やめなされ猟兵の皆さん! ~限界突破オーバーロード~
●ある猟兵の思いつき
ある晴れた日の昼下がり、ゲームセンターへ続く道。
しゃーっと勢いよく走ってく一般キマイラの皆さんを見て、ある猟兵が言った。
「そういやブレブレ閣下掴まってないわね」
彼女のいうブレブレ閣下とはキマイラフューチャーを襲う猟書家、キング・ブレインのこと。
善良なる悪の大首領として礼儀正しく怪人たちを操り、
悪いことをしたりしなかったりするなんかキャラ濃いおっさんのことだ。
「逃げ足だけは速いからな」
別の誰かが言い、何度追われても自転車で逃げ遂せるその足さばきに肩をすくめた。
そこで最初の猟兵がふと、思いつきを口にする。
「どうせ逃げられるんだったら盛大にいやがらせ吹っかけちゃわない? 三連チャンくらいで」
びっ、と。指を立てる口元には意地悪く、悪戯っぽい笑み。
「名案だ、乗ろう。倒せなくともしばらく筋肉痛ぐらいにはなるだろう」
山羊の角を揺らしながら、別の誰かが首肯する。
「ぴっ! 皆さんを呼んでくればいいですかねっ。善は急げ、なのですよっ!」
くるくる舞う鳥は翼を翻し颯爽と決めポーズ。たぶんこの子何も考えてない。
「そうと決まれば、作戦開始よ!」
「おー!」
かくして、世にも無茶な悪戯大作戦が計画されたのでした。暇かな。
●正気か? と次にお前は言うだろう
その日、口車に乗ってしまった事を一瞬後悔する目をしたユインは、集まった一同を前にして咳ばらいをひとつこぼした。
「キング・ブレインに自転車レースを挑む事になった。……三連続で」
なぜ、そうなる。問いたげな一同の視線に、誰も何も言っていないのに少年は「つい魔が差した」と言い訳をした。
「猟書家のキング・ブレインは覚えているか。ボクも妙に親近感を感じ得ないあやつだが……いまだに捕らえられていない、逃げ足の速さは見習うべきだろう」
アリスラビリンスの戦争の折に現れた、怪人たちを統べる悪の猟書家。
しかし大首領ともあろう人(?)ながら、彼は自転車レースを見かけるとつい乱入して、正々堂々勝負してしまうというノリの良さを持つ。
テレポート機能を持つ「ブレイン・バイシクル1号」のおかげで猟兵はこれまで彼を取り逃しており、彼を倒すためにはこの自転車の力を奪わねばどうにもならぬ事が予見されている。
「四天王のボクでも、彼の逃げ足の速さには敵わない。もちろんお前たちが音速を超える足の持ち主でも、それは同じだ。ただ……どうせ敵わんなら、精々意趣返しでもしてやれたらと思ってな」
無茶な作戦に乗ったユインの魂胆は、策を打てないことへの後ろめたさもあるだろう。
猟兵たちの中からも、そういう事なら、と意欲を見せるものが現れた。
ユイン曰く、彼の担当するレースは眺めのいいハイウェイを管轄とするらしい。まずはコースを踏まえて自身にあったバイクを選び、真っ向勝負でレースに挑むのがいいだろう。
「ハイウェイと言っても、途中コーナーや立体交差などは存在する。直線有利なロードバイクだけが勝てると思わんことだ。工夫すれば、他のバイクにも勝ち目はあるだろう」
猟兵達がレースに手を抜かずに競っていれば、どこかのタイミングでキング・ブレインは必ずや姿を現す。
「キング・ブレインはレースをやめると次元を突き破る超速度で帰ってしまう。意地でもレースを続けながら戦ってくれ。普段通りに行かない事は承知だが、騎乗戦のいい練習にもなるだろう」
キング・ブレインを倒すことは恐らく、現段階ではできない。
だが、悪の大首領とはいえ無敵ではない。次に会う時、太ももでも引きずっていれば戦った甲斐はあるというものだ。
説明を終えたユインは、ふう、とため息をつきながらゲートを開く。
「難儀な誘いに乗ったものだが……やるからには全力を尽くせ。四天王たるもの、手抜かりなくだ。いいな?」
オレ、四天王じゃないんすけど……抗議したそうなあなたの言い分は、ついぞ聞き届けられることはなかった。
晴海悠
Q.バカなの?
A.(口笛を吹く音がする)
いたずら大好きな皆さん、いらっしゃい。
◇何すりゃいいのさ?
全力でチャリ漕いだ末に溜まったうっぷんを大首領にぶつけるがよろし。
◇自転車選び
以下の中からお選びください! 省略記号でも可。
マウンテンバイク(MT):坂道得意
ロードバイク(RB):平坦な道で稼げる
ママチャリ(MM):母は強し(カゴも前後ある)
変形自転車(MZ):だるま自転車など任意の形状。略称はマゾの略
異種競技(IS):一輪車やセ●ウェイ的な何か。ただし電動部品は取り外されてる
◇一章
猟兵の皆さんだけでチャリレースします! ハイウェイの入り口~立体交差付近。
電動アシストなどは使えませんが、ユーベルコードでの加速は認めます。やりすぎるとコースアウトします。
なお、ここでのレースが白熱しないとそもそもブレブレ閣下が来ないので要注意。
ライバルを蹴落とす系は大概自分に跳ね返るので、正々堂々ズルをしましょう。
◇二章
お待ちかね、ブレブレ閣下のターン! 漕ぎながらの戦闘です。
ハイウェイ出口から出て行かれないよう、めいっぱい漕ぐ足を止めずにガンバレ。
◇特殊ペナルティ『筋肉痛』
二章など、二度目以降のプレイングには猟兵であっても『筋肉痛』がのしかかります。
これは私の同時運営する他の自転車シナリオ含めて、です。
対策を考えない限り、参加回数に応じて自動的に成功段階が1段階ずつ下がります。「猟兵だから無敵」は通用しないのでヨロシク!
◇その他諸注意
コメディですが、お色気方面など過度に振り切れるとコースアウト(プレイング不採用)となります。読む人の気持ちも考え、公序良俗にはお気をつけて!
それでは、皆様のお越しをお待ちしてま~す! 晴海悠でした。
第1章 冒険
『白熱の自転車レース!』
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POW : 力の限り漕ぎまくり、スタミナに任せて前を走る
SPD : 前半は体力を温存し、ここぞのタイミングで一気に仕掛ける
WIZ : 対戦相手を利用したコース取りを行い、風の抵抗を避ける
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アミリア・ウィスタリア
ハイウェイで自転車レースなんて素敵です!
きっと気持ちが良いでしょうから閣下さんも楽しめるレースになると思います!
私、知っています。最強の自転車はママチャリってこと……!
ミラは自転車レースの経験はありません。ですから武器の強さに頼ります。
タイムセールも勝てると聞きました!なんのことかは良くわかりませんが。
いつもよりは動きやすい格好で来たつもりですが、やはり運動に慣れた方相手だとどんどん置いて行かれてしまいますね……。
考えてみたら自転車に乗った回数が少なかったですし……。
でも闘志は捨てません。ミラはここで自転車をマスターします!
頑張ればきっと閣下さんも様子を見に来てくださるはずですものね!
ね!
天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。キャンプを燃やせと魂が叫ぶ。
「ハイウェイで自転車レースなんて素敵です! きっと気持ちが良いでしょうから、閣下さんも楽しめるレースになると思います!」
颯爽と風を受けいきり立つアミリア・ウィスタリア(綻び夜藤・f38380)、スカートがびらびらとはためき、背景にマグマが噴き出しどっががーん!
「ていっ」
あいたっ。意にそぐわぬ方向のナレーションを芭蕉扇で黙らせ、あらためてアミリアはずらりと並ぶ自転車たちに向き直る。
「私、知っています。最強の自転車はママチャリだってこと……!」
どこで聞いたか、ママチャリは『タイムセール』とやらにも勝てる武器だという。レース経験がない今、勝敗の鍵を握るのは|武器《マシン》の性能。
某そそっかしい人狼少女がトラ柄Tシャツ着て爆速で漕ぐと噂の、山越え谷越え海をも越える、主婦の輝ける神器ならばきっと無敵だ(ホントかなあ)。
更衣室を借り、いつもより動きやすい服装に着替えたアミリアは早速とばかりにママチャリに跨った。選んだ機体は黒と赤の吸血鬼カラー、歪んだ愛ながらも自身を見てくれた『主』になぞらえた色。
スタートランプが青に変わる寸前、慣れない足元は思わず力んでしまった。踏み損ねたペダルを慌てて靴底に捉え、アミリアは置いて行かれまいと懸命にペダルを漕いだ。
「はっ……、はぁっ……! やはり、運動に慣れた方相手だと……、どんどん、置いて行かれてしまいます……ねっ!」
自転車に乗った経験自体が少ない所為か、ペダルを漕ぐたび車体が左右に蛇行してしまう。なかば立ち漕ぎに近い姿勢は疲れるが、愉快な誰かさんに会うため、ここで闘志を萎えさせるわけにはいかない。
「ミラは、ここで自転車をマスターしますっ! 頑張ればきっと、閣下さんも様子を見に来て下さるはずですもの……ねっ!」
ウインク飛ばし、はい1カメ。
「ねっ!」
投げキッスサービス、はい2カメ。
「ねっ!」
おっと3カメ悪意あるアングル、飛び回って顔ではなくふあふあを中心に映す!
「えいっ」
夜色の本から放たれる爆炎弾にドローンカメラがあえなく爆散! 延焼する機器の残骸が路上に残置される。うん、そういうの、よくないよね。
成功
🔵🔵🔴
人型影朧兵器第壱号・仮面イェーガー
猟書家『キング・ブレイン』、悪の大首領と言う話だな。倒す為の助力をしよう。
自転車レースか。ここはママチャリを選ばさせて貰おう。ちょうど前カゴに水筒もいれられて丁度いいしな。
ママチャリを漕いでハイウェイを疾走させてもらうッ!
おおおおッ!小細工は無しの全力疾走だッ!
ママチャリの操縦や運転技術を駆使してコーナーや立体交差をドリフトしながらレースを走るぞ。
直線コースに入ったらママチャリではロードバイクでは不利か。
ならばユーベルコード発動ッ!自身の速度を、最も近接する対象と同値にしてレースを有利に運ばせてもらうッ!
このレース貰ったッ!(若干目的を忘れ始めている)
【技能・操縦、運転】
【アドリブ歓迎】
人体改造を施された身体が、悪の名を聞き闘志に疼く。
黄色いマフラーをはためかせ、降り立つ男の名は人型影朧兵器第壱号・仮面イェーガー(怪奇飛蝗ヒーロー・f40310)。|来多《ライダ》・|心《シン》とは世を忍ぶ仮の名、馳せ参じたこの時点で彼の心は悪を倒すためだけにある。
「猟書家『キング・ブレイン』、悪の大首領という話だったな。これも何かの縁だ、倒す為の助力をしよう」
自転車レースで戦うとは妙な気分だが、元よりグランプリレーサーたる己の性分とは相性が良さそうだ。
コースの特性を見極めた仮面イェーガーは、迷わずママチャリに跨った。
「ちょうど前カゴに水筒もいれられて便利そうだしな」
ひとたび長いレースが始まれば、水分補給はレーサーの生命線。手を伸ばせば届くなら、ボトルホルダーなどつけるまでもない。
スタートラインに陣取ったイェーガーのマシンは、気づけば向かい風を受けていた。漕ぎ出す前からマフラーの翻る中、風力を受けた影朧ドライバーが回り始め、彼の心臓にみなぎる力を送り込む。
「かかってこい! 変身ッ……僕の名は仮面イェーガーだっ!」
開幕直後、ジェットの噴き出す如き勢いでイェーガーの機体は加速を得た。ぐんぐんとライバルを蹴落とし、ママチャリの類稀なるコーナリング性能でコーナー、次いで立体交差を掻い潜る。
「おおおおッ! 小細工は無し、全力疾走だッ!」
前方に控えるライバル機は、瞬く間に数えるほどになった。コーナーの多いうちに攻めを仕掛けるが、どうしてもあと数名が抜き切れぬ。
(「直線コースに入ったらロードバイクに軍配が上がるか……」)
ママチャリは小回りが利くながら、直線滑走ではどうしてもロードバイクに性能面で後れを取る。まっすぐに太腿の力を伝えるペダル構造は理に適っていて、単純なスピード勝負ならあちらが上だ。
「かくなる上は……ユーベルコード発動ッ! サイドバイサイド・オーバーテイク……おおおッ!」
自身の速度を並び立つ者に合わせ、そこから徐々にギアを上げていくレーサーの奥義。競争相手がペダルを漕ぐ勢いすらも盗むレース特化のユーベルコードに、さしもの上位者の走りにも衰えが見えた。
「今! 心が折れたなッ! このレース、貰ったッ!」
競争心にトドメを刺すべく、イェーガーの機体はぐんと前に踏み込んだ。当初の目的など吹き飛んでしまったが、代わりに心地よい闘争の昂りが身体を駆け巡る。
彼は身を屈めた姿勢のままペダルを漕ぎ続け、逆風すら味方につけて速度を増していった。
大成功
🔵🔵🔵
明星・ぐれん
最近猟兵デビュウしたんじゃが、五臓六腑みたいなヤバい敵ラッシュの時期だったみたいでのぅ
デビュウする依頼を探しとったんじゃが、この世界なら行きやすそう……
は?三連チャリレース?
なんで?どうして?
楽しそうだし良いか!
乗るのはRBじゃ
コーナーや立体交差もあるようじゃが、やっぱりこのコースで一番多いのは直線じゃろ?
稼げる時にぐわっと稼ぐ作戦じゃ!
他人の走りは邪魔せんほうが良さそうじゃな
みんなライバル!スポーツマンシップ大切じゃ!
そうやって一生懸命真面目に走っておったらギャラリーも応援してくれんか?
それを信仰パワーと解釈し【祈り】と受け止め我の糧とするぞ!
神様はな、応援されればされるだけ強くなるのじゃ!
明るく見開かれたぱっちりおめめ、遠目にも目映き赤い珊瑚の角。
キマイラフューチャーをはじめて訪れた明星・ぐれん(旭日昇天・f40405)は、周囲から向けられる奇異と羨望の目にもたじろがず、転移の際の尻もちでついたほこりを掃っていた。
「やれ、猟兵デビュウしたはいいんじゃが、五臓六腑みたいなヤバい敵がラッシュじゃったのぅ」
うん、五と六は合ってる。覚えづらいよね、あれ。この機会だからちゃんと覚え直そう、正しくは五頭六腕である。腕と頭もいっぱい付けようね!
「デビュウする依頼を探しとったんじゃが、どれ。この世界は我にも合いそうじゃ」
集まってきたキマイラたちは早速ぐれんが猟兵と気付き、周りで撮影会をはじめている。サービス精神旺盛なぐれんは、気を良くして科を作ってポーズなんか取ってみたりして。
「うんうん、皆素直で佳き子じゃ。褒美に星の砂を授けやう。……何、三連チャリレース? は? なんで、どうして?」
ちょっとランチに誘うような気軽さで、ぐれんはキマイラたちに手を引かれて自転車置き場の方へと連れられていく。ポップな大都会と思いきや予想外の肉体派依頼! 竜神ぐれん、体力のほどは未知数だが、面食らったように目をぱちくりとさせて固まることしばし。
「……楽しそうだし良いか!」
カカ、と笑い飛ばして緋色の髪の竜神は自身と同じ、真っ赤なロードバイクを選んで跨る。猟兵として生きるに一番大事な能力、もしかして順応力なのでは。
レース用に空けられたキマイラハイウェイ入り口に、無数のバイクレーサーたちが居並んだ。
スタートランプの変わる瞬間を眼力で見極めペダルを漕げば、ロードバイクは次第に加速して鮮やかに最初のコーナーを曲がっていく。
「コーナーや立体交差もあるようじゃが、やっぱりこのコースで一番多いのは直線じゃな。稼げる時にぐわっと稼ぐぞ!」
前の走者に連なるようにコーナーを曲がり、追い抜きに適した直線でペダルをリズミカルに踏みしめる。こんな時にこそ、長い足でよかったと実感する。身を屈めて前腿を使い、陸上短距離のスプリンターのように畳みかける。
並ぶ走者が息を切らしながらぐれんを見た。互いにぶつからぬだけの距離をとり、純粋なぶつかり合いでデッドヒートを演じれば、沿道のギャラリーから鼓膜が割けるほどの歓声が耳元に飛び込む。
「なんの、みんなライバル! スポーツマンシップ大切じゃ! それに、祈りと信仰は我の糧となるでな……!」
珊瑚の角が想いを受けるように輝きを放ち、ぐれんの膂力を強めていく。飛び散る汗しぶきは夥しいが、失われた水分に代わって勝利への祈りが全身を駆け巡る。
「まだまだ我は止まらん! 神様はな、応援されればされるだけ強くなるのじゃ!」
止まらぬ加速に、ついにライバル走者が勢いを失い取り残された。ワアア、と歓声や拍手のウェーブを巻き起こし、ぐれんの駆る真っ赤なバイクは矢のようにハイウェイを駆けて行った。
大成功
🔵🔵🔵
彩瑠・翼
【竜翼】
MM
ママチャリ率高い?…選びたくなっちゃう魅力放ってるのかな…?
閣下に勝負を挑むなら、正統派で行くのが一番なんだろけど…
(でもママチャリの魅力に抗えなかった)
…って、ミネルヴァさん、大丈夫?
(すっ転んだのを見兼ね助け起こそうと)
自転車初めての子には補助輪付きが安全…え、レディだからなしにするの?
(子供は禁止ワードだったかぁと遠い目)
でも諦めないの、いいと思う!
オレの友達とか兄貴分なお兄さんも上達には修行が必要って言ってたし!
(なんやかんやで放っておけなくて練習につきあい)
わ、乗れたね!よかったね、ミネルヴァさん!
それじゃ、ここからは一緒に頑張って走ろう!
ミネルヴァ・ドラグニア
【竜翼】
MM
自転車なんて簡単よ
皆ママチャリなのね
なら私もママチャリに…(乗ろうとしてすっ転ぶ
ママ…(生まれたての子鹿のようにプルプル
…(無言でステンと転ぶ
大体二輪で走ろうっていう方が間違ってるのよ
あと二つ車輪を付け…
え?補助輪は子供?
ならいいわ私は立派なレディだもの
補助輪なしで乗ってみせるわ!
こんなことで挫けてたら家の再興なんて夢のまた夢よ
翼の友達や師匠ならきっといい人ね
今度修行に混ぜて貰ってもいいかしら?
荷台を持って貰って走って
なんやかやで指定UCに目覚め
離さないで…ってもう離してるの?
やったわ翼!私走れてるわ!
このままゴールまで走りましょう
遅れを取り戻すわよ
…練習に付き合ってくれてありがと
コース特性の見極めはあらゆるレースに不可欠だ。身ひとつで走るマラソンや駅伝も、どこで向かい風が吹きどこでデッドポイントが来るのか、あらかじめ知って対策を立てねば走り切れない。
これから向かうコースがハイウェイと聞き、ロードバイクを選びかけた彩瑠・翼(希望の翼・f22017)は、偶然見かけた猟兵たちのチョイスに疑問を覚えた。
「あれ、ママチャリ率高い? ……選びたくなっちゃう魅力放ってるのかな……?」
正統派のロードバイクか、アップダウンを考慮してもマウンテンバイクが無難だろう。けれど前かごのついた自転車はやはりトレンドなようで、庶民的なフォルムには確かに抗いがたい誘惑を感じる。
「自転車なんて簡単よ。乗って漕ぐ、ただそれだけでしょう?」
幼いながらも気位の高いミネルヴァ・ドラグニア(ドラグニアの末裔・f39363)は、できぬ事などないと信じる足取りで自転車置き場へと向かった。
「皆ママチャリなのね? なら私もママチャリに……」
乗ろうとしてスタンドに足をかけてしまい、前に動き出した自転車ごとすっ転ぶ。
「って、ミネルヴァさん、大丈夫?」
「なんてことはないわ。そう、たかがママチャ……」
再度立て直した車体が反対側へ傾ぎ、慌てて飛び乗るも電信柱にでーん。
「……」
そもそもミネルヴァの背丈では足が届かない。乗ってバランスを取り漕がなければ、自転車など文字通り『自ら転ぶ車』なわけで。
見かねた翼に助け起こされ、ドラゴニアンの少女はぷるぷると震えながら自転車の構造に異議を唱える。
「大体、二輪で走ろうっていう方が間違ってるのよ。あと二つ車輪を付けるべきよ」
「うん、だよね……自転車初めての子には補助輪付きが安全だよね」
フォローのつもりで放った一言は、少女のプライドを深く傷つけた。
「補助輪は子ども……? ならいいわ、私は立派なレディだもの。補助輪なしで乗ってみせるわ!」
「え、なしにするの?」
背伸びしたがりな年ごろのミネルヴァ、どうやら子どもは禁ワードだったらしい。
「でも諦めないの、いいと思う! オレの友達とか兄貴分なお兄さんも、上達には修行が必要って言ってたし!」
拳を掲げてエールを送りながら、翼は元気あふれる友人や人格者の兄貴分の姿を思い浮かべた。境遇も性格も違う者たちだが、どちらも弛まぬ努力で這い上がった事に変わりはない。
「翼の友達や師匠ならきっといい人ね。今度修行に混ぜて貰ってもいいかしら?」
「うん、きっと喜ぶと思……あっ」
ずでーん。溝に車輪を取られて転ぶミネルヴァを助け起こしたい気にも駆られたが、自力で車体を立て直す術を学んでもらうべく翼は己の心に待ったをかけた。
◇ ◇ ◇
やがてレース本番を迎えても、まだミネルヴァは自走するには至らなかった。
走り出すまでが大変と聞き、最初の補助だけを翼に手伝ってもらうことにして少女はペダルに足をかけた。
「こんなことで挫けてたら、家の再興なんて夢のまた夢よ」
「その意気だよ。さ、足元じゃなくまっすぐ前を見て」
スタートダッシュが落ち着くのを待ち、荷台を支えられながらゆっくりペダルを漕ぐ。
「ねえ、ちゃんと持ってる?」
「持ってるよ、さあ漕いで」
不安に駆られるも後ろを振り返ることだけは幼い自尊心に遮られ、ミネルヴァの足はゆっくりと自転車を前に進ませる。
「ちゃんと持っててよ?」
「持ってる、持ってる」
上体が傾ぎ、目を瞑りそうなのを堪える。まだだ、まっすぐ前を見なければ進めない。
「離さないで……って」
「ふふ」
いつの間にか、翼の姿は後ろでなく隣にあって。自分に合わせて漕ぐ速度を落とし、彼は優しそうな目で少女に語りかける。
「乗れてる……? やったわ翼! 私、走れてるわ!」
「うん、乗れたね! よかったね、ミネルヴァさん!」
辛抱強く向き合った練習の成果に、沿道から順位を称えるのとは別のあたたかい拍手が贈られる。それを気恥ずかしそうに目を伏せて聞き届けながらも、少女は「このままゴールまで走りましょう」と年上の友に告げた。
「遅れを取り戻すわよ」
「そうこなくっちゃ。じゃあ、ここからは一緒に頑張って走ろう!」
少し先を行って漕ぐ姿勢の手本を見せる、頼もしい背中に言葉を紡ぐ。
「……あのね」
「うん?」
振り向いた彼の顔を見て言うのはまだ恥ずかしく、首を振って前を向くように促した。そして背中へと静かに投げかける――練習に付き合ってくれてありがと、と。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●レース前半順位発表
六位 人型影朧兵器第壱号・仮面イェーガー a.k.a 来多・心
九位 明星・ぐれん
十七位 アミリア・ウィスタリア
二十三位 彩瑠・翼
二十四位 ミネルヴァ・ドラグニア
第2章 ボス戦
『猟書家『キング・ブレイン』』
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POW : 侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」
【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。
SPD : 本棚をバーン!
【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 脳ビーム
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳(かしこさを暴走させる)】属性の【ビーム】を、レベル×5mの直線上に放つ。
イラスト:屮方
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キマイラハイウェイを巡る争いの順位は落ち着き、
レースは後半、立体交差エリアに差し掛かろうとしていた。
ここではジャンクションや紛らわしいハイウェイの出口、
はたまたどこが最短ルートか迷いやすい|環状交差点《ラウンドアバウト》など、
レーサーの誤った判断を誘うトラップが仕掛けられている。
ゴールの大まかな方角は知らされているため、数ある選択肢から的確な道を選び、
他のレーサーに差をつけねばならないだろう。
前方に見えるハイウェイの立体構造に目を奪われていた時、
後方から猛速度で特徴のある声が迫ってきた。
「ブーレブレブレ! 頭を垂れよ、下郎共! キマイラ市民と猟兵の皆さん、お元気ですか!」
間違えるはずもない。後ろを振り返るまでもなく、目当ての大首領が現れたのだ!
ブレイン・バイシクル1号の加速で瞬時に迫ったキング・ブレインは、
かつてデビルキングワールドの4thKINGでもあった頃の慣わしに則り、
レーサーの一人ひとりに恭しく挨拶をして回る。
「さて、挨拶回りも済んだ事です! これからレースを征服と参りましょうぞ!」
言い終えた瞬間、ブレイン・バイシクル1号が目に見えて加速し、光の輪郭を帯びる。
このままではキング・ブレインは皆をごぼう抜きし、1位を独占してしまうだろう。
ブレイン・バイシクル1号の力を奪う手段は一つ。
繰り返しレースで打ち負かして1位を奪取し、加速とワープ能力を奪うしかない。
このレースに勝たない限り、猟書家キング・ブレインは野放しになるのだ。
「それでは皆さん、アデューですぞ! ブレブレブレ!」
猟兵たちの目に、闘志の炎が宿る。
させてはならない。奴の高い鼻を見事へし折り、そして――。
――筋肉痛にしてやる、と。
人型影朧兵器第壱号・仮面イェーガー
現れたな、キング・ブレイン。
だが少し待ってもらおう。
(マスクのクラッシャーが開き前カゴに入れておいた水筒の中身を一気飲みする)
これは僕が淹れたアイス珈琲。この自動回復能力により自身の筋肉痛を相殺する。
来てくれ『桜嵐号』、頼んだぞクルマさん。
《OK、任せたまえ。突撃する。》
(自動操縦でハイウェイに乱入する桜嵐号)
ルール違反じゃないかって?僕はこの通りママチャリに乗ったまま。桜嵐号はただの武器だから問題はない…筈だ。
更にマグナムホッパーの射撃で挟撃だ。
敵のビームは射線を見切り運転を駆使して車体ごとジャンプ等で回避だ。
流石、主婦の方々が使うママチャリ。多少無茶してもびくともしないな。
【アドリブ歓迎】
明星・ぐれん
あ、これは丁寧にどうも……って
あいつが怪人かい!
あまりにも自然に挨拶されたから普通に対応してしまったわ!
フェニックスキャノンは使うが肌は出さん
だって人の目が沢山あるしな
威力よりも消えない炎を飛ばすのが目的じゃ
狙うはあの怪人の持つ本
変身はしてしまうかもしれんが、その選択肢を狭める意味では役に立つかもしれんからな
ついでにデカブツに変身してくれるなら炎も当てやすくて助かる
人々が営む街で巨大化して暴れるとはな
そんなの余裕で【神罰】の対象じゃ!
反省せんかい!!
しかし我の自転車では複雑なコースは少々不利じゃ
足が弱まってるのもあってキツいが……
スピードが落ちている分丁寧に観察し慎重に行こう
急がば回れ、じゃな
清く、正しく、美しく。腰から三十度折れる見事なお辞儀に、明星・ぐれんは思わずぺこりと頭を下げていた。
「あ、これは丁寧にどうも……」
しゃーっと速度を上げる骸骨頭はそのまま、先を行く人型影朧兵器第壱号・仮面イェーガーにも挨拶をうやうやと。そして「ブレブレブレ!」と高笑いを上げ、全てうやむやにして走り出した!
「って、あいつが怪人かい! あまりにも自然に挨拶されたから普通に対応してしまったわ!」
そうと分かればうかうかしてはいられないと太腿に力を籠め、怪人に追随しようと速度を上げる。既に疲弊した中での立体交差エリアは流石にきついが、無駄なコース取りで体力を消耗せぬよう見極めなくては。
「現れたな、キング・ブレイン。だが少し待ってもらおう」
「もちろんですとも!」
なぜか快諾する猟書家を尻目に、仮面イェーガーは水筒の蓋をあけゴクゴクと。飛蝗型マスクの歯の噛み合わせ部分から器用に注がれるのは水出しコーヒー……いわゆる|冷《レイ》コーだ。
「これは僕が淹れたアイス珈琲。飲むと心が落ち着くんだ」
「なるほどですな! ……で?」
「眠気が吹っ飛ぶ」
さようでか。ちなみにイェーガー敢えて触れていないが、カフェインで筋肉痛を緩和する自動回復能力付きである。
珈琲の香気に包まれのほほんとする前方二人へ、空気ごとぶち壊すようにぐれんが身の丈ほどもあるバス停を構えた。
ファイアフォックスの奥義、フェニックスキャノン。大きく素肌を晒せば威力の向上も見込めたが、ぐれんはそのまま放つことを決意する。水着コンテストでもないのに、という気恥ずかしさも勿論だが、「ないすばでー」を晒すのは善良なるキマイラたちには刺激が強いとの判断だ。
「衆目がある以上肌は晒せんが……しっかりお灸を据えてやらんとの!」
纏わりつく焔を優先し、バス停から放つ大砲の向かう先は、キング・ブレインの小脇に抱える一冊の魔導書――スーパー怪人大全集。
「ぬう、やりおる! 侵略蔵書を狙ったか……かくなる上は燃える前に!」
ぼうん、と煙幕が爆ぜ、猟書家の肉体は三倍の大きさへと膨れ上がった。跨る自転車ごと巨大化し、大首領は手に生やした白熊怪人大好物のアイスキャンデーで魔導書の炎を振り払う。
「続けて脳ビーム! よい子の皆さん、|DHA《ドコサヘキサエン酸》は摂ってますかな!?」
紫色のビームが路面を駆け抜け、沿道にいたキマイラの一部が賢くなった。何を言ってるかわからないだろうが、騒いでた奴らがスン……と急に黙って眼鏡をかけ始めたのだからきっとそうだ。
ビームの軌道を読み、車体ごと跳ねたイェーガーは、キマイラたちの異変を見てため息をつく。
「ルールも何もあったもんじゃないな……ならこっちも堂々と使わせてもらおう。来てくれ、|桜嵐《サクラハリケーン》号!」
イェーガーの叫んだ瞬間、ガードレールを突っ切って自動操縦のレーシングカーが乱入した。桜色に染まる流線形のフォーミュラカー、車載AI「クルマさん」で道案内はもちろん、最適なコース取りまでお任せあれだ。
「頼んだぞクルマさん!」
『OK、任せたまえ。突撃する』
速度を上げ、怪人の目の前を蛇行運転し始める桜嵐号に、さしものキング・ブレインも進路を見失った。飛蝗型ガジェット銃で背中をちまちま撃たれ、銃弾を払い除けようと躍起になっている。
「僕はこの通り、ママチャリに乗ったまま。桜嵐号はただの武器だからルール違反ではないさ」
「フハハハ、あいたっ、猟兵にしておくにしては惜しい痛いっ。汝、吾輩らの拠点でさらなる改造手術を受けてみてはっだあっ!?」
跳弾でブレイン・バイシクル1号ごと飛び上がる大首領へ、ぐれんが静かに狙いを定める。先ほどの炎は軽く掠める程度だったが、的がデカくなったなら好都合だ。
「よもや人々が営む街で巨大化して暴れるとはな……そんなの余裕で神罰モンじゃ! 反省せんかい!!」
放たれた不死鳥のオーラは渦を巻き、|身を縛る炎の蔦《バインディングフィンガー》のような戒めとなって怪人の背に食い込む。必死に振り払おうとする猟書家は速度を落とし、しばし二人の後方に取り残された。
◇ ◇ ◇
「……大分、無茶をしたが。流石、主婦の方々が使うママチャリ、びくともしないな」
「何、我のロードバイクとて負けはせんぞ! ……じゃが、ここからのコースは複雑そうじゃの」
戦っている間に正解路の判らぬ、環状交差点が迫っていた。向かう方角を誤ればタイムロスになる難所、ここからの勝負は各々の直感に懸かっている。
「我は決めたぞい。互いに健闘を祈ろうではないか!」
「ああ、またゴール前でな」
互いに手を振り、仮面イェーガーとぐれんは別々の道へと分かれる。はるか向こう、未だ見えぬゴールフラッグを思い描き、二人はペダルを漕ぐ速度を速めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アミリア・ウィスタリア
コツ、掴めました!(謎の適応力)
一生懸命漕いでいればきっと疲れ始めている閣下さんになら追いつける気がします!
筋肉痛は、死の痛みに比べれば軽いものです!(『激痛耐性』)
すぐに横に並べずとも、閣下さんを見つけられれば大丈夫。
蝙蝠達に閣下さんの足止めをお願いしましょう。
閣下さんに追い付いたらご挨拶します。スーパー怪人大全集ってきっと面白いですよね。お勧めの巻のお話を聞きたいです!
並走しながらのお話、ちょっと大変ですけど楽しいですね。
本棚をバーンされたら転んでしまうかも……。
でもきっと閣下さんはお優しいので手を差し伸べてくださるって私、信じてます(『誘惑』)
あっ、皆、そんな怒って攻撃しては駄目よ……!
黒と赤、死と享楽の暗示ともとれるツートンカラーのママチャリがハイウェイを駆ける。
サドルに跨るアミリア・ウィスタリアははじめこそ悪戦苦闘していたが、立体交差エリアに突入する頃にはだいぶ要領を得た漕ぎ方を身に着けていた。
「コツ、掴めました! 一生懸命漕いでいれば、きっと疲れはじめた閣下さんになら追いつける気がします!」
途中でサドルの高さを腰のあたりに調整し、足が伸びきるようにしたのが功を奏した。伸ばした足は車輪へまっすぐに力を伝え、ひざを痛めることなく漕ぐことができる。
そして筋肉痛の痛みをどう克服したか、だが。
「筋肉痛も、死の痛みに比べれば軽いものですから!」
痛覚の基準の壊れた魂人の前では、筋肉痛も動かしにくい程度に分類されてしまうらしい。
ペダルを漕いで加速するうち、炎の蔦を振り払おうと躍起になる骸骨頭の姿が見えた。
追いつくなら今がチャンスと小さな吸血蝙蝠たちをけしかけ、「ぬわっ!?」と悲鳴をあげて追い払う大首領の横にチャリを乗り付ける。
「閣下さん!」
「ムム!? 吾輩を呼ぶからには即ち、あなたも猟兵ですかな!?」
振り向いたキング・ブレインはこの猟兵もすぐさま襲ってくるかと咄嗟に身構えた。しかしアミリアは先の二人よりは好意的で、サドルの上でカーテシー……はできないものの、丁寧に会釈をされれば人の好い大首領も応じざるを得ない。
「スーパー怪人大全集って面白いですよね! お勧めの巻を教えてもらえませんかっ」
「ブ~レブレブレ! なかなか分かっておるわい! そうですな、ティラノサウルス怪人や(故)いいねリスの載っている十三巻も乙なものですが、妹大好き怪人・マイホゥの……やや、あれは刺激が強すぎますかな……」
再び漕ぎ出しながら、滔々と語りはじめるキング・ブレインの怪人知識は留まるところを知らない。恐らくだがこの人、全怪人丸暗記してるタイプの努力家だ!
併走しながら聞いているアミリアもはじめのうちは頷きながら聞いていたが、あまりにエンドレスなので覚えきれず頭がぷすぷすと白煙を上げ始めた。それを見たブレブレ閣下はおもむろに背負い書架を取り出し、こう|宣《のたま》った。
「何、吾輩が語るよりも実際に読むのが早いですな! そ~れ行きますぞ、本棚をバーンッ!」
「きゃ~~❤」
ずざざ、とアミリアの転がる拍子に半透明のおみ足がちらり。無防備に投げ出されたポーズからは、寵姫の寵姫が見えてしまいそうな危うい角度に!
「ぬがああっ……吾輩と来たら何たる失態! これは大変失礼しました……とと」
ん?? なんか、白くて毛深い。おみ足、もふもふ。これは……?
「もきゅ……」
どうやら咄嗟にモーラット変身をしてしまったらしく、うるうる流し目で見つめてくる姿はあまりに破壊力抜群で。
どうする? アミフル~?
……などと逡巡する間もなく、キング・ブレインの視界をまたもや蝙蝠たちが覆い隠す!
「もきゅ、もきゅきゅぴ~!(意訳:あっ、皆、そんな怒って攻撃しては駄目よ……!)」
主のあられもない姿(※モラ)を見られた蝙蝠たちの激昂は収まらず、結局アミリアが元の姿に戻って去っていくまで続いたという。
大成功
🔵🔵🔵
ミネルヴァ・ドラグニア
【竜翼】
筋肉痛をストレッチでほぐしながらも走る気満々
絶対完走はするわ!目指すは優勝よ
キングブレインが挨拶に来てくれて
キングというからには国王なのでしょう
自転車から降りて礼を正して
お初にお目にかかります
私はアルダワ魔法学園のドラグニア家の長女ミネルヴァ・アル=エディリアス・ドラグニアと申します
不躾ではありますが陛下は自転車がとてもお上手とお見受けしました
もしよろしければご教授いただけないでしょうか
了承してくれたらキング・ブレインに自転車の乗り方を教わるわ
翼もいかが?修行するなら師が必要でしょ?
真面目に自転車の乗り方を教わりながら少しずつコツを掴んで指定UCに目覚め
結果はどうあれ最後まで走り抜くわ
彩瑠・翼
【竜翼】
気合い入れてみたけど筋肉痛はさすがに…
(涙目で自転車漕ぐヘタレ)
(友人と兄貴分はこういう時「これも修行だぜ/ですね」って
いい笑顔で言うんだろうなと思えば遠い目に)
ミネルヴァさんは大丈夫?
(筋肉痛ほぐしながら頑張る姿に心打たれ)
うん、オレも頑張ろ…って
(ブレイン閣下に挨拶するミネルヴァさんにつられ挨拶
丁寧に自転車教わる様子を眺めてそっと笑み)
今日一日でここまで上達するなんて、ミネルヴァさんすごいや!
ね、閣下もそう思わない?
せめて最後はいい風で…そうだ!
オレの鎧は追い風を生み出す翼を持った鎧!
指定UC発動させ、翼で追い風作ってミネルヴァさんが走りやすいように支援
順位は気にせず最後まで走るよ
気高き竜の子は、今日初めて乗った自転車のペダルをいまだ辛抱強く漕ぎ続けていた。既に先頭集団との差はついているが、それしきの事はレースを諦める理由にはならない。
「絶対完走はするわ! 目指すは優勝よ!」
途中ハイウェイの路側帯でストレッチを挟み、ミネルヴァ・ドラグニアは瞳に闘志の炎を燃やす。幼いながらも強靭さの片鱗を見せつつある足腰は、まだまだ戦えると主に訴えかけていた。
「ミネルヴァさんはすごいね……オレ、気合入れてみたけどさすがに筋肉痛でしんどいや」
一方伴走者の彩瑠・翼はへこたれモード。無理もない、慣れない距離を漕いだせいで足はパンパン、サドルに跨るお尻は破けそうに熱かった。
(「皆ならこういう時、これも修行だって笑顔で言ってのけるんだろうな……」)
頼もしき友人と兄貴分。彼らのようにありたいけれど、追いかける背中はまだ遠い。足を伸ばしてとんとんと叩き、残る距離に備えて筋肉をほぐす。
「そろそろ出るわよ……あら?」
「とことん元気だね? うん、オレも頑張ろ……って」
ぶいーん。しゃーっ。勢いよく目の前を行く骸骨頭、紛れもなくキング・ブレインその人である。
特徴的なつるぴかヘッドを急いで追えば、悪の大首領らしからぬ笑顔がこちらを振り向いた。
「ブ~レブレブレ! 猟兵の皆さん、ご機嫌麗しゅうですぞ!」
「あなたがキング・ブレインね? キング……というからには国王なのでしょう?」
おもむろに自転車を降りたミネルヴァはキング・ブレインに向けて恭しく頭を垂れ、少女にならって翼も挨拶をした。さすがに礼節持った相手に攻撃するわけにもいかず、大首領もまた「これはどうも」と一礼をば。
「お初にお目にかかります。私はアルダワ魔法学園のドラグニア家長女、ミネルヴァ・アル=エディリアス・ドラグニアと申します」
「ブレブレ! これはまた丁重にどうも。アルダワと言えば騒々しいミスター・グースが向かったはずだが……まさか、もう?」
「ええ、私たちの仲間が討ち取ったわ。本当に倒せたか怪しいけど」
「なな、なんと! これは吾輩も呑気に過ごしてはいられませんな……!」
ガビーン、と突然の訃報(暫定)にビビるキング・ブレインだったが、世界を侵略するからにはある程度は覚悟していたのだろう。すぐに切り替え、豪快な笑いを響かせる。
「不躾ではありますが、陛下は自転車がとてもお上手とお見受けしました。もしよろしければご教授いただけないでしょうか」
「……そんな事をして吾輩に何の得が?」
キング・ブレインからの至極もっともな問いに、ミネルヴァは微塵もたじろがずにこう答える。
「あら、レースは好敵手あってのものでしょ? 私が強くなった上で競り勝てば、それだけ陛下の株も上がるはずよ」
もちろん負ける気はないけど、と豪語するミネルヴァの生意気を、キング・ブレインは快く思った。敵に取り入る豪胆さもさながら、この少女は一丁前にメリットまで提示してみせたのだ。
「ブ~レブレ、愉快ですなぁ! それでこそ吾輩のライバル、その提案受けて立ちましょうぞ!」
「……すごい、本当に取り入っちゃった」
見守っていた翼は、事の成り行きに唖然としていた。この少女ならやりかねないとは思っていたが、まさか本当に敵を説き伏せてしまうとは思わなかったのだ。
「翼もいかが? 修行するなら師が必要でしょ?」
「やれやれ……ミネルヴァさんには敵わないな」
斯くして、キング・ブレイン直伝のサイクリング講座が始まった。膝を痛めにくいフォームから坂道、ストレートの漕ぎ方、ペース配分に至るまでの几帳面な理論を二人は頷きながら体得していく。
◇ ◇ ◇
やがて徐々にペースを上げるキング・ブレインに、二人の自転車は追随するまでになった。ドラゴニアンの少女の走りはいまや、れっきとしたレーサーのフォームだ。
速度、技術、スタミナ。先を行く大首領の全てを吸収し、ミネルヴァはじりじりと追い上げる。
「今日一日でここまで上達するなんて、ミネルヴァさんすごいや! ね、閣下もそう思わない?」
「カカカ、まさに! 実に競いがいがありますぞ~!」
はじめ余裕だった骸骨頭にも少しずつ汗が滲み、決してポーズではないことが見て取れる。
環状交差点を抜け、三人はゴールへの最短ルートを選び取った。まだその事実を知るのは先だが、合流地点にまで来れば並ぶライバル車にいっそうレースは白熱するだろう。
「せめて最後はいい風で……そうだ!」
翼はここに来て、自身のアリスナイトの力が役立つことに思い至る。想像から生み出した風の鎧でびゅうと追い風を生み、三人の背中をゴール前のストレートへと運んでいく。
「ここまで来たら順位は気にせず、最後まで走るよ!」
そうは言いつつも、もしかしたらとの予感があった。胸をときめかす鼓動が鳴りやまぬうちに、三人の自転車は前へ前へと進んでいく。
キング・ブレインの自転車が前へ出た。負けるわけにはいかぬと、ミネルヴァの自転車に道を譲る。翼の筋肉はもう限界を訴えていたが、ポテンシャルを秘めた彼女なら、あるいは。
「さあ、行っておいで!」
ごう、と風が吹きつけ、前を行く二人の背中が遠のいた。まだまだ、こんなものじゃないはずと、更に強い風をイメージする。
もっと速く、もっと速く……! デッドヒートを繰り広げる二人の背中を、翼の風は分け隔てなく支え続けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キマイラハイウェイを抜け、インターチェンジの下り坂を下りる。
上がりきったバーを自転車の通過音が掠め、トップ争いは二人に委ねられた。
赤のロードバイクに跨る、明星・ぐれん。
漕ぎなれたママチャリで最高速度を極める、人型影朧兵器第壱号・仮面イェーガー。
しのぎを削る二人の走りに、ゴール前の大通りは大歓声に包まれた。
「ここまで来たからには、勝つぞい……!」
「仮面イェーガー、ゴール前に参上! うおお、レースは僕が獲る……ッ!」
最後のコーナーを曲がった二人は、互いに叫びながら火花を散らす。
万雷の拍手で鼓膜がどうにかなりそうだ。
はじめ、拍手は二人を讃えるものだとばかり思っていた。
しかし次にあがる歓声で、二人はゴール争いにまだ加わる者がいると気付く。
「ブ~ブレブレブレ! 猟兵、の、皆さんっ……勝つ、のは、吾輩だ~~っ!!」
「まだ、……まだっ!! 私の闘志は、燃え尽きてないわ……っ!」
強烈な風を纏って吶喊する二台の自転車――キング・ブレインとミネルヴァである!
「なっ……まさか、あの順位から追い上げだと……ッ!?」
「カカカ、面白い! そうじゃ、そうでなくてはの!」
驚愕に目を見開く仮面イェーガー、さも楽しそうに笑うぐれん。
反応はそれぞれに違ったが、笑う合間にも先頭と後続の差はじりじりと埋められていく。
ゴールフラッグが間近に迫り、心臓はいまにも破裂しそうだ。
まだか、まだか……絶え間ないペダルの回転に足が持っていかれそうだ。
残り十メートル、五メートル……。
ゴールテープを突っ切ったのと、溜めていた息を吐き出し天を仰いだのと、どちらが先か。
後に誰に聞いても、ゴール瞬間のことは定かではなかった――ただ。
「ブ~レブレブレ! カカカ、これほどとは! 吾輩、愉快極まりないですぞ~~!」
高笑いをしながらブレイン・バイシクル1号がワープの光に包まれ、負け惜しみとも賛辞ともとれる言葉を残して消えていった事だけは、その場にいた誰もがはっきりと覚えていた。
●レース最終順位発表
一位 明星・ぐれん
二位 人型影朧兵器第壱号・仮面イェーガー a.k.a 来多・心
三位 ミネルヴァ・ドラグニア
四位 キング・ブレイン
七位 彩瑠・翼
十一位 アミリア・ウィスタリア