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山桜の大樹の元で

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●白昼夢のような幻想風景
 身を切るような寒さが和らいで、暖かな春の風を感じるこの頃。
 吹き抜ける風に弄ばれた、山桜の花びらが目の前にはらりと舞い落ちた。
 見上げてみれば、山里の原風景の中に聳え立つ見事な山桜の大樹。
 若葉の芽吹きと共に、ふくらんだ薄紅色の花弁が今まさに咲き誇ろうとしていた。

 春の気配を感じ、山にあふれる自然は生命力と喜びに満ちてーー。
 しかし、春の訪れは邪な者もまた呼び寄せるのであった。

●グリモアベース
「最近少しずつ暖かくなって来たよね。皆はサムライエンパイアの桜って見た事あるかな?」
 リリーナ・ロリポップ(バーチャルキャラクターのゴッドペインター・f01947)は好奇心に目を輝かせ、身を乗り出して猟兵達に語り掛けて来る。
「きっとすっごくキレイなんだろうなぁ。……でも、こんな所にまでオブリビオンが現れるなんて!」
 なんてこった! という顔をして、すとんと椅子に着いた。
「きっとオブリビオンも春の気配につられて来ちゃったのかな?
 なんだか憎めないけれど、放っておいたら人里に下りて村人達が危険な目に遭っちゃうかもしれないね。
 そういう訳でオブリビオン退治をお願いするよ!」
 そして、見事に退治した後はーー。
「お花見して良いんだって! 折角だから、ゆっくりしてくると良いよ♪」
 サムライエンパイアの古き良き里山の中に、ひと際大きく逞しく枝葉を伸ばした山桜の大樹。
 長きに渡る戦乱の世を見守って来たのかもしれない、とても古い樹木である。
 山の中と言えど、木の下は存分に戦ったり敷物を広げて宴をするのに充分な開けた場所になっている。
 そして、リリーナのグリモアベースは、花びらの降る山桜の大樹の下へ導くのであった。


koguma
 オープニングをご覧いただきありがとうございます!
 今回はサムライエンパイアからお送りします。

 里山の中に聳え立つ、山桜の大樹の下での戦闘です。
 桜は八分咲き程度で、戦闘中もはらはらと花びらが降って来ます。
 時間帯は昼下がり、快晴です。
 木々や下草が生えていますが、戦闘に支障のない広いスペースです。
 村人等は近づかない場所なので人払いや避難等の必要はありません。

 3章はお花見です。
 プレイングでお声掛けがあった場合のみリリーナが登場します。

 途中の章からの参加も、もちろん大歓迎です!

 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております♪
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第1章 集団戦 『水晶宮からの使者』

POW   :    サヨナラ。
自身に【望みを吸い増殖した怪火】をまとい、高速移動と【檻を出た者のトラウマ投影と夢の欠片】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    夢占い
小さな【浮遊する幻影の怪火】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【鍵の無い檻。望みを何でも投影する幻影空間】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    海火垂る
【細波の記憶を染めた青の怪火】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナイ・デス
桜も敵も、綺麗、ですね
……ソラ(f05892)桜を散らさないように戦わないと、ですよ?

【生まれながらの光】で、ソラを
近くに他の猟兵さんもいれば、その人も癒す支援を、します

回復役と思って狙ってきたら
私はヤドリガミ。本体無事なら再生するので
【覚悟・激痛耐性】で耐えて
もし四肢など失っても【念動力】で補って
【カウンター】刃をだして【暗殺】
【生命力吸収】で、生命を奪い、回復します

もし檻に吸い込まれた場合
私の望みは、ソラといること
……幻影のではなく、本物の、です!
ということで、外にでます

トラウマは9年前のソラとの別れ
投影するか、してもどうくるか、わかりませんが
何度でも、ソラを探して、みつけます!


ソラスティベル・グラスラン
ふわぁぁーっ…!
薄いピンクに色付いた、なんて美しい光景でしょう!
これはお仕事の後が楽しみですね、ねえナイくん(f05727)っ

【盾受け・かばう】でナイくんを守り、いざ勇猛に突撃!
敵の高速移動を【見切り】、斧を広く振り回す【範囲攻撃】を!

わっ、油断して檻に吸い込まれてしまいましたっ
わたしの望みは『勇者パーティ』を作る事
強く頼れる、勇気ある仲間たちと共に、あらゆる英雄的冒険を…
……いえ、ダメですね。だってここにはナイくんがいませんから!
とりゃぁーっ!【勇者理論】!!

トラウマは『ナイくんとの別れ』
9年前に急に消えてしまったナイくん…今度は絶対に見失いませんよ
ナイくんはいつだって傍にいてくれますから!


パーヴォ・シニネン
※イルカ、鯨等の海洋生物を模したマスクが子供に憑依

ふむ、オブリビオンも春を好むのか
しかし村人が危険ならば排除すべきだろうな
征こうか相棒(肉体に話しかけ

我輩達は食べなくては何もできないのでね
まずは持ってきた熱々の焼き鳥を【大食い】でもりもり食べようじゃないか
相棒、しっかり食べたな?よし、戦おう

ははぁ、そのような見た目では食べ甲斐がないというもの
クラゲ如きに負ける我輩達ではないよ
などと【挑発】しつつ他猟兵が攻撃しやすいよう隙を作ろう
まぁそもそも大抵のクラゲには毒があるので食べてはいけないゾ、相棒

まだまだ若輩者とはいえ、フォークとナイフは用意してあるさ
しっかり君達を刺身のように斬り刻んでみせようとも



 快晴の空の下、里山の中に一際見事な山桜が聳え立っていた。
 春風に吹かれた花びらがちらちらと降る中、怪火を纏ったクラゲ達が虚ろに漂っている。
「ふわぁぁーっ……! 薄いピンクに色付いた、なんて美しい光景でしょう!
 これはお仕事の後が楽しみですね、ねえナイくんっ」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)へ天真爛漫な笑顔を向けた。
「ええ。桜も敵も、綺麗、ですね。
 ……ソラ、桜を散らさないように戦わないと、ですよ?」
 ナイは普段通りの落ち着いたトーンで返事をしたけれど、美しい光景に高揚する気持ちはソラスティベルと一緒だ。
 ふわんとクラゲが漂いながらナイへと近づいて、今にも触手が触れそうになった刹那、
「ナイ、下がって下さい!」
 盾を構えてナイの前へと踏み出し、ソラスティベルはその盾で怪火を受け止めた。
「ありがとう、ございます」
「いえ! ナイくんを守るのは当然ですから!」
 凛々しく笑みを向けるソラスティベル。
 しかし、木の下を漂うたくさんのクラゲ達は、再び2人に纏わりつくように近づいてきた。
「わっ、油断して檻に吸い込まれてしまいましたっ……」
「ーー! ソラ!」
 怪火が触れて、夢の中へ意識が遠のいて行く。
 ああ、ナイが呼ぶ声が聞こえる。

 夢の檻に沈んだ意識の中で。
 ソラスティベルの”望み”は『勇者パーティ』を作る事。
 強く頼れる勇気ある仲間たちと共に、あらゆる英雄的冒険を……。
 そして彼女を追って、ナイの意識も夢の中へ沈んでゆく。
(「ソラ、どこに居るのですか?」)
 空虚な夢の中で、孤独なナイの前にソラスティベルが現れた。
(「よかった。そこに居たの、ですね」)
 いつもと変わらない元気な笑顔で傍に居てくれるから、もう安心だ。
 ナイの”望み”はソラと一緒にいる事だから。
 それぞれの望みを吸って、みるみる内に怪火が増殖してゆくーー。

(「ふむ、オブリビオンも春を好むのか。しかし村人が危険ならば排除すべきだろうな」)
 グリモアベースから降り立ったのは、イルカや鯨等の海洋生物を模したマスクを付けた子供であった。
 しかし本体はマスクの方である。
 パーヴォ・シニネン(波偲沫・f14183)というのが、ヒーローマスクの彼の名前であった。
「征こうか相棒」
 マスクからの呼びかけに答えるかわりに、子供は山桜の大樹の下へ進んだ。
 彼らが目にしたのは、檻に囚われて意識を失った2人と、沢山の怪火を纏い、漂うクラゲ達だった。
 夢を糧にした怪火は鮮やかに燃えて、ふわんふわんと漂うクラゲ達と風に揺れる桜の花が、
 この世のものとは思えぬ幻想風景を生み出していた。

 しかし呆然と見蕩れている訳にもいかない。
「む、こうしては居られない!
 相棒、先ずはその熱々の焼き鳥を平らげてしまおう」
 マスクの下の暗い目をした子供は頷いて、持って来た焼き鳥を食べ始めた。
 倒れている猟兵達をすぐに助けてやりたいが、助けてやりたいからこそ、先ず腹を満たす必要があった。
「相棒、しっかり食べたな? よし、戦おう。
 何せ我輩達は食べなくては何もできないのでね」
 夢中になって焼き鳥を食べ終えると、全身の細胞が活性化して力が漲ってくる!

 時を同じくして。
 心地よい夢に囚われていたソラスティベルが目を見開いた。
「……いえ、ダメですね。だってここにはナイくんがいませんから!」
 括目した青い瞳には、一片の迷いもなく。
「とりゃぁーっ!」
 ソラスティベルの信条ーー勇気、気合、根性の勇者理論で強化して、
 檻の扉を抉じ開け、外へ飛び出した。
「ナイくん、大丈夫ですか?」
「……はい」
 ナイはゆっくりと意識を取り戻すと、ソラスティベルへはっきりと応答した。
 幻想ではなく、本物のソラスティベルと共にいる事を選んだからこそ、こうして戻ってくる事が出来たのだ。
 信頼の眼差しで見つめ合う2人へ、沢山の怪火を纏ったクラゲがトラウマを放射し……。
「「ーー!!」」
 2人の脳裏に甦ったのは、同じトラウマだった。
 9年前急に消えてしまったナイ。
 あの日突然訪れた別れを、繰り返しはしない!
「何度でも、みつけます!」
「……今度は絶対に見失いませんよ! ナイくんはいつだって傍にいてくれますから!」
 強い気持ちが再び2人を、現実へ呼び戻した。
「乗り越えたようだな! 君達、無事か?」
 子供の肉体を借りてパーヴォが呼びかけると、2人は弱々しく頷いた。
 外傷を受けるような攻撃でこそなかったが、気力を根こそぎ奪われた疲労感がのしかかる。
(「ここは我輩達に任せてくれ」)
 2人にだけ聞こえる様に呟いて。
「ははぁ、そのような見た目では食べ甲斐がないというもの。クラゲ如きに負ける我輩達ではないよ」
 クラゲ達は、パーヴォの声に反応してふわんふわんと彼の周囲に集まった。
 その隙に、ナイは生まれながらの光を輝かせて、ソラスティベルを包み込み癒してゆく。
「もう、大丈夫です」
「ありがとうございます! わっ、ナイくん!」
 力を使ってふらついてしまうナイを、ソラスティベルはひしっと受け止めた。
 疲れた体に鞭打って回復してくれた気持ちを汲み取って、ソラスティベルはクラゲへ斧を振りかぶる。
 望みを吸って高速移動するクラゲ達の動きを、見切ってみせ、
「ーーそこです!」
 斬撃がクラゲ達を斬り裂き、刃先が地面にめり込んだ。
 衝撃で桜の花びらが降り、地面にへたり落ちたクラゲに雪のように積もってゆく。
 仲間のクラゲが寄り集まって、細波の記憶を染めた青の怪火に触れ……。
 回復したクラゲは勢いよく跳躍し、今度はナイへ襲い掛かるが、
 とす。と、手首に仕込んだ短剣が、クラゲの傘ごと樹木の幹へ刺突した。
 短剣が突き刺さり、くったりと脱力したクラゲから、
 透き通るキラキラした生命を吸収して、回復するのだった。

 檻から出た猟兵達は、もう怖いもの無し。
 パーヴォも勢いに乗じて、グルメツールを振り回す。
 両手にそれぞれ、大きなフォークとナイフを握りしめてーー!
「しっかり君達を刺身のように斬り刻んでみせようとも」
 目の前を漂っていたクラゲは、切れ味の良いナイフで切り揃えられて、
 透き通った活きの良いお刺身のようになった。
 常にお腹を空かせた子供故に、無意識に切り刻んだクラゲへ伸ばした手を、
「おっと、大抵のクラゲには毒があるので食べてはいけないゾ、相棒!」
 パーヴォの声にはっとして、引っ込めるのであった。
 それぞれに斬撃を放つ猟兵達の頭上に、絶えず花びらが降ってくる。
 あちらこちらに浮遊するクラゲと戦う様は、まるで舞い踊るかの様であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルビィ・リオネッタ
相棒にして恋人の六道紫音(f01807)と参戦

花は大好き
樹を傷つけたくないわ
『操りの盾』で火を防ぎましょう

(あら?この火、熱くない…)

・夢占い
綺麗に飾り立てた檻の中にいた小さい頃

あれが欲しいと、小さくて可愛いと誉めそやす外の子供の声
あの子達の手を引くアタシに無い存在
…いつかお金の心配が無くなって、本当の親が迎えに来てくれる

「…って、ずっと願ってたの。叶うなんて…!」

どこか似ている妖精の大人2人
胸を弾ませ手を取るわ

・脱出
嫌。やっと会えたのに消えないで
揺らぐ夢の欠片
もう檻の中もひとりも嫌なの

…ようやく思い出したわ。ひとりじゃないって

「ごめんね、シオン。…すごくいい夢だったの」

彼の隣で剣を握り直すわ


六道・紫音
相棒にして恋人のルビィ(f01944)と共闘

花見…やはり春ならばしておかねばなるまい。
愛するルビィと、な。
「その前にまずは一仕事だ、片付けるぞ…ルビィだ!」

・戦術
「俺の剣ならば数など問題にならん」
『鎧無視効果』で弱点を狙い『怪力』を発揮して膂力を高め『早業』で極限まで剣速を早めた【裏奥義《虚》】を『残像』を伴いながら次々に繰り出し敵を素早く斬り捨ててゆき、撫で斬りとする。
「ルビィ?!」
ルビィが囚われてしまったら、相手の攻撃を『第六感』と『見切り』で見極めて紙一重で回避しながら『カウンター』でルビィを助ける為に夢の欠片を叩っ斬る。
「夢で終わらせるな、ルビィ!俺はお前を離さない!」

※アドリブ歓迎



 山桜へ近付いて見上げてみれば、感嘆を漏らすほど見事な大樹の枝葉が視界いっぱいに広がった。
 ひらりと散り落ちた花びらが鼻先を掠めて……此処で花見をするのが楽しみである。
 愛するルビィと一緒であれば尚の事。
「その前にまずは一仕事だ、片付けるぞ……ルビィ!」
 透き通った蝶の羽をもつルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)は、羽ばたいて六道・紫音(剣聖・f01807)に寄り添った。
 ふたりは相棒にして、種族を超えた恋人同士。
「花は大好き。樹を傷つけたくないわ」
 大樹の幹に愛おしそうに触れて、
「これでどうかしら?」
 ルビィは妖精の盾をぽんぽんぽんっと沢山複製して、樹を護るようにバランスよく配置した。
 その【操りの盾】の配置が済んだ事を確かめて、紫音は刀に手を掛け、
 鋭い眼光をクラゲ達へ向けた。
「俺の剣ならば数など問題にならん」
 只々宙を揺蕩うばかりのクラゲ達の弱点を、早くも紫音は見極めたのであろう。
 力強く踏み込む足。迷いのない太刀筋、そして極限まで剣速を速めた裏奥義《虚》を用いた斬撃は、
 衝撃波となって狙ったクラゲを片っ端からほろほろと藻屑へ還してゆく。
 残像を伴った早業で斬り捨てられたクラゲは、
 妖精の盾にぺしゃりと叩きつけられて、桜の木は絶え間なく守られていた。
 順調にクラゲの駆除が進んでゆくのだった。
 この時まではーー。

 ふわんと揺蕩うクラゲが、ルビィの目の前にやって来た。
 纏った怪火は煌めいて、どこか不思議な魅力を感じる。
(「あら? この火、熱くない……」)
 不意に触れてしまった途端、神隠しのように檻に囚われてしまったのだった。

 アナタノ ノゾミヲ ミセテ。

 気がつけば、綺麗に飾り立てた檻の中。
 ルビィは小さい頃の居場所に閉じ込められていた。
「あれが欲しい」
「小さくて可愛い」
 幼いルビィを檻の外から覗きこんで、誉めそやす子供の声が聞こえる。
 そんな子供達の手を引く存在をーー、
 羨ましくてつい目で追ってしまう。
(「アタシには居ない。
 ……ううん。いつかお金の心配が無くなって、本当の親が迎えに来てくれる」)
「……って、ずっと願ってたの。叶うなんて……!」
 笑顔で手を差し出す、妖精の大人が2人。
 物心つく前に離れて顔も分からないけれど、きっとアタシの両親だわ。
 どこか似ているもの。
 胸を弾ませて。差し出された手を取った。

「ルビィ?!」
 必死に呼ぶ声が聞こえる。
 聞き慣れた、愛しい……声。

 檻に囚われ、眠っているように見えるルビィへ近づこうとすると、
 途端に攻撃的になったクラゲ達が紫音に襲い来る。
 だがクラゲ達の猛攻を見切り、纏わりつく怪火を紙一重で避けながら進む、斬る。
 檻の前、行く手を阻む最後の一匹を斬り捨てて、
「夢で終わらせるな、ルビィ! 俺はお前を離さない!」
 振り下ろした宝刀《皇月》は、夢の欠片を叩っ斬った。

 目覚めたルビィの目には、一筋の涙。
「……嫌。やっと会えたのに消えないで。
 もう檻の中もひとりも嫌なの」
 絞り出すように呟いた言葉。
 両親へ差し出したはずの手は空を切り、揺らぎ消えた夢の欠片の先に、紫音の顔が見えた。
(「……ようやく思い出したわ。ひとりじゃないって」)
 差し出された手。
 今度は夢なんかじゃなく、本物の紫音の手を取って、
 ルビィは檻の中で立ち上がった。
「ごめんね、シオン。……すごくいい夢だったの」
 鍵の無い檻を出て、紫音の隣でクラゲ達へ剣を握りなおす。
「もう、大丈夫よ」
「……そうか。では行くぞ、ルビィ!」
 クラゲの群れへ飛び込んでゆく紫音の背中を頼もしく感じながら、ルビィも銀のレイピアを振るうのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リル・ルリ
■ふうた(f09635)と一緒
✼アドリブ等歓迎

「桜、桜。山桜、観るのは初めてかな。ふふ、一足早い春、楽しみだね、ふうた」
桜はすき
お花見、してみたかったんだ

舞い散る桜に微笑んで、ふうたは?と問いかける
ふうたも好きなら、僕も嬉しい

「けれど、あのクラゲは――いてはいけない存在、かな」

ふわりゆらり、中々攻撃も当たらなそうなくらげに
ふうたが困らないように僕は歌で君を支援しようか
【歌唱】を活かして歌うのは「魅惑の歌」
クラゲさん
少しだけ僕を見てて

目や耳があるのか知らないけれど
あってもなくても同じ
ききたいことあるならば
聴いておいで

クラゲと語ら君を見守って
桜吹雪に揺蕩う海月を見送ろう



でも次は、僕の歌も聴いてよね


糸縒・ふうた
リル(f10762)と一緒
アドリブ・改変等歓迎

わぁあ、おっきいし、すっごくきれい
敵じゃなかったら互いに映えてきれいだったろうに、残念だ

リルがだいすきな桜
オレもすきだよ
終わったら、お花見しようか


形のないものには、形のないもので対応しよう
【怨気満腹】のあの人たちに手伝ってもらうよ

動物とは違うからうまく話せるかわからないけど
リルが動きをとめてくれた子に
君たちの望みはなぁに?ってきいてみよう

具体的な答えが返ってきたら、その夢を
そうでなかったら、ことのはを

ゆらり、揺蕩う海のなか
とろり、蕩けて祖へとお還り

リルの歌声にはいつも聞き惚れてしまうけど
今日だけは、特別

あなたたちのことばに唯一、耳を傾けよう



「桜、桜。山桜、観るのは初めてかな。ふふ、一足早い春、楽しみだね、ふうた」
 はらり降る、花びらを映すリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)の瞳もまた、薄花桜色に輝いて。
 その隣に、糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)が歩み寄る。
「わぁあ、おっきいし、すっごくきれい。
 敵じゃなかったら互いに映えてきれいだったろうに、残念だ」
 春風に吹かれて気ままに揺蕩うクラゲ達と、桜の織りなす幻想風景に思わず感嘆を漏らした。
「桜はすき。お花見、してみたかったんだ」
 リルは舞い散る桜に微笑んで、
「ふうたは?」
「オレもすきだよ。
 終わったら、お花見しようか」
 その答えに、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「けれど、あのクラゲは――いてはいけない存在、かな」
 柔和な表情は、クラゲを見つめて凛としたものに変わる。
 桜の下の住民となっているクラゲだが、その正体はオブリビオンなのだから。

 見つめる先に、宙を泳ぐクラゲ。
「クラゲさん、少しだけ僕を見てて」
 手を伸ばせば触れそうな程近づいたかと思えば、
 何処へいくのか、ふわりゆらりと昇り去る不思議な動きをみせている。
「何を見ているの どこを見ているの 何を聴いているの――」
 奇跡のように澄み切った透徹の歌声が、山桜の下に響きわたる。
「そんな暇があるなら、僕をみて 僕の歌を聴いて。離して、あげないから」
 虚ろなクラゲ達の魂すら、リルの歌声に陶酔してーー、
(「目や耳があるのか知らないけれど、あってもなくても同じ。
 ききたいことあるならば、聴いておいで」)

 ふうたは頷いて、
 怨気満腹を唱え『殄滅させられた先祖の霊』と共に、
 歌声に魅了され動きを止めたクラゲへ問いかけた。
「君たちの望みはなぁに?」
 反応をみせないクラゲ。
 動物とは違う存在故に、話す事は出来ないのかと肩を落とした刹那、
 怪火が命を燃やすかのように、強く輝いた。
「そうなんだね、君たちにも想いがあるんだ」
 ふうたは驚きに目を見開き、尻尾を無意識にぱたぱたと振った。

 それを見守りながら、リルは歌い続ける。
 いつもなら聴き惚れてしまう歌声だけれども、
(「今日だけは、特別だよ」)
 唯一、炎で語らうクラゲのことばに耳を傾けて。
「ゆらり、揺蕩う海のなか。
 とろり、蕩けて祖へとお還り」
 ふうたの傍で、先祖狼の霊がことだまを放てば、弾けたクラゲは泡のように消えて行った。
 リルの透き通る歌声の下では、海火垂るを灯す隙も無く……。
 時折春風が吹く度に巻き起こる花吹雪の中で、
 ふうたとクラゲの語らいが続いた。
 見守るリルは、
(「……でも次は、僕の歌も聴いてよね」)
 少しジェラシーを感じたけれど。
 花吹雪ふる中、日を浴びてきらきらと光り揺蕩う海月をふうたと共に見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
もう桜が咲いてるんだ。UDCアースで見る桜とは景観がまた違うんだね。
アンテロ(f03396)は桜を知らないの?
じゃあゆっくり楽しむためには余計な物は片付けなくちゃね。
…俺たち桜からちょっと浮いてない?

あちこち飛び回られるの邪魔だなぁ。
俺がユーベルコードの磔で動きを止めるからアンテロに攻撃は任せよう。
桜に見惚れて隙を見逃したりしないでね。
ああ、空間ごと封じるから桜も巻き込まれたのか。そういうオブジェみたいになってるね。

…って、うわ、ちょっと。
アンテロに盾にされて敵から一瞬視線が外れるが慌てて戻す。
なんて非道な行いなんだ…。

桜に釣られて出てくるなんてオブリビオンも美しいものに惹かれたりするのかな。


アンテロ・ヴィルスカ
由紀君(f05760)はこの花木、知っているのか
故郷では見た事がないが…悪くないね
桜、君は割と似合っているぞ?

さて冗談は程々に
由紀君のWIZで射止められた敵を双剣で斬りふせる。
せっかくだ、俺はUCは使わず剣先で降ってくる桜と戯れよう。

しかしガラス細工のような敵だね。
おや、桜も一緒に止まってしまっている?
…磔とはよく言ったものだなぁ。

敵が炎を出せば少々拝借
こちらが受けて害がないなら仲間を回復される前に間に入ってしまおう。
ぼんやりしている由紀君を盾にしてもいいな。
目はしっかり開いていてくれよ?

桜に惹かれて、か。
可愛い気あるオブリビオンなのか、この花木の魔性か…
いや、両方かもしれないね。

アドリブ歓迎



「もう桜が咲いてるんだ。UDCアースで見る桜とは景観がまた違うんだね」
 新芽と共に花をつける山桜。
 里山の原風景と相まって、UDCアースのそれとは違った風情のある光景が広がっていた。
「由紀君はこの花木、知っているのか」
「アンテロは桜を知らないの?」
 桜を見上げていた鹿忍・由紀(余計者・f05760)は、視線をアンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396へ向けた。
「故郷では見た事がないが……悪くないね」
「じゃあゆっくり楽しむためには余計な物は片付けなくちゃね。
 ……俺たち桜からちょっと浮いてない?」
「桜、君は割と似合っているぞ?」
 居心地悪そうに呟く由紀へ、アンテロは飄々と言ってのけ、
 冗談は程々にと金色の瞳を細めて、黒い双剣を構えるた。

 それにしても。
 山桜の大樹の下で、のびのびと揺蕩うクラゲ達は掴みどころがなく。
「あちこち飛び回られるの邪魔だなぁ」
 由紀がクラゲ達へ視線を向ければーー、
(「止まれ」)
 その瞬間、2人の周囲は切り取られてしまったかの様に動きを止めた。
 独特のリズムでフワフワと舞っていたクラゲ達も、妖しく燃える怪火も、降る花びらさえも。
「しかしガラス細工のような敵だね。
 おや、桜も一緒に止まってしまっている?
 ……磔とはよく言ったものだなぁ」
 ドライ気質のアンテロには珍しく、感心したようにぐるりと周囲を見渡すと、
「ああ、空間ごと封じるから桜も巻き込まれたのか。そういうオブジェみたいになってるね」
 由紀は気だるげに言葉を返した。
 ーーその実、磔を維持する彼の視線は緊張を解く事は無く。

 十字架を模した黒い双剣【Twin-Miekka】を構えて、ここはアンテロの独擅場。
 時を止めたクラゲ達を、面白いように次々と切り伏せてゆけば、
 正にガラス細工のように、砕け落ちた亡骸は花びらにうずもれた。
 運よく磔を逃れたクラゲが、細波の記憶を染めた青い炎を灯して仲間へ寄り添うが。
(「俺達に危害が無いのなら、恐れる必要もないな。ならばーー」)
 アンテロは躊躇なく、ぼんやりとしている由紀を盾にして、
 青い炎のクラゲの前へ割って入った。
「目はしっかり開いていてくれよ?」
「……って、うわ、ちょっと」
 一瞬視線が外れ、はらりと大地へ落ちる花びら。
 由紀が慌てて視線を戻すと、ふわんと揺れるクラゲの触手は再びピタリと動きを止めた。
「なんて非道な行いなんだ……」
 文句を背中に受けながら、再びクラゲ狩りに精を出すアンテロ。
 降ってくる桜の花びらと戯れながら……。
「桜に釣られて出てくるなんて、オブリビオンも美しいものに惹かれたりするのかな」
「そうだな。桜に惹かれて、か」
 クラゲを斬り捨てたアンテロはふと、山桜の大樹を見上げた。
「可愛い気あるオブリビオンなのか、この花木の魔性か……。
 いや、両方かもしれないね」
 美しく儚い桜の季節は、泡沫の妖を呼び寄せるのかも知れない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【―morgen―】
団長と弦月は本当に親子の様だな
敵はトラウマ攻撃をすると聞いたが二人ならば大丈夫だろう
俺は【罪告げの黒霧】にて『全力魔法』を駆使しつつ範囲攻撃を行って行こう
花を傷付けぬ様敵のみを気を付け攻撃して行く故、打ち漏らしは確実に出るだろう
だが…彩花の狙いは正確だからな
倒しきれない敵を撃ちぬいて貰えたならば礼を
己への攻撃は『盾受け』にて防ごうと試みつつ仲間に被害が及びそうな場合は『かばう』を
もし庇われた場合は思わず笑みを
…彩花、借りはこの間返して貰った故、気にせんでいいというに…、…だが、助かった
怪火に触れた場合は一瞬動揺するだろうが、すぐに振り払おう
…今の在り方を受け入れて居るのでな


弦月・宵
【―morgen―】メンバーで参加
みんなにありがとう。守ってくれるからじゃなくて…でも(言葉にならないや)

山里、桜、春…。
きれーだね、ぼうっとしてたら何処かに連れていかれそう。
そう、そうだ。オレは「遠くへ行きたい」って、思ってた。どこでもいいから。

クラゲ達の火には気を付けるよ。
背後を取られないよう、仲間と背中合わせで動きを見る(主に丈一兄ぃ)。

【UC:ゆるゆら】の攻撃は針状のルチル(金紅石)を飛ばす。 数を巻き込みたいけど、桜に当たらないようには注意。
「破魔」の一撃で倒せなければ、弱ってるやつを「追跡」して「援護射撃」するよ。
守られるだけはヤだ!

「今の、オレの居場所はここ。ばいばい…またね?」


彩花・涼
【―morgen―】で参加
山桜か、皆でする花見が楽しみだな
その為にもさっさと片付けてしまおうか、弦月の為にもな

一駒と弦月をサポートする感じで動こう、二人とも楽しそうに戦っているな
ザッフィーロの範囲攻撃に合わせて、逃れた敵を黒爪で【スナイパー】撃ち抜いていく
近づいてきた場合は黒華・改で【生命力吸収】で体力を削り斬り捨てていく
弦月を守るのは一駒に任せ、私は花巻とザッフィーロに来る攻撃を【かばう】ように動く
その際はUCの高速移動で割り込み、黒爪で【武器受け】して【カウンター】で斬撃を食らわせよう

幻影の怪火に触れた場合は抵抗する
抵抗しなくとも、私の望みはおそらく投影することは出来ないだろうがな…


花巻・里香
【―morgen―】
とても素敵な場所だものね。
丈一さんと宵さんの親子で兄妹のような関係は見守りつつ【魅惑の外装人形】で海月達を誘き寄せ、距離が近い程対象を自由に操るフェロモンによる魅了に成功したのなら同士討ちや自壊命令を。
夢占いの怪火は私も【蟲惑の小部屋】(今回は未使用)等似た様な攻撃手段を持つからね。怪火の不意打ちだけでなく触手での拘束や毒にも注意していきましょ。

離れた相手には【偽瞳孔の外装人形】範囲内の海月達に呪いの視線を憑け、強く見られている感覚で恐怖や動揺を誘い、好機を作り出していくわ。
ついでに丈一さんにも軽めに憑けておきましょうか。ほらみっともないところは見せられないでしょう?


一駒・丈一
チーム【―morgen―】で参加(計5名)。

あの海月……
隠世というか……別の空間に誘う類の敵だろうか。
俺の過去の経験からの『戦闘知識』や『第六感』がそう告げている。
あの怪火には気を付けねば……最大限に抵抗させて頂こう。


敵は大勢。
囲まれ背中から攻撃を食らう可能性がある。
特に、宵の宿敵でもあるので、
宵に集中攻撃が行かぬよう、背中合わせで互いの背後を『かばう』ような立ち位置を維持し
周囲の敵をUC『罪業罰下』で、『早業』を以てその怪火ごと切り伏せよう。

里香の同士討ち誘発、ザッフィーロの範囲攻撃、涼の遠隔射撃等と織り交ぜ、
上手く連携し確実性を重視して仕留めていこう。

何せ、この後は花見をせねばならんしな。



【―morgen―】の5人が足を踏み入れたサムライエンパイアの里山は、
 新緑が芽吹いて、そこかしこに春の訪れを感じられる。
 一際大きく聳え立つ山桜の大樹の下に立てば、花びらが風に吹かれてはらはらと舞い落ちた。
「きれーだね、ぼうっとしてたら何処かに連れていかれそう」
(「そう、そうだ。オレは『遠くへ行きたい』って、思ってた。どこでもいいから」)
 ふとそんな想いに駆られて、山桜と宙を漂うクラゲを見つめる弦月・宵(マヨイゴ・f05409)。
「あの海月……。隠世というか……別の空間に誘う類の敵だろうか」
 過去の経験からの戦闘知識、そして第六感が彼にそう告げる。
 一駒・丈一(金眼の・f01005)が隣に立ち止まり、思案顔でクラゲを見上げれば、
「丈一兄ぃ……」
 宵は、はっと我に返り振り向いた。
「あの怪火には気を付けねば……最大限に抵抗させて頂こう」
「うん、そのつもり。クラゲ達の火には気をつけるよ」
 クラゲ達に背後を取られぬよう、背中合わせに武器を構える2人。

「ーーこれにて終いだ。余罪は地獄にて禊がれよ」
 丈一が抜き放った刀の一閃。それは周囲の敵群をたちどころに切り捨て、怪火も一瞬で掻き消えた。
 その一振りの風圧で巻き上げられた花びらが、斬られたクラゲと共にゆっくりと舞い落ちてゆく。
 同時に宵の声が飛び、
「太古より結集し、の大地の結晶よ」
 ルチルの結晶が降り注いで、クラゲ達の柔らかな体を鋭利に刺し貫いた。
 その金黄色の針は、射止めたクラゲと共に儚く消えてゆく。
 桜の樹に当てずに済んだ事にホッと胸をなで下ろすと、
 2人の息の合った戦いぶりを信頼の眼差しで見ていた3人も戦闘へ加わった。
「山桜か、皆でする花見が楽しみだな」
「ええ。とても素敵な場所だものね」
 彩花・涼(黒蝶・f01922)に花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)は頷いて、
「その為にもさっさと片付けてしまおうか、弦月の為にもな」
 宵の宿敵ーー『水晶宮からの使者』達を睨め付けた。

 宵達にやられたクラゲ達のもとへと、細波の記憶を染めた青い炎を宿した仲間が寄り付くが、
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の放った黒い毒霧の吐息に、青い癒しの炎は掻き消された。
 【罪告げの黒霧】の勢いは留まらず、四方八方の敵を飲み込んでゆく。
 しかし咲き誇る花々を傷付けまいと威力を弱めれば、黒霧の薄い所へ目ざとく逃げのびるクラゲも居たのだが。
「任せろ」
 『黒爪』の銃弾が、逃げのびたクラゲを貫いて地面にふわんと跳ねて、弾け消えた。
「……助かった」
「礼には及ばん」
 術に集中したまま、短くやり取りを交わす2人。
 信頼あってこその連携プレーでクラゲ達は着実に数を減らしてゆく。

 こうして戦闘に身を投じる仲間達……特に丈一と宵の、親子で兄弟のような関係を見守りつつ、
 【魅惑の外装人形】を発動させる里香。
 空洞のからくり人形を外套のように纏い、視認出来る周囲のクラゲ達をフェロモンで魅了したのだ。
「いいわ、やってしまいなさい」
 その瞬間から、猟兵達を狙っていたクラゲ達の動きは一変した。
 虚ろにクラゲ同士が向かい合い、締めつけ合う者がいるかと思えば、
 火力を全開にした怪火で自身を燃やし尽くす者もいた。
 そんな禍々しいやりとりさえ、桜降る樹の下での光景は美しかった。

 ようやくフェロモンが切れ、ずいと触手を伸ばしてくるクラゲ。
 アナタノ ノゾミハ?
 心に触れようと躊躇なく近付いて来る敵に、里香は人一倍警戒する。
 自身のもつ『蟲惑の小部屋』と似た攻撃手段であるが故に、術の恐ろしさを誰よりも知っているのだ。
 その触手は、里香に届く前に涼の『黒華・改』に切り落とされた。
 『黒華・改』に生命力を奪われながらも、懲りずに別の触手を伸ばして涼の腕に絡みつくが。
 強く抵抗して振り落とすと、クラゲはするりと触手を解いて、ふわんと飛びのいた。
「退いたか……」
(「私の望みはおそらく投影することは出来ないだろうがな……」)
 軽くため息をついて戦線に戻った、一方で。

 ーーサヨナラ。
 ちらちらと怪火を燃やしながら、心を覗こうと近づいてくるクラゲ。
 吸い込まれるように伸ばしたザッフィーロの指先は、気づけば怪火に触れていた。
 目の前で開く、檻の扉。
 自ら足を踏み入れそうになった一瞬の動揺の後、ザッフィーロは怪火を直ぐに振り払った。
「……今の在り方を受け入れて居るのでな」
 クラゲの術から逃れた、その銀の瞳には既に迷いはない。
 再び襲い来るクラゲを淡く光るエネルギーの盾で受け、弾かれたクラゲはぷるんと震えた。
 しかし、その隙を見計らったように別の個体がするすると触手を伸ばして来て。
 ーーその触手の先が触れたのは、高速移動で割り込んだ涼の『黒爪』の銃身だった。
 【黒蝶の輪舞曲】を発動し黒蝶の群れを纏った涼は、そのまま漆黒の斬撃でクラゲ本体を真っ二つに斬り捨てた。
「……彩花、借りはこの間返して貰った故、気にせんでいいというに」
 ザッフィーロは思わず笑みを零して、
「……だが、助かった」
 と、礼を一言。
 涼は静かに瞬きをして黒剣を構えなおした。

 このように猟兵へ近づいてくるクラゲばかりではなく、気ままに揺蕩うものも居た。
 目的などないと言わんばかりに、離れたところへ泳いでいくが、里香相手ではお目こぼしは無い。
 彼女の赤い瞳がクラゲの姿を捉えれば、その呪いの視線から逃れられる者はなく……。
 強く見られている感覚を受けて怯え竦んだのか、痺れたようにその場で動きを止めた。
 里香は呪いにかかったクラゲを、欲しいままに確実に仕留めてゆき、丈一の耳元でそっと囁いた。
「ついでに丈一さんにも軽めに憑けておきましょうか。ほらみっともないところは見せられないでしょう?」
「……助かるよ、里香」
 里香の作り出した好機に乗じて、丈一はクラゲの残党を斬り捨ててゆく。
 皆の働きで、ずいぶんと数を減らしたクラゲ達がまばらに漂う中。
 宿敵とあって宵に寄り付くクラゲは多く、丈一が必然的にそれを幾度となく切り払うのだった。
「宵、無事か?」
 丈一に、みんなにも、感謝の気持ちがこみ上げる。
 だけどーー。
「守られるだけはヤだ!」
 【ゆるりらゆらりや】を唱えて、降り注ぐルチルの結晶は、宵の強い意志を映すかのように勢いよくクラゲ達へ突き刺さった。
 息絶えてルチルと共に消えてゆく者達の中、弱々しく逃れようと浮遊する最後の一匹。
「逃がさないよ!」
 宵は追いかけて狙いを定め、クラゲの傘に鋭くルチルの結晶が突き刺さった瞬間。
 纏った怪火が消えて触手は項垂れ、触手の末端からうっすらと透明になってゆくように消滅したのだった。
「今の、オレの居場所はここ。ばいばい……またね?」
 クラゲ達は跡形もなく消え去り、山桜を見上げたその時、
 さあっと春風が吹き起り、花びらを舞い上げた。
 それはまるで、猟兵達へのささやかなお礼のように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『妖刀に魅入られた孤独な人斬り』

POW   :    その斬撃嵐の如く
【身体が揺らぐと同時に吹く暖かい風】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鈴の音と共に刻まれる無数の斬撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    水の如き立ち振る舞い
【カウンターの斬撃を加えた後、】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    解放叶わぬ呪い
自身に【妖刀の呪い】をまとい、高速移動と【姿を知覚しにくくなる呪い】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 いつの間にか、山桜の木の下に佇む人影があった。
 はらりと花びらが散り落ちて、人の気配に気づいた彼女は振り向く。
 振り向いたその顔は蒼白で、思いつめたような悲壮感があった。
 可憐な少女の姿に不釣り合いな妖刀を手にして……。
 その妖刀は、血に飢えて妖しく輝いた。
鹿忍・由紀
アンテロ(f03396)の言う通り、俺にも人に見えるよ。物騒なもの持ってるみたいだけど。

あの女の人は操られてるだけなのかな。手荒くするけど悪く思わないでね。

アンテロが敵と相対してる間に、俺もヒットアンドアウェイしてる風に見せかけつつ「罠使い」「ロープワーク」で敵が動いていくと予想される方向の足元に鋼糸を仕掛けておく。
鋼糸側に「おびき寄せる」ように攻撃を与えよう。
目の前の攻撃を避けられるまではこちらも予想のうちなんでね。
アンテロが作ってくれる隙に合わせて絶影で一気に懐に飛び込み「武器落とし」を狙おうか。
呪いならそんなに簡単に落ちないかもしれないけど「破魔」の力もプラスに働いてくれないかな。


アンテロ・ヴィルスカ
おや、先客か。
ヒト…に見えるな、どう思う由紀君(f05760)?

なんて、本人に問うのが一番早いな
【SPD】ブラッド・アグリーメント
彼女の間合いに飛び込んだら、地を蹴り土煙を上げ
目くらましで血の命中を上げる
無論本体が斬撃を受けないよう、注意を払い庇うよ

君に似合わぬ剣だね、お嬢さん
何故それを手に人を斬るんだい?

敵からの斬撃は双剣と鎧で受け止め防ごうか
武器改造で刀とやらを真似てみるかな。

全ての攻撃を見切れるならお見事、達人だ
だが此方は二手、それを生かさない理由はない

由紀君に動きを合わせ、外套と己の身を使い動く障害物になるよ
不規則な動きで敵の予想を超えていこう

予想と予知は別物だからな?

アドリブ歓迎



 降り注ぐ春の日差しの中、野鳥の囀りが聞こえる。
 まどろむような空気に包まれた山桜の下には、禍々しい妖刀を構えた少女が佇んでいた。
 桜を愛でるでもなく、彼女は近付いて来る猟兵達を冷酷な眼差しで見つめていた。
「おや、先客か。ヒト……に見えるな、どう思う由紀君?」
「アンテロの言う通り、俺にも人に見えるよ。物騒なもの持ってるみたいだけど」
 アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)と鹿忍・由紀(余計者・f05760)は妖刀の持ち主から、ひしひしと殺気を感じていた。
 皆、平静を装っているものの、状況は一発触発。
 緊迫した無言の時間を打ち破り、アンテロは普段通りのトーンで囁いた。
「お嬢さん、独りでこんな所へ来てどうしたんだい?
 花見という訳ではなさそうだーー」
 言葉を遮るように、少女は一瞬でアンテロへ距離を詰め妖刀を振り下ろすが。
 彼の双剣が刀を受け止め、少女は悪態をついて飛び退いた。
 アンテロが武器改造を施した双剣は、刀へ姿を変えて少女と剣を交える。
 そして由紀もダガーを手に、2人の織りなす攻防に飛び込んだ。
 それにしても、可憐な容姿に似合わぬ禍々しい妖刀である。
(「あの女の人は操られてるだけなのかな。手荒くするけど悪く思わないでね」)
 元々手練の剣士なのであろうが、妖刀の力で一際力強い剣技を振るう彼女に手加減など出来る筈もなく。
 由紀は軽やかな身のこなしでダガーを振るうが、いとも簡単に避けて少女は斬撃を繰り出した。
 しかし、切り裂いたのはアンテロの外套。
 ふたり息の合った動きで攪乱し、スピードで図抜けているはずの少女の攻撃は致命傷を与えられないで居た。
「小賢しいわね」
 優勢とは言えない展開に焦りの色をみせ、踏み込んで再び刀を振るう。
 同時に由紀が突き出したダガーは少女のこめかみを掠めど当たらず、
 だが着地した足元から鋼糸が少女を縛り上げた。
「ーーっ!」
 それは由紀の仕掛けた鋼糸【tears】。
 非常に細く視認しにくいそれは、ヒットアンドアウェイを繰り返しつつ意図して彼女を誘い込み、
 妖刀の赴くままに攻撃に倒錯していた少女をまんまと捉えたのだった。
 強引に振りほどこうとして、少女の足から血が滴る。
 それはほんの短い時間であったが静寂な時間が流れ、桜の花びらが素知らぬとばかりにひらひら舞い落ちた。
(「お手柄だね、由紀君」)
 好機を得てアンテロは少女の間合いに飛び込み、地を蹴り上げた。
 視界は立ち上る土煙に遮られーー。
 「……何処にいるの!」
 少女が苛立って声を荒げたその時、
「難しい話はなしだ。君は正しい事だけ口にすれば良い」
 小さな白銀ロザリオの刻印から染み出した血を放ち、即座に顔を庇った少女の腕に紅い血飛沫が掛かった。
「君に似合わぬ剣だね、お嬢さん。何故それを手に人を斬るんだい?」
 それは、単なる問いかけでは無い。
「貴方に話す義理などないわ!」
 感情的になって言い返すが、真実を口にしない少女をブラッド・アグリーメントが蝕んでゆく。
 強がりは長くは続かなかった。
「何故……? 殺める理由など、とうの昔に失いました。
 あの人を殺めた日から、妖刀の望むまま何人斬った事か……」
 最愛の”あの人”を斬り、人である事を捨ててしまった少女。
 もう後戻りは出来ないのだと、絞り出すように告げた声が物語っていた。
 戦意を失ったように妖刀を降ろしたその時、
「絶ち切れ」
 淡々と呟いて、由紀は少女の懐に飛び込んだ。
 鋭く放たれたダガーが右手首に突き刺さり、妖刀は地面に転がり落ちてゆく。
「速い……」
 速さで負け、面目丸つぶれとばかりに呟く少女。
 妖刀と同じ赤色に染まっていた瞳の色が本来の色に戻り……その瞬間を見逃さず2人がそれぞれの武器で斬りかれば、少女は成す術もなく切り傷を負った。
 しかし、瞬きして少女の瞳は再び赤色を灯す。
 呪いは解けていないのだ。人離れした動きで妖刀を掴み、
「……余計な事を話してしまったわね。忘れなさい」
 手元に戻った妖刀は不気味に赤く輝いてーー、少女との攻防は暫し続いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

六道・紫音
相棒にして恋人のルビィ(f01944)と共闘

何という剣気…だが、どこか虚ろなこの気配はなんだ…。
妖刀に操られている…?

・戦術
ルビィに妖刀を落とす秘策がある、俺は女の足を止めるまで。
「紫音、参る!」
『残像』を伴いながら『ダッシュ』で一足飛びに駆ける《縮地》にて己の間合いまで素早く距離を詰めたら敵の攻撃を『第六感』と『見切り』で見極め【肆之太刀《死閃》】で防ぎ、即座に『怪力』を用いて振るう『カウンター』で返し刃を放つ
「今だ!」
ルビィが妖刀を落としたらすかさず『怪力』を発揮して膂力を高め『捨て身の一撃』により全神経を攻撃に集中し『早業』で極限まで剣速を早めた一閃を妖刀に見舞い、叩き折る

※アドリブ歓迎


ルビィ・リオネッタ
相棒にして恋人の六道紫音(f01807)と共闘

(あの子の悲しそうな表情…何だったんだろう)

どこか同じ寂しさを抱えているような気がして

・戦術
あの怪しげな剣を取り落とさせてみる
アタシは【目立たない】ようにシオンの着物の襟に隠れましょうか

(隠れるにはいい場所だけど…ドキドキしてる場合じゃないわ!平静平静…)

あの剣には鈴がついてる
【聞き耳】でよく音を聞いて【楽器演奏・学習力】で音と斬撃のタイミングを覚える

シオンが敵の足を止めたら【ダッシュ】でシオンの胸を蹴って飛び出す
命中率重視の『死の舞踏』
【暗殺・早業・先制攻撃】で【武器落とし】の一閃。敵の神経を狙った【マヒ攻撃】

シオンが剣を壊すまで彼女を止めるわ



 山桜の下に佇むひとりの少女。
 ひらりひらりと花びらが散り落ちるさまを見るでもなく、思いつめたように蒼白な顔色をして。
 六道・紫音(剣聖・f01807)は彼女の帯びた剣気、そして虚ろな雰囲気をありありと感じ取っていた。
 その虚ろさ。
(「妖刀に操られている……?」)
 警戒しつつ紫音が近づくと、少女は構えをとって出方を伺っているようだ。
 よく見ると口元に薄く笑みを湛えており、
 紫音の腰に差した刀を見て、剣に覚えのある者と戦えると、武者震いをしているようだった。
(「隠れるにはいい場所だけど……ドキドキしてる場合じゃないわ! 平静平静……」)
 紫音の相棒にして恋人、ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)の現在の居場所は、
 彼の着物の襟の中。
 息を殺して機を待つが、逸る鼓動が紫音に聞こえてしまわないだろうか……と、密かにときめいて。

「紫音、参る!」
 戦いの火蓋を切ったのは、紫音。
 朗々と告げるが早いか宝刀《皇月》を抜き放ち、少女目がけて一足飛びに駆けて距離を詰めた。
 残像を伴うほどの速さで、それは一瞬の出来事だったのだが、妖刀が皇月を受け止めていた。
 刃と刃が競り合い、拮抗した状態が少しの間続いた。
 少女の細腕から繰り出されているとは思えぬ力強い剣技。
 妖刀のもつ力が、彼女の潜在能力を限界以上に高めているのだろう。
 花びらをあしらった袖を翻しひらりと退いて、身体が揺らいだと思った刹那、暖かい風が吹いた。
 降る花びらが風に乗って、流れるような紫音の黒髪に触れ落ちてゆく。
 間髪入れず少女は幾度となく妖刀を振り下ろし、
 その度に妖刀の柄の先に着いた小さな鈴が、微かに音を立てるのだった。

 その微かな音に耳を澄ませて、
(「斬撃のタイミング、覚えたわ」)
 ーー紫音、来るわよ。と、ルビィが囁くと同時に、
「ここがお前の死線だ」
 太刀筋を見切った紫音は、全身を研ぎ澄ませた構えを取りーー。
 赤く禍々しく光る妖刀が振り下ろされた瞬間、それを刃で受け、怪力で振り抜けば、
 少女は踏み止まる事が出来ず、妖刀ごと押し返された。
「今だ!」
 後ろによろめき攻撃の手を止めた少女を目掛けて、ルビィが紫音の胸を蹴って飛び出した。
 美しい蝶の羽で降り注ぐ花びらを掻い潜り、少女の鼻先へ。
「さあ、踊りましょう♪」
 ひらり舞い踊るはワルツのリズムで。
 桜の下でふわりふわりと舞うさまは、誰もが目を奪われる可憐さで、生気のない瞳をした少女も一部始終を見つめていた。
 ルビィは少女の右手にするりと近づき、流れるように舞い続けながら妖刀に狙いを定め、一閃。
「……っ!」
 思わず妖刀を取り落とした少女は、痺れて自由の利かない右手を妖刀へ伸ばすが掴む事が出来ない。
「おのれ!!」
 ルビィを睨め付け怒声を浴びせる少女。初めて彼らへ、感情をむき出しにしてみせたのだった。
 すかさず紫音は怪力を発揮して、その手に握られた宝刀は覇気を纏いーー、
 未だ地面に投げ出されたままの妖刀を目掛けて、全神経を集中させた一刀が目にも止まらぬ速さで繰り出された。
「止めなさい!」
 声を荒げる少女と、必死に制止するルビィ。
 一瞬がスローモーションのように感じられたが。
 堅牢な刃を持つ宝刀《皇月》が、妖刀を地面にめり込むほどに叩きつけ……。
 制止を振り切った少女が死に物狂いで妖刀を掴み拾い上げると、刃を横切るように傷が深く刻まれていた。
「よくも……!」
 怒りを灯した赤い瞳。
 操られているはずなのに、彼女自身の意思が滲む怒声が響き渡った。
 かつて人間の少女であった頃に、更なる力を求めて妖刀を握ったあの日。
 そして最愛の人を斬ってからというもの、幾度となく人々を殺めたその手は血に染まり、
 妖刀だけが孤独な少女に寄り添い続けたのだった。
(「あの子の悲しそうな表情……何があったんだろう」)
 どこか同じ寂しさを抱えているような気がして、ルビィはシンパシーを感じずには居られなかった。
 しかし少女の姿をしていても、相手はオブリビオン。
 妖刀を取り戻した少女が襲い掛かって来たのを皮切りに、紫音とルビィは再び戦いに身を投じたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

パーヴォ・シニネン
少女よ
とても悲しそうな表情をしているな
その刀に、全て奪われてしまったのだね
征こう、相棒
彼女を解放してあげよう

肉に肉を挟んだ焼肉おにぎりを【大食い】でもりもり
相棒の腹が痛くならない程度に目一杯食べ尽くそう
力を蓄えた肉体は、そう簡単に彼女の凶刃には倒れないさ

お嬢さんの攻撃は箸とスプーンを駆使し怪力で受け止めよう
こちらのフォークとナイフの切れ味も中々だよ?
さぁさ、君の妖刀との力比べといこうじゃないか!
桜吹雪が舞うならば、血飛沫は君のものだけにすべきだからネ

攻撃は常に【祈り】を込めて
彼女を殺すのはこの子ではない、我輩だ

※宿主を褒めて伸ばす教育方針
少年少女の姿をした災悪には胸を痛める子供好き



 山桜の木の下で佇む少女。
 振り向いた表情は思い詰め、悲壮感に満ちて……。
(「少女よ、とても悲しそうな表情をしているな。
 その刀に、全て奪われてしまったのだね」)
 パーヴォ・シニネン(波偲沫・f14183)は少女の境遇に胸を痛めていた。
 世界を渡り歩く中で、幾度となく出会った暗い目をした孤児たちに何処か似ていて。
「征こう、相棒。
 彼女を解放してあげよう」
 戦いに挑むというのに、その言葉端には慈愛が感じられた。

 そうと決まれば先ずは腹ごしらえだ。
 パーヴォを装着した子供が、パーヴォに促されるまま取り出したのは、
 肉に肉を挟んだ焼肉おにぎり!
 見るからに食欲をそそる一品。お腹を空かせた孤児であれば尚更で、大食いを発揮してもりもり平らげたのだった。
「良い食べっぷりだ! お腹は痛くないかね?」
 満足げにお腹をさする子供の仕草が返事がわり。
 フードファイト・ワイルドモードが発動し、怖いもの無しだ。
「仮面が本体という訳ね……面白い人達だわ」
 やりとりを見つめていた少女はぽつりと呟いて、
「でも斬ってしまえば誰でも同じよ」
 りん……と柄の先の鈴を鳴らして妖刀を構えた。
 斬って斬って、その妖刀で幾多の人間を殺めて来た過去。
 そうやっていつか、手に掛けてしまった最愛の人を忘れてしまいたいとでも言わんばかりに。
 ぐらりと揺れる身体。
 桜の花びらをあしらった袖を靡かせて、ふわっとパーヴォ達へ掛かる暖かい風。
 風が舞い上げた花びらを伴って振り下ろした斬撃は、
 パーヴォを装着した子供の構えた箸とスプーンが受け止め、力任せに跳ね返した。
「……!」
 子供とは思えぬ怪力に驚き目を見開く少女。
「どうだ? お腹いっぱい平らげて力を蓄えたのだ。簡単には倒れないさ!」
(「いいぞ、その調子だ!」)
 パーヴォは小声で子供を激励し、次の攻撃に備える。
 少女は再び妖刀を構え、無数の斬撃を繰り出せば、
 受け止めるスプーンの金属音と妖刀の鈴の音が心地よく一定のリズムを刻んだ。
 とん。と、飛び退いて妖刀を構えたまま肩で息をしている少女。
 剣戟は小休止。
 距離を取って睨みあう無言の時間に、はらりはらりと花びらが降ってくる。
「こちらのフォークとナイフの切れ味も中々だよ?
 さぁさ、君の妖刀との力比べといこうじゃないか!」
 大きなフォークとナイフに持ち替えて、少女の懐に飛び込みーー。
(「その妖刀でたくさんの人を手に掛けて来たのだね。悲しい顔、後戻りは出来ないと悟っているのだろう?
 せめて、祈ろう。君の魂が浮かばれるように})
 振るったナイフの刃先が、少女の肩口を切り裂いて血飛沫があがる。
(「彼女を殺すのはこの子ではない、我輩だ」)
 続いて左手のフォークを腹部へ突き刺して、怪力で突き上げられた少女は宙を舞い地面に叩きつけられた。
「う……ぐ……」
 仰向けに倒れた少女に纏わりつくように桜吹雪が舞う。
(「今のは良かったぞ!」)
 子供を激励しつつ出方を伺うパーヴォの前で、少女は妖刀を杖代わりにゆっくりと立ち上がった。
 ならばとナイフとフォークを構え直し、再び妖刀へ挑むのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
……お花見にしては、少々剣呑さが過ぎますね
そして、あの禍々しい刀
ナイくん(f05727)の言う通り、彼女が刀に操られているとしたら…
試してみましょうか!

【蜜ぷに召喚!】
わたしへの攻撃は、蜜ぷにさんたちが山になって、蜜バリアー!
風を受け、みじん切りになっても貴方たちは立派な勇者ですー!(泣

彼女がナイくんに狙いを定めたら、わたしが守ります!
高速移動かつ知覚しにくい、ならば【第六感・見切り】を
――そこです!【かばう・盾受け】
受け止めた瞬間を【怪力】で一気に押し込み、敵の体勢崩します
隙が出来たところを大鉄槌コンカラーで…狙いはその、妖刀!
渾身の【鎧砕き】を……しかしてその本命は!
ナイくんッ!!


ナイ・デス
……刀と、あの女の人もセットでオブリビオン、でしょうか?
女の人は今を生きる人で、刀が操っている、とかの場合は、殺したくない、ですね

刀を破壊しましょう、ソラ(f05892)
刀に魅入られた今の人、過去の人、どちらにしろ刀がなくなる影響は、大きい筈、です

蜜ぷにさん達を召喚、増えてもらい
壁となってオーバーキルされてもらう
その間に、私は無事な蜜ぷにさん達から生命力吸収
力をため

ソラが隙を作ったとこで
忍び足ダッシュ
勢いそのまま、ソラの後ろという敵の死角からジャンプして飛び出し
空中で自身に吹き飛ばし、急降下
全力キックを
ソラが振り下ろす鉄槌に!

二人の力、蜜ぷにさん達のも合わせて、妖刀に!

その後は光で皆を癒します



 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)とナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)の2人は、
 山桜の大樹の下で静かに佇む少女を発見した。
「……」
 振り向いた蒼白な顔は、悲壮感に満ちている。
「……お花見にしては、少々剣呑さが過ぎますね。そして、あの禍々しい刀」
「……刀と、あの女の人もセットでオブリビオン、でしょうか?
 女の人は今を生きる人で、刀が操っている、とかの場合は、殺したくない、ですね」
 可憐な少女に不釣り合いな禍々しい妖剣は、猟兵達との度重なる戦闘で傷だらけになっていたが、
 今もなお妖しいオーラを放っていた。
 ナイは決意を込めてソラスティベルへ囁く。
「刀を破壊しましょう、ソラ。
 刀に魅入られた今の人、過去の人、どちらにしろ刀がなくなる影響は、大きい筈、です」
「ナイくんの言う通り、彼女が刀に操られているとしたら……。
 試してみましょうか!」
 頷き合う2人へと、少女は妖刀を構えた。
「今日は猟兵によく遭うわね……良いのよ、この刀も喜んでいるわ」
 人斬りに快楽を感じているような口ぶり。
 それは本心なのか、操られているのか……。

 不意に少女の体が揺らいだ。見据える先にはソラスティベル。
 しかし、むざむざとやられるのを待つ筈も無く、
「蜜ぷに召喚!」
 呼びかけに応じて、カラフルな蜜ぷに達がぽよんぽよんと現れた。
「皆さんいきましょうッ!」
 押し合いへし合い、ぷにぷにと透き通ったカラフルボディが山になって盾となる。
「勇気ト根性でムテキプニ!」
「確実ニ、シトメル、プニ」
「「「最後ニ勝ツノハ、勇気アル者プニ――ッ!!」」」
 わーっと奮い立つぷに達へ、桜の花びらを巻き込みながら暖かい風が吹いた。
 りん、りんーーと、妖刀の柄についた小さな鈴がリズミカルに微かに聞こえたかと思うと、
「わあぁぁー……!」
 蜜ぷに達の掛け声はあっという間に情けない悲鳴に変わり、
 妖刀に切り裂かれたぷに達は、端から順にプチプチとろーり甘い蜜が溢れ出て……。
 あっという間に小花が散った蜜の水溜りに変わってしまった。
 だがこうして、ソラスティベルを守りおおせたのだ。
「貴方たちは立派な勇者ですー!」
 ちょっと涙声で蜜ぷに達を労うソラスティベルの隣で、ナイも蜜ぷにを召還!
「ぷにぷにタイム、です」 
「デバンプニー!」
「モットキテクレプニー!」
 ぽよぽよんと積み上がり、ぎゅうぎゅう押し合うほどに増えてゆく。
「プニプニー!」
「……!」
 視界いっぱいに増えた蜜ぷに達をみて絶句する少女であったが、するべき事は変わらないと、再び斬撃を放った。
「プ二ィ……」
 プチプチとろーり、またまた蜜が漏れ出てしまう。
 その儚さは、桜の花といい勝負だ。
「突撃プニー!」
 ぽよん、ぽすんと少女へのしかかるが、弧を描くように妖刀が振るわれて、
 周囲の蜜ぷにはあっという間にぷちんと弾けていき、桜の大樹の下は色とりどりの蜜たまりになった。
 こうして蜜ぷに達が少女の相手をしている間に、ナイは無事な蜜ぷに達に近付いて……。
「オナカスイタプニー?」
「オイシクタベテプニー」
「遠慮なく、いただきます」
 ナイを慕って寄ってくる蜜ぷに達から、生命力を吸収してゆく。
 とろりと甘くて、花の香りがする……そうして力を蓄えていると、
(「貴方、隙だらけよ」)
 少女はナイを見つめながら、妖刀を握り直した。
 妖刀から赤黒いオーラが溢れだし、刀を握った右手からやがて全身へと少女の体を覆ってゆく。
 少女はそれを嫌がるどころか、笑みを浮かべているではないか。
「なんて禍々しい力……いえ、ナイくんはわたしが守ってみせます!」
 ぞっとするような負の力に、怯えてしまう心。
 だけど、己を奮い立たせて盾を構えたソラスティベルだったが、
 少女が完全にオーラを纏った途端、その姿を見失ってしまったのだった。

 必死に周囲を見回すが、視界に映るのは、はらはらと散る花びらばかり。
(「どこへ消えたのですか?」)
 無防備なナイが狙われていると思うと焦りが募ってゆく。
(「こういう時こそ落ち着いて、彼女は必ず近くに居ます!」)
「――そこです!」
 上空から突如現れた妖刀の刃先を、ソラスティベルの盾が受け止めた。
 衝撃で激しい金属音が起こりーー刹那、見つめ合う2人の表情は対照的で。
 悔しそうに顔を強張らせた少女と、勇ましい面構えのソラスティベル。
 次の瞬間、怪力を発揮した盾に押し出された少女は、背中から地面に転がり落ちた。
「ぐっ……」
 地面に投げ出された少女が顔を上げると、目の前でソラスティベルが大鉄槌コンカラーを振り上げている!
「ナイくんッ!! 」
 無音でソラスティベルの背後へ急接近するナイ。
 美しい白髪を靡かせて駆け抜け、ソラスティベルの後ろーー少女の視界に映らない死角から高く跳躍。
「……!」
 驚き目を見開いた少女が見たものは。
 空中で自身に吹き飛ばしを掛けたナイは更に高く飛び上がり、周囲をふわりと舞う花びら。
 そのままコンカラーに向けて片足を突き出し、自重を掛けた全力キック!
 ソラスティベルが渾身の一撃を振り下ろす力に、ナイのキック力が加わって。
 ズシン……!
 大地を振るわせる程に、鉄槌が妖刀へ叩きつけられた。
「「プ二プ二! プ二プ二プ二!」」
 あっけにとられた少女が動けずにいると、
 勇ましい顔つきの蜜ぷに達が、ぽこぽこプ二プ二降って来ては、ぽよんと弾けていった。
「……参ったわね。貴方たちの狙いは妖刀だった訳ね」
 少女はため息をついて、口元を少し緩めて2人を見つめた。
 コンカラーの下敷になった妖刀を引きずり出すと、傷ついて所々刃こぼれしている。
「もう限界が近いわね……逝く時は一緒なの」
 妖刀に魅入られた少女もまた、いつしか妖に成り果てていたのだった。
 呪いと知りながら、孤独な流浪の日々を共にした妖刀と一緒に散る事を、
 彼女自身も望んでいた。
「助けようとしてくれた事は感謝するわ。けれど、私の手は血で汚れすぎた……」
 そう言って立ち上がり、桜吹雪に紛れて彼女は姿を消した。
 咲き誇る山桜の大樹の下で、只々、剣を交える相手を待ちわびて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花盛・乙女
【―morgen―】で参加
さぁて、遅参ながらこの花盛乙女も刀を振るわせて貰うとしようか。
原因が刀にあるなら、刀を討つのは道理だな。
異論はないぞ、丈一殿…いや、団長殿!

さぁ、花の三人娘揃い踏みての武を見せるとしよう。
攻撃対象は妖刀そのもの。【黒椿】と【乙女】の二振りで打ち合う。
私の『怪力』との打ち合い、少女の細腕では受けきれまい。
里香殿と涼殿の二人と連携し、互いを護り、互いを活かすよう立ち回るぞ。
信頼できる仲間と共に戦うのだ。
花盛乙女の名に恥じぬ戦働きをするとしようか。

納刀し、休心。一拍。

妖刀を目掛け閃かすは神速の一閃、【雨燕】

花盛の剣に断てぬモノなし。
悪しき妖刀よ、骸の海に沈むがよい。


彩花・涼
【―morgen―】で参加
一駒は甘いな、戦いで相手を気遣うのは命取りだぞ… だが嫌いじゃない甘さだ
さて、花盛も合流した所で花繋がりの2人と共闘は楽しみだな

黒華・改で花巻の撹乱に合わせ【2回攻撃】と【生命力吸収】で斬りかかる
相手の剣筋は【見切り】と【残像】で回避し、回避成功した際には【カウンター】黒爪で反撃する
悪いが私は剣客ではないのでな

ザッフィーロに庇われた時には素直に感謝を、全く…お互い庇いあって堂々巡りだな

敵が体勢を崩す隙をみて、UCで渾身の一撃を叩き込む


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【―morgen―】
…少女は救えんかもしれんが…諦めぬのも団長らしい
ならば俺も全力で付き合おう
戦闘と同時に『先制攻撃』『高速詠唱』を駆使し【穢れの影】にて敵を拘束する様動こう
団長の攻撃が当り易くなる様動きを止める事が目的故、団長と連携して動ければと思う
その後は『2回攻撃』を駆使しつつメイスにて攻撃を
…彩花には先に庇われたからな
彩花に攻撃が及びそうな際は『盾受け』と『武器受け』を駆使しつつ『かば』わせて貰おう
…本当にな。だが、背を預けられる信頼感は悪くはない…だろう?
勿論仲間に致命的な攻撃が及びそうな場合はそちらを優先して『かばう』が…宵の回復がある故心配は不要か
救えんでも安らかに眠れ事を祈ろう


花巻・里香
【―morgen―】
今回は苗字に「花」を持つ、姦し花の三姉妹の初陣かしら。
あら助けるつもりなんて女の子には優しいのね?丈一さん。
それなら何があっても最後まで責任を持たないとね。
【蘭花の饗宴】の無数の蜂達と蘭の花びらで目晦まし、更に【蘭花の外装人形】小さな花に擬態したからくり人形の中へ。
戦闘力を奪う無数の花びらや蜂に紛れて、小さな花に擬態したからくり人形で、人形の直接攻撃や人形の中から出ることによる奇襲で騙し討ちを仕掛けていくわ。
何も人形の中に入れるのは私だけではないもの。時には仲間も中へ引き入れて神出鬼没に攪乱するわね。

…最愛の人の容姿さえわかれば【擬態の外装人形】で作り出せなくもないけれど。


一駒・丈一
【―morgen―】


少女は既に多くの命を殺めているか。
妖刀に操られているだけではないようだが……ダメ元で試すか。

UC『無常なる処断』を『2回攻撃』で、
初撃は妖刀に対して、2撃目は敵の少女に繰り出す。
UCの特性を利用し、少女が無罪か否かを判定しよう。
少女にUCの剣撃が当たっても刀傷を受けないなら、少女は無罪ということだ。

カウンターを貰っても、宵の回復がある。
2撃目はザッフィーロのUC支援もある。
迷う事無く立ち回ろう。

無罪判定が出来た場合のみ、少女への攻撃は控え妖刀のみに絞る。
最早救えない場合は…
嘗て殺めた者と同じ場所に送るのが情けか。
人としての最期を迎えさせてやる為……何れにせよ妖刀は破壊する。


弦月・宵
【―morgen―】のメンバーで参加

孤独だったから魅入られたのか、人斬りになって孤独になったのか…惹かれたのは刀にか血か…。
独りじゃ、哀しいに負けちゃうよ?

戦闘は「生まれながらの光」で回復を優先する。
ダメージの大きいメンバーを順に回復、複数いけるならいっぺんに。
今度はオレが役に立つ番。

野生の感を駆使して、彼女の動きを追跡するね。
彼女と妖刀を別けて追う必要があるなら、庇護の可能性の高い彼女の方を。
彼女が無害なのなら妖刀から遠ざけて様子見。

オレから攻撃はしないけど、狙われたら刀で受けてフェイントを仕掛ける。
捨て身で仕掛ける位に構えてるけど、今回はきっと大丈夫だと思うから。
オレはオレの役目に専念。



「……来たわね」
 【―morgen―】の6人が山桜の下へ現れると、少女はゆっくりと振り向いて呟いた。
 手にした妖刀は傷だらけで、猟兵達との激しい戦闘を物語る。
 だが、妖刀の呪いを帯びた禍々しいオーラは、今だ健在であった。
 妖刀と同じ赤色に染まった瞳を見つめて、弦月・宵(マヨイゴ・f05409)は思う。
(「孤独だったから魅入られたのか、人斬りになって孤独になったのか……惹かれたのは刀にか血か……」)
「……独りじゃ、哀しいに負けちゃうよ?」
 一駒・丈一(金眼の・f01005)は頷いて、
「多くの場合、道具に罪はない。
 が、妖刀の場合は別だ。
 あの少女が妖刀に操られているだけの可能性もある。
 故に……少々試してみるか」
 そう言ってすらりと刀を抜き放つと同時に、
「……妖刀か。団長の言う様助けられるのならば、尽力せぬ理由がないからな」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)も、少女と妖刀を見据え、戦闘開始の機を伺っている。
「さぁて、遅参ながらこの花盛乙女も刀を振るわせて貰うとしようか。
 原因が刀にあるなら、刀を討つのは道理だな。
 異論はないぞ、丈一殿……いや、団長殿!」
「あら助けるつもりなんて女の子には優しいのね? 丈一さん。
 でも助けるのなら何があっても最後まで責任を持たないとね。生還すれば記憶等の後処理も必要でしょう?」
 妖刀少女との戦いに馳せ参じた花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)の隣には、妖艶に微笑む花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)。そして、
「一駒は甘いな、戦いで相手を気遣うのは命取りだぞ…… だが嫌いじゃない甘さだ」
 彩花・涼(黒蝶・f01922)の3人で、名前に『花』のつく三人娘が揃い踏み。
 満を持して【―morgen―】の面々それぞれが戦闘態勢をとる中、

「その痛みの数が、貴様の重ねた罪の数だ。分かり易いだろう?」
 丈一が【無常なる処断】を仕掛け、無数の斬撃が少女に襲い掛かった。
「……っ!」
 激しい金属音が続く。驚くべき事に、少女はその太刀筋が見えているように高速で剣戟を返してくる。
(「くっ……だが、想定内だ」)
 拮抗した2人の激しい攻防が続く中、
「赦しを求めぬ者には何も出来ぬ。……生きる限り纏わり積もる人の子の穢れを今返そう」
 詠唱を終えたザッフィーロは『身に溜めた赦しを与えてきた人々の罪と穢れ』を身体から放ち、
 少女の両腕へ、足へ、胴体へ、影のように纏わりついて動きを拘束した。
 なんとか逃れようと激しく抵抗する少女の顔先に、丈一は刃先を向けて再び問う。
「……その痛みの数が、貴様の重ねた罪の数だ」
 無数の斬撃が繰り出される。
 それは少女の罪の数でもあるのだ。
 一体どれほどの人々を殺めて来たというのだろうか。
 今度は回避する術を持たない少女は、全身に傷を負ってゆく。
「妖刀に操られているだけーーとは言い難いな」
 そうでなければいい……と、抱いた希望が破れて、丈一は短く落胆のため息をついた。
「ええ。私はこの手で罪を犯して来たのです。
 愚かにも妖刀に力を求め、最愛の人を斬り捨てて……それから何人殺めた事か。
 私自身の罪、言い訳するつもりは無いわ」
 少女は傷だらけになりながらも、迷いなくそう言い放ち、
 ザッフィーロがメイスを振りかぶったのを察知して、呪いを纏って姿をくらませた。
「丈一兄ぃ、じっとしてて」
 先程の攻防で傷を負った丈一へ、宵は生まれながらの光を放った。
 暖かな光が癒しを与えてゆく。
「すまないな」
 こうして宵の助けがあるからこそ、少女との戦いに遠慮なく踏み込む事が出来たのだ。

 妖刀の呪いで姿をくらませていた少女を察知しようと見回すザッフィーロへ、治療を終えた宵が駆けつける。
 『野生の勘』が、ふり注ぐ桜の花びらの間に微かに残された少女の気配を掴んでいたのだ。
 宵は背負った【-幻鵺-】を、振りかぶると同時に、キンッ! と鋭い金属音を立てて、妖刀と【-幻鵺-】の刃が交わった。
 後ろに飛び退いた少女の肩口へ、ザッフィーロが再び振りかぶったメイスが叩きつけられる。
「うぐっ!」
 痛みに顔を歪めるも、すぐに体制を立て直して、
 ゆらりーー少女の身体が揺らぎ、小さな鈴の音がりん、りんりんと小刻みに聞こえたかと思えば。
「!!」
 暖かい風が吹いた瞬間。
 ザッフィーロの構えた盾が無数の斬撃を受け止めていた。
 その背後には涼。
「……残念。不意打ちを狙えると思ったのに」
 妖剣を降ろした少女は、2人を真顔で見つめながらぽそりと呟いた。
 涼は安堵のため息をついて、
「感謝する、ザッフィーロ。
 全く……お互い庇いあって堂々巡りだな」
「……本当にな。だが、背を預けられる信頼感は悪くはない。……だろう?」
 ザッフィーロは背中を向けたまま、しかし微かに微笑んで、そう言った。

 少女はポーカーフェイスを保ったままーーしかし、猟兵達の見事な連携を崩す事が出来ず、
 内心焦りをみせていた。
(「あとどのくらい戦えるかしら……貴方も傷だらけね。ふふ、最後まで楽しみましょう」)
 妖刀と対話するように思いを巡らせて。
 少女はふと、口元を緩めた。

「今回は苗字に『花』を持つ、姦し花の三姉妹の初陣かしら」
 涼と乙女に微笑みかけて、先陣をきったのは里香だった。
「蘭花の饗宴――」
 そう告げた瞬間、里香の身に着けた武器防具は無数の蜂、蘭の花びら、そして小さな花に擬態したからくり人形に姿を変えた。
 桜の花びらを掻い潜り、少女へ降りかかる蘭の花びらと蜂達。
 その隙に『小さな花に擬態したからくり人形』の中に入った里香もまた、蘭の花びらや蜂と共へ少女へ忍び寄る。
 夢のような幻想風景の中で、少女がせわしなく見回す視界には、ただただ降りそそぐ色鮮やかな花びら達。
 耳元に纏わりつく蜂の羽音に気を取られたその時、からくり人形から出没した里香が奇襲を掛けた。
「……!?」
 驚き見回すが、花びらに紛れた里香を見つけられないでいると、
 背後には【黒華・改】を振りかぶる涼。
 切れ味鋭く背中を切り裂かれ、少女が痛みに振り向けばさらに正面を斜めに切り裂かれた。
 鮮血が飛び、花びらや大樹の幹に血飛沫が掛かる。
 傷を庇いながら警戒する少女へ、【黒椿】と【乙女】の二振りを構えて対峙するは乙女。
 すらりと振りかぶった【乙女】を妖刀で受け止め、さらに振り下ろされた【黒椿】も妖刀で受けるが、
 【黒椿】は想像以上の力で、ずしりと重くのしかかってくる。
 歯を食いしばり、対面する乙女を睨み付けたままなんとか耐えるが、
 乙女は余裕のある表情で、怪力を込めて押し込んでゆく。
 少女の細腕はワナワナと震え、ついに耐えかねて斬撃を浴びた。
 妖刀の力を借りていながら太刀打ち出来なかった事が悔しくて、
 少女は肩で息をしながら、再び乙女を睨みつけた。
 その間にも降り注ぐ蘭の花びら。
 ひらり、ひらり。後頭部を掠めた花びらから、里香の不意の奇襲。
 ぐらりと前に転倒した少女の視界に、黒い蝶の群れが飛来した。
「この一撃で終わりにする」
 続いて、蝶の群れを纏った【黒華・改】が振り下ろされるのを目撃し、思わずぎゅっと目を閉じる少女。
 しかし、【黒華・改】の斬撃が振り下ろされた対象は、妖刀だった。
 あまりの衝撃に取り落とした妖刀は、大きく刃こぼれしながら地面に突き刺さった。
 少女は動悸を落ち着かせながら妖刀を握り直したが、その時。

 【黒椿】を納刀し、休心。一拍。
 抜刀し、見据えるは少女の右手に握られた妖刀。
 目にも止まらぬ速さで放たれた一閃は、勢いよく妖刀へ振り下ろされた。
「動くなよ。動かなければ、痛みもないさ」
 身動きもとれず絶句する少女の耳元に、乙女の凛とした囁きが届いた頃には。
 妖刀の刃を横切るように深く亀裂が入り、ついに真っ二つに折れてしまった。
「花盛の剣に断てぬモノなし。
 悪しき妖刀よ、骸の海に沈むがよい」
 納刀した乙女が静かに告げると。
「ここまでのようね」
 諦めた様に晴れ晴れと呟いた少女の足先が徐々に透けてゆくではないか。

 少女を助けたい一心で戦った猟兵達の顔を見て、少女は寂しそうに微笑んだ。
「貴方達と剣を交える事が出来て楽しかったわ……お別れよ」
 すうっと、少女は桜吹雪の中へ消えてゆき、後には完全に呪いが消えて折れた刀が落ちていた。
 妖刀と共にあった少女もまた、その呪いで、現し世に留まっていた妖であった。
 だが妖刀が破壊された事で、少女の魂は成仏する事が出来たのだろう。

 山桜の木の下に引き寄せられたのは、少女なりのSOSだったのであろうか。
 それとも剣を交える相手を求めて現れた、剣士としての矜持であったのか……。
 いずれにせよ、少女の思いは桜の花びらと共に春風に乗って飛んでゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『お花見』

POW   :    たくさん飲み食いしたり、お花見ついでに散策したり、めいいっぱい楽しもう!

SPD   :    手作り料理や飲み物(買ってきた物もOK)を持ち寄ってお花見パーティ

WIZ   :    咲き誇る花や周囲の風景を堪能しよう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオンが去り、里山は静寂を取り戻した。
 柔らかな春の日差しを受けて、山桜の大樹の下には木漏れ日がさしている。
 耳をすませば、野鳥の囀りや沢の水音が聞こえてくる。
 こうしてみると、春の山中は自然が奏でる音で溢れて、なんと賑やかなのだろう。
 そして新緑の中に一際大きく聳え立つ、山桜の大樹へ向かえば。
 春風が吹くたび花びらの散り落ちる樹の下で心地よい時間を過ごすのも良し。
 周囲の自然の中を散策してみるも良し。
 微睡むような穏やかな昼下がりのひと時を、どうかゆったりと楽しんで欲しい。
リル・ルリ
■ふうた(f09635)と一緒
✼アドリブ等歓迎

「嗚呼、さくら――」
僕の
だいすきな

風に揺れ舞う花吹雪、花霞の万華鏡に瞳を閉じて
ひらり踊る花弁を抱きしめるように両手を広げ微笑んで

「ふうた、桜だ。山の中に咲く、さくら。綺麗だね」
春にしか出会えない山の桜
出逢えて嬉しい
散るのは寂しいけれど
また来年逢えるよ

「お花見しよ、ふうた。僕、お弁当もってきたよ」
桜の木の根元に座って広げるのは、ちょっと歪なおにぎり
僕にはこれくらいしか作れなくて
けれど君が喜んでくれたら嬉しい
ふうたのお弁当可愛いね
お肉なくても嬉しい
ばけっと、おいしい
僕、すきだな

「えっ、しょっぱい?!」
次はもっと美味しいのになるはず
だからまた来年も食べて


糸縒・ふうた
■リル(f10762)と一緒

立派で、大きくて、とても、きれい
桜。さくら。リルがだいすきな――、

雨も風も、今は吹いて欲しくないな
桜吹雪は綺麗だけど散ってしまうのは悲しくなってしまう
来年……、うん。来年も、一緒に観に来よう
そしたらきっと、寂しくない

見上げる姿はとてもうつくしくて
凛とした姿に君が浮かべるのは――なんて、聞かないでおこうか

リルはおにぎり、握って来てくれたんだ
オレのおべんとはバゲットと苺ジャム
焼いたチキンとかの方が良かったかかな?

はは、ちゃんとさんかくになってない
けどリルががんばって握ってくれたおにぎりはおいしい
ちょっとしょっぱいのは
やる気が溢れちゃったからってことにしておこうか
宿題、ね



「嗚呼、さくら――」
(「僕の、だいすきな」)
 山桜を見上げたリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)の薄花桜色の瞳は、舞降る花びらを映して。
(「立派で、大きくて、とても、きれい。
 桜。さくら。リルがだいすきな――」)
 糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)はそっと、
 桜と戯れるリルの様子を見守っている。

 風に揺れ舞う花吹雪、花霞の万華鏡に瞳を閉じて、
 ひらり踊る花弁を抱きしめるように両手を広げ微笑んでーー。
「ふうた、桜だ。山の中に咲く、さくら。綺麗だね」
 春にしか出会えない山の桜。
 出会えて嬉しいーーと目を細めて、そっと囁くリル。
 桜を見上げるその姿はとてもうつくしくて、
 凛とした姿に君が浮かべるのは――なんて、聞かないでおこうか。
 ふうたは思わず見惚れて、ゆっくりと瞬きをした。
 雨も風も、今は吹いて欲しくないな。
 この瞬間がいつまでも続けばいいのにと、願ってしまうけれど。

 春風に桜吹雪が舞い、
「綺麗……だけど、散ってしまうのは悲しいな」
 花びらに包まれたふたり。
 切ない表情のふうたに、リルは微笑んで。
「散るのは寂しいけれど、また来年逢えるよ」
「来年……、うん。来年も、一緒に観に来よう」
 そしたらきっと寂しくないねと頷いた。
 新芽と満開の花を湛えた枝がざわざわと風に靡いて、見上げたふたりに花びらを贈った。

「お花見しよ、ふうた。僕、お弁当もってきたよ」
 樹の根元に座って広げて見せたのは、ちょっと歪なおにぎり。
「リルはおにぎり、握って来てくれたんだ。
 オレのおべんとはバゲットと苺ジャム。
 焼いたチキンとかの方が良かったかかな?」
 お弁当を覗き合い、美味しそうだねと笑顔を交わす。
「ふうたのお弁当可愛いね。お肉なくても嬉しい」
 リルは香ばしいパンの香りに誘われてバゲットに手を伸ばした。
「ばけっと、おいしい。
 僕、すきだな」
 本当に美味しそうに頬張るリルをみると、自然に頬が綻んでしまう。
 ぴょこぴょこと跳ねる耳は、きっと無意識に。
 そしておにぎりへ手を伸ばすと、
「はは、ちゃんとさんかくになってない」
「僕にはこれくらいしか作れなくて」
 ーーけれど、君が喜んでくれたら嬉しい。
 と、自身なさげに。だけど想いを込めて作ったおにぎりだ。
 もぐもぐと頬張って、ふうたはニッコリ。
「リルががんばって握ってくれたおにぎりはおいしい。
 ちょっとしょっぱいのは、
 やる気が溢れちゃったからってことにしておこうか」
 すこしだけイジワルっぽく、そう言ったふうたへ目を見開いて、
「えっ、しょっぱい?!」
 だけどーー、
「次はもっと美味しいのになるはず。
 だからまた来年も食べて」
「宿題、ね」
 桜の季節は短いけれど、季節は巡りゆくもの。
 来年もまた、美しい桜の下で君と過ごそう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルビィ・リオネッタ
相棒にして恋人の六道紫音(f01807)と行動

花や植物は大好き
この世界出身のシオンに倣って『お花見』してみるわ

「シオンも花が好きなんて意外ね。アタシもよく、花畑があるって聞いたら見に行ってたわ」

シオンの肩でおにぎりを受け取って、桜を見上げてみる

「淡い…白みたいなピンクなのね。散りながら咲いてるなんて不思議な感じ。綺麗で……ううん、綺麗すぎて、胸の辺りがなんだかきゅっとするわ」

ひとり静かに見たくなるのも分かる気がするわ
アタシがうるさくしすぎてないといいんだけど…

シオンの肩に座りながら花弁を両手で捕まえてみる

(不意に人間の大きな唇に口づけられれば、頬を桜色に染め)
「…来年も見にこよっか。ふたりで」


六道・紫音
相棒にして恋人のルビィ(f01944)と花見を楽しむ

「花見は数少ない俺の趣味でね…1人で武者修行していた頃も欠かした事はない」
山桜の下に腰掛け、肩にルビィを乗せて花見を楽しもう。
「そして花見のお供と言えばこれだ…サムライエンパイアの純米大吟醸と塩にぎりさ」
何処かから調達してきた酒と、持ち歩いている塩おにぎりを取り出して。
「ほら、ルビィも桜を見上げながら食べてみろ。いつもより美味しいぞ?」
肩のルビィに塩にぎりを差し出し、2人で分け合って1つのおにぎりを食べて。
「俺は綺麗な物を眺めるのが好きなんだ…桜とか…花々とか…ルビィとか、な」
酒を一口飲んで、甘い香りのキスをルビィに贈ろう。

※アドリブ歓迎



「花見は数少ない俺の趣味でね……1人で武者修行していた頃も欠かした事はない」
 山桜の下に腰かけて、肩に乗ったルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)へ、
 六道・紫音(剣聖・f01807)は、ぽつりと語り掛けた。
「シオンも花が好きなんて意外ね。アタシもよく、花畑があるって聞いたら見に行ってたわ」
 大好きな花や植物の話とあって、心弾ませるルビィ。
 この世界『サムライエンパイア』出身の紫音に倣って、2人はお花見を楽しむのであった。
「そして花見のお供と言えばこれだ……サムライエンパイアの純米大吟醸と塩にぎりさ」
 紫音は何処かから調達してきた酒と、持ち歩いている塩おにぎりを取り出して。
「ほら、ルビィも桜を見上げながら食べてみろ。いつもより美味しいぞ?」
 肩に乗ったルビィに、おにぎりを割って差し出す。
 ちいさな手を伸ばして受け取り、つやつやした白米を頬張って。
 咲き誇る山桜の下で頂く食べ物は格別だ。
 2人でひとつのおにぎりを分け合って食べるというささやかな出来事も、どこか特別に感じられた。
 
  ふと見上げれば、ちらりちらりと花びらが降ってくる。
「淡い……白みたいなピンクなのね。散りながら咲いてるなんて不思議な感じ。綺麗で……ううん、綺麗すぎて、胸の辺りがなんだかきゅっとするわ」
 紫音の肩に座ったまま、目の前に舞い降る花びらをそっと両手で捕まえてーー。
 静かな時間が流れてゆく。
 小鳥の囀りが聞こえて、2人きりで過ごす、微睡むような昼下がりの時間。
 ちらりと紫音の表情を見てみる。
(「ひとり静かに見たくなるのも分かる気がするわ。
 アタシがうるさくしすぎてないといいんだけど……」)
 前を向き直り、少しため息をつくと、
「俺は綺麗な物を眺めるのが好きなんだ……桜とか……花々とか……ルビィとか、な」
 紫音は酒を一口飲んで、不意にーー。
 ルビィの目の前、花びらが降る景色を遮った大きな唇が、優しく口づけを贈った。
 ルビィの頬が桜色に染まり、
「……来年も見にこよっか。ふたりで」
 酒の甘い香りと、春風に舞う桜吹雪が、ふたりを優しく包むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソラスティベル・グラスラン
数々の苦難はありましたが、ついにお花見です!

やはり桜は美しいです…蜜ぷにさんたちも大はしゃぎ!
スカートをたくし上げて広げ、降る花びらを沢山集めますよぉ!
おや?ナイくん(f05727)も桜に見とれてますね…ふっふっふ
そっと後ろから、花びらシャワーですー!
うふふ、そろそろお弁当にしましょうかっ♪

この世界流にお弁当はおむすび
食後は三色団子の優しい甘み
ふぅ……この世界の緑茶は美味ですねえ
スイーツはこの世界で用意して良かったです♪
ナイくんはアイスが好きですけれど…用意できなくてごめんなさい

え?わたしがいるから、ですか?
……嬉しいです、ナイくん
て、照れてないですよっ?これは桜の色がうつったんですー!


ナイ・デス
過去を倒して
あとは今を楽しむだけ、ですね

ソラ(f05892)とお花見です
蜜ぷにさん達も一緒
さっきはありがとう、です
短い時間ですけど、自然を楽しんできてください

蜜ぷにさん達も、ソラも、楽しそう、ですね
……でも、桜の花びらを集めて、どうするのでしょう?
食べるのでしょうか……

にゃ!?考えていたら、花びらがたくさん!
ソラの仕業でした……
ソラ、私は花びら、食べませんよ?
お弁当、食べます!
まったり
……スイーツも、ある!
まだまだ、たくさん食べられます!
甘いものは、大好き、です♪

……アイス、です?
確かに、アイスは好きですけど
今は、アイス以上に好きなソラがいますから

顔、赤いですけど
大丈夫です?
桜に、染まった?



 揺蕩うクラゲ達も、妖刀に魅せられた人斬り少女も去ってーー。
 山桜の大樹の下にはソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)とナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)の姿があった。
「数々の苦難はありましたが、ついにお花見です!」
「さっきはありがとう、です。
 短い時間ですけど、自然を楽しんできてください」
 そして蜜ぷに達が、山桜の樹の下で思い思いに飛び跳ねる。
 ひらりひらりと降る桜や、春風に舞い上がる花びらを面白がって跳ねる蜜ぷにと、
 無邪気に戯れるソラスティベル。
 スカートをたくし上げて、花びらを沢山集めているようだ。
(「蜜ぷにさん達も、ソラも、楽しそう、ですね
 ……でも、桜の花びらを集めて、どうするのでしょう?
 食べるのでしょうか……」)
 ナイが小首をかしげると、
 蜜ぷにと一緒に居た筈の、ソラスティベルの姿が見当たらない。
 不意にーー。
「にゃ!?」
 頭上に、もふっと沢山の花びらが降って来た!
「ソラの仕業でした……。
 ソラ、私は花びら、食べませんよ?」
 振り返れば、太陽のように輝く笑顔でソラスティベルが立っていた。
 花びらシャワーは大成功♪
 蜜ぷに達も、周りでニコニコ飛び跳ねている。
「うふふ、そろそろお弁当にしましょうかっ♪」
「お弁当、食べます!」

 この世界、『サムライエンパイア』風に、お弁当はおにぎりだ。
「食後は三色団子をどうぞ」
「……スイーツも、ある!」
「スイーツはこの世界で用意して良かったです♪」
 桜を眺めつつ、もぐもぐ頬張って、お花見の時間がまったりと過ぎてゆく。
「まだまだ、たくさん食べられます!
 甘いものは、大好き、です♪」
「ふぅ……この世界の緑茶は美味ですねえ」
 お腹が膨れて、ゆっくりと緑茶を啜る。
 三色団子はホッとする優しい甘みで、淡い色合いの桜を引き立てるようだ。
「ナイくんはアイスが好きですけれど……用意できなくてごめんなさい」
「……アイス、です?
 確かに、アイスは好きですけど。
 今は、アイス以上に好きなソラがいますから」
「え? わたしがいるから、ですか?
 ……嬉しいです、ナイくん」
 何気なく呟いたナイの言葉に、ソラスティベルの頬がみるみる赤く染まってゆく。
「顔、赤いですけど、大丈夫です?」
「て、照れてないですよっ? これは桜の色がうつったんですー!」
「桜に、染まった?」
 きょとんとして、じっ……と。真っすぐ見つめてくるナイへ必死に誤魔化しつつ。
 心には、火が灯ったように暖かく嬉しい気持ちがこみ上げてくるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
ああ、くたびれたなぁ
昼寝か…俺は眠たくないから遠慮しとく
アンテロ(f03396)が眠いなら好きにしたら
帰る頃にはちゃんと起きてよ

アンテロから猫のおやつもらったけど、そんな都合よく猫がいるかな…いたらあげよう

ヒトに限らず他人のことなんかわからないよ
それに元々戦える力を持ってる存在に理解出来ると言われても嬉しくないでしょ、真面目だね

桜、気に入ったなら何より
複数の世界で愛されてるのも分かる気がするなぁ
…あれ、もう寝た?…いいけどさ

…餌をやった猫が膝の上で寝てしまった、動けない
気候が良いから仕方ないか
起こさないようにぼんやり桜を眺めながらゆっくり過ごそう平和だなぁ、束の間かもしれないけど


アンテロ・ヴィルスカ
さて仕事も片付いた、一休みといこう
いい昼寝日和だ、由紀君(f05760)もどうだい?

武装を解き桜の樹の下に寝転んだら、眠るまで彼をお喋りに付き合わせよう
…ん、別の依頼で使った猫の菓子がまだ懐にあった
俺はいらないから君にやろう
その辺に猫がいたなら釣って来るといい…猫ならきっと何処にでもいるだろう?

しかし力を求めて妖刀に手を出した、か
周囲の人間を手に掛けたのは結果的にだろうが
人間がそれ程大きく強い力を手にしたいとは、一体どんな気持ちなのだろうね?
俺には良く分からなかったよ

それより桜、下から見上げて楽しむのも中々いい
機会があれば別世界のも見たいものだね

起きなければ起してくれ、おやすみ……

アドリブ歓迎



 麗らかな春の日差しの中。
 アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)と鹿忍・由紀(余計者・f05760)は山桜の大樹の下へと足を運んだ。
 オブリビオンが去った里山は平和そのもので、長閑な小鳥の囀りが眠気を誘う。
「さて仕事も片付いた、一休みといこう。
 いい昼寝日和だ、由紀君もどうだい?」
 武装を解いて樹の下に寝転んだアンテロの隣に、
 由紀は、ああ、くたびれたなぁ。と腰を降ろした。
「昼寝か……俺は眠たくないから遠慮しとく。
 アンテロが眠いなら好きにしたら。
 帰る頃にはちゃんと起きてよ」
 ため息まじりにそう言って、黙って降ってくる花びらを見つめる由紀。
 目を閉じたアンテロは、ふと思い出したように懐に手をやって、
(「……ん、別の依頼で使った猫の菓子がまだ懐にあった」)
「俺はいらないから君にやろう。
 その辺に猫がいたなら釣って来るといい……猫ならきっと何処にでもいるだろう?」
「そんな都合よく猫がいるかな……いたらあげよう」
 由紀は差し出された猫用菓子を、何気なく受け取った。

「しかし力を求めて妖刀に手を出した、か。
 周囲の人間を手に掛けたのは結果的にだろうが、
 人間がそれ程大きく強い力を手にしたいとは、一体どんな気持ちなのだろうね?
 俺には良く分からなかったよ」
「ヒトに限らず他人のことなんかわからないよ。
 それに元々戦える力を持ってる存在に理解出来ると言われても嬉しくないでしょ、真面目だね」
 何処からか現れた猫が人懐っこく由紀にじゃれついて、
 そっと頭を撫でてやりながら、隣に寝転んだままのアンテロと会話を交わすひととき。
 餌をやれば、夢中で食べる猫の姿が愛らしい。
「それより桜、下から見上げて楽しむのも中々いい。
 機会があれば別世界のも見たいものだね」
 アンテロの声は、次第に眠たそうな声色に変化してゆきーー。
「起きなければ起してくれ、おやすみ……」
「桜、気に入ったなら何より。
 複数の世界で愛されてるのも分かる気がするなぁ」
 呟くが、返事がない。
「……あれ、もう寝た? ……いいけどさ」
 横を見ると、アンテロは静かに寝息を立てていた。
 そして膝の上に視線を移せば、こちらも猫が丸くなって眠っている。
(「……動けない。気候が良いから仕方ないか」)
 起こさなように、ぼんやり桜を眺めながらゆっくり過ごす事にする。
 春風が吹いて、桜の枝がさわさわと音を立てる。
(「平和だなぁ、束の間かもしれないけど」)
 ひだまりの中で、しばし静かな時間を過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パーヴォ・シニネン
POW

相棒も怪我なく戦いを終えてよかった
ではお花見といこうじゃないか

大樹の下、花を愛でながら買い込んだ団子と桜餅を二人でぱくり
淡い桜と同じ色の食べ物は、見た目も味も甘くて体に沁みるものだね
お茶もあるからな、慌てずゆっくり噛むんだゾ

しかし、こんなに良い天気では眠たくなってしまうな
…と言っている間に(うとうとする子供に気付き
よく食べてよく眠るといい、我輩がついているからね

猟兵にも一休みは必要だとも
野鳥の囀りと沢の音を確かに聴き
風に舞う桜の花弁を眺めていよう

妖刀に憑かれた彼女が、無事に空に旅立てたことを喜び
また、次の世に生まれてきた時の幸福を祈りながら



 パーヴォ・シニネン(波偲沫・f14183)と相棒が再び訪れた山桜の下は、
 オブリビオンが去った事ですっかり平和を取り戻していた。
「相棒も怪我なく戦いを終えてよかった。
 ではお花見といこうじゃないか」
 この勝利は相棒の活躍あってこそ。と労い、
 買い込んだ団子と桜餅をふたりでぱくりと頬張る。
 見事に聳え立つ山桜の大樹の下、はらはらと降り注ぐ花びらを愛でながらーー、
 淡い桜と同じ色の食べ物は、見た目も味も甘くて体に沁みるものだねと、しみじみ呟いた。
 相棒である子供は相変わらずの早食いで、のどに詰まらせてしまいそうだ。
 いつも空腹を感じて過ごして来ただけに、無理もない事だった。
「お茶もあるからな、慌てずゆっくり噛むんだゾ」
 パーヴォは優しく見守りつつ、ほわほわと湯気の立つ緑茶を勧めて。
 ずず……とお茶を啜ってようやく落ち着いた子供と、ふたり揃って大樹を見上げた。
「しかし、こんなに良い天気では眠たくなってしまうな」
 ……と言っている間に、うとうとする子供に気付いて、
「よく食べてよく眠るといい、我輩がついているからね」
 と、起こさないようにそっと呟いた。
 猟兵にも一休みは必要だとも。
 静寂がふたりを包み込み、野鳥の囀りと沢の音に耳を傾けて過ごす。
 さぁっと春風が吹いたと思えば、
 花びらがくるくると舞ってパーヴォの上にそっと散り落ちたのだった。
 
 そして静かに、妖刀に魅せられた人斬り少女へ想いを馳せて……。
 妖刀に憑かれた彼女が、無事に空に旅立てたことを喜び、
 また、次の世に生まれてきた時の幸福を祈りながら、
 桜降る平和なひとときを、しばし過ごすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩花・涼
【―morgen―】参加
美しい山桜だな、ここで皆で花見は楽しく過ごせそうだ
事前にチョコブラウニーとおにぎりを作っていこう、10人前くらいあれば足りるか?
余れば自分で処理(食べる)なりするしな
団子は一口団子を作っていくが、里で売っていれば買ってくるのもいいな
流石に串団子は難しくて作れないしな

弦月からビールを貰って乾杯だな
料理は今回は焦がしていないぞ、チョコ系の菓子なら自信あるからな
おにぎりもちゃんと具材に桜えびのも作ってきたしな
ブラウニーに花巻の持ってきた蜂蜜をつけるのも美味しいかもしれん
皆に料理を配ったりしながら、私もザッフィーロの持ってきた桜餅を食べながら景色を楽しむとしよう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【―morgen―】

…本当に見事な桜だな
その下に布を敷き皆と花見を楽しもう

皆の持寄りは本当に豪華だな
俺は関西風桜餅と水筒に入れた甘酒を置こう

飲物は弦月からの酒を有難く
代わりに俺は甘酒を弦月へ勧めてみよう
これならば子供でも飲めるだろう?皆も飲むか?

彩花のブラウニーに蜂蜜という言葉を聞けば甘味好きとしては試さねばいかんな…と
…本当になんだ甘みが絶妙で幸せだな
花巻この蜂蜜はどこで購入したのだ?
後団長は何故か握飯が似合う…エンパイア出身と言っていたがそれ故だろうか
ヴォルフラムも食べているか?顔色が白い故、日頃物を食しているか心配でな

本当に穏やかで美しく桜の様な時間だと思いつつこの時を楽しめれば幸いだ


花巻・里香
【―morgen―】
アドリブOK
・料理は出来ませんので、手料理を持ち込む人には尊敬の眼差し。
・蜂蜜ぐらいなら採取できるので持ち込み。ガラス棒を添えて(ガラス棒と誤認させて宝石の指で蜂蜜を掬い食べさせる悪戯は悩みどころね)
・グールドライバーの性質を持つからくり人形や蟲達は大食らいですが、里香自身は小食。
ゆっくりと景色を楽しみ、食べ物や飲み物を勧められたら、ちまっと食べますが宝石の体を使った誘惑も利用しながら飲み物を注いだり逆に食べ物を勧めて、手品のようにごまかします。
・暖かくなってきたとはいえ冷やすといけないから念の為毛布も用意しておきましょ。ここでチョット一休みするようなことがあれば掛けるわね


一駒・丈一
【―morgen―】の面々と。

猟兵仲間と花見をするのは初めてだ。
皆に声を掛けて誘ってくれた宵に感謝だな。
そんな感謝の意を述べつつビールを受け取り、皆で乾杯だ。

花見では
酒でも飲みながら、皆の用意した料理に食べしながらのんびり過ごそう。
涼は料理が上手だな。ブラウニーまで作れるのか。
あとは、行楽といえばやはり、おにぎりだな。
とても美味しく懐かしい感じがする。桜エビが花見の雰囲気に合っている。
ザッフィーロの桜餅や里香の蜂蜜もありがとう。
宵も、配り周るのも良いが、まだ若いのだしちゃんと食べるといい。

俺も先ほど
出店で三色団子や焼きそばやらを買ってきたので皆に提供しよう。

来年もまた皆で花見が出来れば良いな


ヴォルフラム・ヴンダー
【―morgen―】の皆と参加
全員、姓呼び捨て


どの世界であっても、花はうつくしく咲くのだな
花見を行うのも、初めてのことだ

「弦月。花見の誘いに感謝する
手渡された酒も、ありがたく受け取ろう
誘いがなければ、こうして皆と膝を突きあわせ交流することもなかった

すまんが、俺は甘味はそれほど得意ではない
彩花の握り飯と、一駒の焼きそばをもらおう

アドラツィオーネに顔が白いと言われれば
「そうだな。吸血と生命力吸収があるゆえ、食事をしない日もある
だが最近は、そうでもない

蜂蜜もチョコブラウニーも、機があれば食してみたい
そう、思えるようにはなった


いつか、俺の故郷でも花宴を催すことができたなら
その時は、皆を招待したいものだ


弦月・宵
【―morgen―】で参加
夢のようなどこかの幻想はもう要らないんだ。
比べられない大切な思い出がひとつ、増えた。
きっと桜を見る度に思い出せる。

オレも料理できない!(清々しく)
なので飲み物を中心に、座ってるみんなに料理を配るのを手伝うね。
これ、全部彩花おねーさんが作ったんだよね。すごい!
お酒を飲むメンバーには缶ビール。冷え冷えだよ。
わっ、甘酒だー!オレも貰っていいの?ありがとう。
行き渡ったら、一旦座って乾杯だね。

その後はたのしくって、みんなの間をぱたぱたと行ったり来たりするかな。
お花見といえばお団子!
オレに見せたという事はつまり、オレが頂いちゃうということだ!
あはは、さすがに全部は食べられないよ。



「……本当に見事な桜だな」
 里山の新緑の中で、一際大きく聳え立つ山桜の大樹を見上げ、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は感嘆を漏らした。
「ああ、美しい山桜だな。ここで皆で花見は楽しく過ごせそうだ」
 隣には、彩花・涼(黒蝶・f01922)。手には大き目の包みを持っている。
 【―morgen―】の面々に振る舞う食べ物が入っているのだろう。
 そして、グリモアベースからサムライエンパイアへと足を踏み入れたヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)は、
 桜と、その樹の下に集まってゆく皆を傍観しつつ、ふと思う。
(「どの世界であっても、花はうつくしく咲くのだな」)
 花見を行うのも、初めてのことだ。
 メンバー達の輪に合流し、さぁ宴の始まりだ。

 ザッフィーロが、ばさりと大きな布を広げて、
 その敷物の上に、各々が持ち寄った飲食物を並べてゆく。
 一際目をひくのは、ずらりと並べられたチョコブラウニーとおにぎり。
「10人前くらいあれば足りるかと思ってな。遠慮なく食べてくれ。
 余れば自分で処理なりするしな」
「これ、全部彩花おねーさんが作ったんだよね。すごい!」
「素晴らしいわね。私は料理は出来ませんので」
「オレも料理できない!」
 花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)と弦月・宵(マヨイゴ・f05409)は、涼へ尊敬の眼差しを向けた。
「一口団子も作って来たぞ……さすがに串団子は難しくて作れなかったが」
「三色団子ならば先程出店で買って来た。焼きそばやらも、好きに食べてくれ」
 一駒・丈一(金眼の・f01005)は、出店で買った食べ物を袋から出して、皆の前に並べてゆく。
「用意が良いな」
「皆の持寄りは本当に豪華だな。関西風桜餅と、これは甘酒だ」
 そう言って、桜餅の横に水筒を置くザッフィーロ。
 食べ物が並ぶにつれて、宴らしくなってゆく。
「私からはこれよ」
 里香は、蜂蜜にガラス棒を添えて差し出した。
 山桜の花枝の合間から差す木漏れ日に、蜂蜜もガラス棒もキラキラと輝く。
 一通り食べ物が並んだ所で、缶ビールを配って回る宵。
「猟兵仲間と花見をするのは初めてだ。
 皆に声を掛けて誘ってくれてありがとう、宵」
「はいどうぞ、冷え冷えだよ」
 手を伸ばしつつ礼を述べる丈一に、宵はすこし照れながら缶ビールを手渡した。
 次に配る相手はヴォルフラム。
「弦月。花見の誘いに感謝する」
「ヴォルフラムも来てくれてありがとう。はいどうぞ」
 誘いがなければ、こうして皆と膝を突きあわせ交流することもなかったのだから。
 そう感謝を込めて、手渡された酒もありがたく受け取った。
「これはザッフィーロの分」
「有り難く頂こう。弦月、甘酒はどうだ?
 これならば子供でも飲めるだろう? 皆も飲むか?」
「わっ、甘酒だー! オレも貰っていいの? ありがとう」
 宵は水筒から、とぷとぷと甘酒が注がれる様子を嬉しそうに見つめている。
 そうこうしている内に全員に飲み物が行き渡ったので、
 配り回っていた宵も一旦座りーーそれでは、
「「乾杯!」」
 プシュッ! と次々に缶ビールを開ける爽快な音が、快晴の下に響き渡った。

 一口目のビールの喉越しを楽しんで、さっそく料理を頂こう。
「涼は料理が上手だな。ブラウニーまで作れるのか」
「料理は今回は焦がしていないぞ、チョコ系の菓子なら自信あるからな。
 おにぎりもちゃんと具材に桜えびのも作ってきたしな」
 感心しつつ、丈一はおにぎりに手を伸ばす。
 一口頬張れば、とても美味しく懐かしい感じがする。
「行楽といえばやはり、おにぎりだな。桜エビが花見の雰囲気に合っている」
 もう一口おにぎりを食べ進める丈一を見て、
(「団長は何故か握飯が似合う……エンパイア出身と言っていたがそれ故だろうか」)
 と、ザッフィーロは密かに思う。
「ブラウニーに花巻の持ってきた蜂蜜をつけるのも美味しいかもしれん」
「ほう、試してみよう」
 涼からブラウニーに蜂蜜という言葉を聞けば、甘味好きとしては試さねばいかんな……と。
 ザッフィーロはさっそく、涼のブラウニーに、とろりと蜂蜜を掛けてみた。
「……本当になんだ甘みが絶妙で幸せだな」
 濃厚なチョコレートに、絡み合う蜂蜜の甘みとフローラルな香りがとてもマッチしている。
「花巻この蜂蜜はどこで購入したのだ?」
「蜂蜜は採取したものよ。お口に合ったようで何よりだわ」
 光栄よ。と、里香は微笑んで、
「丈一さんもいかが?」
「ああ、頂こうか。ありがとう」
 ガラス棒に掬った蜂蜜が口元に近付いて行くが。
「……! 見間違えた、里香の指じゃないか」
「うふふ、気づいたのね」
 ガラス棒と思ったそれは、クリスタリアンゆえの宝石の指。
 里香は悪戯っぽく笑って、今度はガラス棒に掬った蜂蜜を丈一にあげるのだった。
「うん美味いよ。里香も食べているか?」
「ええ、頂いているわよ」
 そう言って、並んだ食事にちまっと口をつける。
 使役する、からくり人形や蟲達は大食らいだが、彼女自身は小食なのだ。
「宵も、配り周るのも良いが、まだ若いのだしちゃんと食べるといい」
 たのしくって、食べ物を勧めたり、空になった飲み物を注いだりして、
 皆の間をぱたぱたと回っていた宵は、くるりと振り返って丈一の隣に座った。
「ほら、俺が買って来た三色団子もあるぞ」
 宵は目を輝かせて団子に手を伸ばし、
「オレに見せたという事はつまり、オレが頂いちゃうということだ!」
「全部食べてもいいぞ」
「あはは、さすがに全部は食べられないよ」
 お花見といえばお団子! と、美味しそうに頬張っている姿を、丈一は微笑んで見守っていた。
「ザッフィーロの桜餅も頂こうか。ヴォルフラムもひとつどうだ?」
「すまんが、俺は甘味はそれほど得意ではない」
 少し目を伏せて丈一の申し出を丁重に断るヴォルフラム。
「一駒の焼きそばと、彩花の握り飯をもらおう」
 そう言って皿に盛った食べ物を、黙々と食しつつ。
 蜂蜜もチョコブラウニーも、機があれば食してみたい、と。
 近頃は、そう思えるようにはなったのだ。

 その一方ーー、
 涼はザッフィーロの隣に座って、美味しそうに桜餅を食べている。
 花びらが風に舞い、くるくると散り落ちるのをゆっくりと眺めながら、
 桜餅のさくらの香りが、花見を引き立てるようだ。
 ぐるりと景色を見てみれば、春の訪れを感じさせる新緑に満ちて、野鳥の囀りが聞こえて来る。
 なんと長閑な事だろう。
 本当に穏やかで美しく、桜の様な時間だと思いつつ、
 ザッフィーロもゆったりとしたひと時を楽しむのだった。
 そして皆の輪に戻ると、
「ヴォルフラムも食べているか? 顔色が白い故、日頃物を食しているか心配でな」
 と声を掛けて。
「そうだな。吸血と生命力吸収があるゆえ、食事をしない日もある。
 だが最近は、そうでもない」
 小春日和の桜の下、皆と囲む食事は良いものだ。
(「いつか、俺の故郷でも花宴を催すことができたなら、
 その時は、皆を招待したいものだ」)
 花見を楽しむ皆々の様子を眺めて、そう思うのだった。

 気がつけば、料理も飲み物もあらかた無くなって来た。
 そろそろ宴も終いの頃合いだ。
 お腹が満たされ、うとうとと微睡むような春の日差しが、花枝の間から差し込んで……。
「あらあら、暖かくなってきたとはいえ冷やすといけないわね」
 いつの間にか昼寝している者には、里香が毛布を掛けてあげた。
「来年もまた皆で花見が出来れば良いな」
「うん……」
 丈一の呟きに、宵は山桜を見上げて答えた。
 瞳に映る薄紅色の花びらを、春風が運び去ってゆく。
(「夢のようなどこかの幻想はもう要らないんだ。
 比べられない大切な思い出がひとつ、増えた。
 きっと桜を見る度に思い出せる」)

 ほんの短い間だけ、見事に咲き誇り散ってゆく桜。
 その儚いひとときに、新たな思い出を重ねて。
 季節が巡り、来年もまた桜は咲くのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月22日
宿敵 『妖刀に魅入られた孤独な人斬り』 を撃破!


挿絵イラスト