黒炎大掃討作戦~偽りの希望が、萌えて、燃えて
●予知:萌えるのは偽りの希望。
パチパチパチッ……。
燃え盛る黒い炎の中、幾人もの人影が蠢いている。
「……やった、やったよ、父ちゃん。芽が、芽が出たよ」
「ああ……やっと芽吹いたんだな。うれしいなぁ。これで、未来が見えてくるなぁ」
パチパチパチッ……。
ミシシッピ川に面したメンフィス灼熱草原。
地下も地上も川面すらも、消える事のない『黒い炎』に覆われている死の草原。
その黒い炎の中から、無数のオブリビオンが湧き出していた。
「博士、やりましたね、成功ですよ。この苗があれば、この荒地に緑が戻りますよ」
「うむ。これで、死んでいったみんなも報われるな……ありがとう、君のおかげだ」
パチパチパチッ……。
全身を黒い炎に焼かれながら蠢くのは戦闘能力のない、一般人だったモノたち。
力が無くとも身を寄せ合って知恵を出し合い、オブリビオン・ストームにより崩壊した世界を救おうと、荒れた大地に自然を取り戻すために抗った人々。
ある者は|略奪者《レイダー》に殺され、ある者はオブリビオンの魔の手にかかり、そしてある者はオブリビオン・ストームに飲み込まれた。
そんな、『明日を目指した人々』。
明日の訪れを迎えることができなかった、|人だったモノ《オブリビオン》たち。
「ようやくだ。これが実れば食べ物で争う事は無くなるんだ。もう、子どもが……誰もが、飢えに苦しむこともなくなるんだ」
「ええ……あの子たちの代わりに、生き延びてしまった私たちが、ようやく……ようやく、胸を張って生きられるのね……」
パチパチパチッ……。
笑い合うそのオブリビオンたちには、自分たちが死んだ時の記憶はない。
今なお生きているつもりであり、黒い炎に身を焼かれていても平然としている。
その様子に一片の悪意はなく、生前の純粋な善意で動いている。
もっとも、彼らが手にしている種苗もまたオブリビオンとなっており……生きとし生けるものを襲い、食らい、傷つける危険な代物となっている。
そのことを、彼らは気づかない。気づけない。気づくことは、ない。
「さあ、行こう。もう怯える必要はないんだ。
レイダーだって、おなかいっぱいになったら暴れたりするもんか」
「はやく|拠点《ベース》に帰りましょう。あの子がお腹を空かせて待っているのよ」
「楽しみだなぁ。俺、一度でいいから卵かけごはんっての食べてみたかったんだよ」
パチパチパチッ……。
黒い炎が見せる幻影に踊らされているのか、それともそのように生み出されたのか。
希望に満ち溢れたオブリビオンたちは、|悍ましい種苗《オブリビオン》を持ってほうぼうへと歩み出して行く。
●招集:偽りの希望を燃やすのだ。
「ハーイ、エブリワン! 黒炎掃討作戦、再始動であります!」
グリモア猟兵のメイド、バルタン・ノーヴェが看板を掲げて猟兵たちに声をかける。
それは、アポカリプスヘルで今なお猛威を振るうメンフィス灼熱草原の「黒い炎」を消し去るための作戦発令であった。
ドクター・オロチの拠点である影の城が存在した場所であり、何らかの謎があるのではと調査任務がグリモア猟兵たちによって検討されたのである。
「今回はアポカリプスヘルのメンフィスにて、黒い炎を減少させるためのミッションであります!
現地には黒い炎から出現するオブリビオンが跳梁跋扈することが予知されておりマスガ……そのターゲットは、メンタルにダメージが入りそうな相手であります」
プロジェクターに投影されるのは、全身を黒い炎に包まれた、一般人たち。
その手に種籾を入れた袋を握り、苗を植えた鉢を腕に抱えて、喜色を浮かべて歩き回っている。
どう見ても脅威には見えない、脆弱な存在だ。
「彼らはオブリビオンでありますが、戦闘能力はありマセン。
ただ、彼らの持つ種や苗は脅威的な成長速度を発揮して、近づく生命体に危害を加える恐るべきオブリビオンなのであります!
その上、持ち主や倒れた仲間を糧にするため、ゆっくり処理していると強化される危険性がありマース!」
運び手である人型のオブリビオンたちは、自衛すらままならないほど貧弱だという。
植物型のオブリビオンが反応する前にまとめて対処すれば、撃破することは難しくはないだろう。
ただし……オブリビオンとはいえ、無抵抗なものを一方的に蹂躙する必要がある。
猟兵によっては、精神を疲弊させることになるだろう。
「倒さずに済ませる方法があれば、そちらを行使してもらってもOKデスガ……。
会話や対話による説得は、困難だと思われマース。
浄化や破魔、優しさや落ち着かせるような効果があれば、何とかなるかもしれマセンガ……問答無用で素早く排除するのが一番安全かと思いマース」
このオブリビオンたちを撃破しても、その後に本題である黒い炎への対処が残っている。
猟兵の知る『恐るべき姿』を映した幻影が、実体を持って襲い掛かって来るのだ。
どのような幻影が現れるのかは猟兵によって異なるが、いずれも強い恐怖心を抱かせるものだという。
「しかし、どれほど恐ろしくとも幻影は幻影!
黒い炎が生み出した恐怖を乗り越えれば、皆様のアタックによって粉砕することができるのであります!」
かつてのアポカリプス・ランページや、これまでの黒炎大掃討作戦で培った情報。
恐怖心を乗り越えること。それが、メンフィスの黒い炎を克服する手段である。
「他のところでもメンフィスを開放するべく力を合わせておりマース!
ここを制圧すれば、その一助を担うことができるのであります!
皆様、ご協力をお願いしマース!」
バルタンがグリモアを起動して、草原近くへのゲートを展開する。
その先では、偽りの希望に燃えるオブリビオンたちが闊歩していることだろう。
猟兵たちは彼らを撃破し、黒い炎を消滅させるべく……足を踏み出すのであった。
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回の舞台はアポカリプスヘル、メンフィス灼熱草原です。
メンフィスの消えない『黒い炎』を消し去ることが目的です。
第一章:長い放浪の果てにオブリビオンに成り果てた、『明日を目指した人々』との戦闘です。
彼らと彼らの持つ品種改造された種苗はすべて死んでおりますが、彼らにその自覚はありません。
視界を覆う炎に紛れて四方へと歩き去り、人々に危害を加える植物と黒い炎を広めようとしています。
対話することなく速やかに排除すれば、彼らは現実を理解する前に解放されるでしょう。
もちろん、じっくりコトコトと話しかけて現実を叩きつけてから倒しても構いません。
浄化や破魔といった癒しの力を施せば、安らかな眠りにつくこともできるでしょう。
プレイングボーナスは、『黒い炎に紛れたオブリビオンを解放する』です。
第二章:メンフィスの黒い炎です。
猟兵たちの抱く『恐怖体験』が実体を伴って現れます。
主に、希望を失う恐怖―――大事なモノが苦しみ悶え死ぬ姿……あるいは、死に別れた親しいモノが生きて笑顔で動く姿が現れるようです。
これから喪失する、あるいは喪失した希望を乗り越える必要があります。
この幻影に対して臆することなく、克服することで黒い炎がもたらす偽りの希望を霧消させることができます。
プレイングボーナスは、『あなたの「恐怖体験」を描写し、恐怖心を乗り越える言動を行う』です。
どのような恐怖体験か明記されていない場合(主にサポート採用の場合)、アドリブにて対応させていただきます。
今回はオープニング公開後の断章はありません。
プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『明日を目指した人々』
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POW : きっと実るよ。ここには俺たちが眠るのだから。
自身の【全ての生命力】を代償に、【収穫可能になるまで自衛する植物】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【外敵のエネルギーを吸収する触手】で戦う。
SPD : 未来の為に逃げろ。そして何処かで芽吹くんだ。
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【安全地帯で成長を始める自走植物】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : これが実れば、食べ物で争う事は無くなるんだ。
【飢えに苦しむ人々を助けたい】という願いを【この世界の未来を憂う人々】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
イラスト:まっくろくろな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ジャン・ジャックロウ
希望に満ちた奴らを潰さないといけねぇとは心が踊る…じゃなかった心が痛むぜ。
『グラオザーム』に乗り込んで【野良犬部隊】パンツァーキャバリア班を引き連れ立ちはだかるぜ。
お前さんらをこれから蹂躙する訳だが言いたい事があるなら聞くぜ?
…うんうん、そっか~。
言い残す事はそれだけでいいんだな?キャバリア班、全機構え。撃て。
戦車砲で蹂躙していく。撃ち漏らしは地上掃射ガトリング砲で掃除よ。
|種籾《希望》は踏んですり潰すし、自走植物はパワークローで引きちぎった後に焼き払う。
ヒャハハハハ、ゾルダートグラード時代を思い出して懐かしいぜッ!
奴らも自分が終わった存在だと知らずに逝けるんだから幸せだなッ!
【アドリブ歓迎】
●正義に目覚めた猟兵の所業。
メンフィス灼熱草原に数多くの|人型戦闘車輌《パンツァーキャバリア》が整列していた。
その名は、『グラオザーム』。
凄まじいパワーと頑丈さ、更に高機動力まで兼ね備えているパンツァーキャバリアだ。
「希望に満ちた奴らを潰さないといけねぇとは心が踊る……じゃなかった心が痛むぜ」
その一団を率いるのは、獣人戦線はゾルダートグラードの『野良犬部隊』に所属していたイヌの獣人。
任務失敗の咎を受けて粛清される前に隊員たちと共に大脱走した部隊長。
猟兵に覚醒して正義に目覚めた(自己申告)ジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)だ。
ジャンは、部下の《野良犬部隊(ノライヌブタイ)》からパンツァーキャバリア班を引き連れてメンフィスに現れ、『明日を目指した人々』の前に立ちはだかっていた。
ジャン自身も『グラオザーム』に乗り込んで、黒い炎に包まれた人々を見下ろしている。
|オブリビオンたち《明日を目指した人々》は、威圧的なジャンたちに戸惑い、慄いている様子だ。
「お前さんらをこれから蹂躙する訳だが……言いたい事があるなら聞くぜ?」
「お待ちください、どうか、どうか見逃してください」
「この種籾があれば、もう争わなくても済むんです」
「皆さんにも作物をお分けします、ですからどうか、私達を通してください」
「……うんうん、そっか~」
必死に命乞い、救いを求める明日を目指した人々を静かに眺め、ボーンスティックをかじりながら笑みを見せるジャン。
それを見て、許されるのかと安堵する明日を目指した人々へ向けて、ジャンは片手を上げる。
それは、部下たちへと下す、一斉攻撃の合図だった。
「言い残す事はそれだけでいいんだな?」
百機を超えるパンツァーキャバリアが一斉に、武装をオブリビオンへと向ける。
明日を目指した人々が後退るが、ジャンと《野良犬部隊》は敵を逃がさない。
「キャバリア班、全機構え。撃て」
124門の『グラオザーム戦車砲』が、明日を目指した人々を爆砕する。
砲撃で大雑把に吹き飛ばし、撃ち洩らした個体は『グラオザーム地上掃射ガトリング砲』で蹂躙していく。
まともな戦闘能力もない明日を目指した人々は、為すすべなく倒れていく。
「逃げろ、逃げるんだ」「助けて、助けて」「やめて、やめて」
「ヒャハハハハ、ゾルダートグラード時代を思い出して懐かしいぜッ!」
哄笑するジャンの眼下で、次々に明日を目指した人々が粉々になり、黒い炎に包まれて消えていく。
残された身体には抱えていた種籾が入り、忽ち自走植物へと変化する。
戦闘力こそ落ちるが走行能力を得た|種籾《希望》が、安全地帯を求めて走り出す。
「はやく、行って」「未来の為に逃げろ。そして何処かで芽吹くんだ」
「逃がしゃしねぇよッ!」
だが、ジャンたちはそれも許さない。
『グラオザーム』たちの高機動力ですぐに追いつき、成長する前の種籾や苗を踏み潰し、磨り潰す。
そして走っていた植物を強力な『パワークロー』で握りつぶして引きちぎり、用意していた可燃物で破片も残さず焼き払う。
黒い炎に焼かれたオブリビオンたちを、ジャンは徹底的に蹂躙していく。
「ああ、希望が」「僕たちの、希望が」「どうして、こんなことを」
「ハッハー! 此奴らも自分が終わった存在だと知らずに逝けるんだから幸せだなッ!」
黒炎の中でかすかに蠢くオブリビオンの残りにトドメを刺し、ジャンは高らかに笑う。
手段を選ばずに大暴れすることが得意なジャンは、とてもイイ笑顔で嗤い続けていた。
成功
🔵🔵🔴
フリル・インレアン
ふわぁ、すごいです。
こんな荒れ果てたアポカリプスヘルで植物が実るなんて、それにこんないつも黒い炎が燃えているメンフィスでなんてすごいですね、アヒルさん。
ふえ?あれもオブリビオンだから当たり前ですか?
それより、あんな植物が広まったら大変って、確かにそうですね。
お菓子の魔法で動きを遅くするのでアヒルさんが倒してきてください。
……?あのアヒルさん、どうしたんですか?
ここでお菓子の魔法を選ぶなんて度胸があるって、何のことですか?
「パンがなければお菓子を食べればいい」とか言い出さないでって、どういうことですか?
●無垢なる少女のお菓子の時間。
メンフィス灼熱草原で、『明日を目指した人々』が黒い炎を纏わせながら歩いている。
明日を目指した人々が握っている種籾は、抱えている鉢植の苗は、運び手が倒れればその身体に芽吹き自走し始めるオブリビオンだ。
力尽きて倒れた明日を目指した人々の身体を食い破り、成長した植物が動き出す。
そうして蠢く植物型のオブリビオンと肩を並べて、人型のオブリビオンたちがメンフィスの外へ向かって歩き続けている。
その様子を、感嘆して眺める猟兵がいた。
「ふわぁ、すごいです。
こんな荒れ果てたアポカリプスヘルで植物が実るなんて……。
それにこんないつも黒い炎が燃えているメンフィスでなんてすごいですね、アヒルさん」
不思議な魔法やサイキックエナジーを扱うことができるアリス適合者の少女、フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、行動を共にしているアヒルちゃん型のガジェットの『アヒルさん』へと無邪気に語り掛ける。
アヒルさんは、呆れたようにフリルへと声を上げる。
「ぐわっ!」
「ふえ? あの植物もオブリビオンだから当たり前ですか? そうだったんですね」
「ぐわっ!」
「それより、あんな植物が広まったら大変……って、確かにそうですね。
お菓子の魔法で動きを遅くするのでアヒルさんが倒してきてください」
眼前の緑が自然由来ではなくオブリビオンによる歪められたものだと気づいたフリルが、|明日を目指した人々《オブリビオンたち》を止めるためのユーベルコードを展開する。
フリルが披露するのは、《時を盗むお菓子の魔法(ブレイクタイム)》。
趣味で作ったお菓子を給仕している間、戦場にいる趣味で作ったお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にするユーベルコードだ。
フリルがアヒルさんへとお菓子を給仕し、楽しんでからオブリビオンを倒してもらおうという作戦だ。
……黒い炎に焼かれている、明日を目指した人々の目の前で、お菓子を楽しむのだ。
「はい、おひとつどうぞ」
「……」
「……? あの、アヒルさん、どうしたんですか?」
不思議そうに首を傾げながら趣味で作った『手作りお菓子』を用意して、フリルはアヒルさんにお菓子を差し出ている。
そのフリルの立ち居振舞いを見て、アヒルさんは物申したい視線をフリルに向けて、首を左右に振る。
「ぐわっ。ぐわっ」
「ここでお菓子の魔法を選ぶなんて度胸があるって、何のことですか?
『パンがなければお菓子を食べればいい』とか言い出さないでって、どういうことですか?
よくわからないですね……」
「ぐわぁ……」
それはフランス由来の慣用句。とある身分の高い女性が言ったとか言ってないとかの名言。
明日を迎えることなく死んでいったオブリビオンの前でお菓子を堪能するというフリルの度胸に、アヒルさんは何とも言えない表情を浮かべていたようだ。
それはそれとして、諦観混じりにお菓子を楽しむアヒルさん。
周囲にいるオブリビオンたちは、人型も植物型も等しく行動速度が著しく低下する。
動きが鈍っている戦闘能力が無いに等しい彼らを倒すのは、アヒルさんにとっては難しくない作業である。
「ぐわっ」
「あ、あ……」「や……め……て……」「た……す……け……」
やれやれと言う風に肩(?)をすくめて、アヒルさんは速やかにオブリビオンたちをくちばしで突いて倒していく。
そしてフリルはというと、安全なところで余ったお菓子を食べながらアヒルさんの活躍を見守っている。
「?」
ギロチンがここに無いのは幸いであった。
成功
🔵🔵🔴
桃枝・重吾
◼️アド絡み歓迎
◼️心情
うーん、つまりは、
特定汚染物質が拡散されようとしている?
外来種どころではないけど、
悪意も害意もないと…
スペース浄化4級免許の出番かな
◼️ヒッチハイク
警戒させないように、そこそこの速度で横付けして、ヒッチハイクを誘ってみるよ。
「こんにちは、ついでで良ければ乗っていくかい?」
あらかじめナビで集落の位置とか確認して、
目的地にはゆっくりとね、
悠々荷台をキャビンモードにしてご案内、
危ない植物は隔離して処理したいけど無理強いは出来ないからね、
せめてキャビンごと隔離してすますよ。
浄化検定でも沢山作った浄化デトックスウォーターでおもてなししつつ、出来るだけ話を聞いて、きちんと始末するよ
●スペース運送のお届け先。
「うーん、つまりは、特定汚染物質が拡散されようとしている?
外来種どころではないけど、悪意も害意もないと……」
遠くから『明日を目指した人々』が闊歩するメンフィス灼熱草原を眺めるのは、愛用のスペースデコトラ『星降丸』で宇宙を駆けるライガー系キマイラ。
桃枝・重吾(|スペースデコトラ使いXL《スペース食べ歩き道中》・f14213)だ。
重吾は、明日を目指した人々が抱えている種籾や苗、そして身に纏った黒い炎が近隣の環境や生命に危害をもたらすと聞き、どう対処するべきか腕を組んで思案した。
「スペース浄化4級免許の出番かな」
軽度の資格マニアである重吾は、浄化検定も経験済みだった。
蠢くオブリビオンたちに対処するべく、『星降丸』を運転して明日を目指した人々に近づいていく。
デコトラ型後方支援兼輸送機コアユニットである『星降丸』は草原で燃え盛る黒い炎もものともせず、しかし明日を目指した人々を警戒させないようにそこそこの速度で接近していき、徐行して集団に横付けする。
重吾はクラクションを鳴らし、明日を目指した人々にヒッチハイクを持ち掛ける。
「こんにちは、いい天気だね。ついでで良ければ乗っていくかい?」
「おお、乗せてくれるのですか」「親切な御方だ。ご厚意に甘えさせていただきます」
黒炎に包まれた明日を目指した人々は、敵意のない重吾を信用して『星降丸』に近づいていく。
どんな悪環境からも荷物を守る『|悠々荷台《ユニヴァースユナイトキャリア》』をキャビンモードに変形させ、延焼しないことを確認して次々に明日を目指した人々を載せていく。
重吾を疑うことなく、大事に|種籾や苗の入った鉢植《植物型オブリビオン》を抱えた|明日を目指した人々《人型オブリビオン》たちは心から感謝している様子で荷台に座り込んだ。
「(危ない植物は隔離して処理したいけど無理強いは出来ないからね、せめてキャビンごと隔離して済ますよ)
さあて、それじゃあどこまで送ればいいかな?」
「ああ、私達の行き先は……」
警戒心を刺激しないよう配慮した重吾は、オブリビオンたちに目的地を尋ねる。
現在位置の見所やグルメ情報を自動的に表す『ユニヴァース・ガイドブック』で周辺の集落の位置とか確認して、オブリビオンたちに感づかれないように……目的地に通じるひと気のないルートを選んで、ゆっくりと走り出す。
そして徐に、荷台にいるモノたちに向けてユーベルコードを展開する。
「俺の|資格《趣味》が光って唸る! お客様満足度を稼げと! 輝け、御依頼品!
さあ、ライガー印のデトックスウォーターをサービスするよ。遠慮なく飲んでね」
「まあ、貴重な水までいただけるなんて」「ありがたや、ありがたや」
《オプショナルサービス・ライガー印の現状復帰修繕術(ガンバルワンマンオペレーション)》。
指定した対象を、重吾が沢山習得した資格を駆使して安心安全な状態にするユーベルコードだ。
もし安心安全な状態でないならば、お客様の死角から更に頑張ってどうにかするか、特徴と注意書を召喚するアフターサービスもバッチリのユーベルコードだ。
今回は、重吾の修得している浄化検定で沢山作った経験のある『浄化デトックスウォーター』を提供して、|お客様《オブリビオン》たちをおもてなししている。
明日を目指した人々は喜んで水を摂取していき、じわじわとその身を浄化されていく。
安心で安全な状態にある彼らは、自分たちが消えつつあることに気づかない。
「それで、皆さんは何をしてきたのかな? 到着するまで話を聞かせてもらってもいいかい?」
「ええ、私達は、この種籾でいっぱい麦を育てるんですよ」
「この苗が大きくなったら、いっぱい果物が実って、おなかいっぱいに食べられるんです」
「そうなんだ、すごいね。皆さん、立派だねぇ、偉いねぇ」
「これでようやく、冬に子どもが死なずに済む」「もう飢え死にすることも無くなる」「ああ、本当に、本当に、安心しました」
戦闘は起こらず争うこともなく、眠るように慰撫されていく明日を目指した人々。
その身体を焼く黒い炎も重吾がミスト状に散布する『浄化デトックスウォーター』により鎮火していき、彼らの素顔が露出する。
抱きかかえた植物型オブリビオンも、ここが安全地帯であるがゆえに走り出すことなく、重吾の浄化を受けて静かに風化していく。
―――しばらくして、会話が途切れ、荷台が軽くなる。
重吾の後ろにいたオブリビオンたちは、痕跡も残らず消滅していったのだ。
怯えることも苦しむこともなく、安らかに消えていったのだ。
「……おやすみなさい。安心して、きちんと始末するよ」
『星降丸』を止めて、重吾は未だ燃え盛るメンフィスの黒い炎に視線を投げかける。
そして、たった今穏やかに眠りについたお客様のことを想うのであった。
成功
🔵🔵🔴
インディゴ・クロワッサン
「かーわいそー(棒」
別に僕自身は彼らについて何も感じないから容赦なくUC使うよー
「そんなワケで、どんどこ|浄化され《消えて》けー!」
UC:魔祓イノ太刀 を使って、容赦なく|植物も元人間さんも《オブリビオンは》破魔の力を上乗せした攻撃で浄化してくぞー!(串刺し/鎧砕き/鎧無視攻撃/蹂躙)
ま、ここまで破魔が強くなると、僕自身も藍染三日月を持つだけで手が爛れちゃいそうだから、僕は離れたトコからの操作に専念するけど!
「つーいーでーに!」
愛用の黒剣:Vergessenから、破魔を乗せた衝撃波と斬撃波を、黒い炎にも放っちゃえー!(力溜め/なぎ払い/範囲攻撃/恐怖を与える)
「炎の奥に隠れてても無駄無駄~!」
●魔を祓う幾百の太刀。
黒い炎に焼かれながらメンフィス灼熱草原を歩く『明日を目指した人々』。
種籾を握り苗を抱えて草原の外へと向かう彼らの前に、黒いボロボロの外套を見につけたダンピールが立ちはだかる。
彼の口元には、笑みが浮かんでいた。
「かーわいそー」
本名不明の記憶喪失、お米が好きな甘党の青年猟兵。
インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は棒読みで呟いた。
突然現れたインディゴに、明日を目指した人々は困惑して狼狽えた様子で口を開く。
「ああ、どなたか存じませんが、憐れんでくれるのであれば、どうかお見逃しを」
「これがあれば、もう誰も飢えに苦しむことがなくなるのです。何卒、何卒」
「そっかー。うんうん。じゃー、消えよっか」
インディゴは、乞い願うオブリビオンの群れに特別な何かを感じることもなく、容赦なくユーベルコードを使用する。
「破魔を纏いて、斬り祓え!」
戦場に展開されるのは、破魔の力を纏った浮遊するサムライブレイドの数々。
《魔祓イノ太刀(マバライノタチ)》。
インディゴが所有する破魔や浄化の力を纏ったサムライブレイド『三日月藍染』を複製し、思考による操作でばらばらに振るうことができるユーベルコードだ。
その太刀の数は、今や135本に及ぶ。
怯え慄く仕草を見せるオブリビオンたちに、大量の刃が降り注ぐ。
「やめてくれ」「たすけて」「逃げろ」「どうか、何処かで芽吹いて」
囀る|元人間《オブリビオン》たちに一切容赦することなく、インディゴは破魔の力を上乗せした『三日月藍染』で明日を目指した人々を攻撃していく。
串刺し、両断され、一方的に明日を目指した人々は蹂躙されていく。
そして……『三日月藍染』に込められた力によって、オブリビオンが浄化されていく。
|種籾や鉢植の中の苗《植物型のオブリビオン》が|明日を目指した人々《人型のオブリビオン》たちの死体を糧に安全地帯へと逃げる自走植物へと変じようとするが、強い破魔の力によって清められた残骸からは上手く芽吹くことができない。
緩慢に動き出したところをインディゴが操る『三日月藍染』の複製に貫かれ、植物たちもまた同様に浄化されていく。
「ま、ここまで破魔が強くなると、僕自身も藍染三日月を持つだけで手が爛れちゃいそうだから、僕は離れたトコからの操作に専念するけど!」
『三日月藍染』を手にすることなく、思考による操作に専念しているインディゴ。
もしここにいるオブリビオンが攻撃に転じていれば危ないところだったかもしれないが、明日を目指した人々に戦闘能力はないことを知っているために無防備を晒しても問題はない。
「そんでもって、つーいーでーに!」
そして、インディゴは灼熱草原の奥へ戻ろうとする数体のオブリビオンを見逃さなかった。
黒い炎に紛れながら逃げている明日を目指した人々の後ろ姿に向けて、インディゴは愛用の黒剣『Vergessen』を構えて破魔を乗せた衝撃波と斬撃波を叩きつける。
「炎の奥に隠れてても無駄無駄~!」
「ああああ」「なんでこんな」「たすけて」
「そんなワケで、どんどこ|浄化され《消えて》けー!」
力を溜めて薙ぎ払われた広範囲の剣撃波が、黒い炎諸共オブリビオンたちを浄化していく。
抵抗も逃亡も降伏も潜伏も、すべての行動がインディゴの前では通じない。
意味がない。
インディゴの攻撃により、オブリビオンたちは片っ端から消滅して逝った。
「ん~! 殲滅完了! お疲れ様~!」
景気よく明日を目指した人々を種籾や苗ごと浄化し尽くしたインディゴは、コリをほぐすように背伸びをして空を見上げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鬼灯原・孤檻(サポート)
「この一刀は神罰。その首をもって贖うがいい」
罪を刀で斬る神。その特性上、無数の刀を生み出すことが出来ます。生み出した刀は基本消えません。
立ち回りは刀で斬ること。補助では黒い鎖と、フワフワと浮く謎の黒い布状の影のアイテムを使用します。
多少の状態異常は、毒を払う小刀を刺した鉄製の仮面と、肩に羽織った災厄を寄せ付けない着物で防ぎます。
本能的に罪を斬ろうと動くため、敵への心情の描写は薄くて構いません。
一人称は「俺」、クールというよりは朴訥で不器用です。
戦闘シナリオに出して頂けると嬉しいです。エログロは苦手です。
書いていない部分は全ておまかせします。
ご縁がありましたらよろしくお願いします。
●罪斬神の刀審理。
「人に仇なす罪あれば、この神罰は必中。―――覚悟」
黒い炎を身に纏う『明日を目指した人々』が闊歩するメンフィス灼熱草原へと駆け付けたのは、周囲に漂い続ける黒い布状の影を身に纏った猟兵の男。
鬼灯原・孤檻(刀振るう神・f18243)。
雪深い山の中で自我に目覚めて以来、様々な世界を渡り歩き、刀を振るい、罪を斬る神である。
「人に仇なすなんて、私たちはただ」「みんなのために頑張っているだけで」
「かつての思惑が何であれ、今のお前たちは人に害をもたらすオブリビオンだ。
俺はただ、その罪を斬るのみ」
剣呑な気配を発する孤檻に対峙して、怯えて竦む明日を目指した人々。
孤檻は彼らの言葉に応じることなく、静かにユーベルコードを展開する。
先に|明日を目指した人々《人型のオブリビオン》たちを倒してしまえば、|種籾や鉢植の中の苗《植物型のオブリビオン》が自走して逃げ出してしまう。
一体たりとも取りこぼさないために、孤檻は逃走を封じるための結界を展開する。
「是より審理を執り行う。嘘偽りは無始暗界に至るものと知れ!」
「なんだ、周りが暗くなっていく」「逃げろ、逃げるんだ」
孤檻から遠ざかろうとするオブリビオンたちが、結界の中に閉じ込められ、次々に呪縛と、黒縄に拘束されていく。
意図していないにしてもメンフィスの黒い炎をばら撒こうとする所業、理解してないにしても生命体を破壊するオブリビオンを運搬する悪行。
その罪に反応して、結界に立ち入った罪ある者を呪縛と黒縄で拘束するユーベルコード。
《権能・強制告解(ケンノウ・キョウセイコッカイ)》に捕らわれる。
「おとうさん、おかあさん、たすけて」「たすけてください、おねがいします」
「この一刀は神罰。その首をもって贖うがいい」
暗い領域に取り囲まれ逃げ場を失くした明日を目指した人々が、淡々と生前の名残であろう命乞いの単語を溢す。
孤檻は、それらに一片の心情を向けることなく周囲に無数の刀を生み出して斬り倒していく。
抗うことも戦うこともなく、明日を目指した人々を薙ぎ払っていく。
「未来の為に逃げろ。そして何処かで芽吹くんだ」
「逃がしはしない。その罪、ここで残らず償っていけ」
孤檻の作り出した刀により、人型も植物型も区別なくオブリビオンたちは討たれていく。
ほどなくして、黒炎に包まれていたオブリビオンは一体残らず倒れ伏して、燃え尽きていった。
残敵がいないことを確認して、孤檻は小さく頷き帰路へと着くのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『恐るべき幻影』
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POW : 今の自分の力を信じ、かつての恐怖を乗り越える。
SPD : 幻影はあくまで幻影と自分に言い聞かせる。
WIZ : 自らの恐怖を一度受け入れてから、冷静に対処する。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:|黒い炎から現れる幻影《フィアフル・ファントム》。
『明日を目指した人々』がいなくなったメンフィス灼熱草原。
そこに広がる黒い炎は未だ消えることなく、大地を……世界を蝕んでいた。
猟兵たちがそれを消すためには、黒炎が見せる幻影を乗り越えなければならない。
だが―――此度、それらが見せる幻影は、希望を失う恐怖。
黒い炎の奥から見えてくるのは、眩い希望と、それが失われる絶望の光景。
実体を伴って現れるのは、猟兵にとって大切な存在だ。
父母が笑いかけてくれている姿。死に別れた大切な人が、再び亡くなろうとしている。
愛する恋人が微笑んでいる姿。後ろから恐るべき凶刃が迫り、その命が失われる。
あなたを待っている仲間たちがいる。その集団を凶悪なオブリビオンが殺していく。
大切な宝物が輝いている。抗いがたい災厄が降りかかり、無惨にも砕かれてしまう。
喪失する絶望を乗り越えなければ。喪失した希望を乗り越えなければ。
このメンフィスは解放されない。
この幻影に対して臆することなく、克服しなければ黒い炎が霧消することはないのだ。
意を決した猟兵が、足を踏み出す。幻影を乗り越えて、偽りの希望を振り払うために。
恐ろしくも残酷な黒炎に、猟兵たちは対峙する。
ジャン・ジャックロウ
さてと、『明日を目指した人々』はきっちり殲滅したが…ん?
(黒炎が見せる幻影。小さい頃死に別れた階梯5の幼い犬獣人の少女、ジャンの妹が戦火で亡くなる光景。
心の片隅で眠っていた無力だった自分の象徴。)
あ…………………………。
ぷっ、クハハハハハッ!
ヒッヒッヒッ、おいおいおいッ!なんじゃそりゃッ!
ここまでコケにされたのは初めてだぜッ!
あー、生憎それはとっくの昔に置き去りにした過去なんだよッ!力の無い奴は奪われる、当然だからなッ!
グラオザームに【規格外武装・11連広域殲滅誘導弾】セット。
綺麗さっぱり消し飛びなぁッ!!ケヒヒヒヒッ!
……今の俺に思い出す資格なんてねえんだよ。
【アドリブ歓迎】
●幼き日に伸ばした手の行方。
ジャン・ジャックロウはすっきりした様子で戦闘を終えると、すぐに|野良犬部隊《パンツァーキャバリア班》を撤収させていた。
幻影を見せるというメンフィスの黒い炎に、部下を揃えて向かう意味はないからだ。
一人『グラオザーム』を操縦して、ジャンは黒い炎から現れる幻影に対峙する。
「さてと、『明日を目指した人々』はきっちり殲滅したが……ん?」
ジャンの前に現れる、恐怖となる希望。
それは、手を振り駆け寄って来る、階梯5の幼い犬獣人の少女。
……ジャンの妹だった。
「お兄ちゃん!」
「あ…………」
ジャンは思わず口内で何事かを呟いた。
目の前に現れた幻影は、小さい頃死に別れた妹の姿は、ジャンの記憶通りだった。
その服装も、その表情も、すべて最期に見たそのものだった。
その妹が、あどけない少女が、今まさにジャンの目の前で命を失おうとしている。
過去に見た光景を再現するように、幻影が生み出した戦火に巻き込まれて小さな命が奪われようとしている。
「お兄ちゃん!」
「…………。……ぷっ、ク、ヒ、ヒッヒヒ……」
ジャンは不意に伸ばした左手を、そのまま額に置く。
心の片隅で眠っていた、無力だった自分の象徴。
妹が亡くなる光景を視たくない、のではない。
「クハハハハハッ! ヒッヒッヒッ、おいおいおいッ! なんじゃそりゃッ!
ここまでコケにされたのは初めてだぜッ!」
ジャンは、笑っていた。
砲火に包まれ、死に逝く妹の幻影を前にして。
妹が叫んだ最期の言葉を思い出して。
それでもなお、ジャンは口の端を歪めて嗤うのだ。
「―――!」
「セット!」
笑みを浮かべるジャンが、右手でスムーズに『グラオザーム』を操作する。
展開するのは、《規格外武装・11連広域殲滅誘導弾(オーバードウェポン・ガングニール)》。
自身のキャバリアに接続した大型ミサイル砲から、11発の広域殲滅用追尾式大型ミサイルを放つユーベルコードである。
元々は拠点防衛用の大型ミサイルを無理矢理キャバリアに装備させた兵器であるために、使用後はキャバリアがオーバーヒート状態となって一定時間行動できなくなるが……敵がいないこの戦場でならば、動けなくなっても支障はない。
『《警告・不明なユニットが接続されました》』
「綺麗さっぱり消し飛びなぁッ!! ケヒヒヒヒッ!」
放たれた極大威力のミサイルが、妹を飲み込んだ爆炎を風景ごとまとめて吹き飛ばす。
まるで、未練も何もかも消し去るように、激しい爆発がジャンの目の前を覆っていく。
攻撃が落ち着いた時……そこには黒い炎も幻影も残っておらず、焦げて抉れた地面だけが露出していた。
当然、妹の痕跡も在りはしない。
「あー、生憎それはとっくの昔に置き去りにした過去なんだよッ!
力の無い奴は奪われる、当然だからなッ! ヒャハハハハ!」
からからと盛大に笑い、ジャンは『グラオザーム』を駆ってメンフィス灼熱草原を後にする。
任務は達成した。報酬をもらって部下たちを慰労し、次の戦場へと向かうのだ。
ジャンは、笑い過ぎて潤んだ瞳を拭い、帰路に着くのだった。
「……今の俺に思い出す資格なんてねえんだよ」
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、なんで黒い炎からアヒルさんが出てきているんですか!
しかも、私に襲いかかってきてますし。
私にとって大切なのは確かにアヒルさんですけど、何で襲われなければいけないんですか?
あれ?フォースフライパンで叩いたら当たりました。
何でかは分かりませんが、このまま偽物アヒルさんを倒してしまいましょう。
あのアヒルさん、少しは手伝ってくれてもいいんじゃないですか?
ふえ?アヒルさんを頼っていたら攻撃は当たらないって、どういうことですか?
これはアヒルさんという大きな戦力を喪失する恐怖だからって、どういうことですか?
●その日が来ないことを願いながらも。
「ふええ、なんで黒い炎からアヒルさんが出てきているんですか!」
「ぐわっ!」「ぐわっぐわっ」「ぐわぁぁぁっ!」「ぐわっ……」
フリル・インレアンは、驚愕して声を上げて後退りをしている。
フリルの目の前には、メンフィス灼熱草原の黒い炎が広がっており……その中から、次々にアヒルちゃん型のガジェット『アヒルさん』の幻影が具現化してきているのだ。
普段の『アヒルさん』から、海賊船長にコスプレした姿、桃の木の香りと焦げた匂いがする『アヒルさん』に、ちょっと目玉が飛び出ている不気味な『アヒルさん』。
多種多様な『アヒルさん』が群れを成して、フリルをくちばしで突くべく迫っているのだ。
本物の『アヒルさん』は当初こそフリルの腕に抱かれていたのだが、現れる幻影を見つめていると突然飛び降りて、フリルから離れて様子をうかがう姿勢に移行していた。
「しかも、私に襲いかかってきてますし。
私にとって大切なのは確かにアヒルさんですけど、何で襲われなければいけないんですか?」
ユーベルコードを使用する余裕もないフリルが『アヒルさん』の幻影たちに追い詰められ、意を決してサイキックエナジーでできた光のフライパン『フォースフライパン』を構える。
飛び掛かって来た一匹の『アヒルさん』に向けて、フリルはがむしゃらにフライパンを振り回す。
闇雲に振るい、そしてそれほど力を籠めていないにも関わらず、『アヒルさん』の幻影はフライパンの一撃で消滅した。
実態を伴った幻影ゆえに物理的な攻撃は通じるのだが、それにしても意表を突く脆弱性である。
「あれ? フォースフライパンで叩いたら当たりました。
何でかは分かりませんが、このまま偽物アヒルさんを倒してしまいましょう」
倒せるならばと、フリルは一気に攻め気に転じた。
勇気を振り絞って連続してフライパンを振り下ろして、一体ずつ『アヒルさん』の幻影を叩いていく。
モグラたたきのように叩いては持ち上げて、振り下ろす単純な攻撃で幻影たちは振り払われていく。
普段は魔法やサイキックエナジーで戦っているフリルには、この運動により疲労が見え始めている。
それでも本物の『アヒルさん』は、フリルの後ろでじっと見つめているだけだ。
「ふええ……あの、アヒルさん、少しは、手伝ってくれても、いいんじゃないですか?」
「ぐわっ!」
額に汗を滲ませているフリルの懇願に、『アヒルさん』は毅然とした雰囲気で首を左右に振る。
この幻影たちに対して、『アヒルさん』を頼ってはならないのだと意を伝える。
「ふえ? アヒルさんを頼っていたら攻撃は当たらないって、どういうことですか?」
「ぐわっ!」
「これはアヒルさんという大きな戦力を喪失する恐怖だからって、どういうことですか?」
此処の黒い炎が生み出した幻影は、希望を失う恐怖を具現化するものだ。
すなわち、フリルにとっては『アヒルさん』は希望を象徴するものであり……『アヒルさん』が失われた時の絶望は、フリルには想像できないほどの恐怖となるだろう。
『アヒルさん』が前に出て幻影を倒してしまえば、フリルは恐怖を克服することができない。
それでは幻影を乗り越えることはできないし、……いずれ、その時が来た時にフリルは為すすべなく倒れてしまうことになるかもしれない。
『アヒルさん』はフリルのために、フリルの手によって『アヒルさん』の幻影を倒さねばならないと考えたのだろう。
ただ、その意図がフリルには伝わっていないようだが……あえて指摘する必要もないだろう。
『アヒルさん』の狙いは果たされ、そして依頼も達成されようとしているのだから。
「ふええ、まだ出てきますよ。そろそろ終わってもいいんじゃないでしょうか?」
「ぐわっ!」
そうして、フリルは黒炎が消えて無くなるまで、頑張って『アヒルさん』の幻影を叩き続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
桃枝・重吾
アドリブ歓迎
◼️説明!
桃枝重吾はデコトラ型スパロボ【星降丸】と宇宙を駆けるスターライダーである。
各惑星の免許更新時期と実家の農繁期、年末年始と協会の仕事兼ね合いでルートは大体同じ事で知られ。
実家も、知る人ぞ知るスペースブランド種が幾つかあり、超古代の兵器や遺跡が眠る、
そんなどこにでもあるアストロ農家惑星の一つ。
そんな家族仲も良好な彼が何故宇宙に出ているか、
具体的に言うと子供をもうけることが出来ないと言う、
私、星降丸のマスターの条件がいたたまれなくなった、と言うことでした。
◼️絶望の形
UCで取り敢えず黒炎を変換してみるけど、減らないし、そろそろ向かい合おう。
そもそも、絶対に存在しない私達の子供に
●絶望の形、希望の残滓。
『明日を目指した人々』を送り届けた後、メンフィス灼熱草原に蔓延る特定汚染物質である黒い炎を始末するべく、桃枝・重吾はスペースデコトラ『星降丸』に乗って戻って来た。
そして、燃え盛る黒炎が具現化させる偽りの希望と対峙していた。
「……そう、か。これが……私の……」
目を丸くする重吾の目の前には、幼いライガー系キマイラの子どもたちが大勢集まっていた。
メンフィスの黒い炎が生み出した幻影の子どもたちは、しかしそれ以上の悲劇を見せることはない。
死ぬことも、傷つくことも、苦しむこともない。
年も性別も背格好もバラバラの、琥珀色の体毛の子どもたちが笑顔で重吾に手を振り、声をかけてくるのだ。
「おとーさん! こっちこっち!」「はやくはやくー!」「待ってたよ!」
「っ……」
重吾は奥歯を噛み締め、こぶしを握り締めていた。
桃枝・重吾は、『星降丸』と宇宙を駆けるスターライダーである。
猟兵として活動する時を除いた日常では、各惑星の間をスケジュール通りに移動することで有名だ。
免許更新時期と実家の農繁期の往復、協会の仕事や諸々の兼ね合いなど、普段の移動ルートは大体同じで、顔を合わせる相手もだいたい変化しない。
年末年始の休暇と趣味の食べ歩きや秘湯めぐりでコースから外れる時が稀有なケースと言える、小市民気質なのだ。
実家も知る人ぞ知るスペースブランド種が幾つかある辺境のアストロ農耕惑星の一つであり、超古代の兵器や遺跡が眠る程度の何の変哲もない星であり、そんな由緒正しい農家の三男坊が重吾なのだ。
そんな、猟兵であるということを除けば、ごく普通の、当たり前の人生を送る重吾。
仕事もプライベートも、家族仲も職場環境も良好で、後ろ暗いことも世間に指をさされることもないマイペースでのんびりとした重吾だが、一つどうしても変えられないことがあった。
―――子どもをもうけることができない。
それが、デコトラ型のスーパーロボット……デコトラ型後方支援兼輸送機コアユニット『星降丸』のマスターとしての条件なのだ。
それがいたたまれなくて、重吾は実家を出て、宇宙を駆けているのかもしれない。
重吾は、震える指先で『星降丸』のコンソールを操作する。
「……王鍵励起準備を確認。カード型カートリッジ装填並びに音声認証待機中……。
……さ、幼い君たち。目をキラキラさせて考えたカッコいい名前を叫んで?」
「はーい!」「何にしようかなー? どうしようかなー?」「とーちゃん! 星降丸の名前借りてもいーい?」
「……うん、いいとも」
重吾が展開するのは、《事象圧縮式カード型カートリッジ装填式王鍵起動準備(キドウジュンビペネトイレイザー)》。
自身の周辺の事象を圧縮し、カード化するユーベルコードだ。
ユーベルコードですら例外ではなく物質化されるその能力により、メンフィスの黒炎の一部がカード化されていく。
黒い炎を消すことができれば今回の依頼は達成されるから……それでも、黒炎はなお燃え盛っている。
ユーベルコードによる対処だけでは、この地に蔓延る黒い炎は消して滅びることはないのだ。
重吾自身が、目の前の幻影を乗り越えなければ、消えないのだ。
重吾の手で、子どもたちを|乗り越え《消し去ら》なければならないのだ。
「んーと、ん~っとね……ブラックスター!」「パパ! 黒炎丸はどうかな?」
「……そうだね、うん。とてもカッコいいよ。……じゃあね」
重吾は笑顔を作り、眼前で笑う幻の子どもたちに向かい合い、一人一人カード化していく。
恐れる様子も怯える様子もなく、楽しそうに、くすぐったそうにカードに収納されていく、幻影たち。
絶対に存在しない……重吾|た《・》|ち《・》の子どもたちを。
一人残らずカード化したことで、辺りの黒炎は鎮火して、静かになった。
重吾の手に残されたカード以外に、あの子どもたちがいた痕跡は残っていない。
「……よし。……帰ろう、か」
カード化されたカートリッジは、対応機器に装填するか、はしを折るだけで誰でも行動回数を消費せず使える。
使用すれば、再び、まみえることはできるだろう。それが、何を意味するのだとしても。
重吾は、それらを黙って胸ポケットに仕舞いこみ、静かに帰路に着くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
「僕にとっての絶望、かぁ…」
記憶も無く、何もかも思い出せず。
「そんな僕に絶望ってあるのかな?」
自分自身を|嘲笑し《嗤い》つつ、黒炎にごー!
僕の宿敵らしいアンリが微笑みながら手を伸ばしている。
その笑みは、|僕《インディゴ》の記憶に無いのに、とても心安らぐもので。
思わず手を伸ばして、走ろうと───して、腰に佩いていた藍染三日月の強烈な破魔による痛みで正気に戻るよ。
「……アンリが僕にとっての絶望、か…」
間違ってないかもね。
|以前の僕《藍色となる前》を知る、現状唯一の存在(オブリビオンだけど!)なんだから。
失っちゃったらどうなる事やら…
「でも、そう遠くないうちに失う可能性はあるんだよねぇ…」
藍染三日月でUC:秘剣・三日月の太刀 を発動しながら居合の体勢ー!
UCに加えて怪力/覚悟/気合いに破魔と浄化まで乗せちゃって
「だって、アンリは|僕の宿敵《オブリビオン》なんだから、さっ!」
胴体から真っ二つだー!…って、勢い強すぎて衝撃波/斬撃波出てない?
「ま、いっかぁ」
別れってのは、必ず訪れるものなんだから。
●其の者は、薔薇園を知る者。
「僕にとっての絶望、かぁ……」
インディゴ・クロワッサンは過去にはそれほど拘らない。
記憶も無く、故郷も本名も何もかも思い出せず、廃村で目覚める前のことは何も覚えていないのだ。
それ故に、インディゴは快活に微笑んで歩みを進める。
「そんな僕に絶望ってあるのかな?」
自分自身を|嘲笑し《嗤い》つつ、インディゴは黒炎に向かって行く。
メンフィス灼熱草原を覆う黒い炎を恐れることなく、消滅させるために近づいていく。
そして、黒炎がインディゴから……彼の希望を映し出す、恐怖を具現化させた時。
幻影である彼を見た時、インディゴは金の瞳を見開いて思わず立ち止まってしまった。
「―――三月様」
「……ぁ」
黒髪の、赤い瞳の執事が佇んでいた。
インディゴに向けて手を伸ばし、微笑みながら優しく誰かの名を呼んでいる。
その目線は、インディゴに向けられているもので。
その笑みは、|僕《インディゴ》の記憶に無いものなのに、とても心安らぐもので。
その声は、知らないはずなのにとても懐かしいもので。
「お待たせいたしました。お迎えに参りました」
「ぁ……、いたっ! ……あー……そっか」
インディゴは思わず手を伸ばして、駆け寄ろうとして―――そして、腰に佩いていた『藍染三日月』の強烈な破魔による痛みで正気に戻る。
目を瞬かせ、苦笑交じりに『藍染三日月』の藍色の拵を撫でるインディゴ。
その眼には、普段の調子が戻っていた。
「……アンリが僕にとっての絶望、か……。間違ってないかもね」
目の前のオブリビオンは、|以前のインディゴ《藍色となる前》を知る現状唯一の存在だ。
インディゴ自身が忘れている何かを、思い出したい。しかし思い出すのは、少し怖い。
彼との決着をつけた時、彼を失った時、彼との過去を垣間見たその時。
今のインディゴが果たしてどうなるのか、わからない。
幻影が映し出したアンリと言う名のオブリビオンは、確かにインディゴにとって希望であり、絶望でもあるのだろう。
「でも、そう遠くないうちに失う可能性はあるんだよねぇ……」
「……三月様……」
「だって、アンリは|僕の宿敵《オブリビオン》なんだから、さっ!」
インディゴを三月と呼ぶオブリビオンに対して、インディゴは『藍染三日月』を握り、居合の体勢で相対する。
対峙するアンリは悲し気に笑い、武器として用いるカトラリーを手にするが……それが振るわれるより先に、インディゴのユーベルコードが炸裂する。
「―――三日月を描く」
《秘剣・三日月の太刀(ルーナ・クレスケンス)》。
破魔のオーラを濃く纏う、種類を問わない愛用の武具を構えて、徐々に自身への負荷が増す破魔のオーラを纏い、発動前後が無防備となる代わりに、超威力・超高速・防護破壊の一撃を放つユーベルコード。
破魔がインディゴ自身を蝕むために、反動により隙が多くなりがちだが、その一撃はあまりに早く、あまりに強く、あらゆる防護を貫く。
破魔と浄化を剣先に載せ、ありったけの気合と覚悟を籠めてインディゴは抜刀した斬撃で執事の幻影を両断する。
「胴体から真っ二つだー!」
その一撃は、アンリを消し飛ばした。
両断された上下が衝撃波で吹き飛び、周囲の黒い炎も斬撃波で切り刻まれていく。
恐怖心を乗り越えたインディゴの想いと破魔の力、そしてユーベルコードの威力により、辺り一帯の黒い炎が消失したのだ。
アンリ諸共燃え盛っていた炎が一瞬で消え去り、インディゴはきょとんと目を丸くする。
「……って、勢い強すぎない? ま、いっかぁ」
何はともあれ、無事に仕事を片付けて、インディゴは『藍染三日月』を納刀して帰路に着く。
幻影の立っていた場所を振り返ることもなく、普段の飄々とした様子で澄み切った空の下を歩いていく。
……いずれ、インディゴは本物のアンリとその宿縁を果たす時が来るだろう。
その時に何が起こるのか、何があるのか、それはその時にわかることだろう。
何せ、別れってのは、必ず訪れるものなのだから。
大成功
🔵🔵🔵