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ぐるぐるバットが「やらせ」に見えるのはテレビの中だけ

作者：にゃあら

●そもそもぐるぐるバットで如何やって八百長するのか、まったく思いつかない
「ふーん？　それで私に接触してきたってワケね。ダークリーガーでもやっぱ『八百長試合』は赦せない、いや、そもそもアスリートアースにそんな超人いる？　いる筈がないわ」
　此処はぐるぐるバットチーム『バット・サイクロン』が練習場所として使用している、小さな公園。其処には呼び出された『バット・サイクロン』のキャプテン、吐院・ぐるめがいた。彼女と話をしているのは、嗚呼、まさかのダークリーガーではないか。
「改めて、最初から説明させていただく。今回『バット・サイクロン』のキャプテン、グルメに」「グルメじゃないわ！！！」「失礼、ぐるめに声を掛けたのは他でもない。八百長で負けたら金をやる、と宣った『悪い金持ち』の目を覚まさせてやる為だ。つまり、奴の目の前で熱い『ぐるぐるバット』の試合をし、感動させるのが目的だと謂うワケだ。で、ついでと謂ってはなんだが、万が一、貴様等が勝てばダーク化も解ける」
「つまり一石二鳥ってワケね。感動した金持ちが『ぐるぐるバット』の公式化に貢献してくれたら最高なんだけど……」
「それは我々も思っている事だ。で、ルールに関してだが『スタンダード』で如何だ。シンプルな『芸術点勝負』こそが『ぐるぐるバット』の醍醐味だと我々は思っている」
「上等よ――素晴らしい試合、魅せてやらなくちゃね！」
「お互い全力を尽くそうではないか――！」

●グリモアベース
「そういうワケで皆には『全力でぐるぐるバット』してもらうわ！！！　勿論『バット・サイクロン』のメンバーも参加するつもりよ。でもメインは猟兵、皆だからね！！！」
　グリモア猟兵グルメ――だからグルメじゃないって！！！　――ぐるめは普段通りのテンションで猟兵達に頭を下げた。
「それじゃ気を引き締めて回るわよ！　レッツ・ゴー・サイクロン！」
　🌈色がキラメク……。

第1章 集団戦 『ワナビーアスリート』

POW   :    ユニフォームチェンジ 防具を0.05秒で着替える事ができる。また、着用中の防具の初期技能を「100レベル」で使用できる。 SPD   :    I wanna be～ 【憧れのアスリートの姿】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【憧れの強さ】に比例し、［憧れの強さ］が損なわれると急速に弱体化する。 WIZ   :    ファングッズ召喚 【押しのネーム入り団扇（うちわ）】【押しのネーム入り法被（はっぴ）】【押しカラーのサイリウム】のいずれかを召喚して装着し、攻撃力・機動力・めくらまし力のいずれかを超強化できる。 イラスト：純志 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　特等席――八百長を仕掛けたと『思っている』悪い金持ちはニマニマと嗤っていた。
　これから始まるぐるぐるバットの試合は『バット・サイクロン』が勝つと決められている。
　きっと観客はこの事に『気付いてしまう』だろうが、それも計算の内だ。
　超人スポーツ界隈が『金で動かせる』と世間にブチ撒ければ、
　きっと世の中は『金』で回るようになるだろう。
　そう！　決して、バットではなく！！！

　今回の試合会場はダークリーガーが用意してくれたようだ。普段使いの舞台とは違い、大人数がぐるぐるバットをしても『ぶつからない』程度には広い。最初に舞台へと上がってきたのはダークリーガーの『ファン』だった彼女等だ。彼女等はダーク化によってアスリート力を増幅されており、なぜか三半規管はヨワヨワになっている。つまりは予選から『強敵との勝負』になると謂うワケだ。
「頑張っていくわよ」「ここで全力を出さなきゃ意味がないもの」
　やる気満々な様子だ。
　――レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　虹色の彼方に到達するのは誰だ！！！


　チョコレート・ソースに塗れても、ホイップ・クリームに呑まれても、嗚呼、如何なる時だって全力投球しなければ打たれて打たれての繰り返しだ。反芻しようと試みたところでバッター・ボックス、足物ブレブレでは位置もクソッタレも無い。そもそも野球をするのではないのだよ、と、熱狂的な女の子に囲まれたオマエ、つまり、バット・サイクロンのチームメンバーと謂うだけで大人気と謂う事だ。いや、まさか、こんなファンタスティックな状況で誰が八百長なんかに乗ると宣う――いつもぐるぐるバットはガチの真剣勝負！　これは常識ですよ？　猟兵界隈でもアスリートアースでも絶対不変の大常識だ。盛り上げる為の演出やエフェクトなんてものは有るけれど、総じて、断じて「やらせ」なんて許されない。嘘だと思うならば先ずオマエがやってみろと特別席にバットを向ける。この僕がやらせじゃない『本物』だって事を証明してみせるのです！　本気も本気、ぐるぐる見本市と謂うワケだ――それで、用意したバットを芯にしてお手製｜和傘《かんせい》、これでぐるぐるするっぽい！！！　これが今日の僕の『傘回し』と、しかし、多めに回るのは蝸牛の遊戯ではなかったか。グチグチ五月蠅いです。僕が本当のぐるぐるバットってやつを教えてやります――それでは皆さんご一緒に。
　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　憧れのアスリート、伝説のアスリートを真似したところで彼女等はせいぜい『彼女等の回転』をしているに過ぎない。それでも十分に目は回るのだが、猟兵の極められたスピンとやらには敵わない。僕がぐるぐるするのではない！　嗚々、見よ、バットそのものが回転しているではないか。結果的にどうなるのかって？
　僕が高速でぐるぐるするのです！！！
　そう、簡単に説明してしまえば即席クネプフェである！　半永久的に回転する事で新たな境地へとオマエは到達する。これは虹色の彼方ではない……土留色の沼の底だ。
　勝利の女神が微笑むと同時にぶっ倒れたオマエ、
　ああ、血と汗と🌈の結晶……。

成功 🔵​🔵​🔴​

　子供の頃に回るタイヤの遊具で遊んだ事があるだろうか？
　頭を投げ出すように乗って、回されてみるとよろしい。
　たぶん｜彼女《●●》と同じ地獄を味わえる。

　熱狂――ケイオス溢れるサイクロン・ドームに、堂々、その肢体を晒したのは悪魔で在った。特徴的な山羊の角の大きさよりも観客の『眼』を惹いたのは、成程、オマエが選択したコスチュームとやらの所為に違いない。もっと言葉にしてしまえばその豊満なバスト、きっと何処かのザナドゥな世界でも引っ張りだこと考えられよう――私はダーティ！　ダーティ・ゲイズコレクター！　凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです！　見せつけるように、称えるように、己の在り方を観客に叩き付ける。ところでバットを手にしていないが、もしや、八百長に乗っかる気ではないのか……？　特別席での睥睨にいやらしい笑み……。視線ありがとうございます。ですが、アスリートアースにそんな極悪人が存在するとは信じられません！　それってつまり私よりワルな方が居るってことなんですから！　嗚呼、最も平和で熱血的な世界の人類にワルさで負けたくなんかない。いや、頭の片隅にも置けない。そんなことより私の尻尾改めてくれませんか、実に矢印してますよね。
　なんだか台詞も頭の中もグチャグチャでドロドロではないか。まるで停滞している、無意識に留まっている、進捗もへったくれもない、魔界の勇者みたいではないか。ああ、なんかもうよくわかりませんので――しちゃいましょう。叫んじゃいましょう。この世は結局魔王の掌の内で回っているのですから！　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　基本姿勢は如何したのか、と、審査員席から疑問の声がこぼれた。ぐるぐるバット独特の、あの姿勢でなければ本来、かなりの減点を喰らう事になる……が！　此処でオマエは奇跡の所業を行う――敢えてユーベルコードを使わず己の『身体ひとつ』で挑んだ事。そして――嗚々、尻尾で全体重を支えるとはなんと謂うフィジカル！　独楽のフリがお得意らしい。
　まわれまわれぇぇ！！！　もうどうにでもなれぇえ！
　あははははは……！！！
　ダーク化アスリート全員がぐるぐるを忘れ釘付けになっている。
　説明しなければならない。現在、ダーティ・ゲイズコレクターの身体は疑似的な駿河問い状態とも思惟出来た。縛られていないからあまり痛みなどはないが、しかし、頭部に血が流れ、溜まっていく事は確実！　今までで一番目が回るだろうし、何より滅茶苦茶に頭痛がする！　ええい、ストレッチャーとベッドの用意だ。
　み、みなさんが私のこと、見てくれています……。

成功 🔵​🔵​🔴​

　サイリウムで眩ませようとしても無意味な事、
　なにせ、オマエは既に眩んでいる。
　アイスキャンディの真上で踊っているのか、チョコレート・ソースに塗れて踊らされて異たのか、曖昧な儘に粘つくような暑さ、熱さ、湿り気が不足している所為だと蕩けていく。そんな、朦朧とした天下の最中だと謂うのに、嗚呼、超人アスリート達は今日も今日とて試合に勤しんでいる。或いは、努めているとでも表現すべきか。これは参った、舞茸だけに。エリンギ！　今日は楽しいハイキングのつもりだったのに何時ぞやのぐるぐるとしたバット――いっそカエンタケを芯の代わりに掴んだら如何か、八百長も八百屋も糞もないと謂うワケだ。シメジ、なんだか周りが騒がしいね。忙しないってのは即ち目を回しているからだ。でも、キノたちは気にしなーい。気にしないけど試合にはちゃんと出てくれ、そう謂えばスピちゃんどこに行ったのかな？　星霊さんは今頃ステージの真ん中だ、ご一緒願う。
　シイタケ……。虐げられる、いや、強いられたと書き換えてもよろしい。バット・サイクロンのメンバーに集られ寄せられ詰められ、オマエはおっきな傘を閉ざす以外になくなった。ホイッスルと同時に慣れ親しんだ掛け声が聞こえる――愈々、いただいている場合ではなくなった。美味しいお菓子は試合後のお楽しみにしてほしい。
　レッツ・ゴー・サイクロン！
　これが本当のなめたけと呼ぶべきか、地面を舐めるまで軽くない運動をする。
　神様は常に微笑んでいるのだ。
　キノコ・チョコレートにならなくて済むのは僥倖だったが、そもそも、お呼ばれされた時点で不幸以外の何ものでもない。基本姿勢は成れたご様子で在り来たりな頭垂れからの旋回だ――なんだか風に舞う胞子のような気分で、もう、酔ってきて仕方がない。これじゃキノがキノじゃなくなっちゃうの。語尾に生えた🍄は、成程、強がりと称えるべきものか。き、キノ、この程度でふらふらになんかならないよ🍄　キノは根っこが強いから。
　よろよろ、よろよろ、右へ左へ。
　この反応は中々に高得点だ。
　スピカダンスのお隣でキノコスピン。

成功 🔵​🔵​🔴​

　改めてウロボロス、蛇が模った、なぞり続けた『輪』の事を頭の隅っこから引き上げる。無限とも螺旋とも思える、精神的な、秩序的な筈のDNAが筆舌に尽くし難くも安定さを失っていた。たとえば、腹を減らした獣が盲目的に成り果て、その為に辿り着いた、反芻、只管な反芻――これをナンセンスと謂わずしてなんと謂う――まあ、そんな現実逃避は拭っておいて、オマエ、如何してこんなところに在るのか、理解するのに数秒を必要とした。いや、なんで、なんであたいに白羽の矢が立ったのよっ。もちろん、あたしが猟兵で？　お手伝いに立候補したのはわかってるっ。でも……。沸き立つステージは最早、オマエを逃そうとはしないだろう。熱狂的なダーク化アスリートに囲まれて渡された｜棒状のもの《バット》――えっと。つまり、ぐるぐるしろって事なのかなっ？　再確認は重要である。
　超人アスリート曰く、ぐるぐるバットとは『神との同化を目的とした儀式』がスポーツとして現代まで伝えられてきた結果らしい。確かに、スーフィーと謂う言葉を耳にした事はあるが、そう考えてみれば『シャーマン』たるオマエは適任かもしれない。だからってこんなバラエティ番組みたいな……でも、由緒正しきスポーツが悪い金持ちなんかに利用されるのは棄て置けない。結局、オマエもオマエで若干、愉しみなのではないのか？　いつも元気で優しくて、何よりも快活な女の子だ、此処で止まっていられるほど冷め易くはない。あたいはいつだって本気だよ、みんなとの絆と愛であたい『たち』は強くなれるっ。基本姿勢――バットをおでこにあてるアレ――は上出来だ。響き渡るホイッスル……。
　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　黄金色の君が舞台中央で｜主役の座《注目の的》となるのは必然だった。光輝を纏ったオマエは台風の目として顕現する。それにしても、やはり、念動力で己の身体を｜加速《うご》かすのは正解だったか。まるで空へと到る辰の如く、長く、更に永く……回転の流れに身を委ねる……。
　流石のあたいも目が回ってきたね、あとは他の｜猟兵《ひと》に任せるよっ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　説明しよう――！
　ガシーン・ドドキングはあらゆる｜多元宇宙《マルチバース》、あらゆる｜世界《ワールド》に対応する為に造られた『ネオガッタイシステム』を持つロボットヘッドである！　実験の日々に飽き飽きしていた彼はとある日、暇潰しで視ていたテレビ番組の『スーパーロボット』に憧れて途中で脱退――そして｜猟兵《いま》に至ると謂う！
　カッ――！　太陽の燦々とした擬音の真下、その、艶々としたボディを観客に晒してみせた。いや、しかし、カッコ良さに憧れたオマエが如何して、このような｜依頼《トンチキ》に参加したのか、これがわからない。はーっはっはっは！！！　ロボットの俺様がぐるぐるバットをしてもツマラナイだって？　いや、まさか、画面の前の諸君はそう思ってないか？　そもそもぐるぐるバットは人間がやってこそ映える競技ではないか、これでは減点されてしまうのではないかとチームのメンバーに焦りが見える。逆だ！！　ロボットがぐるぐるバットをする意外性……アンバランスが面白いのだよ！！　考えてもみたまえ読者諸君！　ブラックタールも目を回すこの時代！　俺様が舞台に上がったってなんの問題もない筈だ。まあ……やりたかったというのもあるが！　嗚呼、結局のところ、神との同一化を望む合体精神が在れば無機物で在ろうとぐるぐるは受け入れてくれる。それに見給え、今日の為にフィギュア・スケート・マシンとネオガッタイした姿！　これならいっそ独楽めいたマシンの方が良かったのでは……？　気にしてはいけない。
　嗚々、構えたのは、知るが好い……。この、文字通りの黄金に輝くバットを……！　それに嘔吐しても安全なように内蔵ミサイルは花火に替えておいた。もしやロボットはナマコの親戚だった……？　そんな事はない。兎も角……見やがれ｜悪党共《ヒールども》！　これが……これこそが……ネオガッタイしたドドキングの！！！
　スーパー・サイクロン・パフォーマンス！！！
　リ・バース！！！　綺麗な｜花火《🌈》！！！
　バットのぐるぐると機体のぐるぐる、それにヘッドのぐるぐるとフィギュア・スケートマシンのぐるぐるを重ねて点数10000倍と謂うワケだ！　はーっはっはっは！　はーっはっはっはっはっは……うっぷ……。

成功 🔵​🔵​🔴​

　熱狂は作る事が出来る。
　それは、可愛いや格好いいと同じ代物だ。
　あの時のオマエを攫ってくる。
　到達したハンドレッドに呆然としていたのは、さて、何日前の己だったのか。染みついた下っ端根性の成れの果てには今生、未だに長い、永い生命と耳朶の奥に溶け込む。この、筆舌に尽くし難い自意識に、耳石に、こびりついた良性とやらをお医者様に問うてみる。それはね、めまいを娯楽にした結果なんだ。嗚呼、始末に負えない人間様、如何して、知らない内に白熱している――うわあ。なんか凄い人気になってるっスね？　ビッグウェーブに乗らない、なんて、エルフとしても猟兵としても在り得ない事ではないか。いや、正確には「回らなければなるまい」だが。そうすれば公式化した時に初期の伝説の何人かに選ばれるはずっスよ！　え？　もっと向いている人がもう回ってる？　そんな、身も蓋もない事を謂われる筋合いはない。そもそも、ぐるぐるバットとはどんな初心者でも優勝する可能性の高いスポーツだ。門が閉じる事など決してない――それにしてもファンがこんなに一杯いるって、ぐるぐるバット、侮れない……たくさんの若い子だ、バイタリティが凄いかもしれない。嗚呼、その勢い、その溌溂――借りなければ勿体ないと考えるべきだ。
　小細工は要らない。要るのはちょっとした埒外性だ。｜いつもの掛け声《レッツ・ゴー・サイクロン》と同時に基本姿勢、最初はスロー・ペース、徐々に徐々に回転速度を上げていく。何故かって。こっそりと精霊さんにお願いした若返りの秘術、これであちしはだいたい17歳くらいに……なんだか背丈が小さくないか。やっべコレ子供くらいの歳じゃないっスか……？　憧れのアスリートはだいたい一桁、どうしてこうなった。
　こらえ性が……三半規管が……もう、ぺしょぺしょに、ぐちゃぐちゃに混ざっている。荒波にもまれた世間知らずに帰ったように、森の緑に惑わされたかのように、キラキラ、🌈色の彼方へと再び――おrr……。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 ボス戦 『謎の女幹部『ネメシス』』

POW   :    ダイナミック・ウィナー！ 【勝ちたい！】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。 SPD   :    ダークネス・ドレスアップ！ 【ダークオーラを纏うユニフォーム】【血のように赤い闇の翼】【漆黒の華麗な勝負服】のいずれかを召喚して装着し、攻撃力・機動力・めくらまし力のいずれかを超強化できる。 WIZ   :    スポーツマンシップ宣言！ 戦場内に「ルール：【正々堂々と勝負する】」を宣言し、違反者を【戦場外の反省エリア】に閉じ込める。敵味方に公平なルールなら威力強化。 イラスト：えんご 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

　おかしい――いや。勿論、予定していた通り『ダークリーガー』側が劣勢なのだが、悪い金持ちは困惑していた。客席の熱狂、アスリート達の熱狂、この、漂ってくる、酸っぱい臭い。これは、まさか、八百長が『行われていない』のではないか。頭を抱え、何度も何度も『舞台の上』を改める。今は清掃員たちで埋め尽くされているが――ありえない。金の力で動かせない『もの』がこの世に在ると謂うのが、理解したくない……。
　清掃がようやく終わった。審査員席、客席がざわつく中――｜謎の女幹部《ダークリーガー》がその身体を堂々と晒して魅せた。自らを『ネメシス』と名乗る女は「スポーツマンシップ」に則り『ぐるぐるバット』を行うと宣言する。成程、悪い金持ちは哀れなほどに運が悪かったと謂う事だ。彼女は脳天から爪先まで『スポーツ』を愛している。
　では――お互い、全力で目を回そうではないか。
　後悔しないよう――素晴らしい試合にしようではないか。
　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　ダイナミックに、只、誇り高く！


　情熱――それも、天動説を巡らせるほどの、廻らせるほどの――的な愛の園に横たわった。やはり愛！　愛はすべてを、ありとあらゆるものを救うのです！　唐突にラヴ&ピースを謳い始めたオマエは、成程、つまりぐるぐるを擁する為に言の葉を紡いだのか。僕の脳味噌の柔らかさを、ザクロ・ジュースを魅せつけるとゆーこと！　嗚呼、わかったぞ。貴様も私と同じようにメイルシュトロームに熱狂した一人のスポーツ・マンと謂うワケか。煌めけはじけろ｜黄金の精神《ゴールデン・シナプス》、この基本姿勢だけは何があっても揺らがない――敬意を表して僕は黄金の回転を披露するですよ！　宣誓！　僕等、我等は、正々堂々、アスリートアースの理に則り試合する事を誓います……！
　レッツ・ゴー・サイクロン！
　嗚々、見るが好い。悪鬼羅刹の、熟達の忍の、ただの一人の猟兵の美しきフォームを。身体で黄金長方形を倣い、更には永久の螺旋を描く事で🌈色も追加する。真摯に向き合う事で初めて『認識』出来る黄金の回転の領域――素晴らしい。素晴らしいほどの眩暈っぷりだ。これは負けれいられないとネメシスも速度を上げる……。
　この状況が何を意味しているのか。
　この回転が何を意味しているのか。
　やらせも八百長も、皆無だと謂う事だ。
　目が眩んでいる所以は、｜物理的《目が回る》だけで十分だ。
　特別席に坐している誰かさんに止まらない事を教える。
　今ここには「僕」と「回転」しかない……！
　限界を突破して幾分が経った。オマエは未だに円をなぞっており、故に、ダウンしているネメシスには気付けない。こ、これがバット・サイクロンのメンバーか……。まさにぐるぐるバットの｜救済者《ピンチヒッター》だな。
　噴水――最早、コインを投げる必要などない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　神様は常に「ぐるぐるバットアスリート」を観察している。いつか彼等のアストラルが回転に運ばれて🌈の華を贈るかの如くに。
　そう、血と汗と涙と🌈の結晶だ。
　唯一無二の努力の証なのだ。
　胸をなでおろす――胸焼けが治まるとは謂ってない――オマエ、嗚呼、アスリートアースに真の『悪』と称されるものは蔓延らないのだ。でもちょっとだけ残念かもっスね。何故に不謹慎な事を漏らすのかと思えば、成程、裏の事情を暴くスタイリッシュ・プレイがしたかったとこぼすワケだ。そこは次の機会っスかね？　そう、悪い金持ちとは冠につくけれども、別に彼だって人を『食おうとした』程度の未遂だ。ともかく、あちしのやることはひとつっスね――そう、｜ぐるぐる回り続けるだけ《レッツ・ゴー・サイクロン》！　っス！
　幾等回転が十八番だと謂っても、正直、シンプル・イズ・ベストだけでは面白くない。チョコレートに塗れるだとか腹十分目で全身全霊とか、嗚々、様々な方法が有るけれども、此度の匙加減はファン・サービスに特化させている。つまり、あちしのユーベルコードの解放、脱衣でのスピード・アップっス！　勿論放送コードに引っ掛からない程度のお約束だ。ところでそろそろ水着が近いですね……。あ、ネメシスさん、アンタの目くらましとやらの『意味』で色々変わってくると思うっスよ。ラスト・スパートをかけろ、虹色の彼方はすぐ其処だ――バットの代わりにダガーを使うのも中々に悪くない、何せ、頭に血がのぼる……。
　一気に行くっスよ！！！
　ギリギリと戦いだ、咽喉を刺激する苦くて酸っぱいもの。
　見よ――嗅げ――ダブル・フィニッシュと呼ばれる、ある種の｜奇跡《パフォーマンス》！　ぶちまけた🌈に暈なって世界がカレイド・スコープの如くに渦を描く。あちし、自分が考えてた以上にぐるぐるバットに向いてるっスね……？
　揉まれた時化の数々に耳石の念を落としておく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　スピカダンスをベースにお祈りを乗せ、そのまま🌈の噴水を洗礼とする。お掃除忘れた地面に足を掬われて、どしりと、尻もちをつく。
　ぶわりと舞い上がった粉っぽさ、吸い込んでしまった君。
　別の意味での目回しな結果だ、バケツバケツ……。
　帽子を被っているのが嘘だとしたら、きっと、オマエの頭の上の笠は本物だ。暈なって撒かれた毒々しい、猛毒らしい、無数の胞子は、愈々、奉仕の為に酷使されると謂うワケだ。キノノ！？　八百長はダメってどうしよう。傾ければ傾けるほどに重くなっていくオツムの中身、キノコは八百屋さんでも売っていると謂うのにひどい話だ。ナメコ、キノは正々堂々としてないから反省エリア行きってこと！？　幾等なんでもその判定は横暴ではないかダークリーガー。ほら、それは違うって彼女も首を振っている。キノ？　嘘を教えたら正々堂々してないからネメシスちゃんも反省エリア行きになっちゃうから、うん、八百長と八百屋は違うんだね。つまり、今更な説明と宣うワケだ……回る前から目を回している。
　しめじ……？　ペロペロと舐ってくれる、可愛らしい星霊ちゃんは、さて、さようならだ。スピちゃんが一緒だと2対1になるからタイマンじゃない？　これじゃ怠慢だ。それじゃスピちゃんは反省エリアで応援しててね……？　ようやく始まる試合、掛け声はいつも通りに元気よく――レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　まいたけ……。おお、美しき哉、オマエがぐるぐるバットに取り入れたのは神楽舞だ。巫女としての振る舞いが虹色の彼方に住まう｜存在《かみさま》に届けられる。ネメシスちゃんに足りないもの、それは、神様に対しての｜信仰《ほんとう》だよ――どくつる。つるつると滑って転倒するかのように、お星さまとお友達になってお空がぐるぐるしている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　まるでハット・トリックへの道程だ、ハッと意識を現状に戻せたのは、さて、会場の熱気が所以に違いない。常々テンション・ハイだと思われる、想われる、ウルスラ・ロザーノと称される｜猟兵《いきもの》も『こんなに』トンチキな競技は初めてだ。いや、正確には初めてではない――何せ銀誓館の運動会、いろいろ競争とやらにも含まれていたのだ。それよりも問題なのは『ルール』の方である――芸術点ってなんやろか？　つまり、アスリートアースの『ぐるぐるバット』はレースではないと謂う事。また妙ちくりんな……。まあ、兎にも角にも八百長だけは絶対に在り得ない。正々堂々勝負するやろ？　ダークリーガー！
　基本姿勢――バットとおでこをくっつけるアレ――は『やった記憶もあり』完璧だ。綺麗に90度、脳味噌がもったりと重くなるような感覚。ボクもあれ叫んだ方が良いやろか。嗚呼、宙へと響き渡る、空へと溶けるような――レッツ・ゴー・サイクロン！　ところで齢27の人間サマには少しキツイ行為なのではないか。ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐるぐる……。
　こ、これは……！？　想像していた以上に目が回る。自ら洗濯機の中へと飛び込むかのような不快感、胃の底から昇ってくるかのような、にじむ酸味。勝手に落ちていく頭は、愈々、意識しても元に戻せない。きっとドリブル中のボールはこんな気分――いや、まだや。ここで倒れたら不完全燃焼……全部を出し切ってからぶっ倒れるんや！！！
　先に限界を迎えたのは｜ネメシス《ダークリーガー》だった。最早、出るものも出ないといった様子で、ぐったりと座り込んでいる。よ……よっしゃ。これでボクも解放されるやろ。右回り10回転どころか三桁越えている、鷲掴めエチケットのつめたさ、柔らかさ……。
　客席の全員が立ち上がり拍手喝采……。
　サッカーの試合でも中々起きんやろ、こんな状況……。

成功 🔵​🔵​🔴​

第3章 日常 『豪華アスリートフェスティバル』

POW   :    豪華で身体にいいご馳走の食べ放題を楽しむ SPD   :    アスリートとしてパフォーマンスを見せ、盛り上げる WIZ   :    チームメイトや対戦相手と和やかに歓談する 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　嗚呼――なんて。
　なんて素晴らしいのだ。
　この世に、こんなにも美しい、感動的な｜もの《ぐるぐるバット》が有るなんて！
　考えてもみなかった、理解しようとしなかった私が愚かだったのだ。
　神は――私達の神は――回転する事で降りてくるのだな！
　私はもう悪い事なんてしないさ。
　お礼、お詫びに私が『食事』を用意しよう。

　悪い金持ち――だった彼は持てる財力を吐き尽くして豪華な宴を催してくれた。そこに並んでいるのはたくさんの寿司・寿司・寿司……新鮮とれたてピチピチな代物だ。えっ？　ぐるぐるバット後のパーティだってのに回らない寿司かって？　安心してほしい。客席すべてが回転する椅子になっている。つまり椅子に座って回りながら寿司を喰えと謂う事だ……それって食への冒涜にならない？　気にしてはいけない。

　存分に楽しんでくれ給え。
　ああ、食後のデザートにロールケーキも用意しておいた。
　お腹いっぱいになるまで食べてくれ！！！


　楽し気な声が聞こえる。ダーク化が解けた選手達もご一緒だ。
　ワイワイと寿司をつまむ光景はぐるぐるとしていて、
　あの椅子に自分も座りたいとは考えた。

　ワナビーアスリートとの熱戦が糸を惹いている、しかし、不完全な結果になってしまったのは大きな損失だろうか。もう少し、ほんの少し、己の在り方を思惟していれば、きっと全試合出場出来たと謂うのに――俺様は俺様の豪快さに束縛されていたと……？
　次の機会があれば高得点を、一位を獲ってみせるぜ……！
　ペナルティ判定――その他スポーツ『ぐるぐるバット』に於いて、殆ど触れる事のない項目だが、相手が『ネメシス』だった所為で引っ掛かってしまったのかもしれない。彼女はダークリーガーとしても異端なほどに正々堂々に拘っていた。その為、オマエの『スケートマシン』の部分がダメだと謂われたのだ。のそりと反省エリアから脱したロボットヘッドの輪郭――今度この世界に来る時はそれに見合うマシンを用意しなくてはな！　きっと何処かに未知なるパーツが転がっている事だろう。ところで寿司には手を付けないのか。そりゃ俺様はロボットだぜ？　一応消化は出来るが今日はもう『腹いっぱい』だ。
　嗚呼……それにしても、ぐるぐるバットの奥深さよ。シンプルな競技ながら初心者でも作戦次第では優勝を狙える。逆を謂ってしまえばベテランだって最下位になる可能性もある、か。折角だしこの黄金色のバットは記念品として貰っておくことにするぞ！　ちょっとパイルバンカーにも似ているし、別の世界でも武器になるかもしれないからな！　賑やかな会場をあとにするオマエの後ろ姿、なんとも不安定だが、だからこそ。
　この競技に相応しいとも解せた。
　綺麗な花火が咲いている。

成功 🔵​🔵​🔴​

　宇宙の創造、世界の創造、生命の創造――あらゆる神秘的な所業はグルグル、螺旋を、渦を孕むようにして現れる。掻き混ぜられた不定形が定形を把握し、ようやく、自意識、耳石気に満たされるのだ。ふわりと巻かれたネギトロな、お代官様のお戯れ……。
　世界平和――大団円――デウス・エクス・マキーナの糸を回収する為に輪廻を描く事は必須項目か。カタカタとヤカマシイ糸車の輪郭、貌カタチこそがある種の涅槃へのひとつの到達方法とも考えられる。ああ、またぐるぐるで世界を救ってしまった。なので素直に世界を救ったご褒美をいただくですよー。なんて宣って魅せたのは良いものの、果て、隅から隅まで、最後までグルグルたっぷりだ。嗚々、老若男女が大好きな回転寿司チェーン店、ただし廻るのは己の座席と……流石にソレはきついですよ、キャプテン……全力回転連続二試合からのレーン騒動だ、こんなの世界が回りっぱなしになってしまう。んー……。そうだ。目を回したついでに思考も回すのがよろしい、悦ばしい。椅子を回る世界と逆方向に回せば気分の悪さを相殺出来るのでは……？　安心安全無添加お寿司の食べ方、耳を引っ張れ。
　いや、しかし、それは本当にぐるぐるな打ち上げに相応しい行いなのか？　でもキラキラしたからお腹の中身は空っぽだし、そこに詰め込んで即座にブチ撒けるなんて『🌈』の生産にも役立たない。つまりは凄惨な、酢酸な臭いと謂うワケだ――次の｜試合《ぐるぐるバット》に備えてのエネルギー補給として此処は赦してもらって……。ところで疑問なんだけど相殺ではなく融合になって終うのではないか。だいじょぶそ？？？
　ガッチリと巡り合った歯車的カオスの構築だ、最早「やらせ」の三文字は無い。

成功 🔵​🔵​🔴​

　運命の糸に絡まってお代官様に見つかる。
　悪代官様ではないご様子で大盤振る舞いしてくれた。
　目が回るとしても、それは、美味しさと呼ばれる驚きの仕業だ。
　肉のつまったタランチュラが轆轤の上で踊っている、そんな、未曾有のイメージから導き出した答えこそが酸味だった。まるでバット、地面、額が三位一体と化したが如く素晴らしい試合『だった』ではないか。客席から移動しての晩餐、この醤油と山葵が無料ならば大歓迎と謂うワケだ。と、いうわけで。メシだけいただきに来たアタシ様参上だ！　……ん？　如何して厭の惨状の際に参上しなかったのかと問われれば単純明快、シンプルな話だ。アタシ様、いくら回っても目を回さねーんだ。代わりに此方のカフェインでも如何だろうか、いや、そもそも、真の意味での蜘蛛ですら『無い』ザマで――今そんなことはどーでもいいじゃねぇの？　ほら、現に今も回りながら美味しく寿司を貪ってるじゃん？？？　つまり胃の中シェイクでも腸に届けば何の問題もないと、そういう結果か。大トロ、ウニ、白子アンキモetc――んんっ、うまうま。何せお金持ちが用意した鮮度抜群な代物だ、桁が違う。
　で、まあ？　アタシ様は思ったわけだ。アタシ様がぐるぐる回って？　ふらふらして、🌈―、なんてのは単なる演技でしかない。ぐるぐるバットが観客にもたらす『笑い』ってのはこのピチピチな寿司ネタと同じで『天然』であることが重要なんじゃねーかなって。素晴らしい。少し残念そうだったバット・サイクロンのメンバーも感涙している。別に山葵つけ過ぎたって事じゃないよ！！！　うんうん、そーゆーわけだ。
　アタシ様の華麗な回転は別の機会に披露するさ！！！
　それなら人間ボウリングなんて如何？
　人間ボウリング？？？　なんだその胡乱なスポーツは？？？
　まあ良いぜ、ボーリングでもボウリングでもアタシ様に任せとけっ……お、ロールケーキもあるのか。しかもクリーム多め。やったー！　ぐるんぐるんぐるん……。
　回る回る、バットと椅子と、ついでに金……。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2023年06月08日