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その柔き毛皮の下に

#シルバーレイン #戦後 #【Q】 #ゴーストタウン #オブリビオン溜まり

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#オブリビオン溜まり


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 がちがちと、歯を噛み合わせる音がする。それに混じって、生温かい吐気が周囲を満たしていた。
 音の源は複数あった。数えるには、両手の指を総動員しても到底足りない。
 白く柔らかな毛皮。黒く湿った鼻。動く度にちりちりと鈴を鳴らす首輪。それらだけを見て取れば、その存在は犬に似ていた。しかし、大人の拳がゆうに三つは入りそうなほど大きく開かれた口と、そこから見える血の付いた牙が、それらがオブリビオンである事を示している。
 オブリビオンの犬は、地面のとある一点から発生し続けていた。瞬きを数度繰り返すだけの時間が過ぎた頃には、もう何処が発生源なのか分からなくなってしまう。
 オブリビオンの犬達がぐるりと歩むと、足元の地面が音を立てて変形して行った。その形は迷宮じみて、足を踏み入れた者を惑わそうとするかのようだ。
 地形の変化は急速に進み、迷宮めいた場所が見る間に広がる。
 その様子を、歯噛みしながら見詰める目があった。

「皆さん、お集まり頂きありがとうございます」
 神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は、グリモアベースに集った猟兵達へそう言って一礼した。
「第二次聖杯戦争の舞台となった金沢市で、不可解な『オブリビオン溜まり』が発生している事が分かりました」
 オブリビオン溜まりは、とある地下道を抜けた先にある。そこからは、次々と新たなオブリビオンが発生し続け、一つの群れを成しているという。
 発生し続けているオブリビオン達は、周囲の迷宮化を促すゴーストタウン現象を引き起こしている。その結果、急激に地形が変化したそこは、地面さえも不安定な危険地帯となっているという。
「ですが、皆さんに行って頂きたい場所には、そこを故郷とする地縛霊達がいます」
 彼の地にいる地縛霊達は、人に危害を加える事無くひっそりと暮らしていた。彼らはオブリビオンに奪われた故郷を取り戻すべく、力を合わせて立ち上がろうとしているらしい。
「皆さんには、この地縛霊達と協力して、ゴーストタウン現象を解除して頂きたいのです」
 転送された先では、地縛霊の青年が猟兵達を待っている。左足に地縛霊の鎖が巻き付いており、ミニチュア視肉を持っているのですぐに分かるだろう。
 この青年は現地の地縛霊達の代表者のような存在らしく、彼と接触すれば他の地縛霊達も猟兵達に協力するべく共に動いてくれる。
「現地の地縛霊達と合流した後は、すぐにでもオブリビオン溜まりに行って頂きたいのですが……その前に、問題があります」
 急速に進行するゴーストタウン現象の影響で、地下道には特殊空間が発生しているのだと薙人は語った。
 この特殊空間は条件を満たさない限り解除される事は無く、地下道の先に行く事も出来ない。道幅は広く、猟兵達ならば動きに支障が出る事は無いのが幸いだろうか。
「皆さんにはまず、特殊空間内のモーラットを一体残らず捕獲して頂きたいのです」
 特殊空間内に何体のモーラットがいるかは不明だが、地縛霊達と協力して取り組めばそれほど時間はかからない。捕獲したモーラットは地縛霊達の一部がマヨイガまで連れて行ってくれるため、その後を気にする必要も無いようだ。
 全てのモーラットを捕獲し終えると、特殊空間は解除され、地下道を抜ける事が出来る。
「特殊空間が解除され、地下道を抜けると、オブリビオン溜まりの発生源がすぐに見えて来ます」
 ここまで来ると、地縛霊達がオブリビオンの群れを一箇所にまとめて追い込んでくれるという。後はその群れを猟兵達が蹴散らせば、ひとまずこの場で発生しているオブリビオン溜まりと、それに伴うゴーストタウン現象は解消される。
 地下道を抜けた先の足場は瓦礫が積み重なったようになっているため、それなりに対策は必要になるだろうけれど。
「不可解な現象ですが、放っておく訳にも行きません。どうか、対処をお願い致します」
 お気を付けて。
 薙人はそう言って、掌にグリモアを浮かべた。


牧瀬花奈女
 こんにちは。牧瀬花奈女です。シルバーレインの戦後シナリオをお届けします。このシナリオは二章構成となります。

●一章
 ゴーストタウン現象によって発生した特殊空間で、現地の地縛霊達と協力してモーラットを捕獲して下さい。全てのモーラットを捕獲すると、オブリビオン溜まりの発生源へ進む事が出来ます。

●二章
 集団戦です。詳細は断章にて。

●その他
 再送が発生した場合、タグ及びマスターページにて対応をお知らせします。再送が発生しても構わない、という方は、プレイングの冒頭に○をご記載頂けますと幸いです。
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第1章 冒険 『脱走モーラットを捕まえろ』

POW   :    全力で追いかけっこをして疲れさせて捕まえる

SPD   :    先読みして待ち構えて効率よく捕まえる

WIZ   :    餌や罠を準備して片っ端から捕まえる

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 グリモアベースから転送された先は、地下道の入り口近くだった。猟兵達が周囲を見回すと、ミニチュア視肉を手に持った青年の姿が目に入る。
「猟兵さん達かな? 今回はよろしくお願いするね」
 青年が挨拶をすると、何処からともなく他の地縛霊達も顔を見せ始めた。十人を少し超えるくらいの人数だが、援軍として動いてくれるのならそれなりに頼れるだろう。
「地下道に入ると、すぐ特殊空間に囚われるよ。まずは、一緒に空間内のモーラットを全部捕まえよう」
 頑張ろうねと、地縛霊の青年は微笑んだ。
 
キアラ・ドルチェ
【護】〇

地縛霊さん達、今日は宜しくお願いします!
ふふ、ゴーストさんとの共同作業初めてなので、楽しみっ♪
ん? 時人さん難しい顔して、どしたですか? 

さて…ではネミの森の子犬たち!
モラさんたち追い込んで、捕獲ですよー!

どっかに隠れてる子とかもいるかもなので、魔女帽からお菓子を取り出して、釣り出し狙い…!
「ほーら、美味しいお菓子ありますよ、皆さんおいでなのですー!」
そして来たところを…「かくほー!」(がしぃ!

モラさんたちは、マヨイガでまったりして下さいね?
私もそのうち遊びに行くので…
と言うか、マヨイガデートツアーとか誰か企画してくれないかな
もっとゴーストさんと交流したいのです(モラさんむぎゅぅしつつ


葛城・時人
【護】〇

まず地縛霊に挨拶を
「こんちは。猟兵の葛城だよ、宜しくね」

けど
散々地縛霊倒してたし
能力者だったと言うのは躊躇うなあ
最後の戦争の後戦ったのは
意思疎通不能で危険な奴ばっかで
共存可能な彼らとは違うけど
それでも同胞殺しに見えちゃうかもで

とか考えてたら一瞬お留守なってた
相棒に小突かれハッとする
キアラも不思議そうな顔
益体もない事考えすぎだね
「ごめん!やろ!」

慌てて白燐同期翔詠唱
これならモラたち燻り出せる

「追い込むよ」
勿論物理も手伝うと言いつつ蟲の目を借り
中を巡回
居たら高速で入口へ追立て
一寸可哀想だけど
君達が其処に居たら進めないからね

「マヨイガ行ご案内だよー」
捕まえたらもふを楽しみつつ優しい手に託そう


凶月・陸井
【護】〇

ゴーストタウンもなんだか懐かしいな
ただあの頃とは違って更に危険だからね
彼らの為にもしっかり消し去ろう

相棒の顔を見ると、何か思案しているのが解る
実際俺も思う所はあるから
多分引っかかっている所は同じだろう
でもだからこそ、自分の思案も飛ばす様に
相棒の背中を軽く叩いてやって
「あれこれ考える前に、今は一個ずつ済ませよう」

行動開始と同時に【水遁「霧影分身術」】を使用
相棒とキアラさん、それに地縛霊達と手分けして追い込み漁だ
「それじゃ、とにかく確保…おっと、暴れないようにな」

放置してオブリビオンの牙にかかるような事はさせたくない
モラ達は漏れなく確保する為にも全力だ
「大丈夫、安全な所に行くだけだからな」




「地縛霊さん達、今日は宜しくお願いします!」
 キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は、青年を始めとした地縛霊達へ元気良く挨拶をした。青年がミニチュア視肉を胸ポケットにしまって、朗らかな笑みを見せる。
「やあ、元気なお嬢さんだ。こちらこそ、よろしくお願いするよ」
 周囲の地縛霊達も、ぺこりとお辞儀をしたり歓迎の言葉を口にしたりと、友好的な態度を見せてくれていた。初めてのゴーストとの共同作業は、キアラにとって良い滑り出しをしたようだ。
「ゴーストタウンもなんだか懐かしいな」
 凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)の脳裏に浮かぶのは、能力者だった頃に足を運んだ場所だ。己の力を高めるため、周囲の安寧を護るため、敵対するゴーストのいる地へ幾度挑んだろうか。
 今引き起こされているゴーストタウン現象は、当時よりも更に危険なものだと陸井は理解していた。故郷を取り戻すべく立ち上がった地縛霊達のためにも、しっかり消し去ろうと気を引き締める。
「こんちは。猟兵の葛城だよ、宜しくね」
 地縛霊達にそう告げる葛城・時人(光望護花・f35294)は、少し浮かない顔だった。ここに集った彼らの足に巻き付く鎖は、どうしても能力者時代に散々倒して来た地縛霊の事を思い起こさせる。
 銀誓館時代の最後の戦争が終わった後、時人が仲間達と戦った相手は、意思疎通の出来ない危険な存在ばかりだった。人を襲わず、共存が可能な彼らとは違う。けれど――彼らからすれば、元能力者の猟兵である時人は同胞殺しに見えてしまうかもしれない。
 そんな時人の様子を、陸井は見逃さなかった。
 陸井とて、思う所はある。きっと、引っ掛かっている所は相棒も同じだろう。
「ん? 時人さん難しい顔して、どしたですか?」
 思案顔の時人へ、キアラは目を瞬かせる。
 とん、と、陸井が時人の背を軽く叩いた。自らの思案も飛ばすように。その感覚は、時人の意識を現へ引き戻すには十分だった。
「あれこれ考える前に、今は一個ずつ済ませよう」
 陸井はそう言って、柔和に微笑む。益体もない事を考え過ぎだと、二人の表情を見て時人は意識を切り替えた。
「ごめん! やろ!」
 言うと同時、先導する地縛霊達の後を追って地下道へ入る。広がる特殊空間の中では、確かに無数のモーラットが跳ね回っていた。
「さて……ではネミの森の子犬たち! モラさんたち追い込んで、捕獲ですよー!」
 キアラがユーベルコードを詠唱し、ふわふわなシベリアンハスキーの姿をしたコボルト人形を召喚する。その数は、地下道を縦横無尽に駆け巡るモーラットにも負けないほどだ。
 コボルト達はキアラを補佐するように動いてモーラットを壁際へ追い詰め、もふもふの体を両手に抱える。
 時人が|白燐蟲《ククルカン》を呼び出すのと、陸井が己が分身を呼び出すのとはほぼ同時だった。陸井が分身と共に地下道内を動き、地縛霊が追い掛ける一体を向かいから挟み撃ちにして捕獲する。
「追い込むよ」
 時人は自身も動きながらも、ククルカンの目を借りて地下道内部を巡回した。二体のモーラットを見付けたククルカンは、きゅいと鳴いて高速でふわふわの毛玉を追い立てて行く。
 一寸可哀想だけど、君達が其処に居たら進めないからね。
 もきゅもきゅと慌てるモーラット達へ胸の内で呟いて、時人はククルカンに燻り出された二体を両手でしっかり抱き止めた。
「マヨイガ行ご案内だよー」
 もふもふを楽しみつつ、マヨイガへの移送を担当する地縛霊へモーラットを手渡す。
 無数のコボルト人形達と地縛霊達。それにキアラと時人の手があれば、モーラットを捕まえる事は陸井にとって難しくなかった。壁に張り付くモーラットへ黑と青で彩られた投げ縄を放ち、しっかりと捕縛する。
「それじゃ、とにかく確保……おっと、暴れないようにな」
 陸井はじたじたと動くモーラットから、優しく縄を外した。それでも消沈したような声で鳴くモーラットの頭を、大丈夫だとそっと撫でる。
「安全な所に行くだけだからな」
 放置してオブリビオンの牙にかかるような真似はしたくない。陸井はただの一体たりともモーラットを逃すつもりは無かった。
「陸井、そっちに行った!」
「ああ、分かってる」
 時人の声に応じ、陸井はまた動き出す。
 もしかしたら、隠れている子がいるかもしれない。キアラはそう考え、被っていた魔女帽を脱いだ。どうやって収納していたのか、その中にはお菓子が詰まっている。
「ほーら、美味しいお菓子ありますよ、皆さんおいでなのですー!」
 もきゅ! と元気の良い声がして、三体のモーラットがころころと転がり出て来た。お菓子の入った魔女帽を、つぶらな瞳が見詰める。
「かくほー!」
 その隙に、キアラは勢い良くモーラット達を抱き締めた。モーラットが口をもぐもぐ動かしている間に、地縛霊の少女へとふわふわ毛玉を一体ずつ渡す。
「モラさんたちは、マヨイガでまったりして下さいね? 私もそのうち遊びに行くので……」
 と言うか、マヨイガデートツアーとか誰か企画してくれないかな。
 むぎゅうとモーラットを抱き締めつつ、キアラは思う。ゴースト達とは、もっと交流したい。そう願うキアラの後ろで、陸井と時人がそれぞれ一体のモーラットを捕まえていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
「よろ…く、お願…しま…ね」
青年さんと地縛霊さん達に挨拶してから任務を遂行します。
捕まえる方法は三、四人組んでできないか相談しますね。
えと。数人で挟撃し捕まえる方が効率がよいと考えています。
場合によっては逃げ場のない場所へ追い込もうと思います。
青年さん達に相談という形で作戦をお話ししようと思いますよ。
「…と、言…ことで…お願…しま…ね」

作戦を実行時には見切りと野生の勘と第六感を駆使しますね。
素早く逃げるので早業やダッシュやジャンプも必要でしょうか。
青年さん達との協力や連携は必須です!私は補佐も考えますね。
もしかすると他猟兵さん達との協力連携が必要になるかも…です。

「怖が…なく…も大丈夫…すよ…♪」
優しく抱きしめたモーラットさんには安心させる一言を。
言葉は通じないでしょうけれど逃げなくなるかなと思いまして。
それから今回は腰に差してはおきますが刀は使用しません。
人斬り包丁はモーラットさん達を捕まえるには不必要ですから♪




 浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)が特殊空間の中へ入ると、数は減っているもののまだ沢山のモーラットが空間内を元気に跳ね回っていた。
「よろ……く、お願……しま……ね」
 墨は青年を始めとした地縛霊の面々に挨拶をして、ぺこりと頭を下げる。元気なモーラットの声に掻き消されそうな声音ではあったが、青年の地縛霊は笑顔で挨拶を返してくれた。
 切り揃えた前髪の下から、墨は改めて特殊空間内を見渡す。この中を無秩序に遊び回るモーラット達を、墨一人の力で捕まえ切るのは不可能だ。
 幸い、地縛霊達は手分けしてモーラットを追い詰められる程度の数は存在している。
「相……が、ある……ですが……」
 墨は地縛霊の青年に、三、四人で一組を作り、モーラットを挟撃するのはどうかと提案した。ただ闇雲に走り回っても、あのふわふわ毛玉は捕まり辛いだろう。少数ずつ追い詰め、場合によっては逃げ場の無い所へ追い込めば効率よく捕獲出来るかもしれない。
「ああ、それはいいね。みんな、この猟兵さんの案を試してみよう」
 地縛霊達が声を揃えて返事をし、グループを作って行く。おおむね、四人のグループが幾つか出来上がるまで、瞬きを三度するだけの時間が過ぎた。
 墨の元にも、少年二人と少女一人、合わせて三人の地縛霊が集まる。
「……と、言……ことで……お願……しま……ね」
「こちらこそ、よろしく!」
 ぺこりと頭を下げる墨に、地縛霊達は快活に返事をした。
 地縛霊達は幾つかの地点に分かれ、残るモーラットを捕まえにかかる。墨も少年と少女と共にモーラットを追い掛け始めた。
 丸っこい毛玉のような動きをよく観察し、墨は一体の動きを見切って手を伸ばす。ぽふりと掌へ柔らかな感触が伝わるまで、瞬き一度の時間も要さない。墨が受け止め切れなかった一体は、少年の一人がむぎゅっと捕獲してくれた。
 もきゅもきゅと、壁際へ追い詰められたモーラットの声が聞こえる。グループに分かれての挟撃作戦は功を奏しているようだ。
 同じ方向からモーラットを追い掛けていた少女の地縛霊が、墨からモーラットを受け取ってマヨイガへ連れて行く担当の地縛霊へと渡す。
 ぽん、と、不意にモーラットが跳ねた。捕まえようとしていた青年の手をすり抜けて、モーラットはもきゅもきゅ言いながら更に高みへと至る。
 少年と少女にこの場を任せ、墨は青年の手から逃れたモーラットの元へと疾駆した。装束の裾をはためかせて、地下道の中で跳躍する。もきゅっと目を見開いたモーラットは、瞬きを一度した後に墨の手の中へと収まった。
 軽やかに着地した墨へ、少年と少女がわあと歓声を上げる。
「お姉さん、小さいのにすごいね!」
 称賛の言葉が少しばかりくすぐったい。墨は手の中のモーラットへ、前髪の下から視線を送った。
「怖が……なく……も大丈夫……すよ……♪」
 モーラットを優しく抱き締め、墨は安心させるように言葉を掛ける。猟兵へ覚醒していないモーラットが言葉を理解してくれるかは分からないが、綻んだ口元や柔らかく静かな声は安らぎを引き出せる筈だ。
 墨は腰に差した刀の重みをふと感じ取る。戦いとなれば彼女の武器となるそれを、今は使うつもりは無い。
 ――人斬り包丁はモーラットさん達を捕まえるには不必要ですから♪
 抱き締めたモーラットを地縛霊の少女に渡した時、ぱきんと音を立てて特殊空間が解除された。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ホチキスドッグ』

POW   :    ドッグバイト
【噛み付き】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    ホチキスファング
【ホチキスのように開いた大きく肉体】で攻撃する。[ホチキスのように開いた大きく肉体]に施された【開かれる口の大きさ】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ   :    下方からの脅威
敵より【体高が低い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。

イラスト:はるまき

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 地下道を抜けた先で猟兵達を真っ先に出迎えたのは、生温かい獣臭だった。白く柔らかな毛皮を持つ、犬に似たオブリビオンが、ぐるりぐるりと円を描くように歩き回っている。数はもはや、数える気すら起きない。体高は、大人の膝くらいだろうか。大きく裂けた口からは血の付いた牙が覗き、本来の犬が持つ可愛らしさなど欠片も感じられない。
 オブリビオンに近付こうと足に力を入れて、猟兵は地面の状態に気が付いた。瓦礫を幾重にも積み上げたような地形が、猟兵達の足裏を刺して来る。立ち回りには注意が必要だ。
「みんな、行こう!」
 青年の叫びに応じ、地縛霊達がオブリビオンの群れへと突進した。無秩序に歩き回っていたオブリビオン達は、地縛霊達の必死の抑え込みにより一箇所へとまとめられて行く。
「今のうちにこいつらを倒してくれ! 頼む!」
 地縛霊の青年が猟兵達へ声を上げた。地縛霊達がオブリビオンを一箇所に抑え込んでくれている今なら、群れを一掃出来る。そうすれば、今ここで発生しているオブリビオン溜まりと、それに伴うゴーストタウン現象は解消するだろう。
 猟兵達はオブリビオンに向けて、一歩を踏み出した。
 
浅間・墨
破魔を宿した【閻魔】を『国綱』の一振りで使用しますね。
この技ならば青年さん達にはなんの影響はないはず…です。
私の刀は特殊な代物ではないので霊は斬れないので。

早業と2回攻撃を加えた【閻魔】の技で斬って捨てます。
足場が悪いので悪路走破を駆使して移動しましょうか。
まず狙うのは抑え込む力が限界そうなところからですね。
早く負担を軽減させてあげたいので連携と協力は必須です。
もし地縛霊さん達が襲われてしまったらそちらを優先します。

刃先が地に触れるくらいから斬り上げる形で斬りますね。
相手は犬で。かなり低い位置から襲ってくると思うので…。
なるべく返す刀で素早く斬り下ろして二撃で仕留めたいですね。
斬り上げるのが困難な状況の場合は…突きから斬り上げます。
…かなり残酷になってしまいますが…しかたありません…。




 乱れ刃文の大刀に、破魔の力が宿る。浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)の愛刀の一振りであるこの刀に、特殊な力は秘められていない。上乗せされるのは全て、墨自身の能力だ。
 納刀状態から一気に抜刀し、墨は巫力を籠めた一撃で手近なホチキスドッグの一体を下から斬り上げる。邪心のみを傷付けられたオブリビオンの犬は、歯を剥き出しにして墨に食い付かんと迫った。刀を翻し、今度は上段から頭へ刃を叩き付けるように斬る。悲鳴じみた声を上げて、ホチキスドッグは動かなくなった。瞬き一度の後、その姿が消滅する。
 この技ならば青年さん達にはなんの影響もないはず……です。
 胸の内で呟き、墨は切り揃えた前髪の奥から地縛霊達の様子を窺った。青年を始めとした地縛霊達が、彼女の攻撃で手傷を負った気配は無い。ほっと小さく安堵の息を吐いて、墨はホチキスドッグ達を抑え付けている地縛霊達を見渡した。抑え込む力が一番弱い場所へと、装束の裾をはためかせつつ走る。足場は悪かったが、墨は辛うじてまともに踏み込める場所を見付けて移動して行った。
 地縛霊とホチキスドッグの間に入り込み、鞘に収めた刃を抜き放つ。地面すれすれの位置に刀身を滑り込ませ、二度続けて獣の内心を斬った。犬の口ががばりと裂けるように開き、墨の腕に狙いを付ける。顎の下へ潜り込ませた刃で斬り上げ、その一撃を避けた。返す刀で脳天を斬り裂いて、また一体を仕留める。
「ここはまだ大丈夫だから、向こうの子を助けてあげてくれないかな」
 地縛霊の青年の言葉に、墨はこくりと頷いた。青年の視線が示した場所へ、悪路を跳ねるように進む。
 青年の言った場所にいた地縛霊は、抑え込む力が限界に近いようだった。墨はホチキスドッグの前に躍り出て、巫力を籠めた一撃を叩き込む。邪心を貫かれた犬は唸りを上げ、墨との距離を縮めにかかった。噛み付く牙を刀身で受け止め、弾く。涎を撒き散らすホチキスドッグを下段から斬り上げた。ごろりと腹を見せたところを、躊躇い無く斬り伏せる。
 この方法で、数を減らして行けそうです。
 ホチキスドッグが消滅するのを見届けて、墨は己の戦法が間違っていない事を知った。
 その耳に、鋭い悲鳴が届く。身を翻せば、ホチキスドッグに食い付かれている地縛霊の姿が目に入った。すぐさま駆け付け、ホチキスドッグを背面から斬る。その名の通りホチキスの如く開いた口が地縛霊から離れたのを確認すると、脇腹を薙いで転がした。
「大丈……夫……で……か」
「ありがとうございます。これくらいなら、まだまだ平気ですよ」
 切れ切れに問い掛ける墨へ、地縛霊は元気に笑んで見せる。墨はふうと呼吸を整え、刀をまた納刀状態にした。
 ホチキスドッグの体高は低い。小柄な墨でも明らかに目線が下がるほどだ。しかし、その顎下に刃を滑り込ませる余裕はある。もしもの時のために想定していた、残酷な方法は使わずに済みそうだ。
 ほんの少し軽くなった心を抱えて、墨はまた一体の邪心を斬り散らす。斬り上げからの振り下ろしでその一体を仕留めると、すぐに次へと走った。
 墨が刃を振るう度、地縛霊達の表情に余裕が生まれる。ホチキスドッグ達を抑え込む力も、心なしか強くなっているようだった。
 更に強く抑え込まれたホチキスドッグを、墨は抜刀して下から斬り上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
【護】〇

犬…っていうにはちょっと狂暴すぎるなあれは
悪いが此処で大人しくなってもらおう

地縛霊達のサポートだけでも十分に抑えられるとは思うけど
火力は相棒とキアラさんに任せ、俺は彼らと抑え込みに回ろう

足元の悪さも、二人ならその場から攻撃できるし
俺は足が傷つくのは構わずに進んで
「それに…君達と一緒に戦えるのも大事、だからね」

地縛霊達の抑え込みで纏め上げた所へ
【水遁「水獄檻」】を使用
地縛霊達には当てないよう繊細に苦無を操り
蟻一匹逃さない水の檻を閉じる
「さぁ、近すぎると危険だ。少し離れて」

後は二人に任せよう
強く、美しい力の本流を眺めてから
地縛霊達には軽く挨拶を
「そうだな。俺達でよければいつでも駆け付ける」


葛城・時人
【護】〇

彼らは仲間だ

身を挺しオブリビオンを追い込む姿を見て思う
正しい『人魔共存』の証
彼らを二度と倒さないで済むのが嬉しい

共闘出来るのもあの頃努力を重ねた
銀誓館の皆のお陰だね

「さて、と」
自分に気合を
技を見たら能力者なのは判るだろうけど
気にせず全力で

「何時ものいくよ」
二人に声を掛け
大規模殲滅戦では絶大な…と
考えた所で『きゅい!』と
ククルカンが顔を出す

白羽蛇の頭を撫でてから
白燐大拡散砲詠唱

裂帛の気合のまま送り出す
「全速!彼らが怪我したら癒しもお願い!」

必要なら再詠唱
残さず全力で倒してく

彼らが危険なら割り入り庇う
相棒やキアラの殲滅も手伝うね

別れ際には挨拶を
「何かあったらまた来るから…遠慮なく呼んでね」


キアラ・ドルチェ
【護】〇

地縛霊さん達が抑えてくれている今なら、一気に撃破可能!
共に生きる道を選んだ私たちの連携を見なさいっ!

足元が悪い以上、体術より遠距離攻撃を…森王の槍よ! 健やかに育ち繁茂せよ

【多重詠唱】で
下方からの攻撃を防げるよう、地べたを這い伸びる槍と
広く相手を攻撃できるよう、枝分かれして伸びる真ん中の槍と
地縛霊さんの抑え込みを助けるように、その場に縫い付けるよう舞い降りる上からの槍と
三方に撃ち分け

時人さんと陸井さんと私の三人なら、力押しでも全然いけますけど
「地縛霊さん達の被害、出来れば減らしたいですもんね」

地縛霊さん、また何か大変な事があったら呼んでくださいね?
いつでも馳せ参じますっ♪(あくしゅ!




 がちり。がちり。
 数は当初より減ったものの、地縛霊達が抑え付けているホチキスドッグが立てる音は、その性質と同様に獰猛だ。
「犬……っていうにはちょっと狂暴すぎるなあれは」
 悪いが此処で大人しくなってもらおう――凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)がそう思うのも無理は無い。今は地縛霊達が抑え込んでくれているが、ここから解き放たれれば無辜の民が犠牲になるのは火を見るよりも明らかだ。
 彼らは仲間だ。
 身を挺してオブリビオンの犬を抑えている地縛霊達を見て、葛城・時人(光望護花・f35294)は頭ではなく肌でそう感じる。正しい『人魔共存』の証が、今目の前にある。彼らを二度と倒さなくて済むのが、芯から嬉しかった。
 ホチキスドッグの数が減り、地縛霊達が抑え込んでくれている今ならば。キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は聖木より創られし杖をぎゅっと握り締める。今なら、オブリビオンを一気に撃破する事が可能だ。
「共に生きる道を選んだ私たちの連携を見なさいっ!」
 ずいと突き付けた杖のリングが、軽やかに鳴る。その音が開戦の合図となった。
 真っ先に動いたのは陸井だ。足元が悪くとも、キアラと相棒たる時人にはその場を動かず攻撃する手段がある。火力は二人に任せ、陸井自身は地縛霊達と共に抑え込みに回るつもりだった。
 加勢するよと、足が傷付くのも構わず前へ進み、陸井は地縛霊達の傍らに立つ。
「こっちでいいのかい?」
「ああ。攻撃は二人に任せておけば心配無いし、それに……君達と一緒に戦えるのも大事、だからね」
 柔和な笑みを浮かべ、陸井が作り出すのは水の苦無だ。膨大な数に上るそれは空間内を自在に乱舞し、抑え込まれたホチキスドッグ達へと迫る。地縛霊達を巻き込まぬよう、繊細に操られた苦無は、生命力を奪う水の檻と化した。
「さぁ、近すぎると危険だ。少し離れて」
 陸井に促され、地縛霊達は体に巻き付く鎖を鳴らしながら後退る。
 相棒と地縛霊達の姿を目にして、時人は口元がほんの少し緩むのを感じた。地縛霊達と共闘出来るのも、あの頃努力を重ねた銀誓館の皆のお陰だ。
「さて、と」
 声に出し、時人は自分に気合を入れる。己が技を見せれば、かつて能力者であった事は地縛霊達の知るところとなるだろう。けれど、全力を尽くす。時人は今も昔も、力無き者の盾たる事を誓った者なのだから。
「何時ものいくよ」
 大規模殲滅戦では絶大な……と考えたところで、きゅいと耳慣れた鳴き声がした。純白の羽毛と翼持つ蛇――時人の|白燐蟲《ククルカン》が腕から顔を出している。
 キアラは僅かに足を動かして、地面の歩きにくさを再認識していた。足元が悪い以上、体術よりは遠距離攻撃を。キアラは杖を掲げ、ユーベルコードの詠唱を開始した。
「森王の槍よ! 健やかに育ち繁茂せよ」
 幾重にも重ねられた詠唱が、視認するのも困難なほどの数の植物の槍を紡ぎ上げる。
 槍の束は、三つあった。一つは地を這い伸びる槍。一つは広く相手を攻撃出来るよう、枝分かれする、キアラの胴ほどの高さに位置する槍。最後の一つは、地縛霊の抑え込みを助けるように、天蓋の如く上部へ広がる槍だ。
 キアラ達ならば、力押しでホチキスドッグ達に勝利する事も可能だろう。しかし。
「地縛霊さん達の被害、出来れば減らしたいですもんね」
 綻ぶ唇が紡ぐ言葉は、三人共通の願いだった。
 時人がククルカンの頭を撫で、しゃんと錫杖の銀鎖を鳴らす。次の刹那、戦場全体に天の川が現出したかと錯覚するほどのククルカンの大群が発生した。口をついて出た裂帛のままに、時人はククルカンを送り出す。同時にキアラの槍が動き、ホチキスドッグの群れを穿った。
「全速! 彼らが怪我したら癒しもお願い!」
 ホチキスドッグに食らい付くククルカンから白燐光が溢れ、傷付いた地縛霊を包む。優しい光は、彼らの傷跡を柔らかに塞いだ。
 体高の低さを活かそうとしたホチキスドッグは地を這う槍に貫かれ、その生を終える。上部から降り注ぐ槍もまた、オブリビオンたる彼らの数を減らして行った。
 運良くククルカンからも植物の槍からも逃れた者には、陸井の展開した苦無が待っている。
「行かせると思うか?」
 水の苦無に命を吸われ、ホチキスドッグ達は囲みから出る事も叶わない。
 強く、美しい力の奔流に、陸井は眼鏡の奥で瞳を細める。その間も、オブリビオンの犬は次々と消え去って行った。
 地縛霊と陸井の苦無による包囲網が、徐々に狭まる。自棄を起こしたように、一体のホチキスドッグが地縛霊に向かって飛び掛かった。時人が素早く間に割り込むべく動くが、ホチキスドッグはその牙を届かせる前に植物の槍に貫かれる。
 そして最後の一体が、水の苦無とククルカンの食らい付きにより消滅した。
 長い呼吸を二つばかりするだけの間を置いて、陸井は苦無の檻を解除する。時人のククルカンとキアラの槍も、あるべき場所へ戻っていた。
 めきめきと音を立てて、変形していた地面が元の姿を取り戻す。地縛霊達から歓声が上がった。オブリビオン溜まりの発生源も、ひとまずは消滅したようだ。
「みんな、ありがとう。ようやく居場所を取り戻せたよ」
「地縛霊さん、また何か大変な事があったら呼んでくださいね? いつでも馳せ参じますっ♪」
 笑顔で差し出されたキアラの手を、地縛霊の青年は軽く握った。
「何かあったらまた来るから……遠慮なく呼んでね」
「そうだな。俺達でよければいつでも駆け付ける」
 時人と陸井の申し出にも、青年は柔らかな笑みを見せる。
「何もないのが一番だけど、何かあったらまた頼らせて貰うね」
 この地で起こっていたゴーストタウン現象は、ひとまずの終結を迎えた。故郷を取り戻した地縛霊達に見送られ、猟兵達は帰途に就いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年07月05日


挿絵イラスト