーだ。
 メタリックブルーの無印機とも、|純白の装甲《無塗装》の零式とも違う、漆黒の塗装をされたヴォルテックス・セイバーたちだ。
 会場の巨大スクリーンに映し出される操縦席には誰も乗っていない。完全無人のAI操縦の機体だった。

『ああっと、ここで希島未来科学研究所が、また未登録の機体を出してきました!』
『ちぃっ、ジジイどもめ、セコい真似を……! よし、私も速攻でファルコンブレイズを修理・改造して――』
『ドミニクさんは、きちんと解説のお仕事をしてくださいね』
 解説席を立とうとしたドミニクは、その首根っこを捕まえられて解説席に連れ戻される。
『キミ、見た目に似合わず力があるな!?』
『アイドルは体力勝負ですから。――しかし、このままですと、希島未来科学研究所のヴォルテックス・セイバーが3機の中では最強だったということになるのでしょうか?』

 司会の少女が呟いた直後。
 希島バトルアリーナの通信回線をハッキングして、若い女性の声が響いてきた。
『はろはろー。聞こえるかしら? こちら、ゆりかご型キャバリアから棺桶型キャバリアまで、あなたの暮らしに寄り添うキャバリアをお届けする桐嶋技研の桐嶋・水之江(|機巧の魔女《モーラットイーター》・f15226)よ。各メーカーの最新技術のお披露目会ということなら、桐嶋技研も飛び入り参加させてもらおうかしら?』
『桐嶋水之江――だと!?』
『知っているんですか、ドミニクさん!?』
 司会の少女の言葉に、解説席のドミニクが首肯する。
 以前、工業地区で発生した試作型キャバリア強奪未遂事件。その事件をサイバーウェーブ・エレクトロニクス社が独自に調査した報告書に記載されていた人物の名だ。
『強大な力を持つキャバリアを所持する人物ということだが――なるほど、同業者だったというわけか』
 ドミニクは手元の電子端末に報告書を表示させる。そこには監視カメラが遠方から捉えた戦闘時の画像が添付されていた。夜間な上に遠距離なため不鮮明な画像だが、マズルフラッシュに照らされるのは紫色の装甲を持った巨大なキャバリア。――そう、監視カメラからの距離から大きさを推定すると、通常のキャバリアの優に3倍以上の巨体を持ったキャバリアという非常識な代物がそこに映っていた。
『くくく、つまらん模擬戦ばかりで退屈していたが、このキャバリアのデータを収集できるとなると、わざわざ私自らが会場まで足を運んだ甲斐があったというものだな』
『いえ、ドミニクさん、さっき、めちゃくちゃ楽しそうにキャバリア操縦してませんでしたっけ?』
 ドミニクは司会の少女の言葉をスルーした。


『さて、今回ご紹介する|商品《キャバリア》は、こちら!』
 水之江の言葉とともに上空から降りてきたのは――金色の装甲を身にまとった重装備のキャバリアだ。右手に巨大なビーム砲を持ち、左手には紫電に包まれたシールド。そして背面には巨大なウェポンユニットとスラスターを装備している。
『――なに!? 例の紫色の機体ではない、だと!?』
『あら、ゼルグ・ジールをご存知? |あれ《ゼルグ・ジール》は一点モノで量産には向かないから、希島政府に売り込めないのよねぇ。その点、このカナリアなら大量にお譲りできるわよ』
 気楽に言う水之江に、ドミニクが絶句する。
 ドミニクから見て、黄金の装甲を持った機体――カナリアも十分に一点モノの完成度を持っている。エース機と言ってもまったく問題がない機体だ。それを水之江は――|量産機《・・・》だと言ったのか!?
『それでは、このカナリアの特徴をご説明いたしましょう。まずは何と言ってもカナリアの名前を冠する金色の装甲、カナリア装甲ね! これはビームや|光《レーザー》、電気や熱、さらに魔力まで遮断する新素材を採用しているわ』
『ちょっと待て!? そんな新素材、|この世界《希望峰アース》のどの国も開発に成功したなどという報告はないぞ!』
 ドミニクの反論ももっともだ。そのような装甲が実用化され戦場に投入されれば、既存兵器は役にたたなくなってしまう。しかし、ドミニクの言葉に、水之江は平然と返す。
『あら、他のどこも開発に成功していないからこそ、カナリア装甲は画期的なんじゃない。疑うなら、実演してみせましょうか?』
『ああっと、桐嶋水之江さん、ヴォルテックス・セイバー軍団に向かってカナリアを棒立ちにさせました! これは攻撃してこいという意思表示でしょうか!』
 この水之江の行動には、希島未来科学研究所の研究員たちも激昂する。巨大スクリーンに映った老人たちは、顔を赤くしながらヴォルテックス・セイバー軍団に指示を下す。
『ええい、ヴォルテックス・セイバーたちよ! やってしまえぃっ! ヴォルテックスオーバードライブじゃ!』
『リョウカイ、シマシタ』
 AIが反応し――ヴォルテックス・セイバーにエネルギーが集中する。装甲表面に電撃を纏わせたヴォルテックス・セイバーたちは、一斉にそれを開放した。放たれた電撃の群れがカナリアへと向かっていき――。

 ――その電撃がカナリアの黄金色の装甲に当たると同時に霧散した。

『ヴォルテックス・セイバーのヴォルテックスオーバードライブ、カナリアに効きませんっ!』
『な、なんじゃとっ!? ヴォルテックスオーバードライブを受けて――無傷じゃというのかっ!?』
『ね、いかがかしら。このカナリア装甲。これによって防御力は大幅増強よ。――で、武器は火力重視の重装機ね』
 カナリアが左右の肩部から砲口を展開する。そこに荷電粒子の光が灯ったかと思うと、ヴォルテックス・セイバーに向けて発射された。
 左右の砲口から拡散するように飛翔したプラズマ粒子の流れが、ヴォルテックス・セイバー数機を貫通し沈黙させた。
『馬鹿な、わしらのヴォルテックス・セイバーが!?』
『これがBS-S可変速式メガビームキャノン。収束、速射、拡散のモード切替ができる便利な武器よ』
 一瞬のうちにヴォルテックス・セイバー軍団の半数を撃破した様子を見て、ドミニクが冷静に分析する。
『なるほど、機体コンセプトはカナリア装甲の防御力で敵の攻撃を耐え、荷電粒子砲の高火力により一気に敵を殲滅する――紫電重工の破天に近いものか。確かにヴォルテックス・セイバーでは相性が悪いだろうが、私のファルコンブレイズならば……』
『あら、それはどうかしらね? カナリアは重装備だけど――脚部スラスターと背部大型スラスターで機動力も確保してあるわ。こんな風に、ね』
 水之江の言葉と同時。カナリアの脚部スラスターと背部大型スラスターからプラズマジェットが吹き出した。浮き上がりホバー状態になったカナリアが、超高速でヴォルテックス・セイバーとの間合いを詰め――左腕をスパークさせながらヴォルテックス・セイバーのボディに拳を撃ち込み爆散させる。
『これがカナリアの機動力と、そして近接格闘用兵装のRX-Aプラズマガントレットね。あ、プラズマガントレットもカナリア装甲製だから、盾としても使えるわよ』
『馬鹿な、今の機動力――下手するとファルコンブレイズの飛行形態と同等だぞ――』
『ああ、もちろん、燃費の問題を解決するために、プロペラントタンクの増設で継戦能力も確保してあるわ』
『ちぃっ、桐嶋技研のキャバリアは化け物か――』
 ドミニクが黄金色のキャバリアを見て毒づく。

 だが、水之江のセールストークはまだ終わっていなかった。
『さーて、では特別に、カナリアの必殺武器をお披露目しましょう』

 カナリアは、残ったヴォルテックス・セイバー軍団に、右手に持った大型荷電粒子砲を向けた。その銃口からは、眩いばかりの荷電粒子の光が溢れ出ている。
『BSハイパーメガバスター。これは本来、対艦・対要塞用兵器だから、こんな場所で撃つものではないのだけれど――まあ、会場にはバリアも張ってあるみたいだから平気よね』
 さらっと言い、水之江はハイパーメガバスターの引き金を引いた。そこから放たれるのは、圧倒的な破壊のエネルギーの奔流。巻き込まれたヴォルテックス・セイバーたちは装甲が融解し、動力炉が誘爆し、機体が爆散していく。
 ――徐々に細くなっていったエネルギー流が完全に途絶えた時、カナリアの眼前には直線状に穿たれた溶融した地面と、射線上にいたヴォルテックス・セイバーが爆散した破片だけが残されていた。

『いかがかしら。今なら、カナリアは桐嶋技研で★1で販売中よ?』
 水之江の言葉と共に、巨大スクリーンに桐嶋技研の広告が大きく表示され――。

『しょ、勝者、桐嶋水之江さんのカナリアです!』
 司会の少女の声が希島バトルアリーナに響き渡った。

●エピローグ
 こうして、希島の文化祭におけるエースの祭典――|最新鋭キャバリア《クロムキャバリア》のお披露目を兼ねた模擬戦は終了した。
 希島未来科学研究所、サイバーウェーブ・エレクトロニクス、紫電重工にとっては課題の残る模擬戦だったかもしれないが、その最新鋭キャバリアをも上回る力を持つ|猟兵《希人》がいることを人々が知ることとなり、テロへの不安はある程度払拭された。
 文化祭の目標は達成されたと言えるだろう。

 だが、その裏で、新たな争いの種が芽生えようとしていることを、人々も――|猟兵《希人》たちもまだ気づいていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年08月14日


挿絵イラスト