●墓に着物は着せられず
「金など無くても信心があれば|天国《ぱらいそ》へ行ける!」
「才能など無くても何度も挑んでいれば一度くらい成功する!」
「体が貧相でもそれはそれで|価値がある《すてえたす》!」
口々に叫ぶ男たち。ガリガリに痩せた体にボロ布のような着物を纏った貧乏神の如き大集団だが、その背後にいるのは上物で重厚な和服の女と、荘厳な洋装の美少年。
「テメエ……わざとだろ? わざとやってんだろ!」
「さあ、何の事やら?」
怒りの形相で掴みかかる女と、馬鹿にしたような表情でそれをかわす少年。何やら少年の後ろには、白髪の男が揺らめいても見える。
少年はサムライエンパイアのオウガ・フォーミュラ『クルセイダー』。しかし陰陽師『安倍晴明』を憑装しようとした彼は逆に体と命を奪われ、『晴明クルセイダー』の器とされてしまったのだ。
そして女は、晴明が自らの力である『生殖ゾンビ』の作成とクルセイダーの力である『超・魔軍転生』を用いて作り上げた、肉体を持った魔軍将『日野富子』であった。
世界のあらゆるものに敵意を向ける日野富子だが、今回の怒り方はなんかいつもと違う。
「よりによって! なんで貧乏神の後ろにアタシをつけんだよ! 絶対もっといいヤツいただろ!」
「まさかそんな。それにほら、彼らの能力はお金だけでなく性格とか体型とかも貧しくしてしまうようですが、あなたお金以外は元々そんなに……」
「うるせぇ着物が分厚いだけだ! じゃなくてやっぱわざとじゃねーか!」
怒り狂う日野富子に、あからさまに相手を煽り倒す晴明クルセイダー。
「貧すれば鈍するですな富子様!」
「ご安心ください富子様の貧なる御身は我々がお守りします!」
「錦は着てても心はボロ、そんな富子様こそ我らを統べるに相応しい!」
「うるせぇぇぇぇぇ貧してねぇぇぇぇぇ!!」
貧乏神軍団が富子に忠誠と信仰をアピールし、富子がまたそれにブチ切れる。
「ほらほら早くしないと憎い猟兵たちがきてしまいますよ? この城落ちてしまったんですから。あの豊かな女のせいで」
「最後のそれいらねぇだろうがよぉぉぉ!!」
●今はゾンビも|着飾《憑装す》る時代
「初めまして。ゾンビーヌと申します。今回はわたくしが予知を伝えさせていただきますわ」
赤毛に緑の肌のゴスロリ少女、ゾンビーヌ・ロッテンローズ(元カルト組織「リビング・デッド魔導会」の腐薔薇姫・f40316)が猟兵たちを前に挨拶する。
「世界はサムライエンパイア、相手となるのは『クルセイダー』なる方とその配下ですわね」
サムライエンパイアのオウガ・フォーミュラ。その決戦の時だが、ゾンビーヌの方に気合を入れている様子はない。
「場所は|魔空原城《まくうはらじょう》。元々は空に浮かんでいたお城ですが、今は鎖で地上に引きずり下ろされているようですね。まずはこの城の門前で、『超・貧乏神』というオブリビオンの大集団と戦ってくださいまし。彼らは金銭のみならず、肉体や知性、技術などあらゆるものを『貧しく』する能力を持っていますわ」
守りを崩された城から打って出る敵兵の大集団、まさに戦国の戦の如し。敵も地上に降ろされたとはいえそう簡単に城に猟兵を入れるつもりはない、ということか。
「こちらの方々は『島原一揆軍』という人たちをゾンビ化させたものを素体にしており、その体は非常に頑丈です。首をはねたり腹を裂いたくらいでは多分死にませんので、四肢がバラバラになるくらいには粉砕しないと倒せません。また上役に対する信仰心が非常に篤く、本当に動けなくなるまで前進を続けますわ」
彼らにとっては戦って死ぬことこそ最大の名誉であり天国への道。そのため塵になるまで戦いをやめることはないだろう。
「彼らを駆逐し城に入れたら、大広間で『日野富子』という女性が待ち構えていますわ。彼女はクルセイダーが作った『生殖ゾンビ』という肉体を持って『魔軍将ゾンビ』となっており、かつて『大悪災』と呼ばれた全盛期の力を取り戻しているそうです。特別な仕掛けはありませんが、とにかくひたすら強いようですわね」
クルセイダーが憑装として大量召喚していた彼女が、ついに肉体を得て本来の力を取り戻した。その実力はかつてのエンパイア・ウォーの時以上と見て間違いなかろう。
「彼女は猟兵はもちろん、配下の貧乏神や上司のクルセイダー、他にもとにかく目に入るもの全てに対して怒っているようですわね。ゾンビとは思えないくらい生気にあふれてますわ」
欲と怒りだけで世を戦国に導いた女。ゾンビになった程度でそれが薄れるなどありはしないだろう。
「で、彼女を倒して城の奥へ行けばクルセイダーと戦えますわ。ただ彼は既に『安倍晴明』という方に殺害されてその体を乗っ取られており、いいように体を弄ばれております。美少年への闇イケメン鬼畜責め、と認識して間違いありませんわね!」
いきなり声が大きくなるゾンビーヌ。どうやらこいつが腐っているのは体だけではないらしい。
「意識は完全に晴明のもので、本人も『晴明クルセイダー』なんて名乗っています。つまり晴クルですわね。状況からしてリバは不可でしょう。語呂はいいけどクル晴はNG。彼らはクルセイダーの肉体と晴明の霊魂を同時に動かし、違うユーベルコードを二つ放ってきますわ」
私情で混ぜてるいらん情報を抜いて考えれば、実質二人を同時に相手取るような状況。そして一つでも必殺技と言えるユーベルコードの二回使用。まさに反則技尽くしのこの強敵、無策では到底破れまい。
「どうやらクルセイダーも肉体は|生ける屍《リビングデッド》と言っていいような状態。前の敵と合わせ、方向性は若干違いますがアンデッドとの三連戦とも言えますわね。ついでに晴明クルセイダーの目的も魔軍将ゾンビの量産だそうですわ。何から何までゾンビ尽くしですわね。だからわたくしの初予知にこれが回されたのでしょうか」
実際そんなところなのだろうが、相手は失敗したらサムライエンパイアがヤバい大物である。本人はただのゾンビ軍団としか思っていなさそうなので、その辺りは知らぬが仏だろう。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。影が薄いまま逝ったクルセイダー君に合掌。
今回はサムライエンパイアでオウガ・フォーミュラ(故人)戦です。
第一章では|魔空原城《まくうはらじょう》の前で『超・貧乏神』との集団戦。金銭のみならず技能や肉体、知性や品性まで貧しくさせてくる技を持っています。彼らは狂信的な信仰心を持つ上安倍晴明によってゾンビ化されており、ちょっとやそっと破壊したくらいじゃ死にません。やりすぎなくらい殲滅する必要があります。
第二章では場内に突入し、大広間で『大悪災『日野富子』』とのボス戦。彼女は晴明作の『生殖ゾンビ』の肉体を持つ『魔軍将ゾンビ』で、視線や引っかき、火矢で攻撃してきます。特殊ギミックはありませんが、全盛期の力を持っており非常に強いです。相変わらず天地万物に怒っていますが、今回はちょっと怒りの方向性がいつもと違うかもしれません。怒りのボルテージは最初から振り切れているので煽って効果があるかは不明。
第三章では原城最奥、美しき「ぱらいそ礼拝堂」にて『憑装猟書家『晴明クルセイダー』』とのボス戦。意識はほぼ完全に晴明のものですが、クルセイダーの肉体と晴明の霊魂の双方が動いて『別種のユーベルコードを二つ』使ってきます。
使用してくるUCは一つは能力値行動に応じたもの、もう一つは『能力値行動の一つ下のもの(POWならSPD、SPDならWIZ、WIZならPOW)』となります。ただしどちらがどちらを使ってくるかは分かりません。
この『二回攻撃を打ち破る方法』を実行することでプレイングボーナスとなります。どちらもUCであること、二人いるけど肉体と意識はそれぞれ一つしかないこと、クルセイダーはオウガ・フォーミュラの中では未熟者だったなど、その他彼らの特徴などから色々考えてみてください。
この決戦シナリオを合計「20回」成功すれば、完全にオウガ・フォーミュラを滅ぼすことができます。クルセイダーはもう死んでいますが、晴明が能力ごとめっちゃ動かせますので生かしておくと確実に禍根になります。
それでは、ゾンビを土に返すプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『超・貧乏神』
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POW : ドゥェッヘッヘ! お前達の身体を貧相にしてやろう
【指定した肉体の部位を貧相にする光線】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : どんな技術も、私の前では素人以下になるのだぁ!
自身に【金属を高速で腐食させるオーラ】をまとい、高速移動と【指定した技能のレベルを0にする光線】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 貧すれば鈍する! 頭も心も貧しくなるがいい!
【知識を奪う光線】【記憶を奪う光線】【性格を下劣にする光線】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
イラスト:仁吉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鎖に繋がれ地に落ちた魔空原城。オウガ・フォーミュラたるクルセイダーの居城であるそこから、貧相な身なりの男たちが大量に湧き出ていた。
「クルセイダー様と富子様がため!」
「富める者は貧しく、貧しきものはより貧しく」
「お前も貧相にしてやろうかぁ!」
口々に叫ぶ男たちは『超・貧乏神』その名の通り周囲のあらゆるものを『貧しく』する力を持ったオブリビオンだ。
しかもただのオブリビオンではなく、クルセイダーの肉体を乗っ取った晴明が『島原一揆軍』を素体として作り上げたゾンビ軍団でもある。
彼らはこの原城を守る番兵であり、同時にクルセイダーを盲目的に進行する狂信者。
金も命も品性もない代わりに、不死の肉体と不尽の信仰心を持つ彼ら。その身が塵となるまで進軍を続けるだろう。
「訳の分からぬ力を持って奢る者どもよ、その力全て忘れさせてやろう!」
「無駄に美男美女ばかり多い猟兵どもめ、そんな役に立たんもの捨ててしまうがいい!」
「世界のためなど御大層な理念掲げおって、その性根地に擦れるまでひん曲げてくれるわ!」
あらゆる豊かなるものを憎み、貶めんとする貧乏神の群れ。猟兵よ、この様な連中に目線を合わせている暇はない。この性根まで腐ったゾンビどもを骨も残らず粉砕し、原城へ乗り込む道を開け!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
或る意味、対極に位置する相手ですからねぇ。
何とかやってみましょう。
『FAS』を使用し飛行、『FLS』の空間歪曲障壁を展開し通常攻撃に備えまして。
【仰域】を発動し『乳白色の波動』を纏いますねぇ。
貧乏神さん達の『光線』は『非実体&攻撃手段のUC』と、吸収し易い条件を全て揃えておりますので、数や質が高くても問題無く吸収可能ですし、性質上『本来貧相にする筈の部位が福相や豊満になる』可能性が高く、意地で同様の攻撃を繰返す可能性も高いですぅ。
後は、吸収した分を此方の強化に変換、『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FES』の炎の魔力矢、『FDS』の[爆撃]等を重ねて焼き尽くしますねぇ。
地に落ちた魔空原城。その前に大量に湧きだしているのは、やせ細った体にボロを着た貧相な集団。
その『超・貧乏神』達を前にして、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は思う。
「或る意味、対極に位置する相手ですからねぇ、何とかやってみましょう」
自覚通り、その身はまさに『豊か』という言葉をそのまま形にしたかの如きもの。飛行しながら貧乏神を見下ろするこるだが、そんな相手が現れれば貧乏神たちも当然黙ってはいない。
「何だあの無駄に豊かなものは!」
「そんな贅肉ない方がすっきりしよう!」
「貧極めし富子様のために!」
本人が聞いたらまた怒鳴りそうな事を言いながら、貧乏神たちは持っていた杖を振り上げ一斉に光線を発射した。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて供物を捧げましょう」
その光線に合わせ、るこるは【豊乳女神の加護・仰域】を発動。乳白色の波動を纏いその光線を受け止めた。
敵の攻撃を吸収するそれによって光線を吸い取り、その力を自身の体に蓄える。そうすると、るこるの元から豊かである胸や尻がさらに膨れ、遠目にも観測できる球体となる。
「な、なぜだ!?」
その状態に驚愕の声を上げる貧乏神。攻撃を防がれたということはもちろんだが、その驚きの理由はそれだけではない。
彼らの光線の効果は、指定した肉体の部位を貧相にするというもの。もちろん彼らが指定したのは嫌でも目立つ乳と尻である。それが膨れるということは、つまり効果が真逆になって現れたということだ。
実際には吸収した力でそこを膨らませるのはるこるの常套手段であり、彼らの力が逆転したとかそういうことではないのだが、傍目にはそう見えてしまうのも致し方なし。
そしてそこに蓄えられた力をるこるは兵装に乗せて打ち返す。二種の砲撃能力を持つ兵装が砲弾をばらまき、貧乏神たちを砲撃した。
爆音とともに地上が炸裂し、貧乏神たちが爆砕される。だが、その土煙が晴れた時。
「おのれ……怯むな、撃て、撃てっ!」
貧乏神たちはほとんど倒れることなく、光線を打ち返してきた。倒れていないと言ってもその体は無傷ではない。手や脚は当たり前のように取れ、首がなくなっている者、体が半分消し飛んでいる者までいる。それでも、彼らは一切怯むことなく攻撃を繰り返している。
彼らは島原一揆軍を素材に晴明が作り上げたゾンビ。痛覚のような戦いの邪魔になるものは当然除去されており、また元々生きていないのだからどこが壊れようが死ぬことなどない。そして彼らの精神はクルセイダーと富子への忠誠と狂信で満たされており、肉体が壊れることへの恐怖を感じる余地もない。
まさに不死の軍勢と化した貧乏神たち。その不死性に任せた全身でひたすらに攻撃を繰り返すが、一方その狂気は効かない攻撃を闇雲に繰り返し、目の前の豊かなものを貧相にしてくれようという盲信にばかり囚われている。
結果としてそれは吸収されることになるのだが、るこるの方にも些か違和感が。
「あまり相性は良くなさそうですねぇ」
膨れている乳尻の感覚だが、なんかいつもと違う。妙に中の詰まってない感覚があるというか、なんとなく偽乳っぽい。
攻撃の種類として吸収は容易だったが、恐らく相手の攻撃の質がとことん自分と真逆を行くもの故、変換効率が極度に悪いとかそんなところだろう。自分には縁あるまいと思っていたその感触を味わいつつ、しかしるこるも攻撃は緩めない。
炎の魔力矢、爆撃と言った火炎を伴う攻撃を重ね、相手を文字通りに灰燼に帰そうとするるこる。その攻撃はゾンビ化した貧乏神たちを火に包み、火葬していく。
クルセイダーが属するイメージのある神の教えでは、死者は最後の審判の時に蘇るため火葬は禁忌とされている。しかしその蘇りがこの貧乏神たちのような形であるなら、それは拒絶してしまった方がいいだろう。
豊かな身に宿った虚ろな力を籠め、るこるは地上をなぎ払う。そしてその身が貧しきを越え塵となって、ようやく貧乏神たちは攻撃を止めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
桃園・陽明
なんて酷い…
でも、これを止めないと!
「聖愛戦士、ピンクアムール!」
高所から名乗りと共に決めポーズ!
そして飛び降りて敵の注意を惹きつけ、進軍の足を止める
そしてアムリボンで【なぎ払い】や【ロープワーク】で絡め取ったりしながらアムレーザーの【誘導弾】【エネルギー弾】で仕留めていく
そして一箇所に集まったところへ【アムレーザー・バスターモード】でトドメ!
自分の肢体に誇りを持っているため、敵UCはなるべく回避!
もし受けてしまったら
「きゃあああ! 私の身体が!」
少女漫画的エフェクトと乙女の怒りと共に最大出力の【アムレーザー・バスターモード】で報いを与えます
一度なぎ払われても、原城から次々貧乏神は湧き出てくる。やはり未熟とはいえオウガ・フォーミュラ、クルセイダーの支配力は相当なものだったということだろう。さらに生きているものだけでなく、今まで死んだものであってもそこそこ形の残った死体さえあれば晴明がゾンビ化させて無理やりにでも使ってしまう。
「なんて酷い……でも、これを止めないと!」
命を冒涜するその行為に、桃園・陽明(ピンクアムール・f39180)は戦慄しながらも立ち向かうことを決意する。本来は戦隊ヒーローの一員であった彼女だが、チームでただ一人猟兵となってしまったため異世界の事件には己一人で立ち向かうことを余儀なくされている。
それでも、自分にしかできないことなのだから自分がやらなければならない。
「聖愛戦士、ピンクアムール!」
陽明は高所に立ち、堂々と名乗りを上げて着の前にその姿を見せた。敵の視線が自分に集まったのを確認し、そこから軽やかに跳躍して華麗な着地を決める。
「豊かな身に高い身体能力……こいつは貧相にしてやらねば!」
それは当然敵の注目を浴び、標的とされることとなる。だが、それは陽明とて望むところだ。
ヒーローとしての武器、『アムリボン』を振るいまずは前の一団をなぎ払う。一見すれば新体操用の布リボンにしか見えないが、特殊金属でできたそれは布の軽さと金属の強靭さを併せ持ち、貧乏神たちの細い体を簡単になぎ倒した。
「この程度で我らが怯むと思うな!」
それでも、貧乏神たちは起き上がり次々手にした杖を振りかざす。そこから放たれる貧相光線を避けながら、陽明は今度は相手を捕らえ、動きが鈍った所にビームキャノン『アムレーザー』を放った。
光線銃が貧乏神の胸の真ん中、心臓がある所を貫き風穴を開けるも、相手は死ぬどころか痛がる様子すら見せない。
「これは、やはり……」
ゾンビ化したが故の不死性。貫通系の攻撃は効果が薄いようだ。ならばやはりこれと、陽明は相手の周りを駆け回りつつ、リボンと誘導弾に切り替えたアムレーザーでの攻撃を繰り返す。
「その動きもいつまでもつかな? 豊かな身体も使い過ぎれば底をつく!」
光線を繰り返して発射し、貧乏神たちは陽明を捕まえようとする。狙いこそそこまで正確とは言えないが、集団で撃ち続けられればその数から全てをかわしきるのはかなり骨の折れることだ。
そして貧乏神の言う通り、いかにヒーローとして鍛えられた体であってもこれだけ動けば疲れは出てくる。光線の避け方も少しずつ余裕がなくなっていき、彼女のスピードにも衰えが見え始めた。
「ドゥェッヘッヘ! さあ、そろそろおしまいだ!」
貧乏神の余裕の台詞。だが、それは陽明もまた同じことであった。
「そうですね……これくらいならもういいでしょう!」
回避を止め、しっかりと貧乏神の方を向く陽明。その目の前には、現れた時より密集した貧乏神の集団があった。
逃げ回る陽明を追い、貧乏神は全員が同じ動きで同じ方を狙い続けた。それは貧乏神たち全てを同じ方向に集中させていき、さらにそこに誘導と拘束攻撃で調整をかければ貧乏神たちのおしくら饅頭のできあがりだ。
自身に注目させ進軍を止める最初の大見得。そこからが全て策の内であり、この最後の時のためであった。
「愛を知らない悪い子にはおしおきよ!」
構えたアムレーザーが重武装モードに変形。これまでと比較にならないエネルギーがそこに充填されていく。
敵を殲滅する一撃。だが変形によって移動速度が下がった所に、敵の攻撃もついに殺到してしまった。
「きゃあああ! 私の身体が!」
それを受け、陽明の体が縮んでいく。胸は平らに、尻も形悪く小さく、まさに貧相と言える体。
「グエッヘッヘ! いい体になったなぁ!」
それを見て勝ち誇ったように笑う貧乏神。だが。
「……もう許せません! おしおき!」
そのままバスターモードのアムレーザーが放たれる。貧乏神たちの光線は体を貧相にする……つまり、外部武装であるアムレーザーには関係ないのだ。
キラキラの少女漫画的エフェクトがいい感じに貧相な体を隠し、そのまま乙女の怒りと共にバスターが貧乏神たちを消し飛ばす。
「うぅ……さ、作戦成功……」
自らを囮としての勝利の後、陽明はなるべく見える面積が減るように自分の体を抱いてそこにしゃがみ込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
蒼井・美奈
『NGなし・アドリブOK』
苦手なのよね、ゾンビ映画
だから手っ取り早く行くわよ!
【ダッシュ】と【フェイント】で敵を翻弄しながら髪の毛の【切断】や【貫通攻撃】、【ルミナオーバーロード】でゾンビたちを完膚なきまでに抹殺していく
意気込んで突っ込んだはいいけど、さすがにこの数を相手にするのは骨よね
って、きゃあっ!
(貧乏ビームが美奈に命中!)
この…!
(体勢を整えようとしても追撃を次々と受け)
あ~、何だかどうでもよくなってきちゃったぁ~
(正義のヒロインとしての矜持も使命感も消去され、すっかり快楽だけを求める下品で淫らな痴女に成り果てた)
あへぇ、気持ちイイ…❤(自分の胸を揉みながらもはやただの棒切れとなったブルーコメットの柄で自慰を始める)
そうだ、イイ事考えちゃった❤
(金色のツーテールがほどけ、美奈の全身を這い回る。特に弱い所や敏感なところは念入りに)
ひゃあん、これ、すごいぃ…
(ブルーコメットの柄を今度はお尻に突っ込みながら全身から与えられる快感に身もだえしている。もう彼女は快楽の事しか頭になかった…)
魔空原城から次々湧きだして来る、襤褸を纏った血色悪い男の集団。それはさながらアポカリプスヘルでは日常の、ゾンビパニックのようでもある。
サムライエンパイアのこの地に置いては見慣れぬ光景だが、安倍晴明が作り出した特殊なゾンビを使って行われているそれは、相手が人並みの知性を持っているということもあり下手なゾンビパンデミックよりたちが悪いと言えるかもしれない。
「苦手なのよね、ゾンビ映画。だから手っ取り早く行くわよ!」
蒼井・美奈(ルミナサファイヤ・f38072)はその光景にげんなりしながらも、貧乏神の群れの前に立つ。
「また何ぞ来おったか、貴様も貧相にしてくれよう!」
きらきらしいその身は貧乏神の注目を集め、早速ビームの嵐の的とされた。
しかし、その光線を美奈は素早く躱す。素早くは知って回り込むよう動けば、光線はその足跡を追うように後ろに送れて着弾するばかりだ。
「おのれ……ならこうだ!」
いくら追っても追いつけないならと、貧乏神たちは追いかけるのをやめて照準を美奈が行く先の方に合わせた。このスピードなら自分から突っ込んでくるだろうと見越した偏差射撃。だが、それが放たれた瞬間着弾地点直前で美奈は角度を鋭角に変え、貧乏神の集団の中に真っすぐ突っ込んでいった。
「ほらほらほら!」
そのまま集団の中を走り抜けていく美奈。だが長い髪がたなびくばかりで攻撃自体は何もしていない……と思われた瞬間、美奈が走り抜けた軌跡にいる貧乏神の体がずるりとずれ、ばらばらになって地に落ちた。
彼らに触れたのは美奈の長いツインテールのみ。その髪こそが、ヒーローの力を持って刃と化した鉄糸にも等しい武器だったのだ。
これならば刃物を振り回しながら縦横無尽に駆け回ったのと同じ。貧乏神たちはそれに気づくことなくすれ違いざまに切り刻まれ、その身をばらばらに刻まれた。
「この程度で我らが怯むと思うか……すべてはクルセイダー様と富子様の為!」
それでも、貧乏神たちは死んでいない。地面に転がった首が大口を開けて叫び、腐った臓腑を地にぶちまけながら上半身だけが起き上がり、膝から下だけの足が落ちた杖を蹴り転がして別の場所にある手にパスを出す。
この者たちは並のゾンビではない。不死の体に狂った信仰を宿した、止まることを知らぬ者たちである。
「正義の雷でおしおきよ!」
止まれないなら、無理にでも止めるしかない。既に普通なら死に体の相手に、美奈はフォースセイバー『ブルーコメット』を振り上げ、そこから【ルミナオーバーロード】を発動させた。
降り注ぐ雷が、地に散らばった貧乏神たちを焼いていく。小さなパーツに寸断された貧乏神たちの部位は瞬く間に焼け焦げていき、燃え滓となってようやく動くことをやめた。
「これで……え?」
これにて敵殲滅完了。そう思ったところに、原城の入口からさらなる貧乏神の軍団が現れた。
「奴らは先にぱらいそへ行ったぞ! 我々も続くのだ!」
仲間の戦死を見て、恐れるどころかそれに勢いづく貧乏神たち。
「意気込んで突っ込んだはいいけど、さすがにこの数を相手にするのは骨よね……って、きゃあっ!」
予想しなかった第二陣の登場に焦る美奈。その一瞬の隙を突き、貧乏神の光線が美奈に命中した。
「この……!」
体制を整えようとするも、どう整えたらいいのか分からない。戦うための知識が欠落していた。そこにさらに光線が当たる。
「え……何しに来たんだっけ……」
目の前の相手がだれで、自分は何を目的にしていたのか。その記憶も奪われた。そして次に。
「あ~、何だかどうでもよくなってきちゃったぁ~」
美奈はその場に座り込み、はしたなく股を開いて涎を垂らしていた。最後の品性も奪われ、正義のヒロインとしての矜持も使命感も消去され、すっかり快楽だけを求める下品で淫らな痴女に成り果てた姿であった。
そこからは衝動の儘、痴態を曝し続ける美奈。
「あへぇ、気持ちイイ……❤」
自分の胸を揉み、確実に敵を屠るに必要なはずの武器を無意味な玩具としてしか使えず、自分にあてがい慰める。
「そうだ、イイ事考えちゃった❤」
自身の自慢の髪をほどき、自分を嬲らせる。ついさっき敵を動けぬよう寸断したそれは、今は自身の急所を攻めるものでしかない。
「ひゃあん、これ、すごいぃ……」
敵を灰燼に帰す大技の発射口は、今自分の尻に突き立てられている。敵の術中に嵌り、最早快楽の事しか考えない美奈。
その美奈を、もう貧乏神たちは相手にもしない。彼らは他者を『貧』に堕とすことこそ喜びであるが、それ以上にこの魔空原城の狂える番兵なのだ。すでに全てを奪われ地に堕ちた者をこれ以上追撃するつもりはない。
下劣でありながら専心たる貧乏神たちの横で、堕ちた美奈は見向きもされぬまま一人浅ましく盛るのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
ドゥルール・ブラッドティアーズ
あらゆる豊かなものを憎む……か。
私は吸血鬼だから強いし、ベテラン猟兵だから大金持ち。
何より色白巨乳な美少女よ
無表情で淡々と語り
彼らの光線を浴びて貧乳化
……これで満足なの?
お前達の憎悪はその程度なの?
【呪詛耐性・気合い】で貧乳化を解き
【残像・ダッシュ】で掴みかかり
『びったんびったん』で敵同士ぶつけ合い
【地形破壊】する程の【怪力】でグチャグチャの肉塊に
金で買えず、力で勝ち取れず、美しくても与えられないものが
|人外《わたしたち》にはあるでしょう?
……存在する権利よ
まだ生きていても
人類への【呪詛】を解放した私に触れられた彼らの肉体は
灰となって消えていく
容姿、戦闘力、憎しみの強さ……
何もかもが下の下だわ
貧乏神たちの行動理念は二つ。一つはクルセイダーへの狂信とも言える信仰心。そしてもう一つは、豊かなものに対しての嫉みである。
「あらゆる豊かなものを憎む……か」
ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は相手のその思考に思うところあるのか、隠れることなく彼らの前に立った。
「私は吸血鬼だから強いし、ベテラン猟兵だから大金持ち。何より色白巨乳な美少女よ」
ドゥルールは自分の特徴を無表情で貧乏神たちに語る。その言葉通りのドゥルールの外見に、貧乏神たちもいきり立つ。
「ドゥェッヘッヘ! それをひけらかしていい気になっているつもりか? それなら望み通り、貴様も貧相にしてやろう!」
挑発されたとでも取ったか、一斉に杖から光線を放つ貧乏神たち。それはドゥルールの胸部に当たり、その胸を真っ平らな超貧乳へと変化させた。
「グヘハハハハハ! 耐えきれると思ったか? 貧乏に底はないのだ!」
勝ち誇ったように言う貧乏神たち。だがドゥルールは無表情なままだ。
「……これで満足なの? お前達の憎悪はその程度なの?」
冷たく言い、ドゥルールは全身に気合を込める。すると何と平らになった胸が、再び盛り上がり始めたではないか。
「何ぃ!?」
その様子に、続けざまに光線を放つ貧乏神たち。だがドゥルールも今度は黙って受けるだけでなく、残像を残す速さで一体の貧乏神へと掴みかかった。
そのままその貧乏神を掴み上げ、振り回し、地面に叩きつける。紙きれのような皮膚が裂け、そこから枯れ木のような骨が折れて飛び出し、そのまま肉が千切れて手足がもげる。
「その細腕でその力とは、ならそちらを貧相にしてやろう!」
仲間の凄惨な姿にもひるむことなく、貧乏神たちは三度光線を浴びせかけた。今度はそれは筋肉を貧相にさせ、振り回す勢いを弱める。
それでも、ドゥルールは貧乏神を離さない。光線を撃って来た貧乏神の方へ掴んでいる体を叩きつけ、光線の射出を強引に止めようとする。
【びったんびったん】とぶつかり合った体同士が弾け飛び、肉が混ざりどちらのものだか分からないほどにぐちゃぐちゃになって辺りに散らばった。
その肉片に、ドゥルールは語り掛ける。
「金で買えず、力で勝ち取れず、美しくても与えられないものが|人外《わたしたち》にはあるでしょう?」
それは倒した相手への語り掛けか。否、こうなっても、貧乏神たちはまだ生きていた。
「おお、知っているとも。ぱらいそはクルセイダー様のみがお導きくださる……貴様らがどれほどの力あろうとも、徳川に与する限りはたどり着けぬ地よ!」
転がった崩れた顔が千切れかけの舌を動かし、得意げに言う。その答えに、ドゥルールは失望の表情と共に答えた。
「……存在する権利よ」
踏み潰してやりたいが、その筋力も奪われている。代わりに人類への呪詛を込めて足をかけ、その肉体を灰に変えた。
「容姿、戦闘力、憎しみの強さ……何もかもが下の下だわ」
クルセイダーへの狂信を、晴明が作った不死の体に入れただけの貧乏神たち。存在するための理由も体も他人に委ねた彼らはオブリビオンであっても救うに値しないと、ドゥルールはその灰さえも踏みつけ、地獄へ落ちよとばかりに踏みにじるのであった。
成功
🔵🔵🔴
ホロウ・リュヌ
※アドリブ大歓迎
……超・貧乏神の集団ですか。神とはいえゾンビ化した敵なら容赦はいらないでしょう。
・殲滅優先で行動します。
サムライブレイドで夜空疾奏のマッハ5.0以上で戦場全体を駆け煌めく星月を幾千と描く斬撃で攻撃し、納刀すると動き出す煌めく三日月型の斬撃波が残り、追撃や足場代わりに利用できるのでマッハ5.0以上で足場にしつつ三次元立体起動をしながら急速接近し、居合い切りで首を狙い斬り落としていきましょう。それでも倒れないようなら空中に残ってる無数の斬撃波で斬り刻みます。
敵の攻撃は残像で回避しますが、マッハ5.0以上で動いてるので早々当たらないでしょう。
カルネージ・グランギニョルを始めましょう。
日本には八百万の神という思想がある。全てのものに神が宿るという考え方だが、その中には当然邪神や悪神と呼ばれるものもある。その代表格の一つが、影響を受けた者に貧困を齎す貧乏神だろう。
「……超・貧乏神の集団ですか。神とはいえゾンビ化した敵なら容赦はいらないでしょう」
ホロウ・リュヌ(純粋一途で空虚な月・f40766)はその神の軍団を、一切の容赦なく殲滅すると決めその前に立った。
青い瞳に金の髪に白い肌と、清廉な月を想起させる三色を持った相手に貧乏神たちは下品な笑いを浮かべる。
「グエッヘッヘ、お高くとまりおって。そんな輝きくすませてやるわ!」
どろりとしたオーラを纏う貧乏神の前で、ホロウは臆するどころかその輝きをさらに強くした。
「もっと、もっと速く疾く疾走し、汎ゆる敵に夜空の斬撃という裁きを与えよう。さぁ、今宵のカルネージ・グランギニョルを始めましょう」
瞬間、ホロウの体がその場から消え、無数の星霜となって宙を舞った。その速度はマッハ5.0。その速さでサムライブレイドを振るいながら貧乏神たちの中を飛び回り、次々とその体を切り刻んでいく。
「ぐははは、この程度で我らが怯むと思うか!」
その斬撃は彼らの腕や脚、首さえも切り飛ばすが、それでもなお貧乏神たちは怯まない。
負のオーラに後押しされるように貧乏神もホロウに向かっていくが、その身が衝突する寸前ホロウは突然何かを踏みつけ一気に上へと跳躍した。
それは彼女が動いた軌跡に残った三日月形の何か。次々にそれを足場に上へ下へと三次元軌道を繰り返すホロウを追い、貧乏神も高速移動を繰り返す。
貧乏神が追ってくるのを察したホロウは、空中で上下に転回し上に残った三日月を蹴り飛ばす。それによって今度波及効果をかけ、飛んできた貧乏神とすれ違いざまに刀を一閃、その首を斬り飛ばした。
首は地に落ちて転がるが、胴はそのまま上昇を続けホロウの蹴ったものにぶつかる。
「これが何か知らんが、利用させてもらおう!」
落ちた首が空中の体を動かしホロウと同じようにそれを蹴ろうとするが、それに背を向けたままホロウは刀を鞘に納めた。
鍔が鯉口に当たりちん、と小さく音が鳴った瞬間、ホロウの軌跡をなぞるように残っていた三日月が全て斬撃波となり、至近にいた貧乏神を切り刻んだ。彼女の動いた一体全てが斬撃の領域となり、その中にいた貧乏神たちは微塵に刻まれる。体が粉々になると同時に、地に落ちていた首も笑い顔を作ったまま動かなくなりその絶命を知らせていた。
「何たる華麗な技よ。その技、腐られてくれるわ!」
それでも、斬撃の範囲から外れた貧乏神たちは恐れることなく光線を撃ちかける。光線の狙いはそこまで正確ではなくマッハ5の動きについてこれるほどではないが、貧乏神たちも高速移動は可能になっておりなおかつ数が多い。
偶然前にずれて出された光線が掠めるなどすれば少しずつ残像は減らされていき、よりホロウ本人を狙った光線は増えていく。
「ぐへへへ、貴様の姿がよく見えるぞ!」
狙うべき相手を徐々に見定め、一気に追い詰めようとする貧乏神。最早残像に惑わされる者は少なくなってきた。
「そうですね。主役に注目が集まったなら、カルネージ・グランギニョルを始めましょう」
自分に敵が殺到してきた。ならそれは自分の軌跡の中に敵が飛び込んできたのと同じこと。
技能としての残像は光線によって消されても、【夜空疾奏】の斬撃波はユーベルコード。この光線で消せるものではない。飛び回りながら刀を振るい、相手が群がってきたところでそれを納めればそこは残酷劇の舞台へと変わる。
舞台に乗り込む無作法な観客さえ演者とした虐殺の残酷劇は、月光と星霜に彩られ綺羅綺羅しく続くのであった。
成功
🔵🔵🔴
木霊・ウタ
心情
晴明を倒すぜ
ゾンビ化されちまったとは可哀想に
ゾンビじゃどう考えても
ぱらいそには行けそうにないぜ
海へ還してやろう
戦闘
体から噴出させた爆炎で加速して
一気に間合を詰めて
その勢いも乗じて
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う
で地獄の炎を流し込む
最初の爆破で倒せない場合は
それを斬り返しの二撃目の布石として
最初の爆破で崩れた体勢から
容易にいいカンジの部位に当てて(胴体とか
爆破して戦闘力を奪う
また流し込んだ炎で同士討ちも誘う
お互いに更に貧相になってもらって
弱体化させたら
こちらも次の攻撃で一気に倒せるだろう
ちょいと手間はかかるけど
こんなカンジで
確実に一体ずつ殲滅しながら
城の入口へ向かう
因みに貧相光線に対しては
焔摩天や炎の壁で受けたり
熱で大気を歪めて光線の軌道を捻じ曲げる
もし万が一当たっちまったら
光線の効果を
内に燃える獄炎の浄化の力で無効化したり
貧弱になった部位を燃やして灰にして
元の部位を炎から物質化
事後
鎮魂の調べ
海で安らかに
超・貧乏神の軍団は元はクルセイダーの信徒である島原一揆軍である。彼らは|天国《ぱらいそ》へ行くためにクルセイダーに従い、徳川との戦いに身を投じた元人間であった。
「ゾンビ化されちまったとは可哀想に。ゾンビじゃどう考えてもぱらいそには行けそうにないぜ。海へ還してやろう」
その果てに彼らはオブリビオンとなり、体もゾンビへと変えられた。そうなってしまっては彼らの逝く先など最早骸の海しかない。彼らが唯一その場所へ送ってやろうと、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は剣を構えた。
相手と向かい合ったウタは、先制で自らの背に爆発を起こし、それを推進力として貧乏神の群れへと飛び込んだ。
その勢いのまま獄炎を纏わせた大剣『焔摩天』をなぎ払い、炎と刃で一気に貧乏神たちをなぎ払う。
刃が肉を切り裂き、炎が骨まで炙る。だが、それでも貧乏神たちは怯む様子すら見せなかった。
「クルセイダー様の為に戦ってこそぱらいそへの道が開ける! さあ、貴様も我らと同じく貧相になれい!」
腕が残っている者は杖を持ち、なければ口に咥え、首さえ飛んでいるなら体に刺してでも保持して杖を振り上げて光線を放つ貧乏神たち。ウタはその光線を何とかかわしつつ、二の太刀を振るってその軌道に爆破を起こす。
光線を遮るように起きた大爆発は特に体が崩れていた者たちを大きく吹き飛ばし、地に転げさせて攻撃することを強引にでも止めさせた。
体の半分以上が焼け落ちてようやく動かなくなる者もいるが、それでもなお動き続ける者、また立ち上がる者もいてそれらは無理にでも杖を構えて攻撃しようとする。
「きさまもぉ……貧相にぃ……」
半分崩れた顔で言いながら杖を振り上げる貧乏神。だが、発射の瞬間その体は真横を向き、隣にいた別の貧乏神へと交戦を放った。
「なんだとぉ!?」
元々細かった腕が枯れ枝の様に細り、ついに杖を構える力までなくなったか杖を取り落とす。そのまま朽ち木が焼かれるように、その貧乏神は周囲に残る炎にまかれて燃え尽きた。
「エンマヤ・ソワカ!」
ウタの一喝。それと同時に、生き残っていた貧乏神たちがそれぞれ仲間の方を向き、光線を滅多矢鱈に撃ち始めた。
ウタの放った炎。それはただの炎ではなく、流し込んだ相手を爆破もしくは操作する【熾】の炎。体の半分を爆破しても死なない相手なら、残った炎でそれを操作するという二段構えの戦法で、ウタは貧乏神の集団を炎の中に絡めとったのだ。
「おのれぇ……我らが従うはクルセイダー様、守は富子様! 貴様などにいいようにされるいわれはなぁい!」
滾る信仰心によって、操作に抗う貧乏神たち。その精神力は上級オブリビオンもかくやという程で支配を跳ね除けるが、一方でその体は元が貧相、そして同士討ちによってそれがさらに削がれれば、いかに不死の体とは言え切り潰すのも容易い。
「手間はかかるが、先に進ませて貰うぜ」
一体一体、介錯するように貧乏神を殲滅していくウタ。それは己の存在全てを他に捧げた彼らを、最期だけは個人として終えさせていくようにも見える。
しかし、時間がかかれば術を振りほどいた者、運よくかかりが浅く済んだ者が動きだし攻撃をかけてくる。
「進ませぬ……進ませぬぞ猟兵ぃぃぃぃ!!」
滅多打ちにされる光線を、炎の壁や剣で防御し、あるいは炎の放つ熱による空気の揺らぎで光を捻じ曲げ、自身に届かないようにするウタ。
それでも、貧乏神の執念かそのうちのいくつかはついにウタの体へと届いた。
剣を構える腕がみるみるうちに細り、巨大な鉄塊剣など到底保持できぬ貧弱なものへと成り果てた。
「これで貴様も我らと同じよ……次は足か、腹がいいかぁ!」
一度かかれば一気呵成。それこそがこの技の真骨頂よと、さらに光線を放とうとする貧乏神たち。
それを防ごうにも、最早剣を持つこと能わぬウタの細腕。その内側から炎が巻き起こり、まさに貧乏神たちがそうされたようにその腕が燃え尽き焼け落ちた。
しかし腕を焼いた炎はその腕がなくなってもその場で燃え続ける。そしてそれは自らが焼いた腕の形をとり、そのまま新たな腕となってそこに固着した。
「あんたらだけに覚悟を強いるのは不公平ってもんだからな」
炎を物質になるまで操作する。オーバーロードによる力の増強と、燃える覚悟で体が燃え落ちる激痛を耐え、ウタは貧相となった部位を元の形で新生させた。
回復ではなく力任せの強引な縫合なのだから、当然痛みは甚大だ。だが、この痛みさえ失った……あるいは不要と切られてしまった貧乏神たちの自覚できぬ苦しみと比べれば、何ほどの事もない。
「ばかな……こいつ、狂っているのか!」
体の苦痛は感じぬ貧乏神もその迫力には気圧される。そうなれば、操作への抵抗は緩み成すがままに貧乏神は爆破されていく。
爆炎の中、ウタは原城へと進んでいく。炎に焼かれた先、海で安らかにと紡がれる鎮魂の歌が、その爆音に紛れ小さく響いていた。
大成功
🔵🔵🔵
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
これ、全部相手しなきゃいけないの?
けど、やっつけないと話が進まないもんね
行くよ、ウィーリィくん!
敵は目の前にいるだけでなく、新手の敵も控えているってやつだよね、これ
だからウィーリィくんと攻守を交代しあって体力の消耗を控える。
【制圧射撃】で敵を足止め(文字通り)しながら相手の射線を【見切り】で読んで【フェイント】で回避、逃げ回りながら【乱れ撃ち】【範囲攻撃】でゾンビたちを蜂の巣にする
それと同時に【罠使い】【ロープワーク】で足元にロープを張り巡らせ、【挑発】でそこに誘導したらトラップ発動!
でも相手は身体をバラバラにしても平気なゾンビたちだから光線を撃たれる前に【先制攻撃】で【シックスヘッド・ジョーズ】でゾンビたちをサメの餌食にしてあげる
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
のっけから随分と厄介な相手が出たもんだぜ。
シャーリー、遠慮なしで行くぞ!
敵の光線を【見切り】ながら【ジャンプ】や【ダッシュ】【フェイント】を駆使しながら回避し、【カウンター】で炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【斬撃波】の【範囲攻撃】で敵をまとめて薙ぎ払う。
そして残った敵を【飢龍炎牙】で徹底的に焼き払い、焼き尽くす。一片も残さない様に。
もちろん、全滅させてもすぐに増援が来るだろうからシャーリーと連携し、ポジションを交互に交代させて体力を温存させる。
もしシャーリーに光線が当たりそうになったら盾代わりの鉄鍋で【盾受け】で【かばう】と同時に【早業】の【シールドバッシュ】で敵に投げつける事で光線の影響を受けない様にする。
倒せども倒せども、魔空原城から湧き出てくる超・貧乏神。
「これ、全部相手しなきゃいけないの? けど、やっつけないと話が進まないもんね。行くよ、ウィーリィくん!」
「のっけから随分と厄介な相手が出たもんだぜ。シャーリー、遠慮なしで行くぞ!」
シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)とウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は、その相手に臆することなく立ち向かう。
共に手を取り合い敵に向かうそんな二人を、貧乏神たちはいかにもと言わんばかりの恨めし気な視線といやらしい笑顔で迎え撃った。
「ドゥエッヘッヘ、貴様ら随分見せつけてくれるじゃないか。ようし、特別にたっぷりと貧相にしてやろう!」
貧乏神たちは一斉に杖を振り上げ、光線を乱れ打ちにする。それを何とかかわしつつ、ウィーリィがシャーリーをかばうような形で前に出る。
「グエッヘッヘ、そうだなぁ、その女の豊かな体は惜しいよなぁ?」
それを下衆な言葉で嘲りながら光線を放つが、その狙いはウィーリィの方。彼らの目的はあくまで侵入者の排除であり、その手段に自らの嗜好に合致したものをつかっているだけということだろう。
最もだからと言って甘んじて喰らってやる理由はない。ウィーリィは光線の嵐の中、貧乏神の杖を構える向きや布陣から攻撃方向を見切り、素早く動いてそれを避ける。
走り、飛び跳ね、素早く切り返して方向を乱し、相手の狙いを付けさせない。貧乏神たちの身体能力は本来そんなに高くないため、その動きにはついてこれず光線は地を撃つばかりだ。
そのままの勢いで集団の中に飛び込み、ウィーリィは大包丁を大きくなぎ払う。その軌跡はそのまま斬撃波となって周囲を切り飛ばし、さらにそこに追従するように炎が巻き起こって刻んだ貧乏神たちを燃やす。
「喰らい尽くせ、炎の顎!」
しかし、そこでウィーリィは手を緩めない。【飢龍炎牙】を重ねて放ち、焼き切った貧乏神たちをさらに徹底的に焼き払い、焼き尽くす。一片も残さない様に。
敵は体の形が少しでも残っていれば動き続ける。その生命力、その執念こそが彼らの最大の武器である以上、一度攻撃を始めたら相手が灰燼に帰すまで攻撃を重ね続ける必要があるのだ。
そうして周囲の貧乏神たちは全て燃え尽き、あとは元が何だったのかすら判別できない燃え滓が風に吹かれて散るばかりとなった。
「最後の一人まで! クルセイダー様の為に、富子様の為に!」
だが、そうなれば次の貧乏神が原城から飛び出して来る。言葉通り、最後の一人となるまで彼らは戦うことを決してやめないのだろう。
それを見たウィーリィは後ろに下がり、変わってシャーリーが前に出る。
「敵は目の前にいるだけでなく、新手の敵も控えているってやつだよね、これ」
こうなるのは分かっていた、とばかりのその姿勢。そして前に出た自分に向けて放たれる光線を、ウィーリィがそうしたのと同じように素早く動いて避けていく。
さらに一方でシャーリーはそれと同時に銃を撃ち、ひたすらに相手の足を払ってそこを撃ち抜いた。細い脚に銃弾が当たれば骨ごとはじけ飛び即座に倒れるが、当然ながら貧乏神たちはそれでも動き続けている。
「足がなくなった程度で我らが止まると思ったか!」
手で這い、体をよじらせ進む貧乏神たち。それから逃げ回りつつ、シャーリーはその体にも射撃の雨を降らせて相手を蜂の巣にしていく。
だが頭を撃ち抜かれても、胸に穴が開いても貧乏神たちは決して止まらない。シャーリーを追って無理にでも動き、何度でも光線を放ってシャーリーを捕らえようとし続ける。
足を失っている以上駆け回るシャーリーに追いつける速さではないが、それでもその執念はすさまじく体がどんな悲惨な状態になっても動き続ける貧乏神たち。その姿は、まさに鬼気迫るという表現こそが相応しいものと言えた。
単純な強さよりもこの不死性、そしてこの姿そのものがあるいは彼ら最大の武器なのだろう。どれほど肉体を破壊されようとただただ執念に任せ動くその姿は、たとえその実力がさしたるものでなかろうと、遥か格上の相手すら怯ませる恐ろしきもの。
それをさせぬため一瞬での必殺を狙ったウィーリィと違い、小さな弾丸を絶え間なく打ちかけたシャーリーの戦法は相手を彩るだけの失策であったのか。
「止まらぬ、止まらぬぞぉぉぉぉ!!」
千切れかけた体を動かし執念だけでも動き続ける貧乏神。しかし、その動きさえも突然止まる。
「止まらないなら、止めるだけだよ!」
貧乏神たちの体が何かに絡めとられていた。
シャーリーは手がないからひたすら動きながら撃っていたわけではない。その間に当たりに見えないようにロープを張り巡らせ、そこに貧乏神が嵌るように追い込んでいたのだ。
そうしてロープトラップに捕らわれれば、彼らの持つ恐怖の象徴である死してなお動く体も封じられる。
そうなれば、あとはその動けぬ体を滅するのみ。
「この恐怖、地獄の番犬2匹分だよ!」
そこからの抵抗も間もなく殲滅せんと、【シックスヘッド・ジョーズ】の全武装が貧乏神たちを餌食とした。
ロープ諸共食いちぎられ、肉の欠片となって朽ちていく貧乏神たち。
殲滅の嵐が去った後、そこにはついに口を開けた魔空原城の入口が見えた。
「よーし、あれだね!」
そこに向けて駆け出そうとするシャーリー。だがその後ろから。
「し……ねぇ……!」
右腕と半分の顔が皮で繋がっただけの貧乏神が、渾身の光線を放った。それはシャーリーの真後ろを捕らえ真っ直ぐその豊かな身を包む……
「お前がだよ」
その背を、ウィーリィの巨大な鉄鍋が守った。交互に戦いを任せ合うことで体力を温存できたのだ。大切な人の背を素早くかばうくらい簡単な事。
そのまま鉄鍋を投げつけ、最後のその貧乏神をすり潰す。
「くるせ……ま……とみ、こさま……ばん、ざ……」
鍋の下でくぐもった声をあげ、貧乏神はついに潰えた。
最後まで決して引くことも恐れることもなかった不死の軍団。それが守った魔空の門が、大口を開けて猟兵たちを待ち構えていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『大悪災『日野富子』』
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POW : アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:みそじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
無数の不死の番人を退け、猟兵たちはついに魔空原城へと乗り込んだ。
長い廊下を通り、無人の部屋を抜け、一際大きな襖を開いたその先。
「あああああチクショウ! あのクソ貧乏神共、あんなデカイ口たたいといて結局負けてるじゃねぇか!」
金銀財宝に溢れ華美な装飾が施された広い部屋の中、一人の女が大声で喚き散らしていた。
「何が信仰だ、何がぱらいそだ! そんなもんサイフの足しにもなりゃしねぇだろうがよ! 金、金、金だ! この世に溢れる金だけが真実なんだよ! それを一番持ってるアタシが一番偉いはずなんだよ! たとえ着物の中身がどうだってな!」
口から泡を飛ばし、誰に言うでもなく罵詈雑言を吐き散らす女。下の体型も分からぬほどに豪華で重厚な着物に包まれたその身はまさに金満家と言うに相応しいが、元の造作など関係ないほどに醜く歪んだ顔と口から垂れ流される聞くに堪えない罵声は、彼女の心がいかに『貧しい』かを如実に物語っていた。
女は乗り込んできた相手を見て、その顔を一層険しくする。
「来やがったな……アタシの金を奪った徳川にケツ振ってアタシを殺したヤロウども……!」
恨み節と共に女の周囲に紫の炎が巻き起こる。
彼女の名は『日野富子』。その尽きぬ金銭欲は応仁の乱の引き金となり、世を戦国に導いたとして大悪災の名で呼ばれた女。
「信長も……クルセイダーも……晴明も……どいつもこいつもアタシを利用しやがって! アタシの金が目的なら這いつくばれよ! 床に頭こすり付けて汚ぇ笑い顔曝してアタシに媚び売って尻尾振れよ! 一番金があるのはアタシなんだよ! 金があるからアタシは偉いんだよ! 金だけが、アタシの全てを支えてくれるんだよ!」
女が叫ぶごとに紫の炎が膨れ上がり、豪華な部屋を地獄の様に変えていく。
「猟兵よぉ……お前らもだろ? お前らも、徳川に媚び売って褒美貰うためにアタシを殺しに来たんだろ? いいぜ、やってみろよ……アタシは、アタシの金は、誰にも奪わせるもんか!」
怒りに狂うその形相は般若の如く恐ろしく、豪華な着物に隠したその身と心は誰よりも貧しき大悪災。自ら望んで餓鬼畜生に堕ちたこの女を、今一度地獄に送り返せ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
価値観の一つとして、理解は出来ますが。
賛同は難しいですねぇ。
『FAS』を使用し飛行、『FLS』の空間歪曲障壁と『FES』の耐火結界を展開しまして。
【繃炗】を発動、『刀』を指定し『光波霊』に変身しますねぇ。
直視の難しい『光り輝く結界』に『超光速移動』と空間歪曲障壁による「空間レンズ」での偏向で『視線』を防ぎ、捉えられた際の『射程外攻撃軽減』と耐火結界による防御も併せれば、『紫の炎』はまず防げるでしょう。
後は、読まれ辛い様三次元的な『超光速のヒット&アウェイ』を繰返し、着実に削って参りますねぇ。
内面は兎も角、体型は剝いで見ないと解りませんが、比較対象を私にするなら、確かに?
貧乏神が守っていた魔空原城の中。そこに待ち構えていたのは、怒りの形相で喚く女であった。
「このヤロウ……金を欲しがって何が悪い……貧乏人共が寄ってたかってアタシを悪者にしやがって……!」
欲と怒り。それだけに飲まれ全てを憎むその女を、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は見て呟く。
「価値観の一つとして、理解は出来ますが。賛同は難しいですねぇ」
誰だって金は欲しいし、戦争の原因などと言われれば怒りたくもなる。だが、彼女のそれは常軌を逸しているし、決して事実無根の言いがかりではない。
その女、日野富子の前でるこるはふわりと浮き上がる。すると富子は、それを怒りの形相で睨みつけた。
「テメェ……アタシの前に立つんじゃねぇ……アタシの上に上がるんじゃねぇ!」
自分にとって目障りなもの全てを許さないという怒りの視線。それは現実の力となり、まるでその視線を辿るように紫の連爆となってるこるを襲った。
「焚き付けの脂が多いからよく燃えるだろ!」
るこるの豊満な体をそう貶す富子。その爆発を前に、るこるはいくつもの兵装を前に出し防御の構えをとる。
前方に空間を歪め、また耐火の結界を張ってその炎を止める。道をたどるようにやって来た紫の爆発はそこで散り、またせき止められた。
だが視線を媒介としそこを爆破する炎は、見さえすればその場所からも発生する。体の直前、あるいは体そのものからまで発生した爆発は防ぎきることができず、その衝撃でるこるの巨大な胸が大きく揺れた。
「ナメてんのかテメェ……見せつけてんじゃねぇ!」
攻撃が通ったのになぜか怒る富子。なおその右手が服の胸のあたりを掴んでいるのは、これが彼女のデフォルトポーズだからであり他意はないはずである。
そしてならばとるこるはもう一段上の防御策をとる。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『玉光の加護』をお与え下さいませ」
【豊乳女神の加護・繃炗】を発動、るこるの体は眩く輝く『光波霊』へと変化した。その綺羅綺羅しい姿を、富子はなおも睨みつける。
「は、いくら光ってたって、金にならねぇんじゃ意味ねぇ……」
そうして目をその体に向けた瞬間、富子の目は怒りをは別の者でゆがめられた。
「う、げ、痛ぇ……!」
光源を直接睨んだのだから、それは自ら目潰しに飛び込むのと同じ。反射的に目を伏せてしまえば、富子の能力は封じられたも同然だ。
視線を媒介とする力は強力であり脆弱。それは2年前に暴虐の巨人兄弟が示して見せたことであった。
これを機とばかりに、るこるは唯一光になっていない刀を構え縦横無尽に飛び回る。
「チクショウ……ちくしょう、畜生!」
薄目を開けて顔を巡らせ、それを懸命に追う富子だが、歪曲された空間の向こうにいる歪んで見える相手は薄目では捉えづらく、見当違いの場所で起きる爆発も今度は完全に結界に阻まれ届くこともない。
その状況で、るこるは広い室内を三次元的に飛び回り、刀による高速のヒット&アウェイで富子を切り刻んだ。
「ちく、しょぉぉぉぉぉ!!」
怒りの絶叫と共に倒れる富子。刻まれた着物は厚く、なおもその下の体は見えないが、その圧布すら染める血は相当に深くその身が刻まれたことの証だろう。
「内面は兎も角、体型は剝いで見ないと解りませんが、比較対象を私にするなら、確かに?」
手に残る布と体を切った感覚の比率。それを感じつつ、るこるは富子の『豊かさ』と己の身を比べその差を思うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
そんなに怒って疲れないのかなぁ
なーんて、呑気言ってる場合じゃないか
ウィーリィくんが時間を稼いでいる間に愛車の宇宙バイクを自動操縦で呼びだし、窓から突入してもらい敵の注意を逸らす
と同時にそれに飛び乗って【操縦】し、部屋の中を走り回りながら【クイックドロウ】【乱れ撃ち】で四方八方から熱線で攻撃
敵UCは【スナイパー】【早業】で飛んでくる火矢を片っ端から撃ち落とす
狙いがボクってわかっていればその軌道も【見切り】やすいからね☆
そして走り回りながら【罠使い】【ロープワーク】で足元にワイヤーを張り巡らせておいて頃合いを見て罠を発動させて縛り上げる
そしてウィーリィくんと一緒にUCをお見舞いするよ☆
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
生前(?)の彼女とはエンパイア・ウォーでやりあった事があるけど相変わらず荒れ狂ってるなぁ。
カルシウムが足りてないんだろうな。うん。
さておき。
一度戦った相手だからどれだけ強いかも承知している。
【物を隠す】で奴の視線を周りの調度品で遮りながら、シャーリーと連携して大包丁の【斬撃波】で攻撃。
周囲の炎は【火炎耐性】で耐える。
そして隙を見て【ダッシュ】で一気に間合いを詰めると同時に【料理】に使う激辛スパイスを奴の顔面にぶちまけて目を閉じさせ、シャーリーが罠を発動させるのと同時に彼女のUCに合わせて【飢龍炎牙】を叩き込む!
「生前(?)の彼女とはエンパイア・ウォーでやりあった事があるけど相変わらず荒れ狂ってるなぁ。カルシウムが足りてないんだろうな。うん」
「そんなに怒って疲れないのかなぁ。なーんて、呑気言ってる場合じゃないか」
ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)とシャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は、目に入るもの全てが気に入らないとばかりに怒る日野富子にそう感想を漏らす。そして当の本人はというと、そう言われるのも仕方なしというほどに相変わらず怒っていた。
「どいつもこいつも、アタシを苛つかせやがる……怒って欲しくないならアタシの前に出てくんな!」
富子が憎悪を込めて二人を睨みつけると、急ぎ二人は転がって傍らの大きな箪笥の影に隠れた。それと同時にその棚が紫の炎を上げて燃え上がり、中身ごと箪笥を焼き尽くす。
「あぁぁぁ、アタシの財産を! 返しやがれテメェ!」
自分で燃やしておいて何を、という感じだが、彼女にそれを言って聞くはずもないのは分かり切っている。
「一度戦った相手だからどれだけ強いかも承知している」
そして、それ以上に彼女の高い戦闘能力も。瞬く間に箪笥は燃え尽き障害物としての用を成さなくなり、ウィーリィはそこから転がり出て即座に別の調度品の陰に隠れ直した。
隠れる寸前大包丁を力強く振って斬撃波を巻き起こすが、隠れるウィーリィを追った視線と交差した瞬間そこで大爆発が起こり、その爆風が斬撃波をかき消してしまう。
「逃げんじゃねぇ!」
その上でなお残る紫の炎が、隠れているウィーリィを炙り出すように燃え上がる。その熱に耐えながら、ウィーリィはさらに後方に隠れているシャーリーに目配せした。
それを受け、シャーリーはしかと頷く。
「よし、おいで!」
声と同時に、障子の嵌められた大きな丸窓を破り巨大な宇宙バイクが部屋へと飛び込んできた。そのバイクが自分の下へ来た瞬間、即座にシャーリーはそれに飛び乗り部屋の中を縦横に飛び回る。
「テメェ、人の部屋なんだとおもってやがんだ!」
その行動に、富子の怒りの矛先はシャーリーへと移る。それに呼応し、シャーリーを撃ち落とさんとするかの如く周囲から無数の火矢が出現し射かけられた。
「おっと、危ない!」
シャーリーは飛び回りつつ、素早く銃を抜いて撃ちかけその火矢を撃ち落としていく。
「矢だってタダじゃねぇんだぞ、テメェ!」
さらに怒ってシャーリーを睨みつければ、追加の火矢が彼女を襲う。それに対してもシャーリーはまるで読んでいたと言わんばかりに射撃を放って次々撃ち落とし、さらには富子にまで銃撃をかけた。
「狙いがボクってわかっていればその軌道も見切りやすいからね☆」
分かりやすく怒りっぽい富子の性格上、目立つ相手を優先的に攻撃する。先の貧乏神との戦いでも行った互いに敵を引きつけ合う連携は、この富子戦でもこと有効な戦術であった。
飛び回るシャーリーを追って顔を上げている富子。その注意がおろそかになった足元を狩るように、ウィーリィが滑り込んだ。
「こいつを『喰らい』な!」
声に思わず下を向いた瞬間、その顔に真っ赤な粉が叩きつけられる。
「うっ、げ、辛……痛ぇ!」
激辛スパイスの塊を顔面にぶちまけられ、思わず顔を覆って目を閉じる富子。目を襲う激痛と溢れる涙で視線を向けることもかなわない。
「よし、いくぞ、シャーリー!」
「うん!」
今こそ好機。シャーリーがバイクを急上昇させると、今まで動きながら垂らしておいたワイヤーが上方に持ち上げられ富子の足を絡めとる。
「お、下ろしやがれ!」
そのまま吊り上げられ、片手で顔を、もう片手で着物を抑え藻掻く富子。
「喰らい尽くせ、炎の顎!」
「さぁ、世界サメ大戦の勃発だよ!」
今こそ好機と、【飢龍炎牙】と【ワールド・タイフーン】が同時に炸裂した。
赤き炎が富子を焼き、無数の鮫がその身を喰らう。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
怒りと苦痛がないまぜになった絶叫。怒りに燃え欲を貪ったその身から振り絞られるそれは、それ以外の全てを失った彼女の『貧しさ』が溢れているようでさえあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
蒼井・美奈
残念だけど、私は金とか褒美とかそんなものに興味はないわ
私に!耐えがたい屈辱を与えたあなたを倒す!それだけよ!
(セリフはかっこつけていても身体は大事なところを襤褸で隠しているだけ)
当然富子も私の啖呵に苛立つだろうからさっそくUCを使ってくるでしょうね
もちろんこれも計算のうちよ!
ブルーコメットの【受け流し】【切断】で片っ端から火矢を切り落としながら【ダッシュ】【空中浮遊】【空中機動】で三次元機動で富子との間合いを詰め、周囲に火矢と富子が入った状態で【ルミナオーバーロード】でそれらをまとめておしおきよ!
そしてその勢いのまま【貫通攻撃】【急所突き】で富子に深手を与える!
乙女に恥をかかせた罪は重いわよ!
日野富子の欲するもの。それは一にも二にも金。その価値観をそのまま他人にも当てはめ、誰もが自分と同じように金を求め、そのために自分を利用、あるいは敵対していると思い込んでいる。
「残念だけど、私は金とか褒美とかそんなものに興味はないわ」
蒼井・美奈(ルミナサファイヤ・f38072)はその富子の思い込みを、正面から切って捨てた。だが、それを聞いた富子はいつもの怒りの表情にたっぷりと嘲りを加えて笑う。
「はっ、着るものもロクに買えねぇ貧乏人がなにイキがってんだ! まともな着物買ってから言え!」
その通り、先の貧乏神との戦いで自ら服を切り裂いてしまった美奈は、その切れ端の襤褸で大切なところをギリギリ隠しているだけの格好であった。だが、その格好でも美奈は決して怯まない。
「私に! 耐えがたい屈辱を与えたあなたを倒す! それだけよ!」
その啖呵に、富子は嘲笑を消しいつもの怒りの表情に戻った。
「偉そうに……貧乏人はアタシの前から消え失せろ!」
怒声と共に、富子の背から無数の火矢が美奈に向けて射かけられた。美奈は即座にフォースセイバー『ブルーコメット』を抜き、素早く振るって火矢を切り刻んでいく。
「ほらほらほら!」
光の刃が矢を弾き、受け、切り落とす。それはまさに戦場を剣一本で突き進む無双の武人の如し。
火矢は躱しても美奈を追跡し、貫くまで追ってくる。それ故に、矢は確実に破壊せねば対処できない。数え切れぬ程の矢にそれをされては到底躱しきれぬと、前から来る矢を片端から切り落として美奈は前に進んでいく。
「ふざけんな……アタシに近づくな! さっさとブッ殺されろ!」
怒りの儘に火矢……あるいはそれを射った応仁の侍たちに命じる富子。その背から幾度となく火矢が飛び出ては美奈に襲い掛かる。
富子の|財産《レベル》と同数放たれるその矢はまさに無尽蔵。いかに美奈が剣を振るおうとそれをかいくぐり体を掠めるものも出てきた。
それに対し、美奈は高く飛びあがり宙を舞うことで避ける。広く天井も高い富子の部屋は、飛び回るには十分すぎる空間があった。
そして美奈が逃げ回れば、火矢は当然それを追尾する。そうなれば矢は纏めて一か所に集中することになり、纏めて切り捨てるのもまた容易であった。
「何やってやがんだ……こうなりゃ全部出ろ!」
富子は怒り、出せる火矢全てに美奈を追うよう命じる。だが、その声を上げたその瞬間。
「それならありがたいわ!」
富子のすぐ目の前に、美奈がいた。皆が飛び回った理由は火矢を引き付けることに加え、一気に富子に近づくため。前方には発射源である富子がいて後方からはすぐに火矢が追ってくるが、相手に挟まれるこの状況こそ美奈が望んだもの。
「正義の雷でおしおきよ!」
その中心で、美奈は【ルミナオーバーロード】を炸裂させた。掲げたブルーコメットから雷が降り注ぎ、全ての火矢と富子自身を纏めて焼く。
「ぐあぁぁぁぁぁっ!!」
富子が絶叫し、その周囲では燃え滓となった火矢が次々落ちていく。それはまるで彼女が起こした大乱により燃え落ちた、雅やかなる都の姿を現すが如し。
だが、その中心にいる富子はまだ死んでいない。
「ちく、しょ……」
胸を抑えて背を丸めるも、その伏せた目に滾る怒りは一切衰えを見せない。そしてそれも、美奈は分かっていた。
「乙女に恥をかかせた罪は重いわよ!」
高速でそのまま踏み込み、ブルーコメットを鋭く突き出した。
それは感電と着物の重さで動けない富子の胸に真っすぐ吸い込まれ、その身を貫く。
「ざけんな……アタシが……アタシはぁぁぁっ……!」
光の刃は掴むことすらできず、直に突き立てられれば厚い着物も鎧にはならない。
どれほど錦で着飾ろうと結局は守るものなき貧しき身。豊かな体を襤褸で隠した美奈の刃は、それをしかと貫き通したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
桃園・陽明
(自分の身体が元に戻ったのを確認して安堵)
この先に晴明クルセイダーがいるのなら、富子との戦いは避けられないよね
怖いけど、戦うしかない!
視線で命中した相手を燃やす能力というと強そうに見えるけど「視線を遮る」事で無力化出来る能力よね?
部屋に散らばる財宝の中から鏡(に類するもの)を探し出し、アムリボンの【ロープワーク】で手元に手繰り寄せて視線を富子に反射させて自滅させる
そしてそこへ【アムレーザー・バスターモード】で追い打ちをかける!
どんなに貧しくても、心だけは豊かでありたいよね…
原城内の富子の部屋は、本人の趣味もあってか巨大な襖を扉としている。その襖の陰で、桃園・陽明(ピンクアムール・f39180)はしきりに自分の体を点検していた。
「胸よし、腰よし、お尻よし……」
先の戦いで、門番である超・貧乏神の技によって貧相になってしまった体が元に戻ったかを確認する陽明。
どうやらきちんと戻っていることに安堵するが、そうなればいよいよ次は彼らが守っていた者たちとの戦いが待っている。
「この先に晴明クルセイダーがいるのなら、富子との戦いは避けられないよね。怖いけど、戦うしかない!」
貧乏神たちを蹴散らしここまで来たのは、偏にその為。
「聖愛戦士、ピンクアムール、行きます!」
一度呼吸を整えた後、襖の影から飛び出し部屋の中へと転がり込んだ。
「なんだテメェ!」
突然の闖入者に、富子は怒りの視線を向ける。その視線の先で紫の炎が爆発を起こすが、それが焼いたのは彼女の財産である行李の一つであった。
陽明は部屋に入ると同時に、室内に散らばる家財の中から大型のものの陰に身を隠していた。富子の能力は視線を媒介にする。ならばそれを切るように動けば攻撃を防げるだろうというという作戦の下、陽明は自分を視認しづらいよう身を伏せて部屋の中を進んでいた。
「ここにあるのは全部アタシのモンだ……勝手に使うんじゃねぇ!」
相手がそれを利用しているのを分かって、そのこと自体に怒りを募らせる富子。彼女の財産はまさに天井知らずだが、それであってもびた一文他人にくれてやるつもりはなかった。あるいはクルセイダーに使役され配下のオブリビオンの装備を整えさせられていたことも、彼女にとっては不本意だったのかもしれない。
一方で、怒りの感情に支配され振りまわされる富子は自身の攻撃が家財を破壊するのを厭わない。次々に怒る紫の爆発に、豪華さ第一で揃えられた家財は次々と吹き飛ばされていき陽明の隠れ場所は瞬く間に少なくなっていった。
「テメェのせいでアタシの金が減っちまっただろうが、どうしてくれんだコラぁ!」
自分で爆破しておいて怒り狂う富子。だがその爆破の勢いは止むことなく、絶えぬ延焼と高熱は隠れている陽明さえ炙り、焼き始めた。
「これは……強い……!」
広いとはいえ室内に置ける程度の調度品、隠れるための場所は都合よくいくつもはない。その身が視界内に曝け出された時、憎悪の籠った紫の視線がその身を一気に包んだ。
「つまんねぇカラダ見せつけやがって……くたばれ!」
元に戻った陽明のスタイルをそう吐き捨て、炎を巻き起こす富子。刻まれてなお分厚い着物に包まれ形の見えないその体は、陽明をそう言えるほどのものなのか否か。
ともあれ、その負の感情の炎は熱く、激しくその身を焼く。
「それでも、彼女が女性ならきっと……!」
甚大なダメージに耐えながら、その身を着飾る富子ならばきっと持っているはずのものを陽明は探す。
爆破され散らばった財宝の燃え滓。その中に炎の光を反射するものを見つけた時、『アムリボン』を伸ばしそれを手繰り寄せた。
「まだアタシの金を盗むつもりか……死ね死ね死ねぇっ!」
その行動を、本気で殺意を込めて富子が睨みつける。その視線が向いた瞬間、陽明は手に取ったものを富子に向けて突き付けた。
「本当に貧しいのは誰か……!」
それはよく磨かれ、金に縁どられた大きな鏡。そこには怒りの形相で醜く歪んだ富子の顔が、はっきりと映っていた。
「ぐ……あぁっ!?」
富子の視線が当たったものは皆紫炎に焼かれる。美しい鏡にきれいに映った富子の顔は、自らの因果を被るかの如く激しく燃え上がった。
それと同時に鏡そのものも爆発して砕け散るが、陽明の手にはすでに別のものが。
「テメェ……!」
「愛を知らない悪い子にはおしおきよ!」
向けられた視線と交差するように、【アムレーザー・バスターモード】の射撃が富子の体を撃ち抜いた。
「どんなに貧しくても、心だけは豊かでありたいよね……」
どれだけの財を得ても心の貧しさは埋められなかった富子。撃ち抜かれ吹き飛ぶその姿に、陽明は真の豊かさについて思うのであった。
成功
🔵🔵🔴
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ
彼女の紫炎と対を成すように
オーバーロードで背中に黒炎の翼
いいえ、私は貴女を救う為に参りました。
私は貴女の笑顔が見たい。貴女の寵愛を受けたい。
これが私の忠誠の証です
『女帝の交渉』の【乱れ撃ち】で
一回あたり19600G(1億9600万円)を捧げ
【誘惑・催眠術】の睦言で彼女の苛立ちを解消。UCを封じる。
望まれれば【脱衣】して跪き、足を舐める事も厭わない。
歴戦の猟兵が恋の奴隷となって大金を貢ぐ事は
彼女の金銭欲と自尊心を大きく満たし
更に女帝の交渉の効果で
私の言う通りにすれば幸福になれると信じて疑わなくなる
貴女を全力でお救いします。
猟兵と晴明から。そして貴女自身の渇望から
先程ばら撒いた金を【念動力】で組み上げ
お湯ではなく金で満たされた
札束風呂ならぬ黄金風呂を作るわ
彼女にも脱衣を促し
硬く冷たい金と柔らかく温かい素肌による愛撫。
濃厚なキスと【化術】で肉棒を生やしての【串刺し】
上下の口から注ぐ媚毒【呪詛】体液で
身も心も、体の外も内も【慰め・生命力吸収・大食い】
その表情を幸福で満たして救済
日野富子は他人を一切信じない。己の前に現れるのは自分を利用するためか、自分を殺すためのどちらかだと思っているからだ。実際今の彼女にとって、前者は晴明クルセイダー、そして後者は猟兵がまさに該当した。
「また来やがったか……テメェもアタシを殺しに来たか、そんなに徳川に頭撫でてもらいてぇか!」
だから、自分の前からやってきた相手は自分を殺して何かを得るために来たとしか彼女は思っていなかった。
だが、その考えは完璧な的外れというわけではない。実際ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は、欲しいものがあって彼女と対峙していた。
「いいえ、私は貴女を救う為に参りました」
富子の背に燃える紫炎と対を成すように、背に黒炎の翼をはためかせ言うドゥルール。
「私は貴女の笑顔が見たい。貴女の寵愛を受けたい」
望むものはその命、財産ではなく富子自身だというその言葉に、富子は嘲笑で答える。
「はっ、お前の言ってることを約してやろうか? 『ヘイコラしますから金回してください』だ! 聞き飽きてんだよそんなもんは!」
金目当てに媚びを売られるのは生前から慣れ切ったこと。それ自体は良しとするが、猟兵が本気でそれをやってくるわけなくどうせ騙し討ち目的だろう。それは他人を決して信じない富子の心が導き出す当然の答えであった。
「これが私の忠誠の証です」
それに怯まず、ドゥルールは富子の前に巨大な袋を投げだした。それが立てる床板すらぶち抜きそうなほどの重々しい金属音に、富子は一瞬目の色を変える。
「あ? おい、まさか……」
敵が投げ出したそれに、罠などの可能性もまるで考えないかのように駆け寄って袋を開ける富子。そこから出てきたのは、輝く大判小判……大量の現金であった。
「あ、はははは、なんだよこれ、なんのつもりだよ!」
そう言いながらも、富子はがっつくように袋からそれを取り出し、端を齧って純金製か確かめる。そして浅ましくそれを掻きだして自分の周りに散らばらせる彼女の前に、ドゥルールは同じ袋を二つ、三つと続けて投げだした。
「テメェ……何考えてんだ? 作戦か? こんなんでアタシが油断するとでも?」
そう言って富子はドゥルールを見る。だが、その視線は嘲りにこそ満ちているが、彼女の行動の根幹をなす『怒り』は目に見えて小さくなっていた。
「足りねぇなぁ……這いつくばれよ、無様に犬みてぇに裸になって足舐めてみろよ!」
富子の欲は無尽蔵。金を奪えば今度は尊厳を奪ってやろうと無理難題を吹っ掛けるが、ドゥルールは望むところとばかりに言われた通り裸になって這いつくばり、差し出された富子の足に舌を這わせた。
「アッハハハハハ、馬鹿じゃねぇのテメェ!? じゃ、どこまでそれが持つか試してやるよ!」
言いなりになって油断させ不意打ちするつもりだろうと思い、それからも相手の尊厳を踏みにじるような命令を繰り返す富子。だがドゥルールはその全てを受け入れ、彼女に媚態を見せる。
その間のドゥルールは隙だらけ、もし富子が火矢の怨霊を差し向けていれば、瞬く間に矢襖になり焼き尽くされていただろう。だが富子の背からは矢も、炎も現れなかった。
その怨霊の糧は富子の苛立ち。本来尽きぬはずのそれはドゥルールの撒いた一袋1億9600万円相当の金……【女帝の交渉】によって抑え込まれていた。
相手の心を震わせるほどに従属と幸福の感情を揺り起こすユーベルコード。金への欲以外はすべて苛立ちに支配されそれを力の源とする富子にとって、歴戦の猟兵が恋の奴隷となって大金を貢ぐ事は彼女の金銭欲と自尊心を大きく満たし、まさにこれ以上ないほどに特効と言える効果があった。
相手の感情をトリガーとする技は、その感情を持たないような者には例え格下相手でも何の役にも立たない。逆にそれに支配されたような者に合致したものを当てられれば、上位のオブリビオンですら一手で完封する必殺技ともなり得るのだ。
「貴女を全力でお救いします。猟兵と晴明から。そして貴女自身の渇望から」
そう言ってドゥルールはその力によってばらまかれた金を組み上げ、形を作る。大きな金塊を固めて器にし、その中に貨幣や宝石をたっぷり注いだそれはまさに黄金の風呂。
ドゥルールがそれに入るよう促すと、富子は自らの服に手をかけ脱ぎ去り、その中へ沈み込んだ。
「あ、はははは、入り心地のいい風呂じゃねぇかクソが!」
まさに湯をそうするかのように金貨の山を手で掬っては乱雑に零す富子に、ドゥルールは自らも同じ風呂に入って身を寄せる。
そのまま身を寄せ、口づけ、自らの体で奉仕するその姿はまさに隷属といった様子だが、それをしてくるのが天敵である猟兵であることも忘れたかのように富子は彼女の成すがままにさせている。
そしてその奉仕行動に生命力の吸収が混ざっていても、富子はなおそれにすら気づかないように自らの身を取り巻く金に溺れ続けていた。
結果的に、彼女の身を良いようにしているのはドゥルールの側。そして金に埋もれて外から見えぬその身の貧富を肌で知れるのもまた。
「貴女が本当に幸せになれるよう」
その言葉と思いは、果たして悲しいほどに貧しき心に届くのか。それをそれを願いつつ、ドゥルールは富子の身と欲を交換するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
金ってのは
自由に生きるための手段の一つって思うけど
元々もこんなカンジだったのかもしんないけど
蘇って更に振り切れちまってるのは確かだよな
未来へ進めない過去の化身は
変わらない
変わることは出来ない
哀れに思うぜ
海へ還してやる
戦闘
俺が向かっていけば俺を見る
視線がどちらからくるか
おおよそを見切るのは容易だ
獄炎纏う焔摩天を盾とするように構えて
噴出させた地獄の炎で加速し
間合を詰める
幅広の刃で視線を受けながら
紅蓮の炎をバリアのようにして紫炎を防ぐ
その爆発の威力も
背や脚から噴出した爆炎で相殺
もし傷付いたら
そこから炎を噴出させて紫炎に抗じる
傷付くほど火力が増すって寸法だ
で頃合を測って
二番煎じになっちまうけど
火勢を上げて紅蓮を強く輝かせる
ほんの僅かな間だろうけど視線が逸れる
その機に爆炎加速で一気に踏み込み
紅蓮の光刃の輝きで富子の眼を焼きながら
一刀両断
海でなら安らかな気持ちでいれるぜ、きっと
紅蓮に抱かれて眠れ
事後
鎮魂曲を奏でる
安らかに
「金ってのは自由に生きるための手段の一つって思うけど」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は金銭欲に滾る日野富子に対しそう思う。
「ああ、そうだよ。アタシが生きるためには金が要るんだ! 金があるやつが一番偉いし、金さえあればアタシは満たされるんだ、守られるんだよ!」
手段の一つではなく、金が全てと言わんばかりの富子の姿。激情に飲まれ会話も成り立たない状態のその姿は、まさに鬼気迫るというに相応しいものだ。
「元々もこんなカンジだったのかもしんないけど、蘇って更に振り切れちまってるのは確かだよな」
その金銭欲の深さは日本史の大きな転換点を作り出すほど。それはサムライエンパイアでも、また他の世界の日本でも同様に伝えられていることだ。しかし、最早その戦国さえ終わり、彼女が金をかけたものは滅びているのだ。
「未来へ進めない過去の化身は変わらない、変わることは出来ない。哀れに思うぜ。海へ還してやる」
思考の固着、目的の書き換え、オブリビオンが背負う業を彼女もまた背負っているのだとして、それを断つためにウタは富子に立ち向かう。
「哀れだぁ? 金にもならねぇ戯言しかほざけねぇ貧乏人がイキがってんじゃねぇ!」
それに対しても怒りを滾らせ、ウタを睨みつける富子。その視線はそのまま紫の爆炎となり、大爆発を起こした。
それを剣を構えながら横に動いて避けるが、富子が視線を移してそれを追えばそのまま炎と爆発がそれに追従して移動し、ウタを飲み込もうとする。
さらにフェイントをかけるように左右に振るが、富子は僅かに目と首を動かすだけでそれを捕らえ、ウタを爆発から逃そうとしない。
「チョロチョロ動くんじゃねぇ、目が疲れんだろうが!」
苛立ったように富子が叫ぶが、足を使い体を動かしているウタに比べればただ視線を外さないでいるだけの富子の動きの方がよほど小さい。ほとんどはずすことなく正確に視界内に自分が捉えられていることを確かめ、ウタは大剣を自分の前で構えなおした。
「いくぜ!」
富子の放つ紫の炎に対抗するように、自身の足と背から紅蓮の炎を噴き出させその勢いで突進する。富子はそれを真正面から睨みつけ、巨大な紫の爆発を持ってそれを抑え込むよう迎え撃った。
「そんな汚ぇ鉄屑でアタシを抑え込めるかよ!」
炎同士の押し合いになったことに歯噛みし、より怒りを込めた目で富子がウタを睨みつければ紫色の大爆発がウタを包み込む。
全てを吹き飛ばさんばかりの爆炎。だがその紫色の中から、紅い焔が燃え上がり内側から紫炎を吹き飛ばした。
自らの炎で富子の放つ爆発を押し返したウタ。だが富子もまた上級のオブリビオン、その力は強く、炎の中から現れた体には随所に傷がついていた。
「まだまだ、あんたの怒りはこんなもんか?」
それでもなお炎を噴き出し、富子に迫るウタ。その姿を、富子は憎々しげに睨みつける。
「余裕こいてんじゃねぇ、くたばりやがれ!」
さらに強烈な爆発。何重にも起こるそれはウタの放つ炎を抑え込んでいき、湧き上がる紅蓮も徐々に小さくなっていく。
このまま富子の怒りがウタを押し潰すか。だが次の瞬間。
「燃え上がれ!」
ウタの方向と共に、巨大な爆発がまたも紫炎を吹き飛ばした。今度はそれは火柱となるほどに燃え上がり、富子の眼前までその炎を届かせる。
「ぐあっ!?」
その炎に目を炙られ、富子が一瞬目を伏せる。その一瞬の間に火柱はウタの後方へと移り、強烈なブースターとなってその体を前に押し出した。
「仲間がヒントをくれたんだ。足りない分は俺の血で補うぜ」
他の猟兵も使った、光で富子の視線を遮る方法。怒りを煽れば搦手など考えずひたすら視線をぶつけてくることを見切り、オーバーロードした身でそれを受け耐える。それでついた傷も【ブレイズフレイム】の噴出口とし、全身の力を紅蓮に変えて燃え上がらせれば焔が怒りの視線を放つ目を焼いてくれる。
すぐさま富子は視線を前に戻すが、その時眼前にはもう紅蓮の光刃が迫っていた。
「海でなら安らかな気持ちでいれるぜ、きっと。紅蓮に抱かれて眠れ」
金とは違う太陽の如き輝きが、紫炎もろとも富子を一刀両断した。
「チクショウ……なんで、どいつもこいつも、アタシを……チクショウ……ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ……!!」
背に負った紫炎が大爆発を起こし、富子の体を飲み込む。そしてその後には、ただその炎によって焼け焦げた彼女の財産が残るばかりであった。
ウタは鎮魂曲を奏でながら、それを後にし進む。その先にいる、命なき冒涜者の待つ聖堂を目指して。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『憑装猟書家『晴明クルセイダー』』
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POW : 十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 憑装侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:kawa
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
魔空原城最奥部。そこにはサムライエンパイアには似つかわしくない、西洋風の煌びやかな聖堂があった。
石造りの壁と柱に天使を模した像。そこは日野富子が求めたようなただ金をかけた品のないものとは違う、荘厳な美しさがあった。
その聖堂の中心に、槍と聖書を携えた美童が立つ。
「あぁ……とうとう来ましたか。彼女は体や品性だけでなく、実力にも乏しかったようで」
暗い無表情のまま言う少年。その後ろの空間が揺らぎ、白髪の男が現れた。
「まあ、いいでしょう。生殖ゾンビの試作品程度にはなりました……おっと、そう言えば彼女は魔軍将唯一の女性でしたね。折角だからこの子と交配させてみても面白かったかもしれません。もう少し早く気づいていればよかった……どんな下手物が生まれることやら」
男は悪趣味極まりない笑いを浮かべ、少年の頬を撫でた。
何を言われ、されても少年の表情は変わらない。当然である。彼はもう、死んでいるのだから。
少年はこの『ぱらいそ礼拝堂』の主にしてサムライエンパイアのオウガ・フォーミュラ、クルセイダー。彼は後ろに浮かぶ男、安倍晴明を利用しようとして逆に命と体を奪われ、その操り人形と化したのだ。
「この子も中々器用な技を持つようですが……この程度なら肉なきこの身でも真似るのは容易い。魂なき肉に使わせるのもまた」
晴明はクルセイダーの体をわざと滑稽に動かしつつ、自分も別に動いて見せる。彼の言に偽りはなく、魂と肉体を別々に動かしそれぞれにユーベルコードを使わせるのも、彼の技量をもってすれば容易い事だろう。
「さて、この肉体を使ってやってみたいことは色々ありますが……いずれにせよ、あなた達を排しなければ叶うものではありません」
晴明がクルセイダーの後ろにつくと、死したその肉体が本を開き槍を構える。
「さあおいでなさい猟兵。この晴明クルセイダーが、あなた達をぱらいそへお導きしましょう。生殖するゾンビ溢れるいと悍ましきぱらいそにね!」
オウガ・フォーミュラさえ飲み込んだ底なしの悪意。
猟兵よ、命をどこまでも安く見る貧しき魂と空の肉を、あるべき場所へ叩き落とすのだ!
桃園・陽明
あなたがボスの晴明クルセイダーね!
愛の力でやっつけてあげる!
アムレイザーの【エネルギー弾】【誘導弾】で十字槍の射程外から攻撃をしかけて向こうがこっちに間合いを詰める必要がある状況を作る
そして晴明クルセイダーがUCの間合いに飛び込んできたらアムリボンの【ロープワーク】で十字槍を絡め取ってUCを使えなくする
十字槍よりもアムリボンの方がリーチは長いからね!
晴明クルセイダーがリボン振りほどこうとしたらその動きを利用してクルセイダーを十字槍ごと巻き込んで【リッパーリボン】で斬り裂いてダメージを与える
霊体の晴明にも、エネルギーなら攻撃出来るはず!
魔空原城の最奥、『ぱらいそ礼拝堂』。無数の番兵と蘇りし大悪災を乗り越え猟兵がここにやってきたのは、偏にそこにある男を撃ち滅ぼすため。
「あなたがボスの晴明クルセイダーね! 愛の力でやっつけてあげる!」
まず最初に礼拝堂へと飛び込んだ桃園・陽明(ピンクアムール・f39180)が、その男の名を呼んで堂々とそう宣言した。
「ああ、それはいけません。愛とは滅ぼすものではなく、慈しみ、育てるもの。あなたにも真の愛を伝道して差し上げましょう」
その答えは、一見聖職者のようなそのいでたちに相応しいもの。しかし、その真意は全くの悪意に満ちていることはここに来た猟兵にはすでに分かり切っていた。
「心にもないことを……!」
陽明もそれを見越して相手を睨みつければ、その背後の空間が揺らいで白髪の男が姿を見せる。
「おや、ご理解いただけませんでしたか? それでは言い直しましょう。死んで生殖型ゾンビになってもらい増殖の種になってもらいます」
肉体の真の操作主、安倍晴明のその言葉に、陽明は怒りと共に『アムレーザー』を撃ちかけた。
「おっと、鉄砲とはよろしくない」
その攻撃を、晴明は少年、クルセイダーの体を操りひょいと避けさせた。
それに構わず陽明は次々レーザーを撃ち続けるが、その攻勢と裏腹に足は下がり、クルセイダーから離れていく。
「ふむ……せっかく槍を持っているのにこれでは役に立ちませんね」
リーチが売りである槍も、銃の前では無力。クルセイダーは槍を突き出しつつ足を進め、陽明を追いかけていく。
広いぱらいそ礼拝堂だが、室内ということもありいずれ背は壁につく。。
「さてさて、後がありませんが、どうするつもりで?」
その陽明に、クルセイダーが持つ十字架をかたどった槍を悠長に持ち上げて問う晴明。それに対し、陽明は何も答えず銃を構えて睨みつけるのみであった。
そしてクルセイダーがその槍を突き出す。その瞬間、陽明は銃を引き代わりに『アムリボン』を振るってその槍に絡みつけた。
「十字槍よりもアムリボンの方がリーチは長いからね!」
相手の踏み込みより先にリボンを絡みつけ、そのまま強引に抑え込む陽明。刃のみならず柄の部分まで抑え込んだそれは、クルセイダーがいかに槍を振り回そうとその動きを抑え完全に自由を奪っていた。
「このような細腕にまで負けるとは……持ち主の兄上をどうにかして調達すべきでしたか。いやしかしあれは性格が……」
その力比べを悠長に眺めながら呟く晴明。クルセイダーはその華奢な外見相応に筋力はさほどでもなく、女性ながらヒーローである陽明とは力比べにおいては劣勢をとっていた。
「仕方ありません。ではこちらで」
クルセイダーの持つ槍に光が灯る。それは槍から光線となって迸り、アムリボンとそれを持つ手へと襲い掛かった。
そしてその瞬間、アムリボンにもまた光が灯る。
「リッパーリボン!」
その光は正義のエネルギー。【リッパーリボン】となったアムリボンは光線と引き換えに引こうとしていた槍の動きに合わせ、その勢いを利用し捉えるかのようにクルセイダーへと襲い掛かった。
今度はエネルギーの刃となったリボンが齎すのは拘束ではなく切断。クルセイダーの体は深く切り裂かれ、保持できなくなった筋力によって槍を取り落としていた。
「霊体の晴明にも、エネルギーなら攻撃出来るはず!」
そしてさらに晴明も。そう確信した陽明だが、その目に移ったのは体を崩すクルセイダーの後ろで余裕の表情を崩さない晴明であった。
「ええその通り。肉もないこの身、それを受けていたら危なかった」
アムリボンは晴明には届かず、その前の床を切り裂くにとどまっていた。そして晴明の手には、クルセイダーのトレードマークであった分厚い本が。
それは『憑装侵略蔵書「ぱらいそ預言書」』。猟書家を猟書家たらしめる秘本であり、その記述を読むことによって敵の攻撃を予知し、回避するユーベルコード。ユーベルコードを抑えられた状況をユーベルコードで凌ぐ。これこそが一人で二つユーベルコードを用いることのできる晴明クルセイダーの恐ろしさであった。
「まさに肉を切らせて骨を断つ……この場は痛み分けとしましょう」
晴明の言葉と共に、陽明の右手に激痛が走る。十字槍を抑え込む……『命中』状態であったリボンの柄への攻撃に巻き込まれ、その手の内部の骨が溶かされていた。
このまま戦い続けるのは難しいが、一方で晴明が回避するためリッパーリボンをもろに受けたクルセイダーも、すぐには立ち上がれない。
一対一でありながら二対一。その特殊な状況は、容易に勝者を決められぬ状況を作り出していた。
苦戦
🔵🔴🔴
蒼井・美奈
もうなりふりなんて構っていられない
身体を隠していた襤褸布を剥ぎ取り、生まれたままの姿になる
本気の私、見せてあげるわ!
UCの二回攻撃は確かに脅威だけど、意識が一つしかないのなら二つ同時に操るのは難しいはず
まず【見切り】で晴クルがどのUCで攻撃するかを見極め、そして敵の発動と同時に【ダッシュ】【空中浮遊】【空中機動】で三次元機動で晴クルを翻弄して懐に飛び込むと同時に敵の預言書の記述を読みづらくする
猿軍団は【ルミナオーバーロード】で晴クルもろとも焼き払い、十字型の槍は【フェイント】で回避してから【カウンター】で自慢の金髪で晴クルを切り刻む!
そして追い打ちの【ルミナオーバーロード】!
晴明クルセイダーへの道は決して平坦なものではない。不死の番兵である超・貧乏神の群れ、生殖型ゾンビの肉体を得て全盛期の力を取り戻した日野富子、それらの障害を乗り越えなければ、彼への道を開くことは出来なかった。
そして、その過程を経たからにはそれ相応に傷が入っていて当然である。
肉体にも。そして、装備にも。
「もうなりふりなんて構っていられない」
蒼井・美奈(ルミナサファイヤ・f38072)はここまでの戦いで散々に傷つき襤褸と化した衣服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になって晴明クルセイダーと向かい合った。
その彼女の姿を、晴明は嘲笑を持って出迎える。
「おやおやこれは……襤褸は着てても心は錦、と言いますが……それすらないのは流石にどうかと」
貧しい心を豪奢な着物で飾った富子へ向けていた嘲笑を、それが反転したような美奈にも同じように向ける晴明。
しかしそれが煽るのは、羞恥ではなく正義の怒り。
「本気の私、見せてあげるわ!」
相手の嘲笑を跳ね除けるかのように、美奈は勇ましく晴明クルセイダーを睨みつけた。
そしてそれはただ睨んでいるだけではない。怒りを宿しながらも、その目は冷静に相手の挙動を観察していた。
(UCの二回攻撃は確かに脅威だけど、意識が一つしかないのなら二つ同時に操るのは難しいはず)
晴明クルセイダーは魂と肉体を別々に動かし、ユーベルコードさえそれぞれで使うことができる。しかし、クルセイダーの肉体は自分で動くことは出来ない意思なき屍。それを動かすのはあくまで晴明の意思であり思考。
そして自在に動かせるということは、逆に言えば動かすためには自分の意思を割かなければならないということである。
「さて、それでは……」
晴明が後ろに引き、クルセイダーが踏み出す。それを見て、美奈はどちらがどの技を用いてくるかを瞬時に当たりを付けた。
「フェン!」
晴明の前から大量の毛玉が飛び出し、美奈に向かって一斉に飛び掛かった。それに対し、美奈は空中に跳びあがってその突撃をかわす。
さらに次々と飛び掛かりを繰り返す秀吉軍団だが、大聖堂の高い天井を活かして自在に飛び回りその身を捕らえさせない。
「正義の雷でおしおきよ!」
そこに重ねるは【ルミナオーバーロード】。127メートルを覆う雷はその中にいる者全てを打ち据える。無数に湧き出る代わりに立った一撃で消える秀吉の群れには、まさに特効とも言える相性だ。
だが、焦げ消えていく茶色の群れの中に金色の光がきらりと光った。
それはクルセイダーの持つ十字槍「人間無骨」の切っ先。雷の一撃にも耐えるクルセイダーの放つ鋭い上段突きが毛玉の海から突き出され、中空の美奈を貫かんとする。
「そっちはそうよね!」
が、それに対しては突然空中で反転することで躱し、槍を自分に届かせない。
召喚ならば前に出る必要はなく、ならば秀吉に埋もれたクルセイダーの方が槍をついてくるだろう。相手の動きからそこを読んだ美奈は、秀吉をなぎ払ってなお勝負が決したと油断はしなかった。
しかし、未熟者とはいえクルセイダーもオウガ・フォーミュラ。落雷も恐れず槍を突き出し続け、それに僅かでも触れてしまえば骨が溶かされる。
それを避けるため、美奈は槍とすれ違うように長い金髪を叩きつけ、それを刃としてクルセイダーの身を裂いた。もし槍に触れてしまえばそれに一番近いのは頭。頭蓋骨を溶かされてしまえばそれは手足を失うのとは比較にならぬ致命傷となるが、瞬時の斬撃に抑えることでそのリスクを最小限に抑える。
「槍を持てど未熟、忠篤き侍なれど身を惜しまなさすぎる……ままならないものです」
クルセイダー、秀吉双方が抑えられている様に首を横に振る晴明。
操る者と召喚した者の戦いに高みの見物を決め込むその姿だが、美奈はそれを決して見逃さない。
「関係ないって顔しないでよね! 本当におしおきが必要なのは、あなたなんだから!」
今度ははっきりと、晴明を見据えそこに届くようルミナオーバーロードを降らせる。青き雷が霊体の晴明に落ち、今度はしっかりとその身を捕らえた。
「えぇと、誰でしたっけ? 魂に磁場云々と言ったのは……他人の説を我が身で証明してやるほどお人好しではないつもりですがね……」
余裕ぶった口調はやめない晴明だが、クルセイダーの動きが止まり秀吉の群れは消えている。それこそが、降り注ぐ雷が悪しき霊に正義の仕置きを下した証であった。
成功
🔵🔵🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
離反者でも、その危険があるわけでも無い味方を殺害し、尚嘲笑いますか。
相容れない間柄ですが、落とし前だけは彼等に手向けさせて頂きましょう。
『FAS』により飛行、『FLS』の空間歪曲障壁を展開しまして。
『FPS』で敵方の動きを探知、攻撃に時機を合わせ『FIS』で狙えない位置に転移すれば『十字槍』の回避は可能ですぅ。
そして【錺剿】を発動し『領域』と『波動』で戦場全体を覆えば、『召喚』には『纏めて排除する[範囲攻撃]』として、『預言書』には『予測しても回避可能な位置の無い飽和攻撃』として扱えるでしょう。
更に攻撃用の全『F●S』を重ねて[追撃]、『超重力』『存在吸収』『自壊誘発』を含む何れかで、僅かでもダメージが入れば連続攻撃が可能ですぅ。
敵の拠点である「城」を対象に含め「城へのダメージ」が適用出来れば最良、『祭器』である『刀』で「私」を対象として軽く斬り、『祭礼の女神紋』で『祭器』化した肉体を修復し強制的に連撃を続けることも出来ますので、殲滅完了まで攻撃を繰返しますねぇ。
晴明は口調こそ丁寧だが、使う言葉は相手を愚弄し、侮辱するようなものを好む。己を使役しようとして逆に命を奪われたクルセイダーのその行為を蛮勇と呼び、また生殖型ゾンビとしての肉体を与えた日野富子も面と向かってはふざけて、死した後は本気の侮蔑を持ってその存在を虚仮にした。
「離反者でも、その危険があるわけでも無い味方を殺害し、尚嘲笑いますか」
慇懃無礼を地で行くその姿勢を、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は冷たくそう言う。
「いえいえそんな。私だって必死だったのですよ? 何しろ得体のしれぬ天使などに無理矢理入れられ良いように使われて、こうでもしなければ私の身はどの様に穢されていたことか……ああ考えるだに恐ろしい」
それに対し晴明は、猟書家の一人大天使ロロサエルに憑装として降ろされていたことを引き合いにしてそう答える。だがオウガ・フォーミュラであるクルセイダーさえ死に追いやった彼の事、その気になればいつでも逆らうことなど出来たのだろう。嘲笑を浮かべたままでいうその姿勢はそれを隠すつもりもないように見えた。
「相容れない間柄ですが、落とし前だけは彼等に手向けさせて頂きましょう」
最早言葉のやり取りは無意味。己の意思だけそう告げると、るこるは晴明クルセイダーの頭上に浮き上がり、『FLS』による空間歪曲障壁を前面に張った。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『宝冠の加護』をお与え下さいませ」
その上で【豊乳女神の加護・錺剿】を発動、周囲に超重力と相手の存在を奪い、破壊する領域や波動、さらに各種兵装まで展開して晴明クルセイダーを封殺にかかった。
「おやおや、これでは秀吉装は使い物になりませんね。困った困った」
一撃で消え去る無数の秀吉は広範囲攻撃には無力。これでその攻撃は封じられたも同然だが、晴明はわざとらしい様子で首を振るだけ。
それに構わず、るこるはいくつもの兵装を一気に晴明クルセイダーへと差し向けその身を滅ぼしにかかる。いくつもの砲撃やレーザー、斬撃がクルセイダーの美しい容姿が見えなくなるほどに殺到し、その体を破壊せんとした。
クルセイダーはそれを意識がないとは思えないほどに素早く、華麗なまでの動きで回避していく。重力がかかっていることを無視するほどのその動き方は、戦前に見せていたふざけたような動かし方でなく晴明が本気でその肉体を操作して為させたものだろう。
だが、それでも全ての攻撃や周囲を覆う波動などまで避けるには至らない。それらがクルセイダーの体や荘厳なその衣装を僅かでも掠めれば、再度また全ての攻撃が晴明クルセイダーへと向けて襲い掛かった。
クルセイダーは手に持った預言書を開き、その内容に従いその全てを回避しようとする。だが、そこには如何なる記述が書かれていたものか。クルセイダーはその足を止め、まるで回避を諦めたような姿勢を見せた。
るこるの狙いは『予測しても回避可能な位置の無い飽和攻撃』のような記述を書かせ、予知による回避そのものを封じること。もしそれが叶っていたとして、あの体を動かしているのは晴明である。そう潔く諦めるものか。
瞬間、るこるの豊満な体の縁ぎりぎりを鋭い刃が通り過ぎた。
「おや難しい。ただ視界を歪めているだけではないようだ」
すぐ近くから聞こえた声。晴明がるこるのすぐそばまで浮き上がり、その手に持った十字槍を突き出していた。その下では、大きく破壊されたクルセイダーの命なき体が転がっている。
避けられない、そう判断した時点で晴明はクルセイダーの操作を放棄し、彼にかかる攻撃に紛れて幽体の体を活かしるこるの場所まで浮き上がっていたのだ。
どうせ自分がいれば死体は直せる。まさに一切相手に対して情などない晴明らしい回避方。クルセイダーが捨てられたことで一時的にそこへのダメージの計測も止まったのか、怒涛の追撃が一瞬止む。その間隙を突き、晴明はもう一度槍を突き出そうとした。
だが今度は、ぱらいそ礼拝堂の石壁にひびが入る。そしてそれと同時に、今度は晴明を中心に攻撃の嵐がまた巻き起こった。
戦場である城自体にダメージを入れることで、再び連続攻撃を開始したるこる。だが、晴明の邪悪でありながら聡明な頭脳はこの連続攻撃の仕組みを徐々に見切り始めていた。
「ああ、なるほど。どうやら何かを傷つけられれば攻撃は続くのですね。ですが、この城は広い。肉もない我が身はその中で余りにも矮小……ほらまた壁が崩れた。おっと、今度は柱が邪魔ではありませんか?」
言を弄することで連続攻撃の方向を城全体に散らし、自身への影響を薄めようとする弁舌。晴明自身を一度対象に取れればそこからは何とかなるが、幽体であるその身を弄しその一度をさせないよう時間を稼いでいる。
もちろん彼もそれが僅かにしか持たないことは分かっているのだろう。槍を構えるこるを突き刺そうと飛来する。
それが自身に当たる前、るこるは刀を抜き、その刃で自らを傷つけた。
そのダメージに追随するように、るこるの周囲に攻撃の嵐が巻き起こる。それは槍を構え近接戦を挑んでいた晴明を巻き込み、そして今度こそその幽体を攻撃の渦の中心へと据えることに成功した。
「なんと……しかし、あなたも……!」
中心が移ったとて場所は至近、るこるにも余波がいき自爆は免れないのでは。そう思う晴明であったが、るこるのその傷はつく端から塞がっていく。
るこるの用いたユーベルコードの攻撃以外の効果。それは自身の身を『祭器』と化し、修復能力を与えること。あくまで傷ついた端から治るだけなのだから、その瞬間の痛みはある。なまじ全快してしまうだけに、それは最大の状態から何度でも繰り返される。
しかし、命も痛みも捨てた敵、奪われた骸を滅せるのなら。オーバーロードしたそのダメージを届けるため、るこるはそれに躊躇などなかった。
物理、非物理双方の力の無限の繰り返しが晴明の幽体さえ乱し、砕き、それを地に叩き落とす。
「これは……なまじ痛いだけよりよほど恐ろしい……! おのれ、猟兵……!」
道化じみた様子を消したその声は、仮面なき剥き出しの魂からの言葉。肉体も命もなくとも滅びを持って誅すことはできると、るこるは全てを冒涜した男に終わらぬ攻撃を降らせ続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
控えめに言ってクズだよね、これ
だけど、こいつを倒さなきゃならない
…決して楽な事じゃないんだけど
それでも、救いはウィーリィくんが傍にいる事
ボクたちなら、勝てる
晴明とクルセイダーを【挑発】して使うUCをSPDとWIZに固定
そうすればウィーリィくんとの連携も取りやすいからね
「おかしいな、よほどの未熟者でもなければそのくらい楽勝なのに」
「一人前のオウガ・フォーミュラなら未来を読むくらい楽勝なのになー」
乗って来たら、ウィーリィくんと一緒にミニ秀吉をブラスターの【弾幕】【乱れ撃ち】【クイックドロウ】で蹴散らしていく
で、ウィーリィくんとタイミングを合わせて乱戦に紛れて敵がUCで預言書を出した瞬間、【早業】と【先制攻撃】で【ゴースト・シャーク】で預言書を奪い取る
【ゴースト・シャーク】は不可視だから預言書にも書きようがないからね
混乱に乗じて【早業】【ロープワーク】【罠使い】で足元にスネアトラップを作り、ウィーリィくんの攻撃に合わせて晴明の脚を掬い、攻撃をサポートする。
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
UCを二回使えるってのは厄介だな。
それでも、こいつはオウガ・フォーミュラを完全に滅ぼすチャンスだ。
こんな奴、野放しにしてたまるかよ。
基本的にUCってのは一度にひとつしか発動できない。
だから相性が悪いUCがあっても問題はない。
けど、こいつらはそれが「出来てしまう」。
そこに攻め込む隙がある。
シャーリーの口車で敵が使うUCは読めた。
あとはそれをどうぶつけるかだ。
シャーリーと一緒に秀吉たちを大包丁の【斬撃波】の【範囲攻撃】でまとめて薙ぎ払いながら【ダッシュ】して晴明とクルセイダーの元に向かう。
当然奴らはUCの預言で俺の未来を予想しようとするだろうけど、シャーリーは預言の対象になっていないから彼女に預言書を盗んでもらう。
そしてその隙に晴明とクルセイダーに【超音刀工】で斬りかかり、周囲を取り囲むように衝撃波を放って追撃する!
陰陽師安倍晴明。最強の陰陽師として日本のある世界では極めて著名な存在であるが、オブリビオンとしてサムライエンパイアで彼が行った活動はまさに外道そのものと言えるものであった。
退屈しのぎの戯れに大戦に混ざり、猟書家の力として侵略に手を貸し、それが佳境に至った所でオウガ・フォーミュラさえ裏切って命を奪い多くのゾンビを作り上げては嘲笑う。
「控えめに言ってクズだよね、これ」
シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)がその所業をそう切り捨てた。どんな言葉をもってしても彼の非道を正しく表現することなど出来ないだろう。その『控え目』な言葉で表現するのが精いっぱいの相手は、しかし同時にやはり表現し難いほどの実力を持つ強者。
「UCを二回使えるってのは厄介だな」
ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は今までに類を見ないその力に着目する。どんな強者であろうと、ユーベルコードは一人一つ。同じものを複数回重ねることはあっても、違うものを併用することは出来ない。肉体と魂を別のものとして用意することでその大原則を破って見せるその掟破りさに、ウィーリィは相手が今までにないタイプの強敵であることを強く認識した。
「それでも、こいつはオウガ・フォーミュラを完全に滅ぼすチャンスだ。こんな奴、野放しにしてたまるかよ」
そして、それは強者の肉体と魂それぞれを滅する好機であることの裏返し。魂に肉はとうになく、肉の魂は敵自身が食らってくれた。これを滅ぼせば、サムライエンパイアでの猟書家の侵略に決着がつく。
「……決して楽な事じゃないんだけど、それでも、救いはウィーリィくんが傍にいる事。ボクたちなら、勝てる」
その難行を共に成すべく、二人は晴明クルセイダーと向き合った。
「ああ、なんと仲睦まじい。ご安心ください、あなた方の生殖器はきちんと残して差し上げます。ゾンビとなって思う存分繁殖してください」
生命への侮辱を詰め込んだその言葉。それにシャーリーも言い返した。
「おかしいな、よほどの未熟者でもなければそのくらい楽勝なのに」
なぜさっさとそうしないのか。安い挑発ではあるが、戯れのつもりか晴明もそれに乗る。
「これは失礼。なにしろ動かす肉の方があまりにも未成熟すぎて」
クルセイダーの方を見て晴明が言い、そしてシャーリーもまたそれに返す。
「一人前のオウガ・フォーミュラなら未来を読むくらい楽勝なのになー」
オウガ・フォーミュラの中でも未熟者であり、それ故晴明に滅されたクルセイダー。その意思は既に消え失せているので何を言われようと彼自身が反応することは決してない。だが、それを操る晴明はその性質と実力故、相手の手に自ら嵌ることさえ戯れに行う気質でもあった。
「仰る通り。ここは私が動かねばなりますまい。よく見ておくのですよ」
見て理解するための知能も自分で破壊したクルセイダーにわざとらしくそう言い、晴明は軽く指を鳴らし大量の毛玉生物豊臣秀吉を召喚した。その瞬間、シャーリーがウィーリィに目配せする。
(基本的にUCってのは一度にひとつしか発動できない。だから相性が悪いUCがあっても問題はない。けど、こいつらはそれが「出来てしまう」)
猟兵の絶対的優位の一つは予知によって相手のユーベルコードが戦う前からわかること。それ故、敵が自身の能力と相性の悪いものを持っていればそれを誘発しないよう戦い方を選ぶことができる。しかし、晴明クルセイダーは二つのユーベルコードを使うことでその対処を困難にし、嫌でも苦手な能力とぶつからざるを得ない状況を作り上げてくる。
(そこに攻め込む隙がある)
しかし、それでも取れる策、対応法はある。
「刀工の高みに限界はない!」
迫りくる秀吉の群れをウィーリィが【超音刀工】で切り払う。その斬撃は一撃で消える秀吉にはオーバーキルだが、後に残った衝撃波は後から来る秀吉に対しての置きトラップにもなり、その進軍を来る端から押しとめていく。さらに後ろからシャーリーがブラスターを撃ちかけることで秀吉の群れに穴をあけ、晴明クルセイダーへの道を開かせた。
そこを一気にかけ、ウィーリィはクルセイダーを狙う。
「おっと、どう動くのでしょうか」
クルセイダーの手が動き、持っていた本を開いた。それは『ぱらいそ預言書』、そこにある記述に従うことで相手の攻撃を予測し回避するそれを、クルセイダーは確認しようとする。
だが、次の瞬間預言書はクルセイダーの手から消え失せていた。
「おや……?」
不意の事に晴明が疑問の声を上げる。だがその瞬間、クルセイダーの足元にはロープが巻き付いていた。
「派手なばかりが海賊じゃない、ってね」
そのロープの片側を持つのはシャーリー。そしてその手には、クルセイダーの手から消え失せたぱらいそ預言書が握られていた。
挑発を繰り返すことで晴明とクルセイダーがそれぞれどのユーベルコードを使うかを固定させ、さらにウィーリィが切り込むことで彼への対処を主眼に置かせる。最後に【ゴースト・シャーク】で預言書そのものを奪い取り、読むことが条件となるユーベルコードの発動自体を妨害する。
オーバーロードで高まった力を連携させ合い、二つのユーベルコードという未曽有の反則種を乗り越えたそれは、ただの生殖とは一線を画する思い、愛と呼ぶべきものが為し得た結果であった。
そしてオーバーロードもまた不可能を可能にする力。シャーリーのロープはクルセイダーだけでなく晴明の足までも絡めとり、それを引き上げることで転倒させる。そしてそこをウィーリィの【超音刀工】が切り裂き、さらに衝撃波が逃げ場ないほどの追撃を浴びせた。
「彼と心中しろと……? 生憎そのような趣味はありませんよ……」
今度はクルセイダーを盾に逃げることも許さない。共に滅びゆけと、共に生きる二人の力が晴明クルセイダーを滅びへと近づけるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【WIZ判定】
…まぁだ懲りていなかったんだ
いい加減しつこいよ、"セイメイ"
その…クルなんとかちゃんの身体で遊んでいないで、とっととガイオウガやグレイズモンキーと同じところへ逝ってくれない?
UCは「ワタシの死王ちゃん」を使用
"セイメイ"にとって見覚えのありすぎるだろう『水晶』の嵐で攻撃するね
二回攻撃でどちらが動くかは【第六感】【気配感知】【野生の勘】【幸運】【戦闘知識】で感知・回避するね
多数の秀吉は水晶の嵐による戦場全体への【範囲攻撃】で対処するよ
槍と光線については【第六感】【気配感知】【野生の勘】【幸運】【戦闘知識】と槍を持つ側の動きを注視して回避を試みるよ
万が一攻撃が当たっても、体表の外骨格化と肉体の水晶化で多少は耐えられるはず
(秀吉を見て)
…う~ん、やっぱりいつ見ても姿は可愛いんだよね
『フェンフェンフェ、フェン!』
おぉ…流石はグレイズモンキー…カッコイイ事を言うねぇ
あのナースちゃんがドキッとしちゃうのも納得だよ
ま、容赦はしないけどね!
オブリビオン安倍晴明が猟兵の前に初めて現れたのは2019年。一度倒され消え失せた者はもちろん、何がしかの手段をもって復活した者さえ再度倒れ、そして過去の話にされるに十分な時間が空いている。
その期間を経てなお猟兵の前に現れ続ける彼にうんざりするという感情は、決して理解しがたいものではないだろう。
「……まぁだ懲りていなかったんだ。いい加減しつこいよ、"セイメイ"。その……クルなんとかちゃんの身体で遊んでいないで、とっととガイオウガやグレイズモンキーと同じところへ逝ってくれない?」
だが、クローネ・マックローネ(快楽至上主義な死霊術士・f05148)の言葉にはそれ以上の長き年月が含まれていた。その時を乗せた言葉に、晴明は大袈裟に首を振る。
「おやおや、せめて私に縁深いオブリビオンの名を使っていただけませんかねぇ。既に逝った同胞なら武田信玄や風魔小太郎がいるじゃないですか」
他の魔軍将たちの名を出す晴明だが、同世界の存在の名を出すというその行為自体が相手の弁を肯定しているのと同じ。
やはり『変わらぬ』晴明のその姿勢に、クローネは【ワタシの死王ちゃん】を持って答えた。
「強い者程身体が骨と水晶だらけになる?……ちょっと死王ちゃん。それワタシのブラックタールの身体の場合ってどうなっちゃうの? ねえ?」
召喚された『|死王《ノーライフキング》』が水晶の嵐を発生させる。その光景、そしてその詠唱に|晴明《セイメイ》はもう一度大きく首を振った。
「ああ、なんなのでしょうこれは。全く未知の技法で、どうすればいいかさっぱりわかりません!」
本当に知らないなら『ぱらいそ預言書』でも見ればいいだろう。だがそれをしない……する必要もないということは、このユーベルコードの理屈は晴明にとっては深く知ったものということだ。
そして預言書を見ないなら使う技は他の二つ。しかしどちらがどちらを使うのか。それはその瞬間までの晴明の胸先一つで変えられる事であった。
そう、『晴明』の。既に死したクルセイダーに自らの意思はない。その肉体がユーベルコードを使おうと、それはあくまで晴明の意思によるもの。そしてクローネにとって、その『セイメイ』のやり口は分かり切ったものであった。
晴明の言動、動き、自らの言葉への反応に注視し、相手がどう動くかを察する。相手の聡明さと悪辣さから最後の最後は勘と運に頼らざるを得ないが、はるか以前からの戦いの知識がその時の確立を上げてくれるはず。
「さあ、それではお相手して差し上げなさい。『魔軍将豊臣秀吉』」
わざわざ秀吉の名を強調して秀吉装を召喚する晴明。どんな行為も戯れ交じりに行うその性質、挑発されれば全て分かった上で嵌りに行くその気質。オブリビオン『以前』の話をすればこいつなら嬉々として乗ってくるはずというクローネの直感が、晴明の方がこちら側を使ってくると教えていた。
迫る大量の毛玉だが、戦場全体に次々生えてくる水晶に触れるだけで消滅していく。何しろこの水晶はある種の『強者の証』。数こそ恃みで強さはそこそこな秀吉は、それに抗することは出来ず次々と倒れていった。
その姿を見て、クローネは呟く。
「……う~ん、やっぱりいつ見ても姿は可愛いんだよね」
手足の生えた毛玉という武将にあるまじきゆるキャラじみた見た目。しかしてその内面はというと。
『フェンフェンフェ、フェン!』
まさに武人の鑑、ある意味では秀吉の一般的印象を裏切る勇壮かつ剛毅なる言葉。
「おぉ……流石はグレイズモンキー……カッコイイ事を言うねぇ。あのナースちゃんがドキッとしちゃうのも納得だよ。ま、容赦はしないけどね!」
そのギャップもまた良しと、彼の『実績』を添えてクローネはそれをほめたたえる。
「昔語りはそのくらいに……年寄りの昔話ばかりでは今時の子は拗ねてしまいますよ?」
その言葉を遮るかのように、当代のオウガ・フォーミュラであるクルセイダーの肉体が踏み込んで槍を突き出した。未熟とはいえフォーミュラの座に就かんとした者、水晶が軽く触れただけでその足が止まるようなことはない。
突き出されたその槍を、クローネはユーベルコードで強化された身でよける。だが回避よりも防御に向いたその身は鎧の如く突き出した水晶が仇となり、そこに僅かに切っ先が振れてしまう。その瞬間、槍から無数の光線が放たれ、槍を掴む手に襲い掛かった。
掠る程度だろうと当たりは当たり。命中さえすればその部位は光線の餌食となる。骨をも溶かす光がクローネを襲い、その部分を輝きの中に包んだ。
「……やっぱり、ね」
その光の向こう。そこには溶かされた外骨格と、それがなくなったことでよりはっきりと見えるようになった死の輝き持つ水晶があった。
ここまでで晴明が自らが思う通りの存在だと確信したクローネ。ならば肉の変化した水晶ならこの光線さえ耐えられるという直感に従い、多少の被弾は踏み越えることとしたのだ。その想像通り、犠牲とするのは外骨格だけで済んだ。
そして、ここから新しき力を踏み越えていくのは過去ではない。現代の超克にして反則技、オーバーロード。
それを持ってクローネは水晶の嵐を突き出し、秀吉を吹き飛ばしてクルセイダーを押しのけ、死王と共に一際巨大な水晶が晴明を突き刺した。
「さっきも言ったけど強い者程身体が骨と水晶だらけになる……ってことは、骨も体もない今のアンタって、最弱ってことじゃない?」
「なるほど、そう言われてみれば……ふふ、これは滑稽な……ふははははは……!」
強がりか、自嘲か、あるいは他の何か。ともあれ、肉も骨もなき男は最後の魂まで死に迫られながら笑うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
大概な野郎だな、晴明
過去の残滓だから、かもしんないけど
歪んじまって可哀想に
操られるクルセイダーも哀れだよな
二人まとめて海へ還すぜ
戦闘
全身から噴き出す爆炎の勢いで一気に間合を詰め
獄炎纏う大剣を振るう
焔摩天なら槍の間合ともやり合えるぜ
当然回避するんだよな
預言書とやらを読んで
織り込み済みだ
外れた大剣が火花散らしながら
聖堂の床や壁を削る
で爆破だ
晴クルの足元が崩れ
破片が晴クルを襲う
まあこれも同上で回避されたり
槍で防がれるんだろう
けど槍を防御へ向かわせただけで十分だ
この状況は即ち
爆発の粉塵と
宙を舞う火の粉が視界を狭め
炎が生む気流が頁を捲る
つまり未来の記述を読めないってコトだ
意識は一つだからな
付け入る隙があって助かったぜ
焔摩天を一閃
クルセイダーの腕や槍を操作して晴明を攻撃させる
そのまま槍を蔦って
紅蓮がクルセイダーと晴明へ延焼し焼却
地獄の炎だからな
当然魂も燃やせる
晴クルをまとめて爆破し
海へ還す
事後
鎮魂曲を奏でる
海で安らかに
命というもの全てを愚弄し、弄ぶ。晴明の行いは全てがその悪意に溢れていた。
「大概な野郎だな、晴明。過去の残滓だから、かもしんないけど歪んじまって可哀想に」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は晴明の行為に強い怒りと一抹の憐みをぶつける。だが、晴明がそれに返すのはやはり嘲笑であった。
「哀れむのでしたら精神より境遇を哀れんでいただきたい。何しろ生殖ゾンビを自由に作れるようになるまで4年も遠回りをさせられたのです」
そう言う晴明の傍ら。そこには暗い表情のまま槍を握った美少年の姿がある。彼もまた暴虐を成したオウガ・フォーミュラではあるが、今は命奪われ晴明の傀儡と化した者。
「操られるクルセイダーも哀れだよな。二人まとめて海へ還すぜ」
両者を共に倒すため、ウタはその背から爆炎を放ちそれを推進力にして一気に詰め寄った。そのまま巨大な剣を一薙ぎにするが、豪奢な衣装で軽々と動き晴明クルセイダーはそれをひらりとかわす。
「さて、なるほど。あなたは……ああ! そうですかそうですか、その炎を」
後ろにいる晴明の手には『ぱらいそ預言書』。そこにある記述を読んだ晴明は何かに興味を持ったような表情になり、ウタの撒いた炎を見る。その眼前で、目標を失った剣が聖堂の石壁を削り、火打石の如く火花を散らせていた。
「その炎の恐ろしさは見ずとも分かりますよ。そして、その剣の威力も……ね」
その瞬間、火花が何かに着火したかのごとく大爆発を起こす。それはダイナマイトによる発破かのように石でできた聖堂を噴き飛ばし、巨大な岩雪崩として晴明クルセイダーへと襲い掛からせた。
「そして、躱させる気もないと」
その言葉と同時に、床にも叩きつけられるウタの剣。そこでもまた爆発が起こり、床の石を間欠泉の様に巻き上げて晴明クルセイダーを下から突き上げた。
しかし、それもまた晴明にとってはぱらいそ預言書で分かっていたこと。クルセイダーに槍を振り回させ、下から迫る石の群れを弾き飛ばさせる。死体を操る晴明の術の巧みさと未熟なれどもオウガ・フォーミュラの肉体。横と下から来る弾丸のような意思を次々捌いていく。
これでウタの攻撃は全て防がれたことになった。だが、それでもウタ連続で剣を礼拝堂内に叩きつけ、次々と爆発と崩落を起こし続ける。それは巨大なイシツブテとなって繰り返し晴明クルセイダーを襲うが、同じ手とあっては最早預言書を見る必要すらない。激しく繰り返される攻撃を、晴明クルセイダーは何でもないことの様に弾き、躱し続けた。
「自棄ですか? あまり褒められたものではありませんが……」
「槍を防御へ向かわせただけで十分だ」
再び嘲笑を浮かべる晴明に、ウタがさらに踏み込んだ。爆発を纏い迫りくる相手に、晴明は再びぱらいそ預言書を読み行動を回避しようとする。
「さて、次は……?」
その瞬間、今度は晴明の目の前で爆発が起こった。浅くダメージはない。だが爆発の粉塵と宙を舞う火の粉が視界を狭め、炎が生む気流がページを捲り預言書の内容を読み取りづらくさせていた。
「意識は一つだからな。付け入る隙があって助かったぜ」
クルセイダーの体はあくまで超高性能な操り人形のようなもの。二つのユーベルコードを使えるとはいえそれを指示するのはあくまで晴明の意思。いかに晴明自身が上級のオブリビオンとはいえ、大技を使わせるにはそちらに意識をやる必要はある。そしてそれは一瞬とはいえ預言書から目を離すこととなり、こちらの行動を『読み続ける』ことは阻害できるはず。
「全く、ここまで派手なことをしてやることはせせこましい小細工とは……」
それを読む隙を作るため、晴明はクルセイダーを差し向ける。槍がウタの持つ剣と打ち合い、高い金属音を上げた。
だが、そのままつばぜり合いになるよりも早く、槍からは光線が放たれる。それは剣と通って持ち手に伝わり、ウタの手の骨を溶かそうとした。
「エンマヤ・ソワカ!」
その手が動かなくなる前に、ウタは剣を一閃する。その軌道をなぞるように炎が溢れ、槍とそれを持つクルセイダーを飲み込んだ。
「なるほど……次は……!?」
その炎を払い、ようやく見えるようになった預言書。その記述を読んだとき、晴明は急ぎ顔を前に戻した。そこに迫っていたのは、金色の十字槍の穂先。
「ぐっ……!」
預言書を盾に受け止める。意思などないはずの死体がなぜ自分に反旗を翻したか。
ウタの放った【熾】の炎は流し込んだ相手を操る炎。意志ある者ならば抵抗できるが、クルセイダーの心、魂は他ならぬ晴明自身が消し去った。
その復讐を果たすかの如く、クルセイダーの槍が晴明を貫こうとする。そして槍から炎が伝わり晴明にも届くが、クルセイダーと逆に意思だけの存在とも言える晴明ならばそれへの抵抗力は高い。
「生憎、私は戯れ以上に他者に従うつもりはありませんよ……」
「分かってる。だが地獄の炎だからな。当然魂も燃やせる」
伝わった炎を、ウタは一気に爆発させた。オーバーロードさせた炎が晴明クルセイダーを爆破し、その中へ飲み込んでいく。
「ぐ……く……!」
軽口も続けられず、炎にまかれる晴明。
地獄もまた死した者の正しい逝く先の一つ。魂だけになって彷徨うのも、命なき肉体のまま動き続けるのもならぬと、地獄の炎が二人を焼いていく。
たとえ地獄にすら逝けず海に堕ちようとせめてそこで安らかなれと、ウタは燃える炎の中鎮魂歌を捧げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘✕
今回は情け容赦なし
WIZ
真の姿で背中に黒炎の翼。
守護霊の憑依【ドーピング】と
『絶対零度の業火』で超強化
秀吉の群れを【衝撃波・乱れ撃ち・早業】で蹴散らし
彼らに紛れて飛んでくる十字型の槍や光線も
【第六感・見切り】で避け
晴明クルセイダーに接近
湧き上がる怒りと無限の力は
私とオクタンス様だけのものじゃない。
クルセイダーを慕っていた小少将様。
晴明に侮辱された富子様。
邪神の子を孕まされた者達。
彼女達の怒りを思い知れ
【念動力】で引き剥がした
晴明の魂に【呪詛・封印術・全力魔法】
墨の津波に溺れ、紫炎を纏った爪に引き裂かれ
炎の雨に焼き尽くされ、無数の蟲に食い尽くされ
なぜ死ねないのか嘆きながら永遠の苦痛を味わえ。
お前には終焉すら生ぬるい
クルセイダーの亡骸は丁重に葬るわ。
既に魂が無いなら救済も出来ないしね……
私一人の力でクルセイダーに勝ち
小少将様に認めてもらいたかったけど
晴明のせいで台無しだわ
小少将様。富子様。
これからも貴女方にお仕えさせていただけますか?
ああっ、取り合わないで!
お二人とも幸せにしますから♥
繰り返される激戦で、石造りのぱらいそ礼拝堂は既にあちこちが崩壊しかけていた。そしてその中心で戦い続けた晴明クルセイダーの肉体と魂も。
「やれやれ、これはどうにも、分が悪い」
相変わらずの調子で言う晴明だが、口調は同じでも状況は彼を滅ぼす方に動き続けている。そして、また一人の猟兵が晴明クルセイダーの前へ現れた。
「ふぅぅ……」
黒炎の翼を背負ったドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は、晴明クルセイダーの前で一度深呼吸する。その姿に、晴明は誰にでもするように最初の舌戦、挑発をかけた。
「これはなんと禍々しい。神聖なるこの礼拝堂にそのような邪悪なるものが……」
心にもないことを並べる晴明に、ドゥルールは何も言わずに腕を扇ぐように一振りし、強烈な衝撃波を放った。
「少しはお喋りに付き合ってくれてもいいのに……では仕方ない。豊吉装、お相手なさい」
『フェフェン、フェーン!!』
無数の突撃していく毛玉たち。その声は勇ましき武人のものであったが、ドゥルールはそれに衝撃波の乱れ打ちを放ち次々消滅させていく。
そして毛玉の群れに紛れ、クルセイダーが手に持った槍を突き出した。黒炎の翼をはためかせ、それをかわすドゥルール。突きの起動をギリギリで見切って体に切っ先が当たるのを避け、翼を貫いた槍から放たれる光線も骨のない黒炎で受けることで被害を最小限に抑える。
そのまま肉薄するドゥルールに、晴明が態度を変えないまま語り掛けた。
「特別なことはしていないように思えますが、よく躱しきれましたね。何か秘策でも?」
ドゥルールのとった手段はあくまでただ秀吉を押し返し、槍を見て避けるというだけ。通常のオブリビオンならいざ知らず、フォーミュラの二連ユーベルコードが相手ではやろうと思っても易々とできるようなことではない。そこに如何な種があるかと問う晴明に、ドゥルールは初めて言葉を帰した。
「湧き上がる怒りと無限の力は私とオクタンス様だけのものじゃない」
それと同時にドゥルールの周囲に黒い波が巻き起こる。それは翼を形作る炎ではなく、溢れる黒き水。
「クルセイダーを慕っていた小少将様」
さらに黒い炎の一部が色を変え、紫に染まる。
「クルセイダーを慕っていた小少将様」
そしてその中から湧きだす無数の悍ましい蟲の群れ。
「邪神の子を孕まされた者達」
それらは今まで晴明が弄び、蹂躙してきた者たち。
「彼女達の怒りを思い知れ」
怒り。それこそがドゥルールが晴明クルセイダーのユーベルコードを凌げた理由であった。怒りが強く、長いほど戦うための力を引き上げる【絶対零度の業火】。侮辱されて高い力を滅茶苦茶に振り回した吸血鬼の特性を生かしたその技は、晴明に対し深い怒りを戦うはるか以前から抱いていたドゥルールに限界を遥かに超えた力を与えていた。
「これはなんと、あなたも意地の悪い。まさか私の遊び事の後腐れをわざわざ拾って見せつけてくるなんて……はいはい申し訳ございません。遊んだものはきちんと片付ける。以後気を付けます」
命を、運命を、弄び踏みにじる。それも戯れ事だった。その言葉にドゥルールはクルセイダーの肉体を抑えつけ、同時に自身の周囲に湧きだした霊たちの力を晴明へとぶつける。
墨の波が晴明をクルセイダーから引き離し、振るわれた鋭い爪が切り裂いた軌跡から紫の炎を噴き上げる。そして別の炎が雨となって晴明をその場に閉じ込め、無数の蟲が晴明の魂さえもを逃がさぬと喰らっていく。
「なぜ死ねないのか嘆きながら永遠の苦痛を味わえ。お前には終焉すら生ぬるい」
その蹂躙した命の数だけ苦しみ続けろと、高まった力、宿した霊をすべてぶつけるドゥルール。
「何故死ねないか? ふふ、分かり切っていますよ。元々ないものはもう失くしようがない……だから、私は命なきもので世を満たそうとしたのですが……」
オブリビオンであり魔軍将であり、そして死の王。元々多重に生きているかどうかも曖昧な存在。たとえ内心はどうであれ、最後までその態度を消そうとしない晴明の姿勢に、ドゥルールの怒りは極限を越えその力がその霊魂をついに消しつくした。
操っている生命の消滅に、クルセイダーはただの骸となり倒れる。元々がオブリビオンだった故すぐに消え失せるだろうその骸を、ドゥルールは魔空原城の麓へと埋葬した。
「既に魂が無いなら救済も出来ないしね……」
死霊術で別の死霊を入れれば動かすこともできようが、それはもうクルセイダーではないし、それでは晴明とやっていることは同じだ。
「私一人の力でクルセイダーに勝ち小少将様に認めてもらいたかったけど、晴明のせいで台無しだわ」
怒りが解けたことで改めて今回宿した霊に語り掛ける。
「小少将様。富子様。これからも貴女方にお仕えさせていただけますか?」
それに答えるようにドゥルールの背後に黒い波と紫の炎が巻き上がる……が、それは中央で互いを押しのけ合うようにぶつかり合いはじめた。
「ああっ、取り合わないで! お二人とも幸せにしますから♥」
ドゥルールが言うが、その出自上譲るということを知らない者たち。大岡裁きなど知ったことかと奪い合う両者に挟まれ、ドゥルールは魔空原城を去るのであった。
こうして、サムライエンパイアにおける猟書家のの侵略、そしてそれさえ利用しようとした陰陽師の悪行は潰えた。
これで本当に盤石の泰平が訪れることとなるのか。それはまだ、誰にも分からない。
大成功
🔵🔵🔵