9
How deep are you serious?

#キマイラフューチャー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー


0




●っつーか今回ヤベェし! マジヤベぇしってかなにこれ。
 なあおい、ちょ聞いてくれよ。
 ちょ待ーてよ! へへ、これ昔のアイドルのマネ。わかる?
 今さオレ、ネオメキシコってトコにいんのよ。
 なんでって? 知らね。なんかバスで寝てたらいた。
 で! あっちの方で怪人? かなんかが騒いでんの。
 おまえどんだけマジなんだー、ってさ。マジだよオレもち。ったりまーだろ?
 だからさ、オレ言ってやったのよ。やあやあ我こそはマジ田マジ夫、人読んでフリテンのタケイだーって! いやー寒かった。やってから後悔したね。ドローンいたし。
 で、そしたらさー……あ、ここでクイズです。オレはここまでに「で」って何回言ったでしょーか。6か7か8? なにそれ。
 いや脱線してるばあいじゃねーし! いやマジほんと、なんか怪人の地雷踏んじゃったらしくてさ、追われてんの。
 やっべやっべ。捕まったらどーなっちゃうんだろオレ。捕まんねーけど!

●グリモア猟兵は語る
「以上が、キマイラフューチャーで傍受した通信の内容だ。ノイズが多いが、発生したオブリビオンたちにキマイラたちが襲われる、ということは確かなようだ。
 オブリビオンたちは、何らかの目的のために、自分たちの支持者を増やそうとしている。これもその一環だろう」
 スレイマン・コクマー(ジ・オーディナリィ・f00064)は、手元のノートパソコンを閉じた。代わりというようにリュックサックから取り出したのは、一冊の魔術書だ。
 その中の一頁が淡く光る。
「到着時刻はこちらでも調整するが、先程の通信が行われた直後になる。事件を未然に防ぐ、というわけには行かないことは承知してくれ。
 オブリビオンを打倒し、キマイラフューチャー『の』平和を取り戻す。ごくありふれた任務だが、無事に遂行してほしい。
 どの世界の平穏も、おそらくは綱渡りであろうからな」

 ところで、と言葉を繋ぐスレイマン。
「ところで、オレの予知の中には、一部だがオブリビオンのものと思しき絶叫が含まれていた。念のために共有しておく。何かの参考になればいいが。
 その絶叫とは――」

●How deep are you serious?
 どれ程までにお前たちは本気なのか。

 ……。
 …………。
 ………………。

 長い、永い沈黙を経て。
 骸の海より蘇りしは過去の怨嗟。
 生き残ろうと本気で必死で、しかし滅んだ旧人類の成れの果て。
 淘汰された者たちの、消えた残響――。

 ――否。

 否、と声が容となり、虚空にこだまする。
 骸の海からまた一つ二つと、オブリビオンが吐き出された。
 永い、長い沈黙を経て。

 否、成れの果ては貴様らこそだ、と。
 もはや我慢ならぬとばかりに、それらはときの声を上げる。

 どれ程までにお前たちは本気なのか。


君島世界
 こんにちは、はじめまして。
 マスターの君島世界です。

 今回は、キマイラフューチャーを襲うオブリビオン、怪人たちの退治をお願いします。

 トゥルーエンドとグッドエンド『のようなもの』があります。
 どちらも猟兵の勝利が大前提です。勝利してください。
 シナリオ運営終了後、どちらであったかの公開はしません。到達しなかったエンドは私の中の闇的な領域に葬られます。
 つまり――まあ、あまりお気になさらず。
 要諦を見切るも、刹那に踊るも自由自在に。キマイラフューチャーですしネ♪

 それでは、ハウ・ディープ・アー・ユー・シリアス?
51




第1章 冒険 『Super Hero Show!!』

POW   :    キマイラ達を抱え上げて避難させる!

SPD   :    走り回って逃げ遅れていないか確認!

WIZ   :    事態を把握できていないキマイラを説得!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウーゴ・ソルデビラ
【SPD】タケイとか言う奴がまだ生きてればいいんだけどな。
とりあえず、ネオメキシコとやらを中心に逃げ遅れを探して回るぜ。他の猟兵とも、手分けするなり情報交換するなりして協力し合うぞ。助けたキマイラとかから、怪しいドローンや怪人、タケイらしい軽いキマイラを見てないか、騒ぎが起きてる所はないか聞いてみる。スレイマンの奴は、間に合わねえ様な口ぶりだったが、諦めるって選択肢は俺の中にはねえんだよ。ダメ元でも今できる事をやる。そんで、怪人の野郎にどんだけ本気なのか見せてやんよ。俺らが来たからには、誰も殺させやしねえってな。
技能:【野生の勘、コミュ力、早業、情報収集、ダッシュ、追跡、ジャンプ】



「なに言ってやがる、スレイマンのヤロウ!」
 ネオメキシコの胡乱な町並みを、あるキマイラの猟兵が掛ける。ウーゴ・ソルデビラ(吸血鬼マイラ・f09730)。好奇の視線を振り切るスピードで、騒ぎの中心を目指す。
 目的は、グリモア猟兵の予知にあったタケイというキマイラだ。どこにいるのかもわからず、おそらくオブリビオンの襲撃はもう始まっているのだろう。
 だが。
「……やる前から諦めるって選択肢は、俺にはねえんだよ!」
 急ぐ。急ぐ急ぐ。と、映像デバイスを囲んで談笑する三人のキマイラがいた。念のためにその映像を、すれ違いざまに確認。すると――。
「――ビンゴじゃねえか、それ!」
 字幕付きで再生されていた動画。そのセリフは、まさしく予知にあったタケイ本人のものであった。音立てて急ブレーキするウーゴに、キマイラたちはのろのろと視線を上げる。
「その動画、キャプション見せてくれよ! できれば位置情報も!」
「え。……え? マジ? 猟兵?」
「あ、いっすよいっすよー。はいデバイスシェイクシェイク。シェイクスピア」
「つか上見て上。本人飛んでる」
「上だぁ……?」
 と見上げると、上方に弧を描いて飛ぶ一つの人影があった。両手両足をバタバタさせて、重力に無駄な戦いを挑んでいる真っ最中なのは。
「あははやっべータケイくん空飛んでる。苔生す」
 ――当然、なんの防御も無しで落ちれば死ぬ高さである。
「半笑いで見てる場合かよッ!」
「え、だってドローンとかがなんとかしてくれるっしょ」
 ウーゴは返答を聞かず――期待せず――再度駆け出した。ここぞ、という高さで踏切り、気絶しているタケイを空中でひっ捕まえる。
 フラッシュの閃光が、落下するタケイとウーゴを包み込んでいた。撮影デバイスの視線も。予測地点に自動的に展開していた安全ネットへ、ウーゴは迷わず飛び込んでいく。

 ――その様子を、スローモーションと著作権無視の映画音楽で編集したMADは、後日クアドラプルミリオンを記録することとなった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神埜・常盤
ふむ、敵の目的も実像も
叫びの意図も未だハッキリしないが
オブリビオンが相手なら
放っておけないねェ
いざ、真剣に人助けと参ろうか

僕は事態を把握出来てないキマイラ君に
現場から逃げて貰えるよう説得しよう
身に付けた礼儀作法を活かして
まずは丁重にお願いしてみようかなァ
ご婦人が相手なら、そうだねェ
此のダンピールの容姿を活かし
誘惑しながら話を聞いて貰おう

この辺りは怪人が暴れているから危ないよ
僕たち猟兵が解決してみせるから
君たちは逃げてくれないだろうか?

避難を拒否したり話を聞いてくれない子がいたら催眠術で説得を
少々手荒だが人命が第一だ

誰の云う事を聞くべきか分かるだろう
さァ、安全な所へ逃げるんだ
……良いね?



 インバネスを向かい風にたなびかせ、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は影絵の街を行く。間接照明とアロマスモークとで、色薄く化粧された退廃の店へ。
「ふむ、敵の目的も実像も、叫びの意図も未だハッキリしないが」
 そこの扉を、軽く押し開ける。と、外の騒ぎとまるで無縁そうな顔をして、着飾ったキマイラたちが、優雅にお茶の時間を楽しんでいた。
「オブリビオンが相手なら放っておけないねェ」
 実際のところ、ここは騒動の中心に極めて近い場所にある。先程爆発音に続いて、一人のキマイラが『ブッ飛んでいった』のを、しかしおそらく気づいてもいないのだろう。誰一人。
 常盤はそのまま進み、ステージのスポットライトを浴びた。振り返る。
「レディース・アンド・ジェントルマン! 紳士の皆様はご寛恕を、淑女の皆様は、どうぞご自制を――」
「キャアアアアアアアアーーーァァァ!」
 美しきダンピールの言葉は、それだけで数人のご婦人を卒倒させた。回収が楽になったと、常盤はおくびにも出さぬ。

「――さて」
 その一言で、店中の注目を集める。

「さてこの辺りは怪人が暴れているから危ないよ。
 僕たち猟兵が解決してみせるから君たちは逃げてくれないだろうか?」
「なんだって。怪人……?」
 ざわ、ざわ、
「猟兵が怪人を……ということは」
「これは逃げないわけにはいきますまいな」
「ボーイさん? 今回のお支払い、また後日伺わせていただきますわ」
 ざわ、ざわ……ぴたりと、騒ぎは止まる。
「いい子たちだ。誰の云う事を聞くべきか、よぉく分かっている。
 さァ、安全な所へ逃げるんだ……良いね?」
 避難誘導は、拍子抜けなほどに上手く行ったようだ。常盤は満足気に微笑むと、避難口から全員が脱出するのを見送りに行く。

 ――その一部始終を収めた動画『名探偵 人を集めて さてと言い』の影響で、大正浪漫風ファッションが、流行ったとか流行らなかったとか。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
はーっはっはっは! ネオメ・キシコ? 誰かの名前っぽいな、に妾参っ上!

もちろん妾は救助人数でトップを狙うぞ、当然であろう!
皆の衆よ、手をこまねいておったら妾がおいしい所をすべて持っていってしまうぞ?
妾が本気を出せばあっという間よ!

さしあたって避難させづらい、ガタイの良くて重そうな奴から運ぶとするか
左腕と、肩も使えば十分に抱え上げられるであろう

はっはっは、妾のことを知っておるか? 
お主のピンチを察して駆けつけてやったぞ! そして妾に直々に運ばれる栄誉、涙を流して喜ぶが良い!
あ、ドローン(天地)はあそこに飛んどるから、何かリアクションするならあれに向かって頼むぞ
さあ、どんどん運んでやるからな!



 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の実況配信は、今回も非常に好評であった。

「はーっはっはっは! 妾参上!
 今日はここ、ネオメ・キシコに来ているのだが……ネオメ・キシコ? いまいち妾ピンと来ないぞ。誰かの名前っぽいな?」
 トレードマークである高笑いから、スムーズにイントロ雑談に移行するのも慣れたもの。手練れの配信者である菘は、ドローン『天地通眼』はいつもどおりに自動追尾のまま、見知らぬ街・ネオメキシコを行く。
「あーこらこら、ネオメ・キシコで大喜利始めるな。今日は妾、真面目な理由でここに来ているんだからな、それに見合う情報提供を頼むぞ。
 ――具体的には何を、って? 決まっておろう」
 一気呵成に駆け出した。風景が液状化し、線となって後ろに流れていく。『天地』はAI判断でロングショットモードに移行。少し高いビルから飛び出して、風切る声をマイクに拾わせる。ムービージェニック。
「もちろん妾は、この界隈での救助人数でトップを狙うぞ! 当然であろう!」
 快声あげながらの着地は、舞い上がる細かな瓦礫の向こう、うずくまる要救助者へと菘を導いた。目を丸くするそのキマイラに、にやぁと笑みながら近づく。
「す、すず、すずずずずずずすずずなっち? え、3次元!?」
「はっはっは、妾のことを知っておったか。お主のピンチを察して駆けつけてやったぞ! 光栄であろう!」
「いいいいいいやったああああああああ! 足首グネっとくもんだね!」
 言う通り、そのキマイラの負傷は大したものではないようだ。ただ、その巨体が災いしたのだろう、自力で動けそうな様子も同時にない。
「そして、妾に直々に運ばれる栄誉も授けよう! 涙を流して喜ぶが良い!」
「あばばばばばばばばば」
「あ、天地はあそこに飛んどるから、何かリアクションするならあれに向かって頼むぞ」
「あばばばばばばばばば」
 ヌル語彙限界オタ肉塊と化したそのキマイラを、菘は左腕で担ぎ上げる。余裕。
「よ、余裕だからこれからもどんどん運んでやるからな! 待っていろ要救助者!
 ――そして、皆の衆よ! この場に来ている猟兵たちよ!」
 菘はなぜか流れ始めた額の汗を器用に腕で拭うと、こう高らかに宣言した。
「手をこまねいておったら妾がおいしい所をすべて持っていってしまうぞ? 妾が本気を出せばあっという間よ! はーっはっはっは! ……」

成功 🔵​🔵​🔴​

伊美砂・アクアノート
【SPD】ーーー誰も彼もが歌って騒いで。脳内お花畑で羨ましいのだわ。いっぺん極楽浄土にでも飛んで行きゃいいのによう。【世界知識5、第六感1】【オルタナティブ・ダブル】…ま、キマイラフューチャーのヒトらが、みんな素直に逃げてくれるかっつーと。存外、そうでも無ぇよなあ。命知らずの動画配信者、バズりと炎上が日常の電脳妖精、アンダーグラウンドに潜む愉快な仲間たち。……そうキミらだぜ、ベイビー。 残念だが、無料視聴はここまでだ。良い子は、家で最新情報をチェックしておけ。…なあに、すぐに終わらすから、な。 二人に分身し、なおも動画配信等を試みる連中に、警告と退避を促す。…聞かないようなら、空に向け威嚇射撃



「――だれもかれもが、歌って騒いで」
「脳内お花畑で羨ましいのだわ」
「いっぺん極楽浄土にでも飛んで行きゃいいのによう」
 というのが、伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)たちの、いわば共通見解であった。ネオメキシコは乱痴気騒ぎと退廃芸術の街である。
「命、かかッてること、わかってンのかねェ……」
 楽しいこと大好き。騒がしいこともっと大好き。バズれそうなら逃せない。そういう基本原理で動いているネオメキシコのキマイラたちが、なんの理由もなくおとなしく、『爆心地』から逃げるわけもないのだ。
「命知らずの動画配信者、バズりと炎上が日常の電脳妖精、アンダーグラウンドに潜む愉快な仲間たち――」
 伊美砂は、自撮りで配信をしている、あるバーチャルキャラクター少女の肩に手をかけた。とぼけた顔でこちらを見るその少女の、反対側の肩にも腕がかかる。
「……そうキミらだぜ、ベイビー」
「……そうキミらだぜ、ベイビー」
 オルタナティブ・ダブル。表層人格の複製として現れたそれは、今の伊美砂とほとんど同じ挙動、発言を行う。
「ひえ! りょ、猟兵さまの至近距離左右ミミハラヴォイス……はふぅ♪」
 しあわせそうでなによりだ。
「残念だが、無料視聴はここまでだ。良い子は、家で最新情報をチェックしておけ」
「……なあに、すぐに終わらすから、な」
「はっ、はいいいいいい! 白雪雪菜、お家でおとなしくしてますううううう♪」
 少女がぴゅーっと走り去っていく方向が、ちゃんとネオメキシコ外であることを確認すると、伊美砂オルタは一息ついて、頭を振った。
「……やれやれだな、俺よ。……これからもこうやって、頭叩いて回るのか?」
「いいえ、いいえ。しばらくはそれもいいでしょうが、聞き分けの悪い子が多いようでしたら――」
 伊美砂はくるくると銃のサプレッサーを外す。上に向けて。
「――位置について、よーい」
 どん。

成功 🔵​🔵​🔴​


 そしてこれはまったくの余談ではあるが、さきのバーチャルキャラクター・白雪雪菜の『白菜ちゃんねる』は、その後バイノーラル録音に手を出して大ヒットを飛ばすことになるのたが、事件にはなんの関わりもない情報なのでこれ以上の言及は避けよう。
エーカ・ライスフェルト
催し物でないことをキマイラ達に理解させないとね
【存在感】のあるドレスを着てメイクも決めて、ドレスやメイクが乱れるのも気にせず大声で呼びかけるわ
「今ここで死にたくないなら逃げるの。あっち向いて走る! ASAP!」
気合いの入った声と危機感とちょっと殺意が漏れているのに気付いてくれるといいのだけど

混乱するキマイラには具体的に安全そうな場所を指さして誘導しようとするわ

今回のオブリビオンに対しては、実はちょっと好意的よ
「私はキマイラの陽気さに惹かれて来た猟兵よ。文化もまた力。彼らを否定するなら私を殺してからになさい!」
だから正面から堂々と挑んで倒す! 【属性攻撃】で炎マシマシ【ウィザード・ミサイル】で!



 ここではないどこかで、猟兵が警告の銃声を響かせる。ゲームで聞き慣れたそれが、現実で聞こえたことに、ネオメキシコのキマイラたちは、しかしさして劇的な反応を示さなかった。
 都会の無関心……に、近い。自分ではない誰かが、どこかでひどい目に会っているのなら、『それならそれで』『どうとでもなるだろう』と思うから、特に動き出す理由もない。
 エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)はそうではなかった。目を引くドレスに身を包む彼女の周囲には、文字通りの人だかりが形成されている。
 構わず、エーカは考える。それも一瞬のこと。
「自体は切迫しつつある……いえ」
 当然、怪人側もこの銃声を聞いているはずだ。それを押しての射撃なのだから、相応の理由があると判断できる。
 エマージェンシー・コール。なりふり構っていられる状況では、ない!
「だから私の撮影を止めなさい! カメラ止めて、そこ!」
 ビシ、とガラスを割るようなキツい視線を、遠慮なくエーカは表に向けた。
 先程からずっとエーカを取り囲んでいたキマイラたちも、さすがにこの迫力にはたじろいで……と。
「い……いやー素晴らしい! 貴女は逸材だ! これはご提案なのですが、ぜひウチのメディアで独占取材を」
 名刺を出してスカウトしてくるのは、おそらくどこかの記者か何かだ。その根性は買うが、しかし。
「………………」
 ビシ。
 今度のエーカは実際にガラスにヒビを入れた。素手で。
「ひいいいぃぃぃ! なな何かワタクシご無礼を働きましたでしょうか!?」
「今ここで死にたくないなら逃げるの。ここはすぐ戦場になるわ」
「死ぬんですか!?」
「そう言ってるわ・よ・ね! わかったらあっち向いて走る! ASAP!」
「承りましたアーッ! ぜひ後日当メディアにご連絡をヒエーッ!」
 その記者を皮切りに、他の野次馬たちも三々五々逃げていく。そんな彼らを――実は微笑ましく見送る、エーカなのであった。

「私は」
 どこへともなく、言う。
「私はキマイラの陽気さに惹かれて来た猟兵よ。
 文化もまた力。彼らを否定するなら私を殺してからになさい!」
 彼女の視線の先に、いくつかの拍動があった。
 爆心地――。

成功 🔵​🔵​🔴​


 驚異と脅威の間にも、それどころかあらゆる日常と非日常に、さして境界線を見出さないことが『常識』。ネオメキシコとはつまりそういう街だ。ボーダーレスゆえに流入と喪失を繰り返し、かろうじて残るものが、街の骸骨と化したもの。
 成れの果て――。
 幾度か怪人の襲撃を受けたことがあるのだろう。この街には、いわゆる安全対策装置が過剰に配置されているように見えた。安全ネット、隠し通路、巡回ドローン。猟兵にとってそれは、ある程度好都合に働いていた。
 しかし物理法則を無視するのがユーベルコードである。いずれはそれらも、また喪失されるだろう。現に今、あちこちでその兆候が見られ始めている。
 割れた配管は可燃性のガスを吹き、しかし自動的に元から止められた。各所で明滅を繰り返し、音楽イベントを偽装する照明は、一部の故障を隠す為。
 壊れる。壊れていく。フェールセーフごと、ユーベルコードは破壊する。

 猟兵は走る――破壊が、人命に至る前に。
忠海・雷火
現状では敵の目的もよく分からないけれど
一先ず避難を済ませましょう

逃げ遅れた者を探して確保、安全な場所まで運ぶ。一度に最低でも2人までは担ぎたい
爆発も起こっているようだから、何かしらの危険が迫れば庇うようにするわ

普段から緩い世界だから、巻き込まれた人達はこの状況に腰を抜かしているか
或いは、この期に及んでも普段通りかもしれない
いずれにせよ、運ぶ途中で平静を取り戻して貰えるよう会話する
「怪我もあまり無さそうね。良かった」
「怪人が暴れているのよ。でも大丈夫、あとは私達に任せて」
「避難途中で人に会ったら、こっちは危ないと伝えて欲しい」
ある程度安全な所に来たら自力で避難して貰い、私は再び要救助者の捜索へ



「ほら、起きて! ここはもう危なくなってるわよ!」
 と、忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)は酔っ払いのキマイラ女性を引き上げた。骨に力が入らないのか、むにゃむにゃと女性はしなだれかかってくる。
「んーむにゃむにゃ。もうあらし飲めないよーっだ。おかわりー☆」
 最後までこの居酒屋に残っていたのがこの女性だ。筋金入りの大虎である。
「もう……(ったく、怪我人よりたちが悪い、こういうの……)」
「あ? なんかいっら?」
「いいえ、なーにも」
 よいせ、とどうにか肩に担ぐ雷火。居酒屋の備品なのだろうか、酔い覚ましのスプレーを顔面にかけてやると、女性の虎耳がぷるぷると震えた。
「実は、今そこらじゅうで怪人が暴れてるの。でも、もう大丈夫だから」
「……え? 怪人? ってことはおねーさん……猟兵らぁ! そうれしょ!」
「そう。後は任せて、みんなは安全な所に避難を。歩ける?」
「あるけ☆なーい」
 さっきより多く酔い覚ましを吹き付けてやった。
「わぷぷぷ」
「……歩ける?」
「んあ、さすがにそこまでされちゃ歩けますよう。ありがとーおねーさん」
「どういたしまして。……以外に素直ね、あなた」
 思ったことを口に出すと、女性はほにゃ、と一笑した。
「だっておねーさんたち、ヒーローだもの。おねーさんたちのことを悪く言う人なんて、ここにはいないよ。これ、ホント」
「……酔ってる?」
「酔ってる」
「まあ、いいわ。ちゃんと歩けそうだもの、ね」
 雷火は女性に、まっすぐ避難すること、途中で人を見つけたら避難を呼びかけることを依頼すると、その場で別れた。女性の頼りない千鳥足が、ふらふらと遠ざかっていく。
 そしてふらふらと、遠ざかっていく――。
「――さて」
 店を出た彼女の背中を見送って、雷火は振り向いて『爆心地』の方向を見た。

 そこに破壊が合った。
 考えなしに飛び出して。
「…………ッ!」
 鋭い破片が。ある少年の頭上に落ちてきている。
 認識される前に。反射が、雷火にその行動を取らせた。
 突き飛ばして。少年の表情が、スローモーションで驚きに傾いていく。
「ふっ!」
 勢いのままに、上方を半月に薙ぐ回し蹴りで、破片を撃墜する。
 と。

 そこに、ひとつの『爆心』がいた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『スロットマシン怪人』

POW   :    プレジャー・プリーズ
自身の【刹那的な楽しみ】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    スリーセブン・スラッシャー
【頭部のスロットをフル回転しての連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    ロスト・ロケット
自身の装備武器に【遺失技術製のロケットエンジン】を搭載し、破壊力を増加する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「シャラララララララァー! いいギャンブルになりそうだったのによォー!」
「猟兵が出てきたんならギャンブルは無効だなァー!」
「そいつは違うぜェー! そろそろ猟兵が出るって賭けてた俺の一人勝ちだァー!」
 不逞に笑うスロットマシン怪人たちが現れた!
「ま、何にせよォ……猟兵ぶっ倒してェ! 現代の軟弱なアフターマンたちにィ!」
「ギャンブルの大切さってのを教えてやるぜェ!」
「シャラララララララララララァー!」
伊美砂・アクアノート
【WIZ】【他猟兵への援護射撃を行う】とりあえず敵を視認した瞬間に、マシンピストルをフルオートで全弾撃ち込む。……うーん。ちょっとワカランね、なんだコイツら。…まー、きっと敵で、たぶん敵だよね? にゃははー、ギャンブラーを名乗るなら、どうぞ笑って頂戴ね! 賭けてるのが命なら、最高にハイになれるでしょ? 出会って死舞えば運の尽き、終には六文銭だって無くなるともさ! 地獄は昔から資本主義経済だけど、極楽ならば誰でもウェルカムっ! ただ、救世は五十六億七千万年後なので、借金抱えて死んでるとヒドいコトになるぜ…。利子とかがな! ユーベルコードでコインをばら撒き射撃。【援護射撃5、投擲5、スナイパー4】


忠海・雷火
破片が当たるか当たらないかで賭けていた、と?
……親玉ではなさそうだけれど、遠慮はしない。倒させて貰う

基本的には近接攻撃主体の敵と見た
一先ず足の、チューブ状になっている部分を斬る
そうして数体の行動を鈍らせたら不知人魂を使い、一体辺り6〜7個の火をぶつけ攻撃
それでも倒れなければ、やや脆そうなスロットの隙間を狙い刀を突き立てる

敵がロケットエンジンを装着したら、ネクロオーブで雑霊を呼び嗾ける遠距離戦に切り替え
エンジンの推進力の関係上、速度と破壊力は増すものの、攻撃は直線的になると思われる
行動の予兆を見切ったら、即座に横方向へ回避
敵の背面に回れたなら、その辺の小石などをエンジン内部に投擲し破壊を試みる



「破片が当たるか当たらないかで賭けていた、と?」
 忠海・雷火――切り替わり、カイラが現れる。踵の後ろに疼く蹴撃の余韻を、まとわせたまま。敵を見る。
「シャラララァ。おめェ、投扇興って知ってるかァー!?」
「超古代日本のォ、超典雅なギャンブルよォー!」
「それよォ、それェ! シャラララララララアバババババァー!?」
 トラタタタタタタン! と、スロットマシン怪人の側面に風穴が開いた。連続して20回……20発の、マシンピストルによる全弾一斉射だ。
 怪人は弾痕から火を吹き、ゆっくりと倒れていく。程なくして爆発し、中から間欠泉のごとくに大量のコインを吹き上げた。
「……うーん。ちょっとワカランね、なんだコイツら」
 伊美砂・アクアノート。その中のひとりが癖でマガジンを投げ捨てようとするのを、他のひとりが慌てて空中でキャッチした。くるりと一回転、全方位を見回す伊美砂たち。
「――さあな、私にもわからん」
「……まー、きっと敵で、たぶん敵だよね?」
「親玉ではなさそうだが」
 カイラも見終わった。観終わった。瞬発する。
「遠慮はしない。倒させて貰う!」
 と、とん。数間離れた箇所に踏む二歩の踏み切りで、怪人の足元背後に潜り込む。ターンドリフト。
「そこ……っ!」
 怪人の脚部、チューブ状になっているところ。それをアキレス腱に相当する箇所と『観た』カイラによる、速攻の切り離しだ。
「シャラッ?」
 膝を付き、挫折姿勢を取る怪人。他の怪人がカイラを捕らえようとするものの、もうそこに居ないものを、どうこうすることはできずにいる。
「効くか」
 ならば、と、ライカは再度、怪人集団の隙間を縫うように駆け抜けた。今度は一体と言わず、二体、三体、六体七体。アキレスを断ち裁ち絶った。
「ふふん……♪」
 伊美砂たちも、それを黙って眺めているわけではない。ライカの狙いと手段とがに露見し、少なくとも手段を封じようと、怪人たちが動き始めたまさにこの時こそ、狙っていた瞬間だ。
「シャラァーッ! クラウドコントロールとは小生意気なァ!」
「シャラ臭いララララララァ!」
 怪人たちは挫折姿勢のものを外側に配置する二重の円陣を組み、全員の足を隠す密集陣形を組んだ。
「思い出すぜェ……あの時のオォ!」
「俺たちの最終決戦ン!」
「最後まで生き残ってたヤツが、世界を総取りするってなァ!」
「ああ! ああ! ありゃいいギャンブルだったぜェ! なァ!」
「にゃははー、そうだね~。それはそれは楽しいギャンブルを、も一回どうぞ!」
 ぴん、とコインを弾く音がした。怪人は習性からか、一斉にそちらを向く。
「Heads or Tailsだ!」「表ェ!」「裏ァ!」「裏ァ!」「直立ゥ!」「実はこれは猟兵の攻撃で、ベットするバカ共は一網打尽ン!」「やっぱ表ェ!」
「全員アタリ!」
 伊美砂は空中のコインを補足すると、肘を外に突き出し、顔のそばで掌をコインに柔らかく当てた。前に押し出せば、自然、コインに螺旋状の力が伝わる。
 それを極大のものとした。
「羅漢銭・空間掌!」
 弾くのではなく、撞く。望む限りの無限遠まで透す、地形無視の一撃である。
「シャバラアアアアアアアッ!」
「Dead or Alive...ギャンブラーを名乗るなら、どうぞ笑って頂戴ね!
 賭けてるのが命なら、最高にハイになれるでしょ?」
 閃光から一拍置いて、直撃した怪人が辺りを巻き込み吹っ飛んでいく。巻き込まれた方も、ぐるぐるとスピンして地面に叩きつけられた。
「出会って死舞えば運の尽き、終には六文銭だって無くなるともさ!」
 生き残った怪人たちは、それでも傾く。
「シャララララァァ……! へッ、種銭切れなら寺銭盗ってェ、何処吹く風よォ!」
「胴元だけにいいツラ見せてちゃ博徒の名折れェ!」
「勝つまでやるのが、俺たちギャンブラーへの第一歩だァ!」
 両腕にジェットエンジンをくくりつけた怪人は、ガチガチと拳をぶつけて伊美砂に殺到する。そこにふと、小石の雨が降り注いだ。
「――たとえ遺失技術でも、こういう吸い込み事故は防げないはず」
 カイラの布石だ。言う通り、ジェットエンジンはタービンに回転不良をおこし、小爆発して機能不全に陥る。
「シャラ……ま、まさかァ! こんなことがァ!」
「この一瞬で、俺たちの武装を見抜いただとォ!」
「やっぱり鬼札は最初に切るべきだったなァ、兄弟ィ!」
 わめく怪人を冷たく見下ろすカイラ。その周囲に、どことなく不吉な鬼火が漂い始める。
 鬼火らは集合離散し、ゆらめきまたたいた。
「骸の海より来たれ、来たれ。我が意に従い、彼岸、此岸、隔てなく燃やせ。
 ――不知人魂」
 ごう、と航跡を炎上させつつ、鬼火らは行く。怪人の五体と心臓部を狙い、一斉に取り憑いて、灼いた。
「シャーーーーーーーーーララララララァあああああ!」
 払い出されるJACKPOTすら灰になる。ハイになる怪人は狂喜乱舞。
 いずれ無に還るその舞踏を、カイラは瓦礫の上から眺めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神埜・常盤
此の世界のオブリビオンどもは
相変わらず愉快だねェ
ギャンブルの類に興味は無いンだが
折角だ乗ってあげよう!
僕は猟兵の勝ちに有り金全部賭けようか

敵の数は多いみたいだし
協力できそうな仲間がいれば連携を

僕は破魔を纏わせた七星七縛符で
1体ずつ動きを封じていこうかなァ
君たちは謂わば、過去からの亡霊のような物だ
きっと僕の護符も効くだろう?
ずっと同じ動きだと見切られそうだから
フェイントも挟んでいこう

自身へのダメージは激痛耐性で凌ぎ
体力危うくなったら吸血を
君たちは余り美味しそうでは無いが
まァ、血に貴賤はないからねェ

距離詰めて来た相手には催眠術を試みて
同士討ちなども狙っていこう
さァ、怪人どもよ
僕の掌の上で踊れ


ウーゴ・ソルデビラ
ギャンブルの大切さってのは、引き際を間違えねえ事だろ。俺らに会うまで続けたんなら、後は毟り取られるだけだぜ。迷惑掛けた分、がっつりとな。
他の猟兵とも連携して戦うぜ。味方の位置に気をつけながら、【露悪々汚武紅腐棲/早業+2回攻撃+なぎ払い】をぶっ放す。巻き添えを避けられないなら【死琉罵悪腐威朱/野生の勘+早業+クイックドロウ+2回攻撃】で射撃するぜ。近距離なら【零距離射撃】も使うぞ。敵からの攻撃は【早業+野生の勘+見切り】で避ける。


御形・菘
おー、実にイイ感じに破壊活動をしておるではないか!
妾にボコられ生配信で無様を晒し、更に編集動画で後々まで記憶に残るがいい!
さあ来い、妾も全力で相手をしてやろう!

……と言いつつも、周辺被害をそう広げるわけにもいかん
妾の存在感を存分に発揮し、奴らの気を引き付けてやろう
勢いつけて全身を使って跳び上がり、一気に奴らのド真ん中に上から突っ込むぞ
はっはっは、妾もギャンブルをしてやるぞ
妾がタコ殴りされてブッ倒れるのが先か、お主らが妾(というか、外側から妾の仲間)にボコられるのが先か、勝負よ!
殺気を出しつつ挑発すれば、乗らん奴らでもあるまい

さあ皆の衆よ、早くせんと妾が美味しい所を全部持っていってしまうぞ?



「あ、あれを見ろォ!」
 怪人が見上げるとそこに、一筋の流星!
 ……いや! あれは菘! 御形・菘だ!
 ハンディカム代わりの『天地通眼』を片手に、どこから飛び降りたものか、超高度から飛来してくるではないか!
「タアアッチ、ダアアアン! でも周辺環境に気をつけてソフトにしよっと」
 トッッッッコーーーーーーン!
 と、努めてソフトに到着した菘の周囲には、いつの間にかプロジェクションマッピングのクレーターが投射されている。撮影は結構前から始まっていた。
「炎上しちゃうからな!」
「な、何奴ゥ! 新手のキマイラ人類かァ!」
「如何にも! 妾こそは真の蛇神にして邪神たる動画投稿者、御形・菘だ!」
 ビシィ! とサムネイル用決めポーズを取る菘である。
「カメラァ? 動画だとォ?」
「カメラはイカサマを暴くから嫌いだあああああァ!」
「動画は写真判定に使うからあってよおおおおしィ!」
「はっはっは、外見に違わぬギャンブル好きよの、お主ら」
 にぃ、と菘は笑みを浮かべる。孤立無援、四面楚歌。実はそういう状況だが……。
「ならば妾もギャンブルをしてやるぞ。妾がタコ殴りされてブッ倒れるのが先か、お主らが(ごにょごにょ)ボコられるのが先か、勝負よ!」
「シャラララ乗ったァ! だがド本命取っても面白くもねぇからなァ! おいィ!」
 一人の指示とともに、一斉にリール部分に目隠しを付ける怪人たち。
「これで前は見えないぜェ! どうよ、てめェの勝負に乗るならこれ位しないと盛り上がらないだろォ? シャーラララララァ!」
「ほう。じゃーこれ何本?」
「さんぼ――いやいや見えねぇって言ってんだろォー!!」
 バゴォ、と正確に菘が居た位置を打ち砕く怪人。ユーベルコード『逆境アサルト』で身体能力が上がっている今でなら、なんとか避けられる速度であった。
「ひゅっ……」
 息を呑む。這い抜けた先に、しかし別の怪人がいる!
「大穴もらったァァァァァ!」
 振り向いた菘に、怪人のラリアットがぶち込まれていく――!

「すまないねェ、美味しい所だけ貰っていってしまって」

「……まったくじゃ。そういうのは妾の専売特許じゃぞ? わきまえて?」
 ぱんぱん、と埃を払う菘。怪人の腕は直前で止まっていた。
「フフ、肝に銘じましょう」
 七星七縛符。怪人の動きの一切を止めたのは、神埜・常盤であった。
「シャ……ラ……」
「此の世界のオブリビオンどもは、相変わらず愉快だねェ。目隠しかい? これ」
 常盤は目隠しの上から、ぐりぐりと下のリールに指を押し付ける。実際に感覚器があったのだろう、手触りは硬いが、それでもそれ以上の感触が、指先に伝わった。
「おま……も、りょ……!」
「嗚呼、駄目駄目。動けないよ。ユーベルコードもね。
 ――君たちは謂わば、過去からの亡霊のような物だ。きっと僕の護符も、覿面に効くのだろう?」
「それじゃ、ボッコボコタイムじゃな。それくらい妾にやらせい」
 菘は大きく右腕を振りかぶった。結果は見えていたので、常盤はその場を離れる。
「ギャンブルの類に興味は無いンだが、折角だ乗ってあげよう!」
 懐から何枚もの護符を引き出し、扇状に構える。怪人はまだまだ大量にいた。
 ――これ全てに七星七縛符を掛けるとあれば、相応の代償が必要となるだろう。
 ――常盤はニヒルに微笑む。
「僕は猟兵の勝ちに『有り金全部』賭けようか」
「シャララララ、ギャンブルで俺たちに挑むとはいい度胸ゥ!」
「血反吐払い出して後悔するんじゃねーぞォ!?」
 仕掛ける――と。
「待て待て待て待てェイ!」
「待つかよバーカ! こちとら必死なんだ!」
 新手が向こうから現れた。数人の怪人を引き連れて、やって来るはウーゴ・ソルデビラ。後方に威嚇射撃をしつつ、こちらを猟兵と見るとさっと跳び寄ってくる。
「迷惑か?」
「好都合だねェ」
「恩に着る!」
 ブオンッ!
 怪人によって投擲された瓦礫を、両名は左右に分かれて避けた。ウーゴの跳ぶ方向は、鈍角の切り返し。丸く迂回して、しかし再度敵陣に踏み込む心づもりだ。
「ハッハー! エースを引いたぜ、俺は!」
「シャラァ、1枚が2枚に増えたところでェ!」
「ババ抜きならバカのやることだぜェ!」
 ウーゴに迫る2体の怪人が、頭部のリールを高速回転させ始めた。それに連動するように、両腕もぐるぐると回り始める。子供のだだっこパンチに見えて、あれがなかなか恐ろしい攻撃だということは、ウーゴ自身よくわかっていた。さっきボコボコにされかけたし。
 だが、な。
 ウーゴは諭すように言う。BET。
「そいつは悪手だぜ、怪人」
 自分の無事を、チップにした。
「シャラララ負け惜しみ!」
「お前も瓦礫となれィ!」
 周囲の建物を破片にしながら、こちらへ迫ってくる怪人。単純な――誘導しやすい行動だ。
「ギャンブルの大切さってのは、引き際を間違えねえ事だろ?」
 言うが、怪人はもう聞いてもいないらしい。勝ったと踏んで、余裕カマしている。
 だから、こうなる。
「俺らに会うまで続けたんなら、後は毟り取られるだけだぜ。迷惑掛けた分、がっつりとな――!」
 ウーゴはたった三歩、後ろに下がった。それだけだった。
 ――それだけで、常磐の七星七縛符の囮になり得た。
 どしゃどしゃと倒れる怪人たち。結果を見て、今更になってウーゴは怖気づいた。極上の賭けというのは、勝ってから震えがくるものだ。
「ひ、引くことが攻めになることもあんだよ! わわわかったかコラ!」
「シャ、ラ……! ゲブッ!」
 ウーゴは怪人を踏み台に、高く跳躍する。戦場を見下ろした。常磐も菘も、いい感じに距離をとっている。ばさ、と蝙蝠の翼を叩いた。
「それならくらえ、露悪々汚武紅腐棲(ロアー・オブ・コープス)!」
 ユーゴは刻印に、己の命と同価値の鮮血を、それが欲するままにつぎ込む。暴れるように脈動した刻印は、内に閉じ込めたUDCたちの発声器官を限定開放する!
「お……ぎゃああああええええええぇぇぇぇぇぇ!」
 空間の激震! ユーゴの射程距離内にある全てが、その暴威に晒される。怪人たちはもはや為す術無く、リール一本動かせないまま砕かれていった。
 その中の一体が、しかし根性を見せて立ち上がる。全身にスパークをまとわりつかせ、それでも震えて戦闘姿勢を取った。
「シャ、シャーラララララララァ! 負けるかァ!
 勝つまでやればどんなギャンブルだって勝てるんだよォ! マーチンゲール法って知ってるかァ!
 ――ギャンブルこそは、魂を鍛える戦士の嗜みなんだーッ!」
「それで人様に迷惑かけては本末転倒じゃろう、阿呆め!」
 菘だ。動画映えする出番と見て、颯爽と飛び出してきた菘である。
「タアアッチ、ダアアアン! 今度は自重しないバージョン!」
 飛びかかる勢いのまま、ずど、と怪人の脳天に拳をブチ下ろす。
 砕いた。
 ――ズウウウウゥゥゥゥゥゥン!
 余波が、立ち上る砂塵を凪いでいく。それを抜け、割とローアングルから見上げててくる天地に対し、菘は常磐とユーゴを手招きして。
「ほれほれ、勝利のポーズの一つもとらんかい。営業じゃぞ営業」
「なん。……こ、こうか?」
「まあ、それも一興ですか」
 一瞬のシャッターチャンスを逃さず、記念撮影をする猟兵たちだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


 暇そうに――というと語弊があるが――しているスロットマシン怪人たちがいた。
 破壊工作に勤しむわけでも、キマイラを捕まえてギャンブルの道に引き込むわけでもない。ただ単に、数人で集まってチンチロリンで盛り上がっているだけである。
 彼らに特定の『司令官』はいない。各々がやりたいままにやっているだけで、となればこうして、自分たちでギャンブルを心いくまで楽しもうとする一派が現れるのも、おかしくはないことだった。ことだった。
 怪人たちはいい音の鳴る茶碗とメルセンヌ・ツイスタに従った乱数を発生させるサイコロを見つけると、その場にしゃがみこんで振り始めたのであった。
「シャラララララ、ひふみだァ!」
「ッシャアアアアアアアア!」
「負けだァ! お前の負けだァ!」
「本当にツイてないなァ! なんか憑いてるんじゃねぇかァ!?」
「「「「シャララララララララァ!」」」」
エーカ・ライスフェルト
実は私、賭け事が嫌いでね。他人がするのは我慢できるけど、勧められると殺意すら抱いてしまうわ
「つまり、スロットマシン怪人は死ねってことよ」(ヤバイ感じで魔力とか瘴気っぽいものが体から噴き出しピンク髪が揺れている)

考えてみれば、賭け事に対する個人的怨恨をぶつけるのに最適な相手よね
【エレクトロレギオン】で大量(115体)の【機械兵器】を召喚して、U字型の半包囲陣を造りながら私も一緒に攻め込むわ
本命は機械兵器ではなくて、【属性攻撃】で作った殺意マシマシ、釣り針っぽい返し有りの土属性の矢よ
「ドラムを本体に縫い止めてあげる。供養はしてあげるから大人しく骸の海に戻りなさい。もちろん悲鳴をあげてもいいわよ」



 コツ、コツ。
 瓦礫の街をハイヒールの女が行く。
 女は何かを投げ捨てた。がしゃん。
 捨てられたそれは電気スパークを一瞬だけ放出し、それっきり沈黙する。
 コツ、コツ、コツ――。

「――シャラララ、おいおいまた負けかよォ! しかもシニメでだァ!」
「死に目とは縁起悪いなァ!」
「そろそろ猟兵でも来るんじゃねぇかァ!?」
「シャラシャラシャラ違いねェ!」
 冗談のように笑い飛ばす猟兵たち。少し前から周囲の戦闘音があまり聞こえなくなったのを、仲間たちの制圧が上手く行っているからだと勘違いしているのだ。
 もちろん、逆である。逆も良いところである。
「ねえ」
「シャラ?」
 不意の呼び声に、特に警戒無く振り向く怪人たち。
「何をしているの?」
「見りゃわかるだろォ! チンチロリンだァ!」
「シャララララ、丁度一人オハコになったとこだァ、お前も混ざれ混ざれェ!」
「……待て待て待てェ! こいつ、こいつはァ!」
「猟兵じゃねェかアバーーーーーーッ!」
 気づいた怪人のリールに、エーカ・ライスフェルトは全力の前蹴りを突き込んだ。ハイヒールが上手く刺さり、白煙が上がる。
「まったく、どいつもこいつも……!」
 殴りかかってくる別の怪人をひらりとかわし、エーカはとんぼをきって距離を取る。怪人たちは横一列になり、さすがに強い警戒を見せ始めた。
「シャラァ……こいつゥ……!」
 かくはずのない冷や汗が、背中に落ちていくような錯覚を覚える怪人たち。それほどまでの、空恐ろしいプレッシャー……!
 エーカは激怒していた。
「――実は私、賭け事が嫌いでね。
 他人がするのは我慢できるけど、勧められると殺意すら抱いてしまうわ」
 その現場に鉢合わせたことで、もはや抑えようもない殺意やらなにやらが、魔力だとか瘴気だとかそういうヤバいものになって、彼女の肌から無色の朧を吹き上げさせている。
「つまり、スロットマシン怪人は死ねってことよ」
「言われてホイホイと死ぬ馬鹿がいるかァーッ!」
 両腕にジェットエンジンを装着した怪人がひとり、エーカに突っ込んできた。左腕を自身の加速、右腕を攻撃の加速に用い、咄嗟にエーカの上空を取ると、自重ごとチョップを仕掛けてくる。
「私が。私が個人的怨恨から殺すのよ。勘違いしないで」
 それからでも十分に間に合った。
 エーカのエレクトロレギオンが、空中に文字通りの包囲網を展開する。その数、ざっと115機。複雑な三次元交差を見せる一斉射撃が、ジェットエンジンの速度を打ち消した。
 ――がしゃん。
 ぶすぶすと黒煙を上げる怪人。その死に体を、エーカは冷たく見下ろす。
「しゃ……らァ……!」
「じゃあ、死んで」
 即席の、土属性の矢。エーカは両手で握りしめると、それを怪人に突き刺した。
「ドラムを本体に縫い止めてあげる。あとでまとめて供養はしてあげるから、大人しく骸の海に戻りなさい。……もちろん、悲鳴をあげてもいいわよ」
「――――!」
「あげても、いいわよ?」
 矢の角度を変えて微妙に引き抜き、返しになっている部分を露出させる。もう一度刺す。もう一度抜く。もう一度。もう一度。もう一度――。
「こっ、この女ァ……イカれてやがるゥ!」
「ギャンブル嫌いでも普通そこまでするかァ!?」
「ギャンブル好きになればそこまでしなくなるよなァ!?」
「オ、ナイスアイディアァ! シャララララララァ!」
「へえ」
 エーカの目が光る。噴き上げる朧は実体化し、彼女のピンク髪をゆらめかせた。
 地雷も地雷、極大地雷を踏んだ怪人たち。
 その周囲には、レギオンによるU字型の半包囲陣形が迫りつつある。強がりながらもエーカから目を離せないでいる怪人たちは、それらレギオンが致命的距離にまで接近したことに、気づかないのであった。
 BRATATATATATA!

 コツ、コツ。
 瓦礫の街をハイヒールの女が行く。
 女は何かを投げ捨てた。がしゃん。
 瓦礫に瓦礫をうず高く積み上げて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ミスター・ドムドム』

POW   :    フライ・ド・プレス
単純で重い【フライングボディプレス 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ハイドロ・コーク
【ストロー付きの入れ物 】から【コーラ】を放ち、【強炭酸】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    抗えないジャンクの魅力
戦闘中に食べた【バーガーセット 】の量と質に応じて【体脂肪が増加し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルデラント・ズィーマです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウーゴ・ソルデビラ
本気がどうのと、どんな奴が言ってるのかと思えばコレかよ。その太鼓腹に詰まってるのがテメエの本気なのか、単なる脂肪なのか俺が試してやるぜ。
複数合体させた【腐羅無怒腐汚魔狼/早業+2回攻撃】をブチかます。揚げ具合がなってねえな、フライドポテトはカリカリ派だぜ。敵からの攻撃は【早業+見切り+野生の勘+オーラ防御】で避けるぞ。食えば食う程太るってんなら、動きも鈍る筈だな。【ダッシュ、早業、逃げ足、ジャンプ、野生の勘】とかで死角に回り込んだり、物陰から攻撃すれば有利に戦えるかもな。しっかし、コイツを見てたらこっちまで腹が減って来たな。コレを見た後で言うのも何だが、帰りに皆でハンバーガーでも食ってこうぜ。



「Ghoa, ghoa, ghoooa...」
「ヘッ。拍子抜けだぜ、こいつぁ」
 瓦礫の街に居た『そいつ』を見つけて、ウーゴはやれやれと肩をすくめた。
「本気がどうのと、どんな奴が言ってるのかと思えばコレかよ――」
 ズボンからはみ出てなお広がる巨大な腹部と、両手に備えたファーストフードが、嫌が応にも目に入る。オブリビオンと言うよりは、調子に乗ってネジが抜けきったレスラーか、どこかのバーガー屋のマスコットキャラクターか、あるいはその両方に見えた。
「――本気どころか、正気を疑うぜ?」
 先手必勝。ウーゴが天に向けて突き出した指先に、光の小球が集まっていく。
 やがて小型の太陽のごとく熱量を高めていくそれは、あるUDCの集合体であった。副遮光がネオメキシコの瓦礫を色濃く照らし出す。『そいつ』は汗一つかかず、手にしたファーストフードを、一瞬で口の中に入れた。
 口に入り切らなかったケチャップ状の粘液が、血のように飛び散る。
「その太鼓腹に詰まってるのが、テメエの本気なのか、単なる脂肪なのか、俺が試してやる。くらいやがれ!」
 片頬上げてほくそ笑み、ウーゴはUDCに命令を下した。
「そら、腹の脂肪でアイツを揚げっちまえ! カリカリにな!」
 ッボン! ゴオオォォォ!
 一瞬で肥大化した炎球が、『そいつ』の全身を包み込んでいく。地面にたどり着き、さらに盛大な火柱を上げた。 
「Ghoaaaaaaaaaeeeeeeeeeeeeeeee!」
 紅蓮の中に、『そいつ』の頭が焼け崩れていくのが見える。
 と。
「あ――」
 刹那のタイミングで。
 ウーゴは紙一重の回避を見せる。
 目前を通り過ぎていくのは、『そいつ』のラリアートだ。巨体がうねり、文字通りに波立たせてすらいた。
「っぶねっ! なあ! 悪あがきしやァって!」
 振り切ってからのフォロースルーに『そいつ』が体制を崩す所を、ウーゴは後ろから蹴り飛ばして瓦礫に突っ込ませてやった。もうもうと立ち込める土煙。力なく倒れたまま、リズミカルにピクピクと震えるだけの『そいつ』。
「弱点は分かってんだよ。食えば食う程太るってんなら、動きも鈍る筈だ」
「…………」
「しっかし、コイツを見てたらこっちまで腹が減って来たな……」
 興味を失ったウーゴは、『そいつ』に背を向けた。もはや、勝敗は決したと。
「コイツを見た後で言うのも何だが、帰りに皆でハンバーガーでも食って――」

 ふと、そこで。
 一つの仮説に思いついた。

「――食って、たか? コイツ?」
 ウーゴは嫌な予感がして、自分の記憶を辿る。こちらがユーベルコード『腐羅無怒腐汚魔狼(フラム・ド・フォマロー)』を放つ直前のことだ。
 あの時『コイツ』は、ファーストフードを口に入れただけではなかっただろうか?
 もしそうならば、コイツはまだ……!

成功 🔵​🔵​🔴​


 いずれ死ぬ身と笑うでもなく。
 いずれ滅ぶ世と嘆くでもなく。
 いつまでも我等は有りと嘯く。
 そう決めて、しかし滅んだ我等。

 なぜならこの世は茨の荒れ野だ。
 走るだけで消耗する。歩くだけで衰える。
 横たわればもう起き上がれぬ。
 そんな世界だから、我等は滅んだ。

 だが今、亡霊がこの世界に歩いている。
 未来の亡霊だ。
 我等の滅びを踏んでいることも知らずに。
 うたかたを、ただ消費して過ごしている。

 ――そうだ。
 ――誰一人として、本気で生きていない!
 ――こんな世界が残るなんて、何かの嘘だ、間違いだ!

 ――間違いは、正さねばならぬ!
伊美砂・アクアノート
【SPD】【投擲5、早業3】で、タロットカードを投げつけるのがオレだ。…はッ。いずれにせよ世界は回ってンだ。生きるべきか死ぬべきかなんて問いは、シェイクスピアにでも喰わせておけよ。【地形の利用5、スナイパー5、援護射撃5】ボクは遮蔽物の陰からショットガンで狙撃。…おお、運命の女神フォルトゥナよ。その姿は月の如くに満ちては欠ける…ってね。なに、深海魚が眼を変化させたようなモノさ。環境が違えば変化だってする。 …生物が滅びるなんて客観的に見てありふれた現象だろ?そう怒るなよ。オレが死んでも世界は回るし、ボクが生きるコトに意味は無いさ。どうせ毎日は、冥土の旅の一里塚。どうせなら楽しく生きなきゃね。



「How deeeeeeep! Are! You! Seeeeeeeeeeerioooooooooooous!」
 絶叫。万感の思いを込めて、と例えるに相応しいものであった。
 聞く者に否応無しの反応を強いるような、暴力的なまでの音声は、空気空間を激震させる。巻き込まれたキマイラがひとり、腰を抜かしてへたりこんだ。
 一歩ごとに脂肪を揺らしながら、怪人『ミスター・ドムドム』は彼に近づいていく。
 そこは伊美砂・アクアノートの射程圏内であった。
 ――シュン!
 空を切るタロットカードが、怪人の上腕に突き刺さる。愚者のカード。骨に達する前に、怪人はオーバーな筋肉の動きでそれを払い除けた。キマイラは別の猟兵に回収され、逃げていく。
「……はッ」
「いずれにせよ世界は回ってンだ」
 伊美砂は怪人の前に姿を表さない。どころか、その声は複数箇所から聞こえていた。怪人は周囲を見回す。その背後を、伊美砂は取った。
 ジャキッ!
 わざとらしいポンプアクションのリロード音。振り向く怪人の顔面に、遅いとばかりに散弾をブチ込む。弾けるパンズの破片が、はらはらと散った。
「いずれにせよ世界は回ってンだ」
「生きるべきか死ぬべきかなんて問いは、シェイクスピアにでも喰わせておけよ」
 反撃に備えた伊美砂が物陰に隠れるのを、『別の』伊美砂が援護射撃で支援する。オルタナティブ・ダブルによって現れた、もう一人の自分だ。息が合うどころの話ではない。
「Kaaashaaaaaaaaaaaaaaa!」
 対して、怪人はコーラの二刀流を構えた。左右の容器のストローを、それぞれ伊美砂と伊美砂オルタの隠れた瓦礫に向ける。噴射された強酸は、それらをドロドロに溶かしていった。
 怪人はそのまま回転する。するとその周囲が無差別に、平たくなっていく。伊美砂たちは包囲範囲を狭めざるを得なくなった。
 伊美砂オルタは暗く笑う。
「……おお、運命の女神フォルトゥナよ。その姿は月の如くに満ちては欠ける……ってね」
 どちらにとってもリスクのある選択を、怪人は取ったのだ。ギャンブル――とは違う。勝つために必要な危険。
 そして偶然、伏せて隠れる伊美砂と怪人の目が合った。
「やっば」
 伊美砂が跳ね起きたところに強酸が飛び散った。衣服の端が焦げる。ショットガンのポンプ部を持ち、円運動で片手リロード。くるりと銃身を回し、即座に射撃する早業を見せる。
 伊美砂オルタもそれに合わせて、死角である後方を取る。頭上は取らない。対応されれば避けようがないからだ。それは皮肉にも、伊美砂本体への集中攻撃を招く結果となった。
 バジャン!
 今度はパティまで散弾が貫通した。前後から同時に弾け、上方に肉片が飛ぶ。
 ハンバーガーの顔が、崩れながらも笑った。
 伊美砂に容赦なく、強酸が吹き付けられる。眼球はガード。かばう上腕の、神経までも灼けるような激痛。すかさずオルタが横から本体をかっさらい、離脱する。
 両者、相応の距離をとって対峙した。伊美砂たちは対話を試みる。
「やけにご立腹のようだ。そんなに自分たちが、滅んだことが許せないのかい?」
「Unforgettable(忘れられるものか)!」
 時間稼ぎの意味が半分。もう半分は――。
「なに、深海魚が眼を変化させたようなモノさ。環境が違えば変化だってする。
 ……生物が滅びるなんて客観的に見てありふれた現象だろ?」
「I! I never forgive!(俺は! 俺は許さない!)」
 ――対話は続けられる。
「……そう怒るなよ。
 オレが死んでも世界は回るし、なら、ボクが生きるコトに意味は無いさ――」
「Then why(なら、なぜ)?」
 伊美砂たちは声を合わせた。

「どうせ毎日は、冥土の旅の一里塚。なら楽しく生きなきゃね」

 両者の隙間に、長い長い風が吹く。断絶と言えるほどに。
 今を生きる者と、過去そのもの。ゆえに対立は必至だ。
 どちらかが……どちらか片方だけが、残る。
 それを決めるのは、只々闘争のみであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神埜・常盤
あァ、あの怨嗟の声はそう言う事か
飽食と怠惰を象徴するような君も
此処の住人とさして
変わらないように見えるがねェ

仲間がいれば其方と連携を意識
敵の隙を狙い暗殺の技能活かして
不意打ちとか出来ると良いなァ

攻撃は天鼠の輪舞曲
敵に接近し捨て身の一撃を
脂肪は鎧にもなり得るかね
念の為に鎧無視攻撃も意識して

ダメージは激痛耐性で堪えよう
失った体力は吸血で取り返す
君はよく肥えて美味そうだ
僕にも齧らせておくれ
ジャンクでは無く其の命を

面白可笑しく日々を過ごす彼等は
滅びた者にとって不謹慎に見えるかね

彼等に慕われ必要とされる事で
救われた男だって此処に1人居るのだよ
だからこそ僕は君を否定しよう!
――此の世界は、護るに足るものだ



 ある蝙蝠がいた。瓦礫の街にぶら下がり、訪れた崩壊を見ている。
 それは薄暮の空を求め、いずれ軒下の仮宿を飛び立つ。
 きぃ、きぃ。誰にも聞こえぬ、幽き歌。
 するとそれは、群れなして征く別の蝙蝠たちの耳に届いた。
 果たして、どのような詩であったか……。

 そして吸血蝙蝠たちが。
 怪人の足元に降り立つと、神埜・常盤の姿を成した。
「What(何っ)!」
 怪人が見せた一瞬の油断を、抜け目なく付いた形だ。反射的な迎撃を再度、吸血蝙蝠の群れに変身して受け流す常盤。
『あァ、あの怨嗟の声はそう言う事か――』
 群れの中の隙間が、常盤の声を発する。
『――飽食と怠惰を象徴するような君も、此処の住人とさして変わらないように見えるがねェ』
 パァン!
 怪人のトラースキックが繰り出され、分厚い脂肪をみずから打つ音が響く。その靴裏の戦果は、たった一匹の蝙蝠を潰すだけに留まった。
「I sincerely do the eat though!(食うことに対しては真摯だぜ?)」
『そうかね』
 続けての裏拳の軌道は、完全に空を切る。一方、吸血蝙蝠たちの包囲は完了した。
『なら、同じ物を僕にも齧らせておくれ。ジャンクでは無く、其の命を!』
 一斉に。
 一斉に吸血蝙蝠たちは群がった。怪人の表皮をあますところなく黒く染め上げ、その肉の守りを食い破っていく。
「AaaaaaaaaaAH!」
 潰された蝙蝠が粒子と化し、また新たな吸血蝙蝠となって、かれらの食餌に加わる。脂の多い怪人の肉体は、言うまでもなく御馳走であった。
『勿論、本命は血液だがねェ!』
 ――ブシッ! ドジャアアアアアー!
 噛み切った血管から、人工甘味料の甘ったるい匂いがする血が吹き出す。噴水の中で遊ぶ血染めの黒が、そしてほほえむ常盤の姿に戻った。

「面白可笑しく日々を過ごす彼等は。滅びた者にとって不謹慎に見えるかね」

 そんな言葉が、常盤の口をつく。ふらつく怪人は一歩を踏みしめて、懐から出したバーガーセットを口にした。
「Just so, I didn't see any gravekeepers in those idiots.(当然。ここのボンクラには、悼む者は一人だって居やしねえ)」
「君の勝手な逆恨みで、彼らを貶めないでくれたまえ」
 続ける。
「そんな彼らに慕われ必要とされる事で救われた男だって、此処に1人居るのだよ」
「Huh, obviously!(ハッ、知るかよ!)」
 前のトラースキックより更に力を増した逆水平チョップが飛ぶ。常盤はそれを、正面から受け止めた。
 受けて、止めた。歪む肋骨。激痛が背骨にまで走る。堪らえるために噛み締めた歯から血が滲んだ。
「だからこそ僕は、君を否定しよう。――此の世界は、護るに足るものだ!」
 常盤の後ろには、キマイラフューチャーそのものが有る。
 退くわけにはいかなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エーカ・ライスフェルト
私がオブリビオンとの闘争を楽しんでいるのと同じように、キマイラ達は趣味を突き詰め果てを求めている
果てには九分九厘何も無い。でもね。無数の犬死無駄死の果てに文明を築いたのはスペースノイドも生前の貴方達も同じなのよ
結局何が言いたいかというと……
「美味しいのに高カロリーなオブリビオンは滅ぶべきだと思うの」(真顔

「こんがりと二度焼きしてあげるわ。くらいなさいっ。【属性攻撃】で炎増量の【自動追尾凝集光】(ホーミングレーザァァァッ)!!」
なんかこう宇宙っぽい、無駄に鋭角的な進路でオブリビオンに迫って直撃したりするのじゃないかしら

「卑怯なっ、こんなに美味しい匂いを…」
再加熱された脂の香りでノックアウト寸前よ



「それはそれとして、美味しいのに高カロリーなオブリビオンは滅ぶべきだと思うの」
 エーカ・ライスフェルトは結論としてそう言った。

 ――回想する。
 エーカの身体は闘争を求めていた。楽しい楽しい、闘争行為それ自体を。
 その果てには九分九厘何も無い。数多の死体と残骸が残されていくだけの道行きだと、『今』からは見えた。
 キマイラたちも同じだ。彼らはひたむきに娯楽を求めている。趣味を突き詰め、その果てに臨んでいる。何もないであろう果てに。
 それでも。
 無数の『果て』を、たとえそれが数限りない犬死と無駄死であろうと、あるいは再生数2桁コメント数1桁マイリスト数1の合成音声ゲーム実況動画であろうと、積み上げていけばそこに何かが生まれるのではないだろうか。
 そうしてできたのがスペースノイドの文明であり、また、キマイラフューチャーの文明でもあるはずだ。この過程のどこかに、怪人たちも居たはずであって。
 回想終わる――。

「それはそれとして、美味しいのに高カロリーなオブリビオンは滅ぶべきだと思うの」
 エーカ・ライスフェルトは結論としてそう言った。真顔で。
「Hey, you may search a word "coherence"!(唐突だな、オイ!)」
 怪人の抗議もどこ吹く風。エーカの掌前で立方体型に形成された炎の塊が、なおも圧縮・高密度化されていく。
 アレはまずいと直感したのか、怪人はバーガーセットを食べるペースを上げた。流し込む勢いである。
 見る間に肥え太っていく怪人と、それ以上に嵩を増すエーカの炎。
 双方がそれぞれのゴールを達成し、そして戦端は開かれた!
「――こんがりと二度焼きしてあげるわ。
 くらいなさい! ノナコンタ・ホーミングレーザァァァッ!」
「Laugh, and grow FAT!(肥える肉には福来たる、だ!)」
 立方体炎塊は24分割され、それぞれがバラバラの角度で走り出した。直線状態を主としながらも、行きつ戻りつ、クシャクシャに折り畳まれた針金と似た乱軌道を取り、怪人に殺到する。
 1、2、3……怪人の肉体は、何度かその直撃に耐えうるが、しかし。
「Gwaaaaaaaaaaa!」
 あまりに急激な温度上昇に、脂肪が文字通りこんがりと焼けていく。その箇所に必ず命中するレーザーが、怪人の防御を圧倒していき――。
「あっ」
 同時に、エーカは倒れた。
 ああ、ついさっきまで一方的に攻め攻めで攻め立てていたというのに……何故!
「Gwaaaaaa...?」
 怪人の方も疑問に思ったようだ。伺うような視線がエーカに向けられる。
 答えは、エーカの苦しげなうめき声によってもたらされた。

「ひ、卑怯者……! こんなっ、こんなに美味しい【匂い】を……!」

 ――そう。そうね。うん、そう。
 この怪人、焼くと美味しそうな匂いしそうだもんね。
 うん。だから、エーカがノックアウト寸前になるのもしょうがないよね。
 そういうことになった。

成功 🔵​🔵​🔴​

忠海・雷火
……確かに、思う所はあるだろう
だが。私達は此処の住人ではなく、貴方達が何故滅んだのかも知らないが、言える事はある

過去が今を摘む事は、あってはならない
それは未来を、可能性を失うという事。世界は停滞し、本当に滅びてしまう
それを防ぐ為に、過去を殺す為に戦う。それが私達の生き様だ


まずは遠距離から雑霊を嗾け攻撃
格闘も液体の噴射も、軌道を予測し易くはある。戦闘知識も使い極力見切り、余裕があれば躱し様に関節部を狙い斬り付ける

近付かれたら傷の血を使い、無ければ自傷しユーベルコード発動
刀を無数の刃持つ捕食形態へ変え、ボディプレス後の硬直を突き喰い斬る
もし避けられなければ、捨て身の覚悟で、落下地点にて刃を上向ける



 ――熱波は撃風を喚ぶ。
 雑多な臭いの混じるそれに、雷火/カイラは身を投じた。圧のあるヴェールを両手でこじ開けるように抜けると、その指の先々に雑霊の炎珠が宿る。
「行け……!」
 放たれた炎は大きな螺旋柱の幾何学模様を描く。立ち直った怪人は容器の蓋を開け、迎撃すべく中身を広くばらまいた。
「Easy(させるか)!」
 あちこちで水の焼ける相殺音がする。その間に、カイラはいつでも切り込める距離まで踏み込んだ。しかし、油断なく出方を伺う。
 怪人も両手を高く広げ、同じくじりじりと迫ってきていた。膠着状態に陥る前に、カイラは揺さぶりをかける。
「……お前が、過去が、今を摘む事は、あってはならない」
「Gfafafafa...」
「世界の停滞を、私達は認めない」
 一触即発のラインを、怪人が切りにくる。
「――オブリビオン。その名の通りに忘却されろ」
 切れた。
「You all stand the pain!(思い知りやがれ!)」
 判断は一瞬だ。仕掛けてくる技に検討がつくこちらのほうが、有利……!
 カイラは『銘なき刀』の鯉口を切った。柄をわずかに下げ、重心を動かす。隠す。
「I know your tricks, samurai!(見えてるぜ、サムライ)」
 その傾いだ視界から、一瞬にして怪人は消失した。
 何処へか。横方向にではない。確信がある。
「Catch me if you can(止めてみな)!」
 上だ。
「――思うところは、あるだろうがな」
 カイラは揺さぶりと仕掛けが上手く行ったことを悟った。
 ……隠したかったのは、抜刀の射出口ではない。刀身そのもの。
 それを、怪人は見誤った。見誤らせた。
「起きろ、食い荒らせ、されど蘇ることを禁ず」
 ほんの僅かに引き出した刃に、己の指を走らせる。それで十分。カイラの生き血を舐め取った『それ』は、自身を閉じ込める封印を内から食い破った!
「■■■■■■■ーーッ!」
 無数の刃を乱杭歯に生やした『それ』の、金属質の絶叫が轟く。カイラは『それ』を急いで上方に向けた。殺戮捕食態となった『それ』は、反射的に、目の前にある肉に齧り付く。
「Wh……!」
「殺■雷■■■チガ■デ■旨■■■■肉■■!」
「そこまでだ。重ねて蘇ることを禁ずッ!」
 掲げた『銘なき刀』の本来の刀身に怪人が突き刺さったところで、カイラは刀を振り下ろし、怪人を投げ捨てる。がしゃがしゃと未練がましくわめいた『それ』は、しかし潮が引くように、元の形――UDCの死骸でできた刀へと戻っていった。
「……ふぅ。相変わらず、まあまあ扱いやすくて助かるよ」
 刀を鞘に収め、再封印を施す雷火。怪人はぴくりとも動かず――。

成功 🔵​🔵​🔴​


 ――否。死んだくらいで殺されるなら、苦労はない。
 ――骸の海は。
 ――骸の海は、死んでも起きろと囁く。

 また、死ねと。何度でも死ね、と。
 怪人はそう急かされているように感じた。
 絶叫する。
御形・菘
なるほど、要はただの自分勝手な羨望と嫉妬で……

……素晴らしいではないか! 

妾は怪人どもの悪行やら思想に、優劣をつけることはせん
お主の逆ギレはどこぞの皇帝すらとも同価値よ
そして等しく妾にボコられるがよい!

そして妾はお主の本気が見てみたいぞ
そら、好きに食って己を高めるがよい、その上で真っ向ぶつかってやろう
理由など至極単純よ、その方が動画映えするであろう?
妾もどこまでも本気で、そのためなら命を賭けられるぞ

さあ邪神のオーラよ、喰い出のある輩が眼前にあるぞ
存分に喰らいつくしてやれ!
攻撃を回避する気は無い、受け切って耐える!
はーっはっはっは! この程度、余裕綽々よ!
(痛がるなど、カッコ悪いことはせん!)



「How! Deep! Are! You! Seriooooooooooooooous!」
「ハッ! なかなかの根性を見せるではないか、お主。そしてその泣き声、まさしく三千世界に轟くようだな」
 御形・菘は怪人を正面から見据えていた。瀕死の傷を負いながらもなお、手の届くモノを破壊すべく立ち上がった、その怪人を。
「苦労しただろうのう。悲しみも。死ぬような目にあって、そして滅んだのだから。
 だが。妾は怪人、オブリビオンどもの悪行やら思想に、優劣をつけることはせんからの。お主の逆ギレは、ゆえにどこぞの皇帝すらとも同価値よ。
 同価値で、即ち無価値――」

「――嗚呼、素晴らしいではないか!」
 菘は邪神のように笑った。両手を打ち合わせて、ひとり、喝采を送る。

「要はただの自分勝手な羨望と嫉妬だ! そこまで恨めしいか! 憎いか!」
 挑発するような視線を、下からねめつけるように浴びせる菘。肩で息する怪人は、追い払おうと腕を振るが、菘はそれを軽く突き放して言う。
「ならば、妾はそんなお主の本気が見てみたいぞ! ええい見せよ!
 そら、今のうちにバーガーでもポテトでも好きに貪って、己を高めるがよい」
 手放しで後ろを向いた菘は、すたすたと十分な距離をとった。他の猟兵たちは成り行きを見守っている。何か、シンパシーのようなものが、そこに有るように思えた。
「(手出し無用。始末は付ける)」
 菘がこっそり周りに伝えている間に、怪人は隠していたバーガーセットを全て取り出した。力を振り絞って、包み紙ごと飲み下す。ひとつ、またひとつと肥大化していった。
「Bhoooooo...」
 表情の見えない怪人の顔面が、熱い息を吐く。
「さて……勘違いしておるだろうところ悪いが」
 菘はビルの隙間を埋めるほどに太った怪人を上から見下ろして、言った。
「妾は別に、お主に全力を出させてスカッとさせてあげようだとか、暴れて未練を晴らせばおとなしくなるだろうとか、そういうことは全然思っておらんぞ。
 ――理由など至極単純よ。単に、その方が【動画映えする】であろう?」
「Movies...」
「……ン?」
「I donno your movies also!(テメェの事情も知ったこっちゃねぇよ!)」
 ズシィイイイイン!
「うぉわああああああ!?」
 怪人の一歩がもたらした振動で、菘はバランスを失った。それが三度四度と連続する。突進だ。菘は蛇の下半身を手近の標識に巻き付けて迎え打つ。
「Huh! I feel the same pain!(ハ! 痛ェんだ、こっちも!)」
 瓦礫が降ってくる。めくれ上がるアスファルトと、根本から崩れる電信柱と。
「はーっはっはっは! よいぞお主! 撮れ高バッチリだネ! その上で!」
 そんな怪人の致命的な突進を、しかし、菘はまるで避ける気はなかった。
 正面から迎え撃つ。そうしなければならない。
 なぜなら。
「……その上で、妾の本気も見やれ。
 妾も動画にどこまでも本気で、そのためなら命を賭けられる!」
 逆にそうしなかったら動画にできないからだ。ここまで苦労してそれはない。
「さあ、邪神のオーラよ、喰い出のある輩が眼前にあるぞ! 存分に喰らいつくしてやれ!」
 と突き出された菘の右腕には、なにやら謎の黒い物質が纏わりついている。指先から垂れる血を黒い物質が吸い込むと、瞬間的に磁性流体と似た挙動を見せ始めた。
「Eat these till you explode!(食らって爆ぜな!)」
 迫る怪人の拳。ばしゃんと、受け止めた暗黒物質が弾けた。本体まで届く衝撃に、にやりと笑う菘。当然、痛い。ものすごく痛いが我慢する。
「(痛がるなど、カッコ悪いことはせん!)」
 やりきった。と、磁性流体状暗黒物質が、元の形状に戻っていく。その過程で、怪人の拳が、次いでその全身が、あの暗黒の中に飲み込まれた。
「Baaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
「――なら、これで!」
 暗黒の中で、怪人は絶叫する。菘はその暗闇を一旦己から切り離すと、ぱん、と柏手を打った。
 ……それっきり、だ。
 内側へと収縮した暗闇は、それっきり消え去ってしまった。おそらく、中にいた怪人ごと。菘は映像撮影用ドローン『天地通眼』に向き直ると、戸惑ったようにピースサインを贈る。
「さ、最後はちょーっといまいちだったかな?」
 そんな菘の戸惑いに、しかし答えるコメントは再生されていなかった。天地をためつすがめつ、正常動作していることを確認し、菘はドローンの再起動を掛けて、この場を去る。

 ――あまりのアクセスがあったため、配信サイトのサーバーが全滅していたことが判明するのは、もう少しだけ後のこと。
 この戦いの映像にどれだけの『反響』があったのか、猟兵たちが知るのも、やはりもう少しだけ後のこと――。

"How deep are you serious?"

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月18日


挿絵イラスト