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闇の救済者戦争⑱〜三つ首の禁獣、現る

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争 #禁獣『ケルベロス・フェノメノン』

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#禁獣『ケルベロス・フェノメノン』


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●禁獣禁域
 彼の獣は無敵であり。
 彼の獣は禁断であった。
 死を知らず、滅ぶことなき獣。
 地獄を纏い。
 兵器を輩に。
 |惑星《ほし》の重力《グラビティ》を操る者の名は――ケルベロス。

 |三つ首の禁獣《ケルベロス・フェノメノン》は、今、ここに解き放たれん。

 殲滅の獣を倒すのは一振りの刃。
 そして、ユーベルコード。

●グリモアベース
「皆さんは巨大な相手と戦ったことはあります? 俺はありますが……まあ、苦労するのは間違いないです」
 グリモア猟兵、流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)の言葉は明らかに老婆心から来る苦労語りだった。
「とりあえず、ロートル体験談はこれくらいにして本題と参りましょう。禁獣『ケルベロス・フェノメノン』の領域への進攻が可能となり、欠落も破壊した今、禁獣を倒す好機が訪れたと考えます」

 突然懐から四角い紙粘土を取り出すと割り箸を四本突き刺し、マジックで『数百m』『機械兵器』『地獄の炎』と色々と書き込まれたものが机に置かれた。

「とは言えケルベロス・フェノメノンは本来無敵の禁獣であり、あらゆる武器、あらゆるユーベルコードによる攻撃を受け付けませんし、たとえその無敵能力を失ったとしても、無尽蔵とも思える生命力を持つ敵であることには変わりありません。ですが……」

 続けて紙粘土の周辺に爪楊枝をいくつか置く。

「ケルベロス・フェノメノンは自身が攻撃を放つのと同時に、時折体内から一振りの|小剣《グラディウス》を落下させます」

 聡い猟兵はその言葉を勝機と理解し。
 もっと聡い猟兵は影郎の作ったケルベロスらしきものに対するコメントを控えた。

「これは通常の武器としては使えないように見えますが、何故かケルベロス・フェノメノンに対して放つユーベルコードを大幅に増幅させるんですよ……あとは分かりますね?」
 そんな中、グリモア猟兵は話を進めていく。
「これを利用し、増幅したユーベルコードを叩き込み続ければ、奴を倒すことができるかもしれません。というか、やるしかないでしょう? 相手はこちらを拒み、倒さねば誰かが死ぬ……どの世界でも俺達は負けられない戦いをしているものです」

 話を終えた影郎が風車を投げた。

「チャンスはここに、道は開かれました。後は選択するだけです」
 告げるグリモア猟兵の視線の先には領域への道が。
「貴方はどうしますか?」
 あとは問いかけのみだった。


みなさわ
 ここより先は選択肢。
 超常の灼滅か、重力の殲滅か。

 こんにちはみなさわです。
 こちらは禁獣『ケルベロス・フェノメノン』との戦いになります。

●戦場
 禁獣領域。
 猟兵もケルベロスも存分に力が発揮できるほどに広い戦場です。

●敵
 禁獣『ケルベロス・フェノメノン』
 無尽蔵とも思える生命力と強大な火力を持った強敵です。
 オープニングでも説明しましたが、グラディウスを使い増幅したユーベルコードを叩き込めば勝利の道は掴めるかもしれません。

●プレイングボーナス
 |小剣《グラディウス》を拾い、ユーベルコードを増幅する。

●難易度
 やや難です。
 苦戦判定でも書けるものはリプレイにしたいと思いますが、それ以外はお返しすると思います。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 では、皆様。
 地獄の番犬との戦い、お願いします。
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第1章 ボス戦 『禁獣『ケルベロス・フェノメノン』』

POW   :    グラビティブレイク・フェノメノン
【自身の肉体または武装】に触れた対象の【肉体を地表にとどめている重力】を奪ったり、逆に与えたりできる。
SPD   :    インフェルノファクター・フェノメノン
命中した【機械兵器】の【弾丸や爆風】が【炎の如く燃え盛る『地獄』】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ   :    サイコフォース・フェノメノン
着弾点からレベルm半径内を爆破する【呪詛と魔力の塊】を放つ。着弾後、範囲内に【消えざる『地獄』の炎】が現れ継続ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

虻須・志郎
重力を奪ったり与えたりってな
その程度の|重力異常《グラビティ》が怖くて宇宙船乗れるかよ!
メイガスに搭乗し内蔵無限紡績兵装のロープワークで地形を構築し利用
変動する重力を見切り上下左右前後何処でも自力で移動してやるよ
ついでに|小剣《グラディウス》を捕縛――何だこれは
マシン出力上昇…そうか、分かってきたぞ
猟兵とは、ユーベルコードとは…
そのまま限界突破の空中戦を敢行
怪力で道を手繰り寄せ攻撃回数を増加した連続コンボだ!
咄嗟に捨て身の騙し討ちで傷口を抉り急所を突いて生命力吸収!
テメェの|重力《パワー》|寄こせ《略奪》!
合わせて奴の兵器をハッキングして自爆させてやる
この剣の力か、ユーベルコードが冴えてるぜ!



●略奪者

 真っ赤に燃える地獄の領域の中を疾走するのは一騎のキャバリア。
 操縦者は虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)。
 FAL510N『メイガス・ヴェナトリア』を駆るその姿は|略奪者《イェーガー》であった。
「重力を奪ったり与えたりってな」
 メイガスのコクピットの中で志郎が皮肉る。
「その程度の|重力異常《グラビティ》が怖くて宇宙船乗れるかよ!」
 機内のレバーを押し出し、出力を上昇させた拳でケルベロスを殴りつける。
 三つ首の獣が仰け反って、大地を削った直後――それは来た。

 |重力異常現象《グラビティブレイク・フェノメノン》

「ぬ……おおおおおっ!?」
 機体を、志郎を、圧し潰さんばかりの過重力。
 内臓から酸っぱい何かが戻ってきて何かを吐き出す前に男はボタンを押しメイガスの機能を解放する。
「チェンジ! メイガス!」
 蜘蛛型へと変形したオブリビオンマシンが糸を発射、道を作り、地形をつくり重力の力場から抜け出す。
 すかさずケルベロスの新たな重力異常を発生させる。
 今度は逆転。重力を失い、メイガスを浮いた鉄の塊にせんとする。
「お見通しだ、ケルベロス!」
 だが人型に戻ったオブリビオンマシンを駆る志郎が糸を手繰り寄せ、蹴りを叩き込む。
 そして転がった|小剣《グラディウス》を手に取った時、彼は……見た。
「――何だこれは」
 応えるかのように光を帯び、やがて閃光となるメイガス。
「マシン出力上昇……そうか、分かってきたぞ」
 光彩が螺旋を描く中、志郎は理解した。
「猟兵とは、ユーベルコードとは……」
 閃光の中から一騎のオブリビオンマシンが飛び出し、三つ首の獣へと拳が打ち込まれた。

「これが熱き血潮を持つ、強く生きる人間の力!?」
 一撃にたたらを踏み、ケルベロス・フェノメノンが確信する。
「ならばこそ、全てを撃ち砕く!」
「そんなにお前の言う|惑星《ほし》が大事かぁ!?」
 限界を突破し、連続攻撃を叩き込む志郎。
 その移動は幾何学的で三つ首の獣が捕えるには至難。
 技の名は――ユーベルコードの名は

 |死紡誘伎《シボウユウギ》

「そうだ、人間。そのためなら――」
 志郎の攻撃を受けつつもケルベロスは吠える。
「悪とならん!」
 渾身の重力加算。
 地上に留めんとする重力を全てメイガスに集中させる。
「ぬおおおおっ!」
 軋む音の中、虻須・志郎が苦虫を嚙み潰したように顔をしかめる。
 直後、メイガス・ヴェナトリアは圧壊に機能を停止した。

「……死んだか」
 獣が呟く。
「まだだ!」
 それを遮る声が響く。
「まだ、俺と」
 志郎が脱出し、慣性に任せて飛び込んできたのだ。
「グラディウスがある!」
 小剣を手に持って。
「テメェの|重力《パワー》を寄こせぇ!」
 突き刺さる一撃。
 それを媒介とした獣の重火器への干渉。

「この剣の力か、ユーベルコードが冴えてるぜ!」
 暴走した兵器が爆発する中。
 志郎はケルベロスと共に光に包まれた。

成功 🔵​🔵​🔴​

久遠寺・遥翔
アドリブ連携歓迎
イグニシオンに[騎乗]しての[空中戦]
無敵能力が失われたとはいえ未だ圧倒的な相手、小剣を回収するまでは[残像]による回避に専念する
蓄積された[戦闘知識]と研ぎ澄まされた[心眼][第六感]で敵の機械兵器による攻撃や爆風を避けながら小剣の落下を[見切り]、右掌に回収だ
ここからは小剣で増幅したUCで反撃
無数に分身したイグニシオンによる焔の太刀と焔の波動による波状攻撃
敵が巨体かつ強大ならば、こちらは小剣でさらに増幅した物量で攻めるまでだ!
「いくぜイグニシオン、この現象を駆逐する!」

回収できそうなら小剣はそのまま回収しよう



●駆逐せよ

 爆発が収まりつつある中、また一体のキャバリアが空を駆る。
「無敵能力が失われたとはいえ未だ圧倒的な相手」
 コクピット内のシートに跨り、バイクハンドルと連動した操縦桿を握り久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)は呟いた。
「それに|小剣《グラディウス》が手に入るのは攻撃の後っていうなら」
 遥翔がスロットルを捻るとクロムキャバリアにしてオーバーフレームたるイグニシオンのバーニアが火を吐く。
 クロムキャバリアでは発揮されない空中機動。
 光学機器ではないケルベロス・・フェノメノンの目には捉えきれない姿が焼き付き、そして消えていく――残像だ。
「回避に集中だ!」
「良い動きだ……だからこそ、此処で打ち倒す必要がある!」
 答えを返すのは爆炎の中から出て来た三つ首の獣。
 直後、獣の背中にそびえた兵器が火を吹いた。

 インフェルノファクター・フェノメノン

 巨体が備える兵器もまた膨大。
 圧倒的な質量とそれが起こす爆風、それだけなら難なく回避できるだろう。
 だが、それは変化するのだ。
 地獄と言う名の炎に。
 獲物を捕らえ焼き尽くす地獄へと。
 空中にて静止するイグニシオン。
 それは――。
「見切った!」
 培った経験が導く地獄の間隙を見切る為の誘いであり、経験が感という要素に昇華するための呼吸。
 炎の渦を潜り、文字通り地獄を潜り抜けた男がその手に剣を取る。

 そう――|小剣《グラディウス》を!

 小剣を通して伝わる力。
 それが今、ユーベルコードとして発現する。
「駆動しろ!」
 機は熟し、黒焔の騎士は叫ぶ。

 |CODE-MIRAGE《コード・ミラージュ》と!

 今度は残像ではない、質量を持った百体以上イグニシオンが漆黒の太刀を構え、黒焔の砲を放つ!
「いくぜイグニシオン」
 飽和射撃にてケルベロスの動きを封じる中、遥翔はキャバリアのアクセルを解放する。
「この現象を駆逐する!」
 騎士に続くキャバリア達。
 強大且つ巨大ならば、それを上回る物量にて倒さんと、太刀を振り下ろす。
「本当に我を駆逐するか、六番目の猟兵よ!?」
「当たり前だ!」
 三つ首の獣の言葉を遥翔は真正面から否定した。
「俺はそのために――」
 一つ、二つ、三つ。
 叩きこまれる砲撃と斬撃。
 その中を一機、飛びこみ、空を駆ける。
「世界を渡り歩くと決めたんだ!」
 遥翔の言葉に呼応した刀身がケルベロスにめり込んだ時、黒焔は弾け、辺りを包み込んだ。」

 爆発を背に去っていくのはキャバリアを駆る久遠寺・遥翔。
 その手には一振りの小剣が握られていた。
 おそらくは世界の鍵となる一つを。

成功 🔵​🔵​🔴​

シプラ・ムトナント
まずは敵の猛攻を耐え抜かなければ……『用法用量の不遵守』を使います。
寿命と引き換えですが、薬効により防戦に充分な【激痛耐性】とスピード、反射速度を得られる筈。

走り続けて被弾を避けながら小剣の出現を待ち、出てきたらすぐに回収を。

代償も増幅するのかもしれませんが……それでも、構わない。戦場に倒れるのが、更に少しばかり早まるだけの話です。

小剣よ、わたしにもっと速さを下さい。
|獣人戦線《こきょう》を助けてくれた|誰か《りょうへい》のように、わたしもこの世界を助けたいのです……!

小剣から得た更なるスピードと共に叩き込む、救急カバンの一撃。速さはそのまま、打撃力になる……全霊の【気絶攻撃】、お受け取りを!



●その意志は速さを超えて

 爆炎が収まり、空気が渦を作り上げる。
 熱気冷めやらん戦場へと歩を進めるのがシプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)。
 ケルベロス・フェノメノンが羊の衛生兵をその視野に捕らえると火砲を放つ。
 ケルベロスにはやるべきことがあり、その為に全力を以って打ち倒す必要を感じており。
 同様にシプラにも行うべきことがあり、その為に過剰な薬物を太腿へと射ち込んだ。

 |用法用量の不遵守《オーバードーズ》

 針が一体化した注射器によって流れ込んだ麻酔と回復薬が新陳代謝を活性化させ、痛みを麻痺させ、神経の伝達を限界以上へと引き上げ速さを与える。
 瞳孔は散大し、視野が広がった。
 だからこそ衛生兵は視えたのだ。

 |地獄をもたらす、その砲火を《インフェルノファクター・フェノメノン》を!

 手榴弾を投げ、ケープで顔を覆うシプラ。
 爆発が爆風を遮り、地獄を吹き飛ばす中、駆け出す。
 シプラ・ムトナントは軍人の生まれであった。
 そして戦場の申し子であり。
 戦争という地獄の中、誰かを助けんと手を差し伸べ歩く者。
 兵隊は走るのが商売だというのなら、砲火の中を走ることは衛生兵にとっては普段やるべき仕事と変わらない。
 レミーを抜き、引鉄を二回引く。
 ソード・オフの散弾銃だ、射程も威力も望めないが、銃声が三つ首の獣の意識をそちらに向け、シプラの心に残る恐怖を和らげる。
 だからこそ、滑り込む様に|小剣《グラディウス》を掴み取ることが出来た。

 最初に周りの音が消えた。
 次に心臓の音が響いた。
 そして世界が――視えた。

「剣を握るか、兵士よ」
 ケルベロスが言葉と共に砲火を叩き込む。
 禁獣領域に遮るものはない、弾丸と爆発と地獄で辺りを綺麗にすれば猟兵人一人容易く殺せる。
「小剣よ、わたしにもっと」
 グラディウスを掲げた糸の様な羊の目は赤が血走り、白が無い。
「速さを下さい」
 その頬を紅がたなびいた時、シプラの姿は消えた。

 代償も増幅するのかもしれない?
 だが構わない。
 場に倒れるのが、更に少しばかり早まるだけ。

 地獄を走り抜けた衛生兵が爆風を背に受け跳躍する。
「|獣人戦線《こきょう》を助けてくれた|誰か《りょうへい》のように、わたしもこの世界を助けたいのです……!」
 そこに居たのは……。
「第六の……猟兵!?」
 そう、ケルベロスが呟いた通り。
 そこに居るのはシプラ・ムトナント。
 はじまりの猟兵の地に生まれ、第六の猟兵となった者。
 グラディウスによって引き上げられた速度、そして爆風。
 全てが乗算された威力が重い救急鞄に乗せられて。
「お受け取りを!」
 獣の顔面へと叩き込まれた!

 強大なるケルベロスが倒れゆく中、限界を超えたシプラもその場で膝を着く。
 だが、よろめくように立ちあがると、衛生兵の足が歩みを刻む。
 戦場がまだあるならば、シプラの脚は止まることはないのだから。
 その姿は地獄の炎の中へ消えていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダンド・スフィダンテ
……うーん、粘土の見た目とは結構違うな。そんな気はしてたけども。言わないけども。


さて、敵の物理攻撃は盾受けでなんとかするとして……重力は……強くなるなら怪力と気合いで無理矢理動いて短剣を拾って斬り掛かるし、軽くなるならアンブロジウスに飛んで取ってきてもらって短剣を怪力でぶん投げて無理矢理当てるぞ。

怪我は激痛耐性で無視だ無視!死ななきゃ安いって言うだろ!な!

貴殿が強ければ強い程、この一撃は重くなる。
短剣の強化が重なるのなら、その首も狙えるか?

行くぞ!穿ち、貫く!!


(改変アドリブ連携苦戦大怪我負傷、死ななきゃどれも大歓迎です。ご自由にお書き下さい)


黒鋼・ひらり
『武装』とやらが機械兵器の類なら特に問題ないわ
磁力操作で弾く、ないし兵器そのものに干渉すれば当たらないし有効打が幾つか飛んで来ても転送した鋼鉄版や斧槍で迎撃・防御出来る

それに仮に当たっても『重力操作』よね
悪いけど重力と磁力なら……磁力の方が圧倒的に、強いのよ
磁力干渉に対し磁力操作で対抗、転送した磁性体を足場にしギミックシューズの吸着や磁力反発を駆使する事で重力低減・増加に対応

『小剣』を回収――剣が磁性体なら引寄せるし、違っても重力干渉には対抗できる、拾うのは難しい事じゃない筈――した後はこっちの番
重力なんて関係ないわ…増幅分も載せたありったけの磁力と質量を込めたUCでぶっ飛ばし、ぶっ潰すわよ



●質量で穿て!

 三つ首の獣が立ち上がる。
 天への叫びは怒りか、それともまだ戦えるという意志か。
 そこまでして何を守らんとしているかはわからないが、猟兵に牙を向けるのは分かる。
 だからこそ……第六の猟兵は機を見逃さない。

「……うーん、粘土の見た目とは結構違うな。そんな気はしてたけども。言わないけども」
 ダンド・スフィダンテ(挑む七面鳥・f14230)はそんな猟兵の中でも比較的聡い方だった。
「いや、ここで言ったら分かるんじゃないの」
 それ以上に聡い黒鋼・ひらり(鐵の彗星・f18062)が不機嫌そうに答える。
「それは言わない約束だよミューズ、それとも何か気に障った?」
「別に……あと私は女神って柄じゃないわ」
 ダンドの言葉に連れなく返すひらり。
 それだけで互いが分かるのは、心に外套を羽織るが故。
「それじゃ、往こうか!」
「そうね。幸い機械らしいし、私には相性がいいわ」
 男が旗を振って先を行き、女は応え、敵を見定める。
 戦場が故に自然と役割は決まった。

 だからこそケルベロス・フェノメノンは第六の猟兵を脅威を見定め牙を剥くのだ。
 |惑星《ほし》に近づかせんがために。

 騎士の剣は名刀ではない。
 俗にいう吊るしのバスタードソード。
 ただ、その名前が気に入ったからこそ持っているのだ。
 そしてダンドの膂力が合わされば――それは巨獣を倒す武器とならん!
 盾でケルベロスの爪を逸らし、距離を詰めた男の剣が獣の首一つに叩き込まれ、禁獣はたたらを踏む。
 更なる追撃に踏み込まんとしたダンド。
 しかし、その足が止まった。
 地表へ止める重力が突然増え、同じく増した自らの体重に耐え抜くために筋力を動員する方向へ意識が行っているのだ。

 勿論、それを黙って見ているケルベロスではなく。
「こっちを見なさい」
 そして、ひらりではない。
 強化された怪力と磁力操作によって振るわれる鎖鉄球が|巨大な彗星《グレートコメット》が如く空を貫き、ダンドを襲わんとした三つ首の獣の腹に叩き込まれる。
「人の業が為す力――やはり打ち倒せねばならん!」
 だがケルベロスもさる者、鉄球を腹に叩き込まれた勢いを跳んでいなしつつ、大地に杭を成す様に踏み込めばその威力を尾に乗せてコートの女へと打ちつけん!
「くっ……」
 咄嗟に武器庫から持ち出した鋼鉄板を盾にして、牽制の斧槍を数本発射する。
 ローレンツ力によって飛び出したハルバードに禁獣の意識が行った分、ひらりへの一撃は鉄の板がひしゃげることで消える。
 だがコートのヒーローすらも大地へ縫い留められた。

 |これ以上の歩みを止めんがために《グラビティブレイク・フェノメノン》

「これは……きついねえ、ミューズ!」
 その中でもダンドは歩む。
 力で、意地で。
 この地でやり残したことがある故に。
「ミューズは止めてよね」
 ひらりが笑う。
 この重力から抜け出す策があるのだから。
「悪いけど重力と磁力なら……磁力の方が圧倒的に、強いのよ」
 重い腕を動かし、コートの女は……タイピンを弾いた。
 何も無き禁獣領域に大量の磁性体が召喚される。
 タイピンそのものが兵装転送装置にしてひらりの能力を十全に発揮するための武器庫への道。
 重力の領域を磁力で覆えば、履いているシューズが応えてコートのヒーローが重力と言う呪縛から解き放つ。
「この地より駆け出すか……第六の猟兵!」
「当り前よ」
 ケルベロスの言葉にひらりが答える。
「|宇宙《そら》の向こうに惑星《ほし》があるのなら」
 それは星空が好きな少女の本音だろう。
 だからこそ禁獣は拒絶する。
 重力を軽減させ、体当たりによる質量と慣性で吹き飛ばす為に。
「ロマンチックだね、だったら俺様も!」
「Angyaa!!」
 ダンドの言葉に応えるかのように真紅の小型竜が咆哮し飛ぶ。

 人と竜の狙いはただ一つ――|小剣《グラディウス》

 竜が剣を咥えると騎士は天高く飛び、女が獣の体当たりを躱すと剣を取り磁力を以って鎖鉄球を天へと投げた。
 天頂に至った鉄球が増幅された磁力によって引き寄せられ、その質量が速さとなる。
 ケルベロスに選択肢は無い。
 重くしても軽くしても、質量は変らず鉄球が発揮するユーベルコードを止めることは出来ないのだから。
 その力の名は衝撃波。
 そのユーベルコードの名は……。

 |ツングースカ大爆発《Tunguska Explosion》

 彗星が落下するかの如く、大地に叩きつけられた鉄球の衝撃波が禁獣の巨体を吹き飛ばす。
 ケルベロスが二度、三度、バウンドし体勢を立て直したところに――ダンドが居た。
 空よりグラディウス片手に。
「貴殿が強ければ強い程、この一撃は重くなる」
「ならば、重くしてやろう」
 騎士の言葉に応えた禁獣。
 諧謔の過重力に骨が負け、手が砕け、小剣は離れていく。
「死ななきゃ安いって言うだろ!」
 だが、ダンドは笑う。
 小型竜、アンブロジウスが剣を運ぶのだから。
「行くぞ!」
 騎士が剣を口に咥え、後は自由落下の特攻。

 穿ち、貫く!

 その一撃こそが。

 ――天杭!!

 ダンド・スフィダンテのグラディウスが禁獣の首を一つ刎ねた。

 獣の咆哮が禁獣領域に響き渡る。
 その中、コートの女は骨の砕けた騎士を抱え戦線を離れていく。

 ……天秤が傾き始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・つかさ
数百メートル級の相手、ねえ。
確かに面倒だけど、それが何だって言うのよ。

敵の攻撃に対しては普通に防御して凌ぐ
重力を奪われるのは厄介だけれど、私の「怪力」なら空間を蹴り飛ばして移動出来る
逆に与えられたとしても、いつもより力を籠めて踏み込めば問題なく動ける
勿論、その間に落ちてきた小剣は忘れずに回収する

反撃は全力で以て奴の懐に飛び込み、至近距離で【破界拳】発動
世界の境を砕く余波になるべく広範囲を巻き込み、抉り取るようにダメージを与えるのが狙い

|山の竜《帝竜ガルシェン》を砕き、|星の獣《クェーサービースト》を砕き、破界に至ったこの拳に、大きさ程度は些細なことよ。
いつか、無敵の概念だって砕いて見せるわ。


御鏡・幸四郎
影郎さんの戦った巨大な相手……まあ、私と同じでしょう。
そんな彼が言うんですから、まあ、苦労するんでしょうね。

戦場に飛び込み次第全速ダッシュ。
攻撃を見切り、躱しながら可能な限り接近します。

禁獣の兵器群がこちらを向いたら、
詠唱銃にルークのピースを装填。
「護りの壁となれ、ルーク!」
ピースの雑霊の力を解放し、巨大な盾を構えます。
全ての攻撃を防御すると言ってもさすがにキツイですが、
好機が来るまでは耐えます。

「姉さん!」
禁獣から小剣が落ちたら姉を召喚。
スピードを活かして接近、回収します。

「その力、使わせてもらいます」
吸収した敵の攻撃と地獄の炎、そして小剣の力を合わせ、
超強化した雑霊弾を盾から放ちます。



●地獄すら破界し

 首を一つ失い、そこに居るのはただの獣。
 だがケルベロス・フェノメノンの名が失われる事は無い。
 脅威は未だ衰えず、むしろ戦意は増しているだろう。
 故に禁獣と言う名が相応しく。
 ケルベロスは禁獣たらんと猟兵に牙を向ける。

「影郎さんの戦った巨大な相手……まあ、私と同じでしょう」
 御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)が過去を思い出し、呟く。
「そんな彼が言うんですから、まあ、苦労するんでしょうね」
 銀の雨の時代での戦場で彼の人物を見かける機会は無かったが、巨大な相手とは幾度もやり合っていたのは事実なのだから。
「数百メートル級の相手、ねえ」
 傍らに立つ荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)が余裕を持った笑みを浮かべる。
「確かに面倒だけど、それが何だって言うのよ」
 大きいのは面倒だが、逆に考えれば的が大きい分当たりやすい。
 後は殴ればいい。
 そんなつかさの姿に幸四郎はかつての仲間を思い出していた。

 ケルベロスが走る。
 猟兵を屠らんがために。
 二人が走る。
 獣を倒さんがために。

 先に火蓋を切ったのは禁獣。
 背中の兵器が文字通り炎を吐き。

 |地獄の如き砲火を降らさん《インフェルノファクター・フェノメノン》

 死の炎を空に視止めた幸四郎が中折れ式の詠唱銃の銃身に|チェスの駒《ゴーストピース》を装填するとその引鉄に指をかける。
「護りの壁となれ、ルーク!」
 雑霊を操る霊媒師、その術がユーベルコードとなって今、発現する。

 |雑霊障壁《ゴースト・ウォール》

 砲火を防ぐ亡霊の壁。
 地獄と変わった焔に霊が消えていく中、その機を見て鬼が走る。
 砲火を幸四郎が引き受けた分、つかさは一直線に走り距離を詰めることが出来た。
 後は簡単だった。
「――破ァ!」
 気合と共にケルベロスの腹へと拳を突き上げる、すると禁獣の巨体が浮いた。
 それは怪力の極みが発生させた剛拳。
「ぬううううっ! 人の身でその域へと到達するか!?」
 予想外の一撃に獣が呻き声と共に身を翻せば、返しは前肢での爪撃。
 鋭い爪がつかさの肉を割き、骨まで削り取るが羅刹の倒すには至らない。
 いや、充分だった。
 ケルベロスはつかさの|重力《グラビティ》へと鎖を繋いだのだから。

 |後は鎖で縛り付けるのみ《グラビティブレイク・フェノメノン》

「くっ……」
 羅刹が歯を食いしばる。
 増した自重が骨を軋ませ、血の流れを塞ぎ、筋肉を抑え……。
「このぉ!」
 つけない!!
 人外の筋力が重力の鎖を振り切って一歩進ませる。
「――!?」
 ケルベロスが目を見張る。
 ここまで愚直且つ禁獣たる自分を上回る者を見たことがないのだから。
「今だ……姉さん!」
 砲火が地獄の炎と変わり動けない中、そこに幸四郎はチャンスを見出し左手のイグニッションカードを起動させた。
 妹を家族に持つ羅刹が姉を呼ぶ声に振り向けば、走るのは霊媒師と絆で結ばれたスケルトン。
 御鏡・幸四郎の姉、その人。
 彼女が並ぶと同じくしてつかさは大地を蹴るが如く自らの歩みを再開する。
 そして骨の手が、人の手が、掴み取るに至ったのは。

 |勝利への剣《グラディウス》!

「させぬ!」
 脅威を感じたケルベロスが火砲の勢いを強め、羅刹への重力を解放すると同時に大地を踏み鳴らし反動でつかさを空へと飛ばした。
 放射状へと飛んでいく火砲の渦に羅刹を巻き込み、その勢いで骨と人を呑み込まんとするために。
「させない!」
 だが……つかさは獣へと飛びこむ。
 音速に至る時に発生する空気の壁、羅刹はそれを蹴った。
 筋力を総動員し、その刹那に生まれる空気抵抗――壁という名の視えない物体を!
 同時に幸四郎の手に渡されるグラディウス。
 ガンナイフの刃を外せば、小剣は自然と銃に収まった。
「その力、使わせてもらいます」
 増幅されたユーベルコード、そして真の力が発揮される。
 攻撃によるエネルギーを蓄積、変換し無数の雑霊弾へと変わる攻防一帯の盾に。

 ――|巨大なる雑霊の波《ゴースト・ウォール》へと!

 地獄を伴った波状攻撃にケルベロスの肢が止まる中、霊媒師はガンナイフを構え、引鉄を引く。
 全てを凝縮した一撃が禁獣を貫き、吹き飛ばされんと獣が大地に爪を喰い込ませた時――羅刹は拳を握る。
 |山の竜《帝竜ガルシェン》を砕き、|星の獣《クェーサービースト》を砕き、拳が至ったのは……破界!

 |破界拳《ボーダー・ブレイク》

 領域が、空間が、世界が壊れ、そして禁獣すら壊す。
 禁獣領域は鳴動し、獣は赤いものを吐き、その場に転がった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
アドリブ歓迎

0Gパラソルで展開した無重力空間とオーラ防御で攻撃に耐えながら、念動力で小剣を捕まえてユーベルコードを発動するよ。

マリアの漿船形態はまだ時速12000キロちょっとしか出せないけど、小剣の増幅効果が加われば第一宇宙速度……ううん、第二宇宙速度まで、重力も届かない速さまで、届くかもしれない。

貴方は、ただ守りたいだけなんだね。でも、マリアも止まれないの。
マリア達(SSWの住人)はずっとずっと、惑星(ホシ)を目指して旅してきたから。
そこにはきっと、マリア達(猟兵)にしか救えない人がいるから。
だから新しい惑星に、世界にいる人達と、手を繋ぐために……重力の鎖なんか千切って、マリアは行くよ!


天瀬・紅紀
地獄の炎ね…
どれだけ熱いのかな
少なくとも心燃える程の戦いさせてくれるよね?

機械兵器とかこの世界らしく無いけど基本的にその属性は火だ
周囲にUCで炎の百舌を展開しつつ敵に向かい駆ける
奪うは無論炎属性
あの巨体なら弾丸もデカいでしょ
飛来段階で迎撃、爆発火力を奪う
この暗闇の世界なら威力も増すよね多分
地獄とやらが刺さっても堪える
こんな熱、生温い…!

小剣拾ったら左手に逆手に持ち
炎の百舌の群を一点集中させて獣の心臓目掛けて飛ばす
本体から奪うべきは炎の他、冥属性が相応しいのかな?
百舌達が駆け抜けた後を追う様に巨体に向けて居合いからの一閃、斬撃波放ち
すかさず振りかぶる二の太刀は小剣から、命奪いし特大炎鳥ぶっ放す!



●地獄を抜け、|惑星《そら》へ……

 最早、決着は着いたに等しいだろう。
 無敵の禁獣はいずれ死に至る。
 だが、ケルベロス・フェノメノンの歩みは止まらない。
 |重力の鎖《グラビティ・チェイン》の導きを何としても食い止めんが為に。

 だから……。
 二人はここに来た!

「地獄の炎ね……どれだけ熱いのかな」
 天瀬・紅紀(蠍火・f24482)の赤い瞳がケルベロスへと向く。
「少なくとも心燃える程の戦いさせてくれるよね?」
 色を失った肌が炎に当てられ、紅紀の本性が如く朱を映しつつも笑みを隠さない。
「どちらにしても」
 アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(涯てに輝く・f13378)が桃色の瞳で獣を見上げる。
「進むしかないよ」
 マリアの言葉に炎の使い手は頷く。
 直後、ケルベロスが兵器を開放、砲火を放つ。
 それが最後の戦いの始まりだった。

「機械兵器とかこの世界らしく無いけど」
 紅紀が錫杖を振るえば、炎が百舌鳥を形どる。
「基本的にその属性は火だ……なら、その炎、奪うまで」
 焔の百舌鳥が群れとなり、ケルベロスの吐き出す兵器とぶつかり合う。

 |地獄の火砲を炎の百舌鳥が喰らわん《インフェルノファクター・フェノメノンvsストリップ・オブ・ララワグ》

「……デカいな」
 熱気故か物書きの頬を汗が伝う。
 この暗闇の世界故に力を増しているのに、ユーベルコードの本来の力である攻撃能力と魔力の奪取が追い付かない。
 相性ではない。
 単純な物量が違うのだ。
 故に奪いそこなった砲火は地獄となって大地を走り、紅紀のインバネスコートを燃やす。
「こんな熱、生温い……!」
 耐熱性繊維で織られたとんびに守られているからか、それとも炎の使い手の矜持か、どちらにしても朱の差した肌で男は笑う。
 視界の隅には傘一つ握ったマリアが走っていた。

 アルピノの炎使いが砲火を引き受けている中、クリスタリアンの少女が戦場を走り抜ける。
 勿論、ケルベロスもそれに気づかないはずがない。
 一つ落とされたとはいえ、首はまだ二つある。
 その分、視野と感覚は人よりも広く大きいのだろう。
「蛮勇……いや、真なる勇気か」
 禁獣がマリアの姿を認め、その瞳の奥に有る臆病と決意を見た。
 恐怖を知りつつも何かの知恵を以って立ち向かうなら一人の猟兵。
 ならば殺す。
 一撃は爪、ちいさな宝石人間なら容易く砕けるだろう。
 少女はそれが分かっていたからこそ、傘を開きオーラを纏わせることで一撃を受け止め、吹き飛んだ……がマリアは難なく着地する。
「……この感触、重力を操るか」
 傘の名は0Gパラソル、無重力空間を発生させる銀河帝国の遺産。
 威力を殺されたケルベロスは忌々し気に唸り声をあげ。
「ならば、その重力ごと縛り付けてやらん!」
 ユーベルコードを紡ぐ。

 |この重力の鎖を以って《グラビティブレイク・フェノメノン》

「空間が……歪んでる!?」
 無重力空間が狭まっていくのを感じ、マリアが驚愕の声を上げた。
 過剰なる重力は光さえも引きずり込む。クリスタリアンの少女を包む空間ごと圧殺することすら容易いだろう。
 だけど――アヴァロマリアにはもう一つの力がある。
「――|小剣《グラディウス》を!」
 少女が手を伸ばした時、二振りの剣は自ら飛び、マリアと紅紀の手に収まる。
 クリスタリアンの少女が伸ばした念動力――視えざる手によって。
「今だよ!」
「ああ!」
 マリアの言葉に炎の使い手が小剣を左手に持ち、右手の指をケルベロスへと向ける。
 魔力と炎を奪いに奪った炎の百舌鳥の群れは一つの鳥となりて。
「奪えないほどに数で負けるなら、一つを貫けばいいんだ」
 一点集中とばかりに獣の心臓目掛けてねじ込む。
 それこそが真の――。

 |蠍贄鵙翼《ストリップ・オブ・ララワグ》

「――乗って」
 直後に聞こえる少女の声。
 空を走る|漿船《クリスタルシップ》に紅紀が飛び乗った。

「マリアの漿船形態はまだ時速12000キロちょっとしか出せないけど」
 その船はマリア自身。
「小剣の増幅効果が加われば第一宇宙速度……ううん、第二宇宙速度まで、重力も届かない速さまで、届くかもしれない」
 グラディウスによって力を得た船は超えるのだ――重力の鎖を!
 その甲板の上で備中青江に手をかけるのは天瀬・紅紀。
 斬撃波!
 居合から放たれる青江貞次の透き通った一撃は地球脱出速度も加わり、禁獣を空へと吹き飛ばす。
「決めるぞ!」
 紅紀のグラディウスが炎を纏う。
「持っていけ――全部を!」
 命奪いし特大の炎鳥が羽ばたき、輝ける漿船と一つになった。

「ぬぅうううううう!」
「貴方は、ただ守りたいだけなんだね」
 炎を纏い船ごと体当たりを敢行しつつマリアはケルベロスに問う。
「でも、マリアも止まれないの」
「それでも!」
 少女の言葉を禁獣は拒絶する。
「我らが|惑星《ほし》には、何人たりとも近付かせぬ!」
 そのためにここに居るのだから。
「|マリア達《星無き宇宙の住人》はずっとずっと、|惑星《ホシ》を目指して旅してきたから」
「!?」
 星無き|宇宙《うみ》の旅人の言葉が獣に刺さる。
「そこにはきっと、|マリア達《猟兵》にしか救えない人がいるから」
「だからこそ、通してもらうよケルベロス」
 炎のように赤い目で紅紀が禁獣を睨む。
「だから新しい惑星に、世界にいる人達と、手を繋ぐために……重力の鎖なんか千切って、マリアは」
「俺達は」
 二人の言葉が重なる。それは心からの叫び。
「行くよ!」
「行くのさ!」
 |惑星《ほし》への叫び。

「ならば」

 それは運命を変える光。

「次は貴様らが」

 |天地のある限り《ॐ》

「守護るが良い」

 |昼も夜も《अर्क》

「|惑星《ほし》を」

 |止むことはない《स्वाहा》

「ああ」
 光の中、消えゆくケルベロスに男は頷き。
「約束する!」
 船から人に戻った少女が振り返って答えた。

 口元を吊り上げて笑ったように見えたのは多分間違いではないだろう。
 禁獣、ケルベロス・フェノメノンは重力の鎖より運命を変える未来の光を信じ、そして消えた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月26日


挿絵イラスト