【決戦】海を統べる者と飢餓に狂える滅びの星
●飢餓に狂える滅びの星
グリードオーシャン・キャプテンレイジャック島。ここはかつて、恐らくは他の島々と同じく、生命に溢れる楽園だったのだろう。しかし、今は見る影もなく荒れ果てている。空に浮かぶ、禍々しき怪物の邪気に当てられ、生命は全て死に絶えてしまった。今やこの島に在る生命体は破滅の先触れたる、二体のオブリビオンだけだ。
「ふしゅぅるるるるるる……」
「もうちょっと待って欲しかったけど、ぎりぎり間に合ったかな☆」
岩だけが広がる原初の地球のような姿となった島にて、女は笑っていた。女が見上げている空に在るのは、飢餓に狂える滅びの星にして、全ての猟兵に災厄を招く兵器、その名も『骸の月を喰らう月』である。
「グリモア、グリモアの匂いだぁ……! グリモアを使うやつ、ゼンブコロしてヤル……!」
「こんにちは~☆ ザンギャバスさん☆ もう少しで儀式が終わるので~☆ あと少しの間だけ、辛抱してくださいね~☆」
空に浮かびながら凄まじい殺気をまき散らしているのは、かつて七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス大帝と呼ばれたオブリビオンだ。『羅針盤戦争』において『無敵』と謳われ、猟兵ですらも骸の海に叩き落とすことは叶わず、撤退に追い込むのがやっとだった最強のオブリビオンは、『海を統べる者』レディ・オーシャンの魔力によりさらに禍々しい存在へと変態を遂げようとしていた。
「グリモア、コロス! 猟兵、ブッコロス! ナニもかも、皆殺しダア!」
「ええ、きっとできちゃいますよん☆ 無事に『骸の月を喰らう月』になれたら~☆ わたしと一緒に~|グリモアベース《猟兵さんのおうち》に、遊びに行きましょうね☆」
●グリモアベースにて
「みんな、大変だ! レディ・オーシャンが|此処《グリモアベース》に来ようとしているよ!」
グリモア猟兵、シスカはみかん箱に乗り、大声を張り上げた。聞き覚えのある者の名を聞き、猟兵達は足を止める。レディ・オーシャン。その女は幾度も猟兵と矛を交えながらも、未だに滅びを免れている謎多き存在であった。
「レディ・オーシャンについてよく知らない人もいるだろうから、ちょっとだけ説明しておくね。レディ・オーシャンが最初にボク達猟兵の前に姿を現したのは、3年前。|アースクライシス2019《ヒーローズアース世界の大戦》の時だ。彼女はオブリビオン軍団の幹部『ジェネシス・エイト』の一人として姿を現した」
レディ・オーシャンはヒーローズアース世界の神話に名を刻む『悪神』の一人である。『海を統べる者』と呼ばれた彼女は、かつて「|大海嘯《だいかいしょう》」で一度世界を滅ぼし、ジャスティス・ウォーでも最大最悪の被害を|齎《もたら》したとされています。だが、ヒーローズアース世界の星の内側に棲む神々でさえも、レディ・オーシャンがいつ、どこから来たのか知らないのだという。
「世界を滅ぼせるほどの力を持ちながら、レディ・オーシャンは自分は|王《オブリビオン・フォーミュラ》にはならず、『クライング・ジェネシス』の協力者の一人として振舞っていた。そして、あの戦いで彼女は滅びることなく、大戦を生き延びた」
ヒーローズアース世界における復活したヴィラン達と猟兵の戦いは熾烈を極めた。結果は猟兵の勝利だったが、完全勝利とまではいかず、『ジェネシス・エイト』の内の二人を討ち漏らしてしまったのだ。
「そして、次にレディ・オーシャンが出現したのは、『サムライエンパイア』。すでに戦争が終わって、平和になったサムライの世界に彼女はやってきたんだ」
オブリビオンは通常、猟兵のように世界を渡ることはできない。何体かの例外は確認されているものの、それが原則だ。猟兵のように世界を移動できるレディ・オーシャンは、極めて異質な存在と言える。
「えーと、猟書家とか、他にもレディ・オーシャン絡みの事件はあるんだけど、前置きはこれぐらいにしておくね。今回問題なのは、どこかの世界に隠れていたレディ・オーシャンが、|この世界《グリモアベース》への転移を企んでいることだ」
レディ・オーシャンは世界を渡ることができる。そして、その力を使い、猟兵達の本拠地であるグリモアベースへの侵略を企てている……それは、恐るべきことであった。グリモアベースが破壊されてしまえば、猟兵はもはや他の世界に渡ることができなくなり、36の世界は全て骸の海に呑まれてしまうだろう。
「つまり、ボク達猟兵にとっては完全敗北ってわけさ。だからなんとしても、レディ・オーシャンがここにたどり着く前に彼女を殺し、転移装置を破壊する必要がある」
静まり返る猟兵達を前に、シスカは冷徹な目で言った。
「幸い、レディ・オーシャンはグリモアベースを侵略するための兵器の準備をしている段階だ。兵器の名は『骸の月を喰らう月』。エネルギーチャージが終わるまでにこれをぶっ壊せば、彼女の侵攻を阻止できるはずだよ」
シスカはそう言うと、プロジェクターに一枚の写真を投影した。そこには禍々しい力を蓄え、『骸の月を喰らう月』に変化しつつある、かつての強敵『ザンギャバス大帝』の姿が映っていた。
「兵器に改造されたことで、ザンギャバス大帝のかつての無敵性は失われたみたいだ。だからレディ・オーシャンを倒してしまえば破壊はできるはず。その代わり、戦闘力が3倍になってるみたいなんだけど……。破壊できなければ世界が終わるから、とにかくやるしかない! ファイト!
戦場はグリードオーシャン、キャプテンジャック島。島に上陸したら即レディ・オーシャンと戦闘になる。準備ができた人から現地に送るよ。みんな、がんばって!」
大熊猫
お久しぶりです。大熊猫です。レディ・オーシャンとの最終決戦と聞き、久々に復活しました。相手はヒーローズアース最強の悪神レディ・オーシャンと、ザンキャバス大帝の約3倍の力を持つ『骸の月を喰らう月』。完全破壊し、グリモアベースを守りましょう!
※この決戦シナリオを「9月29日までに合計20回」成功すれば、完全にレディ・オーシャンと『骸の月を喰らう月』を滅ぼすことができます。
●プレイングボーナス
一章 敵のユーベルコードの弱点を突く。
※レディ・オーシャンは猟兵が選択したものと同じ属性(POW・SPD・WIZ)のUCを使用します。
二章 なし。
●文字数省略用記号
アドリブ歓迎→☆、連携歓迎→★、何でも歓迎→◎(☆★と同じ)、ソロ描写希望→▲。
●合わせプレイングについて
グループ参加の場合は、迷子防止の為プレイング冒頭にグループ名をご記載下さい。
●受付について
OP公開時より受付開始いたします。
第1章 ボス戦
『レディ・オーシャン』
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POW : リヴァイアサン
無敵の【海水の身体を持つアトランティスの守護竜】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : オーシャンアーマー
自身に【清浄なる海水の鎧】をまとい、高速移動と【金属をも断ち切る高圧水流の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 海を統べる者
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
杓原・潤
◎
えー、なんかすっごい強そうなんだけど!
それだけにグリモアベースに来られたら……色んな世界がめっちゃヤバいんじゃない?
うるうはグリモア猟兵じゃないけど、頑張らないとね!
とは言ったものの、流石に敵の攻撃のスケールが大き過ぎる……箒で飛んだくらいじゃ逃げるのが精一杯かも。
すぐにでもやっつけなきゃなのに、もたもたしてらんない!
こうなったら一か八か、全力でお願いするしかない!
海さん、水さん、レディ・オーシャンの起こした自然現象さん……うるうを助けて、お願い!
抵抗されるかもだけど、上手く行ったら2分くらいはその辺りのもの全部が助けてくれる。
その間に炎を閉じ込めた泡で敵を包囲して、焼き魚にしてやるもんね!
アコニィ・リード
※アドリブ連携歓迎
やっとここまで追い詰めたわね、レディ・オーシャン!
今度こそ絶対に逃さないわよ!
属性を持った自然現象が襲ってくるなら
環境耐性と天候操作と属性攻撃で少しでも軽減するわ
合わせて|シン・デバイス起動!《ドーピング・リミッター解除・限界突破》
身体能力を極限まで高めて何とか耐えて……耐えられる、かな?
この状態なら重傷を負っても、意識まで飛びはしない――!
行って、逸転死海!
私の|海竜《リヴァイアサン》を召喚してレディを襲わせる
あるいは、仲間がいたら海の恵みの光を浴びさせて回復を
私は……元気よ。まだ意識はある。だから!
海竜に敵の追撃か仲間の支援を指示
まだ倒れない、あなたを倒すまで……絶対に!
●VS海を統べる者
「えー、なんかすっごい強そうなんだけど!」
グリモア猟兵から聞いたレディ・オーシャンの恐るべき過去に、|杓原《しゃくはら》・|潤《うるう》は戦慄していた。過去に一度は世界を滅ぼしているオブリビオン……その力は、並のオブリビオンを遥かに凌駕するだろう。
「それだけにグリモアベースに来られたら……色んな世界がめっちゃヤバいんじゃない? うるうはグリモア猟兵じゃないけど、頑張らないとね!」
戦場に転移を果たした潤はきょろきょろと敵を探す。うろうろと探し回るまでもなく、島の空には巨大な『骸の月を喰らう月』が浮かんでおり、そのすぐ下にレディ・オーシャンがいた。よく見ると、『骸の月を喰らう月』は厚い海水の膜で覆われている。猟兵が『骸の月を喰らう月』に手出しできないよう、レディ・オーシャンが防壁を貼っているのだろう。
「こんにちは~☆ 猟兵さん☆ 『骸の月を喰らう月』はまだ準備に時間がかかるので~☆ それまでの間、私が遊んであげますね~☆」
レディ・オーシャンは微笑みを浮かべながら、掌を潤へと向ける。その瞬間、空から海が降ってきた。正確には、そう勘違いするほど、凄まじい降水量の雨が降り注ぎ、キャプテンレイジャック島はあっという間に水没していく。
「ええっ……? ええー!?」
大慌てで|箒《ほうき》に|跨《またが》った潤は、水没を防ぐべく、必死に上昇する。するとレディ・オーシャンはニヤニヤと笑いながら、今度は竜巻を何十本も作り出し、潤へと飛ばしてきた。轟轟と唸り声を上げる竜巻は潤をずたずたに切り裂かんと、猛然と迫ってくる!
(流石に敵の攻撃のスケールが大き過ぎる……箒で飛んだくらいじゃ逃げるのが精一杯かも)
レディ・オーシャンは遊んでいるのか、箒で必死で逃げ惑う潤を見ながらぼうっと突っ立っていた。焦燥に駆られ、潤はギリッと歯を噛み締める。
(すぐにでもやっつけなきゃなのに、もたもたしてらんない!)
「こうなったら一か八か――」
潤が賭けに出ようとしたその時だ。突然空間に亀裂が走り、新たな猟兵が出現した。
●
新たに現れた猟兵は奇しくも、レディ・オーシャンと同じ髪の色を持つ少女だった。
「やっとここまで追い詰めたわね、レディ・オーシャン! 今度こそ絶対に逃さないわよ!」
レディ・オーシャンが作り出した海面の上に立ちながら、アコニィ・リードは叫んだ。レディ・オーシャンはグリードオーシャンの神だが、同時にヒーローズアース世界の破壊神でもある。そして、アースクライシスにおける猟兵とオブリビオンの戦争でドクター・アトランティスが作り出したクローン技術によって生まれた存在こそが――。
「あらん☆ なんだか貴女、他人の気がしませんね~☆」
レディ・オーシャンは微笑むと、アコニィに向かって雷の雨を降らせた。集中豪雨の如き勢いで降り注ぐ幾千の雷は、まるで個人を標的とした天変地異だ。
「逃げ場なんてありませんよ~☆」
彼女の言う通り、逃げ場などない。稲妻の雨は戦場であるキャプテンレイジャック島全域に降り注いでいる。
「くっ……このままじゃ……!」
アコニィは天候操作の力でなんとか稲妻の軌道を逸らし、落雷の軌道を逸らす。それでも命中した場合に備え、自らの全身にも雷のエネルギーを纏い、ダメージに備えた。
「あらあら、防戦一方ですね~☆ ではそろそろ……あらん☆」
包囲攻撃でアコニィを攻めようとしたレディ・オーシャンだが、その時、潤の放った衝撃波が横から飛び込んできた。直撃したレディ・オーシャンは海面に叩き落とされ、自ら降らせていた稲妻で感電してしまった。
「ありがとう。 助かったわ!」
「まだ終わってないよ! きっとすぐに浮き上がってくる!」
潤は箒で滞空しながら、水面に目を凝らす。すると海が真っ二つに割れ、無傷のレディ・オーシャンが姿を現した。
「そろそろ本気を出しますね~☆」
レディ・オーシャンが妖艶に微笑むと、二つに割れた海が持ち上がり、灼熱の津波にとなって二人の猟兵へと襲い掛かってくる!
「このままじゃ、ジリ貧だよね! うるう、試してみたいことがあるんだけど、一人だとやってる暇がないから時間稼ぎお願いできないかな?」
「わかった! 任せて!」
うるうの上目遣いでのおねだりを二つ返事で了承したアコニィは、冷気の防護膜で灼熱の津波を防御しながら、レディ・オーシャンの注意を引くべく突撃した!
ばしゃーん! 大質量の津波が大地に叩きつけられ、大地が陥没する。
(シン・デバイス起動! ドーピング・リミッター解除・限界突破!)
腕輪からの薬物投与で己の潜在能力を限界まで解放したアコニィは自ら灼熱の海へと飛び込み、津波のハンマーの直撃を避けた。だが灼熱の津波は不規則にうねり、アコニィを海の藻屑にせんと、水の拳で何度もアコニィを攻め立てる。
「急がないと! 全力でお願いするしかない! 海さん、水さん、レディ・オーシャンの起こした自然現象さん……うるうを助けて、お願い!」
潤は目をうるうるさせ、上目遣いでレディ・オーシャンの呼び起こした灼熱の津波に呼び掛けた。今、レディ・オーシャンの意識はアコニィの方に向いている。今ならレディ・オーシャンからこの海の制御を奪えるかもしれない。
(このぐらいで!)
沸騰する間欠泉に噴き上げられ、水上に叩き出されたアコニィ。しかし激しく痛めつけられても、彼女はまだ意識を失っていなかった。
「あらん☆ しぶといですね☆」
(まだ倒れない、あなたを倒すまで……絶対に!)
全身をさいなむ火傷の痛みに耐え、海面に立ったアコニィは、己の内に眠る力を呼び起こす!
「やられたらやり返すのよ……それが私の|流儀《ルール》よ、レディ・オーシャン!!」
烈光と共に灼熱の海から出現したのは、巨大な|海竜《リバイアサン》だった。
「オオオオオオオオオ!」
「あら~☆ これは、もしかして海竜さん?」
「私の海竜よ! 行って、『|逸転死海《オーシャン・デスパレード》』!」
召喚された海竜は長い胴でレディ・オーシャンへと巻き付き、彼女の動きを封じ込めた。全身の骨をへし折ろうという勢いで締め付けてくる海竜に対し、レディ・オーシャンはなんとか脱出しようともがくが……。
「あらん!?」
突然、海が巨大なキューブに変化し、リバイアサンもろともレディ・オーシャンを閉じ込めた。うるうの呼びかけに答えた灼熱の海がレディ・オーシャンに反旗を翻したのだ。
「くらいなさいー!」
潤の放った、炎を閉じ込めた大量の泡がレディ・オーシャンへと殺到する。膨大な質量を誇る海水のキューブに外側から圧力をかけられている上、アコニィの海竜に巻き付かれた状態のレディ・オーシャンには、もはや逃げ場はない。
「いけない子達ですね☆ お母さんに逆らうなんて~☆」
直後、着弾した泡の群れが断続的に爆発を起こし、レディ・オーシャンを飲み込んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイ・ブラックウィドー
◎
「レディオーシャン……
ついにグリモアベースに魔の手を伸ばそうというのですね」
私達の拠点であるグリモアベースを失うわけにはいきません。
愛する家族を守るためにもレディオーシャンの野望は阻止してみせます!
「電脳魔法であなたの魂を砕いてあげますっ!」
電脳魔法少女デジタル☆アイに変身します。(バンクシーン)
え、人妻で一児の母の変身シーンなんか需要がない?
わ、私だって恥ずかしいんですからねっ!
電脳魔法OS☆クラッシュで攻撃です!
そう、OSとはオーシャンの略。レディオーシャンには特効です!(綴りを間違えてる事に気づいてない
高圧水流の刃を避けながら攻撃です!
「って、ああっ、衣装の裾が切れちゃいましたっ!?」
●母なる神VS人妻魔法少女!
「レディオーシャン……ついにグリモアベースに魔の手を伸ばそうというのですね」
猟兵との戦いで崩壊しつつあるキャプテンレイジャック島への転移を果たしたアイ・ブラックウィドーはぽつりと呟いた。
「あら~☆ 今度の相手はずいぶん大人しそうな女の子ですね~☆」
すぐにアイの気配に気づき、向き直るレディ・オーシャン。凄まじい魔力がうねり、レディ・オーシャンは一瞬にして全身を海水の鎧で武装した。母なる海の力を宿すこの鎧は超密度の海水の塊であった。
「私達の拠点であるグリモアベースを失うわけにはいきません。愛する家族を守るためにもレディオーシャンの野望は阻止してみせます!」
びしりと指を突き付けたアイはレディ・オーシャンの武装に対抗するべく、女児向けの玩具のようなロッドを天に掲げ、自らも変身する!
「電脳魔法であなたの魂を砕いてあげますっ!」
虹色の輝きに包まれ、くるくると回転するアイ。衣装がゴスロリドレスになり、髪がツインテールになれば変身は完了だ!
「電脳魔法少女デジタル☆アイ! 推参です!」
変身が完了したアイはビシリと決めポーズを取った。
「……」
レディ・オーシャンはかわいそうな子を見る目になっている。
「な、なんですかその冷たいまなざしは! え、人妻で一児の母の変身シーンなんか需要がない? わ、私だって恥ずかしいんですからねっ!」
レディ・オーシャンへと抗議するアイ。人妻であることは確かだが、アイはまだ18歳だ。色々ツッコミどころはあるが、十代の人妻の作品ならちょうどブームも来ているので、目指せトップアイドル!(アイのファン談)
「何も見なかったことにしましょ~☆」
レディ・オーシャンの鎧からググッと水が盛り上がり、アイを襲う。|海水の鎧《オーシャン・アーマー》に圧力をかけることで放たれる、高圧水流のカッターだ。材料こそただの海水だが、レディ・オーシャンの魔力で極限まで圧縮された刃は、超合金であろうとも豆腐のように切断する……!
「覚悟しなさい、レディ・オーシャン! グリモアベースには近づかせません!」
アイはシュッ、シュッと機敏な動きで水圧カッターを避け、レディ・オーシャンへと間合いを詰める。そして魔力を集中させた杖を一閃し、レディ・オーシャンへと必殺の一撃を叩きつける!
「電脳魔法OS☆クラッシュ!」
次の瞬間、ワイヤーフレームのようなエフェクトがレディ・オーシャンの周囲で収束し、彼女を巻き込んで大爆発を起こした!
(そう、OSとはオーシャンの略。レディオーシャンには特効です!)
アイ自身はそう思っていたが、じつはOSはオブリビオン・ソウルの略だった。アイは残念なことに、綴りを間違えている事に気づいてない。
「勝ちましたね! この戦い、私達の勝利です!」
もうもうと巻き起こる砂埃の中、早すぎる勝利宣言をするアイ。しかし、ただならぬ殺気に気付いたアイは咄嗟に真横に飛びのいた。次の瞬間、一秒前までアイが立っていた場所を水圧カッターが通過し、大地に巨大な亀裂が刻まれた!
「って、ああっ、衣装の裾が切れちゃいましたっ!?」
赤面し、スカートの端を抑えるアイ。
「隙ありで~す☆ そろそろオーシャン・アーマーを維持するにも疲れたので~☆ 海の果てまでさようなら~☆」
「あ~れ~!」
レディ・オーシャンの放った激流に飲まれたアイはどんぶらこ、どんぶらこと島の外まで押し流されていった。
成功
🔵🔵🔴
アリス・セカンドカラー
◎お任せプレ汝が為したいように為すがよい
|使い方《技能》
|タイムフォールダウン、時間質量を圧縮し時を凍結させ一切の活動を禁じる《高速詠唱早業先制攻撃、重量攻撃詰め込み凍結攻撃マヒ攻撃身体部位封じ気絶攻撃禁呪封印術》
空間の切断解体からの切断部位の接続で再構築して空間ジャンプ、|位相ずらし《仙術》、|御都合主義《幸運》で回避。
リミッター解除、限界突破、オーバーロード。|『夜』の帳《デモンズヴェール》が周囲を包む。で、化術肉体改造でさくっと聖杯剣ゆりゆりに変身してっと。多重詠唱結界術を武器改造して武具も再現するわ。
弱点とか知らんが|聖杯剣《禁呪封印術》でユーベルコードを封じれば問題なし。まぁ、封じきれんでも高圧水流ぐらいなら位相ずらしあるしな。
海水の鎧も|アーマーブレイク《脱衣、鎧無視攻撃》でこじ開けるわよ。
ではでは、|エナジードレイン《料理、大食い、魔力吸収、魔力供給、エネルギー充填》で|融合《ハッキング》捕食してえっちなのうみそおいしいです❤
●神と悪魔の戦い
「くんかくんか。美少女の匂いがするわ(はぁと)」
アリス・セカンドカラーはさっきまで戦っていた猟兵の残り香を堪能していた。しかし、いつまでもそうしていられるはずもなく、アリスの頭上には巨大な水圧カッターが雨あられと降り注いだ。
「よっと」
アリスは瞬時にその場から消え去ると、数メートル先の場所に再出現した。いわゆる瞬間移動だが、術理としては「空間の切断解体、切断部位の接続で空間を再構築」、とけっこう複雑な工程を踏んでいる。
びゅんびゅんびゅん!
さらに激しさを増す水圧カッターの乱れ撃ち。アリスは|位相ずらし《四次元への緊急回避》で高圧水流をやり過ごし、仙術で地脈を縮めて高速移動しながら、魔力の源を探した。
「――見ぃつけた」
妖艶な微笑みを浮かべたアリスは魔力の発生源――レディ・オーシャンの眼前へとワープする。驚いたレディ・オーシャンが構えるよりも早く、アリスはレディ・オーシャンに封印術をお見舞いした。
「タイムフォールダウン、時間質量を圧縮し時を凍結させ一切の活動を禁じる」
アリスは超一流の結界術の使い手だ。結界術の|力量《レベル》のみならば、全猟兵の中でもトップクラスである。そのアリスの結界術に封印されてしまったからには、いかに強力なオブリビオンといえども、身動き一つ取れなくなるのが道理である。
「さて、あとはずっと私のターンね☆ まずは海水の鎧を剥いて――」
アリスが舌なめずりをしたその時であった。レディ・オーシャンの鎧から伸びた水流がアリスに向かって迸る。アリスは驚きつつも水流を別次元に飛ばしてやり過ごす。さらにバシバシ水流が飛んできたので、アリスはインド人ばりキレキレのダンスで高圧水流の乱れ撃ちを躱した。
「なんじゃこりゃ。時間凍結の概念からはみ出てる? 存在規模があまりに大きすぎて結界がバグったのかしら」
「ちょっと驚きましたが、私も神ですので~☆」
レディ・オーシャンは微笑みながら、アリスとの距離を詰める。アリスは試しにハート型ビームでレディ・オーシャンを攻撃してみたが、海水の鎧はびくともしなかった。
(どうやらレディ・オーシャンを仕留めるには、海一つぶっ壊すぐらいの出力が必要らしいわね)
「オッケー。リミッター解除、限界突破、オーバーロード」
アリスはウインクすると、金色に輝く|杯《さかずき》を取り出した。アリスは杯をひっくり返し、杯に満ちていた妖しい色の液体と地面へと垂らす。すると、黒い霧のようなものが周囲へと立ち込め、アリスとレディ・オーシャンを包み始めた。
「|『夜』の帳《デモンズヴェール》。この結界の中は私が“定義”した私の法ルールが支配する世界。この中でなら私は何にでもなれるわ(はぁと)」
アリスは微笑むと、右手首をみょーんと伸ばし、剣へと変えた。この結界の中にいる限り、アリスの魔力はオブリビオン・フォーミュラ並に増大する。肉体改造も思うがままだ。
「聖杯剣ゆりゆりよ。この剣で貴女を封印して融合捕食してあげる」
「それは困りますね~☆ 私はここからさっさと逃げた方がよさそうです~☆」
レディ・オーシャンはアリスをサイコロステーキに変えんと、高圧水流を網目状に放った。しかし、アリスは立ったまま水流を位相ずらしで回避し、レディ・オーシャンとの距離を詰めていく。レディ・オーシャンは結界の出口を目指して全力疾走したが、いつの間にかセクシー鎧に着替えていたアリスはホラー映画のキラーよろしく、歩いているのに追いついた。
「この結界の中で普通にユーベルコードを使えるなんて流石ね。でも、チェックメイトよ」
トス。
聖杯剣をレディ・オーシャンへと突き立てるアリス。最後の砦である海水の鎧が聖剣を阻むが、聖杯剣ゆりゆりの刃はドリルのように回転し、海水の鎧を剥がし始めた。
「あっあっあっあっあっあっあっ☆」
「そんな声で啼かないで。興奮しちゃうじゃない(じゅるり)」
アリスの刃はついに鎧をこじ開け、レディ・オーシャンの胸を貫いた。ガクン、と脱力するレディ・オーシャン。
「よし、仕留めた。おりょ? なんか手ごたえがないわね」
アリスは違和感を感じ、ビクンビクンと痙攣しているレディ・オーシャンに目を凝らしてみた。これは――抜け殻だ。
「刺される寸前に分身を作って結界から逃げ出したか……。本体は逃がしちゃったわね。まあいいわ。この結界から出るのに相当魔力を消耗したはず。じゃあ、いただきます(はぁと)。えっちなのうみそおいしいです」
アリスは恍惚とした表情で、レディ・オーシャンの抜け殻を|啜《すす》るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
天御鏡・百々
足止めがグリードオーシャンの神とは贅沢なことだな
だが、これぞ好機なり
到達しきれなかったアースクライシス、そしてサムライエンパイアの戦いでも滅ぼしきれなかったが……
今度こそ引導を渡してくれる!
確かにレディ・オーシャンは強大だ
しかし、こと戦闘において規格外の能力(戦闘力〇倍とかトンデモ特殊能力とか)は持たぬ
なれば、敵を一時でも上回れば、そのまま倒すことは可能なはずだ
『天神の威光』で能力を6倍化し、一気に攻め立てるぞ
敵の攻撃(多分水系)を薙刀で切り裂き接近、そのまま両断する!
元より時間をかけてはいられぬ
制限時間内に決着をつけるぞ
グリモアベース侵略など言語道断
このまま骸の月を喰らう月も滅してくれよう!
●一合の戦い
「足止めがグリードオーシャンの神とは贅沢なことだな。だが、これぞ好機なり。到達しきれなかったアースクライシス、そしてサムライエンパイアの戦いでも滅ぼしきれなかったが……今度こそ引導を渡してくれる!」
レディ・オーシャンと対峙した|天御鏡《あめのみかがみの》・|百々《もも》は薙刀を構え、見得を切る。
「あらん☆ なんだか勇ましい子ですね~☆」
レディ・オーシャンは余裕を崩さず、悠然と立っている。だが全身からは殺気が漲っており、こちらが動けばすぐに向こうもユーベルコードを放ってくるだろう。
(確かにレディ・オーシャンは強大だ。しかし、こと戦闘において規格外の能力は持たぬ。なれば、敵を一時でも上回れば、そのまま倒すことは可能なはずだ)
レディ・オーシャンはクローンを含め、幾度か猟兵と戦ったことがあるが、彼女のユーベルコードは極めてシンプルな直接攻撃系のものばかりだった。強いて言うならば、サムライエンパイアで見せた海水による防壁のユーベルコードがやや特殊だが、戦い方自体は至ってシンプルだ。破壊神らしく、ただ、強い。それだけである。
「付け入るスキはある。『我が神よ、その御力を分け与えたまえ!」
百々の体が神々しい輝きに包まれる。ユーベルコードでサムライエンパイアの『主神』とのつながりを強化することで、戦闘力を一気に6倍化したのだ。
「まあ、眩しい☆ なので、そのまま押しつぶしちゃいますね~☆」
「行くぞ、レディ・オーシャン!」
レディ・オーシャンの頭上に直径100メートルはあろうかという、巨大な水の球体が出現した。質量は500トンを超えているだろう。
「ウォーター・メテオで~す☆」
レディ・オーシャンは一撃で決めるつもりらしい。それは百々にとっても好都合だった。
(元より時間をかけてはいられぬ。制限時間内に決着をつけるぞ)
爆発的に戦闘力を増大させた百々だが、当然、その力には代償がある。百々がこの状態でいられる時間はたった124秒。その限界を越えれば百々は意識を失い、戦闘不能となる。
「え~い☆」
レディ・オーシャンが指をはじくと、水球が解放され、巨大な滝となって百々へと降り注いだ。百々は薙刀を構え、レディ・オーシャンに向かって真正面から突っ込んでいく!
ドドドドドド!
全てを押し流さんと流れる大瀑布は、百々の小さな体を飲み込んだ!
「潰れちゃったかしら~☆」
「レディ・オーシャン、覚悟!」
「!!」
その時、水壁を真っ二つに切り裂いて百々が飛び出してきた。百々は薙刀を振り抜き、レディ・オーシャンを肩口から深々と切り裂いた。百々が返す刀でレディ・オーシャンに二撃目を叩きこもうとすると、レディ・オーシャンは水蒸気の煙幕を目くらましにし、全速力で後ろに下がった。
「今は分が悪いようなので、逃げちゃいま~す☆」
捨て台詞だけを残し、レディ・オーシャンの気配は消えた。
「逃がしたか……だが、奴もだんだん弱ってきているはずだ。グリモアベース侵略など言語道断。このまま骸の月を喰らう月も滅してくれよう!」
百々は大きく息を吐くと、意識を失う前に安全な場所に退避した。
成功
🔵🔵🔴
シノギ・リンダリンダリンダ
▲
海を統べる者などと嘯く、海の女
やっと、お前をこの手で、滅せる時が来たのですね
因縁とかは、多少ありますが。それじゃありません
ただただ。お前のその自称が、名前が、むかつくから。お前を殺します
【憤怒の海賊】を解放
鎧を纏おうと、高速で動こうと、水流の刃を放とうと
その身を呪詛と毒と強欲さだけで構成する霧となれば問題はないです
水を腐らせる呪詛を、水を忌避する呪詛を呼吸が困難になる毒を遅効性の毒を即効性の毒を五感を鈍らせる呪詛を声が出せなくなる呪詛を神経を過敏にさせる毒を鈍らせる毒を、死の呪詛を!
あぁ!海の女!!!貴様は、黄金化すら、させません!!
二度とその面を、見せなるな!!
●海を統べる者VS|強欲の溟海《グリードオーシャン》
「海を統べる者などと嘯《うそぶ》く、海の女。やっと、お前をこの手で、滅せる時が来たのですね。因縁とかは、多少ありますが。それじゃありませんただただ。お前のその自称が、名前が、むかつくから。お前を殺します」
負傷した肉体を引きずって歩いていたレディ・オーシャンを追い詰めたシノギ・リンダリンダリンダは、過去の因縁からでもなく、猟兵としての使命感でもなく。『海』を|僭称《せんしょう》するお前が気に入らないから殺すのだと、宣戦布告した。
「まあ、ずいぶんな言われようですね☆ 海賊さん☆」
「話は終わりです。消えなさい!」
レディ・オーシャンが『|海水の鎧《オーシャン・アーマー》』を纏うのと、シノギが『憤怒の海賊』を解放したのは同時だった。
「Emergency,Emergency,憤怒の海賊が解放されます。当機への接触は控えてください。繰り返します、Emergency,Emergency,憤怒の海賊が解放されます。当機への接触は控えてください」
機械的なアナウンスがシノギの|躯体《くたい》からこぼれ出ると同時に、シノギはミレナリィドールのフレームを脱ぎ捨て、内側に封じられていた肉体を|曝《さら》け出した。この姿こそは、呪詛と強欲と黄金で構成された死霊海賊の王。狂おしいほどの憤怒に身を委ねた、『|強欲の溟海《グリードオーシャン》』の剥き出しの魂だ。
「水を腐らせる呪詛を、水を忌避する呪詛を、呼吸が困難になる毒を、遅効性の毒を、即効性の毒を、五感を鈍らせる呪詛を、声が出せなくなる呪詛を、神経を過敏にさせる毒を、鈍らせる毒を、死の呪詛を!」
レディ・オーシャンへの憎悪を|滾《たぎ》らせ、シノギはひたすらに敵を呪いながら大きく広がっていく。レディ・オーシャンの肉体はシノギの毒と呪詛にひたされ、みるみるうちに腐り果てていった。
「――」
レディ・オーシャンはシノギに向けて水流の刃を乱れ撃つ。しかし、霧状に変化したシノギの体は刃では断ち切れなかった。旗色が悪いと悟ったレディ・オーシャンはこの場から高速移動で逃げ去ろうとするが、シノギはどこまでもレディ・オーシャンを執念深く追いかけ回した。ついに片腕がもげ、海に沈んでいくレディ・オーシャンを睨み付けながら、シノギは吠える。
「あぁ! 海の女!!! 貴様は、黄金化すら、させません!! 二度とその面を、見せるな!!」
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
☆
うーん……こっちの急所に狙いを絞ってきたな……止めないとろくでもないことになるね…
…まずはレディ・オーシャンをはっ倒すとするか……
…さて……相手は高速移動が主力…なら【我が身転じて災魔となる】を発動…
…高速移動は勿論……高圧水流もこのUCの範囲内に入れば遅くなる…
…当然威力は減じられるし回避も容易になる…
…そしてその海水の鎧は重奏強化術式【エコー】で効果を高めた乾燥術式で乾かしてしまうよ…
…生活で使うちょっとした術式だけどこう言うときには役に立つね…
…鎧をはぎとたら黎明剣【アウローラ】から魔力の刃を伸ばしてレディ・オーシャンを切り裂くとしよう…
●決着
「うーん……こっちの急所に狙いを絞ってきたな……止めないとろくでもないことになるね……」
空に浮かぶ巨大な怪物を見据え、メンカル・プルモーサはぽつりとつぶやいた。世界移動の為の拠点たるグリモアベースへの侵略が成れば、その時点で猟兵は敗北必至だ。
「……まずはレディ・オーシャンをはっ倒すとするか……」
計器類を使用するまでもなく、メンカルはすぐにレディ・オーシャンを発見した。すでに他の猟兵に痛めつけられたのだろう。片腕はなく、全身もボロボロだったが、百選錬磨のメンカルの勘は、「あの手負いの獣に一切隙を見せてはならない」と告げていた。
「貴女も歓迎しますわん☆ お茶の用意はしていないので、これで我慢してくださいね~☆」
一瞬で|海水の鎧《オーシャン・アーマー》を装着したレディ・オーシャンはメンカルに向かって高速突進しながら、高圧水流の刃を乱れ撃ってきた。その数、およそ百。もし直撃すればメンカルは細切れである。
「我が盟友よ、結べ、混ざれ。汝は合身、汝は災禍、魔女が望むは流転を阻む悪食の怪。『|我が身転じて災魔となる《コンバート・タイムイーター》』」
レディ・オーシャンの到達よりも早く、高速詠唱を完成させたメンカルはユーベルコードを発動させた。その瞬間、メンカルの周囲の時の流れが変化し、全てが『ゆっくり』となった。元々先端の速度は音速をも超える超高速の水圧カッターは止まって見える、とはいかなかったが、メンカルの腕の小型コンピューターはカッターの軌跡を完璧に予測し、メンカルに教えてくれた。
「……よっと……」
メンカルは水圧カッターの弾幕の隙間を器用に通り抜けながら、次の呪文の詠唱を始めていた。
(……元々戦闘用の術式じゃないから、多重詠唱で出力を強化して……と……)
メンカルは杖代わりの術式制御用の長剣、黎明剣『アウローラ』をレディ・オーシャンへと向け、重奏強化術式で強化した『乾燥術式』を解き放った。効果はあり、海水で出来たレディ・オーシャンの鎧はみるみるうちに蒸発し、剥がれていく。
(……生活で使うちょっとした術式だけどこう言うときには役に立つね……)
慌てたレディ・オーシャンは新たな鎧を纏おうとするが、一手遅い。メンカルは|黎明剣《アウローラ》を振りかぶり、魔力の刃でレディ・オーシャンの胴を真っ二つに断ち切っていた。
「今回は、私の負けですね~☆ でもでも☆ まだチャンスはあります☆」
最後まで笑みを崩さないまま、レディ・オーシャンは骸の海へ沈んでいった。
「……よし……次……」
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『骸の月を喰らう月』
|
POW : 真正面から敵の攻撃に耐え、エネルギーを削る
SPD : 敵の攻撃をかわしながらチャンスを狙って攻撃する
WIZ : 魔法や搦め手で敵の行動を誘導する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●死闘
猟兵達との戦いに敗れ、グリモアベースへの侵略を企てていたレディ・オーシャンは骸の海へと去った。しばらくすればまたこの島に浮上してくるだろうが、それはまた後日の話。今、このキャプテンレイジャック島に残るオブリビオンは『骸の月を喰らう月』のみである。
「グリモア、コロス! 猟兵、ブッコロス! ナニもかも、皆殺しダア!」
全長50メートルにも達するかという巨大なる侵略兵器、『骸の月を喰らう月』とは、旧七大海嘯最後の生き残りであり、なぜかグリモアの力に並々ならぬ恨みを向けている「『鮫牙』ザンギャバス大帝」を儀式魔術【Q】によって異形の|怪物《キメラ》へと変化させたもの。ザンギャバス大帝の抱くグリモアへの憎しみを|羅針盤《コンパス》代わりに、グリモアベースへの転移を果たすというシロモノであった。
「匂う、匂うぜえ……! グリモアの匂いダ! グリモア猟兵モ! グリモアの匂いが染みついた猟兵モ! 全部! 破壊シテヤル!」
『骸の月を喰らう月』は侵略兵器としてはまだ未完成だ。しかし、宿敵の接近を察知した『|骸の月を喰らう月《ザンキャバス》』は制御不能となり、自らの意志で動き始めた!
『骸の月を喰らう月』は巨大な顎で猟兵達を食らいつくし、翼と爪で猟兵達を切り裂き、握り潰し、蛇の尾の猛毒で猟兵達を腐らせ、葬り去らんと、死の大地に降り立つ。
「殺殺殺殺殺滅滅滅滅滅憎憎憎憎増怨怨怨怨怨……死 ね」
底なしの殺意に濡れるこの|滅びの星《モンスター》は再生力の限界を迎え、五体をバラバラに砕かれるまで、戦いをやめることはないだろう。死闘が、始まろうとしていた。
天御鏡・百々
憎悪に狂う怪物め
思考も行動も単純そうだが、攻撃を喰らってはたまらないな
では……惑わしてやるとするか
『惑いの封魔鏡』を使用し、敵を鏡の迷宮に閉じ込めるぞ
もっとも、これだけの相手となれば、迷路自体の破壊も可能やも知れぬか
とはいえ反射した姿を映せば、敵の行動は誘導できるはずだ
鏡像に攻撃させることで隙を晒した敵を
天之浄魔弓より放つ光の矢でチクチクと削っていこう
壊れた迷路の破片も、念動力で操れば、鏡として使うには十分だろう?
グリモアベースは猟兵達の行動の中枢だ
オブリビオン共に侵させてなるものか!
●ラビリンス
「憎悪に狂う怪物め。思考も行動も単純そうだが、攻撃を喰らってはたまらないな」
空から降ってきた『骸の月を喰らう月』の巨体を見上げ、|天御鏡《あめのみかがみの》・|百々《もも》はため息をついた。知能は低そうだが、あれほど巨大なオブリビオンともなれば、掠るだけで猟兵と言えども命が危うくなるに違いない。
「では……惑わしてやるとするか」
百々は天神鏡を掲げると、怪物を聖なる光で照らした。すると、怪物を飲み込むほど巨大な鏡の迷宮が実体化した。
「よし……これでしばらく奴は迷路から出られぬ」
(もっとも、これだけの相手となれば、迷路自体の破壊も可能やも知れぬか)
きわめて高い硬度を持つ『惑いの封魔鏡』であるが、破壊は不可能ではない。強力無比なオブリビオンであれば迷宮の壁を破壊して強引に脱出することも可能だ。
「急ぐとしよう」
百々は自ら作り出した迷宮の内側に鏡を使って瞬間移動すると、『骸の月を喰らう月』への攻撃を開始した。
「見つけたぞ! グリモア! 殺ス!」
『骸の月を喰らう月』は雄たけびを上げ、鏡に映った百々の姿へと突進した。巨体が迷宮の鏡に激突し、そこに映った百々の姿もろとも粉々に砕け散る。しかし、その百々はただの鏡像であり、迷宮の通路は破壊された壁の奥にもまだ続いていた。
「そこだ!」
オブリビオンの背後に潜んでいた百々は『天之浄魔弓』から破魔の矢を放ち、『骸の月を喰らう月』へと突き立てた。敵があまりにも巨大すぎるため、一本一本は針を刺した程度の手ごたえだが、百本、二百本と撃ち込めば確実に体力を削れるはずだ。
「グオオ! グリモア! ブッコロス!」
百々の矢を何百本と受け、血を流しながらもおかまいなしに暴れ狂う『骸の月を喰らう月』。ついに『惑いの封魔鏡』が完全に破壊され、怪物は檻から脱出を果たした。
「やはり破壊されたか……」
「そこにイヤガッタカ! グリモア!」
空中に浮かぶ百々へと猛然と突進する『骸の月を喰らう月』。その巨大な爪は、百々を粉々に粉砕した。しかし……。
「グリモア! 皆殺シダァ! 何人イヤガル!!」
幾度爪を振るわれようとも、百々は何度でも蘇った。それはまるで、無限に続く合わせ鏡のようで――。
「壊れた迷路の破片も、念動力で操れば、鏡として使うには十分だろう?」
破壊された鏡の迷宮の壁を念動力で操り、自分の鏡像を作り出していた百々はニヤリと笑った。鏡の迷宮を脱出したはずの『骸の月を喰らう月』は、今もなお百々の作り出した鏡の幻に囚われ続けていたのだ。百々は光の矢での攻撃を繰り返しながら、『骸の月を喰らう月』へと告げる。
「グリモアベースは猟兵達の行動の中枢だ。オブリビオン共に侵させてなるものか!」
大成功
🔵🔵🔵
アイ・ブラックウィドー
「あれがグリモアベースに向かおうとしている『骸の月を喰らう月』ですか」
ですが、侵略兵器として未完成な今なら、まだ阻止することができるはず!
あの巨体にも、きっと何か弱点があるはず……!
「そうです!
あのユーベルコード『骸の月を喰らう月』は、グリモアベースへの恨みが元になっているもの。その恨みさえなくしてしまえば、エネルギー源を失ってグリモアベースへ侵攻できなくなるはずです!」
【亀がアキレスに言ったこと】で相手の弱点を指摘します。
「うっかり旦那様に渡すのを忘れたお弁当がここにあります。
これをあげますから、恨むのをやめてくださいね」
って、なんか食べたら苦しみだしましたっ!?(料理の腕は殺人級
●キル・トラップ
「あれがグリモアベースに向かおうとしている『骸の月を喰らう月』ですか」
キャプテンレイジャック島になんとか戻って来たアイ・ブラックウィドーは、殺意をまき散らしながらこちらに突進してきた巨大マンティコア――『骸の月を喰らう月』を見据えた。
「見るからに強そうですね。ですが、侵略兵器として未完成な今なら、まだ阻止することができるはず! あの巨体にも、きっと何か弱点があるはず……!」
アイは眼鏡をクイッと引き上げると、『骸の月を喰らう月』を遠くから観察し始めた。
「グリモアの匂いだあ! 猟兵! ソコにいやがったか!!」
アイの存在に気付きた『骸の月を喰らう月』は方向転換し、アイに向かって突進してきた!
「そうです! あの『骸の月を喰らう月』は、グリモアベースへの恨みが元になっているもの。その恨みさえなくしてしまえば、エネルギー源を失ってグリモアベースへ侵攻できなくなるはずです!」
アイはカウンターの要領で突進してきた『骸の月を喰らう月』へと指を突き付ける。これでアイのユーベルコード『亀がアキレスに言ったこと』は発動条件を満たした。
ズギュウウウウン!!!
「ナンダ!? 前に進めネエ!」
『骸の月を喰らう月』は、前に進んでも進んでも、全くアイと距離を縮められないという奇妙な現象に囚われていた。これがアイのユーベルコードの効果だ。『亀がアキレスに言ったこと』は時空のねじれを生み出し、『アキレスと亀』の寓話の如く、数分間だけ相手の『運動を否定する』ことができる。
「うまく行きました。今ならあなたを止めることができます」
アイはそう呟いた後、持参していたポーチから可愛らしい弁当箱を取り出した。
「愛を知らないから、あなたはそんなに暴れているんですよね。うっかり旦那様に渡すのを忘れたお弁当がここにあります。これをあげますから、恨むのをやめてくださいね」
アイは慈母の如き微笑みを『骸の月を喰らう月』へと向けると、口の近くまでふわふわと魔法少女パワーで飛んでいき、お弁当箱の中身を口に放り込んだ。それは全長50メートルを超す『骸の月を喰らう月』の空腹を満たすには、あまりにも少量だったが……。
「幸せのおすそ分けです。よく噛んで食べて下さいね……って、なんか食べたら苦しみだしましたっ!?」
「ガアア!! グアアアア!!」
まるで毒でも盛られたように、『骸の月を喰らう月』はもがき苦しみだした。アイに悪意はなかったが、彼女の料理の腕前は殺人級だったのである……。
成功
🔵🔵🔴
アリス・セカンドカラー
◎お任せプレ、汝が為したいよう為すがよい。
ふむ、まずは|高速詠唱早業先制攻撃《タイムフォールダウン》で私の両目を抉り出して、と。これを『欠落』紅い双月と化して上空に浮かべて|闇の種族に変身するわ《封印を解く、リミッター解除、限界突破、オーバーロード》。
ああ、上空に浮かべた|双月《瞳》からきちんと|視えて《第六感、千里眼(視力)》いるから心配は御無用。まぁ、|反響定位《聞き耳》もあるので戦闘に支障はないわ。
さて、空間の切断解体からの切断部位の接続で再構築しての空間ジャンプで回避しつつ、|いい感じに喰われてしまうわ《幸運》。
まぁ、化術肉体改造でいくらでも肉体を変異できるからこの程度はどうってことないし、巨大な相手にはやっぱり一寸法師戦法よねぇ☆ま、闇の種族化なくとも元々|ギャグ補正でめったには死なないし《継戦能力》無問題♪
でだ、私を喰らうということは私と同一化するということだ。多重詠唱結界術で自他の境界を曖昧にして内側から融合捕食していくわ。肉体だけでなく精神もね。
あなたの敗因は拾い食いよ。
●トロイの木馬
「ふむ」
『骸の月を喰らう月』の巨体を見上げたアリス・セカンドカラーはいきなり己の両目に指を突っ込み、眼球を引っこ抜いた。もちろんオブリビオンの狂気にあてられて頭がおかしくなったわけではない。アリスは抉り出した眼球に魔力を注ぎ込み、空へと放り投げる。
ブウウウン……。『欠落』「紅い双月」の贋作となった二つの眼球は、煌々とキャプテンレイジャック島を照らし出す。すると、月の光と魔力を浴びたアリスの肉体は闇の種族のものへと変化していく。
「さて、と――」
「グリモア! ブッ殺してヤル!」
その時『骸の月を喰らう月』が雄たけびを上げ、アリスへと飛び掛かってきた。獲物に襲い掛かる肉食獣を思わせる跳躍であっという間に距離を潰した『骸の月を喰らう月』は、アリスを蹂躙せんと巨大な爪を振り下ろす。
「おっと☆」
両目を失い、目が見えないはずのアリスはひらりと『骸の月を喰らう月』の爪を回避した。外れた爪は地面にめり込み、衝撃波で大地に巨大なレーターが出来た。
「ウオオオオ! ちょこまかと!」
『骸の月を喰らう月』は怒り狂い、アリスを踏みつぶさんと大暴れする。しかし、視力を失っているはずのアリスは優雅にスカートを翻し、|円舞曲《ワルツ》のように踊りながら攻撃を全て回避した。
「当たらないわよ☆ 見えてるし、感じてるから」
アリスに両目はなくとも、頭上を照らす双月がアリスの代わりに敵を見ているし、アリスにはなんとなく『骸の月を喰らう月』の動きが予測できた。ブン、ブンと空間を切り貼りし、瞬間移動の繰り返しで少しずつ『骸の月を喰らう月』の頭部へと近づいたアリスは『骸の月を喰らう月』の眼前へと躍り出た。
「月の狂気をご存じかしら?」
アリスは妖艶に微笑み、虚空を踏み締めて|狂狂《くるくる》と回る。赤い月光が照らす中、目を失った眼窩から涙のような血を流しながら踊り狂うアリスの姿は、まるで悪い子を攫って眷属へと変えてしまう、邪妖精のように幻想的で――。
「引き裂いてやる!」
しかし、猟兵への憎しみで駆動する『骸の月を喰らう月』は、美意識など持ち合わせていなかった。首を伸ばした『骸の月を喰らう月』のアギトが勢いよく閉じると、巨大な牙に挟まれたアリスはバラバラに引き裂かれてしまった。
「殺シテやった! グリモア、一匹、殺シテやった!」
キャプテンレイジャック島に、『骸の月を喰らう月』がゲラゲラと笑う声が響いた……。
●
「おお、アリスよ、死んでしまうとは何事だ! ……と、なるとでも思っていたのか。いつから私が化術を使っていないと錯覚していた? 巨大な相手にはやっぱり一寸法師戦法よねぇ☆」
アリスは生きていた。闇の種族化したことで生命力が底上げされたアリスは、バラバラになった状態のまま、自我を保っていたのだ。
「でだ、私を喰らうということは私と同一化するということだ」
アリスの生首が笑うと、バラバラになったアリスのパーツの一つ一つが結界術を行使し、『骸の月を喰らう月』の自我の境界を曖昧にしていく。さらにアリスは『骸の月を喰らう月』を内側から乗っ取るべく、融合捕食を始めた。
「!?」
ズキン、と喉の奥から激しい痛みを感じ、次の獲物を求めて疾走していた『骸の月を喰らう月』は動きを止めた。
「ぐおおお!」
うめき声を上げる『骸の月を喰らう月』。明らかにパワーダウンしている。強烈な自我を持つ『骸の月を喰らう月』はアリスの侵蝕に対し激しく抵抗しているが、この状態では猛毒を盛られたも同然。もはや十全の戦闘力は行使できないだろう。『骸の月を喰らう月』の体内に潜んだまま、トロイの木馬となったアリスは愉快げに笑う。
「あなたの敗因は拾い食いよ」
成功
🔵🔵🔴
アコニィ・リード
え、何……グリモアのストーカー……怖……
という事は間違いなく手負いのわたしを狙ってくるわね
高速無酸素詠唱で元気出せる様に治癒の魔法を自分にかけつつ
とにかくこの島を逃げ回るわ!
地形を利用し変化する環境に耐えて何とか……逃げる
|シン・デバイス再起動《ドーピング・リミッター解除・限界突破》――なりふり構ってられないもの!
無理矢理身体を動かして|空でも《空中浮遊》|海でも《高速泳法》何でも使うわ!
身体がまたボロボロになるまで……追い詰めてくるでしょう
それが|狙い《罠使い》よ――逸転死海! 咄嗟の召喚で海竜をぶつける!
化け物には化け物よ、何としてもここで抑えて見せるわ
グリモアベースには絶対に行かせない!
●死闘
「え、何……グリモアのストーカー……怖……」
アコニィ・リードは『骸の月を喰らう月』の執念にドン引きし、とりあえず岩陰に身を隠した。
(生理的に無理……というのはさておき、グリモアに執着しているという事は間違いなく手負いのわたしを狙ってくるわね)
アコニィはレディ・オーシャンとの戦いで負った傷を癒すべく、治癒魔法を発動した。だが、そのタイミングで『骸の月を喰らう月』はアコニィの気配に気づいたのか、のっしのっしとこちらに向かってきた。
「グリモアはドコだぁ! 出てこい! グリモアの匂いがスル! 出てこい! グリモアぁ!」
(ここにいたらぺちゃんこにされる!)
アコニィは大きく息を吸い込むと、治癒魔法の詠唱を維持しながら、岩陰から飛び出した。
「そこにいやがったか! グリモアぁ!!」
(近くで見るとやっぱり大きい! 一瞬でも立ち止まったら踏みつぶされる!)
アコニィは岩陰に身を隠し、今までの戦いで出来たクレーターで『骸の月を喰らう月』の足をひっかけ、砂埃で目隠しし、あの手この手で逃げ回った。その甲斐あり、傷の手当ては終わったものの、無酸素運動を続けた為、今度は|体力《スタミナ》の方が限界にきていた。
「|シン・デバイス再起動《ドーピング・リミッター解除・限界突破》」――なりふり構ってられないもの!」
アコニィは限界を突破すべく、再び自身に薬物を投与した。アコニィは酸素負債で悲鳴をあげる体に魔力を注ぎ込み、空へと舞い上がる。
「捕まえたぜぇ! グリモア!」
『骸の月を喰らう月』は顔の近くまで飛び上がってきたアコニィに狙いを定め、勢いよく爪を振り下ろした。咄嗟にガードしたものの、爪に触れたアコニィはピンボールのように吹き飛び、島の外の海面へと叩きつけられた。
「まだまだぁ!」
しかし、薬物で一時的に痛みを忘れている状態のアコニィはまだ動く。アコニィはバタフライで島の外に向かって泳ぎ始めた。
「逃がすと思うか! グリモアぁ!」
『骸の月を喰らう月』もすかさず海へと飛び込み、アコニィを追う。
「かかったわね!――『|逸転死海』《オーシャン・デスパレード》!」
アコニィは咄嗟に召喚術を発動し、海竜を呼び出した!
海面を引き裂いて現れた海竜は長い体で『骸の月を喰らう月』へと巻き付き、大渦に敵を閉じ込め、ぎしぎしとその体を締め上げる。
「化け物には化け物よ、何としてもここで抑えて見せるわ! グリモアベースには絶対に行かせない!」
「うおおお!! 放セェエエエエ!!」
海竜に巻き付かれた『骸の月を喰らう月』は、ずぶずぶと海の底へと沈んでいった。
成功
🔵🔵🔴
杓原・潤
◎
うわぁ、何でそんな怒ってんの!?
あの大きさと力で思い切り暴れられたら手が付けらんない!
でも何とかしなきゃ……そうだ、怪獣を相手にするならロボット!
この間映画で見たからイメージもばっちり!
この島にだって材料はいっぱいある。
岩も、砂も、あの怪獣が壊したなんやかやも!
【高速詠唱】と【全力魔法】で出来るだけ大きく、強い鮫のロボットを作って見せる。
魔法で作った鮫ロボットだから、地上でも動けるはず。
無生物だから毒は効かないし、爪で壊されたって痛くない。
噛み付き合いなら鮫だって負けないし、何より美味しくない!
後はこの二体の戦いに巻き込まれないように支援出来れば……大きな敵も何とか出来る、きっと!
メンカル・プルモーサ
◎
(飛行式箒【リンドヴルム】に騎乗)
これはまた大きい物だね…これで再生力も相まって厄介この上ない
…兵器としてみたら制御不能になるのは如何な物かと思うけど…
…この意思を持つ生体兵器と言う辺りに付け入る隙はあるか…?
…箒に乗って空中機動で攻撃を回避しつつ接近…術式装填銃【アヌエヌエ】より【想い転ずる妖硬貨】を籠めた銃弾を骸の月を喰らう月に打ち込むとしよう…
…このUCにより思った行動の逆の行動を取ってしまう…グリモアや猟兵からは逃げるようになるだろうね…
…このUC惑わされている間にに重奏強化術式【エコー】を繰り返し発動して多重強化した光の槍を骸の月を喰らう月を起点にその周囲に展開…斉射するとしよう…
●二人の魔女
「ブッ殺してやるぞ! グリモアぁああああ!!」
異形の大怪物が怒号を発すると、ビリビリと大気が震えた。
「これはまた大きい物だね……これで再生力も相まって厄介この上ない……兵器としてみたら制御不能になるのは如何な物かと思うけど……この意思を持つ生体兵器と言う辺りに付け入る隙はあるか……?」
ウィザードのメンカル・プルモーサは|飛行式箒《リンドヴルム》に騎乗し、上空から『骸の月を喰らう月』を見下ろしていた。他の猟兵に海に叩き落とされたのか、『骸の月を喰らう月』は怒りと殺意をまき散らしながら、翼を広げてキャプテンレイジャック島へと再上陸しようとしている。
「うわぁ、何でそんな怒ってんの!? あの大きさと力で思い切り暴れられたら手が付けらんない!」
同じく箒に跨り、上空から様子見する鮫魔術士の|杓原《しゃくはら》・潤《うるう》。二人の魔女は『骸の月を喰らう月』を仕留めるべく、攻撃を開始した。
「何とかしなきゃ……そうだ、怪獣を相手にするならロボット!」
潤はポンと手を叩くと、島の沿岸にすっと降りていく。そして、潤を中心に半径134メートルほどの空間に魔力が渦巻き始めた。
(鮫魔術だな……じっくり見るのは後にしよう……)
メンカルはチラリと潤の方を見た後、箒を加速させ、『骸の月を喰らう月』に向かって突撃した。
「お前もグリモアかぁ! ブッ殺す! 皆殺しだぁ!」
「本当に見境がないな……グリモアベースの匂い(?)」にでも反応しているのだろうか……」
グリモア、グリモアと連呼している『骸の月を喰らう月』だが、相手が『グリモア猟兵』であるかどうかはあまり関係がないようだ。グリモアベースからやってきた者は皆殺し、のようなスタンスらしい。つまり、だいたいいつものオブリビオンである。厄介なのは、こいつを放置すると本当にグリモアベースまでやってきてしまう、という一点だ。メンカルは爪と牙を振り回して荒れ狂う『骸の月を喰らう月』の動きを冷静に観測しながら、体格差を生かし、器用に敵の攻撃をかいくぐり続けた。
●
「この島にだって材料はいっぱいある。岩も、砂も、|あの怪獣《骸の月を喰らう月》が壊した物なんかも!」
潤は大急ぎで鮫魔術を発動していた。島の沿岸にある無機物をかき集め、一つの形に再構築していく。作り上げるのは『骸の月を喰らう月』に負けない大きさの鮫ロボット。完成イメージはこの前に見た鮫映画から借用する。
「さー・むぇふぁー・どぅ・あー!」
潤が魔力を解放すると、雄々しく二足歩行する、サメ人間型の巨大ロボットが爆誕した。
「行って! 鮫ロボット! 魔法で作った鮫ロボットだから、地上でも動けるはず!」
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「おー……鮫ロボだ……」
『骸の月を喰らう月』と空中戦を繰り広げていたメンカルは箒の高度を上げ、ひょいと『骸の月を喰らう月』の眼前から消えた。『骸の月を喰らう月』はメンカルを目で追い、そちらの方を見る。
ドゴッ!!
その瞬間、猛烈な勢いで潤の鮫ロボットがショルダー・タックルをかまし、吹き飛ばされた『骸の月を喰らう月』は岩山に叩きつけられた。
「キシャアアアアアアア!!」
「お前もグリモアだな! ぶっ殺シテやる!!」
すかさず『骸の月を喰らう月』を追撃する鮫ロボット。『骸の月を喰らう月』は鮫ロボットへと噛みつき返し、壮絶な怪獣大決戦が始まった。
「無生物だから毒は効かないし、爪で壊されたって痛くない。噛み付き合いなら鮫だって負けないし、何より美味しくない!」
『骸の月を喰らう月』の攻撃でみるみるうちに鮫ロボットは破壊されていくが、痛みも恐怖もなく、尾の毒も効かない鮫ロボットは、無感情に『骸の月を喰らう月』を抑え込み続けている。
(こっちから注意が逸れたな……今のうちに……)
「儘ならぬ心よ、変われ、逆らえ。汝は反転、汝は心変。魔女が望むは思えど叶わぬ裏表」
メンカルは怪獣大決戦のどさくさに紛れ、一発の銃弾を放った。
「ウアアアアアアアアアアア!?」
突然、『骸の月を喰らう月』は裏返った悲鳴を上げ、サメロボットから逃げ始めた。
「うまくいった……」
メンカルが|術式装填銃《アヌエヌエ》で撃ち込んだのは、『|想い転ずる妖硬貨《リバース・マインド》』を籠めた銃弾。このユーベルコードの効果により、『骸の月を喰らう月』の行動は思考とあべこべになってしまったのだ。
「キシャー!!」
鮫ロボットは『骸の月を喰らう月』の背に噛みつき、ここぞとばかりに『骸の月を喰らう月』をボコボコにしている。
「魔女さん! 遠慮なくやっちゃって!」
潤はメンカルの周囲に渦巻く魔力を見て、大声で叫んだ。メンカルはサムズアップで応え、たっぷりと時間をかけて詠唱を上乗せした光の槍を『骸の月を喰らう月』へと向けて解き放つ。
「ガアアアアアア!?」
360度全方位から串刺しにされた『骸の月を喰らう月』は、体内で炸裂した魔力と、誘爆した鮫ロボットの大爆発に呑まれた。
大成功
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シノギ・リンダリンダリンダ
海の女倒せてスッキリしてる所ですが……あはは。面白そうな感じになってますね、元鮫牙
安心してください。お前は、ちゃんと、ここで殺してあげますから。今回こそは
【怨嗟の救済】を行う
闇の救済の複写には、海の女の時に向けた私の負の意思も。そしてたった今、全開で放っている元鮫牙の怨嗟も、全部。全部ため込んでいます
その前からもずっと。ずっと
ため込んだ呪詛の鮮血で、血戦兵器をいくつも召喚。相手の攻撃に対する盾などもついでに
様々な武器を操り、突き刺し、えぐり、切り裂き、殴打し
恐るべき存在。元鮫牙。お前の思う、最も恐るべき存在で、トドメをさしてあげます
安心してください。どんな姿かは、お前にしか見えませんから。ね?
●|怨嗟の救済《ダーク・セイヴァー》
「あはは。面白そうな感じになってますね、元鮫牙」
|海の女《レディ・オーシャン》を倒せてスッキリしたのか、爽やかな笑顔を浮かべながらシノギ・リンダリンダリンダは言った。
「安心してください。お前は、ちゃんと、ここで殺してあげますから。今回こそは」
七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス大帝改め『骸の月を喰らう月』は兵器に改造されたことで、無敵性は失われているという。ならば、ここで仕留めることができる。
「あぁ、可哀想。なんて可哀想な、数多の流れた血。私が有効利用してあげましょう」
シノギの手にした紅い宝石『闇の救済の複写』から、赤黒い魔力が染み出してくる。
「この石には、海の女の時に向けた私の負の意思も。そしてたった今、全開で放っている|元鮫牙《お前》の怨嗟も、全部。全部ため込んでいます。その前からもずっと。ずっと」
羅針盤戦争の頃よりシノギに貯め込まれていた呪詛を解放された|怨嗟の救済《ダーク・セイヴァー》は、最大級の威力となって『骸の月を喰らう月』を襲った。宝石から染み出た鮮血は剣、槍、戦槌、薙刀、弓、投石器、マスケット銃、大砲――あらゆる血戦兵器となって、『骸の月を喰らう月』へと牙を剥く。
「あははははははは!!」
『骸の月を喰らう月』の反撃を血の盾で受け止めながら、シノギは様々な武器を操り、突き刺し、えぐり、切り裂き、殴打し、『骸の月を喰らう月』を破壊していく。兵器となった男の体は、瞬く間に血に染まっていった。
「グアアアアッ! グリモア! オノレ、グリモアぁ……!」
「元鮫牙。ここにはお前の望むものはありません。そして、お前の望みが叶うことも」
シノギはなおもあがく『骸の月を喰らう月』に酷薄に告げると、最後に、『|恐るべき存在《■■■■■■■■■》』を召喚した時『骸の月を喰らう月』の顔が恐怖に歪んだ。
「アア、アアアアア……」
「安心してください。元鮫牙。どんな姿かは、お前にしか見えませんから。ね?」
ギュルギュルと『骸の月を喰らう月』に巻き付いた黒いシルエットは『骸の月を喰らう月』を引きずり、骸の海へと沈んでいった。こうして、レディ・オーシャンのグリモアベース侵攻作戦は猟兵達の必死の抵抗により、水泡に帰したのだった。
大成功
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