ヘッジホッグ・シュガーデイズ
●Disaster
惑星系577、ペネロペ星雲に霹靂走る。
ここはティガニタ。ハリネズミに似た毛むくじゃらの体を持つティガニタ星人達の、多くは戦うことを知らない温厚な生命体で構成された淡い虹色の小惑星。
たのしいこととあまいもの好きのティガニタ星人は近隣の他惑星や点在するコロニーへ潤沢な酸素と光で生成された『ティア・ドロップ』と呼ばれる――地上で言う砂糖のようなものである――を輸出することをライフワークとし、しあわせをお裾分けすることによろこびを抱きながら日々を面白おかしく過ごしている。
ティガニタに宇宙騎士は存在しない。
かたちの上での『おうさま』は存在するけれど、彼らは皆助け合いのこころを、『あい』を信じて疑わないからだ。
「わあ、そらがひかったよ」
「ほうき星かなあ?めずらしいねえ」
短い前足を伸ばし、つぶらな瞳を揺らしながら宙を見上げる彼らは知る由もない。
かの存在こそがこの平和な星を滅ぼさんとする脅威に他ならないことを。
●Emergency
「みんなにね、星を墜としてほしいんだ」
一瞬の静寂。
それを猟兵達の快諾と受け取ったのか、カーティス・コールリッジ(CC・f00455)は人懐こい笑みを浮かべながらアームデバイスに送付されたデータベースを弾き出す。
「場所は外宇宙……ヤ!みんなにはスペースオペラワールドって言うのがわかりやすいかな?いま座標を出すね」
未だ状況を把握し切れていない猟兵達を置き去りに宙空に浮かび上がるスクリーンを操作するカーティスへ、あんぐりと口を開けていた猟兵のひとりが恐る恐るに声を掛けた。
「星を堕とすって、何?」
恐らくはこの場にいる大多数の猟兵が抱く疑問。
問われた少年はぱちぱちと目を瞬かせたけれど、ややあって得心言ったとばかりに手を鳴らした。
「あ!そっか、皆は星の海に飛び出すキカイがあんまりないよね」
そうじゃない。
「大丈夫!宇宙空間でも動けるように、ちゃんとみんなの生命維持装置はおれの母艦が用意するよ」
それもそうだけどそうじゃない。
猟兵の懸命な訴えの末、漸く合点がいったらしい少年は改めてスクリーンに映し出された敵影を指し示す。
「これが今ティガニタ星に向かっている最終破壊兵器・デストロイコメット。自然物じゃない、オブリビオンが創り出した機械の惑星だよ」
そこに意志はない。『惑星を破壊する』というたったひとつのプログラムに則り驀進する巨大兵器。それは最早星をも滅ぼす超大規模な災害だった。
「みんなにはこの惑星に直接乗り込んで、デストロイコメットを破壊してほしい。 もちろん無茶を言ってるってわかってる!でも、このままじゃティガニタは星の海から跡形もなく姿を消してしまう。やさしいティガニタ星人のみんなが、なにもわからないまま滅ぼされてしまうんだ。……だから、」
だから、おねがい。
常ならば単騎で向かわされる筈の星海からのレッド・サイン。以前の少年ならば選択の余地さえなかったけれど、今は違う。集った仲間達への信を乗せてカーティスは頷く。
「この惑星の表層にも宇宙怪獣が待ち構えてる。個体名はスペースキャット。見た目はね、こんなふうに……そうなんだ、あんまりこわくないよね」
長い胴体に星雲を抱き、人類に敵意を持つ――ねこである。
「ちいさい個体はおれよりちいさいよ。でも、大きければ宇宙船を越すくらいに規格外のものもいるから油断しないで!」
小さなスペースキャットが齎す災厄は部屋を散らかしたり物を壊したり、地上で見られる猫の悪戯とそう変わらぬ程度の被害で済むのだが、見上げるほどに巨大なそれがじゃれたり暴れたりするとなれば話は違う。
見目や仕草の可愛さにどうか騙されないでほしいと言葉を重ね、カーティスはスクリーン上の惑星の心臓部を指し示した。
「スペースキャットの妨害を掻い潜れたら、デストロイコメットのコアに攻撃を届かせることができる。そうなったら、あとは思いっきりみんなの力を叩き込んで!」
星を堕とす。
無謀とも呼べる真正面からの特攻も、これまで戦いを共にしてきた猟兵達ならば叶う筈だから。
「あのね!無事にデストロイコメットを撃墜出来たら、ティガニタ星に立ち寄ってみてほしいんだ。ティガニタ星人たちもみんなにオレイを言いたいだろうし、それにね……」
『――ティガニタ星のドーナツは、ほっぺたが落ちちゃうくらいおいしいんだよ!』
青々としたコール・サインが明滅する。
ワープゲートのその先に、無辺の星海が広がっていた。
『ハロー。ハロー。こちらCC。外宇宙、惑星系577へ接続を開始します』
『オール・グリーン。転送を開始します――グッドラック!』
なかの
こんにちは、なかのと申します。
冒険の地は『スペースオペラワールド』へご案内。
●進行順序
【第一章】👾『スペースキャット』(断章追加なし)
デストロイ・コメットの表層に住み着くこわ〜いスペースモンスターです。
転送直後から戦闘開始になりますので、縦横無尽に暴れるスペースキャット達をやっつけましょう。
宇宙空間に耐性がない方でもカーティスが生命維持装置を貸してくれるので安心して活動できます。
【第二章】👿『最終破壊兵器・デストロイコメット』(断章追加あり)
『目障りな星を消し飛ばす為の星』です。
そこに意志はなく、ただプログラムされた命令を忠実に遂行するのみです。全力で破壊してください。
【第三章】🏠『惑星都市を巡る旅路』(断章追加あり)
ティガニタ星に着陸し、観光地を巡りましょう。
おすすめはティガニタ星名物、揚げたてのギャラクシー・ドーナツです。
地上のものとの相違点は表面にまぶされたコズミックシュガー、ティア・ドロップがピカピカ光ること。
外はサクサク、中はもっちり。見た目はかなりカラフルですが、一口食べれば病みつきなのだとか!
●おまけ
当方のグリモア猟兵達は誰でも、お誘いがあった場合三章のみご一緒いたします。
はじめましての方でもおはなし相手がほしい方はお気軽にどうぞ。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
よろしくお願いいたします!
第1章 集団戦
『スペースキャット』
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POW : ニャッ!
単純で重い【ネコパンチ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ニャーー!!
【目からビーム】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : フシャーー!!!
【激しい威嚇】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロヴァキア・シェラデルト
初めての外の世界、初めて知った宇宙、どんな厳つく凶悪な敵が居るのかと楽しみにしていた。
猫…か…? 可愛さに落胆しつつも、スケールはデカいのでどんな顔をすべきかわからない。
これだけの巨体なら死角をつくのは容易そうだ。他の猟兵たちの攻撃に合わせて背後に回るなどして隙をつく。
攻撃系の技能を一撃一撃に込め、ただ愚直に斬り続ける。
攻撃が来たら技の効果――残像で惑わせたり軽い身のこなしで軌道をそらしたり、受け流すように回避する。
正直見た目でナメきっているものの。攻撃力の高さを目の当たりにする、怪我を負うなどがあれば認識を改め、テンション爆上げ嬉々として向き合います。
強い敵との死闘こそが至高!
●血戦を求めて
影に潜み、闇に添うように生きてきた。
傷付く事を厭わず、時に奪う事さえ厭わず――全ては闘うため、強くなるために。
それが、ロヴァキア・シェラデルト(羅刹の殺人鬼・f40500)という羅刹の在り方だった。
生まれて初めて踏み出した外の世界。未だ見ぬ星海の只中へ。
地上から見上げる遥か彼方。宙の果ての更に先にまでも生命の営みがあり、そこに戦いがあると云うならば。
(どれ程厳つく凶悪な敵が居るだろうか)
男の胸には恐れよりも大きな期待があった。あった、のだが。
「猫……か……?」
足を踏み出したその先に広がっていた光景は、正しく非現実的なものだった。
猫。猫、ねこ。鉄塊の如き惑星の地表から直接生えているようなその姿は、地上で云う猫に酷似した宇宙怪獣の群れ。
お世辞にも凶悪な存在には見えないその姿に、ロヴァキアは裡の落胆を隠すことは出来なかった。
けれど、それでも。
『斃せ』。それが己に課せられた唯一の指針であるならば遂行するのみ。
「悪く思うなよ」
ロヴァキアは音も無く地を蹴ると、銀河を抱く宇宙猫の群れの影へと飛び込んだ。
『ヴナァ!』
猫と思しきもの。一際大きなスペースキャットの怒声に周辺の個体たちが響めき畝り出す。
黒き刃に伝わる肉の感触。実態は確かに存在しているらしいと判断すれば、ロヴァキアの行動はひとつだった。
山より高きその身体から死角を取ることは容易い。振り上げた刃が今一度スペースキャットを捉えれば、今度こそ見目よりも牢固な肉に傷を付けることが叶う。
(まるで子どもの使いだな。規模が大きいだけか――)
つまらない。思いかけた、その時だった。
『マァーゥ』『ブマァー……ナ”ッッ!』
無風の宇宙空間に駆け抜けたのは、男を視認したスペースキャットの痛打。
引きで見れば他愛もないネコパンチに過ぎない。けれど見上げる程に大きな宇宙怪獣が齎すそれは、岩を、骨を打ち砕くも容易い程の力を持つ。
真横から直撃したその一撃に、ロヴァキアの身体が文字通り撥ね飛ばされた。
「は、は。……ははッ」
傷付いた臓腑から込み上げる血を吐き捨てる。
身を起こした男の口元に浮かび上がるのは歓喜の笑みだった。
「成程。――成程、面白い!そう来なくては!」
見目で拍子抜けした事を改めよう。
殺すか、殺されるか。命のやり取りこそがこの身を証明する事に他ならない。
『ぐるるなぁ!』
スペースキャットが再び捉えたロヴァキアの姿が掻き消える。それが残像だと認識できなかったのか、べしんべしんとその場を叩き続けるがら空きの背後に二対の刃が深く食い込む。驚き縮む肉を強引に押し切れば、鮮血の代わりに銀河の煌めきが噴き出した。
ずしん、と。音を立てて山のような巨体が沈み、風船が弾けるように宇宙の塵となって消えていく。
未だじくじくと身を苛む痛みも忘れ、ロヴァキアは声を上げて嗤った。
大成功
🔵🔵🔵
オリアーナ・クィン
この宇宙に住む同胞として、そして|騎士《 パラディン 》として、平和な惑星に破壊をもたらす悪しき星は排除しなくてはね。
宇宙空間での戦闘ということだが、私には騎士重鎧があるから問題はないね。
まずは周囲の宇宙怪獣を討ち倒そう。
顔立ちは可愛らしく見えるが、あの巨大さで暴れられては星の破壊にも支障をきたすことになるからね。速やかに倒していくよ。
敵と接敵したらすぐさまUCを発動!
機動力を高めることで、宇宙怪獣のパンチを騎士重鎧に搭載した推進機を用いた推力移動によって回避していこう!
そうやって回避をしつつ速射光弾砲から誘導性能が高いエネルギー弾を弾幕のように放ち怪獣たちを攻撃していくよ。
●高潔なるもの
これより遥か遠く。プレスター星より飛来するは一騎の騎士。
オリアーナ・クィン (プレスター星のスペース|騎士《パラディン》・f39183)は成層圏の彼方からペネロペ星雲へ、救いを求める外宇宙の同胞達の為に迫り来る兇惑星に降り立った。
スペース聖職者が開拓したプレスター星は独立した宗教国家を持っているが、戒律自体はとても大らかなものであり非常に穏やかな雰囲気の惑星だ。
星は違えども似通ったあたたかな気配を感じ、オリアーナは胸に手を置き静かに祈る。
「この宇宙に住む同胞として、そして|騎士《パラディン》として――」
宙を滑空する巨大なる機体。
それこそがオリアーナを包む美しき白銀の騎士重鎧。
「平和な惑星に破壊をもたらす悪しき星は排除しなくてはね」
ティガニタに宇宙騎士は存在しない。
彼らの目に、正しく彼女は救済者として映るだろう。
舞い降りし騎士の姿を|害なすもの《他惑星の存在》と認識したスペースキャットたちが背を丸めて唸り出す。
その姿を見下ろし、兜から迸るチェリー・ピンクの輝きが厳かに開戦を知らしめる。
フライングスラスターの駆動音が、星の海を切り裂いた。
無数の光が錯綜する。
無限の連なりを見せる星々と、濛々たる光の雲が軌跡を描いて交わった。
『フルルグニャァ!』
スペースキャットの群れが白銀の鎧を追いかけ、何本ものネコパンチが宙空を掻いては地に打ち据えられていく。
さながらレーザーポインタの光を追いかける猫のようではあるが、大きさに比例したその威力は惑星の表層を容易く破壊する。
「顔立ちは可愛らしく見えるが……その巨大さで暴れられたら、ティガニタはひと溜まりもないからね」
――速やかに倒させて貰うよ。
オリアーナは告げると同時、騎士重鎧のバーニアを最大出力まで引き上げる。生命を吹き込まれた重鎧が猛然と炎を噴出し、轟音が宙を震わせた。
スペースキャットの丸っこい手が襲い来る度、オリアーナはその推力をも利用することに愚鈍なる宇宙の獣達は気付かない。
限界まで引き上げられた機動力を用いながら、白銀の機体は両肩に搭載された兵装を解き放つ。群れの中を駆け抜けると同時に放たれたエネルギー弾は稲妻が如き軌道を描き、スペースキャットを弾幕で包み込んだ。
『ウマァーゥ……ナァーー!』
暴れて踠く程に追尾する高圧力の光弾が身を貫き、力尽きたスペースキャットが次々に霧散していった。
大成功
🔵🔵🔵
甘利・梓
美味しいものと可愛い子たちが居ると聞けば
不肖甘利梓、どこまでも!
と言いつつ、実は私初宇宙なんですよね!うわわっ
慣れない宇宙服で慣れない宇宙空間
うっかりバランスを崩して足が浮きそうになっては頑張って堪え
めげません、ほっぺたが落ちる程のドーナツと、ティガニタ星人さんと触れ合うまでは!
で、宇宙にゃんこなるものはどこに……でか……でかすぎじゃないです?!
見上げるほどの宇宙にゃんこ
大きいとは聞いてましたけど!えええこれ私でどうにか出来ます?!
きゃー!猫は目からビームなんて出さないと思うー!
人狼脚力で必死に回避しつつ
もう、もう、私だって
めいっぱいの大きな声で
人狼パワー全開で
せーの、
わーーーーーん!!!!
●大宇宙わんにゃん戦争
「美味しいものと可愛い子たちが居ると聞けば……」
キラキラでフワフワでピカピカ。乙女心を擽って止まない三大言語を胸に抱き。
未だ見ぬ美味に、はじめましての生命体に夢を馳せて、甘利・梓(腹ペコ乙女・f12881)はぐっと両の拳を握りしめた。
「不肖甘利梓、どこまでも!」
乙女の力と腹ペコを掛けたなら、女の子は何処までも強くなれる。何にだって立ち向かえる。それが梓の信条だった。
「……と言いつつ、実は私初宇宙なんですよね! うわわっ」
猟兵達を送り出した少年から預かった生命維持装置は正常に機能している。いるのだが。
地上とかけ離れた重力は気を抜けば足が浮いてしまいそうになってしまって、その度身体が宙に放り出されそうになって慌てて地を踏み締める。
「め、めげません。ほっぺたが落ちるほどのドーナツと、ティガニタ星人さんと触れ合うまでは!」
ちいさくて喋るふわふわ。
ティガニタ星人達の笑顔が、彼らが齎してくれる最高のスイーツが梓の確かな原動力となる。正義感とちょっぴりの個人的な欲望を抱き、梓は蔓延る宇宙猫を探して視線を巡らせた。
「で、宇宙にゃんこなるものはどこに……」
ぐるりと周囲を見回――見回すまでもない。
「……でか……」
見上げるほどのその巨体が、同じように梓を見下ろしている。
『ブマゥ』
鳴いた。
鼓膜どころか全身をも振るわす程の重低音だった。
「でかすぎじゃないです?!大きいとは聞いてましたけど! えええこれ私でどうにか出来ます?!」
悲しきかな、梓を見送った少年は最後にこう告げていた。『グッドラック!』と。
つまりは逃げ道は無い訳で、元より梓も引く積もりは無い訳で、それでも物怖じしてしまう巨大さではあって、
『ヴニャーー!』
スペースキャットの双眸がぎらりと光ったかと思えば青白い熱線が低く垂れ込めた砂煙を突き破り、瞬きのうちに視界から消え去った。
「きゃー!!猫は目からビームなんて出さないと思うー!」
咄嗟に回避できたのは梓の|人狼脚力《野生の勘》の賜物だろう。
背筋をじっとりと嫌な汗が伝う。未だ赤々と焼け爛れた地表が、その威力の凄まじさを物語っていた。
――もしかしなくても、やばくないです?
戦慄く唇を噛み締めて、足を縺れさせながらも梓は駆け出す。
逃げる為では無い。自分の何倍もあるその巨体に立ち向かうべくして。
「もう、もう、私だって、」
幾重にも襲い来る熱線を掻い潜り、梓は大きく息を吸い込んだ。
目一杯の大きな声で。常は秘めた狼の血を解き放つ為。
視線が、交わる。
「せーのっ、わーーーーん!!!!」
ユーベルコードまで昇華した人狼の咆哮が惑星自体をも揺るがせ、スペースキャットの身体が傾く。
『ニャ……ヴワァァーー!』
すぽんと表層から抜けた巨体が幾つも宇宙空間に投げ出されていく。
スペースキャット達はぶつかりながら絡まり合い、鈍い音と共に光となって闇に降り注いだ。
大成功
🔵🔵🔵
戦犯・ぷれみ
宇宙に浮かぶクソデカ人工惑星に、特に理由のない……猫
猫……みたいななにか
風邪ひいた時の悪夢をクソコラしたみたいな光景ね……
ネコパンチのたびに地形が破壊されていくけど
そもそもこの惑星自体が敵なのよね?
だったら避けに徹して逃げ回っといたほうがお得なの
|世界侵食サーバー《00FFFF》で【迷彩】を展開して姿を消して
一瞬姿を見せてネコパンチを誘い、また消えるを繰り返す
よし、ルーチン入ったわ!
仕上げにらーん・とぅ・ぷれい
コントローラーをブン投げてルールを宣告
モノを壊すのは……やめなさーいっ!
お猫様にそう言ったところで、きっと聞きやしないわよね
それで結構
おいたしたぶんのダメージはきっちり受けてもらいましょ
●フェイク・ブルー
星を堕とすもの。人間など塵芥に過ぎぬ巨大な質量を持つ造られた惑星、その表層に。
「特に理由のない……猫。 猫……みたいななにか」
右を向いても左を向いても猫、猫、ねこ。
戦犯・ぷれみ(バーチャルキャラクターの屑・f18654)の視界に広がる光景は正しく異様なものだった。
胴体を地表に擦り付けて寛ぐもの、互いのナワバリの主張権を示し合うもの、眠たげに欠伸をして伸びるもの。
仕草ばかりは地上の猫によく似ているが、眩いばかりの銀河を抱く猫たちははいずれもぷれみの身の丈をゆうに越す。
「風邪引いた時の悪夢をクソコラしたみたいな光景ね……」
熱に浮かされた脳が誤認した虹の世界。言い得て妙だった。
しかしこれが『ゲーム』であるならばやりようはある――そういうからくりでぷれみと云う存在は一際輝くのだから。
『ヴニャ!』
外敵を認識したスペースキャット達が爪を伸ばした手でぷれみの存在そのものを押し潰さんと幾重にも襲い来る。鈍い音を立てて抉られた地表を横目に身を滑らせながら、ぷれみはひとつの過程を脳裏に浮かべていた。
「そもそもこの惑星自体が敵なのよね?だったら……」
ジ、とぷれみの仮初の身体にノイズが走る。
「避けに徹して逃げ回っといた方がお得なの」
空に染まる。|世界侵食サーバー《#00FFFF》が描き出す|Not Found《HTTP 404》。
突如姿を宙と同化させ掻き消えたぷれみの姿を追い、スペースキャットの剛腕がそのまま鉄塊の表層を押し砕く。
『マゥ……ヴゥーー!』
獲物を見失った宇宙猫が興味を失うよりも早く再び姿を見せつけ挑発すれば、怒りに任せたネコパンチが再び地面に叩きつけられる。
浮かんでは消え、消えては浮かび上がる。
猫の狩猟本能を誘うその動きにスペースキャット達は完全にぷれみの手中で踊らされていた。
「よし、ルーチン入ったわ!」
カチリ。
コマンドを入力し終えたコントローラーが鈍く光る。
振りかぶったそれを、ぷれみは思い切りスペースキャットの胴体目掛けて叩きつけた。
「モノを壊すのは……やめなさーいっ!」
宣告するルール。
それこそがこの場に於ける絶対。
「お猫様にそう言ったところで、きっと聞きやしないわよね」
それで結構。
単純かつ明快な戒律は、偽装された岩肌を破壊し尽くしたスペースキャットの退場を意味していた。
『ニャ、グルニャ』『ウナァーー!』
刹那、ぎくりと鍵状に折れ曲がった巨体が震える。
ぷれみを追い回すことに夢中になっていた猫達が風船の如く膨らみ始めたかと思えば、そのまま。
ぷちんと果実の種が飛び散るように、弾けて銀河の河床へと消えていった。
「おいたしたぶんのダメージはきっちり受けてもらいましょ」
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
デストロイコメットとは宇宙は怖いものがまだたくさんあるんですね。
ティガニタ星のドーナツを守るため、星を壊しにいきます。
しかし、デストロイコメットの上とは変わったところに住むものですね。
このままですと、ネコ達は星の崩壊と一緒に巻き込まれてしまいますから、むしろ叩き出してあげた方がためにもなるというものです。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
相手の攻撃が来る前にヨーヨーでぐるぐる巻きにして捕縛。
UC【獅子剛力】でスペースキャット達をぶん回して、星の外に飛ばしていきます。
近づいてくるネコ達もまとめて、お星さまにしてあげましょう。
これで星の上もきれいになって、心置きなくコメットを壊せますね。
●雷光に消ゆ
「デストロイコメットとは……宇宙は怖いものがまだたくさんあるんですね」
破壊の彗星。
小細工もまやかしもない超時空の脅威は今なお速度を衰えさせる事なくティガニタ星へ直進している。
絶望と怨嗟を招くもの。それは殆どのオブリビオンに共通する脅威ではあるが、星一つを丸ごと消し飛ばすとは。この兇惑星が齎すであろう被害の規模の大きさに、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は半ば感心したように呟いた。
「壊せと云うならば、成し遂げましょう」
ティガニタ星人と彼らが届けてくれるドーナツを守るため。
ささやかなさいわいを守るためにと、摩耶は蝕の名を冠するヨーヨーを構え軽やかに地を蹴った。
『ニャニャ、ヴルルマァア!』
地表に突如現れたネズミたち――ニンゲンを思うように捕まえられず、スペースキャット達は怒りを露わにしながら身を膨らませて威嚇する。自分たちの方が狩猟者であると伝えるようなそれも、摩耶を怯ませるには至らない。
それはこの惑星の上に住み着いた不可思議な宇宙怪物、その生態への興味の方が勝っていたが故のもの。
地からそのまま生えているような様。ぎらぎらとした繁華街の電飾を思わせる半透明の胴体。一等地のビルより大きなそのからだは、遠くから見ればやはり猫で。
「このままですと、ネコ達は星の崩壊と一緒に巻き込まれてしまうのでは?」
デストロイコメットの崩壊。
惑星の死、それ即ち彼らは宿主と共に爆散してしまうのであって。
「むしろ叩き出してあげた方がためになるというものです」
もしかしたら彼らは後付けで、たまたまこの兇惑星を棲家に選んでしまっただけかもしれない。
それならば、せめて無害な大きさのものだけでも――思い至れば摩耶の行動は迅速なものであった。
「接地、反転。アンカー作動……力場解放!」
迅雷が如く迸る光。宇宙猫が摩耶を捉えるよりも早く瞬きほどの間に戦場を駆け抜けたのは、摩耶の手繰る超可変ヨーヨー『エクリプス』のワイヤー。
稲光がスペースキャットを絡め取るや否や、空間領域を解放された獅子の剛力がその巨体を持ち上げる。傾いた重力を遠心力に変え、手首をしならせるままに振り回せば。ばちばちと音を立てながら巨大な個体同士がぶつかり合い巻き込み合い、何時しかそれは巨大な渦となった。
『ギャゥ!』『ブナァ、ワッ!』
回転の勢いが増せば増すほどに巻き込む数が増えていく。届かぬ高さにいた小さな個体が巻き起こる風圧に呑まれて、
『ミャゥーー!』
すぽん、すぽん。
小気味良い音を立てながら、無傷のままに無害な猫たちは銀河の海に吸い込まれていく。
「ふう。これで星の上もきれいになって、心置きなくコメットを壊せますね」
ワイヤーを解放すると同時、何体もの巨大なスペースキャット達がまとめて宙に放り出される。
無窮の空を覆い尽くすように、ひとつの群れは爆音と共に火花となって炸裂した。
大成功
🔵🔵🔵
蔵座・国臣
夕立(f14904)と参戦。
かなり久しぶりの前線だな。
前より装甲は改良してあるが、戦闘勘は落ちてそうだ。積極的に突っ込みはせんが、可能ならフォロー頼む。
誘われた理由を先に聞いてたら来るの渋ってたかもしれんなぁ。
機械衛生兵を展開。参加する猟兵達にそれぞれ2機ずつは付けておく。負傷時には1機を囮、もう1機で退避と治療だな。可能なら転送前から付けておきたいが。
私自身の戦闘行動としては、轢き逃げ、だな。
デカブツは避けて体積の小さいのを潰していく。
機会衛生兵だけで、治療の間に合わん猟兵がいた場合にいつでも駆け付けられるよう、常に機動力をとっておく。
ん?私が猫じゃらし役?いや、そんな、まさか。
矢来・夕立
蔵座先生/f07153
アドリブ連携歓迎
ビッグビジネスの気配がしたので来ました。
都会で荒稼g…、フランチャイズ契約に興味のある個体がいるかもしれません。
蔵座先生に来て頂いたのは他でもない。こういう空間での戦闘に長けてそうだし緊急車両持ってるしあと食中毒とか対策です。
久々とは仰いますけど、惑星をブチ落とす前の準備運動にはいい相手だと思いますよ。
小さいものは轢殺してくださるそうなんで、オレはデカブツを狩りに行きましょう。
猫って小さくて素早く動くものに気を取られるでしょ。つまりでかい猫からしたら蔵座先生って面白い玩具に見えてると思うんですよね。
案の定隙だらけなんですけど。《暗殺》って呼んでいいのかこれ
●嘘も方便
ティガニタ星人とは地上のハリネズミによく似た宇宙生命体である。
平均的な大きさは|猫の妖精族《ケットシー》とそう変わらず、大きな個体――『おうさま』でも1メートルに満たない。
手足は短く身を守る術は背中の頼りない針頼り。外敵や同族との争いもない彼らは皆おっとりとしていて、観光客を警戒することもない。
そんな彼らが今、全滅の危機に追い遣られていることを知るのは猟兵のみ。
「ビッグビジネスの気配がしたので来ました」
忍びとしての勤めを果たす傍らで、数多の世界で副業に励む矢来・夕立(影・f14904)は至極真面目な顔をして言い放った。
なないろに輝くコズミックシュガー。ティア・ドロップなるその物質もさることながら、外宇宙の友好知的生命体が手掛ける名品スイーツとくれば。
「都会で荒稼g……、フランチャイズ契約に興味のある個体がいるかもしれません」
流行に敏感な地上のお嬢さん方にも『ハリネズミのドーナツ屋さん』なるゆめいろカワフワな響きは受けがいい可能性が高い。一発ちょちょいとバズれば大金小金も夢ではない、かもしれない。
「……誘われた理由を先に聞いてたら来るの渋ってたかもしれんなぁ……」
心なし眼鏡の奥の瞳を輝かせている夕立の傍ら、曇った眼でスペースキャットを見上げながら蔵座・国臣(装甲医療騎兵・f07153)は深い深い溜息を吐き出した。
『蔵座先生、罪もない|愛くるしい地球外生命体からのSOS《お金のなる木からのビジネスチャンス》です』
夕立は出立する前にそんな事を言っていたような気がする。嘘は吐いていない。
未知の種族の医療データ回収も見込め、戦う術を持たないか弱い生き物達が救いを求めているとあらば――二つ返事で請け負ったはいいものの、国臣の耳には夕立の言葉の全容まで聞き取ることが出来なかったのだ。
「蔵座先生に来て頂いたのは他でもない。こういう空間での戦闘に長けてそうだし緊急車両持ってるし。あと食中毒とか対策です」
澱みない口上は『今まで聞かれなかったから』とばかりに真っ直ぐで。突っ込むことを放棄した国臣はずり落ちかけた医療鞄を抱え直して、わざと大きな咳払いをして夕立の言葉を遮った。
「前線に立つのはかなり久しぶりだな」
……これ以上戦う前から脱力したくなかったからだ。
「前より装甲は改良してあるが、戦闘の勘は鈍っていそうだ。積極的に突っ込みはせんが、可能ならフォロー頼む」
虚より現れたるは|機人の衛生兵《コンバットメディック》。傷を癒やし簡易な防御拠点を構築するそれらは国臣の指示を受け、ツーマンセルを組んで同じ惑星内で戦う猟兵達の元へと自発的に駆け出していく。
「久々とは仰いますけど、惑星をブチ落とす前の準備運動にはいい相手だと思いますよ」
オートマタが傍らに着く間も口の減らぬ夕立の様子に、やれやれと肩を竦めながら国臣は愛機を呼び起こす。『鉄彦』と名付けられた相棒のエンジンが、熱を投じられ嘶いた。
「では、ご武運を」
「健闘を祈る」
長い光の尾を引いて医療騎兵が惑星の上を駆け抜ける。
常ならば最速で負傷者を運ぶために足となってくれるその機体は今この瞬間は陽動のための翼であり、それと同時に。
『ウニャマゥ!』『ビャン!!』
尻尾を踏まれた猫、車体にぶつかった衝撃でドミノのように連なり倒れていく猫。国臣と鉄彦は眼前の障害物を撥ね飛ばす『轢き逃げ車』そのものだった。
群れれば脅威となり得る熊ほどの大きさの個体をひとつ、またひとつと撥ねる間も男は戦場を俯瞰の視線で見詰めていた。万一救援に向かわせた先で機械衛生兵の手に余る負傷者が居た際に送られる救難信号を警戒する国臣は、正しく戦場の医術士であった。
「さて、小さいものは蔵座先生が轢殺してくださるそうなんで。オレはデカブツを狩りに行きましょう」
近場に買い物に行くかのような気安さで。日課をこなすような軽々さで、夕立は脇指の鯉口を切る。
効率を重んじ、手段を選ばず、加減も躊躇も一切しない。
矢来・夕立と云うひとりの忍びが、そう在るべくして在る由来。
薄らと膜が張ったように流れる星の海。その瞬きの中にある恒久の闇に夕立の身体は一瞬にして溶け込んで影と成る。
『ナ”ァーーゥ!』『ニャッ!ヴニャ!』
猫は小さく素早く動くものに興味を惹かれやすい。
(つまりでかい猫からしたら、蔵座先生って面白い玩具に見えてると思うんですよね)
スペースキャットも例に洩れず。国臣が東へ駆ければ次々とネコパンチが追いかけ、国臣が岩場を跳躍すれば目から放たれた閃光が帯となって縦横無尽に地を灼いた。
夕立の見立て通り、小さな個体も大きな個体も揉みくちゃになって背中はガラ空き。いっそ笑えるほどに清々しい隙の見せっぷりだったけれど。
「否応無く、死ね」
否も無く掻き斬る。
ひとつ、ふたつ。巨大な猫の上を夕立が飛び移るたび、丸太よりも太いスペースキャットの首が宙に舞い、弾けた星の粒が火花となって降り注いだ。
「……暗殺って呼んでいいのかこれ」
ずうん、と音を立てて沈み込む巨体の上で、夕立は僅かに首を傾いだ。
「ん?待て。私が猫じゃらし役?」
「流石です蔵座先生、お陰で上手く行きましたよ」
「いや、そんな、まさかな」
「勿論です。どうやったらそんな非人道的な発想が出来るんですか」
――知らぬが花とはこのことである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ドラホスラフ・ドヴォラック
※アドリブ連携OK
おっす!猟兵としての初任務は生まれ故郷ッスね!
きっちり機械惑星を撃墜して、
ティガニタ星に平和をもたらしたいッス!
でもその前にネコチャンの群れッスね!
戦闘開始!生命維持装置、ありがたいッス!
特に大きめのネコチャンは厄介そうだから引きつけたいッスね!
逃げ回ったり超重装甲で防御したりしているうちに
排煙の量が増してくるだろうから
そこでUCを発動するッス!
高熱の蒸気に肉球突っ込んだら大惨事になる事請け合いッス!
肉球?まぁ良いッス!とにかく仲間が妨害のネコパンチを掻い潜れるように動くッスよ!
「デカ過ぎないッスか!? ウチのフロアボスくらいあるッス!!」
「うおお! 揺れる! 揺れるッス!」
●遥かなる宙より
絶え間なく、高く、時に遠く。
|三精霊機関《トリニティドライブ》と外宇宙装甲が共鳴する。アルダワの魔導工学と星海の科学技術の融合体。個体名をドラホスラフ・ドヴォラック(スチームセンチネル・f39743)と云う。
「おっす!猟兵としての初任務は生まれ故郷ッスね! 生命維持装置、ありがたいッス!」
遠く高く、世界線さえも越えて。
地下迷宮アルダワで発見されたドラホスラフは、当時生命維持が困難なほどに甚大な損傷を負っていた。星海より輸入された超重装甲を受け付けられぬ程に衰弱しており、技師は懸命に彼の治療に取り組んだが、多くの部品を魔導素材に置き換えざるを得なかった。
それ故に、今の彼がこの外宇宙で正常稼働出来る保証が無かったのだ。
「きっちり機械惑星を撃墜して、ティガニタ星に平和を齎したいッス!」
稼働領域に支障なし。視野も地上と同様に捉えることが出来る。
信頼に応えたい。ドラホスラフの背から、重く唸り声のような排気音が響いた。
「でも、その前にネコチャンの群れッスね! ――戦闘開始!」
『マゥ』『ヴナァーーゥ』
ドラホスラフの駆動音にも負けず劣らずの重低音で、山より高いスペースキャットが威嚇を始める。
背を折り曲げカリカリと音を立てて爪で地を掻くその姿は正しく猫だ。喧嘩をするときの猫のそれだ。なのだが。
「……デカ過ぎないッスか!? ウチのフロアボスくらいあるッス!!」
何なら魔獣や魔法生物よりも竜神山脈でお目に掛かれる位の規模かもしれない。そんな規格外の大きさの生き物が繰り出すネコパンチときたら、
『ニ”ャッッッ!』
惑星の表面、つまりは今立っている地面に巨大なクレーターを作る事さえ容易だった。
(あれをまともに食らったら流石にぺしゃんこッス!)
すんでのところで身を躱したはいいものの、ドラホスラフを外敵と認識したスペースキャットは攻撃の手を緩める気配はない。
大きく振りかぶった猫の手を掻い潜り、ドラホスラフは猫の群れの中を駆け始めた。
「うおお! 揺れる、揺れるッス!」
ずずん、ずずん。ネコパンチが地表に打たれる度、惑星そのものが大きく揺れる。
同じ戦場を共にする仲間の為、ドラホスラフは必死にスペースキャット達の陽動に努めていた。
けれど彼はただ逃げ回っていた訳ではない。己に負荷をかけることで何時しかその排煙の量は高まり――文字通り、その身体は最大限までに『温まっていた』。
ドラホスラフの全身から蒸気が噴出し、迫り来るネコパンチを超重装甲で受け止める。
火炎の如く揺らめき立つそれは、正しく炎の如き熱さで以てスペースキャットの肉球と手を灼いた。
『ニャギャッッ!!』
驚き大きく身を退け反らせたスペースキャットは悲鳴を上げながら勢いをそのままに周りの猫も巻き込んで地に倒れ込む。揉み合いながら互いを潰し合い、やがて。
パン、と呆気なく、勢いよく弾け飛んだ。
「オール・クリアッス! さあ、皆の援護に入るッスよ!」
大成功
🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
愛機Glanzで現場に【騎乗突撃】しちゃうよ♪
【なぎ払い】からの【スライディング】で、敵前線に軽く露払いを。
…ってスッゲェほんとに目からビーム出てるぅ!?
イイなぁ、カッケェじゃん!
でもオレもスピード勝負なら負けないよ―UC発動!!
日頃鍛えたゴキゲンな【運転】テクを活かしつ
超スピードでビーム回避を試みつつ
カウンターの要領で、展開したKrakeで射撃していくね。
ほーら、ヤンチャなネコチャン達にプレゼントだよっ!
びったんびったんする魚型オモチャを模した【誘導弾】を射出後
標的達の注意がそちらに向いた隙に
死角に回り込み、Krakeの全砲【一斉発射】をお見舞いしちゃうゾ☆
●プログレ・デビルフィッシュ
『フニャー!』『ギャゥゥ!』
ばらばらと雹が叩き付けられたような排気音が響く。
重いエンジンの唸り声を立ててスペースキャットの群れを薙ぎ払いながら青き迅雷が駆け抜ける。
栄光の名を冠するその機体の上で、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)がにんまりと笑みを深めた。
「どもー!エイリアンツアーズでっす☆」
エイリアンツアーズとはパウルがドライバーを務める猟兵向けの旅行会社の名称である。
外宇宙の危機、ひいては未だ見ぬ新たな観光地足り得るティガニタ星滅亡の危機とあらば。
「行かないわけには行かないっしょ!」
楽しみさえも滲ませて、パウルは思い切りGlanzのスロットルを開いた。
『ナァーーウ!!』
一条の白んだ光が閃いたかと思えば、パウルを追尾するようにスペースキャットの瞳からビームが放たれる。
「……スッゲェほんとに目からビーム出てるぅ!?」
車体を思い切り傾けながら回避すれば二つの焼け焦げた軌跡が地表に刻まれていく。
とぼけた見た目とは裏腹なその威力に眼を瞠るも、パウルの瞳には羨望にも似た輝きがあった。
「イイなぁ、カッケェじゃん! でもオレもスピード勝負なら負けないよ――Glanz!」
呼び起こされた愛機が一際大きく嘶けば、車体の後部すれすれを追いかける光線との距離が見る間に開けていく。制限速度も交通規制もないこの場に於いてパウルを阻害するものはなにもない。
相棒を踊らせパウルは触手の表面に装着された固定砲台を解き放つ。小さい個体のスペースキャットを蹴散らしながら、パウルは鼻歌混じりにちょっぴり過激なツーリングを楽しんでいた。緊急事態ではあるのだが、遠く見えるティガニタ星の全容が明らかになっていくほどに、彼の期待は膨らむばかりだったのだ。
「ほーら、ヤンチャなネコチャン達にプレゼントだよっ!」
ぼて。ぼてぼて。
駆け抜け様に射出されたのは大魚。地上の猫が大好きな魚のオモチャの宇宙スケール版であった。
『ニャ』『ブニャ、ニャニャ』『ウナァウ』
びたんびたんとまるで生きているかのようにのたうち回るその姿に、ビームでパウルを追い掛けるのをやめて大きなスペースキャットが群がり始める。叩き、捏ね、噛み、奪い合い――すっかり野生の心を取り戻した猫達は活きの良い魚に夢中になっていた。
住む世界は違えども猫は猫。ニンゲンよりもお魚が好きらしい。
「アハハ!宇宙怪獣でもやっぱりネコチャンだね☆ でも、」
――ここは戦場だよ。
全砲門を開いたKrakeの弾道が群れを貫く。
着弾と共に周囲を照らしたかと思えば次の瞬間には爆炎が周辺のスペースキャット達を呑み込み、後には銀河の屑星と成り果てた煌めきが周囲を漂っていた。
大成功
🔵🔵🔵
黄・焔誠
アドリブ歓迎
_
……宇宙には初めて来たが、なんとも愉快なところだな
はあと小さく溜息を吐いて猫を見遣り
「悪いが、突破させてもらうぞ」
巨体のネコパンチを軽々避けながら戦場を駆けていく
まさか虎よりデカい猫がいるとはな、と小さく笑って吐息零し
面白い、と刃を抜く
刹那、猛る獄焔を纏う一閃
手応えは悪くない、が討ち倒すにはまだ甘い
追撃の剣を浴びせながらも冷静に判断すると同時、降りかかる拳
破壊される地面、巻き起こる爆風
──だが、それがどうした
怪猫の腕を跳ね除け、傷一つなく不敵に瞳を細め
猫の身体を一気に駆け登り、遥か頭上高く跳躍
荒ぶ業炎の嵐を率いて振り下ろすは銀閃
「大人しく寝ていろ、子猫」
●猛虎伏草
互いの毛繕いをしたり、屑星を掴んでじゃれたり、地面の上で丸くなったり。
地上人の日常でも街角や屋根上でよく見られる光景。
それが異様なものに映ってならないのはここが宇宙空間であることと、猫の規格外の大きさと腹に抱かれた星々の眩さによるもの。
「……宇宙には初めて来たが、なんとも愉快なところだな」
黄・焔誠(フレイムブリンガー・f40079)の口から溢れた言葉は誰にともなく落ちて宙に溶けていく。
空を越えた果て。未知の強敵ともなれば実力の程は如何なものかと思えばこれだ。気の抜ける見目にちいさく溜息を吐けども、その巨体がぐるりと一斉にこちらを向いたとあらば動かぬ訳にもいかない。
「悪いが、突破させてもらうぞ」
伏せた睫毛を上げた先。焔誠の瞳は守護者のそれへと変じていた。
『ムァア!』
焔誠の立っていた地面の僅か一足離れた地点が破壊されていく。
力任せの一撃ではあれど、星をも砕く純粋な腕力に焔誠は先程までの認識を改めた。
「まさか虎よりデカい猫がいるとはな」
面白い。
銀の閃きが冴えた音を立てて抜き放たれる。うつくしく、鋭く。主と認めた者以外には決して遜る事のない高潔なる剣。鞘の裡と擦れ合いながら火花を散らす刃は焔誠と共鳴し、獄炎を纏ったその刃がスペースキャットの胴を掻き切った。
『ミ”ャッ!!』
手応えは悪くないが、完全に両断するにはまだ甘い。
炎に巻かれ周囲を巻き込みながら暴れ狂う宇宙猫に身の回転を加え勢いを増した斬撃が再び振るわれる。抉り取るように肉を断つ刃がその肉体の中で炎を爆ぜさせれば、山より巨大なスペースキャットがばつんと音を立てて光の粒となり霧散した。
『ヴルルル……マゥーー!』
まずは一匹。打ち倒した余韻に浸ることなく焔誠の身体が宙に踊る。
ゆらりと揺れる黒い尾っぽに反応しているのか、スペースキャットの動きは焔誠の背後を狙うものが多かった。しかし、狩猟本能のみで動く猫にうつくしき虎を捕えることは叶わない。
地表は破壊の限りを尽くされ、爆風は今にも焔誠を落とさんと吹き荒れている。
「――だが、それがどうした」
降りかかる拳の方角を冷静に俯瞰しながら、ならばと焔誠は振り上げられた拳に飛び移った。怪力をいなし、内に強靭な発条を秘めたしなやかな脚が星々を抱いて揺れる毛並みの上を一気に駆け上がる。
捨てきれぬ意地がある。
捨てられぬ意思がある。
――全うすべき、使命がある。
迷いはない。
銀の双眸を眇め、黒き虎が跳ぶ。
剛炎の嵐を抱くその姿は堕つる星にも似て。
「大人しく寝ていろ、子猫」
振り下ろされた銀閃が、最後のスペースキャットを一太刀の元に両断した。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『最終破壊兵器・デストロイコメット』
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POW : 絶対惑星破壊「ロック・オン」
自身の【破壊する星へ絶対突き進み続ける性質】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 絶対惑星破壊「スピード・アップ」
全身を【金属を溶かすほどの灼熱の青い炎】で覆い、自身の【無謀さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ : 絶対惑星破壊「サーチ・アンド・デストロイ」
自身の【コアの機械部品】を代償に、【対ロボット迎撃砲台】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【身にまとった炎を噴射させること】で戦う。
イラスト:弥霧蕗
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ノラ・ネコカブリ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●迫り来る焔
無機質な鉄塊の地表が燃えている。
スペースキャットの群れが駆逐された今、残されたのはこの兇惑星のみ。
「ねえ、あのほうき星。もしかして……」
「こっちに向かっているんじゃあないかしら」
「たいへん!どうしよう。流れ星がぶつかったら、僕たちパン生地みたいにぺちゃんこになっちゃうよ」
全く勢いの衰えない軌道は正確にティガニタを捉えており、今や猟兵達が目視出来る程に互いの距離は近付いていた。
煌びやかな銀河の遠洋の中に浮かぶなないろの星の上で、漸く異変に気付いたティガニタ星人達は慌てて『おうさま』のもとに集まりつつあった。
――惑星が衝突するまで、あと。
甘利・梓
あれってもしかしなくてもティガニタ星です……?
もう見えるところまで来ちゃったんですか!?
こんな星を墜とすなんて私には無理とか
私なんかとか
こわいとか
そんな言い訳も吹っ飛ぶくらいの大ピンチ
このままじゃぶつかっちゃう
そうしたらティガニタ星だってそこに住むみんなだって消えちゃう
それは……私、ちょっと許せない、かな!
ビッグカトラリーセットのナイフを取り出す
刃物は怖いからあまり武器にはしてこなかったけど
この星は生き物じゃないから、大丈夫!
大好きなお母さんが作った大好きな唐揚げを挟んだ包子
いっぱいに食んだら元気もやる気も勇気もいっぱい
ナイフをめいっぱい振り回し
大したことは出来ないけれど
それでも
私、頑張る!!
●御怜悧さんと御跳さん
「あれってもしかしなくてもティガニタ星です……? もう見えるところまで来ちゃったんですか!?」
甘利・梓(腹ペコ乙女・f12881)の瞳に映るもの。
屑星のアラザンがちかちかと瞬く。コットンキャンディの雲に包まれた、ペール・トーンのなないろで彩られた小惑星。最早人間の目で視認出来る程に迫ったティガニタ星が、ぽつんと頼りなげに銀河の只中に浮かんでいた。
宇宙空間での距離感が地上人である梓に図り知れなくとも、事態が一刻を争う危機的状況であることだけはわかる。
(こんな、自分が今立ってる星を堕とすなんて)
戦うことを恐れ、武器を振るうことを怖れ、命を奪い合う行為に本能的忌避感を抱く。
『甘利 梓』と云う娘の感性はごく一般的な年頃の乙女のそれに近しい。
(私には無理とか、私なんかとか)
星が燃えている。
ちりちりと足元を焦がすその炎に、あち、あち、と慌てて飛び上がる。
(こわい)
こんなのぜったい、ぜったい死んじゃう。
「……あれ?」
頭の中を埋め尽くしていた最も原始的な感情の中に、不意にひとつの疑念が浮かんだ。
よくよく目を凝らしてみても、ティガニタの周辺に宇宙艇やワープゲートの類が見当たらない。つまりはティガニタ星人たちは『星を捨てて逃げ仰る』という選択をせず、星と命運を共にすることを望んでいると云うことだ。
「うそ、うそ」
戦うことを知らぬ、他者の笑顔だけを望む生命体。そんな彼らが今、猟兵達を――自分を信じて、震えながらそのときを待っている。
(このままじゃぶつかっちゃう)
(そうしたらティガニタ星だって、そこに住むみんなだって消えちゃう)
「それは……私、ちょっと許せない、かな!」
刃物を振るうことが、いのちを傷付けることが怖かった。
「この星は生き物じゃないから、大丈夫!」
あまり武器として扱う事はなかった大きなカトラリーナイフ。次いで懐から取り出したるは、大好きな母お手製のお弁当。
からりと揚がった大きな唐揚げを挟んだ包子を大きく開けた口が勢いよくかぶりつけば、ほのかに甘いふかふかの生地の中から溢れんばかりの肉汁が口の中を満たしていく。慣れ親しんだ味が『いってらっしゃい』と微笑む母を思い出させてくれる。後退りしそうになる自分の背を押してくれる。だからこそ、梓は一歩を踏み出すことが出来る。
「みんなみたいに格好良くない。大した事はできないけれど」
言い訳はとうに吹き飛んだ。
「それでも――私、頑張る!!」
どうぞ召しませ。
振り上げたナイフの一撃が梓の意思に呼応する。
全霊の勇気が力となって、デストロイコメットの地表から深部へ深々と亀裂を走らせた。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
スペースキャットも片付けたし。
これで心置きなく彗星をぶっ壊すことができますね。
しかし、改めて見るとどうやって壊しましょう、この星。
こういうでっかくて、まっすぐ進んでくる相手にはこちらも持てる最大火力を撃ち込むのが一番です。手加減無用ですね。
UC【殲禍烈剣】を発動。
レーザーの軸線と彗星の進行方向が合うように誘導ドローンを展開。
調整できたら、衛星レーザー発射します。
ドーナツよろしくレーザーでこんがり焼きましょう。
砲台からの砲撃は【念動力】で軌道を曲げて回避します。
●セントエルモの火
ひとつの脅威は取り払われ、あとはこれなる兇惑星を破壊するのみ。
「これで心置きなく彗星をぶっ壊すことができますね。しかし……」
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が視線を巡らせた先。青々と燃える星の表層はスペースキャットのネコパンチにより目に見えて破壊の限りを尽くされ幾つものクレーターが生じているが、デストロイコメットの挙動が変わる事はない。
「改めて見るとどうやって壊しましょう、この星」
星を堕とす。成すべき事の規格の大きさは図り知れない。
表面を抉った程度では核となる中枢プログラムを打ち砕く事は叶わないと云う事なのだろう。もっと大掛かりに、もっと派手に。徹底的なダメージを与える必要がある。
真っ直ぐに突き進むことのみに特化した存在。脅威となるのはこの途方も無い大きさに付随する力のみ、それならば。
「こちらも持てる最大火力を打ち込むのが一番です。手加減無用ですね」
ばちり。
ノイズと共に弾けたエレキネットが螺旋を描き摩那を囲み迸る。展開された誘導ドローンが惑星の軌道に沿いながら軸線を確保せんと移動を始めた、その時だった。
『敵性反応確認。高濃度エネルギー対ヲ観測。迎撃砲台用意。殲滅準備』
それまで何一つ反応の無かったデストロイコメットからけたたましいビープ音と共に無機質な機械音声が放たれた。恐らくは自身に向けられたユーベルコードを感知するように作られているのであろう。お世辞にも優雅とは言い難い金属音と共に剥き出しになった鉄塊の至る所から害なすものを排除するべく迎撃砲台が生み出されていく。
主砲は正確に摩那とドローンを捉えるが、しかし。
「なんだ、喋れたんですね。……でも、『それだけ』です」
摩那の念動力は物理法則を書き換える。放たれた炎の青い軌道が道半ばで明後日の方向に捻じ曲がる。迎撃プログラムが愚直に同じ軌道で追い続けようと、それが摩那を灼くには至らない。至れない。
何の障害もないままにドローンは算出し終えた座標に辿り着く。
手筈は整った。
「衛星軌道よし。誘導ドローン配置問題無し。目標を確認。 ――発射!」
月虹が如き曳光が狭くした空を塗り潰す。圧倒的な力で以て放たれた光がデストロイコメットを大きく揺らし、刹那、星の動きが止まった。
「ドーナツよろしくこんがり焼いてしまいましょう。いかがです?」
ぱちんと片目を瞑ってみせる摩那の笑顔には余裕の色さえ浮かんでいる。
動きを鈍らせた兇惑星から響き渡る警告音はより強いものへと変じていく。今までに無いその反応は、摩那が確かな痛手を負わせた証左だった。
大成功
🔵🔵🔵
オリアーナ・クィン
さて、邪悪なる星の討伐を始めようか。
引き続き、騎士重鎧に搭乗し戦っていくよ。
戦法はすでに決まっているよ。|騎士《 パラディン 》らしく、堂々と突撃で討ち破ってみせよう!
あの星は一直線にティガニタへと突き進んでいるんだろう?ならば、敵の侵攻ルートは判明しているということ。
私のUCの突撃を直撃させるのも容易だろうね。
この技で重要なのは速度と距離、敵の侵攻ルートからより長い距離の突撃が行えるコースを割り出して突き進むとしよう。
突撃の際は重鎧が装備した騎士砲槍をしっかりと構えたランスチャージを行おう。
例え敵が破滅をもたらす恐るべき星でも、騎士というのは勇気を持って突き進み討ち破るものさ!
●銀湾に翔ける
「さて、邪悪なる星の討伐を始めようか」
今迄は前哨戦に過ぎない。
この外宇宙で生を受けたオリアーナ・クィン (プレスター星のスペース|騎士《パラディン》・f39183)にとって宇宙怪獣の群れなど取るに足らない。
然しそれは相手も同じ事。スペースキャットに散々地表を抉られてもなお、まるで怯む事なく進路を真っ直ぐに突き進むその姿。『頭上の羽虫など歯牙にも掛けぬ』とばかりにデストロイコメットは無機質に課せられたプログラムを忠実に遂行していた。
「傲慢だね。けれど、私の戦法は既に決まっているよ」
宙空へと離脱したオリアーナは飛翔用噴進機の出力を最大まで引き上げ一条の星となる。白む炎が光の軌跡を描き、銀河の大海を断ちながらデストロイコメットを追い抜くままに距離を離していく。
「|騎士《パラディン》らしく、堂々と突撃で討ち破ってみせよう!」
星は僅かなぶれを見せながらも未だティガニタに向かって直進している。即ち侵攻ルートは既に判明していると云う事だ。
「それならば、私の槍を直撃させるのも容易だろうね」
オリアーナの数ある武装の中の一つ、騎士砲槍。それは大砲と戦槍を組み合わせた選ばれし騎士のみが扱える敵を打ち砕く為の聖なる槍。星々の光を受けて輝く巨大な槍を携え、オリアーナは星団と溶け合うように宙へ躍り出た。
(重要なのは速度と距離。惑星の侵攻ルートからより長い距離を確保する為には……)
加速する。星よりも早く。音よりも、光よりも、更に疾く。
より強く重い一撃を放つ為に必要なのは、自らの速度と激突までの間に直進した距離。ぶつかり合う双方の勢いが強ければ強いほどに突撃の威力は増す。その為に、オリアーナは限界まで速度を高め続けていた。
何時しかティガニタを目前とする距離まで先行した騎士重鎧が徐に振り返る。
「――行くよ」
それは宣告。白銀の光を噴き出しながら、オリアーナは猛然とデストロイコメット目掛けて膨大なエネルギーと共に宇宙空間を突き破りながら再び走り出した。重鎧に装着された騎士砲槍が鈍く煌めく。白き焔の如きその姿は最早肉眼で捉えることさえ叶わない。
焼き切れそうな程に速度を高めた騎士突撃が星と交わる。
刹那閃光が迸り、黒い煙と共に爆炎が巻き起こった。
頬に一筋の汗が伝う。星同士の激突にも等しい衝撃をオリアーナは一寸たりとも揺らぐ事なく受け止めながら、鎧の下の瞳を僅かに細めた。
「例え敵が破滅をもたらす恐るべき星でも、騎士というのは勇気を持って突き進み討ち破るものさ!」
守るべきものが、この双肩に掛かっているから。
大成功
🔵🔵🔵
ドラホスラフ・ドヴォラック
※アドリブ連携OK
|前衛壁役《ウォール》を張るのはいつもの事ッスけど、
流石に惑星を真正面から受け止めるほどの自信はないッスね〜。
っていうか、着弾を許した時点でヤバいだろうし、
今回は撃ち落とすのに専念すべきッスね。
まずはヘビーマシンガンを撃ち込んでみるッス。
それで相手の様子を見たら、全身から蒸気銃や蒸気砲をハリネズミのように展開しておくッス。
飛んで来るデストロイコメットに全ての照準を合わせとくッスよ。
そして範囲に入ったらUCを発動、持っている全ての弾を一点に集中させるッス!
「だいぶデカくなって来たッスねー」
「この星は俺たちが守るッス!」
●スチーム・ウォール
一方その頃、ティガニタの観測手は猟兵たちの姿を補足していた。
スペース望遠鏡をあちこちに向けて猟兵達の姿を追いかける。おうさまを守るようにぎゅっと抱き合い巨大な針の球になっている仲間たちを振り仰ぎ、興奮気味に飛び跳ねながらティガニタ星人の(普段はほとんどお仕事がない)観測手は声を張り上げた。
「――みんな、みて!ヒーローが、あたし達を助けにきてくれたのよ!」
「だいぶデカくなって来たッスねー」
ティガニタ星人たちが猟兵達を見つけたのとほぼ同時刻。ドラホスラフ・ドヴォラック(スチームセンチネル・f39743)は迫り行くティガニタの彩に、刻限まで幾許も無いことを悟っていた。
(|前衛壁役《ウォール》を張るのはいつもの事ッスけど……流石に惑星を真正面から受け止める程の自信は無いッスね)
迷宮に蔓延る災魔とてドラホスラフの手を焼かなかった訳では無いが、如何せん単純に敵の規模が大き過ぎる。体当たりという単純な攻撃手段も口にすれば他愛のないものだけれど、相手が規格外の大きさと速度を兼ね備えた存在であれば話は別だ。
「っていうか、着弾を許した時点でヤバイだろうし、今回は撃ち落とすのに専念すべきッスね」
只人であれば数人がかりでなければ持ち上げることさえ叶わない。災魔の侵攻を押し返す為に創られた特大の蒸気機関銃はドラホスラフがアルダワで発見されたあとに装填された特殊武装だ。ある程度の知能を有する生命体であれば、存在だけで脅しとなり得る厳しさを持っているけれど。
「流石にビビってくれる訳ないッスよね!」
威嚇射撃は不要。そのままの勢いで火を吹いた銃弾は確かにデストロイコメットを捉え、スペースキャットが散々抉った星の表層から更に深くへと潜り込んでいく。着弾した穴は鉄塊の表面を捲れさせ、剥き出しになった機械部位が煙を噴き出した。
『敵性反応複数確認』『敵性反応複数確認』『進路ニ変更無シ』
「おわァ!? 喋ったッス!」
瞬間、けたたましい警告音を鳴らしながら惑星が青く燃え上がる。
衰えるどころか速度を増した星の軌道に宙空でわたわたと泳ぐように体制を整えながらも、ドラホスラフは既に次の手への布石を打っていた。
(こんなもんじゃ足りないッス。俺の持てる力全部で立ち向かわなくちゃ)
じゃこん、と音を立ててドラホスラフの全身に添え付けられた火砲の砲身が露わになっていく。常は人々を傷付けぬように格納されたそれらを展開するその姿は、奇しくもティガニタ星人たちの姿を彷彿とさせるものだった。
迫り来る兇惑星を碧く光るモノアイに映し出す。
射程圏内に、届く。
「――この星は俺たちが守るッス!」
全砲門を開いた蒸気銃砲の炎が、デストロイコメットの深部を貫き灼いた。
大成功
🔵🔵🔵
黄・焔誠
アドリブ歓迎
_
首を軽く回して筋肉を解し
小さく息を吐いて、前髪を掻き上げ
しかと兇星を見据え
──では、墜とすか
戦うことを知らない、温厚な生命体
……戦禍の中を駆け、血と戦火の匂いが鼻に染みついた俺にはお伽話のようだ
戦うことを知らぬ存在がいるなど未だ実感が湧かないが
一先ずこの無粋な星を壊してから考えればいい
戦うことを知らぬなら、
ここは俺たちの出番だろうよ
緋金の焔が猛り、刃が煌めく
勿論油断も慢心もしない
失敗は許されぬ
だからこそ常以上に冷静に、戦況と戦場、味方の動きを全て把握
この戦いに於いて、俺はどう動くべきか
瞬間思考力を以て最善の行動を取ろう
一瞬の好機も見逃さず
この命を燃やして放つは荒ぶ獄焔の斬撃
●瞋恚の炎
焔が燃えていた。戦火にまかれたうつくしき緑の集落があった。
鉄錆と肉が焦げるすえた汗と腐った脂の臭い。
名もなき花を踏み躙るが如く、ひとの命がひとつふたつと散っていった。
『生きる』とは、何だろうか?
生まれ落ちて息をしたら。それだけで生きていると呼べるのだろうか。
否――ただそれだけならば、俺はとうに『三度死んでいる』。
戦うことを知らぬ温厚な生命体。
それがひとりやふたりではない。ティガニタは星丸ごとがそんな|よわいもの《憧憬》で出来ている。
泥に塗れた半生であった。黒き虎は血に濡れることを厭わなかった。ただ生きようともがいて、抗って日々を繋いだ。生きる為に爪を研ぎ、剣を手放すことはなく――それでも届かぬものがあった。守りきれぬものが、あった。
黄・焔誠(フレイムブリンガー・f40079)にとって、この平穏な小惑星は存在自体が御伽話のように感じられた。未だそのような夢物語が実在することに対して実感は湧かない。けれど今目前に広がる兇惑星を斬る事が出来なければ、現実が夢想へと、夢から無へと塵芥が如く砕かれてしまう事を焔誠は理解している。彼らが戦うことを知らぬなら、今一度この身を刃として振るおう。
「――では、堕とすか」
デストロイコメットの表層は青々と燃え上がるがまま、最早猟兵達が足を着けて居られないほどにその熱を昂らせていた。
五彩の君は動かない。皮膚を、黒い毛並みを焦がすことも溶かすこともなく、ただ進みゆく兇惑星の上に佇んでいた。仲間達が負わせた損傷は決して浅く無い。遠くで響いた銃声と爆発音を、獣の耳は聡く聞き取る。静かに。凪いだ心のままに戦場を俯瞰していた焔誠の刃が星々の光を受けて煌めいた。
首を回す。軽く筋肉を解し、小さく息を吐く。
掻き上げた前髪の下、北辰の双眸が星を見下ろした。
「その程度で、俺を灼き尽くせると?」
緋金の焔が噴き上がる。青き炎を揺らがせる程の黄昏の彩が、地を溶かし星の内部を抉り出していく。
(失敗は許されぬ)
慢心はない。あるのは|壊す《殺す》為の最適解のみ。
(休むことも。立ち止まることも許されぬ)
終われない。終わらせることも赦さない。
星が大きく揺れる。ほんの僅かに動きを止めたその瞬間に、焔誠の身体が踊った。
乱れ髪に屑星と火花を散らし、獄焔を纏うた斬撃が生じた亀裂を深く深く抉り込んで行く。激しい太刀音と警告音が一塊となり、引っ切りなしに上がって来る。耳の孔が馬鹿になりそうだ。構わない。
――この命を燃やして放つ。
二つの炎が核で刃と共にぶつかり合い、ついに兇惑星が音を立てて二つに割れた。
大成功
🔵🔵🔵
蔵座・国臣
夕立(f14904)と参戦。
機械衛生兵による猟兵達への支援は継続。全数稼働すれば余力は出るので、夕立の指示に従うよう通達。トラップ配置を手伝わせる。
夕立の要請通り。私自身はデストロイコメットの手綱を握るとしよう。馬力が足りなければ、リミッターの解除も使う。
私の機械知識、騎乗能力でどれだけ誘導出来るか分からんが、無謀な行動、不利な行動をしやすくなることを利用して夕立の用意したトラップに突っ込ませる。グルグルと何度でもトラップ宙帯を走らせたなら最上だな。自壊の誘発、トラップのダメージは当然。ティガニタへの接近の遅延にもなる。
スターライダー。そういう意味じゃないと思うんだがなぁ…!!
矢来・夕立
蔵座先生/f07153
▼方針
罠エリア作成→迎撃砲台の作成とコアの縮小を誘発→縮小したコアを捕縛→入口に連れ戻す
まず軌道上に罠だらけの区画を作ります。
『朽縄』で金網。『封泉』で機雷。苦無・手裏剣・蝙蝠、あるだけ仕掛ける。
コアの機械部品は罠を破壊するために消費されていく。本体は縮小するハズです。
【紙技・津雲】。罠エリアの入口に連れ戻します。コアが消えるまで。
命令を聞かせるには結局力ですよ、力。先生の鉄彦ならオレよりは馬力が出ます。
スターライダーを名乗るんなら星の一匹や二匹手懐けてみたくないですか。
ではオレは罠の張り直しに行くので後は任せました。
遠目には虹色の花火みたいに見えなくもない。写真撮っとこ
●星羅に散る
『致命的損傷』『致命的損傷』
『可動域減少』『進路変更不許可』『迎撃』『迎撃』『迎ゲk、』
真っ二つに割れたデストロイコメットの警告音に錆び付いたノイズが混じる。
その内部を完全に露出した今でさえも星の進路も速度も変わらない。制御権を失った進撃は最早墜落していると言った方が正確であり、兇惑星は今や二つの巨大な隕石と成り果てその命を燃し尽くさんとしていた。
「流石は巨大兵器と言うべきか……いや」
道連れを厭わぬその姿は、心無き機械の成れ果てか。
蔵座・国臣(装甲医療騎兵・f07153)は痛ましげに眉を寄せるが、対照的に矢来・夕立(影・f14904)は常と変わらぬ様子で国臣を一度降り仰いだ。
「蔵座先生。先生はスターライダーですよね」
「ああ、まあ」
「スターライダーを名乗るんなら星の一匹や二匹手懐けてみたくないですか」
「は?」
「オレはオレの仕事をしに行くので後は任せましたよ」
「いや、は?え?」
僅か十秒程のやり取り。
鉄彦に跨って呆然とする国臣を背に、夕立は剥き出しになった機械部位を足場に核を目指してさっさと駆け出して行く。
「スターライダー。そういう意味じゃないと思うんだがなぁ……!!」
悲しいかな、戦場医の嘆きは虚しく星の海に溶けていった。
垂れ込める紙垂が、宙空に浮かぶ紙風船がその姿と性質を変じさせていく。それは夕立の手繰る式のひとつ。
朽縄、封泉と呼ばれる式は星を戒める網となり、星を打ち砕く機雷と成る。
『コア・エリア侵入ヲ検知』『敵対反応感知』『迎ゲki 迎 迎撃』
電子部品が百篝となり黄色い火花を弾けさせる。核を造り替える事で生み出される迎撃砲台は最早精密さを帯びず、ただ仇為すものをがむしゃらに攻撃するだけの無秩序な兵器と成り下がっていた。
避けるは容易い。それでいい。迎撃砲台を生み出せば生み出すほどに、星の核は自らの部品を削り|コア《心臓》を剥き出しにしていく。
|水練《手裏剣》。|黒揺《苦無》。|幸守《蝙蝠》。持てる全ての式を手繰り張り巡らせるは陥穽の檻。
国臣の衛生兵が夕立に向けられた青き閃光を限界まで庇い立ててくれてはいるが、構築するまでの道のりは容易くはない。この策を完成させるに至るまでには時間が必要だった。成層圏の先に広がるティガニタへの到達までに間に合うか。
刻限は近い。否。
「ヒトの命が掛かってるのに、先生は『出来ない』なんて言わないでしょう」
ならば、己も為すべきことを果たすだけだ。
炎の雨が降る中、国臣もまた星の中枢部を愛機を操りながら陽動に努めていた。
この僅かな時間の中で分かったことはふたつ。デストロイコメットは自らに直接向けられた攻撃以外を脅威として見做さないこと。致命的な損傷を受け制御権を失った今、コア・エリアに到達した者を迎撃することを優先して動いていること――で、あるならば。
「ああ……全く、任されたよ」
鉄彦の動力部が赤々と燃え、迎撃砲台の周囲を、弾道をわざと掠めるように走りゆく。
中心部を掻き乱せば乱すほどにこの兇惑星の回路にぶれが生じる。今まで進行速度を緩めなかったデストロイコメットが、取るに足らぬ羽虫を潰すことを優先して動きを鈍らせる。
一分一秒でも長く時間を稼ぐ。それが国臣が算出した、夕立への声無き|答え《信頼》だった。
『迎撃』『迎撃』
『迎撃 迎ゲk gggegggggggkkkkkkkk』
機械音声がノイズとアラートに掻き消され、ついにそのコアが露わになる。転がり出た絡繰仕掛けの心臓部を認めるや否や、影に徹し罠を構築し終えた夕立が動いた。
「――紙技・津雲」
紙垂の手綱が蛇の如く伸び、剥き出しの電子回路を絡め取る。結ばれたコアは踠くことも叶わぬまま攫われ、朽縄の先端が脇を駆け抜ける鉄彦のタンデム・グリップを確かに掴んだ。
「命令を聞かせるには結局力ですよ、力。先生の鉄彦ならオレより馬力が出ます」
すれ違う間はほんの一瞬。無論夕立とて式の行使に手を抜く訳ではないけれど。
「ああ、もう……簡単に言ってくれるよなぁ!」
アクセルを全力で蒸した国臣がデストロイコメットのコアを引き摺り回しながら罠の絨毯を駆け抜ける。金網に叩きつけられ、機雷の爆風に曝され、四方八方から飛び交う夕立の式が守るものを全て失った心臓部を容赦なく砕いていく。
『――――ガ、pi』
ばきん、と酷く呆気ない音がした。
それは惑星の死を、勝利を意味するものだったけれど。
「……やった、か?」
核を失った星の名残が、青から赤へとその炎の色を変じさせていく。
嫌な予感がする。
「夕立!……おい、夕立。夕立!?」
国臣が振り返る。夕立の姿はない。何故?
星が燃える――否、これは『爆散しようとしている』のだ。
「夕立ーーーー!!」
かくしてデストロイコメットの脅威は猟兵達の手により打ち砕かれた。
心臓部を失い炎と共に四散した兇惑星は遠目には虹色の花火に見えないこともない。
「写真撮っとこ」
早々に迎えの船へ救援を依頼していた夕立の横顔は、とても晴れやかなものであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『惑星都市を巡る旅路』
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POW : 異星の工芸品をお土産に
SPD : 観光エアシップに乗って
WIZ : 惑星都市の名所巡りへ
イラスト:ももんにょ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ヘッジホッグ・シュガーデイズ
ティガニタの大地にタラップが降りていく。
ペール・トーンの淡い大地の上でパステルカラーの木々が揺れている。大地はやわらかく、陽をいっぱいに浴びた寝床のようにあたたかい。ビスケットで出来た家々に囲まれた一際大きなお菓子のお城。飴細工の立派な城門の前に、ティガニタ星人たちが集まっていた。
「ありがとう、外宇宙の戦士たち」
ひときわ大きい――とは言っても猟兵達の背丈の半分ほどではあるが。口髭を蓄え王冠を被った立派なティガニタ星人が猟兵達に頭を下げれば、未だおうさまを守るように抱き合っていたティガニタ星人たちが次々に飛び跳ねながら猟兵たちを囲むように群がり始めた。
「ありがとう」「ありがとう!」
「あのね。あのね。あたしたち、地上からちゃあんと見ていたのよ」
胸を張ったのはティガニタの観測手。
あなたたちの勇気を、あなたたちが命を賭して守ってくれたことを。わたしたちは知っている。
皆、あなたたちに深い敬意と親愛の情を抱いている。
「お礼をしなくちゃいけないね」
「お礼をしなくちゃいけないわ」
「おうさま」「おうさま!」
口々に告げる民の声に、おうさまと呼ばれたティガニタの長はつぶらな瞳をやわらかく細めた。
「宴を開きましょう。おまえたち、ありったけのティア・ドロップを持っておいで」
「はあい!」
――惑星系577、ペネロペ星雲に再び平穏が訪れた。
●ティガニタ・ギャラクシーマップ
ふかふかの草原に身を横たえるだけでも焼きたてのパンのようなあまいかおりが鼻を掠める不思議な惑星。『宙に浮かぶコットンキャンディ』と呼ばれる、ティガニタ星おすすめの観光地です。
1.メリメラ・レイク
巨大なコスモハニービーの巣からこぼれ落ちた蜂蜜の池です。
華やかな柑橘の風味のするこがねいろはティガニタ星人が運転するスペース・スクーターの燃料です。
人間が口にしても問題ありません。甘くて美味しいです。
ティガニタ星人の子どもたちに人気があります。
2.ソコラタ・ブリッジ
チョコレートの橋が掛かるティガニタ星のメイン・ストリートです。
名物のギャラクシー・ドーナツの屋台はこちらにあります。
ティガニタのおとなたちが揚げたてのドーナツを猟兵の皆さんに振る舞おうと張り切っています。
コズミックシュガー、ティア・ドロップがあちこちの屋台でぴかぴか光っています。
3.ティガニタ・キャッスル
ティガニタ星人のおうさまが城門を解放してくれています。
色とりどりのキャンディ・シャンデリアの光に包まれたお城の中を自由にお散歩できます。
疲れたら中庭の立食パーティへどうぞ。
どれもこれもやたらとカラフルではありますが、ティガニタで採れたおいしい果物や野菜で作られたごちそうが並んでいます。狩猟の術を持たないティガニタ星人が扱うお肉は光と空気中の微生物と水で造られた合成食品のようです。
黒木・摩那
無事に彗星をぶっ壊すことができました。
そして、ひと仕事終えた後の甘味は楽しみですね。
頑張ってきた甲斐があるというものです。
ギャラクシー・ドーナツを目指してレッツゴー。
名物というからには、屋台によっていろいろな味や形状があるんでしょうね。
ティガニタの歓迎に応えるべく、屋台の全制覇を目標に立て、
ドーナツ巡りを堪能させてもらいます。
ドーナツは揚げたてがおいしいんですよね。
立ち食いでサクサクといただきましょう。
●あつあつのしあわせ
宙に浮かぶコットンキャンディ。ティガニタのそらにはその名の通りあまいあまい綿菓子の雲が流れている。ぽこぽこと音を立てながら走り抜けて行くスペース・スクーターの燃料も、立ち並ぶ家々も、彼らの唯一の象徴とも呼べる城でさえも。すべてがすべてあまいもので出来ていて、子どものゆめを星中に散りばめてまあるく固めたような風景が視界いっぱいに広がっていた。
「無事に彗星をぶっ壊すことができました。ひと仕事終えた後の甘味は楽しみですね」
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)がふかふかの地面をとんと踏むたびに重力の差異から僅かに体が浮く。体の重みさえ吸い込まれるような浮遊感は心地良く、弾む胸の鼓動をそのままに歩調は自然と軽くなっていた。
風に乗って届く甘く香ばしい香りに目を細め、ティガニタ星人達のもとへと摩那は小走りに駆けて行った。
「ようこそ、ようこそ! 英雄さま!」
三角巾にエプロン、手袋を身に付けたティガニタ星人が摩那をみとめて諸手を上げる。
はじめの屋台に選んだここでは星型のシンプルなドーナツが一押しであるらしい。揚がったばかりのきつね色をアイシングでおめかししたならひとしあげ。振りかけられて行く砕いた星屑の如く輝く色彩こそがティガニタ名産のティア・ドロップ。ザラメほどの粗い粒子のそれはひかりを受けてきらきらと煌めいて、かたちを保ったままドーナツの上に鎮座していた。
「おひとつくださいな。あ、ここで食べます」
「もちろんです。どうぞ、おあついので気をつけてくださいね」
油紙に包んだドーナツを受け取ったなら、あち、あち、と指先を左右でつけたり離したり。鼻を擽るたまごのあまい香りに笑みを深めて、ひとくち。
「ドーナツは揚げたてがおいしいんですよね」
さくりと小気味いい音と共に頬張ったなら、ティア・ドロップのかりかりとした歯触りと共に口の中でドーナツの生地が溶けて行く。ドーナツ生地自体はとても軽く、ほんの数回の咀嚼で口の中が空っぽになった。
「ん〜〜! 頑張ってきた甲斐があるというものです。ほかにお勧めはありますか?」
「もちろん。もちろん! うちはたまごに自信がありますから、お味はひとつだけなんです。あちらの屋台はくだもの自慢ですから、たくさんの種類がありますよ」
「なるほど? これなら……全制覇もいけるかもしれませんね」
陽はまだ高い。おなかが膨れてきたなら、街中をぐるりと探索してみてもいいかもしれない。
あっという間にぺろりと平らげながらひとつの目標を胸に掲げて。屋台のティガニタ星人に軽く手を振ると、摩那は再び歩き出した。
大成功
🔵🔵🔵
ドラホスラフ・ドヴォラック
※アドリブ連携OK
ティガニタ星、平和そうな星ッスねぇ。
こんな綺麗な星を俺たちが守ったんスね。
歓迎されているようだし、少しだけゆっくりさせて貰うッスかね。
ソコラタ・ブリッジにお邪魔するッス。
メインストリートだけあって華やかな場所ッスね~。
ドーナツも色々と種類がありそうで楽しみッス。
揚げたてが美味いんスよね。お言葉に甘えていただくっす!
せっかくだし、お土産を買って行くッス。
ティア・ドロップ、俺と同い年のクラスメイトは好きそうッスね。
●かたちのないこころ
「ティガニタ星、平和そうな星ッスねぇ」
ドラホスラフ・ドヴォラック(スチームセンチネル・f39743)は発光する単眼を巡らせながら、ティガニタ星人たちを怖がらせることがないようにゆっくりと歩を進めていた。
「こんな綺麗な星を俺たちが守ったんスね」
兇惑星は跡形もなく四散し、地上にその残滓が降り注ぐこともなく。ティガニタ星人たちは誰一人欠けることなく星の平和は保たれた。ドラホスラフの視線の先に広がるのは、あたたかなティガニタの日常そのものだった。
「あっ!」
ふと。おおきな機械のからだを見つけた一際ちいさなティガニタ星人の子どもが走り寄ってくる。黒いまんまるの瞳を輝かせながら、ティガニタの幼子は体当たりせんばかりの勢いでドラホスラフに思い切り飛びついた。
「おわっ!」
「あたちも! あたちも、望遠鏡をみせてもらったの! おにいちゃま、とってもつよいのねえ!」
ありがとう。ありがとう。全身で感謝を表すその姿に、ドラホスラフは照れくさそうに自らの頭部を軽く掻いた。撫でてあげたい気持ちはあったのだけれど、加減を間違えれば傷付けてしまいそうで。おいでと告げれば、ちいさなティガニタの子どもは歓声を上げてドラホスラフの肩によじ登った。
「こんなに歓迎されてるんなら、少しだけゆっくりさせて貰うッスかね」
「やったあ! あのね。あのね。おにいちゃま、あたちのパパのおみせにきて! パパのドーナツ、いちばんおいちいのよ!」
「メインストリートだけあって華やかな場所ッスね〜。ドーナツも色々な種類がありそうで楽しみッス」
ティガニタの少女に導かれるままドラホスラフが赴いたのは、ソコラタ・ブリッジの中程に店を構えるきのこをくり抜いたようなかたちをした屋台であった。愛娘がドラホスラフの肩に揺られているのを見た店主は、『おやまあ! すみません、娘がわがままを』と目を丸くしたけれど。すっかり懐いて離れない様子に、ドラホスラフも蒸気の駆動音――笑い声を響かせた。
この露店の一押しはすこし冷ました生地の中にカスタードをたっぷり含ませたプレリン・ドーナツ。たっぷりまぶしたティア・ドロップをスペースバーナーで焦がし、かりかりの飴状になった表面の食感が目にも口にも楽しい一品だ。
「こういうのは出来立てが美味しいんスよね。お言葉に甘えていただくッス!」
ティガニタの少女とふたり。頬張るドーナツの甘味にぷしゅぷしゅと蒸気を上げながら、ドラホスラフは守り抜いた平和の確かさを噛み締めていた。
「……あ!せっかくだし、お土産も買って行くッス!」
遠く離れた第二の故郷。
学友たちはきっと、土産話もティア・ドロップも気に入ってくれるはずだから。
大成功
🔵🔵🔵
オリアーナ・クィン
wiz
邪悪な星は墜ちたようだね。平和な星を守れたこと、心から嬉しく思っているよ。
…さて、|騎士《 パラディン 》の仕事はここで終わり。ここからは宴を楽しもうじゃないか!私は騎士ではあるが楽しむことも忘れないのさ。
騎士重鎧のままという訳にも行かないから、邪魔にならないような場所で重鎧から降りて催し物に参加するとしよう。
お菓子の建物に色鮮やかな風景とても愉快な惑星のようだね。どこに行くか迷ってしまうが、そうだね…折角の機会だ。ティガニタ・キャッスルに行ってみるとしよう。
大きな建造物というのは見ているだけでも心が踊るものだからね。
お城の中を散策したり、中庭のパーティーを楽しんだりすることにしよう。
●騎士の凱旋
「邪悪な星は墜ちた。平和な星を守れたこと、心から嬉しく思っているよ」
「ありがとうございます、異星の騎士さま!」
騎士重鎧から降り立ったオリアーナ・クィン (プレスター星のスペース|騎士《パラディン》・f39183)を迎えたのは、城づとめのティガニタ星人たちだった。彼らはみな正装に身を包んでおり、城下町のティガニタ星人よりもしゃんとした姿を見せていた。 ――とは言っても、おうさまの謝辞が紡がれている間、皆揃って飛び跳ねて喜んでいたことを知っているから。背筋を伸ばす彼らがなんだか可愛らしく見えてしまって、思わず小さく吹き出してしまった。
「……さて、|騎士《パラディン》の仕事はここで終わり。ここからは宴を楽しもうじゃないか!」
彼女は誇り高き宇宙騎士。けれど日々の楽しみとて疎かにすることはない。
どうぞわたしたちのおしろへ。ティガニタ星人たちに導かれるまま、彼らのちいさな歩調に合わせてオリアーナはゆっくりと歩き始めた。
城の中を探検したいと申し出れば、使用人のひとりが道案内役を買って出てくれた。
代々おうさまに受け継がれてきたティガニタのお城は異星との交流を深めて行く中で少しずつ大きくなっていったらしい。
ティア・ドロップをお裾分けする先々で、彼らは近隣の星々の民から対価を求めなかった。けれどペネロペ星雲に住まう外宇宙の住人たちはティガニタ星人に負けず劣らず善良であり、少ないなりにもガルベリオン硬貨や物資を分け与えてくれたのだと、ティガニタの使用人は道すがらオリアーナに語って聞かせた。
「まだ、貧しい星々は少なくないんだね」
「はい。みなそうして助け合って生きているんです」
飴細工の城門を潜り抜けた先に広がっていたのは、星全体を象徴する『あまいもの』を目一杯敷き詰めた玩具箱のような光景であった。
びろうどの絨毯に見えるものはふわふわのマシュマロ。踏み出せば雲のようにやわらかく、ビスケットで出来たタイルは色とりどりのアイシングで染められている。キャンディのシャンデリアがあたたかなひかりを宿して揺れている。宇宙物質で作られたそれは傷付くことも腐敗することもなく、子どもたちのゆめをそのまま体現したような佇まいであった。
「大きな建造物というのは、見ているだけでも心が踊るね」
「お気に召してくださいましたか? さあ、中庭へご案内いたします。心ゆくまでティガニタをお楽しみくださいね」
すこし歩き疲れたその先で、オリアーナを待っていたのはよく手入れされた花壇に囲まれたガーデン・パーティ。あれもこれもと勧められる食事に舌鼓を打ちながら、オリアーナは注がれたオーシャンブルーのカクテルをそっと傾けた。
「外宇宙の戦士さまたちへ、騎士さまへ。かんぱい!」
「ふふ、ありがとう。騎士としてのつとめを果たせて、本当によかった」
大成功
🔵🔵🔵
甘利・梓
知らない星はちょっぴり不安で
カーティスくん、ご一緒してくれませんか?
甘利梓です、甘利でも梓でも好きに呼んでね
私はカーティスくんって呼んでもいいですか?
私、ドーナツ楽しみだったんです
カーティスくんはドーナツ好きですか?
良ければ一緒に買いに行きましょっ
らんらん弾むステップでチョコの橋に目を輝かせ
ティガニタ星人さんとドーナツ屋さんにご挨拶
こんにちは、美味しいドーナツふたつ、くださいな!
可愛い店員さんから可愛いドーナツを受け取ったらもうニコニコ
ひとつをカーティスくんにどうぞしたら
いただきますっ
わぁ、ふわふわあまあまで美味しい!
抑えてないとほっぺが落ちちゃうかも
ね、おかわりもう一個、頼んじゃいませんか?
●コットンキャンディ・ドリーム
「わっ、ふかふか!」
ティガニタ星まで猟兵達を運んでくれた宇宙艇から一歩踏み出せば、甘利・梓(腹ペコ乙女・f12881)を受け止めたのは綿をいっぱいに詰めたクッションのようにやわらかな大地であった。其処彼処に咲く花々がティガニタの地をなないろに染めて踊るように揺れている。戦いの最中は一生懸命に立ち向かうばかりでそれどころではなかったけれど。
(もし、このひろい宇宙で迷子になっちゃったらどうしよう)
あまいものでいっぱいのこの星でお腹がぺこぺこになることは無いかもしれない。でも――旅先で感じるほんの少しの『もしも』への憂いをうまく拭うことが出来なくて。梓は猟兵たちを送り出した少年、カーティス・コールリッジ(CC・f00455)を呼び止めた。
「カーティスくん。ご一緒してくれませんか?」
それまで案内役に徹していた少年はそらいろの瞳を丸く見開いたけれど、すぐに明るい声音で是を唱えた。
「おねえさん、星の海に来るのははじめて?えと、」
「甘利梓です、甘利でも梓でも好きに呼んでね。 私はカーティスくんって呼んでもいいですか?」
「梓おねえさん。ヤ、もちろん! ティガニタのためにがんばってくれてありがとう。行こう、みんな待ってるよ!」
ひとりぼっちで知らない土地を歩くのはちょっぴり不安。でも、分かち合うひとがいてくれるなら大丈夫。今は期待と好奇心が胸の奥底からどんどん湧いてくる。
弾む靴音がひとつ、ふたつ。重なるそれがチョコレートの橋をこつこつと鳴らすのが楽しくて、梓の顔には先ほどまでの憂いはいつの間にかすっかりなくなっていた。
「私、ドーナツ楽しみだったんです。カーティスくんはドーナツ好きですか?」
ほっぺたが落ちそうなくらいおいしいドーナツ。ふわふわでチクチクのちいさなティガニタ星人。梓が不慣れな戦いに赴いたのは、まだ見ぬ『おいしい』と『カワイイ』をどちらも取りこぼしたくなかったから。
「うん! おれ、地上のドーナツだいすき!」
曰く、少年は外宇宙ではなく退廃した宇宙空間の出自であるらしい。
物資は困窮し、口に出来るものは固形か液体の完全機能栄養食ばかり。それ故に、はじめて地上の嗜好品を口にした時はたいそう感動したのだと。カーティスの言葉に梓は思わずおなかを押さえた。――おいしいものがそもそも存在しないなんて、そんなのとてもじゃないけれど堪えられない。
「それじゃあカーティスくんにとっても、ティガニタ星のドーナツは特別なんだね」
「えへへ。そういうこと!」
梓とカーティスを出迎えたのは、りんごの帽子を被ったふたりのティガニタ星人であった。
「こんにちは。美味しいドーナツふたつ、くださいな!」
「いらっしゃいませ、英雄さま! どうぞ、どうぞ。ぼくたちのじまんのドーナツをめしあがってくださいな」
ちいさな両の手がながいトングを手繰りくるくるとドーナツ生地を油の中でひっくり返す。もうひとりのティガニタ星人が揚がった生地にティア・ドロップをまぶし、クッキーの枝葉をちょんと飾る。なないろのりんごのかたちをしたドーナツが出来上がって行く様子に、梓はおなかを鳴らすやら胸をときめかすやらで大忙し。コスモアップルのコンポートを練り込んだドーナツを受け取ったなら、もう待ちきれない!
ひとつは自分に。もうひとつは傍の少年へ。『いただきます』と声を揃えて頬張ったなら、じゅわ、と溢れる蜜がやわらかな生地から染み出した。しゃくしゃく、ふわふわ、かりかり。口の中で遊ぶたくさんの食感に、梓とカーティスは満面の笑みを咲かせて顔を見合わせた。
「美味しい〜〜! 抑えてないと本当にほっぺが落ちちゃうかも」
そうでしょうと胸を張るカーティスへ、ほんの少し身を屈めて梓はひそひそとまるい耳に囁く。
「ね、おかわりもう一個、頼んじゃいませんか?」
旅先の『おいしい』に我慢はいらない。
梓の声を聞き漏らさぬよう顔を傾けた少年が、頬をりんごのように染めてくしゃりと破顔した。
「さんせい!」
ほっぺたについたティア・ドロップはふたりぶん。
指についた粒を舐めてしまったって、今日はだあれも叱りやしない。
大成功
🔵🔵🔵
黄・焔誠
カーティスさえ良ければ共に
アドリブ歓迎
_
彼の予知のおかげでこの星は救われた
労いも含めて礼を出来ればと
…それに
この星の歩き方はよくわからんのだ
良ければ、お前の時間を少しだけくれないか?
『おうさま』と呼ばれている彼に敬意を以て挨拶を
それから観光へ
穏やかで長閑な風景が少し目に眩しくて
同時に安堵が胸中に浮かぶ
表には出さねども
「カーティスのお勧めはどのドーナツだ?」
正直甘味はよくわからん
だから此処は彼のお勧めをいただきたい
店主には強引に言いくるめ代金を支払い、
ついでに知り合いにも土産にドーナツを買っていく
遠くから聴こえる、子どもたちの無邪気な笑い声
ドーナツを一口食べ
フと口元が綻び
「…悪くない」
●陽のあたる場所
「カーティス」
名を呼ぶ声にカーティス・コールリッジ(CC・f00455)が振り返る。
限りあるグリモアの力が捉えたひとつの危機。この星が救われたのはお前のおかげだと黄・焔誠(フレイムブリンガー・f40079)が労いを込めて謝辞を告げれば、少年は大きくかぶりを振った。
「おれは視ることしか出来なかった。焔誠おにいさんががんばってくれたから、いのちをかけてくれたから。みんなのおかげでティガニタは救われたんだ」
迫り来る終焉の時を視る事しか出来ず、託すことしか出来ない歯痒さ。命じられるがままに人類の脅威を消去するのみ。ただそれだけを粛々とこなしてきた『カーティス』と名付けられた兵器に発露した未来視の目は、少年のかたちをしたものの思考と精神に大きな|揺らぎ《バグ》を与えていた。
――おれのほうこそありがとう。告げれば焔誠は数度瞬き、そうかと目を細めて頷いた。
「この星の歩き方はよくわからんのだ。良ければ、お前の時間を少しだけくれないか?」
平穏そのものたるこの星は、己を包むには温過ぎるから。
「いいよ、もちろん!」
諸手を挙げて喜色を浮かべたカーティスは、焔誠の歩幅に合わせて小走りに駆け出した。
「この星は王までもが温顔だな」
礼を以てティガニタに足を踏み入れることへのゆるしを請うたなら、おうさまと呼ばれるティガニタ星人はふくふくと笑み綻んで快諾を示した。彼らから見れば異形とも呼べるヒトの形を恐れる様子もなく、何の疑いもなく猟兵たちを受け入れるその姿は少し心配になってしまうほどだった。
「ティガニタ星を囲むペネロペ星雲には外敵になるような生命体がほとんどいないんだ。自給自足が成り立っているから、ほかの星を羨むこともないのかもしれないね」
飢えも貧しさもない。近隣の星々に対価を求めず資源を分け与えるほどおおらかな種族。
道ゆく者も、屋台でせっせと働く者も、みな等しくよろこびのいろを浮かべている。そこに欺瞞も疑念もない。穏やかで長閑な風景は血煙の中でひとり生きてきた焔誠には些か眩しく、人知れずそっと目を眇めた。
傍を歩むカーティスは焔誠の戸惑いにも似た憧憬のいろに口を挟まない。少年を囲む大人たちの多くが浮かべるそれは、口にすれば容易くひび割れてしまうことを知っているから――こっちこっちと、ただ無邪気な少年のふりをして手招いた。
「カーティスのお勧めはどのドーナツだ?」
問えば、少年はううんと腕組みをして悩み出す。嘗て全制覇を成し遂げた少年にとってそれは至極難題であるらしく、然れども『甘味の事はよくわからん』と告げる焔誠にとっておきを食べて欲しい気持ちもある。ややあって、真剣な面持ちでカーティスが焔誠を導いたのはビスケットで出来たちいさなログハウスのような店舗であった。
絞り袋をちいさな手でドーナツに押し込んでいたティガニタ星人は『恩人さまからおかねをいただくなんて!』と頭を下げて辞退したけれど、『それほどの価値があるものだ』と焔誠が告げれば湿った鼻をぴすぴす鳴らして最後には代金を受け取ってくれた。手土産に幾つかと尋ねれば、器用に織り込まれた紙箱いっぱいに色違いのドーナツが詰め込まれて行く。
空気をたっぷり含んだやわらかなクリームをおなかいっぱいに詰め込まれたドーナツはころんと丸く、スカイ・ブルーのチョコレートに包まれた表面にはぎっしりとなないろのティア・ドロップがまぶされていた。
「このおみせのドーナツがね、おれはいちばんすき! チョコレートがいっぱいかかっててね、中のクリームがふわふわなんだよ」
余程好物なのだろう、いただきますと声を上げるや否やかぶりつくその姿を見て焔誠もまたドーナツを一口齧った。牙を立てずとも容易にほどける生地とクリームは口の中で淡雪のように蕩けていく。
転がり縺れ合うように、子どもたちがじゃれあいながら焔誠たちの横をすり抜ける。会うものすべてが『ありがとう』と何度も告げてくる。
皆、笑顔だ。
少し甘すぎる気がしたが、親指の腹で拭った焔誠の口元は微かに綻んでいた。
「……ああ、悪くない」
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
蔵座先生/f07153
食品加工技術に関してはUDCアースより遥か上です。
光るドーナツ屋さんをちょっと流行らすだけでは勿体ない。もっと稼げます。
ちょうど医者も居ることですし、この星の食品産業について調べてみましょう。合成肉はオレも気になります。金になるから。
ティア・ドロップの加工や流通についても話を聞ければいいですね。
ここから直接ビジネスを広げるのは…今はまだその時ではないというか。
ティガニタ星人の星民性が商売に不向きだとかそういうことはちょっとありますが。なんなら既に「のんびりやりたい」的な理由で数件断られていますが。
…まあ、そういう日もあります。今日は商談ではなく勉強の日としましょう。
蔵座・国臣
夕立(f14904)と行動。
参戦猟兵の治療は機械衛生兵で間に合ったようだし、星外戦闘だった為に、現地住民の被害はない…
よし、当初の予定通り、ドーナツ、食べにいくか。
猫パンチの標的になったり、惑星破壊兵器の自壊に巻き込まれたり、道のりが険しすぎた気もするが。
そんなわけで商談やってる夕立の後ろで背景と化して一般客やってようと思うんだ。
え?商品調査?アドバイザー?いや、いいんだけどな。草食種族の作る合成肉、どうせ私も気になっていたからな。種族体質主義とか色々あるからなぁ…全部とは言わんでもどれかには対応できそうだ。
私は流通の方は…ともかく、普通に勉強会になりそうだな。
●ギャラクシー・マネジメント
矢来・夕立(影・f14904)は大きなビジネスチャンスへの手応えを未だ掴みかねていた。
誘い文句が悪かったのかと言えば決してそうではなく、ペネロペ星雲を出たことのないティガニタ星人にとって異世界進出なるものはスケールが大きすぎたことと、元々無欲な彼らは夕立の言うお金儲けに対して鮮明なビジョンを描き出すことが出来ないでいたのである。
「参戦猟兵の治療は機械衛生兵で間に合ったようだし。星外戦闘だった為に、現地住民の被害はない……上々じゃないか?」
蔵座・国臣(装甲医療騎兵・f07153)の問い掛けも何処へやら、|千載一遇のチャンス《でかいカネの動き》を頭の中で再度咀嚼していた夕立は徐に顔を上げると道ゆくティガニタ星人を穏やかに呼び止めた。
「ティア・ドロップを作っている所が見れる場所はありますか?」
ティガニタ・キャッスルより北北西へ、イーポス・バスで30分。
ぽこぽこと薄桃色の煙を上げながら走る専用車両の燃料もスクーターと同様にこの星で産出されるもの。完全に自給自足が成り立っているこの惑星の文明はティガニタ星人のおっとりとした星民性によりとても狭い範囲でしか発揮されていなかった。尤も、そのお陰で外部からの侵略に怯える必要も無かったとも言えるのだが。
「光るドーナツ屋さんをちょっと流行らすだけでは勿体無い。もっと稼げます」
「逞しいなあ、夕立……」
ティガニタ星は食品加工技術も非常に高度な水準に達している。
星民が皆この調子であるならば他にも攻めようがある――そう、直接学べばいいのだ。
「ちょうど医者も居ることですし、学べるものは何でも学んで行きましょう。合成肉も気になりますね。金になりそうですから」
「君なあ……いや、いいんだけどな。草食種族の作る合成肉、私も気になっていたから」
観光地ではなく工業地帯を見たいと申し出られるとは思っていなかったらしく、ティガニタ星人はたいそう驚いた様子を見せたけれど、『星々によって文明レベルが違う』と云うことをきちんと理解できている彼らは快く夕立と国臣を迎え入れた。
「おおきな煙突があるでしょう、あそこから必要なものを収集しているんですよ」
太陽光と潤沢な酸素、水、空気中の微生物。それらを凝縮し遺伝子分解することで作られる加工肉は所謂地球で作られる大豆肉のようなものとは根本から性質が異なり、味と食感、果ては栄養素までも寸分違わず食肉に相当するものを作り上げていた。
やっていることは壮大なのだが、ティガニタ星人がしていることはタッチパネルをぽんぽん押すだけ。問えば、工場を造るための部品だけは他所の星から分けてもらったものであるらしい。故にこの食品工場はティガニタ星人と近隣星との共同制作の賜物と云う訳だ。
「種族体質主義とか色々あるからなぁ……全部とは言わんでもどれかには対応できそうだな」
感心したように呟く国臣を他所に、夕立の目は完全に狩猟者のそれと化していた。態度ばかりは柔らかであったが、若干血走っている。先ほどから国臣と視線がほぼ重なっていない。
加工肉エリアから少し離れた別区画。扉を潜ったその先は管理体制が違うらしく、複数のティガニタ星人がせっせと丸いものに向かって何やら手仕事を加えている様子が伺えた。
「あれは?」
「こちらでティア・ドロップを精製しています。不時着したほうき星の残骸から生まれるシュガー・ココのかたい殻を剥いて、中に入った蜜を煮詰めてつくるんですよ」
大きな鍋に向かうもの、回し車の中でカラカラと駆け足をするもの、先ほどまでとは打って変わってアナログな様子に二人の来訪者はそれぞれ目を丸くした。
ひとりは『盗めるな』と。
ひとりは『星は違えど、脈々と継がれる文化もあるんだな』と。
「ははあ。ココナッツシュガーのようなものだったんだな」
「規模が随分違いますがね」
どうぞ召し上がってみてくださいと、出来上がったばかりのティア・ドロップが夕立と国臣の前に差し出される。その粒子は流通しているものよりも大粒で、金平糖のようなそのかたちを噛めば、ぱちりと口の中で星が弾けた。
数刻後。
出来立てのティア・ドロップを手土産に包んでくれたティガニタ星人に別れを告げ、国臣は掌の中でなないろに輝く小瓶を転がしながら傍の青年を仰いだ。
「……で、ビジネスチャンスとやらは広がりそうか?」
「ここから直接ビジネスを広げるのは……今はまだその時ではないというか。……まあ、そういう日もあります」
この星は善意に溢れすぎている。
だが、それこそ焦る事はない。関係値を重ねていく事で得られるものもある。
「今日は商談ではなく勉強の日としましょう」
嘆息する夕立の背を軽く叩いて国臣は僅かに目を細めて笑う。
ネコパンチの標的になったり、惑星破壊兵器の自壊に巻き込まれたり、本当に散々な道のりではあったけれど。
「よし。当初の予定通り、ドーナツ、食べにいくか」
苦労した末に口にするご褒美の味は、きっと格別だろうから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マシュマローネ・アラモード
【エイリアンツアー】
【2】
揚げたてのドーナツ🍩!
ティガニタ星は、色んなものがお菓子みたいで、不思議な惑星ですわね!
それに自慢のドーナツもとっても美味しそう!ティア・ドロップ……!キラキラしてて素敵な食材ですわ!
ぜひお持ち帰りしたいくらい!
どういうお味があるかしら?
苺🍓もきっと美味しそう!
レモン🍋やオレンジ🍊の爽やかな味とも合いそうですし、ミルクシュガーもきっと美味しそう……!
みなさんのお願いしたもので、感想をお聞かせくださいね?
ティガニタ星には、また遊びにきてみたいですから!
ドーナツも色とりどり、人参に抹茶にどれも美味しそう……!
素敵な星をお守りできましたわね?
リーベ・ヴァンパイア
【エイリアンツアーズの皆と②へ】
さて、誘われて来たが……成る程、これは凄いな。(チョコレートの橋を見て男は驚く)(チョコレートで出来た橋。そんなお菓子の家のような存在がまさか実在するとは……| 宇宙 《 世界 》は広いな) ほう、アリスラビリンスにもあるのか。それは、是非とも一度見てみたいものだな
そして、これがもう一つの名物、ギャラクシードーナツか(ありがとうと礼を言いながら受け取る)(味はチョコ) ふむ、これはまさしくギャラクシーだな。どれ、味は……うむ、出来立ての熱さ、そして外はふんわり、中はサクサクでビターな甘さで最高のドーナツだ
さて、俺も土産に幾つかドーナツを頂こう。…いい旅だったな。
ディフ・クライン
エイリアンツアーズの皆と『2』へ
カラフルな景色だねえ
わ、この橋溶けたりしないのかな
ふふ。いい香りの橋
プレーンのドーナツをティガニタ星人から
膝をついて受け取って
怖かったろうに、貴方たちも頑張って王様を守っていたんだってね
王様も貴方たちも、皆無事で良かったと微笑んで
揚げたてのドーナツってはじめてだ
ほかほかで、ふふ。光ってる。これが光と水で出来てるってすごいね
うーしゃん、大丈夫かい?お水貰おうか?
皆の感想を聞きながら頂きます
温かくて、シンプルで優しい甘さだ
うん。オレ、これ好きだな
苺味を探すパウルたちを微笑ましく思いながら
オレにもお土産用に一種類ずつ包んでもらっても?
それから是非、ティアドロップも一瓶
ジャスパー・ドゥルジー
【エイリアンツアーズ】
2.ソコラタ・ブリッジ
チョコの橋だって?
他の世界にもあるんだな、なんか懐かしいぜ(アリラビ民感)
ティガニタ星人って奴らの愛嬌ある雰囲気も故郷の住人達に似てるよーな
遠く離れた外宇宙でこんな出逢いがあるなんて
これだから旅ってやつは面白いよな
ってホントにめっちゃ光ってるじゃん!
このコズミック感は初めての出逢いだ
写真……いやこんなに綺麗だと動画の方が映えるかも?
スマホ片手にドーナツ撮影会
でもせっかくの揚げたてだから冷めないうちに食べねえとな
ってウーシャンが大変な事に
マジで揚げたてなんだな
シシシ、苺ドーナツの土産とかきっとめっちゃ喜ばれるぜ
しかもくれるのがパウルと充だもんなあ
佐東・充
【エイリアンツアーズ】
2.ソコラタ・ブリッジ
ドーナツもさることながら
街全体から甘い薫りが漂っているようですね
不思議な空間です
甘い物を喫食する習慣が出来たのは割と最近なのですが
自分は割と甘党だったのかもしれないと気づきを得ました
パウルさん達の功績にただ乗りする形のようで恐縮ではあるものの
有難く頂いておきましょう
不思議な砂糖が映えるようなプレーンのものを
パウルさん、良かったら私も一緒にお土産を選んでも?
今日は席を外している人を思い浮かべながら声を掛ける
親愛なるお兄さんからの贈り物なら、彼は何だって嬉しいに違いないけれど
ヴァンダ・エイプリル
【エイリアンツアーズ】
2
アドリブ連携歓迎
ほうほう、ここが宇宙!
そんでチョコの橋!
うちの故郷からしたら考えらんない――え、他の世界にもあるの!?
はー、まだまだ知らないことがいっぱいだ……
ドーナツの形はどこも一緒なんだ
丸いし軽いし、いつ見ても心躍る形だよねー
なんか投げられたら取りに行きたくなるし
よし!
ヴァンちゃんのジャグリング、ご覧あれ!
ドーナツをいくつか回してティガニタの人たちを楽しませるよ
おっ、ウーシャンさんナイスキャッチ!
けど食べ物で遊んじゃダメか
ほどほどで切り上げて食べちゃおう
一個目は緑の!
しっぽの色に近いし!
(抹茶を選択)
渋っ!? けどそれがいい!
皆の感想を聞きながら次食べる味を決めるよ
蒼乃・昴
【エイリアンツアーズ】
2
この星の危機が排除されて安心するが、俺も闘ってみたかったという想いも少し
ティガニタ星人の姿か。確かに可愛いな。毛むくじゃらで(触りたい…)
(チョコの橋は)食べられるのか?
完全ゼリー食だったから、ドーナツを食べるのも初めてだ
うまいな、と感動
俺は甘いものが好きなのか?
他にも色々食べて検証してみなければ
けど、なぜか甘いものばかりを選んでしまう
そろそろ検証を……いや、でもやっぱりこの星で1番甘いドーナツをもう1個!
うーしゃん…?!
火傷しただろうか
大丈夫かな…(冷えた水を用意)
ドーナツをありがとう、ティガニタ星人の皆
お土産を1個貰って
君達がこれからも平和に暮らせますようにと祈った
ウーシャン・ラビットポスト
【エイリアンツアーズ】
2 アドリブ可
ドーナツ!?うーしゃんもドーナツ好きしゃ
特に揚げたてのさくさくがさいこーうしゃ!(揚げたてのを我先に購入)いただくしゃあっつぅあ!(揚げたてすぎて噛んだ瞬間あつあつの蒸気が口の中を直撃)
…揚げたてすぎると美味しいどころの話じゃない
うーしゃん分かった(昴から冷たいお水を貰いつつ)
気を取り直してドーナツ食べるしゃ
丁度良くジャグリングしてるドーナツをキャッチして食べるしゃ(空中を飛ぶドーナツを一個取ってもしゃもしゃ)
う~ん、色んなトッピングがあるけどやっぱニンジンが入ったドーナツが最高しゃ~!!これどこに売ってたしゃ?10個くらい買っていきたいうしゃ!
パウル・ブラフマン
【エイリアンツアーズ】
2
到着~!
皆と噂のドーナツを視察するよ☆
ふふ、ジャスパーの故郷の橋もいつか観に行きたいな♪
街の雰囲気はモチロン
ティガニタ星人さん達の御姿そのものも魅力的だなぁ。
このドーナツと一緒に
店主さん達の働く姿も紹介していいか
持前の【コミュ力】を活かして交渉してみるね!
ドーナツを手に、クルーさん達と談笑を。
熱いから気をつ…大丈夫!?
介抱の輪に加わりつつ、慌てるだろう店主さん達へのフォローも忘れずに。
ドーナツ好きを公言する声を聴いて
不意に浮かぶのは弟の顔。
そーだ、苺味のドーナツはないか聞いてみよっと☆
充さんからの提案に驚きつつも快諾できたのは
きっとやさしい宇宙の砂糖が心に沁みたから。
●エイリアン・パッセンジャーズ
宇宙艇から降り立ったエイリアンツアーズ一行は、大小様々な感嘆を上げてティガニタの空を仰いだ。
「ほうほう、ここが宇宙! そんでチョコの橋! うちの故郷からしたら考えらんない――」
『世界を驚かせる仕掛け人』。気まぐれなる狼少女、ヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)は我先にと踏み出した先でレッドベリーの瞳をくりくりと巡らせる。
「他の世界にもあるんだな、なんか懐かしいぜ」
「え、他の世界にもあるの!?」
不思議と魔法とお砂糖にスパイス、たくさんのときめきを大鍋で混ぜて煮込んだような迷宮世界の名はアリスラビリンス。ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)にとって目前に広がる甘い街並みは懐郷を誘う風景で、そこに住まうティガニタ星人のすがたかたちもまた、物珍しさよりも親しみのほうが大きかった。
「はー、まだまだ知らないことがいっぱいだ……」
しみじみと呟くヴァンダの傍で、リーベ・ヴァンパイア(|Notwendigkeit《必要ゆえに》・f37208)も目前に広がるやわらかな色彩と甘い香りに心中大いに感心していた。
「子供の夢を集めたような星だ。こんな景色が実在するとは……宇宙は広いな」
それは孤独に、暗闇に怯え涙する子どもたちにとってどれほどの慰めになるだろうか。ヒーローたる青年の噛み締めるような言葉に、彼らを招いたパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)が破顔する。
「そうそう☆ 宇宙にはたっくさんの不思議が詰まってて――それを皆に伝えるのが、オレたちの役目だよね!」
ティガニタ星が新しい観光ツアーの候補地になるか否か。
これは彼らにとって|夏本番《繁忙期》の下準備も兼ねた従業員旅行なのだ。
ソコラタ・ブリッジ。
溶けないチョコレートで出来た巨大な橋は城下町とおうさまのお城を繋ぐ架け橋でもあり、ティガニタ星のメインストリートとして大きな賑わいを見せていた。
「この橋、溶けたりしないのかな。ふふ、いい香りの橋」
ディフ・クライン(雪月夜・f05200)が鮮やかな街並みに目を細めれば、佐東・充(オルタナティブ・f21611)も興味深げに周囲を見渡しながら頷く。
「街全体から甘い香りが漂っているようですね。不思議な空間です」
ティガニタ星人の平均的な体長は60cm程度。地球のハリネズミに酷似しているが宇宙共通語を話し、二足歩行で活動する穏健で友好的な知的生命体である。背中に無数の棘があるため身に纏うものはエプロンと帽子が主流であり、勤め先や役職であったり、単にファッションであったり種類は様々だ。
「ティガニタ星人か。確かに可愛いな、毛むくじゃらで」
街ゆくティガニタ星人の歩幅は小さく、猟兵たちの半分ほどの速度でちょこちょこと忙しなく歩き回っている。そんな姿を横目に、蒼乃・昴(夜明けの逃亡者・f40152)は思わず伸びそうになった手を引っ込めた。
(触りたい、が……)
会話での意思疎通が出来る個体をいきなり撫でるのも失礼か。ううんと思案するその姿を見てパウルが笑う。
「街の雰囲気はモチロン、ティガニタ星人さん達の御姿そのものも魅力的だよね。 そうそう、ドーナツと一緒に店主さん達の働く姿も紹介していいか交渉しなくちゃ!」
向かうは一際大きな露店。客引きと受け渡しを担うティガニタ星人が一行をみとめたなら、わあと歓声を上げて近寄ってくる。慣れない取材と云う響きに彼らはきょとんと目を丸くしていたけれど、『みんなに笑顔を届けたい』と告げれば揃って喜色に毛を膨らませて是を唱えた。
「どうぞ、どうぞ! ぼくたちごじまんのドーナツを召し上がっていってくださいな。よその星のかたにあげたてを振る舞うのはひさしぶりです!」
ドーナツメーカーのハンドルを懸命に回すティガニタ星人。落とされる星や円形の生地がもうひとりのティガニタ星人の手により揚げ油の中でくるんと踊る。かりかりに揚がった生地をバットに掬い上げたなら、お味はあなたのお気に召すまま。
「「揚げたてのドーナツ!」」
漂うあまい香りときつね色に揚がったドーナツがチョコレートやティア・ドロップで化粧を施されていくその姿に、マシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)とウーシャン・ラビットポスト(バルバ「ウサギ」のスカイランナー・f39076)の歓喜の声が重なった。
「自慢のドーナツ、とっても美味しそう! ティア・ドロップも……! キラキラしてて素敵なお砂糖ですわ! ぜひお持ち帰りしたいくらい!」
なないろのコズミックシュガーに負けないくらいにきらきらと瞳を輝かせるマシュマローネの視線の先で、ティガニタ星人は嬉しそうに『おすきな味をおえらびくださいね』と笑っている。
ティア・ドロップとアイシングでおめかしをしたシンプルなもの。シナモン・シュガーにチョコレート。苺にレモン、オレンジ。南瓜に人参、おなかいっぱいにクリームを詰め込んだものまで様々だ。飽きのこない味わいの定番品に始まり、チョコレートをたっぷり纏ったものはミルクの優しい甘さが好きなひとも、ビターな味わいを好むひとも楽しめるように種類を分けられている。爽やかな果物や茶葉を練り込んだフレーバーはたくさんの食感を楽しむことが叶うだろう。
「うーしゃんもドーナツ好きしゃ。特に揚げたてのさくさくがさいこーうしゃ!いただくしゃあっつぅあ!」
迷いはないとばかりに我先にドーナツを手にしたウーシャンが齧り付いたなら、あつあつの生地が容赦なく口の中で暴れるものだから。はふはふと口から蒸気を逃しながら悶絶するウーシャンに昴とディフが慌てて身を屈めて覗き込む。
「うーしゃん、大丈夫かい?お水貰おうか?」
「火傷しただろうか。大丈夫かな……」
驚いたティガニタ星人達へのフォローも忘れずに。奔走する男性陣に囲まれる中、差し出された冷水で口の中を満たし、漸く人心地ついたウーシャンが涙の滲んだ目元を擦る。
「揚げたてすぎると美味しいどころの話じゃない……うーしゃん分かった」
しょんぼりと耳を垂れ下げるウーシャンの姿を見て、ヴァンダが悪戯に目を細めた。
まあるくて軽くて、心が踊る。もしぽんと投げられでもしたら、思わず取りに行きそうになってしまうかも、なんて。
「ウーシャンさん、どんまいどんまい。……よし! ヴァンちゃんのジャグリング、ご覧あれ!」
ティガニタ星人の手から渡ったドーナツが、ひとつ、ふたつと宙に舞う。取り零すことなくヴァンダの手の中で踊るドーナツに、ウーシャンの様子を憂いていたティガニタ星人から歓声が上がった。
「うしゃ。気を取り直してドーナツ食べるしゃ」
軽やかに手繰られるドーナツをひとつ拝借。丁度よく冷めたドーナツを頬張るウーシャンの嬉しげな様子に、ヴァンダも満足げに目を細めて『食べ物で遊んじゃダメか』と改めてドーナツを口にした。
「ヴァンちゃんの一個めはこれ、緑の! しっぽの色に近いし!」
ふんだんに茶葉を練り込んだ生地は少しばかり大人味で、ほろ苦さに少しびっくりしたけれど。
「けど、それがいい!」
普段よりちょっぴりだけ背伸びしたような心地が嬉しくて、ヴァンダは益々に笑みを深めた。
「これがもう一つの名物、ギャラクシードーナツか」
ありがとう、と礼を重ねてリーベが受け取ったのはルビーのあかいチョコレートドーナツ。表面ではなく生地に練り込まれたチョコレートは口に含めばとろりと溶けて、ほのかな苦味と甘みの調和が心地良い。さくりとした表面の下に閉じ込められたやわらかな生地は口当たりも良く、とても軽くて食べ易かった。
「ふむ、……これはまさしくギャラクシーだな」
己が未だ見ぬ世界。星の海の果てに広がる淡い虹の情景の中、出来立ての甘味を頬張る贅沢。これはなるほど、現地を訪れなければ味わうことのできない特別な味なのだろう。仲間達の綻ぶ姿を仰いで、リーベも柔らかく目を細めた。
腕が短すぎるティガニタ星人はドーナツを揚げるものと接客をするものできちんと役割分担がされているらしい。
注文を受けて出来上がったドーナツをせっせと運ぶ客引きのティガニタ星人の前に膝をついたディフが、ありがとうと穏やかに微笑んだ。
「怖かったろうに、貴方たちも頑張って王様を守っていたんだってね」
「はい! おうさまはわたしたちのいちばんぼしなんです。ほんとうにありがとうございました、英雄さま!」
王様も貴方たちも、皆無事で良かった。告げればティガニタ星人たちはむにゅむにゅと口元を動かし、鼻先を向けて互いを見つめると照れくさそうに笑い合った。戦うことを知らずとも、守りたいものがある。そんな彼らの胸中を知れば、あおいひとみを湛えたかんばせもやわく綻んだ。
ああ、この星で貴女の手を引けば。きっと目元をばらいろに染めてはにかむのだろうな、なんて。こっそりとお土産の算段を立てながらディフは受け取ったドーナツをそっと口にする。
「揚げたてのドーナツってはじめてだ。ほかほかで……ふふ、光ってる。これが光と水で出来てるってすごいね」
「俺は完全ゼリー食だったから、ドーナツを食べるのもはじめてだ」
『星を墜とした』と云う戦果を聞いて昴がほんの少しだけ残念に思ってしまったのは、身に刻まれた破壊工作員としての衝動だろうか。それでもこの星の危機が排除されて安堵する気持ちの方が優るのが、彼がただの兵器ではなくひとである所以なのかもしれない。
恐る恐るにひとくち含めば、かりりとティア・ドロップが弾ける。ちいさく音を立てて口の中で跳ねる食感は物珍しく、未だあたたかい生地が溶けていく。二度目はなるべく大きくかぶりつけば、ほどけるように噛み砕かれたやわらかなたまごの生地が喉を通って落ちていった。
「うまいな。……俺は甘いものが好きなのか?」
他にも色々食べて検証してみなければ。ひとくち、ふたくち。食べ進めるごとに目移りしてしまう程。あれもこれもと気になって手を伸ばすものは甘い味ばかり。麻薬のようだと頭のどこかで掠めるも、昴の手は止まらない。
「そろそろ検証を……いや、でもやっぱりこの星で1番甘いドーナツをもう1個!」
「かしこまりましたあ!」
すっかり虜になってしまったその様子に、ティガニタ星人はいっそう張り切ってドーナツをこさえ始めた。
「ってホントにめっちゃ光ってるじゃん! や、このコズミック感は初めての出逢いだ」
塗されていくティア・ドロップが光を受けてなないろに煌めく様子に、ジャスパーはドーナツを受け取ると徐にスマートフォンを掲げて今日一番の『カワイイ』を作り上げる。
「写真……いやこんなに綺麗だと動画の方が映えるかも?」
角度を傾ければ彩を変えるその姿を余すことなく収めたい。ああいや、勿論自分の写りだって最ッ高にカワイイけれども。
撮影すること暫し。然れども折角の揚げたてをいちばん美味しい瞬間で食べたいから迅速に。クルーメイトの楽しむ姿の中、こっそりパウルとのツーショットもゲット。抜かりない。
「甘い物を喫食する習慣が出来たのは割と最近なのですが……自分は割と甘党だったのかもしれないと気付きを得ました」
片や喜色に華やいで。片や真剣な面持ちでドーナツに向き合っていた充はパウルをはじめとする猟兵たちの功績にただ乗りするのはと、はじめは恐縮した様子でいたものの、仲間達の笑顔に囲まれる中で少しずつ緊張を解していたようだった。
手にしたドーナツはシンプルなシュガー・グレーズド。自らの結晶体にも劣らず煌めくその様相に、今回のフライトには同行出来なかったいとしいひとを想い僅かに目を細めた。
「……喜ぶだろうな」
思わず溢れたその言葉に、パウルもまた同じ人――『おとうと』の顔を思い浮かべていた。
「パウルさん、良かったら私も一緒にお土産を選んでも?」
「えっ?」
胸の内を見透かされたような心地で、パウルの口から頓狂な声が上がる。
「シシシ、苺ドーナツの土産とかきっとめっちゃ喜ばれるぜ。しかもくれるのがパウルと充だもんなあ」
ひょいと顔を覗かせたジャスパーが悪戯に目を細めて囁けば。戸惑いと照れを綯い交ぜに、薄く目元を染めたパウルが気恥ずかしげに微笑んだ。
「勿論☆ でも、その前に……苺味、オレ達も食べてみようよ!」
親愛なる兄君からの贈り物であるならば、彼は何だって嬉しいに違いないけれど。
全てを口にはせず、充ははにかむパウルの様子に是を唱えた。
充の提案を快諾出来たのは――きっと、優しい甘さが心に沁みたから。
「ドーナツをありがとう、ティガニタ星人の皆」
この感動を忘れない為。
「俺も土産に幾つかドーナツを頂こう」
「オレにもお土産用に一種類ずつ包んでもらっても? それから是非、ティアドロップも一瓶」
事務所で待つ仲間達へ。或いは、帰りを待つひとのため。
昴にリーベ、ディフがそれぞれ願い出たなら、ティガニタ星人たちは喜色を浮かべて快諾を示した。
一生懸命に箱に詰め込まれていくドーナツを見詰めながら、マシュマローネはクルーメイトたちを振り返る。
「みなさんのお願いしたもの、いかがでした?」
「う〜ん、色んなトッピングがあったけどやっぱニンジンが入ったドーナツが最高しゃ〜!! これ10個くらい買っていきたいうしゃ!」
両手いっぱいにドーナツの詰まった紙箱を抱えたウーシャンが飛び跳ねれば、楽しげに笑う声が幾つも上がる。『よくばりさん』なんて誰かが茶化せば、『自分も』と手を伸ばすひとがいる。
「オレはシンプルなものが良かったな。優しい甘さで美味しかった」
上るは『おいしい』という笑顔ばかり。そこにはただ言葉にはできない予感めいたものがあった。
わくわくと胸を躍らせて、何かもっともっと楽しいことが起こるような気さえして。すぐそこまで迫った暑く長い夏の日々に高鳴る鼓動を抑えながら。これより星雲を隔てたラモード星の皇女たるマシュマローネは、場所は違えども星の海で仲間たちが喜んでくれることが嬉しくて、ぱちりとてのひらを重ね合わせた。
「ティガニタ星には、ぜひまた遊びに来たいですわ。 うふふ! 素敵な星をお守りできましたわね?」
「本当に。……いい旅だったな」
リーベの呟きに、皆誰ともなく頷き合って笑った。
たんまりとお土産を持たせてくれたティガニタ星人たちが大きく手を振る。
大人も、子どもも。皆が皆、笑顔で猟兵たちの乗る宇宙艇を見送りに集まっていた。
「ありがとうございました」「ありがとうございました!」
「英雄さま、どうかよき旅を!」
地から離れ、空を越え、宙に至る。
なないろの星が遠ざかる。
猟兵たちを乗せた宇宙艇が遠く成層圏を越えてもなお、彼らはいつまでも星を救った英雄たちを迎えた空を見つめ続けた。
旅路の先でつまづいたり、すこしくたびれてしまった時は。
どうぞこの星に、ティガニタへふたたびお越しください。
『できたてあつあつのドーナツを、おなかいっぱい召し上がれ!』
――惑星系577、ペネロペ星雲より愛を込めて。
大成功
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