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父を愛する魔女は生贄を求めて

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●全ては父の為に
 ダークセイヴァー。
 夜と闇に覆われ、異端の神々が跋扈するこの世界の人々は、すでにヴァンパイアの支配下にある。
 ヴァンパイア達は眷属となるオブリビオンを呼び寄せ、世界をさらに破滅へと導く。
 この世界を守る為、猟兵はこの世界へと身を投じていくのである。

 クロヴェルと呼ばれる街。
 この地は、オブリビオンの脅威にさらされていた。
 いつしか、街外れにある古城跡へと住み着いた魔女は、たくさんの巨躯の男どもを従え、街へと攻め込んできた。
 力なき人々は魔女の軍勢に屈してしまい、街は魔女の勢力下に入ってしまった。
 彼女の要望はただ一つ。
「パパの為に、生贄になりなさい」
 父と共にありたいと願った少女は、父の首を落とした。
 少女は自らが永遠にあり続ける為に人形の体を得て、魔女になり果ててしまう。
 そして、首だけとなった父の首を手に、少女は生贄を求め続けたのだ。
「そんなこと、できるわけが……」
「そうだ、なぜお前の為に我々が犠牲にならねばならない!」
 さすがに、住民達も生贄を差し出すのは拒み続けていたが……。
「うるさいわね。……やりなさい」
「へへっ、こいつらを捕えればいいんだな?」
 配下である屈強な男どもは主の命に従い、力ずくで女子供を中心に捕えてしまう。
「おら、早く来るんだ!」
「いや、いやあっ!!」
「お父さん、お母さん……!!」
 そんな街の人々の叫びを無視し、魔女は女子供中心に多数の人々を城へと連れ去ってしまう。
「後は断頭台の準備ね」
 配下の手によって、城の中庭へと瞬く間に準備される断頭台。
 少女が望めばすぐにでも、贄の首を切断することができる。
「待っててね、パパ」
 魔女はもはや語らぬ父親の首へと、恍惚とした表情で語り掛ける。
 その一方で。
「うう、ううっ……」
「なんで、死ななきゃいけないの?」
「誰か、誰か、助けて……!」
 牢に閉じ込められて震える街の人々は、いつともわからぬ処刑の日に怯え続けるのである。

●囚われの人々を救いに
 グリモアベース。
 その一角で、猟兵達へとセレイン・オランケット(エルフの聖者・f00242)が呼び込みを行っている。
「話を聞いてくれるのね。良かった」
 ホッと一息をつく彼女は感謝を示し、猟兵が話を聞く態勢に入ったところで、話を始める。
 今回、解決を求める依頼は、ダークセイヴァーにて起こるとある街での1件。
 なんでも、とある街が魔女となり果てた少女に支配されたのだと言う。
 少女は屈強なる男どもを使い、女子供を中心に生贄として街はずれの古城へと連れ去ってしまったのだ。
「城の中庭には断頭台が設置されていて、そこで人々の首を跳ねてしまうようよ」
 それを阻止すべく少女が住まう古城に向かいたいところだが、2つ障害が立ち塞がる。
 まず、古城へと向かう途中に、関所がある。
 ここに少女は数名の配下を詰めてさせている為、どうにかして突破せねばならない。
 また、城の周囲でも、多数の配下が見張りを行っている。
 生前は奴隷「闘奴」を牢に閉じ込め、看守にして拷問官であったという巨躯の男達。
 そいつらは侵入者を発見すれば、鉄製の棍棒を手にして殴りかかってくる。
 それらの配下を倒すことができれば、城の中庭で魔女となった少女と対峙することができるはずだ。
 牢に閉じ込められた人々を救う為にも、できるだけ早くこの魔女を討伐したい。
「以上よ。……どうか、街の人達を救ってあげて」
 説明を終え、セレインは依頼を受けてくれた猟兵達を現場となる街へと送り出すのだった。


なちゅい
 猟兵の皆様、こんにちは。なちゅいです。
 当シナリオを目にしていただき、ありがとうございます。

 今回は、人々に生贄を求める魔女の討伐を願います。

 こちらのシナリオでは、
 第1章は、魔女が住む城の途中にある関所の突破を願います。
 第2章は、城で護衛に当たる闘奴牢看守の集団の討伐、突破を願います。
 第3章は、城の中庭で人々を捕え、待ち構える断頭台の魔女の討伐を願います。

 シナリオの運営状況はマイページ、またはツイッターでお知らせいたします。
 それでは、行ってらっしゃいませ。
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第1章 冒険 『関所を突破して送り届けろ!』

POW   :    強引に突破する、または気迫を漲らせて近寄らせないことで突破する

SPD   :    素早く物を隠す、迂回路を使う、見つからずに突破する

WIZ   :    袖の下を渡す、言い包める、許可証を偽造する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユーゴ・アッシュフィールド
また、とんでもない奴が現れたな。
父と共にありたいという願い自体を、否定する気はないが……
他者に危害を加えるなら容赦はしない。

【POWで行動】
堂々と関所を通ろう。
道を阻むなら、手下と少し話をしよう。
容赦なく襲い掛かってくる場合は、相手の武器を剣で叩き落とす。
とにかく話ができる状態に持っていこう。

お前たちの事を知りたい。
もし自らの意思で魔女に従っているようなら、ここで殺す。
そうでなければ命を奪うつもりはない。
大人しく俺達を見逃せ。
すべて終わらせてきてやる。

なるべく穏便に済ませたいと思っているんだが
お前たちの返事を聞かせてくれ。


フレミア・レイブラッド
関所?そんなモノの何が問題なの?
力づくで突破も楽しくて好きなんだけど…後があるしね。スマートに行こうかしら♪

ゆっくりと関所の配下達に姿を見せて【誘惑】で配下達の視線を全て自身に釘付けにし、【魅了の魔眼】で全員魅了して僕に変える。更に【催眠術】を重ねて完全に僕とし、関所を通すように命じる。

ついでに城周辺や城内の配下の配置や情報等、知ってる事は全て吐かせるわ。
後はこれ以降、主人には異常無しと報告し、自身が裏切っていることをバレない様にする事、自身と同様の猟兵が後から訪れたら速やかに通すように命令し城に向かうわ。

スマートに済んで良かったわ…じゃなきゃ、血祭りにしてたと思うし…♪

※アドリブ歓迎


宇冠・龍
由(f01211)と参加

首を切断する相手ですか……
夫の頭を目前で食われた過去を持つため、思うところがありますね

父と共にありたい、その願い自体は尊いものですが、その父親を殺め、ましてや無関係な方々を贄にするなど言語道断
疾くと捕らわれた方を助け、魔女にお説教をしましょう


恐らく関所の番は一般人
なるべく争いは控えたいです
【蛟竜雲雨】で龍型の霊を複数体、関所に向かわせ騒ぎを起こしましょう
害はありませんが、切っても殴っても効かない幽霊です。時間稼ぎくらいにはなります

騒ぎに乗じて別方向から龍霊の背にのり関所の壁を突破します


宇冠・由
お母様(f00173)と参加

私は実親の記憶はありません。マスクですから、もしかすると存在しないのかもしれません
ですが、お母様とお父様に拾われました。家族というものの大切さは理解しているつもりです
だからこそ、この凶行は絶対止めてみせますわ

お母様は騒ぎを起こして突破する様子なので、それに便乗させてもらいます
お母様の両手の中で悠々と関所を突破

……だけですと申し訳ないので、騒ぎを起こすのに助力します
【十六夜月】で呼び出した多数の狼

事前に遠吠えを聞かせて狼がいることを門番に意識付け
そして霊が関所を襲うと同時に、狼の群れも一緒にGO
まさに百鬼夜行さながらでしょう

傷つけずに、関所を超えたら狼は撤退させます


ジェラルド・ボノムドネージュ
処刑、か……
あまり時間は無さそうだな

【SPD】で行動
見つからずに突破するとしよう
配下を【追跡】、或いは【第六感】を駆使して周囲を探索
迂回路や登れる場所が無いか探す

迂回路を見つけたならば【目立たない】ように
【忍び足】で移動するか
登れる場所があるならば【地形の利用】を駆使し、
【クライミング】で登り、通り抜けるか

何れにせよ、出来るだけ隠密に動いて古城へ向かおう


フィン・スターニス
己の為に他者の命を奪う行為は、
放置してはおけません。
捕らえられた人の為、
出来る限りの早く救助をしないとです。

関所の近くまで(気付かれない範囲)は、速度重視で移動。
遠目から、目立たぬ様に隠れて、
関所を観察し、抜けやすい箇所があるかを調べましょう。

関所を抜ける際は、七彩の風衣を使い透明化します。
極力音をたてない様に
慎重に忍び足で進みます。

壁があれば、透明化させた流星魔鎚を上部へ投擲し壁に吸着させ慎重に登り、
降りる際も音をたてぬ様に気を付けます。


ルビィ・リオネッタ
相棒にして恋人の六道紫音(f01807)と行動を共にするわ

「関門から少し離れた場所を抜けてみよっか」

隠密の得意なアタシの出番
相棒のシオンには『妖精の家』の中に隠れていて貰うわ
【ダッシュ】で関門の死角になる場所や警備の薄い場所に移動
【目立たない】よう【空中戦】で柵や障害物は乗り越えるわ

(シオンに心配されてるみたいね。アタシは大丈夫だってところ、見せなきゃ…!)

・心情
愛情って何なのか…考えてしまうわ
(大切だから、永遠でいられるから…その気持ちで殺してしまえるの…?)
相手の気持ちを無視して、自分を愛しているだけにしか見えないの

アタシは…実は愛情を受けるのはまだ慣れてない
シオンはどう考えるのかな…


六道・紫音
相棒にして恋人のルビィ(f01944)と共闘

・関所突破
「頼むぞ、ルビィ…無理はするなよ」
俺はルビィのUCを用いて突破を試みる。
UCで生み出される妖精の家に隠れてルビィが無事に関所を抜けるのを待つだけだが…それだけにルビィの身を案じてしまう。
信頼はしているが、愛とはそういうものなのだろう。

・心情
しかし父の為に人々を犠牲にする魔女とは…ある意味で人間らしい。
人は己や大切な物の為ならいくらでも利己的に、残酷になれる生き物、そういう意味でその魔女はまさしく人だ。
剣を極める為に人を斬り、ルビィの為ならいかなる犠牲も厭わぬ俺とは…もしかしたら似ているのかも知れない。

※アドリブ歓迎



●父の為に他者の首を切る魔女
 ダークセイヴァーのとある地方。
 この地で起こっている事件の概要を知り、猟兵達は表情は硬くしてしまう。
「処刑、か……。あまり時間は無さそうだな」
 左目を通る大きな傷が目を引く、ジェラルド・ボノムドネージュ(氷結の暗殺者・f09144)が状況を確認し、一言呟く。
「また、とんでもない奴が現れたな」
 アッシュブロンドの髪を乱雑に纏めたユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)は、今回の敵に狂気を感じていた。
「首を切断する相手ですか……」
 頭に角、竜の尾を持つ人派ドラゴニアン、宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は、目の前で夫の頭を食われた過去を持つ。
 だからこそ、生贄として他者の首を求める魔女に、彼女も思う事があって。
 ――父と共にありたい。
 その願い自体は尊さすら感じるものと、龍も認めはするが……。
「その父親を殺め、ましてや無関係な方々を贄にするなど、言語道断」
 疾くと捕らわれた人々を助け、魔女に説教をと龍は意気込む。
 そして、龍の手で娘同然に育てられたウサギのマスク、宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)がふわふわと近くを浮いている。
(「私は実親の記憶はありません」)
 もしかしたら、マスクである彼女には両親など存在しないのかもしれない。
 だが、宇冠夫妻に拾われ、家族というものの大切さを知って育った由は気合を入れて。
「だからこそ、この凶行は絶対止めてみせますわ」
「己の為に他者の命を奪う行為は、放置してはおけません」
 そこへ、眼帯で顔を隠すフィン・スターニス(f00208)がやってきて、同意する。
 捕らわれた人々の為に、できる限り早く救助をと彼女は意気込みを語った。
「父と共にありたいという願い自体を、否定する気はないが……」
 紫煙を燻ぶらせていた火を消し、ユーゴは動き出す。
「他者に危害を加えるなら、容赦はしない」
 そう告げ、彼は仲間と共に問題の古城へと向かっていくのである。

●不要な戦いは避けて
 人のさらわれた集落から古城に向かいたくとも、関所が行く手を阻む。
 元々、関所に詰めていたのは、確かに一般人である兵士だったろう。
 だが、そこには魔女の配下である屈強な男ども……オブリビオンしかいない。
 そいつらは一応、表向きは何事もないよう、関所の業務を行う振りをしていたようである。
 関所の向こうの集落を魔女が狙ったことを考えれば、ここを守っていた兵士達が抵抗しなかったはずはない。
 集落の人々が捕えられた経緯を考えれば、その兵士達はおそらくすでに……。
「……見つからずに突破するとしよう」
 ジェラルドを始め、争いを避けて通るのを希望したメンバーが手早く関所の突破を目指す。
 フィンは遠目から関所を観察し、抜けやすい箇所がないかと調査する。
 ぼやぼやしていると、古城で捕らわれた人々の命が危うい為、急ぎたいところ。
 また、強行突破を目論む猟兵が来た後は、兵士達の警戒が強まる可能性もある。
 念入りに、それでいて手早く、フィンは調査を行う。
 ジェラルドも関所に詰める配下の居場所を抑えた上で、迂回路や向こうへと登ることができる場所がないかと勘を働かせて探すのである。

 アオーン……。
 どこからか聞こえてくる狼の遠吠え。
 その声を関所内の配下の男どもが訝しみ、外を見回す。
 そんな中、最初にこの場の突破へと当たっていたのは龍、由の宇冠親子だ。
 一般人の身を案じ、龍は争いは控えたいと考えていた。
 関所にいるのはオブリビオンだったが、この場をやり過ごして先に進みたい状況に変わりはない。
「災いは万理の外に、邪は更に外へ」
 彼女が呼び出した龍型の霊が関所へと向かうと、そこにいた男どもが騒ぎ始める。
「なんだ、これは!?」
 男どもは鉄製の棍棒でその霊を殴ろうとするが、すり抜けてしまって全く効果はない。
「私に力を貸して」
 由もその手伝いをと、多数の狼の群れを呼び出していた。先ほど聞こえてきた遠吠えはこの狼達が発したものだ。
 龍の霊と紛れるように、狼の群れは関所へと突撃していく。
「うおおおっ!?」
 さすがの屈強な男達もそれらに戸惑いを隠せず、鉄の棍棒で殴りつけて撃退へと当たる。
「まさに、百鬼夜行さながらでしょう」
 この騒ぎに乗じて、他のメンバー達も動き出す。
 目立たぬように忍び足で移動していたジェラルドは、宇冠親子が乗り越えた付近の壁へと捕まり、よじ登っていく。
 見つからないに越したことはない。ジェラルドは隠密行動のまま、関所の壁を乗り越えていった。
 ユーベルコード【七彩の風衣】を使い、自身を透明化させていたフィンもまた壁を乗り越えようとする。
 幸い、関所内は混乱している。
 こちらには魔女の配下達が気づく様子はないが、七彩の風衣では物音まで消すことが出来ぬ為、フィンは慎重に忍び足で進む。
 ジェラルドに続き、フィンは透明化した暗器『流星魔鎚』を壁上部のとっかかりに先端の魔石を吸着させ、それを伝って壁を登っていく。
 降りるときまで気を抜かず、フィンは同様に流星魔鎚を壁の向こう側に下ろして降りて行った。
 由はそれを目にしながら龍が呼び出した龍霊の背に乗り、関所の壁を突破していく。
 自分達が通り過ぎた後、由はけしかけた狼を撤退させていたようだった。

 程なくして、一組のペアが関所へとやってくる。
「関門から少し離れた場所を抜けてみよっか」
 相棒へとえんじ色の髪のフェアリー、ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)が語り掛けると、肩までかかる長い黒髪の青年、六道・紫音(剣聖・f01807)は恋人を気遣って。
「頼むぞ、ルビィ。……無理はするなよ」
 彼の姿は、この場にはない。いや、見えていないという方が正しいか。
 というのは、ルビィのユーベルコード【妖精の家】は、彼女のティアラの宝石に触れることで、相手を自分と同じ大きさにする。
 その上で、自身のドールハウスへと閉じ込める……この場合は匿うといった方が適切だろうが……ことができるのだ。
 この場を隠密行動が得意なルビィに全て任せることにし、紫音は外から見えぬよう隠れていた。
 関所の配下達は先程の事件もあり、やや警戒を強めていたようだったが、物陰となる壁を目指してルビィはダッシュで関所の壁へと近づいていく。
 配下達が視線を向けてきたようにも見えたが、非常に小さなフェアリーは遠方からだと目を凝らさねば判別は難しい。
(「…………」)
 ドールハウスの中で、うまくいくよう願う紫音。
 ルビィのことは信頼しているものの、彼女を愛するが故に心配してしまうのだろう。
(「アタシは大丈夫だってところ、見せなきゃ……!」)
 警備が薄い場所ではあるが、身長25cm程度のルビィも、さすがに近づけば配下に気づかれてしまう恐れがある。
 空中戦のスキルを活かし、彼女は壁を乗り越えていく。
 幸いルビィを注視する者はおらず、無事関所を越えることができたようだ。

 壁を乗り越えて一息ついたルビィはふと、これから対するであろう魔女について考える。
(「愛情って何なのか……考えてしまうわ」)
 ――大切だから。永遠でいられるから。
 その気持ちだけで、父親を手にかけてしまえるものなのか。
 魔女の行いは相手の気持ちを無視して、自分を愛しているようにしか思えぬルビィ。
(「アタシは……」)
 実は愛情を受けるのはまだ慣れてないと自覚するルビィは、妖精の家から出た紫音が何を思うか気にかける。
「助かった。さすがルビィだな」
 一方、礼を告げた紫音もまた、古城に住まう少女について考えていた。
「しかし、父の為に人々を犠牲にする魔女とは……ある意味で人間らしい」
 人は己や大切な物の為なら、いくらでも利己的に、残酷になれる生き物。
 そういう意味では、魔女は実に人間らしいと紫音は本音を語る。
(「俺は……」)
 剣を極める為に人を斬り、恋人の為なら如何なる犠牲をも厭う事ない自身の姿を、紫音は魔女に重ねてしまって。
(「もしかしたら、似ているのかも知れない」)
 そこで、近くを飛ぶフェアリーの少女が彼の顔を覗き込む。
「行きましょ、シオン」
 それぞれ異なる想いを抱き、寄り添う2人は魔女の元へと向かう。

●正面から堂々と
 程なくして、正面突破を図ろうとするメンバー達が姿を現す。
 近辺に人影がいなくなっていることから、先発メンバーが無事に関所を突破したことを彼らは察する。
 小柄な少女にも見える容姿のダンピール、フレミア・レイブラッド(幼き吸血姫・f14467)は関所の何が問題なのかと胸を張って。
「力づくで突破も楽しくて好きなんだけど……、後があるしね。スマートに行こうかしら♪」
 それに同意するユーゴも、正面突破をはかる心づもりだ。
「ったく、次から次へと……」
 その二人の姿に、配下達は悪態づきながら彼らの進路を遮ってきた。
 問答無用で襲ってこないのを見て、ユーゴは配下へと話しかける。
「お前たちの事を知りたい」
「ああ……ん?」
 ガラの悪い配下達はすぐにユーゴを警戒し、集まってくる。
「もし、自らの意思で魔女に従っているようなら、ここで殺す。そうでなければ、命を奪うつもりはない」
「あぁ……!?」
 配下達は警告を行う彼の様子に顔をしかめ、鉄の棍棒を取り出して構えていた。
「大人しく俺達を見逃せ。すべて終わらせてきてやる」
「ざけんな、オラァ!!」
 この場はなるべく穏便に済ませようとするユーゴだが、魔女の配下たる彼らが猟兵を逃すはずもない。
 殴りかかってきた相手に、彼は手にする剣で切りかかっていく。
「……まあ、こうなるわよね」
 配下達の視線を集めたフレミアが彼らに魅了の魔眼を向けて。
「私の僕になりなさい」
 全員とはいかぬが、フレミアがほとんどの配下達を隷属化させてしまうと、敵は同士討ちを始める。
 その中で、ユーゴが正気なままの敵を切り捨て、力づくでこの場を突破していく。
「……話など、できる状態ではなかったな」
「スマートにもいかなかったわね……」
 数体は倒れたままの関所で、フレミアは僕とした男どもへとさらに催眠術を重ねて完全に僕へと変えた。
 そして、フレミアはしばし、彼らへと古城周辺や城内の配下の配置、情報などを洗いざらい吐かせていく。
「なるほど……。あと、ここからは命令よ」
 この後、主人には異常なしと報告すること。
 そして、他の猟兵が訪れるのであれば、速やかに通すこと。
「じゃあ、よろしくね」
 それだけ言い残し、フレミアはユーゴと共に古城を目指すのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『闘奴牢看守』

POW   :    ボディで悶絶させてからボッコボコにしてやるぜ!
【鉄製棍棒どてっ腹フルスイング 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鉄製棍棒による滅多打ち】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チェーンデスマッチたこのやろう!
【フックと爆弾付きの鎖 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【鎖についてるフックを肉に食い込ませること】で繋ぐ。
WIZ   :    嗜虐衝動暴走
【えげつない嗜虐衝動 】に覚醒して【『暴走(バイオレンス)』の化身】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●侵攻を妨げる屈強なる男達
 関所を越えた猟兵達は、古城へと急ぐ。
 ――捕まった人々は無事だろうか。
 街の住民の安否を気遣いながらも、猟兵達は視界に見えてきた古城へと駆けこんでいく。

 しかしながら、魔女もそうやすやすと敵を城内へと侵入はさせはしない。
 城の周りには、皮鎧を纏い、鉄製の棍棒を持つ柄の悪い男どもがうろついている。
 それらは生前、闘奴牢の看守をしていた者達。
 ヴァンパイアの眷属としてもよく見かける存在だが、この城に住まう魔女もまた、多数の男どもを使役しているらしい。
 個々の強さは、猟兵ならさほどでもないだろう。
 こんなところで時間を食ってはいられない。
 猟兵達は城内へと突入する為、群がって襲い来る男ども……元・闘奴牢看守達の討伐へと当たるのである。
フレミア・レイブラッド
筋肉ダルマに用は無いのよね…血も不味そうだし…。


【誘惑】で魅力を振り撒きながら戦闘。
如何にも詰まら無い、といった態度をしつつ、攻撃を仕掛けて来たらフルスイングは【見切り】で回避。鎖は【念動力】で空中で固定して逆に相手に鎖を返して爆弾爆破。
その隙に一瞬で間合いを詰め、【怪力、早業】を乗せた【2回攻撃】を叩き込み、【串刺し】にして付着した血を味見して顔を顰めたり…。

やっぱり不味い…舐めなきゃ良かったわ…

キレて暴走したら【サイコキネシス】と【念動力】を発動。二重の念動力で相手の動きを完全に抑え込み、敵の四肢を捻じり折る。最後は相手の苦しむ様を少し楽し気に眺め首を捻じり切りトドメを刺す。

※アドリブ歓迎


ユーゴ・アッシュフィールド
一緒に行動したメンバーが良かった。
目的地の情報は入手できている。
他のメンバーにも共有しておこうか。

魔女を目指して進むが、恐らく敵とは出会うだろう。
関所のやりとりを考えるに、話し合いは無駄だな。
ならば、先程と同様に押し通るのみだ。

相手の行動は、どれも分かりやすいな。
とはいえ、あのデカい鉄の棒を剣で受ける訳にも行かない。
丁寧に回避しつつ、隙を見て斬撃や刺突を叩きこもう。
狙うは急所だ、なるべく一撃で殺せるよう努力しよう。


フィン・スターニス
数が多いですね。
ならば数を減らし、突破をしやすくしていきましょう。

七彩の風衣で、自身と武器を透明化し、
弓で狙撃で、他者の援護をします。
なお、放った矢も着弾するまでは透明化させておき、
不意をつきやすくします。

弓での攻撃は、主に急所を狙うか、
防具の隙間を狙います。
動きを見切り、時に勘も便りに放ちます。

同じ場所に長居はせず、こまめに移動
流星魔鎚で高所に登る等、
周囲の地形も利用し、居場所をさとられ難くしましょう。

突破を試みる人がいれば、そちらの援護を優先させます。

疲労が酷くなり過ぎる前に、
透明化は解除しますが、
七彩の雷針が発動可能なら、
疲労回復を試み、透明化を継続します。


六道・紫音
相棒にして恋人のルビィ(f01944)と共闘

愛を超越すれば憎しみに変わるというが、そも愛憎とは裏表の業…誰かを愛するというのは誰かを否定する事にも繋がる、そして戦は起こるのだ。
だが俺は明鏡止水の境地に達した剣聖…ルビィが斬るなといえば、何も斬らんよ。

・戦術
「邪魔をするな、雑兵」
『残像』を伴いながら『ダッシュ』で一足飛びに駆ける《縮地》にて刀の間合いまで素早く距離を詰め、『鎧無視効果』で弱点を狙い『怪力』を発揮して膂力を高め『早業』で極限まで剣速を早めた【壱之太刀《斬鋼》】で敵を次々と斬り捨ててゆく。
相手の攻撃を『第六感』と『見切り』で見極め回避し即座に『カウンター』で再び攻勢へ。

※アドリブ歓迎


ルビィ・リオネッタ
相棒にして恋人の六道紫音(f01807)と共闘

「…シオン。アタシは愛情の先にあるのは憎しみじゃないと思う。相手を心から想うなら、その相手の事を一番に考える気がするもの」

アタシは妖精で人間じゃないけれど…

「もし、アタシが斬らないで、って言ったら…シオンはその剣を止められる?」

・戦術
シオンのサポートをするわね
彼の肩に乗り、常に周りを【視力・聞き耳】で把握

「シオン、後ろからくるわ」

敵の武器は大振りね
軌道を【見切り】『精霊の抱擁』で邪魔するわ
フルスイングした方向に力をかけて敵の隙を大きくしたり、【属性攻撃】で植物の蔦を足に絡めて行動を阻害しましょう

「アタシ達、急いでるの。構っている暇はないわ」


ジェラルド・ボノムドネージュ
素早く突破したい所だが……少々、難しそうだな
……ならば、数を減らすまでだ

気付かれてない状態なら【目立たない】ように【ダッシュ】で駆け込み、
【先制攻撃】で一人を【だまし討ち】で 奇襲
気付かれている場合は、氷の戦鎚の【なぎ払い】で有象無象の看守に
冷気を伴う【衝撃波】で【吹き飛ばし】を狙う

看守の攻撃には【ユーベルコード】を使用し、回避を狙おう
……そんな大振りなだけの攻撃など、当たってやる価値もない

他の猟兵の攻撃で弱ってる看守にはすれ違いざまに【暗殺】
ーー餞別だ、受け取れ


宇冠・龍
由(f01211)と参加

さて、相手は数が多い様子。そして倒さなければお城へは入場不可
目には目を、数には数で対抗します

巨大化した由の肩に乗り、【談天雕竜】を使用
私と同じ強さを持つ百体の亡霊を、武器たる銃器と共に召喚

「その衝動がいつまで持つか、根競べと参りましょうか」
サムライエンパイアに伝わる三段撃ちという戦法を行います
絶え間なく発射される銃弾の雨を牢看達に浴びせ、道を作ります

由の肩の上からなら戦場を一望でき、相手の動きや動向も見やすく伏兵なども丸分かりです
一気に攻め立て、城までの道を切り開きましょう


宇冠・由
お母様(f00173)と参加

私はお母様を、そして皆様をかばい守る盾となります
【七草仏ノ座】で10M(三階建て相当)の鬼に変化

「どてっ腹とやらに攻撃を当てられるものなら当ててくださいな」
無防備なお母様を肩に乗せ、挑発しながら戦場を闊歩します
私は全身炎のブレイズキャリバー、攻撃を受けてもすぐに再生しますし、攻撃そもそも届かないのでは……?

万が一に備え、炎のオーラ防御を周囲に飛ばし、味方を追跡させることで攻撃を代わりに受けかばう盾とします

この巨躯、いやでも相手の注意を引きおびき寄せますので、範囲攻撃を行う方との連携で一網打尽にしやすいですのよ



●いざ古城へ
 関所から古城を目指す猟兵達。
 アッシュブロンドの髪の男、ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)は共に行くメンバーに頼もしさを覚えていたようで。
 目的地である古城の情報はすでに入手していることから、ユーゴは仲間達にその場所を共有していた。
 その少し先に、黒髪の青年剣士、六道・紫音(剣聖・f01807)とその相棒である蝶の羽をもつフェアリー、ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)の姿がある。
「愛を超越すれば、憎しみに変わるというがな」
 先程の続きとばかりに、紫音がルビィへと囁くように言う。
 そも、愛憎とは裏表の業……誰かを愛するというのは誰かを否定する事にも繋がる。そして、戦は起こるのだ、と。
 そこで、ルビィは小さく首を横に振って。
「……シオン。アタシは愛情の先にあるのは憎しみじゃないと思う」
 相手を心から想うなら、その相手の事を一番に考える気がする。
 妖精であり、人間ではないルビィは愛する人へと問いかけて。
「もし、アタシが斬らないで、って言ったら……、シオンはその剣を止められる?」
 そんな恋人の問に、紫音は自身が明鏡止水の境地に達した剣聖であることを告げて。
「……ルビィが斬るなと言えば、何も斬らんよ」
 その答えに、彼女は恋人の肩へと寄り添うようにして笑顔を向けていた。

●手早く突破を
 さて、程なく猟兵達一行の前に見えてきたのは、やや寂れた古城。
 ここに住まう魔女と出会う為、メンバー達はその中へと突入しようとするのだが、見回りに当たっていた男達がこちらに気づいて駆け付けてくる。
 先程も関所に詰めていた者がいたが、ヴァンパイアの眷属となり果てた闘奴牢の看守達だ。
 屈強な体つきをした男ども。ただ、猟兵達にとってはその個々の能力など問題ではない。
「さて、相手は数が多い様子。そして倒さなければお城へは入場不可」
 白髪の人派ドラゴニアン、宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)が簡潔にこの場の状況を口にする。
「素早く突破したい所だが……。少々、難しそうだな」
 左目を通る傷が目を引くジェラルド・ボノムドネージュ(氷結の暗殺者・f09144)はやや表情を険しくする。
 前方には、似たような長身、ワイルドで悪人面をした鉄製の棍棒を持った筋肉質な男どもがずらりと並ぶ。
「数が多いですね。ならば数を減らし、突破をしやすくしていきましょう」
 布製の眼帯で両目を隠すフィン・スターニス(七彩龍の巫女・f00208)が仲間達に同意しつつ、自身の策を語る。
「目には目を、数には数で対抗します」
 対多数に力を発揮するユーベルコードで、龍は応戦を考える。
 そして、その龍をお母様と呼ぶウサギのマスク、宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)はふわふわと宙に浮いていたが、燃え上がる体を形成し始めていた。
 やってきた猟兵達へと歩み寄る男達。
 その態度も、口調も、全てにおいて品のない連中だ。
「ノコノコとバカな連中だぜ」
「自分から首を刈られに来るとはな、げへへ」
 その態度にユーゴは話し合いなど無駄だと再確認し、剣に手をかける。
「ならば、先ほど同様に押し通るのみだ」
「筋肉ダルマに用は無いのよね……血も不味そうだし……」
 少女のような風貌のダンピール、フレミア・レイブラッド(幼き吸血姫・f14467)は、対する相手に辟易としながらも構えを取るのである。

●襲い来る元・闘奴牢看守達
 古城の守りにつく男どももやってくる猟兵達に気づいており、ぞろぞろと歩み寄ってきて猟兵達の討伐に当たり始める。
「げへへ……」
「半殺しにしてやんぜ!」
 先ほどもそいつらは言っていたが、主である魔女の為に猟兵もまた首を斬る贄にするつもりなのだろう。
 ところが、猟兵サイドには首を刈ることすら難しい者もいる。
「手加減は致しませんよ」
 ヒーローマスクである由はふわりと浮かぶ本体の仮面から、炎の胴体を形成していく。
 全身10m程度の大きさをしたその胴体は、鬼を思わせる姿をしていた。
「どてっ腹とやらに攻撃を当てられるものなら、当ててくださいな」
 腹ですら、遥か頭上にある由の体。
 さすがにこれには、元・看守どもも戸惑いを隠せない。
 龍は由の肩に乗り、悠然とユーベルコードを使う。
「悪鬼百鬼と数えれば、七転八倒列を成す」
 龍が呼び寄せたのは、百にも及ぶ悪霊達。
 それらは銃器を手にし、次々に発砲して魔女の配下である男どもを撃ち抜いていく。
 龍自身が攻撃を受けると消えてしまうその悪霊達だが、巨大な由の体に乗っている間は男どもの攻撃などまず届くことはない。
 また、高所であれば、相手の動向は把握しやすく、伏兵などがいればすぐにでも判別できる。
 彼女は由と連携し、しばらく敵の数を減らしに当たっていく。

 とはいえ数も多く、龍と由の2人がその全てを請け負うというわけにもいかない。
 ジェラルドは向かいくる相手へと応戦に当たり始め、氷の戦鎚『ジーヴルマルトー』を自らの魔法で作成する。
 有象無象の敵目掛け、ジェラルドは衝撃波を浴びせて吹き飛ばしていった。
「邪魔をするな、雑兵」
 こちらも、残像を伴ってダッシュで敵との間合いを素早く詰めた紫音。
 相手の胸部、腹といった部分を狙い、紫音が『宝刀《皇月》』を煌めかせる。
「壱之太刀……斬鋼!」
 三重の斬撃はいかなる相手でも断ち切ってみせ、どんな相手であろうと逃すことなどない。
 向かい来る元看守など、紫音にとっては物の敵ではなかった。
「シオン、後ろからくるわ」
 ルビィは今回サポートとして紫音の肩に乗り、聞き耳を立てて彼の視界を補う。
 息の合った動きで紫音は鉄の棍棒を振り上げた男の腹を、刃で切り裂いて見せた。
「相手の行動は、どれも分かりやすいな」
 ユーゴは序盤、様子を見ながら剣で男どもへと切りかかっていく。
「ボッコボコにしてやるぜ!」
 敵は荒ぶるままに鉄の棍棒を振り上げ、叩きつけてくる。
 中には、フックと爆弾付きの鎖を投げつけてくる面倒な奴もいた。
 それらの攻撃を一撃でも受けてしまえば、ただでは済まない威力だ。
「さすがに、あれを剣で受けるわけにもいかないな」
 まともに受ければ、剣がへし折れてしまう。
 ユーゴはそう判断し、丁寧に避けながら、隙を突いて相手の胸部に刃を突き入れて、1体ずつ倒していく。
 前線で戦う仲間を、フィンは後方から援護する。
「七色の風は、光を惑わす衣を繕う」
 宝弓【月風】を携えた彼女は自身と自らが持つ装備まで透明化し、狙撃していく。
 フィンは矢もまた着弾するまで透明化しており、敵はその一矢を受けるまで気づくこともない。
 いつの間にか体を貫くフィンの矢に元・看守どもも怯え、恐怖することとなる。
 また前線に視線を戻すと、いかにも詰らなさそうな表情で立ち回るフレミアの姿が。
 鉄の棍棒をさらりと避け、伸びてきた鎖を念動力で宙へと固定し、逆にその鎖を返すフレミア。
「何だと!?」
 相手が呆気に取られているフレミアは真紅のドレスを舞わせ、真紅の魔槍『ドラグ・グングニル』に力を込めて素早く2連撃を浴びせかけ、その心臓を貫く。
 流れ出す血を、吸血鬼であるフレミアは早速一舐め。
 だが、事前にも言っていたように、その味はやはりお気に召さなかったようで。
「やっぱり不味い……舐めなきゃ良かったわ……」
 彼女は露骨に不快感を示していたのだった。

●城内への道を切り開け
 その後も、猟兵達は順調に魔女の配下である元・闘奴牢看守どもを倒していく。
「うおおおおおっ!!」
 我を忘れて暴走状態となり果てたそいつらは大声で叫び、棍棒を振り上げる。
 数が多いうちはそれに殴りかかられることも無くはなかったが、猟兵達も徐々に数を減らし、その頻度を減らしていく。
 紫音が相手の体を皮鎧ごと切り裂いていく間に、ルビィも攻撃を行う。
「敵の武器は大振りね」
 相手がフルスイングしたタイミングなどは、絶好のチャンス。植物の蔦を足に絡めて攻撃を阻害する。
 その隙を突き、極限にまで加速した紫音が同時に繰り出す三重の斬撃でそいつを地面へと沈めていく。
「アタシ達、急いでるの。構っている暇はないわ」
 ルビィが言うように、こうしている間にも、魔女による心無い死刑が始まってしまうかもしれないのだ。

 由へととりつく男どもは彼女の足に鎖を絡めて爆破を試みるが、炎のブレイズキャリバーである由はすぐ体を再生し、戦場を闊歩し続ける。
「どうなってんだ、こいつは!!」
 ほぼほぼ敵の注意を由は引き付け、さらに周囲の仲間達へと炎のオーラを飛ばすことでできる限り攻撃を肩代わりし、盾とならんと立ち回る。
 その間に、由の龍は百体もいる亡霊達に銃弾の雨を降らせるよう指示を飛ばす。
「その嗜虐衝動がいつまで持つか、根競べと参りましょうか」
 彼女は、サムライエンパイアに伝わる三段撃ちと呼ばれる戦法を使う。
 百いる亡霊を三隊に分け、一隊が射撃を行う間に他二隊がリロードと構えを行っていく。
 そうすることで、絶え間なく戦場に銃弾の雨を降らせることができるのだ。
 フィンも負けじと弓矢で相手を射抜き続ける。
 透明化し続けると疲労が蓄積してしまうが、幸いにも由がうまく相手の攻撃を引き付けてくれている。
 それもあり、彼女の体を借りて高所へと登ったフィンは透明化を解き、疲労の回復にも当たらせてもらっていたようだ。

 近距離攻撃に当たる面々も順調に敵の数を減らす。
 ユーゴはなるべく苦しまずに一撃で仕留めようと、その首を狙って斬撃を浴びせかける。
 仲間の銃弾や矢に射抜かれた敵には、ジェラルドが迫って。
「うおおおおおおっ!!」
 苦し紛れに殴りかかった敵がジェラルドの体を粉砕した……と思いきや、それは彼を模した氷像。
「……そんな大振りなだけの攻撃など、当たってやる価値もない」
 餞別代りにと、彼は氷塊を飛ばし、相手の心臓を穿って命を奪い去る。
 フレミアもまた、暴走する相手をサイコキネシスで抑え込んでいた。
 合わせて念動力を使い、嗜虐衝動を高める敵が荒ぶる姿を見て、初めて楽しげな表情を浮かべて。
「少し楽しめそうだけれど、残念ながら急いでいるのよね」
 事もなげに相手の四肢をねじり折ったフレミアは、相手が苦しむ表情を眺めながら、その首をもねじり切ってしまったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『断頭台の魔女』

POW   :    ずっと一緒にいましょうね、パパ……
【嫉妬】【憎悪】【寵愛の感情】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD   :    パパの為に生贄になりなさい!
【断頭台の刃】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    私ハ断とウ台のma女
【拒絶】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【霊界に通じる門】から、高命中力の【首を断たれた者の怨念】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カスミ・アナスタシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●生贄を求める魔女
 古城の周りに詰めていた元・闘奴牢看守達を蹴散らし、猟兵達は城内へと入っていく。
 通路にもちらほらと配下の姿があったが、メンバー達はそれらを蹴散らして城内を手早く探索する。
 一部メンバーは地下へと向かい、見張りを倒して捕まっていた町の人々を救出する。
「あ、ありがとうございます……!」
 歓喜の声を上げる人々。
 理不尽な処刑宣告に怯えていた人々は安堵の表情も浮かべていたが、どうやら一足遅かったらしい。
「お願いです。あの子達が中庭の断頭台へと連れていかれて……!」
 魔女は父親への生贄とすべく、無作為に選んだ4人の女性、少女を連れて行ってしまったそうなのだ。
 すでに、生贄を捧げる為の処刑が始まっている。
 猟兵達は取り急ぎ、中庭を目指す。

 その中庭では。牢から連れ出された4人の女性、少女が捕えられ、断頭台の前へと並ばされていた。
「パパ、見てる?」
 物言わぬ父の首へ、人形の体を得た少女が恍惚とした表情で告げる。
 父親と永遠にある為、父親の為にと疑わずに魔女となり果てた少女はこの生贄の儀式を取り仕切っていた。
 一方で、死刑執行目前の女性達。
 2人はもう観念していたのか、うつろな瞳で天を仰ぐ。
 しかし、年端もいかぬ少女2人はそうもいかない。
「やだやだやだやだ!」
「助けて、助けてよ……!」
 特に、彼女達は悪いことをしたわけでもない。
 ただ、魔女が生贄を求めたからというだけの理由で、首を切られようとしている。
 しかしながら、人をやめた少女はただそれを冷ややかに見つめるだけ。
「早く、処刑台へ」
 この場の配下達へと、指示を出す魔女。
 それに従って女性達を一斉に断頭台へと首を突っ込ませ、後は刃を下ろすだけに。
 再び、魔女が父親の首に恍惚とした視線を向けたその時だ。
 この場の配下どもが、次々と倒されていく。
 中庭へと飛び込んできた猟兵達。
 メンバー達はすかさず、女性達を保護する。
「ありがとう……ございます」
「怖かった。怖かったよ……」
 すすり泣く少女達を外へと避難させ、メンバ―達はこの場の魔女へと向き直る。
 魔女は一層冷ややかな表情を猟兵達へと向けて。
「なんで、邪魔するの……?」
 魔女は周囲へと怨念を呼び寄せ、自らを取り巻く。
「代わりに、パパの為の生贄になりなさい……!」
 首だけとなった父親から力を得た魔女の少女。
 すでに首を断たれた者達の怨念と血のこびりついた断頭台の刃を操り、彼女は猟兵達を攻め立ててくるのである。
フレミア・レイブラッド
一つ良い事を教えてあげるわ。…貴女のパパは貴女を愛していない。自分の首を落とした者を愛するわけがないでしょう。貴方のソレは独り善がりなだけよ


敵の攻撃は【見切り】で回避、または武器で弾いたり【念動力】で止める等で防御。
グングニルによる【2回攻撃、怪力】の連続攻撃中に【念動力】を織り交ぜて動きを一瞬束縛。隙を生んで攻撃を叩き込み【ブラッディ・フォール】発動。
「血と狂宴のアイジス」で倒した「リーシャ・ヴァーミリオン」のドレスと槍を装備した姿になり、【魔槍連撃】から【魔槍剛撃】で仕留めに掛かるわ♪
途中、槍で攻撃した際、血が流れる様なら槍に着いた血を【吸血】で摂取…この子、血流れるのかしら

※アドリブ歓迎


宇冠・龍
由(f01211)と参加

「首を落とすなどという行為は断じて、断じて見過ごすわけにはいきません」
ええ、拒絶しますとも。夫と同じ運命を辿る結末なんて

【群竜無首】を使用
あまりに奇遇、あまりに奇縁
この技は「同じ宿敵(悪食)に首を断たれたもの達」を呼び出すもの
呼び出すのは、かつてホワイトラビリンスの依頼にて出会った豪の者
「――いでよ、首無しの熟練騎士」

その技「怒髪天」は、雷に対策耐性のない敵の動きを封じます
「貴女の呪詛(おもい)と私の呪詛(おもい)、どちらが上か比べてみましょうか」

怒りに身を任せてはいけません。これは他者を救うための戦い。そして私は囮なのですから
相手の怨念を一手に引き受け、味方の援護を


宇冠・由
お母様(f00173)と参加

(私も憤っていますが、お母様は更にお怒りですの……)
親の怒り程、子にはどうすることもできません。大人しく皆様の援護をしますわ

相手の主武装はその断頭台。相手方のお父様と思い出としての結びつきも強いのでしょう
……決して後味のいい作戦ではありませんが、致し方ありません
一思いに、その断頭台を全力で破壊します

先の戦闘から【七草仏ノ座】を継続使用
技が当たりづらいというデメリットも、動かない断頭台相手なら関係ありません
そして相手は、きっと私の攻撃をかばうはず
時間経過とともに最高力に達した大鬼の一撃、その怪力は、嫉妬や憎悪をも上回ってみせますわ


フィン・スターニス
貴女の事情は知りません。
ただ、貴女の行いを許す訳にはいきません。
ここで、討たせて頂きます。

攻撃は弓での援護射撃を中心に行います。
主に間接部等の守りの薄い箇所を狙撃して行動を妨害しましょう。

隙を見て、八極封陣を発動させ、力の封印も試みます。

敵からの攻撃は、攻撃の為の動きを見切り、
第六感も頼りに回避を行い、
タイミングが合うなら、回避と同時に
矢をカウンターで放ちます。


ジェラルド・ボノムドネージュ
父と共にありたい、その願い自体を否定する気は無い
だが、その父親を殺害し、無関係な人々を生贄にした
その報いを受けねばならない

先ずは【先制攻撃】で鋭く尖った氷塊を【投擲】し、【武器落とし】を狙う
怯むだけか、或いは避けられるだけかも知れない
……だが、そこで終わりではない

【属性攻撃】で氷の刃を強化しながら魔女に【ダッシュ】で接近
【フェイント】や【残像】で牽制しながら【2回攻撃】を仕掛ける
魔女の攻撃には【第六感】を駆使して【見切り】、【武器受け】で防ごう

代償を受けるとはいえ、強化されるのは厄介だ
【ユーベルコード】を使用し、魔女の動きを氷漬けて封じよう
ーー冷たき抱擁を受けるがいい


ルビィ・リオネッタ
相棒にして恋人の六道紫音(f01807)と共闘

歪んでしまった愛情はここで断ち切りましょう
アタシがこの魔女にできる事は、シオンと一緒に過去に還すことくらい

・戦闘
シオンの言葉に微笑んで、無事を祈って頬にキスしてから【空中戦】

アタシは魔女の『パパ』を狙うわ
途中までは狙いを悟らせないようにシオンと一緒に
【目立たない】よう【フェイント】の【残像】を残し【空中戦・ダッシュ】で行き先を変える

断頭台の刃は【見切り・逃げ足】で避ける
【鎧無視攻撃】で首が入った容器を砕き【早業】の『辻風斬り』で切り刻んで炎の【属性攻撃】で燃やすわ

「狂ってしまうほどに強い愛…アタシにも理解できる日が来るのかしら」


六道・紫音
相棒にして恋人のルビィ(f01944)と共闘

愛と執着は紙一重の業、見極めるのは難しい。
「魔女よ、貴様は父を愛してなどいない。
父に愛されたい自分を愛しているだけ。
それは、ただの執着だ」

・戦術
「本当の愛とは、相手を尊重する事だ」
ルビィに応え、俺は魔女へ駆ける。
『残像』を伴いながら『ダッシュ』する《縮地》で間合いを詰め、相手の攻撃を『第六感』で『見切り』『武器受け』で切り払い、即座に『カウンター』。
「執念では理に届かん」
『鎧無視効果』で弱点を狙い『怪力』を発揮して膂力を高め『捨て身の一撃』により全神経を攻撃に集中し『早業』で極限まで剣速を早めた【参之太刀《雲耀》】にて一刀両断にする。

※アドリブ歓迎


ユーゴ・アッシュフィールド
間一髪ってところか。
なんとか間に合ってよかったな。

さて、魔女よ。
お前は、ここでお終いだ。
あとはあの世で親子の親睦を深めるといい。

威勢よく啖呵をきったのはいいが
相手も生半可な相手ではないだろうな。
俺は【トリニティ・エンハンス】で風を纏い敏捷性を上げる。
あとは、疾く鋭く剣を振るう。それのみだ。
ここが正念場だ、多少のダメージは構わない。
こいつを倒しきるぞ。

家族を大切に思う事は理解できるが、やり方が不味かったな。
もし次の人生なんてものがあとしたら、次は間違わないことを祈ろう。



●どんな事情があろうとも
 問題の古城へと駆け込み、城内を探索していた猟兵達。
 牢に捕まる街の人々を救出した後、メンバーは中庭へと飛び込んでいく。
 そこでは、4人の街の女性が断頭台に首を固定されようとしていた。
 猟兵達はそれを見ると同時に飛び出し、女性達の救出へと当たる。
「なっ……!?」
 人の体を捨てた魔女は、飛び込んできた猟兵達の姿に驚きを隠せない。
 この場の配下ども蹴散らし、猟兵達は女性達を救出する。
「間一髪ってところか。なんとか間に合ってよかったな」
 泣きついてくる少女達をなだめるユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)。
 残る2人も目の光を取り戻し、彼へと礼を告げる。
 アッシュブロンドの髪を乱雑に纏めたユーゴは、女性達に頼られるこの状況に役得感を覚えながらも、表情を引き締めて。
「さて、魔女よ。お前は、ここでお終いだ」
 ユーゴが振るっていた剣を魔女へと突きつけると、人形となり果てた少女は小さく首を振って。
「なんで、邪魔するの……?」
 自らの行いに一切の疑問を抱かぬ彼女は、応戦の為に周囲へと怨念を呼び寄せる。
 それらは、魔女がこれまで首を落としてきた人々の無念の思いが形となったもの。
 死してなお、使役される人々。
 それは、ある意味で、魔女の父親にも同じことが言える。
「一つ良い事を教えてあげるわ」
 フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)が何故と問う魔女に告げる。
「……貴女のパパは貴女を愛していない」
 普段は幼さすら抱かせるフレミアだが、己の私欲の為に命を奪う魔女には大人びた態度で冷ややかな視線を向けて。
「嘘よ、だってパパはいつも私のことを……」
「自分の首を落とした者を愛するわけがないでしょう。貴方のソレは独り善がりなだけよ」
 やや被せ気味にフレミアは言う。まるで、大人が子供へと言い聞かせるかのように。
「魔女よ、貴様は父を愛してなどいない」
 黒髪の剣士、六道・紫音(剣聖・f01807)もまた、敢えて繰り返す。
「父に愛されたい自分を愛しているだけ。それは、ただの執着だ」
 愛と執着は紙一重と考える紫音。確かに、それを見極めるのは難しい。
「歪んでしまった愛情はここで断ち切りましょう」
 そして、紫音の相棒にして恋人のフェアリー、ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)が小さなダガーを手にする。
 ちなみに、全ての猟兵が魔女の行為を全否定しているわけではない。
 氷術師とも呼ばれる魔術師、ジェラルド・ボノムドネージュ(氷結の暗殺者・f09144)は、父と共にありたいと願った魔女の願い自体は否定していないし、する気もない。
「だが、その父親を殺害し、無関係な人々を生贄にしたその報いを受けねばならない」
「ええ、首を落とすなどという行為は断じて、断じて見過ごすわけにはいきません」
 険しい表情をした宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)が相手に言い放つ。
 龍が思い浮かべるのは、亡くなった夫のこと。
 誰かが夫と同じ運命をたどる結末など、彼女は拒絶すると語気を強めた。
 そんな母親の様子に、宙に浮くうさぎのマスクを本体とした宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)は思わず身震いしてしまって。
(「私も憤っていますが、お母様は更にお怒りですの……」)
 親の怒りなど、子にはどうすることもできない。
 そう考えた由は、この場は大人しく仲間達の援護に回ることにしていた。
「貴女の事情は知りません」
 そして、目元を覆う眼帯で顔を隠す少女、フィン・スターニス(七彩龍の巫女・f00208)は、魔女がどうしてこのようなことをしているかなど、関心すら抱いていない。
「ただ、貴女の行いを許す訳にはいきません。ここで、討たせて頂きます」
 宝弓【月風】を手に取り、フィンは距離を取る。
 猟兵達がそれぞれ構えを取る中、魔女は首だけになった父親から力を得て。
 小さな手を突き出し、広げる彼女。
 そばにあった断頭台から、血がこびりついた刃がふわりと宙を舞う。
「代わりに、パパの為の生贄になりなさい……!」
 対する猟兵達も、魔女を攻め立てる為に動き始めて。
「あとはあの世で、親子の親睦を深めるといい」
 刃を構え直すユーゴ。メンバー達が中庭を立ち回り始める中、紫音へと寄り添うルビィが独りごちる。
「アタシがこの魔女にできる事は、シオンと一緒に過去に還すことくらい」
 そして、愛用の刀へと手をかけ、紫音が告げた。
「本当の愛とは、相手を尊重する事だ」
 その言葉に微笑んだルビィは彼の無事を祈り、頬にキスをしてから飛び立つ。
 紫音もまたそんな相棒に応え、駆け出していくのだった。

●首を刈る魔女に裁きを
 相手は、小さな体躯の人形を体として持つ少女ただ1人。
 しかしながら、強大な力を持つその魔女に、猟兵達は数人で討伐に当たる。
 先んじて駆けたジェラルド。彼は自らの二つ名通りに氷の塊を操って投擲していき、相手の操る武器を叩き落そうとする。
「パパの為、こんなもの……」
 魔女が操るは人々の怨念、断頭台の刃。
 いや、もう1つ。父親への愛情もまた武器だろうか。
 自らの放つ氷塊に耐える相手を見たジェラルド。
 彼は飛んでくる怨念を第六感で避けつつ、次なる攻撃の準備に移る。
 その間に、ユーゴは飛来してくる断頭台の刃を切り払う。
 威勢よく啖呵を切ったのはいいが、思った以上に重い刃だけで相手の力の強さを実感させられる。
「さすがに、生半可な相手ではないな」
 ならばと、ユーゴは自らの体に風の魔力を纏い、疾く鋭く剣を振るう。それのみだ。
 紫音もまた残像を纏い、縮地で刹那の間に間合いを詰める。
 相手が飛ばしてくる断頭台の刃を直感で察し、彼は居合で切り伏せて。
「執念では理に届かん」
 即座にカウンターの刃を浴びせかけていくが、魔女の体はそう簡単に切り裂くことはできない。
 彼女は父親から生き続けている嫉妬、手にかけられたという憎悪、それでも娘だからという寵愛の感情を受けることで、その身を強化していたのだ。
 その代償として体から血を流しながらも、魔女はこの場にあり続けようとする。
「全ては、パパの為……」
 ルビィはその『パパ』を狙い、紫音の傍を飛ぶ。
 不気味に微笑む魔女からできるだけ狙いを悟らせぬよう、彼女はフェイントの残像を残しつつ宙を飛び回り、機を窺う。
 由もまた、魔女以外に狙いを定める。
(「相手の主武装はその断頭台。相手方のお父様と思い出としての結びつきも強いのでしょう」)
 元々、マスクである彼女は配下戦と同様に炎で胴体を形成し、10mもある鬼の姿へと変貌する。
(「……決して後味のいい作戦ではありませんが、致し方ありません」)
 自身の体に合った大きさに伸ばした火炎剣を使い、由は断頭台の破壊へと動く。
「満ち満ちた過去に一滴の未来を、汲み上げ解して地を濯げ」
 母親である龍は正面に立ち、周囲へと呪詛を召喚して。
「あまりに奇遇、あまりに奇縁」
 それは、龍曰く『同じ宿敵(悪食)に首を断たれたもの達』。
 龍が呼び出すのは、かつてホワイトラビリンスの依頼で出会った豪の者達だ。
「――いでよ、首無しの熟練騎士」
 その場に現れた、騎士は龍の想いに応え、魔女へと立ち向かう。
「貴女の呪詛(おもい)と私の呪詛(おもい)、どちらが上か比べてみましょうか」
 向かい来る怨念を龍が引き付ける間に、次々に魔女へとメンバーが攻撃を仕掛ける。
 フィンが両手で携えた弓から、仲間を援護すべく矢を射放つ。
 狙うは、魔女の人形としての体の関節部。
 やや守りが薄いと思われる場所を狙い、刃や怨念を操る手を止めようとしていく。
 少しでも相手が硬直すれば、深紅の魔槍『ドラグ・グングニル』を操るフレミアが連続攻撃を仕掛け、念動力を織り交ぜて相手の動きを止めようとしていく。
「邪魔を、しないで……!」
 一層、力を強めた魔女は全身から発する怨念の数を増やす。
 その体が今度は毒に侵されていくが、魔女はお構いなしに猟兵達へと自ら命を奪った者達の怨念を強め、猟兵達に憑りついて体力を奪い去ろうとしていく。
「くっ……」
 氷の刃でそれを凌ごうとするジェラルド。
 他メンバー達もこれだけの数の猟兵相手にまるで屈せぬ魔女の力に驚きつつ、しばらく攻撃をやり過ごす。
「待っててね、パパ……」
 足元に置かれた父親の首に、うっとりとした表情で呼びかけた少女。
 すぐに魔女としての表情に戻り、そいつはさらに力を強めて猟兵達へと断頭台の刃を差し向けていくのである。

●狂おしい愛は父親
 魔女となり果てた少女の猛攻は止まらない。
「力を抑えようとしているのに……、なんて力なのかしら」
 フレミアは防御して堪えようとするが、それほどまでに魔女の父親に対する想いは強く、じりじりと体力を削がれていく。
 龍が主だって魔女の発する怨念を抑えてくれはするが、それもどれだけ持つかは分からない。
 もっとも、当人に倒れるつもりなどさらさらないが。
(「怒りに身を任せてはいけません。これは他者を救うための戦い。そして私は囮なのですから」)
 そうして、龍はできる限り、相手の攻撃を引き付けようとする。
「四天方陣、動きを封ず。三獄破刃、力を封ず。一心皆尽、心を封ず」
 その後方から、フィンが隙を突いて結界を展開。刃と槍を飛ばして。
「今、此処に封じの陣は完成しました……八極封陣!」
 それは相手のユーベルコードを封印するための陣。
 しかしながら、強大すぎる相手の力を抑えるのは難しい。
 フィンは再度弓矢での攻撃に戻り、もう一度と陣を張り巡らせるタイミングを計っていたようだ。
「確かに、強化されるのは厄介だからな」
 だからこそ、ジェラルドも力を封じたいと考える。
 ――冷たき抱擁を受けるがいい。
 相手が強化を試みようと父親へと視線を落としたタイミング、ジェラルドは片掌を突き出し、全てを凍らせる氷塊を放つ。
「ううっ……」
 重なるユーベルコードでの攻撃に、魔女が呻く。
 足元を凍らせ、怯む相手へとユーゴが攻め入る。
「ここが正念場だ。こいつを倒しきるぞ」
 多少のダメージなど気にはしていられぬと、彼は素早く相手の体を切り裂いていく。
 それに気を取られた間に、由が力を高めた一撃を断頭台へと振り下ろす。
「最高力に達した大鬼の一撃なら……、嫉妬や憎悪をも上回ってみせますわ」
 真上から振り下ろされる炎の剣が断頭台を粉砕してしまう。
 さらに、地面すれすれのところからルビィが飛来する。
 魔女の足元、彼女の父親の首が入った容器。
 ルビィは真空の刃を纏わせたダガーで切り刻み、その上で中の首を炎で燃え上がらせた。
「ああっ、パパ、パパ……!」
 断頭台の破壊も少なからず影響があったろうが、それ以上に、大切な父親の首に害が及べば、魔女も大きく動揺してしまう。
 その間に、紫音とフレミアが弱まる魔女の力を感じて一気に攻め入る。
「一瞬あれば、全て終わる……!」
 膂力を高めた紫音が前神経を攻撃に集中し、捨て身の一撃を繰り出す。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 同じタイミング、フレミアがかつて倒した血の魔槍を操る少女と同じ姿を取る。
 真紅のドレスを纏った彼女は重い鮮血槍で魔女に連撃突きを浴びせかけ、さらに相手の体を薙ぎ倒す。
 紫音の刃が相手の首を跳ね飛ばし、フレミアの槍が相手の胴を寸断してしまった。
「あ、ああっ、体が、体が…………」
 人形の体のはずなのに、魔女の体から飛び散る血。
 魔女は糸が切れたように事切れ、崩れ落ちる。
 古城の中庭に転がる魔女の体は魔力が断ち切られたことによって、形を崩して無くなっていく。
 フレミアは手にする槍についた血をすすって。
「こんな姿になっても、血が流れていたのね」
 ただ、その味は人間とは似つかぬ味。鉄分などまるで感じぬとてもさらさらとして冷たいものだった。
 魔女の消滅を確認したユーゴは剣を収めて。
「家族を大切に思う事は理解できるが、やり方が不味かったな」
 次の人生なんてものがあるのならば、間違わないようにとユーゴは祈りを捧げる。
 一方で、紫音の肩へと乗るルビィは、消えゆく魔女の体を最後まで見つめて。
「狂ってしまうほどに強い愛……アタシにも理解できる日が来るのかしら」
 それでも、今は大切な人の愛情を感じることができる。
 ルビィはそれで充分だと、大切な人と共に古城の中庭から背を向けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月13日


挿絵イラスト