闇の救済者よ、深淵に挑め
「闇の救済者戦争、お疲れ様でした。早速で申し訳ありませんが事件発生です」
ダークセイヴァーの生命存亡をかけた戦いが幕を下ろしてから間もなくの事。グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーのレジスタンス組織『|闇の救済者《ダークセイヴァー》』が、新たな活動を始めようとしています」
ヴァンパイア達の支配に対する抵抗運動から始まった『闇の救済者』は、これまでの猟兵達の助力の甲斐もあり、第四層において確固たる地位を築くに至った。各地に千人規模の城塞を築き、少数ながらユーベルコードの使い手まで戦力として擁する彼らは、もはやオブリビオンも容易には踏み込めない領土を形成している。
「組織の基盤を固めた『闇の救済者』達が次の目標とするのは、第五層に君臨する『第五の貴族』です」
一部の「人類砦」では五層の都市から逃れてきた人間を保護したこともあり、自分達のいる大地の下にも世界がある、という事実は猟兵を通じて伝わっている。闇の救済者達にとっては第五の貴族こそが、自らを苦しめていた領主達を支配する真の黒幕だ。
「闇の救済者達は打倒『第五の貴族』を掲げ、自組織の中からユーベルコードを扱える最精鋭部隊を組織しました」
これは猟兵を除いたダークセイヴァー人類の最高戦力と言っても過言ではない。人間・ダンピール・人狼・オラトリオ、そして第三層よりやってきた魂人を含めた多種多様な種族による、黒騎士・人形遣い・死霊術士などの優れた戦士や魔法使いが第五層に集結しつつある。
「今回の彼らの作戦目標は第五の貴族本人の討伐ではなく、第五の貴族が所有する城砦のひとつを陥落させる事です」
これだけの戦力を集めてもなお、「紋章」を有する第五の貴族に勝つことは恐らく難しいだろうと、闇の救済者達も考えていた。そこで先ずは敵の戦力を削ることを目標にしたようだ。それでも第四層の敵に比べれば遥かに危険な戦いとなるが、猟兵の助力があれば勝利の可能性が見えてくる。
「目標となる城砦の周辺は常に濃霧が立ち込めており、道中には拷問具を模した無数の罠が仕掛けられています」
視界がほとんど効かないため目に頼った行動は全般的に不利となる。それを踏まえた上で罠を警戒し、安全な進軍ルートを開拓しないといけない。ここで戦力を擦り減らしているようでは、敵の砦を陥とすことなど夢のまた夢だろう。
「城砦に第五の貴族本人はいませんが、量産型の『紋章』で武装したおびただしい数のオブリビオンが常駐しています」
元が下級でも紋章を与えられたオブリビオンが凄まじい強化を得ることは既に周知の通り。おまけに、この砦に詰めているのは猟兵だけではとても倒しきれないような大軍だ。闇の救済者戦争で損害を被ってなお、この世界のオブリビオンはまだ膨大な戦力を残している。
「無事に城砦まで辿り着き、敵軍を撃破するには、闇の救済者との協力が不可欠です」
そのために第五層に派遣された彼らは、決して猟兵の足手まといにはならない。適切な指示を行いつつ、猟兵が最前線で道を切り開き、闇の救済者達がその後に続けば、紋章持ちオブリビオンの大軍も必ず撃破できるだろう。各々がこれまでの戦いで培った力を、今こそ披露する時だ。
「闇の救済者の勢力が第五層にまで進出すれば、いよいよ敵も彼らの存在を無視できなくなってくるでしょう」
長きに渡り虐げられ続けてきた人類の反抗の灯火は、数年前までは考えられなかった大火にまで成長を遂げた。
説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、ダークセイヴァー第五層へと猟兵達を送り出す。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはダークセイヴァーにて、闇の救済者達と共に「第五の貴族の砦」を襲撃する依頼です。
1章は城砦に向かうまでの危険な道中を攻略するシーンです。
目的地の周辺は深い霧のせいで視界がきかず、至る所に拷問具型の罠が仕掛けられています。
闇の救済者達とも協力して、罠を回避しながら城砦までの正しいルートを探し出して下さい。
2章は城砦を防衛するオブリビオンとの集団戦です。
全員が量産型の「紋章」で強化された大軍ですので、猟兵だけで敵を殲滅することは難しいでしょう。
1章に引き続いてこの戦いでも、闇の救済者達とどのように連携するかが成功のカギとなります。
今回の作戦に参加する闇の救済者は、全員弱いながらユーベルコードを使える精鋭達です。
使用するのは【絶望の福音】や【生まれながらの光】など、各種族とジョブの基本ユーベルコードのみです。
メンバーには魂人を含めたダークセイヴァーの全ての種族・ジョブがいますので、適宜必要と思えば指示を出してあげてください。
余談ですが、この依頼を含む戦後シナリオと並行して、闇の救済者戦争の⑱『ケルベロス・フェノメノン』で入手した小剣グラディウスの研究が進められています。
この研究の進行度は、ダークセイヴァー戦後シナリオの成功本数に比例します。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『霧の古城に辿り着く。』
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POW : 罠を受け止めて破壊する
SPD : 罠を察知して駆け抜ける
WIZ : 罠の解除を試みる
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ブラミエ・トゥカーズ
余だけであれば罠など無視すればよいのだが、そうもいかぬかな。
貴公等、余が路を拓く。
正体を隠すつもりはないが態々明かす気もない
御伽噺の吸血鬼の不死性を盾に正面から罠を力ずくで踏破する
UCは攻撃力に全振り
目に頼らず触覚、つまり罠にかかってのちそれを破壊する
ついでに路を拓く
自身と共にある救済者達には残骸の後始末を依頼
ただし御伽噺の吸血鬼の弱点に関わりそうな罠について人狼など視覚以外に長けた種族に警戒を依頼しておく
それの意味を理解できるかわからないが
大蒜か水の臭いがしたら即、余に告げよ。
そこの天使、余を癒すな。消毒されてしまうではないか。
真の敵は後ろにいるのかもしれない。善意だろうけど。
「余だけであれば罠など無視すればよいのだが、そうもいかぬかな」
深い霧も拷問具の罠も、御伽噺の吸血鬼であるブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)にかかれば大した事はない。が、定命の者である『闇の救済者』にとっては脅威だろう。打倒『第五の貴族』を掲げて立ち上がった猛者達を、こんな所でみすみす損耗させるのは惜しい。
「貴公等、余が路を拓く」
「おお……頼もしいです!」
猟兵であるブラミエの申し出は、闇の救済者達に歓喜をもって迎えられた。彼女達こそがこの世界を救う為に戦ってきた真の救済者だと、この場にいる中で知らぬ者はいない。まあ、その正体が異界のヴァンパイアだと知れば多少は驚くかもしれないが。
(正体を隠すつもりはないが態々明かす気もない)
ブラミエは吸血鬼の不死性を盾にして、正面から力ずくで罠を踏破しにかかる。御伽噺――人の恐怖心から生まれた伝承をベースにした彼女の能力は、この世界のヴァンパイアより長所短所ともに極端である。人間や並のオブリビオンを基準にした罠なら恐るるに足らず。
「人は恐れ伝えた。吸血鬼は"力持ちである"と。……品が無いのが困り物であるがな」
小声で囁きながら霧の中に踏み込んだブラミエに、禍々しい形状をした罠の数々が襲い掛かる。視覚では捉えられぬそれを彼女は我が身で受け、掴み取り、純粋な身体能力で引き千切る。これぞ【恐怖伝承・暴威の主】、攻撃性に特化させた吸血鬼の暴力だ。
「こんなものか。温いものよ」
目に頼らず触覚、つまり罠にかかってのちそれを破壊し、ついでに路を拓くのがブラミエの計画だった。作戦と呼んで良いのかも分からぬ力業だが、真正の人外にとってはこれが一番手っ取り早い。そんなだから人の知恵に敗れ去るのだと、本人は自嘲げに言うかも知れないが。
「残骸の後始末は任せた」
「は、はいっ」
闇の救済者達は彼女の暴威に驚嘆しつつ、破壊された罠を撤去して後を追う。ここまで隠す素振りもなく怪物性を披露すれば、少なくともヒトではない事は彼らも勘付くだろうが。そもそも闇の救済者のメンバーにはダンピールなどの異種族もいるし、今更彼女を疑うような者はいなかった。
「大蒜か水の臭いがしたら即、余に告げよ」
「……? わかりました」
闇の救済者がきちんと後に付いてきているのを確認すると、ブラミエは人狼など視覚以外に長けた種族に警戒を依頼しておく。ただ殺傷力が高いだけの罠では彼女を殺し切る事はできないが、御伽噺の吸血鬼の弱点に関わりそうな罠については話が別だ。依頼された側はそれの意味を理解できなかったものの、ひとまず言われた通りに鼻を利かせる。
「そこの天使、余を癒すな。消毒されてしまうではないか」
「え、でも、そんなにお怪我を……」
ついでに聖者らしきオラトリオが光を放ちながら近寄ってくると、彼女はしかめっ面をして離れる。相手はただ、罠にかかりながら突き進む彼女の姿が痛々しくて、見ていられなかっただけなのだろうが――病とウイルスを大本とする彼女にとって、通常の治療行為は逆効果であった。
(真の敵は後ろにいるのかもしれない。善意だろうけど)
こんな怪我すぐに治るから気にするなと強引に押し切って、引き続き罠の矢面に立つブラミエ。本人の心情はどうあれ、治療さえ求めずに危険を引き受け続けるその姿は、闇の救済者達の感銘と敬意をより深めることになったようだ。
背中から感じるむず痒い視線を気にしつつ、御伽噺の吸血鬼は前に進む。霧の先にあるという敵の城砦を目指して。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
反抗作戦か。このお話を逃すわけにはいかないね。
エレクトロレギオン!
それじゃあ、ぼくは罠の探索をしていくよ。この霧の中では、機器のセンサーの方が有効そうだからね。
罠の解除はお願い。
じゃんじゃん、探索機器を追加していくよ。
この罠、けっこう面白いな。あとで時間があったらいろいろ調べたい。
でも、今は進むことが優先だよね。
闇の救済者のみんなと協力して、先に進んでいくよ。
「反抗作戦か。このお話を逃すわけにはいかないね」
最初の頃はヴァンパイアの配下にも苦戦していた『闇の救済者』達が、今や四層での地位を確固たるものとし、五層にまで進出しようとしている。虐げられてきた者達の躍進と逆襲は、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)の食欲をそそる物語であった。
「エレクトロレギオン!」
この作戦に協力するために、彼女が召喚したのは数百体にも上る小型の機械兵器。強さは程々と言ったところだが、一度にたくさん呼べるメリットから戦闘以外でも活用できるユーベルコードだ。この先の危険地帯を進むうえで、人手は幾らあっても足りるという事はない。
「それじゃあ、ぼくは罠の探索をしていくよ。この霧の中では、機器のセンサーの方が有効そうだからね」
「わかりました。どうかお気をつけて!」
闇の救済者達から敬意の眼差しで見守られながら、アリスはエレクトロレギオンと共に探索を開始する。濃霧で視界が利かなくてもソナーやレーダーがあれば周辺の状況はある程度分かるし、罠の不意打ちを喰らうことはないだろう。
「じゃんじゃん、探索機器も追加していこう」
元は戦闘用である兵器群に探索作業をさせるため、彼女は得意の電脳魔術を駆使して性能をアップデートしていく。
霧の中でどんなに巧妙に隠された仕掛けも、これだけ高性能かつ大勢の機械の目を欺くことはできず。侵入者を待ち構えていた罠達は、かくして所在を暴かれる。
「罠の解除はお願い」
「はいっ!」
発見した罠の無力化に関しては、アリスは闇の救済者達に任せることにしていた。複雑な装備を扱う咎人殺しや人形遣いなど、今回の作戦のために集められたメンバーには手先が器用な者もいる。決して足手まといでは無いことを示すように、彼らは勇んで罠解除に取り掛かった。
「この線を切ってしまえば……よしっ、もうコイツはただのガラクタですよ」
「わぁ、上手だね」
拷問具の罠を手際よく無力化していく闇の救済者達を、素直に称賛するアリス。自分ひとりではこれだけの数の罠を迅速に解除するのは大変だっただろう。それぞれが役割分担して協力することで、負担を和らげつつハイペースな進行ができている。
(この罠、けっこう面白いな。あとで時間があったらいろいろ調べたい)
好奇心旺盛なアリスの興味は、第五の貴族が仕掛けたのであろう罠にも向けられていた。仕組みが分かれば同じようなものを作ったりできるかもしれないし、自分の戦法も広がる。エレクトロレギオンに搭載してみるのも面白そうだ。
(でも、今は進むことが優先だよね)
罠の回収と調査は必要なら帰り道でもできる。闇の救済者達の足を止めてしまわぬよう、アリスは前進と探索を続けることにした。この調子ならじきに目的の城砦まで辿り着けるだろう――彼女達の足取りは危なげなく快調であった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
他の人たちと協力して行動するわ。
「罠をどうするかが問題なのよね?」
ということで[罠使い]としての経験と[第六感]で罠のありそうな場所を選定。
回避できるのならそうするけど、難しそうならユーベルコード【錬成カミヤドリ】。
137個の青金剛石を浮かべて、離れたところから罠候補地に宝石を叩きこむ。
無理やり発動済みにしてしまって突破する作戦ね。
「あまり繊細なことは苦手なのよ。御免なさいね?」
「罠をどうするかが問題なのよね?」
深い霧の中に隠された無数の罠。それが『闇の救済者』達の進軍の妨げになっていると聞いたヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は、その探索と解除役に名乗りを上げた。罠使いとしての経験豊富な彼女なら、初見の罠にも遅れを取ることはないだろう。
「あなた達も協力してくれる?」
「もちろんです。こちらこそよろしくお願いします!」
闇の救済者達もここで危険な作業を猟兵に頼りきりになるつもりはない。第四層で力を付けてきたところを見せようと、率先して協力してくれる。彼らの信頼と敬意はヴィオレッタにとって少しだけむず痒いが、悪い気はしなかった。
「この辺りが怪しいわね」
ほとんど視界が通らない濃霧の中、ヴィオレッタは第六感を研ぎ澄ませて罠のありそうな場所を選定する。木や岩の陰や足下などに注意して調べると、禍々しい拷問具を模した罠があちこちで見つかった。闇の救済者からも「ありました!」との報告が方々で上がる。
「回避できるのならそうするけど、これは少し難しそうね」
第五の貴族も馬鹿ではないようで、城砦までの進軍ルート上に的確な罠を張っている。避けて進むのは無理ではないが、この霧中だとうっかり引っ掛かってしまう事故も起きかねない。安全を確保するには解除したほうが良さそうだ。
「あまり時間もかけたくないし、こうしましょ」
ヴィオレッタはおもむろに【錬成カミヤドリ】を発動、自身の本体である宝珠を複製した、137個の青金剛石を宙に浮かべる。それは所有者に不幸をもたらすとも言われた曰く付きのアイテムだが――今この時においては紛れもなく、仲間の路を切り拓く希望だった。
「あまり繊細なことは苦手なのよ。御免なさいね?」
彼女はそれを離れた所から罠候補地に叩き込む。直撃して破壊できればそれで良し、外れても異物の接触に反応した罠は誤作動を起こす。隠されていた拷問具が異音を立てて姿を現し、その凶器を容赦なく振るうが、勿論そこにあるのは宝石だけで、犠牲者は誰もいない。
「無理やり発動済みにしてしまって突破する作戦ね」
しばらくして騒音が止むと、ヴィオレッタは飛ばした宝石を念動力で手元に戻す。進路上にあった罠はあらかた作動したようで、姿を晒したままうんともすんとも言わない。再起動する可能性もなくはないが、今のところその兆候は見られなかった。
「今のうちよ。行きましょ」
「ええ……お見事です」
大胆な罠の攻略法に感嘆しながら、闇の救済者達は彼女の後に続く。今のところメンバーの中で罠に掛かった者はおらず、負傷者は出ていない。最後までこの調子で目的地に辿り着けるよう、ヴィオレッタは気を引き締めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
亞東・霧亥
闇の救済者達には俺の後ろに↑の、つまりは鋒矢の陣形になってもらう。
【UC】
絶対に割り切れない、終わり無き円周率を詠唱とし、俺の前には螺旋を描く巨大な円盾が形成される。
濃霧から襲い掛かる拷問具は全て円盾で防ぎ、城砦まで一点突破を試みる。
別の部隊が此処を通る時、再度拷問具に襲われない様、予め俺の部隊には罠の解除を指示しておく。
「闇の救済者達には俺の後ろに、こんな列を組んでくれ」
進軍中の『闇の救済者』と合流した亞東・霧亥(峻刻・f05789)は、自分を先頭としたある陣形を皆に指示する。
それは上から見れば矢印の形を取るような、いわゆる鋒矢の陣形と呼ばれるものだ。少ない兵力で敵陣を突破するのに向いた陣だが、柔軟な機動が難しくなるなどの欠点もある。
「この陣形だとあなたが一番危険なのでは……」
「問題はない。遅れずについて来てくれ」
彼が今回この陣形を採用したのは、自身のユーベルコードで味方を護る際に、この形が一番適していたからである。
発動するのは【Eternal rondo】。詠唱を始めた青年の身体からは魔力が溢れ出し、螺旋状の渦を描いていく――。
「3.14159265359……」
絶対に割り切れない、終わり無き円周率を詠唱としたこのユーベルコードは、術者の前方に巨大な円錐形のバリアを形成する。霧亥はそのままバリアと共に進軍を開始し、陣形の後に続く闇の救済者達を先導しながら霧中に突入する。
「そ、その先には罠が……!」
警告しようとした闇の救済者の言葉は、最後まで続かなかった。濃霧から襲い掛かる拷問具は、全て円盾の前に弾き返される。このバリアは詠唱時間に応じて無限に防御力を増す性質を持っており、この程度の罠ではビクともしない。守れる範囲が直線上に限られるのがネックだが、だからこそ彼は事前に鋒矢の陣を取らせたのだ。
「す、すごい……!」「バカ、呆けてる場合じゃないぞ!」
ユーベルコードの力で道をこじ開けても、罠を放置しておくと別の部隊がここを通る時に再び襲われる恐れがある。
そのため、霧亥が率いる部隊にはあらかじめ罠の解除が指示されていた。闇の救済者の中でも手先の器用さに自信のある者が、拷問具を手際よく解体していく。
「終わりました!」
「よし、先を急ぐぞ」
解除が完了すれば霧亥達は陣形を維持したまま進軍を再開。目的地の城砦まで一点突破を試みる。その様子はまさに放たれた矢の如く、立ち塞がる全てを貫いて止まらない。流石は精鋭集団という事もあり、一糸乱れぬ統率であった。
「もう少しか?」
「そのはずです!」
途中、何度か詠唱を重ねてバリアを張り直しつつ、行軍を続けること暫し。霧亥達は濃霧地帯の深部まで来ていた。
視界はほとんど効かないが、不安を感じる者はいない。彼らが通った後には破壊、もしくは解除されて動かなくなった拷問具の残骸が、バラバラになって散らばっていた――。
大成功
🔵🔵🔵
花咲・月華
お〜い!皆、助けに来たよ!(小声)
私は罠を気配感知で警戒しながら皆に駆け寄った
『いきなり声をかけるな…驚いているだろう?』
朱雀は呆れながらもオーラ防御と爆破属性攻撃をする蟲を呼び出して周りを探索させていた(蟲が罠を見つけたら爆破します)
よし!まずは視界を見れるようにしよう!
私は指定UC発動して変身してUC焔天神矢を発動して視界を見えるようになったので罠を焔矢に時空崩壊の矢で罠を破壊する
『罠が多いな…』
視界が見えるようになった朱雀は焼却の矢弾の雨を周りの罠に放ち破壊する
お願い力を貸して!吹雪!
UC伝説の大妖怪・吹雪を発動
吹雪は絶対零度の氷で罠を凍らせて破壊する
(味方には影響を出ないようにしてる)
「お~い! 皆、助けに来たよ!」
「うわっ?!」
濃霧の中を進む『闇の救済者』に、小声で呼びかけたのは花咲・月華(『野望』を抱く?花咲の鬼姫・f39328)。
視界のきかない状況で不意に声をかけられ、相手はびっくりしていたが、すぐに彼女が敵ではないと知り安堵する。
『いきなり声をかけるな……驚いているだろう?』
「い、いえいえ。来てくださって感謝します」
付き人の「朱雀」は呆れながらたしなめるが、闇の救済者にとって彼女達の援軍は喜ばしい事だ。この世界をオブリビオンの支配から解放するために戦ってきた猟兵こそが、真の『闇の救済者』だと彼らは思っている。共に肩を並べて戦えるとなれば士気も高まる様子だ。
『周囲の探索はさせているが、こうも視界が悪いとな……』
とはいえ目的地に到着するまでの障害はまだ多い。朱雀は自身が使役する蟲達にオーラを纏わせて周囲を探索させ、罠を見つけたら爆破するよう命じていたが、これで安全が保障できた確信はない。霧の中からいつ何が飛び出してくるか、警戒は怠れない状況だ。
「よし! まずは視界を見れるようにしよう!」
そこで月華は【花咲流奥義・鬼姫覚醒】で鬼の姫の姿に変身。さらに【焔天神矢】を発動して味方に加護を与える。
このユーベルコードを発動すると、使用者とその味方は暗闇や煙などで視界を失っていても、はっきりと物が見えるようになるのだ。
「これで霧なんて関係ないわ!」
視界を確保した月華は焔の弓弦を引き絞り、前方に仕掛けられた罠に矢を射掛ける。霧さえ見通せるようになれば、どこにどんな罠があるかは一目瞭然だ。時空すらも撃ち抜く必中の【焔天神矢】によって、標的は一撃で破壊される。
『罠が多いな……』
同様に目が見えるようになった朱雀も仕掛けられた罠の数に嘆息しつつ、焔の矢弾を雨のように降らせ、その全てを焼却する。所在が明るみになった罠などもはや脅威ではないと言わんばかりに、彼らの火勢は留まることを知らない。
「お願い力を貸して! 吹雪!」
さらに月華はユーベルコードでもう一人仲間を召喚。【伝説の大妖怪・吹雪】が放つ絶対零度の氷は、一瞬にして罠を凍てつかせて破壊する。もちろん味方には影響が出ないように、冷気が及ぶ範囲は精密にコントロールしながらだ。
「す、すごい……!」「あっという間に罠が……!」
焔天神矢の効果を受けている闇の救済者達の目にも、月華達が罠を次々に破壊していく様がはっきりと見えている。
彼らはこれが異世界から訪れた猟兵の力かと感服し、自分達もまだまだ精進しなくてはと気を引き締めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
儀水・芽亜
闇の救済者組織も立派になったものですね。それでは、お手伝いと参りましょう。
進軍の先頭に立って、「歌唱」「楽器演奏」「範囲攻撃」で主に向かいて新しき歌をうたえを歌います。
これで、霧の中の罠に届いたら、誰も罠にかかっていない状態で罠を発動してもらいましょう。一度罠が発動してしまえば、もうそれ以上に危険は無いはずです。
副次効果として、闇の救済者さんたちの士気を上げられたらいいですね。「ブームの仕掛け人」として、皆で高歌放吟してもらって、この先の戦いへの不安や恐怖を吹き飛ばしてしまいましょう。
さあ、目指すは『第五の貴族』の城塞です。皆さん、勝って帰りますよ!
「闇の救済者組織も立派になったものですね」
元々は非力な一般人の集まりだった彼らが、今やヴァンパイアにも対抗できる大組織となり、別の階層にまで進出しつつある様子には、儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)も感慨深いものがあった。オブリビオンとの戦いを経て力を付けてきたのは、猟兵だけではないようだ。
「それでは、お手伝いと参りましょう」
救済者達の新たな挑戦を助けるため、彼女は進軍の先頭に立って、竪琴を小脇に【主に向かいて新しき歌をうたえ】を奏でる。アリアデバイス『ムジカ・マキナ』を介して拡張された清らかなソプラノの聖歌が、闇夜と濃霧に包まれた第五層に響き渡った。
「Cantate Domino canticum novum.Cantate omnis terra. Alleluja.」
音楽や芸事を|魔術《アビリティ》の域に高めた能力者「フリッカー」の一員である芽亜の歌は、生命体だけでなく無機物や自然現象まで魅了する。たとえ視界の効かない状況でも歌唱や演奏に問題はなく、霧の中に隠された罠にその声は届いた。
(一度罠が発動してしまえば、もうそれ以上に危険は無いはずです)
歌詞を通して命令を行い、まだ誰もかかっていない状態で罠を発動させる。本来は外敵を排除するために用意されたそれらは、今や彼女の忠実なしもべだ。拷問具を模した仕掛けの数々が、ガシャン、ガキンと音を立てて作動するのが聞こえてきた。
「これでもう安全です」
「おお……お見事です」
罠の作動音が聞こえなくなると、芽亜は闇の救済者を促しながら移動を始める。行く手にあった罠は全て起動済みの状態でピクリともせず、まるで彼女の歌に聞き惚れるように沈黙を保つ。その光景に人々は感嘆せずにはいられない。
(副次効果として、闇の救済者さんたちの士気を上げられたらいいですね)
ひととおりの罠の無力化が済んでも、芽亜はまだ歌唱を止めなかった。戦いにおける音楽とは友軍を鼓舞するものであり、この先の戦いに向けて皆の戦意を高揚させておくのは重要だ。ユーベルコードの効果を抜きにしても、彼女の歌は純粋に人の心を打つ美しさがあった。
「よければ皆さんもご一緒に」
「お、俺も?」「そんなに上手じゃないけど……」
芽亜に促された闇の救済者達は多少恥ずかしそうにしながらも、竪琴が紡ぐメロディに合わせて歌いだす。技術としては拙くとも、大事なのは声を張り上げることだ。腹の底から高歌放吟すれば気持ちも昂ぶり、不安や恐怖なんて吹き飛んでしまうだろう。
「♪~……なんだか、楽しくなってきたな!」
一寸先も見えない霧の中にいながら、晴れやかな表情で合唱する人々。戦闘前なのに随分呑気に見えなくもないが、リラックスできている証だろう。相手は強敵とは言えガチガチに緊張するよりも、これくらい余裕があった方がいい。
「さあ、目指すは『第五の貴族』の城塞です。皆さん、勝って帰りますよ!」
「「おぉーーーっ!!」」
歌の力で気持ちをひとつにした芽亜と闇の救済者達は、勇ましい足取りで進軍を続ける。霧の中に響き渡る歌声は、果たして敵の城砦まで届いているだろうか。こちらの戦闘準備は万全、負ける気など誰一人としてありはしない――。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
本丸を攻める前に外堀を埋める
戦勝の勢いに乗じるのも大切ですが、こういう堅実な判断力も忘れてはいけませんね
【守護霊獣の召喚】で呼び出した獅子に【騎乗】
獣の嗅覚や聴覚(聞き耳)で、鉄や血の臭い、罠の駆動音を察知する
む、血の臭いがしますか?(動物と話す)
闇の救済者たちに用意させたのは角材などの長い棒
怪しい場所に踏み込む前に、足元などを叩いて罠の有無を調べる
こちらに何かを飛ばしてくるタイプの罠なら、聖槍で【なぎ払って】叩き落とす
さらに地図を書いてもらい、罠の配置や形状を記していく
こういうものには性格が出るもの
傾向を分析(学習力)していけば、より確実に罠に対処できる筈
「本丸を攻める前に外堀を埋める。戦勝の勢いに乗じるのも大切ですが、こういう堅実な判断力も忘れてはいけませんね」
闇の救済者戦争によりダークセイヴァーのオブリビオンは勢力を削がれたが、まだ油断ならない実力を保っている。
既知領域の中ではもっとも深い、第五層に潜む貴族達。第四層の人類を脅かす黒幕をいきなり討つのではなく、先に勢力を削る作戦は、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)も賛同するところだった。
「天来せよ、我が守護霊獣。邪悪を引き裂く爪牙となれ――!」
目的地までの進軍を迅速にするため、彼女は【守護霊獣の召喚】で呼び出した黄金の獅子に騎乗。その輝きをもってしてもこの地を覆う霧は照らせないが、鋭敏な獣の嗅覚や聴覚は罠を発見するうえで大いに役立つ。どんなに巧妙に隠されていようと、必ずや探し当ててみせよう。
「む、血の臭いがしますか?」
移動を始めてからさほどもせずに、獅子が小さな唸り声を上げる。動物の言葉を介するオリヴィアはその意味することを察し、警戒を強めた。鉄錆と血の臭いは罠に染み付いた犠牲者の残滓であり、所在を突き止める手がかりになる。
「あの辺りが怪しいですね……」
耳をそばだてれば微かな駆動音らしきものも前方から聞こえてくる。自分と獅子だけなら掻い潜って駆け抜けることもできそうだが、後ろには闇の救済者達もいる。進軍の安全を確保する為にもここは潰しておいたほうが良さそうだ。
「皆さん、例のものは?」
「もちろん、持ってきてますよ」
この時のためにオリヴィアが闇の救済者達に用意させたのは、角材などの長い棒。怪しい場所に踏み込む前に、これで足元などを叩いて罠の有無を調べるという、古典的だが有効なトラップの探知法だ。もし罠を作動させても、棒の長さ分の距離があれば十分に回避できる。
「こちらに何かを飛ばしてくるタイプの罠なら、私が対処します」
「わかりました。よろしくお願いします!」
霧に隠された数々の罠を、棒を頼りに暴いていく闇の救済者達。地面から拷問具が飛び出してきたり、上から刃物が落ちてきたり、毒を塗った矢や針が飛んできたり――殺意に満ちた仕掛けが目白押しだ。オリヴィアは聖槍を振るって飛来物を叩き落し、彼らの安全をフォローする。
「この辺りの罠の分布や種類はこんな感じです」
「ふむ、なるほど」
さらにオリヴィアは地図書きの技能がある者に頼んで、発見した罠の配置や形状を記録させていた。こういうものは完全なランダムではなく、仕掛け人の性格が出るもの。データが集まるにつれて偏りや嗜好がハッキリと見えてくる。
「傾向を分析していけば、より確実に罠に対処できる筈」
「おお、勉強になります」「助かりました!」
武力だけでなく優れた学習力も持つオリヴィアは、ほどなくして敵の性格を読み、事前に罠を発見するようになる。
これにより一度も罠に掛かることのなかった闇の救済者達は、無傷で戦力を温存したまま城砦に辿り着くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『闇に誓いし騎士』
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POW : 生ける破城鎚
単純で重い【怪物じみた馬の脚力を載せたランスチャージ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 屠殺旋風
自身の【兜の奥の邪悪なる瞳】が輝く間、【鈍器として振るわれる巨大な突撃槍】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 闇の恩寵
全身を【漆黒の霞】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
霧の中に隠された罠を回避し、猟兵と闇の救済者達は『第五の貴族』が所有する城砦のひとつに辿り着く。
闇と濃霧に包まれてそびえ立つ威圧的な外観は、まるで権威を誇示するかのよう。一同の到着から間を置かず、重々しい鉄の城門が開き、大勢のオブリビオンが出撃してくる。
「まさか四層の人間がこの五層にやって来るとは……少々力をつけた程度で思い上がったか」
「主にかわって、今一度力の差を教えてやらねばならぬようだ」
漆黒の甲冑に身を包み、漆黒の騎馬に跨った、その者達の名は『闇に誓いし騎士』。
第五の貴族に仕え、この城砦の守備を任されたオブリビオンであり、量産型の「紋章」で戦闘力を強化されている。
騎士槍を振るう技量と騎馬の機動力、いずれも超人の域に達した油断ならない軍団である。
「出やがったな……行くぞ皆!」
「ええ! このために私達だって鍛えてきたんだから!」
それに相対する闇の救済者も精鋭揃い。武技と魔術を鍛え上げ、ユーベルコードを会得するに至った者達ばかりだ。
ここで躓いていては『第五の貴族』本人の討伐など夢のまた夢。数の上では敵側が圧倒的だが、猟兵と彼らの連携があれば勝てない相手ではない。少なくとも彼らは勝利を少しも疑ってはいなかった。
「俺達も精一杯戦います」
「皆さんの足手まといにはなりません!」
そう言って武器を構える人々に応じて、猟兵達も戦闘態勢に入る。
これが第五層に進出した|闇の救済者《ダークセイヴァー》の緒戦。培われた人類の希望が試される時が来た。
儀水・芽亜
わざわざ出戦をしてくださるとはありがたいですね。
|闇の救済者《ダークセイヴァー》の皆さん、ここからが本番ですよ。
敵の先鋒をぎりぎりまで引きつけて、「結界術」「全力魔法」深睡眠の「属性攻撃」「範囲攻撃」のサイコフィールド展開。
睡魔に襲われているところに「催眠術」を仕掛けて、武器を取り落としてもらいましょうか。
皆さん、この無限の結界の中なら、受けた負傷も癒やせますし、何より敵の意識を刈り取ってます。眠った敵を殲滅したら、ここを拠点にオブリビオンと戦ってきてください。
危なくなったらすぐに戻ってきてくださいね。
皆さんならオブリビオンなんかに負けないと信じています。
世界を私たちの手に取り戻しましょう。
「わざわざ出戦をしてくださるとはありがたいですね」
城砦から出てきた『闇に誓いし騎士』達を見て、ほのかに微笑んだのは芽亜。あちらの得意戦法からして城に籠もるより打って出るほうを選んだのだろうが、こちらも戦いやすくなったのは同じ事。どうやら敵軍はまだこちらの戦力を甘く見ているようだ。
「|闇の救済者《ダークセイヴァー》の皆さん、ここからが本番ですよ」
「はいッ!」「やれますッ!」
彼女の呼びかけに闇の救済者達は勇ましく応え、既に臨戦状態に入っている。この作戦のために集められた精鋭だからこそ、第四層で戦ってきたオブリビオンとはレベルの違う相手だと分かるだろう。それでも誰一人として怖気づく者はいなかった。
「蛮勇の対価、生命で払うがいい」
闇に誓いし騎士達の兜の奥で、邪悪なる瞳が紅く輝く。その手に携えた巨大な騎士槍は、鈍器として用いても威力を発揮する。それをブンブンと振り回しながら猛突進する連中の姿は、弱き者を蹂躙する【屠殺旋風】そのものだった。
「まだです……もう少し……ここ!」
対する芽亜は敵の先鋒をぎりぎりまで引きつけて、鴇色の陽炎を纏った【サイコフィールド】を展開。範囲内に巻き込んだ敵に強烈な睡魔を引き起こした。ナイトメア適合者である彼女がもっとも得意とする、夢と眠りを操る能力だ。
「私の世界で勝手はさせません」
「うッ……なんだ、急に眠気が……」
騎士も騎馬も睡魔に襲われて足が止まったところに、芽亜は催眠術を仕掛けて武器を取り落とさせる。ドーム状に広がるこの結界は現にして夢の領域。敵に悪夢を見せることも、味方に良い夢を見せることも彼女の思いのままである。
「皆さん、この夢幻の結界の中なら、受けた負傷も癒やせますし、何より敵の意識を刈り取ってます。眠った敵を殲滅したら、ここを拠点にオブリビオンと戦ってきてください。危なくなったらすぐに戻ってきてくださいね」
「「了解!」」
芽亜の指揮下にある闇の救済者は、眠りに落ちた騎士にユーベルコードを用いた猛攻を加え、一気呵成に討ち倒す。
敵の先鋒を破った彼らはその余勢を駆って後続の敵部隊に突撃。実力では勝る相手にも果敢に攻撃を仕掛け、気勢を削いでいく。
「この……ッ、調子に乗るなと言っている!」
闇に誓いし騎士は恐るべき膂力と早業で槍を振るい、小癪な雑魚どもを払い除けんとするが。闇の救済者の精鋭達もこれしきでは斃れない。重症を負った者は芽亜に言われていた通り、サイコフィールド内部まで後退して傷を癒やす。
「すみません、やられました……」
「大丈夫です、すぐに治します」
夢幻のもたらす癒やしが味方の受けたダメージを治療し、戦線に復帰させる。睡魔のせいでここまで敵は攻め込めない以上、持久戦に持ち込めば勝算が高いのはこちらだ。焦ることはなく、戦列を維持しながらじっくりと戦えばいい。
「皆さんならオブリビオンなんかに負けないと信じています。世界を私たちの手に取り戻しましょう」
「ええ!」「絶対に、取り戻してみせる!」
穏やかだが心に響く芽亜の号令に応えて、勇戦する闇の救済者達。サイコフィールドを拠点とした補給と出撃を繰り返す彼らの戦いぶりを見ていると、どちらが城攻めをやっているのか分からなくなる。人間風情の軍団など一息に踏み潰せると考えていた騎士達の思惑は、早くも崩れ始めていた――。
大成功
🔵🔵🔵
亞東・霧亥
まずは隊員を全て分隊化(分隊長1と隊員4の5人)する。
分隊長は、霧を突破する時に手際が良く、的確な指示を下していた者に任せる。
集団戦術の知識から鶴翼(Vの字)の陣を選択。
今回俺は一番後方、V字の真後ろに立ち簡単な指示を飛ばす。
敵1体に対して1分隊で当たり、徹底して防御する。
分隊は壁役として最終的にVからΛに移行し、敵を中央に密集させる役目を担う。
9回攻撃に対する判断は、経験を積ませるため分隊長に任せる。
【UC】
如何なるUCも一度見られれば対策を練られる。
壁役は外から見えぬ様に、そして、全ての敵を一網打尽にするために有る。
「これより砦内に進撃する!気を引き締めろ!」
アドリブ◎
「総員、準備はいいか」
「はっ!」「いつでもいけます!」
第五の貴族が領有する城砦攻めにあたり、霧亥は指揮下の闇の救済者を全て分隊化していた。それぞれの分隊長には霧を突破する時に手際がよく、的確な指示を出していた者を任命し、4人の隊員を預けて5人1組で行動を取らせる。
「鶴翼の陣を取れ」
城砦から出撃してくる『闇に誓いし騎士』に対して、彼は大きなVの字型の陣形を選択し、自身はその最後方より指示を飛ばす。霧を突破する際に用いた鋒矢の陣とは真逆の防御に適した陣形であり、敵軍の突撃を受け止めるには最適の形だろう。
「小賢しい。虫けらの生兵法で我らを止められるとでも!」
剛勇を誇る闇の騎士達は、巨大な騎士槍を鈍器の如く振り回して【屠殺旋風】を巻き起こす。人間の粋を超えた暴力はまともに太刀打ちする事も難しい――だが、戦術と連携によってその差は埋められる。鶴翼の陣を組んだ闇の救済者達は、敵1体に対して1分隊で当たっていた。
「耐えろ! 耐えるんだ!」
これまで磨き上げた武芸と魔術、そしてユーベルコードの力を駆使し、敵の猛攻を徹底して防御する。精鋭としての自負に違わず、実力差のある相手にも彼らはよく持ちこたえていた。戦場に大きく広げられた鶴の翼は、敵軍の突撃を受け止めながら曲がっていく。
「その調子だ」
霧亥はV字の真後ろに立ちながら簡単な指示を飛ばすのみ。敵のユーベルコードに対する判断は、経験を積ませるために分隊長に任せてある。これからもオブリビオンとの戦いは激化していく以上、まだまだ闇の救済者には強くなってもらわなくてはならない。
「騎士がなんだ、そっちこそ甘く見るなよ!」
「クッ、こいつら……!」
想像以上の粘りを見せる彼らに、中央突破を図った騎士達が攻めあぐねる。その間に鶴の両翼は敵を包囲するように形を変え、最終的にVからΛに移行する。この分隊の役目は突っ込んでくる敵に対する壁役と、それを中央に密集させる事にあった。
(如何なるユーベルコードも一度見られれば対策を練られる)
壁役は外から見えぬ様に、そして、全ての敵を一網打尽にするために有る。今こそまさに勝機と捉えた霧亥は、瞳をかっと見開きユーベルコードを発動――その視界に映る全ての敵の【解体の道筋】を視て、銘刀「雷迅」を抜き放つ。
「な――……!!!」
一閃。空間ごと斬り捨てる神速の居合術の前では、どれだけ距離があろうと関係はない。見事に胴体を真っ二つにされた騎士達は、何が起こったのかも分からぬまま、驚愕の形相で崩れ落ちる。闇の救済者の奥に控えし者、猟兵という切り札に気付けなかったのが、彼らの敗因であった。
「これより砦内に進撃する! 気を引き締めろ!」
「「おぉぉーーーッ!」」
敵の攻勢を退けた霧亥と闇の救済者は即座に陣形を組み直し、一転攻勢に移る。負傷した兵も多少いるが、それ以上に士気は高く、満ち満ちた闘志は防戦の疲労を感じさせない。戦いの流れは明らかに今、彼らの追い風となっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
余が彼奴等を殺しても良いが、そうはさせぬよな?
闇の救済者《人間》達よ。
とはいえ、貴公等が倒れるのを見送るのも面白くない。
故に余が感染《祝福》してやろう。
2分間。
貴公等は余と同じ不死身の暴威の主となる。
そこの天使、貴公は下がっておれ、仕事は後程ある故にな。
志願者を御伽噺の吸血鬼化する
敵と戦う姿を見物
闇の恩寵を持つ者よ、余の血の恩寵は質が悪いぞ?
生命は血に宿り、血には余が潜む故にな。
聖者に悪戯が成功したようにこっそり笑い正体を明かす
余の世界にて陽と聖を嫌い、血を好む化物の事をな?
吸血鬼、と呼ぶのだよ。
聖者
筋肉痛と祝福は治療をしてやるがよい
放っておくと後がつらいからな
驚愕と恐怖は妖怪にとって御馳走
「余が彼奴等を殺しても良いが、そうはさせぬよな? |闇の救済者《人間》達よ」
「勿論です。貴女がただけにお任せする訳にはいきません」
愚問と言ってもよい分かりきった問いかけを、ブラミエはあえて彼らに尋ねた。果たして返答は予想通り、強い信念と決意に支えられたもの。この者達は猟兵に救ってもらうためではなく、自らの力で未来を切り拓くために来たのだ。敵が自分達より強大だと分かっていても、退くつもりはない。
「とはいえ、貴公等が倒れるのを見送るのも面白くない。故に余が|感染《祝福》してやろう」
いかにも人間らしい無謀と勇敢さに免じてか、ブラミエは自らの力の一端を彼らに下賜する。その身から噴出される赤い霧――現代の名称で言えば転移性血球腫瘍ウイルスを媒介に、彼女は人間を一時的に己の同胞とする事ができた。
「2分間。貴公等は余と同じ不死身の暴威の主となる」
「お、おぉぉ……ッ!」「こ、この力は……!」
【伝承再現・泡沫の暗黒時代】。それはダークセイヴァーとは起源を異にする、UDCアースの伝承に準拠した御伽噺の吸血鬼化。その気になれば意識まで乗っ取って操ることもできるが、今回は特別に自軍強化を目的とした使用だ。
「そこの天使、貴公は下がっておれ、仕事は後程ある故にな」
「は、はいっ……」
志願者をウイルスで吸血鬼化しつつ、彼女は濃霧の攻略中にも顔を合わせたオラトリオの聖者だけはその場に残す。
その言葉の意味はすぐに分かるだろう。今はまだ、これから起こる戦いの模様を見物していればよい。第五の貴族に仕える騎士と、不死身の救済者の戦いを。
「たかが人間が、どんな力をつけたところで……!」
闇に誓いし騎士は漆黒の霞を身に纏い、叛逆者どもの心臓を串刺しにせんと突撃する。先鋒に立っていた闇の救済者の何人かがその矛先にかかるが、ブラミエが与えた祝福に嘘偽りはなかった。人間なら即死するはずの傷を負っても、彼らは立ち上がり剣を取る。
「全然痛くない……これなら、やれる!」
「なッ、バカな?!」
不死身の恩恵を実感した闇の救済者達は、防御を捨てて攻撃に全力を注ぐ。耐久力のみならず膂力も伝説さながらに強化された彼らの武技は、驕り高ぶっていた騎士どもを馬上から叩き落とすのに十分な威力があった。ただの人間にこんな力があるハズがないと、連中は驚愕しながらもう一度槍を振るうが――何度やっても結果は同じだった。
「闇の恩寵を持つ者よ、余の血の恩寵は質が悪いぞ?」
ブラミエは祝福を与えた者達が敵と戦う姿を観劇しつつ、闇に誓いし騎士らにもひとつ忠告してやる。どうやら連中の使ったユーベルコード――【闇の恩寵】には生命力を吸収する効果もあるようだが、今回に限っては相性が悪いと。
「生命は血に宿り、血には余が潜む故にな」
「? なにを……ぐ、ごほッ?!」
|生命《血》を通じて救済者から騎士に感染したウイルスは、その本来の致死性を発揮する。哀れな敵は血腫に塗れ、血反吐を撒き散らしながら苦悶の内に息絶える。赤死病とも恐れられ、吸血鬼伝承を生む要因ともなった病魔の力は、たとえオブリビオンでも逃れることはできない。
「貴女は、いったい……」
ここまでにブラミエが見せた強大かつ凶悪な力の数々に、オラトリオの聖者は驚愕していた。一時的とはいえ人間を不死身にする力といい、彼女の異能は明らかに人の域を超えている。それに対してブラミエは、悪戯が成功したようにこっそりと笑いながら正体を明かす。
「余の世界にて陽と聖を嫌い、血を好む化物の事をな? 吸血鬼、と呼ぶのだよ」
「……!」
これまでヴァンパイアと戦い続けてきた闇の救済者が、異世界の者とはいえ吸血鬼の力を借りていたとは。ブラミエ個人への忌避感こそなかったものの、やはり驚愕は大きかった。聖者の目玉が零れ落ちそうなくらい目をまん丸くしているのを見て、彼女はますます可笑しそうにくつくつと笑うのだった。
「聖者。筋肉痛と祝福は治療をしてやるがよい。放っておくと後がつらいからな」
「え。あ、はははいっ!」
カミングアウトから何事もなかったようにブラミエが指示を出すと、聖者はまだ驚きの動揺も冷めやらぬまま治療に向かった。不死身とはいえ人体に本来あり得ない力を引き出させるのだ、その反動は効果が切れた後からやって来る。
「大丈夫ですか?」
「う、急に身体が……」
後退してきた味方に【生まれながらの光】を浴びせる聖者を眺めながら、ブラミエはまだ先程の余韻に浸っていた。
驚愕と恐怖は妖怪にとって御馳走。助力の対価としてはなかなか悪くないものを、あの天使は提供してくれた――。
大成功
🔵🔵🔵
花咲・月華
よし!皆で力を合わせよう!
『ではUCを使用出来る者!』
朱雀が1人の人間の少年に指示を出す
彼はUC絶望の福音があり敵のUCのタイミングを見て回避するタイミングを皆に伝える
朱雀は皆の前に立ち敵のUCを結界術を展開して防御する
ありがとう!私も本気出す!
指定UC発動
くらえ!時空崩壊の焔矢!
私は時空崩壊の焔矢を敵に放ち敵を消滅させる
『…よし』
朱雀はマヒ攻撃の矢弾の雨を放ち敵の動きを止める
『次!咎人殺し!』
敵の動きが止まった瞬間、朱雀は咎人殺しの少女にUC咎力封じを指示する
凄いわ!朱雀!流石、鬼の大将ね!
嬉しそうに朱雀を褒める私
させないよ!
UCを避けた敵には私がUC雀煉乱舞とUC焔天神矢を放ち敵を攻撃した
「よし! 皆で力を合わせよう!」
「「おうッ!」」
城砦から出てきた『闇に誓いし騎士』達を見て、月華が勇ましく号令を発すると、闇の救済者達が鬨の声を上げる。
敵は大軍だがこちらも士気は盛ん、猟兵だけでなく人類の精鋭が揃っている。連携次第で勝てない事はないはずだ。
『ではユーベルコードを使用出来る者!』
「全員です!」
ここに居る闇の救済者はみな、猟兵やオブリビオンに比べれば微弱だがユーベルコードに覚醒している。その中から朱雀は1人の人間の少年を選出し、指示を出す。ダークセイヴァーの人間が持つ【絶望の福音】に勝算を感じたのだ。
「たかが人間が力を合わせたところで……全て蹂躙してくれるわ!」
闇に誓いし騎士達は長大な騎士槍を金棒のようにぶんぶんと振り回し、騎馬と共に猛烈なスピードで突進してくる。
その兜の奥の邪悪な瞳が輝く時、発動するのは【屠殺旋風】。全重量と速度を上乗せした連撃をまともに喰らえば、人間はもちろん猟兵であっても生命が危うい。
「……来るよ!」
だが、朱雀から任務を託された人間の少年は【絶望の福音】をもって敵がユーベルコードを発動する瞬間を予知し、回避のタイミングを皆に伝える。そのお陰で闇の救済者達は退避が間に合い、朱雀も寸前で結界を張ることができた。
『よくやった!』
「ありがとう! 私も本気出す!」
皆の前に立って結界を張り、屠殺旋風を防御する朱雀。味方の緊密な連携に護られた月華は感謝を伝えつつ、今度は自分の番だと【花咲流奥義・鬼姫覚醒】を発動した。全身から燃え上がる焔の妖力が、一揃いの弓矢を形作っていく。
「くらえ! 時空崩壊の焔矢!」
「なにっ……ぐわぁぁぁッ?!!」
放たれた焔矢は空間そのものを射抜くことで射線上の敵を跡形もなく消滅させる。これには闇に誓いし騎士達も驚きを隠せず、動揺が騎馬の足を鈍らせた。勇猛さと機動力こそが最大の武器である騎兵が臆することは、重大な隙を晒すことを意味する。
『……よし。次! 咎人殺し!』
「はいっ!」
すかさず朱雀はマヒ効果のある矢弾の雨を降らせて敵の足を止め、待機させていた咎人殺しの少女に指示を飛ばす。
その少女はすぐさま【咎力封じ】を放ち、手枷、猿轡、拘束ロープで敵を拘束し、ユーベルコードの使用を封じた。
「凄いわ! 朱雀!流石、鬼の大将ね!」
嬉しそうに朱雀を褒める月華。堂々とした振る舞いで的確な指揮を執る彼の勇姿は、まさしく歴戦の武将のそれだ。
脚を殺され、能力も封印されたオブリビオンなどもはや恐るるに足らず。残りの闇の救済者からの総攻撃によって、闇に誓いし騎士は次々に討たれていった。
「お、おのれ……せめて一人でも道連れにッ」
「させないよ!」
辛くも咎力封じを避けていた騎士には、月華が【雀煉乱舞】と【焔天神矢】を放つ。この世の条理を超えていく焔の槍と刀と矢、そして大雀の群れの大量召喚が、怒涛の勢いで敵を追い詰める。もはや向こうに逆転の好機は一切ない。
「ば、バカなぁぁぁぁぁぁッ!!!?」
矮小な人間どもと、それに与する者達に敗北したことが最期まで信じられず、闇に誓いし騎士達は断末魔を上げる。
闇の救済者達の勢いはまだ止まらない。このまま一気に敵軍を蹴散らして、城砦を攻め落とすつもりのようだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
他の皆と協力して行動するわね。
「今度は重装騎兵が相手ね」
やや後方、少しでも高い位置で敵が一望できる場所に立つ。
そして、敵が射程に入り次第弓を構えて上空へユーベルコード【ヤヌスの矢】を放つ。
「降り注げ、友に癒しを、敵には滅びを!」
上空からの魔力の矢を[誘導弾]で当てて[貫通攻撃]で鎧ごと撃ち抜く。
そして
「討ち漏らしは貴方たちに任せるわよ」
と闇の救済者たちに声をかける。
何しろ、彼らは庇護すべき対象というわけではなく、共に戦う同志なのだから。
「今度は重装騎兵が相手ね」
敵軍の武装と騎馬を確認したヴィオレッタは、戦場のやや後方、少しでも高い位置で敵軍を一望できる場所に立つ。
霧と闇の影響で少々視界が悪いが、道中に比べれば見えないほどではない。その手には呪を刻み付けられた合成弓、【射貫き打ち抜く鋒矢】を携えていた。
「愚か者どもよ、我らが槍に散れ……!」
城砦より現れた『闇に誓いし騎士』達は、兜の奥の瞳を輝かせ、巨大な騎士槍を鈍器として振るいながら突撃する。
装備の重量に騎馬の速度を合わせた突破力こそ、戦場において重装騎兵が脅威とされる由縁。こちらも精鋭と言えど正面から受け止めるのはほぼ不可能だ。
「降り注げ、友に癒しを、敵には滅びを!」
そこでヴィオレッタは敵が射程に入り次第、上空へ【ヤヌスの矢】を放つ。一度は闇夜に消えていった矢は、直後に無数の矢の雨となり戦場に降り注ぐ。それもただの矢ではない、分厚い鎧を貫通するほどの威力を持った魔力の矢だ。
「なッ……?!」「ぐおおッ!」
上からの攻撃を警戒していなかった騎士達は、次々と射抜かれて落馬する。多少進路を変えたくらいでは、魔力の矢は誘導弾となって目標を追尾する。たった一人の弓兵が成し遂げた技だとは信じられぬほど、その戦果は絶大だった。
「討ち漏らしは貴方たちに任せるわよ」
「はいっ!」「行くぞ、みんな!」
ヤヌスの矢で敵軍の出鼻を挫いたヴィオレッタは、闇の救済者達に声をかける。何しろ彼らは庇護すべき対象というわけではなく、共に戦う同志なのだから。彼らも猟兵任せで勝つつもりなど毛頭ないだろう、覚悟と信念を胸に挑む。
「喰らえ、ブレイズフレイム!」「鈴蘭の嵐よ!」
「ぐわッ?!」「こ、こいつら……!」
人類救済の為に鍛え上げた武技と魔術、そしてユーベルコードの力を駆使する闇の救済者の精鋭は、闇に誓いし騎士にも有効打を与える。第四層で幾度もオブリビオンとの戦いを経験してきた彼らは、もはや以前のような無力な一般人ではなく、ヴィオレッタの目から見ても頼もしい成長を遂げていた。
「調子に乗るな……!」
とは言え敵も第五の貴族に仕える手練れ揃い。量産型紋章の力も侮れず、怒りに物を言わせて猛然と槍を振り回す。
全員がその反撃を躱せたわけではなく、闇の救済者側にも相当数の負傷者が出ている。まだ士気は落ちていないが、このままではいずれ死者も――。
「大丈夫よ。私が癒やすわ」
ヴィオレッタの【ヤヌスの矢】は敵に滅びを、味方に癒やしをもたらすユーベルコード。降り注ぐ矢が闇の救済者に当たると、怪我がみるみるうちに回復していく。彼女の弓の射程で戦う限り、友軍は継続的に治療を受けられるのだ。
「すごい……これなら!」「うおおおッ!」
「く、くそ……ッ!」
癒やしの矢で力を取り戻した闇の救済者達は、さらに士気を増して敵軍を押し返していく。武威に勝る重装騎士とてこの勢いには逆らえず、兜の上からでも悔しそうな顔をしているのが分かる様子で、後退を余儀なくされていた――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
ふむふむ、いいね。美味しいお話の匂いがしてきたよ。みんなでがんばろうね。
ウィザードミサイル!
量産型の紋章を狙って壊していくよ。
紋章の強化がなければ、みんなも十分戦えるはず。
偉そうなこと言ってるけど、それの力なんでしょ?
虎の威を借るネズミだっけ?
そえじゃないなら、キミたちの全力、キミたちのお話を見せてよ。
「ふむふむ、いいね。美味しいお話の匂いがしてきたよ」
霧けぶる闇夜にそびえ立つ城砦、城門より出陣する『闇に誓いし騎士』の軍勢。アリスの嗅覚はここが本日の物語のクライマックスだと告げていた。立ちはだかる敵は強ければ強いほど、それを打ち破るお話の「美味しさ」も増すというものだ。
「みんなでがんばろうね」
「「はいッ!」」
闇の救済者達に声をかければ、頼もしい返事が聞こえてくる。彼らが危険を乗り越えてここまで来たのは、彼奴らを倒して城砦を陥落させ、第五の貴族に痛手を与えるため。領主どもを裏で操る黒幕たる連中を叩かねば、第四層に真の平和はないのだから。
「これがお話だと言うなら既に結末は決まっている」「貴様らの敗北という悲劇でな!」
【闇の恩寵】を身に纏った騎士達は、傲慢な振る舞いで闇の救済者達を見下しながらも、容赦のない騎馬突撃を仕掛けてくる。主君に与えられた量産型「紋章」は、彼らの力を四層のオブリビオンより何倍もパワーアップさせていた。このまま戦えばいくら精鋭と呼ばれる者達でも、被害は避けられないだろう。
「ウィザードミサイル!」
そこでアリスはまず敵の紋章に狙いを定める。放たれた数百発の【ウィザードミサイル】は戦場を照らす火矢の雨となり、騎士の甲冑に取り付いた宝石状の蟲に命中する。すでに何度も紋章持ちのオブリビオンと戦った彼女は、それが敵の力の源であり弱点でもあることを理解していた。
「ぐあッ?! し、しまった……」「紋章が!」
魔法の矢に紋章を射抜かれた騎士達は、鎧兜越しでもはっきりと分かるほどの動揺を見せる。全身を覆う漆黒の靄は消えていないが、槍を振るう所作にも騎馬の速度も明らかに鈍る。紋章が強化していた全ての能力が元に戻ったのだ。
「紋章の強化がなければ、みんなも十分戦えるはず」
「感謝します!」「これなら、いけるっ!」
もちろん闇の救済者達はこの機を逃さない。鍛えた武術や種族の異能、ユーベルコードを駆使して猛攻を仕掛ける。
紋章を失った闇に誓いし騎士の実力は、第四層のオブリビオンと大差ない。アリスの見込み通り勝算は十分あった。
「偉そうなこと言ってるけど、それの力なんでしょ? 虎の威を借るネズミだっけ?」
「な、なんだと……ッ!!」
闇に誓いし騎士達があれだけ傲慢な態度を取れていたのも、第五の貴族の権威と紋章の恩恵があればこそ。本人の実力ではないことをアリスはとっくに見抜いていた。指摘された敵が激昂するのは、図星を突かれた自覚があるからか。
「そうじゃないなら、キミたちの全力、キミたちのお話を見せてよ」
少女が放つ紅蓮の火矢に導かれるように、闇の救済者達が猛進する。彼我の実力差はもはや完全に逆転していた。
逆境に立たされた時こそ、その者の真価が問われる。これまでの人類がそうだったように、果たして連中はこの窮地を乗り越えられるのか――。
「クソっ……こんな、こんなはずが……!」「主よ! どうかお力を……!」
現実を受け入れられぬ者、ここに居ない主君に助けを求める者。紋章というメッキの剥がれた連中の地金は、その程度のものだった。もう少し気骨のある所を見せてくれるかと思いきや、アリスとしてはガッカリな結果かもしれない。
無論そのような輩に闇の救済者が情けをかけることはなく。紋章なき騎士は続々と断罪の剣に撃ち倒されていった。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
上層で起こっている事態に気付いていないのか、それとも関心がないのか……
いずれにせよ、情勢に疎い者が支配者を気取るなどお笑い種だ
黄金の獅子に跨り(騎乗)、【騎乗突撃】
【聖槍繚乱】によって機先を制し、向こうのランスチャージを逸らす
自慢の破壊力は味方である筈の騎士を打ち砕く
攻撃が私に集中すれば……咎人殺し隊! 今です!
号令(大声)と同時、幾重にも幾重にも重ね掛けされる【咎力封じ】
瞬く間に喪失される騎士たちの打撃力
態勢を立て直すよりも速く、再突撃からの【聖槍繚乱】による縦横無尽の【蹂躙】で敵陣を【こじ開ける】!
畳み掛けろッ!!
「上層で起こっている事態に気付いていないのか、それとも関心がないのか……」
五卿六眼『祈りの双子』が起こした闇の救済者戦争は、ここ第五層のオブリビオンにとっても無関係ではなかった。
歓喜の門を通して数多の戦力が転移させられただけでなく、もし彼女の計画が成就していればこの階層も鮮血の洪水に沈む予定だったのだ。にも関わらず、第五の貴族の動向は戦前からあまりにも変わりがないように感じる。
「いずれにせよ、情勢に疎い者が支配者を気取るなどお笑い種だ」
今やダークセイヴァーは変革の時代に突入したというのに、大事な城の防衛を部下任せにして姿さえ見せないとは。
この地を治める貴族の愚昧さを、オリヴィアはせせら笑いたくなる。黒幕気取りでいられるのも今のうちだ――この戦いの勝利を以て、彼奴らの度肝を抜いてやるとしよう。
「我らが主を愚弄するか!」「その罪、万死に値する!」
主君を侮辱された『闇に誓いし騎士』達は、怒りのままに騎馬を駆けさせる。怪物じみた馬力に乗り手の装備重量を載せたランスチャージは、単純だが【生ける破城鎚】の如き威力を生み出す。生身の人間が受け止めるのは困難を極めるが――歴戦の猟兵は戦の駆け引きを知っている。
「我が聖槍の閃きを見るがいい――!」
簡易召喚した「黄金の獅子」に跨ったオリヴィアは、味方の先頭に立って駆け出すと、【聖槍繚乱】によって敵軍の機先を制した。横薙ぎに振るわれた破邪の聖槍が目も眩むほどの閃光を発し、突っ込んできた騎士を纏めてなぎ倒す。
「ぐわッ?!」「なんだと……っ、がはぁッ!!」
聖槍の矛先によってランスチャージは逸らされ、自慢の破壊力は味方であるはずの騎士を打ち砕く。標的を1人に定めて密集したのが仇になった形だ。騎兵という大きな括りは同じでも、オリヴィアと闇に誓いし騎士では練度が違う。
「くっ……まだだ!」「よくもやってくれたな!」
このままやられては騎士の沽券に関わると、敵も躍起になって反撃を仕掛けてくる。一対多で圧倒する華麗な戦いぶりが注目を集めやすいのもあるだろう。主力となる猟兵さえ討てば残りの「闇の救済者」は雑兵に過ぎないと、常人に対する侮りが判断を左右したところも否めない。
「攻撃が私に集中すれば……咎人殺し隊! 今です!」
「「はいッ!」」
そうした敵の心理を完全に察していたオリヴィアは、ギリギリまで引きつけてから味方に合図を出す。号令と同時、待機していた咎人殺し達はここが正念場だと気合いを込めて、準備していた沢山の手枷、猿轡、拘束ロープを放った。
「こいつを喰らえっ!」
「なにを……うぐッ?!」
幾重にも幾重にも重ね掛けされる【咎力封じ】が闇に誓いし騎士達を縛り上げ、瞬く間に打撃力を喪失させる。鍛錬の末に会得したユーベルコードの力は猟兵に比べれば微弱だが、一時的な拘束目的としては十二分の効力を発揮した。
「彼らの力を侮ったな!」
敵軍が拘束を振りほどいて態勢を立て直すよりも速く、オリヴィアは再突撃を敢行。再びの【聖槍繚乱】で目の前にいる騎士どもを縦横無尽に蹂躙し、敵陣をこじ開けていく。もはや向こうは隊列を維持することもできず、騎兵の本領たる突撃も封じられた、烏合の衆に成り果てていた。
「畳み掛けろッ!!」
「「うおおおおおおッ!!!!」」
ここぞとばかりに闇の救済者の全戦力が、オリヴィアの後に続いて総攻撃をかける。黒騎士やブレイズキャリバーの猛攻が、人形遣いや咎人殺しの技巧が、聖者や死霊術士の魔法が――この世界の明日を切り拓くために磨き上げてきた力が、悪しき支配者のしもべにとどめを刺す。
「私達の、勝利だ!」
「ば……馬鹿、な……!」
最後の騎士が塵となって骸の海へと還り、戦いの喧騒が止む。代わって響き渡るのは闇の救済者達の勝鬨であった。
この日、彼らは恐るべき第五の貴族の軍に勝利し、第五層の拠点を制圧するという、大きな偉業を成し遂げたのだ。
猟兵達の協力によって成し遂げられたこの勝利は、ダークセイヴァーの人類にとってさらなる前進となるだろう。
もはや彼らは闇の支配に怯えるだけの弱者ではない。上層から下層にいたる全ての階層で、変革は訪れだしていた。
大成功
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