#UDCアース
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寄せる白波。揺蕩う水面。そのずっと奥深く、光すら拒む領域で巨大な泡が立つ。命の気配を遠ざける深海で目を醒ました〝それ〟は、白磁のような体を音も無くぬらりと翻した。ここには、何もいない。
自然と〝それ〟は上を目指した。上へ、上へ。誰かが、呼んでいるから。その声だけを頼りに。
ああ。なんだか、ひどく腹が減った。
●
雨が降り続ける季節に差し掛かった世界も多い。UDCアースもその例に漏れず、昨今は雨続きだ。豊かな雨水を受けて命が活性化する季節でもあるが、雨雲と低気圧が連れてきた湿気で体力を消耗する者も多く、どことなく重い空気が漂っている。時季の都合などお構いなしにグリモアベースへ呼び出された猟兵達の中にも、不調な者はいるかもしれない。
「ダウンしてるやつも多い中で悪いが、UDCアースで一仕事頼む。とある邪神を信奉するカルト教団の拠点が見つかってな。そいつらが余計なことをしでかす前に潰すだけの仕事だ、簡単なもんだろう」
グリモア猟兵の杜・泰然(停滞者・f38325)は不満の声を零す誰かの声を適当にいなしながら話を進めてゆく。
今回見つかった教団は海辺の町を拠点としているらしい。海水浴ができるような砂浜こそ無いが、離島への遊覧船等も出ている観光地だ。地域の中でも一番の目玉は水族館であり、UDCアースの中でも屈指の規模を誇る設備を有しているのだとか。小型の魚類から大型の海洋哺乳類まで飼育されているそこは、未だ夏真っ盛りではないとはいえ既に多くの客で賑わっている。聞けば聞くほど、邪神崇拝のカルト教団には似つかわしくない印象だ。敢えてそれを隠れ蓑にしているというのなら、なるほど確かに賢いかもしれないが。
「教団は近々良からぬものを召喚しようと目論んでるらしい。〝海〟っていうロケーションが重要なのか、儀式は海の見える場所で行われる。それも、件の水族館と目と鼻の先でな」
何が召喚されたところで、近距離にあるのならばまず狙われるのは水族館だ。猟兵達としては、多くの一般人が出入りする施設を襲われるのは絶対に避けたい未来である。
であれば、教団が儀式を始めるよりも前──更に言えば拠点から外へ出るよりも前に叩くのが最善だと言えるだろう。
「連中は儀式の準備にえらく熱心でな。まだこっちの動きには一切気づいてないらしい。奇襲をかけて潰すなら今しか無い」
教団の拠点は小さな港にある。遊覧船が出航する場所から少し離れた位置には貸倉庫が集まっており、内ひとつに地下通路を作って隠れて活動している。教団員は勿論だが、警備のためにオブリビオンの群れが徘徊しているので注意が必要だとも泰然は語った。
話がひと段落つき、猟兵達は転移の準備へと入る。すっかり出撃のムードになりはするが、しかしそれでも気分が乗らない者の姿も少数見受けられた。各世界の治安は安定と不安定を繰り返し、戦いに未だ終わりは見えない。それに加えて季節性の気怠さだ。如何な猟兵とて、どうしても不調な時ぐらいはあるだろう。
公言できる立場ではないとはいえ泰然も医者だ。職業柄なのか、気乗りしない様子を見せる猟兵に見かねて声を掛けた。
「まあ、心底から無理なやつに行けと無理強いする気は無いが……全部片付けたら、さっき話題に挙げた水族館にでも行ったらどうだ? それぐらいの時間はあるだろ」
水族館であれば屋内は冷房も効いているし、何より涼しげな光景が水槽いっぱいに広がっている。鬱屈としがちな梅雨の空気を払うにはちょうど良いだろう、と泰然は言う。それを聞いた猟兵達は少し気持ちを持ち直したようで、先程よりも軽い足取りで転移の準備へと移行していった。
泰然はというと、その様子を見送り呆れたように、けれども安堵したようにため息だけを零す。どれだけ世界を救う力を持っていても、季節や天気の影響を受けて不調を訴える猟兵はいる。それはまるで、世界に拒まれているようにも思えてしまった。
──無用な感傷だ。泰然はそこで思考するのを止め、自らも転移を開始した。
マシロウ
閲覧ありがとうございます、マシロウと申します。
今回はUDCアースでの事件をお届けいたします。「邪神教団の拠点への奇襲および制圧」のが目的となります。参加をご検討いただく際、MSページもご一読ください。
●第一章
集団戦です。とあるカルト教団の拠点が海辺に存在することが判明しました。幸い、教団側は邪神召喚の儀式に気を取られていて猟兵達の動きに気付いていません。拠点に奇襲を仕掛け、まずは防衛に配置されているUDC怪物の群れを殲滅してください。
●第二章
ボス戦です。教団が邪神の一柱を召喚したことで、辺り一帯が海に呑まれた状態での戦闘になります。かの邪神を倒せば周囲は元に戻るでしょう。
●第三章
猟兵達の活躍のおかげで、近隣の水族館も被害を被らずに済みます。せっかくなので残りの時間を水族館でゆっくり過ごしませんか?(第三章のみ、お声掛けがあれば弊グリモア猟兵の泰然も少し顔を出します)
6月11日 8:31からプレイング受付を開始いたします。
オーバーロードのみ受付開始前のプレイングが可能ですが、各章の雰囲気を掴みやすいよう断章を投稿予定ですので、まずはそちらをお待ちいただけますと幸いです。プレイング締切や第二章以降の受付開始日につきましては、タグやMSページをご確認ください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 集団戦
『マリアネスの戦士』
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POW : 深海の使徒
【毒のある触手や棍棒】で武装した【人ほどの大きさの蛸】の幽霊をレベル×5体乗せた【巨大な深海魚】を召喚する。
SPD : 深海の誘い
命中した【触手】の【先端、もしくは張り付いた吸盤】が【人間の肉体を同族に造り換える器官】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ : 深海の夢
【妖艶な踊り】を披露した指定の全対象に【この踊りに参加し、永遠に踊りたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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遊覧船が出航してしまった後なのか、港は静かだ。人が集まる繁華街のような喧騒は無く、ただ波音だけがあたりの空気を洗っている。視線を上げれば、季節のせいなのか曇天が広がっていた。じきに雨が降りだすかもしれない。
貸倉庫が並ぶエリアまでやって来た猟兵達の目的はひとつだけ。カルト教団が根城としている倉庫のみである。早々に件の倉庫を発見した猟兵達は、足音を忍ばせて内部へと侵入する。生き物の気配が僅かながら感じられるので、中に何者かが潜んでいるのは明白だった。
昼間だというのに倉庫の中は薄暗い。湿った空気が立ち込め、どうにも不気味な気配が拭えなかった。地下への扉は大きな荷物の陰に隠れるように設けられており、鍵も掛かっていないのですぐに開くことができる。扉の先に姿を現した下り階段からは、生温い風を吹き上げて猟兵達の頬を撫でていった。
ぴちゃり。階下から水音がする。
僅かな光を頼りに見えたのは、地下通路を這う軟体生物の姿だ。人のような形を有しながら、湿った触手を脚のようにして器用に歩き回っている。何事か歌い、呟きながら徘徊している様子から、おそらく地下の警備を任されているUDCなのだろう。未だこちらに気付いている様子は無い。騒がれる前に奇襲で片付けるのなら、今が好機と見えた。
誰からともなく目配せし、頷く。猟兵達は各々の武器に手を添えると音も無く散開し、警備用UDCへと躍り掛かった。
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北・北斗
『近くに海と水族館という事で、おいらも出てくるですよ』
海辺という事で、猟兵が山間から襲撃中に相手の隙を付くかのように海から出てくる。
そして、スピード重視でUC使ってアシカ(全部オス)を6頭呼んで敵に錯乱戦法を仕掛ける。
そして、タコっぽいといえど、のしかかって、1.7tの体重でプレスすれば圧死するであろう。トド呼んで同様に敵に圧し掛かる
『セイウチ呼べればもっとよかったんだけどねぇ(セイウチはセイウチ科という別枠)』
アドリブ歓迎
一言で猟兵と言ってもあらゆる種族が存在する。人とは程遠い姿かたちを持つ者も少なくはなく、北・北斗(遠い海から来たトド・f20984)もその内のひとりと言えた。
教団の拠点までの移動は他の猟兵と異なり、海を泳いでくることにした。北斗がかつて生まれ育った海と比べれば、随分と温暖な海だ。生物の気配も多く、水棲生物にとっては良い環境のように思える。だが、今はどこか不穏な気配にも侵されている──そんな心地を覚えた。
『近くに海と水族館ということで、おいらも出てくるですよ』
故郷と異なるとはいえ、海を悪事に利用するのは許し難い。そんな思いで勢いをつけて水面から跳び出し、陸へ上がる。突然の登場に他の猟兵を驚かせる、といった場面もあったが、テレパシーで意思疎通が図れるので事無き得たのは別の話だ。
海洋生物の中でも大きな北斗の体は陸上でも活動できるとはいえ、脚が無いのでどうしても全身を引き摺ることになってしまう。潜入対象である倉庫へ足を踏み入れ、地下へ下りるまでは苦労したものだが、UDCと遭遇からの戦闘ともなればその動きは機敏なものとなった。
侵入者に気付いたマリアネスの戦士は蛸にも似たその触手を次々と伸ばし、猟兵達を捕らえようとする。体が大きな北斗は狙いやすいのか、回避した先から次の触手が迫ってきた。ただのトドであればすぐに捕獲されていただろう。
触手を回避しながら、北斗が吠える。地下通路にびりびりと響き渡る重低音は、やがて何処からか反響する別の声へと変じていった。その場にはいない筈の者の声。高速で地を這って駆け付けてきた、六匹のアシカ達の声だと判明するまでそう時間は要さなかった。
『みんな、あいつら引っかき回しちゃって』
常人であればトドが無作為に鳴いているだけの光景だ。だが、助太刀に来たアシカ達からすればそれは正確な指示である。一糸乱れぬ動きでマリアネスの戦士を数体取り囲むと、連携の取れた動きで一匹ずつ分断してゆく。
『セイウチ呼べればもっとよかったんだけどねぇ』
トドと混同されがちな、もう一種の海の巨獣。彼らを呼ぶことができれば頼もしい戦力だったろうが、生憎と彼らは北斗達とは別種だ。呼べば無条件で駆け付けてくれるアシカ科の仲間とはどうしても隔たりがあった。
いない者を当てにしても仕方が無い。アシカ達が攪乱に専念している以上、敵にとどめを刺すのは北斗の役目だ。味方と分断されたマリアネスの戦士がアシカを一匹、触手で捕らえる。連携を崩して活路を見出そうとしたのだろうが、既に遅かった。
マリアネスの戦士に大きな影が差す。それは、猟兵の身体能力と持ち前の超能力を用いて跳躍した北斗の、1.7tもの体による影だ。天井から、マリアネスの戦士目掛けての落下。北斗を超える巨体でもない限り、落下した彼の下敷きになって無事でいられる者はいないだろう。それを理解したからこそ、マリアネスの戦士は捕らえたアシカを放り出して逃走しようと触手を蠢かせた。
だが、全ては手遅れだ。強い地響きと共に、北斗の体は冷たいコンクリートの床へ落下する。強靭な筋肉と豊かな脂肪に守られているおかげで北斗は無傷だが、その真下にいた敵は見るも無残な姿となっている。北斗はよっこいしょ、という和やかな掛け声と共に敵の骸から体を降ろした。
『一体ずつ順番にやっていくですよ』
数をこなせない代わりに一体ずつ、確実に仕留める。北斗やアシカ達からすれば、小魚の群れを食い尽くす狩りとそう変わりは無かった。
大成功
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シン・クレスケンス
【WIZ】
「奇襲ですか。でしたら万全を期して―」
梟の姿の精霊『ノクス』に目配せ。
警備のUDCを巻き込んで【隔絶結界(指定UC)】を展開。
敵に気付かれないに越したことはないので、そのまま隠密行動。
影の中に潜ませている闇色の狼の姿のUDC『ツキ』が『早くオブリビオンを喰わせろ』と不服そうに。
彼をなだめながら、消音装置を付けた詠唱銃(【破魔】の銃弾)で警備のUDCを倒していきます。
たとえ僕らの存在に気付いたところで、もう遅い。
此処は結界外の空間とは隔絶されているのですから、応援を呼ぶことすら出来ないでしょう。
「ツキ、出番ですよ。存分に暴れて構いません」
影の中からツキが現われ、敵UDCに飛び掛って―
UDC組織のエージェントにも得意分野はあり、その分類は多岐にわたる。シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は目立った動きでの陽動より、隠密行動から対象に接触する方が向いていると言えるだろう。その理由は常に冷静に立ち回れる彼自身の性質と、そんな彼と行動を共にするUDCの能力との相性が良いから、の一言に尽きる。
猟兵達の奇襲を受け、教団の根城へと続く地下通路は警備役のUDCで溢れ返っている。迎撃に打って出るマリアネスの戦士の群れを、シンは物陰から静かに観察していた。
「奇襲ですか。でしたら万全を期して―─」
肩に留まる梟──精霊ノクスに目配せをする。眼鏡越しに光るシンの目を見て、ノクスは全ての意図を理解したかのようにホウとひと鳴きした。
ノクスの声はほんの微かなものだった。けれど、どこか無限に広がってゆきそうな響きを湛え、耳にした者は前後不覚になるような、そんな心地がする。群れを成したマリアネスの戦士の内数体がそんな声を認識した時には、既に周囲は静まり返っていた。
先程までと変わりない地下通路だ。薄暗い照明も、冷たい壁と床も、何も変わりはない。だが、あれほどひしめき合っていたマリアネスの戦士はほんの数体に減り、猟兵達の姿も無い。取り残された個体は用心深く周囲を見渡しながら、索敵しようと通路を練り歩く。だが、たったそれだけの行動が、何故だか上手くできなかった。慣れた筈の環境だというのに、まるで方向感覚を根こそぎ奪われてしまったかのようだ。
ノクスの結界によって迷宮に隔離され混乱しているマリアネスの戦士の様子を窺いつつ、シンは足音も無く接近する。足下の影からUDCのツキが不満を訴える気配を感じるが、今はまだ彼の出番ではない。今にも敵を貪りに出てきそうなツキを宥めつつ、遮蔽物の無い最適な位置を陣取ったシンは詠唱銃を構えて迷わず発砲した。
サイレンサーで音を極限まで抑えた発砲は敵に気付かれることも無く、あっけないと言えるほど簡単に着弾する。撃たれた個体は何が起こったのか理解するよりも前に絶命したことだろう。あのUDCにそこまでの知能があれば、の話だが。
すぐに次の障害物の影へ隠れ、そして隙を見て発砲を繰り返す。一撃必殺でなくとも構わない。ここは既にノクスの結界の内側だ。仕留めきれずとも、相手を混乱させるには充分だった。
「此処は結界外の空間とは隔絶されているのですから、応援を呼ぶことすら出来ないでしょう」
相手もそれを理解しているのか、今いる者達だけで対処しようという動きを見せる。武器を構えて攻勢に出る者の中、踊るような仕草を見せる者も見受けられる。|味方を鼓舞する《バフ》効果があるのか、それとも|敵の注意を引き付ける役割《デバフ》なのか。どちらにせよ、その効果が表れるよりも前に片付ける必要があった。
「ツキ、出番ですよ。存分に暴れて構いません」
シンの呼び掛けと共に、足下の影が大きく揺らぐ。膨張と収縮を繰り返し、やがて床という〝平面〟を抜け出した闇色の塊は獣の形を取り始めた。それは大きな狼に似ている。足先に青い炎を灯し、金の双眸で獲物を捉えるその姿は、まさしく捕食者そのものだった。
影のUDC・ツキは低く喉で唸るとマリアネスの戦士達目掛けて駆け出し、その牙を剥く。鋭い牙が突き立てられた箇所からぶちぶちと肉と皮を裂く音がした。触手に噛み付かれたマリアネスの戦士は悲鳴ともつかない奇声を上げてツキを振り払おうとするが、膂力で勝るツキに逆に振り回され、裂けた触手からは生物とは思えない色の体液が噴き出した。
ツキはそれでも蹂躙するのをやめない。彼にとって〝食事〟は、まだ始まったばかりだ。
「まあ、本当に美味しいのかはさておいて……敵の頭数も減らせて、ツキの鬱憤も晴らせた。この上なく重畳です」
シンが残る敵をツキに任せたところで、結界の向こう側──教団が行おうとしている儀式の方に僅かな動きがあるのを察知する。残された時間はあまり多くはなさそうだ。例えここに自らが探し求める魔術の手掛かりが無くとも、己に課せられた役目は全うする。胸中で改めて確かめたのち、シンは地下通路の先から漂う禍々しい気配の根源をその視線で辿った。
大成功
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海藤・ミモザ
【海鍵】
そう言えば私もUDCのお仕事は初めてかも
自宅はここなのにねー
元は幽世だから合ってるよ♪
居候してるお家がここなんだ
海である必然性があるっぽいからそうかも?
うん、じゃあ作戦通りに!
私は自分達にオーラ防御かけてから
カウンターLv100の妖精さん達を敵とドルデンザさんの間に展開
敵の踊りには妖精の踊りを披露し返してあげる!
どう?ずっと一緒に踊ってたくなるでしょ?(にま
そうして足止めするのが狙い
今だよ、ドルデンザさん!
私も周囲の水からエネルギー充填して
愛銃でエネルギー弾による水の属性攻撃
各個撃破をお手伝い
敵の攻撃は見切り、クイックドロウでカウンター
ここは私の世界だもん
邪教集団の好きにはさせないよ!
ドルデンザ・ガラリエグス
【海鍵】
おや、ミモザさんもUDCは初めてで?
ご自宅こちらなんですか?てっきり…何と言いましょう、もう少しファンタジーな感じとばかり
勝手な思い込み、失礼いたしました
海にまつわる…海洋生物でしょうか?それはそれで見てみたい気も
さ、始めましょう
何とも屈強そうな方々ですが…脚でも捥いでしまおうか
UCで得物を振るいつつ目立つように立ち回る
私、踊りは音楽が欲しい派でして
…それと、
大変申し訳ないのですが、私は裡に飼っているものが多い
どうか貴女が変わらないことを祈ります
ええ、首が付いているうちに
攻撃はは足や首など生物的急所を狙い
怪我も辞さないつもりだが極力気をつける
ミモザさんのタイミングに合わせ間断無い攻撃を
「そういえば、私もUDCのお仕事は初めてかも」
波の音を遠くに聴きながら、海藤・ミモザ(millefiori・f34789)は何とはなしに思いついた事実を口にする。目的の倉庫を目指す足取りはそのままに、共にUDCアースの海辺へ赴いたドルデンザ・ガラリエグス(拳盤・f36930)はミモザの言葉に意外そうな面持ちで返した。
「おや、ミモザさんもUDCは初めてで?」
「うん。自宅はここなのにねー」
ミモザがUDCアースに身を寄せてどれほど経っただろうか。すっかり縁深くなった土地で戦うことになるのは、実は今回が初めてだ。ドルデンザはというと、ミモザがUDCアース在住だと知って二重の驚きを得たところだった。大袈裟な反応こそしないが無骨なガントレットで覆われた手を顎に沿え、「ふむ」と関心を示す。
「ご自宅、こちらなんですか? てっきり……何と言いましょう、もう少しファンタジーなかんじとばかり」
花の妖精である彼女の住まいを想像しようとすると、自然と神秘的な光景を思い浮かべる。確かにそれがスタンダードであるだろうし、今もそういった環境で生活する妖精もいるだろうが……。ドルデンザは己の価値観が未だアップデートされていなかったことに気付き、恥じ入った。
「勝手な思い込み、失礼いたしました」
「元は幽世だから合ってるよ。居候してるお家がここなんだ」
ミモザは特に気にする様子も無く、むしろ律儀なドルデンザの謝辞に対して楽しげだ。こういった些細なやり取りで自分のことを知ってもらうのは、どんなに小さなことでも喜ばしいことである。
教団が身を隠しているという倉庫へ足を踏み入れてからは会話は途切れ、二人は息を潜ませる。足音を殺して地下への階段を下りれば、警備役のUDCが冷たい地下通路を這い回る姿が目に入った。蛸に似た触手を脚のようにして動く様子から、一定の知能があるようにも思える。警備役を任された彼女達の姿から、もしかしたら教団が喚び出そうとしている邪神も近い属性を持つのかもしれない。興味が無いといえば嘘になるが、せっかくならばこの近くの水族館でその欲は満たしたいものだった。
「さ、始めましょう」
「うん、じゃあ作戦通りに!」
互いに目配せして頷き、手筈通りの位置につく。他の猟兵達とも足並みを揃えて奇襲をかければ、不意を突かれたマリアネスの戦士はほんの一瞬の隙を彼らに許すこととなった。
ミモザが防御壁を展開すると同時に周囲を舞った光は、彼女の呼び声に応えた妖精達だ。楽しげにくすくすと笑う声が自分とミモザの周囲を飛び回るのを、ドルデンザもその耳で実感する。信頼の置ける援護を得たのなら後ろを振り返る必要は無い。
ドルデンザは真白の鞘に納まった菊華謐貌へ大きな手を添える。きん、と鯉口を切る短い金属音と共にその大柄な体が敵との距離を一気に詰めた。一瞬で肉薄する彼の剣は容易に避けられるものではない。その速度もさることながら、仕立ての良いスーツを纏ってなお敵を威圧する大刺青が、身動きを取ることなど許さない。マリアネスの戦士の主な武器は触手であると踏んだドルデンザは、その刃が届く範囲に立つ敵の動きを触手を斬り落とすことで次々と封じていった。
ミモザもまた、愛用の銃を手に遠距離攻撃での支援に入る。ドルデンザが討ち洩らした敵や、彼の攻撃範囲外にいる個体を撃破するのも今回彼女が買って出た役目だ。
ふと、敵の群れ全体の動きが変わる。決まった間隔で並び流麗な動きを見せる彼女らの姿は踊っているようにも見えた。眺めているに限れば美しいとも言える。だが、ミモザの防護壁越しに感じる違和感から、精神干渉の力が働いている踊りだとすぐに理解が及んだ。
「心を揺り動かすほどの技量はお見事ですが、私、踊りは音楽が欲しい派でして」
ドルデンザの駄目出しに、ミモザはつい笑みが浮かんだ。音楽を、そして自身の思う〝美しさ〟を大切にしている彼の性質は、敵の精神干渉を前にしても揺らがない。
「音楽は添えられないけど、これならどう?」
ミモザの指示に従い舞い飛ぶ妖精達が、今度はマリアネスの戦士の群れを取り囲む。反撃に特化した妖精達は敵とはまた異なるリズムを刻んで踊り、一気にその場の空気を掌握してしまった。中には妖精の踊りにつられて動く者も現れ、敵方の連携は崩れたも同然だった。
「どう? ずっと一緒に踊ってたくなるでしょ?」
してやったり、と言うようにミモザは悪戯っぽく笑う。それに呼応するように妖精達もまた、くすくすと声を洩らして笑っていた。元来、妖精とは悪戯好きの者も多いらしい。もしかしたらミモザにもそういった性質があるのかもしれない──が、これぐらいの悪戯ならば可愛らしいものだ。そして、今はそれに大きく助けられている。
「今だよ、ドルデンザさん!」
ミモザの掛け声を受けてドルデンザが敵の懐へと飛び込む。妖精によって動きを乱された敵の多くは、咄嗟の防御も叶わず菊華謐貌の露と消えた。
大凡の頭数は減らせたか、と周囲を見渡そうとしたドルデンザの視界の外から鋭い敵意がその身を射抜くように向けられたことに気付く。そちらへ振り返るのと、敵意の具現が飛んできたのはほぼ同時のこと。その触手はドルデンザのガントレットに弾かれるもなお追い縋り、片脚を絡めとって動きを封じに掛かってきた。
「ドルデンザさん! 待ってて、今助けに……!」
「いいえ。ミモザさん、決してこちらに近づいてはいけません」
援護に向かおうとするミモザを、ドルデンザはその声だけで制止する。ただ身動きを阻害しているだけではない。敵の触手が触れた箇所に感じる違和感は、まるで体の細胞を無理やり作り替えられるような不快感に近い。その感覚で、彼女らに雌の個体しかいないことにも合点がいった。こんなもの、ますますミモザに触れさせるわけにはいかない。
(なるほど。雌雄を必要とする生殖よりよほど簡単だ)
捕らえた獲物のうち何体かを、こうして同族へと作り替えることで生き永らえてきたのだろう。確かに受胎や出産という多大な労力を伴わない分、こちらの方が効率は良いように思える。問題があるとすれば、それを大人しく受け入れるほどドルデンザが弱ってはいないということだ。
「大変申し訳ないのですが、私は裡に飼っているものが多い」
後からやって来た侵入者を易々と許すほど微温湯に浸かっているつもりは無い。むしろ、軽々にドルデンザの細胞に干渉したことで、内なる存在の神経を逆撫でしたようなものだった。
「どうか貴女が変わらないことを祈ります。ええ、首が付いているうちに」
ふいにマリアネスの戦士の触手が、ドルデンザの脚に触れていた箇所から炎上する。奇声を上げて炎を振り払おうとするその動きの隙を突いて触手を掴み上げ、逃げ果せることの無い距離へ引き寄せた。他の個体がそちらへ群がろうとする動きを見せるが、ミモザの正確な射撃によって防がれる。
焼け爛れた触手を掴まれ逃げ場を失ったマリアネスの戦士の首へ、静かに刃が突き付けられる。地下通路を薄らと照らす照明を受けて鈍く光るそれに、殺意と呼べる激情を乗せてはいない。ここで彼女らへ割く感情などドルデンザは持ち合わせていなかった。だからここでやることは、ただ作業のように敵の首を刎ね、そして次の戦いへと赴くのみだ。
大成功
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アーネスト・シートン
水族館の近くで妙な事をしでかそうとする邪教団ですか…
やらかした結果、周囲だけではなく、地球そのものにも打撃を与えるという時点で容認できないのですけどね。
邪神がどんなものかも考える余地はあるのですけど…もしかして、たまに見かける魚類系の邪神なんじゃないかと思えてならないのですけっどね。
前に潰したおにぎり屋にも鮭の邪神がいましたからね。
それじゃ、侵入していきますか…
感じとしては魚人系、それもタコの系列ですかね。
一番無難そうなのが眠らせる事ですかな。
それじゃ、爆さん、おねがいします。
敵が眠ったら、目と目の間を撃ち抜いて行きます。
「タコの弱点は目と目の間って、話に聞いてますからね」
「水族館の近くで妙な事をしでかそうとする邪教団ですか……」
森で生まれた身の上だが、アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)にとって保護すべき対象は海にまで及ぶ。邪神の招来が果たされたのなら水族館で飼育される生物は勿論のこと、この一帯で生きる海洋生物が死に絶えることになるだろう。海に出た影響はいずれ世界中へと広がる。やがてあらゆる命を|脅《おびや》かすであろう教団の行いは、アーネストとしても決して容認できるものではなかった。
招来の儀式に海が必要不可欠、という点から邪神は魚類のようなものが予想される。既存の生物に近い形をしていれば、アーネストの持つ知識から弱点を割り出せる可能性もあるが、それも実物を見てみないことには断言できない。
(前に潰したおにぎり屋にも鮭の邪神がいましたからね)
かつて遭遇した邪神の姿を思い返す。邪神、という時点で充分な脅威ではあるのだが、そんな神が相手であればまだ可愛い方だろう。自身が対処し得る者が相手であることを切に願いつつ、アーネストは他の猟兵達と連れ立って地下へと侵入を果たした。
通路を警備するUDCは人のようにも見えるが、軟体生物の特徴を多く有している。アーネストの目には、彼女らの触手が烏賊ではなく蛸のものであることがすぐに判別できた。アーネストが担当した方角にはそれなりの数の敵が集結しており、まともに相手をするのは憚られる。
如何なUDCといえど、そして強靭な戦士といえど、生物である限り一定周期で活動と休息を行う筈だ。マリアネスの戦士に〝睡眠〟という概念と機能があることを予想したアーネストは、音も無くユーベルコードを発動する。
「それじゃ、爆さん。おねがいします」
努めて声を潜めて、いつの間にか傍らに現れていたバクへ呼び掛ける。バクは返事のつもりなのか低く鳴き、その声をじわりと辺りへ響かせた。空間そのものを揺らすような不思議な響きを持つ声がマリアネスの戦士のもとへ届く。通常であれば侵入者の存在を感知して戦闘態勢に入るのだろうが、今の彼女達にそれは叶わない。
先程まで凛々しくつり上がっていた目は、とろりと落ちてきた瞼に覆われる。ある者は欠伸をして、ある者は冷たいコンクリートの床へ蹲りそのまま眠ってしまった。
「本来は傷を回復させるためのものですが……すみません」
念の為に言い置きつつ、アーネストは予め握り込んでいた銃を構えてすかさず発砲する。弾丸は眠りに落ちて身動きの取れないマリアネスの戦士の眉間へ着弾し、そのまま貫いた。それは大きな苦しみも無いまま致命的なダメージとなったのか、撃ち抜かれたマリアネスの戦士が再び起き上がってくることは無かった。
「タコの弱点は目と目の間って、話に聞いてますからね」
どうやら、その知識が通用する相手のようだ。眠気に抗って襲い掛かろうと群がってくる敵に向けて、アーネストは正確に射撃を続ける。中にはこちらの精神を乱す踊りで反撃を図る個体もいたようだが、その効果が出るよりも先にバクが次なる睡眠の波動を放つことで防がれた。
一時的な眠りから、永遠の眠りへ。骸の海へ還るだけの彼女達にとって、死も眠りもさして違いは無いのだろうが。
そしてアーネストにとっては、これは駆除や掃討というよりも外来種を元いた海へ帰す作業に近いのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ連携歓迎
調息、脱力、場と氣の流れを『観』据える。
(……さて)
周囲の氣の流れに自身のそれを同調させて気配を希釈。
終始隠密を重視する行動を取る。
先ずは情報収集。
周囲の地形状況と建物の間取り、敵の数と配置、移動経路を確認。
仕掛けるのは極力敵が1人か2人になったタイミングで。
死角から接近、あるは待ち伏せて奇襲。
敵は軟体系。
単純打撃では効果が薄く、倒しきるのに時間が掛かる上に、大きな音が立ち易い。
故にUCと氣の収束で強化した手刀・足刀による急所狙いの斬撃で極力速やかに且つ静かに殲滅する。
なるべく敵がUCを使う前に倒したいが、『使徒』を召喚された際はそれらとの戦闘は避けて術者を速攻で倒す。
狭い場所での戦闘はこれまでもいくらか経験している。人工的な建造物内、それも地下通路となると取れる行動も限られるが、それでもやれることは探せばいくらでも出てくるものだ。上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は呼吸を整え、体から余分な力を抜く。意図的に削ぎ落とした自分の力が、この場を掌握する氣に溶け出してゆくような感覚。それは、この地下通路を巡る氣の流れが修介の手の中に収まるのと同義だった。
(……さて)
壁や床、空気に至るまで。至る所に満ちる氣に、自身の内に流れるそれを同調させる。今回の戦闘はあくまでも〝奇襲〟だ。仕掛ける直前までこちらの気配は殺し、相手に気付かれるよりも前に仕留めるのが理想的と言える。
修介は薄れた気配と障害物を駆使して地下通路内をよく観察する。間取りはほぼ一本道だ。扉も数か所見受けられるが、その中に敵の気配は感じられない。通路にひしめくマリアネスの戦士の数は多いが、同行する猟兵の数を思えば決して対処できない数ではなかった。
(軟体系か……単純な力業だと時間を取られるな。組み付かれても厄介だ)
ここで時間を食われると、邪神招来儀式の阻止に間に合わない。単体ずつの対処にはなるが、確実に倒してゆく手段を取る必要があった。
ふと、直角の曲がり角となった通路の先から巡回中の敵が這う音が耳に届く。音からして向かって来ているのはおそらく単体。他の猟兵達もそろそろ動き出す頃合いだ。修介も、奇襲を仕掛けるのなら今だろうと判断して角の陰で敵を待ち伏せた。
一歩、一歩。角のすぐそこまで。マリアネスの戦士が伸ばした触手の、その先端が見えたところで修介は曲がり角から飛び出し腕を振り抜く。その掌は常のような拳ではなく、一直線の手刀を形作っていた。修介の手刀はマリアネスの戦士の体に触れることは無い。だが、手首から指先、そしてその更に先に至るまで集束させた氣の刃は確かに敵の肉を斬り裂いた。
敵は襲撃に怯むものの多方から触手を伸ばすことで反撃の意思を見せる。だが、こういった手合いが狙う箇所は大抵、四肢か首。それさえ念頭に置いておけば回避可能なものだ。脚を狙うものを避け、首を狙うものを払い除ける。その間も、修介の視線は敵の急所へと狙いを定めていた。
(急所。人体に近いのなら胸部、首か)
彼女らに人と似た心臓があるのかは分からない。だが、どんな生物であろうと首へのダメージは致命傷と成り得る筈だ。修介は敵との一歩分の距離が生まれたところで腰を落とし、そこから勢いをつけて敵の首目掛けて手刀と氣の刃による斬撃を見舞った。視覚では認識できない刃が、マリアネスの戦士の首へ深々と沈み、そして払う。完全な両断こそできなかったが、そこから噴き出す悍ましい色の体液の量から、致命傷を与えることができたと確信した。
奇襲は成功と言えたが、倒した個体のすぐ後ろに別の個体が控えていたことは計算外だったと言えるだろう。先行していた個体が襲撃を受けるのを目の当たりにして、こちらも武器を構えて襲い掛かって来た。修介は狼狽えることも無く、向けられた触手を一本、二本と手刀で斬り落とし、塞がれていた道を切り拓くように相手へ接近してゆく。
まるで金属同士がぶつかり合うような甲高い音と共に、腕に衝撃が伝わった。修介の手刀を杖で受け止めたマリアネスの戦士は、そのまま力業で押し返そうと抵抗してくる。だが、修介にとって気に掛かるのはそこではない。彼女が斬撃を防ぐために前方へ構えた杖、その先に飾られた巻き貝が不穏な光を放っていた。
(近接戦タイプかと思ったが、術者か)
不穏な光は徐々に強くなり、すぐそばに薄ら寒い気配を覚える。相手が増援を呼ぼうとしているのを察した修介は、鍔迫り合いのように押し合う片腕はそのままに、床を踏み締める足先に氣を練り上げる。手刀と同じ要領で氣を纏った足は強靭な刃物を装備したようなものだ。
一気に力を込めて杖を弾いた瞬間を狙って、敵の胸部目掛けて蹴りを打ち込む。蹴りによる打撃と、氣の刃による斬撃を同時に受けたマリアネスの戦士は、悲鳴を上げる間も与えられない。先程まで繋がっていた上半身と下半身は全くの別物として分かたれ、べちゃりという音と共に冷たい床へと落ちた。それに反して乾いた音を立てて倒れた杖から放たれていた光は、いつの間にか消え失せてしまっていた。
修介は、絶命したマリアネスの戦士が蘇生しないことを確認して先へ進む。地下通路の奥からは、それこそ此処を訪れた時からずっと嫌な気配がして仕方が無かった。胸騒ぎが気のせいであれば良い。ただ、こういった時の予感は大抵、嫌な方向で的中してしまうものだと、これまで積み重ねてきた経験が語ってしまっていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『海零』
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POW : 縺薙?譏溘?逕滓擂謌代i縺ョ繧ゅ?縺ァ縺ゅk縲
単純で重い【巨体や、別次元から召喚した大量の水】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 陦ィ螻、縺ョ蝪オ闃・蜈ア繧√
【額や掌】から【強烈なサイキックエナジー】を放ち、【心身の両方への衝撃】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 窶晏卸荳匁峅縺上?∵オキ髮カ窶
【念力や別次元から生じさせた津波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を海に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:イガラ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠フォルティナ・シエロ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
群がるマリアネスの戦士を退けた猟兵達が向かったのは地下通路の最奥の部屋だった。邪神召喚の儀式がそこで行われているのは間違いない。通路を進めば進むほど生温く、重苦しい空気が漂い始めた。多数の人間が得体の知れない呪文を唱えている声が聴こえてくる。全てを唱えさせてはいけない。本能的にそう感じた猟兵達は、やがて見えてきた大きな鉄の扉をほぼ蹴破るように開け放った。
瞬間、地響きが部屋を揺らす。揺れはすぐに収まるがその直後、部屋で儀式を実行していた教団員と思しき人間達が次々と床に倒れ伏した。その誰もが絶命しており、体に傷ひとつ無いことから、自らを生贄として邪神召喚を行っていたことが窺えた。
早く外に、と誰かが叫んだ。彼らは邪神を召喚するのに海を必要不可欠とした。覚醒を果たしたかの神が最初に現れるとしたら──その場所は、海である可能性が高い。
猟兵達は急いで地下通路を抜けて階段を駆け上がり、地上へと戻る。その先で見た光景に一同は絶句した。
それはまさに海原だった。港は見る影も無く、自分達が立っているのは海上に浮かぶ僅かな足場のようになっている。船が巻き込まれたような様子は無いが、暗雲が立ち込め波が高く荒れてきているのを見るに、このままでは更に広い領域が海に呑まれてしまうことだろう。
ふいに、その場の全員が背筋に悪寒が走る感覚を覚える。何者かが、こちらを見ている。武器を構えて視線の元を追うと、そこにあったのは深淵のような黒だった。それが眼球であるのか、それとも落ち窪んだ眼窩であるのかは分からない。荒れ狂う波を割って海面から現れた〝それ〟は、白磁のような体をゆっくりと動かしながら猟兵達の方を見ていた。徐々に水より出でる体は、地上のどんな生物よりも巨大だった。
『遉シ雉帙○繧医?∝ー上&縺崎?』
そこに在るだけで生物を畏怖させる〝それ〟は、言葉のような音を放つ。地球上の……ともすれば他のどの世界の言語にも共通しないものだ。だが、その言葉が人類にとって良いものであるとはその場に居合わせた誰もが決して思えなかった。
邪神が雄叫びを上げる。海を、湿った空気を、そして僅かに残された足場を震わせる悍ましい声だった。
北・北斗
(うーん、たしか、シロイルカって呼ばれてた温厚な生き物の気がするんだけどねぇ…)
(でも、見た目と違ってなんかやらかしそうな感じもするし…)
(今でもここの状況からして放置するのもダメなんだけどね…)
『下手なことしないでほしい…なんて言っても、なんかするんでしょうね…周りの状況からしてやってるしね』
だったら、止めるしかないよ!
だから、その大きさに効くUCを使うよ
超重力領域…その大きさなら、確実に引っかかるだろうし、止まっているうちにサイコキネシスで動かせるもの(大きいのとか殺傷力強そうの)を奴の頭めがけて打ち込んでいく。
荒れた波を震わせる邪神の声は、北・北斗(遠い海から来たトド・f20984)の知るどの生物のものとも異なる。毛皮も模様も持たない白磁の体は海水に濡れててらてらと光っているが、不思議と〝生物〟という分類に含めるのは憚られるような雰囲気を感じてならなかった。
(うーん。確か、シロイルカって呼ばれてた温厚な生き物の気がするんだけどねぇ……)
強いて言うならばシロイルカに近い特徴を持っているようにも見える。だが、彼らのような知性と愛嬌のある相手かと問われるならば、答えは否だ。
(でも、見た目と違ってなんかやらかしそうな感じもするし……今でもここの状況からして放置するのもダメなんだけどね)
既に、かの邪神の出現によって辺りは海に呑まれようとしている。北斗は己の身を濡らす水が、人類は勿論のこと、世界中の生物を支配もしくは滅亡させようとする意志を持っていることを肌で感じた。あれは既存の生物とは相容れない存在。戦う前からそれを実感できてしまうのは哀しいことではあるけれど。
『下手なことしないでほしい……なんて言っても、なんかするんでしょうね……周りの状況からしてやってるしね』
テレパシーでの呼び掛けに応える声も無い。頭の奥にまで低く響く雄叫びだけが、邪神の声の全てだった。意思疎通が図れないのなら、力尽くで止めるのみ。北斗は瞬時に思考を切り替えた。
半身が未だ水中にあるまま邪神が前進を始める。幸いその動きは鈍く、充分に対処可能な範囲内だ。北斗は邪神の進路の一部を目視することで超重力領域を展開する。半径113mにも及ぶその領域であれば、邪神の体の一部は間違いなく捉えることができるだろう。
超重力領域を展開した北斗は滑るように海中へと潜り込む。大荒れなのは海面のみならず水中にまで及ぶようだが、北斗ほどの巨体であればその流れの速さにまだ耐えられた。邪神の体には触れないよう、だがその進路が決して逸れないよう見張りながら、海底に沈む大岩をサイコキネシスで持ち上げてゆく。邪神側も周囲を泳ぎ回る北斗の存在に気付いたのか、その巨大な腕で水中を薙ぐ。たったそれだけで海水は大きく掻き混ぜられ、逃げ遅れた魚が巻き込まれて大渦へ吞み込まれてゆくのが見えた。強制的に変えられた水の流れを読んで、北斗は大渦を回避する。先程巻き込まれた魚が成す術も無く渦から放り出されたかと思えば、まるで全身の筋肉が硬直してしまったかのような状態で辺りを漂い始めた。
(おいらのとは違うけど、サイキック能力かな?)
空間の一部の重力を操作することで相手の動きを封じる北斗とはまた異なる。単純に動作を封じるのではなく、精神にもダメージを与えることで抵抗の意思を薄れさせているようにも見えた。そう考えると、あまり戦いを長引かせるのは得策ではないだろう。
ふと、ある地点に到達した瞬間に邪神の体が前進を止める。否、まるで止めたように見えた。どうやら北斗が展開した超重力領域に入り、その速度が著しく落ちたようだ。
『よし、今のうちに狙い撃つよ』
サイコキネシスで海底から浮かび上がった大岩は次々と海面へと昇ってゆく。重力を無視するように海から飛び出したそれらは、邪神の頭部目掛けて間断なく突撃していった。
いくつもの大岩が邪神と衝突し、轟音を立てて砕けてゆく。粉々になった岩の破片は再び海の中へと落ちていった。頭に何度も大きな衝撃を与えられた邪神は、ゆらりとその体を傾ぐ。
『さすがにこれだけでは倒れないね。まだまだ投げないと』
皮肉なことに、邪神によって荒れる波は岩や無人の船を次々と運んで来る。邪神がここにいる限り、北斗の武器が尽きることは無い。北斗は次なる岩をサイコキネシスで持ち上げ、傾いだ体をゆっくりと起き上がらせる邪神へ向けて躊躇いなく第二波を放った。
大成功
🔵🔵🔵
シン・クレスケンス
【WIZ】
水族館や一般の方々の平穏を壊させる訳にはいきません。
骸の海にお還りいただきます。
『喰い応えのありそうな奴だ』と狼の姿のUDC「ツキ」も巨狼の形態(僕を背に乗せられる程度の大きさ)に変化し、やる気充分な様子。
足場が無いのならば、作るまで。
攻撃と足場構築も兼ねて、【殲滅の槍の召喚(指定UC)】。
フックガンを利用して移動したり(【空中機動】【足場習熟】)、時には巨狼形態のツキの背に乗るなど。縦横無尽な立ち回りで攻撃します。
壊される前提で再召喚の準備もしながら。
ツキは重さなど感じさせない軽やかな動きで槍の足場を渡って攻撃を加えているようです。
近距離ならば闇色の召喚武器(剣など)で攻撃します。
大波が立ち、そこから散る水が雨のように降り注ぐ。遠目に見える水族館まで波が届くのも時間の問題と言えた。シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は眼前に迫る邪神の姿を眼鏡の奥の青で捉え、フックガンを握り込んだ。
「水族館や一般の方々の平穏を壊させるわけにはいきません。骸の海にお還りいただきます」
傍らに共連れのUDC・ツキが立つ。狼の姿で地下からついて来た彼もまた、目の前の邪神に向けた瞳を爛々と輝かせた。元々の足場こそ殆ど海に呑まれてしまったが、ツキのやる気が充分なのであればいくらでもやり様はある。
「混沌から産まれし槍よ、我が命に従い、立ち塞がるモノを封じ殲滅せよ!」
シンの声に合わせて周囲の空気が揺れ、ぐるりと歪む。空間の歪みからずるりと姿を現したのは何本もの槍だ。光沢のある黒一色に染まったそれらは黒曜石のようにも見えるが、地球上のどんな素材とも異なる。一種の禍々しさを持ちながらも、その槍はシンではなく海の邪神を取り囲むように飛翔を始めた。
「行きますよ、ツキ!」
シンは身を翻し、ツキの背へ跳び乗る。大型の狼の形を取ったツキからすれば、人間ひとり程度の重量は何の問題にもならない。ツキはひと吠えするとシンを乗せたまま大きく跳躍し、邪神を取り囲む槍を足場にして縦横無尽に海上を駆け回った。
邪神は視界のあちらこちらを跳び回るツキを鬱陶しいとでも言うように、大きく平たい掌をゆっくりと持ち上げる。そのまま振り下ろされた手が、機動力で上回るツキに当たることは無い。むしろ、邪神の狙いはそこではないようにも思えた。まるで始めからそれが目的であったかのように、邪神の手が海面へ叩きつけられる。巨躯に見合った衝撃は轟音と大きな波を呼び、それはやがて津波のようになってシンとツキへ襲い掛かった。
ツキが津波を回避するのに合わせ、シンはツキの背から跳び降りてフックガンを構える。未だ身軽な槍の一本に照準を合わせてトリガーを引けば、銃口から飛び出したワイヤーが槍へと固定された。瞬時に巻き取られたワイヤーは、シンの体を新たな足場である槍のもとへと運んでいった。
ツキは既に別の槍を足場にして邪神への攻撃を開始している。鋭い牙を白い体へ突き立て、その肉を抉る。邪神は噛み付いているツキを振り落とそうと大きな体を揺さぶるが、それはシンにとっては好機と言えた。
「小さい敵を個別に相手取るのは不慣れなようですね。おかげで助かりました」
シンの手に広げられた魔導書が淡く光を放つ。その頁は海水がいくら降り注いでも一滴も沁みること無く、ひとりでにパラパラと捲れていった。シンの詠唱を仕上げとするように光は収束し、殲滅の槍とはまた異なる剣が現れる。闇が形を得たような色のそれは強い回転を伴って邪神の方へ飛来し、その刃で白磁の体を幾重にも斬りつけていった。鈍い音と共に邪神の肉が裂けるが体液すら噴き出すことは無い。生物という範疇にも収まらない存在だが、斬り続ければ確実にダメージは蓄積してゆく筈だ。
ツキが力尽くで振り落とされたのを見計らって、シンはツキが着水し得る位置に次なる槍を召喚する。邪神の攻撃によって槍は次々と海へ落とされてゆくが、その分こうして新たな足場を用意していけば対処は可能だ。
宙で受け身を取ったツキが新たに出現した槍の上に脚をつける。彼にもまだまだ余力があることが見て取れた。邪神は重い動きで身を起こし、相変わらず表情が存在しない目でシンを見下ろす。シンがそれで怯むことは無い。UDCが人へ齎す本能的恐怖など、とうの昔に乗り越えたのだから。
「ここがコストの使いどころです。出し惜しみはしません」
魔導書が再び光を放つ。未だ尽きることの無い力を手元へ注ぎ、シンは次なる〝闇〟を戦場へ喚び出した。
大成功
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上野・修介
★アドリブ連携歓迎
調息と脱力、場と氣の流れを観据える。
周囲の地形状況を確認。
UDC組織に連絡し、現在の状況を連絡。
また万が一に備えて、周辺住民の避難準備を要請しておく。
「あまり時間は掛けられないな」
――為すべきを定めて、水鏡に入る
「推して参る」
足に纏わせた氣の流れを着水する瞬間に急速回転させることで水きりの要領で海面を跳ねる様に移動する。
周囲の氣の乱れから水が召喚されるタイミングと場所を読んで攻撃をさけながら間合いを詰める。
(……『斬る』では弱い)
流れ(ブレード)は3本。手先から前腕部に掛けて螺旋状の氣の流れを作る。
速く。只管に疾く『削岩機』のようにそれを回転させ、叩き込む。
「――『抉る』」
何度も波が乗り上げた港には小さな魚達が打ち上げられて暴れている。今はまだ、ここは彼らにとって生活圏の外だろうが、時間が経てばそれすらも怪しい。港だけでなく、全ての地上が海の底に沈む可能性も決して否定できない……そんな有り様だった。
上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は周囲の氣の流れを見定めながらも携帯端末を取り出す。UDC組織との連絡に用いられるそれは、ワンコールも鳴らない内に相手からの反応が返ってきた。
『こちら別動隊、邪神の招来を確認しました。……厄介なことになりましたね』
「はい。こちらでも対処しますが、万が一に備えて周辺の住民の避難準備をお願いします」
修介の要請に相手は「了解。ご武運を」と短く返し、通信が途絶える。ノイズもひどく、意図的な切電なのかさえ分からない。非常事態は時間との勝負だ。修介は勿論のこと、あちらにとっても一秒たりとも無駄にはできない。辛うじて聞こえた了承の返事を信じて、修介は眼前に立ち塞がる邪神へと目を向けた。
「あまり時間は掛けられないな」
呟きと共に歩み出る。今はまだ辛うじて足場と呼べる場所に立っているが、あと数歩も進めば海上に出るだろう。本来ならば地上の生物は歓迎されない領域。相手が陸に這い上がって来ない以上、出向くのはこちら側になる。
修介は最後の一歩を踏み出し、最後の陸地から足を離した。
「推して参る」
瞬間、修介の足下で旋風が巻き起こる。集束させた氣は海面へ抵抗する力となり、修介の体を沈めるのではなく上へと持ち上げた。氣の抵抗によって弾かれるタイミングに合わせて高く跳べば、海上の移動は難なく行える。他の猟兵も交えて邪神の意識を散らすように、修介は敵の視界の端を縦横無尽に動き回った。
邪神は思惑通りにこちらへ意識を向けた。修介は邪神の視線が自分へ向いたのを察すると、港の船着場とは真逆……沖合いの方へ誘導するように方向転換する。これだけで陸を覆う海水が退くとも思えないが、邪神の攻撃による衝撃が陸地に届かなくなるだけでも被害は少なく済む筈だ。
沖合いへ走る修介に向け、邪神がその両腕を持ち上げる。すぐに海面へ叩きつけられたそれは荒れた波を更に歪ませ、そこに生まれた渦へ修介を巻き込もうとするが、修介は足下に纏う氣の出力を変えることでそれを回避した。渦の底では、普段は海水によって見えない岩場が見える。邪神の拳を受けて砕けたのか、岩の破片が災害跡の瓦礫のように漂っているのが横目に見えた。
海面を走る。否、もはや滑ると言った方が適格かもしれない。移動速度を上げて旋回するように邪神の側面へと回り込み、死角を取っている内に間合いを詰めた。
(……『斬る』では弱い)
脚だけに集中させていた氣を体の中へ巡らせ、右腕へと送る。マリアネスの戦士を相手取った時と同様に、練り上げた氣を刃のようにして前腕部へ纏うが、今度は刺突に特化させる必要があった。先程、水上移動を可能にした時と同じく旋風が舞い、修介の前髪を揺らす。三枚の刃をイメージした氣は互いに絡み合い、螺旋を描きながら右腕を覆っていった。
「――『抉る』」
最大出力で迫る修介の動きに、巨体の邪神がついて来れる筈がなく。白い壁のような体が振り返るのも待たず、修介は右腕の拳を叩き込む。拳が到達すれば当然のように、氣の刃は邪神の体に深々と刺さってゆく。螺旋状の動きが止まない限り容易に抜けるものではない。
拳と刃をまともに受けた邪神が悍ましい悲鳴を上げる。傷口から体液が噴き出すようなことも無いが、藻掻くような仕草からダメージを与えていることが窺えた。
(生物を模しているからには痛覚もあるのか。なら、弱点を探るのも不可能じゃない)
戦場の氣の流れ、そして相手を観察することには慣れている。このまま闇雲に刺し穿つのも良いが、生物らしい急所を狙うのも無意味ではなさそうだ。
確実にダメージを与えられそうな希望を見出し、修介は再び邪神の周囲を駆け抜けながら次の攻撃の機会を窺った。
大成功
🔵🔵🔵
アーネスト・シートン
邪神復活と…
……
ベルーガ??
………少なくとも手では無いはずですが。
言っている意味は不明ですが…
下手すれば全てが海になるのは、陸上生物達の為によろしくないので、撃退するしかないのですが、この邪神を相手に…
周りを海にしたのは不幸中の幸いですね。
えぇ、対抗手段、ありますよ。
ベルーガはシロイルカと呼ばれてますけど、実はクジラです。
そのクジラの中でも大きい部類に入るマッコウクジラに、わたくしは今からなりますよ。
歯クジラと呼ばれる中でも最大級。髭クジラ最大級のシロナガスクジラでは噛みつけないが、マッコウクジラは噛みつきが出来ますからね。ダイオウイカの天敵でもありますからね。
ならば、まずは海に潜って邪神の後ろに回ってドルフィンキックで尾びれを叩きつけます。
その次はいったん離れて遠距離から突撃して海底に突進します。
そして、叩きつけたら噛みついて邪神にダメージ与えますよ。
あ、そうだ。仲間のシャチ、トリトンにも協力して邪神に噛みつかせますよ。
生物の敵たる邪神は大人しく躯の海に消えていただきますよ。
港だった場所に打ち付ける波は暗く、重い。波間から覗く邪神の姿を見たアーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は、自身の頭の中に記憶するあらゆる動物の知識を思い返すが、そのどれもが目の前の存在とは少しずつ異なっていた。ベルーガ──日本においてはシロイルカと呼ばれる生き物と近い要素もあるが、ここまでの巨体は有り得ない。
『蝪オ闃・蜈ア縲∝次蛻昴∈縺ィ驍?k縺瑚憶縺』
邪神の放つ声が辺りの空気を震わせる。相変わらず、その言語は地上の生物に理解できるものではなかった。
「下手すれば全てが海になるのは陸上生物達の為によろしくないので、撃退するしかないのですが……」
これだけ巨大な相手を倒すともなると、いくら猟兵といえど人間である自分には難しい。手段が無いわけではないが、かなり限られてしまうだろう。そう考えると、早々に人間としての形を捨てるのが一番確実な方法と言えた。
「周りを海にしたのは不幸中の幸いですね」
波に浚われそうになる脚に力を込め、アーネストは懐からミントタブレットを取り出す。人間や陸上の生物ではまだ足りない。ならば、ベルーガと同じ分類……その中でも最も大きいものに姿を変えて対抗するのが、アーネストが取れる手段の中で最良だった。
アーネストはミントタブレットを数粒、口の中へ放り込む。寄せては返す荒波に足を取られそうになるのを耐えるが、じきにそれも意識の外側へ追いやられるだろう。動物への変身は体が作り変わるということでもある。人間の中でも長身の部類に入るアーネストの体が更に大きなものへと変わり、そのまま全ての変異を待たず暗い海へと滑り込んだ。
いつの間にか邪神と対峙するようにそこにいたのは、白いマッコウクジラだった。クジラの中でも最大クラスの体躯は、邪神と並んでも遜色のないものでもある。
邪神は目の前に現れたクジラをすぐに敵と見做したのだろう。海面で巨大な腕を横にひと薙ぎすると、それによって津波が起こる。人間であればいとも簡単に呑み込まれていただろうが、今のアーネストの体は巨大なだけでなく水中での活動に最も適した形状をしていた。アーネストは津波が衝突するよりも先に海中深くへと潜り込み、頭上へ邪神の姿を捉える。他の猟兵達が妨害してくれているのか、邪神が追って来る様子は無かった。
(これは好都合。後ろに回り込ませていただきましょう)
海流と一体となったような速度で邪神の真下を通り過ぎる。その間、アーネストの隣を並走するように現れたシャチ・トリトンも攻撃の機会を窺っている。言葉の無い水中だろうと、合わせるタイミングは互いにしっかりと理解していた。
一定の地点に到達したところでアーネストとトリトンは急浮上する。邪神の姿が見る見るうちに近づいてくるが、狙う場所はそのすぐ背後。巨大な水飛沫と共に海面へ出たアーネスト達は邪神のすぐ後ろに現れた。身を翻し、強靭な筋肉によって編まれた尾を邪神の体へ叩きつける。死角から、想定外に大きなダメージを与えられた邪神の体がよろめいた。すかさずトリトンが邪神の顔へ強く噛みつく。肉食の歯を硬い肉へ突き立て、引き剥がした白い肉片を容赦なく海へ千切り捨てた。
邪神が悲鳴を上げる。獣とも人間とも異なる叫びは、水の中をも震わせた。トリトンが攻撃している間に再度潜水したアーネストの耳にも、痛みを訴える邪神の叫びは届いている。痛みとは生存しようとする生物が危機を察知するために持つ感覚だ。それを持っていながら分かり合えない邪神という存在は、やはり今の世界に居てはいけないものなのだろう。
「生物の敵たる邪神は、大人しく骸の海に消えていただきますよ」
水中で旋回したアーネストが再び急浮上する。次に狙うのは邪神の巨体そのもの。同等の質量を持つアーネストの渾身の体当たりを受け、均衡を崩した邪神は成す術無く荒れた海へと倒れ込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
ドルデンザ・ガラリエグス
【海鍵】
…あれが?
あれが、人魚…?
ミ、ミモザさん、人魚ってこう、もっとあの、ファンタジーなものだと伺っていたのですが…
それに神様というものも…!
私こんなにがっかりするの久々です
しかも大きすぎる…
巨大化が許されるのは宇宙的SFまでですよ…何でも大きくすればいいわけではないはず
私…あぁもうやめましょうこの話
堂々巡りでしょうし
ありがとうございますミモザさん、ご友人
荒海も彼女の幸運あれば乗り切れましょう
―どこでも斬れれば生物を模る物は死ぬ
“生命”を真似るとはそういうリスクがあるんですよUC
私の刃はその皮を削ぐ
私の刃はその瞳を潰す
私の刃は波を斬って―…
私の刃が神を斬り捨てる経験を得ることも幸運でしょう
海藤・ミモザ
【海鍵】
なにあれ人…魚…?
う、うーん…まぁ、そうだね…
もうちょっと綺麗めなイメージがポピュラーだよね…
…この前、神々しい神様見ちゃったしね…
気持ちは察し
怖くないと言ったら嘘になる
けど、ドルデンザさんと一緒なら
勇気が無限に湧いてくる
神様でも邪神なら容赦しないよ!
ねぇ――神様って運命も操れるの?
挑戦的な眼差しでにまり
あなたの力と私のラッキー、どっちが強いか勝負ね
UCで幸運100Lvの妖精達喚び
1体は巨大化&実体化、他は小妖精の姿で彼の周辺へ
ドルデンザさん!この子の掌や体、足場にして!
例え地面が海になっても、飛べるこの子達で全面サポートするよ
彼の成す全ての行為に幸運を
私がいる限り彼は絶対守ってみせる
暗い海の波間から姿を現した存在は、魚のようにも人のようにも見えるシルエットを持っていた。巨大な体に、感情の見えない目。加えて悍ましい声を持つそれが、人類に対して友好的だとはとても思えなかった。
「なにあれ……人……魚……?」
海藤・ミモザ(millefiori・f34789)が邪神へ対して抱いた第一印象はそれだが、疑問形になってしまうぐらいには彼女にとっても親しみが無い姿だ。違うだろうなぁ、と続くような響きを持ったミモザの言葉に目を丸くしたのは隣にいたドルデンザ・ガラリエグス(拳盤・f36930)の方である。
「……あれが? あれが、人魚……?」
もう一度、邪神と呼ばれる者へ視線を移して愕然とする。人でも獣でもない、かといって幻想生物と呼ぶにはあまりにも冒涜的。ドルデンザは長く抱いていた憧憬のようなものが崩れてゆくのを否が応でも感じてしまった。
「ミ、ミモザさん、人魚ってこう、もっとあの、ファンタジーなものだと伺っていたのですが……それに神様というものも……!」
「う、うーん……まぁ、そうだね……。もうちょっと綺麗めなイメージがポピュラーだよね……」
ミモザの住まいに対してもそうだったが、ドルデンザは妖精や幻想生物に対して持つイメージが童話的だったのもあってショックも大きい。〝神〟という存在に関しても、人々の信仰を集めるものとして神々しい姿を想像していたというのに、目の前に現れたのはクリーチャーという呼称の方が相応しい存在だ。もはや衝突事故とも言えた。
「この前、神々しい神様見ちゃったしね……」
「私、こんなにがっかりするの久々です……しかも大きすぎる」
苦笑するミモザを傍らに、ドルデンザは大きな掌で顔を覆い嘆くような素振りを見せつつ邪神の姿を窺う。空洞を吹き抜ける風のような低い声が海に響き渡る。あの体のどこに発声器官があるのかは分かりかねるが、その声すらもドルデンザの夢を壊していった。巨大化が許されるのは宇宙的SFまで。それこそ、スペースオペラワールドで見掛けた方がまだ納得できただろう。だが、ここで嘆き続けていても仕方が無い。
既に多くの猟兵達が邪神を深海へ送り返そうと動き始めている。方々からの攻撃を受けた邪神が上げる悲鳴は、どこか本能的恐怖を揺さぶるものだった。
「ミモザさん、大丈夫ですか? 火よりまだ良いとはいえ、これだけの荒波ですが……」
「勿論、大丈夫! いつでもいけるし、サポートは任せて」
大丈夫だというミモザの言葉に嘘は無い。恐怖心が全く無いわけではないが、ドルデンザが共に立ってくれている限り圧し潰されることは無い。例え相手が神の名を冠する存在であろうと、それだけは変わらなかった。
二人並んで荒れた海と、猟兵達を振り払おうと抗う邪神へ向き直る。一帯が海に吞み込まれる前に決着をつけるべく、互いに武器を手に戦闘へと参入した。
「ねぇ――神様って運命も操れるの?」
感情も思考もあるのか分からない邪神へ向けてミモザは口角を上げて尋ねる。答えは求めていない。目の前の存在がどんなものであろうと、ミモザのやるべきことは変わらないのだから。ミモザが自身の髪に触れると同時に光が零れる。そのひとつひとつが意思を持つ小妖精へ変じると、ミモザの周囲から波で荒れる戦場に至るまでを自由に飛び回り始めた。
ふと、遊ぶようにくるくると飛ぶ妖精のうち一体が徐々に光を強める。光が強くなればなるほどに、妖精の体は大きく、そしてはっきりと実像を持ったものへと変質してゆく。
「ドルデンザさん! この子の掌や体、足場にして!」
「ありがとうございますミモザさん、ご友人」
邪神の体格にまで届きそうなほど大きくなった妖精は両の掌を揃え、跳び乗るドルデンザを受け止める。同時に、危機を察した邪神が再び叫ぶ。全ての生物が委縮してしまいそうな叫びと共に空間が歪み、荒波の上に暗い穴が開くのが見えた。そこから溢れるのは水だ。ここではない何処かから呼び出された水が、数少ない足場へ向けて津波となって押し寄せる。
「ミモザさん!」
巨大化した妖精に守られていたドルデンザは思わず、港の足場に立つミモザの名を叫ぶ。津波は容赦なく港を覆い、何もかもを流し壊していった。けれど、ミモザが呼んだ妖精達はくすくすと笑い、そして歌う。すると何処からかミモザの楽しそうな声が聴こえてきた。
「ドルデンザさん、大丈夫だよ!」
無傷のミモザが手を振っている。多少海水に濡れてはいるものの、傷らしい傷も見当たらない。彼女は海上を滑るように移動していた。一体どんな力が働いているのか……と海面を覗き込めば、その正体はすぐに分かった。イルカだ。妖精達が呼び込んだ幸運なのか、それとも自然物同士のもっと原始的なやり取りでもあったのか。どちらにせよ、いつの間にか戦場へ乱入したイルカがミモザを掬い上げ、その背に乗せて邪神から一定の距離を取るよう泳いでいる。
変わらぬ笑顔で無事を主張するミモザの姿を確認して、ドルデンザは安堵した。やはり彼女の幸運は強い。それこそ、理性なき神に容易に捻じ曲げられるものではないのだ。
ドルデンザは改めて妖精の手の上に立ち、菊華謐貌の柄を握る。邪神は素早く動き回るイルカではなく、目の前に立ち塞がる妖精へと意識を向けていた。虚無を湛えた目がドルデンザを射抜く。耳鳴りのようなものを知覚すると同時に、体の筋肉が強張るような感覚が走った。マリアネスの戦士とはまた異なる精神干渉のようにも思えるが、未だ耐えられる。これもミモザや妖精達が齎す幸運なのだろう。
邪神の姿を正面から見据える。地上のどんな生物とも異なる存在。だが、その形は〝どこかで見たことがあるような箇所〟ばかりだ。
「――どこでも斬れれば生物を模る物は死ぬ。〝生命〟を真似るとはそういうリスクがあるんですよ」
次なる衝撃が放たれるよりも前にドルデンザが動いた。鯉口を切る硬質な音が波間を縫う。その瞬間、既にドルデンザは妖精の手の上にはいない。一瞬で邪神との間合いを詰めたドルデンザの刃は、人の身と刀一本には到底収まらない殺気を隠すことなく邪神へとぶつけた。
一閃。
一閃。
一閃。
一閃。
回数にして、たったの四回。だが、構造が分かった体を斬るには充分な手数だ。邪神は既に自重を支えることすらできない。血液こそ流さないものの、大きく綻びた肉を元に戻すことも叶わない。今までで一番悍ましく、けれども悲痛な声を上げて邪神はその身を海面へと倒した。遠くで見守るミモザが「やったぁ!」と声を上げるのに合わせ、イルカが上機嫌で鳴く声が聴こえてきた。
神を斬り捨て、妖精の手に戻ったドルデンザは沈みゆくそれを見下ろす。潰した筈の邪神の目が、こちらを見ていた。
それはずっと、暗い水の底に沈んで見えなくなってしまうまで、地上の小さな生き物達のことを見ていた。
●
冷たい水底に沈む。遠ざかる光を見ている。かつて零であった世界。かつて我らのものであった表層。我らを拒み、視覚の及ばぬ水底に追いやり、それでも我らを滅ぼすことはできない小さき者達。狂気に身を委ねよ。命を以て我らを迎えよ。
いずれ訪れるその時を、零の名残を抱きながら、冷たく彩亡き世界にて待つ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『水の世界へ』
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POW : 水族館を満喫する。
SPD : 水族館を満喫する。
WIZ : 水族館を満喫する。
イラスト:揺
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
大渦を描く波の坩堝に邪神の巨体が呑み込まれ、暗い水底へ沈んでゆく。悍ましい姿が見えなくなる頃、まるでその時を待っていたかのように雨雲が薄れ、覗いた晴れ間から明るい陽光が差し込んだ。あれほど荒れ狂っていた海も落ち着きを取り戻し、海水に浚われそうになっていた港や船も、水浸しになっているとはいえ元の形へと戻りつつあった。
やがて、ひと息つく猟兵達のもとへ地元に拠点を構えるUDC組織のメンバーが合流する。近隣住人の避難は完了しており、周囲の安全を確認でき次第記憶を消して元通りの生活に戻ってもらう──そのように報告と謝意を受けることで猟兵達の仕事は完遂となった。
UDC組織の尽力もあって、港から見えていた水族館もそう時間を置かずに営業を再開する。既に多くの客の姿があり、親子連れや恋人達、はたまたカメラを構えてのんびり一人で見て回る者など、そこに在るべき日常の風景が戻って来ていた。水族館という性質上、館内の照明は控えめだというのに楽し気に過ごす人々の声で満たされた空間は心なしか明るく感じられた。
施設の規模は大きく、飼育されている生物も多種多様。光を受けて輝く魚群を見上げるのも、イルカやペンギンの愛らしいショーを眺めるのも、館内のカフェで海洋生物モチーフのメニューに舌鼓を打つのも可能だろう。売店は菓子類やぬいぐるみ等、お土産にも困らない品揃えだ。水族館でできることはほぼ叶えられるような環境が、ここには全て整えられていた。グリモアベースへ帰還するまでの短い時間ではあるが、どのように過ごすかは各々の自由となる。
打って変わって快晴となったおかげか、雨雲が呼び込む体の不調はいつの間にやら消え失せている。何処か遠くから蝉の声がする。どうやら、夏の盛りが目前にまでやって来ているようだった。
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上野・修介
※アドリブ連携歓迎
先ずは周囲の安全確認。
残敵や巻き込まれた一般人等がいないか周囲を探索しつつ、氣の流れに乱れがないか等、邪神の影響がないか状況を確認。
「……ええ、では正式な報告はまた後日に」
一通りの状況確認が済んだら、UDC組織とグリモア猟兵さんに軽く報告。
「……さて」
折角なので水族館に。
館内をぶらぶらと歩きながら、のんびりと見て回りつつも一応警戒。
(……取り敢えず、混乱している様子はないか)
周囲の様子をそれとなしに伺う。
邪神の気配や影響がないか確認しておく。
「……いや、気にし過ぎか」
性分とはいえどうなんだと自嘲する。
また『次の戦い』に備えなければいけないが、今は頭を切り替え一息入れる。
打って変わって海は静かだった。波は穏やかに寄せ、港へ乗り上げてくるような勢いは最早無い。上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は戦いの気配が失せた海に視線を巡らせる。敵影らしきものは見当たらず、一般人が巻き込まれたような様子も無い。氣の流れを視界に捉えもするが、そこに人類へ仇なす存在は見当たらなかった。そこまでを視覚で確認してようやく、修介も戦闘態勢を解くことができた。
「まだ被害状況の全てを把握できているわけではありませんが、現時点では死傷者の報告は上がっていません。記憶の消去についても順次実行されています」
「……だそうだ。俺達の仕事はここまでだな。お疲れさん」
情報共有のために合流したUDC組織のエージェントと、今回の予知を受けて召集をかけたグリモア猟兵・泰然が任務の完了を告げる。
「……ええ、では正式な報告はまた後日に」
如何せん事件の規模が大きかったことから、巻き込まれた地域全体の状態を把握するにはいくらかの時間はかかってしまう。残る報告は後日に回し、あとはグリモアベースへ帰還するのみとなった。勿論このまま帰還しても構わない。それでも、楽し気な声が聴こえ始めた水族館の方へ足を運んだのは、邪神を退けたことで「折角だから」という余裕が心に生まれたからでもあった。
水族館へ足を踏み入れると、そこは生体展示をする施設特有の薄暗い空間だ。天井は高く、水槽の中から揺れる水面を映した光が壁や床へと差している。入り口からそう離れていない大きな水槽で小魚の群れが踊り、入館してきた客を歓迎していた。修介の目に見える範囲では誰もが楽しそうに笑み、そこには不自然な力の干渉も見受けられない。
(……取り敢えず、混乱している様子はないか)
氣の流れも至極穏やかなものだ。まるで水槽の中で循環する水のように、人々の間を緩く流れては何処かへと消えてゆく。先程まで激戦の渦中に身を置いていた修介としては、一切の敵意が無い今の空間はどこか不思議な心地さえした。けれど、それは決して悪いものではない。
トンネル状に設けられた水槽の下を通りかかった際、修介の頭上を鮫に類する大きな生物がゆるりと横切る。そのシルエットがあの邪神を彷彿とさせたせいだろうか、いつの間にか自身の周囲に氣が寄り集まっている。まるで、いつでも臨戦態勢に入れるように準備をしていたかのようだった。
「……いや、気にし過ぎか」
解いた筈の警戒を、再度布いていたことに気付いて思わず自嘲した。事を終えた後も警戒を続けてしまうのは性分でもある。それは、虚を突かれるのはいつだって戦いを終えた後だと知っているからだ。それでも今回ばかりは考え過ぎだと、自分でも思う。
邪神は倒れたが、決して死んだわけではない。そういった認識が修介の無意識へと働きかけているのかもしれない。修介は改めて纏っていた氣を緩め、日常の空気の中へと還した。
ふと、すぐそばの水槽から視線を感じる。水圧にすら耐える厚い硝子の向こうから、一頭のアザラシが修介を見つめていた。正面から見る顔はなんとも力が抜けていて、笑っているようにも見える。水槽の硝子に顔を押しつけているのか、頭部がゆっくりと胴体の豊かな脂肪に埋もれてゆく様子の一部始終が観察できた。
修介はどことなくアザラシから「休め」と言われているような気がして、再び巡りそうになっていた思考を止めた。次の戦いへの備えは必要だ。だが、今一番必要とされるのは何であるか、それが分からないほど鈍くはないつもりだった。
大成功
🔵🔵🔵
シン・クレスケンス
※アドリブ歓迎
トンネル水槽の中で立ち止まり、生き生きと泳ぐ魚達を観察します。魚達も元気な様子で良かった。
光が作る水の揺らぎも美しく、涼やかで落ち着きますね。
水族館を楽しむ一般の人々の様子に目を移し、そっと微笑んで。
復旧も早くて何よりでした。
僕の力は邪神の領域に近いものなのだけれど。それでも、人々を護る為に使いたい。
UDC『ツキ』は、抉った邪神の肉と共に魔力も喰って腹が満たされたようで、今はおとなしく僕の影に潜んでいます。
水槽の光を受け揺らめく僕の影の中に狼の姿が重なることに、普通の人は気付けないでしょう。
泰然さんをお見かけし、挨拶。
泰然さんもお疲れでしょう。気分は晴れましたか?と微笑みかけて。
賑わう水族館の中、行き交う人々を気に留める様子も無く魚達は悠々と泳いでいる。水の中で身を翻し、鰭や鱗を煌めかせる姿から窺える生命力は眩しいほどだ。トンネル状の水槽の下をゆっくりと歩きながら、シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は目を細めてその豊かな光景を眺めていた。
(魚達も元気な様子で良かった)
あれだけ広範囲に影響を齎す邪神だったのだ。名残りのひとつでも残していれば対処が必要だとも思っていたが、どうやらそれも杞憂で済んだらしい。水槽から差す光は、上手く外の陽光を取り込んでいる。水面に合わせてちかちかと揺れる光の美しさを、あの邪神は知っているのだろうか。
シンが扱う魔術は邪神とほど近い領域に存在する代物だ。使い方ひとつ違えれば、ここに生きる人々やシン自身でさえも容易く呑み込んでしまうことだろう。それを承知しながらも手放さないのは、この力が世界を守るにあたって非常に有用だからに他ならない。この力にも、相棒たるツキにも、存在そのものに罪は無いのだ。是非を問われるのは使い手自身。それを理解し得るからこそ、シンは邪神と同じ末路は辿らない。
足下にぼんやりと浮かぶ影の中、ツキが寝返りをうつような気配がした。先程の戦闘で充分に腹が満たされたのか、今は大人しく休んでいるようだ。その気配に、シンは思わず影へ向けて微笑んだ。水槽から差す水の光が壁や床で揺れる。足下から長く伸びたシンの影に、ふわりと獣の影が重なる。一瞬、機嫌が良さそうに尾の影が揺れたが、通りすがる客の中でそれに気付く者は誰もいなかった。
水槽の中に広がる涼やかな光景や、飼育員が用意したのであろう生き物の生態を解説したパネルなどを眺めながらゆっくりと歩いてゆくと、更に照明を落とされた空間でひとりの男の姿を目にする。今回、シン達を召集したグリモア猟兵──杜・泰然が、休憩用のベンチに腰掛けた状態で、眼前に広がる巨大水槽に漂うクラゲの群れをぼんやりと眺めていた。
「泰然さん、お疲れ様です」
シンが声を掛けると、額の札と前髪の隙間に見える瞳がちらりと視線を向けてくるのが分かった。
「ああ、あんたか」
「予知や転移から始まり後始末までして、お疲れでしょう。気分は晴れましたか?」
ベンチから立ち上がる気配の無い泰然の隣に立ち、シンもクラゲの水槽を見上げる。水の流れにだけ身を任せてふわふわと漂うクラゲの群れは、たったそれだけの光景だというのに美しい。考え事をするのにも、何も考えずに呆けるのにも、どちらにも向いている貴重な光景でもあった。
「まあ、それなりにな。このまま梅雨明けしてくれたら文句は無いが」
「やがてそうなりますよ。時期的に……というのもそうですけれど」
頭の中でカレンダーを思い起こす。確か、例年通りであれば近く梅雨が明ける筈だ。だから、今話したようにその時はもうじきやって来る。ただ、そんなこれまでの実績を抜きにしてもそんな予感がする、ともシンは感じていた。
「今回の戦いを皮切りに、気圧が落ち着いてくれそうな気がするので」
なんとなく、ですけど。シンがそう言って隣で微笑むのを泰然は怪訝な様子で見やるが、それを深く追究することはしない。クラゲの水槽を楽しそうに観察するシンの横顔を見て、泰然もまた、美しい水の世界を再現した水槽へと視線を戻した。
事実、この数日後にUDCアースに本格的な夏が訪れるのだが、それはまだ二人とて知らない未来の話だった。
大成功
🔵🔵🔵
海藤・ミモザ
【海鍵】
水族館って実は初めて!
ドルデンザさんは?
小さなのから大きなのまで
幻想的な海の景色に見入る
薄暗い中に浮かぶ青が綺麗…
…結構暗いんだね
手を…繋ぎたいな、なんて
言葉にするのは恥ずかしいから、ちらり彼を見て
差し出された手を取り笑顔で繋ぎ
…私ね、昔から海に潜ってみたかったんだ
外からでも綺麗なんだもの
中はどうなってるんだろう、って
でも、ただの妖精じゃ溺れちゃうから諦めて…それでも、ずっと夢見てた
こうして叶ったのがドルデンザさんと一緒の時で、嬉しい
今度、本物の海でダイビングとかも良いかもね
すごいすごい!ペンギンもイルカも可愛い!
呼び捨てには静かに心跳ねて
ふふ。じゃあ今日は此処を満喫しよう、ドルデンザ
ドルデンザ・ガラリエグス
【海鍵】
そうですね、似たり寄ったりな物を見たことはありますが“水族館”は初めてです
ミモザさんも?
こういう学術的な場所は中々興味深いですね
酷く現実的に疑似的な海中鑑賞
なんとも美しい自然です…
たしかに。けれどあまり明るいと海中が棲家の彼等には
負担なのでしょう
ですからミモザさんも―…
おや
ふふ…なんとも年頃の可愛らしいお嬢さんだ
失礼、エスコートが遅れてしまいましたね?
腕を差し出し示せばまさか手を繋ぐとは、と驚きながらも笑ってそっと握り返して
ふむ
じゃあ今度本当の海の中へ行きましょう
水の重さも冷たさも温かさも、それこそ塩辛い味さえ体験しに
ミモザ、ペンギンは餌あげ体験、イルカはのちほどショーをするそうですよ
突然の快晴となり気温も上がってきた屋外とは異なり、水族館内は空調の働きもあって涼やかだ。外からの光を取り入れて幻想的に輝く水の揺らめきは、戦いの直後であるという事実を忘れさせてくれた。水槽の中で泳ぎ回る多種多様な海洋生物達の姿を眺めて海藤・ミモザ(millefiori・f34789)は目を輝かせる。目の前の水の世界と同じ色をした瞳が、戦いを通して守り抜いた命の姿を確と映していた。
「水族館って実は初めて! ドルデンザさんは?」
ミモザの傍らに立ち、人が作り出した小さな海を眺めていたドルデンザ・ガラリエグス(拳盤・f36930)は、その問いを受けて視線をミモザへ移す。
「そうですね、似たり寄ったりなものを見たことはありますが〝水族館〟は初めてです」
水族館を真似た施設ならばいくらか見たことがある。だが、それらは娯楽に特化した場所が殆どであったように思えた。こうして海の生物が人間の見世物になっているという点では同様かもしれないが、少なくとも水族館は〝生き物の方が主役である〟という運営者の確固たる意志を感じられた。
各水槽にはそれぞれ、展示されている生物の生態について記載されたパネルが用意されている。小さな子供が理解しやすいものから、ある程度の知識を持つ知識人に向けたものまで様々だ。美しい光景を眺められるのは勿論のこと、知識を深められる学術的な施設としてもドルデンザは好感を抱いていた。
「なんとも美しい自然です……」
「本当に。薄暗い中に浮かぶ青が綺麗……」
水槽の上部からやや大きい影が差す。どうやら体の大きなエイがゆっくりと横切り、光を遮っているようだ。自然の気まぐれで生み出される明暗の差は、昼夜の感覚すら曖昧にさせた。
無限にあると錯覚するほど並ぶ水槽をひとつひとつ通過してゆくにつれて、通路の照明が少しずつ落とされる。どうやら深海生物のコーナーに近づいているようだ。
「……結構暗いんだね」
足下にぼんやりと仄かな明かりが灯っているとはいえ、通常のエリアと比べると随分暗い。ミモザは足下と水槽とを交互に見ながらそんな感想を零す。ちらりとドルデンザの方へ視線を移すと、彼は薄暗さをそこまで苦に感じていないようだ。少々変わった形状の深海魚が展示された水槽を興味深そうに眺めている。
「たしかに。けれど、あまり明るいと海中が棲家の彼らには負担なのでしょう。ですからミモザさんも……──」
言いかけて、止まる。隣には視線を彷徨わせているミモザの姿があった。何か言いたげで、けれども言葉にするには勇気を要する……そんな様子だ。女性らしい曲線を描く白い頬が、ほんのりと赤みを宿しているのが薄暗い空間でも分かった。彼女が何を求めているのかを察せてしまったドルデンザは、その微笑ましさについ笑みを浮かべる。
「失礼、エスコートが遅れてしまいましたね?」
足下への注意を促すのなら、それを手助けする支えが必要なものだ。非礼を詫び、恭しく腕を差し出す。たったそれだけの所作で、水族館がまるで舞踏会の会場になったかのようだ。
ミモザはというと、ドルデンザの腕が差し出されたのを見てぱっと表情を明るくする。なかなか言葉にできない望みがどうして彼に伝わったのか、それは不思議だったけれど。それについては深く考えることはせず、ミモザは喜んでドルデンザの大きな手を取り、きゅっと握り込んだ。
「……」
「どうしたの?」
「いいえ、何でもありません」
どうやら、自分が彼女の望みを完全に察せられていたわけではないらしいことが分かって、ドルデンザはまた違う意味で笑みを零した。腕を組むのでも、手を繋ぐのでも、ミモザが喜んでくれるのならばどちらでも構わない。
手を繋いだまま、連れ立って水族館を歩く。深海生物のコーナーを通り過ぎると、再び巨大な水槽のあるエリアへと出てきた。小魚の魚群がひとつの生き物のように泳ぎ回る傍らで、小型の鯨がゆっくりと遊泳している。水槽の底には岩場が再現されており、イソギンチャクやヒトデなどが生育されていた。水槽の目の前でその光景を眺めているだけで、まるで自身も海中に潜っているかのような感覚だった。
「……私ね、昔から海に潜ってみたかったんだ」
水槽に目を向けたまま、ミモザがぽつりと呟く。その瞳で輝く憧憬の感情を、隠すことなく。
「外からでも綺麗なんだもの。中はどうなってるんだろう、って……でも、ただの妖精じゃ溺れちゃうから諦めて……それでも、ずっと夢見てた」
花としての性質が強いからか、海水に潜るということを今まで避けてきたとミモザは語る。植物にとって水は命の源ではあるが、海ともなると話は別だ。妖精ひとりが受け止めるには、その力はあまりにも強すぎる。
「こうして叶ったのがドルデンザさんと一緒の時で、嬉しい」
疑似的にとはいえ、今ふたりは海中にいる。ずっと抱いていた夢がひとつ、ここで叶った。ひとりでも充分に楽しめたのだろうが、今はドルデンザと共にこの瞬間を迎えられたことがミモザにとって何よりも嬉しかった。それはドルデンザとて同様だ。ミモザの夢の話に耳を傾ける彼の表情は、今日一番の穏やかなものだった。
「ふむ。じゃあ、今度本当の海の中へ行きましょう。水の重さも冷たさも温かさも、それこそ塩辛い味さえ体験しに」
ドルデンザの提案にミモザは目を丸くする。確かに、今のミモザは海を眺めるだけに留めていた頃よりも力をつけている。加えて、技術が発展している世界であれば潜水のためのツールや設備は豊富だろう。憧れを現実のものにできる環境はいくらでもあると、ミモザ自身も今気づかされた。
「……うん! 今度、本物の海でダイビングとかも良いかもね」
本物の海に潜るという夢を叶えるのも勿論嬉しい。けれど、今はそれ以上に、そんな些細な口約束自体が嬉しかった。この先も、それこそ他の夢を叶える時だってドルデンザが一緒にいると約束してくれることが。
徐々に楽しげな歓声が近づいてくる。明るい屋外に繋がる通路の先、ショーエリアに人が集まっている。どうやら、じきに催し物が始まるようだ。屋外プールには既にイルカが数頭、自由に泳ぎ回っている。ペンギンはプールサイドと客席の境界で何かを待つように、行儀よく一列に並んで待機していた。
「すごいすごい! ペンギンもイルカも可愛い!」
水族館の目玉とも言える二大アイドルの活き活きとした姿に、ミモザは喜びの声を上げる。暗い空間を抜けた今でも繋いだ手を離さないままでいることを、ドルデンザはわざわざ指摘したりはしなかった。
「ミモザ、ペンギンは餌あげ体験、イルカは後ほどショーをするそうですよ」
ふいに、いつもの調子でドルデンザが呼び掛ける。それでもいつもとは明らかに異なるものに気付かないほどミモザも鈍くはなかった。親愛の証がまたひとつ増えたような、そんな心地を覚える。自覚している以上に自分の頬は緩んでいるだろうけれど、今ばかりは仕方ないものとした。
「ふふ。じゃあ今日は此処を満喫しよう、ドルデンザ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
北・北斗
アーネスト(f11928)と一緒
ヴォウッ、オウッ、ヴォオオオオォヴ
『一時はどうなるかと思ったけど、邪神倒せてよかったよ。あ、アーネストさんも一緒でしたよね』
ともあれ、水族館の中を歩き回ることに。
まずはアザラシやペンギンを見ながらのんびり過ごしていく。
『アザラシって、おいら達トドやオットセイやアシカ達と違ってショーしないんだよね。のんびり過ごしてるのは微笑ましいよね』
『これがペンギンねー。鳥って、空飛ぶものかと思ってるんだけど、珍しいのもいるね』
『おいしそうなお魚がいっぱい』
『ウニは、おいら達は食わないけど、ラッコがたまに取ってくるかな?』
『これってサメ??』(襲ってくる大型のサメはいないから困惑)
『イルカは、結構ショーでもお目にかかるし、頭いいんだよね。おいら達ともいい感じに下手なことにならないし』
『シャチ…怖い』(捕食関係にあるので)
アドリブ歓迎
アーネスト・シートン
北斗くん(f20984)
ようやく邪神を倒せましたし、それに邪神があふれさせたこのあたりの水も引いたので、しばらくすれば平穏になりますね…そういえば、トドがいましたけど…北斗くんですね?
まぁ、なんなんですし、一緒に水族館見に行きましょうか。
まぁ、アシカショーは外せませんね。芸するアシカ達見てほっこりしていきますね。
見終わったらペンギンや魚のいる水族館を見て回りましょう。
アザラシさんは可愛いですけど、南極のヒョウアザラシはペンギン捕食するんですよね…
ここにいるのは可愛いゼニガタ(もしくはゴマフ)アザラシですね。
さすがにアシカ科と違って陸上の動きが難儀なものになりますからね。体格も関係しているかと。
北斗くん、ここで食欲丸出しは控えてほしいですよ。
ラッコ??…この子はカワウソですよ。
鮫の90%は襲わないんですよね。人を襲うのは映画で有名なホオジロザメを含めて数種類のようですし。
あ、そういえば、イルカもいるんですね。可愛い。
シャチもいいと思い…あー、北斗くん大丈夫ですか??
落ち着かせてやりますか…
荒波と暗雲が去り、海はすっかり穏やかな顔を見せている。現地UDC組織のエージェント達による後処理もあって、世界の終末のような光景を目撃してしまった人々も記憶を消去されることで平穏な生活に戻っていった。邪神の影響で海に呑まれそうになっていた港も、水が退いてゆけば徐々に元通りになるだろう。アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は打ち上げられたままの海洋生物がいないかを確認しながら、平和な風景をその視界に収めて安堵した。
「……そういえば、トドがいましたけど……北斗くんですね?」
戦闘の|最中《さなか》に、覚えのある姿を見たことを思い出す。アーネストの耳に、大きな生き物特有の低い鳴き声が届いたのはすぐ直後のことだった。
「ヴォウッ、オウッ、ヴォオオオオォヴ!」
晴れ渡った空へ向けて北・北斗(遠い海から来たトド・f20984)が声を上げる。邪神を退散させた喜びは、何も人類だけのものではない。海に生きる者として、大切な棲家を荒らされずに済んだのは喜ばしいことだった。
『一時はどうなるかと思ったけど、邪神倒せてよかったよ』
そんな北斗の姿を見掛けたアーネストのもとへ、テレパシー特有の響きを持った声が届いたことで朧気だった記憶は確信に変わる。知人だと分かったからには声を掛けない理由は無かった。
「北斗くん、お疲れ様でした。何とかなって良かったですね」
『あ、アーネストさんも一緒でしたよね。お疲れ様ー』
戦いながら知人の存在を認識していたのは北斗も同様だったらしい。互いに大きな負傷も無く、こうして事件が終息した後にゆっくり会話に興じることができるのは幸福なことだ。
話の流れで、この近くにあるという水族館についての話題が挙がる。そちらも邪神招来の影響を受けてはいたものの大きな被害は無く、全設備が既に復旧していると耳にした。グリモアベースへ帰還する前に覗いてみる猟兵も多いらしい。北斗とアーネストにとっても、その水族館は興味の対象だ。せっかくの機会だから……と、どちらからともなく誘い合い、ひとりと一匹で足を踏み入れることとなった。
施設内に入れば空調の涼やかな風が汗ばむ肌を冷やしてくれた。既に多くの客で賑わっている水族館に北斗のようなトドや、アーネストのように大きな尾を持つ者が現れても騒ぎにはならない。猟兵というのはつくづく便利なものである。
多くの海洋生物が展示された、広々とした水槽を眺めながら順路通りに進んでゆく。途中、屋外プールと繋がる通路へ入ってゆくと、ちょうど飼育員の合図に合わせてアシカ達がショーエリアへ登場する場面へ出くわした。
「まぁ、アシカショーは外せませんね。北斗くん、見て行きましょう」
『いいよ。おいらも仲間がどんなことするのか見たい』
体格に恵まれている二人ならば一番後方の席に座っても充分にショーを楽しめる。プールサイドに並んでいたアシカ達は飼育員が投げたボールを慣れた様子でキャッチすると、器用に鼻先へ乗せる。その姿勢のまま尾を大きく上へ逸らせる姿は、シャチホコを彷彿とさせるかもしれない。その他にもアシカ同士でのキャッチボールなど、アシカのバランス能力を活かした芸が多く披露される。観客の拍手に合わせてアシカ達も鰭を打ち合わせて拍手の真似事をする様子は微笑ましいものがあった。
アシカのショーを堪能した後は再度館内の展示を見て回る。アザラシやペンギン等、人気のある動物は特に広く場所が確保されており群れでのびのびと生活する姿が硝子越しに窺えた。
『アザラシって、おいら達トドやオットセイやアシカ達と違ってショーしないんだよね。のんびり過ごしてるのは微笑ましいよね』
「さすがにアシカ科と違って陸上の動きが難儀なものになりますからね。体格も関係しているかと」
よく脂肪を蓄えた体は、限りなく球形に近い。ころころと転がれそうな丸い体を横たえる姿は、確かに先程のアシカと違って器用な生態には見えなかった。彼らはそれで良いのだろう。海の豹と書かれるに至った由縁もあり、彼らはあの体で長く種を守ってきているのだから。
「アザラシさんは可愛いですけど、南極のヒョウアザラシはペンギンを捕食するんですよね……」
『ひえぇ……』
アザラシも決して弱者ではない。魚を始めとした他生物を喰らうことで生きている。水族館のような、食事が保障された環境にいる個体ではそのような様子を見ることができないだけだった。
『おいしそうなお魚がいっぱい』
「北斗くん、ここで食欲丸出しは控えてほしいですよ」
館内のあらゆる場所で魚達が躍っている。魚を主食とする者にとっては楽園のような光景だが、その食欲を満たすべき場所はここではない。アーネストに宥められ、北斗は棲家に戻ってからの食事に想いを馳せつつ先へ進んだ。
行く先々で展示されている海洋生物について、アーネストはひとつひとつ解説をしながら現物を観察してゆく。専門家である彼の説明は堂に入ったものだ。北斗も水辺で生きる者として、身近で見る生物についてはいくらか知ってはいるものの全てではない。
『これってサメ??』
「これはシュモクザメです。鮫の90%は襲わないんですよね。人を襲うのは、映画で有名なホオジロザメを含めて数種類のようですし」
水槽の中、特に飢えた様子も無く悠々と泳ぐシュモクザメを前に鮫への誤解について語り。
『イルカは、結構ショーでもお目にかかるし、頭いいんだよね。おいら達ともいい感じに下手なことにならないし』
「あ。そういえば、イルカもいるんですね。可愛い」
ショーの時間外、戯れるように泳ぎ回るイルカの群れを眺めたり。
「シャチもいいと思いますが……」
同じ水棲哺乳類という繋がりから、アーネストは先の戦闘でも助けてくれたシャチ・トリトンの姿を思い出してそれを話題に挙げようとして……止めた。シャチ、と聞いただけで隣の北斗が震え上がる姿が見えたためだ。
『シャチ……怖い』
「あー、北斗くん大丈夫ですか?」
確かに、シャチは場合によってはトドをも捕食すると聞く。北斗がどれだけ高い知能を持ち、人の言葉を解したとしてもヒエラルキーは簡単に覆ったりはしない。北斗と合流したのが戦闘を終えた後で良かった、とアーネストはやや遅れて思い至った。
北斗を宥めながら次の水槽へと歩みを進める。ふと、外から水槽へ差す光が薄く茜色に染まっているのに気づいた。いつの間にか陽が傾き、夕方へ差し掛かったようだ。燃えるような空の色が水槽の水に反射して輝く。そこに、邪神が振り撒いていたような不穏な気配は一切感じられなかった。
嵐が去り、夏が来る。邪神は眠り、人々は安寧の中を漂う。海という原初へ還ることは、未だ無い。
大成功
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