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オムネス・プロ・ライフ

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #戦後 #第二層 #月光城 #【Q】 #月の眼の紋章

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#【Q】
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●月光城の主
 己の瞳に映るもの全てが憎悪の対象だった。
 滅びた全てに贖う術を持っていなかったから。今も尚生きて世界に在る、という事実だけが彼女を苦しめる。
 誰も彼もが憎い。
 生きているということが憎い。
 己の国の全てが滅びて、誰も彼もがいなくなってしまったというのに。
 他の誰かは生きているということがたまらなく許せない。

 じゃらりと音が響く。
 それはまるで彼女に付き従う葬列の棺のようであったが、事実ではない。
 光か輝く鎖は数十連なり、その内部に人間を閉じ込めている。
 そう、それがなんとよばれているのかを知る者がいる。
 |『人間画廊』《ギャラリア》。
「『月の眼の紋章』が私に告げる」
 輝く鎖を手にした『殺戮の姫君』は遮るもののない血管がはびこる大地――ダークセイヴァー世界第二層にありて、空を見上げる。
 そこにあるのは『六つの赤い月』だった。
「どうしても欲しい。それが欲しい、と」
 彼女は天に、天井に向かって手を伸ばす。
 それが届かぬと知りながらも手を伸ばす――。

●戦後
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。闇の救済者戦争が集結しましたが、オブリビオンの胎動を予知しました」
 彼女の言葉に猟兵たちは頷く。
 常闇の世界、ダークセイヴァーを巡る大いなる戦いは猟兵達の勝利で幕を閉じた。
 だが、未だ多くの謎が残っている。
 猟兵たちが禁獣『ケルベロス・フェノメノン』との戦いで入手した|小剣《グラディウス》の研究もまだ進んでいない。
 戦後のオブリビオンたちの胎動が、これらの研究の進行に影響を及ぼすかもしれない。ならばこそ、猟兵たちは今日もまた戦いの場へと歩まねばならないのだ。

「確かにあの|小剣《グラディウス》が何を示しているのかはまだわかりません。ですが、戦後のダークセイヴァーに未だ存在するオブリビオンの企みを打破することで研究が推し進められるかもしれません」
 そして、彼女が示したのは闇の救済者戦争において初めて到達した積層世界の第二層。
「すでに聞き及んでおられるかもしれませんが、この第二層は大地の全てが血管で構成された異形の大地。『腐敗の王』語る『これまでこの世界で流された、全ての血液』が吸い上げられた場所でもあります」
 この異形の大地に、これまで第五層にて『第五の貴族』の干渉すら阻み、『月光城』にこもっていた謎のオブリビオンが動き出し、第二層に集結しつつあるのだという。
 彼らの目的は判然としていないが、その身に『月の眼の紋章』を宿し、凄まじい戦闘力を持っていることが判明している。

「『月の眼の紋章』の脅威は、一度戦ったことがある方もいらっしゃる通り、戦闘力を『66倍』に引き上げる恐るべき力です。戦うには、その紋章の力への対処が必要となるでしょう」
 即ち、まともにぶつかって勝てる相手ではない、ということだ。
 だが、猟兵たちは知っているだろう。
『月の眼の紋章』は、『人間画廊』と呼ばれるクリスタルの内部に閉じ込められた人間たちを解放する度に弱体化し、半分を解放されると完全に効果を失うのだ。
 まずはオブリビオンが鎖で繋いでいる『人間画廊』から人々を開放することが鮮血となるだろう。
 それ以外にも紋章そのものから飛び出す『棘鞭』への対処も、通常のユーベルコードと同時に行わなければならない。

「それだけなのならばよかったのですが……」
 ナイアルテの瞳が憂うように猟兵達の前でふせられる。
 彼女が見た予知は、『月光城の主』が第二層に出張ってきただけではないことを知らしめる。
「例え、皆さんが『月光城の主』たる『殺戮の姫君』を打倒しても、さらに強大な力が迫るようなのです……それが『月光城の主』に注がれ、再び皆さんに襲いかかってきます」
 それがどれだけ脅威なのかは言うまでもない。
 だが、同時に光明でもあると彼女は言う。
「強ですが、大な力に振り回されている、とも言える状態でもあるのです」
 ならば、そこが正念場であると言える。
 猟兵たちは覚悟を決めて戦場へと転移していく。
 多くのことをなさなければならない。誰かを救うということは、己のみを顧みないということでもある。
 だが、それでも誰かを救わんとする者の身を案じることナイアルテはせずにはいられない。それは他の猟兵たちだって同様だろう。
 だからこそ、ナイアルテは頭を下げ、見送るのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はダークセイヴァー戦後シナリオになっております。

 ※戦後シナリオになっているため、二章構成です。

 闇の救済者戦争の勝利し、『ケルベロス・フェノメノン』との戦いで得た|『小剣』《グラディウス》の研究が進行している最中、第二層に第五層の『月光城の主』とよばれる謎に包まれたオブリビオンたちが集結しつつあるようです。
 今回は、この第二層に現れた『月光城の主』を打倒しなければなりません。

●第一章
 ボス戦です。
 何も遮るもののない『血管の大地』で『月光城の主』、『殺戮の姫君』との戦いになります。
 彼女は数十に及ぶ『空中を浮遊する、内部に人間を閉じ込めたクリスタル』と輝く鎖で繋がっています。
 このクリスタルは|『人間画廊』《ギャラリア》よよばれ、体に融合した『月と眼の紋章』のもつ『戦闘力66倍効果』のエネルギー源になっています。
 このクリスタルから囚われている人々を開放する度に弱体化していき、半数を解放した時点で効果は無効されます。
 ですが、通常ユーベルコードと同時に『月の眼の紋章』から飛び出す棘鞭の攻撃が迫ります。
 此れに対処しながら無効化を狙わねば、勝機はありません。

●第二章
 ボス戦です。
 第一章で『殺戮の姫君』を打倒した皆さんですが、彼女は最期の力を振り絞って『異形の身体部位』をいくつもはやしたオブリビオンへと生まれ変わります。
 それは所謂『闇の種族』と同等の力を得ている状態です。
 ですが、急激な強化の代償に力の制御が上手くできていません。
 完全な状態に至っていないため、『欠落』をみつけなくとも倒せる状態です。
 不完全な状態の今こそが撃破可能な最後のチャンスであると言えるでしょう。これを打倒し、『月光城の主』たちの集結を阻みましょう。

 それでは、苛烈なる戦いに次ぐさらなる戦いに身を投じる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『殺戮の姫君』

POW   :    罪を償いなさい
【王族の魔導杖から放たれる火災旋風】が命中した対象を燃やす。放たれた【超高温の聖なる蒼】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    今こそ叛逆の時
【未来予知能力のある黄金のナイフ】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、未来予知能力のある黄金のナイフから何度でも発動できる。
WIZ   :    今一度立ち上がり、戦うのです
【魔力が付与された剣・槍・弓・杖】で武装した【亡国の王家直属近衛騎士団】の幽霊をレベル×5体乗せた【高い戦闘能力を持つ幽霊炎竜】を召喚する。

イラスト:ミムミリ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニトロ・トリニィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『殺戮の姫君』の胸に抱く紋章。
 満月と眼をあわせたかのような形をしたそれより蠢くのは、棘鞭。
 身に融合した紋章の力が齎すのは圧倒的な戦闘能力。その力は実に『66倍』。
 これこそが『第五の貴族』の支配干渉すらも阻む力の源。
 いや、その紋章のエネルギー源は、彼女の手にある輝く鎖に繋がれた無数のクリスタル、『人間画廊』に囚われた人間たちであった。
 だが、そんなことを彼女は気にもとめない。
「どうして、私の国は滅びたのに。私の臣民は須らく死に絶えたのに。なのに、何故、私の目には動く者たちが映るの? 私の愛したものはすべて死に絶えたのに。なのに、私が愛していないものは存在している」
 それが許せないと、彼女の憎しみは際限なく広がっていくようだった。
 ああ、と息を吐き出す。

 それは安堵でもなければ、絶望でもなく。
 ただ只管に狂気齎す吐息。
「許せない。だから、どうしても欲しいの。それが、欲しいの」
 天に伸ばすは『六つの赤い月』。
 されど、天に手は届かず。
 故に、彼女の瞳は狂気に染まったまま、己の目の前に現われる己以外の生命を憎しみでもって射殺さんとする――。
村崎・ゆかり
第五層にいるはずの月光城の主が第二層にか。何の前触れかしらね。
まあ一つ一つ潰していきましょうか。

摩利支天隠形法で姿を隠して月光城へ侵入。気付かれないように城主と人間画廊のところまで。

相手は狂人。見つかるとクリスタルごと攻撃しかねない。
それを防ぐためにも、姿を隠したまま、彼女の目に映らないクリスタルから氷の「属性攻撃」でクリスタルを脆くして中の人を救出。

十分な数のクリスタルを解放したら、城主と死合いましょう。
「火炎耐性」で蒼炎を凌ぎながら、薙刀で魔導杖と打ち合う。杖を「なぎ払い」、彼女の胴を「串刺し」にするわ。
棘鞭は「オーラ防御」を集中させた片手で巻き取って、彼女の動きを制限するように。



 嘗て、ダークセイヴァー第五層において月の満ち欠けに反応する城塞があった。
 何らかの外敵へと対抗するために築かれたと思われる城。
 それが『月光城』であった。
「第五層にいるはずの『月光城の主』が第二層にか。何の前触れかしらね」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は血管が這うような大地、第二層に降り立ち、そこに集結しつつあるという『月光城の主』とよばれる謎多きオブリビオンの存在を見やる。
『殺戮の姫君』。
 彼女の身に融合しているのは紋章だ。
『月と眼の紋章』――これもまた猟兵たちはすでに知る所である。

 その効果は戦闘能力を実に『66倍』にまで引き上げる力を持ち、紋章から棘鞭を飛ばしユーベルコードと共に攻撃を加えてくるのだ。
「消えなさい。全て。全て私の前から私の愛する生命以外の全てが燃え尽きてしまうように」
 ゆかりは己に迫る蒼炎を見やる。
 いや、それだけではない。あの棘鞭が一斉にゆかりへと迫るのだ。
「遮るものがないっていうのも第二層の面倒なところよね!」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに煌めく。
 後手に回るが、しかし己を揺らめく陽炎で覆う。
  摩利支天隠形法(マリシテンオンギョウホウ)によって姿を隠したゆかりは、視聴嗅覚で感知されない。
 同時に己の身を覆う揺らめく陽炎は、触れた敵から正常な判断力を奪う。

 棘鞭が触れれば、それだけで『殺戮の姫君』はゆかりが何故消えたのかということに対して判断が効かなくなるだろう。
「クリスタル……あれが|『人間画廊』《ギャラリア》……!」
 急がなければならない。
 敵が正常な判断力をなくしているのならば、己の姿を捉えれば人間が囚われているであろう『人間画廊』のクリスタルごと攻撃しかねない。
 あのクリスタルこそが『月と眼の紋章』の効果である『戦闘能力66倍』の源なのだ。
 吹き荒れる蒼炎が邪魔だてする。
 例え、己の姿がみえなくても『殺戮の姫君』は狂乱するように炎を噴出させ続けているのだ。

「本当に面倒なことを」
 ゆかりはクリスタルを砕く。
 その音を耳ざとく聞きつけた『殺戮の姫君』の瞳が煌めく。
「みえなくても存在していることが許せない。私の臣民ではないものが、私の前にいる。私の臣民が死しているというのに、私の臣民以外が生きていることなど許せるはずもない」
 蒼炎が『人間画廊』たるクリスタルを砕こうとしていたゆかりへと襲いかかる。
 戦闘力が『66倍』にまで引き上げられている力は圧倒的だ。
 この第二層という血管だけが覆う大地において、遮蔽物がないというのは厄介そのものだ。
 たとえ、己の姿が感知されないのだとしても、吹き荒れる炎はゆかりを襲う。

「これ以上は無理ね……けど!」
 ゆかりは己を探して蠢く棘鞭を巻き取るように薙刀の柄を回転させて『殺戮の姫君』の体勢を葛さんとする。
 強化の力が削がれてはいるが、まだ充分ではない。
 開放された人間たちを死なせないためにもゆかりは、『殺戮の姫君』を打倒するのではなく、人間たちが巻き添えを食わぬように立ち回る。
「こっちへ。と言ってもすぐには動けないわよね……!」
 驚異的な戦闘能力に加えて、『人間画廊』の破壊を試み、また囚われている人々を庇わなければならないという状況。
 一歩間違えば犠牲が出る。
 だが、ゆかりは己の手に届く範囲だけでもと懸命に蒼炎吹き荒れる大地を生命救うために走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
ならこちらも。やっとオブリビオンフォーミュラを倒したのに、日々を懸命に生きる人々は相変わらず命を弄ばれて、お前達はいまだに我が物顔で蔓延ってます。
許しがたい事です。

果実変性・ウィッシーズダンサーに変身しつつアマービレでねこさんを大量に召喚。
ねこさん達には結界術で各自自衛してもらいつつ、人々をクリスタルから解放してもらいましょう。人手は多ければ多いほど良いのです。

わたしは結界を展開しつつ第六感と心眼と気配感知で敵と棘鞭の動きを見切り、攻撃を回避。

わたしがこのユーベルコードを選んだ時点でお前のユーベルコードが効力を発揮する未来はなくなりました。

十分に人々を解放したら全力魔法を紋章に叩き込みます。



 砕けるクリスタルの破片から人々が落ちる。
 それは|『人間画廊』《ギャラリア》とよばれる『月と眼の紋章』の力の源とされていた人々であった。
 だが、まだ戦闘能力を『66倍』する効果は充分に減退されていない。
 宙に浮かぶクリスタルからつながる鎖を手に『月光城の主』である『殺戮の姫君』は、その力を振るうように手にした黄金のナイフの刀身に未来を見る。
「許せるはずもない。私の臣民が、愛する人がいない世界など許容できるはずがない」
 彼女は奪われた。
 国を、民を、愛する人を。
 その痛みは理解できるものであったかもしれないが、それを誰かに押し付けることを理解する気はおきなかっただろう。

 少なくとも七那原・望(比翼の果実・f04836)はそうであった。
「やっとオブリビオン・フォーミュラを倒したのに」
 眼帯に包まれた視界は黒。
 けれど、それでも望は見据える。ユーベルコードの煌めき。
「日々を懸命に生きる人々は相変わらず生命を弄ばれて、お前たちはいまだに我が物顔で蔓延ってます」
「この光景は私のもの。私が求めたものが此処にあるからこそ、私はいざなわれたにすぎない。私は、私の望むものが目の前にない現実を受入れない」
 その言葉に望は歯噛みする。
「許しがたいことです」
 そう、許せない。
 赦して良いことではない。

 どれだけの哀しみがあるのだとしても。
 それだけは赦してはならないことだと望は知るからこそ、望む。
「わたしは望む……果実変性・ウィッシーズダンサー(トランス・ウィッシーズダンサー)!」
 迫る棘鞭を直感で先読みし、回避する。
 同時に彼女が駆け出した足跡から溢れるようにして振るわれたタクトから煌めく大量のねこさんたちが大地を走る。
「ねこさんたち、『人間画廊』から落ちた人達をお願いします」
「にゃ!」
 その言葉にねこたちは走る。
 結界術を手繰り寄せ、先行した猟兵が砕いたクリスタルから開放された人々を護る。人手が多ければ多いほうがいい。
 あの『月と眼の紋章』の効果は言うまでもなく破格。

 そして、それを打破するためには、あの『人間画廊』たるクリスタルを砕かなければならない。
「消えて欲しい。私の前から、私の愛する人と臣民以外の全ての生命が」
「そうして、あなたを迎えるのは過去でしかない。今を生きて、未来に進む人達を害して良い理由にはなっていないはずです」
 踊るように望が迫る棘鞭を躱す。
 放たれる戦輪が二つ、宙を翻り『殺戮の姫君』へと迫る。
 それを弾きながら彼女は黄金のナイフを望へと振り下ろさんとする。だが、彼女には未来がみえていない。
 何故なら、望のはなった戦輪は超常の力を吸収する。

 そう、ナイフであの一対の戦輪を弾いた瞬間に、いや、望のユーベルコードの発動を赦した瞬間に、『殺戮の姫君』は彼女のユーベルコードで未来を見る力を吸収されていたのだ。
「みえない。私の臣民たちが、愛する人がいるはずの光景がみえない。何故、何故、何故何故何故!?」
「その未来はなくなりました。だから、みえないのです。あなたが人々に強いた、弄んだことが、それです」
 望はクリスタルを砕く魔法を叩きつけ、さらに全力魔法でもって『殺戮の姫君』を打ち据える。
 そう、人々は充分過ぎるほどにこの地獄を味わった。
 漸く開放される。
 そのはずなのだ。
 けれど、それが成されないというのならば、望は己のユーベルコードを発露し、望み続ける。
 誰かのために望むことは、きっと祈りに昇華し、大いなる敵すらも穿つと信じるが故に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

歌咲神姫・プリンセスローズ
「祈りましょう……この世界の平和と希望を導く為に」

プリンセスとしての能力、プリンセス魔法を操って華やかで優雅に闘います。
ユーベルコード「ドレスアップ・プリンセス」を使用し、プリンセスドレスをパワーアップさせ更に分類「プリンセスハート」の武器全てを強化して戦いを挑みます。

何も遮るものが無いのでしたら却って好都合です。
プリンセスキャッスルをLv×5㎞/hで飛翔させ、プリンセスバリアで覆い、敵の攻撃を耐えつつ
お城に備えられたいくつもの大砲で敵軍と人間画廊を攻撃します。

その間にハート・オブ・プリンセスの想造具現魔法で生み出した騎士団をプリンセスソードとプリンセスシールドで武装させて救助者の奪還します。



 無数に広がる大地は何も妨げるものがなかった。
 血管が張り巡らされた大地。
 それがダークセイヴァー第二層たる世界であった。
 この大地には血が吸い上げられている。『腐敗の王』がいうところのこの世界で流された全ての血が此処に集められているのだという。
 一体どれだけの血がこの世界で流れただろうか。
 勇ましきものの血も、弱き者の血も。
 須らく例外なく、吸い上げられているというのならば、この大地は悍ましき大地であったことだろう。
「祈りましょう」
 だから、歌咲神姫・プリンセスローズ(アリスオラトリオ覚醒神の国民的スタアプリンセス・f38473)は祈る。

 大いなる戦いは終わりを告げた。
 猟兵達の勝利で終えてなお、それでもオブリビオンの存在は滲み出す事がなくなったとは言え、脅威として残っている。
 第五層の『月光上の主』、その『殺戮の姫君』が掲げるは、杖。
 その杖が煌めくのはユーベルコード。
「私の愛する者が誰一人としていないのに、どうして他のものがいるのです」
 彼女のユーベルコードに寄って呼び出されたのは、幽霊炎竜。
 巨大な体躯に乗るは、彼女の嘗ての臣民達。
 亡霊に成り果てて尚、それでも『殺戮の姫君』に舌が薄型にプリンセスローズは頭を振る。

 手繰る魔法は華やかなりし、優雅そのもの。
「この世界の平和と希望を導くために」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 ドレスアップ・プリンセス。それが彼女のユーベルコードの名であり、彼女の体を豪華絢爛なドレス姿に変える。 
 己の胸の高鳴りと共に無数のプリンセスハートが飛び出す。
「何も遮るものがないのでしたら却って好都合です」
 彼女は飛翔する。
 共にあるは巨大な魔法の城。
 大砲を備えた城壁ごと飛ぶ城と、己の力で生み出した騎士団が走る。
 戦場に満たされているのは無数の騎士たち。

 だが、そんな騎士たちを蹴散らすのが幽霊炎竜に乗る『殺戮の姫君』の操る騎士たちであった。
 共に姫君と仰ぐものがいる。
 互いの力が激突するのならば、未だクリスタル……|『人間画廊』《ギャラリア》によって力を得ている『殺戮の姫君』の方が上だろう。
 さらに『月と眼の紋章』より飛ぶ棘鞭が次々と騎士たちを打ち据えていく。
 大砲が火を噴き、砲弾が飛ぶ。
「私の愛したものが存在している。私の愛は私を救ってくれる。私が求めたものを手に入れるために助けてくれる。だから!」
「いいえ、あなたの目に映るのはあなたの愛したものではありません」
 それはユーベルコードに寄って生み出されたもの。
 己が魔法で創る騎士たちと何ら変わりないのだ。

 かつての『殺戮の姫君』が愛した者たちはもういない。
 二度とも戻ることはないのだ。それがどれだけ哀しみに満ちている行いだとしても、それでもプリンセスローズは飛ぶ。
 彼女の手に繋がれた鎖。更につながるクリスタルを砲撃で持って砕きながら、敵の『月と眼の紋章』を弱体化させていくのだ。
 だが、それでもまだ足りない。
 無数にあるクリスタルは、『66倍』にも至る力をもたらしている。
 棘鞭が飛ぶ度に己の張り巡らせたバリアに亀裂が走っていく。だが、止まらない。
「祈ると決めたのです」
 自分がそうすると。
 プリンセスローズは何のために祈るのか。

「平和と希望を導くために」
 そのために祈り、戦うのだと示すように、彼女の力が迸り、『人間画廊』たるクリスタルを砕いていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローレンス・ナイチンゲール
要救助者を発見。これより救助を開始します。
安心してください。私が必ず助けます。どんな手を使ってでも!!

UC発動から1分40秒以内に全てを片付けます。
UC『神は此処に集いたる人々の前に厳かに名に誓わん』を使い、あらゆる傷病と不幸を無力化します。
武装救急車に乗って騎乗突撃し、弱体化した敵を跳ね飛ばし進みます。医療鎖鋸でクリスタルを叩き割り、救助活動を行います。車内へ回収し、早急に離脱します。
私は看護師です。その為、敵の撃破よりも傷病者の奪還を優先します。しかし、私の救命活動の邪魔になるのであれば例え味方でも容赦はしません。

私は、今を生きる人々の為に戦います。ええ、あなたを殺してでも。



 空中に浮かぶクリスタル。
 その中には捕らえられた人間たちがいる。彼らは全て『殺戮の姫君』の身に融合した『月と眼の紋章』のエネルギー源にされている。
 そう、絶大な効果を持つ『月と眼の紋章』、その戦闘力を『66倍』にする効果は『人間画廊』とよばれるエネルギー源があってこそなのだ。
 だからこそ猟兵たちはクリスタルを破壊することを試みる。
 だが、『殺戮の姫君』はもとより強大なオブリビオンである。
 呼び出された幽霊炎竜より騎士団があらゆる武装を持ってクリスタルの破壊を阻むのだ。
「要救助者を発見」
 フローレンス・ナイチンゲール(白き衣の天の使いにしてクリミアの看護神・f40415)はふわりと浮かぶような白い羊毛めいた髪を揺らす。
 羊の角が鈍く光を放つ。
 その瞳に有るのは純然たる意志だった。

「これより救助を開始します」
 吹き荒れるユーベルコードの輝き。
 幽霊炎竜から炎が噴射され、騎士団からは手にした武器での攻撃が苛烈に彼女に迫る。
 しかし、彼女は止まらなかった。
 足を止めることは己が助けることを諦めることだ。ならばこそ、彼女は己の意志で、それを成す。
「我が生涯を清く過ごし、我が任務を忠実に尽くさん事を。我は総て毒有る物、害有る物を絶ち、我が手に託されたる人々の幸の為に身を捧げん」
 彼女のユーベルコードが煌めく。
 誓う言葉は正義であるだろう。
 故に己に迫る炎は弱まっていく。
 『神は此処に集いたる人々の前に厳かに名に誓わん』(ザ・フローレンス・ナイチンゲール・プレッジ)とする誓詞は己に迫るあらゆる災禍を阻む。

「安心して下さい。私が必ず助けます。どんな手を使ってでも!!」
 彼女のユーベルコードは己の生命を消耗する。
 僅か二分に満たぬ時間しか発動できない。
 それを越えたのならば、彼女の生命はtう斬る。だが、それでも構わない。
 武装救急車を駆る彼女は吹き荒れる炎も、迫る攻撃もものともしなかったし、『月と眼の紋章』から放たれる棘鞭の群れすらも気に留めなかった。
 武装救急車の走行が剥がれようと、穿たれようと関係なかった。
 ただひたすらに彼女が救わなければならない者のもとへと疾く駆けつけるためだけに彼女は進む。
「私の愛するものは救われなかったのに、他の誰かが救われることなんてあってはならない。私が救えなかったものを誰かが救うことも!」
『殺戮の姫君』の言葉が響く。
 狂気に染まった言葉だ。
 けれど、フローレンスは構わなかった。

 彼女が目指したのは救助だ。
 亮平たちのユーベルコードによって破壊されたクリスタルから放り出された人々を救う。ただそのためだけに彼女のユーベルコードは輝く。
 彼女は助けたいのだ。
 全てを救いたいのだ。 
 それが不遜たる意志であったとしても、叛逆めいた言葉はただ只管に彼女のうちにある。何もかもそのためだけに彼女は走る。
「私は、今を生きる人々の為に戦います」
「私の愛する者たちは!」
「ええ、あなたを殺してでも」
 フローレンスと『殺戮の姫君』の言葉は噛み合わない。
 猟兵とオブリビオンであるからではない。

 決定的に互いの意志が噛み合っていない。故にフローレンスは己のユーベルコードの時間制限が尽きるその時まで懸命に手を伸ばし続け、クリスタルから開放された人々を救い続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サマエル・マーシャー
戦争でも人間画廊での救出任務に参加しましたが…まだこんなにも囚われた人々がいたのですね。今お救いします。

囚われた人々全員を対象にUCを発動。
彼らの救われたいという願いはあそこから解放されること、彼らを閉じ込める存在が倒されることにより叶うはず。
それにより創造されるご都合主義便利アイテムは…あれらのクリスタル全部を一気に撃ち抜けるマルチロック式のサイバーザナドゥ製銃火器群。

武器が出たら範囲攻撃で一気にクリスタルを破壊。神の毒が込められた羽を周囲に飛ばして人々が即座に逃走を選べるように心を鼓舞させながら、そのまま戦闘に移行。数十のクリスタルも一気に撃ち抜く便利武器で敵の軍勢も撃ち抜いていきます。



『殺戮の姫君』は『月と眼の紋章』と融合している。
 蠢くように棘鞭が走り、迫る猟兵たちを打ち据えんとしている。
 その力の凄まじさは未だ健在である。
『66倍』にも戦闘能力を引き上げる力。その力の源は|『人間画廊』《ギャラリア》とよばれるクリスタルに人々を捕らえているがためだ。
 人間をエネルギー源として紋章の効果を保っている。
 猟兵達のユーベルコードが煌めく度に、クリスタルが砕かれていく。 
 だが、まだ足りない。
「私の愛する人達がいない。私が愛しているのに、どうして私の」
『殺戮の姫君』は叫ぶ。 
 叫びながら、かつての亡国の騎士団たちを呼び出す。
 幽霊炎竜が放つ炎が戦場を埋め尽くしていく。遮蔽物のない第二層。そこにありて、あの火力は厄介そのものだった。

 けれど、サマエル・マーシャー(電脳異端天使・f40407)にとって、それは些細な問題であった。
 闇の救済者戦争において同じように『人間画廊』に囚われた人々を救い出す戦いに参加したが、未だ囚われている人間が多くいるという事実に彼女は嘆くように瞳を伏せる。
「今、お救いします」
 開いた瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女の霊的サイバースペースから救われたいと願う者がいる限り、彼らを救うために生み出されるご都合主義に塗れた便利アイテムを取り出す。

 それはサイバーザナドゥ製の銃火器群であった。
「私に全て任せて下さい」
 アンチクライスト・マザーマシン。
 それが彼女のユーベルコードの正体である。
 願望に応えるユーベルコード。サマエルが救いたいと願い、人々が救われたいと願った時現われる便利アイテム。
 ご都合主義に塗れている。
 だが、それがなんだというのだ。言葉ではなんとでも言えるだろう。謗ることも、口さがなく言葉を吐くこともできるだろう。
「それでも救えることができるのです。
 空中にヘッドアップディスプレイが浮かぶ。マルチロック式の銃火器はサマエルの視線で目標を定める。

 放たれる弾丸が一気に宙を走る。
 一直線に。最短距離で最大の火力を持って『人間画廊』たるクリスタルを砕く。
 破片が飛び散る最中、人々が落ちてくるだろう。それをサマエルは己の翼より放たれる羽根で触れる。
 彼女の羽根は神の毒。
 心を変質させる薬物が染み込んでいる。
 即ち、それは活かすも殺すもサマエル次第なのだ。
「立ち上がって下さい。逃げて下さい。誰もあなたの背中を切りつけさせはしないでしょう。生きているのなら走ることもできるはずです」
 薬物に寄って一時的に心を奮い立たせるとサマエルは人々の前に立つ。
 これ以上先には行かせないと迫る棘鞭を銃火器の放つ弾丸でもって押し止める。

 手にしているのはご都合主義のアイテム。
 けれど、それを咎める者はいない。誰だって救われたがっている。人は己で己を救うこともできるだろう。
「私に救わせて下さい。それが私の」
 願いではなく。
 在り方であると示すようにサマエルの瞳はユーベルコードに輝く。
『救世主』ではなく、『救世主らしき何か』であっても、誰かを救うことができると示すように彼女の背中に護る人々は瞳伏せて、一時の祈りの後に駆け出していく。
 その背後に棘鞭は入らない。
 サマエルがいるからだ。
 彼女は手にした銃火器の引き金を引き続ける。クリスタルを破壊し、迫る『殺戮の姫君』と彼女が率いる騎士団を押し留め続けた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・スペルティナ
貴女はその愛した臣民の顔や名は憶えていますの?
そうでないのなら、彼女は憎しみに囚われ他を欠落させてしまった、ただの怨霊ですわ

その憎しみ、見過ごすつもりもありませんが、今は|人間画廊《あっち》ですのよ!
とはいえ、時間稼ぎやからめ手は苦手ですのよ、だから……こうするんですわ!

相手を対象にUCを使ってから血晶石を盛大にばらまいて呪詛の罠で足止めを!
今は戦闘よりも救助優先ですわ!距離をとって見切っての攻撃回避に専念しつつ、相手との位置関係を極力崩さないよう最後尾近くの結晶から狙い、鈍器状に変形させたブルートヴァッフェでたたき割りますわよ!

後はUCの効果が生きているうちにヒルフェでの一撃を狙いますわ!



 憎しみは、哀しみは、理由を忘れてしまったのならば埋めがたい虚となる。
 それは人であるから生じるものであるのか。
 それとも生命であるからこそ生まれるものであるのか。
 感情があるからこそ、言葉があるからこそ、人は斯様なる心に振り回されなければならないのか。
 オブリビオンである『殺戮の姫君』にとっても、それは変わらぬことであっただろう。
「私の臣民は、愛したものは、どこに」
 彼女の嘆きは哀しみに満ちている。
 だが、どうしようもないことなのだ。
 奪われてしまった生命は戻っては来ない。
 この積層世界であるダークセイヴァーにおいては、死はさらなる苦しみの始まりでしか無い。

 だからこそ、メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は告げる。
「貴女はその愛した臣民の顔や名は覚えていますの?」
 その問いかけに『殺戮の姫君』は止まる。
 彼女が止まれど、しかし彼女の身に融合した『月と眼の紋章』から這い出す棘鞭は止まらない。
 未だ『人間画廊』によって支えられる戦闘力『66倍』の効果は途切れていない。
 弱体化されてはいるが、しかし、まだ脅威であることに変わりはないのだ。
「覚えていますとも。きっと覚えています。覚えているはずです。覚えていないはずがに!」
「……貴女は憎しみに囚われ、他を欠落させてしまった、ただの怨霊ですわ」
 メリーは見過ごすつもりはなかった。
 だが、今それを成すためには捨て置けにことがある。

 そう『人間画廊』である。
 宙に浮かぶクリスタル。
 あの中に人間たちが囚われ、エネルギー源にされているのだ。
「伝播する呪い(オマエモポンコツダ)は此処に」
 メリーの瞳がユーベルコードに輝く。
 それは、自身の呪い(ぽんこつ)とあらゆる行動に対する失敗確率を同値にするものであった。
 確かにメリーは時間稼ぎや搦手を得意とはしていない。
 何かやる度に必ず失敗してしまうし、どうあっても上手くいかないことばかりが連続してしまう。
 だから、このユーベルコードは強烈なのだ。

「値を同じくするというのならば、今の私と貴女は呪いにかかっているようなもの」
 彼女の掌からこぼれるようにして血晶石がばらまかれる。
 血に含まれる呪詛が炸裂するように戦場に満たされ、『殺戮の姫君』の足を止める。
「私と貴方が同じであると?」
「そうですわ。貴女は何をしようとも私と同じように失敗する。なら、こうするしかないんですのよ」
 メリーは自分の呪いを理解している。
 もしも、『殺戮の姫君』が何かをなそうとすればするほどに失敗してしまう。
 どうしようもないほどに彼女の血は呪われているから。

 がくりと、『殺戮の姫君』は足を取られる。
 この第二層にあるのは血管の大地ばかりだ。普段ならば躓くこともない何気ない段差ですら、今の彼女には越えることのできない壁となっているのだ
「どういうことです。これは」
「わからないでしょう。何せ、長年この呪いと付き合っているわたくしですら、克服できぬ呪いを今すぐに克服などできないのですわ」
 逆にメリーはこの呪いと過ごしてきている。
 長く、それこそ、上手くやり過ごす方法も知っている。
 その差異こそがメリーと『殺戮の姫君』の間に横たわるどうしようもないほどの溝なのだ。

 故にメリーは高くちび上がり、宙に浮かぶクリスタル――『人間画廊』を打ち砕く。
 ひび割れたクリスタルから開放された人々を抱え、メリーは走る。
「今は戦闘より救助優先ですわ!」
 そう、『月と眼の紋章』は『人間画廊』から人々が開放されればされるほどに効果を弱体化していく。
 今のままでは倒すことなできない。
 故にメリーは『殺戮の姫君』を打倒するよりも、『人間画廊』から人々を救うことを優先したのだ。
 猟兵の戦いは紡ぐ戦い。
 己が『殺戮の姫君』を打倒できなくてもいい。
「なんというぽんこつ具合……」
「の、呪いですわ! まるで、わ、わたくしがぽんこつみたいに言わないでくださいます!?」
 メリーはその言葉に抗議の声をあげながら、しかし、己の役割を果たすべく『人間画廊』のクリスタルを叩き割り続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

さてー、まあ放っておけるわけないんですよねー。
だから、私たちはここへ来たんですよ。(ぷきゅクエ返事あり)

そして…陰海月がUC使って踊りますね。楽しみますし。
ええ、これはコピーすれど使えませんよ。さらに、そちらはどうあがいてもゆっくりです。
だから、攻撃は見切って回避。さらに、漆黒風を投げますかー。一点を壊すように、ね?


霹靂「クエッ!」
躍りを楽しみつつ、捕まってる人を助けていく。
これが自分のできること。
陰海月「ぷきゅー」
ここでUC踊りで助けになるならば、踊るし光る。希望の光になればなー!
躍りながら避けていく。



 ダークセイヴァーを巡る大いなる戦い、闇の救済者戦争は猟兵の勝利をもって幕を閉じた。
 しかし、未だダークセイヴァーにおけるオブリビオンの蠢動が終わったわけではない。
 オブリビオン・フォーミュラの撃破は確かに骸の海よりオブリビオンが現われることがこれ以上無い、ということを示す。
 だが、残存するオブリビオンは別だ。
 そうしたオブリビオンたちが事件を起こすのならば猟兵たちは果敢に立ち向かう。
 そういうものなのだと馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その四柱の一柱『疾き者』は言う。
「ぷきゅ!」
「クエ!」
 そう返事をする巨大クラゲとヒポグリフ。

 その言葉に満足そうに『疾き者』は頷き、ユーベルコードの煌めきと共に巨大クラゲである『陰海月』が放つ輝きを見つめる。
「ええ、放っておけるわけないんですよねー。だから、私達はここへ来たんですよ」
「何が。今更来たところで私の臣民が喪われたということはかわらない。現実は変わらない。どうしたって変わらない」
『殺戮の姫君』が叫ぶ。
 彼女にとって、それは過去のことである。
 無論、『疾き者』たちにとっても同様であろう。
 変えられないのが過去だ。
 故に問答は無用であった。

 それは虹のように(ゲーミングカゲクラゲ)戦場を満たす。
 1680万色に輝く『陰海月』。
 その触腕がゆらゆらと揺れ踊る。
 それを理解できたのは猟兵達だけであったことだろう。『殺戮の姫君』は理解できていなかった。
 彼女の瞳に写っているのは、己の臣民と愛する者たち以外だけであったから。
「私に何を見せているのです。私が求めるのは、これじゃあない」
「ええ、そうでしょうねー。あなたは過去しか見ていない。今を見ていない。だから、『陰海月』のダンスを楽しめていない」
 故に、と『殺戮の姫君』の動きが鈍る。
 例え『月と眼の紋章』によって戦闘力を『66倍』にまで引き上げているのだとしても、動きを鈍らせるユーベルコードを前には意味をなさない。
 蠢く棘鞭も、まるで脅威にはならない。
 
「だから、体が思うように動かない」
 如何に手にした黄金のナイフが未来予知を齎すのだとしても、動きが鈍っている以上どう足掻いても『疾き者』が放つ棒手裏剣を躱すことも受け止めることもできない。
 放つ棒手裏剣は一点を穿つように放たれる。
 その間に『陰海月』と『霹靂』が『人間画廊』たるギャラリアを砕き、開放された人々を救出していく。
 彼らは一様にぐったりしていた。エネルギー源にされていたためだ。
 それを理解し『霹靂』の背に次々と『陰海月』が人々を載せていく。戦いの余波に巻き込まれないためには遠くに運ばなければならない。
「良いとも。そのまま往きなさい。此処は我等が抑えます故。人々の安全を第一にー」
『疾き者』がうなずく。

 いずれ、『人間画廊』たるクリスタルから人々が半数以上開放されれば『月と眼の紋章』は効果を失う。
 その時こそが『殺戮の姫君』を打倒する好機である。
 すでに半数近くまで人々が開放されている。
「ならば、あと数刻持ちこたえるのみですねー」
 己たちと異なり、『殺戮の姫君』はどうあっても『陰海月』の踊りを楽しめていない。
 しかし、それもあと僅か。
 ここが勝負どころだと『疾き者』は手にした棒手裏剣を投げ放つ。撃ち込まれた手裏剣のいずれもが一点を狙い続け、彼女の強固な肉体を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榊・霊爾
遠ざけられた月、だが秘匿されたワケではない
近い将来、手元に引き摺り下ろしてやるよ
だが、それは君の為じゃない

クリスタルに青鵥を【投擲】し、蓮角で小突いてクリスタルだけを割る
『諜報』で呼び出した八咫烏と視覚共有(気配探知)し、紋章からの攻撃を【見切り】つつ白鶺鴒ないし背黒鶺鴒で【受け流し】回避する
...少し小細工をする
回避しながら【存在感】を消した鵙のワイヤートラップを張り巡らせる(罠使い)
相手は私を仕留めようと必死だろう、それが仇となる
金のナイフを鋸刃にした蓮角で受け止め、圧し折る
あまり私に構わない方がいいぞ
鵙のワイヤーを一気に引き絞り、ワイヤーの内部に閉じ込められた相手を【切断】する



「遠ざけられた月、だが秘匿されたワケではない」
 榊・霊爾(あなたの隣の榊不動産・f31608)の見上げる先にあるのはダークセイヴァー第二層の天井。
 そこに浮かぶ赤い月だった。
『ライトブリンガー』の言葉は全て儀式魔術【Q】であった。
 その力によって赤い月は遠ざけられたようであるが、彼にとって、それは失望でもなければ絶望でもなかった。
「それを君も望んでいるのだろう」
 彼が対するは『殺戮の姫君』。
 彼女が求めているのもまた赤い月であるというのならば、遠ざけられた月を望む者同士手を取ることもできたかもしれない。

 だが、己と彼女は猟兵とオブリビオンである。
 互いに滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないのだ。故に霊璽は告げる。
「近い将来、手元に引きずり降ろしてやるよ。だが、それは君のためじゃない」
「私は私の臣民と愛する人のために」
 彼女の手にした黄金のナイフが煌めく。
 未来予知を齎すユーベルコードは、彼女の身に融合した『月と眼の紋章』より放たれる棘鞭と合わさり、驚異的な速度で霊璽を追い込んでいく。
『殺戮の姫君』の力の源は言うまでもなく『月と眼の紋章』である。

 そして、『月と眼の紋章』のエネルギ源は宙に浮かぶクリスタル『人間画廊』に閉じ込められた人々。
 その彼らを解放することが猟兵達の勝機につながる。
 これまで他の猟兵たちが開放し、弱体化させていたことが霊璽の幸いであった。
『66倍』にも戦闘能力を向上させる紋章の力と真正面から激突することなど不可能に近い。
 故に彼の瞳がユーベルコードに輝く。
「お前を見ているぞ」
 従者【諜報】(ヤタガラス)に寄って呼び出荒れるのは千里眼を持つ無数の八咫烏たち。
 それは戦場を取り囲むネットワークのように霊璽と視覚を共有し、己に迫る棘鞭の軌跡を多角的に捉えるものであった。

 無数の棘鞭を躱すことは至難の技だ。
 けれど、情報を得ることができるのならば、その軌跡からいかなる軌道を描くかを知ることができる。
 霊璽にとって、それは難しいことではなかった。
 躱し、位置取りを重ね、張り巡らせていく。
 それは己の指に装着された暗器より放たれたカーボンナノチューブワイヤーを持って罠とするものであった。
「私がどうして。私が何故喪わなければならなかったのか」
「さあな。どうしたって君は君のためにしか行動しないだろう。自分が思う以上に、君は君のいうところの臣民や愛する者というものに執着していないのさ。そうである自分にだけ興味があるから」

 だから、と霊璽は告げる。
 不可視のワイヤーが『殺戮の姫君』の足を絡め取る。
 だが、それで傾ぐわけではない。
「案外、丈夫な足腰をしている。だが、私に構いすぎたな」
 ワイヤーが巻き取られる。
 瞬間、『殺戮の姫君』の足首が寸断される。はね飛ぶようにして彼女の足が舞う。
 血が迸る。
 悲鳴が上がる。
「だから、言っただろう。自分のことしかみえておらず、私にばかりかまけていたから」
 転ぶのだと。
 霊璽は、そう告げて弱体化された『殺戮の姫君』が呻くように大地に倒れ伏すさまを見下ろすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
ふーむ
いまだ謎の多い世界ですねえ
六つの赤い月……五卿六眼とは何か関係がありそうですが
とりあえず目の前の|狂気《敵》を倒さないといけないようです
|メイド《ステラ》、参ります

【メイドズ・ホワイト】でスピードと反応速度を超強化
『ニゲル・プラティヌム』を両手に
機動力で翻弄しつつ
踏み込んでいくスタイルで
「私の影は踏ませません」

棘鞭はかいくぐりと銃のグリップによる殴打で回避
そのまま銃撃で弾幕を張りつつ、踏み込みますよ
クリスタルの解放は輝く鎖を撃ち抜いていく感じで
近接できるなら部位を良く狙って砕きます

こちらのUCをコピーされると厄介ですが
おそらく発動条件は満たせないはず
ならばそこが隙です
一気に攻めますよ!



 ダークセイヴァー世界は積層世界である。
 それはすでに判明したことであるが、しかし、未だ第二層までしか猟兵たちは足を踏み入れていない。
 この第二層であってもそうだ。
 充分に知ることができたわけではないのだ。
「ふーむ。いまだ謎の多い世界だとは思っていましたが……『六つの赤い月』……五卿六眼とは何か関係がありそうですが、とりあえず」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は猟兵に寄って足首を切断されながらも立ち上がる『殺戮の姫君』を見やる。
 彼女の瞳には狂気が宿っている。
 ぶつぶつつぶやく言葉に正気はない。
 あるのはただの妄執めいた感情だけだ。

「私の愛する人を。私の臣民を。ただ取り戻すだけ。それだけ。私はそれでも」
 それでも、と彼女は叫ぶ。
 痛みに叫んだのではない。
 ただ只管に己の中にある欲望、歪んでしまったそれを求めるように天に手を伸ばす。
 その手の先にあるのは赤い月。
「語るべく言葉もありませんね。|メイド《ステラ》、参ります」
 ステラの瞳がユーベルうコードに輝く。
『殺戮の姫君』とステラは語る言葉を持たない。
 例え、言葉を解するのだとしても、かわされる言葉に何の生産性もない。ステラを襲うは棘鞭。
『月と眼の紋章』より放たれる攻勢は確かに脅威であったが、ステラは己のユーベルコード、メイドズ・ホワイトによって爆発的なまでに増大した反応速度で持って、縫うようにして躱していく。

 目に見えるものに即座に反応し、対応する。
 彼女が超有能なスーパーメイドたる所以である。手にしたに二丁拳銃寄り放たれる弾丸が放つ轟音とは似つかわしいまでの彼女の優雅にして華美たるステップは『殺戮の姫君』との距離を詰めていく。
「私の影は踏ませません」 
 迫る棘鞭の切っ先すら、銃のグリップで打ち据え受け流す。
 弾丸が飛び、『殺戮の姫君』の体を貫いていく。
 強化が喪われ始めている、とステラは理解する。反応も遅い。これならば、とステラは走り抜ける。
「メイドたるもの、この程度は基本、ですので」
 さらに踏み込んだステラは銃撃で持って『人間画廊』たるクリスタルを繋ぐ鎖を撃ち抜く。破壊されたクリスタルから人々が開放されるのならば、あと僅かであることを知るだろう。

「確かにその『月と眼の紋章』の効果は脅威そのもの。ですが、半数の『人間画廊』が喪われてしまえば、効果を発揮できない」
 それこそが『月と眼の紋章』の弱点であり、また猟兵達によってそれは成されているのである。
 破壊されるクリスタルの破片の中をステラは『殺戮の姫君』へと迫る。
「私は」
「ええ、あなたの言わんとしていることはわかりません。喪っても、喪っても、それでも前に進むのが人です。そして、私は、そうした人の後を追う者。憎しみも、哀しみも、その理由を忘れてしまった者には、わからぬことかと思いますが」
 ステラは銃口を『殺戮の姫君』へと向ける。
 引き金を躊躇いなく引いた。

 弾丸の放たれる轟音が響き渡り『殺戮の姫君』の体を貫く。
 鮮血が迸り、彼女の体がぐらりと傾ぐ。
「今です! 一気に攻めますよ!」
 その言葉は示していた。
『月と眼の紋章』。
 その効果が完全に消え、残るは『殺戮の姫君』のオブリビオンとしての地力だけであることを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
戦争が終わってもこの世界に怨敵が存在する限り、戦いが終わる訳ではありません

我等が怨敵を悉く喰らい尽くすまで、我等が怨念もまた尽きぬ
ただ戦い、喰らうのみよ

【行動】POW
五感+第六感と野生の勘を働かせて敵攻撃の前兆と軌道を見切り、躱しきれない攻撃は武器で受け流しクリスタルへの流れ弾を防ぐ

先制攻撃+UCの最高速度で飛んでクリスタルが繋がっている鎖を範囲攻撃+切断
早業で夜砥をくくりつけ、クリスタルに包まれている状態なら簡単に中の人間が傷付かない事を利用して離れた場所に怪力で投げ飛ばす

そのままこちらに敵を引き付け、その間に黒酸漿を向かわせ鎧砕+補食でクリスタルを破壊し、中の人を安心な場所まで運ばせる



『月と眼の紋章』の効果は凄まじいものである。
 戦闘能力を『66倍』にまで引き上げる力。
 それが脅威であることなど言うまでもない。だが、それだけ強大な効果が何の代償もなく得られているわけではないことは言うまでもない。
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は知っている。
 かの紋章のエネルギー源は『人間画廊』と呼ばれるクリスタルに囚われた人間たちであると。そして、猟兵達の活躍に寄って、その半数が喪われ、すでに効果が得ていない『殺戮の姫君』の地力だけが残っているのだと。
「我等が怨敵を喰らい尽くすまで、我等が怨念もまた尽きぬ」
 織久の瞳がユーベルコードに輝く。
 己の身の内に潜む吸血鬼の血。
 それが宿していた、竜の力。

 彼の身を覆う力の正体がそれだ。
 目の前に怨敵がいる。オブリビオンがいる。それだけで充分だった。
 己の身に宿る殺意と怨念。
 その強さは言うまでもない。
 この世界における大いなる戦いが終わるのだとしても、それでもオブリビオンは湧き出さぬだけで残存しているのである。
 ならば、戦いが終わったわけではない。
 未だ戦わねばならぬ理由があるかぎり、織久は、その瞳にユーベルコードの輝きと怨念をこそ宿して前に踏み出す。
「私の愛しい人は、私の臣民は、何処に。私は」
「我等が血に潜む竜よ、天地を遍く狩る竜翼と化せ」
 織久は構わなかった。

 彼女の言葉がどれだけ哀しみにまみれ、憎悪に染まったものだったとしても、オブリビオンえあることにはかわりはない。
 踏み込み、『殺戮の姫君』の体に繋がっている『人間画廊』のクリスタルを手繰る鎖を断ち切る。
 振るう手寄り放たれる極細の糸が鎖より解き放たれたクリスタルを絡め取り、己の有り余る膂力のままに戦場の外へと放り投げる。
 あの中に囚われた人々がクリスタルの中にいるのならば容易に傷つかぬことを理解しているからこそ、奪い返される可能性をこそ彼は潰す。
「私の! 私の愛する人たちを!」
『殺戮の姫君』が狂乱のままに織久へと飛びかかる。

 だが、織久の瞳は彼女を見ていない。
 見る理由すらない。
 何故なら、その憎悪は己の殺意と怨念を越えるものではなかったからだ。
「そこにお前の愛する者たちは居ない」
 クリスタルの中に囚われているのは無辜たる人々でしかない。
 故に織久は手にした赤黒い槍を構える。
 漲る力。
 それは己の殺意と怨念を受けて強化された一撃である。

「喰らうがいい」
 これが、己の殺意の形であると示す槍。
 これが、己達の怨念の集大成。
 漲る力によって投擲された槍の一射が『殺戮の姫君』の躰を貫く。胴を貫く一撃は強烈にして激烈であった。
 吹き荒ぶような衝撃波が戦場に満ちる。
 ごぽり、と血が噴き出すように『殺戮の姫君』の口元から溢れる。
 最早声を発することはできないだろう。
 だが、織久は同情しない。どれだけの憎悪があろうと、どれだけの悲哀があるのだろうと、あれは己等の怨敵である。
 滅ぼさなければならない。
 いかなることがあろうとも。

 その一撃でもって織久は未だ晴れることのない殺意と怨念を自覚し、『殺戮の姫君』の溢れる血潮の明さを知るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

ろんりが破綻している!
いやーそれともあのお月さまには願いをかなえる力でもあるのかな
そう!六つ集めると…いけないボクが殺されてしまう!

●やーいやーい
キミの国は滅びた!キミは敗者だ!なのになぜ未だ存在しているんだい?
みな斃れた…なのにまだ、キミは…

と挑発ムーヴして【第六感】任せに回避して逃げ回りながら[神さまの影]を広く広げて彼女の足元に達したら中に待機してる[餓鬼球]くんたちにクリスタルにがぶがぶっ!としてもらおう

さらにだめおしのーっUC【神撃】でドーーンッ!!

みんな滅びてキミが残されたなんて確かに滑稽だね
いやオブビリオンは違うかな
でもキミもいつか、そこに行けるといいね



『殺戮の姫君』にとって、それはただの憎しみと哀しみの源でしかなかったのかもしれない。
 奪われたもの。
 亡くしたもの。
 それらを取り戻したいと願うのは人として当然の感情であったことだろう。
 けれど、それらを示す哀切の言葉はもう彼女の口からこぼれることはない。穿たれた胴より溢れる血潮。
 言葉を発しようとしても溢れる血によって喉が塞がる。
 しかし、それでも彼女は天に手を伸ばす。
 天井たる空。

 其処に浮かぶ『六つの赤い月』。
「ごほっ、ご、っ……あっ、ああ、ああああ!!」
 叫ぶ声にロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は見下ろす。
「キミの国は滅びた! キミは敗者だ! なのに何故未だ存在しているんだい? みな斃れた……なのにまだキミは」
 その言葉に『殺戮の姫君』の瞳がユベールコードに輝く。
 手にした魔導杖より吹き荒れる火炎旋風は蒼炎となってロニを襲うだろう。
 猛烈な熱。
 それが『殺戮の姫君』の怒りそのものであったというのならば、きっとおそうなのだろうと思う。
 だが、足元に広がった影が『殺戮の姫君』を丸ごと飲み込む球体となって襲う。

 次の瞬間、その球体を破壊しながら、燃やしながら『殺戮の姫君』が這い出す。
 胴を穿たれて、すでに『月と眼の紋章』の効果は喪われているはずだ。だというのに、それでもな、地力だけでロニの操る球体を圧倒してみせているのだ。
「それだけの執着がありながら、何も持っていないというのは皮肉でしかないよね」
 得るものもなく。
 失うものばかりであり、それを贖うこともできない。
 きっと憎しみと哀しみの理由すら忘れてしまったのだろう。
 それがオブリビオンとしての性であるというのならば、それは滑稽だとロニは思った。

「みんな滅びてキミが残されたなんて確かに滑稽だね。いや、オブリビオンは違うかな」
 その先に行くことができない。
 この世界は死すら救済ではないのだ。
 彼女の国は、彼女の臣民は、彼女の愛する人は、全て生命の循環止まる世界にあって、さらなる苦しみを得ただけに過ぎない。
 それをオブリビオンとなった彼女が知ることのない事柄であったのだとしても。
「でもキミもいつか、そこに行けるといいね」
 滅びた過去は消すことはできない。なかったことになんてできないのだ。

 ならば、願うことだけはできるかもしれない。
 決して叶えられることではないけれど。
 振るう拳の一撃。
 神撃(ゴッドブロー)は神々しさを満たすように戦場に光を灯す。
 振り下ろされる一撃は『殺戮の姫君』の躰を大地に沈ませる。血管の大地は砕け、血潮が噴出する。
 溢れた血は川のように流れ、その赤へと彼女を埋没させていくだろう。
 ただ、彼女の伸ばした手だけが虚しく、空へと伸ばされる。
 何処まで行っても届くことのない月。
 何を願い、何を思い、何を欲するのか。
 ロニには知ることのできない事柄であったけれど、確かに『殺戮の姫君』は求めたのだとロニは、それだけを知り、天に伸ばされた手の先へと視線を向けた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『狂愛の破壊者・アプロディテ』

POW   :    さあおいで私の可愛い奴隷達
戦場全体に【奴隷達の霊】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【奴隷達の剣と盾】による攻撃力と防御力の強化を与える。
SPD   :    ぁぁ本当に…酷い人
【凝縮された恨みの念】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【ユーベルコードを封じる】の状態異常を与える。
WIZ   :    私を愛して
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【自身の魔力で編んだ見えない糸】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。

イラスト:柴一子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミカエル・アレクセイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 尽きる。
 生命が尽きてしまう。
『殺戮の姫君』はそう思った。
 己が求めたもの。欲したもの。贖おうとしたもの。その全てが掌からこぼれ落ちていく。
 第二層の大地。
 血管がひしめく大地が割れ、血潮が溢れる川と成り果てた中へと彼女は埋没していく。だが、手だけが天に伸ばされていた。
「ああ、ああ……ああ……」
 銅を穿たれ、喉に血がこびりついて離れなくなっても。
 それでも彼女は天に手を伸ばした。
 浮かぶ月へと。
『六つの赤い月』へと。
 そして、渾身の力でもって叫ぶのだ。

「されど、我は尚も、五卿六眼の『欠落』を求める……!」

 瞬間、『六つの赤い月』の一つから『赤い光』が放たれる。
 血の川に沈んだ『殺戮の姫君』を照らす光は、次の瞬間、大量の血を蒸発させた。もうもうと立ち上る水蒸気。
 その奥に揺らめく影があった。
 そこにあったのは『狂愛の破壊者・アプロディテ』。
 愛したはずの愛はなく。
 喪われた愛に贖うものもなく。
 けれど、故に狂い果てた女神の如き存在。
 背に追うのは無数の手。それは『月の如く煌々と輝く異形の身体部位』であった。急激な力の奔流。それに翻弄されるように『狂愛の破壊者・アプロディテ』は叫ぶ。
「私の愛は、まだ喪われていない。私が求める『欠落』! それさえあるのならば!」
 何も他に要らないと、欲した愛すら投げ捨てるように彼女は狂ったように血の海より飛び出し、猟兵達に襲いかかるのであった――。
村崎・ゆかり
オブリビオン・フォーミュラはもういないのに、どうして蘇るの。やはり、この世界の月に何かの秘密が?

悩んでる時間なんて無いし、「高速詠唱」で「召喚術」「降霊」「式神使い」の式神十二天将召喚儀!
まだ自分の力を把握出来ていない今だからこそ、数で押す。
あたしも薙刀を手に城主への攻撃に参加するわ。

相変わらず喚いてうるさい。さっさと骸の海へ突き落としましょう。
天将への攻撃で出来た隙を確実に衝いて、「串刺し」を狙うわ。
あたしの守りは偶神兵装『鎧装豪腕』に「盾受け」させて防御にする。
反撃に「怪力」で殴っていいわよ。

――はぁはぁ。結構戦ったけど、天将は何人残ってる?
最後にもう一撃、薙刀の「貫通攻撃」をあげるわ!



『六つの赤い月』の一つより降り注ぐ『赤い光』。
 それに照らされた『殺戮の姫君』は姿を変容させる。
 背にあるのは光背の如き無数の煌々月光のように輝く『異形の身体部位』たる腕。
 そして、その姿は『狂愛の破壊者・アプロディテ』へと変容している。
 手繰る力、ユーベルコードさえも変容させる『赤い光』が一体いかなる力をもっているのかを知るよりも速く、猟兵達に襲いかかる。
「急急如律令! 六壬式盤の導きによりお招き申す! 天の十二方位を支配する十二天将よ、我が言葉に応え顕現せよ!」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)の判断は速かった。

 確かに疑問はある。
 オブリビオン・フォーミュラなき世界であるというのに蘇るオブリビオン。
 完全に滅びていなかったのだとしても、それでもあの『赤い光』が齎す力は、『殺戮の姫君』を確実に変容させていた。
 言ってしまえば、ただのオブリビオンが『闇の種族』へと変質しているかのような状態。
 だが、今はまだ『闇の種族』の持つ無敵性を『狂愛の破壊者・アプロディテ』は持ち得ていない。
「倒すなら今しかない!」
 手にした呪符が燃え盛るようにして12体の式神が現われる。
 式神十二天将召喚儀(シキガミジュウニテンショウショウカンギ)。
 それこそが彼女の切り札だった。
 十二天将。その武装した力は彼女の持ちうる限り最大の戦闘力を持つ式神たちであったのだ。

 だが『アプロディテ』の背に追加された異形の身体部位、百腕のごとき光り輝く腕が一瞬で伸び、ゆかりへと迫る。
「疾い……! これでまだ自分の力を把握できていないっていうの!?」
 ゆかりの判断は正しかった。
 敵が未だ『闇の種族』のような無敵性を有しておらず、また得た力に振り回されているというのならば、数で押してしまえばいい。
 確かに正しい。
 だが、『アプロディテ』は己を壊しかねない力の奔流のさなかに在りながら、追加された百腕のごとき光り輝く腕を次々と式神十二天将向け、凝縮された恨みの念と共に叩きつける。

 叩き伏せられた十二天将が一瞬で崩れ果てる。
「何ていう力……!」
「ああぁ、あああ! 私を虐げるもの! 私には愛した者さえいないというのに! なのに! 私を取り囲む者は、私以上にいることが許せない!」
 叫ぶ言葉にゆかりは耳を塞ぎたい気持ちだった。
 喚いてばかりだ。
 どこまでも自分の喪ったものに執着している。
 なのに、それを自分で投げ捨てた『アプロディテ』。それがどうにもゆかりには煩わしいとしか思えなかった。
「さっさと骸の海へ突き落としてあげるわ!」
 式神十二天将が次々と打倒されていく。

 迫る光る腕を『鎧装剛腕』で防ぐ。
 だが、凄まじい一撃が弾き飛ばす。衝撃波が身を打つ。痛みが走る。けれど、それでもゆかりは前に進む。
 進まねばならない。
 進まなければ勝利を得られない。彼女にとって、それだけのことであったが、それがどれほど途方も無い道程であるのかをゆかりは知る。
 踏み込む度に十二天将が喪われていく。

「――はぁっ」
 息を吐き出すのも辛い。
 けれど、それでも前に進む。一体どれだけの十二天将が喪われただろうか。
 周囲を見回す余裕もない。
 けれど、それでもゆかりは手にした薙刀を振るう。
「はぁっ!!」
 嘆くばかりで贖うこともできず、またそれさえも投げ捨てた哀しみの理由すら忘れた存在。
 その嘆きは胸に刺さるものであったけれど。
「それでも、それを誰かに押し付けることなんてしていいわけがないでしょう!」
 渾身の一撃が叩き込まれる。
 薙刀の切っ先が『アプロディテ』の胸を穿つ。
 喪っても、喪っても。
 それでも人は前に進むしか無いのだと、ゆかりは言うようにその一撃を持って『アプロディテ』の虚の如き哀しみを貫くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』
武器:漆黒風

んー、この『六つの赤い月』が何かあるんですかね?
やけに月のワードが出てきますし…この世界…。

霹靂に乗りましてー。
さて、数で押すならば、こちりも。UCによる強襲ですよー。
集団で突撃し、内部から破壊していきなさい。
過剰再生するのは…苦痛になりましょう。

そして、私は漆黒風を投げていきましょう。


霹靂「クエッ!」
飛ぶ!おそらく兵は空に来ないだろうから。
でも、回避できるように油断なく!
陰海月「ぷきゅー」
陰海月は、独自に四天流星投げてる。錯誤呪詛で位置誤認させようっと。



 猟兵の貫いた一撃が『狂愛の破壊者・アプロディテ』の胸を貫く。
 血潮が溢れてもなお、彼女は止まらない。
 彼女の胸には虚の如き感情しかない。無くしたものを贖う術もなく、ただ只管に愛に泣く。
「私の愛はどこにもない。だから、私は願う。私の力を、私が至るための力を」
 その言葉と共に溢れるは亡者たち。
 奴隷の霊たちとでも言えばいいだろうか。
 彼らは皆、剣と盾を構えて『アプロディテ』の前に居並び、整然とした様子で陣形を汲み上げていく。
「んー、この『六つの赤い月』が何かあるんですかね?」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は疑問に思う。

 先刻の紋章。
『月と眼の紋章』だけではない。天に浮かぶ『六つの赤い月』もまた月。
 月、月、月、とやけに月に関連したワードが出てくるのだ。
「とは言え、やるべきことはまだあります。『霹靂』」
 そう呼びかけ『疾き者』はヒポグリフである『霹靂』に騎乗する。
 敵が陣形を汲み上げているのが見える。数でこちらを押す、というのならば、己たちが成すのは強襲のみ。
 ユーベルコードに煌めく瞳と共に四更・陰(シコウ・イン)の力が発露する。
 百を超える呪詛でできたカラスたちが一斉に飛び立つ。

 それを『アプロディテ』は見上げる。
「ああ、愛に溢れている。私にはもうないのに、他者にはある。それがどうしようもなく妬ましく、羨ましい。どうして私にそれがないのか。なくしてしまったのか、それさえも、わからなくなってしまったというのに」
「哀しみの理由がわからないのは仕方のないことですよ」
 何せ、と『疾き者』は続ける。
 かの敵は、あらゆることを忘れてもの。
 過去に歪んだ者。
 オブリビオンであるがゆえに、彼女の願うものは永遠に手に入らないだろう。
 かつて喪ったものも。
 愛したものも。
 この積層世界であり、死すら救済ではない世界にあって、オブリビオンとなった身は彼女が愛した者たちの元へはたどり着くことはできないのだから。

「過ぎたるは猶及ばざるが如し……愛もまたそうでありましょう」
 飛ぶカラスたちが一斉に『アプロディテ』へと迫る。
 その間にも奴隷の霊たちは剣と盾を持って走る。それは『陰海月』の呪詛でもって位置を錯誤させた場所に誘導させられている。
「ぷきゅー」
「そのまま頼みますよ、『陰海月』」
 カラスたちが一斉に『アプロディテ』に迫る。
 突撃した一撃が呪詛となって、彼女の体へと過剰再生を齎す。体が変形していく。だが、その過剰再生すらも、月のごとく煌々と輝く百腕の如き異形の身体部位に寄って引きちぎられていく。
 過剰に再生するのならば、過剰に傷つけるだけだと言わんばかりの狂気。
 それを『疾き者』は見るだろう。

「なんとも痛ましいことだ」
「私にとって痛みすらも得るものでしかない。それでも私がほしいのは」
「それではないのでしょうな。その苦痛すら、その胸の虚を埋めようがないとは」
 これがオブリビオンになるということなのだろう。
 停滞した時間。
 動き出すことのない時間。
 その永遠の中で生きるしかないという永劫。それが『アプロディテ』に架せられた罰であるとうのならば、それを終わらせることができるのもまた猟兵である。
 放つ棒手裏剣の一撃が『アプロディテ』の内側から過剰再生を誘引させ、絶え間ない苦痛を彼女にもたらし続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
五卿六眼はおそらく全員片目がなくて、人数は6人。赤い月の数も6。
今の様子からしても、あの月があれらの欠落ということですか。
そして今の言葉をキーワードに力を借りた……?

果実変性・ウィッシーズレミニセンスを発動したら第六感と心眼と気配感知で敵の行動を見切り、敵が武器を使おうとしたら必ず敵の方向を向くようにします。
それだけでドラゴンが放つ膨大な影の奔流がその武器を敵ごと飲み込んでくれますし、おまけに奇襲攻撃で追撃も勝手にしてくれる。
トラウマを引き出す攻撃はきっと効果も高いはず。

生い立ちを考えると可哀想な気もしますけど、外道に容赦は不要です。

さて、あの月……五卿六眼の欠落をどうにかする手を考えないと。



『殺戮の姫君』は天に手を掲げた。
 その先にあるのは何か。
 言うまでもなく天井である。積層世界であるダークセイヴァー世界。しかし、そこにあるのは天井でありながら夜空にして、月光。
 彼女が手を伸ばした先にあるのは『六つの赤い月』。
 降り注ぐは『赤い光』。
 瞬間、彼女の体は変質してみせた。言うなれば『闇の種族』へと変質しようとしていた。しかし、今の彼女は急激な変化により力が制御できていないようだった。
『狂愛の破壊者・アプロディテ』は、その力に振り回されている。
「私は、私は、私は、欲しいと願ったはずなのに」
 愛しい人を、臣民を、喪ったもの全てを欲したはずなのに、今の彼女には何もない。
 虚の如き感情だけを得ただけだった。

「……力を借りた……?」
 七那原・望(比翼の果実・f04836)は、変質した『月光城の主』であったオブリビオンの言葉を聞く。
 五卿六眼。
 確かにそういった。また『欠落』を求めると。
 そして、彼女が手を伸ばしたのは『六つの赤い月』。
 それが何を意味しているのかはわからない。推察はできるかもしれないが、それがどれほど真実に近づいているのかを『アプロディテ』に問うたところで意味ある言葉は帰ってこないだろうと望は理解していた。

 だからこそ、彼女のユベールコードが発現する。
「どれだけ哀しみに満ちたオブリビオンとしての成り立ちがあるのだとしても。どれだけ土壌できる理由があるのだとしても」
 それでも『月光城の主』としてダークセイヴァー世界に生きる人々を苦しめたことをは間違いなく事実。
 ならばこそ、望は『アプロディテ』を外道であると断じる。
「容赦は不要です」
 煌めくユーベルコード。
 彼女は望む。
 巨大なドラゴンの形を創る影。
 果実変性・ウィッシーズレミニセンス(トランス・ウィッシーズレミニセンス)によって生み出されたドラゴンの影、その顎はもたげる。

 口腔を形作る影は、その内部に影の奔流の如きドラゴンブレスを溜め込み、『アプロディテ』へと解き放つ。
「愛を望み、愛に飢え、愛に死ぬこともできなかったあなたは」
 望はドラゴンの形を創る影寄り放たれるブレスが『アプロディテ』を押し戻していくを知る。
 愛を求めるがゆえに、愛を失うのが人である。
 ならば、オブリビオンへと成り果てた彼女が如何にして、それを埋めようとしたのかなど言うまでもない。
 歪み果てた想いは、かつての在り方を見失う。
 だからこそ、恨みを凝縮した念の一撃は影と激突しながらユーベルコードの輝きを放つ。
「私が喪ったものを誰かが持っているなんて」
「喪っても、喪っても、それでも手を伸ばし続けるのが人間なのです。それを誰かのせいになんてしてはならない。だから」
 影より侍女が飛び出す。
 それは影法師。振るう大鎌の一撃が『アプロディテ』の体を切り裂く。
 血潮が走る。

 トラウマを引き出す一撃。
「ああ、ああっ、私の、愛しい人が! 私から離れていく!」
 その言葉を望は聞く。
 喪って、それでも生きていかなければならない悲哀。
 オブリビオンという変わりようなく、しかして歪む存在が、その意味に気がついた時。その絶望の深さを示すように『アプロディテ』は絶叫するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・スペルティナ
……肉体と精神とは完全には切り離せないもの、器が変われば中身も影響され、完全に元と同じままではいられず、そして最後には違うモノに成り果てる……ここで、終わらせるべきですわね

既にほぼ一対一の状況、結局この手ですわ……
再度UC【伝播する呪い】を彼女に!あくまで「相手を同じ|呪い《ぽんこつ》状態にする」ものでこちらの強化ではないし、その器に慣れる頃には今度は酷く悪化した呪いに悩む羽目になるんですのよ!

後は攻撃は極力見切って回避し、本当にまずいときだけ武器受け、
隙を狙って『シュバルツシュテルン』で何度も攻撃し傷を抉っていきますわ!

大体あの月一体何なんですのよ!まさかあれが五卿六眼の「欠落」だとでも…?



 過去は不変なれど歪む。
 それがオブリビオンという過去の化身の在り方であった。同じ姿をしていても、どれ一つとして同一な存在はなく。
 故にメリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は『殺戮の姫君』から『狂愛の破壊者・アプロディテ』へと変質を遂げたオブリビオンの姿を見やる。
「……肉体と精神とは完全に切り離せないもの。器が変われば中身も影響され、完全に元と同じままではいられず」
 彼女の見据える『アプロディテ』は『月光城の主』であった頃の『殺戮の姫君』ではもはやない。

 だが、抱えた虚の如き感情だけがそのままに。
「私の愛する人。私の臣民。私の、私の私の私の!!!」
 溢れる恨みの念が『アプロディテ』の手によって凝縮していく。
「最期には違うモノになる果てる……ここで終わらせるべきですわね」
 メリーの瞳がユーベルコードに輝く。
 互いに一対一。
 ならば、メリーは己の呪いをこそ開放する。
 血に宿る呪い。
 それによってこれまでメリーが被ってきた不運は数しれず。その呪いをもってメリーは『アプロディテ』に相対する。
 己の呪いによる失敗確率を『アプロディテ』に押し付ける。

 これは強化ではない。
 どちらかと言えば弱体化であると言えるだろう。だから、『アプロディテ』のユーベルコードはこちらのユーベルコードを封じる手段にはなり得ない。
「私の、愛を。私の愛を、喪わせないで」
 見失うように手を伸ばす。
 凝縮された恨みの念が、その背に映えた百腕の如き煌々と輝く腕でもって放たれる。
 だが、そのいずれもがメリーには当たらない。
 何故なら、伝播する呪い(オマエモポンコツダ)によってメリーに攻撃が当たる可能性は下がっているのだ。
 倒さねばならぬ敵を前にしてこそ失敗する。
「その器になれる頃には、酷く悪化した呪いに悩む羽目になるんですのよ」

 メリーは己が長年付き合ってきた呪いのことを思う。
 己のユーベルコードはこれを相手にも押し付けるものだ。自分自身は変わらず。されど、相手は呪いに対応できない。
 百腕の如き異形の身体部位であっても同様である。
 急激な強化によって振り回されている現状であればなおさらであろう。故にメリーは踏み込む。
「あの月の光を受けて『闇の種族』へと変貌しようとしていた。あれが五卿六眼の『欠落』だというのなら、その急激な強化も頷けるかもしれませんが……!」
 波立つような刀身の一撃をメリーは『アプロディテ』に振るう。
 斬撃が百腕の如き腕を切り裂きながら、袈裟懸けに斬撃が刻まれる。
 あの『六つの赤い月』が一体なんであるのかは、まだ判然としていない。けれど、現実に目の前で『赤い光』がオブリビオンに降り注ぎ、それを求める『殺戮の姫君』が姿を変質させたことは、無関係ではあるまい。

「私の愛が」
「その妄執の愛はここで断ち切らせて頂きますわ!」
 呪いを越えるメリーの一撃が癒えぬ傷を刻むように『アプロディテ』に振り下ろされた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
あれ、本当に五卿六眼に関係がありました!?
当ててしまうとはうっかりメイド……
ともあれ、なかなかやべータイプの愛ですね
私の場合、叫んだりしますがエイル様への愛はシンプルに純粋
アレは私には到底理解できないタイプですね
なんか言われた気がします

さて
愛は尊いものですが
貴方の愛は世界を壊すようです
それは私のためにも許すわけにはいきませんので
|メイド《ステラ》、参ります!

【テールム・アルカ】起動
手数が足りない分は兵装で補います
人型サイズのパルスマシンガンとガトリングキャノンによる
弾幕で押し切ります!
武器というか足元のアレはちょっとヤバそうですね
『アンゲールス・アラース』を使って飛翔
空中機動から仕掛けましょう



 天に伸ばした手は、何かを求めるものであった。
 そして、『殺戮の姫君』は五卿六眼の『欠落』を求めると言ったのだ。『赤い光』が『六つの赤い月』より降り注いだ瞬間、彼女は異形の身体部位、百腕を持つオブリビオン『狂愛の破壊者・アプロディテ』へと変質を遂げる。
 吹き荒れる力。
 強大な力の奔流は『闇の種族』へと変質しようとしているが故であった。
「愛を叫びますか」
「私の愛は私の前にはない。私の愛は、私の胸に虚を作る。この感情の意味も、この虚の中身も、何もかも、私の前から過ぎ去ってしまう」
 叫ぶ声にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は頭を振る。

 愛を叫ぶ。
 それは愛を求めるが故であろう。
 愛を喪ったものは悲惨たるものである。どれだけ求めても贖うことはできず。そして、代わりになるものを見つけることもできない。
 それゆえに愛は至高。
「貴方の愛は私には理解できぬもの」
 ステラは己の胸にあるものを思う。
 それは純粋なものだと思うのだ。求めるでもなく、求められるでもなく。純然たるものとして、そこにあるべきであると知るからこそ、彼女は叫ぶ。

「貴方の愛は世界を壊す。それは私のためにも許すわけにはいきませんので」
 同じ愛を語るものであったとしても、こうも在り方が違う。
 猟兵とオブリビオンであるからではない。
 愛というシンパシーあれど、その方向性が異なるがゆえに交わることがないと知るのだ。
「私の愛は無いのに、貴方の愛があることが許せない」
 異形の身体部位たる百腕に恨みの念が凝縮されていく。あれに触れれば、ユーベルコードの強化は霧散されるだろう。
 だが、ステラは躊躇わない。
「|メイド《ステラ》、参ります!」
 瞳に輝くはユーベルコード。

「箱舟、起動。武装、転送」
 彼女の手に現われるのはリサイズされたキャバリア兵装。
 バルスマシンガンとガトリングキャノンによる弾幕が迫る百腕を打ち据え続ける。炸裂する火球。炎が吹き荒れ、爆風が遊ぶ最中にステラは走る。
 弾幕で『アプロディテ』の異形の身体部位である百腕を防ぐことはできても、互いに決め手に欠ける。
 だからこそ、駆ける。
 愛は、求めても。求められても。
 それでも、互いにそこに有ると信じることができるからこそ通じるものである。
「通じることを、誰かにわかってもらおうとしないそれは、愛ではなく」
 叫ぶ声にステラは天使の翼を羽撃かせながら百腕の猛攻を掻い潜り『アプロディテ』へと迫る。

 手にしたパルスマシンガンの銃口を突きつける。
「私の愛は」
「ええ、愛ではなく。それを妄執と呼ぶのです」
 引き金を引く。
 放たれた弾丸は『アプロディテ』の体を撃ち貫いていく。どれだけ強大な存在も、繋ぎ、紡ぐ戦いによって破滅へと導かれる。
「愛が、私の前から、なくなってしまう」
 その叫びをステラは聞くだろう。
 羽撃く天使の翼が『アプロディテ』の伸ばした手を弾く。
 そこに求めるものはないと示すようにステラは天に昇るように飛翔し、ガトリングキャノンの一撃を『アプロディテ』に叩き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榊・霊爾
欠落...あえて大切なものを自分から一時的に消す代償に強さを得たとでも?
失うものが無いが故に、これ以上傷付くことが無いこその無敵、哀れだね
だが、欠落を砕かれれば死が確定する
欠落というものに変えた以上躊躇いがある証拠、連中も半人前という事だ

木を隠すなら森の中...
大勢の霊を呼んでくれて感謝するよ
鴉羽笠のステルスを有効化し、【存在感】を薄め【闇に紛れる】
【残像】のデコイをばら撒き霊の中に紛れ込み、白鶺鴒の【不意打ち】の【抜刀】で霊を始末しつつ相手に接近
相手の懐に飛び込み、『忘却』で【急所突き】する
君の存在意義も忘れてしまうがいいさ



『闇の種族』は無敵性を有している。
 大いなる戦いである闇の救済者戦争においても、猟兵たちは完全に滅ぼしきれぬ存在を知っただろう。
『腐敗の王』、『ライトブリンガー』。
 いずれもが『欠落』を有している。
「『欠落』……あえて大切なものを自分から一時的に消す代償に強さを得たとでも?」
 榊・霊爾(あなたの隣の榊不動産・f31608)の眼前で変質を遂げた『殺戮の姫君』。
 彼女は天に手を伸ばしていた。
『赤い光』が降り注ぎ、『闇の種族』へと至るかのように変質していった。

 天には『六つの赤い月』。
 それが何を意味するのかは未だ判然としない。
 けれど、確かなことが一つある。急激な力によ振り回されながらも『狂愛の破壊者・アプロディテ』は『闇の種族』たる無敵性を手に入れようとし、まだそれを得られていない。
「失うものが無いがゆえに、これ以上傷つくことがないこその無敵」
 霊璽は息を吐き出す。
 強大な敵を前にして尚、彼はそれを哀れだと言った。
 確かに『闇の種族』は無敵性を有している。強大な力そのものだ。
「だが、『欠落』を砕かれれば死が確定する。『欠落』というものに変えた以上躊躇いがある証拠」
 失いたくないと叫ぶ声が聞こえる。
 彼女の愛がいかなるものであったかなど余人の知るところではない。

「半人前ということだ、そういうことは」
 溢れるようにして己に迫るは『アプロディテ』のユーベルコードに寄って溢れた奴隷の亡霊たち。
 彼らが一斉に盾と剣をもって霊璽に迫る。
 それだけではない。
 百腕。それは異形の身体部位である。煌々と月のように輝く腕が一斉に霊璽へと迫るのだ。膨大な数。まるで洪水のような攻勢に霊璽はしかしたじろぐことをしなかった。
「木を隠すなら森の中……大勢の霊を呼んでくれて感謝するよ」
 踏み込む。
 多勢に無勢というのだろうが、しかし、霊璽にとって、それはおのrの存在を紛れさせるには充分なものであった。
 抜刀した斬撃が奴隷の亡霊たちを切り裂き、迫る百腕を払う。
 圧倒的な攻勢。
 凄まじい物量であるという他無い。

 だが、それらの全てを霊璽は切り払い続ける。
「私の愛を、私の手の平からこぼれていく愛を。それを見失わぬことが!」
 彼女の叫ぶ愛を霊璽は知らない。
 妄執めいた言葉。
 それにとりつかれるがゆえの欠落であると言えるだろうか。わからない。けれど、霊璽は思う。
 抱えるのがつらく感じるほどの虚の如き感情であるのならば。
「キミの存在意義も忘れてしまうがいいさ」
 ユーベルコードに瞳が輝く。

 わすれたくないからこそ、これ以上がないようにと『欠落』にしてしまうという矛盾。
 それを抱えるからこそ苦しむというのならば。
「骸の海へ帰れ」
 振るう抜刀は、己たらしめる認知をこそ切り裂く。
 抜刀『忘却』(レーテー)。
 それは自身を見失い、自壊させる呪詛。
 己を見失ったものの足元はおぼつかないものである。寄る辺もなく、縁もなく、ただ只管揺蕩うものがたどり着くのは、皮肉にも過去にしかない。
 即ち、骸の海。

「忘れることも救いになるかもしれない。喪ったはずの、遠ざけたはずの『欠落』を喪って初めて求めるようであるのならば」
 忘れて、忘却の果てに救いという物があるのかも知れないと霊璽は嘯くようにつぶやき、己の刃を収めるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サマエル・マーシャー
では、私があなたを愛しましょう。

UCにより分身をレベル体出現させ、それらを全て敵に向かわせます。
無数の手で触れてくれるというのであれば好都合です。快楽を呼び起こし増幅させる効果が発動することにより、まともに動けなくなるでしょう。
分身たちが負傷させられても、その血液は私の『盲目的で破滅的な愛』と同じ効果を持つので精神破壊を加速させられます。
生命の動きを止めるのは損傷と痛みだけではないのです。
精神を快楽で焼き続ければ肉体が死ななくとも精神は死ぬでしょう。
仮にそれで敵のUCが解除されたら『神の悪意』で廃人になった敵の急所を貫きます。

もう何も憎まなくていいのです。
全ての苦痛を忘れて、逝ってください。



 哀しみも、憎しみも、愛も。
 その理由を忘れてしまったのならば、残るのは虚だけである。
 抱えるにはあまりにも重すぎる。
『狂愛の破壊者・アプロディテ』は願った。願ったはずだった。
 喪ってなお、求めたのだ。
『欠落』を。
 失うことを求めるという矛盾。
 故に狂ったというのならば、その叫びは悲痛なるものに聞こえたかもしれない。
「私の愛がない。どこにもない。あるのは誰かの愛だけ。私の、私自身の愛が、何処にもない」
 その叫びにサマエル・マーシャー(電脳異端天使・f40407)は微笑むでもなく、憐れむでもなく、悲しむでもなく、ただいつもの変わらぬ表情のまま告げる。
「では、私があなたを愛しましょう」

 それが己であると示す。
『救世主らしき何か』とよばれたサマエルの瞳がユーベルコードに輝く。
「回帰の果てに楽園へと至りましょう」
 彼女の内面である霊的サイバースペースからサマエルの分身が飛び出す。
 走る彼女たちに『狂愛の破壊者・アプロディテ』より糸が放たれる。それは互いをつなぎ、互いが同時に死なない限り死ぬことのない力を発露する。
「私の愛が何処にもない」
「探してもありませんか。本当に何処にも貴方の愛はありませんか?」
 サマエルの言葉はそのままに『アプロディテ』へと届けられるだろう。

 異形の身体部位である百腕が月光の如き輝きを放ちながら一斉にサマエルの分身たちを握り潰していく。
 だが、それは意味がない。
 触れた瞬間に『アプロディテ』へと走るのは快楽。
 耐え難い快楽は、時に苦痛をも上回る。痛みに対して人は抵抗することができるし、慣れることもできるだろう。
 だが、快楽は違う。
 快楽が生み出される限り、神経は焼ききれるような熱量を持ち、『アプロディテ』の内部から、精神すらも侵食していく。
「盲目的で破滅的な愛……それが私の血の名。理解されるという快楽。それを貴方は味わい続ける」
「私の虚を埋めることなんてできないのに」
「ええ、それでも決して埋まることのない虚を覆い隠す別の何かがあるでしょう」
 サマエルは告げる。

 その虚を埋めることなどできなのはわかっている。
 けれど、人の心が感じるのは痛みだけではない。痛む傷口を治す必要はない。痛みを感じることができないほどに別の何かで上塗りしてもいい。
 そうやって救われるものがあるとサマエルは知るからこそ、己の分身たちを次々と『アプロディテ』へと差し向ける。
 触れる度に走る快楽。
 脳にみちるは己を理解しているものがいるという望外の快楽。
『アプロディテ』の脳は焼ききれんばかりの充足で持って虚を埋め尽くされていくようであった。
「ああ、私が、満たされて、しまう。『欠落』を得るためには、そんなことあってはならないはずなのに」
「もう何も憎まなくていいのです」
 サマエルは、そんな『アプロディテ』の頬を撫でる。

 変わらぬ表情のまま。
 何もかも忘れていいのだというように彼女は首を傾げる。
「全ての苦痛を忘れて、逝ってください」
 それはおやすみ、と囁くような優しさで、全てを救う輝きと共に『アプロディテ』の神経を焼き切るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
あの月に何かしらの力があるのは確かなようです。この大地もたま力を与えるための物でしょう

我等もまた血肉を喰らい戦う者
「欠落」も、この大地に流れる血も、我等が怨敵屠るための糧としよう

【行動】PWO
五感と第六感+野生の勘を働かせ敵攻撃を見切り、戦闘知識+瞬間思考力に基づき常に最適解を取る

先制攻撃+UCに夜砥を忍ばせ、敵一体を捕らえ爆破と同時に夜砥に流し込んだ怨念の炎の焼却+生命力吸収の継続ダメージを与える呪詛をばらまく

捕らえた一体は怪力で振り回して周囲の敵をなぎ倒し、ダッシュで接近してなぎ払い+切断の範囲攻撃
態勢を整えられない内に残像を囮にして回り込む
ボスを死角から串刺し+UCを流し込み傷口をえぐる



 天に浮かぶ『六つの赤い月』の一つより降り注いだ『赤い光』。
 それは猟兵達の攻勢によって瀕死に至った『殺戮の姫君』に注がれ、強大な力の発露を持って『狂愛の破壊者・アプロディテ』へと姿を変質させていた。
 それだけではない。
 その背には異形の身体部位たる百腕が月光のように煌々と煌めき、その力を示すように猟兵達に襲いかかる。
 百腕の攻勢を切り払いながら、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は殺意と怨念を漲らせる。

 確かにあの月がなんらかの力をオブリビオンにもたらしていることは確実であろう。
 この第二層たる血管の大地も然り。
 ならばこそ、彼の瞳は殺意にゆらめき、怨念の炎を灯す。
「我等もまた血肉を喰らい戦う者。『欠落』も、この大地に流れる血も、我等が怨敵屠るための糧としよう」
「私の愛。私の愛は喪ってはならないものなのに。なのに私は」
 神経焼き切れた『アプロディテ』は嘆くように手を天に伸ばす。
 未だ『闇の種族』へと至って居ないとは言え、急激な力に振り回されている彼女に無敵性が存在していないことは理解している。
 ならばこそ、溢れる奴隷の亡霊たちが、その証左。

 放つ極細の糸と共に奴隷の亡霊の一体を捉え、黒い影でもって爆破する。
 織久の瞳にユーベルコードの輝きが点っている。
 それは、影面(カゲツラ)。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
 繋がれた影の腕。
 怨念の炎が糸より走り、奴隷の亡霊へと流し込まれ、その肉体を呪詛撒き散らす躯体へと変貌させる。
 それだけでは終わらない。
 有り余る膂力でもって織久は、繋いだ亡霊を振り回し、迫る奴隷の亡霊たちを薙ぎ払う。

「私の、私の、私の、私の!!」
 狂ったように叫ぶ声に織久は同情しない。
 哀れみすら抱かない。
 かの者はオブリビオンである。
 いかなる感情を抱えていようとも、いかなる事情を持つのであろうとも、己の怨敵の一人でしかない。
 憎しみは膨れ上がっていくばかりだ。
 わかっている。
 これが己達であると。

 殺意と狂気に爛々と光る赤い瞳が煌めく。
 オブリビオンを狩ること。
 それ以外の全てを排除した人生。身に流れるは、犠牲者の血と怨念の炎。
 漲る力は、それを振るうためにこそあるのだと知らしめるように奴隷の亡霊たちをなぎ倒して『アプロディテ』へと飛ぶ。
「私の、愛は、何処へ!」
「知らぬ。興味もなし」
 織久は打ち据えた奴隷の亡者の躯体を『アプロディテ』へと叩きつけ、その死角より飛び込む。
 打ち込む抜き手。
 その一撃が『アプロディテ』の脇腹から影を流し込む。
 内部で爆破される影は、その肉体を内側から破壊し、炸裂さえる。血の雨が降り注ぐ最中、織久の瞳だけが爛々と輝き続ける。

 オブリビオンは狩るもの。
 己の身に流れる血潮が叫んでいる。
 渦巻く狂気も、怨念も常なるもの。故に、失い『欠落』とした虚しか見せぬ感情に劣る言われなど無いというように織久は『アプロディテ』と繋がった影の腕を断ち切るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

なるほどー
つまり欠落を6つ集めると何でも願いが…
やっぱりそr

●閑話休題
欠落かー
ボクの欠落もどこかでお月様になってたりするのかな?
だったらちょっと面白いかも!

●悪いけど
いや悪いとも思ってないけども!
もうキミにあげられるものは何にも無い
救いさえ、あげられない
だから祈ってあげる
いつか、やがていつか…キミがここではない場所、望んだ場所でなくても、安らげる場所にたどり着けるよう…

戦場全体に広げた[影]から再度球体くん、今度は[ドリルボール]くんたちを呼び出して霊を粉砕して時間稼ぎをしてもらおう!
その間にボクは荒れた場を【第六感】任せに駆け抜けてUC【神撃】でドーーーンッ!!



「なるほどーつまり『欠落』を六つ集めるとなんでも願いが……やっぱりそれって」
 其処まで言いかけてロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は口を噤む。
 それ以上言ったらメタの壁的なあれそれのせいでどうにもならなくなりそうであったからだ。
 閑話休題というようにロニは『狂愛の破壊者・アプロディテ』を見やる。
 その身に無敵性は存在していない。
『欠落』を求め、されど、降り注ぐ『赤い光』によって彼女は強大な力に振り回されるばかりであった。
 光背のように追う百腕は月光の輝きを満たし、ロニへと奴隷の亡霊たちと共に迫る。
 膨大な数であったし、それらの手数を前にしてロニは首を傾げて見せるばかりだった。
「『欠落』かーボクの欠落もどこかでお月様になってたりするのかな? だったらちょっとおもしろいかも!」
「私の愛。私の『欠落』。私の、私の。私の。私の!!!」
 血反吐を撒き散らしながら『アプロディテ』が狂うようにロニへと迫る。

 亡霊たちをかき分けるようにして、ロニに殺到する。
 百腕の全てがロニへと向けられていた。
「悪いけど、いや悪いとも思ってないけども! もうキミにあげられるものはなにもない」
 ロニのホチ味がユーベルコードに輝く。
 戦場に広がる影。
 影より飛び出すのは掘削球体。それらが迫る奴隷の亡霊たちを噛み砕くように粉砕しながら、『アプロディテ』へと激突する。
 百腕とぶつかりあっては砕けていく。
 その破片の最中をロニはゆうゆうと進む。
「救いさえ、あげられない」
 そう、『アプロディテ』にあるのは、もう虚の感情だけだった。

 喪った、という事実だけを抱えるしかない。
 愛を失い、愛する人を失い、何もかも喪ったのならば、その『欠落』の如き虚に答えられるものは救いではないのだ。
 だからこそ、ロニは告げる。
 瞳にユーベルコードの輝きをともしながら。
「だから、祈って上げる」
 オブリビオンは霧散し、骸の海へとまた流れ着く運命でしかない。
 だからこそ、その虚は埋まらない。
 歪み続けるだけだ。
「いつか、やがていつか……キミがここではない場所、望んだ場所でなくても安らげる場所にたどり着けるよう」
 祈る、とロニは拳を握りしめる。

 迫る『アプロディテ』は血に塗れながらも狂気満ちた顔で百腕を振り下ろす。
 その強烈な一撃とロニの神撃(ゴッドブロー)たる一撃が激突する。
 光が満ちていく。
 暗闇の世界。
 空すら存在しない空に浮かぶは月。
 その『赤い光』すら塗りつぶすような神々しき光と共に、ロニは『アプロディテ』を打倒し、その輝きを持って祈りへと昇華させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミカエル・アレクセイ
それは、俺が愛した者達へ、お前が与えた苦痛の対価に過ぎない。

何時までも醜い姿を晒しておくには、及ばないだろう。
苦痛を受け続けろと放置した女だが、それが世界に歪となるなら、そろそろ潮時とすべきか。

あらゆる苦痛に堪える強さも、涙を失った姿も。俺の全ては、お前とお前の父が俺に科したあらゆる苦痛と恥辱の結果。これは、お前達が創り上げた|戦神《オレ》。
とすれば、それに討たれるのは、謂わば…自業自得だ。

俺は、お前に愛どころか、関心の一つも向けなかった。どれ一つとして、奴隷が主に向ける感情ではないからだ。
全て自業自得だというのに、今更喚いてくれるな。見苦しい。

「見苦しい」…この女が最も嫌いな一言だと思うが、これで止まってはくれないか…?面倒くせぇな。

もう終わりにしましょう、キュテレイア様。

敵の放つすべてをそのまま弾き返して。
そう最後に囁いたのは、慈悲ではない。ただの嫌味だ。



 胸に虚がある。
 痛みはなく。かと言って苦しみがあるわけでもない。
 けれど、それはどうしようもない重たさでもって己の胸の虚を穿ち続けるものであった。虚事態が底抜けに落ちていく感覚がある。
「私の愛は、何処に」
 わからない。
 どうしようもない欲求だけがある。
 虚の如き感情があってなお、それでも求めるもの。五卿六眼の『欠落』を求めてしまう。求めたところで、本当に求めたものが手に入るわけではないのに。

「見果てぬ夢のよう」
 故にどうしようもない感情だけが彼女の中に渦巻いていた。
「それは、俺が愛した者達へ、お前が与えた苦痛の対価に過ぎない」
 ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)は告げる。
 目の前の『狂愛の破壊者・アプロディテ』の姿をみやり、醜いと思った。
 猟兵達の攻勢を前に摩耗した姿。
 血に塗れた姿。
 苦痛を苦痛とも認識できぬ姿。
 それを哀れと思うこともなかった。

 何故なら、その苦痛を認識できぬ苦痛のままに過去で停滞することこそミカエルは望み放置していたからである。
 しかし、それが存在し続けることが世界の歪みとなることを知るのならば、その存在がにじみ出ること事態に終止符を打つことをしなければならない。
「ああ、どちらにせよ」
 目の前の存在は己を認識できないだろう。
 虚の如き感情。
 執着のようなものも、何もかも『欠落』という穴に飲み込まれてしまったのだ。

 彼女が過去に抱えていたものは、すでに無い。
 あらゆる苦痛に耐える強さも、涙を喪った姿も。
 ミカエル自身のものであるからだ。あらゆる苦痛と恥辱の結果。
 目の前にあるのは『アプロディテ』が求めたものではない。
「目の前に居る俺は、お前たちが作り上げた|戦神《オレ》だ。とすれば、それに討たれるのは、謂わば自業自得だ」
「私の愛は此処にはないのですか。私が求めたものは、何もない。暗闇だけが目の前に広がっている」
 光背の如き百腕の異形の身体部位。

 それが蠢くようにしてミカエルへと迫る。
 まるで救いを求めるようでも在り、また同時に彼女が喪ったものを贖おうとするかのようでもあった。
「俺はお前に愛どころか関心の一つも向けなかった。どれ一つとして、奴隷が主に向ける感情ではないからだ」
 いかなる関係性があろうとも。
 それでも感情というものは言葉によって揺らめくものである。感情が言葉を紡ぐように。
 不可逆ではないにせよ、しかし、たどり着けぬものである。
「私は」
「もういい」
 ミカエルにとって、その姿は見苦しいものだ。 
 愛がないと叫ぶ姿も。
 ただ只管に喚き声にしか聞こえない。

 何もかも己の手の内側からこぼれ落ちたのではなく、自ら手放した癖に、とミカエルは見下げ果てるように迫る百腕を振り払う。
 弱い、と思った。
 これまで猟兵たちが重ねたユーベルコードの煌めきが、彼女の力を削ぎ落としてきたのだ。
 故に、その攻撃はミカエルに触れる前に霧散していく。
 戦いにすらなっていないと思っただろう。
「『見苦しい』」
 その言葉が相応しい。
 彼女が最も忌み嫌う言葉。

 だが、止まらない。
 わかっていないのだ。届いていないのだ。ミカエルが関心を向けなかったように。『狂愛の破壊者・アプロディテ』の虚の如き感情が見つめるのは、『今』のミカエルではないのだから。
 過去に囚われ、停滞し、歪み果てた存在。
 故に止まらない。
「面倒くせぇな」
 吐き捨てる。
 どうしようもない感情を抱えるだけ抱えて、歪み果てる姿など見たくもなかった。

 だからこそ。
「もう終わりにしましょう、『キュテレイア』様」
 それは愛を司りながら愛を知らぬ名。
 故に、ミカエルはつぶやく。
 きっと彼女が最も求めた言葉であろうから。けれど、それは慈悲ではない。
 ただの嫌味だ。
 そう呟けば灯る光があると知るから。
 けれど、それは痛烈な一打となって彼女の残された虚のごとき心を砕くだろう。求めたときには与えられず。求めることを忘れたが故に得られた、その言葉。

 その衝撃に身は耐えられない。
 強大な降り注ぐ『赤い光』の力に振り回されるように。
 ミカエルの言葉で、その身はひび割れ砕けていく。唇が言葉を形作るけれど、それは彼の耳には届かない。
 届かないことが運命であったというのならば、皮肉でしかないだろう。
「結局これも自業自得だ」
 全ての因果が己に返ってくる。
 今更説くつもりもない。

 その光景を『六つの赤い月』だけが見ている。
 光は降り注がず。
 無関心と執着。
 その二つが織りなした結末の一つが、今此処に崩れて消えていく。
 清算するように。
 二度とにじみ出ることのない過去が、骸の海の底へと沈んでいく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年06月04日
宿敵 『狂愛の破壊者・アプロディテ』 を撃破!


挿絵イラスト