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贖罪のエウカリスト

#ダークセイヴァー #夕狩こあら #異形の神 #堕ちた死体 #往生集め『エルシーク』

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「ダークセイヴァーの辺境、信仰の篤い小さな村で、奇妙な事件が起きている」
 枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)が続々とグリモアベースに集まる猟兵達を玲瓏の微笑に迎えたのも一瞬、怪事件の詳細を語り始めるや、その麗貌は谷間に咲く百合よりも峻厳になる。
 花脣を滑る佳声も何処か厳めしく、
「この村では村人が行方不明になる事件が跡を絶たず、それが常態化して久しい。端から見れば異常事態に違いない処、信心深い村人達は、消息を絶った者の不信心故に罰が下ったものとして疑問を抱かず、諦観している節さえある」
 絶望に沈むほど信仰に縋る村人達。
 彼等は行方不明者の不敬虔が、人知れず命を失う悲運――自ら不幸を招いたと思っている様だが、帷は「そうではない」と断言する。
 何故なら、と彼女は息を継いで、
「行方不明者は、みな教会へ礼拝に行ったきり消息を絶っていた。つまり彼等は不信心故に事件に巻き込まれたのではなく、敬虔故に巻き込まれたとは思わないか」
 教会で何かが起きている――。
 村人の信仰を餌に、邪が蠢く気配がするとは、彼女の説明を聞いていた猟兵も感じ得る処。
 帷は俄に、そして静かに殺気立つ猟兵らと視線を合わせると、同意を示して頷き、
「君達には、この教会に潜入して、隔絶された世界を隠れ蓑に暗躍する邪を突き止め、やっつけて来て欲しいのだが……」
 そう言い終わらぬ裡、帷の緋瞳には猟兵の凜然たる「是」の表情が映り、彼等の漲る雄渾を見た帷も小気味良い咲みを返す。
 ならばと花脣は言を足して、
「先ずは教会を探って欲しい。小さな村だから、知らぬ顔を見れば冒険者か旅芸人かと奇異の目を注いで来るだろうから、ここで村人から何か聞き出しても良いし、逆に姿や気配を消して教会中を調べても良いだろう」
 或いは村人に変装してより親しく話を聞き出したり、修道者に扮して堂内を知った顔で動き回る事も出来るだろう。探索方法は各人の自由に任せる、と帷は言う。
 唯、彼女の佳顔が固い儘なのは、別なる懸念があるからで、
「注意すべきは、教会を訪れる村人が次なる行方不明事件の標的として狙われている可能性がある事。余裕があれば、彼等を守ってやってはくれないだろうか」
 狙われそうな村人を餌にしても良いが、可能なら彼等に代わって、猟兵自身が囮になって黒幕に辿り着く事は出来ないか――と、帷は言う。
「教会で何らかの手掛かりを見つけたなら、君達は必ずや邪の正体を暴くだろう。向こうが眷属を使役してくる事もあるだろうが、君達なら集団戦を制し、首魁に刃を突き立てる事が出来る筈。邪の根幹を絶てば、長きに渡って村に影を落していた行方不明事件は解決する」
 ぱちん。
 繊麗の指を弾いて鳴らすのが、着地点を語った時の帷の癖。
 彼女が次に掌を暴けばグリモアが出現し、
「ダークセイヴァーにテレポートする。人々を苦しめるオブリビオンに、たっぷりとイバラをくれてやれ」
 さぁ往こう、と猟兵らを光に包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、オブリビオンの悪しき嗜好や性癖の為に、絶望に隷属する人々を解放する、滅び行く村の救出シナリオです。

●戦場の情報
 ダークセイヴァーの辺境にある村。
 戦場が章ごとに変わりますので、敵の情報と併せてご確認願います。

●第一章(探索)
 教会内部で、聖壇や聖具室、懺悔室(告解部屋)等を調べたり、村人や修道士から話を聞き出したり、次の標的となる村人を守ったりします。
 必ずしもPOW、SPD、WIZに従う必要はありません。
 自由な発想で行動して下さい。

●第二章(集団戦)
 教会より通じる修道院(教会を経由してしか行けません)内で『堕ちた死体』と戦います。
 死霊術により蘇ったゾンビで、元々はこの修道院で奉仕していた修道士達(人間)。
 安らかなる死にも与れぬ彼等を「救済」して下さい。

●第三章(ボス戦)
 修道院の最奥の部屋、修道院長の執務室にて、往生集め『エルシーク』と戦います。
 人間の遺体や遺品を蒐集するオブリビオンで、蒐集した「もの」を再構成して攻撃してきます。
 エルシークを倒せば、行方不明事件は解決するでしょう。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 冒険 『異形の神』

POW   :    街の人に扮して教会に入り込む

SPD   :    教会に忍び込み、教会関係者や建物内を調べる

WIZ   :    行方不明事件を調査して次の事件を予測する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セシリア・サヴェージ
敬虔な信者を神聖な教会で襲うとは、不遜な輩もいるものだ。
神に代わり、必ずや誅してみせましょう。

まずは教会の関係者から話を聞きます。
【礼儀作法】に則りつつ巡礼中の騎士と名乗り話を聞いて、可能なら教会内を案内してもらいましょう。こそこそするのは性に合いませんから。
村人たちが行方不明になるのは不信心故と考えているのであれば、オブリビオンによる犯行を目撃していないということか…?
とすれば懺悔室などの人目に付かない場所や密室で犯行が行われたか…。そういった場所を【第六感】を働かせながら重点的に調査しましょう。


シエル・マリアージュ
過酷で希望がない世界、そこに生きるものが信仰に救いを求めるのは自然ともいえる。けれどその信仰の先に救いはない。彼らの未来に希望の光を灯すためオブリビオンを討伐する。
【アラクネの紅玉】を蜘蛛型にして【目立たない】ように教会内部に潜入させ、天井など見通しのよい場所から教会内部の構造や人の動きを【情報収集】させる。
私は【Garb of Mirage】の光学【迷彩】で【目立たない】ように姿を隠しながら教会の周辺を監視、教会に近付く村人は人目のない場所で聖銃剣ガーランドの非殺傷弾の【気絶攻撃】で気絶させ、【目立たない】場所に隠しておく。
そうして集めた情報などは他の猟兵に共有、彼らの行動をアシストする。


シェオル・ウォーカー
【POW】
村人達は信仰を拠り所にしているのか。・・・・・・無理もない。
支えなく生きるには、この世界は過酷過ぎる。

私は旅の剣士に扮して、まずは村人と接触を試みよう。
『殺気』の応用で、私が罪を重ねてきた人間であることを漂わせる。
懺悔したい意向を示し、村人に教会まで案内してもらおう。
可能であれば、ここで村の信仰や教会について何か情報を得られればいいのだが・・・・・・。

教会内に入った後は、そのまま懺悔室に向かい調査する。
ここならば密室でも不思議はないが、はたして鬼が出るか蛇が出るか。
懺悔する人間を狙っているならば、これで私が囮になれれば儲けものだ。

※連携・アドリブ歓迎。


ボアネル・ゼブダイ
信仰とは日々の暮らしの中で人々の心の拠り所となるものだ
そうした人々のささやかな希望ですら摘み取ろうとするか…
一人の信徒としてだけではなく、私もこの世界に生まれた者として奴らの悪業に終止符を打たねば

ボロを纏った旅の巡礼者に変装をする
礼儀正しく接すれば彼らも不審がらずに会話をしてくれるだろう

「ここはとても信心深く神の教えを守る方々の住む村だと聞いております…私も神へ祈りを捧げる旅の途中ですが、是非とも祈りを捧げたく…」

教えて貰った教会へは私一人で行こう
途中で教会に行こうとする村人がいたら私の赤光の邪眼を使い、そのまま家に帰らせる
これ以上の犠牲者は必要あるまい

他の猟兵とも情報を共有して作戦を進めよう


蘭・七結
ヒトを愛し、慈しむ神さま
ヒトを忌み、嫌う神さま
世界には、様々な神さまが存在するでしょう
村民が抱く、盲目的な信仰心
さぞ居心地が良くて、苗床に相応しいでしょうね
その場所に潜み隠れる、邪な影力
ナユたちが、引き摺り出してあげるわ
神さまを驕るニセモノには、罰が必要ね

向かう先は渦中の教会
村娘に変装をして、関係者に接触
村民たちが信じる神さま
ナユがしんじる、『かみさま』
似て非なる〝カミサマ〟を信じるもの同士だもの
誓いにやってきた、信仰心ある村娘を演ずるわ
〝明けぬ黎明〟
催眠状態へといざなう、毒使いの毒
不可視の毒気は、あなたたちを狙って甘く絡みつくでしょう
偽りの夢の淵へ。堕ちておいでなさい

✼アレンジ等歓迎です。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。誰かを犠牲にしてでも助かりたいと考えても、
何もおかしくない世界だもの。
それを思えば、信仰に縋る事は決して悪い事じゃない。

問題は、それが自身を救うとは限らないだけで…。

教会の外の目立たない場所に【常夜の鍵】の魔法陣を設置、
小石にも【常夜の鍵】を刻み先に逃げ道を確保しておく。
事前に防具を改造して存在感を遮断する呪詛を付与。
気配を消し【見えざる鏡像】で不可視化した状態で教会内部に侵入。

暗視と第六感を頼りに怪しい部分がないか見切り、
関係者の日記か何か無いか探りを入れる。
…鍵等が掛かっていれば周囲の状況を警戒しつつ、
力を溜めて怪力任せに破壊する。
脱出は【常夜の鍵】を使用。深入りや無理はしない。


ムルヘルベル・アーキロギア
【WIZ】
ダークセイヴァーに現れるオブリビオンは"異端の神"と呼ばれておる
であれば本来、正道であるべき宗教と信仰があったわけだ
それを利用するとはオブリビオンめ、いやまったく度し難い

さて実際の行動だが、可能であれば他の猟兵と同道したい
見知った者がおれば心強いのだが、ここばかりはな……
ともあれ実際に探索してみれば手がかりのひとつやふたつ見つかるであろう
……おそらくだが、オブリビオンは何か共通項を以て獲物を選んでおる
篤信だけが条件なのか、はたまた別の何かがあるのか
手がかりをもとに推理し、該当する者が近隣に居ればこれを護る
まあ、護ると言っても実働は他の者に任せるほかあるまい
……本当に、醜悪な輩よな


オリヴィア・ローゼンタール
神聖なる教会を隠れ蓑に……
その冒涜、断じて許しません

元よりシスターでこの衣装は着慣れているので、違和感なく潜入しやすいでしょう
極力【目立たない】ように他の修道士の行動を見様見真似(【学習力】【礼儀作法】)して解け込む
お掃除をしたり【お祈り】をしたりする傍ら、普通の教会との違いを探る(【情報収集】【聞き耳】【失せ物探し】)
教会に訪れた方の顔を確認し、標的候補として記憶しておく
可能ならば他の仲間に情報を共有する
そういえば、最近あの方は教会にいらっしゃいませんね、など村人にさりげなく聞いてみたりする(【コミュ力】【言いくるめ】)


鹿忍・由紀
信仰深い人が狙われるんだから、神様ってやつもつれないね。
村人も差し伸べられるのがオブリビオンの手だなんて思ってもないだろうに。
どうせまたいい趣味したやつが潜んでるんだろうなぁ。

教会の近くで「目立たない」「忍び足」を使い身を隠しながらUC追躡で教会内を偵察。
礼拝堂や懺悔室は勿論見て回るけど隠し通路とか見つからないかな。
「第六感」「野生の勘」「世界知識」を利用して天井から床まで怪しそうなところを全て確認。

教会に近付きそうな村人は…他の猟兵が人払いしてくれてたらそれに任せる。
人払い出来てなくて来てしまった人がいたら、仕方ないから隠れるのをやめて引き返すように伝えよう。聞かないなら面倒だから「殺気」。


夏目・晴夜
教会、初めて来ましたが結構広いんですね

教会へ足を運んだきり行方不明、という事は
何かを知る人がこの教会にいてもおかしくなさそうです
そしてその人は己の命を守る為に暗躍する邪に協力しているとしたら
罪悪感に押し潰されそうになっているかも知れませんね

なので告解部屋へ聞き耳を立ててみたり
挙動不審な人には修道者に扮して声を掛けてみます
扮する為の衣装は、聖具室にあるのを適当に

何か知っている様子なのに口を割らないようであれば
申し訳ないですが【憑く夜身】で軽く脅かします
内に秘めたままでは、貴方も闇へと引きずり込まれてしまいますよ
ですが、このハレルヤに全てを打ち明ければもう大丈夫
全てを許して全てを守ってみせましょう


御形・菘
なるほど、中々に狡猾な手口で民を餌食にするようであるな

此度の妾は、村に立ち寄った敬虔深い旅人よ
メイクを落とし現地人らしい格好、偽装背負子に翼を仕舞えば、下半身以外は十分かの
実際は必要なかろうが、完璧を目指すぞ

教会に行き、修道士から話を聞こうか
敵か無知の中立かを見極めるぞ
妾のコミュ力と情報収集能力に任せるがよい!


ここまで安全に来られたこと、そしてこれからの旅路の安寧を祈りたく存じます
村人の皆さんもよく来られるのでしょうね、いつでも来訪を受け入れているのですか
ここでお会いできたのも何かのご縁、教会内を色々と案内して頂くことはできませんか?

内部調査をしている者もおるだろう、鉢合わんよう誘導してやるぞ


シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎

囮が必要ですか…
その役割
引き受けましょう

事前に私の行動の意図を味方へ伝える

髪に目印用の花を挿しておく

旅の巡礼者か村人に<変装>し教会を訪問
聖壇にて<祈り、歌唱、優しさ、礼儀作法、誘惑、おびき寄せ>で
熱心に祈りと讃美歌を捧げる

教会の人には悩みを抱えている様子で応対
人目がある所では話し辛そうにする

懺悔室等に招かれたら

過去に犯した罪を償いたいけれど
償いを果たせられるのかが不安
もし私が身を捧げて助かる命があれば喜んで捧げる覚悟はある
事を話す

↑全部本当の事

基本命の危険が無い限り無抵抗で言いなり
有れば【贖罪】で耐える

捕まる等どこかへ移動中は要所で花弁をこっそり床へ落として目印を作る


ヨハン・グレイン
信仰なんてもんは俺には理解出来ないのですけどね
何かに縋るも縋らぬも、勝手にしろと思います
……ただ、祈るしか寄方の無い者を弄ぶのはいただけないな

村人を囮にして黒幕の尻尾を掴みましょうか
……と言いたいところですが
その後に助けなければならないとなると、そっちの方が面倒か
信心深いフリして、祈りでも捧げにいきましょう

先ずは礼拝堂へ
祈りを捧げた後にそっと内部へ侵入を
突如消えたとなると教会内部から外に通ずる何かがあるか、
もしくは人に知れぬ場があるのやも
告解室や狭く独りになりやすい場を重点的に
地下への階段なり隠し扉がないものか、床や壁を調べましょう
内部の地図を頭で描きながら、空白の場がないか注意します


荒谷・ひかる
信仰のことはよくわからないけれど……まじめに信じてるひとをおとしいれるのは、よくないのはわかるよっ。
ようし、がんばって解決するんだよっ!(ぐっ)

見習い修道士(シスター?)に変装して、教会の中を調べてみるね。
わたしは見習いでこの村の教会には来たばかり(という設定)だから、勉強という名目で先輩修道士さんたちや神父さんに熱心にお話を聞いて回るんだよ。
「あれって何に使うんですか?」「この部屋には何があるんでしょうか」って。
そのやりとりの中で、怪しいと目星を付けた人に【大地の精霊さん】を付かせて監視するね。

並行して、奉仕やお祈りを熱心にして「次の標的」として目を付けられるようにもしてみるよ。


六波・サリカ
信心深い信徒をイケニエにでもしているのでしょうか。
ダークセイヴァーで起こる事件は陰湿なものが多い気がします。
この世界に蔓延る悪を一つでも多く滅ぼす。
それが私の望みです。

ここは夜と闇の世界ゆえ
照覧式の【暗視】【情報収集】の技能を使い協会の内外を調べます。
人の少なそうな時間帯に行動を開始します。
協会周辺を調べた後、協会に侵入。
屋根や窓付近などに急襲式を配置し、敵が来たら鳴いて知らせるように指示を出します。
鍵のかかった部屋や棚、引き出し等があれば【鍵開け】技能も駆使して進みます。

なにか有益な情報が手に入れば即座に撤退。
他の猟兵たちに知らせて次の一手を考えましょう。



 絶望と暗澹が蔓延る世界、ダークセイヴァー。
 虚空に聳える尖塔の十字架も闇の帳は貫けぬか、久しく色を失った空に鐘楼の音が響き渡る。
 蓋し其の荘厳はヴァンパイアに屈した百余年より昔と変わらず――村中に礼拝の時を告ぐ鐘声を頭上に、シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)が教会に至った。
 彼女は繊細なレースを編む『セレスティアヴェール』越しに透徹たる青の瞳を注いで、
「過酷で希望の見えない世界、其処に生きる者が信仰に救いを求めるのは極く自然なこと」
 けれどその信仰の先に救いは――と、静かに語尾を隠す。
 徐ろに月白の睫を伏せた彼女は、己が繊指を飾る指環『アラクネの紅玉』が漸う蜘蛛に姿を変え、音もなく聖堂へと侵入していく様を見届ける。
 目指すは天井――見通しのよい場所から教会の内部構造や人の動きを把握できれば、これより侵入を試みる他の猟兵に有益な情報を渡す事が出来よう。
「礼拝堂は箱舟を模した長方形型で……左に聖具室、右に懺悔室……建物全体で十字架を形作る構造で……中に人は……」
 蜘蛛が視る映像を佳声に変えて伝える自身はというと、光学迷彩仕様の『Garb of Mirage』に姿を隠しながら、教会の周囲に戒心を注ぎ――内外の監視を揃える。
 折に新たな村人が礼拝に来たなら、『聖銃剣ガーランド』は慈悲の魔弾で麻酔を掛けて、
「暫しの眠りを」
「新しい農具を司祭に祝福してもらうべな……――きゅう」
 老爺が沈むより先、その躯を切り株に座らせれば、草むしりしている風にも休んでいる風にも見えよう。取り敢えず無辜の命が邪に屠られる悲劇はなくなる。
 彼が再び目覚めた時には、常闇の世界にも光が差していようか、
「――この村の未来に希望の光を灯す為に」
 シエルは凛然を瞳に宿しつつ、教会へと踏み込む仲間の背を見送った。
 この時、彼女と同じく教会を訪ねる村人に注意を払っていた鹿忍・由紀(余計者・f05760)は、一先ずの安堵を喉奥に嚥下しつつ、足元よりそっと【追躡】(レプリカ)――影の黒猫を模る。
「――遊んでおいで」
 物陰に佇立む長躯は閑に、気怠げなテノールは枯淡の風に攫わせて。
 自身が気配を隠すほど黒猫は好奇心旺盛に、双眸を爛々とさせて教会の静謐に忍び込む。
 その尻尾を見送った端整は淡く囁(つつや)いて、
「信心深い人が狙われるんだから、神様ってやつもつれないね」
 村人も差し伸べられる手がオブリビオンの魔手とは思ってもないだろうにと、目深に被ったパーカーのフードに嘆声を隠した由紀は、密かに教会内を巡る黒猫と五感を共有して秘鑰を探っていく。
「どうせまたいい趣味したやつが潜んでるんだろうなぁ」
 教会と修道院を結ぶ回廊に続く扉、即ち正規の通路は直ぐにも見つかる。
 然し由紀が言う通り、「いい趣味したやつ」が堂々ここから村人を連れ込むとは考えられず、彼は黒猫を写し身に、隠し通路がないか炯眼を光らせた。
 信徒会館、聖具室、懺悔室……配置を脳裡に描きながら偵察を続けていた由紀が、金糸に縁取る目蓋を持ち上げたのは、この時。
「…………」
 ――感触が違う、と研ぎ澄まされた感覚が戒心を走らせる。
 音なき猫脚だからこそ気付いたろう、空洞を感じさせる床は懺悔室に続いており――刻下、厚みある壁を隔てた由紀が、スッと青瞳を細めた。
 扨てシエルより偵察情報を得つつ、由紀の黒猫と時を違わずして教会へ踏み込んだリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の往く足も軽快にして機敏。
 彼女は【見えざる鏡像】(インビジブル・ミラー)にて自身と装備類を透明化し、同時に存在感を遮断する呪詛を掛け、物音を、気配を殺して探索する。
 人知れず移動する彼女は宛らそよ風の如く、
(「……ん。誰かを犠牲にしてでも助かりたいと考えたっておかしくない世界だもの。信仰に縋る事は決して悪い事じゃない」)
 問題は、それが自身を救うとは限らないだけで――と、流眄を伏し目に置きつつ、祈る人々の間を擦り抜ける。
(「……関係者の日記か何か、怪しいものは……」)
 縦横無尽に動ける身ながら、事前に退路を確保しておく用意も周到。彼女の【常夜の鍵】(ブラッドゲート)は、己が紅血に描いた魔法陣を転移の門として、万一の時にも速やかに退避できる様になっている。
 なればこそ行動力は増そう、修道院へと繋がる回廊の扉の常時施錠された厳戒を認めたリーヴァルディは、怪力を頼りに扉を壊さんとするが、時は信徒礼拝――向う側より修道士がやって来れば、その隙間に華奢を滑らせ、逸早く修道院側へ抜けるに成功する。
(「……ん。物音を立てずに済んだ……」)
 この先に事件の真相、首魁が坐そうが、蓋し独り深入りは無用。
 彼女は一先ず影に身を隠し、他の猟兵の到着を静かに待った。

 時は少し遡る。
 ダークセイヴァーに降り立ったムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)は、螺鈿の如く虹色を遊ばせる髪を風に梳らせつつ、独り、路傍に彳んでいた。
 凡そ少年らしからぬ老成した物言いは宛転にして滔々、
「この世界に現れるオブリビオンは"異端の神々"と呼ばれておる。彼奴等を異端と言うならば、本来の宗教、正道たり得る信仰が在った訳だ」
 片眼はモノクル越しに、片眼は紫水晶の煌く儘に世界を映す。
 百余年と変わらぬ殺伐に彼は嘆声を添えて、
「それを利用するとはオブリビオンめ、いやまったく度し難い」
 と、視線の先に佇立む教会を眺める。
 目的地を前にムルヘルベルが距離を置くのは、他の猟兵――特に見知った者と同道できれば心強いと思ったからなのだが、(実は気が弱い)彼は此処で大いに雄渾を得たろう。
 続々と世界に降り立つ猟兵の中には、軍庭を同じくした者が多く見られ、巡礼者を装って教会へ向かうシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)もその一人。
 旅人風の変装に加え、銀糸の艶髪に花を挿したシホは、己が行動の意図を伝え、
「次に犠牲となる村人に代わって、囮を引き受けようと思いまして」
「囮か……恐らくオブリビオンは何か基準を以て獲物を選んでおる。犠牲者に共通する特徴を探り、推理すれば、該当する村人を護れよう」
 篤信が条件か、将又(はたまた)外見の様な別の何かに依って選ばれているのか――二人が暫し思案していると、ふわり、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)が窈窕たる馨香を差し入れる。
「教会へ足を運んだきり行方不明……という事は、何かを知る人が内部に居てもおかしくなさそうです」
 例えば、己の命を守る為に暗躍する邪に協力しているとか。
 村人とオブリビオンを結ぶ仲介者が居たならば、いかなる基準で選んでいるのかも探れようと言えば、これには御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が同意を示して、
「オブリビオンが隠れ蓑にする修道院、此処で暮らす修道士は邪の存在を知らずにいるのか、知って匿っているのか」
 敵の傀儡か、無知なる故の中立か。
 その見極めが必要だと、聡達の感漂う口のほとりを小気味良く持ち上げた後は、花脣に乗る紅を手の甲に拭う。
 然う、此度の菘は村に立ち寄った敬虔なる旅人。
 威圧感マシマシの『艶蛇冷粧』を落とし、現地人らしい質朴の服、偽装背負子に翼を仕舞えば、今の彼女は邪神とは程遠い清けし乙女と変わる。
 彼女の様に旅人に扮して教会に踏み込む者は他にも居る。
「あれは……?」
「さぁ、見かけん顔さね」
 いつになく知らぬ顔が道を歩けば、今より礼拝に向かう村人は「久方に関所が開いたのか」「遠い国で戦が起きたのか」と視線を寄越そう。
「……こんな湿っぽい村を訪れる者も居るんだねぇ」
「祈る他はなんにも無い村さね。全く変わり者だよ」
 幾分か訝し気な瞳も、ボアネル・ゼブダイ(Livin' on a prayer・f07146)の閑麗漂うバリトンを聴けば和らごうか。
「ここはとても信心深く神の教えを守る方々の住む村だと聞いております」
「えっ、そ、そっそうだけど……」
「私も神へ祈りを捧げる旅の途中ですが、是非とも祈りを捧げたく……」
「それはそれは。神様も貴方を温かく迎えてくれましょう」
 外套は長旅を思わせるボロながら、草臥れた布の切れ端より覗く端麗はBlue blood(高貴な血統)を感じさせ、野盗では決して身につかぬ気品と礼儀正しさが、村人の心を近しくさせる。
 元々は親切な彼等だ。村人は敬虔なる巡礼者を教会に案内し、
「さぁさ、こちらですよ」
 天へと身を伸ばす鐘楼の荘厳を仰いだボアネルは、瞼を伏せて礼を示した――次の瞬間、銀糸に縁取る長い睫を持ち上げ、【赤光の邪眼】(アイズ・ラヴ・ユー)に射止める。
「教会へは私一人で行こう。これ以上の犠牲者は必要あるまい」
「――……えぇ、ええ。私達はこのまま家に帰ります」
 魅了――妖し魔力を秘めた蠱惑の緋瞳は心を掴み、すっかり絆された村人がくるり、踵を返す。
 迷いなく帰路を辿る背を見送ったボアネルは、淡い嘆声を添えて、
「信仰とは日々の暮らしの中で心の拠り所となるものだ。そうした人々のささやかな希望すら摘み取ろうとするか……」
 美脣を引き結び、瞋恚を押し込む。
「一人の信徒として、この世界に生まれた者として。奴らの悪業に終止符を打たねば」
 じゃり、と靴底に砂を噛んだ爪先が、十字を掲げる尖塔を目指した――。

 時に。
 旅の剣士に扮して村人の案内を得たシェオル・ウォーカー(悪刃・f14868)は、教会に入るなり漂った絶望と希望の混濁に、一瞬、戦場に戻されたような錯覚を覚える。
 導かれた礼拝堂には、手を合わせた村人らが一心に祈りを捧げており、その必死な祈祷が重なり、響いて、震える鼓膜に生々しく迫った。
「……村人達はこれ程までに信仰を拠り所にしているのか」
 蓋し無理もない。
 支えなく生きるには、この世界は過酷過ぎる――と、シェオルは多く惨憺を映した青瞳を伏せる。
 血の染みついた指先を聖水盤に浸し、己が躯を清めた彼は、続いて聖水に潜らせた繊指に十字を切って入堂するセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)を密かに見遣る。
 巡礼中の騎士と名乗り、堂々村人の案内に与った彼女は、同じく熱心な祈りに耳を傾け、
「斯くも敬虔な信者を神聖な教会で襲うとは、不遜な輩もいるものだ」
 悪しき者ほど賢しい、と蛾眉を顰めた儘、教会内部を見渡す。
 この厳粛の中に狂邪は慥かにあろう、美し銀の瞳は炯々と犀利を増して、
「神に代わり、必ずや誅してみせましょう」
「……あぁ、必ず」
 黒騎士は二人、親切に嚮導する村人の後に続いた。
「――ここは小さな村ながら教会は立派でね。奥には修道院があるし、修道院長も儂らによく目を掛けて下さる。豊かな暮らしは出来ずとも、希望は捨てずに居られるんだ」
 教会の世話人は、二人を案内する間に色々と語った。
「小さな集落だから、人が居なくなれば分かる。でもまぁ不信仰が招いた不幸と思えば、家族も人前で嘆く事は出来ねぇし……結局、祈るしかねぇんだよ」
 ステンドグラスに彩られる大きな薔薇窓、壁面を飾るフレスコ画などを見て回る傍ら、世話人の言を注意深く聴くセシリアは内々裡に思案する。
(「行方不明になるのは不信心故と考えている村人達は、オブリビオンによる犯行を目撃していないということか……? とすれば被害者は、人目に付かない場所か密室で拐かされたか……」)
 人目に触れず、密室を保てる場所。
 奇しくも聖堂にはこの条件を満たす部屋があり、彼女と無言で意志を通じ合せたシェオルがスッと進み出る。
「――今、告解は」
「あぁ、出来るとも。司祭をお呼びするかね」
 炯眼が射るは懺悔室。
 これまで罪を重ね、旅をするにも足を引き摺るようなったと言えば、村人は何ら疑う事なく懺悔室の扉を開ける。
 中に入ったシェオルは跪いて、
(「果たして鬼が出るか蛇が出るか――何れにせよ囮になれたのだから儲けものだ」)
 無辜の者に地獄は往かせぬ。
 彼は後に起きる異変の観察をセシリアに頼み、格子越しに現れる邪を待った――。

 旅人、巡礼者、村人……様々なペルソナを演じる猟兵の中で、修道者に関わるべく同業を装った荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)とオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、神にのみ奉献する筈の彼等に、大きな疑問を抱く事になったろう。
「信仰のことはよくわからないけれど……まじめに信じてるひとをおとしいれるのは、よくないのはわかるよっ」
「神聖なる教会を隠れ蓑に……その冒涜、断じて許しません」
 きゅ、と眉根を寄せて花顔を曇らせるひかるの隣、オリヴィアも固い表情で頷きつつ、胸に掛かる銀の十字架に手を遣る。
「ようし、がんばって解決するんだよっ!」
「ええ、『同じ修道会の者として』頑張りましょう」
 ぐっ、と小さな拳に気合いを込めるひかると、ぎゅっと手に握る十字架に使命の貫徹を誓うオリヴィア。二人は揃いのヴェールの下、凜然たる瞳を繋ぐ。
 神の家に隠れるオブリビオンと、狙われる村人――この両者の間に居る修道者に目を付けたのは至極剴切。
 元より修道女なオリヴィアと、シスターになるには年齢が届かぬひかるは見習いとして教会を訪れ、祈りと労働を捧げるべく、司祭や修道士らに熱心に話を聞いて回った。
 片や教会を知る者として当然の如く、片や知識を吸収すべく勤勉に、
「ブラザー、村の皆さまのお顔と名前を覚えたいのですが、信徒名簿をお見せ願えますか」
「あのう、神父さま。この部屋には何があるんでしょう?」
 彼等も心に全き疚しさが無ければ、熱意ある彼女達に快く答えたろう。
 然し返る言は何処か余所余所しく、
「……共に召命に預った同士とはいえ、他宗派の方々にはお教え出来ませぬ」
「あぁ、サクリスティア(香部屋)の棚には決して触れないように。いいかね?」
 この時点で彼等が何かを隠していると悟ったオリヴィアは、他の猟兵に警戒を促すべく目配せし、一方のひかるは【大地の精霊さん】(アース・エレメンタル)にお願いして司祭の監視と追跡を始める。
 情報を共有した仲間が密かに動き出せば、オリヴィアは今度は本業よろしく村人に声を掛けて、
「先程帰られたご婦人が、最近あの方を見かけないと心配されておいででした」
「あぁ、靴屋の旦那かい? 立派な髭を伸ばすのに精を出して、嫁さんに惘れられていたもんだが……神様にも見放されたのかねぇ」
「髭、ですか。こちらの皆さんにはあまり見かけない特徴ですけれども……」
「んむ、無精や怠惰に見えがちだからねぇ」
 その会話を聡い耳に拾いつつ掃除に励むひかるは、村人に代わって「次なる標的」となるべく献身の姿を見せる。
「見ているのは、どこかに隠れているオブリビオンじゃなくて、たぶん……」
 少女の予感は直ぐにも結果として齎される。
 ――同じく教会に潜む仲間によって。

 扨て、同じく修道士が怪しいと踏んだ菘は、邪神の風格を潜め彼等と接触する。
「ここまで安全に来られたこと、そしてこれからの旅路の安寧を祈りたく存じます」
「それはそれは。ご自身が灯された信仰の光が、貴女を導き、照らさんことを」
 何たる窈窕淑女。
 我がコミュ力と情報収集力を以てすればと演技は揺るぎないが、その実「恫喝」「殺気」「言いくるめ」に長けているとは今は言うまい。
 佳声は嫋かに相手の話を引き出させ、
「村人の皆さんもよく来られるのでしょうね。いつでも来訪を受け入れているのですか」
「ええ、村人も旅人も。教会は常に祈る人の為に開けられています」
 とはつまり。
 既に選別基準が整っており、来訪者は其に適った時点で拐かされているのか――と、密かに推察する。
 この時、ムルヘルベルらが聖具室に向かうのを視界の端に捉えた菘は、言葉も巧みに、
「ここでお会いできたのも何かのご縁、教会内を色々と案内して頂くことはできませんか?」
「それでは我が教会の守護聖人からご案内いたしましょう」
 修道士が気付かぬよう視線を誘導して内部調査を扶ける。
「――助力に感謝する」
 と、菘の背を謝意に見送ったムルヘルベルが香部屋の扉に手を掛けた時、六波・サリカ(六道使い・f01259)が控えていたのは誠に幸甚だったろう。
「祭器具、祭服、典礼書、教区記録……香部屋は情報の宝庫であるが故」
「では開けます」
 淡々と、そして軽々と。
 鍵開けの技能を持つ彼女の金瞳【照覧式】は、鍵型と鍵穴から直ぐにも施錠を解き、中の棚や引き出しに掛る鍵も、次々解放して情報を集めていく。
 サリカの外連無い佳声が読み上げればこそ幾許か抑えられようが、見つけた紙片の内容は悪辣、
「信仰篤き者を第一に。盲信は今際の瞬間も神を疑わず、故に抵抗せず――」
 第二に珍しい「もの」を持つ者を。特異性は蒐集を弼く。
 第三に貧しき者を。富を生まざるは命を捧げて教会に奉ずるべし。
「…………本当に、醜悪な輩よな」
 ムルヘルベルが繊指に『賢者の襟巻』を持ち上げる。
 遂に明らかになる条件を耳に、信徒名簿を指で擦った彼は、塗り潰された分だけ判明する犠牲者を知り、密かに唇を噛む。
 然し立ち止まっても居られまい、彼は他の猟兵らに伝えるべく踵を返し、静謐なる教会が俄に、密かに、さざめき出した。

 香部屋で行方不明者がどのような事由によって狙われたかが明らかになる頃、そこからトゥニカ(修道服)を拝借して先に出た晴夜は、三部屋ある告解部屋のうち、長く懺悔中の札が掛けられた儘の一室に耳を傾けていた。
「……お許し下さい、お救い下さい。私達は邪悪と知りつつ、その轍から逃れられないのです」
 不夜狼の聡い耳は、壁越しにもよく声を拾う。
 顔は見えぬが、語る内容からは男が修道者である事が判明ろう。懺悔は止まず、
「村人を神の道に導く修道者が、彼等を餌に悪魔を養い、神の家に匿っているとしたら……私は、私達は……」
「――……」
 声が悴み、涙を滲ませるのを察して、晴夜が長い睫を伏せる。
 村人を拐かす邪に協力者が居た事も、彼等が保身の為に他者を贄と差し出した、その罪悪感に押し潰されそうになっていた事も、懸念――いや予測した通り。
 蓋し晴夜はこの遣る瀬無い、死と絶望が螺旋と続く世界を神に訴えるほどの宗教は持ち合わせていない。
 彼は嘆声をひとつ、対面の神父が入る小部屋に身を滑らせるや、【憑く夜身】(ツクヨミ)――繊指より不可視の操り糸を放って、告解者の影を絡め取る。
 聖性を帯びた佳声は厳粛に、それでいて優艶と男に語り掛け、
「この儘では貴方も闇へと引きずり込まれてしまう処、このハレルヤに全てを告げれば大丈夫」
 蓋し虚言は無し。
 暁鼠の玲瓏は糸を操りながら彼の口より真実を引き出し、
「全てを打ち明けたなら、全てを許して全てを守ってみせましょう」
 と、端麗に口端を持ち上げた。

 消息を絶つ者達の特徴は分かった。
 彼等を誘拐する場所は懺悔室と分かった。
 司祭や修道者が手引きし、彼等を邪の元へ連れるのも分かった。
 ならば如何なる方法で人々を修道院へ運ぶのか――ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)の冷静は、村人が攫われる始終を見て黒幕の尻尾を掴むのも一つの手段たり得ると認めてはいたものの、その後の救出を考えれば手間か、と助け出す前提で取り下げるあたり、非情にはなりきれぬ。
 彼は自身に根付く優しさを知ってか知らずか、犀利な藍瞳に聖堂を見渡し、その静謐と荘厳に皮肉めいた嘆声を隠す。
「信仰なんてもんは俺には理解出来ないのですけどね。何かに縋るも縋らぬも、勝手にしろと思います」
 蓋し馨るテノールは間を置きながら続き、
「……唯、祈るしか寄方の無い者を弄ぶのはいただけないな」
 と、幾許かトーンを落とす――これも彼らしい。
 突き放しつつも離れない、拗くれ者はだからこそ洞察に優れるか――礼拝堂で沈黙を捧げたヨハンは、他の猟兵が修道者や村人を惹き付ける間に影を滑らせ、床や壁を具に調べる。
(「教会内部から外に通ずる何かがあるか、もしくは人に知れぬ場があるのやもしれません」)
 地下への階段か、隠し扉――。
 内部の地図を頭で描きながら探ったのが奏功したろう、彼は間もなく三部屋並ぶ懺悔室の両端に不可解な空白を見つける。
 彼は繊指にそっと眼鏡を持ち上げ、
「囮の方は中央の部屋以外に入られると良いでしょう」
 其の始終、見させて頂きます――と、通じ合わせた。

「オブリビオンは信心深い信徒をイケニエにでもしているのでしょうか」
 とかくダークセイヴァーで起こる事件は陰湿なものが多い気がすると、サリカが常闇に言を溶かしたのは、鐘楼が礼拝の時を告ぐより随分と前。
 彼女はまだ人気のない時間を狙って教会に侵入し、【急襲式】――群為す鴉の式神を監視として置いていたのだが、屋根の上に配した死凶鳥が鳴いたのは、この時。
「修道院から修道士が、四人……」
 礼拝に参加する修道士らは既に教会に向かった。
 なれば彼等は何の為に向かって来るのか。
 鴉鳴が警戒を告ぐと同時、映像を転送すれば、冴ゆる金瞳に状況を視た主サリカは、修道院と教会を繋ぐ回廊に、地下へと繋がる階段を捉える。
「正規の扉を開けずに、地下より教会に来る者が居ます」
 ――多分、拐かした者を運ぶ為に。
 言外にそう滲ませたサリカは、囮役の猟兵に逸早く伝え、「時」が近付いていると呼びかけた。

「お悩みですか? 人目がある所では話し辛い事でしたら、懺悔室でどうぞ」
 熱心に祈りと讃美歌を捧げていたシホが修道士にそう誘われたのは、他の猟兵によって全てのカラクリが暴かれた時。
 聖堂に響く讃美歌に紛れて真相を聞いたシホは、同時に勇気も得たろう。
 彼女は勧められる儘に懺悔室へ入り、跪いて告白する。
「過去に犯した罪を償いたいのですが、償いを果たせられるのかが不安で……。もし私が身を捧げて助かる命があれば、喜んで捧げる覚悟はあります」
 聖邪が混濁した教会といっても、ここは神の家――語る言に偽りはない。
 自身の犠牲と献身を刻む『アセビの聖痕』の痛みを想いつつシホがそう言った時、背後の壁が俄に反転し、男の腕が伸びた瞬間、華奢が担ぎ上げられる。
「……っ」
 【贖罪】を使うか――否、彼等はやけに丁重に躯を運ぶ。
 なれば彼女も抵抗はしまい。
(「隠し扉から修道士が二人、そのまま地下通路を通って修道院へ……」)
 目隠しをされていても、情報を得ていたシホには理解る。
 彼女は密かに花弁を落とし、後を追うだろう仲間に目印を置いた。

「……よ、よぅし。エルシーク様の元へ届けよう」
「――うむ。先日お渡しした男の髭は、珍しいが質でご満足頂けなかった。今日の黒髪の男と、この娘の銀髪なら、きっとお喜びになる」
「何を作ってらっしゃるかは分からないが……いや、我々は素材となる者を集めるだけだ」
「勘ぐるな。知れば我等も命はない」
 地下通路を通り、修道院に続く回廊へと差掛かった修道士達が初めて声を交す。
 一人につき二人の男手で運んだ彼等は、このまま修道院の奥部、修道院長の執務室へ届けるつもりだったが、風に運ばれる甘い馨香――蘭・七結(恋一華・f00421)が其を許さぬ。
「ヒトを愛し、慈しむ神さま。ヒトを忌み、嫌う神さま。世界には、様々な神さまが存在するでしょう。――ナユも、しんじる『かみさま』がいる」
「! 村娘……何処から侵入った!」
 修道士は瞠目するが、見れば彼女だけではない。
 同じく隠し通路を通ってきたと思われる猟兵が続々と現れ、囲み、行方不明事件の真相をその瞳に聢と焼き付ける。
 然ればシェオルやシホもまた拘束を解いて囲みに加わり、緊迫の場面に澄み渡る七結の佳声を聴く。
 誓いを立てにやってきた、信仰心ある村娘は今こそ正体を暴いて、
「村民が抱く、盲目的な信仰心……さぞ居心地が良くて、苗床に相応しいでしょうね」
「……君達は只者ではないらしい。何者だ!」
「この村の秘密をどこまで知った!」
 大声を吸収する沈黙がその答えだろう。
 七結は「すべて」と真実を突き付ける代わり、ふわり、狂おしい香気を漂わせ、
「この村に潜み隠れる、邪な影力。ナユたちが、引き摺り出してあげるわ。――あなた達は、偽りの夢の淵へ。堕ちておいでなさい」
「……ッ、これ、は……ッッ!」
 香気は毒気、【明けぬ黎明】(デア・グロウ)――催眠と忘却を生じる猛毒は忽ち常闇の空に解け、修道士らを優しく抱擁した後は、深い眠りに誘う。
 一人、二人……と膝を付いて倒れれば、もう七結の声は届くまい。
「神さまを驕るニセモノには、罰が必要ね」
 凄艶の佳声は、修道院へと続く回廊を真っ直ぐに往き、これに多くの猟兵が続いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『堕ちた死体』

POW   :    噛み付き攻撃
【歯】を向けた対象に、【噛み付くこと】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    一度噛まれると群れる
【他の堕ちた死体の攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【追撃噛み付き攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    仲間を増やす
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【堕ちた死体】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『……鼠が湧いた。猟兵という鼠だ』
 不潔な、と厭悪の溜息を吐く。
 修道院長の執務室、回廊を見下ろす窓より猟兵の侵入を捉えた死の蒐集家――往生集め『エルシーク』は、長く鋭い魔爪を顎に遣ると、暫し思案する。
『…………仕方ない。ストックを割くか』
 ストック(蓄積品)。
 蒐集家は或る嗜好に依って「もの」を蒐集するが、手放す時は優先順位の低い「もの」から切り崩していく。
 今回のそれは、修道院を我が物とした時に既にあった修道士。
 エルシークにとっては、前の修道院長の所持物であり、己が嗜好によって蒐集した覚えのない――最初に切り崩すべき蒐集物。
『目覚め、明かりを整えよ。来る花婿の為に、油を持て』
 ぱちん。
 禍き異形が須臾に弾指し、乾いた音を鳴らした途端、修道院の至る処に収められていた骸が動き出す。嘗て生を冒瀆された修道士達は、今度は猟兵を迎え撃つ尖兵として死を玩ばれるのだ。
『然し聊か数に心許ない』
 この時エルシークは、眼下に敷く猟兵の凜然を見るや「足りぬ」と言ちて、更なる呪詛を彼等に掛ける。
『増えよ、増やせよ、満ち満てよ』
 俄に修道院内が恐慌を帯びたのは、死者が生者を屠り、仲間を増やし始めたから。
 エルシークは修道院内の全ての修道士を『堕ちた死体』に変えると、我が死霊術に操って猟兵達を迎撃させた。
アルトリウス・セレスタイト
何にせよ終わったものは消え去るが良い

虚空で掃討
捕捉できる全対象へ同時攻撃
高速詠唱・全力魔法・2回攻撃・範囲攻撃など駆使し速度重視で手を止めず

敢えて回避できる余地を残す程度の数と狙いで
当たれば倒せずとも他の者が討つなり次弾で仕留めるなり
回避されたら飲まれて消えるだろう
万一それも回避されても自身に有利な場が増えるので、そこを利用し継続

他の猟兵が手近にいれば協働
巻き込まないようには気をつける


ボアネル・ゼブダイ
敬虔なる信徒をいたずらに殺めるばかりでなく
死してもなおその魂を弄ぶか…決して許すことはできんな
だが、まずはこの哀れな亡者を苦しみから解放せねばなるまい

闇夜の眷属を発動し蝙蝠達の群れで敵の集団をなぎ払うように攻撃
撃ち漏らした相手は私のコ・イ・ヌールの刀身を伸ばして範囲攻撃や衝撃波で倒す
噛みつき攻撃を食らわぬように距離をとって戦おう
万が一近づかれたならばカウンターで首を切り落とす
彼らは哀れむべき犠牲者ではあるが
その事で私の刃が鈍ることは無い

眠れ…お前達の苦しみも怒りも、全て私たちが引き継ぐ
そして永遠たる神の愛がその魂を導き、安息に憩えるように、私も心から祈ろう…

他の猟兵とも連携して作戦を進めよう


オリヴィア・ローゼンタール
これは……元はここの修道士たち、ですか
生を奪われ、死すらも奪われ……

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】【破魔】
槍に聖なる炎の魔力を纏い攻撃力を増大
我が聖槍の炎を以って、彼らを操る傀儡の糸を焼き切ります

【怪力】で聖槍を【なぎ払い】、まとめて【吹き飛ばす】
刺突し内部から炎で焼き清める
邪悪は必ず倒します
だから、あなたたちはもう休んでください

数による圧殺が主体のようなので、【ダッシュ】【スライディング】【ジャンプ】などを駆使し、戦場を縦横無尽に駆け巡ることで狙いを定めさせない
修道院ならその構造もよく知っているので巧く利用できるハズ
跳躍からのグリーブによる【踏みつけ】も活用する


シェオル・ウォーカー
【POW】
修道院に動く死体とは、神聖も何もあったものではないな。
私の剣は呪われた業だ。悪いが魂を救ってやることはできない。
だが、終わらせてやることくらいはできるだろう。

私は前衛で接近戦を挑む。
命中率を重視した【百獣の剣技】で、敵の攻撃手段でもある頭部を狙う。
既に死んでいる以上、四肢を落とした程度では倒れないかもしれないからな。
敵からの攻撃は【武器受け】で食い止め、負傷の場合は【激痛耐性】で、せめてその場に踏みとどまる。
手傷を負ったからと退けば、敵に勢いを与えるだけだろう。
他に接近戦を行う猟兵がいた場合は、連携を優先しよう。

しかし、これが信仰の末の末路だとしたら、なんとも報われない話だ。


野宮・縁
れい(f01192)と戦うぞ

死んだ人間をこんな風にあつかうなんて、ゆるせんな
あまり手荒なまねはしたくないが、ゆるせ
お前たちをこんな風にしたやつを、ぶっとばさねばならん

わしの蒼い炎で、安らかにねむれ

ふむ、れいが群れるてきに炎を放つなら、合わせるかの
フォックスファイアでもやしてくれよう
こんな時でなければ、どちらの炎がすごいか勝負したい所じゃが
そうも言ってられん

もしれいやほかのなかまが死体に変えられそうになったら
なんとしても阻止してくれよう
そうでなくても、わしのほうがおねーさんなのじゃ
守れるようにいつでも気をくばっておくぞ
れいに近づくてきはなぎなたでぶった切ってくれよう

※アドリブ歓迎


葉月・零
縁さんと(f06518)

死霊術ってこういうのみちゃうとさ、嫌な感じだね……まぁ俺が言うのも微妙なんだけどねー

計画に加担してた人たちなのか……まぁ
兎にも角にもこの様子見ると被害者だよねー

こうなっちゃったら彼らをなんとか救ってあげたいんだけど
俺に何かできるかな

死霊術師である以上、許してくれ、
なんていう権利はないんだけど……
無理に起こしてごめんね

今度こそ君たちに穏やかな眠りを

一度噛みつかれたら同じ対象に群れるのなら
あえてそこを狙って
エレメンタルファンタジアで炎の嵐を
纏めて相手してあげるよ

もう一度目覚めることがない様に願って

縁さんは自分よりは年上だけれど……あんな見た目だからね、何かあったら庇える様に


荒谷・ひかる
これ、って……もう死んでるひと、だよね?
しかもこの服、修道院の……っ。
お願い、精霊さん……このひとたちを、もう休ませてあげて……!
(ひかるの辛そうな声を汲み取り、精霊は奮起する)

【炎の精霊さん】にお願いして、炎を出してもらうよ。
21個のうち、5個はわたしの近くに浮かべて自分の身を守る。
6個は、基本的には個別にぶつけて燃やすのに使うよ。
でも一個づつじゃ止まらないのが来たら、6個を一つに纏めて火力増強させるね。

残りの10個は、味方の倒した敵の亡骸を焼却して、復活を阻止するために使うよ。
必要なさそうなら、攻撃用に合流させるね。

勝手に火葬して、ごめんなさい。
でもこうしないと、ねむれないから……ぐすっ。


御形・菘
うーむ、これは少々しんどいビジュアルであるな
……などと妾が言うと思ったか!
お主らを十把一絡げのモブゾンビとして軽く扱うつもりは無い!
存分に見せ場を作って動画に残し、妾なりに救ってやろう!

さて、ならばゾンビものの禁じ手、単騎突撃と行こうではないか
はーっはっはっは! 目立つことを嫉妬するのは理解するが、止めてくれるなよ皆の衆!
集団のド真ん中へ突っ込んだら、そこが妾の戦場よ
挑発せずとも存在感を見せつけてやれば十分であろうかな
恐れたり、痛みに怯む気は一切無い! さあ無念でも怒りでも、妾にぶつけてみよ!

……あーそれと、妾までゾンビになったら世界がとんでもないことになるから!
なので早めに援護をよろしく!


リーヴァルディ・カーライル
…ん。確かに、彼らは罪を犯したかもしれない。
だけど、それが自身の意志に寄る物で無いのが明白な以上、
私は貴方達が悪であると断じるつもりは無い…。

待機している間に【常夜の鍵】を装備類に付与しておき、
改造した防具に魔力を溜め、存在感を消す“忍び足の呪詛”を維持。
暗視と第六感を頼りに敵の視線や行動を見切り、
【見えざる鏡像】を発動して敵の追跡を避け接近する。

…貴方達の罪は死と共に赦されるべきもの。
死の尊厳までも冒涜される謂れはない。

怪力任せに大鎌をなぎ払い生命力を吸収した後、
【常夜の鍵】を刻んだ大鎌に動かなくなった遺体を回収する。
第六感が危険を感じたら即座にその場から退避する。

眠りなさい、安らかに…。



 修道院へと繋がる回廊を疾り、鍵の掛かる扉を『白銀の柄』に破壊したオリヴィア(f04296)。彼女に続き三つ編みを揺らして駆けてきたひかる(f07833)は、重厚なる扉の隙間より小躯を差し入れた瞬間、鼻を付く腐臭にぞわり、毛先を蹴立てた。
 嗅覚に続き、間もなく視覚が陰惨を映す。
 刻下、可憐の瞳には驚愕の景が広がり、
「……これ、って……もう死んでるひと、だよね……?」
 綻びた衣服より覗く腐爛した肌膚。
 肉が朽ちて頬骨を露わにした顔貌が、群れを成して徘徊する――其は死者の彷徨。
 ひかるが息を呑んだのは無理もない、
「しかもこの服、修道院の……っ」
 清貧にも高潔なる歴史と伝統を感じさせる修道院、その廊下に満ち溢れる死者は、みなトゥニカに袖を通して我が身の貞潔を証しているのだから、無垢なる少女は余りの悲惨に語尾を失ってしまう。
 彼等と同じく神に身を捧ぐオリヴィアも瞠目したろう、
「これは……元はここの修道士たち、ですか……」
 生を奪われ、死すらも奪われ――。
 神に寄り縋った者の末路に眩暈する。
 不意に底の無い絶望が足下に這い寄り、深淵へと引き摺り込まれる様な感覚に陥るも、ダンッと踏み込んで邪を祓った聖女は、白銀に輝ける『セイントグリーブ』の光を新たに、破邪の槍に聖なる炎を灯す。
 金の瞳は炯然と冴えて、
「我が聖槍の炎を以って、彼らを操る傀儡の糸を焼き切ります」
 ユーベルコード【トリニティ・エンハンス】――炎の魔力を解放して攻撃力を強化した槍は、黄金の穂先を赫々、破魔の力を増大させる。
 聖女も巫女も魔を滅するには炎を操るか、オリヴィアに隣したひかるもまた【炎の精霊さん】(フレイム・エレメンタル)の力を借りて、死者を救わんとする。
「お願い、精霊さん……わたし、このひとたちを助けたい……!」
 友の震える声を聴いたなら、彼等もまた奮起しよう。
 ひかるを励ます様に周囲を漂った精霊は、穢れ無き少女を護るべく炯々燃え上がる。
『……ォ、ヲ……』
『ォォヲヲ……嗚ヲ……』
 二人の聖性に気付いたか、それとも生者の芳しい匂いに惹かれたか。
 流浪の足は標を見つけるや一斉に進路を揃え、互いの腐肉で押し合う地獄絵図を見せる。
 戦うより先、朽ちた痩躯を相い削ぐ哀れな腐邪に、野宮・縁(永久に七つと数えよう・f06518)は雪白の眉根をきゅ、と寄せて、
「死んだ人間をこんな風にあつかうなんて、ゆるせんな」
「こういうのみちゃうとさ、嫌な感じだね……まぁ俺が言うのも微妙なんだけど」
 彼女に隣した葉月・零(Rien・f01192)は死霊術士として見るに迫るものがあろう。ひたり、ずるりと漸近する惨憺に対し、先ずは縁を守らんと可憐の影を隠すよう踏み出る。
 蓋し死霊術士だからこそ視えるものもある。零は剥き出しの骨や腐乱の進む肌膚に、個体ごとの差を発見して、
「よく見ると年代を感じるような……兎にも角にもこの様子見ると被害者だよねー」
 これだけの規模の修道院で十数年は行われてきただろう惨事から被害者数を推測するに、知れず脅威を嚥下する。
「こうなっちゃったら彼らをなんとか救ってあげたいんだけど、俺に何かできるかな」
「れい、ともに戦うぞ」
 間髪を容れず佳声が背を支える。
 長躯の零が肩越しに紫瞳を落せば、縁は百年と培った霊気を小躯に漂わせて凛冽淋漓――その小気味よい覇気に彼も雄渾を得る。
 なればと彼は魔導杖を構え、
「再び目覚めることがない様に。纏めて相手してあげるよ」
 と、此度生成する【エレメンタル・ファンタジア】は炎の嵐。
 死人を迎え撃つ赫炎が轟、と吹き荒べば、その精彩を佳しとした縁がほつほつと狐火を灯し出す。
「ふむ、れいが炎をはなつなら、合わせるかの。わしもおぬしらを燃やしてくれる」
 瞬刻、妖し蒼の炎を揺らす【フォックスファイア】が敵群に躍り掛る。
 この様な状況下でなければ、いずれの炎が美しく強いかと競ったかもしれぬが、然うも言っては居られず。
 二人の炎は見事調和して、腐邪を灼く景は鮮々妙々、
「無理に起こしてごめんね。今度こそ君たちに穏やかな眠りを」
「わしの蒼い炎で、安らかにねむれ」
 穏かに、安らかに。
 焦熱に照る端整と花顔が、声を揃えて不死者を弔った。
『ォヲ、ヲヲ……嗚嗚……』
『ァアァ亜亜……亜ぁあ……』
 迫る跫音にも狂気が満ちよう、彼等は朽ちた靴底を引き摺り、或いは肉を落して露わになった足趾の骨で床を削りながら、不気味な音を連れて来る。
 ボアネル(f07146)は麗し緋瞳に其の陰惨を映して、
「敬虔なる信徒を徒に殺めるばかりでなく、死して尚も魂を弄ぶか……」
 決して許すことは出来ぬと、亡者の群れの奥に隠れる巨邪を睨める。
 蓋し彼は義憤に身を焦がすより幾許も冷静で、
「だが、先ずはこの哀れな亡者を苦しみから解放せねばなるまい」
 と、繊指に広げるは『スーリヤクローク』――闇と太陽に彩られた外套を混沌の扉に、古き血で繋がれた黒翼の眷属を召喚する。
 鋭牙を誇る蝙蝠の巨翼は群れを成して黒叢の如く、滑空するや其の羽撃きは弓張月と化して亡者を切り裂いた。
『ォォヲヲ嗚嗚ッ』
『餓ァァ唖唖……ッ!』
 須臾に戦線が揺らぐ。
 否、意志なき彼等に戦線など無かったかもしれない。
 だがアルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)の藍の炯眼は、腐邪の群れが衝撃に波打った瞬間を見逃さず、間髪容れず第二波を繰り出した。
「――何にせよ終わったものは消え去るが良い」
 ユーベルコード【虚空】は捕捉し得る全対象へ、時を違えずして攻撃が能う。
 彼は視認する範囲に漂浪する腐邪に斯く囁(つつや)いたろうか、端整なる白皙は蒼白い光に浮き上がり、
「飲まれろ」
 刹那。
 無数の淡青色の魔弾が美し軌跡を描いたのも一瞬、冴弾を腐肉に沈めた亡者は、彼の『原理』――虚空に呑まれていく。
 脅威の命中率が相当数を駆逐するが、彼は敢えて回避できる余地を残す。
 すれば次撃は他の猟兵が意を汲んだ様に預り、アルトリウスの視界を端を須臾に過ったシェオル(f14868)が、絶影の機動で個を屠りに往く。
「私の剣は呪われた業だ。悪いが魂を救ってやることは出来ない」
 だが、終わらせてやることくらいは――。
 静けき泉の如き青瞳は腐邪の悲哀を映した儘、不死の鎖を断ち切るように【百獣の剣技】を繰り出す。
 彼が握る『異端狩りの長剣』、その剣筋は決して優艶に非ず。獰猛で凄惨な古えの剣技は、敵の攻撃手段でもある頭部目掛けて切先を沈め、邪悪なる歯を貫き砕く。
「業を以て業を断つ」
『嗚ヲォ餓ァアア!!』
 四肢を斬り落とした程度では倒れぬだろうという読みは聡く鋭く、先ずは攻撃の手を摘まんとする戦術も妙々。果敢にも近接戦に踏み込んだ悪刃は、間もなく襲い掛かる別の個体に返す刀をくれてやる。
『ォォォオオォ……嗚嗚ォォ……』
『ァァ亜、アア亜亜……ァ……』
 然しこの数、際限はあろうが後尾は終ぞ見えず。
 不死者の群れに救済を与える猟兵は、戦闘力では遥かに勝ろうが、持久力――特に精神には耐え難い苦痛が続こう。
 生気に這い寄る死人は同胞の腐肉を踏み抜いて続々、人たる尊厳を手離した姿は菘(f12350)の胸にも剣を突き刺したろうか。
「うーむ、これは少々しんどいビジュアルであるな……などと妾が言うと思ったか!」
 否。
 断じて否。
 邪神のペルソナを取り戻した凄艶は、丫(ふたまた)の長い舌を妖々見せて哂うと、押し寄せる腐邪を一体一体を指差し、自律制禦式航空撮影機『天地通眼』のズームレンズに映させる。
「お主らを十把一絡げのモブゾンビとして軽く扱うつもりは無い! 出演者として存分に見せ場を作って動画に残し、妾なりに救ってやろう!」
 然う、これが菘の篤実であり、彼女にしか出来ぬ弔い方。
 邪神は豪語するや、あろうことかゾンビものの禁じ手たる単騎突撃を敢行し、
「はーっはっはっは! 際立つ妾を嫉妬するのは理解るが、止めてくれるなよ皆の衆!」
 蓋し其は戦略。
 自ら集団のド真ん中へ吶喊した彼女は、【逆境アサルト】――つまり己が動画映え、映像制作最優先思考の為に敢えて不利な行動を取る事により、身体能力を飛躍的に増強させるに成功する。
「恐れたり、痛みに怯む気は一切無い! さあ無念でも怒りでも、妾にぶつけてみよ!」
 掌を上に、揃えた繊指をくいっと曲げて腐邪を招く菘。
 凄まじい生のエネルギーに引かれた死人が忽ち群り、菘の蛇尾や双翼に噛み付くが、邪神なら耐えられる――幾許かは「もつ」。
『ァァアア偽偽ギギィィ』
『ォォオオヲヲォォ……』
 生気に対する腐邪の貪欲は、生前、我が身惜しさに他者の命を引き渡した業が重なろうか――然しリーヴァルディ(f01841)は彼等を衆愚と蔑みはしない。
(「……ん。確かに彼らは罪を犯したかもしれないけれど、それが自身の意志に寄る物で無いのが明白な以上、私は貴方達が悪であると断じるつもりは無い」)
 裁きを受けるべき者は別に居る。
 彼女は【見えざる鏡像】(インビジブル・ミラー)にて自身と自身の装備を透明化し、敵の追跡を避けながら戦場を往くが、件のユーベルコードで消せぬ跫音の対策も抜かりない。
(「……戦闘中は“忍び足の呪詛”を維持……」)
 此度【常夜の鍵】(ブラッドゲート)より取り出した防具は存在感を消す呪詛を掛けた儘、敵の視線を逃れ、また行動を見切りながら、凶邪の波を颯爽と縫う。
 手にしたグリムリーパーは過去を刻み、未来を閉ざす為に――音もなく腐肉を屠った。

 修道院に突入して四半刻。
 今なお廊下は饐えた腐臭に満ち、不死者は犇めき合って進路を塞ぐが、猟兵は果敢に奥部を目指していた。
「修道院にて死体が蠢くとは、神聖も何もあったものではないな」
 戦場と変わらぬ、と嘆息を添えたシェオルの言は皮肉でなく事実。
 彼は『異端狩りの篭手』に腐邪の噛み付きを受け止め、そのまま壁に叩き付けて歯牙を折ってやるが、この時激痛に染む魔呪に柳眉を顰める。
 蓋し退きはしない。
 創痍と痛痒に僅かにも下がれば、数に押し込まれる可能性もある。己が経験に則ったシェオルは、血と腐肉に滑る床を踏み締め、留まり、
「しかし、これが信仰の末の末路だとしたら、なんとも報われない話だ」
 と、更なる一体を足元に沈めて言ちた。
 扨て彼とは別なる通路であったが、同じく腐邪の噛み付きを敢えて受け止めていた菘は、【逆境アサルト】に自力を底上げしたとはいえ、無数の噛み跡を付けられてはゾンビ化も近い。
「……あー、出来れば早めに援護をよろしく! 妾までゾンビになったら世界がとんでもないことになるから!」
 ちょっと腐ってきたかな、という時に冴撃を差し入れたのはリーヴァルディ。
「……貴方達の罪は死と共に赦されるべきもの。死の尊厳までも冒涜される謂れはない」
『、ォォヲ嗚嗚!!』
 月弧を描く大鎌の衝撃波が腐邪の胴に食い込み、蹴散らす。
 麗し紫瞳の少女は怪力任せに『過去を刻むもの』にて薙ぎ払うと、敵の裂傷から生命力を吸収し、動かなくなった亡骸は【常夜の鍵】を刻んだ大鎌に回収する。
 決して深入りせぬ彼女は、別なる個体が迫るより先に退避するが、回収した亡骸には聢と佳声を置いて、
「眠りなさい、安らかに……」
 穏かな声音が、死者の魂を労った。
「数による圧殺が主体なら、囲まれぬよう、狙いを定めさせず――」
 修道女たるオリヴィアは、修道院の大体の構造を知るが故に俊敏に、また壁や床、天井に至るまで、天地を問わぬ機動で敵性を撹乱しながら、戦場を光と翔る。
「焼き清める――!」
『ァ餓アッ亜亜……!』
 聖槍の鋩は時に大胆に薙ぎ払い、腐邪を轟然と吹き飛ばしたかと思えば、時に精緻な柄捌きで刺突し、内部から猛炎で焼き切る。
 剛柔を兼ね揃えた槍撃は、或いは瞋恚と慈悲を併せ持つ彼女自身だったかもしれない。
 オリヴィアは煉獄の炎に同胞を灼きつつ、佳声を手向けて、
「邪悪は必ず倒します。だから、あなたたちはもう休んでください」
『ヲォヲヲ嗚嗚……ッ――』
 腐邪の消えゆく最期まで聢と見届けた。
 圧倒的に数で勝る敵勢に対し、猟兵らは其の攻略を佳く心得ている。
 アルトリウスも然り、
「物量作戦が物を言う戦いもあるが、今は――」
 己が『原理』を以って万象を繰る異能者は、今も高みの見物を決める首魁そう嗤笑ったろうか。
 彼は速度を重視して攻撃の手を休めず、限りなく凝縮した時の中で全力魔法を高速かつ高頻度で叩き込み、敵に悲鳴を叫ばせる事も許さない。
 波及する全範囲への同時攻撃は然し精緻精確を忘れず、
「巻き込まないようには気をつける」
『ズ嗚嗚ォォヲヲ!!』
『ぎぃ嗚呼アアッ』
 畢竟、反撃の機もアルトリウスによって潰され、比較的近距離で効果を成す腐邪の攻撃は、多くの猟兵を苦しめるに至らなかった。
 噛み付いて仲間を増やす敵に対し、距離を取りながら炎の嵐を繰り出す零も、攻略を見出した賢哲の一人。
「死霊術師である以上、許してくれ、なんていう権利はないんだけど」
 彼の穏かなテノールを隣に狐火を操る縁も凛然と、炎を潜り抜ける個体を薙刀で蹴散らし、猛牙の届く距離を許さない。
「あまり手荒なまねはしたくないが、ゆるせ」
『餓ァアア亜亜ッッッ』
「お前たちをこんな風にしたやつを、ぶっとばさねばならん」
 蓋し「もの」とは扱わぬと、縁が崩れ往く腐邪に言を置けば、間を置かず別なる不死者が迫る。
 可憐の柔肌に魔牙が沈むか――否、
「させない」
 須臾に魔導杖を顎に噛ませ、噛み付きを阻む零。
 縁は己より遥かに年長者だが、舌っ足らずのお転婆を護らんと身を挺せば、縁もおねーさんとして守ってやらんと、零に迫る腐邪を冴刀に薙ぐ。
『嗚ヲ嗚オォォオ!!』
 今や二人は互いに背を任せ、信頼を力に奥部へと進んだ。
 腐邪の群れを【闇夜の眷属】(ブラック・ブレード)に薙ぎ払いながら、撃ち漏らした個体は光剣『コ・イ・ヌール』の伸びる刀身に打ち倒すボアネル。
 瞋恚に翳らぬ光条は清冽にして凛烈、
「彼らは哀れむべき犠牲者ではあるが、その事で私の刃が鈍ることは無い」
 噛み付く攻撃が主となる敵に対し、十分な距離を保って戦う姿勢も頗る剴切。
 彼は玲瓏を流す銀髪の毛先すら腐血に穢されることなく、狂気が渦巻く戦場を颯爽と往き、
「眠れ……お前達の苦しみも怒りも、全て私たちが引き継ぐ」
 蓋し冴撃に滲むは慈悲。
 二度も死に辱められる事となった亡者の悲哀を、優艶のバリトンが慰める。
 彼は「そして」と言を継いで、
「永遠たる神の愛がその魂を導き、安息に憩えるように……私も心から祈ろう」
『ォォヲ……ォ……ヲヲ――』
 虚に窪む眼の淵より一掬の涙を見た後は、そっと伏せる睫に影を落した。
『ヲ、嗚嗚ォォ、ヲヲ……』
『ァ……ァア亜……亜ァ……』
 腐肉が骨より剝れようと、眼球が零れ落ちようとも、貪欲に生者の匂いを手繰る亡者達。
 ひかるは伸び出る怪腕を拒む傍ら、苦しげに声を絞って、
「精霊さん、お願い……このひとたちを、もう休ませてあげて……!」
 少女の友たる火霊は、五つはひかるを護るべく彼女の周辺を漂い、六つは集合と分離を繰り返しながら腐邪を灼き払って進む。
 残る十はというと、床に転輾って尚も這い寄る亡骸を焼いて、自らの力では決して辿り着けぬ安寧を届ける。
『……ォ……嗚嗚、ォ嗚……――』
 死の間際まで耳に届く嗚咽が少女の胸を掻き毟る。
「勝手に火葬して、ごめんなさい。でもこうしないと、ねむれないから……」
 ぐすっ。
 ひかるは白磁の繊手に涙を拭い、目尻を赤くしつつ疾った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
オブリビオンの手にかかった修道士たちか…。彼らの魂に安らぎを与えるためにも、ここで倒します。私たちにはその義務がある。
そしてこのような非道な行いをする者を神に代わり必ずや誅しましょう。

UC【闇炎の抱擁】を発動。彼らが二度と起き上がることの無いよう、我が暗黒の炎で灰に帰します。
敵の攻撃を【武器受け】や【激痛耐性】で耐えながら一体一体攻撃し燃やしていきます。
非常に心苦しいですがこうなることも【覚悟】の上。迷いなく実行しなくてはなりません。
彼らの魂に平穏のあらんことを。


夏目・晴夜
それ以上堕ちてしまわれる前に、その操り糸を断ち切らせて頂きます

「妖剣解放」での高速移動を活かして敵の初撃を極力交わし、
衝撃波を放って敵を一気に【なぎ払い】

交わしきれずに一度噛まれて群がられても、それはそれで御の字です
この手の届く至近距離に自ら近づいてきてくださるわけですからね
今この瞬間も命を冒涜され続けている死者たちが救われるよう、
ひと思いに【串刺し】に

私自身は神に興味はないですが、
神や何かを信仰する人の気持ちを否定する気はありません
その信仰心を利用して人を蒐集し、死して尚その命を弄ぶとは下劣な
醜悪で、ただただ不潔極まりない行為ですね

全ての原因となった存在には必ずや大きな報いを受けさせましょう


蘭・七結
まるで悲劇の物語、ね
神さまを驕る偽物の悪意に奪われた、儚い命たち
死してなお、自由を許されないあなたたち
ナユは神さまの使いにも、〝カミサマ〟にもなれないけれど
堕ちてしまったあなたたちに、手を伸ばすことはできるわ
纏わりついた糸を、断ち切りましょう

死体たちを誘うようにおびき寄せ
向けられた攻撃は、舞い踊るように見切り
果てた身体も、冒涜され続けるココロも
全て融かして。ひとつに結びなおしましょう
〝満つる暗澹〟
甘い猛毒の海に抱かれて、おやすみなさい
これは泡沫の夢。偽りの夢想譚
既に死したあなたたちを、救うことは出来ないわ
それでも。せめて、最期だけは
あなたたちが抱く夢が、幸せでありますように

✼アドリブ歓迎です。


ムルヘルベル・アーキロギア
ぬう、やりおったなオブリビオンめ……!
従わされていた者たちの判断を愚かとは謗るまい
そもそもそんな余裕はない、まずは亡者どもを片付けねばな!

どうやら連中は、数で圧し潰す単純な戦術を取るようだ
閉所では下手に範囲攻撃で薙ぎ払うというわけにもゆかぬ
となれば、ワガハイはできるだけ後衛に徹し、〈視力〉を用いて敵味方の位置取りを把握・分析しよう
もしも噛みつきや追撃を受けそうな者が居れば、そこに〈高速詠唱〉で割り込む
「その呪詛、もはや見切った!」
同じ呪詛といっても、死霊術と禁書ではまったく別物だ
だがそこを応用で突破してこそ、賢者の面目躍如である
ワガハイ自身の防御は……うむ、仲間に託そう!
て、適材適所である!


鹿忍・由紀
侵入に気付かれちゃったね。これだけの人数が動けば当然か。
ああ、出来立ての死体も混ざってるんだ。
お勤めご苦労様、神様に仕えるのも大変そうだね。

【SPD】
そんな動きでついてこれるかな。
ユーベルコード絶影を使用。
噛まれたくないから、こっちが早く動けば良いよね。
敏捷性を強化しつつ「見切り」、「残像」、「逃げ足」で斬撃を与えながら攻撃をくらわないよう撹乱するように駆ける。
どこに群れてるの。俺はこっちだよ。

さて、ここにあるのはただの死体でしかないけど、素材として集められた人達は何に使われたんだろうね。
興味もないけど、変なものはあんまり見たくないな。


シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎

移動中に変装を解く

私を担いだ方々
声と手が震えていました

怖かったのだと思います
院長も自分達の行いにも…

私は修道士の方々を非難できませんが
悪夢を終らせる為に戦う事はできます

【鈴蘭の嵐】を顎か歯を狙って
<スナイパー、誘導弾、援護射撃、2回攻撃、鎧無視攻撃>で撃つ

噛み付くなら顎か歯を粉砕すれば
食べられなくなります!

敵の攻撃は

<勇気と覚悟>
を決め、聖銃を口に突き込んで
<武器受けしオーラ防御と激痛耐性>で耐え

<捨て身の一撃による零距離射撃でカウンター>
ごめんなさい…もう助けられないの

倒した死体が再び動き出さないよう<祈り>を捧げる

癒し手が足りなければ【生まれながらの光】で味方を回復


六波・サリカ
思っていた以上にうじゃうじゃと出てきますね。
この死体がどうやって作られたのか、火を見るよりも明らかですが今は栓無き事。
悪に堕ちたのならば駆逐するのみです。

数が多いですが、しっかりトドメを刺さないと
いつまた蘇るやもしれません。厄介な能力ですね。
敵の噛みつきは機械の右腕である侵攻式を盾形状に変形させて防ぎます。
「鉄の味は如何ですか。ではこちらも反撃です。ライフ・アブソーバー!急急如律令!!」
盾を振り回して隙を突いたら侵攻式を機械竜の頭部に変形させ、その顎で敵を噛み砕きます。
仲間を増やされないよう念入りに。
その命の残滓までも奪い取ってみせましょう。

こちらは片付きましたね、では他の方の援護に回ります。


ヨハン・グレイン
死の冒涜、か。
死体など、何も残っていない。ただの朽ちた肉に過ぎない。
……そう思えたら幾分か気持ちも楽ですかね。

――ああ、でも。
幾つか浮かぶ顔。それがこの様に弄ばれるなら、
冷静ではいられまい。

あなた方にもそういう……親しい者がいたのでしょうけれど。
今ここにいる訳ではない。だから、
その身、刻ませていただきます。

最期を与える。その覚悟で。

【蠢闇黒】から這わせた闇で絡めとり、飲み込み、沈める。
常に距離を取り、懐には入られぬよう。目立たないよう闇に紛れよう。
近付くものには【蠢く混沌】を、視線のみで刻んで。

――……安らかにおやすみ。



「ぬう、やりおったなオブリビオンめ……!」
 襟巻に埋もれていた鼻梁を暴き、ムルヘルベル(f09868)が言を弾く。
 修道院中の修道士を傀儡にしたエルシークに対し、惨憺に触れた薄桜の唇は幾らでも悪たれようが、蓋し彼をクレバーに留めるは皮肉にも眼前の腐邪。
 少年賢者は、死して尚も操られる咎人の行進を紫瞳に射て、
「――従わされていた者達の判断を愚かとは謗るまい。抑もそんな余裕もなかろう」
 と、先ずは『閉架書庫目録』を繊指に捲り、万巻の禁書より圧巻を取り出す。
 その傍ら、金縁のモノクルは櫛比して迫る敵群を具に解析し、
「敵は数で圧し潰す単純な戦術を取ったようだ。閉所では下手に範囲攻撃で薙ぎ払うわけにも往かぬし、ワガハイは後衛にて敵味方の位置取りを把握・分析しよう」
 今こそ俯瞰的視野が必要と、鳥の目を引き受ける。
「侵入に気付かれちゃったね。これだけの人数が動けば当然か」
 首魁の喉元に諸刃の短剣を突き付ける迄は、或いは首を掻き切る瞬間まで気配を隠す気で居たろうか、シーフたる由紀(f05760)には其も叶ったろう。
 月光の黄金を映した前髪より天藍の瞳を覗かせた彼は、腐乱が間もない死人を視て、
「ああ、出来立ての死体も混ざってるんだ。お勤めご苦労様、神様に仕えるのも大変そうだね」
 飄然にして枯淡。
 己が感情を白皙には浮かばせず、気怠げな空気をその儘、身を暗澹に溶かしていく。
 彼は歯を剥いて迫る腐邪に静かな嘆息を挟んで、
「噛まれたくないから、こっちが早く動けば良いよね」
 と、【絶影】(ディスアピアランス)――元の俊敏に魔力を乗算して更なる加速を得つつ、我が影を殺して疾る。
 残像の代わりに置く斬撃は音もなく、
「そんな動きでついてこれるかな」
『……ォ……嗚嗚ォ……』
 腐邪が膝折って倒れ込む時には――もう居ない。
 斯くして由紀が撹乱を図れば、俄に波立つ腐邪の群れに正対したセシリア(f11836)が、暗黒の炎を纏わせた『暗黒剣ダークスレイヤー』を振り被る。
「オブリビオンの手にかかった修道士たち……彼らの魂に安らぎを与える為にも、ここで倒します」
 私たちにはその義務がある、と迸るは【闇炎の抱擁】(ダークエンブレイス)――彼女の力の根源たる『暗黒』は、邪を屠る炎と号(さか)び、腐れる肉も朽ち往く骨も悉く灼いて灰に帰す。
『嗚嗚ヲヲォォオ!!』
『亜亜ァアア……ッッ』
 醜悪な絶叫が耳を劈くが、僅かにも躊躇えば彼等は何度も起き上がり、傀儡の糸に引かれて彷徨う――漆黒の鎧に護られるセシリアの胸にもチリと呵責が疾るが、彼女の覚悟は決して剣筋を鈍らせない。
「このような非道な行う者を神に代わり必ずや誅しましょう」
 今こそ正しき闇の力を以て、弱き者を護る剣となる時。
 銀髪の凄艶は身の丈に迫る大剣を手に、更に一閃、闇炎を迸らせた。
『ォ、ォオオォ……嗚ォォ……』
『ァァ亜、亜アァ……ァ……』
 旅の巡礼者に扮し、懺悔室で勾引かされたシホ(f03442)は、己を運んだ修道士と同じ姿をした腐邪の彷徨をどう映したろう。
 佳声は静かに囁(つつや)いて、
「私を担いだ方々、声と手が震えていました。――怖かったのだと思います」
 悪と知りつつ長に従い、罪と知りつつ働いた己をどれだけ苛んだか。
 変装を解き、元のゴスロリドレスに身を包んだ聖者は、白磁の繊手に二丁の聖銃『ピア』と『トリップ』を握って、【鈴蘭の嵐】を――弾丸を鈴蘭の花弁と変えて斉射する。
「私は修道士の方々を非難できませんが、悪夢を終らせる為に戦う事はできます」
 銃身や銃把に十字架を遇った白と黒の銃。
 半径24mの射程内に捉えた全ての敵性を撃つ精弾は、悉く下顎を狙って――、
「顎か歯を粉砕すれば食べられなくなります!」
『……ッ……ァ!』
『ッッ……餓、ァ!』
 然れば悲鳴も鋭くは挙げられまい。
 冴弾の衝撃に大きく仰け反った腐邪らは、攻撃の主体となる歯を失い、生気を求めて漂浪するだけの人形と成る。
 その彷徨える傀儡を解放するは、人形遣いの晴夜(f00145)。
 ハレルヤなる名を与りながら、頼る宗教のない晴夜だが、神に奉じ信仰に縋る人の心を否定する気は無い。
 故に彼は礼を失せず、
「それ以上堕ちてしまわれる前に、その操り糸を断ち切らせて頂きます」
 麗し紫瞳に暁を想わせる黄金色が挿し、アメトリンの如く煌いたのはこの時。
 無鞘の妖刀『悪食』の霊気を身に映し、俊敏を得た晴夜は、続々と迫る腐邪を躱しつつ、斬撃を弓型の衝撃波と変えて薙ぎ払う。
『嗚嗚ヲ嗚嗚オオ!』
『ググ苦グゥ――!』
 腐肉が飛び散る凄惨は甚だしく、醜怪な濁声が耳を劈き、饐えた腐臭が鼻を衝くが、晴夜が端整を顰めるのは彼等にでは無い。
「信仰心を利用して人を蒐集し、死して尚その命を弄ぶとは下劣な。醜悪で、唯ただ不潔極まりない行為ですね」
 犀利な双眸は、眼球を失した腐邪の洞に巨邪を視て、
「全ての原因となった存在には、必ずや大きな報いを受けさせましょう」
 と、声色を落した。
「……死の冒涜、か」
 死体など、何も残っていない。ただの朽ちた肉に過ぎない。
 そう思えたなら幾分か楽だったろうと、ヨハン(f05367)は足元で朽ち往く肉塊に独り言つ。
 彼は彼方と此方を硝子の疆界に隔てながら、裡にある藍瞳は幾分にも寄り添って、
「――ああ、でも」
 瞳の奥に幾つか浮かぶ顔。
 それがこの様に弄ばれるなら、冷静ではいられまいと――瞼を縁取る艶黒の睫を持ち上げる。
 静かなる玲瓏は、眼前に迫る腐邪の群れを聢と見つめて、
「あなた方にもそういう……親しい者がいたのでしょうけれど。今ここにいる訳ではない。だから――その身、刻ませていただきます」
 と、銀環の先に光る『蠢闇黒』より、蠢く闇を解き放つ。
『嗚嗚ォォオオ……』
『嗚呼アァァ亜亜……』
 畢竟、闇は闇に過ぎぬ。
 然し彼が包む此度の闇は、魂を夜の帳に休ませる安らかなものとは――腐邪の声が示していた。
『……ォ……ォォ、オ……』
『嗚嗚ヲヲォォヲヲオ』
 理性を失い、人性を奪われた傀儡の群れは尚も歩く、歩く。
 彼等の嘆きと歯軋りを聴いた七結(f00421)は、美し花唇に、ほろ、と嘆声を零して、
「まるで悲劇の物語、ね」
 信仰の翼下に隠れる邪に奪われた命は儚く虚く、死してなお自由を許されぬ――と、白牙の『彼岸』と白刃の『此岸』、二振りの『残華』を揃えたのは、彼等の物語に終止符を打つ為であったか分らない。
 蓋し艶姿は楚々と惨憺に向かって、
「ナユは神さまの使いにも、〝カミサマ〟にもなれないけれど。堕ちてしまったあなたたちに、手を伸ばすことはできるわ」
 舞う様に、踊る様に。
 翻る袖より馨る香気は腐邪を誘いつつ、伸び出る怪腕を巧みに擦り抜け。双刀は光もさやかに、彼等を鎖する呪詛を妙々断ち切った。
『……嗚ォ……嗚ォォ、オ……』
 蓋し腐邪は目に見えるだけが数に非ず、厨房や書庫から続々と這い出てくる。
「思っていた以上にうじゃうじゃと出てきますね」
 と、怜悧の視線を注ぐはサリカ(f01259)。
 彼女の視覚『照覧式』は多数の敵性を確認すると同時、腐乱によってしか損耗していない躯体を分析する。
「この死体がどうやって作られたのか、火を見るよりも明らかですが――今は栓無き事。悪に堕ちたのならば、駆逐するのみです」
 憐憫や義憤には絆されず。
 事実に則って行動するサリカは、機械の右腕『侵攻式』に雷光を迸らせるや、花顔を白ませて暗澹を往く。
 青い稲妻はジグザグと廊下を疾り、
『ォォォォォ……』
『戯戯……戯戯ィ……』
 凄まじいエネルギーの溢流に腐邪が挙って歯を剥けば、サリカは其の右腕を守盾と変じて顎に噛ませる。
「鉄の味は如何ですか」
『イィ、餓ァァ!!』
 攻撃主体を封じられた死人は、吹っ飛ばされて腐肉に埋もれた。

 畢竟。
 エルシークなるオブリビオンの死霊術によって蘇った修道士らを敵と視るか被害者と視るか。
 其によって猟兵の戦い方は幾分にも変わったろうが、腐邪の一体一体を闇炎に灼くセシリアは、限りなく慈悲を与えた一人だったろう。
「彼らの魂に平穏のあらんことを」
 巨悪を骸の海に還す【闇炎の抱擁】は、此度は煉獄の炎の魂を清めるが如く。
 彼女は犀利な銀瞳に、一人、また一人と死を見届ける。
『ォォオオォォ……!』
 然しセシリアに群がる数はそれ以上。
 呪詛に鎖がれた腐邪は、彼女の生気を求めて押し寄せ、美しい四肢に歯を立てんと迫る。
『嗚ヲヲォ嗚ォォオオ!!』
「その呪詛、もはや見切った!」
 須臾。
 ムルヘルベルの高速詠唱が割り込み、歯を剥く腐邪を禁呪に灼く。
『ゲェア嗚呼ッ!』
 醜悪な悲鳴に一瞬、虹光を翳らせた宝石賢者は、尚も止まぬ絶叫に声を差し入れ、
「同じ呪詛とはいえ、死霊術と禁書では全く別物。だが其処を応用で突破してこそ、賢者の面目躍如である」
 きりり、遊色を戻せば瀟灑なものの、押し合って迫る新たな腐邪の塊は、他の猟兵にお任せするあたり、ヘタるのが早い。
「て、適材適所である!」
 言い得て妙。
 斯くして伸び出る腐腕の鬱蒼を逃れるムルヘルベルの代わり、シホは勇気と覚悟を以て肉薄し、聖銃を腐唇の口腔に突き込んで引鉄を弾く。
「ごめんなさい……もう助けられないの」
『カ……ッ亜ァ――』
 乾いた音が腐邪の舌から延髄を通り抜け、ずるり、朽躯が沈む。
 操り糸を切る間際、傀儡はシホの繊腕に強く爪立てるが、シホは痛みに耐えつつ、彼の為に祈りきる。
 蓋し癒すことが叶えばどんなにか――噛んだ花脣に血が滲んだ。
「、っ」
 腐肉の波を分ける晴夜も全くの無傷では抜けられず、時に貪欲なる顎に阻まれるが、麗顔は痛撃に歪む処か微笑すら湛える。
「この手の届く距離に自ら来てくださるなら、それはそれで御の字です」
 至近距離でこそ叶うものもあろう。
 彼は繊腕を差し出す代わり、妖刀の切先に一人、二人と串刺して、
「今この瞬間も命を冒涜され続けている死者たちが救われるよう、ひと思いに」
『ゲェ嗚呼アア!』
『牙ァァッッ!!』
 冒瀆を、涜聖を、貫き砕いた。
「果てた身体も、冒涜され続けるココロも。全て融かして。ひとつに結びなおしましょう」
 七結が彼等に与える救済は、酷く甘く、酷く優しい。
 雪膚の繊指に遊ぶ香水瓶は、融解を齎す猛毒入り――淑華は今こそ毒華と花ひらき、【満つる暗澹】(デア・フィクス)なる甘き猛毒の海に、腐邪を抱擁する。
『ォ、ヲォォ……』
『亜ァァ亜、アア……』
 其は泡沫の夢。偽りの夢想譚。
 腐邪は溶けゆく命の疆界で、僅かにも人性を取り戻したかもしれぬ。
「既に死したあなたたちを、救うことは出来ないわ。それでも。せめて、最期だけは――」
 あなたたちが抱く夢が、幸せでありますように――。
 腐邪は今際に優婉なる佳声を聴いて、安らかなる眠りに「永遠」を得た。
「最期を与える。その覚悟で」
 黒を纏うヨハンは、元より闇に紛れ身を隠している。
 馴染む距離に繊躯を置きながら暗澹と対峙した彼は、【蠢く混沌】(ケイオティック・ダークネス)――視線を向けた対象に、その影から出現させた黒闇を以て魂を還す。
 多くを語らずとも、闇が彼の意志を代わろう。
 腐邪を包み、悉く嚥下した闇黒は軈て沈黙を連れ、
「――……安らかにおやすみ」
 ヨハンの穏かなテノールを廊下に染ませた。
『嗚ォォ……嗚嗚ォォヲヲ……』
「どこに群れてるの。俺はこっちだよ」
 時に。
 敏捷性を強化しつつ腐邪の群れに刃撃を疾走らせていた由紀は、限りなく凝縮された時の中で、敵性の観察と内部の状況を確認する。
(「――さて、ここにあるのはただの死体でしかないけど、素材として集められた人達は何に使われたんだろうね」)
 突入より四半刻。
 建屋の構造も見えてきた処で未だ修道服しか見ないとなれば、自ずと懸念が過る。
 何せ収容所や檻の類も見かけないのだ。行方不明者は既に「使われた」可能性が高く――、
(「興味もないけど、変なものはあんまり見たくないな」)
 奥部に進むほど億劫になる。
 由紀の本能的な直感は、軈て否応にも的中する事となった。
「しっかりトドメを刺さないと、いつまた蘇るやもしれません」
 全く以て厄介な能力だと、幾分にも警戒して疾駆するサリカ。
 進路を塞ぐ腐邪に対し、『侵攻式』を盾と変形して対抗した彼女は、今度は衝撃に隙を突く間に機械竜の頭部へと形態を変えて、
「反撃します。――ライフ・アブソーバー! 急急如律令!!」
 ユーベルコード【咬砕牙】(ライフ・アブソーバー)は、腐邪の顎に勝る強靭を以て彼等を噛み砕き、念入りに咀嚼しつつ、その生命力を吸収していく。
「その命の残滓までも奪い取ってみせましょう」
『ォ、ォ……ォ……ッ』
 仲間を増やされなければ、今の数を減らすのみ。
 サリカは他の猟兵の援護にも回りながら、軈て修道院内の全ての腐邪を駆逐し、
「――片付きましたね。残る敵は……この先に」
 と、石造りの螺旋階段を繊指に示す。
 これを駆け上がれば、先に回廊を眺め見た修道院長の執務室がある。
「――行こう」
「ええ、参りましょう」
 凛然たる首肯を揃えた猟兵は、深く呼吸をひとつして、爪先を弾いた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『往生集め『エルシーク』』

POW   :    賢者の双腕
見えない【魔力で作られた一対の腕】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    蒐集の成果
自身が装備する【英雄の使っていた剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    幽暗の虫螻
【虫型使い魔】の霊を召喚する。これは【強靭な顎】や【猛毒の針】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルディー・ポラリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 死霊術の術士たれば、我が傀儡が全て滅されたとは間もなく理解る。
 腐邪に呪詛を掛けた主、往生集め『エルシーク』は、彼等を操っていた不可視の糸がふつりと切れ、魔爪が軽くなる感覚に「ふむ」と嘆声を零す。
 彼は徐に振り返って、
「修道院の兄弟達は全てやられてしまった様だが……ここは惜しむべきか、詫びるべきか」
 己の他には誰も居ぬ筈の執務室で、或る一点に視線を注いで語尾を持ち上げる。
「如何だと思うかね、……先代の修道院長」
 言えば須臾、空間がモザイク状に揺れる。
 形は視えぬか――いや、注視すれば其処から「腕」が出て来たとは、異能の力を得る者なら判明ろう。
 エルシークは一対の腕に語り掛ける傍ら、魔力を注いで、
「蒐集家として損失は惜しい。また君に代わって長となった身としては、君の『もの』を多く失った事を詫びるべきか……ああ、それか君に裁いてもらうのが佳い」
 と言う間に、痩せた老人の腕は次第に大きく強靭に、何より禍々しい形状に変えられる。
 其を【賢者の双腕】と従えた後は、己が蒐集品を更に召喚し、今度は巡礼の騎士より頂戴した剣を三十三――己が周辺に漂わせる。
「凡そ蒐集家とは自らの嗜好を見せたがるもの。私も例に漏れない」
 最後にモザイク状の空間より這い出た【幽暗の虫螻】は、見る――いや、仰ぎ見る者を脅威と恐怖に圧し潰したに違いない。
 見上げる程の巨蟲は、これまでエルシークが人々を拐かして蒐集した「素材」を継ぎ合わせたもので、村娘の美しい髪や、靴屋の主人の髭など、甲殻の躯に毛を遇うあたりが彼の趣味なのだろう。
「蒐集品を見せる事は余程ない。なれば猟兵よ篤と視よ」
 エルシークは両手を広げ、階下より迫る跫音を迎えた。
アルトリウス・セレスタイト
悪魔であれば多勢を誹りもすまい
先程は自分でやったのだしな

臘月で分体を出して交戦
戦闘は分体に任せ自身は相手の反応や攻撃内容から情報収集し目標設定や行動指針を見切ることに専念
理解したら適宜味方に伝えていく

分体はそれぞれ五体程度が魔眼・封絶と魔眼・停滞で目標を阻害
残る個体は破天で爆撃
高速詠唱・全力魔法・2回攻撃・範囲攻撃・鎧無視攻撃など駆使して絶え間なく撃ち続け、攻撃の密度と速度で回避や攻撃の機を奪う面制圧飽和攻撃
攻撃の物量で全て圧殺する

味方の猟兵に当てない程度には狙いを絞る

分体が消されていくなら自身が適当なところで再召喚


ボアネル・ゼブダイ
「貴様が首謀者か
人々の信仰を弄び、敬虔な魂をも食い荒らすその所業は断じて許さん」

彼方からの来訪者を発動
四本の剣で幽暗の虫螻を攻撃しつつ、口から吐き出す怪光線でエルシークも攻撃する
自分も黒剣グルーラングで2回攻撃や生命力吸収でエルシークを攻撃
召喚した戦士の霊と連携を取りつつ確実にダメージを与えていく

「祈りとは今を生きる人々の希望であり、この世界の暗雲を払う小さな灯火だ
その灯火を消すというのならば、貴様には一切の容赦はしない」

他の猟兵がいれば積極的に連携を取り、場合によっては後衛に下がって回復などで仲間を支援する

「貴様に弄ばれた哀れな魂達の痛みをその身に刻め
そして、欠片も残さず朽ち果てるがいい」


オリヴィア・ローゼンタール
死を玩弄する邪悪よ、貴様を狩る者が現れたぞ!

【属性攻撃】【破魔】で槍に聖なる炎を纏う
異形の怪物……我が炎にて焼き払う!

飛び交う剣を強化された【視力】で【見切り】、【槍で受け】流す
ガントレットで殴り飛ばし、グリーブで蹴り飛ばし、味方を【かばう】
いかな名剣名刀であろうと、その真価を発揮するのは使い手あってこそ
剣戟の音色は、まるで持ち主の仇を討ってくれと嘆く声のよう

巨大な蟲の姿に怯む(虫が苦手)も、その正体は怒りの炉心を臨界させる
【全力魔法】で【紅炎灼滅砲】を放つ
む、虫――いえ、違う。亡骸の継ぎ接ぎ……
外道め、魂の一片たりとも残さない――!


シェオル・ウォーカー
【POW】
私も死に近しい自負はあるが、それを集める趣味はない。
もっとも、他から理解を求める手合いでもないか。
蒐集家なら手を貸そう。自らの終わりを飾って逝け。

見た所、練達の死霊術士だ。前衛の私は相手の土俵で勝負をするしかない。
他の猟兵達との連携を前提としよう。
【悪刃の掟】を解放し、【幽暗の虫螻】の相手を受け持つ。
これが傑作かどうかは知らないが、私もこの巨蟲も等しく怪物だ。
顎と毒針は『武器受け』『激痛耐性』で受けるが、猛毒の針は『ダッシュ』も駆使して被弾そのものを避ける。
斬撃に『怪力』をのせ、その体躯を断ち切らせてもらおう。

エルシークは狙いたいが、ここは他の猟兵を信じよう。
※連携・アドリブ歓迎。


セシリア・サヴェージ
なんと醜いのだ。その姿も、心も。

実際視えない攻撃というのは厄介ですが【第六感】で存在を捉えることさえできれば暗黒の【オーラ防御】で防ぐこともできましょう。
防ぎきったらすかさず【ダッシュ】で距離を詰めて暗黒剣で攻撃します。

一番の問題はエルシークを前にして私自分が怒りと憎悪を抑えきれないこと…。
騎士として怒りに任せて剣を振るうのは愚かなことですし、憎しみの感情は暗黒の制御を困難にさせる。
ですが、無辜の人々の命を奪い、蒐集品と呼ぶ奴を許すことなどできない。
【闇の解放】…お前の自己満足のために命を奪われた者たちに許しを請いながら闇に堕ちるがいい。


鹿忍・由紀
思った通り、ほんと良い趣味してるよね。
趣味ってのは人に押し付けると嫌われるもんなんだよ。
一人で完結しといたら良いのに。

遠距離で戦うほうが面倒くさそうな攻撃をしてくるね。
捕まらないように気をつけて、距離をつめて戦おうか。
『影朧』で急接近して「二回攻撃」でダガーでの斬撃。
追従するかたちで影朧の質量を持った残像での攻撃を叩き込む。
至近距離で戦っとけば俺が避けたらエルシークが自分で自分の攻撃をくらうことになるはず。
一応「見切り」「第六感」「野生の勘」で敵の攻撃に気をつけよう。

虫を着飾らせるのが好きならその立派な髭も使ってみるのはどう?
あの髭、切り落としてやろう。

アドリブ、連携ご自由に。


御形・菘
お主の見事な蒐集品にお目にかかる光栄に浴するとは、誇らしいぞ!
あの世には持っていけないらしいから、ここで大盤振る舞いというわけだな!

さて、とはいえ妾は首魁を相手取る気は無いよ
そちらは首を取りたいと息巻く者たちに任せよう

妾が撮れ高に求める相手は、この巨漢よ
持て成すに相応しい、見栄えするビジュアルではないか!
皆の衆の邪魔はさせぬ、此奴は妾に任せるが良い!

はっはっは、だが今のその姿、元の本人たちが望まぬ有り様であろう
妾が邪神のオーラを以て、全て噛み砕き飲み込んでくれよう、徹底的にな!
小細工など要らんしできん! 真正面から何度でもぶつかる!
妾の気魄が、この程度の悪の執着に負ける道理はどこにも無いわ!


リーヴァルディ・カーライル
…ん。貴方達はこのままで良いの?
あんな風に弄ばれて、辱められて…。
このまま英雄達がアイツを退治するのを、
黙って眺めているだけで……良い訳がないよね?

“精霊石の宝石飾り”に魔力を溜めて死の霊…、
犠牲者達と交信を行い誘惑して助力を乞う
改造した防具の忍び足の呪詛を維持して存在感を消し、
気配や殺気を悟らせないようにする

…だったら私が力を貸してあげる。
一緒に死者の尊厳を貶めた報いを与えよう。

敵の行動を暗視と第六感を頼りに見切り、
【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)
死者の呪詛を暴走させる“呪いの闇”をなぎ払い、
敵のUCを暴走させて同士討ちを狙う

…さぁ、報復の刻よ。自らの仇は自らの手で討ちなさい。


野宮・縁
零(f01192)と

ほんにあくしゅみじゃな
自らのために、どれだけの命をむだにしてきたのか

――赦せんな

悔い改めろとは言わぬ
既に手遅れだろうからな
貴様の死を持って、死者への手向けとしよう

零が虫の相手をしてくれるのなら
わしは剣をどうにかしようかの
なに、多少の攻撃は今のわしには効かん
零の、仲間の盾として前に目立つ位に出て陽動
薙刀の衝撃波で剣を全て弾いてくれよう
腕や虫にも炎で注意しつつ場合によっては牽制
可能であれば本体への追撃も

(7歳の姿から17歳の姿へ
巫覡載霊の舞使用時蓄えていた力を解放し姿を変える
平仮名ばかりだった子供の口調ではなく漢字を多用する大人の口調へ
蒼き炎を纏い守るべく前に出る)


葉月・零
縁さんと(f06518)

あぁ、ほんっと趣味悪いと思うだよねー
そのすごく醜悪な趣味のためにどれだけ人たちを犠牲にしたんだろ

欲しいから手に入れた?
子供とおんなじじゃん、それ。
ここまでやらない分子供の方が利口な気もするけど
ほんとに気分悪くなる……

自分も間違えばこうなってしまうのかと思うと
やだなー、っていう感情しか無く思わず自嘲

直接エルシークを殴りにいきたいとこだけど先ずは虫型使い魔を

Lueur d’espoirを使用
毒が残ると厄介だから
使い魔の毒針を断ち切り、炎も用いてトドメを

顎で噛みつかれるのなら、俺の杖と憧れ人の大剣に噛みつかせて封じられればと

縁さんが姿を変えても驚くことなく
危ないようなら援護を


シホ・エーデルワイス
執務室へ突入する前になるべく味方の猟兵をUCで回復

…分かってはいました…
ダークセイヴァーのオブリビオンが人間をどう扱うかなんて…
でも…分かっても許容は絶対できません!

浚った人達からは毛髪を集めたようですが
それ以外の肉体はどうされましたか?
(内心
継ぎ接ぎ合成された村人と戦う事にならないか不安)

UCで味方の回復を優先
回復は任せて下さい

敵の攻撃は
<第六感で察知し、オーラ防御、武器受け、毒耐性、激痛耐性>で防御
また味方が攻撃に集中しやすいよう必要に応じて<かばう>

攻撃の機会があれば<楽器演奏、誘導弾、援護射撃>で【弾葬】
私の新しいUCです
篤とお聴き下さい

戦後
味方の手当てと
亡くなった方々を<祈り>弔う


夏目・晴夜
……悪趣味な
おそらく元は美しかった髪も、きっと立派であっただろう髭も
こうも見るに堪えないものになってしまうだなんて
蒐集家の程度の低さが伺い知れますね

念力で操作されている剣は【第六感】と妖刀での【武器受け】で防ぐか、
あるいは「妖剣解放」での衝撃波を用いて一気に【なぎ払い】ます
悪辣たる輩が英雄の剣を扱うなど身分不相応、恥を知るべきです

【力溜め】しつつ高速移動で敵に一気に接近できるのであれば、
その脳天に【殺気】を込めて妖刀を突き刺し、【傷口をえぐる】
どうぞ、遠慮なく消滅してください
蒐集とは名ばかりの醜悪な殺戮の犠牲になった方々へ詫びるのをお忘れなく


荒谷・ひかる
こんな……こんなことのために、この村のひとたちが……
うぅっ……裁きを受けるのは、あなたのほうなんだよっ!
この場で往生するんだよっ、オブリビオン!

怒りと悲しみに呼応した精霊達が彼女の元に集い【転身・精霊寵姫】発動。
囲い込むように魔法障壁を展開して虫を押しとどめ、炎の精霊と雷の精霊の力で焼き尽くす。
余力があれば魔法障壁は他の味方の守りにも割り振る。

エルシーク本体は闇の精霊の高重力(弱いブラックホール的なイメージ)で捕縛を狙い、光の精霊の力を収束させたレーザーでその頭を撃ち貫く。

戦闘後は、犠牲者の遺品・遺体が残っていれば回収して、地上に戻って弔うよ。
犠牲になったひとたちが、安らかに眠れるように……


蘭・七結
辿り着いたわ、〝カミサマ〟
信仰心に根付いて育ったモノ
その姿。大勢のヒトを屠ってきたようね
人々のココロを利用した罪は重いわ
ナユたちが、あなたに罰をあげる

あなたと、ナユの『かみさま』
どちらの力が強いのでしょうね
嘗てナユが屠った、清廉なる力
どうぞ、その目に焼き付けてちょうだい
首に連ねた指輪に口付けて
願うように、乞うように。その名を呼んで
〝かみさまの言うとおり〟

手にするは黒鍵の断罪刀
一対の腕は慎重に見切りながら、薙ぎ払い
舞い踊るようにフェイントと2回攻撃を重ねて
あなたに〝果て〟という楽園は与えない
あなたの罪。あなたの首。共に奪ってあげる
どうかナユたちの手で、美しく散ってちょうだい

✼アドリブ等歓迎です。


ヨハン・グレイン
はは、随分と悪趣味だな。蒐集家
思わず笑いが零れるほどだ

相容れない嗜好にとやかく言うのも空しいですが、
敢えて言うなら……、虫唾が走る
これ以上その、たのしい蒐集を続けられぬよう、
全て壊してやりましょう

深い呪詛を帯びた闇を喚び、這わせましょう
上に居れば届かないとでも思ったか?
絡め、穿ち、足止めを

距離を保ち近付かれる前に多段攻撃で仕留めましょう
懐に入られる場合には、影より出ずる者を
自身の周囲に近づくものはすべて刺し穿つ
近付かれた場合の対策も考えてある。残念だったな

近距離からの叩き込みなどは出来ませんので、
足止めに心血を注ぎましょう

その最後は誰かに託す

弄ばれた者も、せめてこれで眠れるように


六波・サリカ
ようやくお出ましですか。
見るからに邪悪な姿のオブリビオンですね。
連れている腕や虫も不気味です。
相手にとって不足は無し。
歪んだ魂に鉄槌を。正義を執行します。

【先制攻撃】の技能で相手が攻撃するより先に攻撃を行います。
急襲式こと鴉の群れを敵の顔付近に纏わりつかせ視界を奪ったり
行動を妨害したりします。
その隙をついてプログラムド・ジェノサイドを発動
右腕である侵攻式を巨大爪形状に変形させて幾度も薙ぎ払います。
【範囲攻撃】の技能で広範囲を薙ぎ払い双腕や剣、虫螻にも纏めて攻撃を行います。

執行完了。人を誑かす魑魅魍魎など塵芥となればいい。



「死を玩弄する邪悪よ、貴様を狩る者が現れたぞ!」
 破魔の光、聖なる炎を湛えた儘の槍を手に、オリヴィア(f04296)が疾呼して現る。
 無論、敵の居所に侵入するに彼女は十分に警戒していたろうが、想像を遥かに超える歪な異形、その巨きさに、ぞわり、悪寒が走った。
「む、虫……」
 己が苦手とする虫のあらゆる部位を集めた異様が視界に飛び込む。
 本能が堪らず身構えさせるが、瞠目した金瞳は直ぐにも正体を暴いて、
「――違う、これは……亡骸の継ぎ接ぎ……」
 鱗虫を模すはヒトの腸。節足を成すは人骨。
 そして髪や髭を以て毛虫に見せる――まさに『往生集め』の狂える所業に、燃ゆる心火は全身の血を沸騰させる。
 彼女に続いて執務室に至ったひかる(f07833)とセシリア(f11836)は、立ち籠める悪臭に足を留めて、柳眉を顰めて。
 巨蟲が死人を素材に造られたとは、その腐臭で直ぐにも分かろう、
「こんな……こんなことのために、この村のひとたちが……」
「なんと醜いのだ。――その姿も、心も」
 蒐集の異常性を具現化したなら、斯くも陰惨な姿になるかと、湧き上がる瞋恚と悲憤を波と蹴立てる。
「――っ」
 執務室へ至る迄に皆々の傷を癒して回ったシホ(f03442)は、足元から崩れ落ちる様な眩暈を覚えるが、其は高速治療の代償でなく、眼前の惨憺に対して。
「攫った人達から毛髪を集めていたのは判っていましたが、それ以外の肉体まで……!」
 ダークセイヴァーのオブリビオンが人間をどう扱うか、分かってはいた。
 然し分かっていたとはいえ許容できる筈はなく、この巨蟲に――巨蟲を構成する死した村人達に、銃口を向けられるか――可憐の指先が震える。
「思った通り、ほんと良い趣味してるよね」
 彼女の隣、惨景を予想していた由紀(f05760)は飄々。
 長身の彼は、久方に顎を持ち上げる感覚に「首が疲れそう」と面倒を呟く程度で、彼と同じく平素は見上げる機会に乏しいシェオル(f14868)も、己の影が呑まれる珍しい感覚を淡然と受け取りつつ、蓋し言は聢と拒否を置く。
「私も死に近しい自負はあるが、それを集める趣味はない」
 戦場で数多の狂気に触れた彼は、死が終止符を打つ瞬間を幾度と視たろう。
 然し眼前の邪は、死より始まる趣味を楽しみ、其の為にこれだけの人間の魂を侮辱しているのだから看取できない。
『――気に入ってくれたかね』
 エルシークが猟兵に声を発したのはこの時。
 巨蟲の下では小柄に見えようが、彼は偉丈夫たるボアネル(f07146)の頭一つも抜け出る魁偉で、迸る邪気はそれ以上の脅威を肌に伝える。
「貴様が首謀者か」
『いかにも』
 問えば答える、蓋し不穏に。
 ボアネルは漆黒の皮手袋に覆う右手を劔柄(たかび)に寄せた儘、犀利を増す緋瞳に睨める。
「人々の信仰を弄び、敬虔な魂をも食い荒らすその所業は断じて許さん」
 すればエルシークは、彼の声音や語調に滲むゆかし血統を感じつつ、嗤笑を添えて返し、
『許すも何も。鼠に許可を得て為るものなど無かろうに』
 鼠。
 断わりもなく家屋に浸入し、財産に害を為す――猟兵をその程度としか見ていないと言う。
 然しその鼠から品評を得るとは思ってなかったろう。
 晴夜(f00145)の花脣は真に賢しく荊棘を立て、
「おそらく元は美しかった髪も、きっと立派であっただろう髭も、こうも見るに堪えないものになってしまうだなんて――蒐集家の程度の低さが伺い知れますね」
 審美眼や趣向を見下す――其は相手が蒐集家だからこその侮蔑と挑発。間もなく訪れる沈黙が苛立ちを示す。
 彼と同じく、エルシークの驕慢に泥を塗るはヨハン(f05367)と菘(f12350)。
 白皙の青年が「はは」と乾いた嗤笑に皮肉を込めれば、豪快なる凄艶は「はっはっは!」と血気軒昂を以て暗澹を破る。
 特にヨハンが無藍想の唇に美し弧を描いたのは珍しく、
「随分と悪趣味だな、蒐集家。思わず笑いが零れるほどだ」
 相容れぬ嗜好にとやかく言うのも空しいが、敢えて謂うなら――虫唾が走る。
 閑麗に持ち上げた口角に侮蔑を含んで突き放す彼の隣、菘は大仰に持ち上げてから突き堕とす、言語的パワーボムを繰り出して、
「お主の見事な蒐集品にお目にかかる光栄に浴するとは、誇らしいぞ!」
 おぞましき虫螻を仰いで細んだ金瞳は、次いで主へと視線を移して冴える。
「あの世には持っていけないらしいから、ここで大盤振る舞いというわけだな!」
『――……さがな口も賎陋な』
 声色が変わったのは、高慢がヘシ折られたからだろう。
 エルシークは血色のない指を動かして下僕を操り、
『貴様等は膝折り、跪き、這い蹲って命乞いをさせた上で、蒐集品の一つとして使ってやる』
 と、一斉に攻撃に向かわせる。
 須臾、執務室内の空気がぞわり弥立つが、サリカ(f01259)は至って冷静。
「ようやくお出ましかと思えば、また不気味な腕や蟲を使いに出させるとは」
 此処に至るまでの集団戦で夥しい数の傀儡を打ち倒してきた彼女は、蒐集物を嗾けながら己は一縷と手を下さぬエルシークの根源的な邪悪を見つめ、
「見た目も中身も純粋に醜悪なオブリビオンですね。相手にとって不足は無し」
 会敵劈頭、機先を制して攻勢を得べしと、『急襲式』なる鴉の群れの羽搏きを被せる。
 其が血宴の幕開け。
 絹糸と揺れる艶髪に牡丹一花を冠した七結(f00421)は、殺伐の風に其を揺らしながら、鈴を振る様な声で囀る。
 嫋やかな少女は蓋し恋鬼。
 愛を知らずして恋を謳う花脣は窈窕と囁(つつや)いて、
「あなたと、ナユの『かみさま』――どちらの力が強いのでしょうね」
 首に連ねた指輪に口付け。
 願うように、乞うように。その名を呼んで――〝かみさまの言うとおり〟(デア・ラメント)。
「嘗てナユが屠った、清廉なる力。どうぞ、その目に焼き付けてちょうだい」
 鮮明なる猩々緋の双眸が吸血鬼の血を覚醒を証し、己が血を代償に戦闘能力を飛躍的に上昇させた凄艶が戦場を踊り出す。
 狂気と殺気に突き上がる床を踏み込み、迫る惨憺に堂々正対した縁(f06518)は、舌っ足らずながら老成の言を置いて、
「おおく命をむだにして、まだわしらもつかうとは。ほんにごうよくであくしゅみじゃな」
 ――赦せんな。
 そう佳声が言い終えた時には、【巫覡載霊の舞】により齢十七の凄艶と変じ、百余年と蓄えた神霊の気を滔々、蒼き炎を纏う。
「悔い改めろとは言わぬ。既に手遅れだろうからな」
 幼気なさを手離した言はゆかしく厳かに、
「貴様の死を以て、死者への手向けとしよう」
 と、踏み出るや義気凛然、繊手に握る薙刀を振った。
 彼女に隣した零(f01192)はというと、纏う空気ごと姿を変えた彼女に驚く風もなく、唯、危ない目には遭わせまいと、脅威の主たる首魁を見据える。
 蓋し彼も同じ死霊術士たれば、不意に我が身を重ねて自嘲し、
「自分も間違えばこうなってしまうのかと思うと……やだなー」
 拒む為にもエルシーク自身を殴りに行きたい処、先ずは【Lueur d’espoir】(キボウノトモシビ)を解放し、嘗て憧れた騎士と共に巨蟲の掣肘に掛かった。
 ――時に。
 忍び足の呪詛を維持して存在感を消し、気配や殺気を悟らせぬよう立ち回っていたリーヴァルディ(f01841)は、幾許か優し気な語り口で誰に語り掛けていたろう。
「……ん。貴方達はこのままで良いの? あんな風に弄ばれて、辱められて……このまま英雄達がアイツを退治するのを、黙って眺めているだけで……良い訳がないよね?」
 少女が睫を落とすは、虹色の光を放つ『精霊石の宝石飾り』。
 スピリットシャードを媒介に犠牲者の魂に呼び掛けた彼女は、彼等の嘆きを心に留めると、こくんと頷いて紫瞳を持ち上げる。
 犀利な視線は巨蟲を見詰めて、
「……だったら私が力を貸してあげる。一緒に死者の尊厳を貶めた報いを与えよう」
 唯その時の為に――と、繊躯を戦塵に紛らわせた。

 不可視の双腕、念に操られる数多の剣、そして、蟲型の下僕。
 死霊術にも多彩を以て脅かす首魁に対し、多くの猟兵が連携・共闘したのは至極剴切だったろう。
「私は蟲の相手を受け持つ。刃を増やしてくれるか、他を頼みたい」
 周囲にそう告げ、目配せや首肯にて無言の是を受け取ったシェオルは、刻下、巨蟲の節足が及ぶ前衛に疾る。
 邪足は直ぐにも猛毒の針を撃ち出してくるが、『異端狩りの篭手』に盾と受け、或いは振り払って凌いだ彼は、床に血滴を染ませる裡、異形の黒騎士へと姿を変えていく。
「これが傑作かどうかは知らないが、私もこの巨蟲も等しく怪物だ」
 呪われし魂は命を対価に戦闘力を爆発的に増強させる――それが【悪刃の掟】。
 正に「悪刃」と成ったシェオルは、毒針の雨を絶影の機動で潜り抜けながら、蠢く節足を断ち切る怪力を見せる。
「では私は双腕を預ります」
 先にそう言って進路を分けたセシリアは、切断された節足の宙を躍る様を視界の端に映しつつ、自らはモザイクに揺れる空間に不可視の腕を探り出す。
「視えない攻撃というのは厄介ですが、第六感で存在を捉えることさえできれば、暗黒のオーラで防禦し、反撃の剣を衝き入れることも、或いは……」
 然う。
 賢者の双腕は実体を隠せようとも、必ず痛撃は置いていく。
 彼女は移動から攻撃に転じる双腕の悪しき懐抱を『暗黒』で耐えると同時、その方向を見出して、呪われし魔剣を沈めた。
 向かい来る英雄の剣は、オリヴィアがその剣筋を鋭眼に見切る。
 破邪のルーンを刻んだ聖槍の穂先は、燦光火花を散らして軌道を逸らし、
「いかな名剣名刀であろうと、その真価を発揮するのは使い手あってこそ」
 輝ける穂先と噛み合って響いた剣戟は、まるで主の仇を討ってくれと嘆く声のようで――聖女は我が炎槍の鋩に必ずや怪邪を貫かんと誓う。
『ふむ。窮鼠も猫を噛むだけの事はある』
 これら猟兵の立ち回りに、彼等の力量を図っていたエルシークも驚いたろう。
 唯、彼は己が強さに絶対の自信を持っており、
『然し其等は全て我が呪詛に繋ぎし蒐集物。私を殺さぬ限り幾らでも蘇る』
 徒労を慰めようと嘲笑うが、時に菘はその自惚れを妙々折ってみせる。
「妾はお主と渡り合う気は無い。その首は取りたいと息巻く者たちに任せよう」
 彼女の瞳は黄金色を煌々、【幽暗の虫螻】を射て、
「妾が撮れ高に求める相手は、この巨蟲よ。持て成すに相応しい、見栄えするビジュアルではないか!」
 言うや否や、『天地通眼』は動画主の意向に従ってズーム。
 最高のアングルを得た菘は己が血を滾らせると、【ブラッド・ガイスト】――右腕に宿す邪神のオーラを殺戮捕食態と変じて殺傷力を増す。
「皆の衆の邪魔はさせぬ、此奴は妾に任せるが良い!」
 怪尾を撓らせ、魔翼を羽搏かせ、巨蟲にぶつかりに往く菘。
 彼女が望むなら、晴夜は信頼を置いて往く道の枝を分け、怨念を叫んで飛び交う英雄の剣を紫瞳に射る。
「悪辣たる輩が英雄の剣を扱うなど身分不相応、恥を知るべきです」
 稀代の英雄より太刀を浴びれば、創痍も誉れと与ろうが、呪術に操られる剣を喰らう恥辱は受けず。
 妖剣の使い手たる晴夜は、剣らの栄誉を取り戻すべく『悪食』を解放し、絶影の機動で悪しき剣筋を見切るや、冴刀一閃、斬撃の衝撃波に薙ぎ払い、その邪気を祓う。
 からん、からん、と鋩が床を打つ音に声を差し入るはボアネル。
「祈りとは今を生きる人々の希望であり、この世界の暗雲を払う小さな灯火だ。その灯火を消すというのならば、貴様には一切の容赦はしない」
 父の形見たる『黒剣グルーラング』をフォム・ダッハに構えた彼が傍らに喚ぶは、【彼方からの来訪者】(サモン・プレデター)。
 異界より来れる闘争の戦士は、四臂に握る剣で猛毒の針を打ち落とし、口から吐き出す怪光線でエルシークを攻撃する。
 強靭な顎を迫り出す巨蟲本体には、ボアネルの宝剣が一閃、返す刀に更に一閃、人骨で造られた牙を断つ。
『ギャアア嗚呼ッ!』
「――声帯まで使ったか」
 其の絶叫に勃然と柳眉を顰めるはヨハン。
 彼は裡にて号ぶ瞋恚を怜悧に押し殺し、
「これ以上その、たのしい蒐集を続けられぬよう、全て壊してやりましょう」
 繊指に佇む黒光石より闇を喚び、我が影と常闇に溶けて這わせる。
『嗚ヲヲォォオオ!』
 巨蟲は高みより節足を振り下ろしてくるが、呪詛を帯びた闇は生ける如く脚に絡み、穿ち、激痛を以て足止める。
 なればと強靭なる顎が墜下すれば、絶妙のタイミングで爪弾くは零。
「これで噛み付きを封じられたら……!」
 冀望の灯火――憧れの人を連れ立って疾駆した彼は、己が魔導杖と騎士の大剣を巨蟲の大口に噛ませ、顎が閉じぬよう突き刺す。
『ああ亜亜ァガアッ!』
 激痛に叫びつつ巨躯が毒針を撃ち出すが、間を置かず繰り出る猛炎が針を灼けば、優勢を奪われる事はない。
 零の機智が妙々魔を制すのを見た縁は、小気味よく花脣の端を持ち上げ、
「零が蟲の相手をしてくれるなら、わしは剣をどうにかしようかの」
 と、鋭刃を宙に躍らせる英雄の剣を睨める。
「なに、多少の攻撃は今のわしには効かん」
 神霊体に転じた彼女は、揺れる袖を鋩に破られるも、骨肉に染む攻撃は軽減する。そうして返報に翻る薙刀は、衝撃波を美し弓月と描いて疾る、走る。
「写せ」
 ユーベルコード【臘月】(ロウゲツ)は、アルトリウス(f01410)の風姿を写すだけでなく、装備や技能、ユーベルコードを同一にし、術者に向かう攻撃を自身へ誘引する能力を有す。
 彼は二十六体の同体に指示して、
「五体は【魔眼・封絶】と【魔眼・停滞】で常に目標を阻害し、残る個体は【破天】で絶え間なく爆撃」
 高密度と高速度の攻撃で敵の回避や反撃の機を奪う――圧倒的飽和攻撃で面制圧を図る。
「悪魔であれば多勢を誹りもすまい。先程は自分でやったのだしな」
 先に物量作戦を展開したエルシークに多勢を返すとは皮肉が利いていよう。
 アルトリウスは分体に戦闘を預けると、自身は情報収集と戦闘分析を――目標設定や行動指針を見切ることに専念する。
「探り得た秘鑰も適宜に写す」
 とは、攻略を他の猟兵と共有するということ。
 冴々とした藍瞳に弾かれるよう分体が動き出せば、由紀はその流れに【影朧】(カゲロウ)を忍ばせて。
 時を置き去りにして疾る彼は、流眄の端に常に巨蟲を映しながら、驟雨と振り落つ猛毒の針を潜り抜ける。
「趣味ってのは人に押し付けると嫌われるもんなんだよ」
 一人で完結しといたら良いのに、と言は壁を作りつつ、身は漸近して距離を詰め、遠距離広範囲の攻撃に長けるエルシークの術中を逃れる。
『む……』
 人体が体幹の痒みを末端でしか掻けぬ様に、エルシークも我が腕に脅威は払えぬ。
 禍き死霊術士は彼の接近を巨蟲に阻ませるが、手に握るダガーは向かい来る多毛腕を斬り裂き、質量を持った残像は其に追従して環形脚を削ぎ落す。
『小癪な。我が蒐集品を毀した罪、贖って貰う』
 今こそ裁きの刻――エルシークは司祭が祈る様に両手を広げると、甘い死の馨が室内に満ち、服従の呪詛を強められた「もの」達が更なる強靭を得る。
 ひかるはその異様に瞠目するより、尚も弄ばれる骸の集合に胸を痛めて、
「うぅっ……裁きを受けるのは、あなたのほうなんだよっ!」
 刻下。
 友の怒りと悲しみに呼応した精霊達が燦爛を連れて集い、【転身・精霊寵姫】(エレメンタル・ポゼッション)――ひかるを天翔ける魔法少女に転身させる。
「お願い、精霊さん達。わたしに、力を貸して」
 雄渾たる力に満たされたひかるは、花顔を照らして勇気凜々。巨蟲を魔法障壁に囲い込み、炎の精霊と雷の精霊の力で焼き尽くす――!
『轟ヲヲオオォォ!!』
 あまりの焦熱に悶えた巨蟲は、暴れて囲繞をぶち破る。
 痛撃を叫びながら巨塊が踊り狂えば、少女は今度は魔法障壁を小さく狭め、檻の如く挙措を奪った。
「――ッ」
 今、押し留めているうちに――!
 脣を引き結んで堪える少女の思いは、告げずとも次撃を預る猟兵に伝わったか。サリカは【プログラムド・ジェノサイド】の発動の機を此処に置く。
「照準設定完了。プログラムを実行します」
 動きを止めた巨蟲に対し、金瞳『照覧式』も高命中率を弾き出したろう。
 予め右腕の『侵攻式』に組み上げられた正義執行のプログラムは、機械の腕を巨大爪形状に変形させて幾度と薙ぎ払う。
 少女の肉体と金属の機体――二つの異質を電力と陰陽術で繋ぎ稼働させるサリカは、プログラムが終了を迎えるまで烈々たる爪撃を繰り出す。
『ズゥ嗚ヲヲォォオ!!』
 裂帛の声は、女の悲鳴だったり、男の絶叫だったり。
 七結は愈々鋭敏を増した聴覚に様々な声帯を聞き分けながら、黒鍵の断罪刀を手に舞う。
 その艶姿を追う【賢者の双腕】には折にフェイントを織り交ぜながら、歪めるモザイク状の空間ごと貫き、或いは薙ぎ払う。
 惨憺にあっても佳声は甘美と馨ろう、
「大勢のヒトを屠ってきた罪、人々のココロを利用した罪は重いわ。ナユたちが、あなたに罰をあげる」
 罰とは即ち、極上の斬撃。
 凄艶は未だ殺伐の拭えぬ戦場を妖しく踊った。

「はっはっは! 妾が邪神のオーラを以て、全て噛み砕き飲み込んでくれよう、徹底的にな!」
『ォォオ嗚嗚ヲヲォ――!』
 巨蟲の今の姿が、元の本人の望まぬ有り様とは菘も佳く理解っている。
 だからこそ彼女は激痛を、創痍を受け取り、また彼等に同じものを与えるのだ。
「小細工など要らんしできん! 真正面から何度でもぶつかる!」
 妾の気魄が、この程度の悪の執着に負ける道理はどこにも無い――!
 菘は紅脣を持ち上げそう謂うが、ダメージが大きいのも事実。
「――回復は任せて下さい」
 折に挟まれるシホの【生まれながらの光】は眩く温かく、菘の果敢をよく支えた。
 研ぎ澄まされた知覚で巨蟲の挙措を読み、攻撃を回避、或いはオーラで防禦した彼女は、戦線を維持するに攻勢にも転じ、【弾葬】聖銃二丁で奏でる葬送曲を以て牽制する。
 マシンピストル機能を起動した聖銃は、二丁の銃口を悲哀の獣に揃え、照準を絞り、楽器を奏でる様に連射する。
「魂を救う一曲です。篤とお聴き下さい」
『ぐぅ嗚嗚ヲォォ……!』
 其の何と生々しい――ヒトの声。
 死して尚も声帯を使われる、その悲惨に胸を痛めるのは彼女だけではない。
「無辜の人々の命を奪い、蒐集品と呼ぶ奴を許す事など――」
 セシリアは、怒りに任せて剣を振るうは騎士の軽忽と承知しているし、憎しみの感情は暗黒の制御を困難にさせると重々自戒している。
 然し、然し。
 瞋恚と憎悪を塞き敢う彼女は次第に暗黒の意志を覚醒し、その身を闇の化身と変えてゆく。
 其は【闇の解放】(アンリーシュ)――闇はセシリアの寿命を代償に、彼女の戦闘力を飛躍的に増強させた。
「……お前の自己満足の為に命を奪われた者達に許しを請いながら闇に堕ちるがいい」
 その闇の溢流に合わせるは七結。
 惨憺を躍る猩々緋の双眸は煌々、常にエルシークの挙動を見据え、
「あなたに〝果て〟という楽園は与えない。あなたの罪。あなたの首。共に奪ってあげる」
 どうかナユたちの手で、美しく散ってちょうだい――。
 敵の損耗の程から感情の揺れ動きまで聢と捉えた彼女は、断罪刀を衝き入れる瞬間を極めて犀利に探っている。
「味方に当てない程度には狙いを絞る」
 全力魔法を高速かつ高頻度に重ね掛け、物量で圧殺を図るアルトリウスは、分体が消失すれば適宜に再召喚し、密度を維持している。
 戦闘分析に専念していた彼は、常に目を配っていた他の猟兵に鑑識を伝え、
「他者の骸を使役する死霊術は、自らの躯を動かすより幾分か拙速になる」
 所詮「借り物」なのだ。
 己が血を注ぐ手足なら意識せずとも動かせようが、呪詛に繋いで操る物量だけ反射は遅い、と――。
 之を証したのは由紀。
 青瞳の光を帯と引いて疾駆した彼は、剣の乱舞と毒針の雨を抜けて術者エルシークの懐に至り、
「虫を着飾らせるのが好きならその立派な髭も使ってみるのはどう?」
 フォワードグリップからリバースに握り替え、靭かな手首の返しにエッジを躍らせる。
『――ッ!!』
 エルシークは須臾に警戒したが、剣を呼ぶにも巨蟲を呼ぶにも間に合わず、再召喚が必要な双腕は我が身を護るには遅すぎよう。
 諸刃が光を弾いたのは一瞬であったが、由紀は弾指の間に邪の髭を切り落し、無様を突き付けるよう床に散らせて見せた。
『お、のれ……鼠めらが』
 直ぐにも離れる由紀を【蒐集の成果】が追うが、焦燥の滲む追尾は然しヨハンに手折られる。
「視界が煩くなるのは苦手でして」
 距離を保っていた折に剣が近付いた。それだけだと彼は謂う。
 蓋し自身に近付くもの全て煩う玲瓏は、黒衣『影夜黒』を揺らした瞬刻、【影より出ずる者】(シャドウ・ルーラー)――己が影より無数の黒刃を顕現させ、鋭い鋩を向けて迫る剣を次々に刺し穿つ。
 傀儡の剣は彼の足元で乾いた金属音を立て、暫しの後に静粛を敷いた怜悧が短く言つ。
「――残念だったな」
 と。
『小賢しい者共よ……あまり私を駆り立てるな……!』
 この、エルシークが奥歯に歯軋りを隠した瞬間こそ、リーヴァルディと死者の霊が待ち望んだ瞬間であったろう。
「……さぁ、報復の刻よ。自らの仇は自らの手で討ちなさい」
 今こそ魂を嬲った者に抗う時。
 桜脣が告ぐは【限定解放・血の教義】(リミテッド・ブラッドドグマ)――死者の呪詛を暴走させる“呪いの闇”を、巨蟲目掛けて薙ぎ払った彼女は、予測した通りの光景をそこに視る。
『……ヲヲヲォォオオ嗚嗚!!』
 刻下、エルシークの手中にあった筈の【幽暗の虫螻】が暴れ出す。
 毛髪を逆立て、方向を失った節足は我が腸を引きずり出し、呪詛に繋げられていた素材同士が反発を始めたのだ。
『……如何した、我が死霊術が弱まるなど……』
 不可解だと操り主が下僕を凝視せんとした、その時。
 彼の眼前に忽ち鴉の群れが飛び込み、その視界が漆黒の羽翼に覆われる。
 サリカの『急襲式』だ。
 状況を判断するに視覚情報の多大なる影響を知る彼女は、其を妨害して呪術を弱め、戦局を我等が優勢に奪い始める。
「人を誑かす魑魅魍魎など塵芥となればいい」
 奇しくも其の言は間もなく現実となろう。
 他の猟兵や異界の戦士と連携を密に、着実にダメージを積み重ねたボアネルもまた、エルシークの損耗、即ち敗北が見えたかもしれない。
 彼は「宝石の眼を持つ蛇」の名を持つ黒剣を空に躍らせるやその鋩を牙と突き立て、
「貴様に弄ばれた哀れな魂達の痛みをその身に刻め」
『ッ、ァアア嗚呼……!』
「そして、欠片も残さず朽ち果てるがいい」
 言は厳かに、撃は鋭く。
 エルシークの鎖骨を砕き、深く剣身を沈めた。
『ッッ、……何たる、事……』
 全てのユーベルコードを攻略され、矜持と共に蒐集品を毀されたエルシークに、当初の冷静は無かったろう。
 彼は魁偉をくの字に折り曲げながら屈辱に震え、怒り、
『……これだけの損失、最早貴様らの命によっては贖えぬ』
「損失って」
 遂にエルシークに正対した零は、高慢に由来する盲目を衝いて語尾を持ち上げる。
「なにそれ、そのすごく醜悪な趣味のためにどれだけ人たちを犠牲にしたか考えた?」
『先程から滑稽な事を謂う。許しや思考に依って手を止める事など無い』
「子供とおんなじじゃん、それ。ここまでやらない分、子供の方が利口だよ」
 ほんっと気分悪くなる……と、睨める紫瞳は不快を隠しもせず。
 苛立つ零を宥めるか落ち着かせるか、ここに縁が差し入れた言は、決して相容れぬ相手の懺悔や改心を諦めさせたろう、
「零、子らより愚かな者は死ししても変わらぬ」
 然れば無辜の命を徒爾にした分だけ、報いを受けるが佳いと――振り被る薙刀は、間もなく訪れる終焉の刻を告げた。
 そして、その刹那。
「この場で往生するんだよっ、オブリビオン!」
 ひかるが闇の精霊の力を借りて小さなブラックホールを作る。
 高重力に躯を圧し留められたエルシークは、続く光の精霊が溢れる光を一筋のレーザーと収斂し、我が頭蓋に飛び込むまでを視る。
 動けぬ身は更なる恐怖を見よう。
『ッ――!!』
 この時、オリヴィアが掌に集めた猛炎を灼熱の光条と撃ち出す。
「外道め、魂の一片たりとも残さない――!」
 万象を灰燼と化す破壊の奔流、【紅炎灼滅砲】(プロミネンス・キャノン)――!
 厖大な熱量に膨張した軌跡は美し穹窿を描き、二十七条の光と分れて広がった後は、全てがひとつの的へと熱を集める。
『嗚呼嗚呼アアァァ亜亜ッッッ!!』
 エルシークの命を屠る瞬間を常に狙っていたシェオルが、終焉の刃を突き付けたのはこの時。
「蒐集家なら手を貸そう。自らの終わりを飾って逝け」
 ――醜く、派手に。
 何重にも呪われた青黒い長剣は、エルシークの両手を潜って遂に心臓に沈み、その破裂を血飛沫を以てシェオルに伝える。
『……ッ……ッッオ……!!』
 敗北を告ぐ一撃を拒んで足が後退するも、躯を押し戻す様に背後から刺突を突き付けるは――晴夜。
 神速の脚で背に回り込んだ彼は、頭蓋の裏側を狙って妖刀を突き刺し、その鋩に延髄を抉って死を捧ぐ。
「どうぞ、遠慮なく消滅してください」
『――ッ……嗚嗚ッッ、ッ――』
「蒐集とは名ばかりの、醜悪な殺戮の犠牲になった方々へ詫びるのをお忘れなく」
 くれぐれも、と付け足した言はもう聞こえまい。
 往生集め『エルシーク』は、今際の声も上げること叶わず、一瞬で灰と化した後、狭霧の如く漂って――消えた。

 然し血が流れ過ぎた。
 猟兵ではない、無辜の人々の血と、それから――家族が知れず流した涙も。
 その所為か申し分ない戦術で勝利を手にした猟兵は、エルシークを倒して暫くは殺伐に身を任せていた。
「――皆さんの手当てと、亡くなった方々を祈り、弔う時間を頂けますか」
 シホの提言を取り下げる者は一人として居ない。
 或る者は彼女が手を合わせるに従って沈黙を捧げ、また或る者は炎を焼べて巨蟲と繕われた惨憺の姿から解放してやる。
「遺品かなにか……村にもちかえって弔うことはできないかな……」
 ――犠牲になったひとたちが、安らかに眠れるように。
 きょろきょろと辺りを見渡すひかるの懸命を手伝う者も多く、せめて家に、家族の元に帰してやれる物はないかと、皆々が回収に動き出す。
 戦闘中は凛冽を極めたヨハンの声も、幾許か和らいで死者の魂を慰めたろう。
「弄ばれた者も、これで眠れるでしょうか」
 きっと、必ず――。
 無言の裡に彼に返る是は、強く、逞しく、自分達の帰る足を支える様だった。

 斯くして猟兵達は、辺境の小さな村に誠の静穏を届ける。
 オブリビオンが残した爪痕はあまりに大きかったが、癒える時間は「未来」にこそ在ると――希望の光を置くように、彼等は教会に祈りを捧げて村を去ったという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月11日


挿絵イラスト