こんにちは、Ruina
「雪、ですの?」
黒弗・シューニャ(零・f23640)はきょとんと繰り返す。
システム・フラワーズの奥底が崩れ、その奥に発見された廃墟に降る致死性の白い雪のことだ。
「廃墟、ですの?」
どうしてそんなものがあるのだろう。
これは、キマイラフューチャーの謎に連なる依頼。
出入り口はシステム・フラワーズの底。剥がれ落ちた外装の先に広がる廃墟の探索を頼みたい。問題はふたつ。CGのように現れるオブリビオンが廃墟のまわりで邪魔するのと、廃墟に降り積もる死の雪の存在である。
「猟兵であれば即死はしないでしょうけれど、ずっと浴びているのはよくないですわ。敵はCG? だから大丈夫なのでしょうか……何が起こるか分かりませんから、お気をつけていってらっしゃいませ」
その雪に触れたら、死の眠りが迎えに来るよ。
だるま落としみたいな、五つの頭のトラウマメイカー。
ぴょんぴょんと廃墟のまわりを跳ねまわる。
だからこの先には入っちゃいけない。
キープアウト、だ。
これは親切な忠告。
さあ、もうお帰りよ。
あの雪が触れたらもう目覚めない。
音のない廃墟。
色のない廃墟。
命のない廃墟。
どうしてこんな場所に隠されていたのかを、よおく考えて。
トラウマメイカーは踊るみたいに嗤った。
廃墟のまわりをぴょんぴょんと跳ねまわる。
だから、キープアウト。
パンドラの箱を開けるようなことにならないよう、僭越ながら祈っているよ。
ツヅキ
オープニング公開時よりプレイング受付中です。
章の途中からでもお気兼ねなくご参加ください。共同プレイングをかけられる場合はお相手のIDと呼び名をプレイング冒頭にお願いします。
第1章 集団戦
『トラウマメイカー』
|
POW : 突然のマイナーチェンジ
自身が戦闘で瀕死になると【作画が違う本人】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : 崩壊した作画のままでオンエア
自身の身体部位ひとつを【濁ったインクの怪物】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 脈絡のないファニーファニーフレンズ
戦闘用の、自身と同じ強さの【可愛いガールフレンド】と【オッチョコチョイな友人】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
イラスト:まつもとけーた
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サイモン・マーチバンク
キマイラフューチャー、なんていうか突拍子もない世界ですよね
だから門番も荒唐無稽なんでしょうか?
正直怖いですけど殴って倒せるなら大丈夫
遺跡探索のためにもしっかり戦っていきましょう
奇妙なマスコットならお友達も当然奇妙ですね
近くで見るとより不気味だ……ひぃぃ
けど殴って倒せる、その事実は変わりません
『ムーンストライク』にUCの効果を付与して戦いましょう
囲まれないように一体ずつ倒していきましょうか
手近な相手を選んで【怪力】でぶん殴りです
吹き飛ばす方向を調整し、敵同士で連携を取りづらいようにさせたいですね
うん、大丈夫
殴った感触はちゃんとしてる
ご忠告には感謝します
けど俺は先へ進みますよ
悪魔は悪い子ですからね
Ruina、ルイナ、るいな。
一番上に乗ったクマから順番に、ひとつの頭がひとつずつ、口ずさむ耳慣れない単語。
「意味は廃墟さ」
こちらを振り返ってにかりと嗤う。
「なぜ、こんなにも荒唐無稽なんでしょうね」
サイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)の返事もあまり噛み合ってはいないのだが。
それでいい、それがいい。
なぜならここはキマイラフューチャー、|あらゆるものが継ぎ接ぎされた未来の世界《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。
「あなたが門番ですか?」
「うしし、さーせん」
「この廃墟は遺跡……なんですよね、確か」
「ぎくりんこ」
「正直、怖いですよ。近くで見たらかなり不気味ですし、いまだって悲鳴をあげないように堪えてるんです……でも、俺にはこれがあるので」
ムーンストライク。
悪魔の兎はこれで|敵《オブリビオン》を搗く。
今日は相方がいないので、自分で|ひっくり返さなければ《・・・・・・・・・・》ならないけれど。
シンプルイズザベスト、って知ってます?
余計なことは削ぎ落して、単純明快なのが一番って言葉です。
こうやって、一番近いところにいる相手から順番に殴り倒していくだけ。
簡単でしょう。
え、早口で聞き取りづらいって?
……すみませんね、癖なんです。
でもほら、数が減ってきましたよ。
見た目はアレですけど、殴った感触はわりあい普通ですね……うん、よかった。
なんとかなりそうです。
サイモンに殴られたトラウメイカーはあちらこちらに跳ね飛ばされて陣形はめちゃくちゃだった。
だるま落としみたいに落っこちた頭を拾っては、順番が違うと文句を言い合う。
もちろん、問答無用で止めを刺してサイモンは先へ進んだ。
「キープアウトでしたっけ? ご忠告はありがたいんですが、ごめんなさい。……俺は、この先に行ってみたいんです」
ほんの微かに、|悪い子《悪魔》っぽく嗤い返して。
大成功
🔵🔵🔵
影守・吾聞
※両親とも考古学者かつ非猟兵
二人ともキマフュの人類の痕跡に目がない
廃墟に致死性の白い雪か
最近、噂になってる人類遺跡ってやつかな
もし父さんと母さんの耳に入ったら、突っ込んで行きかねないよね
俺が代わりに探索しとこっと
…その前に、オブリビオンをどうにかしないとね
『野生の勘』で敵の動きを察知
『ダッシュ』『ジャンプ』で距離を取って
【悪魔の灯火】発動だ!
炎を燃え広がらせて一面焼き払っちゃえば
多勢に無勢でも何とかなる!
本体まで炎が届けば、召喚も解除されるしね
忠告ありがとう
でも俺、この先に行きたいんだ
パンドラの箱って例えられるような場所でもね
それに、箱の底に何が残ってるのか
開けてみないとわからないでしょ?
……幼い頃から、影守・吾聞(先を読む獣・f00374)は両親に聞かされていた。キマイラフューチャーのどこかに人類の痕跡が残されているはずなんだ、って。
眠る前、子守唄かわりに。
朝出かける時、挨拶かわりに。
ご飯を食べながらetc.
「ふたりとも、こういう話には目がないからなあ……」
見せたかったな、と思う。
一方で、両親が猟兵でなくてよかったな、とも思う。やっぱり家族だから、危険な目に遭って欲しくないので。だから今回は俺が代わりに探索しておくね、父さん、母さん。
「うしし、ここから先は|立ち入り禁止《キープアウト》だよ」
「知ってる」
「こわい雪が降ってるんだ」
「致死性の白い雪だね。噂で聞いたよ、人類遺跡ってやつだろ?」
「ななな、なんのことかななな?」
「その反応だけで十分さ」
そして、戦場に呼びよせられた|愉快な仲間たち《ファニーファニーフレンズ》を無数の鬼火があっという間に焼き尽くした。
「うん、思ってた通り、よく燃える」
敵の頭に詰めこまれた綿に引火、ぼっと青白い火柱が渦巻いて。
吾聞はとっさに飛び退き、充分な距離を取って燃え盛るトラウメイカーを眺めた。
足下でコツンと音がする。
靴に当たった小石が跳ねながら遺跡の方へ転がっていった。肩越しに振り仰いだ吾聞の目が無意識に細まる。
両親が夢にまで見た、人類遺跡。
「……君、あれをパンドラの箱って言ったね」
「なんのことかな」
「とぼけても駄目だよ。俺、この先に何があるのかを知りたいんだ。だから行くね。ありがとう、心配してくれて」
「やめた方がいいと思うよ」
嗤った顔のまま、トラウメイカーが燃えて崩れる。上から順番に、もう残りはネコとヘビしかない。
「うん」
吾聞は微笑んだ。
「だって、開けてみないとわからないでしょ? 箱の底何が残っているのか、この目で見てくるよ」
「死んじゃうよ」
燃え尽きながら、最後のヘビが言った。
「大丈夫」
ひらりと手を振って。
「なにしろ考古学者の息子だからね。そんなにやわじゃないんだよ」
大成功
🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
……パンドラの箱って、最後に希望があるんだろ?良いじゃないか
っていうのは万年使い古された言葉かもな
それでだな、心音
―あいつの体、気にならんか?なるよな、なるだろ??
まずあのバランスは一体。何故崩れない?つまり骨、軸が通っているということだろう?接続部分は皮膚の繋がりか?出なければおかしいよなあと背骨状の物があるのだろうかそして体内機関のは!?神経構造だって脳だって一番上のみなのかそれとも逆に一番下―…あいつ、腹からなんか出てるし舌が…舌が三枚!?あれ一枚位ずつ独立型か?それとも繋がっ―…どういうことだ
CG?は?
…くそ、あんなに期待したのに!!
全部凍れ!生物じゃないんだ、凍るからな!UC
楊・暁
【朱雨】
そりゃまぁ気にはなるけど…
藍夜あれCG…とは言い辛ぇな…
めちゃくちゃ盛り上がってるし…水差すみてぇで気が引ける…
って、その前に!
引き留めて自分達にはオーラ防御掛け
これである程度死の雪は防げるだろ
藍夜の興味が失せたら先制攻撃でUC
まずは動きを封じる
CG故に麻痺効かねぇなら雷の属性攻撃で
継続ダメージ与えてやる
キマフュの中枢にあるんなら
寧ろ廃墟って方がおかしいんじゃねぇか?
コンコンコンがありゃ
それこそ生存に必要なもんは揃うだろうし
“意図的に廃墟にした”って方がまだ納得できる
敵の攻撃は見切り
無理なら1匹ふん捕まえた敵を盾にする
帰れって言われて素直に帰るんなら
はなからこんな所に来てねぇんだよ…!
「ようこそ」
「うぇるかむ」
「かもーん」
廃墟も気になるが、まずはちょっと猟奇でかなり気の抜けた|やつら《トラウメイカー》の謎を御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)は解き明かしたい。
いや、だって、おかしいとは思わないか心音?
あいつらあの状態で普通に動いているんだぞ。
仕掛けはなんだ?
背骨になるような軸でも入ってるのか。
それにしたって、あの皮膚の繋がり方では色々と不都合がありそうに思えてならない。
「あれで動き回ったら普通、接続部が千切れるだろうが……ほら、あんなにも飛び跳ねて! ううむ、内部機関がどうなっているのかとても気になる。外見からでは推測することしかできないな。神経……それを統括する脳……入っているとすれば一番上のみか、あるいは逆に一番下――」
|スイッチ《・・・・》の入ってしまった藍夜は持ち前の研究熱心さでつぶさにやつらを観察する。
「藍夜……」
楊・暁(うたかたの花・f36185)はためらった。
(「あれCG……とは言い辛ぇ雰囲気……」)
まるで子どもみたいに目を輝かせ、藍夜はああでもないこうでもないと考察し続ける。
「どういうことだ……!? 複数の舌を独立して動かすにはかなり複雑な神経構造が必要になる。それも二枚じゃない、三枚だぞ!? しかも見ろ、あの腹からはみ出してる黒い液体! 常に垂れ流し続けたらあんなのすぐからっぽになって――」
「……藍夜」
ここまでか、と暁は首を横に振った。
「CGなんだよ」
「は?」
「コンピュータグラフィックス」
ちょっとだけ間があって。
「……くそ、あんなに期待したのに!!」
一言で説明すると八つ当たりだった。
「全部凍れ!」
俺の期待を裏切ったうらみ、はらさでおくべきか――藍夜は猛然と召喚した月光氷雨を叩きつける。
言葉通りに全部、だ。
相手が呼び出したお仲間ごと、かっちかちの氷像にしてやる。その合間を揺れ動くおぼろげな炎の名を幻楼火。暁の指先が動くごと、断続的な雷撃と麻痺を与えて魔氷世界からの復帰を許さない。
心音は敵のお仲間をむんずと掴んだ。大きさも重さも手ごろで、ちょうどいい盾代わりである。
「CGっつっても、普通に触れるし攻撃も通るのか……」
しかも、まるで廃墟を守るように群れている。
「なんかおかしいよな」
「心音?」
「だってさ、コンコンコンがありゃ何でも手に入るのがキマイラフューチャーだろ? “意図的な廃墟”に思えてならねぇんだよな」
「なるほど」
藍夜は得意げに唇の端をつり上げる。
「さすが俺の心音だ、洞察が深い」
足下に転がる残骸を踏み越え、2人は連れ立って廃墟の前までやってきた。
オーラの膜に触れた雪が溶け、透明な水滴が伝わり落ちる。
「行くのかい?」
半分だけ残ったウサギの頭が嗤った。
「ああ」
振り返らず、暁が答える。
「引き留めても無駄だ。行こう、藍夜」
すたすたと廃墟の中へ。
隣に並び立つ藍夜が呟いた。
「パンドラの箱か」
「藍夜?」
「……ん、いや。最後に希望があるはずだっていうのは使い古された言葉だろうか? やはり?」
「希望か……」
死の雪に埋もれた廃墟。
どこまでも、白く……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『人類遺跡探索』
|
POW : 瓦礫をどかし、遺構を探す
SPD : 雪を防ぎながら迅速に移動する
WIZ : 遺跡の構造や特徴をスケッチに残す
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
……その雪は、見た目だけなら普通のそれと何ら変わらない。なのにどうしてか、触れた生物に死の眠りを与えるようにできているのだという。
雪と瓦礫に埋もれて眠る人類遺跡。
もしかしたら、意志を持たぬ廃墟でさえもこの雪に願われて夢のなかにいるのだろうか。
ずっと、ずっと。
誰かが来るのを、待っていた……?
影守・吾聞
可能な限り雪に触れずに探索、か
調べるのは屋内に絞った方が良さそうかな
雪が吹き込まない場所なら、遺物は綺麗な形で残ってそうだし
もしかしたら住民がいるかもだしね
ある程度形を残してる建築物の一つに目星を付けて
【悪魔の狂風】発動
向かい風で雪の降り注ぐ速度を落とし
追い風で俺自身のスピードを上げ
『ダッシュ』で一気に目的地まで駆け抜けるよ!
侵入口が塞がってるようなら
風の勢いを借りた『衝撃波』で障害物を吹き飛ばすね
侵入に成功したらまずは…
こーんにーちはー!誰かいませんかー!
なんて、元気に挨拶から!
住民がいて反応があったら
キマフュから来たことを伝えて友達になりたいな
誰もいないなら遺物の調査!
珍しい物、あるかな?
●遺跡調査
case:影守・吾聞(先を読む獣・f00374)
吾聞が選んだ死の雪に触れない手段とは、――“風”であった。
追い風に身を委ねての疾走。
同時に向かい風で雪を吹き飛ばし、身を護る。
「せーの……!」
凝縮させた風で行く手を阻むシャッターをひと思いに薙ぎ払った。派手な音が轟き、破片が雪原に飛び散る。やがてそれも雪に埋もれてゆくのだろう。
ドーム状の建築物。
転がり込んだ内部は案の定、雪は少なくがらんとした空間が広がっていた。
「こーんにーちはー! 誰かいませんかー!」
よいしょ、と立ち上がってよく通る声を張り上げる。雪が吹き込む壁際を避け、奥に向かって慎重に歩を進めながら。
「住民……いないのかな……?」
痕跡を探すように視線を奥へめぐらせた途端のことだった。
「――?」
不意に視界の隅を横切ったなにか。
「今の……」
「ふわッ」
あっちも吾聞に気づいたらしい。
慌てて柱の陰に隠れるが、頭隠して脚隠さず。
……脚? 吾聞は驚きに目を瞬かせた。
まるで、透き通ったゼラチンみたいな。
「君は誰? 俺は影守っていうんだ。ここに遺跡があるって聞いて、探索に来たんだよ」
「カゲモリ?」
「うん。下の名前は吾聞」
「カゲモリアモン……」
半分だけ顔を出してこちらを見る、人型の――けれど、その肌はやっぱりゼラチンみたいに透けていた――女の子。
「君はここに住んでるの?」
こくりと、女の子が頷いた。
「あなたは?」
「俺はキマイラフューチャーってところで生まれ育ったんだ。なあ、友達にならない?」
「トモ、ダチ……」
吾聞がにっこり笑って差し出した手を、女の子は恐る恐る眺めている。
「でも、あの」
こわい。
でも、気になる。
彼女の中でしばしの葛藤があった後に、好奇心の方が勝ったのだろう。やがて吾聞にゆっくりと近づいてきて……遠慮がちに、人差し指だけを小さな手でぎゅっと握ってくれたのだ。
――これが、影守吾聞と謎のゼラチン種族との最初の遭遇であった。
大成功
🔵🔵🔵
サイモン・マーチバンク
『軍用レインコート』と『アノニマス』を装備し【環境耐性】を
何が起きるか分からないから行動は迅速に、ですね
進路に雪や氷塊、瓦礫といった障害物があればUCで強化した『ラビットダッシュ』に炎の魔法弾を装填し破壊しましょう
炎で雪を解かせられればいいですが、万が一もあるので距離を取って
遺物の場合は破壊せずに迂回していきたいです
今回は破壊が目的ではないですからね
あとは気になるものを記録したり回収していきます
静かな作業になりそうです
こんな場所に誰か住んでる訳ありませんからね!
……万が一住んでたらどうしましょう
そ、その時はきちんと挨拶しなきゃ
だってここはパンドラの箱の底
きっと何か希望になるような方でしょうから
●遺跡調査
case:サイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)
茫々と燃える炎――。
過酷な環境に耐えうるため、軍用のレインコートに顔全体を覆うガスマスクという装備で探索に乗り出したサイモンは、|ラピッドラッシュ《突撃銃》の引き金を引いた。
立て続けに撃ち抜かれた瓦礫が燃え落ち、埋もれていた道が拓ける。
雪が溶けてぬかるむ地面を一歩ずつ踏み締めながら進んだ。新たな魔法弾を装填し、どこか頼りない視線を走らせる。
「さすがに、遺物を破壊するわけにはいかないですよね……」
ガスマスク越しの苦笑が静寂の廃墟に響いた。元は高い建物だったのだろう。それが途中で折れたのか、折り重なるようにして路上を塞いでいる。
さて、とサイモンは考えた。
壊すのは難しくない、が……それではいろいろとよろしくないだろう。幸い、回り込めば人がひとり通れるような隙間が見つかった。頭をぶつけないように腰をかがめ、なんとか潜り抜ける。
とにかく静かだった。
試しに耳をすませても、時おりぱらぱらと廃墟の外壁が崩れ落ちる微かな音が聞こえるくらいで。
できるだけ廃墟を見て回り、ささいなことでも記録に止める。持ち帰れそうな破片などは丁寧に包んでバックパックの中へ。
――自分の他には誰もいない。
そう思ってうっかり油断していたサイモンだったので、|それ《・・》を見つけた時には思わず二度見してしまった。
ぱっと見は小柄な老婆であったが。
「……え」
透けてる――!?
「あ、あの、こちらに住まわれてる人、ですか?」
少なくとも人型であるのは間違いない。ちゃんと二本足で立っているし、目と鼻と口のついた顔があったので。ただ、肉体がゼラチンのように透けている。たとえば、そう……まるでクラゲみたいに。
「はい、どうも」
老婆はおっとりと微笑んでサイモンを見上げた。
「あんたぁ、いい若者だねぇ。顔つきはちょぉーっと変わってるけども」
「いえ、これはですね……だめだ、ここで取ったら死ぬ……すみません、自前じゃなくてマスクなんですよ。遅ればせながら、こんにちは」
サイモンはきちんと挨拶した。
だってここは、パンドラの箱の底なのだ。
「はい、こんにちは」
老婆は人懐こく笑う。
――ここがパンドラの箱の底ならば、この出会いはきっと、何かの希望であるはずだから。
大成功
🔵🔵🔵
楊・暁
【朱雨】
藍夜の傘の裡に入り
念のため自分達にオーラ防御かけてから遺跡の中へ
うん…絶対、離れねぇ
ここから先、何があるか分からねぇしな
それなら、と自前のタオルを渡し
これ、マスク代わりにしよう
自分も巻いて
人類遺跡…どういう意味の“人類”なんだ…?
まだ人がいたりすんのか…?
UCで人の気配…生存者を探す
もしヒットしたらそっちに
しなければ聞き耳と野生の勘で情報収集
暗ければ懐中電灯で照らしながら慎重に進行
もし誰かに遭遇したら丁寧に挨拶を
なんか必要なもん…って、コンコンコンあるから大抵揃うか
なら、何か手伝えることあるか?
困ってるなら力になりてぇ
情報は藍夜と都度共有
持ち帰れそうなものは持ち帰り
無理なら写真に収める
御簾森・藍夜
【朱雨】
雪には傘を差し、心音は抱き抱え傘の裡へ
心音、離れるなよ
…たぶん、いやこの雪はたぶんでもなく良くない黒弗が言っていたのもあるが…“これだけ”妙にリアルだ
死の眠り、という言葉が引っ掛かる
それは“寒さ”で冬眠や停止という意味か、“命”が失われる…エネルギー吸収の類なのか
それとも、科学物質的な表現か…だ
…心音、花と口は押えろ。極力吸うな
ほぼ勘ですまん
廃墟で降る、という現状は場所が限定的なのも気にはなるが…廃棄的な化学物質何て現実過ぎないことを祈るだけだ
それに人類遺跡の痕跡は可能なら言語っぽい物ないしは模様を刻まれたもの中心に写真で記録を残す
UCで狼に模様を探させ見つければ都度遠吠えで報せさせる
●遺跡調査
case:御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)&楊・暁(うたかたの花・f36185)
雪の降り積もる遺跡は静まり返っている。藍夜の差す傘にも、暁の|気《オーラ》が紗のようにかかった靴先にも。
「心音、離れるなよ」
「うん……」
藍夜に抱き寄せられた心音は傘を持つ彼の腕に自分のそれを回した。|死の眠り《・・・・》を与えるという雪。果たしてそれが比喩なのか事実なのかもいまのところはわからない。
「そのものずばり、凍死か冬眠か。あるいは生命吸収的な作用を持つのか?」
それ以外、たとえば科学物質的な何かであるという可能性も否めない。何しろ手掛かりがないので勘に頼るほかないのだ。
「……最悪を想定しておくべきだろうな。心音、花と口は押えろ」
「花?」
「間違えた、鼻だ。いや、心音が俺にとって花のように可憐でいつだって愛でていたい存在なのは間違っていないが、今はこの雪をできるだけ吸い込まない方がいいと思う」
「わかった。何かマスク代わりになりそうなもの……|タオル《これ》でいいか?」
傘を持つ手が塞がる藍夜のために持っていたタオルを口元へ巻いてやる。それから、自分の分も。ないよりはましだろう。
(「いやな予感がするな……」)
なにしろ妙にリアルなのだ、この雪は。
藍夜は微かに眉をひそめた。
黒弗が言っていた通り、どう見てもこれはよくない。
「これは、明らかに異常だ」
――真っ白な雪に沈む廃墟。
打ち捨てられてからいったいどれだけの時間が過ぎたのだろう。雪が降ったから潰えたのか、潰えたから降るのか。いずれにしても雪と遺跡が不可分であるのは間違いなかった。
だって、他ではこんなものは見られないのだから。藍夜にできるのは、せめて廃棄的な科学物質などに由来するものであってくれるなよと願うばかりだ。
「だって、人類遺跡だろ? どういう意味で“人類”ってついてるんだろうな」
暁は片目をつむり、拾い上げた何かの部品を眺める。
「わからん」
白い息を弾ませる狼たちの頭を撫で、発見された看板のようなものを写真に収める藍夜。当然、そこには文字があるはずだ。人が残した痕跡。言葉でも模様でも構わない。
「誰もいないのか?」
可能な限り、妖術陣の範囲を広げる――ぴくりと暁の耳が動いた。
「心音?」
「反応があった。あっちだ!」
懐中電灯で暗がりを照らし、地下へ通じる階段を見つける。雪で滑らないよう、足元に気を付けながら降りてゆく。
「この辺りのはず……あ、」
「あ!」
目と目が合った。
だが、人――なのか?
暁は出会った少年の独特な姿に目をみはる。透き通っている。まるでクラゲみたいに。ゼラチン質というのだろうか、形は人型でありながらその肉体はまるで違う様相を呈していた。
「えっと、はじめまして」
「はじめまして」
少年がにっこりと笑った。
「ここに住んでるのか?」
「そうだよ」
簡単なやりとりの結果、彼らはここで雪を凌ぎながら暮らしているのだということが判明する。
「せっかく会えたんだから、あそぼうよ」
「待ってくれ。なにか困ってることはねぇか? それとも、コンコンコンで間に合ってる? おい、待てってば」
「あははっ、こっちこっち! ぼくらのすみかに案内してあげるよ」
まるで追いかけっこを楽しむように少年は藍夜と暁を導いた。
「なんであんなに好意的なんだ?」
「わかんねぇ。ま、いきなり襲ってきたりするよりは全然いいけど」
「あの口ぶりだと、他にも何人かいそうだな」
システム・フラワーズの底で見つかった人類遺跡と、そこに住む謎のゼラチン種族。
謎が解けるどころかむしろ増える一方の状況に思わず嘆息したくなる。今回の調査記録が解明の役に立ってくれるとよいのだが。
――少年は朗らかに手を振っている。歓迎するよ。死の雪が降り積もる世界には不釣り合いなほどに明るい笑顔であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵