銀の雨降るこの世界に、銀ではない雨が降る。
朝から降り続く梅雨の雨粒は、夕刻になっても止む気配を見せない。
……下校途中の女学生たちが、雨音に紛れぬよう身を寄せ合って噂話に興じている。
「ねえ、知ってる? ●×公園の女子トイレの噂っ」
「あー、聞いたことあるかも? 確か……一番奥の個室を使うと、違う世界に連れて行かれるとか?」
「そう、それ!」
「まー、よくある怪談話だよね」
「……でも、一週間前? 二週間前だったかもしれないけど……そのトイレの近くで、服がビリビリに破かれて、何か……おかしくなっちゃった子が見付かったんだって!」
「……マジ?」
「私もお姉から聞いただけなんだけど。……お姉も大学の友達の友達から聞いたらしいし……」
「――なぁんだ、よくあるパターン! ほら急ごっ。バイト遅れちゃうよ!」
「あ、待ってよ!」
水溜まりを蹴立てて駆けていく少女たちは、気付かなかった。
勢いを増す雨音に紛れて、啜り泣くような声が響いていたことに……。
出所は彼女たちが通り過ぎた公園の奥……。
その公園の入口では、『●×公園』の文字が雨に濡れていた――
「あっ、あっ、あっ、あっ……あっ、あっ……!」
彼の公園の片隅に設置された公衆トイレ。赤い女子用のマークの掲げられた入口を潜って一番奥の個室。多目的トイレも兼ねており、他の個室より一際広いその中で――
「あっ、ひぃっ……!? んっ、んっ……! はっ、離し、なさい……っ」
猟兵、斎藤・斎(人間賛歌・f10919)は苦境に立たされていた。
床に跪いた彼女の肢体に、衣類は既に残骸しか纏われていない。白磁のように滑らかな肌には汗が幾筋も流れ落ち――虫刺されの如き赤い跡が無数に並んでいる。
何より――その健康的な太股の間には吸盤に塗れた蛸のような触手が滑り込み、斎の秘裂をほじくっていた。
……斎の下の床に、雨粒ではない雫がぽつ、ぽつ、と落ちる。
「んっ、ひっ、あっ、ひゃっ、ひぁっ……!?」
薔薇の花弁のように入り組んだ斎の肉襞を掻き分け、触手が彼女の恥ずかしい洞窟の奥へ忍び込んでいく。敏感な肉壁が触手の先端になぞられ、吸盤に口付けられ、斎の腰がビクンッと跳ねた。
その様を蓋の閉じられた便器に腰掛け、童女にすら見える小柄な女が楽しげに眺めている。彼女の掌中では、斎の得物のコンバットピストルが玩具のようにクルクルと回されていた。
(……ゆ、油断しました……)
金の瞳で女を睨み、斎は歯噛みする。
このトイレに囁かれる噂……それがオブリビオンの仕業ではないかと疑いを持ち、調査に訪れてみればビンゴだったのだが――
「ふふふっ、『その子』もあなたを気に入ったみたい♪ 仲良くしてあげてね★」
「だ、誰が――あっ! あぁああああっ!?」
女の戯言に反論しようとした斎から悲鳴が迸る。
彼女の形の良い臀部、その渓谷に隠された菊の如きすぼまりに触手がメリメリと突き刺さっていった。……一本だけではない。一本目に遅れじと二本目が捻じ込まれ、さらには三本目も隙を窺うように待機している……。
「やっ……やめっ……! お尻、壊れ――んぁああああああああっっ!?」
「あはぁっ……イイ声で啼くね、おねーさん♪」
三本の触手で直腸を掘削される斎に、女はうっとりと目を細める。その身の局所のみを隠す蛭染みた触手が、まるで別の生き物のように蠢いた。
女は『リリス』――このシルバーレインの世界で、快楽の内に死んだ女性の残留思念が変じた淫猥なるゴースト……正確にはそのオブリビオンである。
本来なら、歴戦の猟兵である斎が一対一で敗れるような輩ではなかったのだが――
「あっ! あっ! あぅっ! あぁっ……!」
……遂に斎の身体を持ち上げ、彼女の下半身を前後から突き上げ始めた触手の大元……蛸と呼ぶにはあまりにおぞましい異形の生物が美貌の女猟兵の誤算だった。
相対する斎に察せられぬよう、静かに、けれど手早くリリスによって召喚されたその化物は、リリスに意識の大半を集中させていた斎を死角から襲い……たちまち彼女を無力化したのである。
……ユーベルコードを封じる特性を有していたのだろう。数え切れぬ触手に拘束された斎は、抵抗の術を失ってしまった。
そして――今に至る……。
「あっ、あっ、あぅっ、あぅぅんっ! はぁっ、やぁっ、やっ、あぁっ!?」
宙吊りにされ、長い脚線美をMの形に開かされた斎の下肢で、前と後ろの洞窟が交互に辱められる。床に飛び散る飛沫は、双方の穴から触手によって掻き出された彼女の体液に他ならない。
主に向けて捕らえた獲物の痴態を捧げる触手生物に、その主人たるリリスも食指を動かされたらしい。
Cz72を便器の上へ置き、その持ち主の女猟兵へ近付いた。セミロングの漆黒の髪を振り乱す斎の、プルンプルンッと弾む乳房を細い指で鷲掴みにする。
「んんっ!?」
「わあっ♪ おねーさん、こんなに乳首ピンピンにさせてる! 実は楽しんでるでしょー?」
「そ、そんなわけ……ひゃぁんっ!?」
弁解しようとした斎の綺麗な形状の双丘が、リリスの五指で淫らに形を歪められる。珊瑚から削り出されたような先端の突起が、淫魔の口に含まれコリコリと甘噛みされた。
「あっ、あぅっ、ひんっ……!」
斎の四肢がピクッ、ピクンッ、と頼りなく震える……。
「こっちはどうかなー? わわっ、乳首に負けないくらい♪ この好きモノー★」
「やっ!? ――あひゃぁぁああああああああああっっ❤」
リリスが触手により凌辱される斎の股間へ手を遣った。そこに存在する真珠の如き肉の豆――それを無遠慮に摘まれた瞬間、斎の背筋が反り返る。
甘い悲鳴をこだまさせ、全身に痙攣を走らせる斎……。触手を咥え込んだ女洞からそれでも大量の蜜が噴き出し、トイレの床に淫靡な水溜まりを作り出した。
「……ぁ……っ…………わ……私……」
リリスと触手に隠しようも無い絶頂へ導かれてしまった斎は、放心した様子で荒い呼吸を繰り返す。
そんな彼女の股間から、そこを占拠していた触手が抜け落ちて――
「すっごいイキッぷりだったね★ ――でも、ここからが本番だよ♪」
「……え? …………っっ!?」
斎の胸の傷痕を撫でるリリスの弁に、女猟兵が目の焦点を合わせてみれば――その先に一際太い触手が一つ。脈打つ血管を無数に浮かべたそれの先端の形状は……男性器に酷似していた。
「まっ……待って下さい! それは、もしかして――」
「待たないー! ヤッちゃえ★」
「――あ、あぅううううっ……!?」
ずぶずぶと、先程よりも巨大な触手が斎の女陰へ埋没していく……。力強く自分を埋めていく存在感に、斎の裸身に汗の玉が浮いた。
「あ、あ、あ、あ……あぁんぁああああああああっ……!?」
触手の吸盤に乳首を吸引され、触手の群れに繰り返し肛虐されながら、斎は自分の女性生殖器を異形の男性生殖器が占領していく事実に悲痛な声を上げた。下腹部に感じるドクンッ……ドクンッ……という自分のものではない脈動に、背筋に冷や汗が伝う。
ここからは――生殖行為なのだ。
「あんっ……! あぅんっ……! はぅんっ……! ひゃぅんっ……!!」
怪物の生殖用触手が、斎の中で律動を開始する。その切っ先が自身の奥を叩く感触に、斎の目尻に見る見る涙が浮かんだ。
「やぁっ……! 駄目ですっ……! お願いっ……! あぁっ……! お願いですからっ……! 抜いて下さっ……あぁっ……!!」
「だめー♪ ふふふっ★」
斎の懇願に、リリスは楽しげに否と返した。指先で斎のへその下辺りを撫でながら、待ち遠しいというように唇の端を吊り上げる。
「ねぇ、知ってる? 人間の男のオタマジャクシは、女性の体内で三日くらいしか生きられないんだよ。じゃあ、この子のオタマジャクシはどれくらい生きられるでしょうかー?」
「はぁっ、はぁんっ! …………っ?」
質問の意図が解らず、喘ぎながら疑問符を浮かべる斎。
「――半年くらい生きられるって言ったら、おねーさん信じる?」
「……ぃ、いやぁぁああああああああああっっ!?」
それの意味するところを悟って、斎は絶叫した。
半年間――その間に斎に訪れる『命を授かれる日』は何度あるか? 一年の半分もの期間、胎の中に居座られれば決定的に起きてしまうだろう事態を想像し、斎は落涙する。
……けれど、それが関の山だった。いつしか彼女の全身は余すところなく触手に絡め取られ、柔肌に吸盤のキスを雨あられに浴びている。やがて来たるその時まで、淫らで残酷なオブリビオンの供物となるしか道はなかった。
「あっ、あっ、ひゃっ、ひぅっ、くっ、くぅっ、くぅんっ、くぅぅんっ……!!」
リズミカルに出入りする生殖触手に合わせ、斎の喉から苦しげな吐息が漏れる。だが……徐々にそれは媚びたような響きを帯び始めた。
「んっ❤ くぅっ❤ はっ❤ はっ❤ はぁっ❤ はぁっ❤ はぁっ❤ はぁんっ……❤」
……元より純潔ではない、20代のオンナのカラダ――それがこうも執拗に掘り返されたのだ。女の悦びを掘り起こされてしまっても仕方が無いことである……。
「あっ❤ あぁっ❤ そこぉっ❤ 駄目ですぅっ……❤」
子を育む宮殿、その門をコツ、コツ、とノックされ、斎が嬌声を上げた。そこに存在する性感帯をグリグリと抉られ、閉ざされているべきその門は、段々と閂を緩めてしまう。
「あっ、あっ、あっ、あっ❤ ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃぁっ❤」
繁殖の為の触手に出たり入ったりされる斎の秘孔から、泡立ち白く濁った液が溢れる。それは、斎の心とは裏腹に、肉体の方は赤ちゃんを宿す準備が万端である証拠であった。
そして、とうとう――その瞬間は到来する。
「ひぅぅんっ!? だ、駄目です、からっ……❤」
今までで一番強く、深く、触手が斎を突き上げる。鈴の形の先端が、斎の赤ちゃん用の部屋の入口と密着した。慎ましくも微かに隙間を作っていた扉の奥で、斎の女性的中枢がキュンキュンと疼く――
次の瞬間――生命の素が大噴火した。
「嫌ぁっ❤ 駄目ぇ、駄目ぇ、駄目ですぅっ❤ あぁっ❤ ああぁっ❤ ああぁぁぅうぁああああああああああああああああああああ~~~~~~~~~~❤❤」
高く、甘く啼き、斎が昇天した。触手に絡め尽くされた女体が末期のように打ち震える。
彼女は己の下腹で、何千億、何千兆に達する触手の生殖細胞の放出音を聞いた。……リリスの言い分通りなら、取り返しの付かない事態の発生を告げる警報音……。
「あっ……❤ あぁっ……❤ 駄目、なのにっ……❤ ……ぁんっ……❤❤」
……だけれど、自分史上稀な大快楽を味わい、多幸感に包まれた今の斎には、それは福音の鐘のように聞こえてしまうのだった……。
……この後、自分の胎内で触手の遺伝子たちが泳ぎ回るのを感じながら、リリスと触手に犯し抜かれる終わりの見えない時間を過ごした斎……。彼女が一瞬の隙を突いて愛銃を取り戻して逆襲するまで、まだ半日以上掛かる……。
……覆しようの無い妊娠が待っているというリリスの説明が真実かブラフなのかも、今はまだ神のみぞ知る……。
成功
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