闇の救済者戦争⑰〜Broken Gates
「お集まり頂きありがとうございます。並びに今まで無敵を誇った歓喜のデスギガスの『欠落』である『黄金の鎧』の破壊、お疲れ様でした。ようやくデスギガスに挑むことが可能となりました」
手にしている半透明のバインダーに挟まれた資料に目を通しながら、秋月・信子(|魔弾の射手《フリーシューター》・f00732)によるデスギガス討伐のミーティングが開始される。ダークセイヴァーの上層に到達した矢先にデスギガスと刃を交えた猟兵は多く、如何なるユーベルコードさえも跳ね返してしまう絶対的な力に苦杯を喫した。それが今、欠落を破壊したことで、あらゆる攻撃を跳ね返す弾力に富んだ肉体に穴が空いたかなように護られていない『歓喜の門』が弱点であると露呈した。
また、デスギガス同様に|祈りの双子《オブリビオン・フォーミュラ》の手で封印が解かれた究極禁獣『ケルベロス・フェノメノン』の決戦の火蓋も切らており、どちらかの禁獣が何処かに姿を消してしまうという予知がされている。そうである以上、仮にデスギガスが消えてしまう前に一発お礼を入れたいという猟兵も居るのは確かだ。
「デスギガスは開戦当初から自らの支配領域であり『禁獣領域』から移動せず、現在に至るまで腹部に開けられた黒い渦状の『歓喜の門』から第四層と第五層の城塞やオブリビオン軍団……デスギガス災群を大地ごと吐き出し続けています」
そうなれば、戦力が無尽蔵とも言えるデスギガス災群をどうにかしないとデスギガスの元へは辿り着けない。これらを蹴散らしながら全長数百メートルの巨城さながらな|本丸《デスギガス》の元に辿り着けたとしても、例えキャバリアを駆使しようが戦力の消耗は避けることは出来ないのだ。
「ですが、ご安心ください。デスギガスはオブリビオンだけに限らず、第四層にある『|闇の救済者《ダークセイヴァー》たちの砦』も大地ごと削り取って禁獣領域内に召喚しています。彼らは戦力を結集して千人規模の連合軍を結成して新たな砦を築くことで、津波のように押し寄せるデスギガス災群に対抗しています」
信子が端末を手にすると、現地の様子を偵察したドローンが撮影した彼ら勇姿をホログラム投影で浮かび上がらせる。砦は一箇所に留まらず何箇所に分散されて築かれており、各砦の指揮官を任されている闇の救済者が采配を振るうことで絶対的な防衛網が構成させている。これらが相互に連携することで、彼らが砦を構える一帯では禁獣領域外にオブリビオンが突破された様子が今のところ確認されていない。
「そこで現地で|山羊座《カプリコーン》の旗を掲げながら善戦する彼らの協力を仰ぐことができれば、デスギガスから吐き出され続けるオブリビオンの群れである無限災群を消耗せず切り抜けることが可能となるかもしれません。その闇の救済者連合軍でも有力な四人の将は名前は……」
──黒騎士『アルトゥール』
漆黒の鎧に身を包む人間の彼は投擲の名手で、槍だろうが剣だろうが自由自在に投げ放つ戦い方を得意としている。またユーベルコードの粋にまで高められた魔法も扱え、落雷や雷光などで敵を一網打尽とする。
──咎人殺し『アルベルト』
一見すると全身黒ずくめなコート姿の金髪オールバックと胡散臭い外見だが、吸血鬼との混血である半魔半人のダンピールである。生まれながらに得ている神殺しの力とも言えよう驚異の身体能力を駆使した体術を得意とし、冷静沈着で鋭い観察力と洞察力から感情よりも論理的な考え方を優先した指揮を行う。
──ブレイズキャリバー『ハマー』
身長2メートルは優に超える巨漢の人狼であり、満月を見ると凶暴化して狼獣人と化する。その膂力はダンピールとして人外の力を振るうアルベルト以上で、絵に書いたパワーファイターだ。ブレイズキャリバーとして体内から吹き出す『地獄の炎』とプロレス技によく似た体術を駆使して自ら回転すれば、炎の|竜巻《サイクロン》となってオブリビオンを焼き尽くす。
──聖者『ニナ』
|闇の救済者連合軍《カプリコーン》の四将紅一点であるオラトリオの彼女は、ユーベルコードの域にまで高められた癒やしと|付与《エンチャット》の奇跡を起こす聖者である。まだ年端も行かない少女であるが、お転婆ながらも勇ましくレイピアとともに自ら最前線に立つことで兵を鼓舞する|聖女《脳筋》だ。
『……以上となります。また砦には、バリスタや投石機に大砲などの兵器群も確認されています。一般の闇の救済者も樽に火薬が詰められたタル爆弾や眩い閃光を放つ閃光手榴弾のような道具を駆使しての援護も可能ですので、一案頂ければです』
……やや過剰なまでの戦力にも思えるが、こうでなければデスギガス災群と拮抗出来ないのであれば理解できる。彼らは|猟兵《援軍》の到来を今か今かと待ち侘びでいるとのころで、快く協力に応じてくれるだろう。
「希望がございましたら個別に彼らの砦に直接転送も可能ですので、そこを|拠点《ベースキャンプ》として改めて準備を行いたいのであればお申し付けください」
拠点の砦から始めるか、乱戦極める戦場に転送されるかは個々の猟兵の判断となる。今回の作戦概要を信子が下達し終えると、猟兵たちを戦火の炎が燻る|禁獣領域《戦場》へと転送するのであった。
ノーマッド
ドーモ、ノーマッドです。
ダクセの戦争も残すところ2週間を切ってしまいました。
有力敵の戦場がまだ開かれきっていないところでありますが、🔵獲得に貢献すべく執筆のペースを早めなければで、|精神の賦活剤《コーヒー》を飲む量が増えそうなところです。
●戦場解説
シナリオ難易度は、『やや難』となります。
祈りの双子によって封印を解かれた「究極禁獣」であるデスギガスは数百mの巨体を誇り、腹部にある「歓喜の門」から下層の城塞やオブリビオンを次々に放出され、猟兵を押し流そうとします!
ですが歓喜の門からは、同時に「第四層にある|闇の救済者《ダークセイヴァー》たちの砦」も召喚されてくることが予知で判明されています。この闇の救済者連合軍(※千人近くの戦闘集団です)と協力し、デスギガスの吐き出す無限災群を切り抜けて、デスギガス本体と戦いましょう!
よって、プレイングボーナスは、『闇の救済者《ダークセイヴァー》たちと協力して戦う』となります。
主にOPでご説明した闇の救済者の四将がNPCとして協力してくれますので、ご活用頂ければとです。
また滅ぼすか否かに関わらず、この戦場を制圧すると「歓喜の門の残滓」が残ります。それは下層とは違う「どこかの世界」に繋がっているようで、獲得すれば戦後に調査任務が発生します。
ただし先に禁獣『ケルベロス・フェノメノン』が先に制圧されると、デスギガスは何処かに姿を消してしまいます。これは「決着したシナリオの完成日時」で判定する為、「歓喜の門の残滓」と「小剣グラディウス」は、どちらか一方しか得られません。また、デスギガスが滅ぼされたり姿を消しても、デスギガス災群は既に召喚済みの軍勢により継続しますのでご了承ください。
それでは、個性派揃いの闇の救済者に負けない熱いプレイングをお待ちします。
第1章 ボス戦
『禁獣『歓喜のデスギガス』』
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POW : デスギガス・ラッシュ
【大きく裂けた口】から【歓喜の笑い声】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
SPD : ダークセイヴァー・レクイエム
【人類砦の残骸】を降らせる事で、戦場全体が【絶望の世界】と同じ環境に変化する。[絶望の世界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : ザ・ダイヤ
空中あるいは地形に【ダイヤ】の紋章を描く。紋章の前にいる任意の対象に【漆黒の影】を放ち【記憶喪失】効果を与える。
イラスト:八谷アツキ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メディア・フィール
POW選択
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK
聖者『ニナ』や一般の闇の救済者とともに戦う。
ニナに癒やしと付与で援護してもらいながら、一般の闇の救済者に雨霰のごとくタル爆弾を振らせてもらいます。それを【邪竜黒炎拳】でベストのタイミングで爆発連鎖させ、デスギガスさえも飲み込むほどの壮絶な爆発を起こします。そして、次の攻撃の準備が整うまでは【遊撃】で時間稼ぎます。ユーベルコードではないタル爆弾では一回ごとの効果はそれほどでもないでしょうが、これを繰り返して広範囲ダメージを蓄積させます。
「ただのタル爆弾の力を舐めるな! 絶好のタイミングで爆発させる! これが、この連合軍みんなの力だ!」
『あははは。今日も彼らは勝ち目のない戦いに挑もうとしているね。今まで加減してきたけど、ここで一気に壊しちゃって魂人の仲間入りにしちゃおっか。君もそう思わない、アガメムノンくん? ……あれっ、アガメムノンくんって誰だっけ? ぜったいに忘れちゃいけなかった気が、するんだけど……まぁ、いっか』
山のようにそびえ立つ禁獣『歓喜のデスギガス』が、絶えず剥き出している白い歯を月光で反射させながら吠え立つ。大気を振動させ、地の底にまで響かせる咆哮に共鳴するかのようにデスギガスの腹に蠢く『歓喜の門』から堰を切ったように黒々とした物が溢れ流れていく。
「アレが全部、第四層から送られてきたオブリビオンの群れ……無限災群なのか」
「ええ、そうよ。何時もだったら戦力の逐次投入で散髪的だったけど……本気で私たち|闇の救済者《ダークセイヴァー》連合の『|山羊座同盟《カプリコーン》』を潰す気満々ね!」
メディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)は今、常闇の空をオラトリオの聖者であるニナという名の少女に抱えられながら翔んでいる。眼の前で黒い山脈のように彼女らを立ち塞ぐモノこそ禁獣である歓喜のデスギガス。闇の救済者戦争の開戦とともに下層から大地ごとオブリビオンを歓喜の門より吐き出していたせいか、かつては緑の迷宮が広がっていた禁獣領域が埋もれて山あり谷ありの起伏に飛んだ地形となっている。その中にボロボロとなって遺棄された砦らしい廃墟もあったが、聞いた話だとアレはかつてニナを中心とした小規模の闇の救済者拠点であったのこと。デスギガスが開いた歓喜の門でオブリビオンごと上層である第三層へと迷い込んだ顔を始めて合わせた闇の救済者らは互いに協力し合い始め、まだ無事な砦から物資を掻き集めては新たに禁獣領域へと吐き出された闇の救済者を迎合して戦力も拡大させていったという。
それが黄道十二星座の山羊座が位置する方角へ集結したことから山羊座同盟と改め、ようやく自分たちを第三層へと導いたデスギガスの歓喜の門から出てくるオブリビオンに優勢できる戦力が整った。しかし、突如として歓喜の門から下層を通して召喚されるオブリビオンの数が日に日に増してすり潰されるのも時間の問題だと思えた時……遂に待ちに待った援軍、猟兵がこの地に降り立ったのだ。
「ほんとーに助かったわ。こんな数のオブリビオンを相手にしたら、どんなに人が居ても押しつぶされちゃうっての」
「無駄口はそこまでだ。戦況を報告せよ」
周囲にはオラトリオの闇の救済者が編隊を組んで飛行しているが、互いに密接しあっているメディアとニナの間に割って入るかのように独特な抑揚と渋めの声が何処からともなく聞こえる。
「この声は……アルベルト? 何処から聞こえてきたんだ」
「あ、そうだった。アルベルトさんに報告しなきゃいけなかったんだ」
アルベルトはニナと同じ山羊座同盟の四将のひとりで、主に前線後方問わずの作戦指揮を担当をしているダンピールである。今はふたりの反対側である砦方面に居るが、この声はニナの道具袋に入れられた小ぶりの水晶球を通して送られている。オブリビオンとの戦いで得られた戦利品で、本来の用途は水晶球を通して遠方の者へと報告する魔導具である。
しかし、その使い方を少し変えるだけで早馬で伝令を出さなくとも即座に情報伝達を行えることも可能となる。ニナを指揮官としたオラトリオ隊が上空からオブリビオンの動きをいち早く報告することで迎え撃つ時間の猶予が生まれ、今までの防衛戦でもオラトリオによる偵察隊の報告が戦況を左右していたと言っても過言ではない。
「えーっと……砦に通じる谷は全部埋まっちゃってるね」
「掌握した。予定通りに第一防衛ラインを作動させよ」
「りょーかい。みんな、持ち場に着いて! メディアちゃんも準備良い?」
「うん! ボクは何時でも良いよ!」
「ふふ、私と一緒の女の子がそう言っちゃうと頼もしいね。……そうだ。はい、即席だけど私の|花びら《デイジー》のお守り。奇跡がキミを守ってくれるはずよ」
そんなやり取りがメディアとニナの間で交わされている間に闇の救済者のオラトリオたちが編隊を解いて散開し、重そうに抱えていた小ぶりのタルを投下する。それから少し時間を置いて、メディアも投下された。
生まれた世界のブルーアルカディアとは異なる|常闇《ダークセイヴァー》の風を細い身体で一身に浴びてながら、メディアがゴーグルの奥底にユーベルコードの煌めきを闇夜に灯した。
(デスギガスの歓喜の門をどうにかしないとだけど……今はこっちだ!)
メディアの拳から暗黒の炎が迸り、拳を突き出すたびに流星の雨の如く放たれる火球がオラトリオたちが透過した小ぶりのタルを赤黒い炎で包み込む。
──バァァアアンッ!!
すると程なくしてタルの中に充填された獣脂を原料として粘度の高いジェル状に加工された|焼夷剤《ナパーム》の爆発とともに弾け、邪竜黒炎拳による暗黒の炎が雨となって谷全体へと降り落とされる。
当然ながら、これでは谷間を埋め尽くす黒い濁流を燃やし尽くすことなど叶わない。しかし、闇の救済者らは既に一計を案じている。本来であればその身を犠牲とする点火役を必要とするところにやってきた猟兵たち。彼らの来訪とともに即座と第一の防衛線は構築されて、砦へと通じる谷間には夥しいまでの先程投下した脂で満たされた大タルが設置されている。それらに降り注がれた漆黒の炎で燃やされた脂の雨が付着さえすれば、着火しやすいように油が塗られたタルの表面を炎が走って起爆用のタル爆弾が炸裂する。
この爆風とともに燃え盛る黒い炎で谷間は満たされ、燃え盛る炎がオブリビオンの軍勢を呑み込んだのだ。
(くっ! 予想してたけど、爆風の衝撃波が想像以上だ。ニナから貰ったお守りがなかったら……想像したくないな)
これらの爆風は衝撃波となってメディアの小さい体に襲いかかったが、ニナから貰った花びらが輝けば暴風がそよ風となって彼女の身体を優しく撫で上げた。彼女の|付与《エンチャット》の護りが無ければ、身を防ぐ手段が限られる上空の中でどうなっていたのかを想像すると背筋に冷たいものが流れる。
その恐怖を打ち払いながら、メディアの瞳が無限災群より吐き出されるデスギガスの腹部……歓喜の門を据えて拳を震わせた。
「これが、この連合軍みんなの力だ!」
突き出した拳から放たれた特大の邪竜黒炎拳が放たれ、今も吐き出されるオブリビオンの塊をなぎ払って歓喜の門へと吸い込まれていく。
『うわぁあっ!? お、お腹があついよぉ~!!』
緊張感がまるでないデスギガスの声が周囲に響いた。
今まで絶対的な力で如何なる攻撃を弾いてきたデスギガスであったが、欠落を破壊された今は歓喜の門のみに攻撃が通じる状態となっているのがここに証明された。後方の砦でもデスギガスの巨体が観測されている以上、絶望の世界に彩られた禁獣領域の主を打ち崩す希望が|姫《おうじ》武闘勇者の手によって齎されたのだ。
「よし、着地成功。炎の壁を突破しようとするオブリビオンを駆逐しながら、デスギガスをやっつけてやるぞ!」
うめき声を上げながら、オブリビオンらは仲間の死骸を乗り越えて燃え盛る獣脂の海を突破してくる。メディアは再び拳に力を込めると、漆黒の炎で周囲を滅却させたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ
「へっ!頼もしい奴が一杯だ!
オレもいつも以上に燃えてきたぜ!!」
多くの戦友と共に戦える機会に[勇気]が燃え上がる
「アルトゥールは後方から支援射撃!
アルベルトは司令塔を頼む!
そして、ハマーとニナは最前線に来てくれ!
さあ、行くぞみんな![気合い]入れて勝ちに行くぞ!!」
戦場に響く声でみんなに声をかけてUCを発動
この場に居る全員の戦闘力を爆発的に上昇させる
ニナの回復を受けながら光焔を纏った拳で無限災群を
殴り飛ばしながら[ダッシュ]で戦場をかける
デスギガスに近づいたらハマーに頼んで
歓喜の門めがけて投げて貰う
[限界突破]した光焔を歓喜の門に叩き付けて粉砕するぞ!
二條・心春
私は直接戦うのは初めてですが、これだけの戦力を送り込まれるのは脅威です。今のうちに何とかしないと。
私はアルベルトさんの砦に転送してもらいましょうか。切り札は【烈風召喚:大鷲】、今空をぐるぐる飛んでいるフレスベルグさんです。闇の救済者の皆さんにはその通り道を作ってほしいです。私が麻痺の爆風を巻き起こすクロスボウで援護するので、指揮と接近戦が得意なアルベルトさんが適任かなって。よろしくお願いしますね!
デスギガスまでたどり着いたら私が前に出ます。向こうが突撃してくるなら好都合です。方向転換できないくらい引きつけたら、後ろからフレスベルグさんが突撃です。力を合わせれば、不可能なことなんてないんです!
「無事、第一防衛ラインの起動は完了。オラトリオ偵察隊の報告により、敵戦力の大半が焼失。並びに|化け物《デスギガス》の『歓喜の門』と呼ばれる穴から吐き出されてくる数も現象を確認。……だが」
水晶球越しに上空で戦場の観測を行っているオラトリオたちの報告に耳を傾けていたアルベルトが、眉間に深く皺を寄せながら鋭い金眼を細める。その先にはゆっくりこちらへと進撃し続けるデスギガスの姿があって、一歩踏む度に伝わってくる振動も徐々に強くなりつつある。こちらの兵力は有限であって、あちらの兵力は限りなく無限とは何とも頭が痛い話だ。
「あれが歓喜のデスギガス……ですか。私は直接戦うのは初めてですが、これだけの戦力を送り込まれるのは脅威です。今のうちに何とかしないと……」
二條・心春(UDC召喚士・f11004)に不安の色が浮かぶが無理もない。偵察隊とともに先行した猟兵の活躍によって事前に仕掛けられていた脂と爆弾によって大規模の爆発音がこちらにも轟いてきたが、デスギガスの歓喜の門から吐き出され続けるオブリビオンの群れの進行は止まる気配を見せていない。このままであれば、谷を抜けた先の平野部に出るのも時間の問題だ。
「今のうちにじゃない、今すぐにだ。このまま手をこまねいていちゃ押しつぶされるだけだ。ここであーだこーだ言ってる今、オブリビオンの連中が雪崩込んでいるんだぞ!」
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が戦力をイタズラに消耗を抑えるべきと主張していたアルベルトに叫ぶ中、彼の肩を黒い甲冑姿の騎士が叩いた。
「お主は出来る限りの最善となる策をやりきった」
「おうよ! これだけのオブリビオンと合戦する機会は二度とねぇ。後はぶつかり合って生き残ればいいだけの話よ、ガハハハ!!」
黒騎士のアルトゥール、人狼のハマーらが戦友の頑張りを称え、後は覚悟を決めろと檄を送る。
「……フッ。どうやら臆病風に吹かれていたのは私だったか。よかろう……後は当たって砕けるのみだ。ニナ!」
「はいはーい。そうなるんじゃないかって思って、少数の観測員だけを残して砦に帰投ずみだよ。補給が済んだら私も前線にすぐ出るよ!」
どうやら四人の方針がようやく満場一致したようだ。デスギガスから吐き出される無限災群は第一防衛線を突破して第二防衛線である平地へと向かいつつある。今から打って出ても谷から平地へと出るタイミングで抑えられる。そして何より、今までピタリと動かなかったデスギガスもこちらへ進撃しているのであれば、砦に設けられた投石機や大砲の射程内に収まる。元々は谷間から出てきたオブリビオンを迎え撃つためのものであったが、対デスギガス戦の援護として活用できる。
そして何より、彼らにはたったひとりでも一騎当千の戦力に匹敵する援軍……猟兵が居るのだ。例え相手の戦力がこちらの数百倍となろうとも、僅かながらの勝算があれば今は賭けるしかない。
「へっ! 頼もしい奴が一杯だ! オレもいつも以上に燃えてきたぜ!!」
陣を出立した千人規模の闇の救済者らが恐怖心を払拭させるために上げた雄叫びに、清導は思わず武者震いした。
『何もしてこなくなったみたいだね。もう降参しちゃったかな?』
のっしのっしと山地を砕きながらデスギガスが周囲を見渡すと、何やら遠くから土煙が上がってくるのが見えてくる。きょろきょろと興味深そうにその先を見ると、それよりも奥から何かが飛来してくる。砦に据え付けられた巨大な投石機による投石だ。
『そんな物をぶつけて来ても、ボクはへっちゃらさ!』
デスギガスの顔面にぶつかりそうとなった巨石が視えない力に遮られる形で跳ね返ってしまうが、運が悪いことに跳ね返った先には歓喜の門によって吐き出されたオブリビオンの軍勢があった。例えデスギガスが無事であったとしても、欠落による加護など無い彼らは成すすべもなく潰されてしまうだけであった。
「アルトゥールは後方から支援射撃! アルベルトは司令塔を頼む! そして、ハマーとニナは最前線に来てくれ! さあ、行くぞみんな! 気合い入れて勝ちに行くぞ!!」
阻止投石を浴びても弾き返すだけで進撃も次なるを無限災群の放出も止めないデスギガスを目指し、清導が光焔を纏った拳を唸らせながら先陣を切る。|スーパーヒーロー《超鋼真紅ブレイザイン》の檄を受け、守るべき大切な物……ダークセイヴァーでオブリビオンの暴虐に喘ぐ無辜の人々の『明日』を切り拓くべく、闇の救済者は命を賭して禁獣への決戦に挑むのだ!
「私たちも負けてはいられませんね。行ってください、フレスベルグさん!」
心春を乗せた大鷲のUDC霊が甲高い嘶き鳴き上げ、タル爆弾を投下するオラトリオ隊を先導する形で上空の先陣を切る。眼の前には飛行するオブリビオンの群れが襲いかかろうと迫り来ていたが、UDCの力を借ることで麻痺の爆風を巻き起こすクロスボウを心春が放てば彼らは成すすべもなく墜落していく。オラトリオたちがタル爆弾を点火して投下したタイミングを見計らい、フレスベルグが人間一人分の大きさを誇る翼を羽ばたして生じた風に煽られたタル爆弾が敵陣の深くにまで落下して爆ぜていく。更にはアルトゥールが投げ放った槍が次々にと突き刺さると、彼が唱えた呪文で落下した雷の避雷針となって放電したことで周囲のオブリビオンらが感電して焼き焦げていく。
そんな混乱するオブリビオンの軍勢を蹴散らしながら表情を一切崩さないアルベルトと炎を噴き出しながら吠え立つハマーが次々と敵を吹き飛ばす。怪力無双のハマーであるが一旦暴れる始めると視野が狭まるのが玉に瑕だが、そこをアルベルトが絶えず指示を送ることで死角から襲いかかる敵を容赦なく炎の渦で呑み込んでいく。
更には聖者のニナが奇跡を起こして彼らの傷や疲労を和らげていけば、数で有利を誇っていたオブリビオンの戦線が瞬く間に崩れていく……が、その損失はデスギガスの歓喜の門より吐き出される無限災群を上回っていない。どんどんとデスギガスから送られる援軍が闇の救済者たちを押し潰そうと迫り来ようとするが、既に銀の銃弾となる猟兵をデスギガスへと至らせる活路は拓かれていた。
「今だ、ハマー!」
「任された! ここまで来れば十分届くもんだぜ!」
「頼むぜ! アンタらの分まで殴って来るからな!!」
アルベルトの指示の下、獣化してより一層と巨漢となったハマーが共にオブリビオンを蹴散らした戦友である清導を鷲掴みして掴み上げる。そして、遠心力を利用した回転を活かして彼を力の限りデスギガスの元へと投げ放ったのだ。
「フレスベルグさん、私たちも行きましょう!」
甲高い嘶きを上げて応える巨鳥が向かう先は、清導と同じく大きく裂けた口から名状しがたい歓喜の笑い声をケタケタと上げているデスギガスの元へとだ。
『そんなもの、交わせば良いだけだもん……ね?』
彼らの突撃に合わせて、再び砦から投石機から何かが飛来してくる。思わずデスギガスの視線がそちらへと向かってしまうが、これも自らの進撃する方向を変えてしまえば良いこと。例え当たってしまっても歓喜の門にさえ命中しなければ跳ね返ってしまうだけだしと、余裕の顔を見せるデスギガスであった……それは間違いであったと彼は思い知らされることとなる。何故ならば、それは迫り来る猟兵の後ろで突如として炸裂し、闇に閉ざされた世界に慣れきった眼が眩んでしまうまでの強烈な閃光を放ったからだ。
『なにこれ!? もの凄く眩しいんだけど!!』
開戦当初に放った投石は閃光爆弾だと悟られないためのものであり、まんまとデスギガスはアルベルトが打ち出した起死回生の策にハマってしまった訳だ。確かにデスギガスはあらゆる攻撃を跳ね返す怪物だ。しかし、身体を傷つけれないとしても光までは跳ね返せないはずだという予想は見事に的中し、一時的にとは言え視界を奪われたデスギガスは何が起きたのか理解がまだ追いついていない。
「行くぞ、心春。タイミングを合わせてくれよ!」
「はい。もし軌道がズレそうでしたら、フレスベルグさんが修正しますので!」
二重にも三重にも「もしも」の自体に備えてはいたが、どうやらその心配はなさそうであった。清導の光焔を纏った拳が、烈風そのものとなったフレスベルグの激突が同時に歓喜の門に襲いかかったのだ。その衝撃による傷みに苦痛の叫びを唸らせるデスギガスを叩き伏せられ、もんどりを打ちながら歓喜の門が偽りの月が照らす第三層の天井へと向けられた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ歓迎
闇の救済者のみんな、手伝って!
砦に降り立って声を掛けるの
あのお腹の「門」が弱点なの
あれを破壊するの
合図を出したら、一斉射撃してほしいの
協力を得られたら、バリスタや投石機、大砲にエンチャントを施して威力を上げておくね
四将さん、この火力を集中させたいから、囮になるのを手伝って
四将さんたちにもエンチャントを施すの
行くよ!
狼の瞬発力とジャンプ力でどんどん接近
紋章の出現位置は魔力感知で把握、四将さんの動きを指示するの
同時に歓喜の門の組成を電脳空間からアクセスして解析なの
四将さん、少しだけ気を引いて欲しいの
デスギガスを登って門の目の前でUC発動
紋章と門の組成を浸食破壊しながら遠吠えで合図なの
黒城・魅夜
希望の依り代たるこの私の前で絶望を弄び希望を侮る愚か者
その報いとくと味わうがいいでしょう
ふふ、真に絶望の世界に適応するのは──
希望を持った者です
絶望に押しつぶされず希望の灯を掲げるからこそ
生きのびることができる、すなわちその世界に適応するのですからね
つまり、まさにあなた方のことです、闇の救済者の皆さん
アルベルトさんには特に親近感がわきますね
広範囲に結界を展開し彼の軍を護りつつ
早業で鎖を舞わせ衝撃波を撃ち放って敵軍を薙ぎ払っていきましょう
辿り着きましたよ禁獣
そして既に終わっています
先ほど私が撃ち出した衝撃波は
そのまま敵味方を識別するUCとなって発動
あなたの全存在はあと5秒で消え失せます
──やったか!?
誰もがそう願った決定的な一撃を食らってデスギガスは倒れた。
数百メートルに渡る巨体が地面へとぶつかると、周囲に土埃が舞い起きてその姿を隠してしまっている。誰もがデスギガスを骸の海へと還すことが出来たと願う中……けたましい耳障りな嗤い声が彼らの希望を打ち砕いてしまう。
『いったぁ……。まだ頭がぐぅわんぐぅわんするけど……ボク、怒っちゃた。あはははははははは!!』
歓喜の禁獣が狂った笑い声とともに再び姿を見せながら起き上がれば、誰もがこう思っただろう……化け物、と。
『じゃあ、お返しに……キミたちの記憶を貰うね?』
デスギガスが枯れ枝のように細い白い腕の先にある五指に嵌め込まれた指輪が、偽りの月の光を浴びると妖しく輝き出す。その光が地面にあたるとダイヤ状の巨大な紋章が|山羊座《カプリコーン》の紋章を掲げた|闇の救済者《ダークセイヴァー》らの足元に描かれた。
その上に居たもの全てへとデスギガスの巨体から千切れて離れた漆黒の影が絡み付き、そうなった者は頭を抱えながら悲痛な叫び声を上げ始めた。彼らの記憶をデスギガスが奪って、新たな記憶を植え付けようとしているのだ。
「くっ、このままでは……!」
今まで表情を崩してなかったアルベルトの顔に始めて焦りの色が浮かぶ。どうにかせねばと考えれば考えるほど焦燥に駆られ、デスギガスのつぶらな瞳に睨まれてしまえば闇の救済者として数多くのオブリビオンを狩ってきた百戦錬磨の彼であっても、始めて芽生えた名状しがたい恐怖心により満足に動くことはおろか口を開くことさえもがままならない有様であった。
「ふふ、真に絶望の世界に適応するのは──希望を持った者です」
しかし、そこへ軽やかな鈴の音色のような声とともに、ジャラジャラと音が鳴らされた鎖が宙を舞い、それによって生じた衝撃波が闇の救済者らに纏わりつく漆黒の闇が剥がされていく。ようやく身体の自由が効くようになったアルベルトが顔を向けると、そこには「悪夢」の中で自身を拘束していた鎖を携えた黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)が背筋をしゃんと伸ばした姿勢で立っていた。
「うぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉん!」
そしてもうひとり、魔術文字による隈取が発生し狼の様な見た目になりながら偽りの月に向けて遠吠えを奏でる狼の半獣となった少年が居た。
彼の名はロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)。この|超常を貪る人狼の咆哮《ヴォイド・ハウリング》には浸食・変化させる満月の魔力が宿されており、これによってデスギガスの『記憶を奪う』ユーベルコードが反転して『記憶を戻す』ユーベルコードと転じる。先程に奪われた闇の救済者たちは程なくすれば正気と戻るであろう。
「闇の救済者のみんな、手伝って! まだデスギガスは立ち上がりきっていないの! あのお腹の『門』が弱点なの、あそこにありったけの支援攻撃を当てて欲しいの!!」
何処からか拾い上げた通信用の水晶球にロランが精一杯声を張り上げて再びユーベルコードの力を宿した遠吠えを上げると、その声に応えるように後方の砦から雨礫となったバリスタの矢に投石機、はたまた虎の子の大砲までが惜しげなく打ち込まれる。
『ボクのお腹に当てる気なんだね? そうはさせないよーだ!』
デスギガスの歓喜の門は再び黒々とした渦を巻き始めると、下層よりえぐり取った人類砦の残骸を吐き出して盾とする。それと同時に今までとは吐き出される数が減ったが、無限災群によるオブリビオンの群れが再び溢れ出てくる。
「全軍……何も考えるな! 頭にある言葉は……『希望』! 我々が何故闇の救済者として起ったか……その思いを胸に掛かれ!!」
アルベルトの号令とともに闇の救済者らが奮起の雄叫びを上げ、果敢にオブリビオンの軍勢に立ち向かい直す。
「絶望に押しつぶされず希望の灯を掲げるからこそ……生きのびることができる。すなわちその世界に適応するのですからね。ロラン?」
「分かってるの。新しい紋章の出現位置を感知しながら、四将さんの動きを指示するの」
「上出来ね。じゃ、お互いに頑張りましょう……ね!」
──ヒュン!
魅夜が悪夢さながら闇の救済者を押し潰そうと落下する人類砦の残骸を鎖で舞い起こした衝撃波を当てると同時に、狼の瞬発力とジャンプ力で混戦極める戦場へとロランは突入する。歓喜の門ほどはあろう巨大な人類砦の残骸は瞬く間に大小の破片と化し、上空に向けて結界を張ることでそれらは歓喜の門より吐き出されるオブリビオンへと落下して鮮血に染め上がる。
「紋章が出てくる場所はこっち! 今度は……そっちなの!」
血の応酬が繰り広げる刹那の戦場を駆けてデスギガスを歓喜の門を目指しながら、ロランは周囲に再び発生しようとするダイヤの紋章の発生場所を吠えるように指し示す。その度に闇の救済者らは戦術的な撤退を始め、追撃をし始めたオブリビオンらは召喚者のデスギガスによって容赦なく記憶を奪われて行く。彼にとってはオブリビオンは単なる手駒に過ぎず、歓喜の門でいくらでも骸の海を通して染み出したモノを吸い取っているだけなのでそうなろう。
だが、オブリビオンに対するデスギガスの関心が希薄なのが幸いとなって歓喜の門への動線が強固な守りとなっておらず、弱点めがけて放たれる攻城兵器がデスギガスの腕によって弾き返されるたびに吐き出されたオブリビオンへと降り注いでいる。そして、歓喜の門への足場が先程に魅夜が自らの鎖を振るうことで発生させた衝撃波で崩れ、彼女が結界を利用して意図的に落とされた人類砦の瓦礫によって出来上がっている。それを駆け上っていけば、そこには禍々しく蠢く歓喜の門が広がっている。
(急いで歓喜の門の組成を電脳空間からアクセスして解析なの……!)
満月の魔力を集中させることで再び魔術文字による隈取がロランの顔に浮かび上がる……が、焦る彼の耳に聞きたくない重々しいながらもひょうきんとした声が聞こえる。
『やぁ、キミはここで何をしようというのだい?』
しつこいまでに降り注ぐ攻城兵器の援護射撃により、まだ起き上がり切っていないデスギガスの顔がロランに向かいギロリと迎える。程なくすると歓喜の門からオブリビオンが這い上がって来て彼の目の前に立ちはだかり、上からはゆっくりとデスギガスの白い枯れ枝のような手が迫りつつあった。
しかし、その時……突風がロランのみならずこの場に居るもの全てを横切った。時計回りに渦を描きながら徐々にその風は強まって嵐の暴風となるが、ロランと闇の救済者たちにとっては『ただ感じる』だけに過ぎない。その反面、オブリビオンたちは吹き飛ばされないように見を低く構えながら耐えているではないか。
「間に合いましたね。ええ、辿り着きましたよ禁獣。そして既に終わっています……先ほどまで私が撃ち出した衝撃波は内部に潜り込む時計の針型の呪詛を纏った死の嵐と貸しました。数えよ汝が滅びの時を、悔い慄け残されし刻に……冥府に刻め時の針、残されし刻は呪いの証でさえも特異なる身体で弾き返してしまうので効果は薄いでしょうが、骸の海より滲み出して零落したばかりのオブリビオンには十分。全存在はあと5秒で消え失せますから……」
──3……2……1……。
魅夜の言葉通り、オブリビオンの身体が突如として塵となって嵐に吹き上げられながら骸の海へと還っていく。そして、デスギガスも徐々に苦悶の呻きを漏らし始めて身体を痙攣させるたびにロランの小さい身体が揺れてしまう。
「さぁ、人狼病に侵されし中でも希望の灯を掲げ続ける猟兵よ。今こそあなたの叛逆の狼煙を上げる時です」
(解析は……完了したの! 紋章と門の組成を浸食破壊しながら遠吠えで合図なの!)
今から何が始まるのかデスギガスが察したのか、震える腕でロランを掴み上げようとする。だが、より激しさを増してうねる嵐がデスギガスの腕を弾いて彼の元へとは届かせようとさせない中、ロランは深く息を吸い込んで吠えた。
──うぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉん!
それを合図として、再び砦から様々な攻城兵器の矢や球がデスギガスの歓喜の門へと降り注ぐ。遮るものなどなくユーベルコードの影響も受けぬ質量の雨礫が、ロランによって解析されて組成構造を浸食破壊されれば今まで通りとは違う破壊力を持って歓喜の門を削り上げる。これによる耐え難き痛みに耐えかねたデスギガスが、身の毛もよだつ叫び声を天に向けて吠え立てたのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
栗花落・澪
砦からの方が守りやすいかな
僕は基本戦術が魔法だから
出来るだけ詠唱時間を埋めて貰えると助かるかな
【オーラ防御】で身を守り翼の【空中戦】
【高速詠唱】で【破魔】を乗せた光魔法の【属性攻撃】を紡ぎ
空中で高速回転しながら撃ち出すことで【浄化】の【範囲攻撃】
オブリビオン勢を一掃させつつ
【浄化と祝福】発動
万一僕が記憶を無くしても自主的に攻撃するよう指示しておき
なるべく温存したいから
アルトゥールさん、手伝ってくれる?
雷の感電でまとめて攻撃、足止めしてもらい
その隙に数匹の鳥で薙ぎ払って行くように攻撃させ浄化、延焼
鳥達は消されない限り何度でも攻撃出来るから
そうして一掃して行き
鳥達をデスギガスにまとめて突撃させます
『うわぁあああん! 痛いよぉ!!』
泣きじゃくる子どもの鳴き声のようなデスギガスの慟哭が辺りに響き渡ると同時に、歓喜の門からは堰を切ったかのように下層の地面が吐き出される。これがオブリビオンだけなら打ち払えば良いのだが、瓦礫となれば濁流となって雪崩れ来るこれらから闇の救済者らは戦線を引くしか無い。
「破壊に至らなかった歓喜の門が暴走しているのかな……あのままじゃ下層の人たちに被害が及ぶかも、だね」
魔法が基本戦術だからと後方からの支援に徹していた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が翼を広げ、襲いかかる災厄の雨を潜りながら山脈のように転がり藻掻くデスギガスの元へと急ぐ。歓喜の門からは火山の噴火のように黒々とした火山弾めいた下層の大地が共に吸い出したオブリビオンごと吐き出されており、前衛はともかく後方の砦にまでも降り注いでいる。今や魔法の詠唱時間がどうとは言っておらず、あの暴走する歓喜の門を完全に破壊せねば全滅は免れないのが確かなところだ。
「一度は消えたオブリビオンの群れも増えつつあるね。だけど!」
空に舞い上がった瓦礫とともに翼を広げて襲いかかるオブリビオンの群れを見据えながら、澪は瓦礫の雨を掻い潜りながら呪文を紡ぎ魔法陣を展開する。
「鳥たちよ、どうかあの人を導いてあげて」
炎の鳥たちが混迷を極める闇夜を照らしながら羽ばたいていく。希望の篝火たちが澪を先導し、襲いかかろうと牙を剥くオブリビオンを破魔の輝きを宿した聖なる炎で滅却していくが流石に数が多いのが正直なところだ。
「|剛力召雷《サンダーブレイク》!」
だが、その時澪の目の前で眩い閃光とともに豪雷の嘶きが鳴り響いた。オブリビオンたちは突如として何処からともなく落ちてきた雷に打たれ、肉が焦げた嫌な匂いだけを残して力なく地上へと落ちていく。澪が視線を下へと向けると、そこには天を衝かんとばかりに拳を突き上げている黒騎士の姿があった。アルトゥールである。
「露払いは任せよ! 貴君は歓喜の門を!!」
押し寄せて降りかかる瓦礫に臆することなく黒騎士は前面へと仁王立ちし、闇の救済者たちを導いている。猟兵ではない彼らの奮闘に後押しされ、澪は暴虐の嵐を切り裂いていく。
「……見えた!」
デスギガスの腹部にあった歓喜の門。多大なダメージを当たえられ続けられたそれは、制御を喪って黒々しい巨大な渦と化している。
『痛いよぉ! 痛いよぉ!!』
無邪気ながらもおぞましくも子どもが泣きじゃくる声とともに、空中に漆黒なるダイヤの紋章が描かれる。そこから伸びる影が澪の記憶を奪わんと襲いかかるが、アルトゥールが召雷する雷によって祓われては再び出てくるときりがない。それに|魔法《ユーベルコード》で召喚したとは言え、炎の鳥たちにも限りがある。ともなれば、あれらは無視して全ての元凶である歓喜の門に集中して完全なる破壊に注力するのが最善か。
「もっと痛くなるだろうけど、辛抱してよ」
歓喜の門から瓦礫が吐き出され続けているが、一定の間隔を置いて断続的である。心の中で数字を数えながらタイミングを見計らい、澪は浄化と祝福の鳥たちに命じる。漆黒の渦を目指して炎の鳥たちは急降下しながら互いの身体を重ね合わせ、巨大な火の鳥となった浄化と祝福の化身が歓喜の門へと侵入する。
それと同じくにして、より激しいデスギガスの悲痛な慟哭が周囲に響き渡ったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
【アドリブ歓迎】
大規模ね…頼もしいけど、なるべく犠牲は出したくないわ
『顎門』から『飢渇』の軍勢が溢れ出し、連合軍と列をなす
最前線に立ち連合軍と共に戦い、危険なら庇うよう指示する
とはいえいきなりこんなバケモン共と一緒ってのもね
手っ取り早く連携させる為に連合軍が信頼する味方の説明と鼓舞が必要かも
あの中で一番カリスマがありそうなの…
ニナ、って言ったわね?ちょっと血、貰うわよ…信じて
しっかり断ってからニナの首に歯を立て戦闘に支障が出ない程度に吸血
清らかな血…思わず深く歯を立てそうになるけど、我慢我慢
さらに躰から溢れる『飢渇』の群れがニナの姿を取って戦場を駆けていく
130人以上、その1人1人がUCを駆使して連合軍を鼓舞し、癒やし、強化していく
1人でこの大人数を支える、ってのも大変でしょ
ほら、私達もさっさと行くわよ、あんなの所詮は紛いもんだし
本物のアンタが矢面に立たなきゃ意味ないんだから
『ぐすん。もう……怒ったぞぉ!』
何処か涙ぐみながらも怒気を孕んだデスギガスの咆哮が再び禁獣領域内に轟いた。
既に歓喜の門は崩壊直前であったが、未だに完全な破壊には至っておらず黒々とした渦とともに下層のオブリビオンや吐き出し続けている。
「来るぞぉ!」
有象無象の|悪鬼羅刹《吸血鬼》が鋭い牙を剥き、もしくは研ぎ澄まされた爪を唸らせて闇の救済者連合軍を呑み込もうと襲いかかろうとした。前衛の指揮を担っている黒騎士『アルトゥール』と人狼『ハマー』ら覚悟を決めろと叫んだその時、両者の間を割るように巨大な肉塊の壁……メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)の身体に刻まれた傷跡状の口、即ち『顎門』から吐き出される具現化された飢餓衝動『飢渇』の軍勢において他ならない。
「大規模ね……頼もしいけど、なるべく犠牲は出したくないわ」
生々しくも禍々しい肉壁が抉られる音ともに何かが噛み砕かれる音や悪魔のような断末魔が入り乱れるという阿鼻叫喚さを呈していたが、幸いながらも肉壁の向こうには誰も取り残されていないために何が起こっているかは闇の救済者らの想像に任せるとしかない。
「……うわぁ」
そんな中、肉壁の向こうで何が起きているかを知り得る人物がふたり居た。ひとりは術者であり無数の目を覗かせる『飢渇』と感覚を共有しているメフィス。もうひとりは上空から壁の向こうで何が起きているかを空を飛んでいることで見下ろせるオラトリオの聖者『ニナ』であった。おてんばで怖い者知らずな彼女であったが、流石に喰われては喰らうという応酬を目の当たりにすればそんな彼女も上空から降りたくもあろう。
これでひとまず戦線は膠着状態となったが、依然としてデスギガスの歓喜の門より吐き出され続けている無限災群は衰える兆しが見えないどころか勢いは増すばかりであった。
幸いにも『飢渇』がオブリビオンを取り込むことで肥大化し続けて破られることはないが、小規模ながら仲間の骸を足場として肉壁を突破してくるオブリビオンが小規模ながら居るので油断はまだ出来ない。
『そんなぶよぶよとした気味の悪い壁なんて、僕が壊しちゃうもんね!』
何せ、倒れ込んだ状態から再び身を起こしたデスギガスがズシンズシンと地面を揺らしながら向かいつつもあるのだ。度重なるダメージの蓄積で暴走する歓喜の門から抉られた下層の大地が吐き出されると、巨大な土の塊が肉壁を破らんとばかりの攻城兵器さながらな勢いで激突する。それでも肥大化した肉壁は肉塊ならではの弾力で破られること無く持ちこたえることが出来たのだが、弾かれた地面の塊が足場となってそれを起点にオブリビオンの群れが次々と山羊座の紋章を旗印とする闇の救済者連合軍に襲いかかった。
「三時の方向、並びに十時の方向の守りを固めろ! 砦の支援隊はあのデカブツの進撃を遅らせるんだ!!」
再び剣戟が響く中、今まで眉一つ微動だにさせていなかったアルベルトが声を張り上げて各方面に指示を送り始めていた。彼の慌てぶりを見るに、もはや自分たちに残された手段は全滅までの時間を遅らせる他にならないということか。
現に歓喜のデスギガスめがけて放たれた投石機からの岩球や樽爆弾らが命中しても、歓喜の門以外をあらゆる攻撃を跳ね返す弾力に富んだ肉体で護られた巨大なる究極禁獣の進撃を止めることすらままなっていない。このままでは、肉壁を乗り越えてくるオブリビオンの軍勢に磨り潰されるか、もしくは肉壁へデスギガスが到達しての破壊によって堰を切ったかのように襲いかかるであろう無限災群に呑み込まれるかのどちらかとなる。
──もうだめだ。
──逃げないと。
目に見えた負け戦を前に、ぽつりぽつりと闇の救済者らが胸の中に押し留めている本音を漏らし始める。やはりオブリビオンに楯突くなどと禁獣領域においては絶対的な支配者たる歓喜のデスギガスを前に解らされようとした人々の闇を払うべく、ニナは声を張り上げて叫んだ。
「諦めないで! 諦めたらそこで終わりだよ!!」
弱音を漏らし始める屈強な男たちを鼓舞するように、年端も行かない少女はレイピアを振るい、風と共にオブリビオンを次々と斬り伏せていく。だが、それでもデスギガスが齎す恐怖の伝播は止まること無く、大きく裂けた口からケタケタと嗤う狂気を孕んだ歓喜の笑い声が人心を更に掻き乱していくのだ。
『ほらほら、早く逃げないと踏み潰されちゃうよ? アハハハハハ』
満月状に剥き出された白い歯が月の光を反射して浮かび上がり、それが開けば地獄の門が開いたかのような恐怖が闇の救済者たちに浴びせかけられる。数多くの|吸血鬼《オブリビオン》を屠ってきた|闇の救済者《ダークセイヴァー》とて、強大なる歓喜のデスギガスによるユーベルコードは無力も同然であり、それがニナによる鼓舞を妨げているのは明白である。それならば……それを妨げるか上回れば良いだけのこと。
「ニナ、って言ったわね? 今からこの状況を立て直すから、ちょっと血、貰うわよ……信じて」
「え? う、うん……何だか分からないけど、それなら」
夥しい数のオブリビオンを排して肩で呼吸を整える幼き聖者の背後からメフィスが抱きつき、彼女の耳元へなだめるように語りかける。突然何が起きたのか理解が追いつかない彼女だが冷ややかな頬を首筋に押し付けるメフィスに同意を送れば、歯筋を包み込む麻酔性を帯びた唾液によってどこか甘痒いさを覚える痛みを与えられる。つまり、かぷっと優しく噛まれている状態にニナは気づいてもいない。
(とても清らかな血……思わず深く歯を立てそうになりそうだけど、我慢我慢)
男も知らぬ清純なる血がメフィスの満たさね無い飢餓感を強く刺激させるが、そもそもニナを『喰らう』目的でやっているのではない。克己とした意思を保ちながらこれ以上歯を沈めることなく、口に広がる芳醇な聖者の血の流れを冷たさを感じさせる舌が舐め上げれば、徐々にと噛み跡は塞がって消えていくのであった。
「それで私の血で何を……」
「何もかにも、アンタを『増やす』だけよ。このようにね?」
聖女の血を摂取してもなおも渇いた飢餓感に|苛《さいな》まれるメフィスの瞳の奥底に、ユーベルコードの煌めきが宿る。まだむず痒さが残るのか噛まれた首元を指でポリポリと掻くニナの眼の前で、メフィスの身体が至るところで牙を剥かせながら避けたかと思えば夥しい量の肉塊を吐き出した。流石の負けん気が強いニナもその有様に口元を押さえながら慄いたが、その恐怖心は徐々に彼女から消えていった。何故ならばメフィスから吐き出された肉塊『飢渇』はヒトガタを型どりながら急激なる成長を遂げ、擬態能力をもってしてニナ瓜二つの複製体となったのだ。
「私がたくさん……まさか!」
「そのまさかよ。さぁ、お行きなさい。みんなを鼓舞するためにね」
自我など持たぬニナの生き写したちは白い翼を羽ばたかせながら戦場内へと散らばっていく。そして、彼女の血に刻まれた記憶が彼女たちが成すべくことを誰にも指示されること無く発揮し、聖者が放つ奇跡の光とともにデスギガスに屈しつつあった闇の救済者を導く聖なる篝火となったのだ。
「あれは……聖女様!?」
「そうだ。俺たちは、俺たちは……諦める訳には行かないんだ!!」
癒やしの淡い光が絶望に打ちひしがれようとしていた闇の救済者らに希望を指し示し、同時に賦活を促すことで崩れかかっていた軍勢は押し寄せるオブリビオンの群れに再び激突する。雄叫びと剣戟の応酬が戦場内を再び響かせ、徐々にだが有象無象のオブリビオンの軍勢は肉壁へと追いやられていく。
「ほら、私たちもさっさと行くわよ、あんなの所詮は紛いもんだし……本物のアンタが矢面に立たなきゃ意味ないんだから」
「そうよね……うん! 一緒に往きましょう、メフィス!」
聖女は邪さを一切感じさせない笑顔を向けさせながら、メフィスへと手を差し伸べる。やっぱり本物には敵わないわね──スンと鼻を鳴らした彼女は差し伸ばされたニナの手を確かに受け取り、肉壁へ迫りつつあるデスギガスを討つべく屍山血河の戦場を駆けた。
『あ、あれ……? おかしいな、押し返しつつあるぞ? ま、いいか。どうせボクがこの壁を壊しさえすれば、歓喜の門から吐き出し続けるオブリビオンを妨げる障害物は無くなるしね!』
ズシンズシンと地響きを鳴らしながら、デスギガスは猟兵と闇の救済者、オブリビオンの陣営を二分させる肉壁の守りを破らんと無機物の構造物で構成された足を速め、大きく裂けた口から悍ましき笑い声を噴出させながら突撃を行う。
「遂に勝負を仕掛けてきたわね。ニナ、私とあの壁に祝福を与えて!」
「メフィスには分かるけど、どうしてあの壁にも……?」
「いいから! つべこべ言わずやって頂戴!」
メフィスの意図を組み上げれないまま、ニナはレイピアの切っ先を高らかに掲げて祝福の光をメフィスとその分身たる飢渇によって築かれた肉壁に与える。すると、どうであろう。闇の救済者たちの大反攻によって壁際まで押されたオブリビオンの群れが、今まで壁として微動だにもしなかった飢餓の塊が喰らうように取り込んでいくではないか。
内側外側関係なくオブリビオンを取り込み続ければ、肉壁は更に厚みを増して肥大化して行く。デスギガスはそんなことをしても破壊してやるもんねと、脚をぶつけ弾力性ある肉壁を破壊しようとしたその時。何かが勢い良く歓喜の門へ目掛けて射出された。
「アンタが散々吐き出したオブリビオン、そっくり全部お返ししてあげるわ!」
肉壁より弾け飛んだ物体、それらは取り込んだオブリビオンらを材料に質量を増大させた|肉塊《飢渇》において他ならない。更にはその材料には役目を終えたニナを模した飢渇も含まれている。なおも模造された聖女は僅かにであるが奇跡の光を放っており、それが本物の聖女から与えられた奇跡の光を持ってして更に威力が高められている。
とは言え、乾坤一擲の巨砲は一発限りである。故にデスギガスの腹部で蠢く歓喜の門へ確実に当てるため、その素材を集めるだけの時間も相まってここまでの接近を許させざるを得なかったのだ。
だが、その威力は申し分なく発揮され、虚を突かれたデスギガス目掛けて放たれた巨弾は確かに歓喜の門へと吸い寄せられるかのように命中し、その内部で素材となった骨身や血潮らを四散させながら炸裂したのだ。
『な、何が起きたの!? ボクの歓喜の門が暴走して……流れが逆流してる!?』
未だに事態を把握しきれていないデスギガスが慌てふためくが、それも歓喜の門が完全に破壊されて下層から上層へと吐き出される機能が暴走すれば無理のない話である。今や歓喜の門は崩壊しつつ、主であるデスギガスを呑み込まんとしているのだ。
『ヤダヤダヤダ! ボクはもっと遊びたいのに、もっと愉しみたいのに!?』
「笑わせるわね。今までアンタがやってきた罰よ。散々楽しんできたのなら、消えてなくなりなさい」
凄まじい暴風が吹き荒れる中、あれに吸い寄せられまいとニナとしがみつき合っているメフィスは目を細めながらも削られていくデスギガスを見据え、中指を立てて消えゆく禁獣へと吐き捨てるようにその最後を確かに視た。デスギガスの断末魔が嵐の唸りが過ぎ去るように消えると、身を守り耐えていた闇の救済者らが上空を見上げた。
確かに先程までそこに居たはずの禁獣、ましてやオブリビオンの大群は何処にもおらず、ただただ荒涼とした禁獣領域であった大地が果てしなく続いているだけである。誰かが上げたのか知らないひとつの歓声が上がったかと思えば、次々と上げられたそれらはひとつの大きな喚声となって周囲を震わせ、猟兵も闇の救済者らも互いに生きていることを確かめ合いながら勝利を称え合っていた。
大成功
🔵🔵🔵