闇の救済者戦争⑲~怒りを纏え
●
力なき正義は無力。
意思なき力はただの悪。
意思によって制御される力こそが最も強い。
俺が紋章を作るのは、意思を持つ“英雄”の為。
正しき意思を持つ者は、相応しき力を持つべきだ!
――だが……紋章とは奥深いもの。
まだ装着に耐えられる人間はいない。
気が触れるか、力に呑まれるか。
其れではいけない。其れでは駄目なんだ。
猟兵、君たちは耐えられるだろうか。
オブリビオンと魂人をまぜてこねてつくった紋章で、英雄になってくれるだろうか。
もし英雄になれたなら、まずは……そうだな。
其の辺りにいる紋章つきのオブリビオンで力を試してくれないか。
●
「紋章つかいへの道が開いたよ!」
ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)が声を上げた。
「紋章って言葉自体は、お前達も腐るほど聞いていると思う。紋章を作る為の祭壇だとか、そういうのを見てきたろう? 其の元凶があやつだ。“正しい意思の持ち主に紋章を渡して英雄にする”。考え自体は非常に立派なんだけどね、やっていることは鬼畜そのもの。オブリビオンも人間も、魂人も紋章つかいにとってはただの“材料”にすぎないのさ」
ヴィズは吐き捨てるようにいう。
「奴はお前達にも友好的に接してくるだろう。|疑っていない《・・・・・・》のさ、協力してくれるはずだ、ってね。ちょっとこう、頭のネジが数本飛んでるんだと思う。――奴も五卿六眼、欠落は存在する。しかし不滅ではない」
能力を全て紋章作成に割り振ったからか、不死ではないのだという。滅ぼすなら今が最高のチャンスだと。
「“祈りの双子”を斃し切る前に、紋章つかいを削り切る。双子がやられれば撤退してしまうんだ。――という訳で飛んでもらうよ、場所は紋章つかいの実験場」
其処には様々な紋章が存在する。
月の眼、不死、番犬、辺境伯――様々な紋章を用いて紋章つかいは猟兵に協力を迫って来るだろう。
其れを利用するんだ、とヴィズはいう。失敗作が落ちているはずだと。其れを拾って身に纏え、と。
「敵の力を逆に利用する。……抵抗はあるかもしれない。其の紋章の失敗作一つに、多大な犠牲がかかっているからね。だけれど、……あたしには見えたのさ。紋章の怒りが。|そんなもの《・・・・・》のために命をすりつぶされた奴らの怒りが見えた。だから、拾う紋章はお前達に力を貸してくれる筈だよ」
それに。
失敗作が製作者を越えていくって、なんだかかっこいいじゃないか。
ヴィズはそういうと、白磁の門を呼び出しながら少し笑った。
key
こんにちは、keyです。
紋章つかい。英雄を求めた結果、ネジが飛んだ人です。
●目的
「“紋章つかい”を撃滅せよ」
●場所
一面の荒野です。
多くの紋章の失敗作が落ちています。紋章の定義はかなり曖昧ですが、何らかの概念のようなものが落ちていると考えて頂いて構いません。
(形はそれぞれの猟兵によって、違うものに見えるでしょう)
●プレイングボーナス!
「“装着変身”を行い、敵と同等のパワーアップを得る」
紋章つかいはシンプルに強敵です。
拳や足などに紋章を纏い、異形の姿に変身して猟兵を圧倒してくるでしょう。
対抗するには落ちている“紋章の失敗作”を拾い、猟兵たち自身も装着変身を行うほかありません。
彼らは理不尽な殺戮と実験に怒り狂っています。魂人、人間、そしてオブリビオン、彼らの怒りの紋章を身にまとい、異形の己をうまく制御しましょう。
●プレイング受付
オープニングが公開され次第、プレイング受付開始です。
〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します。
●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
また、アドリブが多くなる傾向になります。
他の猟兵と共闘する事があり得ます。ソロ描写希望の方はプレイング冒頭に「🌼」を付けて頂けると助かります。
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此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『五卿六眼『紋章つかい』』
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POW : 紋章正拳
【「番犬の紋章」を拳に装着しての正拳突き】が命中した部位に【紋章つかいの正義】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : 紋章連脚
【「不死の紋章」を脚裏に装着しての飛び蹴り】【「辺境伯の紋章」を膝に装着しての膝蹴り】【「殺戮者の紋章」を爪先に装着しての連蹴り】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ : 紋章断罪翼
自身が装備する【「月の眼の紋章」を両翼に装着した漆黒の翼】から【細胞破壊光線】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【肉体宝石化】の状態異常を与える。
イラスト:レインアルト
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シキ・ジルモント
成程、あれが紋章か
敵の行動を観察して動きを学び、自身も両脚に紋章を装着
得られるのは力だけでなく、紋章にされた者達の怒りや無念まで伝わり集中が乱される
…思った以上に扱いにくいが無理もない
奴を斃す、力を貸してくれ
駆けるだけで地面を砕いてしまいかねない力の加減を、戦いの中で把握に努め調節する
敵の攻撃はユーベルコードで感覚を研ぎ澄ませて察知し回避に繋げたい
最初の一撃を受けたら次の攻撃を短剣で打ち払い妨害
連撃が止まった瞬間に紋章によって異形へ変化した脚による蹴撃で反撃する
…紋章つかいの妙に友好的な接し方は気に入らない
紋章を身に付けたのはあんたの実験の為じゃない
こんな物を二度と作らせないよう元凶を断つ為だ
●怒れるケモノの紋章
紋章つかいの黒衣をまとった脚が、まるで黒い槍のように疾と伸びる。
其れをケモノならではの感性で辛うじて避けながら、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は着実に、確実に紋章つかいの行動を観察していた。
明らかに施された身体強化、反射能力……成る程。
「さあ、どうだ猟兵! これが紋章の力だ、素晴らしいだろう! 君もこれを纏って、もっと強くなりたくはないか?」
ざっ、と距離を取った両者。
シキは紋章つかいのそんな言い分に眉をひそめながら、落ちていた二つの紋章を手に取る。二つとも遠吠える狼を模したかのようなもの。
「――言っておくが、俺は紋章で得られる力に興味はない。だからこれからする事は、あんたの実験の為じゃない」
其の足に、失敗作だと放棄された怒れる狼の紋章を纏う。
――ゆるせない
どくん、と脈が打った。
其れは燃え上がるような怒り。理不尽に使われ、すり減らされ、挙句の果てに失敗作だと断じられた数多の魂の怒りであった。
「……ッ」
「おや、失敗作を使うのか? 言ってくれれば俺が持っているのを幾つでも」
「言っただろう」
ぎらり、と紋章つかいをねめつけるシキの瞳には、怒りが燃えていた。伝わったが故の怒りだった。理不尽に命を消費していく目の前の存在が、――赦せない!
其の怒りを模すかのように、脚が異形へと変化していく。其れはまるで鹿のような脚。早く早く駆ける為の、脚。
「あんたの実験の為じゃない。こんな物を二度と作らせないよう、元凶を断つためだ――」
大地を踏み砕き、駆ける。
失敗作といえども紋章、シキは明らかに足が軽いのを感じていた。
だが、力加減を誤れば下手に突っ込みかねない。ぎりぎりの所で調節しながら、シキは紋章つかいへと肉薄する。
「ははは! 猟兵は失敗作でも其処まで引き出せるのか! すごいな!」
では実地実験だ。
紋章つかいが繰り出す蹴りを、研ぎ澄ました感覚で回避する。其れは先程までと同じ。違うのは、――シキは片手に短剣を持っていた、という事だった。
連脚を短剣で打ち払い、僅かに紋章つかいの動きに隙が生じる。其れをシキは逃がしはしない。異形の脚は身体の中央に多く存在する人体の急所目掛けて、異形の脚で蹴りを叩き込んだ。
「……か、ッ」
さしもの紋章つかいも急所をケモノの脚で蹴られればひとたまりもない。見事に吹っ飛んだそいつを見ていると、脚から伝わる怒りが僅かに和らいだ気がした。
――少しはすっきりしたか。
シキは心中で問いかける。
答えはなかったが、心の裡で燃える怒りの炎は僅かに和らいでいた。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
「正しい事のために紋章を作った」ときたか
「配下を強化する為に」とか「人々を苦しめるために」なんて言われた方がまだ理解できるが……こいつと話す事はなにもないな
確かに紋章に思う所はあるが、それでも力を借りよう。近くの紋章を拾って変身
紋章の怒りに飲み込まれないよう、心は冷静に
相当な強化を得られたようだが、いきなりの事だから細かい制御が難しい……今すぐに刀を使うのは無理そうなので、無の型【赤手】……徒手空拳の構え
全体的に強化された状態だが、やはり神器化している左腕は特に強いようだ
相手が放ってきた正拳突きに対して、俺もまっすぐ正拳突きを放って迎撃
紋章を宿した拳ごとぶち抜いた上で、追撃を叩き込む
●欠けた蝶の紋章
「正しい事の為に紋章を作った、と来たか」
やれやれ、と夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は頭が痛いジェスチャをする。
どうせなら“配下を強化する為”だとか“人々を苦しめる為に”だとか言って欲しかった。だって其の方が、まだ|理解出来る《・・・・・》のだから。
正しい者の力とするために。
正しい意思の力とするために。
其の為にやっている事は悪辣極まりないのだから、全く救いようがないというものだ。
紋章を一つ、拾い上げる。片羽を喪った蝶の紋章だった。
「ああ。其れは失敗作だぞ? 形もいびつだし、込められた力も――」
「いや。これで良いんだ」
しれりと忠告する紋章つかいに頭を振って、鏡介は紋章を己の胸元へと装着する。
両腕と右半身が銀色の流体に覆われていくのが判る。そうして伝わって来る、痛いほどの怒り。
――あんなに痛かったのに
――あんなに苦しかったのに
――どうして、私たちは失敗作などと呼ばれなければならないのか
「(……そうだよな)」
鏡介は慎重に手足の具合を確かめながら、其の怒りを享受する。そうして、其の怒りをぶつけるために力を貸してくれと願う。
――……失敗作とは思えない力だ。故に制御が難しく、剣を振るえば素人同然になってしまうだろう。
ならば。――と、鏡介は納刀し、素手で構えた。
「ほう! 君は徒手空拳もいけるのか」
「ああ。体術は刀を扱う上でも基本だからな」
紋章つかいが駆けだす。両足に装着した紋章の力だろう、疾風のように肉薄した紋章つかいが拳を突き出して来る。
避けるか、受け流すか。
鏡介が選んだのは三つ目の選択肢、即ち――|真っ向勝負《・・・・・》だった。怒りを乗せて、猟兵としての責務を乗せて、そうして放った一撃は重く鋭く、紋章つかいの正拳とぶつかりあって――
果たして。
吹っ飛んだのは紋章つかいの方だった。右腕に装着していた紋章がびきり、と音を立てて砕け散るのを見る。
「……矢張り」
半ば神器と化している左腕はより強化されている。
鏡介は銀に覆われた己の腕を見て、成る程、と呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
睦月・伊久
正義、ですか……どんなに立派そうに見える題目を掲げようと、君はたくさんの命を犠牲にしふみにじった。その時点で僕は、協力なんてしませんよ。
……怒れる魂の方々、その力、一時お借りします。必ず彼を倒すために、どうか。
意味は無いかもしれないけれど、そう告げて失敗作の紋章を装着します。
(鹿の下半身持つ体はそのままに、その姿は異形の鎧武者と呼べる姿になった)
【赫鳥召喚】で召喚した赫鳥さんに敵の足の周りを飛ぶ、足を焼いてもらうなどして蹴りを妨害していきます。そして僕は、怒りの【呪詛】込めた刀で攻撃を。呪詛による呪縛でも敵の行動を縛りながら戦うつもりです。
君の思いどおりにはさせません。絶対に!
●歪んだ虫の紋章
「正義、ですか」
ぽつり。睦月・伊久(残火・f30168)は呟く。其れは言葉にすれば、とても立派なもの。だけれど……
「どんなに立派なお題目を掲げようと、君はたくさんの命を犠牲にし、踏み躙った。其の時点で僕は、協力なんてしませんよ」
「……何故だ? どうして皆、そんなに怒るんだ」
不思議そうに紋章つかいは言う。
心の底から理解出来ない、そんな様子だった。
「全ては正しい力と正しい意思の為。英雄の為だ。君たちはこの世界の解放を目指しているんだろ? だったら、英雄になるなんて願ったり叶ったりだと思うんだが」
「……本気でそう言っているのでしたら、救いようがありません。僕は多大なる犠牲の上に立って英雄の顔をするなんて御免です」
伊久が拾い上げたのは、羽根が歪んだ虫の紋章だった。其れを肩に装着すると、ぶわり、と銀色が広がる。其れは伊久の胸元で鎧となり、肩に添うて肩当てとなり――伊久の下半身はそのままに、鎧武者のような姿となる。
「赫鳥さん」
ぶわ、と其の場の温度が増す。
紋章つかいへと駆け出す伊久の傍に侍るのは、真紅の炎を纏う鳥型の精霊。伊久に先んじて紋章つかいへと肉薄し、其の足の周りを焼き焦がす!
「へえ……! 精霊を使うのか。精霊を混ぜた紋章はどんなものになるだろうな」
「――! そういう考えだから、君は……!」
伊久の刀に呪詛が灯る。
其れは怒りだ。数百の、数千の怒りを束ねた恐ろしい呪詛だ。
この紋章を一つ作るのに、誰が犠牲になったのだろう。
無辜の人々?
魂人?
オブリビオン?
誰だろうと赦す訳にはいかない。例え敵であるオブリビオンであっても、こんな紋章に使われるだなんて、まっぴらだったはずだろう!
「君の思い通りには――させません!!」
脚を焼かれ、周囲を鳥に飛び回られて巧く立ち回れぬ紋章つかい。邪魔だ、と漸く精霊を蹴り飛ばした其の隙に――伊久は己の友を蹴り飛ばされた怒りも載せて、刀を振り下ろした。
――ぱきん!
紋章つかいを守っていた胸元の紋章が、砕け散る。
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
どんな存在だとしても
殺された挙句失敗作呼ばわりなんて
許せない許す訳にはいかない
荒野を往くと禍々しい青光
呼ばれた気がして歩み寄る
サークレットの真ん中に光色通りの青石
宝石じゃない
これはきっと毒鉱石
手に取ると強毒が滴り落ちた
声に出し願い出る
「頼む…力を貸して欲しい」
一際輝いた光を是と捉えかぶると
ぱしゃと水音がして全身が青の水膜に覆われる
多分この石はカルカンサイトに近い
ならその特質を生かそう
業腹だけど検体を志したように見えるんだね
彼奴の機嫌は良い
攻撃を水溶となった体で躱し思い切って地中へ
土中なのに息苦しさも圧も何も感じない
水は何処にでも在る
そこに溶け込んだ毒もまた
そのままUC光蟲の槍を詠唱
周りの水も集め全ての技能も用い集中
俺の光と蟲と恨みの毒が合わさった技が完成する!
上へ!
念じると紋章が力を貸してくれた
彼奴の目の前から投擲
高速多重詠唱で二撃三撃
「どうだ!失敗作じゃなかったろう!?」
サークレットが石と共に砕け散る
同時に毒光も貫いた槍だけを残し消え去った
「助けてくれてありがとう…忘れずに往くからね」
●青き毒の紋章
――どんな存在だとしても、殺された挙句失敗作呼ばわりだなんて、そんなのは赦せない。赦す訳にはいかない。
葛城・時人(光望護花・f35294)は荒野に踏み入ると、ふと、誰かに呼ばれた気がした。
誰だろう。少し歩を進めると、青い輝きが目に入る。
――サークレットが一つ、落ちていた。
真ん中には先程の光よりも鮮やかな青い石が嵌まっている。……いや、これは……宝石ではない。
「毒鉱石……?」
サークレットから抜き出し手に取ると、ぽとり、と落ちた雫が大地を焦がした。
これも紋章なのだろうか。毒は怒りの産物なのだろうか。ならば。
「頼む。君が紋章であるなら……力を貸してほしい」
煌、と青い色が輝くと、ぱしゃり、と水音がした。冷たいヴェールを纏ったような心地がして時人が己を確認すると、薄青い水の膜に全身が覆われている。動きにくい……訳ではない。問題はない。
「おお! 其れはいつぞやの失敗作か!? 素晴らしい、使い手によってはきちんと機能するんだな!」
これが紋章つかいが時人に放った第一声である。
失敗作である事は覚えているんだな、と、時人は渋い顔をした。或いは失敗作だとしか覚えられなかったというべきか。
「着け心地はどうだ? 似たようなもので少し成功したものがある、其れに変えてみないか? ――ああいや。もう少し君の動作を見せてくれ。観察したい!」
お望みならば、幾らでも。
業腹だが紋章つかいが上機嫌の今がチャンスだ。時人は紋章に祈ると、水溶となった身体で思い切って地中へと ざぶん! ――潜った。
大地の中を泳ぐように滑る。
息苦しさはない。圧のようなものも感じない。
――水は何処にでもある、そう思い知らされる。ならば其処に溶け込んだ毒も、また……
時人は集中する。
光蟲の槍。集中力を高め、高め、周囲の水を集めて――怒りの毒で練り上げる!
上へ!
時人は願う。紋章は答える。
素早く鉄砲水のように競りあがり、飛び出したのは紋章つかいの眼前。其処に光蟲の槍を一撃、二撃、三撃!
「おおっと……!」
一撃目は、紋章つかいの脚に砕かれた。
二撃目は、紋章つかいが脚に装着していた紋章をぱりんと砕き。
そうして三撃目が、紋章つかいの太ももを貫く!
「ッ――!!」
「どうだ!! お前が失敗作だと捨てたものがこれだ! 失敗作なんかじゃなかっただろう!!」
しかし、紋章は耐えきれなかったのだろう。
其の攻撃に全てを懸けたのだろう。ぱりんと石は砕けて、水のヴェールは消え去っていく。
――ありがとう。
――忘れずに、往くから。
時人は心中で、静かに紋章に使われた命の安らかな眠りを願うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ゾーヤ・ヴィルコラカ
世迷言はもうたくさん、正しい意思だなんてそんなの誰にも定められないわ。あなたの妄執もここまでよ、紋章使い! このゾーヤさんが相手よ!
彼らに〈祈り〉、流れ込んでくる怒りを受け入れて【UC:魔氷変容】(POW)を発動よ。装甲を5倍、射程を半分。氷の鎧を纏って、正拳突きを耐えてからの〈カウンター〉を狙うわ。爆破されて片腕はひどく傷つくけど、ひるまず〈怪力〉のまま氷の爪で彼を引き裂くわ。
あなたが失敗作と呼んだこの紋章も、命を奪って造り上げたもの。あなたは、数えきれない苦しみを生んだの。これ以上、この人たちを弄ぶのは許さないわ。さぁ咎人さん、骸の海に還りなさいな!
(アドリブ負傷等々大歓迎です)
●
「世迷言はもうたくさん」
ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は敢えて紋章を取らないという選択肢を選ぶ。一つを選んでなどいられないからだ。
「正しい意思だなんて、そんなの誰にも定められないわ。貴方の妄執も此処まで! このゾーヤさんが相手よ!」
ゾーヤの祈りは、霜のように緩やかに、周囲に散らばる失敗作の紋章たちへと振り落ちていく。
紋章たちは答える。
たすけてほしかった。
しにたくなんてなかった。
しっぱいさくだなんて、よばれたくなかった。
そんな純粋な怒りを、ゾーヤは受け入れる。そうして己の氷の魔力と練り上げて、装甲へと変えた。両手には長大な氷の爪。
「ほう。紋章の力を使わない、と?」
「ええ。だってわたしには、誰か一人を選ぶなんて出来ないもの。欲張りなのよ、わたし」
「成る程。其れも猟兵の一つの選択か。興味深い!」
だが、紋章つかいは手加減などしてくれない。真っ直ぐに突っ込み、正拳をゾーヤへと放つ。胸元の装甲と片腕の爪でゾーヤは其れを受け止め、耐え……けれど。紋章つかいがぐっ、と力を込めたかと思うと、氷の装甲がゾーヤの血肉ごと爆裂した。
「きゃあ!」
「ほら。矢張り紋章の力がないとこうだ。どうだ? いまからでも、紋章の治癒力を……」
「いらないって、言ってるでしょう!!」
ゾーヤはこれを狙っていた。
もう片腕に残しておいた爪での|カウンター《・・・・・》!! 力任せに振るった氷の爪が、至近距離にいた紋章つかいの胸をふかぶかと切り裂く!
胸が痛みを越えてすうすうする。腕に、胴に、砕け散った氷の破片が刺さって、呼吸がしづらい。――それでも!
「あなたが失敗作と呼んだこの紋章も、命を奪って作り上げたもの……あなたは数え切れない悲しみを、苦しみを生んだのよ。此れ以上命を弄ぶのは許さないわ、……さあ! 咎人さん、骸の海に還りなさいな!」
大成功
🔵🔵🔵
二條・心春
残念ですが私は英雄に興味はありません。家族や友達、大切な仲間達と一緒にいられるだけで幸せですから。
その幸せをそんな理由で、理不尽に奪われた方々がいるんですよね。私だってそんなの許せません。だから……力を貸してください!
【憑依召喚:蛇竜】でワームさんの力も借ります。代償と紋章の同時使用は危険ですが、彼らの前でそうも言ってられません。シンプルに動けば制御もしやすいかな。正拳突きに正面から拳をぶつけて紋章を壊します。様々な存在が私の中にいますから、操作は難しいはず。爆破は痛いですが、こちらも呪毒を流し込みました。動きが鈍ったらもう片方の拳を叩き込みます!……これで皆さんも少しは浮かばれるでしょうか。
●片耳を喪った兎の紋章
「私は英雄になんて興味はありません」
足元に転がる、沢山の紋章。これら全てが失敗作と呼ばれている事を、二條・心春(UDC召喚士・f11004)は知っている。其の中から一つ、片耳のない兎の紋章を手に取ると、ゆっくりと立ち上がった。
「家族や友達、大切な仲間たちと一緒にいられるだけで幸せですから」
「へえ。では、何故君は此処に?」
「其れを奪われた人がいるからです。何人も、何十人も……そんなありふれた幸せを、あなたのような身勝手な人に奪われた人がいるからです。そんなの、私だって許せません!」
心春が片手を天に伸ばすと、するり、と半透明の何かが彼女の細腕に絡み付いた。其れはゆっくりと天から降りて来て、彼女の胸元へ吸い込まれていく――其れは蛇竜型UDC霊。敢えて取り憑かせ、生命と精神を食わせる事で攻撃力を増す力。
そうして、其処に紋章の力を練り込む。危険? そうかもしれない。でも、相手は五卿六眼。危険だからやめておくとか、そんな事は言っていられない。
「――貴方が、赦せない!」
心春は拳を突きだす。
応えるように紋章つかいもまた拳を突きだし……二つの拳がぶつかり合う。男と女。成功作と失敗作。勝敗など明確だ、と……其の筈だった。
「――へえ?」
紋章つかいは片眉を上げ、素早く心春から離れる。心春の拳、ぶつかり合った箇所が どん! と破裂して、血肉が飛び散る。
本当なら操作してやろうと思ったのだが、――この少女の中には、複数の存在がある。ならば単純にダメージを与えた方が良いだろう、と思っていたが……
「……私が、何もしなかったとお思いですか」
だらん、と片腕を垂らし、心春が一歩を進める。
紋章つかいは奇妙な痺れに違和感を覚える。
「――こちらからも、蛇竜の呪毒を流し込みました。どうですか? 毒に身体を蝕まれる心地は」
心春が駆け出す。
紋章つかいは初めて味わう毒の感覚に、ゆっくりと振り返り。
「そして――この一撃の、痛みは!!」
心春は思い切り、無事な方の拳を振りかぶって……護りの体勢をとろうとした紋章つかいを上回る速さで、其の端正な顔に拳を思い切り叩き付けてやったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
・アドリブ歓迎
・手にする紋章の形状、変身後の外見全てお任せ
言葉だけは随分と殊勝だけれど
その為にどれだけの無辜の命が失われたのか
オブリビオンの騙る『正義』など所詮そんなもの
己の美学に酔い痴れるばかりで
民の命など塵としか思っていない
悍ましい
浅ましい
この男は決して許しておけない
ああ、慟哭が響く
命を奪われた挙句『失敗作』として打ち捨てられた犠牲者たち
怒りが、嘆きが、切なる願いが
貴奴を倒せとわたくしに乞う
その無念、共に晴らしましょう
叶わなかった未来を背負い、今一度わたくしに力を!
翼飛行で空中戦を挑み、細胞破壊光線を受けぬよう全速力で回避
歌うはレクイエム【怒りの日】
欺瞞に満ちた外道を神罰の光輝で灼き尽くす
●空舞う魚の紋章
英雄の為。
言葉だけは随分と殊勝だけれど、其の為にどれだけの無辜の命が失われたのか。
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は内心で、既に怒りの炎を燃やしていた。
オブリビオンの語る“正義”など所詮そんなもの。楽しむように己の同胞すら食い荒らす醜悪な所業!
己の美学に酔いしれるばかりで、民の命など塵芥としか思っていない!
――ああ、悍ましい。
――ああ、浅ましい。
紋章を纏い飛翔するこの男を、決して許しておく訳にはいかない。
わたくしは足元から、紋章を一つ取る。
慟哭が聴こえてくる。命を、尊厳を奪われた挙句“失敗作”として打ち捨てられた犠牲者たちの怒りが。嘆きが。切なる願いが……彼奴を斃せとわたくしに乞う。
ええ。其の無念、共に晴らしましょう。
叶わなかった未来を背負い、今一度、
「わたくしに力を!」
――ヘルガの翼が、銀色に覆われていく。より強靭に、しかし醜悪に変化していく銀色は、まるで趣味の悪い翼飾りのようで。
ヘルガは飛び立つ。其の白い翼に、銀色の覚悟を纏って。紋章つかいの放つ光線を、時折翼を畳んで自然落下に任せ、羽撃いて浮き上がりながら避けていく。
そうして、彼女は歌う。怒りを!
――無辜の願いを冒涜し、命を愚弄する者よ
今ここに不義は潰えん。悪逆の徒に報いあれ。
ヘルガの嫌悪は裁きの光へと変わる。破壊光線と交錯し、時に対消滅し、しかし必ず悪は裁かれるのだと言いたげに――ヘルガの怒りと裁きの光が、紋章つかいの翼を撃ち抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ歓迎
紋章付きには苦労してたけど、これの力を借りることになるなんて…
紋章の失敗作にぼくの人狼の力、満月の魔力を流し込んで変化させるの
ぼくは狼
月の力は使うけど、翼は必要ないの
大地を踏みしめて進める、この足さえあれば!
装着変身!
全身を鏡状の装甲で覆われた人狼の姿になるの
『ろぉぉぉぉぉおおおおおお!!』
雄叫びを上げて突進
装甲表面にさらに光を反射する結界でコーティングして破壊抗戦を撃ち返すの
肉体が宝石になりつつあるけど、計算の内なの
宝石はメジャーな魔道具の素体
満月の魔力で変化させてぼくの魔力を増幅
UC発動
消滅光に月光も乗せて真っ直ぐ撃ち抜くの
ぼくの全力、受けてみるの!
●鏡のような三日月の紋章
――これまで紋章付きのオブリビオンには苦労して来たけれど、まさか其の紋章の力を借りる事になるなんて。
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は運命は奇怪だ、という言葉を思い出す。事実は小説より、なんとか。だった気がするの。
ロランは迷わず落ちている紋章を手に取る。其れは三日月の紋章だった。何が失敗しているのかはロランには判らなかったけれど、でも、紋章なら。
其れを胸元に添えて、己の人狼としての力と満月の魔力を流し込んで変化させる。
「其れは……“三日月”か。だが、此方は“月の眼”だ、どうやって抵抗してみせるつもりかな!」
ぶわっ、と紋章つかいの背に羽根が舞う。
そのまま飛び上がった紋章つかいは漆黒の翼を広げ、月の目の紋章から光線を放つ。
ロランは其の間に、失敗作の紋章と魔力を練り上げて装着変身を果たす!
其の姿は、鏡状の装甲で覆われた人狼のような姿。
「ろぉおぉぉぉおおおおおお!!!」
咆哮が、第二層に響き渡る。
紋章つかいから放たれた光線が装甲に ばちん! と当たって、しかし鏡面故に跳ね返される!
ぴきり、と音がした。痛みはなかった。身体が宝石になっていくのが判る……其れでも、ロランは止まらなかった。
宝石とは、しばしば魔道具の素体、魔力の媒介に使われるもの。
ならば宝石になりつつある己の身体とて、|そういう風に《・・・・・・》使えるはずなの!
ロランは己の身体に魔力を巡らせる。照準を合わせるための魔法陣が、一瞬で紋章つかいを捉える。一瞬でなければならなかった、空を舞う相手を悠々と狙っている暇などないのだから!
――Target Lock
――Heat, Cold, Mixing
――Ready
「これが、ぼくと紋章さんの全力なの! 受けてみるの!!」
知らず知らず、怒りが沸き上がっていた。
犠牲の上に立って、笑っているのが赦せない。オブリビオンでさえも材料にする悪辣さが赦せない。赦せない、赦せない!!
其の怒りは練り上げられて、純度の高い熱波と冷機の入り混じった破壊消滅の光となり――
皓、
と、空を切り裂き音を越え、紋章つかいを焼き尽くした。
紋章つかいは、最期まで笑顔だった。
失敗作が成功品を越える。……だから、研究はやめられない!!
大成功
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