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【戦後】ダクセ限定!『紋章』全員プレゼント!

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #戦後 #第二層 #『紋章』

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「ダークセイヴァーで『紋章』全員プレゼントキャンペーンが始まるわ! 詳しくはお近くのグリモア猟兵さんに聞いてみてね! あたしとか!」

 いきなり訳のわからないことを言い出したユメカ・ドリーミィに、猟兵たちはなんだなんだと視線を集める。
 こほん、と咳払いし、シャボン玉をふわりと浮かべて、ユメカは説明を始めた。

「みんな、ダークセイヴァーでの『闇の救済者戦争』お疲れさま。何人かの五卿六眼には逃げられちゃったけど、倒せたやつもいたわね。フォーミュラである『祈りの双子』、そして──『紋章つかい』」
 猟兵たちは先ごろ終わったばかりの戦争を想起する。恐るべき相手であった五卿六眼、そのひとり、『紋章つかい』のことを。

「あいつはたくさんの人を犠牲にして『紋章』を研究していたわ。その意図は正義だったみたいだけど、手段がどうしようもなく間違っていては救われないわね。……で、その『紋章つかい』を倒せたのはいいんだけど、彼が制作していた『紋章』、つまり寄生型オブリビオンや、それに伴う研究資料、書類なんかが、彼の玄室──まあ秘密アジトね! そこにまだたくさん残っているようなの」

 そこでユメカはいったん言葉を切り、改まった口調で猟兵たちを見回した。

「それで……この遺された紋章を改めて研究してみてほしいの。──もし紋章がうまく起動できて、それがみんなの力になるとしたなら。紋章の力で、ダークセイヴァーや、ほかの世界の苦しめられている人々を救うことができるとしたなら。……それはきっと、犠牲になった皆さんの無念の思いを晴らすことにもなるんじゃないのかしら」

 紋章の制作法は確かに邪悪極まりないものだった。しかし、邪悪の力をもって正義を為すこともできないことはないはずだ!

「みんなの中にも、オブリビオンや骸の海由来の力を一時的に使う種族やUCを使う人もいるかも。それと同じように、ここの紋章を、正義のために生まれ変わらせてあげたいの! 紋章は『装着変身型』が多いようだけど、それ以外にもあるかもしれないわね」

 そのために、まずは『紋章つかい』の|玄室《アジト》へ乗り込み、『紋章』の研究をしてみてほしい。
 『紋章』の中には犠牲になった人々の|魂《プラーナ》がまだ在留している可能性が高い。その魂に語り掛け、意思疎通をすることで、『紋章』は猟兵のための正義の力に生まれ変わる可能性がある!

「『紋章』の中の魂のみなさんに対して、自分たちは決して悪いことに力を使わないと信じてもらうといいかもね。これまでにどんな良いことをしてきたかアピールするとか。……たとえば……子供のころから好き嫌いなくピーマンも全部食べました! とか!」
 ……なんて?
「ゴミはちゃんと分別してます! とか! お年寄りには席を譲ります! とか!」
 いやそれでいいのだろうか。

「とにかく、魂の皆さんに、『こいつならきっと自分を間違ったことには使わないな』っていう説得力が伝わればいいと思うの。まあ、みんなの中には、あえて自分を『悪』だと認識している人もいるかもだけど、そういう人の場合は『自分の相棒になってくれればこんなメリットがある』みたいな説得の仕方でもいいかもね。例えば、シンプルに、『オブリビオン全てに対する復讐ができる』とか。ちょっと辛い説得の仕方ではあるけどね……」

 ともあれ、研究資料によって『紋章』の中に宿る魂の性格や考え方を調べ、これに語り掛けて心を動かすことができれば、『紋章』は猟兵のものとなるのだ。
 手に入れた紋章はもちろんそのまま持ち帰ることができ、それを使ったアイテムやユーベルコードを制作することもできる。
 ユメカが言ったように、この紋章はいわゆる「装着変身型」であり、これを選べば猟兵の任意の姿に変身できる能力が身に付くはずだ。

「あ、そうそう。それと、ダクセ戦争後の依頼の解決具合によって、みんなが手に入れた「グラディウス」の方も研究が進んでいくらしいわ。そういう意味でも、みんな、頑張ってね!」


天樹
 こんにちは、天樹です。
 『闇の救済者戦争』お疲れさまでした。本件はその戦後シナリオです。二章構成の簡易なシナリオになりますので、お気軽にご参加ください。

 一章では『紋章つかい』が残した多くの『紋章』を研究し、その中に宿った犠牲者の魂に語り掛け、心を通じ合わせていただきます。魂に対する説得力があればどんな形の語り掛けでも問題ありません。言葉ではなくぎゅっと抱きしめるとかのボディランゲージでもいいかもしれませんね。

 二章ではオブリビオン残党に対し、この紋章を実際に使っての運用試験となります。
 どんな姿に変身するかは自由ですので、ここぞとばかりにいろいろ盛ってくださって大丈夫! 「装甲に覆われた姿に変身する」のですが、別にパワードスーツ型であろうとぴっちりレオタードだろうと「装甲に覆われた姿」には変わりありません!
「いきなり起動だと!? 危険だ、まだテストも済んでいないんだぞ!」「それなら今からやればいい! 変身!」とかそういうノリで。

 シリアスでもネタでもどっちでも行けそうな感じですので、お好きにプレイングしていただければ、と思います。
 それではご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『紋章つかいの玄室』

POW   :    自ら紋章を装着し、性能を確かめる

SPD   :    紋章を分解し、構造を調べる

WIZ   :    紋章に魔法的な改造を施す

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイ・リスパー
「装着変身型の紋章!」
『アイ、|装着変身型《パワードスーツ》でしたら、私がいるではないですか』

甘いですね、オベイロン。
これからの|夏《水着の季節》、水に浮かないパワードスーツは役に立たないのですよ。

そう、まるでスイムウェアを着ているだけなのに、勝手に泳げるようになる、そんなパワードスーツが私は欲しいのです!

そうとなったら早速、水着……もとい紋章の説得です。

「皆さん、私は昔から……えーと……」
『仕方ありませんね。
皆さんの説得のために、普段のアイのゲーム三昧なだらけた姿を見ていただきましょう』
「あーっ、オベイロン、こんな映像いつの間にっ!?」
『こんなニートなアイが悪いことできると思いますか?』



『やだ』
「あなたが紋章さんですね、初めまして、アイ・リスパーです! 第一印象から決めていました! どうか私と合体してください、よろしくお願いいたします! ……って、あれ!? 告白する前にごめんなさいされました!? 地の文さん、文章構成間違ってませんか!?」

 残念ながら間違っていない。
 アイ・リスパー(|電脳の天使《ドジっ娘電脳魔術師》・f07909)は、自分の手の中で不機嫌そうにジタバタする『紋章』の姿に愕然とした。

「そんな!? ど、どうしていきなり却下なんですか紋章さん!」
『だって、触れられた瞬間に、部分的にあなたの記憶が流れ込んできたけど』
 と、掌中の『紋章』はテレパシーめいた意思をアイに伝えてくる。どうやらこの紋章の中に宿る魂は女性人格のようだ。

『……あなた、行く先々で大騒動を起こして破壊の限りを尽くしてるでしょ! そんな悪人に私の力は貸せない!』

「はうっ!? そ、それは!」
 鋭い『紋章』の声に、思わずアイは言葉に詰まる。もちろんすべての場合ではないが、なんかこう、アイの行く所は常にどったんばったんの大騒ぎが持ち上がり、結果として破壊と混乱と爆発オチが嬉々として付いてくる、という惨状になることが多いのは、まあ否定できない事実であるのだ。
 そしてそれは、客観的に見れば、なんてじゃあくなそんざいなんだ! と思われても仕方ないかもしれない。

「ご、誤解です紋章さん! 私は意図して人に迷惑をかけたことはあんまりありません! 頑張った結果が最終的に酷いことになったことは、たまーにあったりなかったりしますが……」
『やっぱダメじゃない!? っていうか意図に悪意がなくて結果が悪いことになるって、まさにあの紋章使いみたいなものよ!? ますます私の力は貸せないわ!』
「ふえええん、そんなあ……」
 言えば言うほどドツボに嵌っていくアイが思わず半べそになりかけた時。彼女たちの背後から、沈着冷静な合成音声が響いた。

『お待ち下さい、アイは決して悪を為すものではありません』

 おお、それこそはアイの保護者……いやお守り役……いやツッコミ役……もとい、彼女が駆る機動戦車オベイロンである。
「オベイロン! そうです、言ってあげてください、私は悪い子じゃないんです!」
 蘇ったように瞳に生気を宿らせてきゅっと拳を握り締めるアイの姿に、心なしか、オベイロンはため息をついたようにも見えたが。

『……まったく……勝手に泳げるようになるパワード水着が欲しいとか自堕落な欲望に身を任せて無理に駄々をこねて来てこの始末とは。さておき、前述の通り、アイはあなたの考えるような悪しきものではありません』
『いやいきなり矛盾した言葉吐かないで!? 自堕落で欲望に弱くて無理に駄々こねてるって思いっきり悪人じゃない!?』
『いいえ、アイは悪人ではありません』
 そうだそうだ言ったれーオベイロン! と傍らでサイリウムを振るアイの前で、オベイロンは静かに言葉を継いだ。

『なぜなら……アイは|色物《ギャグキャラ》ですから』

「ちょっとぉー!? なんですかそれぇ!?」
 絶句する紋章と絶叫するアイの見事なコントラスト。そして淡々と続けるオベイロンは、否定しようのない完璧な理論を構築した。

『そう、ご覧になりましたか。アイはこのようにギャグキャラなのです。そして、ギャグとは人々を笑わせ、幸せをもたらすものと規定されます。ゆえに、悪ではないのです』
『……確かにギャグキャラっぽいけど……うーん……』
 悩み始めた紋章に、オベイロンは更なる証拠を提示する。

『ではご覧ください、これは、同じ発売日だった3つのゲームのどれをプレイするか迷った挙句、3画面マルチタスクで同時プレイを開始したアイの姿です』

「ちょ、オベイロン!? いつの間にそんな映像を!?」
『なるほど……アホの子ね……』
『そして次は、24時間連続プレイ後に集中力が途切れ、3作同時にゲームオーバーになった時のアイの姿です』
「オベイロンー!?」
『なるほど……アホの子ね……』
『そして最後に、すべてセーブを忘れていたことに気づいて真白な灰となるアイの姿です』
『………』
「紋章さんせめて何か言ってください! そんな可哀想なものを見るような眼はやめてー!」

 ふう、と紋章は小さな体に吐息をつき、改めてアイの掌の中に納まった。
『確かに、悪い人ではなさそうね。それに、何より……その戦車さんが、そんなにも一生懸命、主人のために私を説得しようとしてくれる。これがきっと一番、彼女が悪い人ではない証ね』
「じゃあ、紋章さん! 私と合体してくれるんですね!」
『ええ、これからよろしくね』

 新たな仲間を得たアイの姿を見つめながら、オベイロンは秘かに満足げにセンサーを点滅させていた。
『……ミッションコンプリート。これでアイの|フォロー《尻ぬぐい》を押し付ける人手が一人増えました。私一人では負荷が過重すぎますので』

 ……今回一番ワルだったのはオベイロンでした。ちゃんちゃん。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブ歓迎

『ここで…紋章つかいさんは色々な紋章を…』

見つけたのは
『もの言う花達』の紋章

それが
突然
話しかけて来…

世間話やら
紋章つかいさんの
研究が如何に酷いか
とか
彼の悪口など

しかも
『紋章』さん
の言葉は
事象や因果等にも
影響等与えるらしく

動物の耳や
尻尾を
生やされたり
場が炎や氷に包まれ

今日履いてる下着まで
言われるのには…(赤面

『今日の貴女は、空色の縞々の下着で可愛くおめかしね♪』

『萌えよ♪』
『萌えね♪』
『萌えだわ☆』

けれど
私は…

『お話下さり、有難うございます…その言葉で…平和を望めば…いつかその通りに…そのお手伝いを…私にもさせて下さい…ここの実験の様な…酷い事をさせない為にも』

『紋章』さんを抱き締め



「ここで……紋章つかいさんは色々な紋章を……」

 アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は、紺碧の澄んだ瞳で、周囲を見まわした。
紋章つかいは様々な紋章を作り上げるため、多種多様な環境の研究施設を用意していたようだった。そうとわかっていても、この光景に、アリスは小さな胸をとくんと鳴らさずにはいられない。
 眼前に広がるのは、目も綾な色とりどりの花々が咲き乱れる美しい庭園だったのだから。
「こんなきれいな場所で……ひどいことを……していたのですね……」
 寂寥の風がアリスの心を通り過ぎる。美しい場所を愛でるものが美しい心を持つとは限らないのか。実際に行われた人体実験ももちろん悲しいことだ、しかし、可憐な花に囲まれていながら平然と命を弄ぶことができるものがいたという事実もまた、アリスを悲しませるものだった。

『ねえ、まったくだわ! あの男は花の、つまり私たちのね? 良さというものを本当にわからないのよ! ねえ貴女もそう思うでしょう! ねえ私たちもそう思うわ!』

「ふぇっ?」
 そのとき不意に足元から沸き立った声に、アリスは慌てて後ずさりし、ころんと尻もちをついてしまった。
『あらあら、大丈夫? ねえ? ケガはないかしら? ねえ?』
 大きな瞳をさらにまんまるくして、声の源を覗き込んだアリスが見つけたものは、……小さな『紋章』に他ならなかった。
 『紋章』は小型のオブリビオンだが、その紋章は、他の多くのように昆虫型ではなく、春風に揺れるたおやかな花を象ったような姿をしていた。いわば、「もの言う花達の紋章」とでもいえるだろうか。

「紋章さん……?」
『ええそうよ、そうなのよ。貴女、大丈夫ならもう立ち上がったほうがいいわ、だって、ねえ、……そのままだと、可愛い下着が丸見えよ、ねえ?』
「はわわっ!?」
 アリスは白い首筋まで真っ赤に染めて慌てて立ち上がり、ふんわりと広がっていたスカートを抑えこんだ。
『空色の縞々の下着で可愛くおめかしね♪ 萌えよ♪ 萌えね♪ 萌えだわ☆』
「も、もえ……?」
『萌えというのは草花の芽が生まれ出ずること。つまり、萌えキャラである貴女は、花の私たちと相性がいいに違いないわ、ねえ?』
「む、難しいですが……そうなのでしょうか?」
『ええ、そうなのよ、ねえ?』
 紋章たちは賑やかに笑いさざめく。どうやら、幾人かの女性人格の魂が複合してその中に込められているようだった。

『あら、スカートにちょっと土が付いちゃったかしら、ねえ? でも全然問題ないわ、だって、「土なんかついていなかった」のですもの、ねえ?』

 紋章の言葉をアリスはすぐには理解できず、細い首をかしげながらスカートに視線を落としてみて、次の瞬間息をのむ。
 転んだ際に確かに付いてしまったはずの土が、スカートからきれいに消え失せていたために。

「これは……?」
『あらあら、どうしたのかしら、そんなに長い可愛い耳をぺたんとさせちゃって、ねえ?』
「お耳……私、長くは……?」
 慌てて自分の頭を探ってみたアリスは二度びっくり。そこにはぴょこたんとしたもふもふで白いうさぎの耳が可愛らしく揺れているではないか。
「うさぎさん……私、うさぎさんでした……?」
『それともネコさんがよかったかしら。ねえ?』
 ぽん、と白い煙が上がったかと思うと、今度はアリスの頭には可憐なネコミミが。いや、なんとお尻からは、縞々のネコしっぽまでもが。

『ねえ面白いでしょう、ねえ? ほんのちょっとしたお遊びだけど』
 くすくす、と笑い声を漏らしながら紋章が楽しそうに言った言葉に、アリスも理解する。
 それは、紋章の力なのだと。
 限定的ではあっても、事象に直接影響を与えて、事実を作り変えてしまう力なのだと。

「すごい……です。でも、こんなすごい力を……どうして紋章つかいさんは使わなかったのでしょうか……?」
 もし紋章つかいがこの「事象に影響する力」を使って戦えば、猟兵たちも苦戦は免れなかったはず、とアリスは不思議に思う。だが。

『あらあら、それは簡単よ、ねえ? 私たちがこの力を自分に使ったからよ、「自分の力を発揮できないように」って。ねえ?』

 アリスは黙り込んだ。紋章たちも戦っていたのだ。自分たちを封印してまでも、決して次なる悲劇に自分たちを使わせないようにと。
 いつしか、アリスはほろほろと涙をこぼしていた。透明なキラキラと輝く滴が紋章にぽたりと零れ、紋章は慌てたように揺れる。
『あらあら、どこか痛い? ねえ?』
「いいえ……あなたたちが優しいからです。……優しくて、強いから」
『あらあら』
 紋章は安心したように笑うと、ぽん、と周囲に虹色のシャボン玉をいくつも浮かべて見せた。

『本当に優しいのは貴女よ、ねえ? 私たちのために泣いてくれる貴女』
 アリスと紋章はお互いに見つめ合い、微笑み合う。
 アリスはそっと唇を開いた。
「……なんでもかなう紋章さんのその言葉で……平和を望めば……いつかその通りに……なるでしょうか。世界中が、優しく、平和に……」
『あらあら、ずいぶんと大きな望みね、ねえ? さすがに難しいわ……私たちだけでは、ねえ?』
 紋章の言葉に、アリスは意を決したように頷くと、紋章をそっと抱きしめた。伝わってくるぬくもりは、きっと魂の温かさなのだとアリスは思う。

「それなら……そのお手伝いを……私にもさせて下さい……ここの実験の様な…酷い事をさせない為にも」

 その言葉にしばし黙し、紋章はやがて嬉しそうに声を紡ぐ。
『そうね……貴女と一緒なら、それもいつかできるのかもしれないわ、ねえ。だって私たち、相性がいいのですもの。さっきも言ったように、ねえ?』
「はい、きっと」
 微笑むアリスの唇から漏れる歌声は、遠く優しく柔らかに、花畑の中に響いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
【POW】

紋章創造の為に亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
せめて紋章を正しい事に使い、犠牲となられた方々が安らかに眠れるようにいたしましょう。

玄室でどの紋章が良いかな~と探していたら、可愛らしいウサギのような紋章が。
紋章に宿る魂はやはり可愛らしい女性のようです。

神として人々の生活を見守ってきた事。
猟兵として、ダークセイヴァーを初めとする様々な世界でオブリビオンや吸血鬼や闇の種族と戦ってきた事。
を語り掛けて、着用の許しを頂きます。

(着用してみると)
これはバニースーツ💦
一見むき出しの手や肩や太腿も透明装甲で覆われているのですね。
ちょっと恥ずかしいですが、敏捷性や格闘性能は高そうです。



『なんてバニいのでしょう!』

 大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は、いきなり投げかけられた理解不能な言葉に、大きな瞳をぱちくりと瞬かせた。
 彼女の目の前でぴょんぴょんと跳びはねながらその声を出したのは、小さな兎……のような形をした『紋章』である。と、そこまでは詩乃も理解はできたのだが。

「すみません、『バニい』……とは何でしょう?」

 細い首をひねりながら尋ねた詩乃に、『紋章』は喜ばしげにぴょんぴょんと跳び続けながら答える。
『バニいとはバニーのバニーらしさを表す言葉です。ですが、あなたほどバニい人は初めて見ました! 素敵です!』
「形容詞だったのですか……。ええと、活用語尾はどうなるのでしょう……」
トンチキな紋章の言に対し、真面目に考え込み始めてしまった詩乃。まずい、この場にはツッコミ役が不在だ!
「とにかく、褒めていただいているのですよね? ありがとうございます……?」
 よくわからないながらも一応謝意を示す礼儀正しい詩乃。その彼女の姿勢に満足するように、紋章は改めて彼女の周りを跳ね回る。
『貴女のその美しい姿にこそ、私の力をお貸しすることが相応しいはず。さあ、私を装着してください!』
「え? え?? 私まだ何も言っていませんが、よろしいのですか?」
『もちろんです、さあ、そうちゃーく!』
「そ、そうちゃーく……」

 押し切られるままに詩乃は紋章を握り締め、その力に身を委ねた。瞬間、七色の華やかな光が降り注ぎ、宙を花が舞うがごとき輝きの渦が詩乃を包み込む。いずこからかポップでキュートな感じのSEとBGMすらテンポよくリズム弾み流れて来るかのようだ!
 その光と音のダンスの中から姿を現したのは──おお!

「……バニースーツですか!?」

 そう、詩乃の美しきすらりとした姿態を包み込んでいたのは、その柔和にして美麗な胸元をギリギリのラインで包みこむビスチェと、細い腰から豊かな腰へと延びるキュッと食い込むような角度のレオタード、健康的でありながら艶めく太腿を飾る妖艶な網タイツ。さらに烏の濡れ羽色の長い髪からぴょんと顔を出した可憐な長い耳という、華麗なバニースーツだったのだ!
 その露出度の高さに思わず頬を赤らめ、もじもじとする詩乃の初々しい恥じらいの姿も相まって、何たる艶めいた姿であろうか! これはお色気シナリオだったと言うのか!
 いや、そんなことはなかった。

『さあ、スーツの力、お試しを!』
 紋章が伝えてくるのに応じ、詩乃は軽く脚に力を込めた。と──。あたかも重力がかき消えたかのようにふわりと、宙空高くに舞い上がっている自分に気づいたではないか。
「これは……!」
 感嘆しつつ、詩乃はくるりと身を捻ると玄室の天井に足を付き、再度跳躍! 壁から壁へ、ピンボールのように詩乃の体は軽々と跳び、軽やかな風のように空間を駆け抜ける! 
 とん、と音もなく柔らかく着地して、詩乃はそのスーツの性能に驚嘆した。決してただのネタスーツではなかったのだ!

「すごい……さすがウサギさんですね、この跳躍力や敏捷性は」
『そうでしょう? それに、露出部分も透明装甲で覆っています。見た目以上の防御力もあるんです』
 ふふん、と自慢げな紋章の言葉を、詩乃は微笑ましい思いで聞く。
「でも、もしこのスーツが『紋章つかい』の手に渡っていたら、猟兵の皆さんは苦戦を強いられたでしょうね」
 当然の疑問を浮かべた詩乃に、しかし、紋章は心外という口調で答えた。

『とんでもありません。だって──この格好を、紋章つかいにさせたいと思いますか?』
「…………」

 バニースーツの紋章つかいの姿を一瞬想像し、詩乃は慌ててブンブンと首を振る。確かに紋章つかいはまあイケメンではあったが、だからと言ってこの弩級にセクシーなバニー服を着せたくはない。
『何が始末に悪いかって、紋章つかい本人自身は割と喜んでバニーやりそうな気がすることです!』
「た……確かにやりそうな気が……」

 あはは、と力なく詩乃と紋章は笑いあい、その悪い想像が実現しなかったことを感謝したのだった。

『……それに、あの男にはありませんでした。真なるバニい心が』
「先ほども伺いましたが、その、バニいというのはどういうものなのでしょうか。そ、その、……プ、プロポーションの問題なのですか?」
『もちろんそれも重要です! 当然です!』
「あっ重要なんですね……」

 紋章の剣幕にたじたじとなった詩乃は、しかし、言葉を継いだ紋章の声が静かに流れだすのを聞いた。

『ですが、それだけではなく……自分の得を捨てても人を救う覚悟があるかどうか。それが本当のバニーの心なのです。──聖者を救うために自ら焚火の中に飛び込んだウサギのように』

 神である詩乃もまた自分と同じような聖者の物語であるその説話を知っていた。困窮した聖者に捧げる何物も用意できなかった兎は、自ら自身を贄として聖者を救ったのだ。

『私は、あなたがこの玄室に入った時から見ていました。あなたは紋章を探すこともせず、資料を漁ることもせず、何よりも先に……ひざまずいて祈ってくださいましたね。私たちのために』

 そう、それがまず詩乃のしたことだった。犠牲となった人々のために、詩乃は、──祈ったのだ。鎮魂の想いを込めて。

『それこそがバニいという心。どうか私の力を、あなたの役に立ててください』
「紋章さん……ありがとう。あなたのお力、決して無駄にはしません」

 詩乃は紋章の真心に触れ、改めて共に戦うことを誓うのだった。

「……あの、ところで、もうちょっとだけ……露出度低くなりませんか?」
『ダメです! それはバニいくありません!』

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変大歓迎】
ヘーイ何かもらえると聞いて
貰えるものは貰っておくのが私の主義だからね!
いっちょカッコいいのを貰いに来たよ!

ふぅむなんかみんな大変だったみたいだね!
大丈夫、これからは私が正義の芋煮のために使ってあげるよ!美少女エルフが悪い事に力を使う訳ないのは当然だからね!!
え?説得?今のがだけどダメ?
じゃあ直に芋煮を出して見せて!私はこれで世界の皆を笑顔にして見せるよ!というわけで力かしてね
という感じでいっちょ行ってみるかー
悪い奴らをやっつけたり、宣伝のために装着して派手になったり、芋煮に装着して蓋代わりにしたり色んな用途で使ってあげるからね!
さぁ私に・・・いや、芋煮に力を貸すんだよー!



「ヘロー私だよ。なんか貰えるんでしょ? ちょうだい。なんかカッコいい奴ね」
『いや雑ですね猟兵さん!?』

 遠慮会釈なく小さな手を無造作に突き出したルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)の姿に、『紋章』はさすがにドン引きした様子を見せた。
「えっ何が? 他の猟兵にはあげてるのに天才美少女にして高貴なエルフの私だけ貰えないとか天をも恐れぬ所業だよ?」
『いやそんな、あげて当然貰って当然みたいなアレではなくてですね……こう、試練を乗り越えるとか、紆余曲折とか、そういうのあるじゃないですか。ストーリー的に』
『紋章』の言葉(注:ド正論)に、しかしルエリラは納得いかなげな表情を浮かべてなおも駄々る。
「えーだって私だよ? 私のやることが失敗するはずないんだから結局最後はもらえるわけじゃん? 結果がわかってるんだから今貰っても問題ないじゃん?」
『うわヤバいこの猟兵さん過程をすっ飛ばして結果を求めるラスボスみたいな思考だ! 五卿六眼級だ!』

「なんだって、五卿六眼? ちょっとそれは失礼じゃないかな!」
 ルエリラはさすがに少々怒ったような眼で、両手を腰に当て、紋章を睨みつける。そう、ルエリラはこれまでに無数のオブリビオンを倒し、世界を救ってきた英雄であることには間違いないのだ。それなのにちょっと欲を見せたくらいで五卿六眼と同視されては、怒るのもとうぜn

「五人も六人も寄り集まならきゃボスキャラができないなんて雑魚のやることだよ! 真の頂点は常にただ一人! そう、この最強にして最カワの美少女エルフたる私ただ一人なんだよー、ふはははは!」
 ……あっそっちの意味で怒ってたんですね……。

『うわもっとヤバかった! これは逃げた方がいいかも……』
 こそこそと目立たないように飛び立とうとした紋章の姿に、さすがにルエリラもやや困惑したように首をかしげた。
「あー待って待って。しょうがないなあ、なら、君たちが私に付いてきたくて仕方がなくなるようにしてあげるよ」
『いや、こっちに弓向けながら言ってもあまり説得力がですね……』
「し・て・あ・げ・る・よ?」
『あわわ。わ、わかりました! ……それで、いったい、どういう……?』

 半ば強引に紋章を引き留めたルエリラは、得意満面な様子で眼前に鍋を広げた! これぞルエリラマジック、いついかなる場所でも時間でも、あらゆる空間に|それ《・・》を展開できる力──そう、芋煮をだ!

「さあ、至高にして究極の美味、絶対にして無上の幸福、最善にして至純の歓喜……その名も芋煮をとくと味わうといいよ!」
『無理です』

 おお、何たる珍しい光景か。たいていのことには飄々とそよ風のように受け流し動じないルエリラが、あたかも雷に打たれたように固まってしまった!
 しかしそれも無理はない、芋煮の伝道師たるルエリラにとって、芋煮の存在を知らないなら伝えればいい、味が合わないというなら味変すればいい、しかし、食する事すら拒まれたら何もできぬではないか!

『あ、いえ……せっかくの好意を無にするわけではなくてですね。今の私は魂だけなので、物理的な食事はできないんですよ。あの紋章つかいにこういう姿にされてしまいましたからね……』

 瞬間、ルエリラの瞳に稲妻のような光と紅蓮の炎のような決断的意思が宿る!
「……なんだって? 紋章つかいが……そんなことをしたんだね?」
『えっ今更そこですか!?』
「戦争は適当に流してたから……しかし、そうだったのか……おのれ……おのれー!!!!!!!」
『わああ今度はいきなりおのりだした!?』
「潰してやる……潰してやるよ紋章つかい! 絶対にゆるさないよ! じわじわとなぶりころころにしてあげる! こうだ、ルエリラ両断!!」
『落ち着いてください、紋章つかいは既に滅ぼされています!』
「あれそうだったっけ? くっ、そんなことならもっといっぱい戦争に出てればよかった……でも、許せないことには変わりないよ」
 ルエリラは悔しそうにだんだんと地団太を踏み、目の前の芋煮を見つめる。くつくつ、ことことと煮込まれた、美味しそうな芋煮を。

「人が芋煮を食べられる可能性を奪うこと。それは何よりも重い罪なんだよ。芋煮の可能性を穢すことであり、芋煮に対する侮辱なんだからね!」
『そ、そういうものなのでしょうか……でも』
 紋章はルエリラの気迫に押されつつ、しかし、どこかしみじみと胸に応えたように、しっとりとつぶやいた。

『……でも、理由はどうあれ、そうまで私たちのために怒ってくれたこと、私たちのことを悼んでくれたのは……嬉しいです。ありがとう、猟兵さん。もしよければ、私の力を使ってください』
「もちろんだよ!」
 何はともあれ、かくしてめでたくルエリラと紋章は絆を結んだのだった。よかったよかった。

『ちなみに、私を装着変身してくれれば、あなたの食べた味が私にも伝わりますから、事実上、芋煮という料理を私も味わうことができますよ』
 紋章の言葉に、ルエリラは表情をぱあっと輝かせた。
「なーんだ、それを早く言ってよね。じゃあ、今夜は仙台風で」
『はい、楽しみですね』
「明日は山形風で」
『そういうのもあるのですね』
「その次は岩手風、さらに福島風」
『……いやさすがにその、そこまで被せてくるのは……』
「さらにさらに、山形内でも各種あるからね! 芋煮の無限の可能性をすべて味わってもらうよ!」
『やっぱ一緒に行くのやめようかな!!!』

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
プレゼントというか強盗…義賊的な物ってことにしておこう、うん。
元には戻らないならせめて有効活用くらいはしたいよね。
どんなのがあるかなー…

何かビビっと来た紋章は…歯車っぽい形?
紋章の魂への語り掛けはそうだねー。俺と来たら海とかでも人助けする事になると思う。
ほら、海の仲間たちとして陸の皆には優しくするものだよね?
ちょーっとこの辺とか海のない所は普通の人助けになるけど基本は海!もうすぐ夏だから忙しくなるよきっと。
陸での人助け含めると何人助けたかは覚えてないけど…そうなる位には助けてきてはいる。
装着以外に何か力あるのかもしれないけども、よければ力を貸して欲しいと誠心誠意を込めて。

※アドリブ絡み等お任せ



「全員プレゼントっていうけど……考えてみたらこれ、強盗?」

 ぎっくぅぅぅぅっ! ななな、何を言い出すのかね、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)くん!

「いやだって、紋章つかいが悪党だとしても、その彼の持ち物を取るのはやっぱり泥棒だよね?」
 おお、これは大学の法学部とかで最初の方の授業に出るやつ! たとえ盗品であってもそれを盗むのはやっぱり窃盗罪になってしまうのだ! アブナイ、このままでは猟兵はただの泥棒さんになってしまうというのか!

「……いや、違うか。そもそも……うん、前提が」

 豊かな体躯の前でゆったりと腕を組み、静かに考えに耽っていたヴィクトルは、やがて眼を明けてこっくりと頷いた。何に思い至ったのか、ヴィクトルは大きな体を揺らして紋章つかいの玄室の内部へと歩み入る。
 その挙措には後ろめたいところなど微塵も感じられぬ。おお、猟兵の読者の方々にはどうぞごあんしんいただきたい、どうやら猟兵は泥棒さんにはならないようだ!
 玄室は薄暗いが、深海にあっても対象物を見逃さぬヴィクトルの鋭い視力は地上での捜索などものともせぬ。

「どんなのがあるかなー……と、これは……」

 ヴィクトルはふと、玄室の片隅で密やかに姫やかに息づいているような脈動を見せたものに目を止めた。まさにそれは『紋章』に相違ない、他の紋章とはやや形状が異なり、|歯車《ギア》のような形をしているが、掌中に収めたそれから伝わってくる力の波動は、これまでの戦いの中でも時折邂逅した『紋章』のものと相似していた。

「キミ、『紋章』だね。……どうかな、俺と来るかい? 広い海がキミを待っているよ」
『……うみ。うみとは……何ですか?』

 ヴィクトルの語り掛けに、『紋章』は、小さく、そして不思議そうな反応を返した。
「そうだね。キミがこの世界に生まれた魂なら、海を知らないんだよね。……海は、何よりも大きく、広く、深く、そして命を生み出し、命が還っていくところ。優しく、そして厳しいところ。母親のようなものだという人も多いよ」
 ヴィクトルは静かに淡々と『紋章』に向かって言葉を掛ける。そう、まさしく大海の波のうねりのように、緩やかにしておおらかに、深い響きをもって、どこまでも遥かに広がっていく声で。過度に感傷的にならず、けれど突き放しもせず包み込む、そこには海があった、海そのものが、ヴィクトルの声という名の遠い潮騒の響きとなって、海の何たるかを伝えていくようだった。

『はは、……ですか。私にはもう、母親の記憶もおぼろげですが……でも、なんだか、素晴らしいものなのだということは伝わってきます』
「うん、そうだよ、キミにも海を知ってほしい。だから、俺と一緒に行かないかい。いいよ、海は。いいものなんだ。とてもね」
『……なんだか不思議な方ですね、猟兵さんは』
 少しおかしそうに、『紋章』はヴィクトルの手の中でうごめいた。

「そう? 何か変かな?」
『あの『紋章つかい』もそうでしたが、たいていのひとは私たち『紋章』に、力を求めるものだと思います。目的が善であっても悪であってもね。でも、猟兵さんは、その逆ですね。|私に何かをしてあげよう《・・・・・・・・・・・》としてくださっています』
「うーん」
 ヴィクトルはゆったりと笑う。朗らかに。

「俺、人を助けることが好きだからかな。これまでも何度かわからないほど、人を助けてきた。だから癖になってるのかな」

『……ひと?』
 紋章はヴィクトルの言葉にぴくんと弾むように反応を示した。
 それは驚きと、少しの怖れと、そして少しの──意外な──喜びと。
『私を──人、と? こんな形になった私を?』

「ああ、魂でも、キミは人だよ。だから俺にキミを助けさせてほしいなって思ったんだ。海や、それに海以外にも色々な楽しい、美しい、時々大変な場所に連れて行ってあげたい、ってね」

 紋章はしばし沈黙した。その沈黙は、しかし、決して居心地の悪いものではなく、むしろ心安らぐ穏やかな空間を作り出す沈黙だった。
 やがて、紋章はそっと声を放つ。少しだけ呆れたように、けれど、心から、幸福そうに。
『……猟兵さん、モテるでしょう?』
「え。何が?」
『いやそんな息をするように自然にロマンチックな言葉吐いて平気だとか、モテないわけないです。現に──私が口説かれちゃったじゃないですか、ふふふ』
「モテるかどうかは分かんないけど……じゃあ、一緒に来てくれるんだね」

 ヴィクトルの言葉に、紋章は素直に頷くように輝き、その掌中に改めて収まるのだった。

「そうだね、紋章を手にしても泥棒にはならないって言ったのはこれが理由なんだ。ここにいるのは──『モノ』じゃなく、『人』だからね。誘拐された人を解放するだけだから、泥棒じゃないんだよ」
 おお、ここで伏線回収とは! リプレイとしてうまくオチたと言えるのではないだろうか!

「……でも、人だとしたら、それはそれで今度は誘拐罪になるのかな?」

 やめてー! せっかくキレイにオチたのに天丼で問題にするのやめてー!

大成功 🔵​🔵​🔵​

サク・ベルンカステル
紋章に語りかけろ、言われても私には復讐しかないからな、、、
先の戦で倒しきれなかった五卿六眼を始め不条理を撒く化物どもに復讐したいのであればついて来るがいい

欲するのはUCを使わずに多腕となり随行大剣を自身で振るう為の腕を備えた紋章



 その男に付き従うのは己自身の長い孤影、そして周囲に浮かぶ四振りの剣の影のみだった。
 いや、もう一つだけあるとするならば、それは、──終わることなき昏い復讐の旅路。久遠なる血塗られた修羅の運命そのものが、男の──サク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし剣鬼・f40103)の皮肉な同行者であるともいえるかもしれなかった。

 サクは『紋章つかい』の居所の一つであった玄室を一瞥すると、無造作に歩を進める。冷ややかな玄室の中は重く陰り、昏く淀んで、空気までが軋んでいるかのようだ。
 サクの鼻腔に香りが届く。慣れ切った香り、そして慣れたくはなかった香り。鮮血の匂いが。
 だが血に慣れ切った己を嘆く陳腐な感傷も安い慟哭も、今のサクはもとより持ち合わせようはずもない。たとえ感傷を抱かぬ乾いた心それ自体が真なる悲劇であったとしても。
 ああ、しかし。しかし、本当にそうであろうか。サクの中に、痛みに疼く魂の声は本当にないといえるのだろうか……。

「……これが『紋章』か」

 玄室の中で、サクのエメラルドの瞳が無機質に光り、目的のものを見つけ出す。
 それは『紋章』。五卿六眼の一人、『紋章つかい』が狂気の正義の中で追い求めた、大いなる力を得るための道具であり、これを作り出すために数え切れぬ命が単なる数字と化して消費されていったのだ。

「……どちらがマシなのだろうな。快楽のために人を屠る卑劣漢と、感情もなく命を奪う愚か者とでは……」
 かつて己の家族を、友を、故郷を襲った災禍を薄紅の記憶の中に透かし見て、サクは小さく独り言ちた。帰ってくる答えのないその問いは、玄室の中に、何故かいつまでも響いて木霊しているかのようだった。

「紋章に語り掛けろ、と言われても、私には心を呼び覚ますべき何物もない。ゆえに、……ただ|誘《いざな》おう、紋章よ」
 サクは冷ややかに、闇の中に石ころのように転がる『紋章』に対し声をかける。

「お前たちもまた怒りがその身を焦がしているはずだ。憎しみがその魂に渦巻いているはずだ。悲しみがその心を引き裂いているはずだ。──怨念が生きる意味そのものとなっているはずだ」
 それは誰のことなのか。紋章のことなのか、それとも、それともそれはサク自身のことなのか……。だがどちらにせよ、静寂の中にその言葉はあたかも刃のごとく煌めいて一言ごとに切り裂いてゆく、何をと問うか、運命そのものをだ!

「ならば、来い。我が復讐の道行きに。ともに地獄をさすらって悪鬼外道どもを屠り去る復讐の終わりなき旅路に。そうだ、先の戦で倒しきれなかった五卿六眼を始め不条理を撒き散らす化物どもに、その罪を血であがなわせたいのならば、ついて来るがいい──」

 一瞬の静寂の後に……
 おお、慟哭の声が響き渡る! それは地の底から吹き上がる溶岩流のごとくに燃え上る炎の憎悪であり、仇敵に牙を立てねば置かぬと吠える獰猛な虎狼の叫びだ! 『紋章』たちがサクの呼びかけに応えた、それは紛れもない証! 彼の茨で敷き詰められた復讐の道に、我も地獄の果てまでもと応じた、誓いの声であった!
 宙に舞い上がった紋章を掴み取り、サクは瞳に暗黒の輝きを宿す。

「詫びはしない、お前たちを私の道連れとして同じ|血の復讐《ヴェンデッタ》の中に巻き込んでしまったのだとしても。だがその代わり、誓おう、必ずお前たちの仇は取る、復讐は果たす。化物どもを根絶やしにすることで」

 サクの言葉は冷えていながらもその奥に滲むのは紛れもない血の痛みだった。
 そう、無論。
 乾いてなどいるはずはなかったのだ。
 誰よりも悲しみの中にあり、誰よりも苦しみの中にある繊細な魂があるからこそ──その復讐に滾る鋭い牙は研ぎ澄まされているのだと、ことによれば、サク自身さえ気づいていないのかもしれなかったが。

「我が第三、第四の腕と化し、この剣を共に振るってくれ。さあ行こう、私たちに休息はいらぬ、安らぎも憩いもいらぬ。化け物どもを屠る刃、ただそれだけがあればいい」

 長いコートを翻し、男は来た時と同じように虚無の香りを漂わせて闇の中へと消えてゆく。
 濃い影と四本の剣と、そして。
 新たな復讐の誓いを証す紋章のみを付き従えて……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
【むしろ連携前提?】

うわぁ、紋章つかいの奴もえげつないのな。
こんなに研究材料にしてたとは……ちょっとヒクわ。
ま、魂での語らいってなるとテレパスが使える分なんとかなるかねぇ。
ひとまずその想いを聞いてみるかー……
実際聞くってなると腰を据えておかないといけないだろうね、長期戦を構えるかな。
誰か居ないかい?どうせだから芋煮を食いながらじっくりアタシらが味方だって事を分かってもらおうじゃないのさ。



「あたしの想像力が足りないせいか……ただの光にしか見えないねえ!」

 うんMSも。と、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)の意見にぜんめんてきに同意しておくこととする。
 何しろ、その場に渦巻いているのは、眩く輝くいくつもの光の塊だったからだ。
 その数、実に──358体!
 なぜこうなったか。それは少し前にさかのぼる……。

「よし、ユーベルコードを使うよ!」

 ──というわけだ。
「いや説明雑じゃないかい!?」
 だって実際そうとしか説明できないので……。

「ええい、ならあたしが説明するよ! いいかい紋章さん、あたしのユーベルコードは、あたしの仲間たちをこの場に呼ぶ力なんだよ! ただ、こうやって光に包まれちゃうけどね!」

 ただ光っているだけではない、みんなしてなんか唸り声とかあげているし、なんか無意味に得意技を出し合っては相互に回復してまた最初から始めたりしているようにも見える。怖っ。何これ蛮族の集団?

「……くっ、あながち間違っているともいえないところがおつらい!」

 輝いているのでよく見えないが、中には、「呼ばれなきゃ来ちゃいけないんだけど、……呼ばれた扱いでいいのよね……?」「あれ、私の出番さっき終わったよ?」「俺も終わったばかりだけどなあ」とか、なんかよくわからない声も混じっているようだ。繰り返すが、めっちゃ輝いているし、うるせえ唸り声をあげているので、誰が誰かとかわかりません!

「いやしかし壮観だねえ、改めてみるとこんなにいたんだねぇ」
 他人事のように言いながら、多喜は目の前にドンと大きな鍋を用意し、目の前の相手に語り掛けた。鍋の中でくつくつとちょうどいい加減に煮えている料理、それは、見るからに美味そうな芋煮である。
 そしてその芋煮鍋の前に、ちょこん、と鎮座し、多喜のお相手を務めていたもの。それは──『紋章』だった。

 そう、多喜は『紋章』に対しそのテレパス能力を活かし、魂とのコミュニケーションを図らんとしていたのだ。人と仲良くなるためには何が効果的か? それは、和気あいあいとした楽しい雰囲気であり、ほのぼのとした団欒の空気である。すなわち、それを狙って、多喜は自分の仲間たちをここに呼び出したのだ。
 358人の。
 多いわ。
「まさか全員来るとは思わなかったんだよ!」
『これがみんな、猟兵さんのお仲間なのですか……』

 紋章はその小さな村落ほどもある人数と、活気を超えてなんかもう殺気じゃね? 的なアトモスフィアにやや引きつつ、それでも興味は持った様子で多喜に話しかけてきた。

『よく見えませんしよく聞こえませんが、なんとも、こう……賑やかで』
「ご、ごめんな、無駄にうるさくて……」
『活発で』
「ごめんな、無意味に暴れてて……」
『芋煮がお好きで』
「ごめんな、それはマジほっとくと一瞬でなくなるから気を付けて……」
『……個性的なお仲間なのですね』
「でも今回はまだダイス振って死んでないからおとなしい方なんだよ……」
『死ぬんですか!?』
「いや畑から甦るけどね」
『畑から!?』
 かわいそうに、紋章がもし人型だったら頭を抱えてしまっていたことだろう。なんてデタラメな集団なんだ、多喜の仲間たち。どんな奴らなのか顔を見てみたいものだ。見えないけど。

『でも、……とても楽しそうです。私の生きていたころも、こんな友達と一緒の暮らしができたら、きっと素敵だったでしょうね……』

 しっとりとした声の調子が、紋章の……いや、その中に封じられた魂の過去をうかがわせた。
 何もダークセイヴァーの生活がすべて苦悩と悲しみに満ちたものではないだろう、皆、懸命に必死で生き抜き、その中にささやかな喜びや楽しみはあったはずだ。だがそれでも、多くの仲間たちと共に底抜けのバカ騒ぎができるような時間は、きっと、持てなかっただろう。
 ましてや──紋章つかいの実験の犠牲となってしまったとあっては。

「今からでも遅くないよ、紋章さん。あたしと一緒に来ないかい、あたしと、そして……この|イカした《イカれた》仲間たちのところへ、さ」

 だからこそ多喜は放っておけなかった。青春を十分に謳歌することもできず摘み取られてしまった魂。それは多喜にとっては特別な意味を持つものであり……少しでもその魂の痛みを救えるのならば、手を差し伸べずにはいられなかったのだ。

『猟兵さんと一緒に。──畑から生まれ変わる経験をしに、ですか?』
 くすっと小さく笑った『紋章』の顔が、多喜には見えた気がした。
「ああ、慣れるとなかなか味なもんさ、畑から生まれるのもね」
『慣れるほどいつものことなんですね……』
「うんまあ……ひていできない……」
『それは大変です。……|慣れるまで《・・・・・》時間がかかりそうです』
 言葉とは裏腹に、楽しそうな口調で紋章はつぶやくと、多喜の掌中にふわりと収まったのだった。

「あーあと……サメと着ぐるみにも慣れておく必要があるかな……」
『……その全く脈絡のない単語はどうつながるのですか……?』

大成功 🔵​🔵​🔵​

結月・志愛美
私も紋章使いと戦った事があるから紋章の使い方は分かるよ…サヴェ姉
『ほ〜う、なら1個取ってみな?』
背中に背負っている剣サヴェイジ・オーラが話しかけて来た
サヴェ姉に言われて紋章を研究していた私だが1つの紋章を手に取る

こ…こんにちは、私は結月志愛美と言います
私は…毎日親の手伝いをしています…弁当を皆に届けています

紋章の魂は証拠はあるのか?と聞いてきたので
『へぇ〜ちょっと私を紋章に置いてくれないかい?』
サヴェ姉が紋章の上に置くように指示を出す

『そ〜らお前が大好きな証拠だよぉ!』

https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=49895


https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=49934

重要(2章の志愛美にて)
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=48997

中の魂は大笑いだったが力を貸してくれる事になった

サヴェ姉〜!何でその記憶まで出すの?!
『わ…わざとじゃない!すまん、シャミ!』



「えっと、交番に届けた方がいいかな?」
『……シャミ。とりあえず交番行こうとするのやめな。私の時もそうだったけど』
「でも、落し物はちゃんとお巡りさんに届けないと……」
『いや落とし物じゃないだろ!? これは『紋章』なんだから!』
「はうっ! そうだった!」

 結月・志愛美(時空を超えた龍神少女『シャミ』と次元災害の剣・f40401)と、その背に負う|知性ある剣《インテリジェンスソード》・サヴェイジ・オーラは常のようにテンポよく会話を交わす。のんびりとして少し天然な志愛美──シャミと、はきはきと気風のいいサヴェイジは、まるで実の姉妹のようなナイスコンビである。
 サヴェイジに見守られながら、シャミは今しも、紋章使いが研究を続けていた玄室の中で、一つの紋章を見つけ出したところだった。

「ええと、紋章さんに私がいい子だって信じてもらわなきゃなんだよね。任せて、サヴェ姉!」
 自信満々にトンと胸を叩くと、シャミはごそごそと荷物の中から一枚の紙を取り出した。
「はい、ちゃんと履歴書を書いてきたの!」
『バイトの面接かーい!』
 おお、それは僅かにシャミのボケからコンマ1秒! 電光石火のようなサヴェイジの鋭いツッコミが冴えわたる!

『っていうかさシャミ、多分その紋章の中に込められてるのはダークセイヴァーの人の魂だから、カクリヨの文字は読めないんじゃないかな……』
「がーん。そ、そうだったの……頑張って綺麗に書いたのに……でも負けないよ、だったらお話で伝えればいいんだから!」
 シャミの不屈の闘志はこんなことで挫けたりはしないのだ。彼女は改めて居住まいをただすと、『紋章』の前にちょこんと正座してきちんと頭を下げ、話を切り出した。

「こ……こんにちは紋章さん、本日はお日柄もよく……」
『シャミ。ダークセイヴァーはいつも曇ってるんだよ』
「あわわ! お、お日柄も曇りで……ええと、私は結月志愛美と言います。私は……毎日親の手伝いをしていまして……弁当を皆に届けています。頑張ってみんなのために働いています。暇なときは父に教わって剣の修業をしていたりもします。えっと……紋章さんの御趣味は何でしょうか?」
『……お見合いだこれ』
「サヴェ姉!? そそそんな、お見合いだなんて私にはまだ早いよぅ!!」
『いやただの例えだろ!? 真面目か!』
 首筋まで真っ赤に肌を染めて顔を覆い、恥ずかしげにジタバタするシャミに、サヴェイジのツッコミが響く。
 同時、二人の眼前に据えられた『紋章』が、カタカタと震え始めた。

「サヴェ姉!? 紋章さんがなんかすごく動いてる……怒らせちゃったのかなあ?」
 心配そうな表情を浮かべたシャミだったが、サヴェイジには『紋章』の感覚がある程度伝わっていた。サヴェイジも『紋章』も、どちらも魂を封印された存在である、という共通点があり、そのために通じるものがあるようだ。
(いやぁ……紋章のこの反応は、怒ってるというより……)
 と、サヴェイジは心中で思う。

(どう見てもゲラゲラ笑ってるよな!)

 ……まあ実際、『紋章』がひっくりかえってカタカタ震えている様子は、どう見ても人が腹を抱えて笑い転げているのと同じ反応であると、大体の人がわかりそうなものである。
「どどど、どうしようサヴェ姉!?」
 ……わかりそうなものである。真面目で天然な誰かさんを除けば。
「そうだなあ、……よし、私を紋章の上に置いてくれないか。直接私の記憶を紋章に伝えてみるよ。それが証拠になるはずだ」
 もし人間の姿であればあからさまにニヤニヤ笑いを浮かべているに違いないサヴェイジは、わざと真剣っぽい口調を装ってシャミに提案した。|シャミの天然ぶり《ウケたネタ》をさらにお披露目しようという素晴らしい芸人根性などとはおくびにも出さずに。
「お、お願い、サヴェ姉!」
 一方、シャミは素直にサヴェイジを紋章の上に重ねる。
 同時、サヴェイジの中に刻まれたシャミとの記憶が、光の奔流となって紋章を包み込む。二人のこれまで過ごしてきた穏やかで楽しい日々の記憶、そして潜り抜けてきた幾多の戦場の記憶が。

 それは、初めて出会った時の記憶。
『……ちなみにシャミはあの調子で落ちてるもの全部交番にもってくから、いろんな世界から流れ着いた魔道具や神秘の秘宝なんかがどんどん交番にたまっていくそうだよ……』

 それは、日々を過ごした記憶。
『お弁当を届ける時にも重さ何十キロのウエイトを付けて突っ走っていくとか行かないとか……』

 そして──
 『紋章』が、ぽつりと初めて口を開いた。

『来世では優しい人になってね……ですか』

「あっ」
『あっ』
 同時、シャミは青ざめ、サヴェイジもしまったとばかりに慌てふためく。
 おお、その言葉こそは……。
 シャミのかつての依頼、すなわち──敵を倒したと思い込みカッコいいセリフを吐いてみたら、実は相手は身代わりを立ててまんまと生き延びていたというめっちゃイタい記憶の中のものであった! サヴェイジもさすがにそこまでイジろうは思っていなかったが、他の記憶に紛れてつい一緒に流し込んでしまったのだ!
 いまだにそれを思い出すたびに布団の上でゴロゴロと転がらざるを得ないシャミは、血相を変えてサヴェイジを掴み取り、がっくんがっくんと振り回す。

「サヴェ姉!? 何でその記憶まで出すの?! なんで! な・ん・でー!!!!」
『わ……わざとじゃない! すまん、シャミ! ついうっかりで……ちょっ、そんなに揺さぶるんじゃないよ、目が回る!!』
「ひどい! ひどいー!!!! 個人情報漏洩―!!」

『ふふ、落ち着いてください、お二人とも。私は……それは素敵な言葉だと思いますよ』

 だがその時、暴れまわるシャミとサヴェイジを止めたのは、『紋章』が掛けた穏やかな声であった。
 えっ、と意表を突かれ、シャミとサヴェイジは紋章を見つめる。

『お嬢さんの、裏表のない優しい心と思いやり。それが、その言葉からまっすぐに伝わってきます。戦場で、しかも敵に対してその想いを伝えることができるひとは、おそらくそう多くはないでしょう。ですから──私は、お嬢さんの優しさを素晴らしいと思います』

 シャミは胸が詰まるような嬉しさで、『紋章』の言葉を聞いていた。
 恥ずかしい思い出ではあるかもしれない。それでも、その中にあったまぎれもない真心だけは、汲み取ってもらえたのだ。この『紋章』に。

「ありがとうございます、紋章さん。……もしよかったら、私と一緒に来てくれますか?」
『ええ、もちろんです。こちらこそ、よろしくお願いいたします』

 笑顔で声をかわすシャミと『紋章』に、サヴェイジも自慢そうに声をかける。
『めでたしめでたしだねえ。これも全部私がうっかり個人情報漏洩をしたおかげだねえ』
「サヴェ姉は少し反省して!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ダークヴァルキュリア』

POW   :    ディアボリックスティンガー
自身の【薔薇の紋章】が輝く間、【レイピア】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    フライングダークネス
全身を【闇のオーラ】で覆い、自身の【邪悪さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    イビルリバース
【苦痛の呪い】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【強化反転】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして猟兵たちは、『紋章』とそれぞれ絆を結び、その力を得ることに成功した。
 だが、まだ安心はできぬ。玄室の出口を見よ、そこには多くのオブリビオンが蠢いていたではないか。紋章使いが玄室のガーディアンとして配置していた軍勢がいまだに生き残っていたのだ。

「おのれ猟兵! 紋章つかい様の遺品を奪うとは許せないわ! そして紋章ども! 素晴らしい力をお与えくださった紋章つかい様の御恩を忘れた裏切り者め!」

 どうやら紋章つかいの心酔者のようだ。しかし、これはかえっていい機会ともいえる。さあ、今こそ新たな力を振るい、変身するときだ!

 猟兵は『紋章』の力で装着変身をすることができる。
 どのような姿に変身するのか、そのポーズは、決め台詞は、そして必殺技は、など自由に決めてよい。

 また猟兵たちは『紋章』を持ち帰り、正式にアイテム化・ユーベルコード化することができる。
 しかし★の使用は計画的に! もうすぐ水着コンテストだしね!
アイ・リスパー
「ふっふっふ、ご安心ください。
★を使わなくてもWPで紋章を手に入れることができるのです!」
『ねえ、この子いきなり何言い出してるの!?』
『諦めてください。貴女も今後はアイの|相方《ツッコミ役》です』

紋章さんとオベイロンが何か言ってますが、気にせず変身しましょう!
さあ、紋章さん、今こそ私に力を貸してください!

……あ、紋章さんの名前聞くの忘れてました。
マスター、名前決めといてくださいね。

『ちょっと、適当すぎない、この子!?』
『アイの心の声にツッコミを入れられる存在は助かりますね』

「さあ、今こそ紋章を装着です!」

パワード水着を身に着けて敵を攻撃です!
って、なんか紋章の強化が反転されたんですけどーっ!?



『やだ』
「フッ、ただの集団敵が新たな力を手に入れた私にかなうと思いましたか! さあ紋章さん、オベイロンが弾幕を張ってくれている間に変身ですってあれぇ!? またお願いする前に断られたんですけど地の文さん文章構成間違ってませんか!?」

 だから間違ってないってば。
 アイ・リスパー(|電脳の天使《ドジっ娘電脳魔術師》・f07909)は自分の手の中で不機嫌そうにジタバタする『紋章』の姿に愕然とした。
「どどどうしてです!? 私と紋章さんはあれほど固い絆で結ばれたではありませんか! あずきアイスくらいに堅い奴で!!」
『ダークセイヴァーの人間はその比喩わかんないわよ! っていうか、なんで変身なんて思うの、今ここで』
 紋章は、もし人の体をしていれば、やれやれ、と吐息でも付いていそうな雰囲気を漂わせながら言う。

『あなた、水中戦用の武装が望みなんでしょ、地上で私を使ってどうするのよ!』

 おお、まさにその通り! アイが望んだのはなんもしなくても勝手に泳げるようになるような水中機動服だったのだ。しかし、ここは地上! 変身しても意味がないというツッコミは至極もっともだ!
 しかしアイは、なんだそんなことか、と言わんばかりに、得意そうな仕草で艶やかな髪をふぁさっと払いのけた。
「甘いですね紋章さん! 確かに私の希望は水中戦用アーマー……しかし! だからと言って何等の問題もありません! なぜなら!」
『な、なぜなら!?』

「ことわざにも『世間の荒波を超えていく』というではありませんか! つまり世間は全て海! ゆえに、あらゆる世間で水中戦が可能なのです!」

『戦車さん! ねえこの子何言ってるの!?』
『ふむ、アイの言うことにも一理あります』
「一理あっちゃうの!?」

 支離滅裂なアイに、思わず戦闘中のオベイロンにまで助けを求めてしまった紋章だったが、その希望ははかなくも打ち砕かれるのだった。ひどい。
『戦車さんだけはまともだと信じていたのに!? もう何を信じていいかわかんないわ!うわああん、もうみんな滅んでしまえー!!』
 ほらー、せっかく救った紋章がまた闇堕ちしそうじゃん。どうすんのさー。
 
 しかし慌てず騒がず、オベイロンは面制圧射撃を続行しつつ淡々と合成音声を響かせた。
『落ち着いてくださいミス紋章。確かに私のようなマシンなら、その行動は論理的でなければなりません。しかし、あなたは概念兵器に近い存在。ゆえに、強い想念で規定すれば、それが実現する可能性が高いのです』

『そ、そうなのかしら……戦車さんが言うとなんかまともに聞こえる……』
「そうだったんですね……オベイロンが言うとまともに聞こえますね」
 紋章とアイは並んでオベイロンの言葉にふんふんと頷いている。何このポンコツな絵面。
『何であなたも感心してるのよ!? あなた、そこに根拠があったんじゃなかったの!?』
「いやなんとなく……勢いで行けるかなって……」
 紋章が何か悪いことをしたというのだろうか、可哀そうに。
『戦車さん! ちょっと適当すぎない、この子!?』
『諦めてください。貴女ももう彼女の|相方《ツッコミ役》です』
『……もうみんな滅んでしまえ。いいわもう、ヤケよ! さあ、変身するんでしょ!』

 おお、一周回ってなんかいい感じに全員の意思が一つになった!
 今こそ装着変身の時が来たのだ!
 アイは高々と紋章を天に向かって掲げる、未来を照らす灯のように! そこから放たれた真紅の輝きはアイを包み込み、無限の力がその身に宿る! 光の結晶は瞬時に一つの形状を為し……。

『……で、どんな形にするの?』
「えっ、それは紋章さんが決めてくれるのでは?」
『いやあなたが望んだ形にするんでしょ!? 決めてなかったの!?』
 なお、魂の会話なのでこの間わずか1ミリ秒だ!
「うーん、ビキニ型水中装甲……?」
『しかしアイ、それでは既に作成した機動服と被ります。全身スーツ型にしては?』
 なお、超量子通信による会話なのでオベイロンとの会話もわずか1ミリ秒だ!
「何を言うのですオベイロン、そんな肌色が少ないのは認めません!」
『ああもう! じゃあ勝手に決めるわよ!』
 キレた紋章の力が凝結し、アイの体を覆って再構築される! その姿は──

「サイバーマーメイドフォームッ!!」
 
 そう、電子の人魚姫! サイバーパンクな外装でありつつも神秘的なマーメイドの姿を模した、テックとファンシーの完璧なる融合がもたらす姿だ! クリア装甲を多用することで肌色少な問題にも完全対応!
「こ、これは見事です紋章さん! これこそ世間の荒波を渡っていく姿ですね!」
『……そう言うと一気に俗っぽくなるからやめて』
「えー。いいと思うんですけどー。まあとにかく、 あたーっく!」
 
 真紅に輝く流星となったサイバーマーメイドはまさに荒波を蹴立てるがごとく空中を猛進! 白くうねる波濤と轟く潮騒の中に舞う人魚姫のごとき華麗にして優雅なその飛翔は、されど必殺必滅の鋭さを宿し、歯迎えるものなどいるはずもなし!
 アイはかくして群がる敵軍にまっすぐ突っ込み、見事その大群を粉砕したのだった。
 
 敵の全滅を確認し、ふう、と一息ついたアイに、やや口ごもりながら、紋章が言葉を掛ける。

『お疲れ様……こほん、……ア、アイ、オベイロン』
 
「え? ええ? 今、名前を呼んでくれましたか紋章さん!? 聞きましたかオベイロン、これがあの有名な名前呼びイベントってやつですよ!」
 ひゃっほいと小躍りするアイに、オベロンが冷静にアドバイスを送る。
『ならば、アイもミス紋章に名前を付けてあげるべきでは?』
 その言葉に、アイは少し考え、唇を開いた。

「そうですね……じゃあ……パック。……パックというのはどうでしょう」

 きょとんとする紋章に、オベイロンは説明する。
『それはUDCアースの物語に現れる妖精の名です。私が|妖精王《オベイロン》、そして他に|妖精女王《ティターニア》もおりますので、あなたがパックとなると整合性が取れますね』
『そ、そうなんだ。妖精ね、……なんかくすぐったいけど、ふふ。ありがとう、アイ』
 恥ずかしげに笑った紋章……パックに、よせばいいのにぽつりと漏らしたアイの一声。
「あーそっか、そっちの意味のパックでもよかったんですね」
『ちょっと!? その意味じゃないなら何だったの!?』

「いやその、……紋章の姿、スーパーのパック入り卵を連想したので……」

『……もうみんな滅んでしまえ……』
 頑張れ|紋章《パック》、君の受難は始まったばかりだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎

【WIZ】

あの
紋章つかいさんに
ご心酔なんて…

紋章さんの力で
変身

『|装着変身…!《メタモルフォーゼ》――フラワリープリンセス・ワンダーアリス☆』

頭に
宝石のティアラ

煌めき輝く
様々な花を
あしらった衣装の
|魔法少女ヒロイン《日曜朝系》に

翼で飛翔
【空中戦】も行い
立体的に立回り

クイーンオブハートキーを手に
【ハートのA】達も展開

【浄化】を込めた
【全力魔法】
【誘導弾】の【一斉発射】や

【第六感】【心眼】【残像】
【結界術】【オーラ防御】に
加え
紋章さんの言葉で
事象変異等起こし
攻撃や防御

紋章の力も乗せた
UCの衝嵐で
吹き飛ばし

『貴女達の目を覚まして差し上げます…!――フェイトストーム・ワンダーランド!』



「あの紋章つかいさんに、ご心酔なんて……」

 アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は、眼前に現れた敵──ダークヴァルキュリアたちの姿に、小さな胸の痛みを覚える。
 紋章つかいの犠牲になった者たちの多さを想うと、それを支持する者がいるというのは悲しい話だった。

(でも……)
 と、アリスは思いを馳せる。
(紋章つかいさんのやったことは……絶対にいけないこと……いっぱい人を傷つけました……。でも、それで……正義を実現しよう、という考えだけは、本物だったって聞きました……。だからと言って……許していいわけじゃないですけど……)
 もしかしたら、ヴァルキュリアたちも、そうした紋章つかいの思想に──地上に正義をもたらそうという考えに賛同したのかもしれない。
 そう考え、アリスはヴァルキュリアたちの、敵ながら真っ直ぐな瞳を見つめ、心中を感じ取ろうとして……。

「猟兵! 紋章つかい様のようなめっちゃカッコいい超推せるイケメンを倒したばかりか、その貴重な|紋章《グッズ》まで持ち出そうとするとか絶対に許されないわよ!」

 ……そんな言葉にピシッと石のように固まってしまったのだった。
「あ……あれ? みなさんは……紋章つかいさんの深い考えとか……正義とかに賛成したとかいうことでは……?」
「あ? 何言ってんの猟兵? そんな難しいことよくわかんないわよ! 私たちは紋章つかい様のイケメンぶりに惚れて集まった親衛隊なのよ! みなさいこの手作りうちわを!」
「MONSHO-TUKAI LOVE」と書かれた団扇をずらっと指し示してヴァルキュリアたちは得意げに胸を張る。シリアス終了のお知らせとか書かれた文字が背景に輝いているかのようだ。
 てか紋章つかいってローマ字表記なのか。EMBLEM MASTERとかじゃなく。
「何言ってんの! 私たちがそんな難しい言葉分かるわけないでしょ!」
 アッハイスミマセン。

「あ……あはは……ただカッコいいから好きなだけ……だったんですね……」
『ねえアリスちゃん……花の紋章である私たちが言うのもつらいんだけど……この敵、相当、頭お花畑よ……ねえ』
 アリスとその友となった『物いう花達の紋章』は、ドッと疲労感を覚えて力なく笑いあうのだった。

「何をごちゃごちゃ言っているの猟兵! 私たちファンクラブの力、今こそ見せてあげるわ!」
 勢い良く襲い掛かってきたヴァルキュリアたちに、しかしアリスもぐっとこぶしを握り締め、勇気を奮い起こす。
「そうはいきません……行きます、紋章さん!」
『任せて、アリスちゃん!』
 今こそアリスと紋章の二つの心が一つに重なり、新たな力が輝くときだ!

「装着変身……メタモルフォーゼ!!」

 ピンク色に煌めく花々が舞い踊り、流星のように降り注ぐ光が鮮やかに艶やかにアリスを包み込む。彼女の、まだ幼いながらも魅惑的なボディラインをくっきりと映し出すシルエットにぴたりと寄り添い装着されていくスーツに数多の花が咲き乱れる。絢爛たる薔薇、可憐なる桜、清廉な百合、高貴なる蘭、優しいスイートピー、そして牡丹、菊、ダリアやガーベラ……花々の宿すすべての力と思いが、アリスの力となって結実する!

「――フラワリープリンセス・ワンダーアリス☆」

 きらり輝く宝石のティアラが世界の真実を映し出すとき、アリスの純粋無垢な魂は無敵の鎧を身に纏う!
 ヴァルキュリアたちも、そのワンダーアリスの輝かしい姿に思わず言葉を失うほどだ!

「そ、その姿は……!?」
『萌えでしょ、ねえ?』
「も、萌えだわ……!」

 紋章が悪戯っぽくささやきかける言葉に、ついヴァルキュリアたちも、己の中に湧き出した萌えのエモーションを抑えきれない!
『ぱんつもちゃんと花柄コーデよ、ねえ?』
「えっぱんつも!?」
「はわわ! 紋章さん、それは見せちゃだめです!!」

 慌ててふんわりと広がるスカートを抑えるアリスだが、その可憐なしぐさが更なるハートを刺激する、いわば萌えの永久無限機関だ!
『ヴァルキュリアちゃんたち、今からでもアリスちゃんに推し変してもいいのよー? 今なら握手会無料プレゼントよ、ねえ?』
「な、なんですって!? ……くっ……しかし……」
 ヴァルキュリアたちは一瞬色めき立ったが、しかし。
 血のにじむように唇を嚙み締め、断固とした決断的意思を示したのだ。
「いいえ、やはり私たちはどこまでも紋章つかい様推し! その想いは貫くわ!!」

 言い捨てると、ヴァルキュリアはアリスに向かって涙を振り払い突進を開始した! だが、その場所にアリスはもういない! 
 そう、薫風を共にして、既にワンダーアリスは天高く飛翔していたのだ! 慌ててヴァルキュリアたちも飛び立つが、その重く歪み淀んだ黒い翼ごときが、アリスの軽やかなる舞に届くはずもなかった。虚空から降り注ぐアリスの花々が巻き起こした爽やかなる風が、ヴァルキュリアたちをまとめて吹きとばす!

「だ、だけど強化されてるということは、私たちの武器の餌食よ!」
 ヴァルキュリアたちは剣をかざしてなおも襲い掛かる。その剣の呪いは、「敵の強化された力を反転させる」というものであり、いわば変身者にとって天敵ともいえる効果を持つものだ。だが。

『ふふっ、あたらなきゃ意味ないわよ、ねえ?』

 紋章から発せられた輝きがヴァルキュリアたちを照らし出した瞬間、その剣は……マジックショーのごとく、ポン! と白い煙を放って、可愛らしい花束へと変わってしまったではないか! これこそ、事象を操る紋章の凄まじき力だ!
『どうせ手に取るなら剣よりも花束の方がいいわよ、ねえ?』

 くすくすと笑う紋章の言葉に、アリスも心の中でうなずく。
 本当に、人々が剣よりも花束を手に取ってくれれば、きっと彼女の望む優しい世界がやってくるのに。
 だが、焦ってはいけない。今はまず、その望みに向けて一歩ずつ進んでいくだけだ。

(そう、焦ってはいけない、です……。たぶん、紋章つかいさんも、……正義という望みに、焦り過ぎたの、ですね……)

 少しだけ寂しい思いを打ち消すように気力を奮い起こすと、アリスは黄金の鍵を取り天高く指し示し、これを起点としてすべてのエネルギーを集中させる!

「――もの言う花たちの噂話は……あらゆる世界に広まっていくのです……『フラワリーズ・フェイトストーム』!!」

 爆発的に放出された光の嵐は祈り願う優しい心の結晶だ。世界を覆うほどに吹き荒れたその想いの力の前に、ヴァルキュリアたちはついに姿も残さず消しとばされていくのだった。
 その姿を見つめながら、アリスは思う。

「紋章つかいさんの正義にかける思いだけは本物だったように……ヴァルキュリアさんたちの愛だけは……本物だったのかもです。でも……」

 アリスはそっと一本の花を戦場に手向けた。
 その花の名は──白山千鳥。

「白山千鳥の花言葉は……『間違った想い』……です」

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
紋章つかいの配下達ですか。
きっと紋章の犠牲者さん達を連行したり害したりしていたのでしょうね。
犠牲者の方々を裏切者呼ばわりする無礼と非道は許せません!

紋章さん、行きますよ。
装着!

バニーガールの姿に変身です。
相手の攻撃は心眼・第六感で予測し、バニースーツの性能と
見切り・空中戦・ダンスにて宙を舞うように華麗に回避。
念の為、オーラ防御も纏いますよ。

お返しに《花嵐》で攻撃です。

更に手足に光の属性攻撃と神罰を籠めて、功夫・衝撃波による太極拳の
発勁や蹴りによる貫通攻撃をお見舞いします!

その勢いのままカンフーアクションのように派手な立ち回りで配下達を
倒していきます。

私と紋章さんの力が合わされば勝利は確実です♪



「紋章つかいの配下達ですか。……犠牲者の方々を裏切者呼ばわりする無礼と非道は許せません!」

 大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)はその澄んだ瞳に燃える怒りと沸き立つ闘志を漲らせ、眼前の敵集団、ダークヴァルキュリアたちを見据えた。彼女の純粋無垢な魂は、紋章つかいの為した非道、そしてそれに加担した者たちへの断罪の思いで熱く煮えたぎっている!
「きっと紋章つかいを手伝って、犠牲者さん達を連行したり害したりしていたのでしょうね!」
「なんですって? 何を言っているの猟兵!」
 しかし、ヴァルキュリアたちは怪訝な表情を浮かべ、首をひねったではないか。

「紋章つかい様の研究のお手伝いだなんて、そんな難しいこと私たちができるわけないでしょう!」

「……えー……?」
 思わずぽかんと口を開けた詩乃に、ヴァルキュリアたちは口々に続ける。
「無敵になるとかそういう凄い力を使えるようになる紋章の研究なんて、紋章つかい様ほどの偉大な超絶かんぺき大天才だからこそできるに決まっているじゃない! 私たちのような凡俗が指一本触れられるはずがないでしょう!」
「え、じゃ、あの、犠牲者を連れてきたりとか……」
「誰が素材に適しているかの見極めなんて繊細なこと、深遠で慧眼な紋章つかい様以外ができるわけないでしょ!」
「……じゃあ、あなたたち、ここで何をしてたんです……?」
「そりゃあ、決まってるじゃない」
 詩乃の問いに、ヴァルキュリアたちは自慢げに胸を張る。

「紋章つかい様がお疲れかなあと思ったら肩や足をお揉みし! ご休憩のタイミングかなあと思ったらすかさずお茶を入れ! そしていつもは背後で邪魔にならないように気を付けつつ声援を続けるという重要な任務よ!」

「……紋章さん、この人たち、控えめに言ってだいぶポンコツなのでは?」
『ええまあ……傍から見ていて、ただ邪魔してるだけでしたね彼女たちは……研究時の紋章つかいの集中力も異常だったので、それさえ気にしていなかったようですが』
 呆れたようにこっそりささやいた詩乃の言葉に、紋章も、やれやれと言ったように答える。

「うーん……とはいえ、やはり紋章つかいの部下であることには変わりないですし、邪悪の片棒を担いでいたこと自体は事実ですからね……やはりやっつけましょう! 紋章さん、行きますよ!」
『はい、お任せを!』
 
 説明しよう! 詩乃と紋章の心が一つとなった時、その絆は無敵のパワーを生み出す超装甲となって結実するのだ! まばゆい輝きの中から生み出されるその姿こそ、疾風のような敏捷性と機動力を備え、さらに優美にして華麗なフォルムを兼ね備えた唯一無二のシルエット! おお、それこそは──バニースーツだ!

「そ、装着、バニーフォーム!! ……うう、やっぱりまだちょっと恥ずかしいですね」
『心を強く持ってください詩乃さん! 今こそ、このバニーフォームの隠された力をお見せしましょう!』
「えっ、何かまだ秘められた力が!?」
 驚嘆した詩乃が周囲を見回す。その瞬間、ヴァルキュリアたちの多くがバタバタと倒れていくではないか! まだ何の力も行使していないというのにだ!
「ぐえー!」「グワーッ!」「アバーッ!」

 その光景に瞳を丸くし、詩乃は息を飲む。
「紋章さん、これは!」
『バニーの力ですよ。詩乃さん、よく見てください、ヴァルキュリアたちのイラストを!』
「メタですね!? ええと……これがどうかしたのでしょうか」
『おわかりになりませんか……ヴァルキュリアたちのスタイルを!』
「ス、スタイルですか!?」
 思わず詩乃は自分の胸に手を当てる、その、豊満にして美麗なラインを示す大いなる白い双丘に!

『そう、ヴァルキュリアたちは全て──つるぺたなのです! それに対し、詩乃さんのダイナマイツで爆裂なスタイルがバニースタイルになることによってさらに強調! これにより貧乳たちは計り知れないダメージを負うのです!』

「……敵ながら若干哀れですね……なんと恐ろしい力なのでしょう、バニーとは」
 バニーの兼ね備えた恐るべき力にさしもの詩乃も戦慄を禁じ得ない! それはもはや戦略兵器に近い威力だ!
『まあ、多少問題はありますが』
「問題?」
 きょとんとした詩乃のもとへ、生きのこったヴァルキュリアたちが暴風のように、大波のように襲い掛かった! その目からは皆真紅の血の涙を流している!
「ちくしょー、ちょっと大きいからって! 持たざる者の怨みを思い知るがいいわ!!」
 わめきつつ暴れ掛かってくるヴァルキュリアたちを軽妙に回避しながら、紋章はしみじみとつぶやく。
『……と、こんな感じで、逆ギレされる危険性もあるのです』
「駄目じゃないですか!? ……うう、仕方ありません、反撃です」

 詩乃はバニーの超跳躍力を活かし、縦横無尽に飛翔し、宙空に舞い踊る! 重力も大気も、いや慣性さえも彼女の周りからはかき消えたかのごとく、影さえ置き去りにして鮮やかに。心のまま意のままに空間の支配者たる力を示す詩乃に、ただ荒れ狂うだけのヴァルキュリアたちは到底追いつけぬ!

「お、おのれーっ!」
 ヴァルキュリアたちは自棄になったように剣を振り回す。その呪われし剣こそは、相手の強化能力を反転させる効果を持つ、いわば変身者にとっては天敵だ。しかしあまりにも違う、スピードが、ジャンプ力が、反射速度が! 
 むしろ単調に振り回すだけのヴァルキュリアの剣を、詩乃は円の動きでからめ取るように捌き、懐に入ると僅かに一閃! 体内に抉りこむように放たれた寸勁は一撃で敵の意識を刈り取るに十分だ! そのまま次の敵へ、さらに次の敵へと、残像さえ見えるほどの攻撃が途切れることなく円環の術理をもって叩き込まれる!

「ではとどめです、今より此処を桜花舞う佳景といたしましょう。──『花嵐』!!!」

 それは紋章つかいの犠牲となった人々へのせめてもの手向けか。無数の華やかに香り立つ花弁が綾なす桜色の艶やかな吹雪となって吹き荒れた時、ヴァルキュリアたちの存在そのものは否定され、ただ花の香がかぐわしく漂うのみだった。

「ふう、私と紋章さんの力が合わされば勝利は確実ですね♪」
『はい、そしてバニーの力です!』

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変大歓迎】
紋章の人は今日からブラックさんと名付けよう。これで長きの間謎だったゾロ目UCのブラックさんが誰か判明してわたしのファンも安心だね!伏線は回収されたぞー!
そして、試し撃ちの相手が来たようだね
まずは駆けつけ一杯!芋煮おまち!
戦いの前に芋煮を食すのは当然の礼儀…お食べ

さ、戦うというのならめんどくさいけど相手になるよ!
私のアイテムのアクションフィギュアみたいなパワードスーツ?機械っぽい恰好してみたかったんだよね
そうちゃーっく!ってやってそんな感じの格好になったら空をぶわーっと飛んで弓ビシュビシュ撃って決着だー
必殺技は…よーく弓で狙ってからの内蔵されたミサイルとかの一斉射撃かなー?



「ふっふっふ。どうやら試し撃ちの相手が来たようだね……さあ行くよ、ブラックさん!」

 ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)は不敵な笑みを浮かべ、迫りくる敵の大軍勢にいささかも怖じることなく凛然と気迫を漲らせた。……もっとも、その掛け声に帰ってくる返答はなかったが。

「? ……行くよ、ブラックさん!」
 おや? と柳眉をひそませつつも、ルエリラはもう一度声を掛ける。だがしかし、先ほどと同じく、沈黙のみがその答え。
「どうしたんだい、ブラックさん! おーい、ブラックさーん!!!」
 ルエリラは両手で相手を鷲掴みにするとがっしがっしと揺さぶりながらめっちゃ怒鳴り立てた! その相手とは……おお、まさに先ほど入手したばかりの『紋章』であった!

『え? え!? そのブラックさんって私ですか!?』
 ようやく先ほどから自分が呼ばれていたことに気づいた紋章は慌てて反応する。それはまあ、分かるわけがないのである。いきなりそんなん呼ばれても。
「そりゃそうだよ、ブラックさんはブラックさんなんだからさー」
『えー……名前を付けていただいたことは嬉しいですが、そう言っていただけないとわかんないです……』
「何を言っているんだい。ブラックさんはずっとブラックさんじゃないか!」
『いや私ついさっき、何なら5分くらい前にあなたのところに来たばかりなんですが……』
「ブラックさん!」
 ばしぃ! とルエリラの愛の鞭が飛んだ! これもすべて美しい友情ゆえの涙の叱責だ!
『えっ私今なんでばしぃされたんです!?』
「忘れてしまったのかい、この私のユーベルコードを! ほらステシを見てごらん!」
『雑にメタですね! ええと、|ブラック・ポテト・シューター《ファイナル・イモニ・ライド》……既に聞きたくないんですけどなんですかこれは』
 紋章の、当然と言えば当然の疑問に、ルエリラはぐいと胸を張って答える。

「ゾロ目で作った私のユーベルコードだよ!」
『うわユベコ自体も雑だった!』

「何を言うんだい、ゾロ目とは即ち運命の導きってことさ。つまりゾロ目ユーベルコードは最も運命の力に強く影響されているという意味で無敵にして最強の力なんだよ! さあみんなもゾロ目でユーベルコードを作ってみよう!」
『また妙に説得力があるようなないような……っていうがそれが私とどうつながるんです……?』
 もし人間だったら思いっきりジト目で難詰しているに違いない紋章の声にも、しかしルエリラが動じるはずもない。

「大ありだよ! つまりゾロ目で作ったUCだからよくわかんない言葉も紛れ込む。『ブラックさん』とか」
『もうその時点でダメじゃないですか!?』
「いったいこのブラックさんとはだれ!? 誰なの!? 怖いよう! そんな日々を送っていた私の前に、ある時現れた紋章!」
『まあつい5分前ですが』
「そうか! この紋章がブラックさんだったんだ! 何と見事な伏線回収!」
『それ伏線回収っていうかなあ!?』
「ということで、君は前からブラックさんだったんだよ。さあユーベルコードを使うんだ!」
『その結論おかしいよね!? 因果とか時系列とか逆だよね!?』
「因果や時系列に縛られてるようでは立派な猟兵にはなれないんだよブラックさん!」
 かわいそうだがルエリラと付き合うということはこういうことである。彼女のもとに来た時点で紋章の運命は決まっていたのだ。
 しかし!

『……っていうか実際私もその力が使えちゃいそうな気がする時点で、もう自分が信じられないです……』
 おお、まさにその通り! |紋章《ブラックさん》はもうどうにでもなーれと言った感じで闇より深く漆黒に煮えたぎるブラック芋煮を召喚した! 何かよくわからないがそういうふうに定められているのでそうなってしまったのだ!

『……で、これを召喚するとどうなるんです?』
「さあ?」
『もうやだよう、この世界!』

 しかしごあんしんいただきたい、ブラック芋煮とはすなわち、イカスミ料理が代謝機能を回復するように健康にいいのだ! つまりブラック芋煮のオーラを強化するというこのUCは、使用者の健康ぢからを高め、能力を全面的に底上げする力を秘めていた! ということにする! 今回は!

「おお、エルフパワーの高まりを感じるよ! ブラックさん、今こそ装着変身だ!」
『もう勝手にしてください……へんしーん……』
 
 ルエリラとブラックさんの心が一つになった時、時空の彼方より天を突き破り現れる、煌めき輝く無敵装甲がルエリラの身を覆い、新たな力となって顕現する! 輝く翼は雲間に舞う流麗なる天使の如く、威圧的な巨大な副腕は悪魔の如し! 天使と悪魔の姿を共に宿したそのシルエットはまさに、もし商品化されれば在庫などとは呼ばせないだけの魅力を秘めた超絶外骨格型パワードスーツだ!

「エルフ型武装外骨格! イモーヴァルだよ!」

 それは|不滅《イモータル》なる存在である芋煮を表す合成語だ! 決してどこかの天使型のパロディではないので版権的にもごあんしんいただきたい!

「……ねえ、ずっと出待ちしてるんだけど私たちの出番まだー?」
 手持無沙汰に鍋をつつきながらスマホをいじっていたダークヴァルキュリアたちが声をかける。お待たせしました。
 まあギャグのコマの間は大体時間はあんまり経過しないものなのでお許し願いたい。

「ちゃんと私が用意しておいた芋煮をご馳走していたんだからいいでしょー? っていうかそろそろ尺ないから巻きで倒しちゃうよ?」
「ちょっと!? ここまで待たせておいてそれはないでしょ!?」

 慌てて攻撃を開始するヴァルキュリアたちの凄まじい剣先をかいくぐり、イモーヴァルは天使の翼をもって疾風の如くに飛翔!
 ルエリラの弓勢はただでさえ凄絶にして精妙、それが今は、悪魔の副腕によりいくつもの弓を同時に操れるのだ! 高速飛翔しながらのスコールのごとき矢の嵐がヴァルキュリアたちを襲い撃ち倒す!

「さあ、とどめだよブラックさん! 全弾斉射―!!!」

 ルエリラの声とともに、イモーヴァルの全身に装備されたマイクロミサイルとブラスターが展開! 空間を引き裂き焼き尽くさんばかりの業火となって一斉に降り注ぎ、あらゆるものを一瞬にして滅ぼしたのだった。

「うんうん、やっぱり私は無敵だよね、ブラックさん!」
『……ずっと気になっていたのですが、その『さん』は名前なのですか? 敬称なのですか?』
「ブラックさんはブラックさんだけど? おかしなこと言うなあブラックさんは」
『私かなあ!? 私がおかしいのかなあ!?』

大成功 🔵​🔵​🔵​

サク・ベルンカステル
ダークヒーロー的な姿かも知れぬが変身ポーズは、、、割愛だ、、、!
紋章を取り込み全身を黒き装甲で覆われた6本腕の姿となり黒剣たけでなく随行大剣を握る

闇の血を暴走させずとも多腕の姿となれるのはありがたい
さぁ、オブリビオンの群れを斬り捨てるとしようか

全ての腕で握る刃にUC概念斬断を発動し、オブリビオンの群れに飛び込む。
敵UCには多腕による【武器受け】で対処し、必殺の概念斬りを叩き込む



「|闇の英雄《ダークヒーロー》……などという柄ではないな」

 サク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし剣鬼・f40103)は、己の言葉に小さな自嘲の声を漏らす。
 然り、復讐に取り憑かれ恨みを晴らすためだけの憂愁の剣鬼となった今のサクは、たとえ闇なる存在でも英雄と呼ばれるものとは計り知れぬほど程遠い位置にいる。そのことは己自身が最も深く、深く知悉しているのだ。
 ああ、だが。
 それでも、とサクは眩しそうに一瞬、エメラルドの目を細めた。
 かつての遠い日の幻が魂を射竦める。
 本当にそんな日があったのだろうかと、自分でさえ疑いたくなるほどの純真無垢な少年時代が脳裏を駆ける。その日、その時において、自分は確かに、英雄と呼ばれる何かに憧れていたことがあったのかもしれない。父や母から聞かされたおとぎ話の中に鮮やかに息づいていた、雄々しく輝く英雄に、いつかはなろうと誓ったことがあったのかもしれない……。

「……だがそれは、既に死んだ過去だ。殺された思い出だ。葬られた夢だ……」

 サクは軽く頭を振って、その暖かかった遠き日の追想を払いのけた。過去の安らぎの中に憩う資格を今の自分は持たぬ。己の手の中に握るのは、優しい思い出ではなく血塗られた剣だけなのだから。

「闇の血を暴走させずともよいのはありがたい。では行こうか、紋章よ。我が修羅なる道行の|輩《ともがら》よ。私に力を貸せ、呪われた力を。代わりに与えよう、鮮血の満足を。──装着!」

 サクの静かながらも鋭い気勢が闇を切り裂いた。同時、その手にした『紋章』が漆黒の闇を吐き出す。重く淀んだ暗黒の霧はサクを包み込み、大気を軋ませ、空間にヒビを入れながら新たな姿を形作ってゆく。それはまさに呪われた再誕、暗黒の寿ぎともいうべき、悍ましき運命そのものの結晶化だ。
 おお、今こそ──あらゆる光を吸い込んで逃がさぬ暗黒の轟洞のごとき昏き装甲がサクの身に纏わりつく! その身滅びるまで逃さぬと縋り付く復讐の呪縛の如くに、そして、それでも構わぬと己を嗤うサク自身の怨念の如くにだ!

「そうだ、これこそ私が自ら望んだ姿。──行くぞ」

 漆黒の塊となったサクは前方に蠢き群れなすダークヴァルキュリアたちに向かって突進する。黒い風となったその身が膨れ上がる……大蛇がのたうちまわるように湧き出し生え出した4本の新たな腕によって!

「猟兵! 紋章つかい様の力を奪うなどとは許せぬ!」
 ヴァルキュリアたちはそのサクに向かい刃を振るおうとして、けれど。
 ──次の瞬間、切り裂かれた。
 剣によってではない、サクのまなざしによって! その鋭く深く一切の光を宿さぬ碧緑の瞳に込められた、果てしなく底知れぬ憎悪と怨念によってだ!
 棒立ちになったヴァルキュリアたちの肉体が物理的に両断されたのは、その次の瞬間でしかなかった。

「……『奪ったから許さぬ』だと? 私からすべてを奪ったお前たちが無様にさえずるな。許さぬのは私の方だ──復讐者の刃に手加減があると思うなよ」

 サクの低く重い声が風に乗って通り過ぎた……。
 それはまさに嵐。漆黒の旋風だった。
 六腕にて振るわれる凄絶なる剣閃は残像さえ切り裂くほどの苛烈なる勢いと鋭さを思うがままに見せつけ、ヴァルキュリアたちを鎧ごと、いや空間ごと叩き斬っていく。飛ぶ前にヴァルキュリアたちの翼は微塵と化し、構える前に剣は砕かれ、防ぐ前に鎧は貫かれる。まこと、サクの剣に寸毫の容赦もあろうはずがなし。
 恐慌しつつも、なお数を利して包囲し押し切ろうとするヴァルキュリアたちの攻撃を、しかしサクの大剣は逆に引き裂き千切る。まとまってくれたならかえって都合がよいとばかりに。血煙が真紅の霧となり立ち込めるほどに、サクの剣は悪鬼どもの存在そのものを啜り喰らう!

 形を為した怒りと憎悪の塊がそこにあった。サクの、そして犠牲となった紋章の。いや、それのみならず、紋章の背後にはさらに多くの犠牲者たちの叫びがあったのだ……。

 背負うとは言わぬ、サクはそれら無限の犠牲者たちの想いを担えると思うほど達観してはおらぬ。けれど、共にある。悲しみと怒りに震える魂たちの残滓は、サクと共にある! そうだ、それこそが装着の真なる意味ではなかったか。単に物理的な能力の増強だけではなく、無限の想いを漆黒の剣に宿して闇を貫くその意思こそが装着の力ではなかったか。

「全ての不条理を我が剣閃で断ち斬る──概念斬断!」

 不条理とは一人オブリビオンにとどまらぬ。無辜の犠牲者にゆえなき悲劇を強いて笑う運命そのものだ。傲岸不遜に踊る道化めいた宿命それ自体に、サクは決して屈せず立ち向かう。理不尽を当然と嘲る人の業そのものを、サクの剣は決して許さず斬り捨てる!

 ──六腕の剣が最後の唸りを上げた時、あとに残ったのはただ虚無だけだった。
 剣に血振いをくれて、サクは振り返りもせず、再び歩き出す。
 闇の奥まで遠く続く荒涼たる道に、微かな足跡を残して。
 哭き声のような響きを引く風が、その孤影を僅かに包んで、静かに消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
無粋なのがやってきたねえ。
まだ紋章の力は詳しく知らない、けどまあ張り切り過ぎなくて大丈夫。
多少は俺もやれるから、ね?

UC起動してから紋章に首にかけたグリモアを触れさせ発動。
歯車が回転して…一瞬で装着できるんだねー。
…結構負荷でかいか。ここは一気に決めちゃおう!
何か敵の動き遅いような…いや俺の感覚、時間が加速してる?
成る程それなら納得…というかめっちゃお腹減ってくね!
エネルギー効率悪いからここぞという時に使う感じか。
ともかく、敵の剣を見切り躱しカウンター合わせて思いっきりぶっ飛ばしちゃおうか。

※アドリブ絡み等お任せ
姿は金属皮膚の上にモノトーンなライダースーツ纏い、その上に動きの邪魔しない装甲装着



「オブリビオン風紀委員会のダークヴァルキュリア部隊よ! 不純異種族交友は禁止! 禁止です!」

 突如鳴り響いたけたたましいホイッスルの音と、それに続いてバタバタと走り込んできた無数の人影に、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)はきょとんと太い首をかしげた。

「……ん-。一から十まで脳が理解を拒む単語で構成されたセリフでいっそ清々しいね……紋章さん、この人たちは?」
『あー……それはですね……』
 ヴィクトルは、その掌中に収めた『紋章』と先ほど絆を結んだばかり。その紋章に顔を近づけ、尋ねた彼の言葉に、紋章も困ったように何かを言いかけようとして、けれど。

「ほらー! そうやって過剰に接近しようとする! 風紀的にアウト! アウトよ!」
 ムキー! と手足をバタバタさせつつオブリビオンたちがわめきたてた金切り声に、さしもののんびり屋のヴィクトルも、多少辟易とした表情を浮かべざるを得ない。

『猟兵さん。このオブリビオンたちは、先ほど自分たちが名乗ったように……風紀委員会を自称する者たちです』
「ふうき……?」
『ふうきいいん』
「……ふうきいいん。おぶりびおんの。……うん、なんていうかもうそれは出オチだよね……。世界はワンダーに満ちているなあ……」
『このオブリビオンたちは紋章つかいの部下。そして、紋章つかいは、決して認められない歪んだやり方だったとはいえ、一応その志は正義の実現にあった人です。ゆえに……彼女たちもまた正義を実現しようとしているようです。風紀を護るという形で』
 紋章が語るのに、オブリビオンたちもそうだそうだと薄い胸を張る。

「風紀の順守は健全な交友からよ! 従って! 不純異種族交友は認められないわ! 今すぐ離れなさいそこの二人!」
「……俺と紋章さんのこと? いや別に、不純も何も、友達だし……」
「嘘おっしゃい! 男と……女が……その、距離を近づけて……あまつさえ、が、合体とか……装着とか……や、やらしい! やらしすぎるわ! 風紀的に許せないわー!!」
「一番いやらしいのはキミたちの頭の中って気がするなあ……」

 うんざりした表情を浮かべたヴィクトルに、しかし、紋章はくすっと笑みを漏らしたかのようだった。
『まあ、私が猟兵さんに口説かれたのは事実ですが』
「……キミも結構状況を楽しむタイプだね?」
 とかなんとかいう会話自体、もう風紀的にはリミットブレイクだったらしい。ダークヴァルキュリアたちは地団太を踏みつつ喚き散らした。

「キーッ! 風紀的に許せないわ! そんなイチャコラぶりを私たちの目の前で! 私たちは紋章つかい様に手も握ってもらえなかったって言うのに!」
「……本音漏れてるよ……つまり嫉妬?」
「違うもん! 嫉妬違うもん! 風紀だもん! こうなったら実力を行使して風紀を実行するわよ! みんな、風紀―!!!」
「「「風紀―!!!!」」」
「えっそれが掛け声なんだ……」

 半分泣きべそをかいているような表情で飛び掛かってくるヴァルキュリアたち。かくして、ここに高度に風紀的な戦いの火蓋は斬って落とされたのだ!
『こちらも行きましょう猟兵さん!』
「うん、まだ紋章さんの力は詳しく知らないけど、まあ張り切り過ぎなくて大丈夫だよ。多少は俺もやれるから、ね?」
『はい、猟兵さん!』
 息ぴったりの二人に、ヴァルキュリアたちの悲鳴めいた怒りの雄叫びが響き渡る!
「だからイチャイチャすなー!!!」
 実際なんかもうこの二人明らかに見せつけてないかな? とそろそろMSも思い始めたが、それはともかく、二人の心が一つになった時、新たな力がヴィクトルに宿るのだ!
 そう、今こそ装着変身の力が顕現するときだ!

 ヴィクトルの力の真髄ともいえるグリモアが紋章に触れる。おお、二つの超越的な力の具象が融合した時、時空すらも超えた神秘の力が発動した! 銀鈴のごとき高く澄んだ音が響き、歯車型だった紋章の形が次元をよぎって展開され、宇宙の彼方を横切る角度からヴィクトルの身を覆う。一にして多、無限の円環を象徴するものこそ歯車の形だったのだ。
 宇宙そのものを切り取ったかの如く形成された漆黒の装甲は虹のように色めく光を放ち、邪悪を撃ち倒すためにあえて鬼の姿を借りたかのごとき神々しくも威圧的な姿へと変幻する! 現実時間にして僅かに一瞬の後、そこに立っていたのは鬼の装いにして天の鎧! すなわち──|鬼装天鎧《きそうてんがい》だ!

「一瞬で装着できるんだね、凄いよ」
『素敵です、猟兵さん。……でも、あの、……そのマスクの下、マズルはどうなっているんです?』
「それは……聞かないで」
 
「おー、のー、れー、まー、たー、いちゃ……いちゃ……」

 何か遠くから聞こえて来売るような声に、ヴィクトルと紋章は我に返る。それはヴァルキュリアたちが剣を振りかざし襲って来る奇声だ。
 だが。これはなんとしたことか。
 あたかもそこに釘づけにされた如く、ヴァルキュリアたちは進んでこない。彼女たちの翻った髪が、そのまま宙にとどまって落ちぬ。そのスカートが舞ったまま、いつまでも広がり続ける。いやそれはヴァルキュリアたちだけではない、彼女たちの蹴立てた砂ぼこりの一粒一粒が目で判別できるほどにくっきりと空に刻み込まれているではないか、飛び散る汗の日右松が水玉となって輝く様子まで確かに目で追えるではないか。
 ヴァルキュリアたちの、いや──世界全ての動きが、とろりと蕩けた蜜の中に封じ込められたかのように、鈍化している!

「超加速か……これが変身の力なんだね」
『私も、ここまでのことができるとは思いませんでした』
「すごいけど……」
 と、ヴィクトルは腹部をさする。ぐう、と虫が鳴きそうな感覚を覚えて。
「……めっちゃお腹減ってくね!」
『うーん、今後はお弁当を用意して変身してみるというのはどうでしょう』
「このマスク、口開くのかな……まあいいや、後で考えよう。とにかく、やっつけちゃおう!」

 風も光も置き去りにしたヴィクトルの超高速にもはや敵などあろうはずもない。棒立ちの的と化したヴァルキュリアたちを、ヴィクトルは次々と撃破していったのだった。

「ぐええええ! 風紀的に……こんなことはあり得ない……!」
「いやまあ、キミたち、今まで言わなかったけど……」
 断末魔のヴァルキュリアたちに、ヴィクトルはぽつりとツッコむのだった。

「まず武器持ってることが風紀違反だから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

さて、それじゃあ……早速慣れてみるかい?
何にって?そりゃサメと着ぐるみさ。
大丈夫大丈夫!意味は分かりにくいかもだけど、怖い事はないさ。
これでも動きやすい……筈だよ?
紋章サン、アンタが力を貸してくれればもっと動きやすくなるだろうさ。
それにサメの姿なら「とっておき」ができるんでね。

見た目がコメディチックだからって油断するんじゃないよ?
これでもアタシはそれなりに修羅場をくぐってるんでね。
レイピアの連続攻撃に『カウンター』で合わせるように、サメの脳みそをぶつけるよ。
後は仕上げを御覧じろ、グロとスプラッタの様相いっちょ上がりさ。
手向かってくる奴らにゃ、容赦は要らないからね。



「脳みそをぶつけるんだよ」
『ええっ、それがオブリビオンの攻撃なのですか? なんという下劣で悪趣味で非道な攻撃なのでしょう! やはりオブリビオンは許せません! 猟兵さん、力を合わせてやっつけましょう!』
「……いや、アタシがね?」

 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)の言葉に、正義の怒りを熱く激しく燃え滾らせていた『紋章』は一瞬黙りこくった。
 それはもう、いつの間にかなんかサメの着ぐるみを着込んでいる多喜の姿に突っ込む余裕さえないほどに気まずい沈黙が刹那の間流れる。しかし、紋章は「何もなかったことにしよう! ヨシ!」とばかり、健気にももう一回仕切りなおす。

『わかりました。つまり、脳みそをぶつけるという邪悪な攻撃をしてくるオブリビオンなのですね。許せません!』
「ちょっと! 何風評被害広めてるの!? 私たちそんな攻撃しないわよ!?」
 向こうからなんか抗議の声が聞こえてくる気がしたが、知ったこっちゃないのである。
『はいそこうるさい! 今大事な話してるんだから黙っててください!』
「アッハイ……」
「……なんかどんどんアタシの立場がマズくなってくような気がするね……?」
 多喜はゲホンゲホン、と咳払いしつつ改めて自分のステシを再確認した。

『|これがアタシの禁じ手!!《ジモトノウラワザ》
命中した【サメ】の【うみそ】が【癒着した拒絶反応の塊】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。』

「……だってしょうがないじゃん実際こういうユーベルコードなんだからさ!」

 そんなん作るからである。
「そのゾロ目出したの、どっかのダンピールさんなんですけおおおお!?」
 えー? 知らないよ? 何のこと?

「ええい、とにかく!」
 と、多喜は気持ちを切り替え、紋章に向き直る。
「いいかい紋章サン、敵はオブリビオンだ。これでもいろんな修羅場くぐってるんでね、やつらのヤバさは知ってるんだ。だからやっつけなきゃならない」
『ええ、それはまあ……確かに』
「手向かってくる奴らにゃ、容赦は要らないんだ」
『そうですね……はい』
「だから脳みそをぶつけんだよ!」
『待って、そこで関連性迷子になりました!? 関連性どっか行きましたよ!? 探しに行ってあげて!』
「うん……でもね、これが猟兵なんだよ」
『そうかなあ!?』
「ということで、さあ行くよ! 大丈夫怖くないよ!」

 多喜は強引に話をまとめると、高々と紋章を天に掲げた! 多喜と紋章の心が一つになったとk
『なってない気がしますが!』
 一つになった時! 二人の絆が新たな力を生み出すのだ!
 時空が波濤の打ち寄せるかのように大きくはじけ、無限のエナジーが大海嘯の如く多喜を包み込む。その波間から光輝いて生み出された姿とは……おお!

 サメだ!

 ……サメである。多喜が最初っから着ていたような、サメの着ぐるみである。
 だがしかし、ただのサメにあらず。見上げるばかりの巨大さを持ったサメの着ぐるみが直立し、その頭部にはサメぐるみの多喜がそのままジョイント! いわば、サメonザ・サメin多喜!
 不滅なるサメのボディに人の頭脳をプラスした時、未来をもたらす黒鉄のサメが立ち上がるのだ! フォルム的にはZなアレというよりは子爵的なアレだがそれはそれだ!

「|超鮫武装《ちょうこうぶそう》! シャークタキオンッ!!」

 光をも超える神秘の力を宿すがゆえにタキオンであり、また多喜がonしているがゆえにタキオンである!
 
「な、何よあの不格好ななんかは!?」
「お、驚くことはないわ、あんなギャグキャラなんかに負ける私たちではないわ!」
 ダークヴァルキュリアたちが口々に恐れおののきつつ剣を抜いたが、多喜はニヤリと余裕で笑む。
「見た目がちょっとだけコメディっぽいからって舐めてもらっちゃあ困るねえ!」
 おお、まさに大海原を突き進むサメのごとき超高速でシャークタキオンは敵軍に乱入し、攻撃などものともせず、当たるを幸い薙ぎ払い、叩きつけ、縦横無尽に暴れまわる。ちぎっては投げ、ちぎっては投げの無双モードだ。これこそが海の王者にして覇者であるサメの力、しかもサメonサメのグレート合体状態であるがゆえにその力は無限大だ!

「ええい、こうなったら……空よ! 私たちならシャークタキオンを空から攻めるね!」
 だが、さすがにダークヴァルキュリアたちも紋章つかいに選ばれし者どもだ。次の一手として、その漆黒の翼で天空に舞い上がり、シャークタキオンに対して空中からの波状攻撃に切り替えたではないか。危うしか、シャークタキオン!

「ちっ、ちょいと面倒だね。紋章サン、どうする!?」
『ご心配なく多喜さん! 今こそユーベルコードを使う時です!』
「おっ、その気になってくれたんだね紋章サン! ……って、え?」
 紋章のサメぐるみは己の頭上にonしている多喜のサメぐるみを両手、いや両ヒレで挟み込むと──。

『シャークスラッガー!!!』

 おお、そのまま空中の敵軍めがけて……思いっきり力の限りぶん投げたのだ! 超鮫エネルギーに包まれて眩く発光した多喜はいわば超高速高熱源サメとなってヴァルキュリアたちに向かい驀進した! 
 おわかりだろうか、先ほど、『人の頭脳をプラスした』と記述させていただいた意味を!

「なーるほどー、シャークタキオンの頭脳であるアタシをぶん投げるから『サメの脳みそをぶつける』ってユベコになるわけだねー。こりゃあ一本取られたねって言ってる場合じゃねえええ!!!????」
「きゃーっ!? なんかいきなり体当たりしてきたー!!???」
 多喜の悲鳴とヴァルキュリアたちの悲鳴が重なった時、世界を純白の闇が無情に無慈悲に包み込む。次いで凄絶にして轟然たる大爆発が天地をどよもし虚空を引き裂いて、すべてを灰燼に帰し去って行った……。

『多喜さん! 私、なんか猟兵の皆さんに慣れてきた気がします!』
 紋章の気合に満ちた言葉に、頭から地面に突き刺さったまま抜けなくなっている多喜は、それでも腕だけをずぼっと引き抜いてサムズアップを送るのだった。
「お、おう……ようこそ……芋煮の世界へ……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

結月・志愛美
よし、早速この紋章を使ってみよう…
紋章さんも力を貸してくれるそうだ
私は紋章の力で変身する

行くよ…変身!
黒い龍の姿に変身した
左腕を回して前に突き出して変身した

『さあ!雑魚処理開始だよぉ!』
サヴェ姉がテンションを上げて喜んでいた

敵はUCを発動してきたが
私は〘視力〙と〘心眼〙で敵の動きを見て〘気配感知〙で敵の位置を把握しながら〘足場熟習〙で足場に気をつける

まずは…囲まれないようにしないとね!
敵の動きに合わせて災害属性攻撃の〘斬撃波〙を放ちながら周りの敵にサヴェ姉から光線を放ち敵に囲まれないように〘索敵〙で囲まれないように立ち回る

蹉跎歳月!
指定UC発動して敵に斬撃を放った
私は十一の剣の効果で十二の剣を発動した

陽輪龍舞!
走りながら白銀の炎の陽龍を描きながら敵を切り裂いた
十二の剣の効果で一の剣を発動した

そして…また日が昇る!
私は一の剣・天舞を発動して周りの敵を切り裂いた


『一の剣から十二の剣が繋がるんだねえ!』
サヴェ姉がとても嬉しそうに喋った

うん!紋章さんもこれから一緒に戦おうね!
紋章も楽しそうだった



「よーし、サヴェ姉、紋章さん、行くよ!」

 結月・志愛美(時空を超えた龍神少女『シャミ』と次元災害の剣・f40401)──シャミは、彼女のパートナーたる知性ある剣サヴェイジ・オーラと、新たに友となった『紋章』に向かって凛然と声を掛けた。
 眼前に迫る黒い影たる軍勢は、紋章つかいの配下であったダーク・ヴァルキュリアたちの最後の生き残りの集団だ。一体一体が紋章つかいに見出されただけの力を備えている上、数は多く、それだけに数的優位で押されると厄介な戦いにもなりうる。だが。

「紋章さんは初めての戦いになると思うけど、私たちが付いてるから心配しないでね!」
『は、はい、よろしくお願いします!』
 
 シャミがトンと胸を叩いて言った言葉に、サヴェイジはくすっと心中で笑みを漏らした。

(紋章の不安をちゃんと見抜いて励ましたか。シャミ、なかなかのお姉さんぶりだねえ。まあ、家族にはもともと弟がいるわけだし、意外に姉ポジが似合うのかもねえ)
 シャミとサヴェイジとの関係では、明確にサヴェイジが姉貴分、シャミが妹分的な関係となっているし、それはそれで息が合っている。だが、お姉さんぶるシャミというのも、なかなか可愛らしいものだ、とサヴェイジは微笑ましく思う。

 意識を集中させたシャミの髪がふわりと逆立ち、大気が揺れた。彼女の内面の峻烈なる気が高まり、紋章へと流れ込んでいくのだ。紋章がこれを受け止め、自らのエネルギーと共に、今、迸らせる!
 紋章を高々と天空に向かって掲げ、鋭く大気を切り裂くかのように回転させて前面に突き出したシャミの唇から──裂帛の気勢が漏れた!

「──変身っ!!」

 轟然!
 世界が吠え、時空が猛り狂う。荒ぶる凄絶なエネルギーの嵐を引き裂いて、その中から現れたものは……おお、見よ! それこそは神々しき息吹と圧倒的な威圧感を兼ね備えた、あらゆる獣の頂点に座すべき帝の象徴、天空の玉座からあまねく宇宙をしろしめすもの──大いなる龍王の姿ではないか!

(なるほど、シャミ……本来の姿を紋章の力で呼び覚ましたかい。変身というより覚醒かねえ? こいつは面白くなってきたねえ)
 心中で愉悦の声を漏らす魔剣サヴェイジの柄をがっきと口に咥え、シャミの変じた漆黒の龍は大気を切り裂き敵軍めがけ猛進していく! その身に纏う雷雲から蒼い稲妻を迸らせ、狂猛たる暴風をその供として!

「りゅ、龍ですって!? そ、そんな馬鹿な!?」
「紋章つかい様の研究の成果とはいえ、そこまでの力を得られるはずが……!?」
 恐慌するヴァルキュリアたちに、龍神と化したシャミは咆哮する。
「当たり前だよ! 紋章つかいは、紋章さんたちをただの道具としてしか見ていなかったんでしょ! そんなことで、紋章さんたちの本来の力を借りられるわけないんだよっ!」
『そうです! 私たち紋章が本当の力を振るうのは──お友達のためだけです!!』
『あっはは、こいつらに何言っても無駄さ。紋章つかいの所業に何一つ口出ししなかったような奴らなんだからねえ』
 サヴェイジが楽しげに、しかしそれでいてどこか冷徹な響きを伴った口調で言葉を吐き出す。
『……本当の仲間なら、相手が間違っていたら止めるものさ。それもできなかったような雑魚は……とっとと処理しちまうに限るねえ!』

 風が通り過ぎた、と、ヴァルキュリアは感じただろうか。
 だが、その直後に襲い来るものは一瞬の灼けるような苦痛と、速やかなる意識の断絶。
 残像さえ見えぬほどの超高速で飛び過ぎたシャミとサヴェイジが己を切り裂いたのだと知る時間さえ与えられずに。

「速いっ!?」
 ヴァルキュリアたちに身構える時間など与えられようものか。龍神シャミと天地に響くように哄笑する魔剣サヴェイジは時の狭間に舞うがごとく峻烈さで次々と敵を斬り伏せていく。

「くっ、何をやっているの、みんな、数ではこっちが上なのよ! 取り囲んで押しつぶすのよ!」
「そうはいかないよ!」
 シャミは縦横無尽千変万化に天を駆け、ヴァルキュリアたちに万全な体制を取らせない、さもあろう、なぜなら!
『シャミさん、左後方から来ます!』
「おっけー!」
『シャミ、右前方に展開しようとしてるよ』
「りょーかいだよ! サヴェ姉、光線で牽制して!」
 シャミとサヴェイジ、そして紋章の三人の知覚が全周囲をもれなく把握しているのだ。ヴァルキュリアたちは慄然とする、気が付けば、シャミたちを追い詰めるどころか、自分たちが一か所に追い込まれていたと知って!

「さあ、そろそろとどめだよ! ──極天神楽・十一の剣!!」
 
 瞬間──世界が軋み、悲鳴を上げた。
 剣が襲い来る。
 ヴァルキュリアたちは確かにそれを見、それを認識し、そしてそれを回避した。
 した……、はずだった。
 だが。

「がああああっ!!??」

 血煙を上げて倒れ伏したヴァルキュリアたちの姿が、ありうべきではない事実が起きたことを示していた。
 ヴァルキュリアたちは剣をかわしたのだ。確かに。
 だが、もし……『かわしたはずの剣がその未来を切り捨てて追撃してきた』のならば?
 そう、それこそがシャミの十一の剣! 敵の未来そのものを書き換える刃……!

「|蹉跎歳月《サタサイゲツ》っ!!!!」

「そ、そんな馬鹿な!?」
 ヴァルキュリアたちは驚愕する間もない、なぜなら。
「極天神楽・十二の剣! |陽輪龍舞《ヨウワリュウブ》っ!!!」

 おお、その剣舞は……終わらぬのだ! 飛翔しながらシャミの振るった剣はそのまま超越次元の軌跡を描き虚無の果てからヴァルキュリアたちの意識を引き裂いて──
「第一の剣! 天舞っ!!!」
 さらに一の太刀へと連関する! 天の舞にして天の武たるそれは連続技というべきものではない。連続というのなら、それは単に個別の技芸を続けるというだけに過ぎぬ。だが、シャミの振るうその太刀は、すべてを一つに帰し一つに含み、円環の無限の中に無窮無限の可能性を秘めし終わりなき極意であったのだから!
「二の剣! 日輪! 三の剣! 銀神炎車!」
 三は四を生み四は五を導き五は六の礎となり、ここに久遠の天剣にして絶刀が叩き込まれる! なすすべもなく、ヴァルキュリアたちはただその剣風の前に倒れ伏していくだけの木偶と化すしかなかった。

『す、凄いです、シャミさんのこの剣は……』
『ああ、一の剣から十二の剣がつながって永遠に途絶えない、まさに……無限の時が巡り来たって日がまた昇るかのようだねえ』

 ヴァルキュリアたちを跡形もなく切り裂いていったシャミの剣に、紋章が感嘆の吐息を漏らし、それにサヴェイジも嬉し気に応じる。
 ……しかし。

「こ、これで……おしまいっ! ふわぁ……」

 最後のヴァルキュリアを倒すと、シャミは人間の姿に戻り、フラフラと座り込んでしまった。
『シャ、シャミさん!? 大丈夫ですか!?』
「だいじょぶ……でも……おなかすいたあ」
 小さなお腹を抑えてしゅんとなるシャミに、サヴェイジがくすくすと笑う。
『普通の猟兵なら一度の戦いに一回しかユーベルコードは使えないからねえ。それなのにシャミは12回以上のユーベルコードを使ったんだから、そりゃ疲れるしお腹減るねえ』
「うう……まだ修行が足りないってことだね。帰ったら速攻、修業の続きだよ! サヴェ姉、付き合ってね! それに……」
 と、シャミは、ふわふわと浮かびながら自分を心配そうに見つめる紋章ににっこりと微笑みかけた。

「紋章さんも、これから一緒に頑張ろうね!」
『はい、こちらこそよろしくお願いします! ──|シャミ姉《・・・・》!』

 嬉しそうに答えた紋章に、シャミは一瞬ぽかんとした表情を浮かべると、我に返って気恥ずかしそうな表情をサヴェイジに向けた。
「はわわ、サヴェ姉、……私、お姉さんだって」
『はは、良いじゃないか、今の戦い、なかなかのお姉さんぶりだったからねえ』
 サヴェイジの声に、シャミも紋章も楽しそうな笑い声を響かせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年06月17日


挿絵イラスト