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ツインテ理想郷学園!!??

#UDCアース

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#UDCアース


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●ツインテールって何だよ
 2XYZ年!
 文明は『ツインテール教』なる恐ろしき宗教に滅ぼされてしまった!
 ツインテール教とは文字通りツインテールを信仰する宗教である。
 ではツインテールとは何か。長髪を左右にまとめた髪型である。

 髪型……である。
 巨大怪獣でも変な秘密兵器でも怪物でもない。
 髪型、なのである。

 文明の滅び去りし地球において、ただ一つ人が暮らせる場所があった。
 日本にある、とある大きな学園である。
 その中では辛うじて人が暮らしているようだが……全員ツインテールである。
 どこを見てもツインテール。あれもこれもツインテールである。

「ツインテール。それは最もエレガントな髪型!
 ツインテール。それは最もかわいい髪型!
 ツインテール。それは最も尊い髪型!」

 学園の中に、鈴の鳴るような可愛らしい声が響く。
 声の主は、校庭に立つ一人の少女。彼女もまたツインテールである。
 チェックとボーダーの混ざった、中々パンクな衣装を身に纏い、携えるのは巨大な鋏。
 彼女こそは『生を刈るモノ』ジュリア。
 ツインテール教の教祖にして邪神である。
「ツインテール。それは可憐でキレイで……えっ何この字。なんて読むの」
 類語辞典で『美しい』の項目を引きながら、彼女は一人首を傾げる。
 結局読めなかったので、彼女は辞典をポイしてお茶を濁した。

「まあいいわ。つまりはツインテールが最強ってこと!
 ツインテール以外に人権はナシ!
 それ以外の髪型してたら、あたしが首をちょん切っちゃうからね。アーッハッハッハッハ!」
 学園の中に、ジュリアの哄笑が響き渡る。
 それを聞いて生き残った人々は、思わず震えるのだった。

●グリモアベース
「髪型~。それは~、大切なも~の~♪」
 どこからか取り出した回転椅子に乗りながら、即興の歌を歌う少女が一人。
 彼女はソラ・ツキノ。サイボーグのグリモア猟兵である。
 そしてここは別にのど自慢をする場所でもなければ、芸を披露する場所でもない。
 グリモアベースである。
「髪型は大事ぃ~……あぁ、駄目、高音は出ないや。ハッハッハ」
 声帯の限界に挑戦するかのような、超高音は擦れて消えた。
 ソラは椅子から立ち上がって、グリモアベースの猟兵たちを見た。
「はーいどうも! 皆暇してる? 暇じゃない? 忙しい?
 忙しくてもダメ! 依頼だから聞いてって、君も君もみーんな!」
 ソラはそう言うと、椅子の上で飛び跳ねた。

 依頼なら最初にそう言え。多くの猟兵たちはそう思った事だろう。

「ま、話自体は簡単だからパパッといっちゃお。
 今回の依頼場所はUDCアースだ! 触手がうねる狂気の世界!
 え、なんだって? UDCアースは別に触手ばっかのHENTAI世界じゃない?
 いいんだよ、どうせ今回は出るんだから!」
 なんと失礼な発言か。UDCアース出身の猟兵もいるというのに。
 微妙に飛び交うブーイングをよそに、ソラは機械を操作してホログラムを映し出した。

「ほらほら見ろ見ろ! これは今回行ってもらう場所!
 津院手(ツインテ)学園っていう名前の学校!」
 ブーイングをかき消すように、ソラは叫んでホログラムを指差す。
 そこに映るのは、中々巨大な学校施設だ。
「ここで何か邪神召喚の儀かなんか知らないけどさ、そんなのが行われるらしいんだよ。
 確か旧校舎だったかな。まあ詳しい調査は諸君にお願いするわけだけど」
 余りにもふわっふわな内容である。
 グリモア猟兵なら予知しているはずでは? 猟兵たちは訝しんだ。
 その疑問を感じたのか、ソラはむくれて言う。

「アタシが予知したのは『邪神が世界を終わらせて、ツインテ理想郷を作った』とこ。
 わかる? ツインテールばっかりの終末世界だよ!? 意味わかんないでしょ!?」
 意味わからんのは猟兵たちの方である。
 何がツインテールばかりの終末世界なのか。

「邪神はツインテール大好き少女らしくてさ、ツインテール以外は皆殺しなんだって。
 その邪神は紫色の触手を従えてて、津院手学園で召喚されたらしいんだけど……。
 それ以外はなーんも分かんないわけ! 動機も理由も目的も!」
 お手上げポーズをして、ソラはばたんと椅子へ座り込んだ。

「ま、最後に依頼のまとめね。
 津院手学園の旧校舎を調べて、ツインテール大好き邪神を阻止してきて。
 多分どっかで触手も出てくるから、それも気をつけてね」
 そう言うと、ソラは椅子に座ったまま、ぱちーんとウィンクした。
「レッツゴーイェーガー! 髪型の自由を取り戻せ! ついでにUDCアースの平和も守ってね!」


苅間 望
 ツインテールを愛する邪神……! ワードのパワーが高い!
 ところで、皆さんはどんな髪型が好きですか?

 ツインテールが好き? ならば正しき良さを広めましょう。
 ツインテールではない? ならばツインテール教に足掻きましょう!
 好きな髪型が特に無い? ふうむ。ならばゆっくり考えましょう。
 どんな髪型も好き? 一理ある。

 ちなみに自分は長髪教です。長ければ素敵。

 どうも、初めまして or こんにちは。苅間望です。
 スペースシップワールドでは戦争が終わりましたね。
 猟兵の皆様、お疲れ様でした。
 しかしそれはそれとして、他の世界ではオブリビオンが問題を起こすのです。
 オブリビオン絶対許せねえ!

 今回は見ての通り(?)ツインテール依頼です。
 津院手学園なる学校で行われる邪神召喚の義をどうにかこうにか阻止します。
 こう書くとちょっとシリアスっぽいですね。そうでもないですか?
 とは言えシリアスじゃないです。
 ギャグもコメディもネタもシリアスもどんと来いです。

 アッ、そこのオープニングを1㎚も読んでいないアナタ! 安心して下さい!
 以下の一行で流れは分かります。再確認にもどうぞ。
「学園旧校舎を調べる!」「触手を倒す!」「邪神を倒す!」
 ……わあ凄い。こう書くと真面目なシナリオに見えてしまいますね。
 聡明な皆様は、このような化けの皮に騙される事はないと思いますが、シリアスじゃないです。
 大事(?)なことなので二度言いました。

 さて、以下はアドリブや絡みについてです。一読しておいて貰えると助かります。
『アドリブについて』
 ※OKとあれば、アドリブが多めに入ります。
 ※NGとあれば、プレイングに従い、出来る限りアドリブを排します。
 何も無ければ少しアドリブが入ります。
『絡みについて』
 ※絡みOK、もしくは言及が無い場合は、自分の一存で絡ませます。
 ※絡みNG 一人で対処してもらいます。「ここだけは一人でやりたい!」とか言う場合は、該当箇所絡みNGとしてもらえたらその通りにします。
 協力してプレイする! という場合は、「この旅団の人とやる!」とか、「この猟兵さんとやる!」というのをプレイングに書いてもらえると助かります。

 その他、何か気になった点などがあればお手紙をくださいませ。
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第1章 冒険 『封鎖された旧校舎』

POW   :    予め窓などを壊しておいて、修理業者として出入りする

SPD   :    旧校舎に忍び込み、儀式の行われる場所を探す

WIZ   :    転校生や臨時教員として潜入する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雷田・龍子
「ツインテールは概念!」

【WIZ】
キムタクが如く(キムタクとは・・・?)修理業者を装うかとも思ったが、器物損壊は気が引ける。
教員の知識は無いので転校生として潜入を試みる。(※30歳)
とりあえず髪型はツインテールにしておこう。(※30歳)

【アドリブOK】



●赤い竜
「ツインテール。ツインテールかあ」
 グリモア猟兵の言葉を思い返しながら呟くのは、雷田・竜子。
 赤い髪に赤い瞳が特徴的な、人派ドラゴニアンだ。
 彼女が考えているのはツインテール。
 そしてそれが関係する、津院手学園の調査である。

(修理業者を装うかとも思ったが、器物損壊は気が引ける)
 龍子は暫し考え、どうにかモノを壊さない方法を考える。
 最終的に彼女が行きついたのは、一つの方法だった。
(転校生として潜入を試みよう)
 教員の知識がないので、当然の帰結である。
(そうだ。とりあえず髪型はツインテールにしておこう)
 これもツインテールが関わる事件なので、当然の帰結である。
 年齢が30歳? そんな事はいいのである。
 バレなきゃ問題ない!!

 そして龍子は、津院手学園の潜入のための準備を整える。
 身に纏うは津院手学園の制服。
 髪型はバッチリ、ツインテール。
「ツインテールは概念!」
 そんな掛け声と共に、龍子は津院手学園へと入っていった。

●ツインテールカルト……!!
「あっ、ツインテールだヨ!」
「ほんとだ転校生だ。ツインテールだ」
「ヒュー! 良いツインテールだ!」
 学校内に入った龍子を、色んな生徒が取り囲む。
 疑惑の目ではない。純粋な好奇に満ちた瞳だ。
 ただ、その瞳はどれもこれもツインテールを見つめている。
「赤いツインテールだ。オシャレだ」
「これはツインテポイント高いネ! 素敵!」
「200ツインテポイントくらいあるねこりゃ。中々の逸材だぞ」
 何がツインテポイントか。
 生徒たちは龍子を見ながら口々に話し合う。
 とうの龍子はほったらかしだ。
「あは、は…………」
 龍子の口からは思わず乾いた笑いが洩れた。

「……ツインテール、大人気なんだな」
 龍子が周りの生徒を見ながら言うと、生徒は皆頷いた。
「ここはツインテール学園だしな!」
「津院手でしょ。実際ツインテ学園だけど」
「ツインテール大好きな奴らが一杯居るんだヨ。いき過ぎな奴らもいるけどネ」
 ん、と龍子は一人の生徒を見つめた。
「いき過ぎな奴ら?」
「んあ、詳しくはしらないんだけどネ。旧校舎で変な事してる奴らが居るんだヨ」
 その生徒は龍子に説明をしてくれた。

 なんでも、ツインテールを愛し過ぎて学生生活を踏み外した奴らが居るらしい。
 この時点で既に首を傾げる話なのだが、話には続きがある。
 そのツインテール大好きマンたちは、ツインテール教を作ったのだという。
 彼らは授業をすっぽかし、部活をやめ……旧校舎で何かをしている。
 何をしているかは分からない。ただ『何か』をしているらしい。
 何度か生徒会や教員が旧校舎に入ったというが、抵抗にあったという事だ。

「ツインテール教。ツインテールカルトだヨ。恐ろしいよネ」
 生徒はそう言って、話を終えた。
(やはりツインテールは概念……!)
 龍子は内心その思いを強めた。
 カルトになる程の求心力を持つ『ツインテール』。
 なんと恐るべき概念か。
「話してくれてありがとう。私は所用があるので、これで」
 龍子はそう言って話を切り上げると、旧校舎の方へと向かった。

 津院手学園の旧校舎。
 それは何故か現校舎よりも一回りほど大きい、化け物みたいな建物だった。
「なんでこんなに大きいんだ……」
 龍子は思わず声を零し、旧校舎へと入っていった。
 暗く、埃っぽい廊下が続いている。
 ぎい、ぎいと足音が響く。
 建物の雰囲気もあって、そこは何だかお化け屋敷のようにも感じられた。
「……ん?」
 龍子はふと、奇妙な音を聞きとり、耳を澄ました。
 それは大勢の人の言葉だろうか。
 歌のような、演説のような……不思議な言葉だった。
 しかし何を言っているかはさっぱりである。
 龍子は音の方へと近づいていく。
 音は大きくなり、明瞭になる。
 が。
 ぎぎい。と、ひときわ大きく、床が軋んでしまった。
「……むむ!? クセモノですぞ!?」
「我等ツインテール教にぶっこみだと!?」
「ウラアアアアアアアアアアアア!!」
 龍子の接近が気付かれ、ドドドドドドと物凄い足音が響き渡った。
(ま、まずい、一旦引かなきゃ……)
 龍子はそう思いながらも、後ろをちらりと見た。
 追手の姿くらいは見ておきたいと思ったのだ。

 追手は、どいつもこいつもツインテールをつけた、男女混合の生徒だった。
 追跡者を殺さんと言わんばかりに血走った眼。
 完璧に着こなされた黒いブレザーに何故かついている赤い斑点。
 狂気に満ちた叫び声。
 これが、ツインテール教の信者……というか生徒なのか。

(や、やばい、なんでツインテールだけでこんなことに!?)
 龍子は内心悲鳴をあげ、旧校舎から離脱した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アイ・リスパー
「ツインテ理想郷……
ロング派の私にとっては、なんて恐ろしい教義でしょうか」

これは津院手学園に潜入し
邪神復活阻止のために調査をしないといけません。

「転校生のアイです。
みなさん、よろしくおねがいしますね」

邪神がツインテール好きなら、その召喚にもツインテールが関わっているはず。

本当は目立つのは苦手なのですが、仕方ありません。
自慢の長髪が目立つように振る舞い、
私の髪をツインテールにしようとする存在が現れないか囮捜査をしましょう。

確か旧校舎が怪しいんでしたね。
電脳空間からドローンを召喚して何か怪しいところがないかも調べて、仲間と情報共有します。

「ロング教のみなさん、今こそ立ち上がる時です」

アドリブ大歓迎



●電子の妖精
「ツインテ理想郷……
 ロング派の私にとっては、なんて恐ろしい教義でしょうか」
 今回の依頼を思い返して戦慄するのは、アイ・リスパー。
 見た目は普通の学生だが、その実バーチャルキャラクター。
 白い長髪が、さらさらと揺れている。

 そう。彼女はロング派なのである。
 ツインテール教とは相容れない。
 故にツインテール教の思惑を阻止せねばならぬ。

(津院手学園に潜入し、邪神復活阻止のために調査をしないといけません)
 アイは胸に決意を抱き、潜入準備を整える。
 14歳の彼女は、当然転校生として潜入することを決めた。
 津院手学園の制服を手に入れ、そのまま潜入するのである。
 しかしその髪型はツインテールではない。
 豊かな長髪は、アイの信条に従ってロングのままである。

 果たしてこれがどのような結果を呼ぶのか……?

●ツインテールチェンジ!
「おお……綺麗な髪の子だ」
「嘘だろ、ツインテールじゃない!?」
「ツインテにしたら綺麗だと思うけどナ」
 学校に入ったアイを、物珍し気な目で生徒たちが取り囲む。
 彼らが見ているのは、勿論アイの髪だ。
 ツインテールを愛し、ツインテールばかりの学校においては、アイの綺麗な長髪は逆に良く目立っていた。
「っかー惜しいな、ツインテにしたらめっちゃポイント高いのに」
「何ツインテポイント位?」
「250ツインテポイントくらいかナ」
 彼らの間でしか通じぬ謎の言葉を交わし、生徒は口々に話し合う。
「あは、あはは。
 転校生のアイです。みなさん、よろしくおねがいしますね」
 アイがぺこりとお辞儀をする。
 それだけで何人かの男子生徒は悩殺された。
「俺ロングの方が好きかもしれん……」
「オイオイオイ、お前のツインテへのラブはそんなもんか! 僕は今拮抗中だぞ!」
「周りがツインテばっかりだから、特に目立つねえ。綺麗な長髪」

 アイの周りはがやがやと騒がしくなる。
 このまま話に興じていても良かったのだが、アイには目的があった。
 かの邪知暴虐のツインテール教の目論見を阻止するという、大事な目的が。
 なのでアイは、雑談を適当に切り上げ、一旦調査を行う事にした。

(確か旧校舎が怪しいんでしたね)
 人のいない所にやってきて、アイはこっそりとユーベルコードを起動した。
 ぽんぽんぽん、と現れたるは動画撮影ドローン。
 グッドナイス・ブレイヴァーによって生み出されたドローンである。
 本来は戦闘の様子を映して配信し、応援を貰うというユーベルコードだ。
 だが、『何かを映す』能力はいつだって使えるのである。
 という訳で、アイはドローンを操作して、旧校舎を外側から撮影していく。
(……大きい! ひたすら大きいです!)
 現在使われている校舎よりも一回り大きな旧校舎。
 ドローンから空で映せば、よりその大きさが実感できる。
(うーん。怪しいところは……ない、ですね)
 アイは映像を確認しながらそう思った。
 外側から、目に見えて分かる異常はないようだ。
 何回か見返しても、やはり異常はない。
(なら、中に入るしか……む?)
 ふと、足音が聞こえてきて、アイは顔を上げた。

 現れたのは、黒髪ツインテールの女子生徒。

「あなた、転校生なんですって?」
 キツイ目つきに刺々しい口調で、女子生徒はそう言う。
「あ、はい。転校生のアイです」
「津院手学園に来てその髪型。いけないわね。ツインテールにしなきゃ」
 女子生徒はそう言ってアイへ詰め寄る。
「え、校則とかなんですか……?」
「違うわよ。ツインテールはこの世で最も美しい髪型。美のイデア。わかる?
 ツインテールにあらずば人にあらずよ!」
 女子生徒は熱を込めた調子で、一方的にそう言った。
 非常に一方的な説である。
 それこそ、そう。
 どこか、狂信者じみている。
「あなたはツインテール教の人ですか……?」
「あっヤベっ。知られてるの!?」
 アイが聞くと、その女子生徒は途端にダッシュして逃走した。
 逃げた先は旧校舎。
(やっぱり旧校舎……中が問題みたい、ですね)
 アイは得た情報を纏めると、他の猟兵へと送信した。

 曰く。
 怪しいのは旧校舎の内部。
 どうにかして調査しなければならない。

成功 🔵​🔵​🔴​

響・夜姫
私、ツインテールになります。


【WIZ】
転校生として髪型をツインテールにして潜入調査へ。
エビの味はたぶんしない。
とりあえず無口な転校生を装いつつ
旧校舎の事やツインテールと学園の関係など色々調査。
ツインテールの流行時期とか、やたらツインテールを愛する生徒の事とか、ツインテール属性の輝きが強い生徒とか。
「更なるツインテールの高みを目指すために。色々とやってる」
猟兵とはバレないよう、この言葉で押し切ろう。
「すべてはついんてーるの為に。おーるはいる・ついんてーる」

だんだんわけが分からなくなってきた。
意外ときけんがでんじゃー。

アドリブ・絡みOK


葛乃葉・やすな
【WIZ】
転校生として潜入じゃ。

それにしてもツインテールが好きな邪神とは妙ちくりんな奴じゃな。

有事に備えてわしの髪型もツインテールにしておくかのぅ。
期待はしておらぬが思わぬ隙を付けるかもしれん。
わしの子供っぽさに磨きがかかってしまうのであまり好みではないのだが仕方あるまい。

まずは【コミュ力】を使って生徒や教師達から儀式について情報収集じゃな。
必要とあれば【言いくるめ】や【誘惑】も使っていこう。

これで儀式の場所が特定できれば御の字よ。

特定できずとも儀式に関係していそうな者を見つけたら、わしのUC【妙技・霊体分離】を使用してその者を追跡、監視じゃな。

※絡み、アドリブOKじゃ。思う存分やって良いぞ。



●移り気な妖狐と、真冬の月の夢
 グリモア猟兵の依頼を受けるため、今ここに二人の猟兵が現れた。
 一人は響・夜姫。ミレナリィドールの猟兵だ。
 銀色の長髪に、花をあしらったカチューシャが目を引く。
 だが一番特徴的なのは、オッドアイだろう。
 そしてもう一人は、葛乃葉・やすな。見た目からすぐわかる妖狐の猟兵だ。
 長い金髪をポニーテールに纏めている。
 そして妖狐の常で、年齢と見た目が釣り合っていない。
 隣に居る夜姫より遥かに年上でありながら、しかし身長はちょっと小さい。

 そんな二人の猟兵は、グリモア猟兵の依頼を確認した。
 ツ イ ン テ ー ル 教 の 企 み を 阻 止 !!
 大変不可思議な文字列である。
 これが猟兵の対処する事件なのだろうか。

 それを見て夜姫は、開口一番こういった。
「私、ツインテールになります。」
「おう?」
 やすなは一瞬意味が分からずに首を傾げたが、すぐに納得した。
「なるほどな。転校生として潜入かの」
「そのつもり」
 夜姫がそう言うと、やすなは暫し考えて答えた。
「わしもそうするかの。転校生として潜入するのが一番楽そうじゃ」
「じゃあ、ツインテールにしないと」
「ああ……そうじゃなぁ、有事に備えてわしの髪型もツインテールにしておくかのぅ」
 夜姫はいそいそと、やすなは少々不服そうに髪型を変えていく。
 夜姫には特にツインテールを嫌がる理由はない。
 しかしやすなにはあった。
 ただでさえ幼く見られてしまうやすなの、子供っぽさに磨きがかかってしまうのだ。

「それにしても、ツインテールが好きな邪神とは妙ちくりんな奴じゃな」
 全くである。
 どうして邪神がツインテールラブになってしまったのか。
 いやむしろ、ツインテールラブ故に邪神になってしまったのか。
 謎は尽きない。
「私にも、わからない。それにしても……」
 夜姫はちらちらと、やすなの方を見つめた。
「なんじゃ」
「ちっこくてかわいい」
「なんじゃと! わしを見た目で判断するでないぞ!」
 夜姫は怒ったやすなを見てとことこと先に転移しに行った。
 一方残ったやすなは、むむうと頬を膨らます。
「やっぱりツインテールとは……子供っぽくなってしまうのう!」
 嘆きながら、やすなもまた転移した。

 行く先は当然UDCアース。津院手学園である。

●オールハイル・ツインテール!!
 他の猟兵から届いた情報により、なんとなーく儀式の場所などは分かっていた。
 曰く、旧校舎にツインテール教が居る。
 曰く、旧校舎の外側に異常はナシ。
 ならば、旧校舎の内部で何かをしているに違いない。
 とはいえ旧校舎は大変広い。
 そのため、二人はまず『ツインテール教』の情報の外堀を埋める事にした。

「ツインテール教の事を調べるのは良いんじゃが、実際出会ったらどうするかの」
 津院手学園へ入りながら、やすなは呟いた。
「お話しだよ。おーるはいる・ついんてーる。多分、何とかなる」
「なるほどのぅ……なるほどのぅ?」
 夜姫はツインテールを誇張するように手で房を持っている。
 全てはツインテールの為に。オールハイル・ツインテール……のポーズである。
 全てをなげうってツインテールを求めるツインテール教には、通用するかもしれない。
「聞けるなら、それもありじゃな。わしは追跡というのも考えておったが」
「追いかけるの? 危なくない?」
「それはその通り。じゃから追いかけるのは霊体のわしじゃ」
 やすなの言葉に、なるほど、と夜姫は手をぽんと打った。

 という訳で二人はまず、色々な話を聞いて回る事にした。
「おぉ!? 何か可愛い子が二人もいる!?」
「やべえ……昇天する……」
「生きろ、オイ、生き返れ!」
 小さく可愛らしい二人が歩いていれば、それだけで目を引く。
 しかも今はそこに、この学園内で大人気の髪型だ。
 今までやってきた猟兵と同じく、生徒が好奇心満々に取り囲むのであった。
「初めまして。響・夜姫だよ」
「わしは葛乃葉・やすなじゃ! わしらは転校生でのう、色々知りとうて仕方ないんじゃ」
 やすなの言葉に、夜姫も頷いて興味アリアリな雰囲気を出す。
 すると生徒たちは勝手にべらべらと喋り始めた。

 ……非常に雑音と雑談交じりの会話であるため、内容をかいつまむと。
 津院手学園は元々普通の学園だったが、名前で勘違いした輩が多数入学してきた。
 そのため今ではツインテール大好きマンが溢れかえっている。
 そこ自体に奇妙な動きはナシ。『普通にツインテールが好き』なだけの生徒だからだ。
 だが、最近になって、嫌な変化が起こったのだという。
 一つ。ツインテール属性の輝きが強すぎる生徒が現れた。
 二つ。ツインテールを愛し過ぎて道を踏み外した生徒たちが居る。
 三つ。旧校舎で何やら変な事をしている。
 ここでやすなが「儀式っぽい事はしておったかの?」と聞くと、反応が返ってきた。
 なんでも、時折旧校舎から奇妙な歌や演説のようなものが聞こえてくる、という。

(ふうむ。ツインテール教の生徒が、旧校舎の中で儀式をしとるという感じかのぅ)
(これ以上の情報は、無さそう)
(じゃのぅ。怪しい生徒を追うか、旧校舎に行くか……)
(どっちにしても、話は終わらないと)
 やすなと夜姫は小声で話し合い、雑談を切り上げた。
 生徒の波をかき分けながら、二人は津院手学園を歩き回る。
「で、どっちに行くかのぅ。ツインテールパワーあふれる生徒か、旧校舎か」
「旧校舎は、ツインテール教のテリトリー。つまりアウェー。生徒の方が、いいと思う」
「そうじゃな。ツインテール教と、その生徒の現れた時期はほぼ同じらしいしのぅ。
 儀式にも関わっとるじゃろう」
 そうして二人は、件の生徒の居る場所を探した。
 ツインテールパワーに溢れた女子生徒、その名は二手・瑠香。

 二手・瑠香は、見ただけでそれと分かる見た目だった。
 輝かしいツインテールを持った、美麗な女子生徒である。
 黒き宝玉のような髪を、二房に纏めている。
「……不自然なほど、目立つのぅ」
「ツインテールパワーが高い」
 二人がこそこそ瑠香を追っていると、瑠香は急に振り向いた。
「なぁにあなた達。あたしのツインテールに見惚れた?」
 自信満々に、二手・瑠香は言い放つ。
 その言葉に、夜姫は頷き即答した。
「うん。今、更なるツインテールの高みを目指すために。色々やってる」
「わしもじゃ。ツインテールと言えばおぬしと名高い評判でな!
 是非話を聞かせてはくれんじゃろうか?」
「ふぅん。そんなに評判なんだ。ふふっ、でもツインテールの道は険しいわよ?」
 瑠香はにやりと笑って言う。
「あなた達に来れるかしら?」
「いける。すべてはついんてーるの為に。おーるはいる・ついんてーる」
「おーるはいる・ついんてーる!」
 二人はざっとポーズを取りつつ声を上げる。
 それを聞くと、瑠香はからからと笑った。
「オールハイル・ツインテール! いい響きね、今度使おっと。
 あなた達、ツインテール教って知ってる?」
 瑠香はそう言って二人をじっと見つめた。
「しらない」
「わしもじゃのぅ。転校してきたばかりでのぅ」
「ほんとに?」
 念を押すように、瑠香が再確認する。
 その瞬間、夜姫はこっそりとユーベルコードを使った。
「しらない。おーるはいる・ついんてーる」
 それはミレナリオ・リフレクション。
 本来なら戦闘中に用いる、ユーベルコード殺しのユーベルコードだ。
 だが瑠香は常人ではなく、彼女の問いには尋常ならざるモノがある……。
 夜姫はそう判断し、『彼女の発した問いに関する魔術』を相殺した。
「あらそう。じゃあそこに入ると良いわよ。旧校舎で集会やってるから。
 全てはツインテールの為にってね。じゃあねえ」
 何も分からなかったようで、瑠香はそう言った。
 ひらひらと手を振って、瑠香は去っていく。

「真っ黒。ツインテール教の関係者じゃん」
「じゃのぅ。どうやら普通の人間じゃない……と判断したんじゃろ?」
「なんか変だったから」
 夜姫の言葉に、やすなも頷いた。
「なんというか、魔性の美しさみたいな感じじゃな。ツインテールなのは如何なものかと思うが。
 何にせよ今からはわしの仕事じゃな。出でよ、わしの霊体」
 やすながそう言うと、ぼうん、と隣に幽霊が現れた。
 霊体のやすなである。
「あ奴を追跡せよ」
 やすなの命令に、霊体は頷き、建物の中に溶け込んでいった。
 妙技・霊体分離。
 霊体のやすなを召喚して、追跡してもらうユーベルコードだ。
 霊体とやすなは五感が共有されているため、霊体が追える限り、常に情報が伝わってくる。
 対象が通った道、独り言、周囲の様子などなどなど。

 結論から言えば、瑠香は旧校舎に入っていった。
 その最奥にある、食堂で何かをしている様子。
 彼女の周囲にはツインテール教の生徒が沢山いる。
 彼らは皆声をそろえて、声高に何事かを唱える。

 いあ・いあ・ついんてーる。
 おーるはいる・ついんてーる。
 ついんてーるばんざい。

「……はぁ」
 やすなは思わずため息を吐いた。
 彼らは古今東西の無数の言語を使って、ツインテールを褒め称えているのである。
「怪しすぎる集団じゃな……あとは旧校舎のこの辺りを調べんとな」
「えっ、何。儀式でもしてたの?」
 夜姫が聞くと、やすなは首を振った。
「ツインテール礼賛じゃ」
「……? だんだんわけが分からなくなってきた」
「わしもじゃ」
 二人は思わず顔を見合わせ、肩を竦めた。

 何はともあれ、情報はしぼれた。
 向かわねばならぬのは、旧校舎の最奥。
 ツインテール教の集会場である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルリア・アルヴァリズ
髪型には無頓着な私だけど、やっぱり髪型の自由は保たれるべきだと思うかな。
とりあえず旧校舎に向かわなければ行けない訳だね。
私の歳だと転校性が自然かな?
髪型も適当に結んでツインテールにしておこう。
似合うといいけど・・・自分では分からないからまぁそれっぽければいいよね。

【WIZ】
転校予定の生徒として振舞いつつ学校に潜入だね。
色々見て回る振りをしながら本校で旧校舎の情報を調べた上で、
旧校舎に潜入して探し回ってみようか。
本校での聞き取りで有益な情報が無ければ旧校舎は【第六感】任せで探し回ることになるね。



●理想の守護者
 此度現れたのは、見事な銀髪の猟兵だ。
 彼女の名前はルリア・アルヴァリズ。
 黒の装束が身を包み、綺麗な空色のマフラーがなびいている。
 ルリアもまた、グリモア猟兵の依頼を受けに来た猟兵の一人だ。

 ツインテールを崇める集団を何とかする。
 実に不思議な依頼である。
「うーん。髪型の自由は保たれるべきと思うかな」
 依頼概要を聞いて、ルリアは呟いた。
 ルリア当人は髪型には無頓着だという。
 それもそのはず。
 自然体で実に見事なロングヘアーであり、手を加える必要がない。
 とは言え、自身に髪型の拘りが無いからといって、オブリビオンの活動を見過ごす道理はない。何故ならルリアもまた猟兵であるから。

「とりあえず旧校舎に向かわなければ行けない訳だね」
 ルリアはどう潜入するかを暫し考えた。
 15歳の彼女にとって相応しい、津院手学園への潜入方法。
 それは……。
「転校生が自然かな?」
 潜入しつつ内情を調べるならば、それが自然だろう。
 ルリアはふと他の猟兵が共有していた情報を確認した。
「旧校舎の最奥に集会場か。
 旧校舎は大きいっていう話だし、地図があれば欲しいかな」
 何故か現校舎よりも一回り大きい旧校舎。
 今はツインテール教の本拠地と化しているそこを探索しようとするなら、地図があった方が安全だし確実だ。
 方針を固めたルリアは、髪を結んでツインテールにする。
 そして津院手学園の制服へと着替えていく。
(似合うといいけど……) 
 ルリアはざっと鏡で自分の姿を確認する。
 そこには当然ながら、銀髪ツインテールの女子生徒が映っている。
(まぁそれっぽければいいよね)
 そう考えて、ルリアは転移していった。

●ツインテール・テンタクル!?
「さて、と。まずは職員室かな」
 転移したルリアは、ひとまず津院手学園の職員室へと向かった。
 転校予定の生徒として潜入して、旧校舎の事を聞こうという目論見だ。
 津院手学園に入ると、早々に色んな生徒がやってくる。
「やべーな、転校生の豊作だぞ」
「ツインテポイントが高まる! 今日一日で1000越えた!」
「ツインテ成分過剰摂取で昏睡しろ」
 ワイワイガヤガヤ、生徒たちは騒がしくお喋りをする。
「あはは。熱烈な歓迎だね。
 職員室はどこにあるのかな。来たばかりなもので」
 ルリアが言うと「職員室はあっち!」と色んな生徒が指さした。
「ありがとう」
 ルリアは礼をして職員室へと向かう。
 その後ろから、生徒たちが色んな言葉を飛ばす。
「銀髪良いな……良いな……」
「語彙はどこ行ったよお前。ツインテポイントで言うと幾つだ」
「一億。一兆。いや無限」
「銀髪ツインテールにやられたネ、これは。不治の病だヨ」
 生徒たちは楽しそうに話し合う。そこにツインテール教の狂気は無さそうだった。

「失礼します」
 ルリアが職員室に入ると、教師がやってきた。
「ああ初めまして。転校予定の……」
「ルリア・アルヴァリズです」
 ルリアがそう言うと、教師は頭を下げた。
「津院手学園へようこそ。ルリアさん」
 教師はそこから津院手学園に纏わる様々な話を始めた。
 校風。行事。生徒数。キャッチコピー……などなどなど。
 ルリアは相槌を打ちながら、依頼に関係しそうな情報を心の中に書き留めていく。
「……そう言えば、この学園には旧校舎がありますよね。
 あの、とても大きな建物」
 歴史の話を始めたので、ルリアが頃合いを見てそう切り込んだ。
 教師は少々困った顔をして、言い淀んだ。
「ああ、旧校舎……あの建物は、ちょっと良くないんです」
「どういう事ですか?」
 ルリアが聞くと、教師は言いにくそうにしつつも、口を開いた。
「あそこは今危険なんです。元々は津院手学園で用いてたのですが……。
 今では不良たちが占拠している上に、悪いうわさも……」
 教師の発言を纏めると、以下のようになる。

 ツインテール教なる奇妙な集団が旧校舎を占拠している。
 不可解な現象がいくつか起きている。
 未だ事件は起きていないが、その内起きるやも知れない。

「不可解な現象とは?」
「詳しい事は分かりません。『口に出すのも憚られるような、悍ましい軟体を見た』という生徒が続出しているのですが、そんなものが居た形跡はどこにもないんです。他にも奇妙な声が聞こえるとか、何とか」
 そこまで言うと、教師は口をつぐんだ。
(奇妙な声とは『ツインテール礼賛』の事かな?
 それとも、別の何かなのか。
 それはともかく、『悍ましい軟体』の方が気になるな)
 ルリアはふとグリモア猟兵の言葉を思い出した。
(確か何処かで触手に出会う、なんてことを言ってた気がする。
 その触手の事なのかな)
 暫し考えたあと、ルリアは言った。
「旧校舎の地図、ありませんか?」
「地図? それならありますが……まさか入るつもりじゃあ?」
「気になるだけです。大丈夫です」
 ルリアがそう言うと、教師は渋々地図を出した。
 目的のモノは手に入った。
 ルリアは話を切り上げ、職員室から出て行く。
 向かう先は、旧校舎だ。

(……にしても、本当に大きいな)
 地図と実際の建物を見比べながら、ルリアは思わず息を吐いた。
 旧校舎は厳密ながら複雑な区分けがされており、初見では分かりにくい。
 迷路とまでは言わないが、迷う生徒は何人もいただろう。
(本当は別の目的があったんじゃないかな……なんて勘ぐってしまうね)
 ルリアは地図を見ながら、そっと旧校舎の中へと入っていく。
 警戒は怠らず、地図を見つつ――。
(ん? 変だね、こんな所に壁なんかないはずだけど)
 ――勘が優れているルリアは、直ぐに異変に気付いた。
(地図が間違ってる訳じゃない。壁が新しすぎる。
 誰かが壁を作ったんだ。この地図は、もう正しくない)
 旧校舎は、誰かの手によって無理矢理作り替えられている。
 学校が管理している地図とは別の物になってしまっているのだ。
(一体なんで……っと、音?)
 ふと、ルリアは何かを聞いたような気がして、耳を澄ませた。

 いあ・いあ・ついんてーる。
 おーるはいる・ついんてーる。
 ついんてーるばんざい。

 ツインテールを古今東西の言葉で褒め称えるツインテール礼賛。
 奇妙な声と言えば奇妙な声だ。
 男女混合の、言葉だけが一致した唱和。
 それが一つの声となり、旧校舎の空気を響かせる。

 しかしルリアが聞いたのはその音だけではない。
 何かが滑るような、しゅるしゅるとした音。
 あるいは、ぺたぺたひたひたと、何かが地を這う音。
(何だろう、この音。話に聞いてた触手……なのかな)
 ルリアは慎重に、音の方へと進んでいく。
 息をひそめて警戒し、一歩一歩足を進める。
 やがて。
 ルリアは曲がり角から顔を出し、即座にひっこめた。
(……う、うわっ)
 一瞬ではあったものの、ルリアは見た。

 紫色の、悍ましき触手を。

(学校に居るには、ちょっと異質すぎるね)
 一瞬だけでも目に焼き付く、嫌味なフォルム。
 無数の触手が絡み合い、一つの群体となっている。
 触手はどれも紫色で、てらてらと奇妙に光っていた。
(……けど何か変だったな。何というか、見たことがあるというか)
 一瞬ではあったものの、ルリアは見たモノに違和感を覚えていた。
 触手を見慣れている、そんなはずがあろうか。
 そうではない。
 そうではなくて、他の部分に何か見慣れた要素があったように思ったのだ。
 ルリアはそれを確かめるため、もう一度曲がり角から顔を出した。
 そしてルリアは、違和感の正体を即座に理解した。

 触手さえもが、ツインテールになっていたのだ!!

 無数に絡み合う触手の幾つかを、ツインテールに見立てて二房の束にしてある。
 さながらひとりでに蠢く、紫色のツインテールウィッグと言ったところか。
(何で触手までツインテールに……? というか、何で触手がこんな所に?)
 ルリアは顔を引っ込めて、頭を抱えた。
 どういう事なのか、まるで意味が分からない。
 ルリアの胸中とは関係なく、ツインテール礼賛は続く。

 せーぶ・ざ・ついんてーる。
 まぶーはい・ついんてーる。
 びば・ついんてーる。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤ヶ谷・あやめ
WIZ

転校生として潜入
ええっと、津院手学園の邪神復活……でしたっけ?(依頼説明中開眼睡眠した)
津院手学園は二つ括りの方が多い……校則になっていないなら、洗脳は教職員までには及んでいない?
あ、わたくしは二つ括りの巻き髪(ツインテドリル)ですわ
ツインテ教の人と語りたい……縛る髪止めの好みとか、個人的にはリボン(ユーベルコードを封じる為、七星七縛符)等も捨てがたく
「そこのツインテオーラが素敵な方、わたくし悩みがあってーー」
ツインテ教団入信・ツインテオーラ・道間違えた…で、旧校舎に潜入
「ツインテオーラを感じましたの。わたくしは高い位置で結ぶのが好きですがおさげも愛らしくて(熱弁)」

絡み歓迎・アドリブ可



●暴走大和撫子
「……ハッ!?」
 紫の瞳に黒い髪のツインテール。しかも縦ロール。
 そんな彼女は、はっと周りを見回した。
 気が付けば周りに誰もいない。
(……ね、寝てましたわ)
 依頼説明中に開眼睡眠していた彼女は、藤ヶ谷・あやめ。
「ええっと、津院手学園の邪神復活……でしたっけ?」
 あやめは改めて依頼の内容を確認する。
 その通り、津院手学園の邪神復活の阻止である。
 かの者は、ツインテールを好む謎の邪神である。
 そして復活に関係しているとされるのは、ツインテール教。
(津院手学園は二つ括りの方が多い……でも校則ではないとの事。
 校則になっていないなら、洗脳は教職員までには及んでいない?)
 むむむ、と考えるあやめ。
 首をかしげるのに合わせて、ゆらゆらと縦ロールが揺れる。
 驚くこと無かれ。
 この縦ロールは、あやめ自身が自分で巻いているのである。
 見事なツインテドリルである。
「よーし、わたくしはツインテ教の方とお話しますわ!」
 ぐっと気合を込めて、あやめは言った。

 パパッと津院手学園の制服を着込み、潜入準備をばっちり整える。
「待ってなさい、ツインテ教……!」
 そうしてあやめもまた、転移を始めた。

●ツインテール・ツインテール
 ツインテ教の人と語りたい。
 そう思いながら、あやめは津院手学園に入っていく。
 黒髪ツインテドリルのあやめは、たちまち注目の的となった。
「お、や、やべえ……縦ロールだ……!」
「流石に縦ロールは初めて見たネ。黒髪だけど似合ってるナ」
「これはツインテポイント高いぞ……200+3億℩くらいだ」
「なんで虚数を混ぜた?」
 黒髪ツインテールに縦ロール。
 それは津院手学園の生徒にとっても大変珍しく、そして見事な髪型であった。
(ふむふむ、ツインテールの方が多いようですわね……。
 けれどパっと目を引くほどのツインテオーラに溢れる方は……)
 あやめはきょろきょろと辺りを見渡す。
 探しているのは『ツインテ教の信者』のような生徒。
「ええと、ツインテールが似合う方はいらっしゃいます?」
 あやめがそう問いを発すると、生徒たちはいっせいに騒ぎ始めた。

 誰がいいこれがいい、あの人がいい、いやそうじゃない……。
 生徒たちは侃々諤々の議論を、時には立場の不一致から拳を交わす。
 やがてその騒乱の中から、おおよその生徒が納得する結論が出た。
 二手・瑠香。
 特にツインテールパワーの高い生徒だという。

(多分そのお方はツインテ教の人! 語りたいですわ!)
 あやめはそう思うと、会話を切り上げて二手・瑠香の捜索を始めた。
(……むむむ、あのお方かしら)
 瑠香を見つけるのは難しい事では無かった。
 何というか、周りの風景から浮いていたのだ。
 現代日本において西洋彫刻が動き回っているような。
 三次元空間に四次元の物体が迷い込んだような。
 なんとも言い難い違和感が、そこにはあった。
 その違和感は全て、瑠香のツインテールに集約されている。

 とにかく美麗すぎるのである!

「そこのツインテオーラが素敵な方、わたくし悩みがあって!」
「あら、初めまして……見事な縦ロールさん」
 あやめの言葉に、瑠香は振り向いた。
 瑠香はざっと縦ロールを観察し、即座にあやめの実力を見て取った。
「手がかかってるわね。綺麗で艶やか。
 それに一朝一夕の髪型ではない似合い方。
 自分で毎日巻いてるの?」
「そうですの! あ、わたくしは藤ヶ谷・あやめと言いますわ」
「あたしは二手・瑠香。あなた、ツインテールに対して並々ならぬ熱意を感じるけど」
 瑠香がそう言うと、あやめは大きくうなずいた。
 ゆらりゆらりと、縦ロールが揺れる。
「はい! ツインテールはとても素晴らしい髪型ですわ!
 わたくしは高い位置で結ぶのが好きですが、おさげも愛らしくて……!
 それに髪留めの好みなども、人の好みが現れますわね!」
「ふふっ、そうね。例えばあたしは、あなたのリボンが好きだわ」
「おおっ」
 瑠香の言葉に、あやめは驚き、そして笑った。
「わたくしのお気に入りですの!」
 本当は、そのリボンは護符である。
 七星七縛符と呼ばれる、ユーベルコードを縛るユーベルコードに用いるのだ。
 髪を縛るのにも、ユーベルコードを縛るのにも使える素晴らしい護符である。
「ねえあやめさん。ちょっとついてこない?
 ツインテール教の集会をやってるのよ」
「!」
 此度の依頼は邪神復活の阻止。
 そしてツインテール教とは、邪神復活に深くかかわっているとされる組織である。
 わざわざ向こうから案内してくれるというのだ、行かぬ理由はない。
「行きますわ」
 あやめは頷いて、瑠香の後ろをついていった。

「迷うからしっかりついてきてね」
「はい!」
 瑠香とあやめは、二人で旧校舎の中を歩いていた。
 異常に複雑な旧校舎で、迷路と言われても納得してしまうほどである。
 瑠香は慣れているようだが、あやめはついていくので精一杯だ。
「なんでこんなに複雑なのかしら……」
「ツインテール教が色々工作したのよ。知らない人が誰も入って来られないようにね」
 独り言のようなあやめの言葉に、瑠香が答えた。
「だから元々ある見取り図とは、もう全然姿になってるわ。
 見えない位置に穴も開けてあって、音だけでは奥が分からないようになってる。
 それに……ほら」
 瑠香が指を向け、あやめはその方向を向いた。
 その先に居たのは――。
「わ、わあ」
 紫色の蠢く触手であった。
 無数の触手が絡み合い、一体となっている。

 そしてなぜか、ツインテール状に触手がまとめられている。

「あ、あれは一体」
「あたしたちが……っと、ツインテール教が呼ぼうとしてる神のおつき」
 瑠香はにっこりと笑ってあやめを見つめた。
「さあさ、そろそろ集会所よ」
 そう言うと、瑠香はあやめを引っ張って一室に入っていった。
 そこは、奇妙に広い部屋だった。
 地面には魔法陣が描かれ、色んな生徒がそれを囲んでいる。
 不思議なのは、男女混合だが全員がツインテールだということ。
 どれもこれも何故か奇妙に似合っているのだが……如何せん他が恐ろしい。
 血走った眼。土気色の肌。ボロボロの制服。
 そんな中、ツインテールだけがきらきらと輝いているのだ。
 そして彼らは一様に、ツインテール礼賛を謳いあげている。

 いあ・いあ・ついんてーる。
 おーるはいる・ついんてーる。
 ついんてーるばんざい。

「ようこそ……ツインテール教へ」
 瑠香はそう言うと、奇妙な札を取り出した。
「この世の全てがツインテールにならんことを」
 瑠香はそう言いながら、札をツインテール教の生徒へと投げつけた。
 すると。
「あばばばばばばばばば」
 生徒は札が命中すると、震えながら悲鳴を上げた。
 悲鳴……悲鳴?
 少なくとも言葉にならない叫び声である。
 すると、次第に生徒の髪が、紫色へと変化していった。
 ツインテールがひとりでに動き、髪の毛が蠢き始める。
 その姿はさながら先ほど見た紫色の触手の如く……。
「ちょっ、ちょちょちょ!」
「わっ、何すんのよ!」
 あやめは護符を取り出し、瑠香へと投げつけた。
 七星七縛符である。
 本来は対象を捕縛し、ユーベルコードを封じるユーベルコードであるが、その力を転用して瑠香の力を封じたのだ。
 見えない縄に縛られて、瑠香はうめき声を上げた。
「離しなさい、何なのよ!」
「流石に邪道すぎますでしょう!? ツインテールからツインテールの触手を作り出すだなんて! たとえお天道様が許しましてもわたくしが許しませんわ!」
 あやめは怒りに満ちた様子で言う。
 瑠香は歯ぎしりをし、あやめを睨みつけた。
「っち、なら仕方ない……ええい、触手たち! 来なさい!」
 瑠香が叫ぶと、部屋の壁をブッ壊しながら、紫色の触手たちがやってきた。
 ツインテール状の触手がうねり、地を這う。
 途端、部屋の中は狂乱状態となり、ツインテール教の生徒たちは叫んで部屋から逃げ始めた。

「あっちょっと、皆さん勝手に動くと……一旦避難して下さいまし!」
 あやめは一旦ユーベルコードを解き、生徒たちの避難誘導を始めた。
 恐らく触手は危険である。だが人命を軽んじる事は出来ない。
 しかし何故か、触手は攻撃してこない。
 その間に、あやめはパパッと生徒たちを避難誘導していく。
「…………ちょっと触手たち!? ツインテールだけどアレは敵よ!?」
 瑠香がそう叫ぶと、ようやく触手たちはハッとして動き始めた。
 その時には、もう既に生徒たちは避難し終えていた。
「ああっ!? もう、儀式が失敗するじゃない!!」
 実に悔しそうに瑠香は叫び、苛立ちを旧校舎にぶつけ始めた。

 狂乱せし、暴れツインテール触手!!
 次なる敵は触手である!!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイ・リスパー
「ツインテール触手……
もうなんだかわからない存在ですが
儀式を止めるには倒すしかないようですね」

元は生徒だったのかもしれませんが、
邪神が復活したら大きな被害が出ます。

冷静に命を天秤にかけて計算して触手の討伐を決意。
【マックスウェルの悪魔】で炎の矢や氷の弾丸を生成し触手を撃ち抜きます。

「って、なんで私ばっかり狙ってくるんですかーっ!?」(髪型のせい

逃げようとするも運動が苦手なのが祟って何もないところで転んでしまい……

「ひゃあんっ」

触手に服の中を這い回られて身体が熱くなってきて……
甘い吐息を吐きながら全身から力が抜けていき触手にされるがまま全身を弄ばれ……

無理やりツインテールにされてしまうのでした。


響・夜姫
「やっぱり。るかるかは黒幕ポジション」
ツインテールなので2回にしてみた。しっくり。
しかし適当に考えたおーるはいるのフレーズが採用とは。びっくり。

触手で髪型だけ再現。びみょー。手入れの参考にもならなそう。
「というか、あの触手。えっちなやつでは?」
それ系の被害は出てない?なるほど。えっちではないのか。
「でも燃やす。ふぁいやー」
動きながら中距離で二丁拳銃とサバーニャを撃ちまくる、機動射撃戦。
【誘導弾/2回攻撃/範囲攻撃/一斉発射】でフルブラスト。
敵の攻撃は【オーラ防御/武器受け】でサバーニャを盾にするか、【ダッシュ/地形の利用】で障害物を使うなどして回避。


「あ…これ、は…ヘッドスパでは」(恍惚)


ルリア・アルヴァリズ
さて、もうツインテールにしてる必要はないね。
やっぱり自然体が一番さ。
相手は触手だね、積極的に触れたい人はいないだろうし盾になろうか

【POW】
AriesとVirgoを手元に残す。
他の10の武装は他の猟兵たちの前に逐次的に具現化して【盾受け】、敵の攻撃を【かばわ】せよう。
自分のことに関してはAriesを剣、Virgoを盾にして戦っていこうかな。
組み合わせは変えてもいいし臨機応変に行こうか。
常に【オーラ防御】もはっておこうかな。



●ツインテール・テンタクル!
 のたうつ触手の音。生徒の叫び声。
 そして怒号!
 そんな音を聞いて、ルリア・アルヴァリズは旧校舎を走っていた。
「さて、もうツインテールにしてる必要はないね」
 音の方向に向かいながら、ルリアは髪をほどく。
 はらりとツインテールから解放されて、自然体のロングヘアーがさらさらと揺れる。
「やっぱり自然体が一番さ」
 どことなく解放感を覚えながら、ルリアはつぶやく。
 髪型に頓着がないとはいえ、強制されるのはいい気分ではない。
 ツインテールはあくまで潜入のためのものである。
「さて、敵はさっきみた触手かな……?」
 ルリアはそう予想しながら,音のする部屋へと入っていった。
 するとそこにいたのは――

 ――荒れ狂うツインテール状の触手たちである!!

 紫色のツインテールウィッグ、という感じの触手が、旧校舎の教室の中で暴れまわっていた。机をたたき窓を割り、壁に穴をあけている。
 のたうちまわってぬらぬらの触手という、非常に冒涜的な見た目であるのだが……ツインテール状になっているせいで、どこかB級ホラー感がある。

「うーん……積極的に触れたい人はいないだろうし、盾になろうか」
 ルリアはそういうと、内に秘めた概念武装を具現化させた。
 現れたのは二つの盾。一つは『Aries』。他方は『Viergo』。
 どちらも形状可変の盾であり、武器にも変化する概念武装だ。
(他の10の武装は、他の猟兵たちから庇うのに使おうかな)
 ルリアはそう考え、Ariesを剣として具現化しなおした。
 剣と盾を持つ銀髪の乙女。それに対峙するは無数のツインテール触手。

 両者は一瞬睨みあい、そして戦いの火ぶたが切られた。

 ツインテール触手は、数を生かしてぬらぬらの触手で襲い掛かる。
 上から下から、左から右から。間断なく攻め立てる。
 ルリアはそれを盾で受け流し、剣ではじいていく。
 既に何度も戦いの経験があるルリアにとっては、さほど難しいことではない。
 加えて、とにかく盾が非常に硬い。
 ルリア自身が身に纏うオーラの影響もあり、触手たちでは有効打が与えられないのだ。
 触手は盾の上を滑り、剣を滑り――
「やあっ!」
 ――斬! と、時には断ち切られる。

 触手たちは業を煮やして、ツインテール状の部分を振り回す。
 触手群がうごめき、ルリアへ殺到する。
「おっと」
 ルリアは盾をしっかり構え、その触手群を受け止めた。
 多少重い一撃ではあったが、それでもルリアは傷一つ負わず、余裕の表情である。
 しかし、触手は即座に攻撃に転じた。
 盾の上を這いずり回っていた触手は、刹那の時間で蠢いて盾をつかむ。
 そしてシュッと空気を裂く勢いで、太い触手がルリアに放たれた!

 しかし。
 その触手はルリアには届かない。
「危ないなあ」
 汗一つかかず、焦りもない表情で、ルリアはつぶやいた。
 触手の前には大きな盾が立ちふさがっていた。
 手に持っていたAriesを、盾として具現化しなおしたのだ。
 触手たちの動きが止まったのを見て、ルリアは盾を武器へと変化させた。
「それじゃあ届かないよ、っと」
 斬、と剣が振るわれて、触手群はぱらぱらと床に落ちていった。
「…………ん」
 そこで、ルリアは少し異変に気付いた。
 何か髪に変な感じがするのだ。
 髪が何かに引っ張られているというか。
 …………髪が結われて、皮膚になれない痛みがあるというか。
 ルリアはぺたぺたと自分の髪を触り、そして異変に気付いた。

「な、なんでまたツインテールに……?」
 ちらりと窓を見れば、軽く反射した自分の像が映っている。
 そこに映るルリアは、なぜかツインテールだった。
 レギュラー・スタイル、つまり耳の高さ付近で結い上げるツインテールである。絹のように滑らかな長髪を損なわぬように、緩やかにのびやかに結われている。髪留めに用いられているのは、彼女のマフラーに似た水色のリボンだ。
「……どうしても君たちは、ツインテールがいいわけだね」
 ルリアは戸惑いを隠せぬ様子で、触手たちを見つめた。
 いったいいつの間にこんなことが起きたのか。
 それは他の猟兵を見れば一目瞭然であった。

●メイキング・ツインテール!?
 ルリアに少し遅れて旧校舎に突入していたのは、響・夜姫。

 夜姫は『二手・瑠香』なる怪しい人物を追い、旧校舎の奥が怪しいと踏んでいた。
 そんな折に旧校舎で騒乱が起きたものだから、とてとてと急いで向かっていた。
「やっぱり。るかるかは黒幕ポジション」
 二回にしてみて意外にしっくりきたので、夜姫は一人楽しそうに頷いていた。
 ツインテールだけに二回である。
(しかし適当に考えたおーるはいるのフレーズが採用とは。びっくり)
 ツインテール礼賛にいつの間にか加わっていた「おーるはいる・ついんてーる」。
 部外者の発言を簡単に採用する辺り、ツインテール教とは気分で動いていたのではないかと危ぶまれる。

「ここ……みたいだね」
 騒々しい旧校舎の中を走って、夜姫はつぶやいた。
「いかにもそうです」と言わんばかりに、ツインテール状の触手がのたうち回っている。
(触手で髪型だけ再現。びみょー。手入れの参考にもならなそう)
 夜姫はジト目で触手群を見つめた。
 髪の毛と触手は、当然ながら様々な差がある。
 太さ、長さ、質感、色、材質……何より髪の毛は勝手に動かない。
 夜姫の目の前で、触手はのたうち回り、先行しているルリアに襲い掛かったり、部屋を荒らしまわっている。
 のたうち回る触手を見た夜姫は、瞬間、何かに思い当たった。
「……あの触手。えっちなやつでは?」
 ぬらぬらてらてらと這い回る、紫色の触手。
 UDCアースの同人誌に出てきそうな見た目ではある。
 しかし今のところ、そんなアダルティな被害報告は上がってきていない。
 そう。えっちな触手ではないのである。
 HENTAI触手ではないのだ。

「でも燃やす。ふぁいやー」

 夜姫は触手たちに無慈悲な弾丸を叩き込みながら、部屋へと突入した。

 夜姫の武装は、手に持つ二丁拳銃と、背部から翼状に懸架するアームドフォートである。
 白銀と漆黒の拳銃は、『ジャンヌ・ダルク』。命中精度に優れている。
 一方、漆黒と金色の拳銃は、『ジャンヌ・マガツ』。速射性に優れている。
 そして背部のアームドフォートは、起動浮遊砲盾『サバーニャ』。分離・浮遊しての斉射と、盾の機能を併せ持つビーム兵装だ。

「乱れ撃つぜー」
 夜姫は手持ちの武装を一斉発射しながら、部屋の中を動きまわる。
 弾丸が飛び回り、ビームが空気を焼きながら放たれる。
 不幸にもビームに当たった触手たちは、原型が残らない炭となった。
 一方で、弾丸も華のように鮮やかな焔を纏っており、これが命中した触手たちをどんどん燃やしていく。弾が当たって華が弾け、焔が咲いて舞い散る。
 華焔(フレイムショット)と名付けられた、夜姫のユーベルコードである。

 触手はあまりの熱量に、びたんびたんと跳ね回る。
 このままではたこ焼きになってしまう。
 そう危惧した触手は、夜姫にも襲い掛かる。
「当たらないよー」
 縦横無尽に迫りくる触手を、夜姫は華麗に回避する。
 部屋の中を身軽に走り回り、机や壁を障害物にする。
 それでもやってくるシツコイ触手は、サバーニャを盾として展開してはじく。
 時にはルリアの盾が的確に出現し、触手の行方を阻んでいく。
「ありがとー」
 触手に阻まれ声は届かないが、夜姫はお礼を言った。

(これなら、狙い撃てるかも?)
 夜姫はサバーニャを盾として展開したまま、光翅弓を取り出した。
 見た目はグリップだけの不完全な弓だ。いや、弓にも見えないだろうか。ただの曲線を描いた棒だ。
 しかし夜姫がグリップを握ると、それは光を帯びた。
 光でできた弓弦が張られ、光でできた矢が形作られる。
 夜姫は弓を握り、10秒間集中をして触手をにらむ。
「……狙い撃つぜー」
 そう呟きながら、夜姫は矢を放った。
 音すらしない、ほぼノータイムで、光の矢は触手へと突き刺さった。
 突き刺さったどころではない。深々と刺さった矢はそのまま貫通していった。

 だが触手もやられっぱなしではいられない。
 邪神の眷属としての沽券にかかわる。
 触手はのたうち回って夜姫にとびかかると、三つの触手群を放った。
「おっとっと」
 夜姫はサバーニャで一つを受け止め、次なる二つ目はルリアの盾が阻んだ。
 しかし第三の触手は、回避も盾も間に合わずに夜姫に命中した――
「わっ……」
 ――命中したのは恍惚を与える触手だった!
 触手はほかの部分には目もくれず、夜姫の頭にぺたりと張り付くと、しゃこしゃこしゃことマッサージを始めた。
「あ……これ、は……ヘッドスパでは」
 夜姫は恍惚とした様子で目を細めている。
 ミレナリィドールのツボを押さえた的確なマッサージが、夜姫の頭を襲う!
 同時に触手は非常に手慣れた様子で、夜姫の髪をツインテールに結い上げていく。
 ラビット・スタイルと呼ばれる、耳より高い位置で結い上げられたツインテールである。軽くウェーブのかかった柔らかな銀髪を損なわず、緩やかに結われている。髪留めには、深紅の花をあしらったリボンが使われている。
「……気持ちいいけど。いい加減どいて」
 そういうと、夜姫は触手をぺちっと払いのけ、銃で撃ちぬいた。
 その後、窓に映る自分の像が、ちらりと夜姫の目に入った。
「……職人芸。手入れの参考にするんじゃなくて、触手に手入れしてもらうのか……」
 夜姫は思わずつぶやいた。

 ツインテール状の触手は、恐ろしいほどまでにツインテールを愛していたのである!
 ルリアの髪をツインテールにしたのも、もちろん触手たちであった。
 そしてさらにもう一人……ツインテール触手の餌食(?)となる猟兵がやってきた。

●お前もツインテールだ……!
「わっ、ほんとにツインテールなんですね……」
 物理世界をかけてきて、現れたのはアイ・リスパー。

 アイはこのツインテールが一強の学園において、ロングヘアーを貫き通して潜入していた。
 そんな時に旧校舎が騒々しくなってきたので、ここに来た。
 アイの目の前にいるのは、ツインテール状の紫色の触手。
 まるでB級ホラー映画である。コメディかもしれない。
「ツインテール触手……もうなんだかわからない存在ですが、儀式を止めるには倒すしかないようですね」
 アイはそういうと、電脳魔術士として空間投影を行い始めた。
 無数のプログラムと数式が、空中に浮かび上がる。
「元は生徒だったのかもしれませんが、邪神が復活したら大きな被害が出ます……」
 アイは頭の中で、命を天秤にかけた。
 載っているのは、触手と化した生徒の命と、UDCアースに住まう人々の命。
 生徒の命を救うために、UDCアースに訪れる危険を無視するか?
 否。猟兵としてはあり得ない回答である。
 それがもともとは人であったとしても、UDCアースを脅かす邪神を復活させるために必要なものであるとすれば、討伐しなければならないだろう。
 アイは計算し、触手の討伐を決意した。

「エントロピー・コントロール・プログラム、起動します」
 その言葉とともに、アイは空間投影でプログラムを起動する。
 現れたのは、無数の熱力学の方程式と、現時点での部屋の状態を示した数値だ。
「これを……こうしてこうです!」
 アイが数値を入力してプログラムを動かすと、炎の矢や氷の弾丸が現れた。
 アイが今動かしているこのプログラムは、周囲の熱を制御することができるのだ。
 エントロピーを直接書き換えることによって、絶対零度の氷から数千度の灼熱までを自在に操ることができる。
 マックスウェルの悪魔(マックスウェル・デモン)と名づけられた、アイのユーべるコードである。
「発射!」
 アイの掛け声とともに、炎の矢や氷の弾丸が発射される。
 炎の矢は触手を焼け焦がし、氷の弾丸は凍らせていく。
 極低温と極高温の、相反する属性で彩られたアートだ。
 敵が触手でなければ、幻想的な趣があっただろう。多分。

 さすがの触手たちも、炎と氷で同時に攻め立てられてはたまらない。
 体組織が焼け付き、凍って動かなくなる。
 そして何より、触手たちには許せないことがあった。

 アイはロングヘアーを貫き通していたのである!!

 触手たちは炎と氷を受けてのたうち回りながらも、猛然とアイに襲い掛かる!!
「って、なんで私ばかり狙ってくるんですかーっ!?」
 アイは悲鳴をあげるが、触手たちは止まらない。
 なぜなら今この時点において、この部屋でツインテールでないのはアイだけなのだった。
 のたうち回って迫りくる触手たちは、さながらこう言っているかのようだ。
『お前もツインテールになれ……お前もツインテールになれ……!』
 アイはとてとてと走って触手から逃げていく。
 途中途中でルリアの盾が触手を阻むが、しかし絶対量が多い。
「ひゃあんっ」
 そしてアイは何もないところで転んでしまった!!
 運動が苦手なのがたたり、足がもつれてしまったのだ。

 そして触手たちはしめしめと言わんばかりにアイを取り囲む。
 涙目のアイに、触手がぐわりと襲い掛かった。

 服の中を這い回り、知らず知らずのうちに体が熱くなり……
 甘い吐息を吐きながら、全身から力が抜けていき……
 触手にされるがまま全身を弄ばれ……
 ぬらぬら、てらてらとした触手が這い回る。
 やがて頭が優しく愛撫され、髪を撫でられ頭皮をマッサージされていく。

 そして気が付けば、触手たちはアイから離れていた。
「……あれ?」
 決してえっちなことは起きなかった。HENTAI触手ではないのである。
 ちらりとアイが部屋の中を見回すと、窓に薄く映る自分の像が目に入った。
 そこに映るのは、ツインテールのアイ。
 カントリー・スタイルと呼ばれる、おさげスタイルのツインテールである。白く透き通る綺麗な長髪に、軽くウェーブをかけてまとめている。髪留めは赤いリボンだ。
「あっ……ツインテール……」
 ロング教を自認するアイは、自分の姿を見て少々しょげたという。

 ともあれ、髪型が犠牲になったが、触手の数は確実に減ってきている。
 めげるなイェーガー、がんばれイェーガー!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

葛乃葉・やすな
あの触手ども、相当ツインテールが好きなようじゃな。
なるほどのう。なるほどのぅ。

ここはひとつ【誘惑】してみるかのう。
先ほど教わったあの言葉よ!

「おーるはいる・ついんてーる」
ちょっと甘えた声を出してあのポーズをとり【存在感】を出してアピールする。

触手の群れの動きが止まったらわしのUC【フォックスファイア】で焼き尽くしてくれるわ!

「触手すらも誘惑するのがわしの妖狐としての実力よ!もっと燃えるがよいわーっ!」

※アドリブ・絡み歓迎じゃ。存分にやると良い。


エドゥアルト・ルーデル
諸君
拙者はツインテが好きだ

諸君
拙者はツインテが好きだ

諸君
拙者はツインテが大好きだ

それはそれとしてポニテやロングが見れなくなるのが良い訳ねぇだろうが死ねぇ!!!
そういう訳で触手共をサクサク退治するでござるよ!

【地形の利用】と【罠使い】で敵に対抗する為の簡単な陣地を作成し【スナイパー】にて狙撃しながら迎撃する構えを取りますぞ!
そして【触手塊】の群体が来るのならごちらは軍隊でござる
ありったけの【爆撃機部隊】を召喚し、触手塊と余力があれば敵の本陣を爆撃させ、数対数の戦いに持ち込み迎撃でござる
押し込めればそれはそれで良し、最低限引きつけておければ御の字でござるね

アドリブ・絡み歓迎



●このツインテール大好き触手どもめ!
 旧校舎を走る二人の影があった。
 当然と言うべきか、目的地は触手の暴れている最奥部。
「おひょう! かなりの騒音ですぞ!」
 旧校舎全体に響き渡るような、滅茶苦茶な発砲と騒乱の音を聞いて、エドゥアルト・ルーデルは素っ頓狂な声を上げた。
 それを聞いて、隣を走る葛乃葉・やすなは顔を顰めた。
「建物が壊れかねん勢いじゃのう。何が起こっとるんじゃ」
「猟兵とオブリビオンの争いに違いないでござる!」
「それはそうじゃろうなぁ……」
 エドゥアルトの言葉に、やすなは肩を竦めて答えた。

 迷彩服にマークスマンライフルを抱えるエドゥアルトに、制服から戦巫女の衣装へとチェンジしたやすな。
 その二人は旧校舎を走り、ようやく音の場所へと辿りついた。
 そこには居たのは――

 ――紫色のツインテール触手!
 そして、何か多種多様なツインテールに結い上げられた猟兵たちであった!!

「んなぁ!? ここはツインテの理想郷でござるか!?」
「な、何でこんなことになっとるんじゃ」
 エドゥアルトもやすなも驚愕で一瞬立ち止まった。
 二人の頭の中に幾つかの考えが浮かびあがる。
 一。この猟兵たちはツインテールが趣味でツインテールにしている。
 二。何らかの外的要因でツインテールに変えられてしまった。
 三。ツインテールでなければ死んじゃう空間なのかもしれない。
 などなどなど。

 少し観察をしていると、どうやら二であることが分かった。
 先行して戦っている猟兵たちの顔が、何となく嫌そうなのだ。
 慣れない髪型に皮膚が引っ張られ、戦っている間も気になる様子。
 そして触手たちも、触るタイミングがあれば執拗に髪を触り、更にツインテールに磨きをかけている。ウェーブをかけてみたり、編み込みを入れようとしてみたりと、中々に手癖が悪い。

「あの触手ども、相当ツインテールが好きなようじゃな……
 なるほどのう。なるほどのぅ」
 やすなは中々意地の悪そうな笑みを浮かべて、触手たちを眺めていた。
 一方エドゥアルトは、これが『強制されたツインテール』だという事を認識するや否や、顔色を変えた。
「諸君。拙者はツインテが好きだ」
 いつの間にかゴーグルをつけたエドゥアルトは、マークスマンライフルを携え部屋へと入った。
「諸君。拙者はツインテが好きだ」
 先行部隊の放つビームや炎の光が、ゴーグルをきらりと光らせる。
「諸君。拙者はツインテが大好きだ」
 ようやく新たな侵入者に気付いた触手たちがエドゥアルトを見上げ、止まった。
 ツインテール大好き宣言をしているエドゥアルトは、敵ではないのではないか?
 触手はそう考え、止まってしまったのだ。

 勿論エドゥアルトは言葉通りツインテが好きだ。
 しかし――
「それはそれとしてポニテやロングが見れなくなるのが良い訳ねぇだろうが死ねぇ!!!」
 渾身の咆哮と共に、エドゥアルトのマークスマンライフルが火を噴いた!
 確かにツインテは好きである。
 しかし髪型が強制され多様性を失った世界に魅力はあろうか?
 否、否、否、三度否!
「ヒャッハー! 触手を消毒でござる!」
 エドゥアルトは部屋へ転がり込むと、壊れた机や教卓を手に取って簡単な陣地を構築した。
 無数の戦場を駆けた彼に、即席陣地作成など容易い事だ。
「ステンバーイ……ステンバーイ」
 そして作り上げた陣地から、マークスマンライフルを構えて触手を狙う。
 無数の触手と、猟兵の絡みあうカオスな戦場だが、逆にカオスで流動的な戦場だからこそ、射線が通るタイミングは必ずある。
 味方には当たらぬように、しかし確実に敵には当たるタイミングが。
「ゴー!」
 掛け声と共にマークスマンライフルから弾丸が飛ぶ。
 無数の弾丸が空気を切り裂き、触手を次々に撃ち抜いていく。
「ビューティフォー……」
 ゴーグルを外してエドゥアルトはにやりと笑った。

 とはいえライフルで全ての触手を撃ち抜けるわけでは無い。
 部屋の中では未だ沢山の触手がうごうごと蠢いている。
 未だビームや銃弾や触手が飛び交う、カオスな戦場だ。
 やすなは、エドゥアルトが攻撃を行ったのとは別の一角に向かった。
「ふっふっふ。こっちを見ろい!」
 蠢く触手の一塊に向かって、やすなは呼びかけた。
 触手たちははたと止まり、やすなの方へと向かってきた。
 無数の触手が殺到し、やすなの髪を弄ぼうとする!

 やすなはそれを見て、ツインテールの房を持ち謎のポーズを取った!

「おーるはいる・ついんてーる」
 ちょっと甘えた、可愛らしい声と共に繰りだされたそれは、まさしくツインテール礼賛のポーズだった!
 
 それを見た触手たちは、思わず動きを止めてしまった。
 元より触手たちはツインテールをこよなく愛するもの。
 やすながこれは紛れもなく、『ツインテール教のツインテール礼賛』そのものであった。
 何という事か。
 元ツインテール教の生徒たちであった触手たちが、ツインテール礼賛を行っている者を攻撃できようか?
 否! 絶対に否である!
 しかも子供っぽい姿で甘えた声である。
 元が人間である触手たちに攻撃できようか?
 否!!
「うひょお、可愛いでござる!!」
 奥の簡易陣地からはエドゥアルトの声が飛んでくる。
 触手たちもうねり、やんややんやと囃し立てるように触手を動かしている。
 触手たちの中から、一瞬の間ではあろうとも、完全に戦意は消え去っていた!

「ふっ……」
 やすながにやりと笑う。すると、周囲に幾つかの狐火が現れた。
 ゆらゆらと揺れて、熱を持った赤い光を辺りへと投げかけている。
 少々不穏なその狐火を見て、触手たちは『?』マークを無数に作り出した。
「ついでじゃ、わしの十八番も見ていくがよい! 遠慮はいらんぞ!」
 やすなの言葉と共に、狐火が大きく燃え上がり、触手たちに襲い掛かった!
 轟、と灼熱が触手たちを燃やし、先端から徐々に焼け焦がしていく。
 ここに至って触手たちはようやく気付いた。
 彼 女 は 敵 で あ る !
「触手すらも誘惑するのがわしの妖狐としての実力よ! もっと燃えるがよいわーっ!」
 やすなは哄笑して狐火を操り、触手を火の海に沈めていく。
 フォックスファイア。
 文字通り狐火を操作する、やすなのユーベルコードであった。

 触手は怒り狂い、無数の触手群を放出した。
 元のツインテール触手たちのミニチュア版、という感じである。
 どれも丁寧にツインテール状に触手が結われている。
 小型ツインテール触手塊の軍隊である。
 狐火で燃え盛る部屋の中を、うごうごと進軍していく。
 一撃喰らえば消滅する触手ではあるが、ぴょんぴょん跳ねて火の手を避けている。
「むうっ、止まりきらん!」
「拙者にまっかせーい! 休んでいる暇はないぞ出撃だ!」
 エドゥアルトの掛け声が飛び、同時に簡易陣地から無数の爆撃機が出撃した。
 プロペラが空気をかき乱す騒音が鳴り響く。
「そーれ爆撃でござる!」
 ミニチュア爆撃機から、ミニチュア爆弾が無数に投下されていく。
 下には狐火! 上からは爆弾!
 こうなっては、一撃で消滅する触手たちは身動きが取れない!
 焼かれて消えるのみである!

 やがて小さな触手塊どもは火に呑まれ、爆発し、消え切った。
「ふっふっふ。どうじゃあ!」
「さーて後はもうちょっとでござるな!」
 やすなとエデュアルトは部屋を見渡しそう言った。

 猟兵の活躍によって、触手たちはその数を減らしていた。
 あともう少しで、触手たちを一掃できるだろう!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

藤ヶ谷・あやめ
wiz

一撃で済むのなら、破壊力はあまり必要ありませんわね
数が多いのでわたくし自身が倒れぬようにせねば――
と言う事なので、巫覡載霊の舞を使用
「来なさい。全てお相手してさしあげます!」
ツインテの片方を刈って、一本結びにして差し上げますわ!
深追いはせず、ひたすら結びあげたツインテールの片方のみを刈っていきます……ツインテ推しの自分がツインテではないというレゾ――(忘れた)
こほん……それが奪われるといいですわ!
(ドヤ顔)

絡み歓迎・アドリブ可


雷田・龍子
転校生として潜入を試みたものの旧校舎からの離脱を余儀なくされた龍子は、どうしたものかと思案していた。
そこにアイ・リスパーからの情報が送られてくる。

「怪しいのは旧校舎の内部。」

どうしても突入しなければならないようだ。

・・・飛ぶか。
とにかくツインテール共の手が届かない高さで飛び回り、怪しい場所を探すしかない。
龍子は大きく出遅れたことを実感している。

【SPD】
「なにが出るかな?」
胸元に手を深く突っ込み、この状況に有効なガジェットを探す。

※これは本来、第1章でやっておくべき行動なので・・・
探索をして集団戦に間に合った場合は参加、間に合わなかった場合は大失敗。あるいは不採用で。

アドリブ大歓迎。



●まだまだこれからツインテール
 ――しばし時間は遡る。
 どれくらい遡るかと言えば、触手が暴れ始める前までである――

(どうしたものかな)
 雷田・龍子は思案していた。
 先ほど龍子は旧校舎に潜入したのだが、ツインテール教の生徒に気付かれてしまったため旧校舎からの離脱を余儀なくされていた。
 故に旧校舎から離れたところで思い悩んでいた。
(……ん?)
 ふと、龍子にほかの猟兵から連絡が届く。
 それは『旧校舎内部が怪しい』という内容であった。
 ツインテール教の生徒と邂逅した龍子には、実感をもって納得できる情報である。
「どうしても突入しなければならないようだ……けど」
 龍子は先ほど邂逅したツインテール教の信者どもを思い出す。
 血気盛んにして狂気じみた生徒たち。しかも全員ツインテール。
 すさまじくヤバい集団である。
「……飛ぶか」
 人派ドラゴニアンである龍子は、羽を広げて空へ飛び上がった。
 上からならばツインテール共の手は届かぬ!
 怪しいところを見つけて、そこから潜入しようと言うわけだ。

 ――ここから少し時間が経過する。
 次は触手が暴れ始めた直後である――

「ふうっ」
 旧校舎から離れていく生徒たちを見ながら、藤ヶ谷・あやめは一息ついた。
 あやめは無事な生徒たちを、旧校舎から避難させていたのである。
 ほかの猟兵たちが突入に用いた経路とは違うため、混乱を招くことなく生徒を避難させることができた。
 黒い縦ロールツインテールが、ゆらゆらと風に揺れる。
「おおっと。すさまじい音ですわね」
 旧校舎全部をぶっ壊すような騒音が響いてきて、あやめは思わずつぶやいた。
 ビームをぶっ放したり爆撃したり銃を撃ったりすれば、こんな音になるだろう。
 まるで戦争である。
「わたくしも行きませんと……っと?」
 ふとあやめは、頭上を飛び回る人影を見つけた。
 普通UDCアースでは、人が空を飛ぶことはない。
 飛べるのはUDCか猟兵だけ。
 そしてUDCは旧校舎内にいるので、空を飛んでいるのは必然的に猟兵である。
 羽あり角あり尻尾あり。そんな人影は、ドラゴニアンに違いない。
「あの~、何してらっしゃるんですの~!」
 あやめはぴょんぴょんと飛びはね、手を振って空飛ぶ猟兵に声をかけた。
 あやめに気付いて、空飛ぶ猟兵は地上へと降りてきた。

 ――これにて二人は邂逅する。
 ようやく現在の時間に、即ち触手が燃やされた直後に戻ってくる――

「本当にこっちでいいのか?」
「ええ。先ほどわたくしが避難に用いたので、問題なく目的地に続いております」
 あやめと龍子は、二人並んで旧校舎を走っていた。
 彼女らの目的地は、当然最奥の騒乱の地。
 今もまだ凄まじい騒音が鳴り響いている。
「飛んで侵入しようと思ったが、ここまで入り組んでると……」
「そうですわね……道を知らないと迷子になってしまいますわ」
 ツインテール教の生徒によって作り替えられた旧校舎は、それはもう迷路と言っていいほどの入り組み方をしていた。
 だが、道を知るあやめは迷わず走る。
 龍子がその後ろをついて行く。
 そしてようやく二人は、目的地へとたどり着いた。
 そこで二人が見たものは――

 ――ツインテール触手にツインテール猟兵である!
 両者は壮烈な死闘を繰り広げているではないか。
 部屋の中には銃弾が飛び交い、ビームが空気を焼き、爆撃機が宙を舞い、狐火が踊り、炎の矢と氷の弾丸が荒れ狂い、剣や盾が現れては消えていく。
 何という戦場であろうか。

●カッティング・ツインテール・テンタクル!
「これはアレですわね。ツインテールが流行り……」
「流行り……なのか? それよりも、触手がツインテールなのは何故だ!?」
 龍子はツインテール触手を見て声を上げる。
 見た目はさながら紫色のツインテールウィッグ。
 そんなのがひとりでに蠢いて戦うのだ。
「ツインテール教の信者が姿を変えて、こうなったみたいですわ」
「自らの体をツインテールウィッグに変えることで、全身で信仰を示すという訳か? いや荒唐無稽過ぎるな……」
 二人の目の前で、ツインテール触手は踊り狂う。
 執拗にツインテール猟兵の髪の毛を狙い、隙さえあれば髪の毛を愛撫している。
 恐るべきはその執念、というべきだろうか。

 その様子を見ていたあやめは、ふと何かを思いついた。
「……ということは。こうすればよろしいのではなくて?」
 あやめはその場でくるりと回る。
 神に捧げる舞を踊るかのように、滑らかに手が宙を泳ぐ。
 すると空気が揺らめいて、あやめの周囲に光が集まっていく。
 それはさながら、神をその身におろす巫女のよう。
 刹那の舞が終わると、あやめの姿は変わっていた。
 巫覡載霊の舞。自らを神霊体へ変え、薙刀を武器とするユーベルコードである。
「来なさい。全てお相手してさしあげます!」
 あやめはそう言うと、部屋の中へ突入して触手たちへと斬りかかった。
 衝撃波を伴う神の薙刀である。切れ味も非常に鋭い。
「はぁっ!」
 かけ声と共に薙刀を振ると、空気を纏って衝撃波が触手に襲いかかる。
 衝撃波は見事に触手を切り裂き……ツインテールの一房だけを切り飛ばした。

 なんということであろうか。
 ツインテール触手がサイドテール触手になってしまった!

 サイドテール触手は『!』マークを作ると、うなだれて地面にべちゃりと倒れた。
「ツインテの片方を刈って、一本結びにして差し上げますわ!」
 あやめは触手たちを深追いはせず、ひたすらツインテールの片方だけを狙って薙刀を振るう。
 あやめが一薙ぎすれば、触手ツインテールが一房飛んでいく。
 そのたびにサイドテール触手が一匹増え、うなだれて地面に倒れていく。
「ツインテ推しの自分がツインテではないというレゾ――
 こほん……それが奪われるといいですわ!」
 何やら途中で言葉をド忘れしつつも、あやめは薙刀を振るって触手を刈る。
 言おうとした言葉は存在理由(レゾンデートル)であろうか?
 真実は忘却の彼方である。

「なるほど、そういう戦い方もあるんだな」
 外から少し観察をしていた龍子は、あやめの立ち回りを見て感心していた。
 触手を刈る。シンプル・イズ・ザ・ベストである。
「さて私も……なにが出るかな?」
 龍子はそう言うと、胸元に手を深く突っ込んだ。
 はち切れんばかりの大きさの胸に手が入って、もぞもぞとしているのは中々ハラハラする光景である。が、別にえっちなことをしているわけではない。
 これは龍子のユーベルコード、ガジェットドロー。
 対象に応じて様々なガジェットを取り出し、それを用いて戦うというユーベルコードである。
「おっ、おおっ?」
 ずるりと胸元から引き出されたのは、掃除機のようなガジェットだ。
 長い取っ手があり、地面を転がす車輪があり……そしてスイッチがある。
 龍子がポチッとスイッチを押すと、ガジェットは蒸気を吹き上げて動き始めた。
 ウィィィィィィィィン……バリバリバリバリ!!

 なんと、そのガジェットは床を削り始めたではないか!
 削られた床は、破片となってあたりへ飛び散っている。
 何を隠そう、このガジェットは『芝刈り機』なのである!!
 しかし、ちょっと高性能すぎて床を削っているようだ。

「……これで、触手を刈ればいいみたいだな。しかしサイズが……ん?」
 龍子が芝刈り機と触手を見比べていると、ふと触手たちの変化に気付いた。
 すでに辺りにいるのはサイドテール触手ばかり。
 サイドテールになってしまった触手は、倒れたまま触手塊を召喚していた。
 触手の合間から、小さな触手塊が現れて地面を這う。
 小さき触手塊は、今は亡きツインテールである。
「……なるほど」
 龍子は芝刈り機のスイッチを押し、触手塊へと突っ込んでいった。

 ウィィィィィィィィン……バリバリバリバリ!!
 おお、なんと言うことか。
 小さな触手塊は、どんどん芝刈り機でバラバラになっていくではないか。

「ちょっとした掃除だな」
「よぉーし、後は残党狩りですわよー!」
 龍子とあやめは残る触手塊を刈って刈って刈りつくしていく。
 あとは消化試合である。
 やがて、部屋の中の触手は全滅した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『生を刈るモノ・ジュリア』

POW   :    あたしの鋏に切れないもの何てないんですけど?
【空間を切り裂く鋏】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ちょっ、あたしの髪が乱れるからやめてくれるっ?
【ツインテールを手入れすることで】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ   :    あたしの眷属になりなさい!!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【おぞましい怪物】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミルフィ・リンドブラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ツインテール・インストール!
「いやいやいや、おかしいでしょう!」
 ツインテール触手の全滅を見た二手・瑠香は怒り狂った。
 瑠香は部屋の外に隠れて、じいっと戦模様を眺めていたのだ。
「あたしもおかしいけどさあ、それ以上になんなのあいつら!
 変な力いっぱいあるし、武器もヤバいし!
 どうなってんのよ、これじゃあ儀式が失敗するじゃない!」
 瑠香はツインテールを引っ張りながら悔しがる。
 ツインテ教なのにツインテールを粗末にするでない。
「くう、こうなったら最終手段……!
 あたし自身に邪神を宿して、あたし自身が邪神となることだ……!」
 瑠香は懐からお札を取り出し、自分にぺたりと貼った。

「あばばばばばばばばば!」

 悲鳴というか、声にならない叫びが出る。
 瑠香の服が変わり、髪の毛が変わり、やがて全身が変化した。
 そこにいたのは、不完全ながらも力を得た邪神、ジュリアであった。

「ツインテール・インストール!
 はーっ、なんか変な呼ばれ方したけど? なんかあったかな?」

 ジュリアは周りを見渡し、猟兵の姿に気がついた。
「ああ、な~るほど。あたしの儀式を邪魔したやつがいるって訳ね」
 それを理解すると、ジュリアは獲物である大きな鋏を握り、構えた。
「そんじゃあ、あたしが命を刈り取ってあげる!」

 姿を現したツインテール邪神。
 彼女を撃破せよ、イェーガー!
雷田・龍子
「斬り合いならば相手をするぞ。」
大剣サンダーブレードを構え正対する。

【POW】

まず【先制攻撃】で【衝撃波】を放つ。
相手が反応する隙に飛んで接近し、【2回攻撃】【武器落とし】を試みる。
チャンスがあればUCを使う。



●カット・オフ?
「斬り合いならば相手をするぞ」
 まず現れたジュリアに正対したのは、雷田・龍子だった。
 龍子が手に握るのは、雷をイメージした大剣『サンダーブレード』。
「へぇ~、あたしと真っ正面からやり合おうっていうの?」
 ジュリアは楽しそうに、そして自信満々に笑う。
 巨大な鋏を、威嚇するようにシャキシャキと開閉する。
 すると鋏は、閉じるたびに空間を切り裂き、空気のはじける奇妙な音を立てた。
 切り裂かれた空間は、黒いほつれのようになって宙に浮いている。
「っとと、切り過ぎちゃった」
 ジュリアは鋏を閉じ、ぺちぺちとほつれた空間をたたく。
「見ての通り、あたしの鋏に切れないものなんてないんですけどぉ~……
 くふふっ、本当に真正面からやるの~?」
 ジュリアは嗤い、龍子を見つめる。
 完全に侮っている笑顔である。
 対峙する龍子は、怯みも怒りもせず、ただジュリアを見返した。
「やってみなければ、分からないだろう?」
「はん! せっかく降伏のチャンスを与えてあげたのに!
 まあいいわ、あたしの鋏で切り刻んだげる!」
 ジュリアはそう言って、再び鋏を構えた――

 ――それとほぼ同時に、龍子が大剣を振り上げた。
 雷を模した大剣の斬撃は、音を超えて衝撃波を作り出す。
 それは当然凄まじい勢いで、ジュリアへと飛んでいった。

「にょわあああああ!?」
 ジュリアはすんでの所で衝撃波を受け止めた。
 危ない危ない。これでも強い邪神なのである。
「人が構えるより先に攻撃するのってどうな――」
「遅い!」
 ジュリアが怒って攻撃に転じようとする。
 しかしそれよりも早く、龍子が動いていた。
 羽を広げて踏み込み、部屋の中を飛び、距離を詰める。
 そして勢いを乗せた、大剣の斬撃を放つ!
「うわっととと!?」
 ジュリアは鋏で斬撃を受け止める。
 金属がかち合い、甲高い音を立てる。
「何なのよ! 構えるまで攻撃しちゃイケナイって特撮とかで学ばなかったの!?」
「生憎UDCアースの出身ではないからな!」
 しかも別に構えるまで攻撃してはいけないルールなどない。
 騎士か何かの作法と間違えているのだろう。

 二人は剣戟を重ね、火花を散らす。
 刹那。
「これが私の全力だ!」
「邪魔すんなあ!!」
 二人はほぼ同じタイミングで、斬撃を放った。
 それはどんなものをも切断する一撃。
 龍子の剣刃一閃と、ジュリアの一撃が重なる。

 ギィィィィィィィィィィィィン!!

 だがその一撃は、どちらの武器も切り裂くことはなかった。
 刃と刃が見事な角度でかち合い、お互いの一撃を打ち消したのだ。
 なんたる奇妙な結果か。
 今の一撃はどちらも『切り飛ばす』一撃だというのに。

「なぁ!?」
「……切れはしないか」
 ジュリアは素っ頓狂な声を上げ、一方龍子は距離を取った。
 攻撃は届いた。しかし大技は届かなかった。
 だがこれは、大切な一歩となるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シエラ・アルバスティ
「この邪神の弱点は……これかな」

召喚されて邪神の前に出る
私が構える武器は海王剣『カッツォ・タタキ』、魚臭い

「この臭いがツインテールに染みついた日には発狂するに違いないね、私に近づけば臭いが移るよ? ふふふ……」
「ふふ! どうしたの? 私と接近戦は嫌なのかなぁ!?」

そして雑貨屋【朧月】の燃えるお箸を投げつけて牽制、髪にかすればちぢれる

「雷糸!!」

戦闘中の最中に雷糸を密かに地を這わせて操り、罠を仕掛け足を止める。そして切られる前に電流をすかさず流す、上手くいけば髪が乱れる!
その隙に狙うは【ダッシュ】と【クレイジーアトモスフィア】の全力加速から【何も考えてないキック】によるノックダウン!

アドリブOK



●フィッシュ・アンド・キック!
「この邪神の弱点は……これかな」
 ふと、そんな声と共に部屋の中に光が現れた。
 猟兵ならなじみ深い、転移の光である。
 そこから現れたるは、白い長髪に緑色の瞳を持つ人狼の少女。
 緑を基調とした動きやすい服を身に纏う彼女は、シエラ・アルバスティ。
 そしてそんな彼女が携えていた武器は……赤かった。

 それは、剣というにはあまりにも赤く大きすぎた。
 大きく、分厚く、重く、そして大雑把すぎた。
 それは正に。

 刺 身 だ っ た !

 武器の名は海王剣『カッツォ・タタキ』。
 まるで刺身にしか見えない大剣である。いやどう見ても刺身である。
 それ故か、なんとも魚臭い。
「うっわっ!? 食べ物を武器にするとか正気!?」
「ちゃんとした武器だよ、ほらっ!」
 シエラはぶん、と刺身を一薙ぎした。
 轟、と分厚い刺身は、風を纏ってジュリアのすぐそばを通る。
「うわっ魚臭っ!?」
 ジュリアは思わず叫ぶ。
 こんなものが当たれば無事では済まないだろう。
 水気を帯び、てらてらと邪悪に光る赤身を全身で受けた日には、一日中魚臭さが残るに違いない。洗っても洗っても取れぬ魚臭さが、体中に残るのである。
 あと多分べとべとする。
 ジュリアには到底受け入れ難い攻撃である。

「この臭いがツインテールに染みついた日には発狂するに違いないね。
 私に近づけば臭いが移るよ? ふふふ……」
 シエラは邪悪に笑いながら、じりじりと距離を縮めていく。
「く、来るなっ! くさい!」
「ふふ! どうしたの? 私と接近戦は嫌なのかなぁ!?」
「嫌に決まってるでしょお!?」
 ジュリアは叫んで距離を取る。
 ツインテールが魚臭くなるとか、あり得ないのである。
「ならこうだ、えいっ!」
 シエラは懐からお箸を取り出して、ジュリアに投げつけた。

 お箸、である。
 360度どんなにアクロバティックな角度から見てもお箸である。
 だがシエラの手を離れた瞬間、そのお箸は燃え始めた。
 雑貨屋【朧月】印の燃えるお箸である。

「今度は炎!? 嫌よ!」
 ジュリアはツインテールを庇い、お箸を鋏でぺちっとはたき落とした。
 その瞬間、ジュリアは足を止めてしまった。
「隙ありぃ! 雷糸!!」
 その隙を捉え、シエラは手甲部分から雷の糸を射出する。
 それはジュリアの体に命中し、軽く縛り上げる。
「わっ、ちょっと何を――」
「えいっ」
 シエラは問答無用で電流を流し込んだ。
「わわわわわ、あばばばばばば」
 ジュリアは電流を受けてビリビリバリバリ、痙攣してしまった。
 その瞬間に頭がぶるぶる震えたものだから、髪がばさばさと乱れてしまった。
「あばばっ……あああ!!??」
 自分のツインテールが乱れた事に気付いたジュリアは、ショックで正気に戻った。
 恐るべしツインテール愛。
 だがその愛故に、戦闘中だというのに髪の手入れをし始める。
 愚かなりツインテール愛!

「今だ……世界が――私に追いついてこない!!!!」

 ――刹那、シエラは風の衣を纏い、駆けた。
 六枚の大気の翼の生えた、美麗なる衣。
 その衣と共に空気を味方にして、高速移動を行うのだ。
 シエラのユーベルコード、クレイジー・アトモスフィアである。
 バシュッと空気の弾ける音と共に、衣から大気の翼が飛散する。
 一枚。二枚。三枚。四枚。五枚。六枚。
 それがシエラにものすごい加速度を与え、速度は瞬時に超音速まで達した。
 ここまで来れば、シエラそのものが超音速の質量兵器である。
「私たちは常に死に向かって走り続けてるんだよ!!」
 シエラはその速度のまま、飛び蹴りを放つ。
 目標はもちろんジュリア。
 持てる力全てを集約した無計画な飛び蹴りが、超音速でジュリアへと放たれる――

 この間は1秒にも満たないごく僅かな時間だった。
 ジュリアは何も反応できず、シエラのノー・プラン・キックを全身で味わった。

「ぐっはあああああ!?」
 ボウン! と周囲の大気ごと吹き飛ばす、滅茶苦茶な一撃がジュリアへと入る!
 ジュリアは吹き飛ばされ、壁に大穴を開けていった。
 十数枚壁をぶち抜いて、ジュリアはようやく止まった。
 衝撃でがたがたと旧校舎が揺れる。だが大丈夫。まだ壊れていない。
「……ひ、非常識な速度!」
 そしてジュリアもまだ倒れていなかった。
 頑丈である。これが邪神の耐久力か。
 ならばまだ戦わねばならぬ。頑張れイェーガー!

大成功 🔵​🔵​🔵​

麗明・月乃
全てのツインテールの力を使った奥義でも見せてくれるのじゃろうか。
…ツインテールの奥義ってなんじゃ。13km伸びるとかかの。

神は言っている。そのツインテールを乱せと。
というわけで『全力魔法』で【弱点の力】を発動。
ツインテール属性の弱点(捏造)、鶏『属性攻撃』で攻撃なのじゃー!
みだせみだせー!啄みやすい位置にあるのが悪いのじゃ!

私は動かぬから良いとして、鶏の摩擦抵抗が落ちたら…地面をスイーッと滑るのじゃろうか。
ちょっと楽しそうじゃのう。
まあやられたら更に追加で召喚するのじゃ。
眷属にされそうなら『高速詠唱』で先に【チキン・アゲイン】を使ってみるかの。
「おかわりはまだあるのじゃ。たんと召し上がれ?」



●コール・オブ・チキン!
「全てのツインテールの力を使った奥義でも見せてくれるのじゃろうか」
 そんなことを呟きながら、この場に現れたるは麗明・月乃。
 彼女もまた、この場に転移してきた猟兵である。
 金髪碧眼の妖狐で、ピンク色のふわふわふりふりの着物ドレスを身につけている。
 ピンク色のリボンがかわいらしい。
「……ツインテールの奥義ってなんじゃ。13km伸びるとかかの」
 月乃の頭の中で、ジュリアのツインテールが縦横無尽に動き始める。
 ものすごい勢いでツインテールがびよんびよん伸びたり縮んだり。
 髪が滅茶苦茶伸びて筋骨隆々になってみたり。
 もちろん脳内だけの現象である。
 月乃はぶんぶん頭を振って、そんな想像たちを追い出す。

「ちょっと、そこのキツネっこ。人を見て変なこと考えてない?」
 ぶち抜かれた壁から這い出ててきながら、ジュリアが言う。
 服には木の破片やら砂塵がついているのに、髪だけはツヤツヤである。
 汚れ一つない。
 さすがはツインテールの邪神と言ったところか。
「今は考えてないのじゃ。本当じゃぞ」
「『今は』って何よ、さっきは考えてたって事!?」
「……神のみぞ知るのじゃ」
 目を逸らして月乃は答える。
 神は知るが、邪神は知らぬ。
「ついでに神は言っている。そのツインテールを乱せと」
 月乃は目を再びジュリアに向け、ツインテールを見つめる。
 ツインテールの邪神であれば、やはりツインテールを乱すのが精神に効きそうだ。
「だめよ、あたしのツインテール乱すとか何言ってんの!」
 ジュリアは鋏を構えて威嚇するが、月乃はかまわず詠唱を始める。
「儚く弱き力達よ。純白の翼を持って、我が愛し子達の未来に一筋の白をもたらせ!」
 月乃の言葉は旧校舎に響き渡る。
 刹那、旧校舎の中に一瞬の静寂が訪れる。
 嵐の前の静けさにも似た、奇妙に音の消えた時間である。
「…………?」
 ジュリアは首をかしげる。何が起きるか予測がつかぬのだ。
 だがその疑問は、直後に解決される。同時に静寂も打ち破られる。

 バサバサバサ! ココッココココ!!
 旧校舎のあちらこちらから、無数の鶏が現れたのだ!

 それが一斉にジュリアへと飛びかかる。
「ニ、ニワトリ!? なんでこんなとこに!?」
 訳が分からず、ジュリアは叫んで鋏を振り回す。
 然様。鶏である。UDCアースでは代表的な家禽である。
 現れた鶏はどれもこれも純白の翼を持ち、真っ赤な鶏冠を持っていた。
 例え一匹一匹の力は弱くとも、集まれば大きな力となる。
 これこそ月乃のユーベルコード、弱者の力(ホワイト・レイン)である。
「みだせみだせー! 啄みやすい位置にあるのが悪いのじゃ!」
 月乃が囃し立てると、鶏たちは翼をはためかせ、執拗にツインテールを狙う
「ちょっ、あたしの髪が乱れるからやめてくれるっ!?
 やめっ、離れなさいって、やめてってば!」
 ジュリアは叫びながらも、くしゃくしゃになったツインテールを手入れし始めた。
 恐るべしツインテール愛。
 乱れる先からどんどん手入れされて、あっという間に元通りである。
 しかも手入れされたツインテールには、ジュリアの魔力が込められていた。
 その効力が発揮されているのは、直後にツインテールを啄んだ鶏を見れば分かる。

 嘴がツインテールを捕らえられず、つるつると滑っているではないか。
 何故か。ツインテールの摩擦だとか摩擦抵抗だとかが極限まで減っているのだ。

 しかもツインテールを啄んだ鶏は、足を滑らせて床をスイーッと滑るではないか。
 摩擦を減少させる魔力が伝染してしまったのだ。
「摩擦を奪った! どう、これでツインテールを啄めないわよ!」
 ジュリアは勝ちを確信して叫ぶ。
 無数の鶏はツインテールを啄み、摩擦を奪われてつるつるになってしまう。
 エアホッケーでもやっているかのように、無数の鶏が床を滑りまくる。
 そのまま鶏同士がごっつんことぶつかり合ったり、壁に頭をしたたかにぶつけたりするものだから、哀れな鶏たちはどんどん気絶していった。
「鶏が可愛そうじゃろ!」
「はぁ~~!? ツインテールを乱そうとするからでしょお!?」
 月乃とジュリアは暫しにらみ合う。
 そしてほぼ同じタイミングで、あることに気付いた。
 二人とも『気絶しているもの』を操ることができるのである。
 そして今ここに、『気絶しているもの』は無数に転がっていた。
 鶏である。
「ならこうしてやる――」
「させぬ! 志半ばで倒れし烈士の魂よ。未だ己が理想を求むるなら。闘争に心を馳せるなら。我が名に置いて身を変え形を変え、その願いを叶えん!」
 二人は同時にユーベルコードを起動する……が、高速詠唱技術を持つ月乃の方が、早く動いた。
 気絶した鶏たちは、再び目を覚まして動き始める。
 チキン・アゲイン。最期の一鳴きをもう一度。
「おかわりはまだあるのじゃ。たんと召し上がれ?」
 月乃がそう言うと、鶏たちは再びジュリアへ飛びかかった。
「うにゃあああああ!! こんの鶏どもめ!!」
 ジュリアは怒り狂って鋏を振り回すが、数には勝てぬ。
 やがてジュリアは羽まみれになり、さらにパンクな衣装になった。
 服もくしゃくしゃである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルリア・アルヴァリズ
もう面倒だから終わるまでこの髪型のままでいいや
でもそれで他の猟兵に攻撃が向くようなら外して敵のヘイトを集めようかな
とにかく彼女…の中に巣食う邪神を倒せば解決だね

【POW】
と言ってもできることはこれしかないからね。
剣状態のAriesを手元に残す。
他の11の武装は自分と他の猟兵たちの前に逐次的に具現化して【盾受け】、敵の攻撃を【かばわ】せよう。
組み合わせは変えてもいいし臨機応変に行こうか。
更に自分には常に【オーラ防御】もはっておこうかな。
何かしらで傷ついた味方がいるならユーベルコードで癒やそうか。
何、体力だけはあるからね。私の疲労は気にしなくていいよ


響・夜姫
髪型はツインテール続行

あれがツインテール邪神。…魔法少女ではなく?。
倒したらるかるかがどうなるのかが、心配だけど。
「まぁ、とりあえず。ふぁいやー」
【先制攻撃/誘導弾/2回攻撃/一斉発射】、華焔。
その綺麗な髪、アフロヘア―にしてやる、ぜー?
鋏の切断に対しては床を【踏みつけ/ダッシュ】で回避。
髪の毛の先なら切られても良いけど。武器や胴体はちょっと避けたい。

「ツインテールとは即ち2つの調和を表すもの。共生するものだから。強制した時点で、敗北は必定だったのだ」
たぶん。今5秒位で考えた。

「るかるか。生きてる?」

ところであの髪のお手入れ触手。外見をなんとかすれば、人気が出るのでは。
ちょっと欲しかった。


アイ・リスパー
「うう、無理やりツインテールにされてしまいました……
邪神の呪いなのか、リボンがほどけないですし……」(しょぼん

こ、こうなったら、復活した邪神を倒して、ロングヘアーを取り戻すだけです!

【チューリングの神託機械】を発動し、電脳空間の万能コンピュータと接続。
自身の処理能力を向上させ【ラプラスの悪魔】で敵の攻撃をシミュレートして回避します。

「って、いま髪を切られたら大変なことにっ」

敵の鋏がツインテールに当たらないように必死に回避しますっ!
片方切られちゃったら、もうショートにするしかないじゃないですかー!

【アインシュタイン・レンズ】で重力レンズを生成し、
収束させた光で攻撃です!

「ロングヘアーのために!」



●ツインテール被害者三連星
 ジュリアが鶏にもみくちゃにされている間、三人の猟兵が顔を見合わせていた。
 皆女性。そして皆ツインテールである。
「うう、無理矢理ツインテールにされてしまいました……
 邪神の呪いなのか、リボンがほどけないですし……」
 しょんぼりとした様子で、アイ・リスパーが言う。
 アイの白き長髪は、軽くウェーブがかけられツインテールにされていた。
 ロング教を自認するアイにとって、無理矢理ツインテールにされているというこの状況は、大変悲しいものだった。
「仕方ない。取れないし。ツインテール続行」
 特に苦痛には思っていない様子で、響・夜姫が答える。
 先ほどまでは、慣れぬ髪型に皮膚が引っ張られて違和感があったものの、慣れてしまえば気にするほどではない。
「邪神の呪いなら、倒せばなんとかなるんじゃないかな」
 自身の髪に触れながら、ルリア・アルヴァリズが言う。
 髪型に頓着がないルリアにとっては、別にツインテールであろうとなかろうと、余り差異はなかった。
 しかしアイの言葉を聞いてリボンを解こうとすると、本当に解けなかった。

 ここに集まる三人の猟兵たちには、共通点があった。
 先ほど現れたツインテール触手によって、髪型をツインテールに無理矢理変えられてしまったのである。
 恐るべしツインテール教。
 しかも彼女らの言うとおり、髪留めのリボンは解けないのである。
 ツインテール愛に溢れる邪神の、茶目っ気溢れるサービス、もとい呪いである。

「こ、こうなったら、ツインテール邪神を倒して、ロングヘアーを取り戻すだけです!」
「そうだね。倒せばリボンは解けるようになると思うよ」
 アイがジュリアを睨みながら言い、ルリアは頷いた。
「それにしてもあれがツインテール邪神……魔法少女ではなく?」
「邪神ですよっ。私たちの髪型を勝手に変える、邪悪な神です!」
「何にせよ、このままだと混乱が起きるばかり。早く倒さないとね」
 ルリアが言うと、アイも夜姫も頷く。
 ツインテール三連星、出撃である。

「電脳空間への接続を確認。万能コンピューターへログイン。
 オペレーション開始します!」
 アイは空間投影を通して、電脳空間の万能コンピュータと接続する。
 チューリングの神託機械(チューリング・オラクル・マシン)である。
 これによって、アイは非常に高性能な計算能力を得る事ができる。
 だが、反動として何らかの代償を受ける。
 此度の代償は、流血だった。
「いたたたっ」
「大丈夫。私が癒やせるよ」
 ルリアが聖なる光を灯し、アイへと放った。
 聖者が生まれながらに持つ光である。
 光は触れた相手を癒やし、高速で治療する。
「あっ、ありがとうございます!」
 アイはルリアへ礼を言うと、さらに重ねてユーベルコードを発動する。
「初期パラメータ入力。シミュレーション実行。対象の攻撃軌道、予測完了です!」
 アイの周囲に無数の数式が浮かび上がり、コードが走る。
 ラプラスの悪魔(ラプラス・デモン)。未来予測シミュレーションである。
 それによって、アイにはジュリアの動きが手に取るように分かるようになった。
「状況開始です!」
 アイが言うと、ルリアと夜姫が共にジュリアへと突撃した。

「彼女……の中に救う邪神を倒せば解決だね」
「倒したらるかるかがどうなるのかが、心配だけど」
 ルリアは概念武装『Aries』を剣状態にして握り、夜姫は二丁拳銃を構えてアームドフォート『サバーニャ』を起動する。
「なるようになるさ。きっと」
「まぁ、とりあえず。ふぁいやー」
 ドウッ、と無数の弾丸が放たれた。華焔(フレイムショット)である。
 弾丸は一つ一つ焔の華を纏っている。
「わっ! また炎じゃないの! 炎は嫌って言ってるでしょ!」
 ジュリアは焔を見るや否や顔色を変えて、鋏を使って空間を切り裂いた。
 空間に浮かぶ穴が、さながら盾の如く、銃弾を吸い込み弾いていく。
「こちらにも居るよ、この通りね」
「……っ!!」
 ジュリアの意識が夜姫に逸れた瞬間、ルリアが剣を振った。
 ジュリアは頭を振り、見事ツインテールを剣の軌道から逸らした。
 ただ代わりに服が犠牲となり、リボンが切れてひらひらと宙を舞った。
「ちょっとぉ! この服お気に入りなんですけどぉ!?」
「次はこっち。その綺麗な髪、アフロヘアーにしてやる、ぜー?」
「あっ、マズっ……!!」
 夜姫から再び弾丸が放たれ、轟音が鳴り響く。
 服が切られ、ぷんぷんしていたジュリアは反応が一瞬遅れてしまった。
 轟、と無数の弾丸がジュリアにたたき込まれる。

 舞い散る華の様な炎が、ぼうっと燃え盛る。

「あっちちちち!?」
 普通なら弾丸が当たった時点で相当な痛手である。
 が、そこは中々頑丈な邪神で、吹き飛ばされる位で済んでいる。
 だが炎は話が違う。
 服が燃えるし、何よりツインテールが危ない。
 ジュリアは鋏を振り回して空間ごと炎を切り裂き、炎がツインテールに届く前にどうにかして消化した。
「あっ……あっぶな……炎は禁止でしょ!?」
「そんなルールない」
「ある! いまあたしが作ったの!」
 ジュリアはそう叫び、鋏を構えて猟兵たちに襲いかかった。

 空間を切り裂く鋏。それが命中したら、大変なことになる。
 多分無残に真っ二つである。
 もちろん猟兵たちはそれを理解しているので、しっかりと回避する。
「おっとっと」
 夜姫はダッシュして、鋏の射程から飛び退く。
 斬、と鋏が空間ごと切り裂くが、髪の毛の先がひらひらと舞うくらいである。
「避けるなっ! 当たれば切れるんだから!」
 ジュリアはぶんぶん鋏を振り回し、今度はアイめがけて突撃する。
「あたりませんよっ」
 ラプラス・デモンでシミュレーションを行っているアイにとって、その攻撃は容易く回避できるものだった。だが、視界の端をひらひらと舞うツインテールを見て、アイは大変なことに気付いてしまう。
「って、いま髪を切られたら大変なことにっ」
 そう。ここでツインテールが片方でも切られてしまったら、バランスを取るためショートにするしかなくなってしまう。
 それはロングヘアーをこよなく愛するアイにとっては受け入れがたい事だった。
「わーっ、やめてくださいっ!」
 アイは必死に攻撃を回避しながら、ラプラス・デモンのシミュレーションに『自身のツインテールの挙動』を示すパラメータを入力する。
 だがシミュレーションは、即座には答えてくれない。
 例え身体に当たらずとも、髪に当たれば精神に堪えるのだ。
「ふっふっふ、狙いはアンタだぁ! 運動が苦手そうだし!」
「何でそれを知ってるんですかっ!?」
「眷属を通して見てただけよ!」
 一閃、鋏が横薙ぎに振るわれる。
 それはアイに当たりそうだったが……しかし、途中で阻まれた。
「っと、間に合った。駄目だよ、そういうのは」
「えぇ、うっそぉ!?」
 鋏の刃を止めたのは、ルリアが具現化した盾だった。
 ルリアの盾は、本人の耐久力と耐性もあって、とにかく硬い。
 空間を切り裂く鋏だが、耐久力のある概念武装を切断することは出来なかった。

「隙アリ、です!
 重力レンズ生成。ターゲットロック。光線発射準備完了です!」
 ジュリアが驚愕で止まった瞬間、アイは三度ユーベルコードを発動する。
 アインシュタイン・レンズ。
 重力によって空間を歪めた重力レンズを用いて、光を束ねた高出力の光線を射出するユーベルコードである。
「私も。一斉発射準備よしー」
 重力レンズが生成されるのとほぼ同じタイミングで、夜姫も自身の武装を全て起動してジュリアに狙いをつける。
「私もいけるよ」
 ルリアもジュリアに狙いをつけて、体内の概念武装を具現化させていく。
「「「発射!」」」
 三人の声が同時に飛び、空気を焼き尽くす光線が、そして無数の銃弾が、無数の概念武装が、ジュリアに殺到した。
「ロングヘアーのために!」
 アイが叫び、それとほぼ同時に攻撃が着弾した!!

 ドォォォォォォォォォォォォォン!!

「ちょ、ちょっとおおおおおおおおお!?!?」
 ボシュウ! と膨大な熱量によって爆発して、ジュリアは吹き飛んだ。
 再び壁を何枚かぶち抜き、机や教卓をぶっ壊し、ようやくジュリアは止まった。
 さっきからあっちこちに飛んでばかりである。
 そのたびに旧校舎の壁や床にぶつかるものだから、最早旧校舎は穴だらけである。
「ツインテールとは即ち2つの調和を表すもの。共生するものだから。
 強制した時点で、敗北は必定だったのだ」
 夜姫が遠くの部屋へぶち込まれたジュリアに向かってそう宣言する。
 ジュリアは煙を纏いつつも立ち上がり、猟兵たちを睨む。
「ハァ……ハァ……そんなわけ……ないでしょ……!?」
「そんなわけある。今5秒位で考えた」
「じゃあ、やっぱりそんなわけないじゃん!」
 ジュリアは憤慨して叫び、パパっと服の汚れを払い、ついでにツインテールを手入れする。

 いくら耐久力があるとはいえ、そろそろジュリアはダメージが溜まってきていた。
 頑張れイェーガー! 負けるなイェーガー!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛乃葉・やすな
邪心のお出ましじゃな。

生意気なことを言いよって、
わしがおぬしの自慢のツインテールを刈り取ってくれるわ。

【WIZ】
【見切り】で邪神の鋏が届かない間合いで戦うぞ。相手に接近されぬよう【衝撃波】でけん制する。

上手いこと隙をつけたら邪神にめがけて【ダッシュ】し、至近距離でわしのUC【フォックスファイア】を邪神の顔にめがけて放つぞ。フォックスファイアを打ったら即座に【逃げ足】で間合いを取る。

攻撃を防いだり避けたとしても至近距離でわしがフォックスファイアを放ったらおぬしの大事な髪はさぞ痛むであろうなぁ。チリヂリじゃろうなぁ。

おぬしが泣いてもフォックスファイアを放つのをやめぬぞーっ!

※アドリブ・絡み歓迎じゃ


エドゥアルト・ルーデル
むっ!ゆるふわウェーブのナイスツインテ!
いいねェ…

ヘイトが向かないうちに【迷彩】で姿を隠しつつ背後から接近、遠慮なくツインテールをじっくりねっとり観察してアレするでござるよデュフフ…
ついでだ君の荷物にこっそり【スリ渡し】でプレゼントもあげちゃう!ハイ!手榴弾(ピン抜き)!

かぁーッ!これで邪神じゃなけりゃなー!崇め奉ったんだけどなァーッ!かぁーッ!
という訳だ!来世は立派なツインテの神になるんでござるよ!

ん?まだ綺麗なジャ…ツインテの神に転生してなかったでござるか?しょうがねぇな顔は避けて銃弾ぶち込みますぞ

アドリブ・絡み歓迎



●ダブルファイアー!
 最早穴だらけの旧校舎内を移動する二人の猟兵の姿があった。
 エドゥアルト・ルーデルと葛乃葉・やすなである。
「ジュリア殿が跳んだり跳ねたり。今はいずこでござるか?」
「ふうむ。多分向こうじゃな」
 やすなが大穴の開いた方を指さし、二人はそちらに向かう。
 そこに居たのは、確かに件の邪神、ジュリアだった。
「むっ! ゆるふわウェーブのナイスツインテ! いいねェ……」
 エドゥアルトはジュリアの姿を目に収め、思わず呟いた。
 さすがはツインテールを愛する邪神。素晴らしい完成度のツインテールである。
「うわ、まだ居るの!? 数多くない!?
 まあ今からでも、全員の命を刈り取っちゃえば問題ないけどさぁ」
 ジュリアは手に持った鋏を開閉し、シャキシャキと音を立てる。
 それを聞き、やすなはふんと鼻を鳴らした。
「命を刈るとは生意気な事を言いよって。
 わしがおぬしの自慢のツインテールを刈り取ってくれるわ」
「はぁ~~!? 出来るもんならやってみなさいよぉ!」
 ジュリアは即座に沸騰し、鋏を構えて突撃した。

「おっと! 簡単には当たらんぞ?」
 やすなは飛び退いて距離を取り、衝撃波で牽制する。
 衝撃波は当たっても致命的なダメージ……とはいかない。
 しかしダメージを受け、隙が出来る事には違いない。
 なので、ジュリアは鋏で衝撃波を受け止め、一旦タイミングを見計らった。
 一方やすなは、先ほどの一閃のみで鋏の間合いを見切っていた。
 衝撃波で牽制をしながら、鋏が届くか届かないか、というギリギリの距離を保つ。
 ジュリアがミスを犯せば、その隙は致命的となる……そういう間合いだ。
 ジュリアもそれを悟り、無闇やたらに鋏を振ることはしない。
 お互いに牽制を続け、膠着状態がそこに生まれた。

 その間、動いていた者が居た。エドゥアルトである。
 ジュリアが『明確な脅威を持ったやすな』の方に集中している隙に、気配を消してジュリアの背後へと回っていた。
 ジュリアには背後にまで注意を払う余裕がない。
 それを気取ったエドゥアルトは、じわじわとジュリアとの距離を詰めていく。
 その目はツインテールに注がれていた。
(ん~素晴らしいゆるふわウェーブのツインテでござるなぁ……
 髪の根元から毛先まで手入れが行き届いているのがよぉ~く分かるでござる。キューティクルが完璧!
 髪型のセットも見事ながら、コーディネートも良し。
 服のゴシックパンクな雰囲気に合う、蝙蝠の羽を模した可愛いリボンが光る!
 たまらんでござるなぁ~……デュフフフフ……)
 じっくりねっとりと観察して、エドゥアルトはツインテールを堪能する。
 やはりツインテールの邪神という肩書きは伊達ではなかった。
(かぁーッ! これで邪神じゃなけりゃなー!
 崇め奉ったんだけどなァーッ! かぁーッ!
 敵だから仕方ないよなーッ!)
 エドゥアルトとジュリアの距離は、すでに30cmを切っていた。
 完全に至近距離である。

 ピンッ、と何かピンの外れる音がした。
「な、なにごとっ!?」
「気付いたときには終いでござるよ! シーユーレイター!
 来世は立派なツインテの神になるんでござるよ!!」
 ジュリアは即座に振り向くが、しかしその時にはエドゥアルトは退避していた。
 一体何事か。そう思ったジュリアは、ふと自分のポケットに違和感を覚えた。
 何も入っていないはずのポケットが重い。
 ごそごそとポケットに手を突っ込んで見てみると――

 ――入っていたのはピンが抜かれた手榴弾だった。

 BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!
 手榴弾がちょうどいいタイミングで大爆発を起こした。

 爆発した手榴弾を手に持っていたのだから、ジュリアはもう大変。
 コミカルに服が煤けて髪がめちゃめちゃである。
「なッ――――!?!?!?!?」
 声にならない声を上げるが、しかしそこへやすなの追い打ちがかかる!
「隙あり! もういっちょ燃えるが良いぞ!」
 やすなはダッシュで間合いを詰め、至近距離に潜り込む。
 そしてにいっとジュリアに笑いかけ、ユーベルコードを発動した。
 ぽん、ぽんぽん、と現れたるは無数の狐火。フォックスファイアである。
「わしの十八番を食らえーっ!
 おぬしが泣いてもフォックスファイアを放つのをやめぬぞーっ!」
 23個の狐火は、そのままジュリアへと殺到した。
 至近距離の狐火である。回避する間もない。

 ごおっと狐火はジュリアの顔を覆い、燃え上がった!

「ッァああ、ああッ――――!!!!!!!!!」
 ジュリアは声にならない悲鳴を上げた。
 今までも炎は食らってきたが、今回は話が違う。

 大切に守ってきた掛け替えのないツインテールがとうとう傷ついたのである。
 熱による変質であり、その変化は不可逆的。
 一度チリチリになれば、切ってもう一度伸ばす以外に直す方法はない!!

「…………ふ、ふふっ……ふふふっ」
 暫し後、炎が消え、煙の向こうからジュリアが現れた。
 血涙を流し、恐ろしく空虚な笑みを浮かべている。
 ツインテールは一応形は保っているが、熱で痛んでいた。
 チリチリである。
「ゆ……許さない……あたしの髪を……傷つけた……!!」
 ジュリアは血涙を流しながら、猟兵たちをにらみ付ける。
 凄まじい迫力である。正に邪神。

「思ったより堪えたみたいじゃのう。生意気な事を言うからじゃ」
 やすなはふん、と鼻を鳴らす。
「ん? まだ綺麗なジャ……ツインテの神に転成してなかったでござるか?
 しょうがねぇな、ハイッ、これもあげちゃう!」
 エドゥアルトはジュリアの身体に銃弾をぶち込んでいく。
 ジュリアはそれを身体で受け止めた後……鋏を振り上げた。

 斬ッ!!

 その鋏の一撃は、猟兵たちを狙ったモノではなかった。
 空間を切り裂く鋏は、旧校舎にあたり、一薙ぎに切ってしまった。
 そもそも穴だらけでボロっちい旧校舎である。
 そこに斬撃が入れば、建物は自重を支えきれず壊れていくが道理というもの。
「なぁーッ!?」
「ちょちょっ、これは予想外でござる!」
 やすなとエドゥアルトは叫び、旧校舎から逃走を図った。
 他の猟兵たちも一旦旧校舎から逃げ出している。

 やがて、ずうん、と音を立て、旧校舎は倒壊した。
 哀れ旧校舎。合唱。

「仕切り直し。死ぬなら広いところの方がいいでしょ?
 ふふっ……ふふふ……」
 倒壊した旧校舎の中心で、ジュリアは壮絶な笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
絡みNG
あの鋏で生を刈り取り、死者を眷属に変えるのね。
私もツインテで死霊術士だから親近感が湧くわ♪

私が貴女の眷属にされるか
貴女が私の死霊(モノ)になるか……楽しみね❤


眷属を召喚したって【呪詛】を唱えれば
直接ジュリアの精神力を削れるし
戦闘力の落ちた眷属なんて【衝撃波】で
全部ジュリア目掛けて吹き飛ばすわ

今度は私の死霊を見せてあげる。
『愛の想起・妖狐烈刃乱舞』
ツインテ仲間だし、髪は狙わないけど
明日香の110本もの鋏と爆炎から逃げ切れるかしら?

巻き起こる爆炎も【火炎耐性】で気にせず
ジュリアを抱きしめ【生命力吸収】のキスで終わり❤

貴女の敗因は、眷属が醜い怪物だった事!
貴女も私の美しい死霊に加えてあげる❤



●エンド・オブ・ツインテール!
(あの鋏で生を刈り取り、死者を眷属に変えるのね。
 私もツインテで死霊術士だから親近感が湧くわ♪)
 倒壊した旧校舎の残骸を踏みながら、ドゥルール・ブラッドティアーズは考えた。
 彼女の視線の先に居るのは、当然ジュリア。
 熱によって髪が傷んだ、ツインテールの邪神である。
 ドゥルールとジュリアには、確かに共通点があった。
 二人ともツインテールであるし、死霊を操るのである。
 だがドゥルールは猟兵であり、ジュリアはオブリビオン。
 そこに決定的な違いがあった。

 ……まあドゥルールにとっては些細な違いだが。
 猟兵とオブリビオンが相対すれば、どちらかが敗北するのは必定。
 負けた方が死霊となり、眷属となるのだ。
 そのとき、猟兵やオブリビオンという区分けは必要だろうか?

 ドゥルールは旧校舎の残骸を踏みしめて、ジュリアの正面へ立った。
「初めまして、ジュリア。私はドゥルール・ブラッドティアーズ」
「あら、これはご丁寧に。あたしはジュリア。知っての通り」
 ジュリアは血涙を拭い、ドゥルールを見つめた。
「いいツインテールね、アナタ。ツインテール教に入らない?」
「お生憎様。立場が違えば入ったかもしれないけれど、今は駄目ね」
 ドゥルールはそう答え、言葉を続ける。
「でも今から一緒になるのだから、関係ないでしょう?
 私が貴女の眷属にされるか、
 貴女が私の死霊(モノ)になるか……楽しみね❤」
 ドゥルール……狂愛の吸血姫は、微笑んだ。

「勝つのはあたしよ……あたしの眷属になりなさい!!」
 ジュリアが叫ぶと、旧校舎の残骸が勝手にもぞもぞと動き始めた。
 残骸を押しのけ、下から現れたるは、おぞましき眷属。
 即ちツインテール触手である。
 死霊術士であるジュリアは、一体どうやって眷属を作り出したのだろうか。
 それは少し前に旧校舎内を滑りまくっていた鶏を思い出してもらわねばならない。
 鶏は威嚇してツインテールを啄むという仕事を終えた後、即座に消滅した……わけではない。何体かは旧校舎の崩落に巻き込まれてしまったのだ。
 死体があれば、あとは思うがまま。
 故に今ここに、再びツインテール触手が現れたのである。
 しかし――

「ダメダメ。それじゃあ届かないわ♥」
「えっ……う……嘘……っ」
 ドゥルールの言葉と共に、ジュリアは膝をついた。
 呪詛。それが、ジュリアを内側から蝕んだのだ。
 ジュリアは耐久力が高いが、しかし心まで同じとは限らない。
 そして今は『大事なツインテールが傷ついた』という非常に希有な状況が形成されており、故にジュリアの心は非常に無防備だったのだ。
 ドゥルールの、光を飲み込む漆黒の瞳が、じいっとジュリアを見つめている。
「ほら。死霊術士なら、眷属を動かしてみて?」
「……っ」
 汗が浮かび、ぽたぽたと零れるジュリア。
 ジュリアは念で命令を下すが、ジュリア本人の状況がよろしくなさ過ぎるのか、ツインテール触手たちの動きは鈍い。
 ドゥルールは衝撃波を作り、ツインテール触手たちを吹き飛ばしていく。
 吹き飛ばす目標地点は、ジュリア。
 ジュリアは辛うじて立ち上がり、吹き飛んだツインテール触手を回避する。
 だが、その動きは鈍い。
 回避し切れずに、べちゃりと何体かの触手は命中した。
「ぐうっ」
 結構質量があるので、吹き飛んだだけでも結構な威力である。

「今度は私の死霊を見せてあげる。鮮烈なる刃の妖狐よ!」
 ドゥルールはそう言うと、高速詠唱を乗せてユーベルコードを発動していく。
 愛の想起・妖狐烈刃乱舞(リザレクトオブリビオン・シザース・ダイアキュート)。
 ドゥルールが呼び出すのはただの死霊ではない。
 それは骸の海に沈みし、未来を喰らう過去の残骸。
 ドゥルール自身が戦い、自分のモノにしたオブリビオンそのものである。
 此度現れたのは、『妖狐』明日香。
 金の瞳と髪を持ち、青い衣装に身を包んだ妖狐である。

「私の鋏で大人しくやられてね♪」
 明日香は手に持っていた、血で赤く汚れた鋏を放り投げる。
 すると鋏は分裂していく。やがて鋏は110本というものすごい数になった。
 鋏は一本一本炎を纏っていた。狐火が灯っているのである。
「明日香、髪は駄目よ?」
「はぁーい、分かったわ、ルル♪」
 明日香はドゥルールに微笑むと、無数の鋏をジュリアへと放った。
「ッ……オブリビオンを従えてるなんて!」
 ジュリアは空間を切り裂く鋏で以て、鋏をはじき返す。
 が、この明日香の鋏は、ただの鋏ではなかった。

 BOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!
 鋏と鋏が接触した瞬間、爆発した!!

「っああ!!」
 まさか鋏が爆発するとは思うまい。
 ジュリアは不意を打たれてもろに爆発を受け、弾き飛ばされる。
 だが鋏は止まらない。
 次から次へとやってきて、ジュリアを追う。
「眷属たち!!」
 ジュリアは叫び、残っていたツインテール触手を操って鋏に対抗しようとする。
 とはいえそもそも接触すると爆発する鋏である。触手に何が出来ようか?

 ボン、ボン、ボン!!!
 無数の爆発が、あちらこちらで巻き起こる。

「ふふん♪」
 ドゥルールは、爆発を気にせず走る。
 火炎耐性を持つドゥルールにとっては、このくらいの爆発なら問題はなかった。
 ドゥルールの視線の先に居るのは、当然ジュリア。
 爆炎の中を走るドゥルールを見て、青ざめた顔をしていた。
「貴女の敗因は、眷属が醜い怪物だった事!
 貴女も私の美しい死霊に加えてあげる♥」
 ドゥルールはそう言うと、ジュリアに飛びついた。

 爆炎に満ちた戦場で、二人の死霊術士が抱き合った。
「お疲れ様、ジュリア♥」
 ドゥルールは優しくジュリアの耳元に囁き、キスをした。
「っ!!??」
 ジュリアは驚きに目を見開く。直後、とろんとした瞳へと変わった。
 ドゥルールのキスはただのキスではない。
 生命力を吸い上げる、吸血にも似た行為だった。
 だがそれは、痛みを伴うモノではなかった。
 誰かに包まれながら自分が消えていく感覚は、ある種の快楽であった。
 それはさながら、心地よい忘却の中に沈んでいくように。
 あるいは、疲労を湛えた身体を横たえて、微睡みのまま眠りへつくように。

 やがて、ジュリアは目を閉じ、かくりと首を落とした。
「これで貴女は、私のモノ……♪」
 ドゥルールは、ぎゅうっと愛おしそうに、ジュリアの亡骸を抱きしめた。

 ジュリアの亡骸は、やがて服が、髪が、顔が変わっていく。
 そして数瞬後には、元々の身体の主であった、二手・瑠香になっていた。
 ドゥルールはそれを見て取ると、身体を横たえた。
「邪神をその身に宿すなんてレアなケース。
 消えたのは身体の中の邪神だけだから……いつか目を覚ますわ」
 そんな呟きを残して、ドゥルールは明日香を引き連れてその場を去った。

●エンドロール
「んああ、アレ、ここは……?????」
 二手・瑠香は、自分が寝ている場所がやけに硬いことに疑問を覚えながら目を覚ました。まずその目に入ったのは――

 ――倒壊した旧校舎の残骸であった。

「…………?????????」
 脳内に無数のクエスチョンマークを作り、瑠香は立ち上がる。
「アレ? あたし、確かお札を貼って、何かやべー連中と……アレ??」
 どうやら彼女にジュリアであった時の記憶は一切ないようだ。
 瑠香は何度も首をかしげて旧校舎の残骸の上を歩き回り、やがて帰路へ着いた。
 この世には考えても仕方ない事がある!

 だが無実で解放万々歳、とはいかなかった。
 後日、二手・瑠香はUDC組織の訪問を受け、相当絞られたという。

 とはいえ、これにて『ツインテール教』の脅威は消え去った。
 これでツインテールの終末世界が訪れる様な事はなくなるだろう……多分きっと恐らく。
 再び他の異変が起きるまで、UDCアースは仮初めの平和を味わうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月15日


挿絵イラスト