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テンポラリーベイル・メサイア

#クロムキャバリア #ノベル #エルネイジェ王国

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#ノベル
#エルネイジェ王国


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メサイア・エルネイジェ
メサイア
【ヴリトラ回収編】
メサイア御一行がヴリトラを回収しに黒竜教会を訪れるノベルをお願いします。
時系列としましては、アプリヘンド・メサイアの後です。
今回も複数人の合わせノベルでご依頼させて頂きます。

アドリブ・改変歓迎です。
困難・不明な点の解釈はお任せします。

●つまり?
メサイアはキャバリア裂きの刑を逃れるべく、急ぎ戴冠式を執り行う事になりました。
しかし戴冠式の為にはどうしても必要なものがあります。
その必要なものを回収するために、一向は黒竜教会に向けて出立しました。

王都を出発した時間帯は夜明け前です。
メルヴィナとメサイアと水之江とナイアルテさんを乗せた護送車を聖竜騎士団のキャバリアが護衛しています。
ソフィアのインドラは先頭を走っています。
「ハーブティーなのだわ。目が覚めるのだわ」
護送車の中でメルヴィナがお茶を振る舞います。
「わたくしはストゼロの方が好みですわ〜」
メサイアは口から吐いたストゼロをカップに注いで飲んでいます。
車の窓の外には青々とした田園地帯がどこまでも広がっています。
「おハーブ畑ですわ〜!」
久々に見る祖国の景色にメサイアは嬉々としていました。

車に揺られる事数刻、朝日が顔を覗かせた頃に、一向は黒竜教会に到着しました。
黒竜教会は田園地帯に聳え立つ魔王城のような外観をしています。
そして教会からは薩摩剣士のような叫び声が聞こえてきます。
「今の時間帯なら皆中庭に居るはずです。参りましょう」
一向はソフィアに連れられて中庭に向かいました。

中庭では修道女達が朝のチェストに励んでいました。
「シスター・ベアトリクス〜!」
メサイアは懐かしい顔を見付けて駆け出します。
「メサイア皇女!」
こうして二人は数年振りの再会を果たしました。
「いってぇですわ〜!」
そしてメサイアは怒り狂ったベアトリクスに捕まり尻叩きの刑に処されました。
他の修道女達も激おこです。
信仰している神様の御神体を盗まれたので当然です。
「いやー! 不敬罪ですわー! 助けてー! お姉様ー!」
「第一皇女の名に於いて許可します」
「第二皇女の名に於いて許可するのだわ」
お墨付きを得たベアトリクスは叩き続けました。

尻叩きの刑を終えた後、一向は神殿へと案内されました。
メサイアは修道女の装いに着替えさせられていました。
「郷に入っては郷に従えですわ〜」
神殿の中にはヴリトラが祀られています。
このヴリトラこそが戴冠式に必要なもので、ソフィア達が黒竜教会にやってきた目的だったのです。
前回メサイアが逮捕された後に戻されていました。
しかしヴリトラは動きません。
「お直しは万全なのですが、此方にお戻りになられてから一度も起動されていないのです」
ベアトリクスは困った様子で言いました。
「ヴリちゃ〜ん! 起きてくださいまし〜!」
メサイアはヴリトラをぺちぺち叩きます。
するとベアトリクスが怒りました。
「叩いてはなりません!」
「どれどれ、機械の専門家の私が診てあげましょう」
水之江が調査を始めます。
「ソフィア皇女、あのご婦人は?」
ベアトリクスが尋ねます。
「メサイアが出奔中にヴリトラの整備を担当されていた御方と伺っております。ですが注意を……得体の知れない何かを感じます」
ソフィアは小声で耳打ちしました。

ふとベアトリクスは思いました。
「そう言えばメサイア皇女……初めてヴリトラ様にお乗りになられた際には如何にして御起動されたのです?」
「簡単ですわよ?」
メサイアはおもむろに王笏を担ぎました。
「王笏ハンマ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ーーー!!!」
まるで薩摩剣士のような奇声を上げてヴリトラをチェストしたのです。
するとヴリトラは何事も無かったかのように起動しました。
「動かなくなった機械はおチェストすれば動くのですわ〜!」
ベアトリクスは激怒しました。
ソフィアも激怒しました。
「いやー! なんで怒られますのー!?」
二人掛かりでメサイアの尻をぶっ叩きました。

続きます。

だいたいこんなイメージでお願いします。
絶対こうでなきゃダメとかそんな事は全くありませんので、ノリと書きやすさ重視でお願いします。
ナイアルテさんの出演に問題がある場合はいい感じに誤魔化してください。

以下はネタに困った時の参考資料程度に扱ってください。

●ヴリトラは殴られると目を覚ますの?
暴力を司る機械神なので暴力行為が起動の鍵になっています。

●修道女って皆メサイアと同じ格好なの?
はい。


桐嶋・水之江
水之江
【ヴリトラ回収編】
リクエスト内容はメサイアと同文となります。
以下はネタに困った時の参考資料程度に扱ってください。

●なんで水之江も同行してるの?
ソフィアにメサイアの監視と万が一脱走を企てた際の阻止を依頼されたからです。
メサイアは猟兵化しているのでユーベルコードが使えます。
ユーベルコードを扱える者を止められるのはユーベルコードを扱える者だけだとソフィアは考えています。
水之江は王族に近付く為に依頼を受諾しました。

●なんでナイアルテさんも?
ソフィアがメサイアの監視と万が一脱走を企てた際の阻止を依頼しました。
代価は金銭やお菓子など。
受諾の是非はナイアルテさんにお任せします。


ソフィア・エルネイジェ
ソフィア
【ヴリトラ回収編】
リクエスト内容はメサイアと同文となります。
以下はネタに困った時の参考資料程度に扱ってください。

●何人合わせ?
ソフィア
メルヴィナ
メサイア
水之江
以上の4人です。

●文字数配分について
同背後軍団の合わせなのでキャラ毎の文字数や扱いの公平性は気にしないでください。

●戴冠式にヴリトラが必要になるの?
戴冠式でキャバリアファイトする予定なので必要になります。

●なら何故わざわざヴリトラを黒竜教会に戻したの?
本来あるべき場所だからです
宗教上と政治上の都合です。

●ソフィアとシスター・ベアトリクスの関係は?
現役時代のベアトリクスに武術の稽古を付けて貰っていた時期があります。
また、幼い頃のソフィアが正義感に駆られてゴブリンの巣に突撃した際にはベアトリクスが単身で救出に向かいました。
その後ソフィアは尻叩きされました。
現在は師匠であり腹心でもあります。


メルヴィナ・エルネイジェ
メルヴィナ
【ヴリトラ回収編】
リクエスト内容はメサイアと同文となります。
以下はネタに困った時の参考資料程度に扱ってください。

●メルヴィナが振る舞っていたハーブティーとは?
https://tw6.jp/garage/item/show?item_id=193824
このハーブを乾燥させてお茶にしたものです。

●ハッピーハーブ?
エルネイジェ王国中で大量栽培されているハーブです。
精神安定、幸福感、眠気覚醒、感覚の鮮明化など様々な効能があります。
お茶にする他にも煙草の原料になったり粉末状にして調味料にするなど、一般家庭から王室まで日常的に幅広く普及しています。
ハッピーハーブの栽培はエルネイジェ王国の経済基盤の一端を支える重要な産業でもあります。

●この葉っぱってどう見てもアレですよね?
ハッピーハーブです。

●メルヴィナとシスター・ベアトリクスとの関係は?
幼い頃にゴブリン退治に向かうソフィアに無理矢理連れて行かれた際、ベアトリクスに助けて貰いました。
ソフィアを尻叩きする姿を見ていたので怖い人だなと思っています。
ベアトリクスにとってメルヴィナは深い関わりがある訳では無いにしろ、王族の要人である事に変わりはありません。

●今更だけどメルヴィナって姉妹と似てなくない?
ソフィアとメサイアは母ちゃんの血を、メルヴィナは父ちゃんの血を強く受け継ぎました。
腹違いの子とかそういう訳ではないです。



●前回までのあらすじ!
 そのいち! メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)、ぶち込まれる。尚、初犯ではない。

 そのに! 刑はキャバリア裂きの刑! 牛裂きの刑のキャバリアバージョンでる! つまり、死!

 そのさん! 上記の理由からメサイアが真っ二つに裂けるので、戴冠式を執り行って王族として認められなければならない。なるはやで!

 そのし! あっ、死ぃ~って此処で言えばよかったと思ったが、まあ、それはそれでブラックジョークな気がしたのでやめておくとして、一行はバタバタと『ヴリトラ』座す黒竜教会へと護送車でもって向かう!

 そんなこんなであらすじおしまいですわ~――!

●黒竜教会
 護送車の乗り心地は素晴らしいものであった。
 王族を運ぶのだから、それそうおうの格式というものがある。少なくとも桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)の目から見ても、この護送車の作りは及第点であった。
 自分であればもっと良いものができると思ったが、今はそういう場合ではない。
「それにしたって壮観と言えばいいのかしらね」
 彼女の視線の先にあるのは『エルネイジェ王国』が誇る守護機神『インドラ』の疾駆する姿だった。
 この護送車に随伴しているのは聖竜騎士団のキャバリアであった。
 その先頭を切っているのがソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)の駆る『インドラ』である。
「ハーブティーなのだわ。目が覚めるのだわ」
 共に護送車に乗るメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)が水之江とナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)に温かいお茶を振る舞う。
 メサイアはユーベルコードでもって口から無限ストロングチューハイ(リアルブレイカー)をドバドバとカップに注いでまた飲み干している。
 その様子にナイアルテは、視線を逸した。牛かなって思ってしまった。
 反芻とかそういう。

「わたくしはストゼロのほうが好みですわ~」
 己の口からドバったストゼロをカップに受け止めてからまた飲み干す。優雅なんだか野性味溢れるんだかわからない。高低差で頭キンキンしてくる光景であったが、メルヴィナも水之江も突っ込まないので、ナイアルテは見ないふりをした。
 自分だってそんなに常識が有るとは思っていない方であったが、上には上がいるのである。そういう意味では自分の世間知らずは可愛いものだと彼女は自らのことを棚上げしたのである。不届きである。成敗せねばならない。
「それにしてものどかなものね。田園地帯……中央からは離れているようだけれど」
「ええ、今向かっている黒竜教会は国境の間近。このお茶の葉っぱも此処で摘んでいるのだわ」
 水之江の言葉にメルヴィナが応える。
「おハーブ畑ですわ~!」
「これがメサイアさん……あ、メサイア様たちの故郷なのですね」
「様は余計ですわ~! いつも通りでお願い致しますわ~そうでないとなんだかお尻の座りが悪いのですわ~」
 メサイアはナイアルテの言葉遣いにどうにも居心地悪そうにしていた。しきりにお尻の座りが悪いと護送車の座席のクッションの上で座り直している。

「ええ、このハーブは精神安定、幸福感、眠気覚醒、感覚の鮮明可などなど様々な効能があるのだわ」
「お茶にする以外にも用途はありそうね」
「お茶を好む者が多いけれど、煙草の原料になったり調味料に使う者もいるのだわ。我が『エルネイジェ王国』に広く普及しているハーブ、と思ってくれて良いのだわ」
「産業としても優秀ってわけね。戦乱絶えないクロムキャバリアで、今も小国家として残っている所を考えると上手い手じゃない」
 水之江は頷く。
 彼女が求めているのは王族とのパイプである。
 見立てでは最も『エルネイジェ王国』を率いるのに向いているのはソフィアだろうか。メサイアは恐らくもってのほかのような気がする。

「ハッピーハープなのですわ~」
 メサイアの言葉にナイアルテは、名前をどうにかした方がいいのではないかと思った。
「あっ、到着したようですね……えっ」
 ナイアルテは護送車が止まった瞬間、響いた不可解な叫び声に肩を震わせる。
 窓は閉じている。
 なのに車内にまで響き渡る叫び声。
 のっぴきならぬ自体であると彼女は生来の使命感でもって車内から飛び出した。叫びの主、その声は尋常ならざるものであったから、恐らく敵襲か、もしくは襲われている者がいるかもしれないと思ったのだろう。

 だが、そうではないのだ――。

●カムバック・メサイア
 護送車から飛び出したナイアルテが聞いたのは、尋常ならざる叫び声。 
 だが、慌てていたのは彼女だけであった。
 メサイアもメルヴィナも特に気にした様子はなかった。
「これが音に聞く『エルネイジェ王国』の猿叫というわけ。凄まじい声量ね」
 知っているのか水之江博士!
「そうでしょう、メサイア」
「そうですわ~懐かしき故郷に帰って来たって感じが致しますわね~」
「私はあまり……なのだわ」
 メルヴィナは若干腰が退けている。
 何故なら、彼女は過去ソフィアが正義感を爆走させた結果、ゴブリンの巣へと突撃した際に無理矢理連れて行かれた折にトラウマめいたものを植え付けられているのだ。幸いにして大事には至っていない。黒竜教会のシスターに救出されたからだ。

「そういうものではないですよ、メルヴィナ。あれは私にとっても戒めの記憶。未だに彼女に会う時はちょっと足がふるえますもの」
『インドラ』から降りたソフィアがメルヴィナの様子に笑む。
 表情だけでは優雅そのものであるが、ドレスの裾に隠れた足はちょっとガクついていた。それほどまでの存在が目の前の教会にいるのだと水之江は興味深そうであった。
「では、襲われている方も、襲っている方もいらっしゃらない、ということでしょうか?」「ええ、今の時間帯なら皆中庭にいるはずです。参りましょう」
 ソフィアに連れられて一行は教会の中庭へと進む。
 一歩進むに連れて、猿叫が近づいてくる。
 離れた場所からは意味のある言葉に思えなかったし、人の発する声であるようには思えなかった。

 けれど、中庭が開けた瞬間、声の主たちの姿を認める。
 そこにあったのはシスターたちが一心不乱にチェストする姿であった。チェストするってなんだと思わないでもなかったが、そう表現するしかない。
 打ちのめす。
 振り上げ、最上段から叩きつける。
 打ち付ける。
 叩く。振り下ろす。
 単純な反復。されど、その振り下ろす速度は凄まじいものであった。
「なっつかしいですわ~! あっ! あれなるはシスター・ベアトリクス~!」
 メサイアは、猿叫響き渡る中庭を勝手知ったる庭のように駆け出し、懐かしい顔目掛けて駆け出していく。
 その様子は、長年会えなかった旧知の間柄にある者へと駆け寄るキラキラとしたスローモーションにも思えるエモーショナルな光景であった。
 心なしか、メサイアの駆け足が優雅に見える。
 そう錯覚する程にエモな一場面であった。
 振り返るシスター・ベアトリクス。メサイアを認め、彼女は手を広げる。感動的ですら在った。
 血の繋がりはないが、時に姉のように。時に母のように。時に父のように。
 そんな風にしてメサイアは、同級生をチェストしてぼっきり骨をやった時からの旧知のシスターへと飛び込む。

「メサイア皇女!」
 こうして数年ぶりの再会。
 離れていた時間が二人の間に溝を作ることはなかった。いや、はなれていた時間こそが二人の間柄をより一層深いものとし、また絆を強めたのだろう。
 がっしりとメサイアを抱きしめるシスター・ベアトリクス。
「あら? あらら? シスター・ベアトリクス?」
 メサイアはなんか抱きしめる力強くない? と思った。いや、強い。滅茶苦茶強い。なんだこれ。がっちりホールドされているのだが? とメサイアは思った。
 まあ、そのとおりである。
 ぐるりと体が傾く。
「あっ、これどっかで感じたやつですわ! あれ、あれ、あれなんでしたっけ。ジャムみたいな!」
「デジャブ、でしょうか?」
「そうですわ、それですわ~! 昨日ソフィアお姉様にされたような~……」
「ジャしかあってないじゃない」
 そんなメサイアの臀部からものすごい快音が響き渡る。

 そう、言わずと知れた尻たたきである。
 これが伝統的なエルネイジェ王国のお仕置きなのである。老若男女。年代問わず。老いも若きも全員一度はやられたことのあるお仕置き。
 それが尻たたき。
「いってぇですわ~!」
「当然です! 御神体である『ヴリトラ』様を強奪して出奔なさるなど言語道断! 戴冠式まで待てば良いものを! どうして! あなたさまは!!」
 バシンバシンと響く音。
 それはもう悲鳴が上がるのも無理なからぬ程の強烈な音であった。
 さらにシスターたちが集まってくる。 
「ああ~! 皆様ごきげんよう~! お久しぶりですわ~! あの、あのあの! シスター・ベアトリクスをそろそろ窘めて、あひんっ!? いってぇですわ!?」
 メサイアはそろそろ切り上げてもらえると思っていた。
 だが、ベアトリクスだけではなかった。怒っていたのは黒竜教会のシスター全員であった。なんで!? と思ったが、まあ当たり前である。

 御神体を奪って国外出奔していたのだ。
「なりません。メサイア皇女殿下。罪には罰を。幼子でも理解していることです」
 故に、と平手が振りかぶられる。ばしんばしん。あ、それ、もうひとつばしん。
 ナイアルテは後に語る。
 それはもう、あれはとても苛烈なる刑であったと。
 キャバリア裂きの刑よりひどかったのではないかと。何せ、毎日チェスとしているシスターたちがぶっ叩くのである。
 下手な鞭よりめちゃくちゃ痛いのである。
 よくあれで気絶しなかったな、とナイアルテはしかし、お仕置きを受けるメサイアをご立派でした、と褒め称えるのだ。見事耐えきったのだと。
「いやー! 不敬罪ですー! 助けてー! お姉様ー!」
 ていうか、ぶっ叩かれ過ぎじゃあありませんこと!?
 いくらなんでも、とメサイアはまだ続くお仕置きに涙目になっていた。

 だが。
「第一皇女の名に於いて許可します」
「第二皇女の名に於いて許可するのだわ」
 ご立派とは一体。
「いやー! お尻の座りが悪いと思っておりましたの! これのことだったのですわ~! グリモアの予知はなんで何も言ってくれなかったんですの、ナイアルテ様~!」
「世界の危機ではないから、ではないでしょうか」
「そりゃそうね。別にお尻が腫れても世界は滅びないでしょ」
「そんなわけありませんわ~! わたくしのお尻が腫れて海から巨神がどんぶらこってこともあるでしょう~!? あら、どんぶらこって擬音意味わかんねぇですわ~って、いってぇ~ですわ~!!」
 そんな風にしてメサイアのお仕置きは黒竜教会のシスターたちが満足するまで執り行われるのだった――。

●暴力
 尻叩きの刑という禊を終えた一行はシスター・ベアトリクスに案内されるままに神殿の中へと歩んでいく。
 メサイアは修道女の装いに着替えている。お尻が腫れて、ちょっと窮屈に感じる。パツパツである。
 とはいえ、メサイアも慣れたものである。
「郷に入っては郷に従えですわ~」
「横にスリット入っていてよかったわね、その修道服。あれだけ叩かれても大きなお尻が入って」
 水之江の言葉にメサイアは頷く。
 ナイアルテはなんかこう、邪教のアレな感じの雰囲気がするのは気の所為ではないかなと思ったが、まあ、気の所為ではない。多分邪教。
 何せ暴竜たる『ヴリトラ』を奉っているのだから。
 けれど、ナイアルテは、神殿の中に佇む『ヴリトラ』の姿を見上げ、首を傾げる。
「……起動していないわね」
 水之江はナイアルテの様子に言葉を紡ぐ。
「ええ、お直しは万全なのですが、此方にお戻りになられてから一度も起動されていないのです」
 ベアトリクスは困惑しているようだった。
 メサイアが居るときには起動していた。なのに、此処に戻した時にはもう既に炉が停止していたのだ。

 ソフィアは水之江に向き直る。
「水之江博士は、メサイアと共に『ヴリトラ』の整備も行ってくださっていたと聞きます。この不具合、どうご覧になられます」
 水之江は肩をすくめる。
 これが己を此処まで連れてきた理由かと承諾する。
 彼女はソフィアからメサイアの関しと万が一の脱走を企てた際に、その阻止を依頼されている。むしろ、こちらの方が本題であったのだろうと理解する。
 メサイアの脱走阻止は保険でしかなかったのだ。
「どれどれ機械の専門家の私が診てあげましょう」
 すぐさま水之江はヘッドマウントディスプレイを起動し、『ヴリトラ』のメンテナンスコードを引っ張り出す。

「ヴリちゃ~ん! お眠ですの? 起きてくださいまし~!」
「叩いてはなりません!」
「なんでですの! お寝坊して戴冠式に間に合わなかったら、わたくしキャバリア裂きの刑ですのよ! 真っ二つに引き裂かれて左右にさようならですのよ~!?」
 ぺちぺち『ヴリトラ』の装甲を叩くメサイア。
 嗜めるベアトリクスに構わずメサイアべちべち叩き続けている。はよ! と言わんばかりであった。
「メサイア、やめるのだわ。今博士が調べているのだから」
 メルヴィナに取り押さえられてもメサイアは、ぶーたれていた。

「ソフィア皇女殿下、あの御婦人は……」
「メサイアが出奔中に『ヴリトラ』の整備を担当されていた御方とうかがっております」
 ベアトリクスの言葉にソフィが頷く。
 信頼、と呼ぶにはあまりにも異なる雰囲気にベアトリクスは察する。
 只者ではないと彼女も理解しているのだろう。
「ですが、ご注意を……得体の知れない何かを感じます」
「……御意」
 小声にてささやかれる言葉を水之江は気にもとめていなかった。
 メンテナンスコードから『ヴリトラ』の様子を探る。
 見た所問題はない。エラーを吐き出している箇所もない。というか、反応がない。炉も停止している所を見ると休眠している、と言ってもいい。
 それだけだ。
「別におかしいところはないわね」
「そんなはずは……」
「私が整備していた時とかわらない。反応がない、ということは起動キーが作動していないということでしょう?」
 水之江は訳のないことだと頷く。

 異常はない。強いていえば、異常がないのが異常ということだ。
「……起動キー」
 メルヴィナは思い当たるところがあるようだった。
 だが、上手く言葉にできない。思い返すと悲しみが心の中から溢れてくるからだ。それだけではない感情もまた。だからこそ、蓋が外れないように意識の外にそれを置いたのだ。
「とはいえ、異常がない、とおっしゃれられる以上……そう言えば、メサイア皇女……初めて『ヴリトラ』様にお乗りになられた際には如何にして……」
 そう、国境付近に敵が現れた際にメサイアは『ヴリトラ』でもって、これを撃退している。
 あのときの再現が、鍵なのではないかとベアトリクスは思ったのだ。
 その言葉にメサイアはぺちぺちするのに飽きてきたのか、そろそろストゼロでもドパろうかと思っていたので、気のない返事をする。
「簡単ですわよ。そんなの」
 はい、テレレレン!
「どっかで聞いたようなサウンドエフェクトね」
 水之江が著作権的なことを言いかけたので、ナイアルテは慌てて止めた。彼女もお菓子でつられて此処までやってきたクマみたいなもんである。
 仕事はしとこうと思ったのだ。今のところ、何もしてないので。

 メサイアが取り出したのは王笏であった。
 それを振りかぶる。
 あ、と誰もが反応できなかった。ナイアルテはできたかも知れないが、お菓子のことで頭一杯だったのでできなかった。仕事しろ。
「王笏ハンマ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛――!!!」
 それは猿叫。
 シスターたちが日々チェストするのと遜色なく。またそれ以上の裂帛の気合いと共に『ヴリトラ』の装甲に叩きつけられるハンマーの一撃。
 ユーベルコードにまで昇華する一打は、『ヴリトラ』の黒い装甲に激突して火花を散らす
。火花は輝きと共に黒い装甲を照らす。

「動かなくなった機械はおチェストすれば動くのですわ~!」
 その言葉と同時に輝く『ヴリトラ』のアイセンサー。
「起動、したのだわ……」
「ほらほら、どうですの~? これがおチェストの力ですわ~! シスター・ベアトリクス、褒めてくださっても良いのですわ~! いえ、褒めてくださいまし~! わたくし、やればでき――って、いってぇですわ!?」
 ばしん! とベアトリクスにメサイアはお尻をぶっ叩かれる。
「なんと罰当たりなことを!」
「メサイア、王笏をなんだと思っているのです!」
 ソフィアもご立腹である。
 いや、『ヴリトラ』の起動が目的だったのならば、これでよかったのではないかと水之江は思ったが、黙っておく。
 なんかそれらしい結論を今、頭の中で組み立てているのだ。
 これを足がかりに王族に恩を売ろうって魂胆であった。腹黒すぎる。

「いやー! なんで怒られますのー!? ちゃんとヴリちゃん起きたでございましょう~!? なんでですの! もう今日のわたくしのお尻はお餅じゃあありませんのよ~!?」
 ソフィアとベアトリクスによって交互に高速尻叩きに晒されたメサイアの叫びが神殿に木霊する。
 それを素知らぬ様子で『ヴリトラ』のアイセンサーが輝いた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年06月17日


挿絵イラスト