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決戦都市と夏祭り

#ケルベロスディバイド #黄道神ゾディアック

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#ケルベロスディバイド
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#黄道神ゾディアック


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●日本某所、決戦都市
 人が道を埋め尽くし、始まったばかりの夏祭りは賑わいを見せていた。
 暮れゆく空には柔らかく月が差し込んでいる。浴衣姿の人々が笑い声を上げ、露店からは美味しそうな匂いが飄っていた。
 金魚すくいに興じる子供たちのはしゃぎ声。たこ焼きの焼ける音。リズミカルな太鼓の音色。響き渡れば、一層の高揚感を引き立てる。
 しかし、その和やかな空気が一変する瞬間が訪れた。突如、街中に警報音が鳴り響き、同時に地面から地響が聞こえだす。
 つい数秒前まで希望に満ちていたはずの街並みは、悲鳴と怒号に溢れかえった。

●グリモアベース
「皆、緊急通知だ。落ち着いて聞いて欲しい」
 赤褐色の狐、ピート・オルティース(賢獣・f40956)は静かな声音で猟兵達に言葉を続ける。
「世界はケルベロス・ディバイド。日本のある決戦都市が今、とある異形のドラゴンにより危機に陥ろうとしている」
 ドラゴンはデウスエクスの一種である。デウスエクスとは、地球を侵略し、グラビティ・チェインというエネルギーを奪おうとする不死存在。そして、彼らから世界の防衛戦を繰り広げているのは「ケルベロス」と呼ばれる超人集団だ。猟兵たちは、特務機関DIVIDEに所属するケルベロスとして戦うこととなる。
「幸い該当地域は『決戦都市』として整備されている。市民は動揺しながらも、機関主導で速やかに避難を完了させた。君たちの戦いに巻き込む心配はない。……思う存分、吹き荒れるといい」
 ピートの毛並みがふわりと揺れる。
「まずは侵攻軍の大多数を占める、屍隷兵『キョンシーガール』の部隊を相手して欲しい。格闘戦を得意とする彼女らは、至近距離で囲まれさえしなければ、大きな脅威にはならないだろう」
 勿論、油断は禁物であるが。
「そうしてキョンシーガールを蹴散らせば、しびれを切らした指揮官が君たちの前に現れるだろう。詳細は不明だが、予知からはそれが地中活動に特化したドラゴンであることは伺えた」
 そのため、地中からの不意討ちには十分に注意が必要となる。
「君達が望むなら、ケルベロス・ディバイドの世界では『決戦配備(ポジション)』の発動を要請する事ができる。さまざまな世界で激戦を繰り広げてきた猟兵の君達に、これは更なる力を与えてくれるだろう。十分に活用して、この強大な敵を打ち破って欲しい」
 それから、と。ピートはこうも付け加えた。ふわふわの口元に、小さく笑みを浮かべながら。
「また、もし君たちがよければだが……戦いの後は、ちょうどのこの日に予定されていた夏祭りを再開する事になりそうだ。……呑気だと思うか? どうも、この街の住民は逞しいらしい」
 感心したように一つ頷いてから、続きを述べた。
「彼らは瓦礫を踏み越えて神輿を担ぎ、笑って今日の苦しみを忘れようとする。よかったら、そこに君たちも加わってやってくれ」
 ケルベロスの存在は、そこに在るだけで民を励ます希望の光。祭に参加することもまた、十分な世界貢献となる。
 説明を終えると、ピートは足元にコロリと丸いグリモアを転がした。
「さあ、頑張ってほしい。君たちから武勇伝を聞くのを楽しみに、私はここで待とう」


野の道
 こんにちは、野の道です。
 初シナリオになります。よろしくお願いします。

 第1章は、屍隷兵『キョンシーガール』との集団戦です。
 第2章は、ドラゴン『地底潜航竜』とのボス戦です。

 そして、第3章。街は少し壊れてしまいましたが、なんと復興もそこそこに夏祭りが再開します。空元気でも、住民は明日を笑いたいようです。
 屋台の料理を食べ歩いたり、少しボロボロになってしまった出店で遊んだり、子供達と遊んだり、楽しく過ごしましょう。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『屍隷兵『キョンシーガール』』

POW   :    「ボコボコにするヨ」
【素手】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    「ギタギタにするヨ」
【正拳】【直蹴り】【回し蹴り】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ   :    「生き血を頂くヨ」
噛み付きが命中した部位を捕食し、【生命エネルギー】を得る。

イラスト:瀬崎小虎

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●暮れる街
 キョンシーガールは舌打ちをした。彼女の顔は童女のように愛らしかったが、その表情は逃げていった人々への苛立ちで醜く歪んでいた。
「逃げ足の早いヤツらヨ」
 避難の行動が確実に身についている決戦都市の住民は、彼女の出現とともに瞬く間に消えてしまった。
 彼女は苛立ちをぶつけるように、散らばった金魚屋台の跡を足で蹴り飛ばした。水槽は割れて空中を舞い、その中の金魚が絶望的にもがいていた。
ムゲン・ワールド
PBWアライアンスでの採用○

 口調はステータスシート参照。ただし、独り言やモノローグは本来の口調でお願いします。

 可愛い系の女の子型の敵との戦闘で使って下さい。(可愛い女の子と関わる日常や冒険でも構いません)
 守備範囲は年下か年下に見える子です。

 女の子(敵含む)相手の場合、バロンマスクは付けずに相対します。
 戦闘になったらつけます。

 基本的に表向き口調での口説きから入ります。
「可愛らしいお嬢さん、戦いなんてやめて踊りませんか?」
 受け入れてもらえたら、UCを発動して仕込み杖を蛇腹剣に変形させてリボンのように使って踊ります。
 相手を疲れさせたり、敵の注意を惹いたり、よしなに使ってください。

 断られた場合も同じくUC行使からの踊りながら攻撃を仕掛けます。
 口調も敵に対する本来の口調に変化

 もし相手が戦闘以外の何かに夢中になっているなら、公序良俗に反さない範囲でそれに乗っかります。

 その他、アイテムやUCは自由に使ってもらって構いません。
 女の子PCとの共闘とかに使ってくれても構いません。




 そのキョンシーガールの背に声をかけたのは、青い宝石のような飾りの杖を手にした少年――ムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)だった。
「こんばんは、可愛らしいお嬢さん」
 蕩けるように甘い顔立ちに浮かんだ柔らかな笑顔。戦闘中であることを忘れさせるかのようだ。キョンシーガールは一瞬だけ息を呑み、しかしすぐに無言で彼を睨みつけ、闘いの構えを取った。
「戦いなんてやめて、一緒に踊りませんか?」
「……何のつもりヨ」
 キョンシーガールは少し混乱した様子で彼を見つめたが、警戒態勢は解かない。
「ダメですか? 私は素敵なお嬢さんと甘い一時を過ごしたいだけなのですが――」
 ムゲンの手に持つ杖を掲げる。すると、瞬く間に蛇腹剣として変形したそれは、艷やかなリボンのように宙を舞い始めた。
「では、こちらからお誘いしましょう」
 彼は言いながら、美しくも激しい踊りを始めた。剣は壊れかけた祭提灯の灯りを静かに反射しながら、優美に彼の身体の周囲を揺れる。
 キョンシーガールは一瞬、その美しさに見入りそうになった。しかし、すぐに我に返り、拳を握って飛びかかる。
 ムゲンは踊りのステップを深めた。その動きは無駄がなく、芸術的。
「うるさい! ギタギタにするヨ!」
 唾を飛ばして叫びながら振り下ろされた拳を、ムゲンはそれをフワリと円を描く動きで躱した。狙いを外したキョンシーガールがたたらを踏む、その背を静かに見つめ、
「――そうか、そのように死に急ぐか。……残念だ、共に祭を過ごせればと思ったが」
 先程までとうって変わって冷徹に呟くと、今まで美しく揺れ動いていた剣を突然、鋭く繰り出した。
「!?」
 曲線から直線。静から動。その一撃は、すぐさま振り返って身を躱そうとしたはずのキョンシーガールのリズムを崩す。彼女の脇腹に血の華が咲いた。
「この――ヤロウ!」
「その言葉遣いでは、可愛らしい顔が台無しだ」
 キョンシーガールは激痛と、そして彼の余裕ある佇まいに激高した。だが、その攻撃はすべてムゲンの舞に飲まれていった。キョンシーガールの暴力的な動きとは対照的に、彼の動きは優雅であり、それでいて確実に彼女を追い詰めていく。
 最後に、ムゲンは高く跳ね上がり、剣を煌びやかに舞い上げる。そして次の瞬間、キョンシーガールの体を貫いた。
「終わりだ」
 キョンシーガールの体は灯りの消えた提灯のように地へと崩れ落ちる。
 ムゲンは静かに、その踊りの終焉を告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリエッタ・スノウ
んっ、ケルベロスとしての初の戦闘任務だね。
リリは戦うことしかできないから、お祭りを楽しみにしていた人のために、リリ、戦闘任務も頑張るよ。

敵は接近戦が得意なんだね。
それならリリの傍にくるまでにやっつけてやるよ。
それと決戦配備のクラッシャーで戦闘ロボ配備も要請しておくね。
リリと一緒にバンバン攻撃してもらうよ。

キョンシーガール達が現れたら【ストーム・バレット】でハチの巣にしてやる。
手足が届かない距離ならギタギタになんかされないもんね。

※アドリブ連携大歓迎



「んっ、ケルベロスとしての初の戦闘任務だね」
 リリエッタ・スノウ(シャドウエルフのガンスリンガー・f40953)は、頭の中に祭のイメージを思い浮かべた。遊び、笑い、無邪気に喜びを表現する人々の幸せな顔。
「リリは戦うことしかできないから、お祭りを楽しみにしていた人のために、リリ、頑張るよ」
 誓いを固めると、小さな体で一歩を踏み出す。
 そこではキョンシーガールの3体が、下品に騒ぎながら街の壁を殴りつけていた。その先に避難エリアがあるのか当てずっぽうなのかは分からない。だがはっきりしているのは、それらが倒すべき存在だということだ。
 やがてキョンシーガールたちもリリエッタの存在に気づいた。
「ケルベロスめ! ギタギタにするヨ」
 歪んだ笑みを唇に浮かべ、唾を飛ばす勢いで叫びながら突進してくるキョンシーガール達。
 彼女らの凶暴な眼差しとは対照的に、リリエッタの視線は冷静だ。敵が近づくその前に、全てを終わらせる――それが彼女の計画だった。
 彼女の手には二丁拳銃。「ストーム・バレット」により魔力の弾丸は無尽蔵に供給される。彼女は足を止めたまま、ただただ弾を一心不乱に放ち続けた。
「リリの攻撃は簡単には止まらないよ!」
 まずキョンシーガールの1体が、頭に直撃を受けてあっさりと崩れ落ちる。残り2体。
「来て」
 続いて、予め要請しておいたクラッシャーを呼び出し、戦闘ロボを展開する。そこからの銃撃が加わると、更に迫っていた1体も、暴風に吹き飛ばされるように弾け飛んで動かなくなった。
 残り1体。――怯む様子はない。彼女たちの間には連帯感など存在しないのだ。倒れた仲間に全く頓着せず、むしろ「この隙にケルベロスを殴り殺してやれる、ラッキーだ」とばかりに拳を握り固めた迫ってくる。
 それでも、リリエッタも一歩も退かない。
 連射がキョンシーガールを落とすが先か? それとも、拳という凶器がリリエッタの小さな身体を砕くのが先か? まるでチキンレースのようだが、彼女に躊躇いはなかった。
「……零距離、だね」
 振りかざした拳がリリエッタの鼻先数センチに迫った瞬間さえ、彼女は微動だにしなかった。その高速連射を途切れさせない事が、彼女の何よりの武器であり守護であると理解していたから。
「ち、クショ……っ」
 至近距離から胸を撃たれたキョンシーガールは、ついにリリエッタに攻撃を加えることが叶わなかった。血に濡れた手の平を、恨みがましくリリエッタの頬に一瞬触れさせ――そのまま、まるで人形が糸を切られたかのようにゆっくりと崩れ落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミルケン・ピーチ(サポート)
『ミルケンピーチ、参上!』

常識的だけどやられ属性の17歳の桃姫、無邪気で元気な6歳のぺしぇ、体育会系褐色ギャルのアカリの三人のボディの内依頼に合わせた誰かで出撃
口調は
『桃姫:私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?』
『ぺしぇ:自分の名前、くん、ちゃん、だよ』
『アカリ:あたし、相手の名前+ちゃん、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?』
マスクのミルケンはほぼ喋りません

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません

公序良俗に反する行動はそういう依頼でない限りしません
後はお任せ、よろしくお願いします!




 暮れゆく空から光を受け、ぼうと輝くゴーグルマスク。その名はミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)という。
 小さなぺしぇを通した視界の奥では、今まさにキョンシーガールの一体が踊りかかろうとしているところだった。
「こんな子供が、戦場にのこのこ来てんじゃねーヨ」
 しかし彼女は嘲弄に動じることなく、元気いっぱいな声で答える。
「子供じゃないよ? ぺしぇはミルケンピーチだよ!」
「意味が分からないヨ――!」
 正拳、直蹴り、回し蹴り。連続した蹴りがぺしぇに迫る。それは変幻自在の連撃で、狡猾さと危険さを内包していた。幼い体に次々と、痛々しい痣が刻まれていく。
 しかし、ぺしぇは――ミルケンピーチは、ただの6歳の子供ではない。彼女は正義の魔法少女である。
「ご褒美あげるから手伝って! ライディングピーチ!」
 高らかに叫んだ瞬間、どこからともなく現れたのは恐竜。驚いたキョンシーガールの狙いが逸れた隙に、ミルケンピーチは恐竜の背に飛び乗った。
 途端、戦況は劇的に変わる。恐竜の巨大な体躯は、圧倒的な存在感を誇る。それはただの怪獣ではなく、希望を背負った無敵の騎士。その膂力はキョンシーガールを圧倒し、また、丈夫な皮膚は激しい連撃を防ぎ止める堅固な壁となる。
 ミルケンピーチと恐竜が共に反撃を開始する。何度打たれても倒れず、恐竜は力強く爪を振るい、巨体を使って体当たりを繰り出す。キョンシーガールは何度も後退を強いられた。
 ついには、恐竜の獰猛な一撃がキョンシーガールの腹のど真ん中に命中した。轟音を立てて、その身体は軽々と近くの建物に叩きつけられた。
「おしまいだよ、キョンシーガールちゃん!」
 壁際で身動きの取れないその身体に、とどめの体当たりが突き刺さる。容赦ない圧潰。声をあげる間もなく、キョンシーガールは絶命した。
 ミルケンピーチは恐竜に乗ったまま、高らかに告げた。
「正義の魔法少女、ミルケンピーチ! 勝ったよ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ヨランド・ジラール
侵略者に脅かされた世界を守るため騎兵として助太刀するであります!

敵は見た目とは違い性質は凶悪なようでありますが、突撃にて敵軍団を粉砕してみせましょう!

敵軍に対して煙幕をばらまいて視界を閉ざして欲しいとジャマーの発動を要請したら準備完了。
UCにより創造した騎兵槍を構えて突撃を敢行します!
素手の歩兵で槍騎兵の突撃を止められるものか!立ち塞がるなら纏めて蹂躙するのみであります!

視界が潰されたとなればそちらは連携もできないでしょうが、こちらはただ一直線に突き進むのみなので問題はないであります!

敵を粉砕するまで何度でも!何度でも!何度でも!突撃を続けましょう!

蹂躙突撃用意!突撃!突撃!!突撃!!!




 ヨランド・ジラール(突撃剣士・f39978)と獣のような眼光を放つキョンシーガールの一群。彼女達は、震える空気を挟んで対峙する。
「侵略者に脅かされた街は、必ず守るであります!」
「守る? はっ、この数に勝てると思ってんのかヨ」
 キョンシーガール達は嘲笑と共に、ジリリと包囲網を形成しようとしていた。だが、ヨランドは一切の恐れをその瞳に映すことなく、ただその瞬間を待っていた。
 キョンシーガール達はその様子を僅かに訝しんだが、やがて数の利に任せて攻め込むことを選択した。
「行くヨ!」
 彼女たちが一斉に飛びかかろうとしたちょうどその時、コロリと軽い音と共に、足元へ転がったのは発煙筒。
「!?」
 決戦配備による妨害兵器である。煙は瞬く間に立ち上り、敵の視界を塞いでいった。
 同時にヨランドも行動を開始した。手にするのは、想像から創造した無敵の騎兵槍。その輝きは周囲を照らし、戦場の空気を引き締める。
「突撃!!!」
 一声。声が轟いた次の瞬間、ヨランドはもう敵陣の中心を駆け抜けていた。その澄み切った鋭利な突進に、キョンシーガール達は驚愕した。
「早い!?」
 視界が潰された彼女達は十分に連携を取ることもできず、もはや包囲するどころではない。
 無論、視界不良はヨランドも同様である。しかし彼女の戦術はシンプルに「信じて、一直線に突き進む」事を繰り返すのみ。煙など気に留めない。
「立ち塞がるなら纏めて蹂躙するのみであります!」
 キョンシーガール達は動揺しながらも、音を頼りに蹴りや拳を振るった。全くそれは命中しないという訳ではない。そのうち一つは頭部を掠めたのか、気づけばヨランドの視界の左半分が赤く染まっていた。
 しかし、その出血も彼女は気に留めない。ひたすらに槍を手に突き進み、突き崩し、蹂躙する。
 その勇猛さに敵は動揺し、次第に防御に専念せざるを得なくなっていった。
「敵を粉砕するまで何度でも! 何度でも! 何度でも!」
 キョンシーガールの一体が貫かれる。
 間を置かず、また別の一体が撥ね飛ばされ、動かなくなる。
「突撃! 突撃!! 突撃!!!」
 ヨランドの叫びが街を揺らす。鬼気迫るその声音は、彼女の勇気と信念の証。
「ひっ」
 覆された数の有利を前に、キョンシーガールは今更ながら侮ってはいけない相手を侮ったことを悟った。だが、もう流れは止められない。
 程なくして、戦場に立っているのはヨランドのみとなっていた。
「蹂躙完了、であります!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『地底潜航竜』

POW   :    削岩牙
自身の【竜気】を籠めた【牙】を用い、通常移動と同速度で地中を掘り進む事ができる。装甲破壊にも使用可能。
SPD   :    溶解小顎群
【全身から生える小さな首】を向けた対象に、【吐き出した溶解液】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    硬化液噴出
【硬化液】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【自身への恐怖もしくは憎悪】を誘発する効果」を付与する。

イラスト:佐々木なの

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●日は沈む
 猟兵達がキョンシーガールの集団を一掃したその時、地中深くから突如として轟音が上がった。
 敵の名は『地底潜航竜』。蛇の如くしなやかな巨体を持つ、異形のドラゴン。それは今、地の底を無惨に掘り進めながら、そして聞く者すべてを震え上がらせるような唸り声を響かせながら、猟兵達を滅ぼさんと狙いを定めていた。
六島・風音(サポート)
ガレオノイドのスターライダーです。
スピードなら誰にも負けません。

基本的に人の話を聞かず、スピード勝負に持ち込みます。
そんなことより駆けっこです。
普通に駆けるか、天使核ロケットエンジン搭載の宇宙バイクで駆けるか、ガレオン船形態で駆けるかは状況によります。

ユーベルコードは使えそうなものはどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


メメ・スカルリリー(サポート)
〇人間の魔女×闇医者、女です。
普段の口調は(自分の名前、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)です。
戦闘時の口調は(自分の名前、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、かしら?)です。
「メメ、あなたのお手伝いをしたいの。本当よ?」

ぼんやり・のんびりした性格の幼い魔女です。
口数は少なめです。
巨大なハサミと魔法で戦います。
また、医術でサポートしたりします。

〇ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!(アドリブ・連携 歓迎)



 地下深くから低い轟音が響き渡る。それは地底潜航竜が地中を這い回る音。地を削る鈍い音と、その度に伝わる振動は、まるで地下深くで進行する無数の掘削機のようだった。 
 六島・風音(スピードなら誰にも負けません・f34152)の細い唇に微かな笑みが漂う。
「そうやって準備運動してるってことはつまり、」
 彼女は天使核ロケットエンジン搭載の宇宙バイク「ムゼカマシン」に跨り、地震に満ちた表情で叫んだ。

「――かけっこしたいんですね! 負けませんよ?」

 ……居合わせた猟兵達が一様に「えっ?」という表情を浮かべたが、風音は全く聞いていない。
 風音はバイクごとフワリと浮遊すると、フルスロットルで突き進んだ。
 街というのは本来かけっこに向く環境ではない。だが、飛んでしまえばあまり関係はない。
 走る道筋はひとつの直線。風が彼女の髪や耳を後ろになびかせる。爆発めいたスピードは、彼女をまるで流星のように見せていた。先程疑問符を浮かべていた猟兵達も思わず感嘆の声をあげる。
 そしてほどなくして地中の轟音が大きく、近くなる。なんと地底潜航竜が、まるで挑戦に応じるかのように、勢いよく地上に躍り出たのだ。
 これは決して竜の酔狂などではなく、ユーベルコードの効果である。彼女が『非戦闘行為――かけっこに没頭している間、敵味方全ての戦闘行為が非戦闘行為――かけっこと化する』。それは、書き換えられた世界の法則。
 地底潜航竜は本質的に地中を這い回る存在だが、地上での行動も不得手ではない。その証明とばかりに、竜は荒々しく進行を開始した。巨体は大通りに満ち、移動だけで幾つかもの屋台を粉砕する。蛇が地を這うかのように素早く確実に、風音との距離を縮めていく。
 風音がニィ、と更に笑みを深めた。
「面白くなってきたね!」
 かけっこのゴールは自然、この大通りの終端に設定された。
 両者は一歩も譲らず、一心に駆け抜けた。彼女と竜、二つの弾丸が互いに熱を帯びながら疾走する。
 そしてついに訪れた競争の結末。狭い大通りの終端、そこに待ち構える壁に最初に辿り着いたのは――風音!
「私の勝ち!」
 風音が勝利を喜ぶと同時に、その場に静かに佇んでいた先客が動きを見せた。その先客は幼き魔女メメ・スカルリリー(白百合の魔女・f39414)。彼女は風音の脇をすり抜けて前に出た。そしてゴールインを果たして術から解放された地底潜航竜が我に返り、動きを止めたその瞬間を見計らい、竜の巨体の側で足を止めた。
「あなたの負け?」
 メメは無垢な瞳を竜に向け、小首をかしげた。幼い仕草。竜へと手を伸ばすその動作は、まるで野原で花を摘む子供のようだった。
 しかし、その手に宿る力は単なる子供のものではない。
「大丈夫よ、元気を出して」
 メメの手の平が竜の硬い表皮に触れると、微かに輝く魔力がその手から滲み出し、竜へと流れ込んだ。触れた瞬間から竜の身体が揺らぎ始め、その震えが全身へと広がっていく。それはまるで生命力そのものが奪われるかのようだった。魔力の流れは止まることなく、竜のエネルギーは急速に剥がれ落ちていった。メメの攻撃は静かながら、確実に竜を衰弱させていった。
 だが、敵もただ黙ってエネルギーを奪われている訳では無い。自らを無防備にも地上へ引きずり出した奇妙な競争、そして、何故か力を奪われる不可解な状況。憎しみを募らせ、竜は唸り声を咆哮へと変えた。
 竜は全身に硬化液を纏うと、自らの力を強化。そして全身から生える小さな首から溶解液を振りまき、全力で抵抗した。
 メメと風音は溶解液によって少なからずダメージを受けた。両者は目配せすると、一旦後退して立て直すことにした。
 
 戦いはまだ、これからだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ムゲン・ワールド
アドリブ連携歓迎
決戦配備:ディフェンダー

 可愛い女の子に釣られてきたとはいえ、この世界ではケルベロスとして歓迎されているようだし、仕事は最後までこなすとしよう。
 まずは決戦配備とやらを申請しよう。私達の世界(シルバーレイン)で銀誓館が戦争時に使っていたものに名前が似ているて当時を思い出すな。

 バリケードや障壁を利用して強化された攻撃を回避し、直視を避けつつ【狂気耐性】【呪詛耐性】で恐怖に負けないように。
 【目立たない】ように姿を隠して死角から接近。
 仕込み杖を抜いてUCで【不意打ち】
 強化状態だから石化するはずだな
「悪いね、恐怖の扱いは私も得意なんだ。石の中で、私の|恐怖《悪夢》を感じて眠れ」


ヨランド・ジラール
例え強大な竜が相手であろうと、斬り捨ててみせます!

地中に潜航している敵となると、攻撃のチャンスは一瞬でしょう。その一瞬の機会をものとするように戦っていくであります!

戦闘ヘリ配備のジャマーを要請し、空中で敵を待ち構えましょう。
地中から襲いかかってくる敵が相手であれば、地面で待つより空で待ち構えたほうが攻撃がしやすそうであります。

空中のヘリ目掛けて敵が飛び出してきたらその時が好機であります。
ヘリに飛び降りつつUCを発動!
ヘリのパイロットには私が飛び降りたら急上昇しつつそのまま戦場から退避するように伝えておけば大丈夫でしょうし、敵の撃破に集中して斬撃を繰り出します!

この機会は逃さない!チェストォ!


リリエッタ・スノウ
むぅ、ドラゴン大きいね。
けど、それならリリはスピードでかく乱していくよ。

決戦配備はスナイパーを要請。遠距離からミサイルを撃ってもらって援護してもらうね。
戦場を掛けながら、全身から生える小さな首を狙って銃弾を浴びせていくよ。
んっ、リリの拳銃じゃ体表は貫けないかもしれないけど、柔らかそうな口の中なら通じるよね。
攻撃を避けながら【ストーム・バレット】の効果時間の間撃ち続けてやるよ!

※アドリブ連携大歓迎



 溶解液を振りまいた竜は、猟兵達を討ち滅ぼすべく再び地中に身を隠した。
 地の底から響く断続的な重低音が、街の空気を揺らしていく。
 ムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)とリリエッタ・スノウ(シャドウエルフのガンスリンガー・f40953)は、気配を悟らせぬよう呼吸すら最低限にして、静かに建物の側で身を潜めていた。
 二人は事前に打ち合わせた通り、その機を待っていた。
(……!!)
 やがて、その時はやって来た。街の空気を切り裂くように、響き渡るプロペラ音。決戦配備「ジャマー」による戦闘ヘリの接近である。
 その音は、地中に潜む竜からすれば微細だった。しかし竜の鋭敏な聴覚は、それを確かに捉えていた。
 途端、竜は一気に地上まで掘りぬくと上空へ翔び、ヘリに食らいつこうとした。それはミサイルのようなスピードで、ヘリは一瞬で破壊されそうになる。
 だが、その危険な瞬間に――
「――この機会は逃さない!」
 ヨランド・ジラール(突撃剣士・f39978)の叫びとともに、ヘリは急上昇を始め、事前の指示に従って縦に跳ね上がるように離脱した。
 同時にヨランドは準備していた行動に出る。身を躍らせて宙へと飛び出し、風に身を任せたのだ。
 ヨランドは空中という無防備な領域で、躊躇わず竜騎兵サーベルを手に竜に挑む。彼女の身体からは強烈なオーラが放たれ、まるで白銀の彗星のように、鮮やかな軌跡を描いて竜を貫こうとした。
「チェストォ!!」
 彼女の声が空を裂いた。
 次の瞬間、振り下ろされた剣は竜の身体を大きく縦に裂いていた。声は竜の痛烈な悲鳴と混ざり合い、ビリビリと空気を震わせた。
「作戦は成功であります!」
 そして暴れ、血を撒き散らす竜の側に、剣撃で何とか勢いを殺したヨランドが墜落――いや、着地した。
 ……無茶も良い所である。竜の大口と正面からぶつかりあったせいで、その肢体もまた酷く傷ついている。
 それでも役目は果たしたと、彼女は満足げに笑う。
 そんな彼女を竜は憎らしげに睨みつけると、息の根を止めるべく追撃を加えようとした。だが、それは叶わない。
 死角から動き出していたムゲンが、仕込み杖で竜の身体を突き刺していたのだ。
「悪いね、恐怖の扱いは私も得意なんだ」
 冷静に言い放つ、彼の得物は細い。竜の巨体に比して、あまりにか細い杖である。竜はそれを見て取ると、即座に硬化液を噴出した。そうすれば、その杖は硬化した皮膚にさしたるダメージを与えることもできないと考えていた。
 しかし、その判断は誤っている。
「石の中で、私の|恐怖《悪夢》を感じて眠れ」
 その杖は、チクリと先端が差し込まれるだけで十分である。竜の身体が震え始めた。
 杖が送り込むのは、悪夢の力。――星が。消える。枯れ果てる。それは、デウスエクスの誰もが抱く根源的な悪夢。その恐怖が精神を揺さぶり、竜の身体を石のように変質させていった。
 竜もまた硬化液の力でムゲンに恐怖を与えようとはしているが、あまり成果をあげることはできていない。ムゲンは、悪夢の発現を確認するとすぐに離脱し、ディフェンダーとして喚び出しておいた障壁に身を隠していたのだ。直視しないこと、そして、暗殺者としての自身が持つ狂気と呪詛への耐性により、彼は竜が与える恐怖に十分対抗することができた。
 また一方で、リリエッタは竜の周囲を走り回る小さな影と化していた。
「むぅ、ドラゴン大きいね」
 リリエッタが竜を見上げる。しかし彼女の声には、怯えも畏怖もない。挑発すら感じさせるその言葉と同時に、彼女の小さな体躯は竜の周囲を不規則に走り回る。
「……リリの拳銃じゃ体表は貫けない」
 あくまで冷静に、彼女は戦況を見つめる。その声には確信が滲んでいた。竜の防御は厳重だ。
 しかし、それには例外がある。
「でも、柔らかそうな口の中なら通じるよね」
 それが、彼女の答えだった。
 ムゲンの悪夢により「石化」の呪詛を与えられた竜は、自然、全身から生える小さな首からの溶解液の射出に攻撃を頼る事となる。その瞬間を狙って、リリエッタは無防備に開かれた大量の口を次々と血で染め上げていた。
 竜の様相が次第に痛みで歪む。悔しげに攻撃を中断し、口を閉じる竜。だが、そこに要請した遠距離ミサイルの援護も加われば、全てを防ぎきる事は不可能だった。
 竜は今まで感じたことのない恐怖と痛みを味わっていた。それは、三人の連携によってもたらされたものだ。戦いの流れは、完全に猟兵たちのものとなっていた。
 気づけばリリエッタは、竜の正面に回っていた。
「これで、おしまい」
 銃声が響く。その銃弾は竜の一番大きな「正面の口元」に飛び込んでいった。
 嵐のように連射されていた銃声が止まった。……もう撃つ必要は、ない。
 一拍置いて、竜は地鳴りをあげて大地に崩れ落ちた。その唸り声は暫く大きくなったり弱くなったりを繰り返していたが、やがて静かに音を無くしていった。
「んっ。……お疲れ様」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ケルベロス町会議』

POW   :    お祭りの料理を食べ歩く

SPD   :    お祭りのアトラクションで遊ぶ

WIZ   :    子供達と交流し、プレゼントを交換する

イラスト:del

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「あーあ、これは酷い!」
 地表は壊され、地中もボロボロ。特務機関DIVIDEの職員達が、困り果てた表情で頭を掻く。
「本当にこの状態で、お祭りの続きをするんですか?」
 居並ぶ街の人々は即座に頷いた。その頷き方を見るに、彼らは一歩も譲る気がなさそうだ。
 ……つまるところ、なぜこんなにも彼らが「避難慣れしていた」のかという話である。
 実は去年の祭のこの日も、今日と同じようにこの街は襲撃を受けていた。
 去年はそのせいで祭は中止になった。
 だから、今年はやりたいのだ。
 絶対に、やりたい。
「仕方ないですね」
 職員は苦笑すると、竜がボロボロにしてしまった区画にだけKEEP OUTの印をつける事にした。猟兵達が手早く敵を倒してくれたので、街の全域に侵攻を許したという訳ではないのだ。問題ないだろう。
 街の人々は大喜びで、壊れた屋台を補修しにかかった。


 少し壊れた、夜の街並み。
 本当ならもう夏祭りは終わっている時間だが、仕方がない。子どもたちにも今日は少しだけ、夜更かしを許そう。
 露店からは美味しそうな匂いが漂う。リズミカルな太鼓の音色が響く。
 神輿は少し割れてしまったが、神も今回ばかりは多めにみてくれるだろう。 

 祭を「ケルベロス」の皆が一緒に楽しんでくれれば、こんなに彼らにとって励まされる事はない。
ムゲン・ワールド
 夏祭りか。
 こんなにも襲撃が日常茶飯事なのに、……いや、だからこそ、か。この世界の人達は強いな。

 まぁさて、せっかくのお祭りだし、莉出瑠(元使役ゴーストな猟兵。ムゲンの事が好きで嫉妬深い)もいない事だし、ナンパでもしますかね。

「可愛らしいお嬢さん、良ければ一緒にお祭りをまわって食べ歩きと行きませんか? 奢りますよ」
 狙い目は同年代の高校生くらいだな。こちらも銀誓館学園高等部の制服を着ているし、過度に警戒される可能性も低いだろう。
 ナンパは根気だ。のんびり探そう。

 成功したら宣言通り奢ってあげてのんびり食べ歩きでもしよう。
 相手が帰りたくなったら強くは引き止めず見送ろう。退き際が大事だ。


リリエッタ・スノウ
これがみんなが楽しみにしていたお祭り、なんだね。
むぅ、なんだか人がいっぱい。

んんっ、リリのことを迷子だって勘違いした人がいたけど、
リリがケルベロスって知ってる人がいて助かったよ。
その後も祭りの楽しみ方がわからず、とりあえず適当に歩き回ってみてるよ。
うろうろしていたら雲を売ってるお店が……むぅ、雲を売ってるなんてすごいね。
これ、わたあめって食べ物なんだね。リリ、初めてみたよ。
街を守ったお礼に一袋もらったけど……甘くて美味しくてびっくりしたよ。(ただし無表情)

※アドリブ連携大歓迎


ヨランド・ジラール
無事にお祭りが開催できて何よりであります!
デウスエクスは撃退できましたので、お祭りを楽しむであります!

それにしても、露店には色々と見慣れぬものが並んでいたり、太鼓のリズムに合わせて踊っていたりと、日本のお祭りというのは興味深いものがありますな。

とりあえず、露店に並んでいるものの中でも特に気になったりんご飴なるものを購入してみましょう。
何やら甘そうでありますし、戦いの後にはぴったりな一品であります!

……私の故郷である獣人戦線で幻朧帝国に住んでいたという師匠もこの様な光景の中で育ったのかもしれないと思うと何やら感慨深いものがあります。

「折角の機会ですし、お祭りを満喫するであります!」




 当たり前のように襲撃が訪れ、生活に困難さがつきまとうこの世界。それでも、人々は力強く『普通の日常』を繋ぎ止めていた。彼らの強さ、生きるための闘志に、ムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)は敬意を感じた。
(この世界の人達は、強いな)
 ……さて。そんな彼らと繋いだ祭。その風情を一人で楽しむのもまた一興ではあるが――ムゲンはふっと微笑んだ。
 莉出瑠がいない今、ナンパには最適な環境である。
 屋台の並ぶ通りをしばらく歩くと、彼はある女性を見つけた。高校の物らしき制服を身に纏った彼女は、落ちていた大きめの瓦礫片に気づいていないようだった。声をかける間もなく、彼女が足を滑らせる。ムゲンは風のようにすばやく近づくと、彼女の手をしっかりと掴んだ。
「大丈夫ですか?」
 ムゲンは優しげに笑いかけた。彼女の顔が驚きと共に紅潮する。
「あ、ありがとう……ございます……!」
「気になさらず」
 事故とは言え見目麗しい青年に手を握られ、彼女の顔はすっかり動揺している様子。ムゲンはこれは、と畳み掛ける。
「それより、可愛らしいお嬢さん」
 祭の街並みにチラリと目をやり、
「良ければ一緒に食べ歩きでもしませんか? 一人で回るのは、退屈でして」
 彼もまた、身に纏うのは銀誓館学園の制服。同年代である分、警戒心は幾分か和らぐ。そして何より、
「えっ。もしかして……ケルベロスの人ですか!?」
 彼女は気づいて、大きく目を見開いた。
「おや、バレてしまいましたか」
 ムゲンは軽やかに笑うと、少し茶目っ気の滲む仕草で肩をすくめた。
 ――ケルベロス・ディバイドの市民は一丸となってケルベロスを応援する。恐らく、避難所では何らかの監視映像などを通して戦闘の様子が映されていて、それで彼女はムゲンの顔を知っているのだろう。……本当に、この世界の住民は逞しい。
「わーーっ!! はいっ、ぜひご一緒させてください!! あ、写真撮っていいですか!? サインも!!」
「えぇ、喜んで」
 途端に興奮する彼女に、ムゲンは快諾した。もはやデートというより、道でアイドルと遭遇したかのような雰囲気にはなってしまいはしたが――
 夜空の下、提灯の輝きを背景に、スマートフォンのフラッシュが彼らを照らす。ムゲンの柔らかな笑顔と、女性の輝く笑顔が記録された。それは幸福で、希望に溢れた笑顔だった。


「これがみんなが楽しみにしていたお祭り、なんだね。むぅ、なんだか人がいっぱい」
 辺りを見回したリリエッタ・スノウ(シャドウエルフのガンスリンガー・f40953)は、小さく呟いた。その姿は無表情ながらも、視線をキョロキョロとせわしなく動かす様子から、彼女の内心の驚きと好奇心が伺えた。露店がびっしりと並び、そこで多種多様な食べ物を味わう人々の満足げな表情が、彼女の興味を掻き立てる。
 ……余談だが、このキョロキョロするリリエッタの姿が小さな迷子のように見えたのか、つい数分前に危うく迷子集合所に強制連行される所だった。通りすがりの女子高生が「きゃーーっ、こっちにもケルベロスの人ーーーっ!?」と大声で騒いでくれなければ、危うくリリエッタのお祭りはそこで終了してしまう所だった。
 閑話休題。
 あまりこの手の行事に慣れていないリリエッタは、とりあえず適当に歩き回ってみていた。
 すると、一つの屋台が彼女の目を惹いた。ふわふわの羊のような塊。近づけば、漂う甘い香り。
「むぅ、雲を売ってるなんてすごいね」
 塊をじっと見て、呟く。
 店主の青年は、そんな彼女の無垢な様子に頬を緩ませた。
「これは『わたあめ』って食べ物だよ。甘くて、口の中ですぐ溶けるんだ。……食べたことがないのかい?」
 リエッタは静かに頷く。
「……リリ、初めて見たよ」
 すると青年は、わたあめの機械の中にザラメを投入し、スイッチを入れた。ふわりと浮いた砂糖の糸が、瞬く間に割り箸の周りを覆い始める。どんどん供給されるその糸は、まるで魔法のようだった。
 青年は、完成したそれを彼女に手渡した。
「はい、どうぞ」
「んっ。……お金は」
「構わないよ」
 青年は屋台の外へ出てくると、リリエッタに目線を合わせ、柔らかく微笑んだ。
「これは街を守ってくれたお礼だから。……小さな身体で頑張ってくれて、本当にありがとう」
「……」
 リリエッタは、突如として贈られた感謝の言葉に、少しばかり戸惑った。戸惑ううちに、「ほら、食べてみて」と促され、促されるままその『わたあめ』を口に運んだ。
 その瞬間、その甘さと独特の食感に彼女は驚いた。
「どう?」
「……甘くて美味しくて、びっくりしたよ」
 その表情は相変わらずの無表情だったが、彼女の目には紛れもなく満足感が輝いていた。
 青年の顔に、彼女の感想を聞いて満足したような、優しい微笑みが浮かんだ。


「無事にお祭りが開催できて何よりであります!」
 ヨランド・ジラール(突撃剣士・f39978)の声高な喜びが、祭りの賑やかな空気に溶けていった。彼女の胸は、厳しい戦いを経て得た勝利への歓喜と、高揚で満ちていた。
 満足げに街を見渡す。
 ――傷ついている。壊されている。けれど確かに『生きている』。
 さあ、楽しもう。我々の守った、この幸せな祭を!
 ヨランドが賑やかな露店が立ち並ぶ通りを歩くと、夜風に舞う色とりどりの飾り布、焼き物の匂い、甘いアイスクリームの香りが次々と彼女の感覚を刺激した。そして様々な出店が並ぶ中で、一つの店が特に彼女の目を引いた。
「何やら甘そうでありますし、戦いの後にはぴったりな一品であります!」
 店主に尋ねると、それは『りんご飴』というものだと教えてくれた。鮮やかな色彩と甘いの香りに誘われたヨランドはそれを一つ購入し、その場で齧り付いた。甘さは予想通りだったが、その中に瑞々しい果実の酸味と爽やかさが絶妙に混ざり合い、豊かな味わいを醸し出していた。
 美味しい。角砂糖とはまた違うけれど、これは美味しい物だ。
「……」
 ぱっくりと噛み跡のついたりんご飴を見つめていると、ふとヨランドの心に浮かび上がる姿があった。
 それは師の姿。彼女の故郷である獣人戦線で、師は幻朧帝国に住んでいた。……師も、このような光景の中で育ったのだろうか?
 咀嚼する。
(師匠も、こんな風に甘く、不思議な果実に頬を緩ませたのでありますか?)
 耳を澄ませる。
(師匠も、こんな風に腹に響くような太鼓の音を聞いたでありますか?)
 見上げる。
(師匠も、こんな風に懸命に神輿を担ぐ皆を、笑って眺めたでありますか……?)
 想像して、ヨランドの心は何とも言えない感慨深さを覚えていた。
 ――どれくらいの間、そうしていただろうか。やがて彼女は首を振る。感傷に浸るべき時は、きっと今ではない。
「折角の機会ですし、お祭りを満喫するであります!」
 ヨランドは残るりんご飴を一気に齧り取って噛み砕くと、再び夏祭りの夜の楽しみに身を委ねた。彼女の心は見知らぬ景色と師匠への想い、そして一層の盛り上がりを見せる祭りへの期待で溢れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年07月17日


挿絵イラスト