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【戦車演習】決戦！　戦車道！

作者：沙雪海都

●注意
　当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
　PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
　公式サイト：（https://koinegau.net）
　公式総合旅団：（https://tw6.jp/club?club_id=4737）

●学生故の宿命なり
　期末試験の日はもうそこまで迫っており、学生達にも緊張が走っているようだが――少し騒がしいのはそれだけではないようだ。説明会が行われる教室の前方、教壇には一人の少女が立っている。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。驚かれている方もいるかと思いますので簡単に自己紹介させて頂きますと、この度、国立希島学園にて客員講師を拝命致しました、ロザリア・ムーンドロップといいます。よろしくお願いします」
　客員という形だが、講師という立場でこの場にいるロザリア・ムーンドロップ（薔薇十字と月夜の雫・f00270）。即ち、学生達が受ける期末試験「戦車演習」の試験官もまた彼女であるということだ。詳しく話せば長くなるが、希島におけるロザリアの、希島防衛戦やその後の復興、その他様々な活動が学園に認められ声が掛かった、ということのようだ。

「さて、今回担当させて頂く期末試験『戦車演習』について、その内容をご説明しますと、現在学園と複数の企業が合同で行っている戦車開発事業の中で作られた試作戦車を用い、皆さんに実戦形式で戦闘をしていただきます。その戦闘内容を評価し、成績と単位に反映する、というわけですね」
　この時期は様々な科目で期末試験が行われることになるが、その中でも戦車演習はハードな部類と考えられている。
「試験場所は工業地区にある国防軍演習場を使わせてもらうことになっています。戦闘の詳細についてですが、戦闘時間は５分間、その前に戦車を完全に機能停止させることができたらそこで試験終了となります。戦闘内容の評価については、『戦車の主要機能をいくつ破壊できるか』と『どれだけ長い時間戦闘不能にならずにいられるか』の二点を重点的に見ていきます。また、本試験は複数人での合同受験が可能でして、その場合は細かい評価基準があったりするのですが……詳細は本説明会の最後に配布するプリントを確認してください。まあ簡単に言うと『みんなで頑張ればみんな良い成績が取れる』というところなので、頑張っていきましょう！」
　ロザリアの声には、試験を終えた先に待っている楽しい行事のために、頑張って試験を乗り越えてほしいという応援の気持ちが滲み出ている。
「新学期になってから３か月の勉強と経験で、自分がどれだけ成長したかを計るチャンスにもなるかと思います。準備する時間もまだありますから、悔いの無いよう試験に臨んでください。それでは、プリントを配布して本日の説明会は終了したいと思います」

　そして試験当日、国防軍演習場には誰よりも早く到着する、試験を受ける生徒達の晴れ晴れとして自信に満ちた表情を願って止まないロザリアの姿があったのだった。

第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動 SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動 WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動 イラスト：YoNa 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●戦車とカタナはどちらが強いのか
　弾丸を刀で斬ることができるか、なんてことが時折テレビ番組などで好奇心の一環として行われることがあるが、戦車にカタナで挑もうとしている小野寺・一沙（剣客撫子・f26434）の画はさらに突拍子もなく。B級映画だとかマイナーな深夜アニメだとか、いわゆる「期待値が低いだけに何をしても許される枠」で堂々と行われるようなことが目の前で起こっているのである。
　もっと言えば相手となる戦車も前衛的。砲塔となるものは主砲一つが主流だろうが、目の前の戦車は少なくとも主砲一、副砲二の三砲構造。細かく探せばさらに小型の砲塔があるのかもしれない。試作機とは言え奔放が過ぎる感はあった。
　さて、試験の時はやってくる。ブザーが鳴って試合開始。戦車はキュルキュルと砲塔の角度を調節して一沙に狙いをつけてきた。ズドンと放たれる徹甲弾、対し一沙は接近を試みていたものの距離はまだ残しており俊敏に真横へステップを踏んだ。
　周囲の空気を巻き込みながら突き抜けていく徹甲弾、嵐の前に在るかのような圧力だったが辛うじて躱す。一沙の動きに合わせて戦車は砲塔を水平回転させ追っていた。
　ただ、接近につれ戦車は長い距離を追わねばならず、自らも転回を必要とされた。その間に一沙は戦車の周囲にピアノ線入りの鉄条網を敷いて回る。踏めばキャタピラが傷つく、しかしその場の移動なくして一沙は追い切れぬとあって戦車は強引に鉄条網の道を行った。ばぎばぎと突き刺さり、双方砕けながら戦車は回るがその速度は徐々に遅くなっていく。
「後は各武器から破壊して……まず左っ！」
　砲塔が伸びてこないと見切って一沙は鋭く攻め入る。掬うように振り上げた刃、垂直方向の斬撃が装甲を抉って左副砲までを斬り飛ばした。これで攻撃性能が一段落ち、防御は削られ戦車の重心がぐらつく。
　一沙はそのまま戦車を跳び越え反対側へと回り、叩き落とす稲妻のような斬撃を見舞って追撃する。右副砲を叩き潰して装甲を確実に剥ぐ。手応えはあり、右往左往する戦車は手を出しあぐねているようだ。
　猛攻は続き、そして攻撃に勝る防御は無い。一沙は電波発生装置を潰し、斬撃を数度重ねて主砲まで斬り落としたところで既定の五分となった。時間一杯まで戦い続け、戦車を半壊以上に追い込んだ一沙は優秀成績者のボーダーラインを見事に突破したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●力を以って勝ち取るべし
　試験と言えば机上で記憶力を計るようなものを想像することが多いが、自由な校風の学園では実技試験も充実しておりシモーヌ・イルネージュ（月影の戦士・f38176）は大層意気込んでいた。力を発揮できる得意分野は単位の稼ぎどころだ。
　戦車一台、生身で挑むには余りあるがシモーヌは開始の合図と共に力強く疾駆し接近する。試作機とは言え硬さは十分、しかしそれは織り込み済みだ。近づき叩くこそ活路と見て戦車に挑む――その砲塔はシモーヌに狙いをつけて主砲を一発。ドンと徹甲弾が発射された。
　僅かに角度をつけ撃ち下ろされてきた弾道の先、シモーヌの腹部に徹甲弾は着弾したのだが――シモーヌはそよ風に吹かれたかのように涼しい顔で駆けていた。手にしたるは黒槍『新月極光』、今のシモーヌには槍しか扱えぬがその射程外からくるダメージを極限まで減らす特異体質に変化している。自分の舞台に立つまで負けは皆無と言っていい。ただダメージは減らしたとは言え零にはならず、戦車もまた連撃性能を発揮して炸裂弾を放ち、シモーヌが真っ向避けぬと来れば火炎弾まで放つ有り様。
　服の表面で燃え盛る火炎をシモーヌは風の中に吹き飛ばしていた。積み重なるも微々たるダメージのまま間もなく槍の射程へ飛び込む。砲塔の角度、キャタピラの方向をサイバーアイが発揮する視力で正確に捉え、狙いをつけてきた主砲がぴたと止まった瞬間に左方へ一気に駆け上がった。
　強烈な風圧を伴って主砲から発射された徹甲弾は真正面に突き抜けていくが、一瞬前に在ったシモーヌの姿は装甲の一部を成すキャタピラの覆いを蹴っていた。目標とするのは戦車から見て右の副砲、天を向くまで振り上げた槍を全力で叩きつけにいく。
　槍は突くだけに非ず。斬撃に似るが鈍器の如き破壊力でぐじゃんと砲身を潰していった。シモーヌが徹甲弾を躱したことで追撃も打ち止めとなり、次の行動へ移るべく転回を図ろうとしたがシモーヌは最短で戦車に迫る。薙ぎで削った鋼鉄の装甲を突きの力技で剥ぎ落とし、戦車の内部を暴いていく。
　気付けば、試験が終わった頃には拉げた砲でぐるぐる踊り回る道化のような戦車がいて、キャタピラ以外を丸っと剥いだシモーヌは成績優秀者に名を連ねるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●壊しても良いのでしたら
　鋼鉄の塊に刃を向けることさえ奇異に映ると言うのに、イリスフィーナ・シェフィールド（相互扶助のスーパーヒロイン・f39772）は素手で立ち向かおうと言うのだから傍から見れば異様な光景だった。だがイリスフィーナは常識外の世界を見た者、高々風変わりな戦車に素手で挑むことに何の迷いがあろうか。
　次に試験を控える生徒や試験を終えた生徒など、イリスフィーナの戦いを見物する目もあった。それで試験という場だが、イリスフィーナは少々派手さを求める。都合の良いことに相手となる戦車は無人の自動操縦機、存分に破壊しても構わないようにできていた。
　試験開始のブザーと共にイリスフィーナは高く飛翔した。羽衣状のマント、ブルー・マリンがイリスフィーナの体を支え、そこへ戦車の主砲が向く。ずどん、と地を揺るがすほどの一発だ。徹甲弾が空へ放たれた――それは隼の如き速度だったがイリスフィーナは体を傾け戦車目掛ける。大気が唸ってびりびりと肌が震えていた。
　斬り裂く轟音が耳に過る。一撃で撃ち落とされる可能性も秘めていただろう。だが間合いを正確に見切っていたイリスフィーナは寸前のところを躱しながら最短で戦車の上に降り立った。熱を帯びた砲塔を両腕で鷲掴みにすると、再度の勢いで急上昇。
『悪い子にはお仕置きですわーっ』
　空中へと釣り上げられた戦車は空へとひっくり返り、そのまま逆さまに叩きつけられた。砲が潰れてキャタピラが空回りを起こす様はまるで駄々をこねる子供のようだ。
「さぁ、スクラップになるまでお付き合いくださいませっ」
　下手に凝っていた装甲がまさしく掴みどころとなっていた。イリスフィーナは時間一杯まで捕まえ振り回し叩きつけて、戦車を廃車同然に仕立て上げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●惑わず揺るがない絆
　強力な主砲、副砲を備えた戦車である。如何にも高火力を誇っていそうな相手に対しコニー・バクスター（ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434）もまた自慢のキャバリア「BRR」を引き連れ試験の場に登場していた。
「最高得点ゲットしに行くよ！」
　成績は良ければ良いだけ後が楽、そんな考えでコニーが真正面から突っ込んでいく相手戦車はしかしまだ動こうとしない。不気味で不審、何かの狙いがあることは何となく察しながら接近していたが、BRRを操る脳波に僅かなノイズが走るのを感じた。
「これはあれか……電磁波攻撃！　だったらこっちもパルスマシンガンだね！」
　控えるBRRに指示が出る。マシンガンの銃口がにゅっと姿を現して、その場に停止したBRRが反動を抑えつけながら電磁徹甲弾を戦車に浴びせかけた。それはただの徹甲弾でもガスガスと装甲を破壊していく威力で戦車は徐々に後退しながら蜂の巣状になり、そしてそれは電磁徹甲弾であるから内部に着弾した徹甲弾が発生装置を狂わせた。
　暴走を引き起こした発生装置はボンと爆発を起こして砕けていた装甲が弾ける。主砲、副砲も正しく機能しなくなった戦車は的になるだけで、BRRが電磁徹甲弾を撃ち尽くした頃にはスクラップの山に変わり果てていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2023年07月31日