1
放課後ハント!

#UDCアース #ノベル

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
🔒
#ノベル


0



知花・飛鳥



源・全




「全ってゲーム上手いんやろ! 一緒にやらへん?」
「えっ!!?」
 知花・飛鳥(コミュ強関西弁男子・f40233)が朗らかにそう言ったとき、源・全(地味目主人公系男子・f40236)の声はいつもの倍ほど音量が出ていた。……もともと地味系男子の全にしては、であるが。
「ゲ、ゲームは好きですけど上手いなんて全然そんなことないです……! 俺なんかと一緒にやっても多分つまんないですよ……」
「ほな、放課後は宜しくな!」
「!?!?!?」
 話、聞いてましたか? という全の顔。勿論、飛鳥は聞いてはいたがそんなことないだろう! という塩梅。コミュ強陽キャに全が叶うわけがないのである。それを全が思い知るのは、数分後のことであった。

「どうしてもあいつ倒したいねん」
「はあ……」
 果たして。二人が遊んでいたのは最近はやりのオンラインゲームである。敵を倒し、経験値を貯め、ドロップ品でアイテムを作る。そんな典型的なRPGだ。
 ゲームは広く浅くの飛鳥でもそれなり単調作業を繰り返せばレベルを上げることができるし、全のようながっつりやりこみ派には強敵撃破&アイテムコンプリートを目標にして、相当遊べる狩りゲーであった。
 もちろん全はきっちりやりこんでいるが、飛鳥も流行りに乗っかって軽くプレイはしていたらしい。
 そんなゲーム中でも飛鳥が指定したのは、割と難敵ぞろいとされるダンジョンの奥に鎮座するボス的である。全としては、それなりに手古摺ったがクリア済みの場所であった。が……、
「うわーーー!! やばい囲まれとる!! 死ぬ死ぬ!!」
「知花先輩! そこ、湧きポイントですから。とにかく下がってください!」
「わ、脇!? う、後ろやな……って」
「!! 下がり過ぎ、です!」
 飛鳥の操る騎士のキャラクターがすさまじい数の蝙蝠モンスターにどつきまわされている。よかった。体力高めの騎士キャラでよかった。飛鳥じゃなくて全は心の底から感謝する。飛鳥に言わしめれば「かっこいいから」で選んだだけのキャラクターだけれども、本当によかった。逃げた先で新たな敵を引き連れてきたときは顔色を失ったけれどもとてもよかった。回復薬飲んでたら耐えられる。
「順番に剥がしていきますから、とにかく耐えて!」
「わー!! 全、どっかいかんといて―!!」
「いますから、ちゃんといますから!」
 全が飛鳥のプレイ画面から消えるので、飛鳥が慌てて剣を振り回す。そうするともちろん反撃を受ける。どんどん減っていHP。
「と、ととととにかく、回復薬連打して」
「は、はいっ」
 横から飛鳥のゲーム画面を覗き込んで、自分のゲーム機を操りながら全は指示を飛ばす。声自身は上ずっているが、その行動は的確だ。全自身はいったん離れて回りこみ、少しずつ飛鳥に群がる敵を倒していく。全のキャラクターは魔法使いで、本来であれば単独行動には向いていないはずだが、全はうまいこと敵の死角に回り込み、少しずつ確実に倒していった。
「ひょえー! なんか奥の方から新手が見えねんけど! なんかごっつい見た目してんねんけど!」
「だだ大丈夫です知花先輩! すぐ行きますからもう少しだけ頑張ってください! 絶対助けますから!」
 ボスやってきた! 軽くパニックになりかける飛鳥に、即座に全がそう声をあげる。……それこそ飛鳥が元もていたボスキャラの、巨大ドラゴンであった。なお、蝙蝠の親玉(飛鳥評)、ワイバーンたちの取り巻きも大量に引き連れている。
「こ、これで抜ける。抜けられるはずです……! こっちです! 早く!」
「えっ、全ってばめっちゃ格好いい……!」
「ななななななななななななななー!?」
 宣言通り、ボスが接近するまでに血路を開く全。それに思わずきゅんと来る! なんてくそ真面目に宣言する飛鳥。突然の宣言に挙動不審になる全……であるが、全はその手を緩めない。声音も会話も非常に危ういが、ゲームを操る手だけがまるで別人のように頼もしいのだ。
「知花先輩、知花先輩から見てあっちから回り込んでください。少しなら僕も攻撃を受け止められるから、挟み撃ちにしましょう」
「へ? 大丈夫? 全めっちゃ柔そうな魔法使いやん」
「全部避けるので大丈夫です」
「わ、わぁぁぁぁぁぁぁ全かっこいいー!」
「はっ、早くしましょう……!」
 手放しの賛辞に悲鳴のような声をあげる全。わかった! と飛鳥はびしっ、と敬礼をする。敬礼をして携帯ゲームを取り落とす。慌てて拾い上げる。
 そんな飛鳥のあやしい操作を全がフォローしながら、二人は徐々にボスを追い詰めていった。
「知花先輩が、なんでこの敵を倒したいって言ったかはわからないけれど……きっと、自分でとどめを刺せた方が楽しいよね」
「ええで! サクッとやっちゃってくれたら!」
「あっ、あああああ聞こえてましたか!?」
 独り言拾われた! 思わず真っ赤になる全に、「でっかい独り言やったからなあ」なんて飛鳥は笑う。一度追いつめてパターンにはまってしまえばそんな会話の余裕も出てきて、最後には、
「ほな、どでかい花火上げたって~」
「は、はい……っ!」
 全の炎の攻撃魔法で、とどめを刺したのであった。

「いやー。終わった終わった。おつかれちゃん」
「は、はい、お疲れさまでした……」
 ドラゴンの死体がすぅっ、と消えていく。後に残るのはドロップ品だけだ。
「あ。これこれ。これ欲しかったん」
 その中で飛鳥が手に取ったのは、ドラゴンの牙というアイテムである。
「? これですか?」
「そや。帽子の材料になるんやで」
 得意げに言う飛鳥。確かに、その牙から作れる装備品はあるが、見た目が面白いだけで何の強さもない、いわゆる趣味装備というやつだ。
「そうですか。じゃああとはこの爪ですけど……」
「あ。残りはぜーんぶ全がとってったらいいわ!」
「へ!?!?!? いやこれ、すっごいレアもの……」
 牙なんか100個は賄えるほどのレアアイテムを、あっさり飛鳥は全の方に放り投げる。
「も、ももももも貰えませんよ、そんな、高価な」
「ええってええって。大体倒せたの全のおかげやしー」
 遠慮する全に、押し付ける飛鳥。ここでも飛鳥のコミュ強陽キャっぷりが遺憾なく発揮され、最終的に全が残りのアイテムを回収することになった。
「うぅ。なんだか申し訳ない……」
「やー。何とか勝てて良かったなぁ……! ありがとなぁ全!」
 なんだか悪いことをしている気になってくる。なんて肩を落とす全に、飛鳥はあっけらかんとしたものだ。画面から顔を上げて、ばんばんとリアル全の背中を叩く。
「こ、こちらこそ……」
 全はそれにこたえるのが精いっぱいだ。画面の中の魔法使いに目をやる。
 これは倒したことがある敵で、自分一人ならもっと消耗せず早く倒せたはずで、本当は誰かと一緒に倒す必要なんて全くない。けれど……、
「何年もソロプレイしかしてなかったけど、誰かと一緒にプレイするっていうのもいいなぁ……楽しかった」
「そうか? ほな今度また、一緒に行こか!」
「!? 聞こえてましたか?」
「でっかい独り言やったなあ!」
 冗談めかして笑う飛鳥。自慢じゃないが、全は声の小ささには自信がある。
 それでも飛鳥は、ちゃんと拾うんだな。なんて。そんなことを漠然と全は感じながら、
「……はい、じゃあ、機会があれば」
 また行きましょうという小さな返事を、飛鳥はやっぱり聞き逃さなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年06月21日


挿絵イラスト